JP4892313B2 - セルロース化合物、セルロースフィルム、光学補償シート、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
セルロースアシレートフィルムはその透明性、強靭性および光学的等方性から、液晶表示装置向けの偏光板保護フィルムとして広く利用されている。例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの脂肪酸セルロースエステルセルロース混合アシレートを製膜して用いる光学フィルムが提案されている(特許文献5)。これらの脂肪酸セルロースはセルロースアセテートのレターデーション発現性を拡大する可能性を有する優れた素材であるが、脂肪酸セルロースのフィルムでは一枚で位相差フィルムの機能を併せ持つ偏光板の保護フィルムとして十分な波長分散の逆分散は得られなかった。
(1)下記一般式(I)で表されるセルロース化合物を含有することを特徴とするセルロースフィルム。
(数式I)
DS16 long<DS13 long+DS12 long
(数式II)
2.5≧DS13 long+DS12 long+DS16 long>0.01
ここで、DS16 long、DS13 longおよびDS12 longはそれぞれ、6位、3位および2位に−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12として置換されている3n1個の置換基のなかで最も長波に吸収をもつ置換基の、6位、3位および2位における置換度を表す。なお、ここで言う最も長波に吸収をもつ置換基とは−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12をCH3−X16−R16、CH3−X13−R13およびCH3−X12−R12とした場合の溶液中での270〜450nmにおける吸収極大波長が最も長波にあり、かつ、そのモル吸光係数が2000〜1000000である置換基を表す。]
(3)3n1個の置換基のなかで2番目に長波に吸収をもつ置換基の置換度が下記関係式(数式III)を満たすことを特徴とする前記(1)又は(2)に記載のセルロースフィルム。
(数式III)
DS16 long2≧DS13 long2+DS12 long2
ここで、DS16 long2、DS13 long2およびDS12 long2はそれぞれ6位、3位および2位に−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12として置換されている3n1個の置換基のなかで2番目に長波に吸収をもつ置換基の、6位、3位および2位における置換度を表す。
(4)3n1個の置換基のなかで2番目に長波に吸収をもつ置換基が芳香族基を含む基であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載のセルロースフィルム。
(5)−X16−、−X13−および−X12−が*1−OOC−(*1はセルロース骨格の六員環側の結合を表す。)であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載のセルロースフィルム。
(7)−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12で表される3n個の置換基のうち少なくとも1個は−OOC−CH3であることを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれか1項に記載のセルロースフィルム。
(8)前記(1)〜(7)のいずれか1項に記載のセルロースフィルムを、少なくとも1方向に0.1%〜500%延伸したことを特徴とするセルロースフィルム。
(9)550nmにおける面内レターデーションの絶対値(Re(550))と、特定波長における面内レターデーションの絶対値(Re(λ))との比について下記数式(IV)および(V)を満足することを特徴とする前記(8)に記載のセルロースフィルム。
数式(IV)
0.5<Re(450nm)/Re(550nm)<1.0
数式(V)
1.05<Re(630nm)/Re(550nm)<1.5
(11)偏光膜と該偏光膜を挟持する2枚の保護フィルムとからなる偏光板であって、2枚の保護フィルムの少なくとも一方が、前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のセルロースフィルムまたは前記(10)に記載の位相差フィルムであることを特徴とする偏光板。
(12)前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のセルロースフィルムまたは前記(10)記載の位相差フィルム上に、液晶性化合物を配向させて形成した光学異方性層を有することを特徴とする光学補償フィルム。
(13)前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のセルロースフィルムまたは前記(10)に記載の位相差フィルム上に、反射防止層を有することを特徴とする反射防止フィルム。
(14)前記(1)〜(9)のいずれか1項に記載のセルロースフィルム、前記(10)記載の位相差フィルム、前記(11)に記載の偏光板、前記(12)に記載の光学補償フィルムおよび前記(13)に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする画像表示装置。
(15)下記一般式(I)で表わされるセルロース化合物。
(数式I)
DS16 long<DS13 long+DS12 long
(数式II)
2.5≧DS13 long+DS12 long+DS16 long>0.01
ここで、DS16 long、DS13 longおよびDS12 longはそれぞれ、6位、3位および2位に−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12として置換されている3n1個の置換基のなかで最も長波に吸収をもつ置換基の、6位、3位および2位における置換度を表す。なお、ここで言う最も長波に吸収をもつ置換基とは−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12をCH3−X16−R16、CH3−X13−R13およびCH3−X12−R12とした場合の溶液中での270〜450nmにおける吸収極大波長が最も長波にあり、かつ、そのモル吸光係数が2000〜1000000である置換基を表す。]
(16)前記一般式(I)においてR16、R13およびR12で示される3n1個の基のうち少なくとも1個が水素原子であることを特徴とする前記(15)記載のセルロース化合物。
本発明において、セルロース化合物とは、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物をいう。
また上記の芳香族基を含む基の、芳香族基とは1価の基に制限されず、さらに芳香族基上の原子又は基が除去されて2価以上の基の形態をとるものでもよい。
さらに−X16−、−X13−および−X13−とR16、R13およびR12の組み合わせとしては、芳香族基を含む置換基の場合、−X16−、−X13−および−X13−として−O−および−OOC−、R16、R13およびR12として芳香族炭化水素基および芳香族ヘテロ環基を含む基が好ましく,より好ましくは−O−および−OOC−と芳香族炭化水素基を含む基であり、さらに好ましくは−O−および−OOC−とフェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基を含む基であり、最も好ましくは、−OOC−とフェニル基、ナフチル基、ビフェニル基を含む基が好ましく、より好ましくは、芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基の組み合わせが特に好ましい。
なお、−X16−R16、−X13−R13および−X13−R12はそれぞれ同じでも異なっていても良い。
(数式I)
DS16 long<DS13 long+DS12 long
(数式II)
2.5≧DS13 long+DS12 long+DS16 long>0.01
吸収極大波長が210nmより短い場合は、レターデーションの発現性が十分ではないおそれがある。また、吸収極大波長が420nmより長い場合は、フィルムの着色が発生しやすく、光学フィルムとしての性能が低下するおそれがある。
本発明において、最も長波にある置換基から誘導されるCH3−X16−R16、CH3−X13−R13およびCH3−X12−R12なる化合物の吸収極大波長でのモル吸光係数の範囲は、2000〜1000000である。モル吸光係数の単位は[L/(mol・cm)]である。好ましくは3000〜700000、更に好ましくは5000〜500000であり、最も好ましくは7000〜100000である。本発明の効果を得る上で、モル吸光係数は大きい方が好ましいが、可視域(波長430〜700nmの領域)でのモル吸光係数の最大値を2000以下とすることで、フィルムの着色がほとんど検知できない良好な光学フィルムを得ることができる。
下記(数式VI)の規定する、(DS13 long+DS12 long)/DS16 longの値の範囲で、特にReの波長分散の傾きが十分に大きくなるという有利な効果を奏する。
(数式VI)
1.05<(DS13 long+DS12 long)/DS16 long
(数式VI−I)
1.1<(DS13 long+DS12 long)/DS16 long
(数式VI−II)
1.15<(DS13 long+DS12 long)/DS16 long
(数式III)
DS16 long2≧DS13 long2+DS12 long2
ここで、DS16 long2、DS13 long2およびDS12 long2はそれぞれ6位、3位および2位に−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12として置換されている3n1個の置換基のなかで2番目長波に吸収をもつ置換基の、6位、3位および2位における置換度を表す。DS16 long2、DS13 long2およびDS12 long2は好ましくは(数式VII)を満たし、より好ましくは(数式VII−I)を満たし,最も好ましくは(数式VII−II)を満たす。
(数式VII)
1<DS16 long2/(DS13 long2+DS12 long2)≦50
(数式VII−I)
1<DS16 long2/(DS13 long2+DS12 long2)≦30
(数式VII−II)
1<DS16 long2/(DS13 long2+DS12 long2)≦10
(本発明のセルロース化合物において、この最も長波に吸収をもつ置換基(以下、最長波置換基ということがある)の置換度は上記の範囲が好ましいが、これは前記の一般式(I)で表されるセルロース化合物の、構成単位1個当りの平均値に相当する。このことは2番目に長波に吸収をもつ置換基の置換度の場合も同様である。)
本発明において、−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12として置換されている置換基が、芳香族基を含まない置換基である例としては、好ましくは、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、オクタノイルオキシ、シクロヘキサンカルボニルオキシ、メトキシ、エトキシ、ヒドロキシエトキシ、ヒドロキシプロポキシ、カルボキシメトキシ、フタリルオキシ、メチルカルバモイルオキシ、エチルカルバモイルオキシなどを挙げることができる。
さらに本発明において全置換度とは、2位、3位及び6位の水酸基を置換しているすべての置換基の置換度(前記の一般式(I)で表されるセルロース化合物全体の置換度を意味し、具体的には、該セルロース化合物について、構成単位1個当りの平均値に相当する)を表し、本発明のセルロース化合物は、全置換度が1.0〜2.99であることが好ましく、1.5〜2.99であることがより好ましく、1.7〜2.95であることが特に好ましい。
表1
「セルロースの事典」131−144ページ、セルロース学会編、2000年
「Comprehensive Cellulose Chemistry,Volume 2」、Wiley-Vch、2001年
1段階合成法は、セルロースからエステル化を実施することにより合成するもので、エステル化剤(酸無水物あるいは酸ハライドなど)として2種類以上の混合物または、2種類のカルボキシル基で構成される混合酸無水物を用いて反応させればよい。
多段階合成法は、セルロースをエステル化して合成中間体を一旦合成し、それを次工程の出発物質として別のエステル化剤でエステル化して目的のセルロース化合物を製造する方法である。
ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース、ブチリルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの安価な化合物をエステル化して本発明の化合物を合成する場合などに、特に有用である。工業的なセルロース化合物の製造法においては、エステル化、加水分解、解重合などを、中間体を取り出すことなく逐次的に行って製造する場合もあるが、このような合成法も多段階合成法の範疇と考えることができる。
本発明のセルロース化合物の製造は多段階合成法を採用するのが好ましく、最長波に吸収をもつ置換基によるエステル化を後段の反応し、その前段として上記置換基よりも短波長側に吸収をもつ置換基によりエステル化を導入するのが好ましい。又は、このようなより短波長側に吸収をもつ置換基をもつセルロース化合物を選択して長波に吸収をもつ置換基によるエステル化を行うことができる。
本発明のセルロース化合物の原料となるセルロースとしては、綿花リンタ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などの天然セルロースはもとより、微結晶セルロースなど木材パルプを酸加水分解して得られる重合度の低い(重合度100〜300)セルロースでも使用することができ、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)および「セルロースの事典(523頁)」(セルロース学会編、朝倉書店、2000年発行)に記載のセルロースを用いることができ特に限定されるものではない。
平均重合度を500以下とすることにより、セルロース化合物のドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム製造が容易になる傾向にある。また、重合度を140以上とすることにより、作製したフィルムの強度がより向上する傾向にあり好ましい。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫著、「繊維学会誌」、第18巻、第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。具体的には、特開平9−95538号公報に記載の方法に従って測定することができる。
また、本発明のセルロース化合物の分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価され、その多分散性指数Mw/Mnの値としては、1.5〜4.0であることが好ましく、1.5〜3.5であることがより好ましく、2.0〜3.5であることがさらに好ましい。
本発明のセルロースフィルムを溶融製膜法により製造する場合の好ましい形態について説明する。
本発明においては、高温溶融製膜時のセルロース化合物の安定性を保つために、安定剤を添加することが有効である。特に、分子量500以上であるフェノール系安定剤の少なくとも一種、および分子量500以上である亜リン酸エステル系安定剤またはチオエーテル系安定剤から選ばれる少なくとも一種を添加することが好ましい。好ましいフェノール系安定剤は、公知の任意のフェノール系安定剤を使用することができる。好ましいフェノール系安定剤としては、ヒンダードフェノール系安定剤が挙げられる。特に、フェノール性水酸基に隣接する部位に置換基を有することが好ましく、その場合の置換基としては炭素数1〜22の置換または無置換のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピオニル基、イソプロピオニル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、t−ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルへキシル基がより好ましい。また、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する安定剤も好ましい素材として挙げられる。
溶融セルロースアシレートに可塑剤を添加すれば、セルロースアシレートの結晶融解温度(Tm)を下げることができる。本発明に用いる可塑剤の分子量は特に限定されないが、好ましくは高分子量の可塑剤が挙げられ、例えば分子量は500以上が好ましく、より好ましくは550以上であり、さらには600以上が好ましい。可塑剤の種類としては、リン酸エステル類、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、カルボン酸エステル類、多価アルコールの脂肪酸エステル類などが挙げられる。それらの可塑剤の形状としては固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。溶融製膜を行なう場合は、不揮発性を有するものを特に好ましく使用することができる。
溶融製膜に用いるセルロース組成物には、紫外線防止剤を添加してもよい。紫外線防止剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載がある。その添加量は、調製する溶融物(メルト)の0.01〜2質量%であることが好ましく、0.01〜1.5質量%であることがさらに好ましい。
本発明においては、溶融製膜に用いるセルロースアシレート組成物に微粒子を添加することも好ましく行われる。
本発明において微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられるが、いずれか一方でも、両方を含んでいてもよい。本発明におけるセルロース化合物に含まれる微粒子の平均一次粒子サイズは、好ましくは5nm〜3μmであり、より好ましくは5nm〜2.5μmであり、特に好ましくは20nm〜2.0μmである。微粒子の添加量は、セルロースアシレートに対して0.005〜1.0質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%であり、さらには0.02〜0.4質量%が特に好ましい。本発明において「平均一次粒子サイズ」とは、分散状態(非凝集状態)にある微粒子の粒子サイズをいい、平均一次粒子サイズは、動的光散乱法(数nm〜1μm)、レーザー回折(0.1μm〜数千μm)、Mie理論に基づくレーザー回折・散乱法(数十nm〜1μm)などの既知の方法により測定することができる。
微粒子は製膜のいずれの工程でセルロース化合物に混合してもよく、セルロースアシレートを製造する工程のうち、再沈殿の前までのいずれかの工程において微粒子を添加し、微粒子を含有する状態で再沈殿させることもまた好ましい。
溶融製膜に用いるセルロース組成物は、フッ素原子を有する化合物を含むことも好ましい。前記フッ素原子を有する化合物は、離型剤としての作用を発現でき、低分子量化合物であっても重合体であってもよい。重合体としては、特開2001−269564号公報に記載の重合体を挙げることができる。前記フッ素原子を有する重合体として好ましいものは、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含有してなる単量体を重合せしめた重合体である。前記重合体に係わるフッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体としては、分子中にエチレン性不飽和基とフッ素化アルキル基とを有する化合物であれば特に制限はない。またフッ素原子を有する界面活性剤も利用でき、特に非イオン性界面活性剤が好ましい。
上記セルロース化合物と添加物は溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。
ペレット化は上記セルロース化合物と添加物を2軸あるいは1軸混練押出機を用い150℃〜250℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作製することができる。水中に直接押出ながらカットするアンダーウオーターカット法でペレット化を行ってよい。混練押し出し機はベント式のものを用い減圧しながらペレットするのがより好ましい。さらに混練押し出し機中を窒素置換しながらペレット化するのもより好ましい。
好ましいペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さが1mm〜30mmであり、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは30rpm〜500rpm以下である。ペレット化における押出滞留時間は10秒〜30分、好ましくは30秒〜3分である。
以下に、溶融製膜の具体的な方法について説明する。
(1)乾燥
溶融製膜に先立ちペレット中の水分を乾燥することが好ましい。好ましい含水率は0.1質量%以下、より好ましくは0.01質量%以下である。
乾燥したセルロース樹脂を押出機の供給口からシリンダー内に供給する。
押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5が好ましく、より好ましくは3.0〜4.0である。L(スクリュー長)/D(スクリュー径)は20〜70が好ましい。より好ましくは24〜50である。溶融温度は上述の温度で行うことが好ましい。
樹脂の酸化防止のために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのがより好ましい。
押し出し機出口にて、ブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。
高精度濾過のために、ギアポンプ通過後にリーフ型ディスクフィルター型を濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、単段で行っても、多段で行ってもよい。
厚み精度向上(吐出量の変動減少)のために、押出機とダイスの間にギアポンプを設置するのが好ましい。また、押出機とギアポンプ、ギアポンプとダイ等をつなぐアダプタの温度変動を小さくすることが押出圧力安定のために好ましい。
ダイ内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイのいずれのタイプでも構わない。また、Tダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れることも好ましい。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分〜60分であり、より好ましくは4分〜30分である。
ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、タッチロールを用いることも好ましい。
キャスティングドラムは好ましくは1〜8本、より好ましくは2〜5本用い、徐冷することが好ましい。この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。このようにして得た未延伸フィルムの厚みは30μm〜400μmが好ましく、より好ましくは50μm〜200μmである。
巻き取り前に両端をトリミングすることが好ましい。トリミングされた部分はフィルム用原料として再利用してもよい。巻き取り張力は、一定の巻き取り張力で巻き取ってもよいが、巻取り径に応じてテーパーをつけ巻取ることがより好ましい。またニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることも行ってよい。
巻き取り前に、少なくとも片面にラミネートフィルムを付けてもよい。
残留溶媒の量は、ガスクロマトグラフィー法などにより測定することができる。
<溶液製膜>
次に、本発明のセルロース化合物を溶液製膜法により製造する場合の好ましい形態について説明する。
本発明においては、セルロース化合物が溶解し流延,製膜できて、その目的が達成できる限りは、セルロース化合物の溶媒は特に限定されない。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレンなどの塩素系有機溶剤、ならびに非塩素系有機溶媒を挙げることができる。
本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例としては、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ペンチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
次に、本発明のセルロース化合物の製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法および設備は、従来セルロースアシレートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロース化合物溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギアポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離,延伸などに分類される。
(延伸)
以上のようにして、溶融製膜法あるいは溶液製膜法によって製造した本発明のセルロースフィルムは、面状の改良、Re,Rthの発現、線膨張率の改善などを目的として、延伸することが好ましい。
延伸は製膜工程中、オン−ラインで実施してもよく、製膜完了後、一度巻き取った後オフ−ラインで実施してもよい。すなわち、溶融製膜の場合、延伸は製膜中の冷却が完了しない実施してもよく、冷却終了後に実施してもよい。
延伸はTg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、特に好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は0.1%〜500%、さらに好ましくは10%〜300%、特に好ましくは30%〜200%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
縦延伸、横延伸の延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、特に好ましくは30%/分〜800%/分である。多段延伸の場合、各段の延伸速度の平均値を指す。
このようにして延伸した後の膜厚は10〜300μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、30μm〜100μmが特に好ましい。
本発明における各レターデーションについて説明する。本明細書において、Re、Rth(単位;nm)は次の方法にしたがって求めたものである。まず、フィルムを25℃、相対湿度60%にて24時間調湿後、プリズムカップラー(MODEL2010 Prism Coupler:Metricon製)を用い、25℃、相対湿度60%において、532nmの固体レーザーを用いて下記式(a)で表される平均屈折率(n)を求める。
式(a): n=(nTE×2+nTM)/3
[式中、nTEはフィルム平面方向の偏光で測定した屈折率であり、nTMはフィルム面法線方向の偏光で測定した屈折率である。]
測定されるフィルムが一軸または二軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される。)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRにおいて算出される。
上記において、λに関する記載が特になく、Re、Rthとのみ記載されている場合は、波長590nmの光を用いて測定した値のことを表す。また、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRにおいて算出される。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率及び入力された膜厚値を基に、以下の式(b)及び式(c)よりRthを算出することもできる。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRにおいて算出される。
数式(IV)
0.5<Re(450nm)/Re(550nm)<1.0
数式(V)
1.05<Re(630nm)/Re(550nm)<1.5
このような光学特性の波長分散性を発現させるために、配向方向(以下、TD方向と示す)とそれに直交する方向(以下、MD方向と示す)における吸収波長と遷移モーメントの方向を上手く配置することが好ましい。
数式(VIII):0nm≦Re(590)≦200nm
数式(IX):0nm≦Rth(590)≦400nm
(式中、Re(590)、Rth(590)は、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である。)
さらに好ましくは、
数式(VIII−I):30nm≦Re(590)≦150nm
数式(IX−I):30nm≦Rth(590)≦300nm
2枚型の場合、Re(590)は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth(590)については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Re(590)は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth(590)については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
本発明のセルロースフィルムは、例えば、ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)社製)を用いて測定した値が0.1以上0.8以下であることが好ましく、0.1以上0.7以下であることがより好ましく、0.1以上0.60以下であることが特に好ましい。前記範囲にヘイズを制御することにより、光学補償フィルムとして液晶表示装置に組み込んだ際に高コントラストの画像が得られる。
本発明のセルロースフィルムは、偏光板保護フィルム、または位相差板として使用されることが好ましい。偏光板保護フィルム、または位相差板として使用した場合には、吸湿による伸張、収縮による応力により複屈折(Re,Rth)が変化する場合がある。このような応力に伴う複屈折の変化は光弾性係数として測定できるが、その範囲は、5×10-7(cm2/kgf)〜30×10-7(cm2/kgf)が好ましく、6×10-7(cm2/kgf)〜25×10-7(cm2/kgf)がより好ましく、7×10-7(cm2/kgf)〜20×10-7(cm2/kgf)であることが特に好ましい。
未延伸、または、延伸後のセルロースフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、さらにまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類およびそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースフィルムの表面処理としては極めて有効である。
これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもでき、後述の機能層付与工程の中で実施することもできる。
本発明のセルロースフィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板の形成)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
(偏光膜の素材)
現在、市販の偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素または二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素または二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。偏光膜は、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。
偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素またはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例えば、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
バインダー厚みの下限は、10μmであることが好ましい。厚みの上限は、液晶表示装置の光漏れの観点からは、薄ければ薄い程よい。現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
偏光膜は、偏光膜を延伸するか(延伸法)、もしくはラビングした(ラビング法)後に、ヨウ素、二色性染料で染色することが好ましい。
延伸法の場合、延伸倍率は2.5〜30.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がより好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸により実施することができる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸により実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、2.5〜5.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましい。ここでいう延伸倍率は(延伸後の偏光膜の長さ/延伸前の偏光膜の長さ)を表す。延伸はMD方向に平行に行ってもよく(平行延伸)、斜め方向に行ってもよい(斜め延伸)。これらの延伸は、1回で行っても、数回に分けて行ってもよい。数回に分けることによって、高倍率延伸でもより均一に延伸することができる。より好ましいのが斜め方向に10度から80度の傾きを付けて延伸する斜め延伸である。
延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させる。膨潤度は通常1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、通常15〜50℃、好ましくは17〜40℃の浴温で延伸する。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくして行うことができる。前記作用効果の点より好ましい延伸倍率(延伸後/初期状態の長さ比:以下同じ)は1.2〜3.5倍、より好ましくは1.5〜3.0倍である。この後、50℃〜90℃において乾燥させて偏光膜を得る。
斜め延伸法は、特開2002−86554号公報に記載されているように、傾斜め方向に張り出したテンターを用いて延伸することにより実施することができる。この延伸は空気中で行うため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%、より好ましくは10%〜100%である。
延伸時の温度は40℃〜90℃が好ましく、より好ましくは50℃〜80℃である。相対湿度は50%〜100%が好ましく、より好ましくは70%〜100%、特に好ましくは80%〜100%である。長手方向の進行速度は、1m/分以上が好ましく、より好ましくは3m/分以上である。
このようにして得られる偏光膜の吸収軸は10°〜80°が好ましく、より好ましくは30°〜60°であり、特に好ましくは実質的に45°(40°〜50°)である。
上記鹸化後のセルロースフィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を調製する。張り合わせる方向は、セルロースフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が45°になるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、セルロースフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
上記表面処理したセルロースフィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板を作製することも可能である。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、または液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
前記ラビング処理は、液晶表示装置を製造する際に行う液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムまたはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、または架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されている
トルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
上記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、または配向を阻害しないことが好ましい。
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがより好ましく、1〜10μmであることが特に好ましい。
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100〜800mJ/cm2の範囲にあることが特に好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。
保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
この光学補償フィルムと偏光膜を組み合わせることも好ましい。具体的には、上記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフィルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作製される。本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
反射防止フィルムは、一般に、防汚性層でもある低屈折率層、および低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明支持体上に設けてなる。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜の形成方法として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法等が挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは上記いずれの方式で製造する反射防止フィルムにも適用できるが、塗布による方式(塗布型)で製造する反射防止フィルムに適用することが特に好ましい。
透明支持体上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)を順に形成した層構成からなる反射防止フィルムは、屈折率が以下の関係を満足するように設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間には、ハードコート層を設けてもよい。さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなるものであってもよい。例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載されているものが挙げられる。
反射防止フィルムのヘイズは、5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが特に好ましい。
反射防止フィルムの高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上の無機化合物が挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載される硬化性膜を挙げることができる。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなる層である。低屈折率層の屈折率は一般に1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
低屈折率層は、耐擦傷性や防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させるためには表面に滑り性を付与することが有効であり、具体的には従来公知のシリコーン化合物や含フッ素化合物を導入した薄膜層の形成法を適用することができる。
シリコーン化合物はポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基または重合性官能基を有し、膜中で橋かけ構造を形成しているものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例えば、サイラプレーン(チッソ(株)社製、(以上、商品名)等)、両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基を有するシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応させて硬化したゾルゲル硬化膜も好ましい。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成してもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがより好ましく、60〜120nmであることが特に好ましい。
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設けることができる。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成することが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基を有する有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物であることが好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したものと同様のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層の説明で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることが特に好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。上記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
上記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号明細書)により、塗布により形成することができる。
反射防止フィルムは、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止フィルムの表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止フィルムがアンチグレア機能を有する場合、反射防止フィルムのヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがより好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
本発明のセルロースフィルム、該セルロースフィルムを用いた偏光板、位相差フィルムおよび光学フィルムは、それぞれ液晶表示装置に好ましく組み込むことができる。液晶表示装置としては、TN型、IPS型、FLC型、AFLC型、OCB型、STN型、ECB型、VA型およびHAN型の表示装置が挙げられる。また、本発明のセルロースフィルムは、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても好ましく用いることができる。以下に各液晶モードについて説明する。
本発明のセルロースフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.36(1997)p.1068)の記載に従って作製することができる。
本発明のセルロースフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報の記載に従って作製することができる。
本発明のセルロースフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのRe値を0〜150nmとし、Rth値を70〜400nmとすることが好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は70〜250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRth値は150〜400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であってもよい。
本発明のセルロースフィルムは、IPSモードまたはECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置またはECB型液晶表示装置の光学補償シート、または偏光板の保護膜としても好適に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板は色味の改善、視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、液晶セルの上下の前記偏光板の保護膜のうち、液晶セルと偏光板との間に配置された保護膜(セル側の保護膜)に本発明のセルロースフィルムを用いた偏光板を少なくとも片側一方に用いることが好ましい。更に好ましくは、偏光板の保護膜と液晶セルの間に光学異方性層を配置し、配置された光学異方性層のレターデーション値を、液晶層のΔn・dの値の2倍以下に設定するのが好ましい。
本発明のセルロースフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーション値の絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報の記載に従って作製することができる。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.,Vol.38(1999)p.2837)の記載に従って作製することができる。
本発明のセルロースフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号公報、国際公開WO98/48320号パンフレット、特許第3022477号公報の記載に従って作製することができる。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、国際公開WO00/65384号の記載に従って作製することができる。
本発明のセルロースフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089(1998))の記載に従って作製することができる。
カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4,583,825号、同5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensated Bend)液晶モードとも呼ばれる。
セルロースアセテートを出発原料として、6位優先的に反応する条件で酸クロリドと反応させ、その後、2,3位にも反応できる条件で、最初の反応で用いた酸クロリドとは異なる酸クロリドを反応させ、表2に示す本発明のセルロース化合物をそれぞれ得た。以下、各セルロース化合物の製造について詳しく説明する。
なお、実施例に用いた化合物について、−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12をCH3−X16−R16、CH3−X13−R13およびCH3−X12−R12とした場合の溶液中での270〜450nmで最も長波な吸収極大でのモル吸光係数は、A−1〜A−3:24000(ジクロロメタン)、A−17:11400(ジクロロメタン)である。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコに置換度2.15のセルロースアセテート200g、ピリジン90ml、アセトン2000mlを量り取り、室温で攪拌した。ここに240gの4−フェニルベンゾイルクロリド(東京化成)をゆっくりと粉体滴下し、添加後さらに50℃にて8時間攪拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール20Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的の中間体化合物(比較化合物)B−1を白色粉体として235g得た。平均重合度は255であった。このセルロース化合物のDS16 long、DS13 long+DS12 longは、下記表2に示したとおりであり、(数式I)及び(数式II)を満足しない。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコに4−メトキシ桂皮酸(東京化成株式会社)200g、トルエン300mlを量り取り、室温で攪拌した。ここに560gの塩化チオニル(和光純薬株式会社)、ジメチルホルムアミド10mlをゆっくりと滴下し、添加後さらに80℃にて1時間攪拌した。反応後、トルエンと未反応の塩化チオニルを減圧留去し、残留物にヘキサン500mlを激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のヘキサンで3回洗浄を行った。得られた白色固体を乾燥することで、目的の4−メトキシシンナモイルクロリドを白色粉体として194g得た。
メカニカルスターラー、温度計、冷却管、滴下ロートをつけた3Lの三ツ口フラスコに先の反応で得られた中間体化合物B−1を40g、ピリジン400ml、アセトン100mlを量り取り、室温で攪拌した。ここに先の反応で得られた4−メトキシシンナモイルクロリド100gをゆっくりと粉体滴下し、添加後さらに50℃にて8時間攪拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液をメタノール10Lへ激しく攪拌しながら投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引ろ過によりろ別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的の例示化合物A−1を白色粉体として50g得た。平均重合度は255であった。このセルロース化合物のDS16 long、DS13 long+DS12 longは前記表1に示したとおりであり(数式I)及び(数式II)を満足する。
先の例示化合物A−1の製造において、100gの4−メトキシシンナモイルクロリドを42gに変更する以外は同様にして、目的の例示化合物A−2を白色粉体として46g得た。平均重合度は254であった。このセルロース化合物のDS16 long、DS13 long+DS12 longは前記表1に示したとおりであり(数式I)及び(数式II)を満足する。
先の例示化合物A−1の製造において、100gの4−メトキシシンナモイルクロリドを21gに変更する以外は同様にして、目的の例示化合物A−3を白色粉体として41g得た。平均重合度は252であった。このセルロース化合物のDS16 long、DS13 long+DS12 longは前記表1に示したとおりであり(数式I)及び(数式II)を満足する。
先の例示化合物B−1の製造において、200gのジアセチルセルロースを250g、90mlのピリジンを114ml、2000mlのアセトンを3000ml、240gの4−フェニルベンゾイルクロリドの粉体滴下を160mlのベンゾイルクロリド(和光純薬)の滴下に変更する以外は同様にして、目的の中間体化合物(比較化合物)B−2を白色粉体として210g得た。平均重合度は254であった。このセルロース化合物のDS16 long、DS13 long+DS12 longは、下記表2に示したとおりであり、(数式I)及び(数式II)を満足しない。
先の例示化合物B−1の製造において、ピリジン90mlを68ml、240gの4−フェニルベンゾイルクロリドを4−メトキシシンナモイルクロリド180gに変更する以外は同様にして、目的の中間体化合物(比較化合物)B−3を白色粉体として220g得た。平均重合度は255であった。このセルロース化合物のDS16 long、DS13 long+DS12 longは、下記表2に示したとおりであり、(数式I)及び(数式II)を満足しない。
先の例示化合物A−1の製造において、中間体化合物B−1をB−3、4−メトキシシンナモイルクロリドを4−フェニルベンゾイルクロリドに変更する以外は同様にして、目的の中間体化合物(比較化合物)B−4を白色粉体として48g得た。平均重合度は255であった。このセルロース化合物のDS16 long、DS13 long+DS12 longは、下記表3に示したとおりであり、(数式I)及び(数式II)を満足しない。
先の例示化合物A−1を製造において、中間体化合物B−1をB−2に、100gの4−メトキシシンナモイルクロリドを2,4,6−トリメトキシベンゾイルクロリド(アサロン酸クロリド)20.5gに変更する以外は同様にして、目的の例示化合物A−17を白色粉体として50g得た。平均重合度は257であった。このセルロース化合物のDS16 long、DS13 long+DS12 longは前記表1に示したとおりであり(数式I)及び(数式II)を満足する。
なお、表2及び表3において、DS16 aroma、DS13 aromaおよびDS12 aromaは比較化合物としてのセルロース化合物の6位、3位および2位にそれぞれ置換されている芳香族基を含む置換基の置換度を表し、DSnon-aromaは芳香族基を含まない置換基の置換度を表す。
<セルロース化合物溶液の調製>
下記の原料をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、溶解し、セルロース化合物溶液を有する溶液を調製した。
置換度2.86のセルロースアセテート 100質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402質量部
メタノール(第2溶媒) 60質量部
セルロース化合物溶液組成の溶液562質量部を、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が15質量%のフィルムを、160℃の条件で、テンターを用いて15%の延伸倍率で横延伸して、フィルム試料009(比較例、厚さ:80μm)を作製した。以下、特に断りがなければ、作製したフィルムの厚さはすべて80μmである。次に、同様にして、本発明のフィルム試料001〜004、及び比較用フィルム試料005〜008を作製した。
表4の結果から分かるように、従来のセルロースアシレートおよび比較例から得たフィルム試料が面内方向のレターデーションの波長分散が
数式(IV)
0.5<Re(450nm)/Re(550nm)<1.0
および
数式(V)
1.05<Re(630nm)/Re(550nm)<1.5
のいずれかを満たさないのに対して、本発明のセルロース化合物A−1、A−2、A−3又はA−4から得たフィルム試料は数式(IV)および数式(V)を満たす面内方向のレターデーションの波長分散が逆分散性を発現するという、従来のものとは異なる性質を有することがわかる。
実施例2の試料001〜009を用いて、特開平11−316378号公報の実施例1に記載の方法により、楕円偏光板試料001〜009を作製して評価した。本発明のセルロースフィルムにより得られた楕円偏光板の光学特性は優れたものであった。
実施例2の試料001〜009を用いて、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置を作製し、評価した。本発明のセルロースフィルムを用いて得られた装置では、いずれの場合においても良好な性能が得られた。
Claims (13)
- 下記一般式(I)で表されるセルロース化合物を含有することを特徴とするセルロースフィルム。
(数式I)
DS16 long<DS13 long+DS12 long
(数式II)
2.5≧DS13 long+DS12 long+DS16 long>0.01
(数式III)
DS 16 long2 ≧DS 13 long2 +DS 12 long2
ここで、DS16 long、DS13 longおよびDS12 longはそれぞれ、6位、3位および2位に−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12として置換されている3n1個の置換基のなかで最も長波に吸収をもつ置換基の、6位、3位および2位における置換度を表し、DS 16 long2 、DS 13 long2 およびDS 12 long2 はそれぞれ6位、3位および2位に−X 16 −R 16 、−X 13 −R 13 および−X 12 −R 12 として置換されている3n 1 個の置換基のなかで2番目に長波に吸収をもつ置換基の、6位、3位および2位における置換度を表す。
なお、ここで言う最も長波に吸収をもつ置換基とは−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12をCH3−X16−R16、CH3−X13−R13およびCH3−X12−R12とした場合の溶液中での270〜450nmにおける吸収極大波長が最も長波にあり、かつ、そのモル吸光係数が2000〜1000000である置換基を表す。
また、3n 1 個の置換基のなかで最も長波に吸収をもつ置換基および2番目に長波に吸収をもつ置換基は芳香族基を含む基である。] - −X16−、−X13−および−X12−が*1−OOC−(*1はセルロース骨格の六員環側の結合を表す。)であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースフィルム。
- R16、R13およびR12で表される3n 1 個の基のうち少なくとも1個は脂肪族のみからなる基であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースフィルム。
- −X16−R16、−X13−R13および−X12−R12で表される3n 1 個の置換基のうち少なくとも1個は−OOC−CH3であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースフィルム。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースフィルムを、少なくとも1方向に0.1%〜500%延伸したことを特徴とするセルロースフィルム。
- 550nmにおける面内レターデーションの絶対値(Re(550))と、450nm又は630nmにおける面内レターデーションの絶対値(Re(450nm)又はRe(630nm))との比について下記数式(IV)および(V)を満足することを特徴とする請求項5に記載のセルロースフィルム。
数式(IV)
0.5<Re(450nm)/Re(550nm)<1.0
数式(V)
1.05<Re(630nm)/Re(550nm)<1.5 - 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースフィルムを用いたことを特徴とする位相差フィルム。
- 偏光膜と該偏光膜を挟持する2枚の保護フィルムとからなる偏光板であって、2枚の保護フィルムの少なくとも一方が、請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースフィルムまたは請求項7に記載の位相差フィルムであることを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースフィルムまたは請求項7記載の位相差フィルム上に、液晶性化合物を配向させて形成した光学異方性層を有することを特徴とする光学補償フィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースフィルムまたは請求項7記載の位相差フィルム上に、反射防止層を有することを特徴とする反射防止フィルム。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースフィルム、請求項7記載の位相差フィルム、請求項8に記載の偏光板、請求項9に記載の光学補償フィルムおよび請求項10に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることを特徴とする画像表示装置。
- 下記一般式(I)で表わされるセルロース化合物。
(数式I)
DS16 long<DS13 long+DS12 long
(数式II)
2.5≧DS13 long+DS12 long+DS16 long>0.01
(数式III)
DS 16 long2 ≧DS 13 long2 +DS 12 long2
ここで、DS16 long、DS13 longおよびDS12 longはそれぞれ、6位、3位および2位に−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12として置換されている3n1個の置換基のなかで最も長波に吸収をもつ置換基の、6位、3位および2位における置換度を表し、DS 16 long2 、DS 13 long2 およびDS 12 long2 はそれぞれ6位、3位および2位に−X 16 −R 16 、−X 13 −R 13 および−X 12 −R 12 として置換されている3n 1 個の置換基のなかで2番目に長波に吸収をもつ置換基の、6位、3位および2位における置換度を表す。
なお、ここで言う最も長波に吸収をもつ置換基とは−X16−R16、−X13−R13および−X12−R12をCH3−X16−R16、CH3−X13−R13およびCH3−X12−R12とした場合の溶液中での270〜450nmにおける吸収極大波長が最も長波にあり、かつ、そのモル吸光係数が2000〜1000000である置換基を表す。
また、3n 1 個の置換基のなかで最も長波に吸収をもつ置換基および2番目に長波に吸収をもつ置換基は芳香族基を含む基である。] - 前記一般式(I)においてR16、R13およびR12で示される3n1個の基のうち少なくとも1個が水素原子であることを特徴とする請求項12記載のセルロース化合物。
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