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JP4802569B2 - シリコーンモノマーの製造方法 - Google Patents

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本発明は、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズの原料として用いるに好適なシリコーンモノマー及びシリコーンモノマーの製造方法に関する。
従来、眼用レンズ用モノマーとして、シロキサニル基などのケイ素基を含有するモノマーが知られている。
Figure 0004802569
そのような化合物の一つとして、上記式(c)や式(c’)で表される化合物が知られている(例えば、特許文献1)。この化合物は分子内に水酸基を有することから親水性モノマーとの相溶性が得やすいという特長を有し、反応条件の検討により純度を80重量%以上とすることはできる。しかし、原料であるエポキシシランを完全に消費することは困難であり、また、このエポキシシランを分離することも困難であるため、モノマー中にこれが残存することが指摘されている。このエポキシシランは、ポリマー化したときにはしみ出す性質を有しているといわれ、また、眼などへの刺激性を有する可能性があると推測されている化合物である。而して、このシリコーンモノマーを用いて眼用レンズとしたときにはポリマー中に残存するおそれがあるため、装用者の不快感を引き起こす原因となる可能性が考えられた。この為、エポキシシラン量の極力少ない、すなわち好ましく50ppm以下の、高純度なシリコーンモノマーの開発が切望されていた。
このエポキシシランの含有量を低減させる方法として、反応時間を長くとり原料の消費を優先する考え方がある。しかし、かかる方法でもエポキシシランは数100ppm残存し、また、副生成物の生成により、純度が低下するほか、該副生成物による影響が懸念される。
また、特許文献2には、反応生成物に酢酸−メタノールを反応させる方法が開示されている。しかし、この方法を用いてもエポキシシランは数100ppm残存し、十分なものではない。
特開昭56−22325号公報 実施例4 特開2005−23011号公報 実施例1
上記の問題に鑑み、本発明は、眼用レンズの原料として用いた際に眼がしみるなどの装用感の悪化をもたらすおそれを払底するべく、一般式(a)および/または(a’)で表されるシリコーン化合物を含んだシリコーンモノマーにおいて、80重量%以上の高純度で、かつその中に含まれるエポキシシランの含有量を低減、すなわち50ppm以下の含有量である、シリコーンモノマーを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。すなわち、下記一般式(a1)で表されるエポキシシランと不飽和カルボン酸を反応せしめる工程と、その反応生成物に強酸を添加して処理を行う工程とを有する、前記一般式(a)および/または(a’)で表されるシリコーン化合物の含有量が80重量%以上であって、前記一般式(a1)で表されるエポキシシランの含有量が50ppm以下であるシリコーンモノマーの製造方法、
Figure 0004802569
Figure 0004802569
(Rは重合性基を含む炭素数1〜20の有機基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20の有機基または−X−Aを表す。R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20の有機基または−X−Aを表す。Xは炭素数1〜20の2価の有機基を表す。Aはシロキサニル基を表す。)
であることを本旨とし、また、種々の好ましい態様を提案するものである。
本発明によるシリコーンモノマーに含まれるエポキシシラン量は50ppm以下であるので、このシリコーンモノマーを用いて重合を行い、ポリマーとし、更に眼用レンズに加工しても、眼の不快感が発生しないため、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズ用の原料に好適に用いることができる。
本発明者らは、一般式(a)および/または(a’)で表されるシリコーンモノマー中に残存するエポキシシランの低減について鋭意検討を行い、シリコーンモノマー中の残存エポキシシランに強酸を作用させて、シリコーンジオールに変換すれば、残存エポキシシランを50ppm以下に低減できることを見いだした。そして、このようなエポキシシランの含有量が50ppm以下のシリコーンモノマーを用いれば、コンタクトレンズなどの眼用レンズとしても、もはや眼の不快感が発生しないことを見出し、本発明を完成した。
本発明のシリコーンモノマーは、下記一般式(a)および/または(a’)で表される化合物を80重量%以上含有する。
Figure 0004802569
ここで、Rは重合性基を有する炭素数1〜20の有機基を表す。ここで重合性基とはラジカル重合、イオン重合などの連鎖重合、重縮合など逐次重合が可能な有機基を表す。R−COO−基の例としては、アクリル酸基、メタアクリル酸基、ビニロキシ酢酸基、アリロキシ酢酸基、クロトン酸基、2−(メタ)アクリロイルプロパン酸基、3−(メタ)アクリロイルブタン酸基、4−ビニル安息香酸基、また、3−アミノフタル酸基、3−ヒドロキシフタル酸基等を挙げることができる。この構造は不飽和カルボン酸に由来して導入することが簡便であり、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物のいずれもが入手し易いことから好ましいのはアクリル酸基およびメタアクリル酸基である。また、Xは炭素数1〜20の2価の脂肪族または芳香族有機基を表す。Aはシロキサニル基を表す。シロキサニル基としては下記式(b)で表されるものが原料の入手しやすさや合成の容易さの点で好ましい。
Figure 0004802569
(A〜A11はそれぞれが互いに独立に水素、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基のいずれかを表す。nは0〜200の整数を表し、a、b、cはそれぞれ互いに独立に0〜20の整数を表す。ただしn=a=b=c=0の場合は除く。)
〜A11の基の例としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などを挙げることができる。また、水素の一部が、例えば、アミノ基、水酸基、チオール基、ニトロ基、スルホン酸基などの炭素を含まない官能基で置換されていても良く、また、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基などの炭素を含まない二価以上の基をその構造中に含むものであっても良く、また、総炭素数の範囲を逸脱しない範囲において、シアノ基やカルボキシル基やアミド結合や尿素結合やエステル結合や複素環などの含炭素原子団を含むものであっても良い。これらの中で最も好ましいのはメチル基である。
式(b)で表される置換基を導入するにあたり、その導入のための原料が工業的に比較的安価に入手できることから特に好適なものはトリス(トリメチルシロキシ)シリル基、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル基、トリメチルシロキシジメチルシリル基、ポリジメチルシロキサン基、ポリメチルシロキサン基、ポリ−コ−メチルシロキサン−ジメチルシロキサン基などであり、中で最も好ましくは、トリス(トリメチルシロキシ)シリル基、ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル基、トリメチルシロキシジメチルシリル基である。
また、R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20の有機基を表す。該有機基は
例えば、アミノ基、水酸基、チオール基、ニトロ基、スルホン酸基などの炭素を含まない官能基を有するものであっても良く、また、エーテル基、チオエーテル基、スルホン基などの炭素を含まない二価以上の基をその構造中に含むものであっても良く、また、総炭素数の範囲を逸脱しない範囲において、シアノ基やカルボキシル基やアミド結合や尿素結合やエステル結合や複素環などの含炭素原子団を含むものであっても良い。
本発明の一般式(a)および/または(a’)で表される化合物は、簡便には一般式(a1)で表される化合物(エポキシシラン)に不飽和カルボン酸、好ましくは先述した好ましい不飽和カルボン酸、を作用せしめることで得ることができる。
Figure 0004802569
ここで、R〜Rはそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20の有機基または−X−Aを表す(なお、R〜Rについての説明は先の一般式(a)または(a’)で表される化合物についてのR〜Rについての説明に同じであり、XおよびAについても先の一般式(a)および/または(a’)で表される化合物についての各々X、Aについての説明に同じである。)。
このようなシリコーン化合物の合成は、先述の特開昭56−22325号を参考に合成することができる。反応終了後に溶媒で希釈してアルカリ洗浄を行い、乾燥剤で脱水した後、溶媒を除去すれば、シリコーンモノマーの粗体を得ることができる。
本発明のシリコーンモノマーは、前記の一般式(a)および/または(a’)で表されるシリコーン化合物の純度が80重量%以上、好ましく90重量%以上であるが、純度の向上は、先述したシリコーンモノマーの粗体を減圧蒸留や薄膜蒸留して精製したり、カラム精製して達成することが可能である。なお、純度の上限には特に限定はないが、精製工程でのロスを考慮すると99重量%程度である。
本発明のシリコーンモノマーは、前記の一般式(a1)で表されるエポキシシランの含有量は50ppm以下、好ましく30ppm以下、更に好ましく20ppm以下、特に好ましく10ppm以下である。エポキシシランの含有量が少ないことで眼用レンズにしたときにおいても眼にしみるなどの不快感が発生するおそれが低減し、装用感の良好な眼用レンズとすることができる。下限としては特に限定はないが、経済性に鑑みれば1ppm程度である。
前記の一般式(a1)で表されるエポキシシランは、前記の粗体中に数100ppmから数1000ppm残存し、また、その含有量を50ppm以下とすることは、先述したアルカリ洗浄や蒸留操作やカラム分離などの精製操作では困難である。そこで、本発明の製造方法においては、前記一般式(a1)で表される化合物と不飽和カルボン酸との反応生成物に強酸を添加して処理を行う工程を有する。本発明において、強酸とは、pKa3以下の酸をいい、そのような酸としては例えば、塩酸、硫酸、燐酸、三フッ化酢酸、メタンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸等が挙げられる。このうち三フッ化酢酸を用いたときは前記一般式(a1)で表されるエポキシシランの加水分解が良好に進行し、、容易にシリコーンジオールに変換されかつ、副生成物も少なくなるので、最も好適に使用される。
強酸で処理する際の条件としては、特に限定するものではないが、先述の三フッ化酢酸を用いたときは、温度としては−80℃〜150℃が好ましく、操作の簡便性を考慮すると−20℃〜130℃がより好ましく、シリコーン化合物の熱分解が抑制できるので−20℃〜100℃が最も好ましい。また、処理時間としては1〜5時間が適当である。
また、強酸でシリコーンモノマーの粗体を処理する際に該粗体と強酸との親和性(相溶性)や混和性や流動性を改善する為に、溶媒を使用してもよいが、無溶媒でも差し支えない。
次いで、添加した強酸や処理により生成したシリコーンジオールなどを除去するため、塩基を添加して中和し、更に水や塩基性水溶液で洗浄するなどして処理を行うことができる。
また更に、こうして得たシリコーンモノマーに蒸留精製やカラム精製を行うことは、生成したシリコーンジオールなどの不純物の除去や純度の向上をはかることができるので、好ましく採用される。
本発明のシリコーンモノマーは、他の重合性モノマーと共重合し、コンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜などの眼用レンズの製造に好適に用いられる。
重合方法としては公知のラジカル重合法などを採用することができ、また、眼用レンズとするためには、得られたポリマーから成形する方法や予め型内にシリコーンモノマーや重合開始剤などを仕込んでおいて重合を行い、その後加工する方法などが挙げられる。
また、得られた眼用レンズを更に抽出処理するなどの後工程に付することも好ましく採用できる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
測定方法1(シリコーンモノマーの純度の測定、ガスクロマトグラフィー(GC))
島津製作所社製GC−18A(FID検出器)、キャピラリーカラムにDB−5、0.25mm×30m×1μm(J&W社製)を用いた。キャリアガスはヘリウム(138kPa)、注入口温度280℃、検出器温度280℃、昇温プログラムは60℃(5分)→10℃/分→325℃(19分)で測定した。サンプルは測定試料100μLをイソプロピルアルコール1mLに溶解して調製し1μL注入した。
測定方法2(残存エポキシシラン量の測定、ガスクロマトグラフィー質量分析装置(GCMS))
Hewlett−Packard社製5890seriesIIを用いた。また、条件は以下のとおりとした。
カラム:DB−WAX、0.25mm×30m×0.25μm(J&W社製)
昇温プログラム:50℃(2分間保持)→20℃/分→250℃(2.5分間保持)
注入口温度:250℃、検出器温度:280℃
キャリアガス:ヘリウム(3.0mL/分)
注入量:2μL
10mlのメスフラスコに試料を0.01g秤量し、アセトンで10mlに定容して測定試料とした。エポキシシランの標準試料は100mlのメスフラスコにエポキシシランを0.02g秤量し、アセトンで定容したものを標準母液とし、適宜希釈して調製した。上記測定試料と各標準試料についてGCMSを用いて選択イオン検出法(SIM)により測定してクロマトグラムを得た。エポキシシランの濃度の算出は検量線法により行った。
実施例1
特開昭56−22325号公報記載の方法により、反応時間を15〜20時間として合成した下記(c)及び(c’)で示されるシリコーン化合物をヘキサンで希釈し、0.5Nの水酸化ナトリウムでアルカリ洗浄を行い、硫酸ナトリウムを加えて乾燥した後、ろ過してエバポレータで溶媒を留去した。得られたシリコーンモノマーの粗体の純度の測定を行ったところ、シリコーン剤の純度は89.9%であった。このシリコーン剤中のエポキシシランの含有量を測定したところ、550ppmであった。
Figure 0004802569
次に、このシリコーンモノマーの粗体30gに三フッ化酢酸3gを加え、50℃で2時間攪拌した。次にヘキサン30gを加え、室温で10%炭酸ソーダ水100gを加え中和した。引き続き0.5N水酸化ナトリウム水溶液50mLで2回、2.6%食塩水35mLで3回洗浄し、有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過してエバポレータで溶媒を留去した。得られたシリコーンモノマーの純度の測定を行ったところ89.4%であった。また、エポキシシランの含有量を測定したところ、20ppmであった。
実施例2
実施例1で得られたシリコーンモノマーの粗体130gに、特開2005−23011号公報記載の方法に基づいて、メタノール90g、酢酸15gを加え、22℃で30分攪拌した。エバポレーターで溶媒を留去した後、ヘキサン30gを加え、0.5N水酸化ナトリウム水溶液50mLで5回、2.6%食塩水35mLで3回洗浄し、有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過してエバポレータで溶媒を留去した。得られたシリコーンモノマーの純度の測定を行ったところ91.8%であった。また、エポキシシランの含有量を測定したところ、500ppmであった。
次に、このシリコーンモノマーの粗体30gに三フッ化酢酸3gを加え、50℃で2時間攪拌した。次にヘキサン30gを加え、室温で10%炭酸ソーダ水100gを加え中和した。引き続き0.5N水酸化ナトリウム水溶液50mLで2回、2.6%食塩水35mLで3回洗浄し、有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過してエバポレータで溶媒を留去した。得られたシリコーンモノマーの純度の測定を行ったところ89.6%であった。また、エポキシシランの含有量を測定したところ、40ppmであった。
実施例3
実施例1において、三フッ化酢酸の処理条件を25℃で2時間とした以外は、実施例1と同様にしてシリコーンモノマーを得た。得られたシリコーンモノマーの純度は89.6%、エポキシシランの含有量は40ppmであった。
実施例4
実施例1において、三フッ化酢酸の使用量を1gとした以外は、実施例1と同様にしてシリコーンモノマーを得た。得られたシリコーンモノマーの純度は89.7%、エポキシシランの含有量は40ppmだった。
比較例4
実施例1において、三フッ化酢酸に替えて燐酸を3g使用した以外は、実施例1と同様にしてシリコーンモノマーを得た。得られたシリコーンモノマーの純度は88.5%、エポキシシランの含有量は50ppmだった。
比較例1
実施例1で得たシリコーンモノマーの粗体30gに活性炭6gを加え、22℃で30分攪拌した。ろ過して活性炭を取り除き、エバポレーターで溶媒を留去した後、ヘキサン30gを加え、0.5N水酸化ナトリウム水溶液50mLで5回、2.6%食塩水35mLで3回洗浄し、有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過してエバポレータで溶媒を留去した。得られたシリコーンモノマーのエポキシシランの含有量を測定したところ、380ppmであった。
比較例2
比較例1の活性炭に替えてキョーワード500(酸化マグネシウム38%含有吸着剤、協和化学工業株式会社製)を用いた以外は、比較例1と同様にしてシリコーンモノマーを得た。得られたシリコーンモノマーのエポキシシランの含有量を測定したところ、400ppmであった。
比較例3
実施例1において、反応時間を30時間とした以外は、実施例1と同様にしてシリコーンモノマーを得た。得られたシリコーンモノマーの粗体の純度の測定を行ったところ、シリコーン剤の純度は78.2%であった。このシリコーン剤中のエポキシシランの含有量を測定したところ、114ppmであった。

Claims (1)

  1. 下記一般式(a1)で表されるエポキシシランと不飽和カルボン酸を反応せしめる工程と、その反応生成物に三フッ化酢酸を添加して処理を行う工程とを有する、下記一般式(a)および/または(a’)で表されるシリコーン化合物の含有量が80重量%以上であって、前記一般式(a1)で表されるエポキシシランの含有量が40ppm以下であるシリコーンモノマーの製造方法。
    Figure 0004802569
    Figure 0004802569
    (R1は重合性基を含む炭素数1〜20の有機基を表す。R2〜R4はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20の有機基または−X−Aを表す。R5〜R7はそれぞれ独立に水素、炭素数1〜20の有機基または−X−Aを表す。Xは炭素数1〜20の2価の有機基を表す。Aはシロキサニル基を表す。)
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