JP4823558B2 - 油脂組成物 - Google Patents
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Description
一方、ジアシルグリセロールには体脂肪蓄積を抑制する機能があることが解明されつつある(特許文献1)。日常食している様々な油脂加工品及びそれを含有する各種の食品でジアシルグリセロールを有効量摂取するためには、ジアシルグリセロールを高濃度で含有する油脂加工食品を食することが必要となる。油中にジアシルグリセロールを含有する油脂組成物は、例えば特許文献2に提案されている。この公報に記載の発明は、常温では液体である融点20℃未満のジアシルグリセロールに各種の部分硬化油を固体脂として添加し、高起泡性油脂組成物を得るというものである。しかし、ジアシルグリセロールが液状であるため、バタークリーム等の常温で保型性が必要な商品では、部分硬化油の配合量を多くすることが必要となり、健康機能を十分発揮させる量のジアシルグリセロールを多く配合させることができない。また、部分硬化油はトランス型不飽和脂肪酸を多く含有し、生活習慣病への影響が懸念されるが、トランス型不飽和脂肪酸を少なくすると、ショートニング、マーガリン等は、満足な起泡性、保型性が得られ難いという問題がある。
即ち、ショートニング、マーガリン等には、適度な稠度、口溶け、生地調製時の作業性、離型性、耐熱性、保型性、可塑性、その他特定の融解挙動が要求され、またショートニング性、起泡性、吸糖性、酸化安定性、様々な食品原料との混和性に優れていることが求められるが、これら要求性能をバランス良く兼ね備え、しかも体脂肪蓄積抑制効果の認められているジアシルグリセロールを高濃度含有し、且つ循環器系疾患への影響が懸念されるトランス型不飽和脂肪酸の含量が低く、生活習慣病予防に有益なものは提案されていない。
即ち本発明は、油脂中に、ジアシルグリセロールを60〜80質量%含有し、該ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸の90質量%以上が不飽和脂肪酸であり、残余のトリアシルグリセロールの内、構成脂肪酸が全て飽和脂肪酸であるトリ飽和型トリアシルグリセロールが45〜75質量%、構成脂肪酸が全て不飽和脂肪酸であるトリ不飽和型トリアシルグリセロールが10〜50質量%であり、且つ、油脂を構成する全脂肪酸の内、トランス型不飽和脂肪酸の含量が5質量%以下である油脂組成物を提供するものである。
本発明の油脂組成物においては、トリ飽和型トリアシルグリセロール含量等の要件を満たす範囲内で、上記極度硬化油と通常の植物油、動物油を混合した混合油を用いることもできる。この場合も、併用する植物油、動物油として部分硬化油の使用は避けるのが循環器系疾患予防の点から好ましい。
本発明の態様において、最も好ましいのは、トリアシルグリセロールが植物油の極度硬化油と菜種油もしくは大豆油の混合物からなる場合である。
本発明の態様において、植物ステロール中の、カンペステロールの含有量は、植物ステロール遊離体換算で10〜40%であるのが好ましく、更に20〜35%、特に23〜29%であるのが、風味、油脂の工業的生産性、結晶析出、生理効果の点で好ましい。
本発明の態様において、植物ステロール中の、スチグマステロールの含有量は、植物ステロール遊離体換算で3〜30%であるのが好ましく、更に11〜25%、特に17〜24%であるのが、風味、油脂の工業的生産性、結晶析出、生理効果の点で好ましい。
本発明の態様において、植物ステロール中の、β−シトステロールの含有量は、植物ステロール遊離体換算で20〜60%であるのが好ましく、更に30〜56%、特に42〜51%であるのが、風味、油脂の工業的生産性、結晶析出、生理効果の点で好ましい。
本発明の態様において、植物ステロール中の、コレステロールの含有量は1%以下であるのが好ましく、更に0.01〜0.8%、特に0.1〜0.7%、特に0.2〜0.6%であるのが、血中コレステロール低下、油脂の工業的生産性の点で好ましい。
乳化剤の含有量は、油脂組成物100質量部に対して0.01〜8質量部、更に0.02〜5質量部、特に0.05〜2質量部、殊更0.07〜1.5質量部であるのが、乳化性、解乳化性、混和性、吸糖性、風味、起泡性の点で好ましい。
特に、本発明の油脂組成物をクリーミング型ショートニングや油中水型乳化物として使用する場合には、油脂組成物100質量部に対して、レシチンを0.02〜0.2質量部、更に0.05〜0.15質量部配合するのが、吸糖性が顕著に向上する点で好ましい。
ガスの含有量は、油脂組成物100gに対して、0.1〜20mLであるのが好ましく、更に1〜18mL、特に4〜15mL、殊更7〜13mLであるのが、可塑性の点で好ましい。
油脂1(ジアシルグリセロール高含有油脂)の調製
ウインタリングにより飽和脂肪酸を低減させた大豆油脂肪酸を455質量部と、菜種油脂肪酸195質量部と、グリセリン107質量部とを、リポザイムIM(ノボザイムス社製)を使用して0.07hPaで40℃、5時間エステル化を行った。次いで酵素を濾別し、235℃で分子蒸留し、更に脱色、水洗した。次いでこの油脂150質量部に10%クエン酸水溶液7.5質量部を加え、60℃で20分間攪拌した後、110℃で脱水した。これを235℃で2時間脱臭して、油脂1を調製した。
下記方法により分析を行った結果を表1に示す。
(i)グリセリド組成
ガラス製サンプル瓶に、サンプル10mgとトリメチルシリル化剤(「シリル化剤TH」、関東化学(株))0.5mLとを加え、密栓した後、70℃で15分間加熱した。これをガスクロマトグラフィー(GLC)に供して、グリセリド組成分析を行なった。
GLC条件
装置;Hewlett Packard製 6890型
カラム;DB−1HT(J&W Scientific製) 7m
カラム温度;initial=80℃、final=340℃
昇温速度=10℃/分、340℃にて20分間保持
検出器;FID、温度=350℃
注入部;スプリット比=50:1、温度=320℃
サンプル注入量;1μL
キャリアガス;ヘリウム、流量=1.0mL/分
日本油化学協会編「基準油脂分析試験法」中の「脂肪酸メチルエステルの調製法(2.4.1.2−1996)」に従って、脂肪酸メチルエステルを調製した。得られたサンプルを、GLCに供して構成脂肪酸組成分析を行った(American Oil Chem. Soc. Official Method:Ce1f-96、 2002年)。
大豆極度硬化油脂(IV=1.1)を油脂2とした。菜種極度硬化油脂(IV=1.2)を油脂3とした。大豆サラダ油を油脂4とした。菜種部分硬化油脂(IV=69)を油脂5とした。
植物ステロール
植物ステロールとして、タマ生化学(株)製「フィトステロールF」を使用した。
油脂1〜5、植物ステロールを表2に示す割合で混合し、加熱溶解した。次いで、チラー(乳化混練機、多摩精器工業(株))を用いて急冷・混練りした。これをテンパリングした後、冷蔵庫(5℃)にて保存し、油脂組成物(本発明品の例(No.1〜6)、比較品(No.7〜13))を製造した。表2に分析値を示す。
次に、各油脂組成物を用いて、下記の起泡性試験、吸糖試験、クリームの耐熱性試験、ベーカリー製品への応用評価を行った。
実施例1で調製した油脂組成物(本発明品の例(No.1〜6)、比較品(No.7〜13))各300gをホバートミキサー(N−50型、Hobart社製)にて中速で20分間撹拌して起泡させた。起泡後の油脂組成物1gあたりの体積(比容積:ml/g)を測定し、起泡性の評価を行った。結果を表2に示す。
本発明品の例は、比較品と比べて、起泡性に優れていることが判明した。
実施例2で調製した起泡後の油脂組成物100gを、ホバートミキサーで撹拌しながら、シロップ(商品名:MC−45、日本食品加工(株)社、Brix.70)を50gずつ添加した。油脂組成物とシロップが分離する直前の、シロップ添加量を測定した。この測定値から油脂組成物1gあたりのシロップ添加量(g)を求め、吸糖性の評価を行った。結果を表2に示す。
本発明品の例は、比較品よりも吸糖性に優れていることが示された。
実施例2で調製した、起泡後の油脂組成物100gをホバートミキサーで撹拌しながら、これにシロップを分離する直前まで加え、バタークリームを調製した。得られたバタークリームをカップに詰め、25℃にて24hr静置し、外観を下記の基準にて目視で観察することにより、耐熱性の評価を行った。結果を表2に示す。
A:オイルオフなく、良好
B:表面に若干オイルオフ有り、やや不良
C:油が完全に分離し、不良
本発明品の例は、比較品と比べて耐熱性に優れていることが明らかとなった。
実施例1で製造した油脂組成物(本発明品の例(No.1、2、5、6)及び、比較品(No.7〜9、12、13))を用いて、表3の配合でショートブレッドの生地を調製し、金型に入れてオーブンで焼成した(160℃、45分)。焼成後、金型から外して、ショートブレッドを製造した。
生地調製時の作業性(他の原料成分との混和性、生地の練りやすさ)、焼成後の型離れ(離型性)、ショートブレッドの風味食感を下記の基準にて評価した。結果を表4に示す。
A:他の原料成分と混和し易く、生地が柔らかく均一に練りやすくて、良好
B:他の原料成分とやや混和し難く、生地が若干硬く、やや不良
C:他の原料成分と混和し難く、生地が硬く均一に練るのに時間がかかり、不良
焼成後の型離れ
A:金型との付着が無く容易に離れ、良好
B:一部が金型と付着し、やや不良
C:全体が金型と付着し、はがす際に振動が必要となり不良
風味食感
A:シトリ感があり口溶け良く、良好
B:若干パサツキがあり、やや不良
C:パサツキが強く口溶け悪く、不良
このように本発明の例である油脂組成物は、優れた加工特性、起泡性、吸糖性、耐熱性、保型性、可塑性、その他特定の融解性をバランスよく兼ね備えている。
Claims (8)
- 油脂中に、ジアシルグリセロールを60〜80質量%、トリアシルグリセロールを20〜40質量%含有しており、
該ジアシルグリセロールを構成する脂肪酸の90質量%以上が不飽和脂肪酸であり、且つ、前記脂肪酸を構成する脂肪酸のうち、オレイン酸の含有量が30〜45質量%、リノール酸の含有量が35〜50質量%であり、
該トリアシルグリセロールの内、構成脂肪酸が全て飽和脂肪酸であるトリ飽和型トリアシルグリセロールが45〜75質量%、構成脂肪酸が全て不飽和脂肪酸であるトリ不飽和型トリアシルグリセロールが10〜50質量%であり、且つ、油脂を構成する全脂肪酸の内、トランス型不飽和脂肪酸の含量が5質量%以下である油脂組成物。 - 前記トリアシルグリセロールの内、構成脂肪酸が全て飽和脂肪酸であるトリ飽和型トリアシルグリセロールが45〜65質量%、構成脂肪酸が全て不飽和脂肪酸であるトリ不飽和型トリアシルグリセロールが30〜50質量%であり、且つ、油脂を構成する全脂肪酸の内、トランス型不飽和脂肪酸の含量が5質量%以下である請求項1記載の油脂組成物。
- 前記トリアシルグリセロールの内、
構成脂肪酸が全て飽和脂肪酸であるトリ飽和型トリアシルグリセロールが、大豆極度硬化油脂、菜種極度硬化油脂、パーム極度硬化油脂から選ばれるものを含む油脂に由来するものであり、
構成脂肪酸が全て不飽和脂肪酸であるトリ不飽和型トリアシルグリセロールが、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸を含むものである、請求項1又は2記載の油脂組成物。 - トリアシルグリセロールを構成する脂肪酸の25〜55質量%が不飽和脂肪酸である請求項1〜3の何れか1項記載の油脂組成物。
- トリアシルグリセロールが、植物油の極度硬化油と菜種油もしくは大豆油の混合物からなる請求項1〜4の何れか1項記載の油脂組成物。
- 更に植物ステロールを含有する請求項1〜5の何れか1項記載の油脂組成物。
- 請求項1〜6の何れか1項記載の油脂組成物100g当たり0.1〜20mLのガスを含有してなるショートニング。
- 請求項1〜6の何れか1項記載の油脂組成物を油相として用いた油中水型組成物。
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