以下、本発明の一実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更して実施することができる。
なお、以下の説明において、用語「ポリマーゲル」と用語「異物」とを交換可能なように使用する。
また、「重量」は「質量」と同義語として扱い、「重量%」は「質量%」と同義語として扱う。また、範囲を示す「A〜B」は、A以上、B以下であることを示す。
(アクリル系樹脂)
上記アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含有する単量体を重合した樹脂であれば特に限定されない。例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ベンジルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジルなどのメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル;などが挙げられる。また、上記(メタ)アクリル酸エステル以外の(メタ)アクリル酸エステルとして、例えば、同一分子内に水酸基とエステル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、すなわち下記式(2)で表される構造を有する化合物が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、特に下記式(2)で表される構造を有する化合物を共重合することが好ましい。
(式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。)
上記式(2)で表される構造を有する化合物としては、例えば、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸n−ブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸t−ブチルなどが挙げられる。これらの中でも、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが好ましく、耐熱性向上効果が高い点で、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが特に好ましい。上記式(2)で表される化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記アクリル系樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸エステルを重合した構造以外の構造を有していてもよい。(メタ)アクリル酸エステルを重合した構造以外の構造としては、特には限定されないが、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、下記式(3)
(式中、R6は水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R7基、または−C−O−R8基を表し、Ac基はアセチル基を表し、R7およびR8は水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。)
で表される単量体から選ばれる少なくとも1種を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)が好ましい。
水酸基含有単量体としては、上記式(2)で表される単量体以外の水酸基含有単量体であれば特に限定されないが、例えば、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン;などが挙げられ、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α−置換アクリル酸、α−置換メタクリル酸、マレイン酸などが挙げられ、これらは1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、メチルビニルケトン、エチレン、プロピレン、酢酸ビニルなどが挙げられ、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中でも特に、本発明の効果を十分に発揮させる点で、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
上記アクリル系樹脂は、耐熱性の観点より、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド、メチルマレイミドなどのN−置換マレイミドを共重合してもよいし、分子鎖中(重合体の主骨格中、または主鎖中ともいう。)にラクトン環構造、グルタル酸無水物構造、グルタルイミド構造などを導入してもよい。中でも、フィルムの着色(黄変)し難さの点で、窒素原子を含まない構造が好ましい。また、成形性や光学特性が良いことから、主鎖にラクトン環構造を有するラクトン環含有重合体であることがより好ましい。以下、ラクトン環含有重合体について説明する。
上記ラクトン環構造としては、例えば、下記式(1)
(式中、R1、R2、R3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。なお、有機残基は酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい。)
で表される構造が挙げられる。
尚、上記式(1)、(2)、(3)における有機残基は、炭素数が1〜20の範囲内であれば特には限定されないが、例えば、直鎖若しくは分岐状のアルキル基、直鎖若しくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、−CN基などが挙げられる。
上記アクリル系樹脂中の上記ラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90重量%の範囲内、より好ましくは10〜70重量%の範囲内、さらに好ましくは10〜60重量%の範囲内、特に好ましくは10〜50重量%の範囲内である。上記ラクトン環構造の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になることがあり、好ましくない。上記ラクトン環構造の含有割合が90重量%よりも多いと、成形加工性に乏しくなる傾向があり、好ましくない。
ラクトン環含有重合体において、上記式(1)で表されるラクトン環構造以外の構造の含有割合は、(メタ)アクリル酸エステルを重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)の場合、好ましくは10〜95重量%の範囲内、より好ましくは30〜90重量%の範囲内、さらに好ましくは40〜90重量%の範囲内、特に好ましくは50〜90重量%の範囲内である。
また、上記水酸基含有単量体、上記不飽和カルボン酸、上記一般式(3)で表される単量体のうち、何れか1つまたは2以上を重合して構築される重合体構造単位(繰り返し構造単位)を含有する場合、上記アクリル系樹脂中に含有される水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、一般式(3)で表される単量体に由来する構造の割合の合計値は、好ましくは5〜30重量%の範囲内、より好ましくは10〜20重量%の範囲内、さらに好ましくは10〜15重量%の範囲内である。
ラクトン環含有重合体の製造方法については、特に限定はされないが、好ましくは、重合工程によって分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得た後に、得られた重合体を加熱処理することによりラクトン環構造を重合体に導入するラクトン環化縮合工程を行うことによってラクトン環含有重合体を得ることができる。
例えば、上記一般式(2)で表される化合物を含む単量体組成物の重合反応を行うことにより、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得ることができる。
(重合工程)
上記重合反応において供する単量体組成物中における一般式(2)で表される化合物の含有割合は、好ましくは5〜90重量%の範囲内、より好ましくは10〜70重量%の範囲内、さらに好ましくは10〜60重量%の範囲内、特に好ましくは10〜50重量%の範囲内である。重合工程において供する単量体成分中の一般式(2)で表される単量体の含有割合が5重量%よりも少ないと、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が不十分になることがあり、好ましくない。重合工程において供する単量体組成物中の一般式(2)で表される単量体の含有割合が90重量%よりも多いと、重合時、ラクトン環化時にゲル化が起こることや、得られた重合体の成形加工性が乏しくなることがあり、好ましくない。
重合工程において供する単量体組成物中には、一般式(2)で表される単量体以外の単量体を含んでいてもよい。このような単量体としては、例えば、上述した(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、一般式(3)で表される単量体が好ましく挙げられる。一般式(2)で表される単量体以外の単量体は、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
一般式(2)で表される単量体以外の(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合、重合工程に供する単量体成分中のその含有割合は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは10〜95重量%の範囲内、より好ましくは30〜90重量%の範囲内、さらに好ましくは40〜90重量%の範囲内、特に好ましくは50〜90重量%の範囲内である。
また、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、一般式(3)で表される単量体のうち、何れか一つまたは2以上を用いる場合、重合工程に供する単量体成分中における、水酸基含有単量体、不飽和カルボン酸、一般式(3)で表される単量体の含有割合の合計値は、本発明の効果を十分に発揮させる上で、好ましくは5〜30重量%の範囲内、より好ましくは10〜20重量%の範囲内、さらに好ましくは10〜15重量%の範囲内である。
単量体組成物を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るための重合反応を行う方法としては、溶剤を用いた重合反応であることが好ましく、溶液重合が特に好ましい。
重合温度や重合時間は、使用する単量体の種類や割合などに応じて変化するが、例えば、好ましくは、重合温度が0〜150℃、重合時間が0.5〜20時間であり、より好ましくは、重合温度が80〜140℃、重合時間が1〜10時間である。
ラクトン環含有重合体の製造において、単量体成分を重合して分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得る場合は、溶剤を使用する重合反応であることが好ましく、溶液重合が特に好ましい。また、リビングラジカル重合は、開始反応と成長反応とのみから成り、停止または連鎖移動などの成長末端を失活させる副反応が起こらないので、ポリマー分子鎖から水素を引き抜くことが少なく、ポリマーゲルの発生の抑制に特に好適である。
溶剤を使用する重合反応の場合、重合溶剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;テトラヒドロフランなどのエーテルエーテル系溶剤;などが挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いても良く、適宜2種以上を混合して用いても良い。また、溶剤の沸点が高すぎると、最終的に得られるラクトン環含有重合体の残存揮発分が多くなることから、沸点が50〜200℃である溶剤が好ましい。
重合反応時には、必要に応じて、重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤としては特に限定されないが、例えば、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−アミルパーオキシイソナノエートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で用いても良く、適宜2種以上を混合して用いても良い。重合開始剤の使用量は、単量体の組合せや反応条件などに応じて適宜設定すれば良く、特に限定されるものではない。
重合を行う際には、反応液のゲル化を抑制するために、重合反応混合物中に生成した重合体の濃度が70重量%以下となるように制御することが好ましい。具体的には、重合反応混合物中に生成した重合体の濃度が70重量%を超える場合には、重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加して70重量%以下となるように制御することが好ましい。重合反応混合物中に生成した重合体の濃度は、より好ましくは60重量%以下、さらに好ましくは50重量%以下である。なお、重合反応混合物中に生成した重合体の濃度が低すぎると生産性が低下するので、重合反応混合物中に生成した重合体の濃度は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。
重合溶剤を重合反応混合物に適宜添加する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、連続的に重合溶剤を添加してもよいし、間欠的に重合溶剤を添加してもよい。このように重合反応混合物中に生成した重合体の濃度を制御することによって、ポリマーゲルの発生をより充分に抑制することができる。特に、ラクトン環含有割合を増やして耐熱性を向上させることを目的に、分子鎖中のヒドロキシ基とエステル基との割合を高めた場合であっても、ポリマーゲルの発生を充分に抑制することができる。添加する重合溶剤は、例えば、重合反応の初期仕込み時に使用した溶剤と同じ種類の溶剤であってもよいし、異なる種類の溶剤であってもよいが、重合反応の初期仕込み時に使用した溶剤と同じ種類の溶剤を用いることが好ましい。また、添加する重合溶剤は、1種のみの単一溶剤であっても良く、2種以上の混合溶剤であっても良い。
(ラクトン環含有重合体の製造における環化縮合工程)
以上の重合工程を終了した時点で得られる重合反応混合物中には、通常、得られた重合体以外に溶剤が含まれている。しかし、ラクトン環含有重合体を製造する場合は、溶剤を完全に除去して重合体を固体状態で取り出す必要はなく、溶剤を含んだ状態で、続くラクトン環化縮合工程に導入することが好ましい。
ここで、重合工程が終了した時点の重合体を、以下重合体(a)と称する。ラクトン環含有重合体の製造の場合、重合体(a)は、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する。上記分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)の質量平均分子量は、好ましくは50,000〜250,000、より好ましくは60,000〜200,000、さらに好ましくは70,000〜170,000である。
分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)にラクトン環構造を導入するための反応は、加熱により、重合体(a)の分子鎖中の水酸基とエステル基とが環化縮合してラクトン環構造を生じる反応である。ラクトン環構造が重合体の分子鎖中(重合体の主骨格中)に形成されることにより、高い耐熱性が付与される。ラクトン環構造を導く環化縮合反応の反応率が不充分であると、耐熱性が充分に向上しないことや、成形時の加熱処理によって成形途中に縮合反応が起こり、環化縮合の時に副生するアルコールが成形品中に泡やシルバーストリークとなって存在することがある。
ラクトン環化縮合工程において得られるラクトン環含有重合体は、好ましくは、下記式(1)で示されるラクトン環構造を有する。
(式中、R1、R2およびR3は、互いに独立して、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す;なお、有機残基は酸素原子または窒素原子を含有していてもよい。)
環化縮合の際に必要な、加熱処理の方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を利用すればよい。例えば、重合工程によって得られた、溶剤を含む重合反応混合物を、そのまま加熱処理してもよい。あるいは、溶剤の存在下で、必要に応じて環化触媒を用いて加熱処理してもよい。あるいは、揮発成分を除去するための真空装置あるいは脱揮装置を備えた加熱炉や反応装置、脱揮装置を備えた押出機などを用いて加熱処理を行うこともできる。
環化縮合反応を行う際は、重合体(a)に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。また、環化縮合反応を行う際は、必要に応じて、環化縮合反応の触媒として一般に使用されるp−トルエンスルホン酸などのエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いても良いし、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸などの有機カルボン酸類を触媒として用いても良い。さらに、例えば、特開昭61−254608号公報や特開昭61−261303号公報に開示されているように、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などを用いても良い。
あるいは、環化縮合反応の触媒として有機リン化合物を用いてもよい。使用可能な有機リン酸化合物としては、例えば、メチル亜ホスホン酸、エチル亜ホスホン酸、フェニル亜ホスホン酸などのアルキル(アリール)亜ホスホン酸(ただし、これらは、互変異性体であるアルキル(アリール)ホスフィン酸になっていてもよい)およびこれらのモノエステルまたはジエステル;ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、フェニルメチルホスフィン酸、フェニルエチルホスフィン酸などのジアルキル(アリール)ホスフィン酸およびこれらのエステル;メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、トリフルオロメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸などのアルキル(アリール)ホスホン酸およびこれらのモノエステルまたはジエステル;メチル亜ホスフィン酸、エチル亜ホスフィン酸、フェニル亜ホスフィン酸などのアルキル(アリール)亜ホスフィン酸およびこれらのエステル;亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニルなどの亜リン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸2−エチルヘキシル、リン酸オクチル、リン酸イソデシル、リン酸ラウリル、リン酸ステアリル、リン酸イソステアリル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジ−2−エチルヘキシル、リン酸ジイソデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジステアリル、リン酸ジイソステアリル、リン酸ジフェニル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソデシル、リン酸トリラウリル、リン酸トリステアリル、リン酸トリイソステアリル、リン酸トリフェニルなどのリン酸モノエステル、ジエステルまたはトリエステル;メチルホスフィン、エチルホスフィン、フェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどのモノ−、ジ−またはトリ−アルキル(アリール)ホスフィン;メチルジクロロホスフィン、エチルジクロロホスフィン、フェニルジクロロホスフィン、ジメチルクロロホスフィン、ジエチルクロロホスフィン、ジフェニルクロロホスフィンなどのアルキル(アリール)ハロゲン化ホスフィン;酸化メチルホスフィン、酸化エチルホスフィン、酸化フェニルホスフィン、酸化ジメチルホスフィン、酸化ジエチルホスフィン、酸化ジフェニルホスフィン、酸化トリメチルホスフィン、酸化トリエチルホスフィン、酸化トリフェニルホスフィンなどの酸化モノ−、ジ−またはトリ−アルキル(アリール)ホスフィン;塩化テトラメチルホスホニウム、塩化テトラエチルホスホニウム、塩化テトラフェニルホスホニウムなどのハロゲン化テトラアルキル(アリール)ホスホニウム;などが挙げられる。これらの有機リン化合物は、単独で用いても良く、適宜2種以上を混合して用いても良い。これらの有機リン化合物のうち、触媒活性が高くて着色性が低いことから、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステル、アルキル(アリール)ホスホン酸が好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、亜リン酸モノエステルまたはジエステル、リン酸モノエステルまたはジエステルがより好ましく、アルキル(アリール)亜ホスホン酸、リン酸モノエステルまたはジエステルが特に好ましい。
環化縮合反応の際に用いる触媒の使用量は、特に限定されるものではないが、例えば、重合体(a)に対して、好ましくは0.001〜5重量%、より好ましくは0.01〜2.5重量%、さらに好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.05〜0.5重量%である。触媒の使用量が0.001重量%未満であると、環化縮合反応の反応率が充分に向上しないことがある。逆に、触媒の使用量が5重量%を超えると、得られた重合体が着色することや、重合体が架橋して、溶融成形が困難になることがある。
触媒の添加時期は、特に限定されるものではない。例えば、反応初期に添加してもよいし、反応途中に添加してもよいし、それらの両方で添加してもよい。
環化縮合反応を溶剤の存在下で行う場合は、環化縮合反応の際に、脱揮工程を併用することが好ましい。この場合、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する方法、および、脱揮工程を環化縮合反応の過程全体にわたっては併用せずに、その過程の一部においてのみ併用する方法が挙げられる。脱揮工程を併用する方法は、環化縮合反応で副生するアルコールを強制的に脱揮させて除去するので、反応の平衡が生成側に有利となる。
(脱揮工程)
脱揮工程とは、溶剤、残存単量体などの揮発分と、ラクトン環構造を導く環化縮合反応により副生したアルコールを、必要に応じて減圧加熱条件下で、除去処理する工程を意味する。この工程で除去された溶剤、モノマーは、そのまま、あるいは蒸留等の処理を経て再利用することができる。また、上記除去処理が不充分であると、得られた重合体中の残存揮発分が多くなり、成形時の変質などにより着色することや、泡やシルバーストリークなどの成形不良が起こることがある。脱揮効率を上げるために水や、低沸点の溶剤を脱揮しながら注入するということも一般に行なわれる。
環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する方法の場合、使用する装置については特に限定されないが、本発明をより効果的に行うために、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置やベント付き押出機、または、前記脱揮装置と前記押出機を直列に配置したものを用いることが好ましく、熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置またはベント付き押出機を用いることがより好ましい。
上記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲内が好ましく、200〜300℃の範囲内がより好ましい。反応処理温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
上記熱交換器と脱揮槽からなる脱揮装置を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲内が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
上記ベント付き押出機を用いる場合の反応処理温度は、150〜350℃の範囲内が好ましく、200〜300℃の範囲内がより好ましい。上記温度が150℃より低いと、環化縮合反応が不十分となって残存揮発分が多くなるおそれがあり、350℃より高いと、着色や分解が起こるおそれがある。
上記ベント付き押出機を用いる場合の、反応処理時の圧力は、931〜1.33hPa(700〜1mmHg)の範囲内が好ましく、798〜13.3hPa(600〜10mmHg)の範囲内がより好ましい。上記圧力が931hPaより高いと、アルコールを含めた揮発分が残存し易いという問題があり、1.33hPaより低いと、工業的な実施が困難になっていくという問題がある。
なお、ラクトン環含有重合体の製造において、環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する方法の場合、厳しい熱処理条件では、得られるラクトン環含有重合体の物性が劣化することがある。従って、上記有機リン化合物を用い、できるだけ温和な条件で行うことが好ましい。
脱揮工程は、環化縮合反応の過程全体にわたって併用するのではなく、過程の一部においてのみ併用する方法であってもよい。例えば、重合体(a)を製造した装置を、さらに加熱し、必要に応じて脱揮工程を一部併用して、環化縮合反応を予めある程度進行させておき、その後に、引き続いて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行い、反応を完結させる方法であってもよい。
上記環化縮合反応の全体を通じて脱揮工程を併用する方法では、熱履歴の違いにより、環化縮合反応が起こる前に一部分解などが生じ、得られるラクトン環含有重合体の物性が劣化することがある。例えば、二軸押出機を用いて、250℃付近、あるいはそれ以上の高温で熱処理する場合などに、ラクトン環含有重合体の物性が劣化することがある。そこで、予め環化縮合反応をある程度進行させた後に、脱揮工程を併用した環化縮合反応を行うと、後半の反応条件を緩和でき、得られるラクトン環含有重合体の物性の劣化を抑制できるので好ましい。特に好ましくは、脱揮工程を環化縮合反応の開始から時間をおいて開始する方法である。
すなわち、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体(a)を、予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法である。例えば、釜型反応機を用いて、予め溶剤の存在下で環化縮合反応をある程度の反応率まで進行させる。その後、脱揮装置を備えた反応器を用いて環化縮合反応を完結させる方法が挙げられる。この脱揮装置を備えた反応器として、例えば、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置などが挙げられる。また、特に、この方法の場合、環化縮合反応用の触媒を用いることがより好ましい。
また、分子鎖中に水酸基とエステル基を有する重合体(a)を、予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法は、本発明においてラクトン環含有重合体を得る上で好ましい方法である。この方法により、ガラス転移温度がより高く、環化縮合反応率もより高まり、耐熱性に優れたラクトン環含有重合体が得られる。この場合、環化縮合反応率の目安としては、例えば、ダイナミックTG測定による150〜300℃の範囲内における質量減少率が、好ましくは2%以下、より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1%以下である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に採用できる反応器は特に限定されないが、好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器、熱交換器と脱揮槽とからなる脱揮装置等が挙げられ、さらに、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応に好適なベント付き押出機も使用できる。より好ましくは、オートクレーブ、釜型反応器である。しかしながら、ベント付き押出機等の反応器を使用するときでも、ベント条件を温和にしたり、ベントをさせなかったり、温度条件やバレル条件、スクリュウ形状、スクリュウ運転条件等を調整することで、オートクレーブや釜型反応器での反応状態と同じ様な状態で環化縮合反応を行うことが可能である。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、好ましくは、重合工程で得られた重合体と溶剤とを含む混合物を、(i)触媒を添加して、加熱反応させる方法、(ii)無触媒で加熱反応させる方法、および、前記(i)または(ii)を加圧下で行う方法が挙げられる。
なお、ラクトン環化縮合工程において環化縮合反応に導入する「重合体と溶剤とを含む混合物」とは、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま使用してもよいし、一旦溶剤を除去したのちに環化縮合反応に適した溶剤を再添加してもよいことを意味する。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際に再添加できる溶剤としては、特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;クロロホルム、DMSO、テトラヒドロフランなどでもよいが、好ましくは、重合工程で用いることができる溶剤と同じ種類の溶剤である。
上記方法(i)で添加する触媒としては、一般に用いられるp−トルエンスルホン酸等のエステル化触媒またはエステル交換触媒、塩基性化合物、有機カルボン酸塩、炭酸塩などが挙げられるが、本発明においては、前述の有機リン化合物を用いることが好ましい。
触媒の添加時期は特に限定されず、反応初期に添加しても、反応途中に添加しても、それらの両方で添加してもよい。添加する触媒の量は特に限定されないが、重合体の重量に対し、好ましくは0.001〜5重量%の範囲内、より好ましくは0.01〜2.5重量%の範囲内、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%の範囲内、特に好ましくは0.05〜0.5重量%の範囲内である。方法(i)の加熱温度と加熱時間とは特に限定されないが、加熱温度としては、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上であり、加熱時間としては、好ましくは1〜20時間の範囲内、より好ましくは2〜10時間の範囲内である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(ii)としては、例えば、耐圧性の釜などを用いて、重合工程で得られた重合反応混合物をそのまま加熱する方法等が挙げられる。加熱温度としては、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは150℃以上である。加熱時間としては、好ましくは1〜20時間の範囲内、より好ましくは2〜10時間の範囲内である。加熱温度が低いと、あるいは、加熱時間が短いと、環化縮合反応率が低下するので好ましくない。また、加熱時間が長すぎると、樹脂の着色や分解が起こる場合があるので好ましくない。
上記方法(i)、(ii)ともに、条件によっては加圧下となっても何ら問題はない。また、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の際には、溶剤の一部が反応中に自然に揮発しても何ら問題ではない。
脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応の前に予め行う環化縮合反応の終了時、すなわち、脱揮工程開始直前における、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少率は、2%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1%以下である。重量減少率が2%より高いと、続けて脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行っても、環化縮合反応率が十分高いレベルまで上がらず、得られるラクトン環含有重合体の物性が低下するおそれがある。なお、上記の環化縮合反応を行う際に、重合体に加えて、他の熱可塑性樹脂を共存させてもよい。
重合工程で得られた重合体の分子鎖中に存在する水酸基とエステル基とを予め環化縮合反応させて環化縮合反応率をある程度上げておき、引き続き、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行う方法の場合、予め行う環化縮合反応で得られた重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)と溶剤とを分離することなく、脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行ってもよい。また、必要に応じて、上記重合体(分子鎖中に存在する水酸基とエステル基の少なくとも一部が環化縮合反応した重合体)を分離してから溶剤を再添加する等のその他の処理を経てから脱揮工程を同時に併用した環化縮合反応を行っても構わない。
脱揮工程は、環化縮合反応と同時に終了することのみには限定されず、環化縮合反応の終了から時間をおいて終了しても構わない。
得られたラクトン環含有重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1,000〜2,000,000の範囲内、より好ましくは5,000〜1,000,000の範囲内、さらに好ましくは10,000〜500,000の範囲内、特に好ましくは50,000〜500,000の範囲内である。
ラクトン環含有重合体は、ダイナミックTG測定における150〜300℃の間での重量減少率が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下である。
ラクトン環含有重合体は、環化縮合反応率が高いので、成形後の成形品中に泡やシルバーストリークが入るという欠点が回避できる。さらに、高い環化縮合反応率によってラクトン環構造が重合体に十分に導入されるため、得られたラクトン環含有重合体が十分に高い耐熱性を有している。
ラクトン環含有重合体は、熱重量分析(TG)における5%重量減少温度が、330℃以上であることが好ましく、より好ましくは350℃以上、さらに好ましくは360℃以上である。熱重量分析(TG)における5%重量減少温度は、熱安定性の指標であり、これが330℃未満であると、十分な熱安定性を発揮できないおそれがある。
(アクリル系樹脂組成物)
本発明に係るアクリル系樹脂は、添加剤を含んでいてもよい。添加剤の添加量は、好ましくは0〜50%、より好ましくは0.01〜45%、さらに好ましくは1〜35%である。
本発明に係るアクリル系樹脂組成物の製造方法に用いる添加剤は、特に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤、紫外線吸収剤、染料、エラストラマー、ゴム粒子、無機粒子、ガラス転移温度の異なる樹脂などが挙げられる。
添加剤として、固有複屈折調整用の樹脂を添加することにより、アクリル系樹脂組成物の位相差を小さくすることができる。固有複屈折調整用樹脂としては、光学的観点からアクリル系樹脂と相溶する樹脂が好ましい。アクリル系樹脂の固有複屈折が正の場合には、固有複屈折調整用樹脂として負の固有複屈折を有する樹脂を添加すると、固有複屈折が打ち消しあうことにより、固有複屈折率の小さな樹脂が得られる。逆に、アクリル系樹脂の固有複屈折が負の場合には、固有複屈折調整用樹脂として正の固有複屈折を有する樹脂を添加すればよい。
また、ラクトン環含有重合体を製造する場合は、負の固有複屈折樹脂を添加することが好ましい。ラクトン環含有重合体は、正の固有複屈折を有しているからである。負の固有複屈折を有する樹脂としては、例えば、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン樹脂)、スチレン系樹脂、スチレン共重合体などが挙げられるが、負の固有複屈折を有している限り、これに限定されるものではない。中でも、ラクトン環含有重合体との相溶性の観点からAS樹脂が特に好ましい。
なお、固有複屈折の正負の判断は、フィルムを一軸延伸し、延伸方向の屈折率が大きくなるかどうかで判断することができる。固有複屈折が正の場合には、延伸方向の屈折率が大きくなり、結果として、位相差値が正になる。逆に、固有複屈折が負の場合には、延伸方向と直角方向の屈折率が大きくなり、結果として位相差値が負になる。
また、アクリル系樹脂組成物の可撓性を向上させる場合は、ガラス転移温度が−100℃以上、10℃以下のゴム成分を添加剤とする。当該ゴム成分としては具体的に、グラフト重合体ゴム、ブタジエンゴムおよびイソプレンゴムなどのジエン系ゴム、エチレン−プロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、ウレタン系ゴム、熱可塑性エラストラマーなどが挙げられ、特にコア・シェル構造およびグラフト鎖を有するゴムなどの多層構造を有するゴム成分が好ましいが、これに限定されるものではない。ゴム成分の樹脂への分散性の観点からは、多層構造の外層にアクリル系樹脂との相溶性に優れた樹脂構造を有するゴム成分であることが好ましい。その中でも、アクリロニトリルとスチレンとを含む共重合体構造を多層構造の外層に有するゴム成分は、可撓性が向上するとともに、固有複屈折調整の効果を併せ持つため、特に好ましい。
また、アクリル系樹脂が主鎖に環構造を有する場合は、通常、酸または塩基触媒で環化反応を行う。しかし、環化触媒を添加し環化縮合反応を十分行った後にも微量の未反応の反応性基が残存し、成形時に発泡やポリマー間の架橋での増粘などの問題が起きることがある。そのため、環化縮合触媒の失活剤を添加することが好ましい。環化縮合反応には、酸性触媒、あるいは、塩基性触媒が用いられることが多い。失活剤は中和反応により触媒を失活させるため、触媒が酸性物質である場合、失活剤としては塩基性物質を用いればよく、逆に触媒が塩基性物質である場合、失活剤としては酸性物質を用いればよい。
失活剤としては、熱加工時に樹脂の物性や特性を阻害する物質などを発生しない限り、特に限定されるものではない。失活剤に用いられる塩基性物質としては、例えば、金属カルボン酸塩、金属錯体、金属酸化物などが挙げられ、金属カルボン酸塩、金属酸化物が好ましく、金属カルボン酸塩が特に好ましい。ここで、金属としては、樹脂の物性を阻害せず、廃棄時に環境汚染を招くことがない限り、特に限定されるものではない。金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;亜鉛;ジルコニウム;などが挙げられる。金属カルボン酸塩を構成するカルボン酸としては、特に限定されるものではないが、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、トリデカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸などが挙げられる。金属錯体における有機成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、アセチルアセトンなどが挙げられる。金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどが挙げられ、酸化亜鉛が好ましい。他方、失活剤に用いられる酸性物質としては、例えば、有機リン酸化合物、カルボン酸などが挙げられる。
失活剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、失活剤は、固形物、粉末状、分散体、懸濁液、水溶液など、いずれの形態で添加してもよく、特に限定されるものではない。
失活剤の配合量は、環化縮合に使用した触媒に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、好ましくはアクリル系樹脂に対して10〜10,000ppm、より好ましくは50〜5,000ppm、さらに好ましくは100〜3,000ppmである。失活剤の配合量が10ppm未満であると、失活剤の作用が不十分になり、成形時に発泡やポリマー間の架橋での増粘が起こるおそれがある。逆に、失活剤の配合量が10,000ppmを超えると、必要以上に失活剤を使用することになり、分子量低下など樹脂の物性を阻害するおそれがある。
失活剤を添加するタイミングは、アクリル系樹脂の製造にあたり、触媒を添加し環化縮合反応を十分行った後であり、かつ、得られた樹脂が熱加工される前である限り、特に限定されるものではない。例えば、アクリル系樹脂を製造中に所定の段階で失活剤を添加する方法、あるいは、アクリル系樹脂を製造した後にアクリル系樹脂、失活剤、その他の成分などを同時に加熱溶融させて混練する方法;アクリル系樹脂、その他の成分などを加熱溶融させておき、そこに失活剤を添加して混練する方法;アクリル系樹脂を加熱溶融させておき、そこに失活剤、その他の成分などを添加して混練する方法;などが挙げられる。この場合、熱可塑性樹脂と失活剤とを混練した後に、脱揮工程を設けることが好ましい。得られた熱可塑性樹脂が、熱加工時に発泡現象をほとんど起こさなくなるからである。脱揮工程としては、例えば、ラクトン環含有重合体の製造に際して行う上記脱揮工程が挙げられる。
(押出機)
本願発明の実施に用いる押出機は、単量体の重合および脱揮を行った押出機内で添加剤を混入することが可能な構成となっている限り、限定されるものではない。つまり、供された単量体が、重合工程、脱揮工程、添加剤を混練する工程を経て、目的とするペレットを得るまでの間、外環境の酸素に接触することがない押出機であればよい。上記構成を充たす限り、例えば、単軸押出機でもよく、二軸押出機でも良いが、サイドフィードを備えた二軸押出機がより好ましい。
また、ベント付押出機が好ましく、ベントは1個でも複数個でもいずれでもよいが、複数個のベントを有する方が好ましい。上記ベント付き押出機を用いる場合、減圧度は10hPa(7.5torr)以上、200hPa(150torr)以下が好ましく、より好ましくは15hPa(11.3torr)以上、133.32hPa(100torr)以下であり、さらに好ましくは20hPa(15torr)以上、66.7hPa(50torr)以下である。
また、上記二軸押出機を用いる場合において、後述するポリマーフィルターを備える場合は、上記ポリマーフィルターと上記二軸押出機の間にギアポンプを備えることが好ましい。
また、樹脂粘度は、せん断速度100/secにおいて、10Pa・sec以上、10000Pa・sec以下が好ましく、より好ましくは50Pa・sec以上、5000Pa・sec以下、さらに好ましくは100Pa・sec以上、3000Pa・sec以下である。
樹脂温度の下限値は、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは260℃以上である。また、樹脂温度の上限値は、好ましくは310℃以下であり、より好ましくは300℃以下であり、さらに好ましくは290℃以下である。
(ポリマーフィルター)
上記押出機の出口部分にはポリマーフィルターを備えても良い。本実施形態によれば、上記ポリマーフィルターを用いて、アクリル系樹脂、該組成物を濾過精製することにより、ポリマーゲル等の異物の除去が可能であり、異物量をより少なくしたアクリル系樹脂、該組成物の製造が可能となる。ポリマーフィルターは特に限定されるものではなく、例えば、パックディスクフィルター、円筒状フィルター、キャンドル状フィルター等が挙げられるが、ケーシング内に多数枚のリーフディスク型フィルターを配したポリマーフィルターが好ましい。
また、上記リーフディスク型ポリマーフィルターを用いる場合、リーフディスク型フィルターにおける濾材として、例えば、金属繊維不織布を焼結した濾材、金属粉末を焼結した濾材、金網を1枚若しくは2枚以上積層した濾材が挙げられるが、金属繊維不織布を焼結した濾材が好ましい。
また、単位時間当たりの濾過量に対する濾過面積は、特に限定されず、濾過量に応じて適宜設定するとよいが、好ましくは0.001m2/(kg/h)以上、0.15m2/(kg/h)以下である。
また、濾過精度は、0.1μm以上、50μm以下が好ましく、より好ましくは0.5μm以上、10μm以下、さらに好ましくは1μm以上、5μm以下である。
また、フィルターの入口における圧力は3MPa以上、15MPa以下が好ましく、フィルターの出口における圧力は0.3MPa以上、10MPa以下が好ましい。
また、フィルターにおける圧力損失は1MPa以上、15MPa以下が好ましい。1MPa未満では、上記アクリル系樹脂がフィルターを通過する流路に偏りが生じやすく、品質の低下が生じやすくなる。15MPaを超えるとフィルターが破損しやすくなる。
〔参考例1〕
攪拌装置(マックスブレンド翼)、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた重合用反応器(SUS−316製)内を窒素で置換した。
次に、メタクリル酸メチル40重量部に対して、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル10重量部、トルエン50重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト0.025重量部を重合用反応器に仕込んだ。
その後、窒素を通じつつ重合用反応器内を100℃まで昇温した。酸素濃度が100ppm以下であることを確認した後、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート0.05重量部を加え、その後直ちに、t−アミルパーオキシナノエート0.1重量部を2時間かけて滴下投入した。
重合用反応器内の温度100℃以上を保持した状態で、滴下終了から4時間、重合を継続した。
得られた重合体溶液にリン酸2−エチルヘキシル0.05重量部を加え、環化縮合反応を行った。環化縮合反応によりメタノールが生成するため、還流温度が低下するが、80℃以上を保つようにして2時間、環化縮合反応を行った。このときの反応率は、メタクリル酸メチルが97.4%、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルが98.2%であり、分子量が169000、分子量分布が2.8であった。
得られたラクトン化重合体溶液は、押出機外の酸素に触れることなく、重合用反応器から、配管、ギアポンプを通じて、下流部分にサイドフィードを有する二軸押出機に導入した。なお、ラクトン化重合体溶液を、上記配管、ギアポンプを通じる過程で、多管式熱交換機からなる加熱機により240℃に昇温した。
二軸押出機では、樹脂換算で15kg/hrとなるように、得られたラクトン化重合体溶液を脱揮機に供給し、バレル温度250℃、回転数100rpm、減圧度13.3〜400hPaで脱揮処理した。
その後、二軸押出機の下流部分に備えられたサイドフィードにより、1.65kg/hrの供給速度でAS樹脂ペレット(旭化成ケミカルズ株式会社製、アクリロニトリル−スチレン樹脂、製品名:スタイラックAS783)、および、7.5g/hrの供給速度で酸化防止剤を添加し、アクリル系樹脂組成物(A)のペレットを得た。
〔実施例2〕
上記二軸押出機の出口部分に、リーフディスク型ポリマーフィルター(長瀬産業 濾過精度5μ)を備えていること以外は、参考例1と同様の条件で重合、脱揮を行い、アクリル系樹脂組成物(B)のペレットを得た。
〔製造例1(グラフト重合体ゴムの製造)〕
冷却器と攪拌機とを備えた重合容器に、脱イオン水710部、ラウリル硫酸ナトリウム1.5部を投入して溶解し、内温を70℃に昇温した。そして、SFS0.93部、硫酸第一鉄0.001部、EDTA0.003部、脱イオン水20部の混合液を上記重合容器中に一括投入し、重合容器内を窒素ガスで十分置換した。
モノマー混合液(M−1)(BA7.10部、St2.86部、BDMA0.02部、AMA0.02部)と重合開始剤溶液(PBH0.13部、脱イオン水10.0部)とを上記重合容器中に一括添加し、60分間重合反応を行った。
続いて、モノマー混合液(M−2)(BA63.90部、St25.20部、AMA0.9部)と重合開始剤溶液(PBH0.246部、脱イオン水20.0部)とを別々に90分間かけて連続滴下しながら重合を行った。滴下終了後、さらに60分間重合を継続させた。これにより、有機微粒子のコア・シェル構造のコアとなる部分を得た。
続いて、モノマー混合液(M−3)(St73.0部、AN27.0部)と重合開始剤溶液(PBH0.27部、脱イオン水20.0部)とを別々に100分間かけて連続滴下しながら重合を行った。滴下終了後、内温を80℃に昇温して120分間重合を継続させた。次に、内温が40℃になるまで冷却した後に300メッシュの金網を通過させて有機微粒子の乳化重合液を得た。
得られた有機微粒子の乳化重合液を塩化カルシウムで塩析、凝固し、さらに水洗、乾燥して、粉体状のグラフト重合体ゴム(平均粒子径0.105μm、ゴム部のガラス転移温度−23℃)を得た。
本製造例1では、下記の略語を用いた。
SFS :ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート
EDTA:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム
BA :アクリル酸ブチル
St :スチレン
BDMA:ジメタクリル酸1,4−ブタンジオール
AMA :メタクリル酸アリル
PBH :ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド
AN :アクリロニトリル
〔参考例3〕
上記サイドフィードから、上記AS樹脂の代わりに、製造例1で製造したアクリル系のグラフト重合体ゴムを3.75kg/hrの供給速度で添加すること以外は実施例2と同様の条件で重合、脱揮を行い、アクリル系樹脂組成物(C)のペレットを得た。
〔実施例4〕
サイドフィードから上記AS樹脂および上記酸化防止剤に加えて、酢酸亜鉛を6g/hrの供給速度で添加すること以外は実施例2と同様の条件で重合、脱揮を行い、アクリル系樹脂組成物(D)のペレットを得た。
〔実施例5〕
二軸押出機出口とリーフディスク型ポリマーフィルターとの間にギアポンプを設置し、ポリマーフィルターへの樹脂の供給を安定化させて脱揮、造粒を行った以外は実施例2と同様の条件で重合、脱揮を行い、アクリル系樹脂組成物(G)のペレットを得た。脱揮、造粒時のギアポンプの1次圧は2.0MPa、ポリマーフィルターでの圧力損失は6.3MPaであった。
得られたアクリル系樹脂組成物(G)のペレットをシリンダー径が20mmの単軸押出機を用いて下記条件で押出成形し、約250μmの厚みの未延伸フィルムを作製した。
シリンダー :温度260℃
ダイ :コートハンガータイプ、幅150mm、温度260℃
キャスティング:つや付き3本ロール、第1ロール125℃、第2ロール142℃、第3ロール118℃
得られた未延伸フィルムを延伸機(株式会社東洋精機製作所製、コーナーストレッチ式二軸延伸試験装置、製品名:X6−S)を用いて、140℃で3分間予熱後、温度を変えずに1分間に2倍になるように自由幅一軸延伸を行った。得られた一軸延伸フィルム(厚さ75μm)の光学特性として、全光線透過率は、日本電色工業株式会社製NDH−1001DPを用いて測定し、面内位相差値(Re)は、王子計測機器株式会社製の位相差測定装置KOBRA−WRを用いて、測定波長589nmで測定した。その結果、得られた一軸延伸フィルム(厚さ75μm)の全光線透過率は93%、面内位相差値は2nmであった。
〔比較例1〕
サイドフィードを備えていない二軸押出機により、参考例1と同様の条件下で重合、脱揮を行い、ラクトン環含有重合体のペレットを作成した。続いて、混練用の二軸押出機に当該ラクトン環含有重合体のペレット90重量部、AS樹脂のペレット10重量部、酸化防止剤0.05重量部を混合したものをホッパーから供給し、バレル温度250℃、回転数100rpmで溶融混練して、アクリル系樹脂組成物(E)のペレットを得た。混練中はホッパーから窒素を通気することでホッパー内部を窒素置換し、酸素濃度は1%であった。
また、AS樹脂を混練する前のラクトン環含有重合体のペレットをシリンダー径が20mmの単軸押出機を用いて下記条件で押出成形し、約250μmの厚みの未延伸フィルムを作製した。
シリンダー :温度260℃
ダイ :コートハンガータイプ、幅150mm、温度260℃
キャスティング:つや付き3本ロール、第1ロール125℃、第2ロール142℃、第3ロール118℃
得られた未延伸フィルムを延伸機(株式会社東洋精機製作所製、コーナーストレッチ式二軸延伸試験装置、製品名:X6−S)を用いて、140℃で3分間予熱後、温度を変えずに1分間に2倍になるように自由幅一軸延伸を行った。得られた一軸延伸フィルム(厚さ75μm)の光学特性を実施例5と同様の装置、条件で測定した。その結果、得られた一軸延伸フィルム(厚さ75μm)の全光線透過率は93%、面内位相差値は35nmであった。
〔比較例2〕
比較例1で、混練用の二軸押出機の出口部分にリーフディスク型ポリマーフィルターを設置した以外は比較例1と同様にして、アクリル系樹脂組成物(F)のペレットを得た。
〔パーティクルカウンター法による異物数の測定〕
アクリル系樹脂組成物(A)ないし(G)のペレット1gを清浄な溶剤に溶解して、パーティクルカウンター(パマス社製、製品名:SUSS−C16 HCB−LD−50AC)により測定した。
〔目視法による異物数の測定〕
アクリル系樹脂組成物(A)ないし(G)のペレット30gをガラス製シャーレに隙間無く詰めて、エタノールを満たした上で、×10倍の顕微鏡で観察した。得られた値を1gあたりに換算した。なお、50以上の数値の場合は、目視法では計量できなかった。
〔YIの測定〕
YIは、アクリル系樹脂組成物(A)ないし(G)のペレットを、15重量%となるようにクロロホルムに溶解した上で、色差計(日本電色工業株式会社製、製品名:NDH−1001DP)により測定した。
〔残留メタクリル酸メチルの測定〕
アクリル系樹脂組成物(A)ないし(G)に残存するメタクリル酸メチルは、ガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製、製品名:GC−14A、キャピラリーカラム:ULBON HR−IL50mm×ID0.25mm、BF0.25mm)を用いて測定した。
〔ガラス転移温度(Tg)の測定〕
樹脂や組成物、ゴム成分の熱分析は、試料約10mg、昇温速度10℃/min、窒素フロー50cc/minの条件で、DSC(株式会社リガク製、製品名:DSC−8230)を用いて行った。なお、ガラス転移温度(Tg)は、ASTM−D−3418に従い、中点法で求めた。
〔ラクトン環構造単位の含有割合〕
ラクトン環構造単位の含有割合は、以下のようにして求めた。
最初に、重合で得られた重合体組成から、全ての水酸基がメタノールとして脱アルコールした際に起こる重量減少量を基準にし、ダイナミックTG測定において重量減少が始まる前の150℃から重合体の分解が始まる前の300℃までの脱アルコール反応による重量減少から、脱アルコール反応率を求めた。
ここで、ラクトン環構造を有する重合体のダイナミックTG測定において150℃から300℃までの間の重量減少率の測定を行い、得られた実測重量減少率を(X)とする。一方、当該重合体組成から、全ての水酸基が脱アルコールすると仮定した場合の理論重量減少率(すなわち、その重合体組成において、起こりうる脱アルコール反応が100%起きたと仮定して算出した重量減少率)を(Y)とする。なお、理論重量減少率(Y)は、より具体的には、重合体中の脱アルコール反応に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体のモル比、すなわち当該重合体組成における上記原料単量体の含有率から算出することができる。
そして、下記式
脱アルコール反応率=1−(実測重量減少率(X)/理論重量減少率(Y))
から、脱アルコール反応率を求めることができる。
一例として、比較例1で得られるラクトン環含有重合体のペレットにおいて、ラクトン環構造単位の含有割合を計算する。このペレットの理論重量減少率(Y)を求めてみると、メタノールの分子量は32であり、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの分子量は116であり、ラクトン環化前の重合体中の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの含有率(重量比)は20重量%であるから、(32/116)×20=5.52重量%となる。他方、ダイナミックTG測定による実測重量減少率(X)は、0.2重量%である。これらの値を上記脱アルコール反応率の式に当てはめると、1−(0.2/5.52)=0.964となるので、脱アルコール反応率は96.4%となる。
そして、この脱アルコール反応率の分だけ所定のラクトン環化が行われたものとして、下記式
ラクトン環構造単位の含有割合=B×A×MR/Mm
(式中、Bはラクトン環化前の重合体中のラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の含有率(重量比)であり、Aは脱アルコール反応率であり、MRは生成するラクトン環構造単位の式量であり、Mmはラクトン環化に関与する構造(水酸基)を有する原料単量体の分子量である)
により、ラクトン環構造単位の含有割合を算出することができる。
例えば、比較例1の場合、ラクトン環含有重合体のラクトン環化前の重合体中の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルの含有率(重量比)が20重量%、算出した脱アルコール反応率が96.4%、分子量が116の2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルがメタクリル酸メチルと縮合した場合に生成するラクトン環構造単位の式量が170であることから、当該共重合体中におけるラクトン環構造単位の含有割合は、20×0.964×170/116=28.3重量%となる。
〔実施(参考)例1ないし5、比較例1および比較例2の比較〕
アクリル系樹脂組成物(A)ないし(G)を比較した結果を表1に示す(表1において、残留メタクリル酸メチルは残留MMAと称する)。製造法としてサイドフィード法を用いた実施(参考)例1〜5における20μm以上の異物量は、全て100個以下であった。これは製造法として混練法を用いた比較例1より低い値である。
また、実施(参考)例1〜5のYIは、全て5以下であり、比較例1および2より低い値となった。また、実施(参考)例1〜5の残留メタクリル酸メチルは2000ppm以下を達成した。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。