以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
先ず、図1には、本発明に係る流体封入式防振装置の第一の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、防振連結される一方の部材に取り付けられる第一の取付部材としての第一の取付金具12と、防振連結される他方の部材に取り付けられる第二の取付部材としての第二の取付金具14が、本体ゴム弾性体16で相互に弾性連結された構造を有している。そして、例えば、第一の取付金具12が防振連結される一方の部材である自動車のパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付金具14が防振連結される他方の部材である自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットが車両ボデーによって防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、主たる振動入力方向である図1中の上下方向を言うものとする。
より詳細には、第一の取付金具12は、鉄やアルミニウム合金等の金属材で形成された高剛性の部材とされており、略円形ブロック形状を有している。また、第一の取付金具12の上端部には、径方向外方に向かって広がるフランジ部18が一体形成されている。更に、第一の取付金具12の上端面に開口して中心軸上を延びるようにボルト穴20が形成されており、ボルト穴20の内周面には雌ねじが刻設されている。そして、第一の取付金具12は、例えば、ボルト穴20に螺着される図示しない取付ボルトによって図示しないパワーユニットにボルト固定されるようになっている。
一方、第二の取付金具14は、第一の取付金具12と同様の金属材で形成された高剛性の部材とされており、全体として薄肉大径の略円筒形状を有している。また、第二の取付金具14の軸方向中間部分には、くびれ部22が設けられている。くびれ部22は、軸方向下方に向かって次第に縮径するテーパ部24と、テーパ部24の下端部から外周側に向かって広がる環状の段差部26を含んで構成されている。また、第二の取付金具14の下端部には、外周側に向かって広がる環状の段差28が形成されており、段差28の外周縁部には下方に向かって延び出す大径円筒形状のかしめ片29が一体形成されている。このような第二の取付金具14は、例えば、第二の取付金具14に外嵌固定される図示しないブラケットが車両ボデーに取り付けられること等により、車両ボデーに固定されるようになっている。
このような第一の取付金具12と第二の取付金具14は、同一中心軸上に配設されると共に、第一の取付金具12が第二の取付金具14に対して軸方向上方に離隔配置される。そして、それら第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に本体ゴム弾性体16が介装されることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で弾性的に連結されている。
本体ゴム弾性体16は、厚肉の略円錐台形状を有するゴム弾性体で形成されている。また、本体ゴム弾性体16の径方向中央部分には、大径側端面(図1中、下側の端面)に開口するように大径の円形凹所30が形成されている。このような本体ゴム弾性体16の小径側端部には、第一の取付金具12が差し込まれており、フランジ部18の下面が本体ゴム弾性体16の小径側の軸方向端面に重ね合わされるようにして加硫接着されている。一方、本体ゴム弾性体16の大径側端部の外周面には、第二の取付金具14の上部およびテーパ部24が重ね合わされて加硫接着されている。これにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が本体ゴム弾性体16で相互に連結されている。なお、本実施形態における本体ゴム弾性体16は、第一の取付金具12と第二の取付金具14を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。
さらに、本体ゴム弾性体16と一体形成されたシールゴム層32が第二の取付金具14の内周面に固着せしめられている。シールゴム層32は、薄肉のゴム膜で形成されており、第二の取付金具14における段差部26の内周面から段差28の内周縁部に亘る部位を覆うように被着形成されている。
また、第二の取付金具14の下端開口部には、可撓性膜としてのダイヤフラム34が配設されている。ダイヤフラム34は、薄肉大径の略円形ドーム形状を有するゴム膜で形成されており、弾性変形が容易に許容されるようになっている。また、ダイヤフラム34の外周縁部には、固定金具36が固着されている。固定金具36は、略円環形状を有しており、筒状の固着部38と該固着部38の上端から外周側に向かって広がるかしめ部40を一体的に備えている。そして、固定金具36の固着部38に対してダイヤフラム34の外周縁部が加硫接着されることにより、ダイヤフラム34が固定金具36を一体的に備えた一体加硫成形品として形成されている。なお、本実施形態では、かしめ部40の外周縁部と上端面を除く略全面に亘って固定金具36がダイヤフラム34と一体形成されたゴム層で覆われている。
このようなダイヤフラム34は、第二の取付金具14に組み付けられる。即ち、固定金具36におけるかしめ部40の外周縁部が、第二の取付金具14の下端部に設けられた段差28に対して下方から重ね合わされると共に、かしめ部40が第二の取付金具14に一体形成されたかしめ片29によってかしめ固定されることにより、ダイヤフラム34が第二の取付金具14の下端部に固定されるようになっている。
このように、ダイヤフラム34が第一の取付金具12と第二の取付金具14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品に対して組み付けられることにより、第二の取付金具14の軸方向上側の開口部が本体ゴム弾性体16で流体密に閉塞されていると共に、第二の取付金具14の軸方向下側の開口部がダイヤフラム34で流体密に閉塞されている。これにより、第二の取付金具14の内周側において本体ゴム弾性体16とダイヤフラム34の軸方向間には、外部から密閉された流体室としての流体封入領域42が形成されている。
また、流体封入領域42には、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いはそれらの混合液等の非圧縮性流体が封入流体として封入されている。なお、封入流体は、特に限定されるものではないが、後述するオリフィス通路82を流動せしめられる流体の共振作用等に基づく防振効果を有利に得るために、粘度が0.1Pa・s以下の低粘性流体を採用することが望ましい。なお、このような流体の封入は、ダイヤフラム34の第二の取付金具14(第二の取付金具14を備えた本体ゴム弾性体16の一体加硫成形品)への組付けを非圧縮性流体中で行うことにより、有利に実現することが出来る。
また、流体封入領域42には、仕切部材44が収容配置されている。仕切部材44は、厚肉の略円板形状を有しており、本実施形態では、仕切金具本体46と蓋金具48を備えている。
仕切金具本体46は、全体として厚肉の略円板形状を有しており、その外周縁部が下方に向かって突出せしめられている。また、仕切金具本体46の径方向中間部分には、周溝52が形成されている。周溝52は、仕切金具本体46の上面に開口する凹溝であって、周方向に所定の長さで延びるように形成されている。
また、仕切金具本体46の径方向中央部分には、上方に向かって開口する円形の中央凹所54が形成されていると共に、中央凹所54の底壁部の中央を貫通する中央孔56が形成されている。中央孔56は、一定の円形断面を有しており、仕切金具本体46の径方向中央部分を軸方向に貫通するように形成されている。更に、中央孔56の開口周縁部には、中央突条58が仕切金具本体46と一体形成されている。中央突条58は、周方向に延びる円環形状を有しており、中央凹所54の底壁部の内周縁部から上方に向かって突出せしめられている。なお、仕切金具本体46の内周縁部に中央突条58が設けられることにより、中央突条58と中央凹所54の壁部の協働によって、周方向に全周に亘って延びて上方に向かって開口する凹溝が設けられている。
一方、蓋金具48は、薄肉大径の板状とされており、本実施形態では、中央部分が外周部分よりも上方に位置せしめられた段付きの円板形状を有している。また、蓋金具48の径方向中央部分には、貫通孔60が形成されている。貫通孔60は、仕切金具本体46の中央孔56と略等しい直径で形成された円形の孔であって、蓋金具48の径方向中央部分を板厚方向で貫通するように形成されている。また、貫通孔60の開口周縁部には、支持突条62が一体形成されている。支持突条62は、全周に亘って延びる円環形状を有しており、蓋金具48の内周縁部から下方に向かって突出するように形成されている。
そして、蓋金具48は、仕切金具本体46の上端面に対して上方から重ね合わされて組み合わされている。これにより、仕切金具本体46の上端面に開口するように形成された周溝52の上側開口部が蓋金具48で覆蓋されて、周方向に所定の長さで延びるトンネル状の流路が形成されている。
また、これら仕切金具本体46と蓋金具48の間には、可動ゴム膜64が配設されている。可動ゴム膜64は、図2,3に示されているように、略円板形状のゴム弾性体で形成されており、本実施形態では、可動ゴム膜64の中央部分が略一定の厚さで形成されていると共に、外周部分が外周側に行くに従って次第に厚肉となっている。また、可動ゴム膜64の外周縁部には、厚さ方向両側に突出する環状支持部66が一体形成されており、角部を湾曲状に面取り加工された略四角形の断面形状で全周に亘って連続的に設けられている。なお、本実施形態における環状支持部66は、略一定の断面形状を全周に亘って延びている。
さらに、可動ゴム膜64の径方向中央部分には、スリットとしての短絡スリット72が形成されている。短絡スリット72は、可動ゴム膜64の径方向中央から可動ゴム膜64の平面視で略放射状に延びて、可動ゴム膜64を厚さ方向で貫通する切れ込みによって構成されており、本実施形態では、直線的に延びる4本の切れ込みによって短絡スリット72が形成されている。
また、本実施形態では、4本の切れ込みが周方向で等間隔に形成されており、周方向で隣り合う切れ込みが相互に直角をなしている。これにより、図2に示されているように、可動ゴム膜64には、マウント軸方向視で十文字状の短絡スリット72が形成されている。
そして、本実施形態における可動ゴム膜64の中央部分は、短絡スリット72によって周方向で等間隔に4分割された状態となっている。ここで、静置状態下では、短絡スリット72によって周方向で等間隔に4分割された可動ゴム膜64の中央部分が軸直角方向に広がった状態に維持されており、短絡スリット72が可動ゴム膜64の弾性に基づいて閉鎖された状態となっている。
また、本実施形態において、短絡スリット72の端部には、亀裂防止孔74が形成されている。亀裂防止孔74は、図2,3に示されているように、略一定の断面形状でマウント軸方向に直線的に延びる小径の円形孔であって、可動ゴム膜64を厚さ方向に貫通して形成されている。また、亀裂防止孔74は、短絡スリット72の外側端部に設けられており、本実施形態では、周方向に等間隔で4つの亀裂防止孔74が形成されている。なお、ここで言う短絡スリット72の端部とは、短絡スリット72を構成する4本の切れ込みの端部であって、他の切れ込みと連接されていない径方向外側の端部を言う。
なお、亀裂防止孔74の軸方向での投影面積(図2における亀裂防止孔74の面積)は、可動ゴム膜64の環状支持部66よりも内周側に位置する部分である変形許容部分のマウント軸方向での投影面積(図2における当該部分の面積)に対して、0.2%以上且つ1.4%以下とされていることが望ましく、より好適には、0.4%以上且つ1.2%以下とされている。蓋し、亀裂防止孔74が可動ゴム膜64のサイズに対して大き過ぎると、後述する防振対象振動の入力時にも、亀裂防止孔74を通じての流体流動が生ぜしめられて、後述するオリフィス通路82を通じての流体流動が有効に惹起されず、目的とする防振性能を実現できないおそれがある。一方、亀裂防止孔74が小さ過ぎると、短絡スリット72の端部における応力集中の緩和作用が、充分に発揮されないおそれがあるからである。
ここにおいて、可動ゴム膜64に形成された短絡スリット72の端部である亀裂防止孔74よりも外側には、補強突部としての補強リブ76が設けられている。補強リブ76は、可動ゴム膜64の径方向中間部分において可動ゴム膜64と一体形成されたゴム弾性体の突部であって、可動ゴム膜64の厚さ方向両側に向かって突出せしめられている。本実施形態において、補強リブ76は、可動ゴム膜64の厚さ方向両側に向かってそれぞれ等しい高さで突出せしめられている。また、本実施形態において、補強リブ76の基端部分が、軸直角方向に広がる可動ゴム膜64に対して略直交して軸方向で立ち上がっている。更に、本実施形態における補強リブ76は、それぞれ略一定の半円形断面をもって周方向に延びており、突出先端側に行くに従って次第に狭幅となっている。
また、本実施形態における補強リブ76は、周方向で連続的に形成されて全体として略環状を呈している。このような環状の補強リブ76によって、可動ゴム膜64が径方向の中間部分において部分的に厚肉となっている。
また、環状とされた補強リブ76は、短絡スリット72の外周側を全周に亘って取り囲むように形成されており、可動ゴム膜64の径方向中央から放射状に径方向で延びる短絡スリット72の延長線に対して、補強リブ76が直交して設けられている。なお、本実施形態では、図2,3に示されているように、短絡スリット72の端部が、補強リブ76の基端部の内周面にまで至る長さで形成されており、補強リブ76に対して短絡スリット72の端部が接するように形成されている。
さらに、本実施形態では、図3に示されているように、補強リブ76で囲繞された可動ゴム膜64の中央部分が略一定の厚さで形成されていると共に、可動ゴム膜64における補強リブ76よりも外周側に位置する部分が、補強リブ76に近付くにつれて、換言すれば内周側に行くに従って、次第に薄肉となっている。そして、略一定の厚さとされた可動ゴム膜64の中央部分(可動ゴム膜64における補強リブ76の内周側部分)に対して、短絡スリット72および亀裂防止孔74が形成されていると共に、径方向で厚さが変化せしめられた可動ゴム膜64の外周部分によって補強リブ76と環状支持部66が径方向で相互に連結されている。
なお、補強リブ76は、その幅と高さ(下方への突出先端から上方への突出先端までの距離)が、所定の大きさとされることが望ましい。即ち、可動ゴム膜64の直径が25mmとされた本実施形態では、補強リブ76の幅が1mm〜4mmとされることが望ましいと共に、補強リブ76の高さが3mm〜8mmとされることが望ましい。より好適には、補強リブ76の幅が3mmとされると共に、高さが6mmとされる。蓋し、補強リブ76の幅や高さが大き過ぎると、可動ゴム膜64の膜剛性が大きくなりすぎて、短絡スリット72の開閉作動に悪影響を及ぼす一方、幅や高さが小さ過ぎると、後述する亀裂防止作用が充分には得られないおそれがあるからである。
そして、このような本実施形態に係る可動ゴム膜64は、仕切金具本体46と蓋金具48の間で挟持されて、それら金具46,48に組み付けられている。即ち、可動ゴム膜64が仕切金具本体46の中央部分に形成された中央凹所54に嵌め付けられて、可動ゴム膜64の外周縁部に設けられた環状支持部66が中央凹所54の周壁部と中央突条58の径方向間で位置決め支持されると共に、仕切金具本体46と仕切金具本体46に対して上方から重ね合わされる蓋金具48との間で環状支持部66が挟み込まれることにより、可動ゴム膜64が仕切金具本体46と蓋金具48に対して外周部分を固定的に支持された状態で取り付けられている。
かかる可動ゴム膜64の仕切金具本体46および蓋金具48への組付け状態下においては、仕切金具本体46と蓋金具48によって可動ゴム膜64の外周縁部が固定的に支持されると共に、可動ゴム膜64の径方向中央部分が、仕切金具本体46に形成された中央孔56と蓋金具48に形成された貫通孔60を覆うように位置せしめられている。これにより、可動ゴム膜64は、外周縁部が固定された状態で、径方向中央部分が中央孔56および貫通孔60を通じて軸方向で弾性変形可能とされている。そして、このように中央孔56と貫通孔60が可動ゴム膜64で遮断されることにより、可動ゴム膜64を備えた本実施形態に係る仕切部材44が構成されている。なお、本実施形態においては、可動ゴム膜64の外周縁部に形成された環状支持部66が仕切部材44に拘束されており、短絡スリット72および亀裂防止孔74が形成された可動ゴム膜64の中央部分は、中央孔56と貫通孔60の延長上に位置せしめられて、軸方向での変形が許容されている。
また、可動ゴム膜64に形成された亀裂防止孔74は、可動ゴム膜64の仕切部材44への装着状態において、常時連通状態とされている。
このような構造とされた仕切部材44は、第二の取付金具14に支持されて流体封入領域42に収容配置されている。即ち、ダイヤフラム34が第二の取付金具14に組み付けられる前に、仕切部材44が第二の取付金具14に対して下側開口部から挿し入れられて、第二の取付金具14に設けられた段差部26に対してシールゴム層32を介して下方から当接せしめられる。そして、第二の取付金具14に対して八方絞り等の縮径加工を施すことにより、仕切部材44が第二の取付金具14に対して嵌着固定されて支持されるようになっている。
なお、本実施形態では、仕切部材44が第二の取付金具14に組み付けられた状態で、ダイヤフラム34が第二の取付金具14に対して組み付けられる。そして、かしめ部40の内周縁部上面が仕切金具本体46の外周縁部下面に当接せしめられることにより、ダイヤフラム34と仕切部材44が相対的に位置合わせされると共に、仕切部材44が段差部26と固定金具36の軸方向間で挟み込まれて位置決めされるようになっている。
また、仕切部材44がシールゴム層32を介して第二の取付金具14で支持されることにより、仕切部材44と第二の取付金具14の間が流体密にシールされた状態で、仕切部材44が第二の取付金具14に対して組み付けられている。これにより、仕切部材44が流体封入領域42内に収容配置された組付け状態下においては、流体封入領域42が仕切部材44を挟んだ両側に二分されている。そして、仕切部材44を挟んだ一方の側(図1中、上)に、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動の入力に際して圧力変動が及ぼされる受圧室78が形成されていると共に、仕切部材44を挟んだ他方の側(図1中、下)に、壁部の一部がダイヤフラム34で構成されて、容積変化が容易に許容される平衡室80が形成されている。なお、両室78,80には、それぞれ流体封入領域42に封入された非圧縮性流体が充填されている。
また、周溝52の開口部を蓋金具48で覆うことにより形成されるトンネル状の流路は、その一方の端部が蓋金具48に形成された図示しない連通孔を通じて受圧室78に連通せしめられると共に、他方の端部が仕切金具本体46に形成された図示しない連通孔を通じて平衡室80に連通せしめられる。これにより、仕切部材44に形成された周溝52を利用して、受圧室78と平衡室80を相互に連通するオリフィス通路82が形成されている。
なお、本実施形態におけるオリフィス通路82は、内部を流動せしめられる流体の共振周波数が10Hz程度の低周波数となるようにチューニングされており、自動車のエンジンシェイク等に相当する低周波数振動に対して、オリフィス通路82を通じて流動する流体の共振作用等の流動作用に基づく防振効果が有効に発揮されるようになっている。このようなオリフィス通路82のチューニングは、オリフィス通路82の通路長と通路断面積の比を適当に調節することにより、設定することが出来る。
また、仕切部材44が第二の取付金具14に対して組み付けられた状態においては、可動ゴム膜64の径方向中央部分における一方の面に対して、蓋金具48に形成された貫通孔60を通じて受圧室78内の圧力が及ぼされるようになっている。一方、可動ゴム膜64の径方向中央部分における他方の面に対しては、仕切金具本体46に形成された中央孔56を通じて平衡室80内の圧力が及ぼされるようになっている。これにより、可動ゴム膜64が受圧室78と平衡室80の相対的な圧力差に基づいて弾性変形せしめられるようになっており、中乃至高周波小振幅振動の入力に際して受圧室78に及ぼされる圧力変動を平衡室80側に逃して吸収する液圧吸収機構が、可動ゴム膜64によって構成されている。
なお、振動の非入力状態下では、短絡スリット72が形成された可動ゴム膜64の中央部分が全体に亘って軸直角方向に広がっており、可動ゴム膜64に形成された短絡スリット72が閉塞状態に保持されている。また、亀裂防止孔74は、その両端部が常時受圧室78と平衡室80に向かって開口せしめられているが、その直径や長さ等を適当に調節することにより、流体の流動が防振性能に影響しない程度に抑えられており、亀裂防止孔74が実質的な閉塞状態とされている。
このような本実施形態に従う構造とされた自動車用エンジンマウント10は、第一の取付金具12が図示しないパワーユニットに取り付けられると共に、第二の取付金具14が図示しない車両ボデーに取り付けられる。そして、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に主たる振動入力方向である上下方向で振動荷重が入力されると、流体の流動作用等に基づいて目的とする防振効果が発揮されるようになっている。
すなわち、自動車の走行時において、エンジンシェイク等の低周波大振幅振動が第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に入力されると、本体ゴム弾性体16が弾性変形せしめられて、受圧室78内に圧力変動が及ぼされる。これにより、エンジンシェイク等に相当する低周波数域にチューニングされたオリフィス通路82を通じて、受圧室78と平衡室80の間で封入流体が流動せしめられて、流体の共振作用等の流動作用に基づいた高減衰効果等の防振効果が有効に発揮される。なお、低周波数域の振動入力に際しては、入力振動の振幅が大きいことから、可動ゴム膜64の微小な弾性変形による液圧吸収効果が有効に発揮されない。それ故、受圧室78に充分な内圧変動が及ぼされて、オリフィス通路82を通じての流体流動を有利に生ぜしめることが出来る。
一方、自動車の停車時等において、アイドリング時振動などの中乃至高周波小振幅振動が第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に入力されると、受圧室78と平衡室80の間で相対的な圧力差が生ぜしめられて、かかる圧力差に基づいて可動ゴム膜64が微小変形せしめられる。そして、可動ゴム膜64の微小変形によって受圧室78内の液圧が平衡室80側に伝達される。これにより、可動ゴム膜64の微小な弾性変形による液圧吸収作用に基づいた低動ばね効果等の防振効果が有効に発揮される。
なお、本実施形態において、防振対象となる通常の振動荷重が入力されることにより可動ゴム膜64が変形せしめられる際には、可動ゴム膜64に形成された短絡スリット72が閉塞状態に維持されるようになっている。このような閉塞状態は可動ゴム膜64の曲げ弾性によって実現されており、可動ゴム膜64のゴム材料やサイズ,形状等を適当に設定することによって、防振対象振動の入力によって及ぼされる外力に抗して短絡スリット72が遮断状態に保持されるようになっている。
また、本実施形態では、可動ゴム膜64における補強リブ76よりも外周部分が、径方向内側に行くに従って次第に薄肉となっており、補強リブ76に接続される部分が充分に薄肉となっている。これにより、補強リブ76の形成によって比較的に剛性が高くなり易い可動ゴム膜64の径方向中央部分を容易に微小変位せしめることが出来るようになっている。
さらに、自動車の走行時における段差の乗越え等により、第一の取付金具12と第二の取付金具14の間に衝撃的な振動荷重が入力されて、受圧室78内の圧力が大幅に低下せしめられると、可動ゴム膜64に形成された短絡スリット72が開口せしめられるようになっている。即ち、受圧室78内が大幅に減圧されると、受圧室78内の負圧が可動ゴム膜64に及ぼされて、可動ゴム膜64に対して受圧室78側への吸引力が作用する。かかる吸引力によって可動ゴム膜64は、受圧室78側に向かって吸引されて受圧室78側に弾性変形せしめられる。
これにより、短絡スリット72が可動ゴム膜64の弾性に抗して開口せしめられて、短絡スリット72を通じて受圧室78と平衡室80が相互に連通せしめられる。そして、受圧室78と平衡室80の間で短絡スリット72を通じての流体流動が生ぜしめられて、受圧室78内の負圧が可及的速やかに解消される。従って、受圧室78内の圧力低下に起因すると考えられる異音や振動の発生を効果的に防ぐことが出来る。
なお、以上の説明からも明らかなように、受圧室78に作用する圧力に応じて短絡スリット72の遮断状態と連通状態が切り換えられるようになっており、可動ゴム膜64の弾性を利用して本実施形態における弁機構が構成されている。本実施形態では、可動ゴム膜64の径方向中央から所定の長さで放射状に延びる4本の短絡スリット72が形成されており、予め設定された受圧室78内の圧力を境界として、遮断状態と連通状態の切り換えが高精度に実現されるようになっている。
ここにおいて、本実施形態に従う構造とされた可動ゴム膜64では、短絡スリット72の外側に、補強リブ76が設けられている。この補強リブ76は、可動ゴム膜64に対して略垂直をなして軸方向に突出せしめられており、短絡スリット72の端部に対して近接した位置に形成されている。このように、補強リブ76が形成されて、短絡スリット72の端部の外側において可動ゴム膜64の厚さが急激に厚肉となっていることにより、短絡スリット72の開閉に伴って短絡スリット72の端部に生じる可動ゴム膜64の亀裂が、短絡スリット72の延長線方向に進展するのを、補強リブ76の形成箇所で有利に止めることが出来る。これによって、可動ゴム膜64の耐久性を向上せしめることが出来ると共に、短絡スリット72の開口許容領域を安定して初期の状態に維持することが出来て、目的とするキャビテーション異音の低減効果と防振性能の両立を有効に実現することが可能となる。
しかも、亀裂防止孔74が形成された短絡スリット72の端部が、補強リブ76の内縁に至るように近接して形成されている。これにより、短絡スリット72の端部において亀裂の進行のみならず、発生をも効果的に防ぐことが出来る。従って、目的とするキャビテーション異音の低減効果と防振性能を、何れも有利に実現することが出来る。
さらに、本実施形態においては、全周に亘って連続的に延びる環状の補強リブ76が形成されており、補強リブ76を避けて亀裂が伸長するのを有利に防ぐことが出来る。従って、可動ゴム膜64の耐久性向上と、目的とする防振性能および静粛性を、何れも安定して有利に実現することが可能である。
また、本実施形態では、補強リブ76の内周側において、短絡スリット72の端部に円形の亀裂防止孔74が形成されている。この亀裂防止孔74によって、可動ゴム膜64の弾性変形時における短絡スリット72の端部に対する応力集中が緩和されて、短絡スリット72の端部において可動ゴム膜64に亀裂が生じるのを、より有利に防ぐことが出来る。なお、亀裂防止孔が矩形等の角部を有する断面形状とされていると、角部における応力の集中が問題となり易いが、本実施形態では、亀裂防止孔74が円形孔とされていることにより、応力の集中が有利に緩和されるようになっている。
特に本実施形態では、亀裂防止孔74が可動ゴム膜64の大きさに対して所定の大きさとなるように設定されている。これにより、応力の緩和作用を有効に実現しつつ、通常の振動入力時における亀裂防止孔74を通じた流体流動が防がれて、可動ゴム膜64の亀裂の進展を防ぐと共に目的とする防振効果を有効に実現することが出来る。
なお、表1には、短絡スリット72の長さの変化が防振性能および異音低減効果に及ぼす影響を実測した測定結果が示されている。即ち、第一の実施形態に従う構造とされたエンジンマウント10を±2mmおよび±4mmの振幅で加振した場合における防振性能の低下率と、異音レベルが示されている。
これによれば、先ず、短絡スリット72の長さの変化に対応して防振性能が大きく変化することが分かる。即ち、短絡スリット72が大きくなるに従って、防振性能が著しく低下している。このことから、短絡スリット72の端部に亀裂が生じて、短絡スリット72の実質的な長さが大きくなり、短絡スリット72の開口が大きくなると、目的とする防振性能を実現することは困難であることが明らかとなった。
次に、短絡スリット72の長さの変化に対して異音レベルの変化が比較的に小さいことも明らかとなった。即ち、±4mmの振幅で加振した場合における短絡スリット72の長さが3.5mmの場合と5mmの場合の測定結果からも明らかなように、短絡スリット72が短すぎると、短絡スリット72が充分に開口し得ず、短絡による受圧室78内の負圧の軽減が充分に実現されないことから、異音レベルが高くなってしまう。ところが、充分な長さの短絡スリット72(±4mm加振時の5mm)と、それ以上の長さの短絡スリット72(±4mm加振時の7mm,10mm,15mm)では、異音レベルの変化が緩やかであり、同等程度の異音低減効果が発揮される。
従って、短絡スリット72の長さを必要以上に大きくした場合にも、異音の低減効果は殆ど変化せず、有効な異音低減効果を得られる範囲で出来る限り短い長さの短絡スリット72を形成することにより、目的とする防振性能と異音レベルの低減効果を両立して有効に実現出来ることが、実測により明らかとなった。換言すれば、短絡スリット72の端部に亀裂が生じて短絡スリット72の実質的な長さが大きくなることは、異音の低減という観点において効果的ではないと共に、目的とする防振性能の実現という観点からは極めて不都合であることが、実測によって確認された。
これらから、可動ゴム膜64に形成された短絡スリット72の端部において生じる亀裂を効果的に防いで、短絡スリット72の実質的な長さを初期状態に維持することが可能とされた本実施形態に係るエンジンマウント10は、キャビテーション異音の低減効果と防振効果を両立するという目的において優れた効果を奏するものであり、車室内の静粛性と緩衝性を何れも高度に実現することが可能となるのである。
次に、図4,5には、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウントを構成する可動ゴム膜84が示されている。なお、以下の説明において、前記第一の実施形態と実質的に同一の部材乃至部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
すなわち、図4,5に示された可動ゴム膜84においては、前記第一の実施形態において短絡スリット72の端部に形成されていた亀裂防止孔74を有しておらず、短絡スリット72の端部が直接的に補強リブ76に近接せしめられている。なお、図4,5に示された本実施形態に係る可動ゴム膜84は、前記第一の実施形態における可動ゴム膜64と同様に、自動車用エンジンマウントを構成する仕切部材44に組み付けられる。
このように、短絡スリット72の端部には、必ずしも円形の亀裂防止孔74が形成されていなくても良く、その場合にも、短絡スリット72の外側に形成された補強リブ76によって、短絡スリット72の端部における亀裂の発生を有効に防ぐことが出来る。
また、図6には、本発明の第三の実施形態である自動車用エンジンマウントに採用される可動ゴム膜86が示されている。可動ゴム膜86では、環状とされた補強リブ76の内周側において、直線的に延びて放射状に配列された3本の切れ込みで構成された短絡スリット88が形成されている。特に本実施形態では、短絡スリット88が周方向で等間隔に延びる放射形状を呈しており、各切れ込みが互いに同じ長さとされている。
このように、短絡スリットは、必ずしも相互に直交して延びる4本の切れ込みによって構成されていなくても良く、本実施形態において示されているような3本の切れ込みで構成された短絡スリット88によっても、切れ込みの長さなどを適当に調節することにより、有効なキャビテーション防止効果と、目的とする防振性能を、両立して実現することが可能である。なお、5本以上の切れ込みによって短絡スリットが構成されていても良いことは言うまでもない。
また、図7,8には、本発明に係る流体封入式防振装置における第四の実施形態としての自動車用エンジンマウントを構成する可動ゴム膜90が示されている。即ち、本実施形態における可動ゴム膜90には、周方向で相互に独立する複数の補強リブ92が形成されている。
より詳細には、補強リブ92は、略一定の長円形断面をもって周方向に所定の長さで延びており、可動ゴム膜90の径方向中間部分において厚さ方向両側に向かって突出せしめられている。また、補強リブ92は、短絡スリット72の端部の外側においてそれぞれ1つが形成されており、本実施形態では、周方向に等間隔で4つの補強リブ92が形成されている。
このように長さ方向で独立した複数の補強リブ92を設けた場合にも、短絡スリット72の端部が補強リブ92に近接せしめられていることにより、短絡スリット72の端部における亀裂の発生と伸長を効果的に防ぐことが出来る。しかも、補強リブ92を周方向で分断された形状とすることにより、補強リブ92の形成箇所およびその内周側における可動ゴム膜90の膜剛性を小さくすることが出来て、アイドリング時振動の入力に際して、可動ゴム膜90の微小変形による液圧吸収作用を、有利に発揮せしめることが出来る。
また、図9には、本発明に係る流体封入式防振装置における第五の実施形態としての自動車用エンジンマウントを構成する可動ゴム膜94が示されている。本実施形態に従う構造の可動ゴム膜94では、相互に直列状に連接された2本の切れ込みによって短絡スリット96が構成されている。即ち、図9にも示されているように、直線的に延びる2本の切れ込みが一方の端部において相互に接続された形態を有しており、全体として可動ゴム膜94の平面視において略V字形状に屈曲して延びる短絡スリット96が形成されている。また、短絡スリット96の端部にそれぞれ亀裂防止孔74が形成されていると共に、短絡スリット96における屈折部(折れ部)には、円形の応力緩和孔98が形成されている。本実施形態では、亀裂防止孔74と応力緩和孔98は、同形の円形孔とされている。なお、亀裂防止孔74と応力緩和孔98は、必ずしも同形とされていなくても良く、例えば、断面の大きさが異なっていても良い。
このように、短絡スリットは放射状に形成されていなくても良く、例えば、複数の直線的乃至は曲線的に延びる切れ込みが直列的に連結されて、全体として屈曲して延びる形状とされていても良い。また、このように屈曲する短絡スリット96を採用する場合には、屈曲点(折れ点)となる連接部分(折れ部)に応力緩和孔98を形成することにより、折れ部における応力の集中を緩和して、当該箇所における亀裂の発生および伸長を防ぐことが出来る。
また、図10には、本発明の第六の実施形態に係る可動ゴム膜100が示されている。可動ゴム膜100には、相互に所定の角度で傾斜して直線的に延びる切れ込みの各一方の端部が、曲線的に延びる切れ込みによって相互に連接された形状、換言すれば、湾曲形状とされた切れ込みの両端部からそれぞれ直線的な切れ込みが延び出した形状を有する、短絡スリット102が形成されている。
さらに、図11には、本発明の第七の実施形態に係る可動ゴム膜104が示されている。可動ゴム膜104には、その径方向中央部分に、全体に亘って円弧状に湾曲せしめられた短絡スリット106が形成されている。
これら図10,11に示された可動ゴム膜100,104からも明らかなように、短絡スリットは、可動ゴム膜の平面視においてその一部乃至全部が湾曲状に延びていても良い。このような湾曲部を有する短絡スリットを採用することにより、屈曲状の短絡スリット96に比して、スリットの曲折部における応力の集中が軽減されて、亀裂の発生および伸長を低減することが出来る。
以上、本発明の一実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
例えば、図12に示された可動ゴム膜108のように、3本以上(図12では4本が例示されている)の直線的な切れ込みが直列状に連接されて全体として屈曲状に延びている短絡スリット110を採用することも出来る。なお、このような場合には、短絡スリット110の折れ部にそれぞれ応力緩和孔98を形成することにより、折れ部における応力の集中を緩和し、亀裂の発生を防ぐことが出来る。
また、短絡スリットは、必ずしも可動ゴム膜の一箇所に形成されている必要はなく、相互に独立して二箇所以上に形成されていても良く、この場合には、独立して設けられる各短絡スリットの端部の外側にそれぞれ補強リブが形成される。また、短絡スリットの開閉作動を安定させるためには、短絡スリットが可動ゴム膜の径方向中央部分に形成されていることが望ましいが、径方向中央から所定距離を隔てた位置に形成されていても良い。具体的には、例えば、図13に示された可動ゴム膜112では、可動ゴム膜112の径方向中間部分において、4本の直線が放射状に延びた形態の短絡スリット72が4つ形成されており、各短絡スリット72がそれぞれ外側を環状の補強リブ76で囲まれている。このような構造の可動ゴム膜112においても、短絡スリット72の長さや短絡スリット72の形成部分における可動ゴム膜112の厚さ等を調節して、短絡スリット72の開口許容量や連通状態と遮断状態に切り換えられる設定圧力等を適当に設定することによって、目的とする異音の解消効果と防振性能を両立して実現することが出来る。
また、補強リブの断面形状は、必ずしも長円形状ではなくても良く、例えば、略矩形断面や略菱形断面等、各種の断面形状を適宜に採用することが出来る。
また、補強リブは、一定の断面形状で形成されている必要はなく、例えば、環状の補強リブにおいて、短絡スリットの端部の外側に位置する部分の突出高さが、周方向で短絡スリットの端部間に位置する部分の突出高さよりも大きく設定される等、周方向で断面形状が変化していても良い。これによれば、補強リブにおいて比較的に突出高さが大きく設定された部分によって、短絡スリットの端部における亀裂の発生を有利に防ぎつつ、突出高さが小さく設定された部分によって、亀裂が突出高さの大きい部分を回り込むように伸長するのを防ぐことが出来て、全体として亀裂の発生と伸長を効果的に防ぐことが出来る。しかも、全体が略一定の突出高さで形成された環状の補強リブに比して、可動ゴム膜の剛性の設計自由度を大きくすることも出来る。なお、補強リブの幅が長さ方向で変化しても良いことは言うまでもなく、その変化は緩やかに変化しても良いし、急激に変化しても良い。
また、補強リブは、必ずしも可動ゴム膜の表裏で同一の形状を有していなくても良い。具体的には、例えば、補強リブは、可動ゴム膜の表側(受圧室側)において環状とされていると共に、裏側(平衡室側)において短絡スリットの端部の外側にのみ部分的に設けられた形状を有していても良いし、表裏でその断面形状が異なっていても良い。
また、前記第一の実施形態等にも示されているように、補強リブは、短絡スリットの端部における亀裂の発生を効果的に防ぐために、短絡スリットの端部の外側に隣接して形成されていることが望ましいが、補強リブと短絡スリットが所定距離を隔てて設けられていても良い。なお、亀裂防止効果を有効に発揮させるために、補強リブと短絡スリットの離隔距離は、5mm以下とされることが望ましく、より好適には、2mm以下、更に好適には、1mm以下とされる。これにより、補強リブによって亀裂の発生が有利に防がれると共に、補強リブが短絡スリットの端部の外側において部分的に設けられた場合にも、補強リブを回り込んで亀裂が進行するのを有効に防ぐことが出来る。
また、前記第一の実施形態では、本発明に係る流体封入式防振装置の一例として自動車用のエンジンマウント10を示したが、本発明は、必ずしも自動車用エンジンマウントにのみ適用されるものではなく、各種公知の流体封入式防振装置に適用可能である。また、本発明の適用範囲は、必ずしも自動車用の流体封入式防振装置に限定されるものではない。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
10:自動車用エンジンマウント,12:第一の取付金具,14:第二の取付金具,16:本体ゴム弾性体,34:ダイヤフラム,44:仕切部材,64:可動ゴム膜,72:短絡スリット,74:亀裂防止孔,76:補強リブ,78:受圧室,80:平衡室,82:オリフィス通路,98:応力緩和孔