JP4797878B2 - ハイブリッド車両の電気走行制御装置 - Google Patents
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Description
特に、電気走行(EV)モードからハイブリッド走行(HEV)モードへの切り替えに際してエンジン始動が滑らかに行われ得るよう車両を電気走行させるための装置に関するものである。
このハイブリッド駆動装置は、エンジン回転を変速機に向かわせる軸に結合して、これらエンジンおよび変速機間にモータ/ジェネレータを具え、エンジンおよびモータ/ジェネレータ間を切り離し可能に結合する第1クラッチを有すると共に、モータ/ジェネレータおよび変速機出力軸間を切り離し可能に結合する第2クラッチをトルクコンバータの代わりに有した構成になるものである。
なお電気走行(EV)モードからハイブリッド(HEV) 走行モードへの切り替え時にエンジンを始動させるに際しては、第1クラッチを締結させると共に、モータ/ジェネレータのモータトルクをエンジン始動用に増大させてエンジン始動を行うのが常識的である。
電気(EV)走行モードで、ハイブリッド (HEV) 走行への移行時に要求されるエンジン始動のためにエンジン始動用トルク分の余裕が残っているようモータ/ジェネレータトルクに上限値を設定し、
電気走行(EV)モードからハイブリッド(HEV) 走行モードへの切り替え時にエンジンを始動させるに際しては、モータ/ジェネレータのモータトルクをエンジン始動用に増大させて当該エンジン始動を行う技術がある。
つまり、電気(EV)走行モードでエンジン始動用トルク分の余裕を残してモータ/ジェネレータトルクの上限値を設定し、ハイブリッド(HEV) 走行モードへの切り替え時にモータ/ジェネレータトルクをエンジン始動用に増大させても、
1モータ、2クラッチ式のハイブリッド車両における第2クラッチを締結トルク容量制御しないで完全締結させたままだと、完全締結状態にされている第2クラッチの締結トルク容量相当分のトルクが第2クラッチを経て車輪駆動系に向かうため、エンジン始動時に違和感のある車両加速度変化を生じてしまう。
発進から瞬時t1までのEV走行中は、特許文献2に記載の技術を用いてエンジン始動用トルク分の余裕αを残してモータ/ジェネレータトルクtTmの上限値を設定し、図14では、モータ/ジェネレータトルクtTmがこの上限値にされ、また、第2クラッチが十分大きな伝達トルク容量tTc2(図示では120Nm)により完全締結された状態でEV走行が行われているものとする。
第2クラッチが大きな伝達トルク容量tTc2(120Nm)により完全締結されていることから、当該クラッチ伝達トルク容量tTc2(120Nm)分のトルクβが第2クラッチを経て車輪駆動系に向かうため、エンジン始動に使えるモータトルクδは、δ=α−βとなってエンジン始動に必要なトルクαよりも小さくなる。
しかしその後、上記のごとく第2クラッチの完全締結に起因してエンジン始動に使えるモータトルクδ(δ=α−β)がエンジン始動に必要なトルクαよりも小さくなることから、モータ/ジェネレータ回転数(第2クラッチ入力側回転数Nc2i)が引き込まれ、図14の破線Bで囲った部分に示すように車両加速度が急減する。
これらにより、エンジン始動時に違和感のある車両加速度変化A,Bを生じてしまう。
まず前提となるハイブリッド車両につき説明するに、これは、
動力源としてエンジンおよびモータ/ジェネレータを具え、これらエンジンおよびモータ/ジェネレータ間に伝達トルク容量を変更可能な第1クラッチを介在させ、モータ/ジェネレータおよび駆動車輪間に伝達トルク容量を変更可能な第2クラッチを介在させ、
エンジンを停止させ、第1クラッチを解放すると共に第2クラッチを締結することによりモータ/ジェネレータからの動力のみによる電気走行モードを選択可能で、第1クラッチおよび第2クラッチを共に締結することによりエンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードを選択可能にしたものである。
前記電気走行モードでは、前記モータ/ジェネレータのモータトルク目標値および前記第2クラッチの伝達トルク容量目標値に対しそれぞれ、モータ/ジェネレータの発生可能な最大モータトルクから、ハイブリッド走行モードへの切り替えに際して行うべきエンジン始動のために要求されるエンジン始動トルクを差し引いたトルク値を上限とする上限値を設定したことを特徴とするものである。
電気走行モードでモータ/ジェネレータのモータトルク目標値および第2クラッチの伝達トルク容量目標値に対しそれぞれ、モータ/ジェネレータの発生可能な最大モータトルクから、ハイブリッド走行モードへの切り替えに際して行うべきエンジン始動のために要求されるエンジン始動トルクを差し引いたトルク値を上限とする上限値を設定するため、
電気走行モードでのかかる上限設定がモータ/ジェネレータのモータトルク目標値に対してだけでなく、第2クラッチの伝達トルク容量目標値に対してもなされることとなり、
電気走行モードからハイブリッド 走行モードへの切り替に呼応してエンジン始動用にモータ/ジェネレータのモータトルクを増大させる時、第2クラッチがスリップしてモータトルク増大分を車輪駆動系に向かわせるのを回避することができ、モータトルク増大分で車両加速度が急増することがないと共に、モータトルク増大分がエンジン始動用トルクに対し不足することもなく、これに起因したモータ/ジェネレータ回転数の引き込みによる車両加速度の急減を回避することができ、
従って、電気走行モードからハイブリッド走行モードへの切り替え時(エンジン始動時)に違和感のある車両加速度変化が生ずるという前記の問題を解消することができる。
図1は、本発明の電気走行制御装置を具えたハイブリッド車両の車輪駆動系(パワートレーン)を、その制御システムと共に示し、
1は、第1動力源としてのモータ/ジェネレータ、2は、第2動力源としてのエンジン、3L,3Rはそれぞれ、左右駆動車輪(左右後輪)である。
このモータ/ジェネレータ1およびエンジン2間、詳しくは、軸5とエンジンクランクシャフト2aとの間に第1クラッチ6を介挿し、この第1クラッチ6によりエンジン2およびモータ/ジェネレータ1間を切り離し可能に結合する。
ここで第1クラッチ6は、伝達トルク容量を連続的または段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
第2クラッチ7も第1クラッチ6と同様、伝達トルク容量を連続的または段階的に変更可能なものとし、例えば、比例ソレノイドでクラッチ作動油流量およびクラッチ作動油圧を連続的に制御して伝達トルク容量を変更可能な湿式多板クラッチで構成する。
従って自動変速機4は、入力軸4aからの回転を選択変速段に応じたギヤ比で変速して出力軸4bに出力する。
この出力回転は、ディファレンシャルギヤ装置を含む終減速機8により左右後輪3L,3Rへ分配して伝達され、車両の走行に供される。
但し自動変速機4は、上記したような有段式のものに限られず、無段変速機であってもよいのは言うまでもない。
この状態でモータ/ジェネレータ1を駆動すると、当該モータ/ジェネレータ1からの出力回転のみが変速機入力軸4aに達することとなり、自動変速機4が当該入力軸4aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して変速機出力軸4bより出力する。
変速機出力軸4bからの回転はその後、ディファレンシャルギヤ装置を含む終減速機8を経て左右後輪3L,3Rに至り、車両をモータ/ジェネレータ1のみによって電気走行(EV走行)させることができる。
この状態では、エンジン2からの出力回転、または、エンジン2からの出力回転およびモータ/ジェネレータ1からの出力回転の双方が変速機入力軸4aに達することとなり、自動変速機4が当該入力軸4aへの回転を、選択中の変速段に応じ変速して、変速機出力軸4bより出力する。
変速機出力軸4bからの回転はその後、終減速機8を経て左右後輪3L,3Rに至り、車両をエンジン2およびモータ/ジェネレータ1の双方によってハイブリッド走行(HEV走行)させることができる。
図1の制御システムは、パワートレーンの動作点を統合制御する統合コントローラ20を具え、パワートレーンの動作点を、エンジントルク目標値tTeと、モータ/ジェネレータトルク目標値tTm(モータ/ジェネレータ回転数目標値tNmでもよい)と、第1クラッチ6の伝達トルク容量目標値tTc1(クラッチ油圧ソレノイド電流Ic1でもよい)と、第2クラッチ7の目標伝達トルク容量tTc2(クラッチ油圧ソレノイド電流Ic2でもよい)と、自動変速機4の目標変速段Gmとで規定する。
このときバッテリ21が過充電にならないよう、バッテリコントローラ23によりバッテリ21を充電制御する。
このためバッテリコントローラ23は、バッテリ21の蓄電状態SOC(持ち出し可能電力)を検出し、これに関する情報を統合コントローラ20に供給する。
エンジントルク目標値tTeはエンジンコントローラ24に供給され、モータ/ジェネレータトルク目標値tTmはモータ/ジェネレータコントローラ25に供給される。
モータ/ジェネレータコントローラ25はモータ/ジェネレータ1のトルクTmがモータ/ジェネレータトルク目標値tTmとなるよう、バッテリ21からの電力によりインバータ22を介してモータ/ジェネレータ1を制御する。
クラッチコントローラ26は、一方で第1クラッチ伝達トルク容量目標値tTc1に対応したクラッチ油圧ソレノイド電流Ic1を第1クラッチ6の油圧制御ソレノイドに供給し、第1クラッチ6の伝達トルク容量Tc1が伝達トルク容量目標値tTc1に一致するよう第1クラッチ6を締結制御する。
クラッチコントローラ26は他方で、第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2に対応したクラッチ油圧ソレノイド電流Ic2を第2クラッチ7の油圧制御ソレノイドに供給し、第2クラッチ7の伝達トルク容量Tc2が第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2に一致するよう第2クラッチ7を締結制御する。
これがため、第2クラッチ7の入力側回転数Nc2iとしてモータ/ジェネレータ1の回転数を検出する第2クラッチ入力側回転数センサ13(第2クラッチ入力側回転数検出手段に相当する)、および、第2クラッチ7の出力側回転数Nc2oとして変速機入力軸4aの回転数を検出する第2クラッチ出力側回転数センサ14(第2クラッチ出力側回転数検出手段に相当する)、並びに、第2クラッチ7の作動油温Tempを検出する油温センサ16を設け、これら回転センサ13,14および油温センサ16からの信号をクラッチコントローラ26を経て統合コントローラ20に入力する。
図3の制御プログラムは定時割り込みにより繰り返し実行されるもので、
先ずステップS1において、各コントローラ23〜27からのデータを受信し、バッテリ蓄電状態SOCや、エンジン回転数Neや、第2クラッチ7の入力側回転数Nc2iおよび出力側回転数Nc2oや、第2クラッチ7の作動油温Tempや、自動変速機4の選択変速段(選択ギヤ比)Gmを読み込み、
ステップS2においては、センサ11,12からの信号をもとにアクセル開度APOおよび車速VSPを読み込む。
従ってステップS3は、図2における車輪駆動トルク目標値演算手段31に相当する。
詳細は本発明と関係ないため省略するが、緩加速発進のような低負荷、低車速のもとでは、エンジン2の燃焼効率が比較的悪いため、エンジン2を使わずモータ/ジェネレータ1のみによるEV走行を行わせるため、第1クラッチ6を解放させるべきと判定して第1クラッチ制御モードフラグfCL1=0と決定する。
従ってステップS4は、図2における第1クラッチ状態設定手段33に相当する。
かかる第2クラッチ制御モードフラグCL2MODEは、図4の制御プログラムを実行して決定する。
fCL1=0であれば、つまり、第1クラッチ6を解放してエンジン2の停止によりEV走行すべきであれば、制御をステップS52に進め、ここで車速VSPが0の停車状態か否かをチェックする。
停車状態であればステップS53において、第2クラッチ7を発進に備えて締結させておくべきであるから第2クラッチ制御モードフラグCL2MODE=1(締結)に設定する。
しかし、ステップS52で車速VSPが0でないと判定する時は、つまり、車両が走行している(EV走行している)時は、ステップS54において、第2クラッチ7をエンジン始動に備えてスリップ締結させておくべきであるから第2クラッチ制御モードフラグCL2MODE=2(スリップ)に設定する。
ステップS56で駆動トルク目標値tTd<0と判定する逆駆動要求時は、EV走行中から第2クラッチ7をスリップ締結させておくと好適なエンジン始動が行われないから制御をステップS57に進め、第2クラッチ制御モードフラグCL2MODE=0(解放)に設定する。
ステップS58でCL2MODE(前回)=1と判定する時、つまり、第2クラッチが前回締結されていた場合は、ステップS53において第2クラッチ制御モードフラグCL2MODE=1(締結)に保つ。
ステップS59で第2クラッチ7のスリップ条件が成立したと判定する時は、第2クラッチ7をスリップ締結させるべきであるから、ステップS54において第2クラッチ制御モードフラグCL2MODE=2(スリップ)に設定し、
ステップS59で第2クラッチ7のスリップ条件が成立していないと判定する時は、第2クラッチ7をスリップさせるべきでないから、ステップS53において第2クラッチ制御モードフラグCL2MODE=1(締結)に設定する。
なお車輪駆動トルク目標値tTdの分担方法は任意であり、発明と関係ないため詳細な説明をここでは省略する。
このチェックに当たっては、例えば、ステップS5で設定した第2クラッチ制御モードCL2MODEが2(第2クラッチ7をスリップ締結させるべき)であり、且つ、第2クラッチ7の入力側回転数Nc2iおよび出力側回転数Nc2o間におけるスリップ量が設定値以上である間は、第2クラッチ7のスリップ回転(締結)制御を行うべき(ON)と判定し、それ以外では第2クラッチ7の当該スリップ回転(締結)制御を行うべきでない(OFF)と判定する。
この基本第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2baseは、例えばステップS3でアクセル開度APOおよび車速VSPから求めた車輪駆動トルク目標値tTdと同じ値にしてもよいが、以下のようにして求めることもできる。
つまり、第2クラッチ7の入力側回転数Nc2iに対する出力側回転数Nc2oの比で表される速度比E(=Nc2o/Nc2i)から、図6に例示するトルクコンバータ特性に基づき第2クラッチ7の伝達トルク容量係数Cc2を求め、これと、第2クラッチ7の入力側回転数Nc2iとを用いた次式の演算により、基本クラッチ伝達トルク容量目標値tTclbaseを求めてもよい。
tTc2base=Cc2×Nc2i2 ・・・(1)
図2の第2クラッチ出力側回転数目標値演算手段34、および、同図の第2クラッチ入力側回転数目標値演算手段35に相当する図3のステップS9においては、ステップS3で求めた駆動トルク目標値tTdから、第2クラッチ7の出力側回転数目標値tNc2oを求めると共に、図2の第2クラッチスリップ回転数目標値演算手段38で求めた第2クラッチスリップ回転数目標値tΔNc2と、センサ14で検出した第2クラッチ出力側回転数Nc2oとから、第2クラッチ入力側回転数目標値tNc2iを求める。
図7に第2クラッチ出力側回転数目標値演算部52として示すごとく、駆動トルク目標値tTdと、車両慣性モーメントJoと、車輪駆動系における自動変速機4の選択変速段で決まる変速比Gmと、車輪駆動系における終減速機8の最終減速比Gfとに基づき、第2クラッチ7のクラッチ出力側回転数目標値tNc2oを次式
tNc2o={(Gm・Gf)2/Jo}×(1/s)×tTd ・・・(2)
の演算により求める。
この演算に当たっては、図2の第2クラッチスリップ回転数目標値演算手段38で求めた第2クラッチスリップ回転数目標値tΔNc2と、センサ14で検出した第2クラッチ出力側回転数Nc2oとから、第2クラッチスリップ回転数目標値tΔNc2を達成するのに必要な第2クラッチ入力側回転数目標値tNc2iを求める。
モータ/ジェネレータ1の後述するモータトルク上限設定がなされている間は、第2クラッチ回転数目標値tNc2に第2クラッチ入力側回転数目標値tNc2iをセットし、
モータ/ジェネレータ1の後述するモータトルク上限設定がなされていない場合は、第2クラッチ回転数目標値tNc2に第2クラッチ出力側回転数目標値tNc2oをセットする。
Tc2ff=GFF(s)×tTc2base={Gc2ref(s)/Gc2(s)}×tTc2base
={(τc2・s+1)/ (τc2ref・s+1)}×tTc2base ・・・(3)
Gc2ref(s):第2クラッチの規範モデル
Gc2(s):第2クラッチの実際モデル
τc2 :第2クラッチのモデル時定数
τc2ref :第2クラッチ制御用規範応答時定数
Nc2oref=Gc2ref(s)×tNc2o
={1/ (τc2ref・s+1)}×tNc2o ・・・(4)
τc2ref :第2クラッチ制御用規範応答時定数
この第2クラッチ伝達トルク容量補正値Tc2fbの演算に当たっては実際には、タスティン近似などで離散化して得られた以下の漸化式を用いて当該演算を行うこととする。
Tc2fb={Kc2p+(Kc2i/s)}・Nc2oerr ・・・(5)
Kc2p:比例制御ゲイン
Kc2i:積分制御ゲイン
ステップS4で設定した第1クラッチ制御モードフラグfCL1が1で、第1クラッチ6を締結させるべきとの判定にもかかわらず、未だ第1クラッチ6が締結していない(Ne≠Nc2iである)場合、エンジン始動時第2クラッチ伝達トルク容量補正値ΔTc2eを、エンジン始動用モータトルクTengstと、アクセル開度APOとの関数として求め、例えば、図8に示すようなマップを基にエンジン始動用モータトルクTengstおよびアクセル開度APOからエンジン始動時第2クラッチ伝達トルク容量補正値ΔTc2eを検索する。
ステップS15においては、前記したフィードフォワード制御用第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2ffと、前記した第2クラッチ伝達トルク容量補正値Tc2fbとを合算した後、この合算値から前記したエンジン始動時第2クラッチ伝達トルク容量補正値ΔTc2eを差し引いて、第2クラッチスリップ回転制御用第2クラッチ伝達トルク容量目標値Tc2fbonを求め、
ステップS18において、この第2クラッチスリップ回転制御用第2クラッチ伝達トルク容量目標値Tc2fbonを第2クラッチスリップ制御用伝達トルク容量目標値tTc2slipとする。
なお、第2クラッチ7を締結状態にしたり、この定常状態に保つための通常制御用第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2fboffは、第2クラッチ7が実現可能な最大値とし、第2クラッチ7を解放状態にしたり、この定常状態に保つための通常制御用第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2fboffは、第2クラッチ7の現在における伝達トルク容量から徐々に低下させる。
(1)第2クラッチの締結時
tTc2(前回値)<tTd×Ksafeであれば、
tTc2fboff=tTc2(前回値)+ΔTc2(L/U) とし、
tTc2(前回値)≧tTd×Ksafeであれば、
tTc2fboff=tTd×Ksafe とする。
但し、Ksafe:第2クラッチ伝達トルク容量安全率(>1)
ΔTc2(L/U):第2クラッチ締結進行時トルク容量増加率
(2)第2クラッチの解放時
無条件にtTc2fboff=0 とする。
(3)第2クラッチの締結状態からスリップ制御への移行時
無条件にtTc2fboff=tTc2(前回値)−ΔTc2(SLIP) とする。
但し、ΔTc2(SLIP):第2クラッチスリップ移行時トルク容量低下率
ステップS16およびステップS17を通るループが選択される場合、第2クラッチ7のスリップ締結制御を行うべきでないと判定したのに呼応して、ステップS17で求めた通常制御用第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2fboffをスリップ制御用第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2slipとする。
Tevulmt=Tmmax−Tengst ・・・(6)
つまり、詳しくは後述するが上記のモータトルク上限値Tevulmtに基づくモータ/ジェネレータ1のトルク制限を行わない間は、第2クラッチスリップ制御用伝達トルク容量目標値tTc2slipをそのまま第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2とし、
モータトルク上限値Tevulmtに基づくモータ/ジェネレータ1のトルク制限を行う間は、当該モータトルク制限開始時における第2クラッチスリップ制御用伝達トルク容量目標値tTc2slipを第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2とする。
つまり、ステップS4で設定した第1クラッチ制御モードフラグfCL1が1(第1クラッチ6を締結させるべき)で、且つ、第2クラッチ7の実スリップ回転数Nc2slipが図2の演算手段38で求めた第2クラッチスリップ回転目標値tΔNc2(エンジン始動時はエンジン始動時第2クラッチスリップ回転目標値)以上である場合は、第1クラッチ伝達トルク容量目標値tTc1を第1クラッチ6の実現可能最大伝達トルク容量Tc1maxとし、
第1クラッチ制御モードフラグfCL1が0(第1クラッチ6を解放させるべき)である場合は、第1クラッチ伝達トルク容量目標値tTc1を0にする。
つまり、先ず図9に例示する予定のマップをもとに第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2および第1クラッチ伝達トルク容量目標値tTc1を実現する第2クラッチ7および第1クラッチ6のクラッチ油圧を検索し、
次いで図10に例示するマップをもとに当該クラッチ油圧を発生する第2クラッチ7および第1クラッチ6の油圧ソレノイド電流Ic2,Ic1をそれぞれ決定する。
かように決定した第2クラッチ7および第1クラッチ6の油圧ソレノイド電流をステップS25において、対応するクラッチコントローラ26へ供給し、このコントローラにより第2クラッチ7および第1クラッチ6を、それぞれの伝達トルク容量が目標値tTc2,tTc1に一致するよう締結制御する。
かように決定したモータ/ジェネレータ1のモータトルク目標値tTmをステップS25において、対応するモータ/ジェネレータコントローラ25へ供給し、このコントローラによりモータ/ジェネレータ1を、そのモータトルクが目標値tTmに一致するよう駆動制御する。
ただし、ステップS24(図2のモータトルク制限手段43)による上記のモータトルク制限が行われない間は、第2クラッチスリップ制御用伝達トルク容量目標値tTc2slipをそのまま第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2として、第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2の制限も行わないこととする。
電気(EV)走行モードで、モータ/ジェネレータ1のモータトルク目標値tTmに対し、モータ/ジェネレータ1が発生可能な最大モータトルクTmmaxから、ハイブリッド(HEV)走行モードへの切り替えに際して行うべきエンジン始動のために要求されるエンジン始動トルクTengstを差し引いたトルク値を上限とする上限値Tevulmt=Tmmax−Tengstを設定し、モータトルク目標値tTmが上限値Tevulmtに達した時における第2クラッチ7の伝達トルク容量目標値を、第2クラッチ7の伝達トルク容量目標値tTc2の上限値として設定するため、図11に示すように以下の作用効果が奏し得られる。
本実施例においては、瞬時t1の踏み込みによる加速要求に呼応してモータ/ジェネレータ1のモータトルク目標値tTmおよび第2クラッチ7の伝達トルク容量目標値tTc2が図示のごとくに増大され、これにより車両加速度の時系列変化として示すように車両を加速させることができる。
かくて、第2クラッチ7の伝達トルク容量実際値Tc2がハードウェアの個体差などにより第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2から例えばδで示すごとくずれていても、瞬時t2以後における第2クラッチ7の伝達トルク容量実際値Tc2を、モータトルク上限値Tevulmt(図示では80Nm)に一致させることができる。
ハイブリッド(HEV) 走行モードへの切り替え(エンジン始動)指令瞬時t3は、モータトルク目標値tTmをエンジン始動トルク分α=Tengstだけ増大させて、第1クラッチ6の締結とでエンジン2をクランキングさせることにより、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTeの立ち上がりから明らかなようにエンジンを始動させることになるが、
この間、第2クラッチ7が伝達トルク容量Tc2をモータトルク上限値Tevulmt(図示では80Nm)相当のものに制限されていることから、上記モータトルク増大分α=Tengstによるエンジン始動時に第2クラッチ7が、その入出力側回転数Nc2i,Nc2o間における差回転として示されているようにスリップして、モータトルク増大分α=Tengstを車輪側に向かわせることなく全てエンジン始動の用に供し得る。
本実施例によれば、モータトルク増大分α=Tengstを全く車輪側に向かわせることがないため、エンジン始動開始瞬時t3からエンジン始動瞬時t4までの間における車両加速度の時系列変化から明らかなように、エンジン始動時に不自然な加速度変化が発生するのを防止することができる。
当該モータトルクの制限中においても第2クラッチ7を引き続き所定通りにスリップ制御することができる。
図2と相違する箇所のみについて説明するに、第2クラッチ伝達トルク容量目標値演算手段37は駆動トルク目標値tTdを伝達するに必要な第2クラッチ7の伝達トルク容量目標値tTc2を求める。
演算手段35で求めた第2クラッチ入力側回転数目標値tNc2iと、センサ13で検出した第2クラッチ入力側回転数検出値Nc2iとを減算器44に入力し、この減算器44は、前者の第2クラッチ入力側回転数目標値tNc2iから後者の第2クラッチ入力側回転数検出値Nc2iを減算して、両者間における第2クラッチ入力側回転数偏差Nc2ierrを求める。
EV時モータトルク上限値演算手段39は、前記した実施例におけると同様、電気(EV)走行中におけるモータ/ジェネレータ1のモータトルク上限値Tevulmtを前記(6)式により、つまり、モータ/ジェネレータ1が発生し得るモータ出力可能トルク最大値Tmmax(バッテリ蓄電状態SOC等に応じて決まる)から、エンジン2を始動させる時に必要なエンジン始動用トルクTengstの減算により求める。
かように決定した第2クラッチ伝達トルク容量目標値tTc2をクラッチコントローラ26へ供給し、このコントローラにより第2クラッチ7を、その伝達トルク容量が目標値tTc2に一致するよう締結制御する。
かように決定したモータ/ジェネレータ1のモータトルク目標値tTmをモータ/ジェネレータコントローラ25へ供給し、このコントローラによりモータ/ジェネレータ1を、そのモータトルクが目標値tTmに一致するよう駆動制御する。
電気(EV)走行モードで、モータ/ジェネレータ1のモータトルク目標値tTmに対し、モータ/ジェネレータ1が発生可能な最大モータトルクTmmaxから、ハイブリッド(HEV)走行モードへの切り替えに際して行うべきエンジン始動のために要求されるエンジン始動トルクTengstを差し引いたトルク値を上限とする上限値Tevulmt=Tmmax−Tengstを設定し、
同時に、第2クラッチ7の伝達トルク容量目標値tTc2に対しても、モータトルク目標値tTmに対すると同じ上限値Tevulmtを設定し、
電気(EV)走行中は、モータ/ジェネレータ1のモータトルクが上限値Tevulmtを越えないように制限すると共に、第2クラッチ7の伝達トルク容量が同じ上限値Tevulmtを越えないように制限するため、図13に示すように以下の作用効果が奏し得られる。
発進のために増大させるモータトルク目標値tTmがモータトルク上限値Tevulmt(図示では80Nm)に達する瞬時t2以後は、モータトルク目標値tTmがモータトルク上限値Tevulmtを超えることのないよう、モータトルク目標値tTmを図示のごとくモータトルク上限値Tevulmtに保って、電気(EV)走行中はモータトルク目標値tTmにエンジン始動トルクα=Tengst分の余裕を持たせておく。
ハイブリッド(HEV) 走行モードへの切り替え(エンジン始動)指令瞬時t3は、モータトルク目標値tTmをエンジン始動トルク分α=Tengstだけ増大させて、第1クラッチ6の締結とでエンジン2をクランキングさせることにより、エンジン回転数NeおよびエンジントルクTeの立ち上がりから明らかなようにエンジンを始動させることになるが、
この間、第2クラッチ7が伝達トルク容量Tc2をモータトルク上限値Tevulmt(図示では80Nm)に制限されていることから、上記モータトルク増大分α=Tengstによるエンジン始動時に第2クラッチ7が、その入出力側回転数Nc2i,Nc2o間における差回転として示されているようにスリップして、モータトルク増大分α=Tengstを車輪側に向かわせることなく全てエンジン始動の用に供し得る。
本実施例によれば、モータトルク増大分α=Tengstを全く車輪側に向かわせることがないため、エンジン始動開始瞬時t3からエンジン始動瞬時t4までの間における車両加速度の時系列変化から明らかなように、エンジン始動時に不自然な加速度変化が発生するのを防止することができる。
2 エンジン
3L,3R 左右駆動車輪
4 自動変速機
5 モータ/ジェネレータ軸
6 第1クラッチ
7 第2クラッチ
8 終減速機
11 アクセル開度センサ
12 車速センサ
13 第2クラッチ入力側回転センサ
14 第2クラッチ出力側回転センサ
15 エンジン回転センサ
16 第2クラッチ作動油温センサ
20 統合コントローラ
21 バッテリ
22 インバータ
23 バッテリコントローラ
24 エンジンコントローラ
25 モータ/ジェネレータコントローラ
26 クラッチコントローラ
27 変速機コントローラ
31 駆動トルク目標値演算手段
32 トルク配分手段
33 第1クラッチ状態設定手段
34 第2クラッチ出力側回転数目標値演算手段
35 第2クラッチ入力側回転数目標値演算手段
36 第2クラッチ回転数目標値選択手段
37 第2クラッチ伝達トルク容量目標値選択手段
38 第2クラッチスリップ回転数目標値演算手段
39 EV時モータトルク上限値演算手段
40 第2クラッチ伝達トルク容量制限手段
41 第1クラッチ伝達トルク容量目標値演算手段
42 第2クラッチスリップ制御用モータトルク目標値演算手段
43 モータトルク制限手段
51 フィードフォワード補償演算部
52 第2クラッチ出力側回転数目標値演算部
53 第2クラッチ出力側回転数規範値演算部
54 第2クラッチ出力側回転数偏差演算部
55 第2クラッチ伝達トルク容量補正値演算部
56 最終クラッチ伝達トルク容量目標値演算部
Claims (3)
- 動力源としてエンジンおよびモータ/ジェネレータを具え、これらエンジンおよびモータ/ジェネレータ間に伝達トルク容量を変更可能な第1クラッチを介在させ、モータ/ジェネレータおよび駆動車輪間に伝達トルク容量を変更可能な第2クラッチを介在させ、
エンジンを停止させ、第1クラッチを解放すると共に第2クラッチを締結することによりモータ/ジェネレータからの動力のみによる電気走行モードを選択可能で、第1クラッチおよび第2クラッチを共に締結することによりエンジンおよびモータ/ジェネレータの双方からの動力によるハイブリッド走行モードを選択可能なハイブリッド車両において、
前記電気走行モードでは、前記モータ/ジェネレータのモータトルク目標値および前記第2クラッチの伝達トルク容量目標値に対しそれぞれ、モータ/ジェネレータの発生可能な最大モータトルクから、ハイブリッド走行モードへの切り替えに際して行うべきエンジン始動のために要求されるエンジン始動トルクを差し引いたトルク値を上限とする上限値を設定したことを特徴とするハイブリッド車両の電気走行制御装置。 - 車両運転状態に応じた駆動トルク目標値から前記第2クラッチの伝達トルク容量目標値を演算し、該第2クラッチの入力側回転数を前記モータ/ジェネレータにより制御する、請求項1に記載の電気走行制御装置において、
前記電気走行モードでは、前記モータ/ジェネレータのモータトルク目標値に対し前記上限値を設定し、該モータトルク目標値が前記上限値に達した時における第2クラッチの伝達トルク容量目標値を、第2クラッチの伝達トルク容量目標値の上限値として設定するよう構成したことを特徴とするハイブリッド車両の電気走行制御装置。 - 請求項2に記載の電気走行制御装置において、
前記モータ/ジェネレータのモータトルク目標値が前記上限値に制限されている間、前記第2クラッチの伝達トルク容量制御により該第2クラッチの入力側回転数を調整して第2クラッチのスリップ制御を行うよう構成したことを特徴とするハイブリッド車両の電気走行制御装置。
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