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JP4940807B2 - 自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents

自動変速機の油圧制御装置 Download PDF

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JP4940807B2 JP2006201059A JP2006201059A JP4940807B2 JP 4940807 B2 JP4940807 B2 JP 4940807B2 JP 2006201059 A JP2006201059 A JP 2006201059A JP 2006201059 A JP2006201059 A JP 2006201059A JP 4940807 B2 JP4940807 B2 JP 4940807B2
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Description

本発明は、車両に搭載される自動変速機の油圧制御装置に関し、特に、ソレノイドバルブを備え、そのソレノイドバルブが故障したときに所定の変速段に固定されるフェイルセーフ機能を備えたものに関する。
近年の自動変速機において、各変速段を達成するためのクラッチ及びブレーキ(当明細書において、これらを総称して摩擦締結要素という)を制御する油圧機構構に、電気駆動される各種のソレノイドバルブを設け、そのソレノイドバルブの制御によって摩擦締結要素に供給する油圧(ライン圧)の大きさを調節したり、油圧を選択的に摩擦締結要素に供給したりする構成が採られている。
このような構成の場合に想定し得る故障形態として、ソレノイドバルブのオフフェイルがある。オフフェイルとは、通電不可乃至はそれに相当する状態となる故障形態である。特に、全てのソレノイドバルブがオフフェイルした場合を、当明細書では全フェイルと称する。全フェイルは、たとえばソレノイドバルブ用の集中カップラーが抜けた場合、制御ユニットがシステムダウンした場合、電源がダウンした場合等に発生し得る。
故障時の安全性を確保し、その被害を最小限に抑制するというフェイルセーフの観点からは、例えば車両用自動変速機等において走行中に全フェイルが発生した場合、少なくとも安全走行を維持し、望ましくはある程度の車速で自走できる程度にしておくことが必要である。
このような要求に対して、全フェイル発生時に特定の変速段が達成されるようにしたものが公知である。こうすることにより、全フェイル発生時にはその特定変速段での走行が可能となる。但し変速段はその特定変速段に固定されるので、発進性や高速走行性が制限されることはいたしかたない。あくまで緊急措置だからである。
例えば前進4速の自動変速機の場合、全フェイル時には第3速に固定されるように構成されたものがある。この場合、全フェイル発生時に起こるダウンシフトは多くても1段であり、急減速による危険度は小さい。また停止後の再発進に関しては、第3速発進となるから充分な発進加速は望めないものの、何とか発進することは可能である。そして第3速である程度の車速で走行することができ、例えば最寄りの修理工場まで自走することができる。
しかし近年の自動変速機は燃費向上や静粛性の向上のために、より多段化の傾向にある。たとえば前進6速の自動変速機ともなると、全フェイル時に第何段に固定するにしても走行中の急減速抑制(多段ダウンシフトの防止)と発進性の確保との両立が困難となる。
そこで、走行中に全フェイルが起こったときには少なくとも大きなダウンシフトが起こらないようにして急減速を抑制し、停止後の再発進時には比較的低速段となって発進性を確保するようにしたものが考えられている。例えば特許文献1には、走行中に全フェイルが起こった場合、第1〜第3速の場合には第3速に固定され、第4〜第6速の場合には現状の変速段に固定されるものが開示されている。この自動変速機は、その後、一旦Dレンジから外れた後(例えばNレンジに入れた後)に再度Dレンジとされた場合には第3速に固定され、以後その第3速固定状態を継続する。
特開2001−248728号公報
しかしながら、特許文献1に示される自動変速機は、このフェイルセーフを実現するための構造が比較的複雑であるという問題がある。具体的には、このフェイルセーフは主としてソレノイドバルブと切換バルブ(特許文献1においてサプライレリーズバルブと呼ばれるバルブ)とで実現されているが、そのソレノイドバルブはこのフェイルセーフ専用のソレノイドバルブである。また、その油圧バルブは、1本のスプール穴に2本のスプールが直列に挿着された比較的複雑なものである。
全フェイルは、実際には極めて稀に起こる故障である。その故障に対してフェイルセーフを準備しておくことは重要であるが、専用のソレノイドバルブを設ける等して多くのコストをかけることは得策ではない。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、ソレノイドバルブの全フェイル時に固定される特定変速段を2つ以上有する自動変速機を、簡単な構造で実現することを目的とする。
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、油圧機構を構成する全てのソレノイドバルブがオフフェイルした全フェイル状態のときに、低速段である第1特定変速段と該第1特定変速段より高速段である第2特定変速段とが択一的に達成可能とされる自動変速機の油圧制御装置において、オイルポンプから供給された作動油を、信号圧に応じたライン圧に調圧して出力するライン圧調圧バルブと、上記ライン圧を一定の第1定常圧に減圧して出力する第1定常圧出力バルブと、上記第1定常圧を減圧するソレノイドバルブであって、運転状態に応じた上記信号圧を出力するノーマリーオープンタイプのライン圧ソレノイドバルブと、上記第1定常圧が印加される第1ポートと、上記信号圧が印加される第2ポートとを有するとともに、第1切換位置と第2切換位置とに切換えられる特定変速段切換バルブと、複数の摩擦締結要素に対して上記ライン圧の選択供給を行うソレノイドバルブであって、上記全フェイル時に、上記特定変速段切換バルブが上記第1切換位置にあるときには上記第1特定変速段を達成し、上記第2切換位置にあるときには上記第2特定変速段を達成する変速用ソレノイドバルブと、上記全ソレノイドバルブの何れにも依らずに上記第1ポートへの上記第1定常圧の印加有無を切換え可能な第1ポート印加切換手段とを備え、上記特定変速段切換バルブは、上記第1定常圧が上記第1ポートに印加されていて且つ初期位置が上記第1切換位置であり且つ上記ライン圧ソレノイドバルブが正常である場合には、上記信号圧を低減制御することにより第2切換位置に切換え可能であり、上記第1定常圧が上記第1ポートに印加されていて且つ初期位置が上記第1切換位置であり且つ上記ライン圧ソレノイドバルブがオフフェイルしている場合には当該第1切換位置を継続し、上記第1定常圧が上記第1ポートに印加されていて且つ初期位置が第2切換位置にある場合には当該第2切換位置を継続し、上記第1定常圧が上記第1ポートに印加されていない場合には上記第1切換位置とされ、上記第1定常圧出力バルブの出力ポートと上記第1ポートとの間の油路上に、上記第1ポートへの上記第1定常圧の印加を遅延させる第1オリフィスが設けられていることを特徴とする。
請求項2に係る発明は、請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置において、上記第1ポート印加切換手段は、上記オイルポンプの駆動有無を切換えるオイルポンプ駆動切換手段であることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置において、上記第1ポート印加切換手段は、運転者が手動操作するシフトレバーに連動するマニュアルバルブであって、該マニュアルバルブは、上記シフトレバーが前進走行レンジにあるときには上記第1定常圧を上記第1ポートに導き、上記前進走行レンジにないときには導かないことを特徴とする。
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の自動変速機の油圧制御装置において、上記特定変速段切換バルブは、上記第2特定変速段を含む変速段で締結される所定の摩擦締結要素へのライン圧供給油路上に設けられるとともに、上記第1切換位置に切換えられたときに上記所定の摩擦締結要素への油圧供給を遮断することを特徴とする。
請求項5に係る発明は、請求項4記載の自動変速機の油圧制御装置において、当該自動変速機は前進6速の変速を可能とするものであって、上記所定の摩擦締結要素は、第4速乃至第6速において締結されることを特徴とする。
請求項6に係る発明は、請求項5記載の自動変速機の油圧制御装置において、上記第1特定変速段は第3速であり、上記第2特定変速段は第5速であることを特徴とする。
請求項7に係る発明は、請求項1乃至6の何れか1項に記載の自動変速機の油圧制御装置において、上記特定変速段切換バルブは、単一のスプールと、該特定変速段切換バルブが上記第1切換位置をとる方向に上記スプールを付勢するリターンスプリングと、上記リターンスプリングが設けられたリターンスプリング室に開口する第4ポートと、上記第4ポートと連絡する第3ポートと、第1ドレンポートとを有し、上記第4ポートに近い側から順に上記ドレンポート、上記第3ポート、上記第2ポート及び上記第1ポートが配設され、該特定変速段切換バルブが上記第1切換位置に切換えられているときには上記第2ポートと上記第3ポートとが連通され、上記第2切換位置に切換えられているときには上記第3ポートと上記第1ドレンポートとが連通されることを特徴とする。
請求項8に係る発明は、請求項7記載の自動変速機の油圧制御装置において、上記特定変速段切換バルブの上記スプールが有するランドは同一径であることを特徴とする。
請求項1の発明によると、以下説明するように、ソレノイドバルブの全フェイル時に固定される特定変速段を2つ以上有する自動変速機を、簡単な構造で実現することができる。
本発明の構成によれば、ライン圧ソレノイドバルブが正常であるとき、少なくとも前進走行中は特定変速段切換バルブを常時第2切換位置に維持しておくことができる。そのためには、まずオイルポンプを駆動し(以下特に記す場合を除きオイルポンプは常時駆動されているものとする)、第1定常圧が第1ポートに印加される方向に第1ポート印加切換手段を切換えておく。こうすると、当該特定変速段切換バルブの元の位置(初期位置)が第2切換位置であればその第2切換位置が継続される。そして初期位置が第1切換位置である場合にも、ライン圧ソレノイドバルブによって信号圧を低減制御することにより第2切換位置に切換えることができる。結局、常時第2切換位置に維持することができるのである。
ここで、各ソレノイドバルブが正常で、特定変速段切換バルブが第2切換位置にあるときに通常の変速制御が実行されるようにしておけば良い。例えば前進6速の自動変速機であれば、変速用ソレノイドバルブの駆動によって第1速〜第6速までを達成し得るようにしておけば良い。
そして、もしも走行中に全フェイルが発生したら、その場合、特定変速段切換バルブは第2切換位置を継続する。従って、変速段は比較的高速段の第2特定変速段に固定される。このため、大幅なダウンシフトが起こることが避けられ、急減速が抑制されるので安全性が確保される。
この第2特定変速段は、第1ポートへの第1定常圧の印加が停止されるまで継続する。そこで、例えば安全に停止した後、第1ポート印加切換手段を非印加側に切換えることにより、第1ポートへの油圧印加を停止させることができる。第1ポート印加切換手段は何れのソレノイドバルブに依るものでもないので、全フェイル時であってもこのような切換をなし得る。
こうして第1ポートへの第1定常圧の印加が停止されると、特定変速段切換バルブは第1切換位置に切換えられる。
その後、第1ポート印加切換手段を印加側に切換えたとき、全フェイル時であってライン圧ソレノイドバルブもオフフェイルしているので、特定変速段切換バルブは第1切換位置を継続する。従って、変速段は比較的低速段である第1特定変速段となり、以後、この第1特定変速段が固定される。こうすることにより、通常走行に比べて高速走行性は低下するものの、ある程度の発進性を確保するとともにある程度の車速での走行が可能となり、例えば最寄りの修理工場まで自走することができる。
以上の説明を端的に示すと、全フェイル時に、第1ポート印加切換手段が非印加側に切換えられるまでは第2特定変速段(高速段)に固定され、第1ポート印加切換手段が非印加側に切換えられると第1特定変速段(低速段)に切換わり、以後は第1ポート印加切換手段が印加側に切換えられても第1特定変速段(低速段)を固定的に継続することとなる。
つまりソレノイドバルブが全フェイル状態という一種の固定状態にあるにもかかわらず、第1特定変速段と第2特定変速段という2種類の変速段をとり得る。それを可能にしているのが特定変速段切換バルブである。そして特定変速段切換バルブの、ソレノイドバルブが正常である場合の動作と全フェイル時の動作とに違いを創出しているのが第2ポートに印加されるライン圧ソレノイドバルブの信号圧である。ライン圧ソレノイドバルブがオフフェイルしたときには、これがノーマリーオープンタイプ(非通電時に入力圧をそのまま出力するタイプ)であることから、信号圧は第1定常圧と略等しい圧力となる。これは信号圧としては最大の圧力である。一方、ライン圧ソレノイドバルブが正常であるときには、低減制御によって信号圧は第1定常圧より適宜低減させられる。この信号圧の相違によってバルブの動作の差異を創出しているのである。
このように、本来ライン圧を決定するための信号圧を、特定変速段切換バルブの第2ポートに印加し、特定変速段切換バルブの切換用にも用いている。つまりライン圧ソレノイドバルブを、特定変速段切換バルブの切換え用ソレノイドバルブとしても兼用している。こうすることにより、特定変速段切換バルブを切換えるための専用のソレノイドバルブを省略することができ、簡単で低コストな構造とすることができる。
なお、信号圧の低減制御は、第1ポートに第1定常圧の印加がなされた直後に一度行えば、それ以降は第1ポート印加切換手段が非印加側に切換えられるまでは行う必要がない。一度信号圧の低減制御によって特定変速段切換バルブが第2特定位置に切換えられた後は、信号圧がどのように変化しても第2特定位置が維持されるからである。従って、信号圧の低減制御がなされた後は、ライン圧制御のための信号圧の変動が特定変速段切換バルブの動作に悪影響を与えることはない。
さらに、本発明によると、第1オリフィスの絞り効果によって第1ポートへの第1定常圧の印加が大きく遅延されるので、以下に述べるように、より確実な特定変速段切換バルブの作動を図ることができる。
全フェイル時の第1ポートへの油圧の再印加は、第2ポートへの油圧印加よりも遅延させる必要がある。仮に第1ポートへの油圧再印加が第2ポートへの信号圧の印加よりも早い場合、第2ポートへの信号圧が相対的に遅れて印加されることにより、全フェイル時であるにもかかわらず、あたかも信号圧低減制御が実行されたかのように動作し、特定変速段切換バルブが第2切換位置に切換わってしまう虞があるからである。つまり第1ポートへの油圧の再印加が早すぎると、本来の狙いである第1特定変速段ではなく第2特定変速段に固定されてしまう虞がある。
そこで本発明によれば、第1オリフィスによって第1ポートへの油圧印加を大きく遅延させることにより、このような誤作動を防止し、より確実に狙いの第1特定変速段に固定させることができる。
請求項2の発明によれば、オイルポンプ駆動切換手段と第1ポート印加切換手段とを共用することができるので、簡単な構造とすることができる。
通常、自動変速機のオイルポンプはエンジンの出力軸(クランクシャフト)に直結されている。その場合、オイルポンプ駆動切換手段とはエンジンの始動・停止手段に他ならない。すなわち例えばエンジンのイグニションスイッチがオイルポンプ駆動切換手段となる。このようなスイッチは自動変速機(又はエンジン)に従来必然的に具備されているものである。従って、これを第1ポート印加切換手段として利用することにより、別途新たな部材を付加することなく第1ポート印加切換手段を設けることができる。
なおオイルポンプ駆動切換手段を第1ポート印加切換手段として用いるには、具体的には、オイルポンプの駆動時には常に第1定常圧出力バルブが正規の作動をするように構成するとともに、その出力圧である第1定常圧が常に特定変速段切換バルブの第1ポートに印加されるようにしておけば良い。
請求項3の発明によれば、オイルポンプ駆動中であってもマニュアルバルブ(シフトレバー)の操作によって第1ポートへの油圧印加を停止させることができる。例えば、シフトレバーが前進走行レンジ(Dレンジ)とされた場合には第1ポートに第1定常圧を印加し、それ以外(例えばNレンジ)とされた場合には印加されないように構成すれば良い。こうすることにより、オイルポンプの駆動(エンジンの運転)を停止させなくても、シフトレバーをDレンジからNレンジに切換えるだけで第1ポートへの第1定常圧の印加を停止させることができる。
つまり簡単な操作で第1ポートへの第1定常圧の印加停止と再印加(N→D)を行うことができる。
請求項4の発明によると、特定変速段切換バルブが第1切換位置に切換えられたときに所定の摩擦締結要素への油圧供給を遮断するという簡単な構造で確実に第2特定変速段への切換を禁止させることができる。
請求項5の発明によると、前進6速のうち、第2特定変速段を、比較的高速段である第4〜第6速の何れかとすることができる。従って、高速走行中に全フェイルが起こっても、大きなダウンシフトによる急減速が発生せず、安全を確保することができる。また、前進6速という比較的多くの変速段を有する自動変速機に本発明を適用することにより、変速段を2段階に固定することの効果を顕著に享受することができる。
請求項6の発明によると、第2特定変速段を第5速とすることにより、全フェイル時のダウンシフトを最大で1段に抑制することができるので、ダウンシフトによる急減速抑制効果をより確実に得ることができる。また第1特定変速段での走行においては、これを第3速とすることにより、ある程度の発進性を確保しつつ、ある程度の車速での走行を可能とすることができる。
請求項7及び8の発明によると、簡単な構造で特定変速段切換バルブを構成することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る自動変速機の骨格構造を示す図(スケルトン図)である。当実施形態の自動変速機ATはエンジンと連結されて車両に搭載されるものである。自動変速機ATは前進6段、後退1段の変速段を有する多段式自動変速機であって、いわゆる6速自動変速機である。
自動変速機ATは、主たる構成要素としてトルクコンバータ3と変速歯車機構2と図略の差動機構とを備えている。トルクコンバータ3は図外のエンジンのクランクシャフト8から直結で入力された動力を、作動流体(オイル。ATFともいう。)を介して変速歯車機構2の入力軸Inputに伝達する。またトルクコンバータ3は周知のロックアップ機構を備えており、クランクシャフト8と入力軸Inputとを直結状態(ロックアップ状態)とすることもできる。
またトルクコンバータ3と変速歯車機構2との間にオイルポンプ10が設けられている。オイルポンプ10のロータは、トルクコンバータ3を介してクランクシャフト8と一体回転するように構成されている。従ってオイルポンプ10は、エンジンの駆動と連動して駆動される。オイルポンプ10から吐出されるオイル(ATF)は、後述する油圧機構で利用される。
変速歯車機構2は、第1〜第4の4組のプラネタリギヤセットGS1,GS2,GS3,GS4を備えている。各プラネタリギヤセットは、トルクコンバータ3に近い側から、第1プラネタリギヤセットGS1、第4プラネタリギヤセットGS4、第3プラネタリギヤセットGS3、第2プラネタリギヤセットGS2の順で配設されている。
第1プラネタリギヤセットGS1は、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、該両ギヤS1,R1に噛合する第1ピニオンP1と、第1ピニオンP1を支持する第1キャリヤPC1とを有するシングルピニオンタイプのプラネタリギヤセットである。また第2プラネタリギヤセットGS2は、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、該両ギヤS2,R2に噛合する第2ピニオンP2と、第2ピニオンP2を支持する第2キャリヤPC2とを有するシングルピニオンタイプのプラネタリギヤセットである。なお、上記第1及び第2プラネタリギヤセットGS1,GS2における入力回転の減速比(即ち、それぞれのリングギヤ及びサンギヤの歯数の比)は、自動変速機ATのギヤリング設定に応じて、互いに同一にも、互いに異なる値にもすることができる。
また、第1プラネタリギヤセットGS1の第1サンギヤS1は、スプライン嵌合等によって変速機ケース1に常時固定されている。同様に第2プラネタリギヤセットGS2の第2サンギヤS2は、スプライン嵌合等によって変速機ケース1に常時固定されている。
一方、第1プラネタリギヤセットGS1の第1リングギヤR1は、第1連結メンバM1によって入力軸Inputに固定的に連結され、入力軸Inputと一体回転する。同様に第2プラネタリギヤセットGS2の第2リングギヤR2は、第2連結メンバM2によって入力軸Inputに固定的に連結され、入力軸Inputと一体回転する。
以上のような構成により、入力軸Inputの回転は、第1及び第2プラネタリギヤセットGS1,GS2においてそれぞれ常時減速されて、第1及び第2キャリヤPC1,PC2から出力されることとなる。
第3プラネタリギヤセットGS3は、第3サンギヤS3と、第3リングギヤR3と、該両ギヤS3,R3に噛合する第3ピニオンP3と、第3ピニオンP3を支持する第3キャリヤPC3とを有するシングルピニオンタイプのプラネタリギヤセットである。また第4プラネタリギヤセットGS4は、第4サンギヤS4と、第4リングギヤR4と、該両ギヤS4,R4に噛合する第4ピニオンP4と、第4ピニオンP4を支持する第4キャリヤPC4とを有するシングルピニオンタイプのプラネタリギヤセットである。
そして、第3リングギヤR3と第4キャリヤPC4とは第3連結メンバM3によって固定的に連結されており、互いに一体回転する。また第3キャリヤPC3と第4リングギヤR4とは第4連結メンバM4によって固定的に連結されており、互いに一体回転する。
つまり、第3及び第4プラネタリギヤセットGS3,GS4は、第3及び第4連結メンバM3,M4によって互いに連結されることにより、合わせて4つの回転要素(第3サンギヤS3、第3キャリヤPC3=第4リングギヤR4、第3リングギヤR3=第4キャリヤPC4、第4サンギヤS4)を有するようになっており、これによりシンプソン型の遊星歯車列を構成している。
出力ギヤOutputは、第4キャリヤPC4に固定的に連結され、第4キャリヤPC4と一体回転する。出力ギヤOutput以降は図を省略しているが、図外のアイドルギヤ、差動機構、車軸(ドライブシャフト)へと接続されている。
また変速歯車機構2は、5つの摩擦締結要素C1,C2,C3,B1,B2を備えている。これらは何れも湿式多板式のクラッチ又はブレーキであり、ロークラッチC1,ハイクラッチC2,3/5/RクラッチC3、2/6ブレーキB1,L/RブレーキB2で構成されている。
ロークラッチC1は、第1プラネタリギヤセットGS1の第1キャリヤPC1と第4プラネタリギヤセットGS4の第4サンギヤS4とを断続するクラッチである。ハイクラッチC2は、第1プラネタリギヤセットGS1の第1リングギヤR1と第3プラネタリギヤセットGS3の第3キャリヤPC3とを断続するクラッチである。3/5/RクラッチC3は、第2プラネタリギヤセットGS2の第2キャリヤPC2と第3プラネタリギヤセットGS3の第3サンギヤS3とを断続するクラッチである。
また2/6ブレーキB1は、第3プラネタリギヤセットGS3の第3サンギヤS3を選択的に変速機ケース1に固定させ、その回転を停止させるブレーキである。なお2/6ブレーキB1を作動させる図外の油圧ピストンは2つの油圧作動室(A作動室B1a,B作動室B1b。図4参照。)を有している。例えばA作動室B1aの油圧はピストンの内径側に作用し、B作動室B1bの油圧はピストンの外径側に作用する。2/6ブレーキB1の定常締結状態においては両作動室B1a,B1bに油圧が供給されているが、オフからオンに移行する締結初期には、先にA作動室B1aに油圧が供給され、やや遅れてB作動室B1bに油圧が供給されるように構成されている。A作動室B1aのみに油圧が供給されると、油圧変化に対するブレーキ容量の変化(ゲイン)が小さくなり、より精密な油圧制御が可能となる。後述するように2/6ブレーキB1は第6速で締結されるブレーキであって、ブレーキ容量のゲインが大きいと変速時のトルク変動(変速ショック)が大きくなり易い。そこで、締結初期にA作動室B1aのみに油圧を供給し、ブレーキ容量のゲインを低減させている。
L/RブレーキB2は、第3プラネタリギヤセットGS3の第3キャリヤPC3(=第4プラネタリギヤセットGS4の第4リングギヤR4)を選択的に変速機ケース1に固定させ、その回転を停止させるブレーキである。
さらに変速歯車機構2は、ワンウェイクラッチOWCを備える。ワンウェイクラッチOWCは、第3プラネタリギヤセットGS3の第3キャリヤPC3(=第4プラネタリギヤセットGS4の第4リングギヤR4)の一方向(入力軸Inputと同方向)の回転を許容し、その逆回転を阻止する機械的部材である。
変速歯車機構2は、各摩擦締結要素C1,C2,C3,B1,B2のうちの何れかを選択的に締結させることにより、前進6段、後退1段の変速段をとる。
変速歯車機構2は、以上のような骨格構成であるが、その特徴として、ラビニヨタイプ等の複合型プラネタリギヤセットを含まず、ダブルサンギヤタイプ、ダブルピニオンタイプ、ダブルリングギヤタイプのプラネタリギヤセットを必要としない上に、摩擦締結要素が5つと比較的少ないことが挙げられる。従って、コンパクト化、コスト及び重量の低減、騒音の低減等に有利となっている。
図2は、各シフトレンジ及び各変速段における各摩擦締結要素の断続状態を示す図である。この図で、○印は当該摩擦締結要素が締結されていることを示し、無印は解放されていることを示している。当実施形態の自動変速機ATでは、運転者が操作する図外のシフトレバーの位置(シフトレンジ)として、P(駐車)レンジ、R(後退)レンジ、N(中立)レンジ、D(走行)レンジがある。またDレンジでは、通常の自動変速モードに代えて、運転者の意思によりM(マニュアル)モードを選択することができる。Mモードでは、シフトレバーの操作によって運転者が手動で変速段を決定する。
Pレンジ及びNレンジでは全ての摩擦締結要素が解放されているので図2では省略している。また第1速については、Mモードの場合と自動変速モードの場合とで相違があるので、Mモードの第1速(以下第M1速(M1st)という)と自動変速モードの第1速(以下第D1速(D1st)という)とを併記している。第2速以上はMモードも自動変速モードも共通である。
図2に示すように、Rレンジでは、3/5/RクラッチC3及びL/RブレーキB2が締結される。第M1速ではロークラッチC1とL/RブレーキB2とが締結される。第D1速ではロークラッチC1が締結される。
第M1速と第D1速との違いは、L/RブレーキB2の締結の有無である。第M1速ではL/RブレーキB2が締結されることにより、変速歯車機構2の出力ギヤOutputから入力軸Inputへの逆駆動力の伝達が可能となる。従って車両として強いエンジンブレーキを得ることができる。このことから、第M1速は急な下り坂等、強いエンジンブレーキが作用した方が走行し易い場合に適した変速段である。
一方、第D1速ではL/RブレーキB2が解放される。そして出力ギヤOutputから入力軸Inputへの逆駆動力は、ワンウェイクラッチOWCが空転することによって伝達されない。従って車両として強いエンジンブレーキが作用しない。このことから、第D1速は平坦路等、強いエンジンブレーキが作用しない方が走行し易い場合に適した変速段である。
第2速ではロークラッチC1と2/6ブレーキB1とが締結される。第3速ではロークラッチC1と3/5/RクラッチC3とが締結される。第4速ではロークラッチC1とハイクラッチC2とが締結される。第5速ではハイクラッチC2と3/5/RクラッチC3とが締結される。第6速ではハイクラッチC2と2/6ブレーキB1とが締結される。
図2に示される各摩擦締結要素の選択断続は、各摩擦締結要素への油圧の給排を制御する油圧機構によって行われる。以下、その油圧機構について説明する。
図3は、油圧機構に含まれる6個のソレノイドバルブの、各シフトレンジ及び各変速段における通電状態を示す図である。各ソレノイドバルブは、図外のコントローラによって電気制御されるアクチュエータである。油圧機構は、この各ソレノイドバルブの駆動によって変速を含む所定の動作がなされるように構成されている。
図3において、上段の8行は各ソレノイドバルブが正常時の場合を示し、下段の2行は故障時、詳しくは全てのソレノイドバルブがオフフェイル(非通電状態またはそれに相当する状態に固定された故障)した場合を示す。以下、このような故障形態を全フェイルと称する。
6個のソレノイドバルブは、単品の機能としては1個のオンオフソレノイドバルブSOL1(以下オンオフSOL1という)と5個のリニアソレノイド(以下ライン圧リニアVFSPL、第1〜第4シフトリニアVFS1〜VFS4という)に分類される。また油圧機構における役割から、1個のライン圧ソレノイドバルブ(ライン圧リニアVFSPL)と5個の変速用ソレノイドバルブ(オンオフSOL1、第1〜第4シフトリニアVFS1〜VFS4)とに分類される。
オンオフSOL1は、ノーマリーオープンタイプのオンオフソレノイドバルブである。ここでノーマリーオープンとは、非通電時にオープン状態となって入力圧をそのまま出力側に導き、通電時にクローズ状態となって出力側から油圧を出力しないものをいう。オンオフSOL1は、通電の有無によってクローズ状態とオープン状態とに択一的に切換えられる。図3に示すように、オンオフSOL1は、Rレンジ及び第M1速で通電され(○印で示す)、クローズ状態となる。その他の変速段では非通電とされ、オープン状態となる。
ライン圧リニアVFSPLは、図略のデューティソレノイドを内蔵し、そのデューティ比を変化させることによって出力圧を調整することができる。ライン圧リニアVFSPLは、運転状態に適したライン圧(各摩擦締結要素に分配供給される油圧)を作るために、デューティ比が絶えず0〜100%の間で変動している。図3にはそのような部分通電状態を△印で示している。ライン圧リニアVFSPLはノーマリーオープンタイプであって、非通電時(完全オフ時)には完全オープン状態となり、連続通電時(完全オン時)には完全クローズ状態となる。
第1〜第4シフトリニアVFS1〜VFS4は、デューティソレノイドを内蔵して出力圧を調整できる点はライン圧リニアVFSPLと同様であるが、出力圧の調整は専ら変速中に各摩擦締結要素への油圧の給排速度を調節するために行われ、変速時以外の定常時には連続通電(完全オン、図中○印で示す)か非通電(完全オフ、図中無印で示す)かの何れかが択一選択される。以下、特に記す場合を除き、第1〜第4シフトリニアVFS1〜VFS4についてオン又はオフというときには、この完全オン又は完全オフを指すものとする。
第1シフトリニアVFS1はノーマリーオープンタイプであって、Rレンジ及び第5速と第6速でオンとされ、クローズ状態となる。その他の変速段ではオフとされ、オープン状態となる。
第2シフトリニアVFS2はノーマリークローズタイプである。ここでノーマリークローズとは、ノーマリーオープンとは逆に、オフ時にクローズ状態となって出力側から油圧を出力せず、オン時にオープン状態となって入力圧をそのまま出力側に導くものをいう。第2シフトリニアVFS2は、第2速と第6速でオンとされ、オープン状態となる。その他の変速段ではオフとされ、クローズ状態となる。
第3シフトリニアVFS3はノーマリーオープンタイプであって、第M1速、第D1速、第2速、第4速及び第6速でオンとされ、クローズ状態となる。その他の変速段ではオフとされ、オープン状態となる。
第4シフトリニアVFS4はノーマリーオープンタイプであって、第D1速、第2速及び第3速でオンとされ、クローズ状態となる。その他の変速段ではオフとされ、オープン状態となる。
なお図3の下段2行に示すように、全フェイル時には全てのソレノイドバルブがオフまたはそれに相当する状態(無印で示す)となる。従ってノーマリーオープンタイプのものは全て完全オープン状態に固定され、ノーマリークローズタイプのものは全て完全クローズ状態に固定される。このように全ソレノイドバルブが1つの状態に固定されるにもかかわらず、走行中に全フェイルが起こった場合には変速歯車機構2は第5速に固定され、その後、一旦オイルポンプ10(エンジン)を停止、再始動させてD(走行)レンジに入れると第3速に固定される。これは当実施形態の特徴であるフェイルセーフ機能、とりわけハイカットバルブV14(図15参照)の作用による。これに関しては後に詳述する。
図4〜図12は、各シフトレンジ及び各変速段における油圧機構の主要部の油圧回路図である。まず図4を参照してこの油圧機構の構成について説明する。油圧機構の主な構成要素は、上記6個の各ソレノイドバルブに加え、オイルポンプ10、11本のバルブV10〜V20、5個のアキュームレータAC1〜AC5、チェックボールCB1、油圧スイッチPSW、各要素を連絡する多数の油路L11〜L69(油圧が作用している油路を太線で示す)、その各油路上に適宜設けられたオリフィスF11〜F70等である。
オイルポンプ10は、図外のオイルパンに滞留された作動油(ATF)を図外のオイルストレーナを介して吸入し、油路L11に吐出する。なお油路L11の油圧は、後述するプレッシャレギュレータバルブV13(以下PレギュレータバルブV13という)によってライン圧に調圧されている。
またオイルポンプ10は、上述したようにエンジンンに連動して駆動される。この意味で、エンジンを始動・停止させるイグニションスイッチ9が、オイルポンプの駆動有無を切換えるオイルポンプ駆動切換手段として機能する(イグニションスイッチ9が直接オイルポンプ10の駆動を切換えるわけではないが、油圧回路図には模式的にイグニションスイッチ9とオイルポンプ10との関係を示している)。
11本のバルブV10〜V20は、図4の下段左から順にソレノイドレデューシングバルブV11(以下SOL−RedバルブV11という)、パイロットシフトバルブV12、PレギュレータバルブV13、マニュアルバルブV10、図4の中段左から順にハイカットバルブV14、ローカットバルブV15、2/6カットバルブV16、3/5/RカットバルブV17、図4の上段左から順にL/RシフトバルブV18、ローリレイバルブV19、アキュームシフトバルブV20(以下AccシフトバルブV20という)である。
何れのバルブもいわゆるスプール弁であり、円筒状(または段付き円筒状)のスプール穴が形成されたアルミニウム製のブロック体(バルブボディVB)と、そのスプール穴に僅かな隙間をもって嵌挿され、軸方向に摺動可能なスプールとを有する。またマニュアルバルブV10以外のバルブは、上記スプールを軸方向一方側に付勢するリターンスプリングを有する。以下の説明において、各リターンスプリングが配設された側をそのバルブ(スプール)の基端側、逆側を先端側という。
マニュアルバルブV10は、ライン圧をシフトレンジに応じた所定の油路に分配供給するバルブである。他のスプール弁が油圧とリターンスプリングの付勢力(以下スプリング力とも言う)とのバランスによって自動的に作動するのに対し、マニュアルバルブV10は手動で作動する。すなわちマニュアルバルブV10のスプールは図外のシフトレバーに連設されており、運転者のシフトレバー操作に連動して摺動する。マニュアルバルブV10は、油路L11からライン圧を受け入れる。そしてPレンジではライン圧を出力せず、R、N、Dの各レンジでは、それぞれ所定の油路にライン圧を出力する。当回路図では図を簡潔にするために、マニュアルバルブV10を模式的に図示し、その出力油路を白抜き矢印記号「R」、「DN」、「D」で示す。「R」はRレンジで出力される油路、「DN」はDレンジ及びNレンジで出力される油路、「D」はDレンジで出力される油路を示す。
なお、回路図中の各所に同様の記号が付されているが、これは、その各箇所がマニュアルバルブV10の同記号の出力油路と接続されていることを示す。また同様の白抜き矢印記号「B」は、マニュアルバルブV10の作動に係わらず常時ライン圧が作用している油路(例えば油路L11)と接続されていることを示す。
SOL−RedバルブV11は、ライン圧を元圧として、そのライン圧を一定の第1定常圧に減圧して出力する第1定常圧出力バルブである。
SOL−RedバルブV11は、先端側(図の右側)から順に、ポートP11、P12、P13を有する。
ポートP12には、油路L11からライン圧が供給される。そのライン圧は一定圧(第1定常圧)に減圧され、ポートP13から出力される。ポートP13から出力された第1定常圧は、オリフィスF11を介してポートP11にパイロット圧として印加される。
SOL−RedバルブV11は、スプールを先端側に押圧するスプリング力と、パイロット圧による基端側への押圧力とがバランスするように調圧する。スプールの調圧位置においてリターンスプリング力が一定なので、第1定常圧も一定となる。
第1定常圧の元圧は、オイルポンプ10が駆動しているかぎり、油路L11を経由してポートP12に導かれる。従って、オイルポンプ10が駆動し、油路L11のライン圧が第1定常圧の設定値より低くならないかぎり(通常、ライン圧は第1定常圧の設定値より高くなるように制御される)、SOL−RedバルブV11は所定の第1定常圧を出力する。
第1定常圧は、オリフィスF13を介して油路L13に導かれる。そしてライン圧リニアVFSPLに入力される。ライン圧リニアVFSPLは、第1定常圧を元圧としてライン圧用の信号圧(以下単に信号圧というときはこのライン圧用の信号圧を指す)を油路L15に出力する。信号圧は、主にPレギュレータバルブV13の制御を行うための油圧であって、運転状態に応じて適宜高さが調整される油圧である。具体的には、各摩擦締結要素が高いトルク容量を必要とするとき、換言すれば高いライン圧が必要とされるときほど高い信号圧とされる。
なお信号圧は、ライン圧を減圧して得られた第1定常圧を、さらに減圧して得られる油圧なのでライン圧以下の高さとなる。また図3に示すようにライン圧リニアVFSPLがノーマリーオープンタイプなので、全フェイル時には信号圧は第1定常圧(信号圧としては最高圧)と略等しくなる。
パイロットシフトバルブV12は、主に、PレギュレータバルブV13のポートP20にパイロット圧(ライン圧)を導くか否かを切換える切換バルブである。
パイロットシフトバルブV12は、先端側から順に、ポートP14、P15、P16、P17、P18、P19を有する。
ポートP14には、油路L15からオリフィスF14を介して信号圧が印加される。一方、ポートP19には、Dレンジ及びNレンジにおいてライン圧が印加される。従って、Dレンジ及びNレンジでは、ポートP19に印加されるライン圧がポートP14に印加される信号圧に打ち勝って、スプールを先端側(図の左側)に切換える。またPレンジ及びRレンジでは、ポートP14に印加される信号圧がスプールを基端側に切換える。
スプールが先端側のとき、ポートP15とポートP16が連通され、ポートP18が閉じられるとともにポートP17がドレンされる。一方、スプールが基端側のとき、ポートP15が閉じられるとともにポートP16がドレンされ、ポートP18とポートP17が連通される。
従って、Dレンジ及びNレンジでは、ライン圧がポートP15からポートP16へ出力される。このライン圧は油路L17を経由してPレギュレータバルブV13に導かれる。またRレンジではライン圧がポートP18からポートP17へ出力される。このライン圧は油路L18を経由して第3シフトリニアVFS3に導かれる。
PレギュレータバルブV13は、オイルポンプ10から供給されるATFを信号圧に応じたライン圧に調圧して出力する調圧バルブである。
PレギュレータバルブV13は、先端側から順に、ポートP20、P21、P22、P23、P24を有する。
ポートP22には、油路L11からATFが供給される。またポートP22は、調圧されたライン圧の出力ポートでもある。ポートP24には、油路L15からオリフィスF24を介して信号圧が印加される。ポートP21には、油路L11からオリフィスF21を介してライン圧が第1パイロット圧として印加される。ポートP20には、油路L17からオリフィスF20を介してライン圧が第2パイロット圧として印加される。但し第2パイロット圧はDレンジ又はNレンジの場合のみ印加される。
PレギュレータバルブV13は、そのスプールを先端側(図の右側)に押圧する力と基端側に押圧する力とがバランスするようにライン圧を調圧する。スプールを先端側に押圧する力は、スプリング力と、ポートP24に印加される信号圧による押圧力である。一方、スプールを基端側に押圧する力はパイロット圧(第1パイロット圧及び第2パイロット圧の総称)による押圧力である。
従って、信号圧を増圧させると、バランスを保つためにパイロット圧を増圧させるべくライン圧が増大する。逆に信号圧を減圧させるとライン圧が低下する。
また、Rレンジでは第2パイロット圧が印加されないので、同じライン圧であればDレンジに比べて基端側への押圧力が小さくなる。従ってバランスを保つために第1パイロット圧、すなわちライン圧が高くなる。つまり信号圧が同じであれば、DレンジやNレンジにおけるライン圧よりもRレンジにおけるライン圧の方が高くなる。これは、Rレンジの方が摩擦締結要素に要求されるトルク容量が全般的に大きいことに対処したものである。以下、これらのライン圧を区別するときはそれぞれDNレンジライン圧、Rレンジライン圧と称する。
なお、全フェイル時には信号圧が最高圧(第1定常圧)となるので、ライン圧もそのレンジにおける最高圧となる。
またPレギュレータバルブV13は、ポートP22から供給されたATFを、ポートP23から適宜量排出することによって調圧を行う。当回路図では省略しているが、ポートP23から排出されたATFは、油路L19からトルクコンバータ3へ導かれてトルクコンバータ3の作動油となり、また自動変速機ATの各部の潤滑油としても利用される。油路L19の下流にはトルクコンバータ3のロックアップ有無を切換えるための図略のソレノイドバルブやスプール弁が設けられている。なお、油路L19に供給されるATF量が不足しないように、油路L19はオリフィスF22を介してライン圧の油路L11と接続されている。
ハイカットバルブV14は、主としてハイクラッチC2への油圧供給可否を上流位置で切換える切換バルブである。特にこのバルブは当実施形態の特徴部分である全フェイル時のフェイルセーフに重要な役割をはたす特定変速段切換バルブとして作用するので、ここで図14〜図16を参照しつつ詳細に説明する。
図14は、ハイカットバルブV14の分解図である。ハイカットバルブV14は、単一径のスプール穴VH14が形成されたバルブボディVBと、スプール穴VH14に僅かな隙間をもって嵌挿され、軸方向に摺動可能な単一のスプールSPL14と、スプールSPL14を先端側に付勢するスプリングSPG14(リターンスプリング)と、スプールSPL14の抜け止めであるとともに、スプールSPL14が先端側に押圧されたときにその反力を受けるバルブリテーナRT14とを主要な構成要素とする。
スプールSPL14は、スプール穴VH14に摺接する部分である3つのランドLD1,LD2,LD3を有する。各ランドLD1,LD2,LD3は同一径であって、スプールSPL14はシンプルなストレートタイプのスプールである。各ランドLD1,LD2,LD3は2つの軸部JL1,JL2で接続されている。ランドLD1の先端側には先端面ED1を有する微小突起が設けられている。先端面ED1はスプールSPL14が先端側に移動したときにバルブリテーナ14に当接し、スプールSPL14の動きを止める。ランドLD3の基端側にはスプリングSPG14のガイドとなる軸部JL3が設けられている。軸部JL3の基端面ED2は、スプールSPL14が基端側に移動したときにスプール穴VH14の穴底に当接し、スプールSPL14の動きを止める。
図15は、ハイカットバルブV14及びその周辺を示す部分回路図であって、(a)は先端側切換状態にある場合、(b)は基端側切換状態にある場合をそれぞれ示す。以下、特に図15(a)に示す先端側切換状態を第1切換位置、(b)に示す基端側切換状態を第2切換位置ともいう。
ハイカットバルブV14は、先端から順に、ポートP25(第1ポート)、ポートP26(第2ポート)、ポートP27(第3ポート)、ドレンポートDP27、ポートP28、ポートP29及びポートP30(第4ポート)を有する。
第1ポートP25には、オリフィスF25,F26を介して油路L13から第1定常圧が印加される。オリフィスF25,F26は、2個直列に配設される、いわゆるダブルオリフィスであり、通常のオリフィスよりもより強い絞り作用を有する。このダブルオリフィスF25,F26は、第1ポートP25への第1定常圧の印加を遅延させる第1オリフィスとして機能する。
またSOL−RedバルブV11についての説明で記したように、通常はオイルポンプ10が駆動しているかぎり油路L13に第1定常圧が供給されている。従ってオイルポンプ10が駆動しているかぎり第1ポートP25に第1定常圧が印加される。このことから、イグニションスイッチ9(オイルポンプ駆動切換手段)が、何れのソレノイドバルブにも依らずに第1ポートP25への第1定常圧の印加有無を切換え可能な第1ポート印加切換手段ともなっている。こうすることにより、別途手段を付加することなく第1ポート印加切換手段を設けることができ、また油圧回路を簡素化することができるので、簡単な構造とすることができる。
第2ポートP26には、ライン圧リニアVFSPLの出力圧である信号圧が油路L15を経由して印加される。
第3ポートP27は第4ポートP30と常時連通されている。第4ポートP30は、スプリングSPG14が設けられたリターンスプリング室に開口している。
ポートP28は油路L27と接続されている。油路L27は、その下流においてL/RシフトバルブV18や第4シフトリニアVFS4を経由し、最終的にはハイクラッチC2に至る油路である(図4参照)。
ポートP29にはDレンジにおいてライン圧が印加される。
以上のような構成のため、オイルポンプ10が停止している場合(全ての油圧が0となるので、SOL−RedバルブV11の出力圧も第1定常圧とならず、0となる)には、第1ポートP25に油圧が印加されない。従って、スプリングSPG14の付勢力によってスプールSPL14は先端側(図の左側)に位置する。つまり第1切換位置となる。
またオイルポンプ10が駆動し、第1定常圧が生成されている場合であっても、オイルポンプ10が始動直後であって、第1定常圧の第1ポートP25への印加がオリフィスF25,F26によって遅延させられている間はハイカットバルブV14は第1切換位置となる。図15(a)は、その状態を示している。
第1ポートP25への油圧印加が遅延されている間に、第2ポートP26に信号圧が供給されると、その信号圧は油路L27〜油路L21を経由して第4ポートP30に印加される。従って、スプールSPL14を先端側に押圧する力は、信号圧による押圧力とスプリングSPG14による付勢力との和となる。
なおこのとき、DレンジであればポートP29にライン圧が導かれるが、このライン圧はスプールSPL14のランドLD3によって遮断されている。またポートP28とドレンポートDP27とが連通されているので油路L27の油圧がドレンされている。従って、ポートP28を介して油路L27に油圧が供給されない。このようにハイクラッチC2の上流である油路L27への油圧の供給が遮断されるので、ハイカットバルブV14が第1切換位置にあるときには、他の要素(例えばL/RシフトバルブV18の切換位置や第4シフトリニアVFS4の出力圧)にかかわりなくハイクラッチC2が解放状態となる。
このようにハイカットバルブV14は、第2特定変速段(第5速)を含む変速段で締結される所定の摩擦締結要素(ハイクラッチC2)へのライン圧供給油路上に設けられるとともに、第1切換位置に切換えられたときにハイクラッチC2への油圧供給を遮断するという簡単な構造でありながら、全フェイルに確実に第2特定変速段への切換を禁止することができる。
図15(a)に示す状態から、第1ポートP25に遅延された第1定常圧が印加されると、これがスプールSPL14を基端側に押圧する押圧力となる。このときのスプールSPL14の動作は、次の(式1)が成立するか否かによって異なる。
F1>F2+F3 (式1)
但しF1:第1ポートP25に印加される第1定常圧による押圧力
F2:第4ポートP30に印加される信号圧による押圧力
F3:スプリングSPG14による付勢力。
(式1)が成立する場合には、スプールSPL14を基端側に押圧する力が打ち勝ち、スプールSPL14が基端側(図の右側)に位置する、すなわちハイカットバルブV14は第2切換位置となる。なお、(式1)が直ちに成立しない場合であっても、ライン圧リニアVFSPLが正常であれば、これを用いて(式1)を強制的に成立させることができる。それには、ライン圧リニアVFSPLによって信号圧を低減させ、(式1)が成立する程度まで上記押圧力F2を低減させれば良い。以下、このように信号圧を低減させる制御を信号圧低減制御と称する。
一方、ライン圧リニアVFSPLがオフフェイルした場合には信号圧低減制御を行うことができない。ライン圧リニアVFSPLはノーマリーオープンタイプのソレノイドバルブであって、オフフェイルした時には元圧の第1定常圧(信号圧としては最高圧)をそのまま恒常的に出力するからである。またそのとき、信号圧は第1定常圧と略等しくなるが、それは(式1)においてF1≒F2となることを意味する。従って(式1)が成立しない状態(第1切換位置)で固定される。
図15(b)は、ライン圧リニアVFSPLが正常で、信号圧減圧制御によってハイカットバルブV14が第2切換位置とされた状態を示す図である。ハイカットバルブV14が第2切換位置とされると、スプールSPL14のランドLD1によって第2ポートP26が閉じられる。また第3ポートP27とドレンポートDP27とが連通するので、第4ポートP30に印加されていた油圧がドレンされる。
一方、ポートP29とポートP28とが連通するので、Dレンジであればライン圧が油路L27へ導かれる。即ち、下流の要素の状態(L/RシフトバルブV18の切換位置や第4シフトリニアVFS4の出力)によってはハイクラッチC2へのライン圧供給がなされ得る状態となる。
図16は、以上のようなハイカットバルブV14の動作パターンをまとめた表である。表中、「1」は第1切換位置、「2」は第2切換位置を示す。また「−」はバルブの動作に係わらない条件であることを示す。
図16に示すように、ハイカットバルブV14は、4種類の動作パターンA〜Dを有する。動作パターンAは、第1ポートP25への第1定常圧が印加されており、且つその初期位置が第1切換位置であり、且つライン圧リニアVFSPLが正常で信号圧低減制御がなされた場合の動作パターンであって、第1切換位置から第2切換位置に切換えられる。
動作パターンBは、第1ポートP25への第1定常圧が印加されており、且つその初期位置が第1切換位置であり、且つライン圧リニアVFSPLがオフフェイルしている(第2ポートP26に最大の信号圧が恒常的に印加されている)場合の動作パターンであって、第1切換位置を継続する。
動作パターンCは、第1ポートP25への第1定常圧が印加されており、且つその初期位置が第2切換位置である場合の動作パターンであって、(ライン圧リニアVFSPLの状態に係わらず)第2切換位置を継続する。
動作パターンDは、第1ポートP25への第1定常圧が印加されていない場合の動作パターンであって、(初期位置やライン圧リニアVFSPLの状態に係わらず)第1切換位置を継続するか又は第2切換位置から第1切換位置に切換えられる。
以上のような構造・機構を有するハイカットバルブV14の具体的な作用・効果については後に図4〜図13を参照して詳述する。
図4に戻って各バルブの説明を続ける。L/RシフトバルブV18は、主としてL/RブレーキB2及びハイクラッチC2への油圧供給有無を最終的に切換える切換バルブである。
L/RシフトバルブV18は、先端側から順に、ポートP51、P52、P53、P54、P55、P56、P57、P58、P59、P60を有する。
ポートP51には、オンオフSOL1の出力圧が、油路L22及びオリフィスF51を経由して印加される。図3に示すようにオンオフSOL1はノーマリーオープンタイプなので、オン時には出力圧が0となり、オフ時またはオフフェイル時には、元圧である油路L13の第1定常圧をそのまま出力する。従ってポートP51には、オンオフSOL1がオンの時には油圧が印加されず、オフ時またはオフフェイル時には第1定常圧が印加される。
ポートP52及びポートP55には常時ライン圧が供給される。ポートP53には、第4シフトリニアVFS4の元圧側に導かれる油路L23が接続されている。ポートP54には、ハイカットバルブV14のポートP28と連通する油路L27が接続されている。ポートP56には、AccシフトバルブV20のポートP65に連通する油路L29が接続されている。なお油路L29には、油路L29への油圧の供給を検知する油圧スイッチPSWが設けられている。ポートP57には、ハイクラッチC2に連通する油路L31と、ローカットバルブV15のポートP31に連通する油路L35が接続されている。
ポートP58には、第4シフトリニアVFS4からの出力圧を導く油路L25が接続されている。その油路L25には、第4シフトリニアVFS4の出力圧の振動を抑制するオリフィスF25とハイアキュームレータAC4とが設けられている。ハイアキュームレータAC4は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L25の容積変化によって油圧の振動を抑制する。
ポートP59には、L/RブレーキB2に連通する油路L33が接続されている。ポートP60にはRレンジのときにオリフィスF60を介してライン圧が供給される。
ポートP51に第1定常圧が印加されず、L/RシフトバルブV18が先端側切換状態(図の左側)のとき、ポートP54が閉じられるとともに、ポートP52とポートP53とが連通される。従って油路L23にライン圧が導かれ、これが第4シフトリニアVFS4の元圧となる。図3に示すように第4シフトリニアVFS4はノーマリーオープンタイプなので、オン時には油路L25に油圧を出力せず、オフ時(オフフェイル時を含む)には油路L23のライン圧を油路L25に出力する。
またポートP55とポートP56とが接続されるので、油路L29にライン圧が導かれる。またポートP57が解放されるので、油路L31及び油路L35がドレンされる。
また、ポートP60が閉じられるとともにポートP55とポートP59とが連通されるので、油路L25に第4シフトリニアVFS4の出力圧があるときは、それが油路L33を経由してL/RブレーキB2に供給される。
一方、ポートP51に第1定常圧が印加され、L/RシフトバルブV18が基端側切換状態であるとき、ポートP52が閉じられるとともに、ポートP54とポートP53とが連通される。従って油路L27にライン圧が導かれているときには、これが油路L23を経由して第4シフトリニアVFS4の元圧となる。
またポートP55が閉じられるとともにポートP56が解放されるので、油路L29がドレンされる。またポートP58とポートP57とが連通されるので、油路L25に第4シフトリニアVFS4の出力圧があるときには、これが油路L31を経由してハイクラッチC2に供給される。またそれは分岐して油路L35にも導かれる。
さらに、ポートP60とポートP59とが連通されるので、Rレンジのときにはライン圧が油路L33を経由してL/RブレーキB2に供給される。
ローカットバルブV15は、ロークラッチC1への油圧供給可否を上流位置で切換える切換バルブである。ローカットバルブV15は、いわゆる段付きバルブであって、そのスプール最先端側(図の左側)のランド径が他のランド径よりも大きくなっている。
ローカットバルブV15は、先端側から順に、ポートP31、P32、P33、P34、P35を有する。
ポートP31には、オリフィスF31を介して油路L35が接続されている。またポートP32には、2/6カットバルブV16のポートP40に連通する油路L55が接続されている。なお油路L55には、後述するように2/6カットバルブV16が先端側切換状態であり、且つ3/5/RカットバルブV17が基端側切換状態であるときにライン圧が導かれるようになっている。なお、ポートP32はスプールの段差部に開口しているので、ライン圧が印加されるときには、その大径側と小径側との面積差に作用するライン圧の押圧力が先端側に向けて作用する。
ポートP33には、Dレンジ時にオリフィスF33及びチェックボールCB1を介してライン圧が供給される。チェックボールCB1は、穴とボールとの組合せによる一種の逆止弁であって、ポートP33にライン圧を供給する方向には油路を連通させ、ポートP33からATFをドレンする方向には油路を閉じる。従って、ポートP33にライン圧が供給されるときにはオリフィスF33とチェックボールCB1との両方を経由して速やかに油圧が供給され、ポートP33から油圧をドレンするときにはオリフィスF33のみから緩やかにドレンされる。
ポートP34には、ローリレイバルブV19のポートP64に連通する油路L39が接続されている。この油路L39は分岐して第1シフトリニアVFS1の元圧側に接続されている。ポートP35には常時ライン圧が印加されている。このライン圧は、スプリング力とともにスプールを恒常的に先端側に押圧する。
ポートP31にライン圧(第4シフトリニアVFS4の出力圧)が印加されない場合、およびポートP31とポートP32との両方にライン圧が印加される場合には、ローカットバルブV15は先端側切換状態となる(後者の場合、油圧による押圧力はバランスするが、スプリング力の分だけ先端側への押圧力が大きくなる)。このとき、ポートP33とポートP34とが連通するので、Dレンジであれば油路L39にライン圧が供給される。従って第1シフトリニアVFS1に元圧が供給される。図3に示すように第1シフトリニアVFS1はノーマリーオープンタイプなので、オフ時(オフフェイル時を含む)には油路L39のライン圧をポートP61,P62に出力し、オン時には出力しない。
一方、ポートP31にライン圧が印加され、且つポートP32にライン圧が印加されない場合にはローカットバルブV15が基端側切換状態となる。このとき、ポートP33が閉じられるので油路L39にライン圧が供給されない。なおこの場合、第1シフトリニアVFS1に元圧が供給されないだけでなく、ロークラッチC1への油圧の供給が上流側で遮断されるので、第1シフトリニアVFS1の状態やローリレイバルブV19の切換位置に係わらずロークラッチC1に油圧が供給されない。
ローリレイバルブV19は、ロークラッチC1への油圧供給有無を最終的に切換え、また供給初期における供給経路の切換を行う切換バルブである。
ローリレイバルブV19は、先端側から順に、ポートP61、P62、P63、P64を有する。
ポートP61には、オリフィスF61を介して第1シフトリニアVFS1の出力圧が印加される。またポートP62には、第1シフトリニアVFS1の出力圧が直接印加される。ポートP63にはロークラッチC1に連通する油路L41が接続されている。この油路L41は、第1シフトリニアVFS1からの出力圧が導かれる油路なので、その出力圧の振動を抑制するオリフィスF63とローアキュームレータAC1が設けられている。ローアキュームレータAC1は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L41の容積変化によって油圧の振動を抑制する。
ポートP61に第1シフトリニアVFS1の出力圧が印加されていない場合、印加されていてもその出力圧が小さい場合、および印加初期であってオリフィスF61の作用によって印加が遅延されている場合には、ローリレイバルブV19は先端側切換状態となる。このとき、ポートP64が閉じられるとともにポートP62とポートP63とが連通するので、第1シフトリニアVFS1の出力圧があれば、それが油路L41を経由してロークラッチC1に供給される。
一方、ポートP61に充分大きな第1シフトリニアVFS1の出力圧が印加されている場合、ローリレイバルブV19は基端側切換状態となる。このとき、ポートP62が閉じられてポートP64とポートP63とが連通する。従って、油路L39において実質的に第1シフトリニアVFS1がバイパスされ、ライン圧が直接ロークラッチC1に供給される。
2/6カットバルブV16は、主に2/6ブレーキA作動室B1a及び2/6ブレーキB作動室B1bへの油圧供給可否を上流位置で切換える切換バルブである。
2/6カットバルブV16は、先端側(図の右側)から順に、ポートP36、P37、P38、P39、P40、P41を有する。
ポートP36にはオリフィスF36を介して油路L63が接続されている。油路L63は第3シフトリニアVFS3の出力圧が導かれる油路なので、ポートP36には第3シフトリニアVFS3の出力圧が印加される。ポートP37にはDレンジのときにライン圧が供給される。ポートP38には第2シフトリニアVFS2に連通する油路L43が接続されている。ポートP39には3/5/RカットバルブV17のポートP45と連通する油路L53が接続されている。ポートP40にはローカットバルブV15のポートP32と連通する油路L55が接続されている。ポートP41には常時ライン圧が供給される。
ポートP36に印加される第3シフトリニアVFS3の出力圧が充分小さい場合、2/6カットバルブV16は先端側切換状態となる。このとき、ポートP37とポートP38とが連通するので、Dレンジであれば油路L43を経由して第2シフトリニアVFS2に元圧のライン圧が供給される。またポートP39とポートP40とが連通するので、油路L53にライン圧が導かれていれば、それを油路L55に導く。
一方、ポートP36に印加される第3シフトリニアVFS3の出力圧が充分大きい場合、スプールは基端側切換状態となる。このとき、ポートP37が閉じられるとともにポートP38が解放されるので油路L48がドレンされる。従って第2シフトリニアVFS2に元圧が供給されない。またポートP39が閉じられるとともにポートP40が解放されて油路L55がドレンされる。
図3に示すように第2シフトリニアVFS2はノーマリークローズタイプなので、油路L43に元圧が供給され、且つオン状態のときに油路L45に出力圧を出力する。そしてそれが2/6ブレーキA作動室B1aに供給される。油路L45には、第2シフトリニアVFS2の出力圧の振動を抑制するオリフィスF38と2/6アキュームレータAC2とが設けられている。2/6アキュームレータAC2は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L45の容積変化によって油圧の振動を抑制する。
一方、第2シフトリニアVFS2からの出力圧がない場合(油路L43に元圧が供給されていないか又は第2シフトリニアVFS2がオフ(オフフェイルを含む)状態である場合)には、2/6ブレーキA作動室B1aへのライン圧の供給がなされない。
また油路L45は分岐して3/5/RカットバルブV17に連通する油路L47となる。油路L47は、後述するように2/6ブレーキB作動室B1bの元圧供給油路である。従って、第2シフトリニアVFS2からの出力圧がない場合には、2/6ブレーキB作動室B1bへのライン圧の供給もなされない。
3/5/RカットバルブV17は、主に3/5/RクラッチC3への油圧供給可否を上流位置で切換えるとともに、2/6ブレーキB作動室B1bへの油圧供給有無を最終的に切換える切換バルブである。
3/5/RカットバルブV17は、先端側(図の左側)から順に、ポートP42、P43、P44、P45、P46、P47、P48、P49、P50を有する。
ポートP42にはDレンジ及びNレンジのときにライン圧が印加される。ポートP43にはオリフィスF43を介して油路L49が接続されている。油路L49は油路L47の下流側分岐油路である。従ってポートP43には第2シフトリニアVFS2の出力圧が供給される。ポートP44には2/6ブレーキB作動室B1bに連通する油路L51が接続されている。
ポートP45には2/6カットバルブV16のポートP39に連通する油路L53が接続されている。ポートP46にはオリフィスF46を介して常時ライン圧が供給されている。ポートP47にはRレンジのときにライン圧が供給される。ポートP48には第3シフトリニアVFS3に連通する油路L57が接続されている。ポートP49にはDレンジのときにライン圧が供給される。ポートP50にはオリフィスF50を介して油路L47が接続される。従ってポートP50には第2シフトリニアVFS2の出力圧が印加される。
ポートP42にライン圧が印加されない場合、及びポートP42にライン圧が印加され且つポートP50に印加される第2シフトリニアVFS2の出力圧が充分大きい(略ライン圧である)場合には、3/5/RカットバルブV17は先端側切換状態となる。このとき、ポートP43とポートP44とが連通するので、第2シフトリニアVFS2の出力圧があれば、それが油路L51を介して2/6ブレーキB作動室B1bに供給される。
またポートP46が閉じられるとともにポートP45が解放されるので、油路L53はドレンされる。またポートP49が閉じられるとともにポートP47とポートP48とが連通するので、Rレンジであれば油路L57から第3シフトリニアVFS3に元圧のライン圧が供給される。なお、上述のようにRレンジのときには油路L18からも第3シフトリニアVFS3にライン圧が供給される(図12参照)。
図3に示すように第3シフトリニアVFS3はノーマリーオープンタイプなので、油路L18又はL57にライン圧が供給され、かつオフ状態(オフフェイルを含む)のときに、オリフィスF48を介して出力圧を油路L59に出力する。油路L59には、第3シフトリニアVFS3の出力圧の振動を抑制するオリフィスF48と3/5アキュームレータAC3とが設けられている。3/5アキュームレータAC3は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L59の容積変化によって油圧の振動を抑制する。
油路L59は、その下流で油路L61、油路L63および油路L65に分岐する。油路L61はAccシフトバルブV20のポートP66に連通する。油路L63はオリフィスF36を介して2/6カットバルブV16のポートP36に連通する。そして油路L65はオリフィスF66を介して3/5/RクラッチC3に連通する。
AccシフトバルブV20は、3/5/RクラッチC3への油圧供給がなされる際に、NRアキュームレータAC5を有効とするか否かを切換える切換バルブである。
AccシフトバルブV20は、先端側(図の左側)から順に、ポートP65、P66、P67、P68、P69、P70、P71を有する。
ポートP65にはオリフィスF65を介して油路L29が接続されている。従って、ポートP65には、L/RシフトバルブV18が先端側切換状態であるときにライン圧が印加される。
ポートP66には油路L59、L61を経由して第3シフトリニアVFS3の出力圧が供給される。ポートP67には3/5/RクラッチC3に連通する油路L69が接続されている。油路L69は油路L65の下流側の分岐油路である。ポートP68にはNRアキュームレータAC5に連通する油路L67が接続されている。NRアキュームレータAC5は、3/5/RクラッチC3への油圧供給初期に、その立ち上がりを遅延させる特性(いわゆる棚圧特性)を作るためのアクチュエータである。NRアキュームレータAC5は、主にピストンとスプリングとからなり、ピストンの軸方向移動による油路L67(を含む3/5/RクラッチC3への供給油路)の容積変化によって、棚圧特性を作る。ポートP69はポートP71と接続されている。ポートP70には、Dレンジのとき、オリフィスF70を介してライン圧が印加される。
ポートP65にライン圧が印加されない場合、及びポートP65とポートP71とにライン圧が印加される場合(この場合、ライン圧による押圧力がバランスし、リターンスプリング力の分だけ先端側への押圧力が大となる)には、AccシフトバルブV20が先端側切換状態となる。このとき、ポートP66とポートP67とが連通するので、第3シフトリニアVFS3に出力圧があるときにはそれが油路L69を経由して3/5/RクラッチC3に供給される。これは油路L65との並列経路であって、オリフィスF66をバイパスする経路である。つまりこの経路が連通した場合は、3/5/RクラッチC3への油圧の供給は主にこの経路から速やかになされる。またポートP68がドレンされるので、NRアキュームレータAC5が無効化され、棚圧特性は作られない。
またポートP69が閉じられるとともにポートP70とポートP71とが連通するので、DレンジであればポートP70及びポートP71にライン圧が印加される。
一方、ポートP65にライン圧が印加され、且つポートP71にライン圧が印加されない場合には、スプールが基端側切換状態となる。このとき、ポートP66が閉じられるとともにポートP67とポートP68とが連通する。従って、第3シフトリニアVFS3に出力圧があるときにはそれが油路L65を経由して3/5/RクラッチC3に供給されるとともに、その供給初期においてNRアキュームレータAC5が有効に作用する。すなわちオリフィスF66とNRアキュームレータAC5との作用によって油圧の供給初期に棚圧が形成される。
またポートP70が閉じられるとともにポートP69が解放されるので、ポートP71も解放(ドレン)される。
次に、各レンジ、各変速段における各バルブの動作と各摩擦締結要素へのライン圧供給形態について説明する。まず各ソレノイドバルブVFSPL,VFS1〜4が正常である場合について説明する。
図4はNレンジにおける主要油圧回路図である。Nレンジでは全ての摩擦締結要素(C1〜C3,B1,B2)が解放状態となる。それを達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
SOL−RedバルブV11は第1定常圧を出力する。ライン圧リニアVFSPLは第1定常圧を元圧として所定の信号圧を出力する。パイロットシフトバルブV12は、ポートP14に信号圧が印加され、ポートP19にライン圧が印加されるので先端側切換状態となる。従ってポートP15からポートP16、油路L17を経由してPレギュレータバルブV13のポートP20にライン圧が導かれ、第2パイロット圧として印加される。またポートP17が解放状態となるので油路L18がドレンされる。PレギュレータバルブV13は、ポートP21に第1パイロット圧、ポートP20に第2パイロット圧が印加されるので、比較的低いDNレンジライン圧を出力する。マニュアルバルブV10は、そのライン圧を油路L11から受け入れ、油路「DN」に出力する。
ハイカットバルブV14は、第1ポートP25に第1定常圧が印加され、また上記信号圧低減制御によって基端側切換状態となる。従ってポートP29とポートP28とが連通するが、ポートP29にライン圧が供給されないので油路L27への出力はない。
NレンジではオンオフSOL1はオフとされる。従ってオンオフSOL1は油路L13から受け入れた第1定常圧を油路L22に出力する。L/RシフトバルブV18は、ポートP51にオンオフSOL1の出力圧(第1定常圧)が印加されるので基端側切換状態となる。ポートP54とポートP53とが連通するが、油路L27にライン圧が供給されていないので、油路L23にもライン圧が供給されない。以下その下流の第4シフトリニアVFS4〜油路L25〜油路L31〜ハイクラッチC2にもライン圧が供給されないので、ハイクラッチC2は解放状態となる。また油路L29、油路L35にもライン圧が供給されない。ポートP60とポートP59とが連通するが、ポートP60にライン圧が供給されないので、油路L33〜L/RブレーキB2にもライン圧が供給されず、L/RブレーキB2は解放状態となる。
ローカットバルブV15は、ポートP31に油圧が印加されず、ポートP35にライン圧が印加され、さらに後述するように油路L55に導かれたライン圧がポートP32に印加されるので、先端側切換状態となる。従ってポートP33とポートP34とが連通するが、ポートP33にライン圧が供給されないので、油路L39や第1シフトリニアVFS1にライン圧が供給されない。従って、第1シフトリニアVFS1及びローリレイバルブV19の状態に係わらずロークラッチC1に油圧が供給されず、ロークラッチC1は解放状態となる。
2/6カットバルブV16は、ポートP41にライン圧が印加され、また後述するように油路L63〜ポートP36に油圧が導かれないので、先端側切換状態となる。従ってポートP39とポートP40とが連通する。このとき、後述するように油路L53にライン圧が導かれているので、それを油路L55に出力する。またポートP37とポートP38とが連通するが、ポートP37にライン圧が供給されないので、油路L43にライン圧が供給されない。従って2/6ブレーキA作動室B1a及び2/6ブレーキB作動室B1bにもライン圧が供給されず、2/6ブレーキB1は解放状態となる。
3/5/RカットバルブV17は、ポートP42にライン圧が印加され、ポートP50に油圧が印加されないので基端側切換状態となる。従って、ポートP44が解放されて油路L51がドレンされる。またポートP46とポートP45とが連通され、ポートP46にライン圧が供給されるので、それが油路L53に導かれる。またポートP49とポートP48とが連通されるがポートP49にライン圧が供給されないので油路L57〜第3シフトリニアVFS3にもライン圧が供給されない。上述のように油路L18にも油圧が供給されないので、結局第3シフトリニアVFS3には元圧の供給がなく、油路L59に油圧が出力されない。従ってAccシフトバルブV20の状態に係わらず3/5/RクラッチC3に油圧が供給されず、3/5/RクラッチC3が解放状態となる。
図5はDレンジの自動変速モード第1速(第D1速)における主要油圧回路図である。図3に示すように、第D1速ではオンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオフ(クローズ)、第3シフトリニアVFS3がオン(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)となる。その結果、図2に示すようにロークラッチC1が締結される。それを達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
SOL−RedバルブV11、ライン圧リニアVFSPL、パイロットシフトバルブV12及びPレギュレータバルブV13の動作は上記Nレンジの場合と同様である。またマニュアルバルブV10は、油路L11から受け入れたライン圧を油路「DN」及び「D」に出力する。またハイカットバルブV14の動作もNレンジの場合と同様であるが、ポートP29にライン圧が供給されており、それが油路L27に導かれている点が相違している。
オンオフSOL1がオフとされるので、オンオフSOL1は第1定常圧を油路L22に出力する。L/RシフトバルブV18は、ポートP51にオンオフSOL1の出力圧(第1定常圧)が印加されるので基端側切換状態となる。ポートP54とポートP53とが連通するので、油路L27からのライン圧が油路L23に出力される。しかし第4シフトリニアVFS4がオンとされるので、油路L25には油圧が出力されない。従ってポートP58とポートP57とが連通するものの、油路L31〜ハイクラッチC2にライン圧が供給されないので、ハイクラッチC2は解放状態となる。また油路L29、油路L35にもライン圧が供給されない。ポートP60とポートP59とが連通するが、ポートP60にライン圧が供給されないので、油路L33〜L/RブレーキB2にもライン圧が供給されず、L/RブレーキB2は解放状態となる。
ローカットバルブV15は、ポートP31に油圧が印加されず、ポートP35にライン圧が印加され、さらに後述するように油路L55に導かれたライン圧がポートP32に印加されるので、先端側切換状態となる。従ってポートP33とポートP34とが連通し、ポートP33に供給されたライン圧が油路L39に出力される。第1シフトリニアVFS1は油路L39のライン圧を受け、その出力圧をローリレイバルブV19のポートP61,P62に出力する。
ローリレイバルブV19は、第1シフトリニアVFS1の出力圧が低い締結初期段階では、オリフィスF61の作用も相俟ってポートP61に印加される油圧が低く、基端側切換状態となっている。この段階ではポートP64が閉じられるとともにポートP62からポートP63に連通されるので、第1シフトリニアVFS1の出力圧が油路L41を経由してロークラッチC1に供給される。その後、第1シフトリニアVFS1の出力圧が高められるに従い、ポートP61への印加油圧が高くなるのでローリレイバルブV19は先端側切換状態に切換わる。そうすると図示のようにポートP63への連通ポートがポートP62からポートP64に切換わるので、油路L39のライン圧が直接油路L41〜ロークラッチC1に供給されるようになる。こうしてロークラッチC1が締結される。
なお第1シフトリニアVFS1の出力圧は、定常状態ではライン圧となるが、締結初期段階においては適宜調整される。例えばN→D1(N→D1シフトチェンジ)時においては、ロークラッチC1か適正に締結し、速やか且つトルク変動(N→Dエンゲージショック)の小さなシフトチェンジがなされるように第1シフトリニアVFS1の出力が調整される。
2/6カットバルブV16の動作は上記Nレンジの場合と同様であるが、ポートP37にライン圧が供給され、それが油路L43に導かれる点が相違している。但し第2シフトリニアVFS2がオフとされるので油路L45には油圧が出力されない。従って2/6ブレーキA作動室B1a及び2/6ブレーキB作動室B1bに油圧が供給されない。従って2/6ブレーキB1は解放状態となる。
3/5/RカットバルブV17の動作は上記Nレンジの場合と同様であるが、ポートP49にライン圧が供給され、それが油路L57に導かれる点が相違している。但し第3シフトリニアVFS3がオンとされるので油路L59には油圧が出力されない。従ってAccシフトバルブV20の状態に係わらず3/5/RクラッチC3に油圧が供給されず、3/5/RクラッチC3が解放状態となる。
図6はDレンジのマニュアルモード第1速(第M1速)における主要油圧回路図である。図3に示すように、第M1速ではオンオフSOL1がオン(クローズ)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオフ(クローズ)、第3シフトリニアVFS3がオン(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)となる。その結果、図2に示すようにロークラッチC1とL/RブレーキB2とが締結される。それを達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
マニュアルバルブV10、SOL−RedバルブV11、ライン圧リニアVFSPL、パイロットシフトバルブV12、PレギュレータバルブV13及びハイカットバルブV14の動作は上記第D1速の場合と同様である。これはDレンジにおいて共通なので、以下の第2〜第6速の説明では省略する。
ローカットバルブV15、2/6カットバルブV16、3/5/RカットバルブV17、ローリレイバルブV19、AccシフトバルブV20、第1シフトリニアVFS1、第2シフトリニアVFS2及び第3シフトリニアVFS3の動作は上記第D1速の場合と同様である。従ってロークラッチC1が締結状態となり、2/6ブレーキB1及び3/5/RクラッチC3が解放状態となる。
一方、第D1速とは異なり、オンオフSOL1がオンとされるので、その出力圧が0となる。L/RシフトバルブV18は、ポートP51に印加されるオンオフSOL1の出力圧が0なので先端側切換状態となる。従ってポートP54が閉じられるとともにポートP52とポートP53とが連通するので、ポートP52に供給されたライン圧は油路L23を経由して第4シフトリニアVFS4に導かれる。
またポートP55とポートP56とが連通するので、ポートP55に供給されたライン圧が油路L29に導かれる。このことは油圧スイッチPSWによって検知される。つまり油圧スイッチPSWによってL/RシフトバルブV18が確実に先端側切換状態にあることが確認される。その確認を受けて第4シフトリニアVFS4がオフ状態とされる。それによって第4シフトリニアVFS4は、油路L23から受けたライン圧を油路L25に出力する。そしてポートP58とポートP59とが連通しているので、油路L25からポートP58に導かれたライン圧は、油路L33を経由してL/RブレーキB2に供給される。従ってL/RブレーキB2が締結状態となる。
なお第4シフトリニアVFS4の出力圧は、定常状態ではライン圧となるが、締結初期段階においては適宜調整される。例えばD1→L1チェンジの場合、L/RブレーキB2の締結によってエンジンブレーキの利きが強くなるが、その際、適正な応答性を確保しつつトルク変動(チェンジショック)が抑制されるように、第4シフトリニアVFS4の出力圧の増大速度が調節される。
図7は第2速における主要油圧回路図である。図3に示すように、第2速ではオンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオン(オープン)、第3シフトリニアVFS3がオン(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)となる。その結果、図2に示すようにロークラッチC1及び2/6ブレーキB1が締結される。それを達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
オンオフSOL1、第1シフトリニアVFS1、第4シフトリニアVFS4、ローカットバルブV15、L/RシフトバルブV18及びローリレイバルブV19の動作は上記第D1速と同様である。従ってロークラッチC1が締結状態となり、ハイクラッチC2及びL/RブレーキB2が解放状態となる(D1→2変速の場合は、これらの状態が継続される)。
2/6カットバルブV16の動作も上記第D1速の場合と同様であって、油路L43にライン圧が導かれる。そして第D1速と異なり、第2シフトリニアVFS2がオンとされるので、油路L45〜2/6ブレーキA作動室B1aに第2シフトリニアVFS2の出力圧が出力される。従って2/6ブレーキB1が締結する。
なお締結初期には第2シフトリニアVFS2によって適宜出力圧(締結圧)が調整され、締結によるトルク変動(例えば1→2変速ショック)が緩和される。また油路L45から分岐する油路L47,L49にも第2シフトリニアVFS2の出力圧が導かれる。
3/5/RカットバルブV17は、2/6ブレーキB1の締結初期段階であってポートP50に印加される第2シフトリニアVFS2の出力圧が低いときには、第D1速の場合と同様、基端側切換状態となっている。従って油路L49に導かれた第2シフトリニアVFS2の出力圧はポートP43で遮断されている。そして2/6ブレーキB1の締結後期〜締結後においてポートP50に印加される第2シフトリニアVFS2の出力圧が大きくなると、図示のように先端側切換状態に切換わる。するとポートP43とポートP44とが連通するので、第2シフトリニアVFS2の出力圧が油路L51〜2/6ブレーキB作動室B1bに供給される。
このように2/6ブレーキB1は、締結時においては2/6ブレーキA作動室B1aに供給される油圧のみによって締結される。そのため、第2シフトリニアVFS2の出力圧の変化に対する2/6ブレーキB1のトルク容量の変化(ゲイン)が小さく、精密で締結時のトルク変動(変速ショック)が小さい締結が行われる。そして締結後においては2/6ブレーキB作動室B1bからの油圧も加わり、大きなトルク容量を確保することができる。
第3シフトリニアVFS3及びAccシフトバルブV20の動作は上記第D1速の場合と同様であり、3/5/RクラッチC3にライン圧が供給されず、3/5/RクラッチC3は解放状態となる。
図8は第3速における主要油圧回路図である。図3に示すように、第3速ではオンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオフ(クローズ)、第3シフトリニアVFS3がオフ(オープン)、第4シフトリニアVFS4がオン(クローズ)となる。その結果、図2に示すようにロークラッチC1及び3/5/RクラッチC3が締結される。それを達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
オンオフSOL1、第1シフトリニアVFS1、第4シフトリニアVFS4、ローカットバルブV15、L/RシフトバルブV18及びローリレイバルブV19の動作は上記第2速と同様である。従ってロークラッチC1が締結状態となり、ハイクラッチC2及びL/RブレーキB2が解放状態となる(2→3変速の場合は、これらの状態が継続される)。
一方、第2速と異なり、第2シフトリニアVFS2がオフとされるので、2/6ブレーキA作動室B1a及び2/6ブレーキB作動室B1bへの供給油圧が低下し、2/6ブレーキB1が解放状態となる。
一方、3/5/RカットバルブV17は、ポートP50に印加される第2シフトリニアVFS2の出力圧が低下するので基端側切換状態となる。従ってポートP49〜ポートP48〜油路L57にライン圧が導かれる。ここで第3シフトリニアVFS3がオフとされるので油路L59に出力圧が出力される。その出力圧はその下流側である油路L61,L63,L65に導かれる。
AccシフトバルブV20は、ポートP65に油圧が印加されず、ポートP70にライン圧が印加されるので先端側切換状態となっている。従ってポートP66とポートP70とが連通するとともにポートP68がドレンされてNRアキュームレータAC5が無効化される。従って、第3シフトリニアVFS3からの出力圧は、油路L65からの経路と、油路L61〜油路L67からの経路と並列に速やかに3/5/RクラッチC3に供給され、3/5/RクラッチC3が締結する。
なお例えば2→3変速時においては、第2シフトリニアVFS2の出力圧の低減と第3シフトリニアVFS3の出力圧の増大とは適正な同期が図られるとともにその油圧変化速度が適宜調節される。これによって2/6ブレーキB1の解放と3/5/RクラッチC3の締結とが円滑に行われ、変速によるトルク変動(2→3変速ショック)が緩和される。
2/6カットバルブV16においては、ポートP36に印加される第3シフトリニアVFS3の出力圧が略ライン圧程度まで高くなると、基端側切換状態となる。従ってポートP37が閉じられ、ポートP37からライン圧が供給されない。こうして第2シフトリニアVFS2の元圧が遮断される。
図9は第4速における主要油圧回路図である。図3に示すように、第4速ではオンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオフ(オープン)、第2シフトリニアVFS2がオフ(クローズ)、第3シフトリニアVFS3がオン(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)となる。その結果、図2に示すようにロークラッチC1及びハイクラッチC2が締結される。それを達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
ローカットバルブV15、ローリレイバルブV19、第1シフトリニアVFS1及び第2シフトリニアVFS2の動作は上記第3速と同様であって、ロークラッチC1が締結状態となり、2/6ブレーキB1が解放状態となる(3→4変速の場合は、これらの状態が継続される)。
3/5/RカットバルブV17及びAccシフトバルブV20の動作は上記第3速と同様であるが、第3シフトリニアVFS3がオンとされるので、3/5/RクラッチC3への油圧が供給されず、3/5/RクラッチC3が解放状態となる。
2/6カットバルブV16においては、ポートP36に印加される第3シフトリニアVFS3の出力圧が低下するので、先端側切換状態となる。従って油路L53のライン圧がポートP39〜ポートP40〜油路L55〜ローカットバルブV15のポートP32に導かれる。
一方、オンオフSOL1及びL/RシフトバルブV18の動作は上記第3速と同様であるが、第4シフトリニアVFS4がオフとされるので、油路L23のライン圧が油路L25〜油路L31〜ハイクラッチC2に供給される。従ってハイクラッチC2が締結状態となり、L/RブレーキB2が解放状態となる。
なお例えば3→4変速時においては、第3シフトリニアVFS3の出力圧の低減と第4シフトリニアVFS4の出力圧の増大とは適正な同期が図られるとともにその油圧変化速度が適宜調節される。これによって3/5/RクラッチC3の解放とハイクラッチC2の締結とが円滑に行われ、変速によるトルク変動(3→4変速ショック)が緩和される。
なお、ローカットバルブV15のポートP31に第4シフトリニアVFS4の出力圧が印加されるが、ポートP32及びポートP35にライン圧が印加されるので、ローカットバルブV15は先端側切換状態を維持する。
図10は第5速における主要油圧回路図である。図3に示すように、第5速ではオンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオン(クローズ)、第2シフトリニアVFS2がオフ(クローズ)、第3シフトリニアVFS3がオフ(オープン)、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)となる。その結果、図2に示すようにハイクラッチC2及び3/5/RクラッチC3が締結される。それを達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
オンオフSOL1、第4シフトリニアVFS4及びL/RシフトバルブV18の動作は上記第4速と同様であり、ハイクラッチC2が締結状態となりL/RブレーキB2が解放状態となる(4→5変速の場合は、これらの状態が継続される)。
一方、第1シフトリニアVFS1がオンとされることにより、ロークラッチC1への油圧供給が断たれ、ロークラッチC1が解放状態となる。
また、3/5/RカットバルブV17及びAccシフトバルブV20の動作は第4速と同様であるが、第3シフトリニアVFS3がオフとされることにより、第3速の場合と同様に、3/5/RクラッチC3に第3シフトリニアVFS3の出力圧が供給され、3/5/RクラッチC3が締結する。
なお例えば4→5変速時においては、第1シフトリニアVFS1の出力圧の低減と第3シフトリニアVFS3の出力圧の増大とは適正な同期が図られるとともにその油圧変化速度が適宜調節される。これによってロークラッチC1の解放と3/5/RクラッチC3の締結とが円滑に行われ、変速によるトルク変動(4→5変速ショック)が緩和される。
なお、第3シフトリニアVFS3の出力圧が増大することにより、第3速と同様、2/6カットバルブV16が基端側切換状態となる。従ってローカットバルブV15のポートP32にライン圧が印加されなくなる。このため、スプールを基端側に押圧する力が打ち勝ってローカットバルブV15が基端側切換状態となる。これによりポートP33が閉じられるので第1シフトリニアVFS1の元圧が遮断される。
また第2シフトリニアVFS2がオフとされ、2/6カットバルブV16が基端側切換状態となって第2シフトリニアVFS2の元圧も遮断されるので、2/6ブレーキB1は解放状態となる(4→5変速の場合は、その状態が継続される)。
図11は第6速における主要油圧回路図である。図3に示すように、第6速ではオンオフSOL1がオフ(オープン)、第1シフトリニアVFS1がオン(クローズ)、第2シフトリニアVFS2がオン(オープン)、第3シフトリニアVFS3がオン(クローズ)、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)となる。その結果、図2に示すようにハイクラッチC2及び2/6ブレーキB1が締結される。それを達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
オンオフSOL1、第1シフトリニアVFS1、第4シフトリニアVFS4、ローカットバルブV15、L/RシフトバルブV18及びローリレイバルブV19の動作は上記第5速と同様であり、ロークラッチC1及びL/RブレーキB2が解放され、ハイクラッチC2が締結される(5→6変速の場合は、その状態が継続される)。
一方、第3シフトリニアVFS3がオフとされることにより3/5/RクラッチC3への供給油圧が低下し、3/5/RクラッチC3が解放される。
第3シフトリニアVFS3の出力圧が低下すると2/6カットバルブV16が先端側切換状態となるので、第2シフトリニアVFS2に元圧が供給される。そして第2シフトリニアVFS2がオンとされることにより2/6ブレーキA作動室B1aに出力圧が供給され、2/6ブレーキB1が締結する。
なお例えば5→6変速時においては、第3シフトリニアVFS3の出力圧の低減と第2シフトリニアVFS2の出力圧の増大とは適正な同期が図られるとともにその油圧変化速度が適宜調節される。これによって3/5/RクラッチC3の解放と2/6ブレーキB1の締結とが円滑に行われ、変速によるトルク変動(5→6変速ショック)が緩和される。
そして第2速の場合と同様、第2シフトリニアVFS2の出力圧が高くなると3/5/RカットバルブV17が先端側切換状態となり、ポートP43とポートP44とが連通するの。従って2/6ブレーキB作動室B1bにも第2シフトリニアVFS2の出力圧が供給される。
図12はRレンジにおける主要油圧回路図である。図3に示すように、RレンジではオンオフSOL1がオン(クローズ)、第1シフトリニアVFS1がオン(クローズ)、第2シフトリニアVFS2がオフ(クローズ)、第3シフトリニアVFS3がオフ(オープン)、第4シフトリニアVFS4がオフ(オープン)となっている。その結果、図2に示すように3/5/RクラッチC3とL/RブレーキB2とが締結される。それを達成する各バルブの作動状態は以下のようになっている。
SOL−RedバルブV11及びライン圧リニアVFSPLの動作は上記Dレンジの場合と同様であって、油路L13には第1定常圧が、油路L15には信号圧が出力される。
パイロットシフトバルブV12は、ポートP14に信号圧が印加され、ポートP19にライン圧が印加されないので基端側切換状態となる。従ってポートP15が閉じられるので、油路L17にライン圧が出力されない。つまりポートP20に第2パイロット圧が印加されない。またポートP18とポートP17とが連通されるので油路L18にライン圧が導かれる。PレギュレータバルブV13は、ポートP21に第1パイロット圧が印加され、ポートP20に第2パイロット圧が印加されないので、比較的高いRレンジライン圧を出力する。マニュアルバルブV10は、そのライン圧を油路L11から受け入れ、油路「R」に出力する。
ハイカットバルブV14の作動は上記Nレンジの場合と同様であって、基端側切換状態となっているもののポートP29にライン圧が供給されないので油路L27への出力がない。
オンオフSOL1、第4シフトリニアVFS4、L/RシフトバルブV18及び油圧スイッチPSWの作動は上記第M1速の場合と同様であって、ハイクラッチC2が解放状態となり、L/RブレーキB2が締結される。
また油路L29にライン圧が出力され、これが油圧スイッチPSWによって検知される。
一方、3/5/RカットバルブV17は、ポートP42にライン圧が印加されないので先端側切換状態となる。従ってポートP49が閉じられるとともにポートP47とポートP48とが連通するので、ポートP47からポートP48〜油路L57〜第3シフトリニアVFS3にライン圧が供給される。そして第3シフトリニアVFS3がオフとされるので、油路L59に出力圧が出力される。
AccシフトバルブV20は、ポートP65に油路L29からのライン圧が印加され、ポートP70にライン圧が印加されないので基端側切換状態となる。従ってポートP66が閉じられるとともにポートP68とポートP67とが連通され、NRアキュームレータAC5が有効化される。第3シフトリニアVFS3からの出力圧は、油路L65のみから3/5/RクラッチC3に供給され3/5/RクラッチC3が締結する。その際、NRアキュームレータAC5によって形成された適切な棚圧が供給される。
なお、第3シフトリニアVFS3は、油圧スイッチPSWによる油路L29の油圧上昇を確認した後に出力圧を増大させる。すなわちL/RシフトバルブV18が確実に先端側切換状態となり、またAccシフトバルブV20が基端側切換状態となってNRアキュームレータAC5が有効化された後に出力圧を増大させることにより、より確実な油圧制御を行うことができる。
そして例えばN→Rシフトチェンジ時においては、第4シフトリニアVFS4の出力圧増大と第3シフトリニアVFS3の出力圧増大とが互いに同期を取りつつ行われる。これによってL/RブレーキB2の締結と3/5/RクラッチC3の締結とが円滑に行われ、シフトチェンジによるトルク変動(N→Rエンゲージショック)が緩和される。
なお第1シフトリニアVFS1、ローカットバルブV15、ローリレイバルブV19、第2シフトリニアVFS2の作動は上記Nレンジの場合と同様であり、ロークラッチC1及び2/6ブレーキB1は解放状態となる(N→Rの場合は、その状態が継続される)。
以上、通常の場合(各ソレノイドバルブが正常な場合)における各レンジ、各変速段における油圧機構の動作について説明したが、次に全てのソレノイドバルブが全てオフフェイルした全フェイルの場合について説明する。
まず、Dレンジで走行中に全フェイルした場合について説明する。この場合、以下に述べるように油圧機構は図10に示す第5速の場合と実質的に同等となる。すなわちハイクラッチC2と3/5/RクラッチC3とが締結し、第5速(第2特定変速段)に固定された状態となる。
全フェイルのとき、ライン圧リニアVFSPLは信号圧の調節機能を喪失し、オープン状態となって、最大の信号圧(≒第1定常圧)を恒常的に出力する。従ってライン圧もその最大信号圧に応じた最大ライン圧となる。
またハイカットバルブV14は、図16に示す動作パターンAからパターンCに切換わり、第2切換位置(基端側切換状態)を継続する。つまり通常のDレンジの場合と同様に油路L27にライン圧(ハイクラッチC2の元圧)が導かれる。
図3に示すように、第5速と全フェイル時とのシフトソレノイドバルブのパターンの相違は、第1シフトリニアVFS1がオン(第5速)であるかオフ(全フェイル)であるかの違いである。しかし図10に示すように、第5速においてはローカットバルブV15によってポートP33が閉じられているので、ライン圧が第1シフトリニアVFS1に供給されない。従って、第1シフトリニアVFS1がオンであってもオフであってもロークラッチC1に油圧が供給されないことに変わりはない。その結果、走行中の油圧機構は第5速と実質的に同等となるのである。
全フェイル後、例えば車両を安全に停止させた後に再び発進させるときには、第5速のままでは発進に支障をきたす虞がある。そこで運転者は次の手順によって第5速固定から第3速固定に切換えることができる。
そのためには、イグニションスイッチ9を一旦オフにし、エンジンを停止させれば良い。エンジンを停止させると、これに直結されているオイルポンプ10も停止し、全ての油圧供給が断たれる。従って、SOL−RedバルブV11は第1定常圧を出力することができなくなり、ハイカットバルブV14の第1ポートP25に油圧が印加されなくなる。
このためハイカットバルブV14は動作パターンDに切換わる。すなわち第2切換位置から第1切換位置(先端側切換状態)に切換わる。
その後再びイグニションスイッチ9をオンにしてエンジンとオイルポンプ10を作動させれば、SOL−RedバルブV11は再び第1定常圧を出力する。従ってハイカットバルブV14の第1ポートP25に再び第1定常圧が印加される。すなわち動作パターンBとなって、第1切換位置を継続する。
なおこの動作パターンBは、第1ポートP25の上流に設けられた2段オリフィスF25,F26(第1オリフィス)によって、より確実な動作がなされる。図15(a)に示すように、動作パターンBにおいて、第1ポートP25への第1定常圧の印加は、第2ポートP26への油圧印加よりも遅延させることが望ましい。第1ポートP25への印加が第2ポートP26への印加よりも早い場合、第2ポートP26への信号圧が相対的に遅れて印加されることとなり、全フェイル状態であるにもかかわらず、あたかも信号圧低減制御が行われたかのような動作(動作パターンA)が起こる懸念がある。一旦動作パターンAが起こってしまうと、以降は動作パターンCに移行し、オイルポンプ10(エンジン)を再び停止させないかぎりハイカットバルブV14が第2切換位置に固定されてしまう。つまり第5速固定状態となってしまう。
そこで当実施形態では、通常のオリフィスよりも絞り効果の高い2段の第1オリフィスF25,F26を用いて第1ポートP25への第1定常圧の印加を大きく遅延させている。こうすることによって上記誤動作を防止し、より確実に動作パターンBを行わせて狙いの第3速に固定させている。
そして適正に動作パターンBが行われた後は、少なくともライン圧リニアVFSPLが正常化されるまでハイカットバルブV14が第2切換位置となることはない。これを第2切換位置に切換えるにはライン圧リニアVFSPLによる信号圧制御(動作パターンA)が必要だからである。
図13は、全フェイル状態において上記操作を行った後(以下全フェイル再発進時という)のDレンジにおける主要油圧回路図である。この場合、以下に述べるように油圧機構は第3速の場合と実質的に同等となる。すなわちロークラッチC1と3/5/RクラッチC3とが締結し、第3速(第1特定変速段)に固定された状態となる。
図3に示すように、第3速と全フェイル再発進時とのシフトソレノイドバルブのパターンの相違は、第4シフトリニアVFS4がオン(第3速)であるかオフ(全フェイル再発進時)であるかの違いである。しかし図13に示すように、全フェイル再発進時にはハイカットバルブV14のポートP29が閉じられ、ハイクラッチC2の元圧が供給されない状態となっている。従って第4シフトリニアVFS4の出力圧も0となる。これは、通常の第3速において第4シフトリニアVFS4がオンとされることによって出力圧が0となることと実質的に同等である。その結果、全フェイル再発進時の油圧機構は第3速と実質的に同等となるのである。
以上説明したように、当実施形態の自動変速機ATの制御装置は、各ソレノイドバルブが正常であるときには、前進6段という多段変速を行うことにより、より静粛で低燃費の走行を実現することができる。
そして走行中に全フェイルが起こった場合には、第5速(第2特定変速段)に固定される。こうすることにより、全フェイル時のダウンシフトが最大でも1段(6→5)に抑制される。従ってダウンシフトによる急減速が効果的に抑制され、安全性の高い走行を継続することができる。
そして例えば安全に停止した後、エンジンを停止・再始動させることにより、第3速(第1特定変速段)での発進・走行が可能となる。つまり比較的低速段とすることで可及的に良好な発進性を確保するとともに、第3速である程度の車速での走行を可能とすることができる。
このように当実施形態の自動変速機ATは、ソレノイドバルブが全フェイル状態という一種の固定状態にあるにもかかわらず、第3速(第1特定変速段)と第5速(第2特定変速段)という2種類の変速段をとり得る。そしてそれを可能とさせているのが図16に示すハイカットバルブV14の動作パターンA〜Dである。その動作パターンAで行われる信号圧低減制御にライン圧リニアVFSPLを用いているので、ハイカットバルブV14を切換えるための専用のソレノイドバルブを別途設ける必要がなく、簡単で低コストな構造とすることができる。
次に、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態では、図1に示す骨格構造、図2に示す各摩擦締結要素の断続パターン及び図3に示す各ソレノイドの通電パターンは第1実施形態と共通である。また油圧制御機構においても、以下図17を参照して説明する部分以外は第1実施形態と共通である。以下、その相違点について説明する。
図17は、本発明の第2実施形態に係るハイカットバルブV14及びその周辺を示す部分回路図であって、(a)は第1切換位置にある場合、(b)は第2切換位置にある場合をそれぞれ示す。図17において、第1実施形態と共通部分については共通の符号を付し、その重複説明を省略する。
当実施形態では、第1実施形態のマニュアルバルブV10に代えてマニュアルバルブV10aを用いている。そして第1定常圧が導かれる油路L13をこのマニュアルバルブV10aに導いている。
マニュアルバルブV10aは、第1実施形態のマニュアルバルブV10の機能を全て備え、さらに油路L13から第1定常圧を受け入れてDレンジのときのみそれを第1ポートP25に出力するように構成されている。図17では便宜上、マニュアルバルブV10aの後者の機能を有する分のみを記載している。
このように構成されているので、例えばNレンジやRレンジにおいては、SOL−RedバルブV11が第1定常圧を油路L13に出力し、それがライン圧リニアVFSPLやオンオフSOL1に供給されるものの、第1ポートP25にはマニュアルバルブV10aに遮断されて印加されない。従ってハイカットバルブV14は、図17(a)に示す第1切換位置となる。これは図16に示す動作パターンDに相当する。
一方、Dレンジにおいては、マニュアルバルブV10aは油路L13から受け入れた第1定常圧をそのまま第1ポートP25に出力する。この場合は実質的に第1実施形態と同一の油圧回路構成となる。つまりハイカットバルブV14は第2切換位置となる。図17(b)は、そのDレンジにおける動作パターンCの状態を示す。
このように、マニュアルバルブV10aは、何れのソレノイドバルブにも依らずに第1ポートP25への第1定常圧の印加有無を切換え可能な第1ポート印加切換手段となっている。
当実施形態によれば、Dレンジで走行中に全フェイルが発生し、第5速固定状態で停車したとき、オイルポンプ10(エンジン)を停止させなくてもNレンジに切換えるだけでハイカットバルブV14を第1切換位置とすることができる(動作パターンD)。そしてその後再度Dレンジに切換えると動作パターンBによって第1切換位置を継続することができる。つまり第3速固定状態とすることができる。こうして、より容易に第5速固定状態から第3速固定状態に切換えることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、自動変速機ATの骨格構造や摩擦締結要素の構成及びその締結パターン、各ソレノイドバルブの構成及びその通電パターン、具体的な油圧回路等は、上記実施形態以外のものであっても良い。
また自動変速機ATは前進6段のものでなくても良く、5段以下または7段以上のものであっても良い。但し、より多段化の進んだ自動変速機ATに適用することにより、本発明の効果を顕著に享受することができる。
また、必ずしも第1特定変速段を第3速、第2特定変速段を第5速とする必要はない。但し、第1特定変速段としては、発進性が確保できるとともにある程度の車速で走行可能な変速段とするのが望ましく、また第2特定変速段としては、最高速段からのダウンシフトによる減速が安全に支障のないレベルの比較的高速段とするのが望ましい。
また、全フェイル時に固定状態とされる特定変速段を3つ以上有するものに本発明を適用しても良い。
本発明の第1実施形態に係る自動変速機の骨格構造を示す図である。 各摩擦締結要素の断続状態を示す図である。 油圧機構に含まれる各ソレノイドバルブの通電状態を示す図である。 Nレンジにおける主要油圧回路図である。 Dレンジの自動変速モード第1速における主要油圧回路図である。 Dレンジのマニュアルモード第1速における主要油圧回路図である。 第2速における主要油圧回路図である。 第3速における主要油圧回路図である。 第4速における主要油圧回路図である。 第5速における主要油圧回路図である。 第6速における主要油圧回路図である。 Rレンジにおける主要油圧回路図である。 全フェイル状態におけるDレンジ再発進時の主要油圧回路図である。 上記油圧回路を構成するハイカットバルブ(特定変速段切換バルブ)の分解図である。 ハイカットバルブ及びその周辺を示す部分回路図であって、(a)は第1切換位置にある場合、(b)は第2切換位置にある場合をそれぞれ示す。 ハイカットバルブの動作パターン表である。 本発明の第2実施形態に係るハイカットバルブ及びその周辺を示す部分回路図であって、(a)は第1切換位置にある場合、(b)は第2切換位置にある場合をそれぞれ示す。
3th 第3速(第1特定変速段)
5th 第5速(第2特定変速段)
9 イグニションスイッチ(オイルポンプ駆動切換手段、第1ポート印加切換手段)
10 オイルポンプ
AT 自動変速機
B1 2/6ブレーキ(摩擦締結要素)
B2 L/Rブレーキ(摩擦締結要素)
C1 ロークラッチ(摩擦締結要素)
C2 ハイクラッチ(所定の摩擦締結要素)
C3 3/5/Rクラッチ(摩擦締結要素)
DP27 第1ドレンポート
F25 第1オリフィス
F26 第1オリフィス
LD1 ランド
LD2 ランド
P25 第1ポート
P26 第2ポート
P27 第3ポート
P30 第4ポート
SOL1 オンオフソレノイドバルブ(変速用ソレノイドバルブ)
SPL14 スプール
SPG14 リターンスプリング
V10a マニュアルバルブ(第1ポート印加切換手段)
V11 ソレノイドレデューシングバルブ(第1定常圧出力バルブ)
V13 プレッシャレギュレータバルブ(ライン圧調圧バルブ)
V14 ハイカットバルブ(特定変速段切換バルブ)
VFS1 第1シフトリニア(変速用ソレノイドバルブ)
VFS2 第2シフトリニア(変速用ソレノイドバルブ)
VFS3 第3シフトリニア(変速用ソレノイドバルブ)
VFS4 第4シフトリニア(変速用ソレノイドバルブ)
VFSPL ライン圧リニア(ライン圧ソレノイドバルブ)

Claims (8)

  1. 油圧機構を構成する全てのソレノイドバルブがオフフェイルした全フェイル状態のときに、低速段である第1特定変速段と該第1特定変速段より高速段である第2特定変速段とが択一的に達成可能とされる自動変速機の油圧制御装置において、
    オイルポンプから供給された作動油を、信号圧に応じたライン圧に調圧して出力するライン圧調圧バルブと、
    上記ライン圧を一定の第1定常圧に減圧して出力する第1定常圧出力バルブと、
    上記第1定常圧を減圧するソレノイドバルブであって、運転状態に応じた上記信号圧を出力するノーマリーオープンタイプのライン圧ソレノイドバルブと、
    上記第1定常圧が印加される第1ポートと、上記信号圧が印加される第2ポートとを有するとともに、第1切換位置と第2切換位置とに切換えられる特定変速段切換バルブと、
    複数の摩擦締結要素に対して上記ライン圧の選択供給を行うソレノイドバルブであって、上記全フェイル時に、上記特定変速段切換バルブが上記第1切換位置にあるときには上記第1特定変速段を達成し、上記第2切換位置にあるときには上記第2特定変速段を達成する変速用ソレノイドバルブと、
    上記全ソレノイドバルブの何れにも依らずに上記第1ポートへの上記第1定常圧の印加有無を切換え可能な第1ポート印加切換手段とを備え、
    上記特定変速段切換バルブは、上記第1定常圧が上記第1ポートに印加されていて且つ初期位置が上記第1切換位置であり且つ上記ライン圧ソレノイドバルブが正常である場合には、上記信号圧を低減制御することにより第2切換位置に切換え可能であり、上記第1定常圧が上記第1ポートに印加されていて且つ初期位置が上記第1切換位置であり且つ上記ライン圧ソレノイドバルブがオフフェイルしている場合には当該第1切換位置を継続し、上記第1定常圧が上記第1ポートに印加されていて且つ初期位置が第2切換位置にある場合には当該第2切換位置を継続し、上記第1定常圧が上記第1ポートに印加されていない場合には上記第1切換位置とされ
    上記第1定常圧出力バルブの出力ポートと上記第1ポートとの間の油路上に、上記第1ポートへの上記第1定常圧の印加を遅延させる第1オリフィスが設けられていることを特徴とする自動変速機の油圧制御装置。
  2. 上記第1ポート印加切換手段は、上記オイルポンプの駆動有無を切換えるオイルポンプ駆動切換手段であることを特徴とする請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置。
  3. 上記第1ポート印加切換手段は、運転者が手動操作するシフトレバーに連動するマニュアルバルブであって、
    該マニュアルバルブは、上記シフトレバーが前進走行レンジにあるときには上記第1定常圧を上記第1ポートに導き、上記前進走行レンジにないときには導かないことを特徴とする請求項1記載の自動変速機の油圧制御装置。
  4. 上記特定変速段切換バルブは、上記第2特定変速段を含む変速段で締結される所定の摩擦締結要素へのライン圧供給油路上に設けられるとともに、上記第1切換位置に切換えられたときに上記所定の摩擦締結要素への油圧供給を遮断することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の自動変速機の油圧制御装置。
  5. 当該自動変速機は前進6速の変速を可能とするものであって、上記所定の摩擦締結要素は、第4速乃至第6速において締結されることを特徴とする請求項4記載の自動変速機の油圧制御装置。
  6. 上記第1特定変速段は第3速であり、上記第2特定変速段は第5速であることを特徴とする請求項5記載の自動変速機の油圧制御装置。
  7. 上記特定変速段切換バルブは、単一のスプールと、
    該特定変速段切換バルブが上記第1切換位置をとる方向に上記スプールを付勢するリターンスプリングと、
    上記リターンスプリングが設けられたリターンスプリング室に開口する第4ポートと、
    上記第4ポートと連絡する第3ポートと、
    第1ドレンポートとを有し、
    上記第4ポートに近い側から順に上記ドレンポート、上記第3ポート、上記第2ポート及び上記第1ポートが配設され、該特定変速段切換バルブが上記第1切換位置に切換えられているときには上記第2ポートと上記第3ポートとが連通され、上記第2切換位置に切換えられているときには上記第3ポートと上記第1ドレンポートとが連通されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の自動変速機の油圧制御装置。
  8. 上記特定変速段切換バルブの上記スプールが有するランドは同一径であることを特徴とする請求項7記載の自動変速機の油圧制御装置。
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