JP5042069B2 - 定着装置、及び、画像形成装置 - Google Patents
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Description
このような定着ベルトを用いた装置は、定着部材としての定着ベルト(無端状ベルト)、定着ベルトを張架・支持する複数のローラ部材、複数のローラ部材のうち1つのローラ部材に内設されたヒータ、加圧ローラ(加圧部材)、等で構成されている。ヒータは、ローラ部材を介して定着ベルトを加熱する。そして、定着ベルトと加圧ローラとの間に形成されたニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像は、ニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着される。
オンデマンド方式の定着装置は、定着部材としての定着フィルム(エンドレスフィルム)、加圧ローラ(加圧部材)、セラミックヒータ等のヒータ、等で構成されている。ヒータは、定着フィルムの内部に設置され、定着フィルムを介して加圧ローラに当接してニップ部を形成するとともに、定着フィルムを加熱する。そして、ニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像は、ニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着される。
その場合、定着部材の加熱効率を向上させるために、パイプ状の加熱部材(金属熱伝導体)をできるだけ薄肉化する必要がある。しかし、薄肉パイプ状の加熱部材を切削加工で高精度に製造するには限界があって、切削加工が進むうちに加熱部材の剛性が低下して加工装置のチャッキングによる変形が生じたり、切削加工時に加熱部材に撓みが生じて均一な肉厚での加工ができなかったりする。
特に、ニップ部から送出される記録媒体の分離性を向上させるために、加熱部材におけるニップ部に対応する位置を平面状又は凹状に形成する場合には、切削加工で高精度に製造するには限界があるとともに、2次的な後工程も必要になって製造コストが増加してしまう。すなわち、切削加工によって加熱部材を薄肉パイプ状に形成した後に、ニップ部を所望の形状にするための2次的な切削加工をおこなう必要があって、加熱部材の薄肉化が進むほど、高精度かつ安価な加工が難しくなる。
図1〜図4にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
図2は、定着装置20を示す構成図である。図3は、定着装置20を幅方向にみた図である。図4は、定着装置20に設置される加熱部材22の製造工程を示す概略図である。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21、加熱部材22、補強部材23、断熱部材27、熱源としてのヒータ25、加圧部材としての加圧ローラ31、温度センサ40、等で構成される。
定着ベルト21の基材は、層厚が30〜50μmであって、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)、PTFE(4フッ化エチレン樹脂)、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
定着ベルト21の内部(内周面側)には、ヒータ25(熱源)、加熱部材22、補強部材23、断熱部材27、等が固設されている。定着ベルト21は、補強部材23によって補強された加熱部材22に押圧されて、加圧ローラ31との間にニップ部を形成する。
ここで、補強部材23と加熱部材22との間には、断熱部材27が設けられている。これにより、加熱部材22の熱が補強部材23側に移動して加熱部材22の加熱効率が低下する不具合が抑止される。なお、断熱部材27の材料としては、耐熱・高断熱性材料であって、ゴム、樹脂、フェルト、セラミックシート等を用いることができる。
ここで、加熱部材22は、ニップ部に対応する位置が平面状になるように形成されている。すなわち、ニップ部における加熱部材22の対向面(加圧ローラ31に対向する面である。)が平面形状になるように形成している。これにより、ニップ部の形状が記録媒体Pの画像面に対して略平行になって、定着ベルト21と記録媒体Pとの密着性が高まるために定着性が向上する。さらに、ニップ部の出口側における定着ベルト21の曲率が大きくなるために、ニップ部から送出された記録媒体Pを定着ベルト21から容易に分離することができる。
また、本実施の形態1では、ニップ部における加熱部材22の形状を平面状に形成したが、ニップ部における加熱部材22の形状を凹状に形成することもできる。すなわち、加熱部材22における、加圧ローラ31との対向面を、加圧ローラ31の曲率にならうように形成することもできる。その場合にも、記録媒体Pは加圧ローラ31の曲率にならうようにニップ部から送出されるために、定着工程後の記録媒体Pが定着ベルト21に吸着して分離しない不具合を抑止することができる。
ところが、本実施の形態1では、加熱部材22の変形を制限する位置に補強部材23が設置されているために、加熱部材22を薄肉化した場合であっても、加熱部材22の撓みを軽減することができる。これにより、加熱部材22が撓んで定着ベルト21の内周面が強くこすれる不具合や、加熱部材22が撓んで定着ベルト21の駆動トルクが増加する不具合等が抑止される。
また、補強部材23における、ヒータ25に対向する面の一部又は全部に、断熱部材を設けたり、鏡面処理を施したりすることもできる。これにより、ヒータ25から補強部材23に向かう熱(補強部材23を加熱する熱)が加熱部材22の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21(加熱部材22)の加熱効率がさらに向上することになる。
このように、本実施の形態1における定着装置20は、定着ベルト21の一部のみが局所的に加熱されることなく、加熱部材22によって定着ベルト21が周方向にわたってほぼ全体的に加熱されることになるために、装置を高速化した場合であっても定着ベルト21が充分に加熱されて定着不良の発生を抑止することができる。すなわち、比較的簡易な構成で効率よく定着ベルト21を加熱できるために、ウォームアップ時間やファーストプリント時間が短縮化されるとともに、装置の小型化が達成される。なお、本実施の形態1において特徴的な、加熱部材22の製造方法については、後で図4を用いて詳述する。
また、加熱部材22と定着ベルト21とが摺接しても定着ベルト21の磨耗が軽減されるように、加熱部材22の摺接面を摩擦係数の低い材料で形成したり、双方の部材21、22の間にシリコーンオイルやフッ素グリス等の潤滑剤を塗布したりすることもできる。
また、本実施の形態1では、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径と同等になるように形成したが、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも小さくなるように形成することもできる。その場合、ニップ部における定着ベルト21の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるために、ニップ部から送出される記録媒体Pが定着ベルト21から分離され易くなる。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、ヒータ25に電力が供給されるとともに、加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、加熱部材22(ヒータ25)によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強された加熱部材22と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
本実施の形態1では、薄肉であって略パイプ状の加熱部材22が、切削加工ではなく、金属板を曲げ加工して形成されている。
詳しくは、まず、図4(A)に示すように、薄肉の金属板120が用意される。この金属板120は、加熱部材22の展開図に相当するように裁断(切断加工)されたものである。そして、この金属板120をプレス加工機(曲げプレス型)に載置して、曲げ加工(曲げプレス加工)によって、図4(B)に示すような所望の形状の加熱部材22を成形する。具体的には、金属板120の両端部120a、120bを合わせるように、さらにニップ部に対応する位置22bが平面状になるように、略パイプ状の加熱部材22を形成する。
また、薄肉パイプ状の加熱部材22を形成する場合、ニップ部22bの形状を削り出しにより形成するのは難しい。特に、ニップ部の形状が自由曲線である場合には、ニップ部を切削加工により形成することは極めて難しい。これに対して、本実施の形態1では、金属板120に対するプレス加工でニップ部形状を形成しているため、ニップ部形状が自由曲線であっても精度よく安価に形成することができる。
これに対して、本実施の形態1では、加熱部材22の肉厚を1mm以下に設定する場合、板厚が1mm以下の金属板120を曲げ加工して加熱部材22を形成することになるために、2次加工が不要である上に、上述した不具合が発生しない。
これに対して、本実施の形態1では、上述の条件の加熱部材22を形成する場合、板厚が0.4mm以下のアルミニウム又はその合金からなる金属板120を曲げ加工することにより、不具合なく加熱部材22を形成することができる。なお、肉厚が0.4mm以下のアルミニウム又はその合金で形成された加熱部材22を用いることで、定着ベルト21(加熱部材22)の加熱効率がさらに高まり、定着装置のウォームアップ時間がさらに短縮される。
なお、本願において、「定着部材の内周面に対向する」状態とは、定着部材の内周面の全域に対向している状態のほか、定着部材の内周面のほとんどに対向している状態も含むものとする。したがって、本実施の形態1のように、両端部21aに僅かな隙間がある場合も、「定着部材の内周面に対向する」状態であるものとする。
また、上述のように、金属板120の両端120a、120bが当接するように曲げ加工をおこなった後に両端120a、120bを接合して加熱部材22を形成する場合、その接合位置(溶接位置)が定着ベルト21から離間するように形成することが好ましい。これにより、接合加工により加熱部材22の外周面に僅かな突起が形成されてしまっても、その突起に定着ベルト21が摺接して定着ベルト21の内周面が損傷する不具合が抑止される。
図5にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図5は、実施の形態2における定着装置を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態2における定着装置は、主として、ニップ部を形成する当接部材26を加熱部材22とは別に設けている点と、ニップ部の形状が凹状になるように形成している点と、が前記実施の形態1のものとは相違する。
金属板を曲げ加工することにより形成する略パイプ状の加熱部材22は、その肉厚を薄くすることができるために、ウォームアップ時間を短縮することができる。しかし、加熱部材22自身の剛性は小さくなっているため、加圧ローラ31の加圧力に抗しきれずに、撓んだり、変形することがある。パイプ状の加熱部材22が変形してしまうと所望のニップ幅が得られずに、定着性が低下するという問題が生じる。これに対して、本実施の形態2では、薄肉の加熱部材22とは別に高剛性の当接部材26を設置してニップ部を形成しているために、そのような問題が生じるのを未然に防止することができる。
本実施の形態2では、定着ベルト21と加熱部材22とがほぼ全周にわたって近接しているため、加熱待機時(プリント動作待機時)においても定着ベルト21を周方向に温度ムラなく加熱できる。したがって、プリント要求を受けた後、速やかにプリント動作をおこなうことができる。このとき、特許文献2等のオンデマンド方式の定着装置では、ニップ部で加熱待機時に加圧ローラを変形させたまま熱を与えてしまうと、加圧ローラのゴムの材質によっては、熱劣化を起こして加圧ローラの寿命が短くなってしまったり、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生してしまったりする(ゴムの圧縮永久ひずみは、ゴムの変形に加熱が加わることにより増大する。)。そして、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生すると、加圧ローラの一部が凹んだ状態になり、所望のニップ幅が得られないため、定着不良が発生したり、回転時に異音が生じたりする。
これに対して、本実施の形態2では、当接部材26と加熱部材22との間に断熱部材27が設置されているために、加熱待機時に加熱部材22の熱が当接部材26に達しにくくなる。したがって、加熱待機時に加圧ローラ31が変形した状態で高温加熱される不具合が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
これに対して、本実施の形態2では、当接部材26と加熱部材22との間に断熱部材27が設置されているために、加熱部材22の熱がニップ部の潤滑剤に達しにくくなる。したがって、潤滑剤の高温による劣化が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
加熱部材22は、ニップ部を除く位置で、定着ベルト21の内周面の全域に対向することになる。
図6にて、この発明の実施の形態3について詳細に説明する。
図6は、実施の形態3における定着装置を示す構成図であって、前記実施の形態2における図5に相当する図である。本実施の形態3における定着装置は、加熱部材22が電磁誘導によって加熱される点が、前記実施の形態2のものとは相違する。
ここで、本実施の形態3における定着装置20は、熱源としてのヒータ25の代わりに、誘導加熱部50が設置されている。そして、本実施の形態3における加熱部材22は、熱源25の輻射熱によって加熱される前記実施の形態2のものとは異なり、誘導加熱部50による電磁誘導によって加熱される。
定着ベルト21が図6中の矢印方向に回転駆動されると、定着ベルト21は誘導加熱部50との対向位置で加熱される。詳しくは、励磁コイルに高周波の交番電流を流すことで、加熱部材22の周囲に磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このとき、加熱部材22表面に渦電流が生じて、加熱部材22自身の電気抵抗によってジュール熱が発生する。このジュール熱によって、加熱部材22が電磁誘導加熱されて、さらに加熱された加熱部材22によって定着ベルト21が加熱される。
なお、加熱部材22を効率的に電磁誘導加熱するためには、誘導加熱部50を加熱部材22の周方向全域に対向するように構成することが好ましい。また、加熱部材22の材料としては、ニッケル、ステンレス、鉄、銅、コバルト、クロム、アルミニウム、金、白金、銀、スズ、パラジウム、これらのうち複数の金属からなる合金、等を用いることができる。
さらに、加熱部材22自身を抵抗発熱体とすることもできる。具体的に、加熱部材22を薄肉の抵抗発熱体で形成して、その両端部に電源部を接続する。そして、加熱部材(抵抗発熱体)に電流が流されると、加熱部材自身の電気抵抗によって抵抗発熱体が昇温して、定着ベルト21が加熱されることになる。
これらの場合にも、加熱部材22を金属板の曲げ加工により形成することで、各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
図7及び図8にて、この発明の実施の形態4について詳細に説明する。
図7は、実施の形態4における定着装置に設置される加熱部材22を示す斜視図であって、前記実施の形態1における図4(B)に相当する図である。図8は、図7の加熱部材22の加工前の金属板120を示す平面図である。
本実施の形態4における加熱部材は、その表面に複数の孔22cに形成されている点が、前記実施の形態1のものとは相違する。
そして、図7に示すように、本実施の形態4における加熱部材22は、その表面の全域にわたって複数の孔22cが設けられている。詳しくは、図8を参照して、本実施の形態4における加熱部材22は、複数の孔120cを有する金属板120を曲げ加工して形成したものである。本実施の形態4では、複数の孔120c(22c)は円形であって、その直径が3mmに設定されている。なお、複数の孔の形状、大きさ、数は、本実施の形態4のものに限定されることはない。
ただし、定着ベルト21において、孔22cの位置に対応する領域と、孔22cの位置に対応しない領域と、では熱伝導によりそれ程大きな温度差が生じることはないが、さらに温度差をなくしたい場合には定着ベルト21を回転させながら加熱するのが好ましい。
また、複数の孔22cが形成された加熱部材22を用いる場合には、定着ベルト21と加熱部材22との間に潤滑剤を塗布しないほうがよい。これは、定着ベルト21の内周面が急速に加熱されるために、潤滑剤が耐熱温度を超えて劣化しやすくなるためである。
これは、加熱部材22に孔22cを開けることにより、孔22cの開いた部分では熱源25による熱エネルギーが定着ベルト21に直接照射されて急速に温度が上昇し、孔22cの開いていない部分では加熱部材22からの受熱により間接的に定着ベルト21が加熱されるためである。このとき、定着ベルト21は周方向に回転するので、周方向の温度分布はほぼ均一化されるが、幅方向には開口が大きい領域ほど早く昇温してしまう。したがって、加熱部材22の幅方向断面(金属板120の展開図に相当する。)において、複数の孔22c(120c)の面積をそれぞれ同一にするとともに、複数の孔22cを斜め方向(本実施の形態4では、約45度である。)に格子状に規則正しく配列することで、定着ベルト21における幅方向の温度ムラを低減することができる。なお、定着ベルト21の幅方向の温度分布が不均一になると、温度の高い部分ではホットオフセットが発生し、温度の低い部分では定着不良が生じることになる。
図9〜図12にて、この発明の実施の形態5について詳細に説明する。
図9は、実施の形態5における定着装置を示す構成図であって、前記実施の形態2における図5に相当する図である。図10は、図9の定着装置のニップ部の近傍を示す拡大図である。図11は、潤滑剤保持部材を示す平面図である。さらに、図12は、別の形態の定着装置を示す構成図である。
本実施の形態5における定着装置は、当接部材26に多孔質状の潤滑剤保持部材29が設置されている点が、前記実施の形態2のものとは相違する。
ここで、本実施の形態5では、当接部材26に多孔質状の潤滑剤保持部材29が設置されている。詳しくは、潤滑剤保持部材29は、フッ素繊維を編み込んだメッシュ状のシート部材であって、シリコーンオイルやフッ素グリス等の潤滑剤が保持(含浸)されている。そして、潤滑剤保持部材29は、ニップ部において定着ベルト21の内周面に当接するように配設されている。すなわち、潤滑剤保持部材29は、当接部材26と定着ベルト21との間に配設されている。
なお、本実施の形態5では、断熱部材27によって覆われたニップ部にのみ潤滑剤保持部29を設置しているために、ニップ部以外の位置であって定着ベルト21と加熱部材22との間に潤滑剤保持部材を設置する場合に比べて、加熱部材22による定着ベルト21の加熱を妨げることなく双方の部材21、22間の潤滑性を向上させることができる。
ここで、上述した潤滑剤の循環経路は、定着ベルト21と加熱部材22との隙間が、ニップ部の入口側(図10のA部である。)においてニップ部に向けて漸減するように形成されている。すなわち、図10に示すように、ニップ部の入口側において、定着ベルト21と加熱部材22との隙間が楔状に形成されている。
また、動圧を受けた潤滑剤は、ニップ部に設けられた多孔質状の潤滑剤保持部29に供給される。そして、流し込まれた潤滑剤の圧力によって、潤滑剤保持部材29に保持された潤滑剤が定着ベルト21の内周面に均質に染み出させることになる。したがって、ニップ部における定着ベルト21の内周面に均質な油膜が形成されて、定着ベルト21の摺動劣化に対する耐久性が向上する。
また、上述した循環経路を潤滑剤が円滑に流動するために、加熱部材22の外周面は凹凸が少なく平滑であることが好ましい。
さらに、上述した循環経路は、ニップ部の入口側から上流側に10mm以上の範囲Hで角度θが2度以下になるように楔状に形成することが好ましい。このような構成により、上述した油膜形成(耐久性)の効果が確実に達成されることになる。
具体的に、潤滑剤保持部材としても機能する当接部材26を形成する材料としては、加圧ローラ31による加圧力を受けても大きく撓むことがないようにある程度剛性のある多孔質材料であって、潤滑剤を保持(含浸)する材料を用いることができる。潤滑剤保持部材としても機能する当接部材26としては、例えば、発泡シリコンゴム等の耐熱性多孔質体を用いることが可能である。
なお、本実施の形態5では、当接部材26を断面形状が矩形状になるように形成したが、当接部材26の形状はこれに限定されることなく、例えば、当接部材26を断面形状が半円状になるように形成することもできる。
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着部材)、
22 加熱部材、
22a 両端部、 22c 孔、
23 補強部材、
25 ヒータ(熱源)、
26 当接部材、
27 断熱部材、
29 潤滑剤保持部材、
31 加圧ローラ(加圧部材)、
50 誘導加熱部、
120 金属板、
120a、120b 端部、 120c 孔、 P 記録媒体。
Claims (15)
- 所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融するとともに、可撓性を有する無端状の定着部材と、
前記定着部材の内周面に対向するように固設されて当該定着部材を加熱する加熱部材と、
前記定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
を備え、
前記加熱部材は、金属板の両端が当接するように曲げ加工をおこなった後に当該両端を接合したものであって、その接合位置が前記定着部材から離間するように形成されたことを特徴とする定着装置。 - 前記加熱部材は、前記ニップ部に対応する位置が平面状又は凹状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記加熱部材は、板厚が1mm以下の金属板を曲げ加工して形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
- 前記金属板は、板厚が0.4mm以下のアルミニウム又はその合金からなることを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
- 前記加熱部材は、複数の孔を有する金属板を曲げ加工して形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の定着装置。
- 前記複数の孔は、前記定着部材における幅方向の温度分布が均一になるように配列され形成されたことを特徴とする請求項5に記載の定着装置。
- 前記定着部材の内周面側に固設されて当該定着部材を介して前記加圧部材に当接してニップ部を形成する当接部材を前記加熱部材とは別に備え、
前記加熱部材は、前記ニップ部を除く位置で前記定着部材の内周面に対向するように形成されたことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の定着装置。 - 前記当接部材は、装置に対して着脱自在に設置されたことを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
- 前記当接部材と前記加熱部材との間に断熱部材を設置したことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の定着装置。
- 前記加熱部材は、熱源の輻射熱によって加熱されることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着装置。
- 前記加熱部材は、電磁誘導によって加熱されることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着装置。
- 前記加熱部材は、抵抗発熱体の熱によって加熱されることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着装置。
- 前記加熱部材は、抵抗発熱体であることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載の定着装置。
- 前記定着部材は、定着ベルト又は定着フィルムであることを特徴とする請求項1〜請求項13のいずれかに記載の定着装置。
- 請求項1〜請求項14のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
Priority Applications (2)
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