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JP4781565B2 - シリコーン樹脂組成物およびそれを用いた低圧耐火ケーブル - Google Patents

シリコーン樹脂組成物およびそれを用いた低圧耐火ケーブル Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、導体上にシリコーン樹脂組成物からなる耐火絶縁層が設けられた低圧耐火ケーブルに関し、良好な耐火性を有するとともに、燃焼時における耐火絶縁層の電気絶縁性を高めるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
低圧耐火ケーブルとは、消防用非常設備の電気配線に使用され、火災中においても電線としての性能を所定時間保持し、消火設備、避難誘導表示機器等に一定時間給電することを目的とする耐火ケーブルのうち、供用電圧が600V以下のものをいう。その規格は、消防庁の低圧耐火ケーブル認定試験基準(JMCA試第1010号)に定められている。
【0003】
上記基準に合格する低圧耐火ケーブルとしては、従来、導体上にマイカテープを巻き回してなる耐火層を設け、この耐火層の上に架橋ポリエチレン等からなる絶縁層を設け、さらにこの絶縁層の上に可塑化ポリ塩化ビニル等からなるシースを押出被覆したものが知られている。
しかし、このような構造の低圧耐火ケーブルは、耐屈曲性が十分でなく、過度に屈曲するとマイカテープが破損して耐火性が低下するおそれがあること、また、マイカテープの切断が困難であって、端末加工時の導体口出しの作業性が低いこと等の欠点があった。
【0004】
このような不具合を解決するために、低圧耐火ケーブルの導体上に、耐火絶縁層として、軟化開始温度500℃以下、かつ結晶化開始温度840℃以下であるガラスフリットをシリコーン樹脂に配合したシリコーン樹脂組成物からなり、架橋されたものを設ける方法が提案されている(特願2001-65154参照)。
【0005】
しかし、このような低圧耐火ケーブルでは、前記基準に定める耐火試験において、加熱時に耐火絶縁層の絶縁抵抗が急激に低下して、その基準値を下回り、認定試験に不適合と判定されることがあった。これは、ガラスフリットに由来するアルカリ金属イオンが、高温下、耐火絶縁層内を移動することで、耐火絶縁層の電気伝導性が増加するためと考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の課題は、導体上にシリコーン樹脂組成物からなる耐火絶縁層が設けられた低圧耐火ケーブルにおいて、良好な耐火性を有するとともに、加熱時における耐火絶縁層の電気絶縁性を高めることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、前記シリコーン樹脂組成物として、シリコーン樹脂100重量部に対して、軟化開始温度500℃以下、かつ結晶化開始温度840℃以下のアルカリ金属を含むガラスフリット1〜40重量部と、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウムまたは酸化バリウムのいずれか1種または複数種の混合物からなる金属酸化物1〜40重量部と、架橋剤0.5〜3重量部とが添加されたものを用いることで解決される。また、導体上に、このようなシリコーン樹脂組成物からなり、架橋された耐火絶縁層が設けられた低圧耐火ケーブルを使用する。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を用いて詳しく説明する。
図1は、本発明に係る低圧耐火ケーブルの一例を示すものである。図1中、符号1は導体を示し、これは無酸素銅など公知のものからなる。この導体1上には耐火絶縁層2が設けられ、この耐火絶縁層2上にはシース3が設けられて、この例の低圧耐火ケーブルが構成されている。この低圧耐火ケーブルの寸法としては、例えば、導体1の断面積を1.2〜600mm2 としたとき、耐火絶縁層2の厚みを1.1〜3.5mm、シース3の厚みを1.5〜2.3mmとすることができる。
【0009】
耐火絶縁層2は、耐火層と絶縁層を兼ねるものであって、シリコーン樹脂とガラスフリットと、後述する所定の金属酸化物とを必須成分とするシリコーン樹脂組成物からなり、この組成物が架橋されているものである。上記シリコーン樹脂としては、ジメチルシリコーン樹脂、メチルビニルシリコーン樹脂、メチルフェニルシリコーン樹脂等、ポリシロキサンを主体とする公知のシリコーン樹脂に、微粉状シリカを配合して混練した、押出成形が可能な熱可塑性のものが用いられる。
【0010】
また、前記ガラスフリットは、前記シリコーン樹脂の燃焼時に生成する酸化ケイ素を主成分とする無機質の殻の強度を高めるためのものである。このガラスフリットには、釉薬(うわぐすり)を溶融し、冷却して粉砕し、粒子径を50μm以下とした粉末が用いられる。
ガラスフリットの粒子径が50μmを超えると、シリコーン樹脂と混練しても十分に混和されなくなるので、好ましくない。
【0011】
このガラスフリットとしては、軟化開始温度が500℃以下、好ましくは350〜500℃であって、かつ、結晶化開始温度が840℃以下、好ましくは500〜840℃以下のものが用いられる。
【0012】
本発明において、ガラスフリットの軟化開始温度とは、ガラスフリットが加熱されて軟化し始める温度をいい、具体的には高温顕微鏡による観察下、ガラスフリットの粉末が溶融し始め、粉末の角がなくなる温度を測定することで求められる。
【0013】
実際の耐火試験の状況から、前記シリコーン樹脂組成物が燃焼する温度領域は、350〜500℃であることが判明した。この温度領域でガラスフリットが溶融しないと、シリコーン樹脂の燃焼時に生成する無機質の殻が膨張して崩壊することがわかった。
すなわち、ガラスフリットが上記温度領域で溶融することにより、前記無機質の殻が溶融したガラスフリットにからめられ、その膨張が抑制され、緻密で高強度の耐火物の層が形成されることになる。
このような理由により、軟化開始温度を500℃以下と定めたのである。
【0014】
また、結晶化開始温度は、ある種のガラスフリットにおいて、一旦溶融したものをさらに加熱してゆくと、ある温度でガラスが結晶化することがあり、その温度を結晶化開始温度といい、具体的には示差走査熱量測定法(DSC)での吸熱ピーク温度を測定することで求められる。
【0015】
高温で結晶化する種類のガラスフリットでは、シリコーン樹脂が燃焼して生成する殻を、高温においても補強することができる。それに対して、高温で結晶化しない種類のガラスフリットでは、高温では流動性が高くなり、殻の補強効果が小さい。そのため、本発明で用いられるガラスフリットは、高温で結晶化するものに限定される。
そして、前記耐火試験では、最高到達温度が840℃と定められているので、この温度より低い温度で結晶化するガラスフリットでなければ、加熱時において、殻の補強効果が十分に得られない。このような理由により、結晶化開始温度を840℃以下と定めたのである。
【0016】
このような特性を有するガラスフリットは、例えば、SiO2 、Al23 、B23 、P25 、Na2 O、K2 O、Li2 O、CaO、As23 、TiO2 、ZrO2 などの酸化物を成分とするガラス組成物から選択される。
この組成の具体例としては、例えば、Na2 O:20重量%、Al23 :20重量%、SiO2 :40重量%、CaO:20重量%を含有するものが挙げられる。
【0017】
特に、Na2 O、K2 O、Li2 O等のアルカリ金属酸化物は、軟化開始温度の低いガラス組成物を得るため、1〜40重量%の範囲で含有されているのが好ましい。アルカリ金属酸化物の含有量が1重量%未満では、得られるガラス組成物の軟化開始温度が十分に低くならず、40重量%を超えると、得られるガラス組成物が高温で流動しやすくなり、ついには液状化するので好ましくない。
【0018】
また、前記ガラスフリットとしては、シリコーン樹脂への分散性ならびに相溶性を向上させるため、シランカップリング剤による表面処理を施したものが好ましい。上記シランカップリング剤としては、アミノシラン、エポキシシラン、アルキルシラン、メルカプトシラン、フェニルシラン、ビニルシラン等、公知のものが用いられる。表面処理方法としては、シランカップリング剤のアルコール溶液にガラスフリットを浸漬し、乾燥する方法等、周知の方法が適用できる。
【0019】
前記ガラスフリットの配合量は、シリコーン樹脂100重量部に対して、1〜40重量部とするのが好ましい。ガラスフリットの配合量が1重量部未満では燃焼時の殻の強度が十分に向上せず、40重量部を超えるとシリコーン樹脂組成物の機械的強度、押出成形性が低下する。
【0020】
本発明における所定の金属酸化物としては酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウムまたは酸化バリウムのいずれか1種または複数種の混合物を使用する前記所定の金属酸化物は、平均粒子径50μm以下の粉末が好適に用いられる。平均粒子径が50μmを超えると、シリコーン樹脂と混練しても十分に混和されなくなるので、好ましくない。
【0021】
本発明において前記所定の金属酸化物を添加する意味は、以下のとおりである。上述のとおり、耐火絶縁層2の材料として用いられる前記シリコーン樹脂組成物にはアルカリ金属酸化物を含有するガラスフリットが配合されている。このようなシリコーン樹脂組成物からなる耐火絶縁層2をもつ低圧耐火ケーブルにおいては、加熱時にアルカリ金属のイオンが耐火絶縁層2内を移動し、電気伝導性を高めるので、耐火絶縁層2の絶縁性能が低下することがあった。
【0022】
鋭意検討の結果、前記所定の金属酸化物をシリコーン樹脂組成物に添加したものを耐火絶縁層2の材料として用いると、その低圧耐火ケーブルは、加熱時における絶縁抵抗が著しく向上されたものとなることが分かった。これは、前記所定の金属酸化物が前記シリコーン樹脂組成物内に介在することで、アルカリ金属イオンが耐火絶縁層2内を移動することが抑制されるためと考えられる。
【0023】
前記所定の金属酸化物の添加量は、シリコーン樹脂100重量部に対して、1〜40重量部、特に好ましくは5〜20重量部とする。1重量部未満では絶縁抵抗の向上効果が十分ではない。40重量部を超えると、かえって絶縁抵抗が低下するので、低圧耐火ケーブルとして使用できない。前記所定の金属酸化物の添加量の上限については、以下のように考えられる。すなわち、工業材料用の金属酸化物では、不純物としてアルカリ金属酸化物を0.1〜5重量%程度含有しているので、この添加量の上限を超えて添加された場合、アルカリ金属の含有量が、前記所定の金属酸化物によるアルカリ金属イオンの移動の抑制効果を上回る量になっているものと推察される。
【0024】
従って、前記所定の金属酸化物として、不純物が極めて少ない高純度のものを用いれば、前記シリコーン樹脂組成物の混練時に前記所定の金属酸化物がシリコーン樹脂と十分に混和されうる範囲で、また前記低圧耐火ケーブルの加熱時に軟化したガラスフリットが前記殻の崩落を防ぎその強度を維持できる範囲で、この添加量の上限を引き上げることができると考えられる。しかしながら、工業材料用の金属酸化物を用いても絶縁性能の向上効果を十分に挙げることができ、また、それは高純度のものに比して廉価であってコスト面でも有利であるので、40重量部を添加量の上限とした。
【0025】
上記シリコーン樹脂組成物の架橋のため、有機過酸化物などの架橋剤が添加される。この架橋剤の具体例としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
この架橋剤の配合量は、シリコーン樹脂100重量部に対して、0.5〜3重量部とされる。0.5重量部未満では架橋が不十分に行われず、3重量部を超えると押出成形時にスコーチを生じることがある。
【0026】
上記シリコーン樹脂組成物には、これ以外に、種々の添加剤、例えば充填剤、着色剤、安定剤等を適宜添加することができる。また、酸化鉄、セリウム系金属酸化物、カーボンブラックなどの耐熱向上剤を添加してもよい。また、前記金属酸化物として、酸化チタンを用いた場合は、これが耐熱向上剤としても作用するので、耐熱向上剤を特に添加しなくてもよい。
この耐熱向上剤は、必要に応じて、シリコーン樹脂100重量部に対して10重量部以下、添加することができる。
【0027】
本発明のシリコーン樹脂組成物は、上述のように、前記シリコーン樹脂にガラスフリット、前記所定の金属酸化物ならびに架橋剤を配合し、必要に応じてその他の添加剤を添加したものであり、これは、ロールなどの混練機を用い、通常の方法で混和されて使用される。
【0028】
シース3は、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、またはクロロプレンゴム、可塑化ポリ塩化ビニル等、公知の樹脂からなるものである。
このような低圧耐火ケーブルの製造は、通常の押出被覆法によって行われる。例えば、図1に示した構造の耐火ケーブルでは、まず導体1に前記シリコーン樹脂組成物を押出被覆する。これを架橋装置に送り、100〜200℃に加熱してシリコーン樹脂組成物を架橋することによって耐火絶縁層2を形成する、この耐火絶縁層2の上にシース3を押出被覆する。
【0029】
このような低圧耐火ケーブルにあっては、火災等により燃焼した際に、耐火絶縁層2が燃え、酸化ケイ素を主体とする殻が生成される。この殻は、耐火絶縁層2中に存在するガラスフリットによって、その機械的強度が大きく高められる。また、この耐火絶縁層2を構成するシリコーン樹脂組成物に、前記所定の金属酸化物が添加されており、これが耐火絶縁層2に含まれるアルカリ金属イオンの移動を抑制するので、加熱時においても十分な絶縁抵抗を保持する。
【0030】
以下、具体例を示す。
表1および表2に示す組成のシリコーン樹脂組成物を、断面積3.5mm2 の導体1上に厚み1.1mmに押出被覆し、これを200℃に加熱し架橋して耐火絶縁層2を形成し、この上にポリオレフィンを押出被覆して厚み1.5mmのシース3を設けることによって、22種類の低圧耐火ケーブルを製造した。
【0031】
表1および表2において、「シリコーン樹脂」には汎用押出グレードの、密度1.17g/cmのものを用いた。「ガラスフリット」は、軟化開始温度370℃、結晶化開始温度800℃であって、酸化ナトリウムの含有量が20重量%のものである。「耐熱向上剤」には、金属酸化物系のものを、「架橋剤」には有機過酸化物を用いた。ここで用いた前記所定の金属酸化物の平均粒子径は、酸化チタンでは0.25μm、酸化アルミニウムでは1.2μm、酸化カルシウムでは0.5μm、酸化バリウムでは10μmであった。
【0032】
上記低圧耐火ケーブルに対して、以下の試験を行った。
耐火電線認定業務委員会の認定試験に合格した試験炉において、低圧耐火電線認定試験基準に定められた方法に従い、燃焼試験前後の耐火絶縁層の絶縁抵抗を測定した。この絶縁抵抗が上記基準に定められた値、すなわち、加熱前において50MΩ以上、かつ加熱30分において0.4MΩ以上であれば、該低圧耐火ケーブルを合格とし、そうでなければ不合格とした。
【0033】
上記試験の結果を表1および表2に示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004781565
【0035】
【表2】
Figure 0004781565
【0036】
表1から明らかなように、実施例の低圧耐火ケーブルは、その加熱30分における抵抗値が基準値の0.4MΩを超え、合格と判定された。
表2に示される比較例の低圧耐火ケーブルでは、いずれも加熱30分における抵抗値が基準値の0.4MΩを下回った。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のシリコーン樹脂組成物は、シリコーン樹脂に、軟化開始温度500℃以下、かつ結晶化開始温度840℃以下のアルカリ金属を含むガラスフリットと、前記所定の金属酸化物とが添加されているので、燃焼して生成される殻の機械的強度が高いものとなるとともに、加熱時に所定の絶縁抵抗を維持する
【0038】
また、本発明の低圧耐火ケーブルは、導体上に、前記シリコーン樹脂組成物からなり、架橋された耐火絶縁層が設けられたものであるので、良好な耐火性を有するとともに、加熱時においても十分な絶縁性能を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の低圧耐火ケーブルの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
1…導体、2…耐火絶縁層、3…シース。

Claims (2)

  1. シリコーン樹脂100重量部に対して
    軟化開始温度500℃以下、かつ結晶化開始温度840℃以下のアルカリ金属を含むガラスフリット1〜40重量部と、
    酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化カルシウムまたは酸化バリウムのいずれか1種または複数種の混合物からなる所定の金属酸化物1〜40重量部と、
    架橋剤0.5〜3重量部とが添加されたことを特徴とするシリコーン樹脂組成物。
  2. 請求項に記載のシリコーン樹脂組成物からなり、架橋された耐火絶縁層が導体上に設けられたことを特徴とする低圧耐火ケーブル。
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