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JP4968522B2 - トロイダル型無段変速機 - Google Patents

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JP4968522B2 JP2007127470A JP2007127470A JP4968522B2 JP 4968522 B2 JP4968522 B2 JP 4968522B2 JP 2007127470 A JP2007127470 A JP 2007127470A JP 2007127470 A JP2007127470 A JP 2007127470A JP 4968522 B2 JP4968522 B2 JP 4968522B2
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Description

本発明は、自動車や各種産業機械の変速機などに利用可能なトロイダル型無段変速機に関する。
例えば自動車用変速機として用いるダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機は、図14および図15に示すように構成されている。図14に示すように、ケーシング50の内側には入力軸1が回転自在に支持されており、この入力軸1の外周には、2つの入力側ディスク2,2と2つの出力側ディスク3,3とが取り付けられている。また、入力軸1の中間部の外周には出力歯車4が回転自在に支持されている。この出力歯車4の中心部に設けられた円筒状のフランジ部4a,4aには、出力側ディスク3,3がスプライン結合によって連結されている。
入力軸1は、図中左側に位置する入力側ディスク2とカム板(ローディングカム)7との間に設けられたローディングカム式の押圧装置12を介して、駆動軸22により回転駆動されるようになっている。また、出力歯車4は、2つの部材の結合によって構成された仕切壁(中間壁)13に対しアンギュラ玉軸受107を介して支持されるとともに、この仕切壁13を介してケーシング50内に支持されており、これにより、入力軸1の軸線Oを中心に回転できる一方で、軸線O方向の変位が阻止されている。
出力側ディスク3,3は、入力軸1との間に介在されたニードル軸受5,5によって、入力軸1の軸線Oを中心に回転自在に支持されている。また、図中左側の入力側ディスク2は、入力軸1にボールスプライン6を介して支持され、図中右側の入力側ディスク2は、入力軸1にスプライン結合されており、これら入力側ディスク2は入力軸1と共に回転するようになっている。また、入力側ディスク2,2の内側面(凹面;トラクション面とも言う)2a,2aと出力ディスク3,3の内側面(凹面;トラクション面とも言う)3a,3aとの間には、パワーローラ11(図15参照)が回転自在に挟持されている。
図14中右側に位置する入力側ディスク2の内周面2cには、段差部2bが設けられ、この段差部2bに、入力軸1の外周面1aに設けられた段差部1bが突き当てられるとともに、入力側ディスク2の背面(図14の右面)は、入力軸1の外周面に形成されたネジ部に螺合されたローディングナット9に突き当てられている。これによって、入力側ディスク2の入力軸1に対する軸線O方向の変位が実質的に阻止されている。また、カム板7と入力軸1の鍔部1dとの間には、皿ばね8が設けられており、この皿ばね8は、各ディスク2,2,3,3の凹面2a,2a,3a,3aとパワーローラ11,11の周面11a,11aとの当接部に押圧力を付与する。
図14のA−A線に沿う断面図である図15に示すように、ケーシング50の内側であって、出力側ディスク3,3の側方位置には、両ディスク3,3を両側から挟む状態で一対のヨーク23A,23Bが支持されている。これら一対のヨーク23A,23Bは、鋼等の金属のプレス加工あるいは鍛造加工により矩形状に形成されている。そして、後述するトラニオン15の両端部に設けられた枢軸14を揺動自在に支持するため、ヨーク23A,23Bの四隅には、円形の支持孔18が設けられるとともに、ヨーク23A,23Bの幅方向の中央部には、円形の係止孔19が設けられている。
一対のヨーク23A,23Bは、ケーシング50の内面の互いに対向する部分に形成された支持ポスト64,68により、支持ポスト64,68を支点として揺動できるように支持されている。これらの支持ポスト64,68はそれぞれ、入力側ディスク2の内側面2aと出力側ディスク3の内側面3aとの間にある第1キャビティ221および第2キャビティ222にそれぞれ対向する状態で設けられている。
したがって、ヨーク23A,23Bは、各支持ポスト64,68に支持された状態で、その一端部が第1キャビティ221の外周部分に対向するとともに、その他端部が第2キャビティ222の外周部分に対向している。
第1および第2のキャビティ221,222は同一構造であるため、以下、第1キャビティ221のみについて説明する。
図15に示すように、ケーシング50の内側において、第1キャビティ221には、入力軸1に対し捻れの位置にある一対の枢軸(傾転軸)14,14を中心として揺動する一対のトラニオン15,15が設けられている。なお、図15においては、入力軸1の図示は省略している。各トラニオン15,15は、その本体部である支持板部16の長手方向(図15の上下方向)の両端部に、この支持板部16の内側面側に折れ曲がる状態で形成された一対の折れ曲がり壁部20,20を有している。そして、この折れ曲がり壁部20,20によって、各トラニオン15,15は、パワーローラ11を収容するための凹状の収容空間であるポケット部Pを形成している。また、各折れ曲がり壁部20,20の外側面には、各枢軸14,14が互いに同心的に設けられている。
支持板部16の中央部には円孔21が形成され、この円孔21には支軸としての変位軸23の基端部(第1の軸部)23aが支持されている。そして、各枢軸14,14を中心として各トラニオン15,15を揺動させることにより、これら各トラニオン15,15の中央部に支持された変位軸23の傾斜角度を調節できるようになっている。また、各トラニオン15,15の内側面から突出する変位軸23の先端部(第2の軸部)23bの周囲には、各パワーローラ11が回転自在に支持されており、各パワーローラ11,11は、各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の間に挟持されている。なお、各変位軸23,23の基端部23aと先端部23bとは、互いに偏心している。
また、前述したように、各トラニオン15,15の枢軸14,14はそれぞれ、一対のヨーク23A,23Bに対して揺動自在および軸方向(図15の上下方向)に変位自在に支持されており、各ヨーク23A,23Bにより、トラニオン15,15はその水平方向の移動を規制されている。前述したように、各ヨーク23A,23Bの四隅には円形の支持孔18が4つ設けられており、これら支持孔18にはそれぞれ、トラニオン15の両端部に設けた枢軸14がラジアルニードル軸受(傾転軸受)30を介して揺動自在(傾転自在)に支持されている。また、前述したように、ヨーク23A,23Bの幅方向(図14の左右方向)の中央部には、円形の係止孔19が設けられており、この係止孔19の内周面は円筒面として、支持ポスト64,68を内嵌している。すなわち、上側のヨーク23Aは、ケーシング50に固定部材52を介して支持されている球面ポスト64によって揺動自在に支持されており、下側のヨーク23Bは、球面ポスト68およびこれを支持する駆動シリンダ31の上側シリンダボディ61によって揺動自在に支持されている。
なお、各トラニオン15,15に設けられた各変位軸23,23は、入力軸1に対し、互いに180度反対側の位置に設けられている。また、これらの各変位軸23,23の先端部23bが基端部23aに対して偏心している方向は、両ディスク2,2,3,3の回転方向に対して同方向(図15で上下逆方向)となっている。また、偏心方向は、入力軸1の配設方向に対して略直交する方向となっている。したがって、各パワーローラ11,11は、入力軸1の長手方向に若干変位できるように支持される。その結果、押圧装置12が発生するスラスト荷重に基づく各構成部材の弾性変形等に起因して、各パワーローラ11,11が入力軸1の軸方向に変位する傾向となった場合でも、各構成部材に無理な力が加わらず、この変位が吸収される。
また、パワーローラ11の外側面とトラニオン15の支持板部16の内側面との間には、パワーローラ11の外側面の側から順に、スラスト転がり軸受であるスラスト玉軸受24と、スラストニードル軸受25とが設けられている。このうち、スラスト玉軸受24は、各パワーローラ11に加わるスラスト方向の荷重を支承しつつ、これら各パワーローラ11の回転を許容するものである。このようなスラスト玉軸受24はそれぞれ、複数個ずつの玉(転動体)26,26と、これら各玉26,26を転動自在に保持する円環状の保持器27と、円環状の外輪28とから構成されている。また、各スラスト玉軸受24の内輪軌道は各パワーローラ11の外側面(大端面)に、外輪軌道は各外輪28の内側面にそれぞれ形成されている。
また、スラストニードル軸受25は、トラニオン15の支持板部16の内側面と外輪28の外側面との間に挟持されている。このようなスラストニードル軸受25は、パワーローラ11から各外輪28に加わるスラスト荷重を支承しつつ、これらパワーローラ11および外輪28が各変位軸23の基端部23aを中心として揺動することを許容する。
さらに、各トラニオン15,15の一端部(図15の下端部)にはそれぞれ駆動ロッド(枢軸14から延びる軸部)29,29が設けられており、各駆動ロッド29,29の中間部外周面に駆動ピストン(油圧ピストン)33,33が固設されている。そして、これら各駆動ピストン33,33はそれぞれ、上側シリンダボディ61と下側シリンダボディ62とによって構成された駆動シリンダ31内に油密に嵌装されている。これら各駆動ピストン33,33と駆動シリンダ31とで、各トラニオン15,15を、これらトラニオン15,15の枢軸14,14の軸方向に変位させる駆動装置32を構成している。
このように構成されたトロイダル型無段変速機の場合、駆動軸22の回転は、押圧装置12を介して、各入力側ディスク2,2および入力軸1に伝えられる。そして、これら入力側ディスク2,2の回転が、一対のパワーローラ11,11を介して各出力側ディスク3,3に伝えられ、更にこれら各出力側ディスク3,3の回転が、出力歯車4より取り出される。
入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比を変える場合には、一対の駆動ピストン33,33を互いに逆方向に変位させる。これら各駆動ピストン33,33の変位に伴って、一対のトラニオン15,15が互いに逆方向に変位(オフセット)する。例えば、図15の左側のパワーローラ11が同図の下側に、同図の右側のパワーローラ11が同図の上側にそれぞれ変位する。その結果、これら各パワーローラ11,11の周面11a,11aと各入力側ディスク2,2および各出力側ディスク3,3の内側面2a,2a,3a,3aとの当接部に作用する接線方向の力の向きが変化する。そして、この力の向きの変化に伴って、各トラニオン15,15が、ヨーク23A,23Bに枢支された枢軸14,14を中心として、互いに逆方向に揺動(傾転)する。
その結果、各パワーローラ11,11の周面(トラクション面)11a,11aと各内側面2a,3aとの当接位置が変化し、入力軸1と出力歯車4との間の回転速度比が変化する。また、これら入力軸1と出力歯車4との間で伝達するトルクが変動し、各構成部材の弾性変形量が変化すると、各パワーローラ11,11およびこれら各パワーローラ11,11に付属の外輪28,28が、各変位軸23,23の基端部23a、23aを中心として僅かに回動する。これら各外輪28,28の外側面と各トラニオン15,15を構成する支持板部16の内側面との間には、それぞれスラストニードル軸受25,25が存在するため、前記回動は円滑に行われる。したがって、前述のように各変位軸23,23の傾斜角度を変化させるための力が小さくて済む。
ところで、このようなトロイダル型無段変速機において、パワーローラ11と入出力側ディスク2,3との動力伝達は、これらの部材表面の損傷を防止するべく、油膜を介したトラクション力により非接触で行なわれる。そのため、パワーローラ11と入出力側ディスク2,3との間に形成されるトラクション面には、トルクを非接触で伝達するための油膜を形成できる十分な量の潤滑油(トラクション油)を供給する必要があるとともに、ディスク2,3やパワーローラ11を回転可能に軸支する軸受(以下、パワーローラ軸受とも言う)等に対しても十分な潤滑を行なう必要がある。そのため、従来から、トラクション面やパワーローラ軸受へ潤滑油を供給するための様々な手段が提案されている(例えば、特許文献1ないし特許文献5参照)。このうち、特に、特許文献4および特許文献5では、変位軸23やパワーローラ11の外周部付近を含む複数の部位に油路を形成し、これらの油路からトラクション面へ潤滑油を供給している。
また、このような潤滑油(トラクション油)は、一般に、オイルポンプから様々な油路を通じてトラクション面やパワーローラ軸受部に対して供給されるが、潤滑油中に存在する金属摩耗粉等の異物(コンタミネーション)を除去するべくオイルポンプの給排口付近や駆動ロッド29、変位軸23などに設けられた油路の途中にフィルタを設ける技術も従来から数多く提案されている(例えば、特許文献6ないし特許文献8参照)。
特開2003−207011号公報 特許第3726670号公報 特表2006−503230号公報 実公平6−011426号公報 特開2001−289297号公報 特開2002−286110号公報 特開2005−69355号公報 特開2004−324877号公報
しかしながら、前述した従来の技術では、潤滑油を供給するために、複雑な構造の部材を必要とし、あるいは、複雑な油路の加工を必要とする。そのため、組み立てコストや加工コストが割高となり、コストダウンが困難になるという問題があった。また、特に、変位軸(パワーローラ支持軸)23に油路(貫通穴)を設けた特許文献4では、油路の方向が対向するパワーローラ11の方向に向いた一箇所のみであるため、変速比が1:1であった場合には、潤滑油がディスク2,3に噴射されず、十分な潤滑効果が得られない場合がある。
また、特許文献5に開示された技術では、パワーローラ11の外周部付近を含む複数の部位に油路を形成し、これらの油路からトラクション面へ潤滑油を供給しているため、パワーローラの強度が不足し、耐久性が低下するという問題がある。また、パワーローラ11の油路に角度を設けた場合でも、変速比が変化(パワーローラ11が傾転)した場合には、いずれか一方のディスクに潤滑油が供給されるものの、他方のディスクには潤滑油が供給されないため、結果として十分な潤滑効果を得ることが難しい。
本発明は、前記事情に鑑みて為されたもので、パワーローラの強度を維持しつつ簡単な構成でトラクション面に対して確実に潤滑油を供給することができるトロイダル型無段変速機を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、本発明は、互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持されるパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に傾転するとともに、前記パワーローラを軸受を介して回転自在に支持するトラニオンと、前記トラニオンに対して前記パワーローラを支持するための支軸とを備えるトロイダル型無段変速機において、
前記トラニオン側から供給される潤滑油を前記パワーローラの先端側へ流す油路が前記パワーローラの中心部に形成され、
前記支軸がパワーローラの中心部を貫き、前記油路の少なくとも一部が前記支軸の軸方向に沿って形成され、
前記支軸の先端に取り付けられ、前記油路を通じて供給される潤滑油の噴出方向を規定する噴出方向規定部材を更に備え、
前記噴出方向規定部材は、前記油路を通じて供給される潤滑油を前記ディスクに向けて方向付けることを特徴とする。
また、上記構成の他の態様において、前記噴出方向規定部材と前記支軸との間には、前記油路を通じて供給される潤滑油中の異物を除去するためのフィルタが介挿されている。
本発明によれば、高い応力が作用するトラクション面に近いパワーローラの外周側部位(したがって、十分な強度を要する)ではなく、高い応力が作用しないパワーローラの中心部に潤滑油のための油路が形成されているので、パワーローラの強度(耐久性)を維持しつつ潤滑油をトラクション面側へ供給することができる。また、油路を通じて供給される潤滑油の噴出方向を規定する噴出方向規定部材または噴出方向規定部を設けるとともに、その噴出方向規定部材または噴出方向規定部によって、油路を通じて供給される潤滑油をディスクに向けて方向付けるようにしているので、パワーローラの回転に伴う遠心力の作用により、どのような変速比であっても、トラクション面に対して確実に潤滑油を供給することができる(潤滑効果が高い)。しかも、これは、複雑な構造を要しないため、安価に達成できる。更に、本発明では、噴出方向規定部材とパワーローラまたは支軸との間に、油路を通じて供給される潤滑油中の異物を除去するためのフィルタが介挿されているので、異物の無い潤滑作用の優れた純度の高い潤滑油をトラクション面に供給することができ、潤滑効果を更に高めることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の特徴は、パワーローラ側からトラクション面に対して潤滑油を供給するための構造にあり、その他の構成および作用は前述した従来の構成および作用と同様であるため、以下においては、本発明の特徴部分についてのみ言及し、それ以外の部分については、図14および図15と同一の符号を付して簡潔に説明するに留める。
図1および図2は本発明の第1の実施形態を示している。特に図1に示すように、本実施形態では、トラニオン15側から供給される潤滑油をパワーローラ11の先端側へ流す油路115,140がパワーローラ11の中心部に形成されている。具体的には、本実施形態では、支軸としての変位軸23がパワーローラ11の中心部を貫いており、前記油路の少なくとも一部を形成する第1の油路140が変位軸23の中心部に軸方向に沿って形成されるとともに、第1の油路140と対向するパワーローラ11の先端中心部に第2の油路115が形成されている。なお、本実施形態では、変位軸23と外輪28とが一体に形成されている。また、パワーローラ11の回転により第2の油路115が第1の油路140に対してずれても第1の油路140から第2の油路115に対して潤滑油を確実に流すことができるように、本実施形態では、第2の油路115の内径が第1の油路140の内径よりも大きくなっている(図1の(c)参照)。
また、本実施形態において、パワーローラ11には、パワーローラ11の先端から軸方向に突出し且つ油路140,115を通じて供給される潤滑油の噴出方向を規定する噴出方向規定部130が形成されている。この噴出方向規定部130は、油路140,115を通じて供給される潤滑油をディスク2,3に向けて方向付けるようになっており、そのため、噴出方向規定部130には、第2の油路115からパワーローラ11の径方向に向けて放射状に延びる複数の径方向通路110が形成されている。なお、本実施形態では、更に、潤滑油をディスク2,3に向けて噴射するための噴射孔120がトラニオン15に設けられている。
したがって、このような構成において、トラニオン15側から供給される潤滑油は、図1および図2に矢印で示すように、変位軸23に形成された第1の油路140を通じて流れるとともに、この第1の油路140の先端から流出し、その一部は変位軸23とパワーローラ11との間に形成された隙間を通じて変位軸23とパワーローラ11との間に介在するパワーローラベアリング(ニードル軸受)202に流れ、残りの潤滑油はパワーローラ11の第2の油路115内に流入し、この第2の油路115から径方向通路110を通じてディスク2,3へと噴射される。無論、図2に示すようにパワーローラ11が傾転しても、潤滑油を両方のディスク2,3(トラクション面)に対して確実に供給できる。なお、本実施形態では、これに加えて、トラニン15に設けられた噴射孔120からもディスク2,3に対して潤滑油が噴き付けられる。
以上説明したように、本実施形態では、高い応力が作用するトラクション面に近いパワーローラ11の外周側部位(したがって、十分な強度を要する)ではなく、高い応力が作用しないパワーローラ11の中心部に潤滑油のための油路115,140が形成されているため、パワーローラ11の強度(耐久性)を低下させることなく潤滑油をトラクション面側へ供給することができる。また、油路115,140を通じて供給される潤滑油の噴出方向を規定する噴出方向規定部130を設けるとともに、その噴出方向規定部130によって、油路115,140を通じて供給される潤滑油をディスク2,3に向けて方向付けるようにしているため、パワーローラ11の回転(図1に矢印で示す)に伴う遠心力の作用により、どのような変速比であっても(図2参照)、トラクション面に対して確実に潤滑油を供給することができる(潤滑効果が高い)。しかも、これは、複雑な構造を要しないため、安価に達成できる。
図3〜図5は本発明の第2の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、トラニオン15側から供給される潤滑油をパワーローラ11の先端側へ流す油路140がパワーローラ11の中心部に形成されている。具体的には、本実施形態では、支軸としての変位軸23がパワーローラ11の中心部を貫いており、変位軸23の中心部に油路140が軸方向に沿って形成されている。また、この油路140は、トラニオン15を貫く潤滑油供給孔209に連通しており、潤滑油供給孔209には、駆動シリンダ31側からの油を導く潤滑油管路200が接続されている。なお、油路140からは、パワーローラベアリング(ニードル軸受)202へと向かう径方向の油穴142が複数分岐している。また、本実施形態においても、変位軸23は外輪28と一体に形成されている。また、油路140は変位軸23の先端に達して開口していても良いが、変位軸23の先端に達していなくても良い。
また、本実施形態において、変位軸23には、パワーローラ11の先端から軸方向に突出し且つ油路140を通じて供給される潤滑油の噴出方向を規定する噴出方向規定部170が形成されている。この噴出方向規定部170は、油路140を通じて供給される潤滑油をディスク2,3に向けて方向付けるようになっており、そのため、噴出方向規定部170には、油路140からパワーローラ11の径方向に向けて放射状に延びる複数の径方向通路148が形成されている。
したがって、このような構成においても、トラニオン15側から供給される潤滑油は、図3〜図5に矢印で示すように、潤滑油管路200および潤滑油供給孔209を介して、変位軸23に形成された油路140を通じて流れ、その一部は油穴142を通じてパワーローラベアリング202に流れ、残りは油路140の先端から径方向通路148を通じてディスク2,3へと噴射される。したがって、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施形態では、トラクション面用の油路140が変位軸23の中心部のみに設けられているため、パワーローラ11と共に油路140が回転せず(この点は第1の実施形態と異なる)、したがって、ディスク2,3に向けて正確に潤滑油を供給できる。
図6は本発明の第3の実施形態を示している。本実施形態は第1の実施形態の変形例であり、図示のように、第2の油路115は、パワーローラ11の先端側で当該油路115に対して所定の角度を成して斜めに延びる傾斜分岐路300を有している。そして、この傾斜分岐路300はパワーローラ11の先端面で開口している。したがって、このような構成によれば、トラクション面に対する潤滑油の噴射角度を広げることができ、トラクション面の幅広い領域にわたって潤滑油を供給できる。
図7および図8は本発明の第4の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、トラニオン15側から供給される潤滑油をパワーローラ11の先端側へ流す油路115,140がパワーローラ11の中心部に形成されている。具体的には、本実施形態では、支軸としての変位軸23がパワーローラ11の中心部を貫いており、前記油路の少なくとも一部を形成する第1の油路140が変位軸23の中心部に軸方向に沿って形成されるとともに、第1の油路140と対向するパワーローラ11の先端中心部に第2の油路115が形成されている。
また、本実施形態において、パワーローラ11の先端には、油路140,115を通じて供給される潤滑油の噴出方向を規定する噴出方向規定部材450が着脱自在に取り付けられている。特に本実施形態において、噴出方向規定部材450は、六角ボルトから成っており、パワーローラ11の先端に形成されたネジ穴11Aに螺合される。
また、噴出方向規定部材450は、油路140,115を通じて供給される潤滑油をディスク2,3に向けて方向付けるようになっており、そのため、噴出方向規定部材450には、第2の油路115と連通し且つこの油路115から受ける潤滑油をディスク2,3に向けて方向付けるための少なくとも1つの通路が形成されている。具体的に、このような通路は、本実施形態では、第2の油路115に接続し且つ当該油路115の方向に延びる1つの中心通路451と、この中心通路451からパワーローラ11の径方向に向けて放射状に延びる複数の径方向通路452とから成っている。なお、本実施形態において、油路115,140および通路451,452の個数は1つであっても複数であっても構わない。
また、本実施形態において、噴出方向規定部材450とパワーローラ11との間には、ネジ穴11A内に位置して、油路115を通じて供給される潤滑油中の異物を除去するためのフィルタ500(図8も参照)が介挿されている。このフィルタ500は、噴出方向規定部材450をネジ穴11Aに螺合する際にネジ穴11内に挿入され、噴出方向規定部材450とパワーローラ11との間で挟持される(図7参照)。
したがって、このような構成において、トラニオン15側から供給される潤滑油は、図7に矢印で示すように、変位軸23に形成された第1の油路140を通じて流れるとともに、この第1の油路140の先端から流出し、その一部は変位軸23とパワーローラ11との間に形成された隙間を通じて変位軸23とパワーローラ11との間に介在するパワーローラベアリング202に流れ、残りの潤滑油はパワーローラ11の第2の油路115内に流入し、この第2の油路115から噴出方向規定部材450の各通路451,452を通じてディスク2,3へと噴射される。
したがって、本実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。また、特に本実施形態では、噴出方向規定部材450とパワーローラ11との間にフィルタ500が介挿されているため、異物の無い潤滑作用の優れた純度の高い潤滑油をトラクション面に供給することができ、潤滑効果を更に高めることができる。また、その場合、フィルタ500の固定を噴出方向規定部材450が兼ねているため、フィルタ500のための固定部材を別個に設ける必要がなく、したがって、部品点数を減らして装置の小型化を図ることができる。また、本実施形態では、従来のように油路の途中(油路の途中にフィルタを設けると、その後の油路内で潤滑油中に再び異物が混入する虞がある)ではなく、パワーローラ先端の潤滑油噴射口にフィルタを設けているため、トラクション面に噴き付けられる潤滑油中に異物が混入することがない。なお、噴出方向規定部材450は六角ボルトに限らない。例えば図9に示すように中心穴の無い六角ボルトを用いても良く、あるいは、他の形状のボルトを用いても構わない。また、ボルトでなくても良い。
図10は本発明の第5の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、トラニオン15側から供給される潤滑油をパワーローラ11の先端側へ流す油路140がパワーローラ11の中心部に形成されている。具体的には、本実施形態では、支軸としての変位軸23がパワーローラ11の中心部を貫いており、変位軸23の中心部に油路140が軸方向に沿って形成されている。
また、本実施形態において、パワーローラ11の先端には、油路140を通じて供給される潤滑油の噴出方向を規定する噴出方向規定部材450Aが着脱自在に取り付けられている。特に本実施形態において、噴出方向規定部材450Aは、六角ボルトから成っており、変位軸23の先端に形成されたネジ穴650に螺合される。
また、噴出方向規定部材450Aは、油路140を通じて供給される潤滑油をディスク2,3に向けて方向付けるようになっており、そのため、噴出方向規定部材450Aには、油路140と連通し且つこの油路140から受ける潤滑油をディスク2,3に向けて方向付けるための少なくとも1つの通路が形成されている。具体的に、このような通路は、本実施形態では、油路140に接続し且つ当該油路140の方向に延びる1つの中心通路451と、この中心通路451の先端側からパワーローラ11の径方向に向けて放射状に延びる複数の径方向通路452とから成っている。また、中心通路451の基端側からは、噴出方向規定部材450Aをネジ穴650に取り付けた際にパワーローラベアリング202へと向かうように径方向に延びる油穴453が複数分岐している。なお、本実施形態において、油路140および通路451,452,453の個数は1つであっても複数であっても構わない。
また、本実施形態において、噴出方向規定部材450Aとパワーローラ11との間には、ネジ穴650内に位置して、油路140を通じて供給される潤滑油中の異物を除去するためのフィルタ500が介挿されている。このフィルタ500は、噴出方向規定部材450Aをネジ穴650に螺合する際にネジ穴650内に挿入され、噴出方向規定部材650とパワーローラ11との間で挟持される。
したがって、このような構成において、トラニオン15側から供給される潤滑油は、図10に矢印で示すように、変位軸23に形成された油路140を通じて流れ、この油路140から噴出方向規定部材450Aの中心通路451に流入するとともに、その一部は油穴453を通じてパワーローラベアリング202に流れ、残りは径方向通路452を通じてディスク2,3へと噴射される。したがって、本実施形態においても第4の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
図11および図12は本発明の第6の実施形態を示している。図示のように、本実施形態では、トラニオン15側から供給される潤滑油をパワーローラ11の先端側へ流す油路115A,140がパワーローラ11の中心部に形成されている。具体的には、本実施形態では、支軸としての変位軸23がパワーローラ11の中心部を貫いており、前記油路の少なくとも一部を形成する第1の油路140が変位軸23の中心部に軸方向に沿って形成されるとともに、第1の油路140と対向するパワーローラ11の先端中心部に複数の第2の油路115Aが形成されている。
また、本実施形態において、パワーローラ11の先端には、油路140,115Aを通じて供給される潤滑油の噴出方向を規定する噴出方向規定部材450Bが着脱自在に取り付けられている。特に本実施形態において、噴出方向規定部材450Bは、円盤状のワッシャ(油キャッチャー)から成っており、パワーローラ11の先端との間にスペーサ702を介在させた状態でパワーローラ11の先端に形成されるネジ穴11Bにボルト700を螺合することにより、パワーローラ11の先端との間に所定の隙間Sを保ちつつパワーローラ11に対して固定され、前記隙間Sにより油路140,115Aを通じて供給される潤滑油をディスク2,3に向けて方向付けるようになっている。
また、本実施形態において、噴出方向規定部材450とパワーローラ11との間、より具体的にはスペーサ702とパワーローラ11の先端との間に、油路140,115Aを通じて供給される潤滑油中の異物を除去するためのフィルタ500(図12も参照)が介挿されている。このフィルタ500は、噴出方向規定部材450Bをボルト700により固定する際に一緒に固定されスペーサ702とパワーローラ11との間で挟持される(図11参照)。
したがって、このような構成において、トラニオン15側から供給される潤滑油は、図11に矢印で示すように、変位軸23に形成された第1の油路140を通じて流れるとともに、この第1の油路140の先端から流出し、その一部は変位軸23とパワーローラ11との間に形成された隙間を通じて変位軸23とパワーローラ11との間に介在するパワーローラベアリング202に流れ、残りの潤滑油はパワーローラ11の第2の油路115内に流入し、この第2の油路115から噴出方向規定部材450Bとパワーローラ11の先端との間の隙間Sを通じてディスク2,3へと噴射される。したがって、このような構成によっても第4の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
なお、図13は、噴出方向規定部材450Bを構成する円盤状のワッシャ(油キャッチャー)の変形例を示している。図示のように、この変形例に係る噴出方向規定部材450B’はパワーローラ11を覆うように略傘状に湾曲しており、パワーローラ11の周面11aに沿って潤滑用を方向付けることができるようになっている。
本発明は、シングルキャビティ型やダブルキャビティ型などの様々なハーフトロイダル型無段変速機に適用することができる。
(a)は本発明の第1の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の平面図、(b)は(a)のX−X線に沿う断面図、(c)はパワーローラ先端部の拡大部分断面図である。 パワーローラを傾転させた状態における潤滑油の噴射形態を示す概略図である。 (a)は本発明の第2の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部断面図である。 図3の構成におけるパワーローラ先端部の拡大部分断面図である。 図3のトロイダル型無段変速機の要部斜視図である。 (a)は本発明の第3の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の平面図、(b)は(a)のY−Y線に沿う断面図である。 本発明の第4の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の概略図である。 図7のトロイダル型無段変速機の噴出方向規定部材およびフィルタの分解斜視図である。 図8の噴出方向規定部材の変形例に係る斜視図である。 (a)は本発明の第5の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の概略図、(b)は(a)のトロイダル型無段変速機の噴出方向規定部材の斜視図である。 本発明の第6の実施形態に係るトロイダル型無段変速機の要部の概略図である。 図11のトロイダル型無段変速機の噴出方向規定部材、フィルタ、ボルト、スペーサの分解斜視図である。 図11のトロイダル型無段変速機の噴出方向規定部材の変形例に係る斜視図である。 従来のトロイダル型無段変速機における要部断面図である。 図14のA−A線に沿う断面図である。
符号の説明
2 入力側ディスク
3 出力側ディスク
11 パワーローラ
15 トラニオン
23 変位軸(支軸)
110,148,451,452 通路
115,115A,140 油路
120 噴射孔
130,170 噴出方向規定部
300 傾斜分岐路
450,450A,450B 噴出方向規定部材
500 フィルタ

Claims (6)

  1. 互いの内側面同士を対向させた状態で互いに同心的に且つ回転自在に支持された入力側ディスクおよび出力側ディスクと、これらの両ディスク間に挟持されるパワーローラと、前記入力側ディスクおよび前記出力側ディスクの中心軸に対して捻れの位置にあり且つ互いに同心的に設けられた一対の枢軸を中心に傾転するとともに、前記パワーローラを軸受を介して回転自在に支持するトラニオンと、前記トラニオンに対して前記パワーローラを支持するための支軸とを備えるトロイダル型無段変速機において、
    前記トラニオン側から供給される潤滑油を前記パワーローラの先端側へ流す油路が前記パワーローラの中心部に形成され、
    前記支軸がパワーローラの中心部を貫き、前記油路の少なくとも一部が前記支軸の軸方向に沿って形成され、
    前記支軸の先端に取り付けられ、前記油路を通じて供給される潤滑油の噴出方向を規定する噴出方向規定部材を更に備え、
    前記噴出方向規定部材は、前記油路を通じて供給される潤滑油を前記ディスクに向けて方向付けることを特徴とするトロイダル型無段変速機。
  2. 前記噴出方向規定部材は、前記支軸の先端に着脱自在に取り付けられることを特徴とする請求項1に記載のトロイダル型無段変速機。
  3. 前記噴出方向規定部材には、前記油路と連通し且つ当該油路から受ける潤滑油を前記ディスクに向けて方向付けるための少なくとも1つの通路が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のトロイダル型無段変速機。
  4. 前記噴出方向規定部材の前記通路は、前記油路に接続し且つ当該油路の方向に延びる1つの中心通路と、この中心通路からパワーローラの径方向に向けて放射状に延びる複数の径方向通路とから成ることを特徴とする請求項3に記載のトロイダル型無段変速機。
  5. 前記噴出方向規定部材と前記支軸との間には、前記油路を通じて供給される潤滑油中の異物を除去するためのフィルタが介挿されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
  6. 前記トラニオンには、潤滑油を前記ディスクに向けて噴射するための噴射孔が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のトロイダル型無段変速機。
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