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JP4714843B2 - 識別マークが施された多層抄き合わせ紙 - Google Patents

識別マークが施された多層抄き合わせ紙 Download PDF

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Description

本発明は、視覚障害者用の識別マークが施された多層抄き合わせ紙に関するものである。
現在、銀行券、証券類等には視覚障害者が指で触って券種が判別できるように識別マークが施されている。識別マークには透き入れ、エンボス等によって用紙に凹凸を施すものや、用紙に凹版印刷でインキ盛り領域を形成して凹凸を施す方法がある。また、凹版印刷で識別マークを形成すると、凹凸感に加えてザラツキ感も得られ、指で触って券種が判別できるようになる。
例えば、点字、記号、模様、英数字、文字を凹凸で表現して、それらの凹凸を紙幣の面につけた、凹凸付き紙幣が開示されている(特許文献1)。
実開平7−43300号公報参照(第1−4頁、第1−5図)
また、証券印刷物の価値、種別その他の属性情報を指触識別するための属性情報識別部を備えた証券印刷物において、前記属性情報識別部の一方の面は断面凹状に形成されるとともに、他方の面は平滑であることを特徴とする証券が開示されている(特許文献2)。
特開2000−198289号公報参照(第1−頁、第1−5図)
また、紙層形成物内に触覚により識別できる三次元形状のセキュリティスレッドを完全に埋没した証券用紙が開示されている(特許文献3)。
特公平6−15760号公報参照(第1−3頁、第1−3図)
しかしながら、透き入れ、エンボス等によって用紙に凹凸を施し識別マークを形成する場合は、凹凸感は得られるが、ザラツキ感は得られない。また、凹版印刷で識別マークを形成する場合は、凹凸感に加えてザラツキ感も得られるが、用紙の表面及び裏面の何れか一方のみに形成されるものであり、両面に形成する場合よりも識別感度は劣る。仮に、用紙の表面及び裏面の同一の領域に識別マークを形成する場合は、表裏の識別マークの位置合わせにずれが生じる可能性がある。更に、凹版印刷で識別マークを形成する場合は、用紙表面に識別マークとなるインキ皮膜が形成されるため、流通段階で、摩擦によってインキが脱落し、指感性効果が持続しない問題がある。また、悪意を持った者が識別マークを削ってしまい、インキ皮膜が脱落して識別できなくなる恐れもある。一方、特公平6−15760号公報は、紙層形成物内に触覚により識別できる三次元のセキュリティスレッドを完全に埋没させる発明であるが、用紙の表面及び裏面の同一の領域に識別マークを形成する場合は、スレッドの両面に識別マークを付与しなければならず、スレッド内に識別マークを形成するため付与できる領域が限られ、識別マークのデザインの自由度が狭くなる。仮に、スレッドを幅広く形成した場合には、識別マークのデザインの自由度を拡大することができるが、紙層形成物内にスレッドを設けることに変わりはないため、スレッドから紙層が剥がれやすくなる問題が生じる。
本発明は、前述した問題点を解決することを目的としたもので、識別マークは用紙の表面及び裏面から凹凸感に加えてザラツキ感も得られ、用紙の表裏に識別マークを形成することがないため、表裏の識別マークの位置合わせを行う必要がなく、スレッドに識別マークを形成することがなく、紙層の剥離の問題がなく、紙の層間に識別マークとなる皮膜が形成され、皮膜(インキの場合は顔料等)の脱落を防止し、指感性効果が持続し、悪意を持った者に識別マークを削られることがない識別感度に優れる識別マークが施された多層抄き合わせ紙を提案するものである。
本発明は、少なくとも2層以上の層間に識別マークが施された多層抄き合わせ紙であって、前記識別マークは、指感性材料によって付与され、前記付与される識別マークは、所定の盛量を有してなり、前記識別マークが形成される領域の上層紙層の表面及び下層紙層の表面は、前記所定の盛量を有する前記識別マークによって、凹凸を有してなる識別マークが施された多層抄き合わせ紙である。
また、本発明は、抄紙網上に、先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層、識別マークが表面又は裏面に印刷された不織布及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層が、順次層状に乾燥し形成されてなる多層抄き合わせ紙であって、前記識別マークは、指感性材料によって付与され、前記付与される識別マークは、所定の盛量を有してなり、前記識別マークが形成される領域の上層紙層の表面及び下層紙層の表面は、前記所定の盛量を有する前記識別マークによって、凹凸を有してなる識別マークが施された多層抄き合わせ紙である。
また、本発明の前記識別マークは、ガラスフレークを混合した指感性材料によって形成されるが、本発明は前記識別マークが形成される領域の上層紙層の表面及び下層紙層の表面に、前記ガラスフレークによって、複数の微細な凹凸を有してなる識別マークが施された多層抄き合わせ紙である。
本発明は、紙の層間に識別マークとなる皮膜を形成することで、用紙の表裏に識別マークを形成することなく、識別マークを施す領域が層間の片面にも関わらず用紙の表面及び裏面から凹凸感に加えてザラツキ感も得られるようにするため、新たな指感性を生じさせるものである。よって、表裏の識別マークの位置合わせにずれが生じる問題が解消され、表裏のずれのない一定品質の識別マークが得られる。また、紙内部に識別マークとなる皮膜が形成されるが、識別マークは紙層で覆われているため、皮膜(印刷の場合は顔料、樹脂等)の脱落を防止でき、指感性効果が持続する。また、悪意を持った者に識別マークを削られることがない。
また、中間層に不織布層を設けることによって、紙層内に識別マークを設けるにも関わらず、紙層間剥離の防止効果が向上する。
また、識別マークは、盛量を70〜250μmにすることによって、用紙の表面及び裏面から凹凸感が得られる。また、識別マークのデザインによっては用紙の表面及び裏面から凹凸感に加えてザラツキ感も得られ、従来よりも、識別感度が向上する。更に、識別マークはガラスフレークを混合した指感性材料で形成することにより、複数の微細な凹凸を構成し、識別マークに指で触れた場合、その感触は異質感(ザラツキ感、摩擦抵抗、硬さ)を有し、新たな指感性が得られる。よって、本発明の識別マークが施された多層抄き合わせ紙は、銀行券、証券類等の基材に用いることによって、視覚障害者が指で触って券種が判別できるものである。
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は以下に述べる実施するための最良の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
(識別マークが施された多層抄き合わせ紙)
本発明は、抄紙網上に、先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層、識別マークが表面又は裏面に印刷された不織布及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層が、順次層状に乾燥し形成されてなる多層抄き合わせ紙である。
図1に先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層からなる下層紙層(1)、中間層となる不織布(2)、及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層からなる上層紙層(3)からなる識別マークが施された多層抄き合わせ紙(A1)とその断面図を示す。不織布(2)に設けられた識別マーク(4)の盛量は、所定の盛量(好ましくは70〜250μm)からなり、識別マーク(4)が形成される領域の下層紙層の表面(1)及び上層紙層の表面(3)は、所定の盛量を有する識別マーク(4)によって、識別マークを有する表紙の表面に凹凸(5)及び識別マークを有する用紙の裏面に凹凸(5’)を有する。識別マーク(4)は、指感性材料によって印刷される。指感性材料は印刷インキ、樹脂、ガラスフレークを混合した印刷インキ等、特に限定されるものではない。当然、識別マーク(4)が施された多層抄き合わせ紙(A1)には、一般的な印刷方式によって印刷模様(6)を付与することができる。印刷方式は特に限定されるものではない。
識別マーク(4)の形状は特に限定されるものではない。また、図2に示すように識別マーク(4)は、ベタ印刷(a)、複数のドット(b)、直万線画線(c)、曲万線画線(d)、同心円万線画線(e)で形成可能である。図2(b)に示すように券種によって形状、大きさ、配置位置、数量等を変えてもよい。識別マーク(4)は前記所定の盛りが形成可能なスクリーン印刷方式、凹版印刷方式等で施すことが好ましい。
識別マーク(4)を印刷する印刷インキは、特に限定するものではない。更に、識別マークは平均粒子径40〜140μmの顔料が混合された印刷インキで印刷することによって、識別マークのザラツキ感が向上する。また、識別マークは、ガラスフレークが混合された指感性材料で形成することによって、識別マークが形成される領域の上層紙層の表面及び下層紙層の表面に複数の微細な凹凸を有する。識別マークは、指で触れた場合に、微細な凹凸による異質感(ザラツキ感、摩擦抵抗、硬さ)が加わるため、その感触による識別容易性が向上するとともに新たな指感性も得られる。ガラスフレークに、平均粒子径40〜140μm、厚さ1〜5μm、モース硬度6.5のものを用いることによって、識別マークにはザラツキ感が得られる。これは図3に示すように顔料の粒子がインキ皮膜上から飛び抜けているためである。ガラスフレークの平均粒子径は、40μmより小さいと、あまりザラツキ感を得ることができない。ガラスフレークの平均粒子径は、140μmより大きいと作製困難である。
先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層は、特に限定されるものではないが、例えば、木材や木綿等の植物繊維を原料とするKP法やSP法によって得られる化学パルプ、GP、TMP、CTMP、CGP、SCP等の機械パルプ、漂白パルプ、古紙再生パルプ等のいずれかのパルプを適宜、選択して使用できる。
識別マーク(4)が印刷される不織布(2)は、レーヨンであることが好ましい。不織布の目付は、10g/m2〜30g/m2程度が好ましい。不織布(2)の幅は特に限定されることなく、下層紙層(1)と上層紙層(3)の間に短冊状に設けても良い。短冊状に設ける場合は、複数本設けることも可能である。識別マークが施された多層抄き合わせ紙は、不織布を用いることによって抄紙の際に、下層紙層、不織布及び上層紙層の繊維が互いに絡み合って結合されるため、層間剥離防止効果に優れる。
また、本発明を実施するための最良の形態の識別マークが施された多層抄き合わせ紙は、その他の偽造防止技術を施すことが可能である。例えば、識別マークが施された多層抄き合わせ紙は、有色繊維又は細片、無色蛍光繊維又は細片、有色蛍光繊維又は細片、磁性繊維又は細片、金属細片、アルミ細片、赤外吸収特性を有する繊維又は細片、赤外反射特性を有する繊維又は細片、及びサーモクロミック繊維又は細片等を少なくとも一種類を混抄することが可能である。更に、識別マークが施された多層抄き合わせ紙は、スレッド、従来のすき入れ等を施すことができる。
上記説明では識別マークが施された多層抄き合わせ紙は3層で形成しているが、本発明は特に限定されることなく、2層以上で識別マークが紙層に覆われていればよい。例えば、図4(a)は、2層で構成する識別マークが施された多層抄き合わせ紙(A2)である。この場合、識別マークは、下層の表面に付与される。下層は不織布である。図4(b)は、2層で構成する識別マークが施された多層抄き合わせ紙(A3)である。この場合、識別マークは、上層の裏面又は上層と接する下層の表面に付与される。上層と下層は接着層(8)によって接着される。この場合の下層は不織布又は乾燥した紙であってもよい。また、図4(c)は、3層の各層を接着層(8)によって接着した識別マークが施された多層抄き合わせ紙(A4)である。識別マークが施された多層抄き合わせ紙(A2、A3、A4)の識別マークは表裏でエンボス加工されたかのような形状となる。
次に、本発明を実施するための最良の形態の識別マークが施された多層抄き合わせ紙の識別マーク(4)の位置合わせの一例を示す。図5は、後述する本発明に係る多層抄き合わせ装置によって作製される帯状の多層抄き合わせ紙を長手方向で観察した場合及びそのX−X’断面を示す図である。この帯状の多層抄き合わせ紙(B)では、識別マーク(4)が印刷された不織布(2)が、下層の懸濁液状の紙層からなる下層紙層(1)と、後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層からなる上層紙層(3)との間に抄き合わされて多層で一体に形成された構成を示している。識別マーク(4)は予め不織布(2)の長手方向に、複数、一定間隔で印刷されているか、もしくは、後述する不織布供給装置から不織布を供給し、供給された不織布に印刷機器によって一定間隔で印刷する。
図5に示すように多層抄き合わせ紙(B)は、すき入れ(10)が施されている。多層抄き合わせ紙(B)は、この従来のすき入れ(10)の位置(以下、「すき入れ位置」という。)(r)に対して(を基準として)、識別マーク位置(q)(図面では識別マーク(4)の一つの角部の位置としたが、予め決めておけば中心位置等でもよい。)を、多層抄き合わせ紙(B)の長手方向に所定間隔(s)だけ離れた位置と定め、幅方向に所定間隔(t)だけ離れた位置と定め、識別マーク(4)が付与された不織布(2)が挿入され定着される。つまり、識別マーク(4)が印刷された不織布(2)は、多層抄き合わせ紙(B)の長手方向に所定間隔(s)及び、幅方向に所定間隔(t)のいずれか一方又は両方を調整して挿入され定着される。
(変形例1)
図6に示すように、多層抄き合わせ紙(B)は、十字マークで示したような、白すき入れからなるレジスターマーク又はIJP(インクジェットプリンタ)によるマーク(9)が抄造方向に一定間隔で複数箇所に付与されている。変形例1ではこのレジスターマーク又はIJPによるマーク(9)に着目している。多層抄き合わせ紙(B)は、このマーク(9)の位置(v)(十字マークの交差中心点)に対して(を基準として)、識別マーク位置(q)(図面では識別マーク(4)の一つの角部の位置としたが、予め決めておけば中心位置等でもよい。)を、多層抄き合わせ紙(B)の長手方向に所定間隔(s)だけ離れた位置と定め、幅方向に所定間隔(t)だけ離れた位置と定め、識別マーク(4)が付与された不織布(2)が挿入され定着される。つまり、識別マーク(4)が付与された不織布(2)は、多層抄き合わせ紙(B)の長手方向に所定間隔(s)及び、幅方向に所定間隔(t)のいずれか一方又は両方を調整して挿入され定着される。
巻取装置で巻き取られた多層抄き合わせ紙(B)は、切断する際に、切断された識別マークが施された多層抄き合わせ紙の辺の位置から識別マーク位置(q)までが所定間隔となるように切断する。これにより、識別マークが施された多層抄き合わせ紙の識別マーク(4)の位置は所定位置に配置されたものが形成される。
(製造装置)
次に本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙の製造装置を図7で説明する。図7は、多層抄き合わせ紙の製造装置の全体構成を示す図である。図7において、多層抄き合わせ紙の製造装置(11)は、網帯からなり、循環するエンドレスな抄紙用のワイヤ(12)を有する。このワイヤ(12)は、従動用プーリ(13)と駆動用プーリ(14)と間に架け渡され、さらに図示しないが、ワイヤ(12)に沿っての内側に配置された複数の支持や案内をするロールにより支持され、案内されて循環移動する。
ワイヤ(12)の上流部(ワイヤの上面における移動始端部)(15)には、上流側から下流側に向けて、下層紙料供給槽(16)、不織布供給装置(17)、上層紙料供給槽(18)が、間隔をおいて順次、配設されている。
下層紙料供給槽(16)及び上層紙料供給槽(18)内には、それぞれ下層の懸濁液状の紙料(19)及び上層の懸濁液状の紙料(20)が充填され、適宜、図示しない供給源から補給され、所定の液位を維持するように制御されている。下層の懸濁液状の紙料(19)及び上層の懸濁液状の紙料(20)は、下層紙層(1)及び上層紙層(3)の素材となる材料であり、主にパルプ繊維、水及び添加剤からなる。
下層紙料供給槽(16)及び上層紙料供給槽(18)のそれぞれにおける下流部分には、下層紙料用目止め板(21)及び上層紙料用目止め板(22)が配置されている。下層紙料用目止め板(21)及び上層紙料用目止め板(22)のそれぞれとワイヤ(12)との間の隙間を通して、それぞれワイヤ(12)上に下層の懸濁液状の紙料(19)及び上層の懸濁液状の紙料(20)を供給し抄紙を可能とする。
不織布供給装置(17)による不織布供給部位は、下層紙料供給槽(16)の下流側であって上層紙料供給槽(18)の上流側に設けられており、不織布(2)をワイヤ(12)上に形成される下層の懸濁液状の紙層(23)上に向けて供給する。この不織布供給装置(17)は、不織布供給ドラム(24)、テンションロール(25)、及び識別マーク(4)が印刷された不織布(2)の抄造方向への挿入位置を修正するための位置修正装置(26)内の位置修正ロール(29)を備えている。
不織布供給ドラム(24)には、帯状の不織布(2)が巻きつけられており、この不織布(2)をワイヤ(12)に向けて繰り出しながら供給する。帯状の不織布には、上述のとおり、その長手方向に一定の間隔をおいて識別マーク(4)が予め付与されている。ただし、不織布に識別マーク(4)が付与されていない場合は、不織布供給ドラム(24)から不織布(2)をワイヤ(12)に向けて繰り出しながら供給する間に、不織布に印刷機器(38)によって長手方向に一定の間隔をおいて識別マーク(4)が印刷される。
不織布供給装置(17)から供給される帯状の不織布(2)の横幅は、下層紙料用目止め板(21)からワイヤ(12)の上面(搬送面)に供給されて形成される下層の懸濁液状の紙層(23)の横幅とほぼ同じであり、さらに上層紙料用目止め板(22)から下層の懸濁液状の紙層(23)の上面に供給されて形成される上層の懸濁液状の紙層(27)の横幅とほぼ同じである。
不織布位置修正装置(26)は、位置修正ロール(29)を制御するための位置制御器(28)を有する。位置修正ロール(29)は、多層抄き合わせ紙(B)のすき入れ位置(r)と識別マーク位置(q)の間隔が長手方向に予め設定された所定間隔(s)からずれた場合に、不織布及び識別マークの位置のずれを修正するロールである。変更例1では、レジスターマーク又はIJPによるマークの位置(v)に対して、識別マーク位置(q)の間隔が長手方向に予め設定された所定間隔(s)からずれた場合に、不織布及び識別マークの位置のずれを修正する。
位置修正ロール(29)は、位置制御器(28)からの制御信号で速度制御可能なモータにより駆動され、不織布(2)の送り速度を積極的に増減できる送り制御の可能なロールで構成する。
不織布供給ドラム(24)は、その軸心の長手方向(図6において紙面に対して垂直の方向)、即ち不織布(2)の幅方向に、巻き付けてある不織布ごと移動して幅方向に位置を調整できるように、図示しない不織布供給ドラム幅方向位置調整装置で調整される構成となっている。これにより、後述するが、多層抄き合わせ紙は、識別マーク位置(q)がすき入れ位置(r)から多層抄き合わせ紙(B)の幅方向に予め設定された所定間隔(t)からずれた場合に、多層抄き合わせ紙(B)に対して不織布(2)を幅方向に移動してずれを修正することができる。変更例1では、レジスターマーク又はIJPによるマークの位置(v)に対して、識別マーク位置(q)の幅方向に予め設定された所定間隔(t)からずれた場合に、多層抄き合わせ紙(B)に対して不織布(2)を幅方向に移動してずれを修正することができる。
ワイヤ(12)の下流部(ワイヤの上面の移動終端部)の下側には、搾水ボックス(30)が配置されている。この搾水ボックス(30)は、抄紙工程におけるワイヤ(12)の下流部において、下層の懸濁液状の紙層(23)、不織布(2)及び上層の懸濁液状の紙層(27)内に含まれている水を吸引して搾水するものである。
ワイヤ(12)で形成された多層抄き合わせ紙(B)は、図示しないガイドロールで案内され最終製品として巻取ロールで巻き取られるが、ワイヤ(12)と巻取ロールの間には、上流側から、プレスロール(31)、乾燥装置(32)(図6中、想像線で示す。)及び位置ずれ検出装置(33)が配設されている。プレスロール(31)は多層抄き合わせ紙に従来のすき入れを施す場合に用いられる。
プレスロール(31)は、多層抄き合わせ紙(B)を挟持してさらに下流の巻取ロール側に送る。すき入れは、周知のプレスロール(31)又はタンディロール(35)によって形成される。乾燥装置(32)は、周知の乾燥装置を利用する。
位置ずれ検出装置(33)は、位置検出器(34)と位置ずれ判別器(36)とを備えている。位置検出器(34)はCCDカメラを有する光学的な検知手段であり、検出対象である多層抄き合わせ紙(B)を挟んで反対側に配置されたライトテーブル(37)からの透過光を利用してすき入れ位置(r)と識別マーク位置(q)を検出することによって両者の間隔を測定し、これを電気信号として位置ずれ判別器(36)に送るものである。変形例1では、レジスターマーク又はIJPによるマークの位置(v)と識別マーク位置(q)を検出する。
位置ずれ判別器(36)は、位置検出器(34)から送られてきたすき入れ位置(r)と識別マーク位置(q)との間隔と予め設定されている長手方向の所定間隔(s)及び/又は幅方向の所定の間隔(t)とのずれの大きさ及びそのずれの方向を判別し、位置ずれ情報として位置制御器(28)に送るものである。変形例1は、レジスターマーク又はIJPによるマーク(9)の位置(v)と識別マーク位置(q)との間隔と予め設定されている長手方向の所定間隔(s)及び/又は幅方向の所定の間隔(t)とのずれの大きさ及びそのずれの方向を判別し、位置ずれ情報のデータを位置制御器(28)に送る例である。
巻取装置に巻き取られた多層抄き合わせ紙を切断するための切断装置(特に図示せず。)の近くに、ライトテーブルからの透過光を検出して識別マーク位置を検出する位置検出器を設ける。この位置検出器で検出した識別マーク位置情報に基づいて、切断されるべき多層抄き合わせ紙(B)の辺の位置から識別マークのすき入れ位置までの間隔が所定の間隔となるように、切断装置を制御するものである。
(製造方法)
識別マークが施された多層抄き合わせ紙の製造方法について、以下、順次説明する。
イ 下層紙料供給槽(16)内の下層の懸濁液状の紙料(19)は、下層紙料供給槽(16)から下層紙料用目止め板(21)とワイヤ(12)の隙間を通して、循環移動中のワイヤ(12)の上面に供給する。ワイヤ(12)上に供給された下層の懸濁液状の紙層(23)は、下層の懸濁液状の紙層(23)として抄造方向に送られる。
ロ 識別マーク(4)が印刷された帯状の不織布(2)は、この下層の懸濁液状の紙層(23)の上面に、不織布供給装置(17)から連続的に供給する。ただし、不織布に予め識別マーク(4)が印刷されていない場合は、不織布供給ドラム(24)から不織布(2)をワイヤ(12)に向けて繰り出しながら供給する間に、不織布に印刷機器(38)によって長手方向に一定の間隔をおいて識別マーク(4)が付与される。すると、帯状の不織布(2)は、下層の懸濁液状の紙層(23)とワイヤ(12)上で抄造方向に送られながら重なり、下層の懸濁液状の紙料(19)は不織布(2)の繊維間に入り込み、下層の懸濁液状の紙料(19)のパルプ繊維と不織布(2)の繊維が絡み合い両者の強固な結合が生成されていく。
ハ 次に、上層紙料供給槽(18)内の上層の懸濁液状の紙料(20)は、上層紙料供給槽(18)から上層紙料用目止め板(22)とワイヤ(12)の隙間を通して、下層の懸濁液状の紙料(19)のパルプ繊維と重ねられた帯状の不織布(2)のさらに上面に供給される。すると、上層の懸濁液状の紙料(20)は、ワイヤ(12)上で上層の懸濁液状の紙層(27)として抄造方向に送られながら不織布(2)と重なり、上層の懸濁液状の紙料(20)は不織布(2)の繊維間に入り込む。これにより、上層の懸濁液状の紙料(20)のパルプ繊維は、不織布(2)の繊維と絡み合うとともに、不織布(2)内にすでに入りこんでいる下層の懸濁液状の紙料(19)のパルプ繊維とも絡み合い、強固な結合が生成されていく。このように、ワイヤ(12)上に順次、下層の懸濁液状の紙料(19)、識別マーク(4)が印刷された不織布(2)及び上層の懸濁液状の紙料(20)を供給し、多層に重ね合わせて抄紙する。下層の懸濁液状の紙料(19)、識別マーク(4)が印刷された不織布(2)及び上層の懸濁液状の紙料(20)の各繊維は、互いに入り組んで絡み合い強固な結合層を形成し、多層抄き合わせ紙(B)の抄造が行われる。
ニ 多層にすき合わされた多層抄き合わせ紙(B)は、搾水ボックス(30)を通過し、プレスロール(31)により、従来のすき入れ(10)を施す。このすき入れ(10)は、識別マーク位置(q)から多層抄き合わせ紙(B)の長手方向に予め設定された所定の間隔(s)で離れた位置に施されるようにする。即ち、すき入れ(10)は、ワイヤの送り速度及び不織布内の識別マーク位置を考慮して、プレスロールの回転速度等を制御して形成される。しかしながら、実際は、不織布挿入時において、識別マーク位置(q)は、予定されるすき入れ位置(r)に対して予め設定されている長手方向の所定間隔(s)及び/又は幅方向の所定の間隔(t)だけ離れた位置からずれているので、後述のようなずれ位置の修正が必要となる。
ホ このように形成された多層抄き合わせ紙(B)は、さらに乾燥装置内を通過して乾燥され、最終製品として完成される。そして、多層抄き合わせ紙(B)を製品として巻き取る巻取装置に送る途中で、位置ずれ検出装置(33)により、当該多層抄き合わせ紙のすき入れ位置(r)と識別マーク位置(q)の実際の間隔について、予め設定されている長手方向の所定間隔(s)及び/又は幅方向の所定の間隔(t)からのずれの量を検出し、位置ずれ情報も生成して、位置修正装置(26)の位置制御器(28)に送る。
従来のすき入れで位置合せを行わない場合は、製品として巻き取る巻取装置に送る途中で、位置ずれ検出装置(33)により、レジスターマーク又はIJPによるマーク(v)と、識別マーク位置(q)の実際の間隔について、予め設定されている長手方向の所定間隔(s)及び/又は幅方向の所定の間隔(t)からのずれの量を検出し位置ずれ情報を生成して、位置修正装置(26)の位置制御器(28)に送る。
ヘ 位置制御器(28)は、この位置ずれ情報を受けて位置修正ロール(29)を制御して、不織布(2)の送りを制御する。即ち、位置修正ロール(29)は、位置制御器(28)の命令によって、モータを介し送り速度を調整することで、帯状の不織布(2)の送り速度を上げたり下げたりすることが可能となる。よって、不織布(2)に付与された識別マーク(4)の位置については、下層の懸濁液状の紙層(23)に対する抄造方向の相対的な位置を調整でき、識別マーク位置(q)とすき入れ位置(r)、又は識別マーク位置(q)とレジスターマーク又はIJPによるマーク(v)の間隔が、予め設定された所定の間隔(s)になるように修正することができる。
多層抄き合わせ紙は、下層紙料供給槽(16)又は上層紙料供給槽(18)に貯留された原料の紙料特性を異ならせて、色、坪量又は繊維構成を異ならせることも可能である。色の調節については繊維の種類の違い、顔料、染料の混合、漂白するか未漂白にとどめるか等の操作により可能である。坪量の調節については原料濃度、原料吐出部の調整により可能である。繊維構成の調節については繊維の種類、配合割合、繊維長、叩解度等を変化させることで可能である。
以下、実施例を用いて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の内容は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
(実施例1)
実施例1の識別マークが施された多層抄き合わせ紙は、図7に示した多層抄き合わせ紙の製造装置を用いて作製する。まず、針葉樹晒クラフトパルプの叩解度をカナディアンスタンダードフリーネス550mlに調整し、下層の懸濁液状の紙料(19)を得る。下層の懸濁液状の紙料(19)は、下層紙料供給槽(16)から下層紙料用目止め板(21)とワイヤ(12)の隙間を通して、下層の懸濁液状の紙料(19)を循環移動中のワイヤ(12)の上面に供給される。ワイヤ(12)上に供給された下層の懸濁液状の紙料(19)は、下層の懸濁液状の紙層(23)として抄造方向に送られる。
次に、坪量20g/m、厚さ87μm、JISの透気度試験法で測定限界以下の透気性が高いレーヨン繊維で構成される予め識別マークが印刷された巻取状の不織布(2)を、不織布供給ドラム(24)にセットし、この下層の懸濁液状の紙層(23)の上面に、不織布供給装置(17)から予め識別マークが印刷された帯状の不織布(2)を連続的に供給する。予め印刷される識別マークは、下記の配合割合で作製したスクリーンインキによって印刷した。識別マークのインキ盛量は平均約130μm程度である。
平均粒子径80μm、厚み1μmのガラスフレーク顔料(日本板硝子社製メタシャインMC1080RS) 20重量部
メジウム(帝国インキ社製、UV、TUB−000) 79.5重量部
消泡剤(東レ・ダウコーニングシリコン社製SC5540)
0.5重量部
下層の懸濁液状の紙料(19)のパルプ繊維と重ねられた帯状の不織布(2)のさらに上面に、針葉樹未晒クラフトパルプを、カナディアンスタンダードフリーネス570mlに調整した上層の懸濁液状の紙料(20)を上層紙料供給槽(18)から上層紙料用目止め板(22)とワイヤ(12)の隙間を通して上層の懸濁液状の紙料(20)を供給する。すると、上層の懸濁液状の紙料(20)は、ワイヤ(12)上で上層の懸濁液状の紙層(27)として抄造方向に送られながら不織布(2)と重なり、上層の懸濁液状の紙料(20)は不織布(2)の繊維間に入り込む。これにより、上層の懸濁液状の紙料(20)のパルプ繊維は、不織布(2)の繊維と絡み合うとともに、不織布(2)内にすでに入りこんでいる下層の懸濁液状の紙料(19)のパルプ繊維とも絡み合い生成されていく。
多層抄き合わせ紙は、搾水ボックス(30)を通過し、プレスロール(31)により、従来のすき入れ(10)が施される。このすき入れ(10)は、識別マーク位置(q)から多層抄き合わせ紙の長手方向に予め設定された所定の間隔(s)で離れた位置に施されるようにする。さらに乾燥装置内を通過して乾燥され、巻取の多層抄き合わせ紙が完成される。巻取の多層抄き合わせ紙は、所定の位置で断裁し、枚葉の識別マークが施された多層抄き合わせ紙を得た。識別マークが施された多層抄き合わせ紙の表面及び裏面からは、凹凸感に加えてザラツキ感も得られ、新たな指感性を有していた。
次に、識別マークが施された多層抄き合わせ紙の表面を三次元表面粗さ形状測定機(SURFCOM (株)東京精密社製 JISB0601)で測定した。
測定方法は、識別マークが付与されていない領域のある一点を0μmとして、識別マークが付与されていない領域及び識別マークが付与されている領域を測定した。図8に示すように、識別マークが付与されていない領域と、複数の微細な凹凸を有する領域の高低差は、100〜200μm程度であった。また、識別マークが付与されている領域は、図8に示すような複数の微細な凹凸を有していた。複数の微細な凹凸は、0.5〜1mm程度の間隔で繰り返され、その高低差は20〜75μm程度であった。識別マークには、指で触れた場合の複数の微細な凹凸による異質感(ザラツキ感、摩擦抵抗、硬さ)が加わり、その感触による識別容易性が向上するとともに新たな指感性が得られた。
また、下層紙層、不織布及び上層紙層は、互いに繊維が絡み合って結合されるため、識別マークが施された多層抄き合わせ紙は多層抄き合わせ紙であることを一見して判断することができない。更に、実施例1の識別マークが施された多層抄き合わせ紙は、図4(a)、(b)、(c)に示した識別マークが施された多層抄き合わせ紙(A2)、(A3)、(A4)より、反射光で観察(肉眼)した場合、識別マークを視認し難い。当然、実施例1の識別マークが施された多層抄き合わせ紙は、識別マークに着色顔料を含有したインキで印刷した場合、反射光で観察(肉眼)すると識別マークを視認できる。
そして、製品として巻き取る巻取装置に送る途中で、位置ずれ検出装置(33)により、すき入れ位置(r)と識別マーク位置(q)の実際の間隔について、予め設定された長手方向の所定の間隔(s)及び/又は幅方向の所定の間隔(t)からのずれの量を検出し位置ずれ情報を生成して、位置修正装置(26)の位置制御器(28)に送る。
先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層からなる下層紙層(1)、識別マークが施された中間層となる不織布(2)、及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層からなる上層紙層(3)からなる識別マークが施された多層抄き合わせ紙(A1)とその断面図である。 識別マーク(4)の例を示す図である。 顔料の粒子がインキ皮膜上から飛び抜けている例を示す図である。 多層抄き合わせ紙のその他の構成を示す図である。 帯状の多層抄き合わせ紙を長手方向で観察した場合及びそのX−X’断面を示す図である。 白すき入れからなるレジスターマーク又はIJP(インクジェットプリンタ)によるマーク(9)が抄造方向に一定間隔で複数箇所に付与されている例を示す図である。 本発明を実施するための最良の形態の多層抄き合わせ紙の製造装置を示す図である。 実施例1の識別マークが施された多層抄き合わせ紙の表面状態を示す図である。
符号の説明
1 下層紙層
2 不織布
3 上層紙層
4 識別マーク
5 凹凸
6 印刷模様
7 顔料
8 接着層
9 レジスターマーク又はIJPによるマーク
10 従来のすき入れ
11 多層抄き合わせ装置
12 抄紙用のワイヤ
13 従動用プーリ
14 駆動用プーリ
15 ワイヤの上流部
16 下層紙料供給槽
17 不織布供給装置
18 上層紙料供給槽
19 下層の懸濁液状の紙料
20 上層の懸濁液状の紙料
21 下層紙料用目止め板
22 上層紙料用目止め板
23 下層の懸濁液状の紙層
24 不織布供給ドラム
25 テンションロール
26 位置修正装置
27 上層の懸濁液状の紙層
28 位置制御器
29 位置修正ロール
30 搾水ボックス
31 プレスロール
32 乾燥装置
33 位置ずれ検出装置
34 位置検出器
35 タンディロール
36 位置ずれ判別器
37 ライトテーブル
38 印刷機器
A1、A2、A3、A4 識別マークが施された多層抄き合わせ紙
B 多層抄き合わせ紙
q 識別マーク位置
r すき入れ位置
v レジスターマーク又はIJPによるマーク位置
s 長手方向の間隔
t 幅方向の間隔

Claims (2)

  1. 抄紙網上に、先行紙料から得られる下層の懸濁液状の紙層、識別マークが表面又は裏面に印刷された不織布及び後紙料から得られる上層の懸濁液状の紙層が、順次層状に乾燥し形成されてなる多層抄き合わせ紙であって、
    前記識別マークは、平均粒子径40〜140μmのガラスフレークが混合された指感性材料によって付与され、
    前記付与される識別マークは、所定の盛量を有してなり、
    前記識別マークが形成される領域の上層紙層の表面及び下層紙層の表面は、前記ガラスフレークによって、複数の微細な凹凸を有してなる識別マークが施された多層抄き合わせ紙。
  2. 前記所定の盛量は、70μm以上、250μm以下の盛量を有してなる請求項1記載の識別マークが施された多層抄き合わせ紙。
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