JP4779250B2 - 加工用二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、加工用二軸延伸ポリエステルフィルムに関し、とくに、耐熱性、成形性、蒸着性、印刷性に優れた加工用二軸延伸ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
塩化ビニルフイルム、ポリオレフィンフイルムは、加工用のフィルムとして一般的に使用されている。しかし、塩化ビニルフイルムにおいては、使用する可塑剤による諸特性の悪化、耐熱性、耐薬品性などの不足、使用後の焼却時の有毒ガスの発生等の問題がある。また、ポリオレフィンフイルムにおいては耐熱性、白化などの点で問題がある。一方、ポリエステルフイルムの代表例であるポリエチレンテレフタレート(PET)二軸延伸フイルムは、良好な機械強度、熱的特性、湿度特性、耐薬品性、その他の多くの優れた特性から、工業材料、磁気記録材料、包装材料など広い分野において使用されている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレート(PET)二軸延伸フイルムは、成形加工用途においては、伸度や柔軟性に乏しいため、主な構成材として使用されることが少なかった。ポリエステルに、伸度、柔軟性等を付与すれば加工用フィルムとして好適に使用できることから、ポリエステルに成形加工特性を付与する方法として、共重合成分を導入する技術が知られている。また、加工性の良いポリエステルとして、未延伸PET等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリエステルに共重合成分を導入する方法は、融点が低下し耐熱性が悪化するといった問題があった。また、未延伸PET、いわゆるA−PET等においては弾性率や強度が低く、二軸延伸フィルムの様な良好な平面特性を発揮することができないばかりか、熱寸法性が劣り、高品質が要求される成形加工には不適であった。
かかる状況を鑑み、本発明は、従来のPETフイルムには無い伸度、加工性を有するとともに、耐熱性、熱寸法安定性、印刷性等に優れた加工用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この目的に沿う本発明のフィルムは、融点が245〜270℃のポリエステルからなり、下記式(1)を満足することを特徴とする加工用二軸延伸ポリエステルフィルムより得ることができる。
(Fa+Fb)/(Sa+Sb)≧150 ・・・式(1)
(ここでFaは25℃におけるフィルム任意方向の破断伸度、FbはFaと垂直方向における25℃での破断伸度、Saは150℃、30分におけるFaと同方向の熱収縮率(%)、SbはSaと垂直方向における150℃、30分での熱収縮率(%)を示す)
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するポリエステルは、良好な耐熱性を発現する点、伸度の経時変化を抑制する点、成形加工時に金型等の治具への粘着防止の点、あるいはインサート成形された際に耐熱性不足による破れを防止する等の点から、融点が245〜270℃であることが必要であり、好ましくは250℃〜265℃である。
【0006】
本発明に使用するポリエステルは、融点が上記範囲であれば特に限定されないが、好ましくはエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルであり、90モル%以上をエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位とすることが好ましく、また高い耐熱性と良好な熱寸法安定性すなわち低い熱収縮率を付与する点等から96モル%以上であることがさらに好ましく、特に98モル%以上であることが好ましい。
成形性、耐熱性を重視する用途では、ナフタレンジカルボン酸成分を含むことが好ましく、その添加量はジカルボン酸中の1〜10モル%が好ましく、生産性等の点で1〜4モル%がさらに好ましい。
【0007】
本発明に使用するポリエステルには、テレフタル酸及び/またはナフタレンジカルボン酸以外のジカルボン酸成分を共重合してもよく、例えばイソフタル酸、、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマ−酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を使用することができる。また、本発明に使用するポリエステルには、エチレングリコール以外のグリコ−ル成分を共重合しても良く、例えばプロパンジオ−ル、ブタンジオ−ル、ペンタンジオ−ル、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール等が使用できる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコ−ル成分は2種以上を併用してもよい。
【0008】
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、本発明に使用するポリエステルにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロ−ルプロパン等の多官能化合物を共重合することもできる。本発明で、好ましく少量共重合される成分としては、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、セバシン酸、ダイマー酸、イソフタル酸などを挙げることができる。
【0009】
本発明においては、耐熱性、耐薬品性の点で、ポリエステルを二軸延伸することが必要である。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸、チューブラー延伸のいずれであってもよいが、二軸延伸フィルムに関する製造条件を鋭意検討した結果、同時二軸延伸あるいは縦、横の順に延伸を行う逐次二軸延伸が好ましく用いられる。
【0010】
本発明の加工用二軸延伸ポリエステルフィルムは、耐熱性、寸法安定性、印刷性、成形性を両立させる点から、(Fa+Fb)/(Sa+Sb)が150以上であることが必要であり、好ましくは200以上、特に好ましくは250以上である。ここでFaは25℃におけるフィルム任意方向の破断伸度、FbはFaと垂直方向における25℃での破断伸度、Saは150℃、30分におけるFaと同方向の熱収縮率(%)、SbはSaと垂直方向における150℃、30分での熱収縮率(%)を示す。
【0011】
また、(Fa+Fb)は、350%以上であることが好ましく、特に好ましくは380%〜600%である。ここで、破断伸度を該範囲に制御する方法として、縦延伸工程での予熱温度をガラス転移温度(Tg)+30℃〜Tg+70℃で1〜10秒行う方法が用いられる。
【0012】
また、成形加工性を各方向で均一良好にする上で、FaとFbの差の絶対値が0〜50%であることが好ましく、さらに好ましくは0〜40%である。
【0013】
本発明のフィルムは、加工時の熱寸法変化抑制と適度な自己張力負荷の点、更には印刷でのピッチずれを抑制する点等から、SaおよびSbが共に1.5%以下であることが好ましく、更には−1〜1%であることが好ましい。150℃での熱収縮率を上記の様に制御する方法としては特に限定されないが、たとえばフィルム延伸後の熱処理を異なる温度で2段階以上処理する方法が好ましく用いられる。この場合、各々の熱処理温度の差が20〜120℃であることが好ましく、210〜240℃と120〜170℃の処理工程が含まれることがより好ましい。多段熱処理により、25℃での破断伸度を高く維持しながら150℃での低熱収縮性を達成することができる。
【0014】
本発明の加工用二軸延伸ポリエステルフィルムにおける厚み方向の屈折率は、厚み方向に加工された際の成形性や耐衝撃性を良好にする点から1.50〜1.54であることが好ましく、より好ましくは1.51〜1.53である。
【0015】
また、本発明のフィルムは、耐熱性、生産性、低溶出性の点でポリエステルの固有粘度が0.5〜1dl/gが好ましく、さらに好ましくは、0.55〜0.7dl/gである。
【0016】
本発明の加工用二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、面配向係数が0.11〜0.15であることが優れた成形加工性、折曲げ時の白化防止や高温成形時の弛み防止の点から好ましく、さらに好ましくは0.12〜0.145である。
【0017】
また、本発明のフィルムは、成形時の追従性、均一成形性等の点から、フィルムの25℃での弾性率は2.5〜3.5GPaが好ましく、特に好ましくは3〜3.5GPaである。
【0018】
次に、本発明に使用するポリエステルを製造する方法について記載する。本発明に使用するポリエステルを製造する際には、反応触媒、着色防止剤を使用することができ、反応触媒としては例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等、着色防止剤としては例えばリン化合物等を使用することができ、好ましくは、通常ポリエステルの重合が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレ−ト、ゲルマニウムβ−ナフトレ−ト等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を使用することができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどが使用できる。チタン化合物としては、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物などが好ましく使用される。
【0019】
例えば、本発明に使用するポリエステルとしてポリエチレンテレフタレ−トを製造する際に、ゲルマニウム化合物として二酸化ゲルマニウムを添加する場合でさらに詳しく説明する。テレフタル酸成分とエチレングリコ−ルをエステル交換またはエステル化反応せしめ、次いで二酸化ゲルマニウム、リン化合物を添加し、引き続き高温、減圧下で一定のジエチレングリコール含有量になるまで重縮合反応せしめ、ゲルマニウム元素含有重合体を得る。さらに、好ましくは得られた重合体をその融点以下の温度において減圧下または不活性ガス雰囲気下で固相重合反応せしめ、アセトアデルヒドの含有量を減少させ、所望の固有粘度、カルボキシル末端基を得る方法等を挙げることができる。
【0020】
本発明に使用するポリエステルは、ジエチレングリコール成分量が0.01〜4重量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.01〜2重量%である。ジエチレングリコール成分量を制御することが、衛生性、経時後や加工で熱履歴を受けても良好な衛生性を維持する上で望ましい。ジエチレングリコールの添加タイミングは特に限定されないが、たとえばポリエステルの重合時に添加してもよい。また、本発明に使用するポリエステルには、酸化防止剤を0.0001〜1重量%添加してもよい。
【0021】
本発明の加工用二軸延伸ポリエステルフィルムにおいて、衛生性を良好にする上で、フィルム中のアセトアルデヒドの含有量は好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは25ppm以下、特に好ましくは20ppm以下が望ましい。フィルム中のアセトアルデヒドの含有量を30pm以下とする方法は特に限定されないが、例えばポリエステルを重縮合反応等で製造する際の熱分解によって生じるアセトアルデヒドを除去する方法としては、ポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において、ポリエステルの融点以下の温度で熱処理する方法、好ましくはポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において150℃以上、融点以下の温度で固相重合する方法、真空ベント式押出機を使用して溶融押出する方法、ポリエステルを溶融押出する際に押出温度を高融点ポリエステル側の融点+30℃以内、好ましくは融点+25℃以内で、短時間、好ましくは平均滞留時間1時間以内で押出す方法等が好ましく用いられる。
【0022】
本発明のフィルムは、単層、積層いずれにおいても使用できる。本発明の二軸延伸フイルムの厚さは、任意の厚みに設定できるが、追従性の点から3〜500μmであることが好ましく、さらに好ましくは10〜200μmであり、特に好ましくは30〜150μmである。積層にて使用される場合、熱可塑性ポリマ、熱硬化性ポリマなどのポリマを積層してもよく、特に接着性や追従性の点から、本発明のフィルムの少なくとも片面に融点が180〜260℃のポリエステルB(後述する)を積層することが好ましく、特に融点が190〜240℃のポリエステルBであることがフィルムの腰(スティッフネス)の柔軟化や接着性の点から好ましい。ここで、積層するポリエステルBとしては、例えば高分子量ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ブタンジオール、イソフタル酸残基骨格を有する共重合ポリエチレンテレフタレート、さらにジエチレングリコールを添加または共重合したポリエステルなどが好ましく使用できる。積層構成はB層を片面に積層する2層、両面に積層する3層、またポリエステルBに加えポリエステルC等を積層する3層以上の積層構成などが適用できる。ここで、ポリエステルB層の積層厚みは、接着性等の点から、ポリエステルB層のみの合計で1〜30μmであることが好ましく、より好ましくは2〜20μmである。
【0023】
本発明における二軸延伸フィルムの製造方法としては、例えば各ポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し未延伸シートを得る。該未延伸シートをフイルムの長手方向及び幅方向に延伸、熱処理し、目的とする二軸延伸フィルムを得る。延伸方式としては、同時二軸、逐次二軸延伸いずれでもよいが、フィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が好ましく用いられる。延伸倍率としては長手方向、幅方向それぞれの方向に1.5〜4.0倍、好ましくは1.8〜4.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが好ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+80℃以下であれば任意の温度とすることができるが、通常は80〜150℃が好ましい。二軸延伸の後にフイルムの熱処理を行うが、この熱処理はオ−ブン中、加熱されたロ−ル上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は120℃以上245℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは120〜240℃である。また熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行うのが好ましい。熱処理はフイルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつおこなってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後、熱処理を行っても良い。
【0024】
本発明のフイルムには、フィルムの取扱い性、加工性と表面ヘイズを両立させるために、平均粒子径0.01〜5μmの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子などの外部粒子の中から任意に選定される粒子が0.01〜10重量%含有されていることが好ましい。特に平均粒子径0.1〜5μmの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子が0.01〜0.2重量%含有されていることが好ましい。5μmを越える平均粒子径を有する粒子を使用するとフィルムの欠陥が生じやすくなる。ここで、内部粒子の析出方法としては、例えば特開昭48−61556号公報、特開昭51−12860号公報、特開昭53−41355号公報、特開昭54−90397号公報などに記載の技術を用いることができる。また、さらに特開昭55−20496号公報、特開昭59−204617号公報などに記載された他の粒子との併用も行うことができる。
無機粒子および/または有機粒子としては、例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレ−等の無機粒子およびスチレン、シリコ−ン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができる。なかでも湿式および乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等が好ましく用いられる。これらの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子は、二種以上を併用してもよい。表面ヘイズをコントロールする点から球状粒子が好ましく、特にシリカ、アルミナが好ましい。
【0025】
本発明のフィルムにコロナ放電処理などの表面処理を施すことにより接着性を向上させることは、フィルム特性を向上させる点で好ましいものである。コロナ放電の処理強度としては5〜50W・min/m2が好ましく 、より好ましくは10〜45W・min/m2である。
【0026】
本発明のポリエステルフイルムには、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、耐候剤、紫外線吸収剤、顔料、染料などの添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲において添加することができる。また、エンボス加工、サンドマット加工などの表面凹凸加工、あるいはプラズマ処理、アルカリ処理などの表面処理を必要に応じて施してもよい。さらに、本発明のフイルムに、易接着処理剤、帯電防止剤、水蒸気・ガスバリア剤(ポリ塩化ビニリデンなど)、離型剤、粘着剤、接着剤、難燃剤、紫外線吸収剤、マット化剤、顔料、染料などを、添加、コーティングおよび印刷の1種以上を行なってもよい。
【0027】
また、本発明のフィルムに、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、パラジウムなどの金属やその化合物を遮光、水蒸気・ガスバリア、表面導電性、赤外線反射などの目的で真空蒸着してもよい。
【0028】
本発明の加工用二軸延伸ポリエステルフィルムは、加工用途に使用される。加工方法は特に限定されず、たとえば上記したフィルムの表面加工やエンボス加工、サンドマット加工などの成形加工等を挙げることができる。
【0029】
〔物性、特性の測定、評価方法〕
以下に、本発明に用いた各物性、特性の測定、評価方法について記載する。
【0030】
(1)融点(Tm)、ガラス転移温度(Tg)
示差走査型熱量計DSC2(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。サンプル10mgを窒素気流下で280℃、5分間溶融保持し、ついで液体窒素で急冷した。得られたサンプルを10℃/分の速度で昇温する過程で、ガラス状態からゴム状態への転移に基づく比熱変化を読取り、この温度をガラス転移温度(Tg)とし、結晶融解に基づく吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。
【0031】
(2)弾性率
弾性率についてはASTM−D−882−81(A法)に準じて測定し、長手方向と幅方向の平均値を算出した。
【0032】
(3)伸度
伸度についてはASTM−D−882−81(A法)に準じて測定した。
【0033】
(4)熱収縮率
フィルムサンプル標線間を200mmにとり、フィルムを10mm巾に切断し、フィルムサンプルを長さ方向に吊るし、1gの荷重を長さ方向に加えて、150℃の熱風を用い30分間加熱した後、標線間の長さを測定し、フィルムの収縮量を原寸法に対する割合として百分率で表した。
【0034】
(5)屈折率
ナトリウムD線を光源として、アッベ屈折率計を用いて厚み方向の屈折率(Nz)を測定した。
【0035】
(6)成形加工性
金型を150℃に加熱後フィルムに押込み、絞り比0.6で成形を行い、下記の通り判定した。B級以上が合格である。
A級:均一に成形され、成形体も弛みがない。
B級:一部偏肉した部分があるが、全体としては均一に成形され、成形後の弛みもない。
C級:明らかに不均一成形されており、表面の荒れが認められる。
【0036】
(7)印刷加工性
高さ25mm 、巾200mm ×長さ180mmで転写インモールド成形を行い下記の通り判定した。B級以上が合格である。
A級:印刷面も斑がなく鮮明で良好である。
B級:部分的に印刷斑が若干あるが、問題ないレベルである。
C級:破れが認められたり、印刷斑が顕著であり、実用に耐えない。
【0037】
(8)真空成形性
本発明のフィルムと厚み1.5mmのポリスチレンシートとをドライラミネートで貼り合わせた後、150℃で絞り比0.5でカップ状にプラグアシスト真空成形を実施し、下記の通り判定した。B級以上が合格である。
A級:均一に成形され、角の成形も追従している。
B級:一部偏肉した部分があるが、全体としては均一に成形されている。
C級:成形が不可であるかあるいは明らかに不均一成形である。
【0038】
【実施例】
以下に実施例によって本発明を説明する。
【0039】
実施例1
ポリエステルとして平均粒径0.4μmのシリカ粒子を0.05重量%含有するポリエチレンテレフタレート(アンチモン系触媒、固有粘度0.64)のチップを180℃3時間真空乾燥して単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを非粘着シリコーンロールにて、Tg+40℃で4秒予熱後、該ロールにて延伸温度105℃にて長手方向に合計3.4倍多段延伸した後、25℃に冷却し、さらに温度95℃で4秒予熱後に120℃で幅方向に3.2倍多段延伸し、その後130℃で2秒処理後、238℃にて幅方向にリラックス5%、5秒間熱処理し、2軸延伸された厚さ45μmのポリエステルフイルムを得た。得られたフィルムは表1に示す通り、優れた特性を示した。
【0040】
実施例2
ポリエステルとして平均粒径0.8μmの球状シリカ粒子を0.012重量%含有するポリエチレンテレフタレート(アンチモン触媒、固有粘度0.64)とポリブチレンテレフタレート(チタン系触媒、固有粘度0.9)のチップを97/3重量%の割合でブレンドし、150℃で5時間真空乾燥後、単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを非粘着シリコーンロールにてTg+40℃で3秒予熱後、該ロールにて延伸温度110℃にて長手と幅方向に3.2倍で同時二軸延伸し、232℃にて長手方向と幅方向ともにリラックス4%、155℃で1%、各3秒間熱処理し、2軸延伸された厚さ45μmのポリエステルフイルムを得た。得られたフィルムは表1に示す通り、優れた特性を示した。
【0041】
実施例3
ポリエステルとして平均粒径1.5μmのシリカ粒子を0.012重量%含有するポリエチレンテレフタレート(非晶ゲルマニウム系触媒、固有粘度0.67)のチップを180℃3時間真空乾燥して単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加(8kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを非粘着シリコーンロールにてTg+40℃で7秒予熱後、該シリコーンロールにて延伸温度100℃にて長手方向に3.1倍延伸、50℃に冷却後、温度95℃で5秒予熱後に120℃で幅方向に2.9倍多段延伸した後、235℃にて幅方向リラックス4%、5秒間熱処理し、2軸延伸された厚さ45μmのポリエステルフイルムを得た。得られたフィルムは表1に示す通り、優れた特性を示した。
【0042】
実施例4
ポリエステルとして平均粒径0.8μmの球状シリカ粒子を0.012重量%含有するポリエチレンテレフタレート(アンチモン触媒、固有粘度0.64)とポリプロピレンテレフタレート(チタン系触媒、固有粘度0.9)のチップを97/3重量%の割合でブレンドし、150℃で5時間真空乾燥後、単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを非粘着シリコーンロールにて予熱Tg+40℃で5秒予熱後、該シリコーンロールにて延伸温度110℃にて長手と幅方向に3.2倍で同時二軸延伸し、229℃にて長手方向と幅方向ともにリラックス4%、155℃で1%、各3秒間熱処理し、2軸延伸された厚さ45μmのポリエステルフイルムを得た。得られたフィルムは表1に示す通り、優れた特性を示した。
【0043】
比較例1
ポリエステルとして平均粒径1.5μmの凝集シリカ粒子を0.03重量%有するポリエチレンテレフタレート(アンチモン系触媒、固有粘度0.59)のチップを180℃3時間真空乾燥して単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをハードクロムメッキロールによりTg+10℃で3秒予熱後、セラミックロールにて延伸温度90℃にて長手方向に3.7倍一挙に延伸し、60℃に冷却後、温度95℃で5秒予熱後に110℃で幅方向に3.7倍延伸した後、200℃にて幅方向リラックス4%、5秒間熱処理し、2軸延伸された厚さ45μmのポリエステルフイルムを得た。(Fa+Fb)/(Sa+Sb)の値が本発明の範囲を外れた本比較例は、加工性、成形性に劣っていた。
【0044】
比較例2
ポリエステルとして平均粒径1.5μmの炭酸カルシウム粒子を0.1重量%含有するイソフタル酸17モル共重合ポリエチレンテレフタレート(アンチモン系触媒、固有粘度0.62)のチップを150℃3時間真空乾燥して単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムをTg+15℃で3秒予熱後、ポリテトラフルオロエチレン製ロールにて延伸温度95℃にて長手方向に3.6倍延伸、50℃に冷却後、温度96℃で3秒予熱後に115℃で幅方向に3.4倍延伸した後、190℃にて幅方向リラックス5%、5秒間熱処理し、2軸延伸された厚さ38μmのポリエステルフイルムを得た。ポリエステルの融点が低く、(Fa+Fb)/(Sa+Sb)の値が本発明の範囲を外れた本比較例は、加工性、成形性に劣っていた。
【0045】
【表1】
【0046】
【発明の効果】
本発明により、従来のPETフイルムにない、伸度、柔軟性を有し成形加工性に優れるとともに、耐熱性、蒸着性、印刷性等の表面加工特性に優れた加工用二軸延伸ポリエステルフィルムを提供することができる。
Claims (4)
- 融点が245〜270℃のポリエステルからなり、延伸前にガラス転移温度(Tg)+30℃〜Tg+70℃で1〜10秒予熱を行うことによって得られる、
下記式(1)を満足することを特徴とする加工用二軸延伸ポリエステルフィルム。
(Fa+Fb)/(Sa+Sb)≧150 ・・・式(1)
(ここでFaは25℃におけるフィルム任意方向の破断伸度、FbはFaと垂直方向における25℃での破断伸度、Saは150℃、30分におけるFaと同方向の熱収縮率(%)、SbはSaと垂直方向における150℃、30分での熱収縮率(%)を示す) - 前記ポリエステルの構成単位の90モル%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位であることを特徴とする請求項1に記載の加工用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- フィルム厚み方向の屈折率が1.50〜1.54であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の加工用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- Sa及びSbが共に1.5%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の加工用二軸延伸ポリエステルフィルム。
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