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JP4834300B2 - インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関し、より詳細には、中間転写体にインク像を形成し、そのインク像を記録媒体に転写して記録を行うインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置に関するものである。
現在、コンピュータによって作成された画像、印刷物の複写画像、FAX画像等を、ユーザの要求に従って記録し出力する画像記録装置の記録方式として、インクジェット記録方式、電子写真方式、サーマルヘッド方式、ドットインパクト方式等が利用されている。
これらの方式の中で、インクジェット記録方式は、画像信号に応じて、インクを、紙、布及びプラスチックシート等の被プリント材(記録媒体)上に直接吐出して、文字や画像等をプリントする低騒音のプリント方式である。この方式は、複雑な装置を必要としないため、ランニングコストが低く、装置の小型化やカラー化が容易である。さらにその方式によれば、カードサイズのものから大版のポスター等に至るまで、記録媒体サイズに対して自由度があること、等の種々の利点を有している。また、画像品位においても、近年では、銀塩カラー写真と同等の高画質画像の出力が可能になっている。インクジェット方式を用いた記録装置は、以上のような利点を有していることから、パーソナルコンピュータに接続される出力装置としてのプリンタに限らず、ファクシミリや複写機等のOA機器の出力装置として使用されている。更には、工業生産分野でも、各種のカード印刷、パッケージ印刷、または大判のポスター作成等、広範な使用がなされている。
ところで、最近の動向として、各種の分野において、記録媒体の種類によらず、インクジェット記録方法によって高品位画像を出力したいという要望がある。このような要望を実現するためには、特に、これらの場合において、記録媒体上で画像劣化を生じる要因、例えば、後述する「フェザーリング」、「ビーディング」や「ブリーディング」といった現象を抑制する必要がある。これらの現象は、インクジェット記録の高速化に伴い、さらに顕著となってきている。
上述の画像劣化を生じる現象は、記録媒体の特性、およびこれに記録するインクの物性と密接な関係がある。例えば、普通紙(PPC)等のセルロース繊維で形成された記録媒体にインクを吐出し画像形成を行う場合、インクまたは記録媒体に何らかの化学的処理を施さない限り、記録媒体を構成する繊維に沿ったインク滲みである「フェザーリング」現象が生じる。また、PET(ポリエチレンテレフタレート)や、ポリエチレン等のプラスチックシート等からなる、溶剤を浸透させない非吸収性の記録媒体や、インクの浸透性の少ない印刷光沢紙等に対して画像形成を行う場合は、記録媒体上に吐出されたインクが記録媒体に吸収されきらず流れてしまう等の現象、いわゆる、“はじき”と呼ばれる現象が生じる。これと同時に、記録媒体に着弾したインクドットが集合し隣接したインクドット同士が混ざり合うことにより、「ビーディング」現象が生じる。さらに、重なりあった色の境界部分で互いの色が滲みでる「ブリーディング」現象が生じたりして画像形成品位を低下させてしまう。従って、インクジェット記録方式によって、普通紙や非吸収性の記録媒体へ良好な画像を形成することは困難であった。
上述の問題点を解決するための方法として、インク組成中の溶剤種の変更や液−固体相変化を生じさせる等を行うことで、各種記録媒体に適したインクを用いてインクジェット記録を行うことが知られている。ここで、記録用インクの主溶剤は、油性系、有機溶剤系、水系に分類される。一般に、油性系や有機溶剤系のインクを用いた場合には、溶剤の臭気、環境や人体への影響から、装置に、排気や回収等の設備を設けなければならず、装置が大型化するという問題が生じる。また、溶剤の蒸発が速いので、記録ヘッドの吐出口であるノズルの目詰まりが発生しやすい。これらの点から、記録用インクとして油性系、有機溶剤系を用いるのは有用であるとは言えない。一方、水性系のインクは、溶媒として無味、無臭、無色の水を用いているため、環境や人体への影響を考慮して装置を構成する必要はない。また、インクによるノズルの目詰まりを起こさないので、水性系インクは、広く利用されている。
また、熱溶融型(ホットメルト)インクジェットと呼ばれている液−固体相変化を利用した記録方法がある。この方法を用いる場合は、加熱により低粘度化されたインクを直接記録媒体上に吐出するか、一旦、加熱された中間転写体上にインクを吐出してインク像を形成する。その後、その中間転写体から記録媒体にインク像を転写して画像を形成する。いずれの場合も、記録媒体上で自然冷却してインクを固化して画像形成を行っている。このような熱溶融型の方法によれば、どのような記録媒体にも記録することが可能である利点を有している。
しかしながら、この方法では、インクの液−固体相変化特性を発現させる必要がある。そのため、着色剤よりも液−固体相変化特性を示す樹脂量が極めて多くなり、所望の光学濃度を得るためには記録媒体上でインク量を多くする必要がある。その結果として、記録媒体へ付着したインクの厚さが大きくなり、画像品位が落ちてしまうという問題があった。また、固体のインクを一旦溶融し液体にする必要があるため、装置が稼動している間はインク供給路や記録ヘッド等を加熱し続けインクを常に液体状態にしなければならず、膨大なエネルギーが消費される。よって、この方法は、省エネルギーの点からも有用ではない。
その他に知られている、上述の問題の解決を試みた記録方法としては、一旦中間転写体上にインクジェット記録方式によりインク像を形成し、その中間転写体上のインク像をインクの乾燥とともに増粘し、またはインク像の溶剤を除去してインクを濃縮後、インク像を中間転写体から記録媒体上に転写する転写方式と呼ばれる方法が多く提案されている(特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。これらの転写方式の記録方法は、従来のインクジェット記録のように、インク中の水分を記録媒体に浸透させることにより記録媒体に画像を形成する方法ではない。そのため、記録媒体へインクが浸透していくとともに記録媒体の繊維に沿ってインクが広がるフェザーリング現象に対して、特に、有効な手段となる。また、形成されたインク像を中間転写体から記録媒体へ転写する際に、記録媒体のインク浸透特性に合わせて、中間転写体上のインク像を形成するインクの水分・溶剤量を制御し、粘度を制御することが可能である。よって、使用できる記録媒体の自由度が高まる。さらに、インクジェット記録において、中間転写体を用いると、インクを吐出するためのノズルを有する記録ヘッドが、記録媒体に対して離れている構成である。そのため、記録媒体から発生する紙粉がノズルに付着することによる記録ヘッドの目詰まりが防止できる、等の利点がある。
しかしながら、中間転写体を用いたインクジェット記録方式によって、さらに高画質高品位な画像を得るためには、以下の〔1〕〜〔4〕に記載された条件を満たすことが望ましい。
[1]中間転写体上のインク像が、ビーディングやブリーディングのない画像として形成されること。
[2]中間転写体上に形成されたインク像が、画像劣化がない状態で記録媒体に転写されること。
[3]転写されたインク像が、乾燥定着され、印刷物を積載しても裏移りがなくかつ耐擦過性を有していること。
[4]転写後の中間転写体が容易にクリーニング可能であり、繰り返し画像形成が可能であること。
しかしながら、上記項目について以下のような問題点が生じている。
[1]については、使用される中間転写体がインク溶剤浸透性の記録媒体ではないために、中間転写体上に吐出され隣接したインク滴が中間転写体上で互いにくっつき合って不当に広がり、または、流れて、ドットの位置や形が大きく変化するビーディングを生じ、画像が乱れてしまう。すると、転写後の画像も当然乱れたものとなり、結局、高品位な画像を記録媒体に形成ができない。
[2]については、中間転写体上に形成されたインク像が記録媒体に転写される際に、インク像の一部が中間転写体から局部的に転写されない、あるいはインク像が内部で分離し中間転写体と記録媒体それぞれにインク像が分かれて転写される状態が生じることにより、記録媒体上の画像に色ムラや光学濃度ムラが生じ、良好な画像形成が行えない。
[3]については、記録媒体である印刷用紙などに転写されたインク像の固形分である着色剤と樹脂の量比において樹脂量が少ない場合や、十分に樹脂量がある場合でもインク像内に水以外の不揮発溶剤成分である有機溶剤などが残留すると、インク像を構成するインク固形分の凝集力が弱くなる。それにより、記録媒体積載時における裏移りのインク汚れや、擦れによるインク汚れが生じる。
[4]については、中間転写体上のインク像を構成するインクが記録媒体への転写後に中間転写体上に残ると、その量が多いとクリーニングの多大な負荷となる。よって、クリーニングによる記録速度の低下、エネルギーの消費などが問題となるばかりか、廃インクも多量に発生し装置が大型化する問題を生じる。
上記問題点に対して、特許文献4では、インクジェット記録式ヘッドから中間転写体上にインク滴を噴射し、この中間転写体に、インク中の溶媒を吸収させてインクを濃縮し、記録媒体へ転写する装置が開示されている。この装置は、良好な画像形成を可能とするための有用な手段の一つである。
しかしながら、特許文献4で開示された装置では、中間転写体の溶剤吸収孔に目詰まりを生じてしまい、記録媒体への転写の効率が低下するという特有の問題がある。また、これに伴い、中間転写体上に残されたインクのクリーニングが大掛かりとなる。さらには、溶媒を吸収した中間転写体からエアーサクションにより吸液したり、吸収した水分を加熱により放出したりして、転写体を初期状態に戻すために、多くのエネルギーを消費するという問題もある。
また、特許文献5では、中間転写体上に予めインクに対し溶解性、または膨潤性を有する粉体を形成し、インクジェット記録式ヘッドからこの転写体上にインク滴を噴射して画像を形成した後、その画像を中間転写体から記録媒体に転写する方法及び装置を提案している。
しかしながら、特許文献5で開示された方法では、粉体に吸水性を持たせているため、粉体に取り込んだ水分を除去する際に高いエネルギーを要する。また、水分を含んだまま画像を記録媒体に転写すると、水分が記録媒体に吸収されることにより画像を拡げることになり、画像のシャープネスが落ちると同時に、光学濃度も低下し、画像劣化の原因となる。また、中間転写体上の画像が形成されていない部分である非画像部では、未着色の吸水性樹脂粉体が残る。よって、転写時に記録媒体に汚れを生じさせ、画像品位を更に劣化させる要因となる。以上の工程を用いた画像形成方法は、画像を中間転写体に固定する方法としては有用である。しかしながら、この画像形成方法において、転写後に再度、粉体を安定に転写体に供給するためには、転写体上の非画像部の粉体をクリーニングした後に、粉体を再塗工する工程が必要となる。そのための中間転写体のクリーニングや粉体塗工装置が、かなり大掛かりなものとなる。
一方、特許文献6では、中間転写体上に油性インクに対して離型性のグリセリンの薄膜を形成し、その上に油性インクによるインク像を形成する装置が開示されている。このように、記録媒体上に画像形成するためのインクとして油性インクを用いると、中間転写体上に良好なインク像を形成することが可能である。
しかしながら、特許文献6で開示された装置では、上述のように油性インクを用いる場合、高品位でありかつ耐水性に優れた画像を提供することができる。しかしながら、上記油性インクには、人体や環境に対して有害な有機溶媒が含まれているため、人体や環境に対して悪影響を及ぼしてしまう可能性もある。そこで、人体や環境への影響を考慮した、水を主溶媒とする水性インク組成物を用いてこの方法を実施すると、中間転写体上に形成されたグリセリンと水性インクとのなじみが良いため、ビーディングやブリーディングが発生し、形成される画像が乱れてしまう。また、乾燥が遅く高速で定着が行えない問題も生じる。
さらに、特許文献7および特許文献8では、離型性の中間転写体上に予め界面活性剤を塗布して、水性インクに対する濡れ性を上げることによってインクジェット記録を行う方法が開示されている。これらの方法では、予め界面活性剤を塗布した中間転写体上に水性インクで画像を形成し、適度な粘度となったところで記録媒体に転写することで、記録媒体上でのインク滲みの発生等を解決している。
特許文献7および特許文献8に開示された、中間転写体を用いたインクジェット記録における課題解決の方法は、単色、例えば、同一濃度のブラックインクのみを使用し、中間転写体上、または記録媒体上に画像を形成する場合に有用である。しかしながら、記録媒体上での所定の画像アドレスポイントに、濃度の異なるインクや色の異なるインクを、複数の異なったノズルからインクを吐出させてカラーの高画質画像を形成する場合に対しては、決定的な解決策とはならない。
米国特許第4,538,156号明細書 米国特許第5,099,256号明細書 特開昭62−92849号公報 特開平5−200999号公報 特開平11−188858号公報 特開平1−146750号公報 特開平7−89067号公報 特開平7−256873号公報
以上から明らかなように、中間転写体を用いたインクジェット記録方式によって画像形成を行う場合、普通紙や非吸収性の記録媒体に対して良好な画像形成を行うために、種々の方法が提案されているが、まだ改善されなければならない課題が残されている。例えば、中間転写体から記録媒体へ転写されたインク像が、高速に乾燥定着され、かつ優れた耐擦過性を有し完全に定着されることにおいて、さらなる向上が必要である。
このような問題を解決するために、着色インクの流動性を低下させるための材料(本明細書では、「画像固定成分」とも呼ぶ)やインクへの高分子樹脂などの添加量を増加する方法が考えられる。しかしながら、インクに対しての過剰な添加剤塗布は、インクジェット記録ヘッドからのインク吐出の安定性の悪化、または画像固定成分の乾燥による画像固定成分の塗布手段内での樹脂固着による塗布手段の安定性の低下、を引き起こしてしまう可能性があった。
本発明は、このような問題を鑑みてなされたもので、その目的とするところは、中間転写体を用いたインクジェット記録において、ビーディングやブリーディングが生じない高品位かつ耐擦過性(定着性)に優れたインク画像を記録媒体に形成するインクジェット記録方法およびインクジェット記録装置を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明のインクジェット記録方法は、中間転写体に対し、着色インクの顔料を凝集させるための第1材料を付与する付与工程と、前記第1材料が付与された中間転写体に対して前記着色インクを記録ヘッドにより付与し、前記中間転写体上にインク像を形成する形成工程と、前記中間転写体上に形成されたインク像を記録媒体へ転写する転写工程と、前記転写工程の前に、水溶性樹脂を含有する第2材料を前記中間転写体に対し付与する付与工程とを備え、前記第1材料は、少なくとも金属塩を含む液体である、ことを特徴とする。
なお、上記の「第1材料」としては、後述する画像固定成分を用いることが好ましく、また、上記の「第2材料」としては、後述する補助液を用いることが好ましい。
さらに、本発明の「記録媒体」は、一般的な記録装置で用いる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルムその他のインクを受容可能なものである。
以上説明したように、本発明によれば、着色インクの他に、この着色インクの流動性を低下させる第1材料(画像固定成分)と、転写後の記録媒体上での画像の耐擦過性を向上させる第2材料(補助液)を中間転写体に対し付与するようにしている。そのため、中間転写体上にビーディングやブリーディングの生じていないインク像を形成することができ、そのインク像を記録媒体へ転写することで高品位な画像を記録媒体に形成できる。さらに中間転写体上に上記第2材料を含有したインク像が転写されるため、転写後の記録媒体上における画像は耐擦過性(定着性)に優れたものとなる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態は、補助液付与部4を、インク付与部3の下流側に設けることにより、インク付与部3にて各色インクを中間転写体である転写ドラム1上に付与した後に、補助液を転写ドラム1に形成されたインク像へ付与するものである。
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の画像形成部の構成を示す概略断面図である。
図1において、転写ドラム1は、離型性の表面層を有する中間転写体である。この転写ドラム1は、不図示の軸に支持されており、不図示のドラム駆動装置によって矢印A方向に回転駆動することができる。転写ドラム1の円周方向には上流側から下流側に向かって順に、画像固定成分塗布部2、インク付与部3、補助液付与部4、インク像処理部5、転写部6、記録媒体分離部7、クリーニング部8が配置されている。さらに、記録媒体9を不図示の記録媒体格納部(給紙カセット)から後述するニップ部へ搬送するための給紙搬送部10、およびインク像が、中間転写体である転写ドラム1から記録媒体9に転写された後に、記録媒体9上のインク像を定着させるための定着機構を有すると同時に、排紙トレイに記録媒体9を排紙する排紙搬送定着部11が配置されている。また、インクジェット記録装置は、不図示の制御部を有している。
以下で、上述したそれぞれの部材の構成についてさらに詳細に説明する。
図4は、本発明の一実施形態に係る制御部の構成を示す概略ブロック図である。図4において、全体を符号100で示すインクジェット記録装置において、CPU101は、本インクジェット記録装置の動作の制御処理やデータ処理等を実行する。メモリ102は、それらの処理手順等のプログラムを格納したROM(不図示)と、それらの処理を実行するためのワークエリア等として用いられるRAM(不図示)とを有する。I/F103は、インクジェット記録装置と、ホストコンピュータ等の画像データの供給源である画像供給装置110との間でデータやコマンド等の情報を授受するためのインターフェイスである。
以上の各部のほか、転写ドラム1、画像固定成分塗布部2、インク付与部3、補助液付与部4、インク像処理部5、転写部6、記録媒体分離部7、クリーニング部8、給紙搬送部10、排紙搬送定着部11、加熱ヒータ14は、バスライン120に接続されている。従って、CPU101は、バスライン120を介して各部と信号のやり取りを行うことができる。また、制御対象である各部には、状態検出用センサが配設され、それぞれの検出信号をバスライン120を介してCPU101に伝達することができる。
図1に示されるように、離型性の表面層を有する中間転写体である転写ドラム1は、アルミニウム製の支持体12の周囲に、表面層13a及び13bとして、シリコーンゴムからなる2層が積層されている。支持体12として使用される材料は、特にアルミニウムに限定されるわけではなく、例えば、ニッケル、燐酸鉄等の金属や、アセタールのような強度に優れる熱硬化性樹脂、またはセラミック等によって成型されたものを用いることができる。また、図1においては、離型性の表面層をシリコーンゴムからなる2層としているがこれに限定されず、その弾性特性により、適宜に、その層構成を変えてもよい。
本実施形態では、転写ドラム1の表面を離型性としているので、転写工程の後の転写ドラム1の表面にインクを残さずクリーニングを行うことが容易である。
離型性の表面層を有する転写ドラム1の最表面となる表面層13aは、その表面において、インク像を剥離し易い性質(離型性)を有する。シリコーンゴムは、表面エネルギーが低く、剥離性が高い性質を有していることから、表面層13aを形成する最適材料の一つである。表面層13aを形成する材料の他の例としては、例えば、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、スチレンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン/プロピレン/ブタジエンのコポリマー、ニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。特に、好適なものとして、シリコーンゴム、フルオロシリコーンゴム、フェニルシリコーンゴム、フッ素ゴム、クロロプレンゴム等が挙げられる。表面層13aの下層である表面層13bは、支持体12の表面を構成するゴム層の弾性特性を最適化するものであり、上記に挙げた材料等を適宜に使用して形成することができる。
なお、上述では表面層13aの表面を離型性であるとしたが、離型性に制限されるものではない。但し、転写率向上の面から離型性材料であることが望ましく、非浸透性(非吸収性)の材料であることが望ましい。ここで、離型性とは、表面に付与された反応液(画像固定成分)、インク、インクと反応液(画像固定成分)とで形成されるインク像等の剥離の容易さの特性を示すものである。離型性が高いほどインク像の転写率やクリーニング時のクリーニング部材や中間転写体の駆動にかかる負荷に対して有利である。しかしその反面、材料の臨界表面張力が低くなり、表面がインク等の液体が接着しにくい撥液性となるため、反応液(画像固定成分)やインク像を保持することが難しくなる。本発明で表記する離型性表面とは、臨界表面張力が30mN/m以下、若しくは水に対する接触角が75°以上の表面を指す。
また、転写ドラム1内部には、転写ドラム1の温度安定性を確保するための加熱ヒータ14が内蔵されている。加熱ヒータ14には、例えばハロゲンランプ等の、通常使用される加熱手段を適宜に使用できる。その設定温度は、転写ドラム1の表面温度を基準として、20〜100℃とすることが好ましく、より好ましくは25〜80℃である。
図1における画像固定成分塗布部2は、塗布液容器15、画像固定成分16、塗布ローラ17aおよび17bを含んで構成されている。
画像固定成分塗布部2は、塗布液容器15内の画像固定成分16を転写ドラム1へと塗布する。
画像固定成分塗布部2は、転写ドラム1上の後述するインク付与部3の上流側に配置されている。塗布ローラ17bは、転写ドラム1に従動して回転する(従動回転)か、独立の塗布ローラ駆動手段(不図示)によって回転制御可能となっている。また、塗布ローラ17aは、塗布ローラ17bに従動するか、独立の塗布ローラ駆動手段によって回転制御可能となっている。このように、2つの塗布ローラ17aおよび17bが回転することによって、画像固定成分16は転写ドラム1の表面に塗布される。画像固定成分16の転写ドラム1への塗布厚は、画像固定成分16の濃度によっても異なるが、0.1〜10μmの範囲で設定することが好ましい。塗布した画像固定成分の厚さが薄過ぎると、塗布ムラによる画像固定成分とインクとの不均一な反応が生じる。一方、その厚さが厚過ぎると凝集したインクが画像固定成分表面を動くため、ビーディングを生じてしまう。塗布ローラ17a及び17bは、画像固定成分16との濡れ性がよい材料が好ましく、また、多孔質材料や表面凹凸材料、例えば、グラビアロール状のもの等、を用いることもできる。
さらに、画像固定成分16の付与手段としては、ローラ形状に限定されず、ブレードによる塗布量をコントロールする方法や、スプレーやインクジェット方式の記録ヘッドを用いて付与を行なう方法等、転写ドラム1へ画像固定成分16を付与できる手段を適宜に用いることができる。特に、インクジェット方式の場合、記録画像に応じたパターン上に画像固定成分を正確に付与することが出来る。画像固定成分塗布部2は、また、不図示の離接制御装置により転写ドラム1に離接制御が可能に構成されている。
ここで、本実施形態に係る画像固定成分16について詳細に説明する。画像固定成分とは、着色インクの流動性を低下させるための材料である。詳しくは、インクとの接触によって中間転写体上におけるインクの流動性を低下させ、中間転写体上に着弾したインクを極力着弾位置に保持させる役割を担う液体である。ここで、画像固定とは、インクを構成している組成物の一部である着色剤や樹脂等が、化学的に反応、または物理的に吸着し、インク全体の流動性の低下が認められる場合は勿論、インクを構成する組成物の固形分の凝集により局所的に流動性の低下を生じる場合を含む意である。このように、離型性の中間転写体上に着弾したインクの流動性を低下させないと、中間転写体上でインクが流れてしまい、ビーディングやブリーディングの原因となってしまう。そこで、画像固定成分を用いてインクと反応させることにより、それと接触したインクの流動性を低下させ、離型性の中間転写体上に着弾されたインクを着弾位置に保持させるようにする。これにより、中間転写体上でインク滴同士が接触しても、ビーディングやブリーディングの発生を抑制することができる。
画像固定成分としては、インクと接触することでインクを凝集させる材料が好適であり、例えば、金属塩を含む液体が好適である。画像固定成分16を構成する金属塩の最も好適なものとしては、多価金属塩が挙げられる。多価金属塩とは、二価以上の多価金属イオンと、これら多価金属イオンに結合する陰イオンとから構成される。多価金属イオンの具体例としては、Ca2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+、Zn2+等の二価金属イオン、そしてFe3+、Al3+等の三価金属イオンが挙げられる。また、これらと結合する陰イオンとしては、Cl−、NO3−、SO 2−、I−、Br−、ClO3−、RCOO−(Rは、アルキル基)等の陰イオンが挙げられる。
また、画像固定成分16には、上述の多価金属塩等の金属塩と共に、下記に挙げるような水溶性有機溶剤を含有させることができる。水溶性有機溶剤としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレングリコール類、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の1価アルコール類の他、グリセリン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、トリエタノールアミン、スルホラン、ジメチルサルホキサイド等が挙げられる。上記に挙げたような水溶性有機溶剤の、画像固定成分16中の含有量については特に制限はないが、画像固定成分全質量の5〜60質量%、好ましくは、5〜40質量%の範囲である。
さらに、画像固定成分16は、凝集補助材として、例えば、水溶性樹脂、水溶性架橋剤や酸性溶液等を含有してもよい。好適に用いられる材料としては、多価金属塩と共存できるものであればよい。水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどが用いられる。これらの凝集補助材は、分子量が比較的大きいことから、多価金属塩との併用によって形成されたインク凝集像の内部凝集力を高めることができる。この結果、インク凝集像の記録媒体9への転写効率や耐擦過性を高めることができる。
さらに、転写ドラム1への画像固定成分16の均一な塗布を行うことを目的として、画像固定成分16に塗布助剤を含有させてもよい。この塗布助剤として界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤としては、例えば、サーフロンS−141(商品名、セイミケミカル株式会社製)、シルウェットL−77(商品名、日本ユニカー株式会社製)等を用いることができる。本実施形態に用いる界面活性剤は、これらに限定されるものではなく、他の、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、水溶性のカチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等の、各種の界面活性剤を用いることができる。
カチオン系界面活性剤の好ましい具体例としては、脂肪族アミン塩、第四アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスフォニウム塩等が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤の好ましい具体例としては、フッ素系、シリコーン系、アクリル酸共重合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物の酸化エチレン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステル型、ポリエチレンオキサイド縮合型ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミンオキサイド、等が挙げられる。
両性界面活性剤の好ましい具体例としては、カルボキシベタイン型、アミノカルボン酸塩、レチシン、等が挙げられる。
これらの界面活性剤の添加量は、画像固定成分16に対して、0.05〜10質量%程度とすることが好ましく、より好ましくは、0.1〜5質量%程度である。
画像固定成分16には、この他、必要に応じて、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤等の添加剤を適宜に配合してもよい。また、本実施形態で使用する画像固定成分16は、無色であることがより好ましいが、記録媒体上でインクと混合された際に、各色インクの色調を変えない範囲の淡色のものでもよい。さらに、上述のような形成材料からなる画像固定成分16は、25℃付近での粘度が1〜30cps.(mPa・s)の範囲となるように、物性を調整されたものであることが好ましい。
本実施形態では、画像固定成分16は、金属塩を含む構成であるが、インクの流動性を低下させるものであれば、金属塩を含まない構成としても良い。
図1において、インク付与部3では、上述のような画像固定成分が塗布された中間転写体上に、制御部より送られてくる画像信号に応じて、少なくとも着色剤を含むインクを記録ヘッドにより付与することによってインク像の形成を行う。
図1において、インク付与部3は、転写ドラム1上の画像固定成分塗布部2の下流側に配置されており、記録ヘッド18a、18b、18cおよび18dを含んで構成されている。本実施形態において、記録ヘッド18a、18b、18cおよび18dを総じて記録ヘッド18と呼ぶ。本実施形態に係るインクジェット記録装置では、記録ヘッド18として、電気熱変換素子である発熱素子(ヒータ)を用いる形式のライン型インクジェット記録ヘッドを用いている。記録ヘッド18a、18b、18cおよび18dは、転写ドラム1の円周方向に一定間隔を置いて配置されている。図1の構成においては、ライン型のインクジェット記録ヘッドが用いられているが、勿論、インク色別の複数のノズル列を転写ドラム1の円周方向または軸方向(図1において、紙面垂直方向)の所定範囲に配列された記録ヘッド(以下、本明細書では「シリアル型の記録ヘッド」とも呼ぶ)を用い、この記録ヘッドを軸方向に走査しながら順次転写ドラム1に画像形成を行ってもよい。シリアルヘッドの場合、転写ドラムの回転駆動は、ヘッドのノズル列の長さに対してステップ駆動となる。さらに、インクジェット記録ヘッドは、上記発熱素子を用いる形態に限らず、圧電素子駆動型等、インクをノズルから吐出可能な手段であれば、いずれの方式のものも使用できる。
上述した4種の記録ヘッド18は、それぞれが異なる色のインクを付与するように構成されている。図1の構成においては、記録ヘッド18aがイエロー(Y)、18bがマゼンタ(M)、18cがシアン(C)、18dがブラック(K)の、各色のインクを付与する形態となっている。これらからなる記録ヘッド18は、不図示のインクタンクから、それぞれの色のインクの供給を受ける。各記録ヘッドの発熱素子は、制御部より受け取った各色に対応した画像信号に応じて発熱して、各インクタンクから供給されたインクの温度を上昇させバブルを発生させる。発生したバブルが膨張することによって、各記録ヘッド18の複数ノズルからインク滴が吐出される。なお、本実施形態におけるインク付与部を構成するインクジェット記録ヘッドの数、転写ドラム1に吐出されるインクの色順序、および使用されるインクの色相は、上述に限定されるものではない。
なお、転写ドラム1上に形成されるインク像は、転写の際に反転することを考慮し、記録媒体9に最終的に形成すべき画像の鏡面画像としなければならない。当然、記録ヘッド18に供給される画像信号は鏡面画像に対応した画像信号でなければならない。そこで、制御部にて、画像供給装置110から送られてくる画像信号(つまり、記録媒体9に最終的に形成される画像に対応した画像信号)に対しミラー反転処理(反転データを得る処理)を施す。これにより、鏡面画像に対応した画像信号を取得し、これを記録ヘッドへ供給するようにしている。
インク付与部3で使用するインクとしては、特に限定されるものではなく、一般的なインクジェット用インクのいずれも使用することができる。特に、顔料インクは、染料インクと比べて、記録媒体に対して滲みにくく、耐水性、耐光性に優れているので、本実施形態において好適に使用できる。以下、本実施形態において好適に使用できる水系顔料インクについて説明する。
顔料インク中の顔料は、顔料インクの全質量に対して、質量比で1〜20質量%、好ましくは2〜12質量%の範囲で用いる。本実施形態で使用される顔料としては、具体的には下記に挙げるものが使用できる。
黒色の顔料としてはカーボンブラックが挙げられる。例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、一次粒子径が15〜40mμ(nm)、BET法による比表面積が50〜300m2/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH値が2〜9等の特性を有するものが好ましく使用される。このような特性を有する市販品としては、例えば、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、No.2200B(以上、三菱化成製)、RAVEN1255(以上、コロンビア製)、REGAL400R、REGAL330R、REGAL660R、MOGUL L(以上キャボット製)、Color Black FWl、COLOR Black FW18、Color Black S170、Color Black S150、Printex 35、Printex U(以上、デグッサ製)等があり、いずれも好ましく使用することができる。
また、イエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、C.I.Pigment Yellow 2、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 13、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 83等が挙げられる。また、マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 48(Ca)、C.I.Pigment Red 48(Mn)、C.I.Pigment Red 57(Ca)、C.I.Pigment Red 112、C.I.Pigment Red 122等が挙げられる。また、シアンの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 2、C.I.Pigment Blue 3、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 16、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Vat Blue 4、C.I.Vat Blue 6等が挙げられる。勿論、本実施形態は、これらに限られるものではない。また、上記に挙げたものの他、自己分散型顔料、樹脂分散型顔料、マイクロカプセル化顔料等のものをいずれも使用することが可能である。
水系の顔料インクを製造する場合に使用する、水系媒体中に上記に挙げたような顔料を分散させるための分散剤としては、水溶性樹脂ならどのようなものでも良い。中でも、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、更に好ましくは、3,000〜15,000の範囲のものを使用する。このような分散剤としては、具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、アクリルアミド、およびその誘導体等から選ばれた少なくとも二つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性の重合性単量体)からなるブロック共重合体、あるいは、ランダム共重合体、グラフト共重合体、またはこれらの塩等が挙げられる。あるいは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することができる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。なお、これらの顔料分散剤として用いられる水溶性樹脂は、顔料インクの全質量に対して0.1〜5質量%の範囲で含有させるのが好ましい。
特に、上述のような顔料が含有されている顔料インクの場合には、顔料インクの全体が中性またはアルカリ性に調整されていることが好ましい。このようなものとすることにより、顔料分散剤として使用される水溶性樹脂の溶解性を向上させ、長期保存性に一層優れた顔料インクとすることができる。ただし、この場合、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、好ましくは、7〜10のpH範囲とするのが望ましい。この際に使用されるpH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。上述のような顔料等の着色剤、および分散剤である水溶性樹脂を、水性液媒体中に分散または溶解することで、顔料インクは構成される。
顔料インクにおいて好適な水溶性溶媒は、水および水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の、多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
上述のような水溶性有機溶剤の顔料インク中の含有量は、一般的には、顔料インクの全質量の3〜50質量%の範囲、より好ましくは3〜40質量%の範囲で使用する。また、使用される水の含有量としては、顔料インクの全質量の10〜90質量%、好ましくは30〜80質量%の範囲とする。
また、顔料インクとしては、上述の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つ顔料インクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を適宜に添加することができる。特に、浸透促進剤として機能する界面活性剤は、記録媒体に画像固定成分と顔料インクの液体成分を速やかに浸透させる役割を担うための適量を添加する必要がある。添加量の例としては、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の範囲である。アニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されているものをいずれも好ましく使用することができる。
以上のような材料からなる顔料インクの作製方法としては、始めに、分散剤としての水溶性樹脂と水とが少なくとも含有された水性媒体に顔料を添加する。次いで、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の分散液を得る。次に、この分散液に、サイズ剤、および、上述したような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌して顔料インクとする。
なお、分散剤として上述のようなアルカリ可溶型樹脂を使用する場合には、樹脂を溶解させるために塩基を添加することが必要である。この際の塩基類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミン、または水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の、無機塩基が好ましく使用できる。
また、顔料インクの作成方法においては、顔料を含む水性媒体を攪拌し、分散処理する前に、プレミキシングを30分以上行うのが効果的である。すなわち、このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
上述した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミルおよびサンドミル等が挙げられる。その中でも、高速型のサンドミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、ビーズミル、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミルおよびコボルミル(いずれも商品名)等が挙げられる。
また、顔料インクを用いるインクジェット記録方法では、耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料を用いる。所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、吐出速度を遅くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、およびこれらの手法の組合せ等の手法が挙げられる。
インク付与部3においては、上述したような顔料インク等を用い、上述した画像固定成分16が塗布された中間転写体(転写ドラム1)上に、制御部より送られる画像信号に応じて吐出制御可能な複数のノズルを有する記録ヘッドでインク滴を付与して、転写ドラム1上にインク像を形成する(インク像形成工程)。本実施形態においては、転写ドラム1上に塗布された画像固定成分16と、記録ヘッド18により付与された顔料インクとの反応によってインクが迅速に凝集するため、転写ドラム1上にインク凝集像が形成されることになる。特に、本実施形態では、画像固定成分として機能する、例えば、金属塩、つまり金属イオンが、迅速に顔料インクと反応し凝集する。よって、転写ドラム1上に、ビーディングやブリーディングがない良好なインク凝集画像を形成することができる。なお、上述では、着色剤として顔料を用いる顔料インクを例にとって説明したが、本実施形態はこれに限定されず、例えば、顔料に染料を加えた混合インクを用いてもよい。また、画像固定成分に金属塩を有していればインクおよび/または画像固定成分中にインク凝集像の内部凝集力を強めるために水溶性樹脂や架橋剤等を添加したものであっても良い。図1の構成のインク付与部3は、上述したインク像形成工程を実現するものである。
次に、図1において、補助液付与部4は、補助液付与用記録ヘッド19を含んで構成されている。補助液付与部4では、インク付与部3で形成されたインク像20に対応して補助液21を補助液付与用記録ヘッド19により付与する。
図1において、転写ドラム1上のインク付与部3の下流側に、補助液付与部4が設けられている。本実施形態においては、補助液付与用記録ヘッド19に、発熱素子を用いる形式のライン型インクジェット記録ヘッドを用いている。補助液付与用記録ヘッド19は、インク付与部3の記録ヘッド18a、18b、18c及び18dと並列に転写ドラム1の円周方向の下流側に配置されている。図1では、補助液付与用記録ヘッドとしてライン型のインクジェット記録ヘッドが用いられているが、勿論、従来のシリアル型の記録ヘッドを用い、この記録ヘッドを軸方向に走査しながら転写ドラム1に形成されたインク像20上に順次補助液付与を行ってもよい。さらに、インクジェット記録ヘッドは、上述に限らず、圧電素子駆動型等、インクを吐出可能であれば、いずれの方式のものも使用できる。
さらに、本実施形態においては、補助液の付与手段として記録ヘッドを用いたが、スプレーやローラ等による補助液の付与等、転写ドラムへ補助液を付与できる手段であれば適用可能である。
補助液付与用記録ヘッド19へ供給される画像信号は、インク付与部3の記録ヘッド18a、18b、18cおよび18dに供給される4種の2値画像信号を論理和することで得られる論理和信号である。したがって、転写ドラム1上のインクが付着していない部分には補助液21は付与されず、インクが付着されている部分のみに補助液21が付与されることとなる。
以下で、本実施形態に係る補助液について説明する。
補助液21は、転写先の記録媒体9上における最終画像の耐擦過性(定着性)を向上させるための材料である。記録媒体上における画像の耐擦過性を向上させる一手法としては、記録媒体との接着性に寄与する樹脂を画像中に多く含有させることが有効である。中間転写体である転写ドラム1上に形成されたインク像20に対して樹脂を含有した補助液を付与すると、インク像20の構成成分として樹脂成分が多くなる。このような状態のインク像を転写するため、当然、転写後の画像においても樹脂含有量が多くなる。従って、転写後の画像における耐擦過性が高まる。また、転写ドラム1上のインク像20に対して補助液21を付与するにあたり、補助液21をインク像20の形成前に付与すると転写ドラム1との剥離性を補助することができる。また、インク像の形成後に補助液21を付与すると記録媒体9との接着性を補助し、結果として転写性の点でも有利である。なお、本実施形態において、補助液21は、通常のインクに使用される着色剤成分である、顔料や染料を除いた成分を主成分としている。
補助液21の構成としては、耐擦過性を向上するため樹脂として水溶性樹脂、水溶性架橋剤を用いることができる。水溶性樹脂ならどのようなものでも使用できるが、付与する手段によって水溶性樹脂の種類を変えることが好適である。例えば、補助液21を付与する手段が記録ヘッドの場合には、重量平均分子量が1,000〜30,000の範囲のものが好ましく、更に好ましくは、3,000〜15,000の範囲のものを使用する。また、ローラ塗布手段の場合には、更に重量平均分子量が大きなものが使用できる。このような水溶性樹脂としては、具体的には、例えば、スチレン、スチレン誘導体、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸、アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、およびその誘導体等から選ばれた少なくとも二つ以上の単量体(このうち少なくとも1つは親水性の重合性単量体)からなるブロック共重合体、あるいは、ランダム共重合体、グラフト共重合体、またはこれらの塩等が挙げられる。あるいは、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂も好ましく使用することができる。これらの樹脂は、塩基を溶解させた水溶液に可溶であり、アルカリ可溶型樹脂である。なお、これらの水溶性樹脂は、補助液21の全質量に対して0.1〜20質量%の範囲でより好ましくは0.1〜10質量%の範囲で含有させるのが好ましい。
上述のように、補助液21として、水溶性樹脂を用いているので、後述する転写後の画像に樹脂層が多く存在することになる。従って、記録媒体9上における最終画像の耐擦過性(定着性)が向上する。
樹脂の溶解に使用されるpH調整剤としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。上述したような水溶性樹脂は、水性液媒体中に分散または溶解されて、補助液21を構成する。
補助液21を構成する好適な水性液溶媒は、水および水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(またはエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(またはエチル)エーテル等の、多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
上述したような水溶性有機溶剤の補助液21中の含有量は、一般的には、補助液21の全質量の3〜50質量%の範囲、より好ましくは3〜40質量%の範囲で使用する。また、使用される水の含有量としては、補助液21の全質量の10〜90質量%、好ましくは30〜80質量%の範囲とする。
また、補助液21としては、上述の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つ補助液21とするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を適宜に添加することができる。特に、界面活性剤は、補助液付与用記録ヘッド19から補助液21を安定吐出するための表面張力を調整するために、適量を添加する必要がある。添加量の例としては、0.05〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%が好適である。
補助液21に添加することができるアニオン性界面活性剤としては、例えば、カルボン酸塩型、硫酸エステル型、スルホン酸塩型、燐酸エステル型等、一般に使用されているものをいずれも好ましく使用することができる。また、補助液21には、上述した画像固定成分を含んでいても良い。
次に、図1において、インク像処理部5は、エアーナイフ22、溶剤受け皿23を含んで構成される。
インク像処理部5では、インク付与部3で形成されたインク像20を、記録媒体9へと転写する場合に、より最適な条件で行なえるようにインク像20の処理を行う。
図1において、補助液塗布部4の下流側には、インク像処理部5が設けられている。インク処理部5には、インク中の液媒体、主にインク中の水分を蒸発または分離して、除去するために、不図示のヒータにより加熱された温風を送るエアーナイフ22と、溶剤受け皿23とが設けられている。即ち、インク処理部5は、記録媒体9へのインク凝集像であるインク像20の浸透性の相違を勘案し、エアーナイフから送風されるエアーの量、またはそのエアーの温度に関する熱量によって、インク像20の記録媒体9への転写特性を制御する目的で設けられている。
なお、本実施形態では、インク像20の乾燥手段として、エアーナイフ22を用いているが、赤外線ヒータ等、温度がコントロール可能で、インク像の特性をコントロール可能であるものならば使用することができる。
また、図1において、転写部6は、転写ローラ26を含んで構成される。また、給紙搬送部10は搬送ローラ24aおよび24b、搬送ガイド25aおよび25bを含んで構成される。
転写部6では、給紙搬送部10の搬送ローラ24aおよび24bと、搬送ガイド25aおよび25bとによって搬送された記録媒体9に、転写ローラ26によって転写ドラム1上のインク像20を圧力転写する。
転写ローラ26は、転写ドラム1とのニップ部に記録媒体9を通過するように配置されており、ゴムローラや金属ローラ等で形成することができる。この転写部6では、不図示の押圧制御装置によって、転写ドラム1に押圧解除の制御が可能である。同図において、搬送ローラ24aおよび24bは矢印B方向に、転写ローラ26は矢印C方向に回転する。転写ローラ26は、押圧状態では、記録媒体9を介して転写ドラム1に従動して回転する(従動回転)か、独立の転写ローラ駆動手段(不図示)によって回転制御可能となっている。図1においては、転写ローラ26の回転を従動回転とした。本実施形態においては、転写時において転写ローラ26は、記録媒体9を介して転写ドラム1を線荷重0.6kg/cmで押圧するように構成されているが、それに限定されない。
図1において、記録媒体分離部7は、分離爪27を含んで構成されている。
記録媒体分離部7では、記録媒体9の搬送タイミングに応じて分離爪27が稼動する。
分離爪27は、上述の転写が終了すると、不図示の駆動装置によって駆動し、記録媒体9を転写ドラム1から分離させ、搬送ガイド28aおよび28bで、記録媒体9を排紙搬送定着部11へと導く。
図1において、排紙搬送定着部11は、搬送ガイド28aおよび28b、搬送定着ローラ29aおよび29bを含んで構成されている。
排紙搬送定着部11では、搬送ガイド28aおよび28bに導かれた、インク像が転写された記録媒体9を、赤外線ヒータを有する搬送定着ローラ29a及び29bにて熱定着し、かつそれらローラの回転と共に不図示の排紙トレイに送る。以上により、記録は終了する。
搬送定着ローラ29aおよび29bには、従来既知の定着ローラを使用することができ、温度は、30〜200℃程度とすることが好ましい。また、ローラ材質は、金属ローラ、シリコーンゴム等で形成されている。剥離性を向上させるために、ローラ表面にシリコーンオイル等を塗布してもかまわない。
図1において、クリーニング部8は、クリーニング液30と、クリーニング液30を保持するクリーニング液保持部材31と、さらに、クリーニング液30を塗布して、転写ドラム1上のごみ等を取り除くための、クリーニング液供給ローラ32a、およびクリーニングローラ32bを含んで構成されている。
同図において、クリーニングローラ32bは、転写ドラム1に従動(従動回転)するか、不図示の駆動手段によって駆動制御可能である。また、クリーニング液供給ローラ32aは、クリーニングローラ32bに従動するか、不図示の駆動手段によって駆動制御可能である。以上のように、クリーニング液供給ローラ32aおよびクリーニングローラ32bが回転することによって、クリーニング液30は、転写ドラムに塗布される。以上のようにして、クリーニング部8は、転写ドラム1のクリーニングを行う。
クリーニング部8は、特に転写ドラム1表面をクリーニング可能であれば、装置の構成や、クリーニング液30を限定するものではないが、例えば、上記画像固定成分16で使用した界面活性剤、水溶性有機溶剤等を含む水溶液を、クリーニング液30とすることが好ましい。
以下で、上述したような構成である本実施形態のインクジェット記録装置の、一連の動作について、図1を参照しながら詳細に説明する。
インクジェット記録装置の電源を投入すると、転写ドラム1が駆動回転をはじめ、転写ドラム1の内部、エアーナイフ22、搬送定着ローラ29aおよび29bに対する、それぞれのヒータがONになり、各部における設定温度にそれぞれ昇温する。コンピュータ等の画像供給装置110から画像信号を受け取ると、画像固定成分塗布部2を構成する、塗布ローラ17bが転写ドラム1に当接する。次いで、塗布ローラ17aが回転することにより画像固定成分16が塗布ローラ17aを介して塗布ローラ17bへ塗布され、転写ドラム1上に画像固定成分16を均一に塗布する。転写ドラム1が1回転し、転写ドラム1上に画像固定成分16が塗布された後、塗布ローラ17bは、転写ドラム1から離接する。勿論、画像固定成分16を転写ドラム1に塗布しながら、転写ドラム1上の画像固定成分16が塗布された領域に、インク付与部3にてインク像を形成することができる。
ここで、画像供給装置110からは、本実施形態で使用する各インク色(CMYK)に対応した多値の画像信号(以下、本明細書では、「外部画像信号」とも呼ぶ)が送られてくるため、この多値の画像信号YMCKに対応した2値の画像信号に変換する。その後、この各色に対応した2値画像信号に対しミラー反転処理を施し、各色に対応した2値の反転画像信号を取得する。
次に、各色に対応する2値の反転画像信号が各記録ヘッド18に送られ、転写ドラム1の回転とともに、それらの画像信号に応じて、順次記録ヘッド18a、18b、18c、および18dから各色のインクが吐出し転写ドラム1に付与される。この際、そのインクが、転写ドラム1上に塗布されている画像固定成分16と反応等することで、転写ドラム1上にカラーの凝集したインク像20を形成する。勿論、このインク像は、記録媒体9に最終的に形成される画像の鏡面画像となっている。
続いて、各色に対応した2値の反転画像信号の論理和信号が補助液付与用記録ヘッド19に送られ、転写ドラム1の回転とともに補助液付与用記録ヘッド19から補助液21が吐出され、転写ドラム1上のインク凝集像であるインク像20上に付与される。補助液が付与されたインク像20は、インク処理部5で溶剤を蒸発乾燥され、その後に行われる転写に対してより最適な条件となる。
転写部6に対しては、上述のようにして転写ドラム1上に形成されたインク画像の先端位置と、被転写媒体である記録媒体9が転写位置であるニップ部で重なるように、搬送ローラ24aおよび24bによって記録媒体9が搬送される。転写部6では、記録媒体9の先端が転写ドラム1と転写ローラ26とのニップ部に到達したと不図示のセンサにより検知されると、転写ローラ26が駆動する。すると、転写ローラ26は、記録媒体9を介して転写ドラム1に押し当てられ、ここで、押圧制御装置によって所定の転写圧が生じ、転写ドラム1上のインク像20を記録媒体9に転写する。
次いで、記録媒体9の先端が転写部6から排出されたことを不図示のセンサによって検知すると同時に、分離爪27が駆動し、転写ドラム1と記録媒体9との間に挿入され、記録媒体9を、転写ドラム1から分離する。そして、転写ドラムから分離した記録媒体9は、搬送ガイド28aおよび28b、ならびに搬送定着ローラ29aおよび29bによって、記録媒体9上に熱圧が加えられて定着処理が行われた後、排紙トレイに排紙される。転写ドラム1上のインクが記録媒体9にすべて転写された後、転写ローラ26および分離爪27それぞれを離接する。
次に、クリーニングローラ32bが転写体ドラム1に当接し、クリーニング液30を塗布することにより転写ドラム1表面をクリーニングする。転写ドラムが1回転すると、クリーニングローラ32bは、転写ドラム1から離接する。記録が続けられる場合、外部画像信号に応じて上述した動作が繰り返される。記録動作を終了し電源を切る場合、各ヒータをOFFにし転写ドラム1の回転を止めた後、インクジェット記録装置の電源をOFFにし、装置動作を終了する。
以上説明したように、本実施形態では、画像固定成分塗布部2にて、少なくとも金属塩を含む画像固定成分16を中間転写体である転写ドラム1上に塗布し、次いで、その塗布された領域の少なくとも一部にインク付与部3にてインクを付与してインク像を形成する構成とすることで、画像固定成分16中の金属イオンと顔料インクとが迅速反応して凝集し、その状態のインク像が形成される。従って、中間転写体上にビーディングやブリーディングがない良好なインク像20を形成することができる。さらに、補助液付与部4にて、記録媒体との接着性を高める樹脂を含有した補助液21をインク像20に対して付与し、そのインク像20をインク処理部5にて乾燥し、転写部6にて記録媒体9に転写する。よって、ビーディングやブリーディングが生じていない高品位で、かつ転写後の記録媒体上においてインク擦れなどを生じない耐擦過性(定着性)の良好な画像を記録媒体上に形成することができる。また、転写される際のインク像は、画像固定成分16および補助液21によって剥離、接着が高められているので、転写効率を向上することもできる。
以下で、上述した画像固定成分、着色インクおよび補助液の一例を用いた本実施形態の実施例を具体的に説明する。
(実施例1)
以下の記載において、部、%とあるものは特に断わらない限り質量基準である。また、使用したインクおよび画像固定成分は、いずれも、水で調整して総量を100部とした。
[顔料インクの調製]
先ず、下記に述べるようにして、それぞれ、顔料とアニオン性化合物とを含む、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローの各色の顔料インクを調製した。
(顔料インクK1の作製)
<顔料分散液の作製>
・スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体
(酸価240、重量平均分子量=5,000)
1.5部
・モノエタノールアミン 1.0部
・ジエチレングリコール 5.0部
・イオン交換水 残部
上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させた。この溶液に、新たに試作したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)を10部、イソプロピルアルコール1部を加え、30分間プレミキシングを行った後、下記の条件で分散処理した。
・分散機:サンドグラインダー(五十嵐機械製)
・粉砕メディア:ジルコニウムビーズ、1mm径
・粉砕メディアの充填率:50%(体積比)
・粉砕時間:3時間
さらに、遠心分離処理(12,000rpm.、20分間)を行って粗大粒子を除去して、黒色の顔料分散液とした。
<インクの調製>
上記の分散液を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、顔料を含有するインクを作製し、ブラックの顔料インクK1とした。このインクの表面張力は、34mN/mであった。
・上記顔料分散液 30.0部
・グリセリン 10.0部
・エチレングリコール 5.0部
・2−ピロリドン 5.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
1.0部
・イオン交換水 残部
(顔料インクC1の作製)
顔料インクK1の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、ピグメントブルー15に代えたこと以外は、顔料インクK1の調製の場合と同様の方法で、シアン色の顔料インクC1を調製した。
(顔料インクM1の作製)
顔料インクK1の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、ピグメントレッド7に代えたこと以外は顔料インクK1の調製の場合と同様の方法で、マゼンタ色の顔料インクM1を調製した。
(顔料インクY1の作製)
顔料インクK1の調製の際に使用したカーボンブラック(MCF88、三菱化成製)10部を、ピグメントイエロー74に代えたこと以外は、顔料インクK1の調製の場合と同様の方法で、イエロー色の顔料インクY1を調製した。
[画像固定成分の調製]
次に、下記に述べるようにして、それぞれ、多価金属塩と界面活性剤とを含む、画像固定成分を調製した。
(画像固定成分R1の作製)
下記の組成の成分を混合溶解した後、さらに、ポアサイズが0.22μmのメンブレンフィルター(商品名:フロロポアフィルター、住友電工製)にて加圧濾過し、画像固定成分R1を得た。
・ジエチレングリコール 10.0部
・塩化カルシウム・2水和物 10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
0.5部
・イオン交換水 残部
[補助液の調製]
次に、下記に述べるようにして、それぞれ、樹脂と界面活性剤とを含む、各補助液を調製した。
(補助液S1の作成)
下記の組成比を有する成分を混合し、補助液S1を作製した。
・へキシレングリコール 10.0部
・エチレングリコール 5.0部
・2−ピロリドン 5.0部
・ポリビニルピロリドン (K−15)分子量10000) 5.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 0.5部
・イオン交換水 残部
上述のように調整した画像固定成分R1と、顔料インクK1、C1、M1およびY1、と補助液S1とを用いて画像形成を行なった。
本実施例で用いた各色インク吐出用記録ヘッド18および補助液付与用記録ヘッド19は、1200dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数10kHzとした。また、1ドットあたりの吐出量は、それぞれ4plのヘッドを使用した。
先ず、転写ドラム1に、画像固定成分R1を厚さ約1μm塗布した後、インクジェットヘッド18にて、顔料インクY1、M1、C1、及びK1を順次描画して、転写ドラム1上にインク像を得た。
このとき、転写ドラム1上の各色顔料インクは、画像固定成分R1と反応等して凝集しており、転写ドラム上に形成されたインク像20は、ビーディングがない良好な画像であった。また、各色インクを重ねていっても、すぐに凝集が起こり、ビーディングやブリーディングといった現象は生じず、転写体ドラム1上に形成されるインク像20は、高画質画像であることが確認できた。
次に補助液付与用記録ヘッド19から補助液S1が吐出し、転写ドラム1の高画質画像であるインク像20上に付与された。さらに、転写ドラム1上のインク像20は、次の工程のエアーナイフ22からの送風によってインク像20の主溶剤である水分が蒸発された。その後に、転写部6で、転写ドラム1のインク像20が、搬送ローラ24aおよび24bにて給紙された記録媒体9に転写されて、印刷物が作成された。さらに、その印刷物は、加熱温度150℃の、搬送定着ローラ29aおよび29bを通過することで、定着画像とされた。最終的に得られたカラー画像は、高画質画像であると共に、出力直後で擦ってもインク汚れのない良好な耐擦過性を有するものであった。すなわち、ビーディングやブリーディングといった現象が生じず、転写ドラム1から記録媒体にインク像20が完全に転写し、耐擦過性や耐水性にも優れた画像が得られた。また、転写ドラム1上にはインク残りがなく、その表面はクリーニングが容易なものであった。さらに、上述の各工程を繰り返し、画像形成を行っても高画質画像が形成できた。
(第2の実施形態)
本実施形態は、補助液付与部4を、画像固定成分塗布部2とインク付与部3との間に設けることにより、インク付与部3にて各色インクを転写ドラム1上に付与する前に、補助液21を転写ドラム1へ付与するものである。
図2は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の画像形成部の構成を示す概略断面図である。
図2において、符号1〜11によって示される各装置およびそれらを構成する各部材、ならびに制御部(不図示)は、図1と同様であるので、ここではそれらの説明は省略する。
同図において、補助液付与部4は、画像固定成分塗布部2とインク付与部3との間に設けられている。本実施形態のインクジェット記録装置の、一連の動作について、第1の実施形態と同様である部分についてはここでは省略し、本実施形態に特徴的な部分のみを以下で説明する。
外部画像信号を受け取ると、中間転写体である転写ドラム1が回転し、画像固定成分塗布部2にて画像固定成分16を転写ドラム1上に塗布する。次いで、補助液付与用記録ヘッド19から補助液21を転写ドラム1上に付与し、次いで、インク付与部3にてインクを吐出することによって転写ドラム1上にインク像20を形成する。次いで、第1の実施形態で説明した動作を経て、インク像20が記録媒体9へ転写される。
本実施形態においても、第1の実施形態で使用できる、画像固定成分、着色インク、補助液を使用することができる。
以上説明したように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、画像固定成分16および補助液21を用いているので、転写ドラム1上のインク像20は凝集力が高いものとなる。よって、そのインク像20を記録媒体9に転写しても、ビーディングやブリーディングが生じていない高品位で、かつ出力直後の擦れなどによるインク汚れを生じない耐擦過性の高い画像を形成することができる。
以下で、上述した画像固定成分、着色インクおよび補助液の一例を用いた本実施形態の実施例を具体的に説明する。
(実施例2)
本実施例において、実施例1で記載した画像固定成分R1と、顔料インクK1、C1、M1およびY1と、補助液S1とを用いて画像形成を行った。
本実施例で用いた各色インク吐出用記録ヘッド18および補助液付与用記録ヘッド19は、1200dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数10kHzとした。また、1ドットあたりの吐出量は、それぞれ4plのヘッドを使用した。
転写ドラム1上に画像固定成分R1を厚さ約1μm塗布した直後に、各色インクの2値画像信号の論理和信号に基づいて補助液付与用記録ヘッド19で補助液S1を転写ドラム1上に吐出した。次いで、各色の2値画像信号によって記録ヘッド18a、18b、18c、および18dから顔料インクY1、M1、C1及びK1を吐出して転写ドラム1上にカラーインク像の形成を行った。その結果、実施例1と同様に転写ドラム1上に高画質な凝集インク像が形成された。また、最終的な印刷物の画質もビーディングやブリーディングが生じていない良好なものであり、かつ転写後の樹脂層が画像表面に多く存在するために耐擦過性が向上した。
(第3の実施形態)
本実施形態は、補助液付与部を構成する補助液付与手段をローラとした点を特徴としている。
図3は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の画像形成部の構成を示す概略構成図である。
図3において、符号1〜3および5〜11によって示される各装置およびそれらを構成する各部材、ならびに制御部(不図示)は、図1と同様であるので、ここではそれらの説明は省略する。ここでは、本実施形態に特徴的な部分である補助液付与部4についてのみ説明する。
同図において、補助液付与部4は、補助液21、補助液保持部材33、補助液供給ローラ34aおよび34bにより構成される。
補助液付与部4は、補助液保持部材33内の補助液21を、転写ドラム1上のインク像20を含む全画像形成可能領域に塗布する。
同図において、補助液付与部4は、転写ドラム1上のインク付与部3の下流側に配置されている。補助液21は、2つの補助液供給ローラ34aおよび34bにて転写ドラム1に形成されたインク像20上に塗布される。このとき、補助液供給ローラ34aは、制御部から送られてくる画像信号に応じて、転写ドラム1に対して当接、離接することができる。補助液供給ローラ34aおよび34bは、補助液21との濡れ性が良い材料が好ましいが、多孔質材料や表面凹凸材料、例えば、グラビアロール状のもの等、を用いることができる。また、補助液付与部4は、不図示の離接制御装置により転写ドラム1に離接制御が可能に構成されている。
本実施形態において、補助液付与部4は、転写ドラム1上でインク付与部3の下流側に配置されているが、インク付与部3の上流側に配置されても良い。
本実施形態のインクジェット記録装置の、一連の動作について、第1の実施形態と同様である部分についてはここでは省略し、本実施形態に特徴的な部分のみを以下で説明する。
外部画像信号に応じて、画像固定成分塗布部2およびインク付与部3によって転写ドラム1上にインク像20が形成されると、補助液供給ローラ34aが転写ドラム1に当接する。次いで、補助液供給ローラ34bが回転することにより補助液21が補助液供給34bを介して補助液供給ローラ34aへ塗布され、転写ドラム1上に形成されたインク像20上に補助液21を塗布する。転写ドラム1が1回転し、インク像20上に補助液21が塗布された後、補助液供給ローラ34aは、転写ドラム1から離接する。次いで、第1の実施形態で説明した動作を経て、インク像20が記録媒体9へ転写される。
本実施形態においても、第1の実施形態で使用できる、画像固定成分、着色インク、補助液を使用することができる。
以上説明したように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、画像固定成分16および補助液21を用いているので、転写ドラム1上のインク像20は凝集力が高いものとなる。よって、そのインク像20を記録媒体9に転写しても、ビーディングやブリーディングが生じていない高品位で、かつ出力直後の擦れなどによるインク汚れを生じない耐擦過性の高い画像を形成することができる。
以下で、上述した画像固定成分、着色インクおよび補助液の一例を用いた本実施形態の実施例を具体的に説明する。
(実施例3)
本実施例において、実施例1で記載した画像固定成分R1と、顔料インクK1、C1、M1およびY1と、以下の補助液S2とを用いて画像形成を行った。
(補助液S2の作成)
下記の組成比を有する成分を混合し、補助液S2を作製した。
・へキシレングリコール 15.0部
・エチレングリコール 15.0部
・ポリビニルピロリドン (K−90)分子量360000)
10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
0.5部
・イオン交換水 残部
本実施例で用いた各色インク吐出用記録ヘッド18は、1200dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数10kHzとした。また、1ドットあたりの吐出量は、それぞれ4plのヘッドを使用した。
先ず、転写ドラム1に、画像固定成分R1を厚さ約1μm塗布した後、外部画像信号によって記録ヘッド18a、18b、18c、および18dから顔料インクY1、M1、C1およびK1を順次描画して、転写ドラム1上にインク像20を得た。
次に補助液付与部4によって、転写ドラム1上の全面に補助液S2を付与した。次いで、次工程のエアーナイフ22の送風によって転写ドラム1上の主たる溶剤である水分をほとんど蒸発させた。その後に、転写部6で、転写ドラム1上に形成されたインク像20を含む全画像領域が、搬送ローラ24aおよび24bにて給紙された記録媒体9に転写されて、印刷物が作成された。さらに、その印字物は、加熱温度150℃の、搬送定着ローラ29aおよび29bを通過することで、定着画像とされた。最終的に得られたカラー画像は、高画質画像であると共に出力直後で擦ってもインク汚れのない耐擦過性を有していた。すなわち、ビーディングやブリーディングといった現象が生じず、転写ドラム1から記録媒体にインク像20が完全に転写し、耐擦過性や耐水性にも優れた画像が得られた。さらに、記録媒体9の表面の凹凸にかかわらず、全面に亘り光沢性のある画像が形成できた。
(第4の実施形態)
本実施形態は、インク像処理部5の下流に補助液付与部を構成する補助液付与手段を設けた点を特徴としている。
図5は、本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の画像形成部の構成を示す概略構成図である。図5において、符号1〜11によって示される各装置およびそれらを構成する各部材、ならびに制御部(不図示)は、図1と同様であるので、ここではそれらの説明は省略する。
同図において、転写ドラム1上のインク像処理部5の下流側に、補助液付与部4は配置されている。補助液21は、2つの補助液供給ローラ34aおよび34bにて転写ドラム1に形成されたインク像20上に塗布される。このとき、補助液供給ローラ34aは、制御部から送られてくる画像信号に応じて、転写ドラム1に対して当接、離接することができる。また、補助液付与部4は、不図示の離接制御装置により転写ドラム1に離接制御が可能に構成されている。
本実施形態のインクジェット記録装置の、一連の動作について、第1の実施形態と同様である部分についてはここでは省略し、本実施形態に特徴的な部分のみを以下で説明する。
外部画像信号に応じて、画像固定成分塗布部2およびインク付与部3によって転写ドラム1上にインク像20が形成される。次にインク像処理部のエアーナイフ22の送風によって転写ドラム1上の主たる溶剤である水分をほとんど蒸発させた。次に補助液供給ローラ34aが転写ドラム1に当接する。次いで、補助液供給ローラ34bが回転することにより補助液21が補助液供給34bを介して補助液供給ローラ34aへ塗布され、転写ドラム1上に形成されたインク像20上に補助液21を塗布する。転写ドラム1が1回転し、インク像20上に補助液21が塗布された後、補助液供給ローラ34aは、転写ドラム1から離接する。次いで、第1の実施形態で説明した動作を経て、インク像20が記録媒体9へ転写される。
本実施形態においても、第1の実施形態で使用できる、画像固定成分、着色インク、補助液を使用することができる。
以上説明したように、本実施形態では、第1の実施形態と同様に、画像固定成分16を用いているので、転写ドラム1上のインク像20は凝集力が高いものとなる。よって、そのインク像20を記録媒体9に転写しても、ビーディングやブリーディングが生じていない高品位で、かつ出力直後の擦れなどによるインク汚れを生じない耐擦過性の高い画像を形成することができる。
以下で、上述した画像固定成分、着色インクおよび補助液の一例を用いた本実施形態の実施例を具体的に説明する。
(実施例4)
本実施例において、実施例1で記載した画像固定成分R1と、顔料インクK1、C1、M1およびY1と、以下の補助液S2とを用いて画像形成を行った。
(補助液S2の作成)
下記の組成比を有する成分を混合し、補助液S2を作製した。
・へキシレングリコール 15.0部
・エチレングリコール 15.0部
・ポリビニルピロリドン (K−90)分子量360000)
10.0部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製)
0.5部
・イオン交換水 残部
本実施例で用いた各色インク吐出用記録ヘッド18は、1200dpiの記録密度を有し、駆動条件としては、駆動周波数10kHzとした。また、1ドットあたりの吐出量は、それぞれ4plのヘッドを使用した。
先ず、転写ドラム1に、画像固定成分R1を厚さ約1μm塗布した後、外部画像信号によって記録ヘッド18a、18b、18c、および18dから顔料インクY1、M1、C1およびK1を順次描画して、転写ドラム1上にインク像20を得た。
次にインク像処理部のエアーナイフ22の送風によって転写ドラム1上の主たる液溶媒である水分は蒸発された。その後に、補助液付与部4によって、転写ドラム1上の全面に補助液S2を付与した。転写部6で、転写ドラム1上に形成されたインク像20を含む全画像領域が、搬送ローラ24aおよび24bにて給紙された記録媒体9に転写されて、印刷物が作成された。さらに、その印字物は、加熱温度150℃の、搬送定着ローラ29aおよび29bを通過することで、定着画像とされた。最終的に得られたカラー画像は、高画質画像であると共に出力直後で擦ってもインク汚れのない耐擦過性を有していた。すなわち、ビーディングやブリーディングといった現象が生じず、転写ドラム1から記録媒体にインク像20が完全に転写し、耐擦過性や耐水性にも優れた画像が得られた。
なお、本実施例においては、乾燥手段後に補助液21を付与し、転写を行なう。更には、転写前に再乾燥手段により乾燥を促進制御することが可能である。この場合さらに、高速記録が行なえるという利点を有する。
(第5の実施形態)
第1〜第4の実施形態では、補助液付与部を画像固定成分塗布部の下流側に配置している。しかしながら、補助液付与部を、画像固定成分塗布部の上流側に配置してもよい。
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の画像形成部の構成を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の画像形成部の構成を示す概略断面図である。 本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の画像形成部の構成を示す概略断面図である。 図4は、本発明の一実施形態に係る制御部の構成を示す概略ブロック図である。 本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置の画像形成部の構成を示す概略断面図である。
符号の説明
1 転写ドラム
2 画像固定成分塗布部
3 インク付与部
4 補助液付与部
5 インク像処理部
6 転写部
7 記録媒体分離部
8 クリーニング部
9 記録媒体
10 給紙搬送部
11 排紙搬送定着部
12 アルミ製の支持体
13a、13b 表面層
14 加熱ヒータ
15 塗布液容器
16 画像固定成分
17a、17b 塗布ローラ
18a、18b、18c、18d 記録ヘッド
19 補助液付与用記録ヘッド
20 インク像
21 補助液
22 エアーナイフ
23 溶剤受け皿
24a、24b 搬送ローラ
25a、25b、28a、28b 搬送ガイド
26 転写ローラ
27 分離爪
29a、29b 搬送定着ローラ
30 クリーニング液
31 クリーニング液保持部材
32a クリーニング供給ローラ
32b クリーニングローラ
33 補助液保持部材
34a、34b 補助液供給ローラ

Claims (6)

  1. 中間転写体に対し、着色インクの顔料を凝集させるための第1材料を付与する付与工程と、
    前記第1材料が付与された中間転写体に対して前記着色インクを記録ヘッドにより付与し、前記中間転写体上にインク像を形成する形成工程と、
    前記中間転写体上に形成されたインク像を記録媒体へ転写する転写工程と、
    前記転写工程の前に、水溶性樹脂を含有する第2材料を前記中間転写体に対し付与する付与工程とを備え
    前記第1材料は、少なくとも金属塩を含む液体であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  2. 前記転写工程に先立って、前記インク像を乾燥する乾燥工程を有することを特徴とする請求項に記載のインクジェット記録方法。
  3. 前記転写工程後に、中間転写体上をクリーニングするクリーニング工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記中間転写体の表面は、少なくともフッ素もしくはシリコーンを含む化合物であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記第2材料の付与工程は、ローラもしくは記録ヘッドによって、前記第2材料を前記中間転写体に対し付与することを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  6. 中間転写体に対し、着色インクの顔料を凝集させるための第1材料を付与する第1材料付与手段と、
    前記第1材料が付与された中間転写体に対して前記着色インクを記録ヘッドにより付与し、前記中間転写体上にインク像を形成する形成手段と、
    前記中間転写体上に形成されたインク像を記録媒体へ転写する転写手段と、
    前記転写手段による転写の前に水溶性樹脂を含有する第2材料を前記中間転写体に対し付与する第2材料付与手段とを備え
    前記第1材料は、少なくとも金属塩を含む液体であることを特徴とするインクジェット記録装置。
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