JP2009127485A - 内燃機関 - Google Patents
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Abstract
【課題】運転状態に応じて適正にノッキングを回避することができる内燃機関を提供する。
【解決手段】燃焼室18に連通し吸気弁21により開閉自在な吸気ポート19を含んで構成されると共にスロットル弁39が設けられる吸気通路62と、吸気方向に対してスロットル弁39より下流の吸気通路62に設けられ該吸気通路62を開閉可能な吸気流制御手段63と、燃焼室18内のガス温度である筒内ガス温度を検出可能な筒内ガス温度検出手段と、内燃機関回転速度を検出可能な回転速度検出手段57と、内燃機関負荷を検出可能な負荷検出手段55と、内燃機関回転速度、内燃機関負荷及び筒内ガス温度に基づいて、吸気流制御手段63の開度を制御する制御手段51とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】燃焼室18に連通し吸気弁21により開閉自在な吸気ポート19を含んで構成されると共にスロットル弁39が設けられる吸気通路62と、吸気方向に対してスロットル弁39より下流の吸気通路62に設けられ該吸気通路62を開閉可能な吸気流制御手段63と、燃焼室18内のガス温度である筒内ガス温度を検出可能な筒内ガス温度検出手段と、内燃機関回転速度を検出可能な回転速度検出手段57と、内燃機関負荷を検出可能な負荷検出手段55と、内燃機関回転速度、内燃機関負荷及び筒内ガス温度に基づいて、吸気流制御手段63の開度を制御する制御手段51とを備えることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は、内燃機関に関し、特に、吸気通路に吸気流制御弁を備える内燃機関に関するものである。
従来の内燃機関には、吸気管内に吸気流制御弁を装着した吸気装置を備え、この吸気流制御弁を開閉制御することによって燃焼室へ導入する気流を制御するものがある。このような従来の内燃機関として、例えば、特許文献1に記載されている内燃機関は、機関出力トルクが基準出力トルクよりも高いときは、吸気流制御弁を半開度することで、機関暖機運転時の不要な出力トルクの出力を抑制している。
ところで、このような吸気流制御弁を備えた内燃機関では、例えば、その点火時期を吸気流制御弁の開度に応じた最適な点火時期に設定して運転している。このとき、吸気流制御弁の開度の切り替え時には、当該点火時期を段階的、あるいは、変化幅にリミットを設けて変更し、点火時期を進角側へ変更する際には、ノック発生データをフィードバックし、ノックが発生しない条件で点火時期を変更させている。すなわち、例えば、ノック発生領域において、ノックコントロールシステム(KCS)により、点火時期を学習値(更新幅)にしたがって徐々に遅角又は進角させて最適値、いわゆる、ノッキングが発生する限界まで進角させた状態(ノック限界)での点火時期であるトレースノック(Trace Knock)点火時期に収束させ、ノッキングの発生を抑制している。ただしこの場合、例えば、高い軸トルクを得る為に内燃機関から取り出せるトルクが最大となる点火時期、いわゆるMBT点火時期(Minimum advance for Best Torque:最大トルクを得られる最適点火時期)に対して点火時期が遅角されればされるほど、軸トルクが低下し機関効率が低下するおそれがある。すなわち、ノッキングを回避するがために、機関効率が低下し燃費が悪化するおそれがある。
そこで本発明は、運転状態に応じて適正にノッキングを回避することができる内燃機関を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明による内燃機関は、燃焼室に連通し吸気弁により開閉自在な吸気ポートを含んで構成されると共にスロットル弁が設けられる吸気通路と、吸気方向に対して前記スロットル弁より下流の前記吸気通路に設けられ該吸気通路を開閉可能な吸気流制御手段と、前記燃焼室内のガス温度である筒内ガス温度を検出可能な筒内ガス温度検出手段と、内燃機関回転速度を検出可能な回転速度検出手段と、内燃機関負荷を検出可能な負荷検出手段と、前記内燃機関回転速度、前記内燃機関負荷及び前記筒内ガス温度に基づいて、前記吸気流制御手段の開度を制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
請求項2に係る発明による内燃機関では、前記制御手段は、取り出せるトルクが最大となる最適点火時期にて運転するとノッキングが発生しうる運転状態において前記筒内ガス温度が低下するように前記吸気流制御手段の開度を制御することを特徴とする。
請求項3に係る発明による内燃機関では、前記制御手段は、ノッキングが発生しやすい過渡運転状態において、前記筒内ガス温度が低下するように前記吸気流制御手段の開度を制御することを特徴とする。
請求項4に係る発明による内燃機関では、前記制御手段は、暖機が未完了、かつ、ノッキングが発生しにくい運転状態において、前記筒内ガス温度が上昇するように前記吸気流制御手段の開度を制御することを特徴とする。
本発明に係る内燃機関によれば、制御手段により、筒内ガス温度、内燃機関回転速度及び内燃機関負荷に基づいて吸気流制御手段の開度を制御するので、運転状態に応じて適正にノッキングを回避することができる。
以下に、本発明に係る内燃機関の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、本発明の実施形態に係るエンジンを表す概略構成図、図2は、本発明の実施形態に係るエンジンの燃焼室を含む部分断面図、図3は、本発明の実施形態に係るエンジンのTCV開度と筒内ガス温度との関係の一例を表す線図、図4は、本発明の実施形態に係るエンジンのTCV開度と機関効率との関係の一例を表す線図、図5は、本発明の実施形態に係るエンジンのTCV開度制御を説明するフローチャート、図6は、本発明の実施形態に係るエンジンが備えるECUのTCV開度算出部、トルク算出部を含む要部構成の一例を示す概略構成図、図7は、本発明の実施形態に係るエンジンのエンジン回転数、空気量(負荷)及びIVC時期筒内ガス温度とTCV開度とのマップの一例を表す概略図、図8は、本発明の実施形態に係るエンジンが備えるECUの機関効率算出部を含む要部構成の一例を示す概略構成図、図9は、本発明の変形例1に係るエンジンのTCV開度制御を説明するフローチャート、図10は、本発明の変形例2に係るエンジンのTCV開度制御を説明するフローチャート、図11は、従来エンジンのTCV開度マップの一例を表す概略図である。
本実施形態に係る内燃機関としてのエンジン10は、図1、図2に示すように、乗用車、トラックなどの車両に搭載され、シリンダボア13内に往復運動可能に設けられるピストン14が2往復する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンである。
このエンジン10は、多気筒式であって、シリンダブロック11上にシリンダヘッド12が締結されており、このシリンダブロック11に形成された複数のシリンダボア13にピストン14がそれぞれ上下移動自在に嵌合している。そして、シリンダブロック11の下部にクランクケース15が締結され、このクランクケース15内にクランクシャフト16が回転自在に支持されており、各ピストン14はコネクティングロッド17を介してこのクランクシャフト16にそれぞれ連結されている。なお、このクランクケース15の底部には、エンジン10の各部に供給されるオイルが貯留されている。
燃焼室18は、シリンダブロック11におけるシリンダボア13の壁面とシリンダヘッド12の下面とピストン14の頂面により構成されており、この燃焼室18は、上部、すなわち、シリンダヘッド12の下面の中央部が高くなるように傾斜したペントルーフ形状をなしている。燃焼室18は、燃料と空気との混合気が燃焼可能であり、この燃焼室18の上部に吸気ポート19及び排気ポート20が対向して形成されており、この吸気ポート19及び排気ポート20に対して吸気弁21及び排気弁22の下端部がそれぞれ位置している。この吸気弁21及び排気弁22は、シリンダヘッド12に軸方向に沿って移動自在に支持されると共に、吸気ポート19及び排気ポート20を閉止する方向(図1にて上方)に付勢支持されている。また、シリンダヘッド12には、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転自在に支持されており、吸気カム25及び排気カム26が吸気弁21及び排気弁22の上端部に接触している。
なお、図示しないが、クランクシャフト16に固結されたクランクシャフトスプロケットと、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24にそれぞれ固結された各カムシャフトシャフトスプロケットとは、無端のタイミングチェーンが掛け回されており、クランクシャフト16と吸気カムシャフト23と排気カムシャフト24が連動可能となっている。
従って、クランクシャフト16に同期して吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が回転すると、吸気カム25及び排気カム26が吸気弁21及び排気弁22を所定のタイミングで上下移動することで、吸気ポート19及び排気ポート20を開閉し、吸気ポート19と燃焼室18、燃焼室18と排気ポート20とをそれぞれ連通することができる。この場合、この吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24は、クランクシャフト16が2回転(720度)する間に1回転(360度)するように設定されている。そのため、エンジン10は、クランクシャフト16が2回転する間に、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程の4行程を実行することとなり、このとき、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24が1回転することとなる。
また、このエンジン10の動弁機構は、運転状態に応じて吸気弁21及び排気弁22を最適な開閉タイミングに制御する吸気・排気可変動弁機構(VVT:Variable Valve Timing-intelligent)27,28となっている。この可変動弁手段としての吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24の軸端部にVVTコントローラ29,30が設けられて構成され、オイルコントロールバルブ31,32からの油圧をこのVVTコントローラ29,30の図示しない進角室及び遅角室に作用させることによりカムスプロケットに対するカムシャフト23,24の位相を変更し、吸気弁21及び排気弁22の開閉時期を進角または遅角することができるものである。この場合、吸気・排気可変動弁機構27,28は、吸気弁21及び排気弁22の作用角(開放期間)を一定としてその開閉時期を進角または遅角する。また、吸気カムシャフト23及び排気カムシャフト24には、その回転位相を検出するカムポジションセンサ33,34が設けられている。
吸気ポート19には、吸気マニホールド35を介してサージタンク36が連結され、このサージタンク36に吸気管37が連結されており、この吸気管37の空気取入口にはエアクリーナ38が取付けられている。そして、このエアクリーナ38の空気流動方向下流側にスロットル弁39を有する負荷調節手段としての電子スロットル装置40が設けられている。また、シリンダヘッド12には、吸気ポート19内に燃料を噴射することが可能な燃料噴射手段としてのインジェクタ(燃料噴射弁)41が装着されている(図2参照)。インジェクタ41は、燃料の噴射口が吸気ポート19内に開口するように設けられる。各気筒に装着されるインジェクタ41は、デリバリパイプ42に連結され、このデリバリパイプ42には高圧燃料供給管43を介して高圧燃料ポンプ(燃料ポンプ)44が連結されている。更に、シリンダヘッド12には、燃焼室18の上方に位置して混合気に点火する点火手段としての点火プラグ45が装着されている。
また、このエンジン10は、吸気通路62に吸気流制御手段として、吸気通路62を流動する吸気流を制御しスワール流やタンブル流などの渦流を生じさせる吸気流制御弁、ここでは、タンブルコントロールバルブ(以下、「TCV」と略記する。)63が設けられている。吸気通路62は、吸気管37、吸気マニホールド35及び吸気ポート19などからなり燃焼室18に供給される空気が流動する通路である。TCV63は、空気の流動方向、すなわち、吸気方向に対してスロットル弁39より下流、インジェクタ41より上流側の吸気通路62に設けられる。
このTCV63は、吸気通路62を弁体により開閉可能であり、この吸気通路62を開閉し空気が通過可能な通路断面積、すなわち、開度を変更することにより燃焼室18へのタンブル流などの渦流の強度を制御する。TCV63は、後述するECU51に接続されており、ECU51は、エンジン10の運転状態に応じてTCV63の駆動、すなわち、TCV63の開度を制御している。なお、本実施形態では、本発明の吸気流制御手段は、TCV63であるものとして説明するが、例えば、燃焼室18に供給される空気にスワール流などの渦流を生じさせるスワールコントロールバルブ(SCV)であってもよい。
一方、排気ポート20には、排気マニホールド46を介して排気管47が連結されており、この排気管47には排気ガス中に含まれるHC、CO、NOxなどの有害物質を浄化処理する三元触媒48,49が装着されている。また、エンジン10には、クランキングを行うスタータモータ50が設けられており、エンジン始動時に図示しないピニオンギヤがリングギヤと噛み合った後、回転力がピニオンギヤからリングギヤへと伝わり、クランクシャフト16を回転することができる。
ところで、車両にはマイクロコンピュータを中心として構成されエンジン10の各部を制御可能な制御手段としての電子制御ユニット(ECU)51が搭載されており、このECU51は、インジェクタ41や点火プラグ45、TCV63などを制御可能となっている。吸気管37の空気流動方向上流側にはエアフローセンサ52及び吸気温センサ53が装着され、また、サージタンク36には吸気圧センサ54が設けられており、計測した吸入空気量、吸気温度、吸気圧(吸気管負圧)をECU51に出力している。また、電子スロットル装置40には負荷検出手段としてのスロットルポジションセンサ55が装着されており、現在のスロットル開度をECU51に出力している。ここで、ECU51は、検出されたスロットル開度や吸入空気量に基づいて内燃機関負荷としてのエンジン負荷(負荷率)を算出することができる。アクセルポジションセンサ56は、現在のアクセル開度をECU51に出力している。更に、エンジン10のクランク角度を検出する回転速度検出手段としてのクランク角センサ57は、検出した各気筒のクランク角度をECU51に出力し、このECU51は検出したクランク角度に基づいて各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、内燃機関回転速度としてのエンジン回転数を算出している。なおここで、エンジン回転数は、言い換えれば、クランクシャフト16の回転速度に対応し、このクランクシャフト16の回転速度が高くなれば、クランクシャフト16の回転数、すなわち、エンジン10のエンジン回転数も高くなる。
また、シリンダブロック11にはエンジン冷却水温を検出する水温センサ58が設けられており、検出したエンジン冷却水温をECU51に出力している。また、各インジェクタ41に連通するデリバリパイプ42には燃料圧力を検出する燃圧センサ59が設けられており、検出した燃料圧力をECU51に出力している。一方、排気管47には、三元触媒48の排気ガス流動方向上流側にエンジン10の空燃比を検出するA/Fセンサ60、排気ガス流動方向下流側に酸素センサ61が設けられている。A/Fセンサ60は、三元触媒48に導入される前の排気ガスの排気ガス空燃比を検出し、検出した空燃比をECU51に出力し、酸素センサ61は、三元触媒48から排出された後の排気ガスの酸素濃度を検出し、検出した酸素濃度をECU51に出力している。このA/Fセンサ60により検出された空燃比(推定空燃比)は、吸入空気と燃料とからなる混合ガスの空燃比(理論空燃比)をフィードバック制御するために用いられる。すなわち、A/Fセンサ60は、排気ガス中の酸素濃度と未燃ガス濃度から排気空燃比をリッチ域からリーン域までの全域にわたり検出し、これをECU51にフィードバックすることにより燃料噴射量を補正し、燃焼を運転状態に合わせた最適な燃焼状態に制御可能となる。
従って、ECU51は、検出した燃料圧力に基づいてこの燃料圧力が所定圧力となるように高圧燃料ポンプ44を駆動すると共に、検出した吸入空気量、吸気温度、吸気圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、エンジン冷却水温などのエンジン運転状態に基づいて燃料噴射量(燃料噴射期間)、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタ41及び点火プラグ45を駆動して燃料噴射及び点火を実行する。また、ECU51は、検出した排気ガスの酸素濃度をフィードバックして空燃比がストイキ(理論空燃比)となるように燃料噴射量を補正している。
また、ECU51は、エンジン運転状態に基づいて吸気・排気可変動弁機構27,28を制御可能となっている。即ち、低温時、エンジン始動時、アイドル運転時や軽負荷時には、排気弁22の閉止時期と吸気弁21の開放時期のオーバーラップをなくすことで、排気ガスが吸気ポート19または燃焼室18に吹き返す量を少なくし、燃焼安定及び燃費向上を可能とする。また、中負荷時には、このオーバーラップを大きくすることで、内部EGR率を高めて排ガス浄化効率を向上させると共に、ポンピングロスを低減して燃費向上を可能とする。更に、高負荷低中回転時には、吸気弁21の閉止時期を進角することで、吸気が吸気ポート19に吹き返す量を少なくし、体積効率を向上させる。そして、高負荷高回転時には、吸気弁21の閉止時期を回転数にあわせて遅角することで、吸入空気の慣性力に合わせたタイミングとし、体積効率を向上させる。
上記のように構成されるエンジン10では、インジェクタ41から噴射される燃料と吸気ポート19を介して吸入される空気とが混合して混合気を形成し、ピストン14がシリンダボア13内を下降することで、燃焼室18内にこの混合気が吸入される(吸気行程)。そして、このピストン14が吸気行程下死点を経てシリンダボア13内を上昇することで混合気が圧縮され(圧縮行程)、ピストン14が圧縮行程上死点付近に近づくと点火プラグ45により混合気に点火され、該混合気が燃焼し、その燃焼圧力によりピストン14を下降させる(膨張行程)。燃焼後の混合気は、ピストン14が膨張行程下死点を経て吸気行程上死点に向かって再び上昇することで排気ポート20を介して排気ガスとして放出される(排気行程)。このピストン14のシリンダボア13内での往復運動は、コネクティングロッド17を介してクランクシャフト16に伝えられ、ここで回転運動に変換され、出力として取り出されると共に、このピストン14は、カウンタウェイトと共にクランクシャフト16が慣性力によりさらに回転することで、このクランクシャフト16の回転に伴ってシリンダボア13内を往復する。このクランクシャフト16が2回転することで、ピストン14はシリンダボア13を2往復し、この間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行い、燃焼室18内で1回の爆発が行われる。
このとき、ECU51は、TCV63の開度を制御し吸気通路62を開閉することにより燃焼室18に供給される空気にタンブル流などの渦流を生じさせ、これにより、燃料の燃焼効率を向上させることができる。
ところで、このエンジン10では、例えば、ノッキングが発生するノック発生領域において、ノックコントロールシステム(KCS)により、点火時期を学習値(更新幅)にしたがって徐々に遅角又は進角させて最適値、いわゆる、ノッキングが発生する限界まで進角させた状態(ノック限界)での点火時期であるトレースノック(Trace Knock)点火時期に収束させノッキングの発生を抑制すると、機関効率が低下するおそれがある。ここで、トレースノック点火時期は、ノッキングが発生する限界の点火時期であり、このトレースノック点火時期よりも進角側で点火されるとノッキングが発生する一方、遅角側で点火されるとノッキングは発生しない。すなわち、例えば、高い軸トルクを得る為にエンジン10から取り出せるトルクが最大となる点火時期、いわゆるMBT点火時期(Minimum advance for Best Torque:最大トルクを得られる最適点火時期)に対して点火時期が遅角されればされるほど、軸トルクが低下し機関効率が低下するおそれがあり、この結果、ノッキングを回避するがために、機関効率が低下し燃費が悪化するおそれがある。
そこで、本実施形態のエンジン10は、ECU51により、吸気弁21の閉弁時期の筒内ガス温度、エンジン回転数及びエンジン負荷に基づいてTCV63の開度を制御することで、運転状態に応じて適正にノッキングを回避している。
ここで、吸気弁21の閉弁時期の筒内ガス温度は、吸気弁21が閉じたタイミング、いわゆる、インテークバルブクローズド(以下、「IVC」と略記する。)時期の筒内ガス温度である。つまり、燃焼室18、言い換えれば、筒内は、IVC時期以降は他の系から閉じた系になる。そして、筒内が他の系から閉じたIVC時期での筒内ガス温度であるIVC時期筒内ガス温度が所定温度以上であると、クランク角度が進んで筒内の未燃ガス温度が上昇した際に筒内の未燃燃料が自己着火する温度に到達し、この時点で燃焼室18内の未燃燃料量がノッキング発生に十分な所定量が残っているとノッキングが発生する。言い換えれば、IVC時期筒内ガス温度が十分に低ければ、クランク角度が進んで筒内の未燃ガス温度が上昇しても未燃燃料が自己着火する温度に到達せず、ノッキングは発生しない。さらに言えば、このIVC時期筒内ガス温度を適正に制御することでノッキングを回避することができる。
そして、このIVC時期筒内ガス温度は、図3のTCV開度と筒内ガス温度との関係の一例を表す線図に示すように、吸気通路62を流動する吸気流を制御するTCV63の開度を調節することで制御することができる。すなわち、このエンジン10は、同量の吸入空気量であっても、TCV63の開度を調節することで、IVC時期筒内ガス温度を低下させ、ノッキングを抑制することができる。つまり、本実施形態のTCV63を備えるエンジン10は、TCV63の開度を調節することで、TCV63の開度に応じて筒内ガス温度を調節することができ、運転状態に応じてこの筒内ガス温度を調節することで、図3、図4に示すようにノック特性(ノッキングの発生のしやすさ)を変化させることができ、したがって、TCV63の開度制御によりノック特性を制御することができる。
このため、本実施形態のエンジン10は、ECU51により、このIVC時期筒内ガス温度、エンジン回転数及びエンジン負荷に基づいてTCV63の開度を制御することで、例えば、取り出せるトルクが最大となるMBT点火時期(最適点火時期)にて運転するとノッキングが発生しうるような運転状態において、IVC時期筒内ガス温度が低下するようにTCV63の開度を制御することで、IVC時期筒内ガス温度を低下させノッキングを回避すると共に、点火時期をMBT点火時期から遅角することなく当該MBT点火時期に設定することができる。言い換えれば、エンジン10は、TCV63の開度を制御することでIVC時期筒内ガス温度を低下させノッキングを回避することができる。そして、エンジン10は、TCV63の開度を制御することでIVC時期筒内ガス温度を低下させノッキングを回避することができることにより、図4のTCV開度と機関効率との関係の一例を表す線図に示すように、ノック発生領域、言い換えれば、ノック限界での点火時期であるトレースノック点火時期を進角側(効率のよい点火時期側)に移動させることができ、点火時期をMBT点火時期に設定することができる運転領域を増加させることができ、よって、機関効率を向上することができる。つまり、エンジン10は、ノッキングを回避することができると共に機関効率の低下を抑制し燃費の悪化を抑制することができ、この結果、運転状態に応じて適正にノッキングを回避することができる。
次に、図5のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエンジン10のTCV開度制御を説明する。
まず、ECU51は、上記各種センサから吸入空気量、吸気温度、吸気圧、スロットル開度、アクセル開度、エンジン回転数、バルブタイミング、バルブリフト量、エンジン冷却水温、油温、空燃比、燃料噴射量(燃料噴射期間)、噴射時期、点火時期などの現在のエンジン10の運転条件に関する種々のパラメータを取得する(S100)。次に、ECU51は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量に対応するアクセル開度や車速などに基づいて駆動軸に出力すべき要求トルクTd(ドライバ要求トルク+補機負荷要求トルク+フリクション+・・・)を算出し(S102)、この要求トルクTdに基づいて目標トルクTpを設定する(S104)。例えば、ECU51は、現在の運転条件での発生可能トルクを算出し、実現可能な目標トルクTpを設定する。ECU51は、発生可能トルクが要求トルクTdを下回る場合には発生可能な最大のトルクを目標トルクTpに設定する。
次に、ECU51は、目標トルクTpを実現するためのエンジン10各部の目標操作値(スロットル開度、燃料噴射量(燃料噴射期間)、噴射時期、点火時期、空燃比、吸気弁21及び排気弁22の開閉時期の進角、遅角など)を算出し、この運転条件で点火時期をKCSにより通常どおり遅角させた際の機関効率である通常機関効率ηtを算出する(S106)。ECU51は、例えば、スロットル開度等から吸入空気量を予測して、この吸入空気量と点火時期などに基づいてインジェクタ41の燃料噴射量、A/F等を推定して軸トルクを算出し、この軸トルクを燃料噴射量で割ることで通常機関効率ηtを算出する。
次に、ECU51は、S106で算出された目標操作値に応じた目標運転条件において、ノッキングが発生する限界のトレースノック点火時期Stk[deg.BTDC]が目標運転条件におけるMBT点火時期Smbt[deg.BTDC]より遅角されているか否かを判定する(S108)。目標運転条件において、トレースノック点火時期StkがMBT点火時期Smbtより遅角されていない場合(S108:No)、つまり、MBT点火時期Smbtがノッキング発生領域外にある場合、通常どおり点火時期をMBT点火時期Smbtに設定することができることから、ECU51は、次の制御周期に移行する。
ECU51は、目標運転条件において、トレースノック点火時期StkがMBT点火時期Smbtより遅角されている場合(S108:Yes)、つまり、目標運転条件において、MBT点火時期Smbtがノッキング発生領域内にある場合、点火時期がMBT点火時期Smbtより遅角側に設定されることで機関効率が低下する可能性があることから、ECU51は、ノッキングを回避するためにIVC時期筒内ガス温度を低下させるようにTCV63の開度を制御した場合の最大トルクであるノック回避時最大トルクTkを算出し、このときの機関効率であるノック回避時機関効率ηkを算出する(S110)。
図6は、ECU51のTCV開度算出部、トルク算出部を含む要部構成の一例を示す概略構成図である。ECU51は、具体的には、ノック回避時最大トルクTkを算出するための構成として、ここでは、筒内ガス温度検出手段としての筒内ガス温度算出部71と、空気量(負荷)算出部72と、TCV開度算出部73と、トルク算出部74とを備える。
筒内ガス温度算出部71は、燃焼室18内のガス温度である筒内ガス温度を検出可能なものである。ここでは、筒内ガス温度算出部71は、運転条件に応じて予め実験等により作成された筒内ガス温度マップを記憶しており、S104で算出された目標トルクTpやエンジン回転数NEなどの種々の目標運転条件が入力され、筒内ガス温度マップに基づいてIVC時期筒内ガス温度Tivcを算出し出力する。筒内ガス温度算出部71の出力であるIVC時期筒内ガス温度Tivcは、空気量算出部72、TCV開度算出部73に入力される。なお、ここでは、筒内ガス温度検出手段は、予め実験等により作成された筒内ガス温度マップに基づいて筒内ガス温度を算出する筒内ガス温度算出部71であるものとして説明するが、例えば、筒内ガス温度を直接的に検出可能な、あるいは、間接的に推定可能なセンサであってもよい。
空気量算出部72は、エンジン負荷に応じた値として、燃焼室18に吸気される空気量を算出可能なものである。ここでは、空気量算出部72は、運転条件に応じて予め実験等により作成された空気量算出マップを記憶しており、S104で算出された目標トルクTpやエンジン回転数NE、筒内ガス温度算出部71で算出されたIVC時期筒内ガス温度Tivcなどの種々の目標運転条件が入力され、空気量算出マップに基づいて目標空気量KLtを算出し出力する。空気量算出部72の出力である目標空気量KLtは、TCV開度算出部73に入力される。
TCV開度算出部73は、TCV63のTCV開度を算出可能なものである。ここでは、TCV開度算出部73は、運転条件に応じて予め実験等により作成されたTCV開度マップを記憶しており、エンジン回転数NE、筒内ガス温度算出部71で算出されたIVC時期筒内ガス温度Tivc、空気量算出部72で算出された目標空気量KLtなどの種々の目標運転条件が入力され、TCV開度マップに基づいてTCV開度指示値Aを算出し出力する。また、ここでは、TCV開度算出部73は、要求されるIVC時期筒内ガス温度Tivcを実現可能な最大の空気量(負荷)である最大空気量(負荷)KLmaxもマップ等に基づいて算出し出力する。TCV開度算出部73の出力であるTCV開度指示値A、最大空気量(負荷)KLmaxは、トルク算出部74に入力される。
ここで、図7は、本実施形態に係るエンジン10のエンジン回転数、空気量(負荷)及びIVC時期筒内ガス温度とTCV開度とのマップの一例を表す概略図である。一方、図11は、従来のエンジンのTCV開度マップの一例を表す概略図である。ここで、図11に示す従来のエンジンのTCV開度は、空気量(負荷)KLとエンジン回転数NEとに基づいて定められており、体積効率が低下しない範囲でできる限り閉じるように設定されていたため、筒内ガス温度に応じてTCV開度を制御しTCV開度に応じて筒内ガス温度を制御することができず、すなわち、TCV開度を制御して適正にIVC時期筒内ガス温度を低下させることができなかった。一方、本実施形態のエンジン10のTCV開度は、図7に示すように、エンジン回転数NE、空気量(負荷)KL及びIVC時期筒内ガス温度Tivcに基づいて定められており、筒内ガス温度に応じてTCV開度を制御しTCV開度に応じて筒内ガス温度を制御することができ、すなわち、TCV開度を制御して適正にIVC時期筒内ガス温度を低下させることができる。TCV開度算出部73は、図7に示したようなエンジン回転数NE、空気量(負荷)KL及びIVC時期筒内ガス温度Tivcに基づいた3次元TCV開度マップを用いてTCV開度指示値Aを算出し出力する。
なお、図7の下段には、IVC時期筒内ガス温度Tivcが400Kである場合のTCV開度マップを例示している。TCV63は、開度を小さくし絞りが大きくなるほどタンブル流が強くなり筒内ガス温度が低下しノッキングしにくくなる傾向にあるが、一方で、開度が小さくなりすぎると、このTCV63における吸気流の圧力損失が増加することで筒内ガス温度が上昇しノッキングしやすくなる傾向にある。したがって、本実施形態のエンジン回転数NE、空気量(負荷)KL及びIVC時期筒内ガス温度Tivcに基づいたTCV開度マップは、運転条件に応じて予め実験等により作成される際にはこれらの傾向を踏まえて作成するとよい。
また、TCV開度算出部73は、TCV開度マップを用いて算出したTCV開度指示値AをさらにVVT27,28による吸気弁21及び排気弁22の開閉タイミングの遅角量又は進角量(in/exVVT)やバルブリフト量(VL)などの種々の目標運転条件に応じて補正式を用いて補正してもよい。この場合、より適正なTCV開度指示値Aを算出することができる。
図6に戻って、トルク算出部74は、エンジン10のトルクを算出可能なものである。ここでは、トルク算出部74は、運転条件に応じて予め実験等により作成されたトルクマップを記憶しており、TCV開度算出部73で算出されたTCV開度指示値A、最大空気量(負荷)KLmaxなどの種々の目標運転条件が入力され、トルクマップに基づいて上述したノック回避時最大トルクTkを算出し出力する。
図8は、ECU51の機関効率算出部76を含む要部構成の一例を示す概略構成図である。ECU51は、具体的には、ノック回避時機関効率ηkを算出するための構成として、ここでは、トルク算出部75と、機関効率算出部76とを備える。
トルク算出部75は、エンジン10のトルクを算出可能なものであり、上述したトルク算出部74と兼用してもよい。ここでは、トルク算出部75は、運転条件に応じて予め実験等により作成されたトルクマップを記憶しており、目標空気量KLtや空燃比(A/F)などの種々の目標運転条件が入力され、トルクマップに基づいて推定トルクTk’を算出し出力する。トルク算出部75の出力である推定トルクTk’は、機関効率算出部76に入力される。
機関効率算出部76は、エンジン10の機関効率を算出可能なものである。ここでは、機関効率算出部76は、例えば、[機関効率=推定トルク/消費燃料量]及び[消費燃料量=空気量(KL)/空燃比(A/F)]により機関効率を算出することができる。機関効率算出部76は、目標空気量KLt、空燃比(A/F)、トルク算出部75で算出された推定トルクTk’などの種々の目標運転条件が入力され、ノック回避時機関効率ηkを算出し出力する。
図5に戻って、ECU51は、S110にて算出されたノック回避時最大トルクTkが目標トルクTp以上であるか否かを判定する(S112)。ノック回避時最大トルクTkが目標トルクTpより小さいと判定された場合(S112:No)、ノッキングを回避するためにIVC時期筒内ガス温度を低下させるようにTCV63の開度を制御した場合の最大トルクであるノック回避時最大トルクTkでも目標トルクTpに到達しないことから、TCV63の開度制御を実行せず、ECU51は、次の制御周期に移行する。
ノック回避時最大トルクTkが目標トルクTp以上であると判定された場合(S112:Yes)、つまり、ノッキングを回避するためにIVC時期筒内ガス温度を低下させるようにTCV63の開度を制御した場合でも目標トルクTpに到達することができる場合、ECU51は、S110にて算出されたノック回避時機関効率ηkが通常機関効率ηtより高いか否かを判定する(S114)。ノック回避時機関効率ηkが通常機関効率ηt以下である場合(S114:No)、ノッキングを回避するためにIVC時期筒内ガス温度を低下させるようにTCV63の開度を制御した場合のノック回避時機関効率ηkが点火時期をKCSにより通常どおり遅角させた際の機関効率である通常機関効率ηtより低いことから、TCV63の開度制御を実行せず、ECU51は、次の制御周期に移行する。
ノック回避時機関効率ηkが通常機関効率ηtより高いと判定された場合(S114:Yes)、つまり、ノッキングを回避するためにIVC時期筒内ガス温度を低下させるようにTCV63の開度を制御した場合に、点火時期をKCSにより通常どおり遅角させた際の通常機関効率ηtより機関効率を向上させることができる場合、ECU51は、ノック回避運転として、S110にて算出されたTCV開度指示値Aに基づいてTCV63の開度制御を実行する(S116)。したがって、IVC時期筒内ガス温度を低下させるようにTCV63の開度を制御することで、IVC時期筒内ガス温度を低下させた上で点火時期をMBT点火時期Smbtに設定することができ、この結果、目標トルクTp(要求トルクTd)を実現した上で、通常どおり点火時期を遅角させた場合より機関効率が低下することを防止することができ、かつ、ノッキングを適正に回避することができる。
以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン10によれば、燃焼室18に連通し吸気弁21により開閉自在な吸気ポート19を含んで構成されると共にスロットル弁39が設けられる吸気通路62と、吸気方向に対してスロットル弁39より下流の吸気通路62に設けられこの吸気通路62を開閉可能なTCV63と、燃焼室18内のガス温度である筒内ガス温度を検出可能なECU51の筒内ガス温度算出部71と、エンジン回転数を検出可能なクランク角センサ57と、エンジン負荷を検出可能なスロットルポジションセンサ55と、エンジン回転数、エンジン負荷及び吸気弁21の閉弁時期の筒内ガス温度に基づいて、TCV63の開度を制御するECU51とを備える。
したがって、ECU51により、エンジン回転数、エンジン負荷及び吸気弁21の閉弁時期の筒内ガス温度に基づいてTCV63の開度を制御することで、機関効率の低下等を抑制すると共に、TCV63の開度を調節することで吸気弁21の閉弁時期の筒内ガス温度を調節することができるので、運転状態に応じて適正にノッキングを回避することができる。
さらに、以上で説明した本発明の実施形態に係るエンジン10によれば、ECU51は、取り出せるトルクが最大となる最適点火時期にて運転するとノッキングが発生しうる運転状態において筒内ガス温度が低下するようにTCV63の開度を制御するとよい。この場合、MBT点火時期(最適点火時期)にて運転するとノッキングが発生しうるような運転状態において、IVC時期筒内ガス温度が低下するようにTCV63の開度を制御することで、IVC時期筒内ガス温度を低下させノッキングを回避することができると共に、ノック発生領域、言い換えれば、ノック限界での点火時期であるトレースノック点火時期を進角側(効率のよい点火時期側)に移動させることができ、点火時期をMBT点火時期から遅角することなく当該MBT点火時期に設定することができる。
なお、上述した本発明の実施形態に係る内燃機関は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。以上の説明では、制御手段は、取り出せるトルクが最大となる最適点火時期にて運転するとノッキングが発生しうる運転状態において筒内ガス温度が低下するように吸気流制御手段の開度を制御するとよいと説明したが、これに限らず、ノックコントロールシステム(KCS)による点火時期の学習値(更新幅)が予め設定される所定値以上である場合や運転状態が過渡運転状態である場合などのノッキングが発生しやすい運転状態において筒内ガス温度が低下するように吸気流制御手段の開度を制御するようにしてもよい。この場合も運転状態に応じて適正にノッキングを回避することができる。ノックコントロールシステム(KCS)による点火時期の学習値(更新幅)が予め設定される所定値以上となる場合としては、例えば、吸気温度や湿度が比較的高くなった場合や経年変化による各種センサの検出値にずれが生じた場合、あるいは、吸気弁21・排気弁22などに付着するデポジットが増加した場合などがある。運転状態が過渡運転状態である場合としては、例えば、加速時(回転数変動による空気脈動の変動)や空燃比の変動、燃料性状の変化(燃料の気化特性の変動)、筒内温度の変動などによりノック特性が変化する場合などがある。
つまり、制御手段としてのECU51は、例えば、ノッキングが発生しやすい過渡運転状態において、筒内ガス温度が低下するように吸気流制御手段としてのTCV63の開度を制御するようにしてもよい。
この場合、エンジン10のECU51は、例えば図9の本発明の変形例1に係るエンジン10のTCV開度制御を説明するフローチャートに示すように、まず、現在のエンジン10の運転条件に関する種々のパラメータを取得し(S200)、種々の公知の判定方法により、現在の運転状態が過渡運転状態(加速時(回転数変動による空気脈動の変動)や空燃比の変動、燃料性状の変化(燃料の気化特性の変動)、筒内温度の変動などによりノック特性が変化する状態)であるか否かを判定する(S202)。現在の運転状態が過渡運転状態でないと判定された場合(S202:No)、ECU51は、次の制御周期に移行する。
現在の運転状態が過渡運転状態であると判定された場合(S202:Yes)、ECU51は、要求トルクTdを算出し(S204)、この要求トルクTdに基づいて目標トルクTpを設定する(S206)。そして、目標トルクTpやエンジン回転数NE、空気量(負荷)KLなどの種々の目標運転条件に応じて、エンジン回転数NE、空気量(負荷)KL及び筒内ガス温度Tに基づいた3次元TCV開度マップを用いてTCV開度指示値Aを算出し、ノック回避時最大トルクTk2を算出する(S208)。
そして、ノック回避時最大トルクTk2が目標トルクTp以上であるか否かを判定し(S210)、ノック回避時最大トルクTk2が目標トルクTpより小さいと判定された場合(S210:No)、TCV63の開度制御を実行せず、ECU51は、次の制御周期に移行する。ノック回避時最大トルクTk2が目標トルクTp以上であると判定された場合(S210:Yes)、ECU51は、過渡時ノック回避運転として、S208にて算出されたTCV開度指示値Aに基づいてTCV63の開度制御を実行する(S212)。したがって、筒内ガス温度を低下させるようにTCV63の開度を制御しIVC時期筒内ガス温度を低下させることで、目標トルクTp(要求トルクTd)を実現した上で、加速時(回転数変動による空気脈動の変動)や空燃比の変動、燃料性状の変化(燃料の気化特性の変動)、筒内温度の変動などの過渡運転時のノック特性の変動に追従してTCV開度を制御することができ、過渡時のノッキングを適正に回避することができる。また、点火時期をMBT点火時期に設定することができる運転領域を増加させることができる。なお、ノッキング回避を優先させる場合には、S210にてノック回避時最大トルクTk2を目標トルクTpに設定すれば、必ずノッキングを回避することができる。
また、以上の説明では、制御手段は、ノッキングが発生しやすい運転状態において、筒内ガス温度が低下するように吸気流制御手段の開度を制御するものとして説明したが、同量の吸入空気量であっても吸気流制御手段の開度を調節することで、筒内ガス温度を調節できることを利用して、ノッキングを回避しながら内燃機関の暖機を促進することもできる。
つまり、制御手段としてのECU51は、例えば、暖機が未完了、かつ、ノッキングが発生しにくい運転状態において、筒内ガス温度が上昇するように吸気流制御手段としてのTCV63の開度を制御すようにしてもよい。
この場合、エンジン10のECU51は、例えば図10の本発明の変形例2に係るエンジン10のTCV開度制御を説明するフローチャートに示すように、まず、現在のエンジン10の運転条件に関する種々のパラメータを取得し(S300)、例えば、エンジン冷却水温が予め設定される所定温度以下であるか否かを判定することで、現在時点で暖機が未完了か否かを判定する(S302)。現在時点で暖機が完了していると判定された場合(S302:No)、ECU51は、次の制御周期に移行する。
現在時点で暖機が未完了であると判定された場合(S302:Yes)、ECU51は、要求トルクTdを算出し(S304)、この要求トルクTdに基づいて目標トルクTpを設定する(S306)。そして、目標トルクTpやエンジン回転数NE、空気量(負荷)KLなどの種々の目標運転条件に応じて、エンジン回転数NE、空気量(負荷)KL及び筒内ガス温度Tに基づいた3次元TCV開度マップを用いてTCV開度指示値Aを算出し、暖機を促進するために筒内ガス温度を上昇させるようにTCV63の開度を制御した場合の最大のトルクである暖機運転時最大トルクTwを算出する(S308)。
そして、暖機運転時最大トルクTwが目標トルクTp以上であるか否かを判定し(S310)、暖機運転時最大トルクTwが目標トルクTpより小さいと判定された場合(S310:No)、TCV63の開度制御を実行せず、ECU51は、次の制御周期に移行する。暖機運転時最大トルクTwが目標トルクTp以上であると判定された場合(S310:Yes)、ECU51は、暖機促進運転として、S308にて算出されたTCV開度指示値Aに基づいてTCV63の開度制御を実行する(S312)。したがって、ノッキングが発生しにくい運転状態において、筒内ガス温度を上昇させるようにTCV63の開度を制御し筒内ガス温度を上昇させることで、目標トルクTp(要求トルクTd)を実現しノッキングを適正に回避した上で、シリンダボア13の壁面などへの伝熱量を増加することができ、エンジン冷却水温を上昇させエンジン10の暖機を促進することができる。この結果、触媒の暖機性を向上することができ機関始動時のエミッション性を向上することができ、また、オイルの暖機性も向上することができフリクションも低減することができる。
以上のように、本発明に係る内燃機関は、吸気通路に吸気流制御弁を備える種々の内燃機関に用いて好適である。
10 エンジン(内燃機関)
14 ピストン
18 燃焼室
19 吸気ポート
20 排気ポート
21 吸気弁
22 排気弁
39 スロットル弁
41 インジェクタ
45 点火プラグ
51 ECU(制御手段)
55 スロットルポジションセンサ(負荷検出手段)
57 クランク角センサ(回転速度検出手段)
62 吸気通路
63 TCV(吸気流制御手段)
71 筒内ガス温度算出部(筒内ガス温度検出手段)
14 ピストン
18 燃焼室
19 吸気ポート
20 排気ポート
21 吸気弁
22 排気弁
39 スロットル弁
41 インジェクタ
45 点火プラグ
51 ECU(制御手段)
55 スロットルポジションセンサ(負荷検出手段)
57 クランク角センサ(回転速度検出手段)
62 吸気通路
63 TCV(吸気流制御手段)
71 筒内ガス温度算出部(筒内ガス温度検出手段)
Claims (4)
- 燃焼室に連通し吸気弁により開閉自在な吸気ポートを含んで構成されると共にスロットル弁が設けられる吸気通路と、
吸気方向に対して前記スロットル弁より下流の前記吸気通路に設けられ該吸気通路を開閉可能な吸気流制御手段と、
前記燃焼室内のガス温度である筒内ガス温度を検出可能な筒内ガス温度検出手段と、
内燃機関回転速度を検出可能な回転速度検出手段と、
内燃機関負荷を検出可能な負荷検出手段と、
前記内燃機関回転速度、前記内燃機関負荷及び前記筒内ガス温度に基づいて、前記吸気流制御手段の開度を制御する制御手段とを備えることを特徴とする、
内燃機関。 - 前記制御手段は、取り出せるトルクが最大となる最適点火時期にて運転するとノッキングが発生しうる運転状態において前記筒内ガス温度が低下するように前記吸気流制御手段の開度を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の内燃機関。 - 前記制御手段は、ノッキングが発生しやすい過渡運転状態において、前記筒内ガス温度が低下するように前記吸気流制御手段の開度を制御することを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の内燃機関。 - 前記制御手段は、暖機が未完了、かつ、ノッキングが発生しにくい運転状態において、前記筒内ガス温度が上昇するように前記吸気流制御手段の開度を制御することを特徴とする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関。
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- 2007-11-21 JP JP2007302035A patent/JP2009127485A/ja active Pending
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