JP4208055B2 - 容器成形用二軸延伸ポリエステルフイルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は容器成形用二軸延伸ポリエステルフイルムに関するものである。更に詳しくは成形性、耐衝撃性、味特性に優れ、成形加工によって製造される容器、特に金属缶に好適な容器成形用二軸延伸ポリエステルフイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、金属缶の缶内面及び外面は腐食防止を目的として、エポキシ系、フェノ−ル系等の各種熱硬化性樹脂を溶剤に溶解または分散させたものを塗布し、金属表面を被覆することが広く行われてきた。しかしながら、このような熱硬化性樹脂の被覆方法は塗料の乾燥に長時間を要し、生産性が低下したり、多量の有機溶剤による環境汚染など好ましくない問題がある。
【0003】
これらの問題を解決する方法として、金属缶の材料である鋼板、アルミニウム板あるいは該金属板にめっき等各種の表面処理を施した金属板にフイルムをラミネ−トする方法がある。そして、フイルムのラミネ−ト金属板を絞り成形やしごき成形加工して金属缶を製造する場合、フイルムには次のような特性が要求される。
【0004】
(1)金属板との密着性に優れていること。
【0005】
(2)成形性に優れ、成形後にピンホールなどの欠陥を生じないこと。
【0006】
(3)金属缶に対する衝撃によって、ポリエステルフイルムが剥離したり、クラック、ピンホールが発生したりしないこと。
【0007】
(4)缶の内容物の香り成分がフイルムに吸着したり、フイルムからの溶出物によって内容物の風味がそこなわれないこと(以下味特性と記載する)。
【0008】
これらの要求を解決するために多くの提案がなされており、例えば特開昭64−22530号公報には特定の密度、面配向係数を有するポリエステルフイルム、特開平2−57339号公報には特定の結晶性を有する共重合ポリエステルフイルム等が開示されている。しかしながら、これらの提案は上述のような多岐にわたる要求特性を総合的に満足できるものではなく、特に高度な成形性、優れた味特性が要求される用途では十分に満足できるレベルにあるとは言えなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記した従来技術の問題点を解消することにあり、成形性、耐熱性、味特性に優れ、特に成形加工によって製造される味特性に優れた金属缶に好適な容器成形用二軸延伸ポリエステルフイルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記した本発明の目的は、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルからなり、長手方向の破断伸度(SMD)と幅方向の破断伸度(STD)が[式1]及び[式2]を満足することを特徴とするラミネート金属缶成形用二軸延伸ポリエステルフィルムによって達成することができる。
【0011】
120%≦(SMD+STD)/2≦193% …[式1]
|SMD−STD|≦60% …[式2]
本発明は、鋭意検討の結果、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルを二軸延伸し特定の伸度と伸度のバランスを有するフィルムを検討したところ、ラミネート性、成形性に優れるだけでなく、特にレトルト後の低分子物の発生が少なく味特性良好なフィルムが得られることを見出したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明におけるエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、90モル%以上をエチレンテレフタレート単位とするポリエステルである。さらに、レトルト処理などの熱処理の後で味特性を良好にする点で、エチレンテレフタレート単位が93モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95モル%以上であると金属缶に飲料を長期充填しても味特性が良好であるので望ましい。一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコ−ル成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えばイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマ−酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。一方、グリコ−ル成分としては例えばプロパンジオ−ル、ブタンジオ−ル、ペンタンジオ−ル、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコ−ル成分は2種以上を併用してもよい。
【0013】
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、共重合ポリエステルにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロ−ルプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
【0014】
本発明で、好ましく少量共重合される成分としては、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、セバシン酸、ダイマー酸、イソフタル酸などがあるが、味特性が厳しい用途ではエチレンテレフタレートが95モル%以上、特に好ましくは97モル%以上であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明では、成形性、味特性を重視する用途ではナフタレンジカルボン酸成分を共重合してもよく、好ましくは1〜15モル%であるが、フィルムの製膜性などの点で1〜7モル%がさらに好ましく、より好ましくは1〜5モル%である。
【0016】
また、本発明では、長期にわたる味特性を良好に保持する点、成形性を良好にする点で、融点が246℃以上280℃以下であることが好ましく、より好ましくは248℃以上275℃以下である。
【0017】
本発明においては、耐熱性、味特性の点で、エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルを二軸延伸化することが必要である。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよいが、二軸延伸フィルムに関する延伸条件を鋭意検討した結果、成形性、耐衝撃性の点で、長手方向の破断伸度(SMD)と幅方向の破断伸度(STD)が[式1]及び[式2]を満足することが必要である。
【0018】
120%≦(SMD+STD)/2≦350% …[式1]
|SMD−STD|≦60% …[式2]
ここで、破断伸度は、テンシロン(引っ張り試験機)を用いて、引っ張り速度300mm/min、幅10mm、試料長50mm、25℃、65%雰囲気で破断伸度(%)を測定したものである。
【0019】
さらに、好ましくは成形性、耐衝撃性の点で長手方向の破断伸度(SMD)と幅方向の破断伸度(STD)の平均((SMD+STD)/2)が、140%以上300%以下であることが望ましく、特に好ましくは160%以上300%以下である。
【0020】
また、缶の上部の成形性を良好にするうえで、長手方向の破断伸度(SMD)と幅方向の破断伸度(STD)の差の絶対値が50%以下であることがさらに好ましく、特に好ましくは40%以下である。
【0021】
さらに、本発明では、製缶工程での熱処理後の結晶化抑制、耐衝撃性向上、ラミネート鋼板を熱処理後に加工する際の加工性向上の点でエチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルの熱結晶化パラメータΔTcgが[式3]を満足することが好ましい。
【0022】
60(℃)≦ΔTcg≦150(℃) …[式3]
ここで、
ΔTcg=Tc −Tg
Tc :DSCにおける昇温結晶化ピーク温度(℃)
Tg :DSCにおけるガラス転移温度(℃)
特に好ましくは70℃以上150℃以下、特に好ましくは80℃以上150℃以下である。このような熱結晶性を付与する方法としては、触媒、分子量、ジエチレングリコールの副生、添加をコントロールすることにより達成しうる。
【0023】
本発明では、成形性、耐衝撃性、味特性の点でポリエステルの固有粘度が0.4〜1.5dl/gが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜1.3dl/g、特に好ましくは0.6〜1.2である。
【0024】
本発明において、面配向係数が、0.05〜0.17であることが金属板に熱ラミネート後の成形性、耐衝撃性を良好とする点で好ましい。面配向係数が低すぎると耐衝撃性が大きく悪化し、面配向係数が高すぎるとラミネート性、成形性を悪化させる。さらに、面配向係数が0.05〜0.13、より好ましくは0.05〜0.128であると成形性、耐衝撃性が特に良好となるので好ましい。
【0025】
さらに、成形性を良好にする点で面配向係数のばらつきが小さいことが望ましく、フィルムの長手方向または幅方向について3cm間隔で10点測定した際の最大、最小の差が0.03以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.02以下、特に好ましくは0.015以下である。
【0026】
本発明において、フィルムの密度が1.35〜1.41g/cm3 であることが、金属板に熱ラミネート後に成形性を良好にする点で好ましい。密度が低すぎるとしわなどにより成形性を悪化し、密度が高すぎるとラミネートフィルムの成形性にばらつきを生じることとなる。さらに、好ましくはフィルムの密度が1.36〜1.40g/cm3 である。
【0027】
本発明のポリエステルを製造する際には、従来公知の反応触媒、着色防止剤を使用することができ、反応触媒としては例えばアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等、着色防止剤としては例えばリン化合物等挙げることができる。好ましくは、通常ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましい。このような方法としては例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレ−ト、ゲルマニウムβ−ナフトレ−ト等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を挙げることができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。アンチモン化合物としては、特に限定されないが例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどが挙げられる。チタン化合物としては、特に限定されないがテトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物などが好ましく使用される。
【0028】
例えばポリエチレンテレフタレ−トを製造する際に、ゲルマニウム化合物として二酸化ゲルマニウムを添加する場合で説明する。テレフタル酸成分とエチレングリコ−ルをエステル交換またはエステル化反応せしめ、次いで二酸化ゲルマニウム、リン化合物を添加し、引き続き高温、減圧下で一定のジエチレングリコール含有量になるまで重縮合反応せしめ、ゲルマニウム元素含有重合体を得る。さらに、好ましくは得られた重合体をその融点以下の温度において減圧下または不活性ガス雰囲気下で固相重合反応せしめ、アセトアデルヒドの含有量を減少させ、所定の固有粘度、カルボキシル末端基を得る方法等を挙げることができる。
【0029】
本発明におけるポリエステルは、好ましくはジエチレングリコール成分量が0.01〜4重量%、さらに好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.01〜2重量%であることが製缶工程での熱処理、製缶後のレトルト処理などの多くの熱履歴を受けても良好な耐衝撃性を維持する上で望ましい。このことは、200℃以上での耐酸化分解性が向上するものと考えられ、さらに公知の酸化防止剤を0.0001〜1重量%添加してもよい。また、特性を損ねない範囲でジエチレングリコールをポリマ製造時に添加しても良い。
【0030】
また、味特性を良好にする上で、フィルム中のアセトアルデヒドの含有量は好ましくは30ppm以下、さらに好ましくは25ppm以下、特に好ましくは20ppm以下が望ましい。アセトアルデヒドの含有量が30ppmを越えると味特性に劣る。フィルム中のアセトアルデヒドの含有量を30pm以下とする方法は特に限定されるものではないが、例えばポリエステルを重縮反応等で製造する際の熱分解によって生じるアセトアルデヒドを除去するため、ポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において、ポリエステルの融点以下の温度で熱処理する方法、好ましくはポリエステルを減圧下あるいは不活性ガス雰囲気下において150℃以上、融点以下の温度で固相重合する方法、真空ベント式押出機を使用して溶融押出する方法、ポリマを溶融押出する際に押出温度を高融点ポリマ側の融点+30℃以内、好ましくは融点+25℃以内で、短時間、好ましくは平均滞留時間1時間以内で押出す方法等を挙げることができる。
【0031】
本発明のフィルムは単層、積層いずれも使用できる。本発明の二軸延伸フイルムの厚さは、金属にラミネートした後の成形性、金属に対する被覆性、耐衝撃性、味特性の点で、3〜50μmであることが好ましく、さらに好ましくは8〜30μmである。積層にて使用される場合、熱可塑性ポリマ、熱硬化性ポリマなどのポリマを積層してもよく、ポリエステル、例えば高分子量ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート、ブタンジオール、イソフタル酸残基骨格を有する共重合ポリエチレンテレフタレート、さらにジエチレングリコールを添加、共重合したポリエステルなどが好ましく使用される。
【0032】
本発明における二軸延伸フィルムの製造方法としては、特に限定されないが例えば各ポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ冷却固化し未延伸シートを得る。延伸方式としては、同時二軸、逐次二軸延伸いずれでもよいが、該未延伸シートをフイルムの長手方向及び幅方向に延伸、熱処理し、目的とする面配向度のフィルムを得る。好ましくはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。延伸倍率としてはそれぞれの方向に1.5〜4.0倍、好ましくは1.8〜4.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。また、延伸速度は1000%/分〜200000%/分であることが望ましく、延伸温度はポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+80℃以下であれば任意の温度とすることができるが、通常は80〜150℃が好ましい。更に二軸延伸の後にフイルムの熱処理を行うが、この熱処理はオ−ブン中、加熱されたロ−ル上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は120℃以上245℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは120〜240℃である。また熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行うのが好ましい。熱処理はフイルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつおこなってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行っても良い。
【0033】
また、本発明のフイルムの取扱い性、加工性を向上させるために、平均粒子径0.01〜10μmの公知の内部粒子、無機粒子および/または有機粒子などの外部粒子の中から任意に選定される粒子が0.01〜50重量%含有されていることが好ましい。特に平均粒子径0.1〜5μmの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子が0.01〜3重量%含有されていることが缶内面に使用されるフィルムとして好ましい。内部粒子の析出方法としては公知の技術を採用できるが、例えば特開昭48−61556号公報、特開昭51−12860号公報、特開昭53−41355号公報、特開昭54−90397号公報などに記載の技術が挙げられる。さらに特開昭55−20496号公報、特開昭59−204617号公報などの他の粒子との併用も行うことができる。10μmを越える平均粒子径を有する粒子を使用するとフィルムの欠陥が生じ易くなるので好ましくない。無機粒子および/または有機粒子としては、例えば湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミ、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレ−等の無機粒子およびスチレン、シリコ−ン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができる。なかでも湿式および乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子およびスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等を挙げることができる。これらの内部粒子、無機粒子および/または有機粒子は二種以上を併用してもよい。
【0034】
さらに、缶内面に使用される場合、中心線平均粗さRaは好ましくは0.005〜0.07μm、さらに好ましくは0.008〜0.05μmである。さらに、最大粗さRtとの比Rt/Raが4〜50、好ましくは6〜40であると高速製缶性が向上する。また、A層の中心線平均粗さRaは好ましくは0.002〜0.04μm、さらに好ましくは0.003〜0.03μmであると味特性が向上するので好ましい。
【0035】
また、フィルムにコロナ放電処理などの表面処理を施すことにより接着性を向上させることはさらに特性を向上させる上で好ましい。その際、処理強度としては5〜50W・min/m 2 、好ましくは10〜45W・min/m 2 である。
【0036】
本発明の金属板とは特に限定されないが、成形性の点で鉄やアルミニウムなどを素材とする金属板が好ましい。さらに、鉄を素材とする金属板の場合、その表面に接着性や耐腐食性を改良する無機酸化物被膜層、例えばクロム酸処理、リン酸処理、クロム酸/リン酸処理、電解クロム酸処理、クロメート処理、クロムクロメート処理などで代表される化成処理被覆層を設けてもよい。特に金属クロム換算値でクロムとして6.5〜150mg/m2 のクロム水和酸化物が好ましく、さらに、展延性金属メッキ層、例えばニッケル、スズ、亜鉛、アルミニウム、砲金、真ちゅうなどを設けてもよい。スズメッキの場合0.5〜15mg/m2 、ニッケルまたはアルミニウムの場合1.8〜20g/m2 のメッキ量を有するものが好ましい。
【0037】
本発明の金属板ラミネート用二軸延伸ポリエステルフィルムは、絞り成形やしごき成形によって製造されるツーピース金属缶の内面被覆用に好適に使用することができる。また、ツーピース缶の蓋部分、あるいはスリーピース缶の胴、蓋、底の被覆用としても良好な金属接着性、成形性を有するため好ましく使用することができる。
【0038】
【実施例】
以下実施例によって本発明を詳細に説明する。なお特性は以下の方法により測定、評価した。
【0039】
(1)ポリエステル中のジエチレングリコ−ル成分の含有量
NMR(13C −NMRスペクトル)によって測定した。
【0040】
(2)ポリエステルの固有粘度
ポリエステルをオルソクロロフェノ−ルに溶解し、25℃において測定した。
【0041】
(3)面配向係数及びばらつき
フィルム長手方向について3cm×3cmのサンプルを10点とり、ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて測定した。長手方向、幅方向、厚み方向の屈折率(Nx,Ny,Nz)から得られる面配向係数fn=(Nx+Ny)/2−Nzを計算して求めた。さらに、最大値、最小値の差をばらつきと定義した。
【0042】
(4)フィルムの密度
フィルムの密度は、水−ヨウ化カリウム水溶液系で密度勾配法により求めた。
【0043】
(5)フィルムの破断伸度(%)
テンシロン(引っ張り試験機)を用いて、引っ張り速度300mm/min、幅10mm、試料長50mmとして破断伸度(%)を測定した。
【0044】
(6)ポリエステルの熱結晶化パラメータ
ポリエステルを乾燥、溶融後急冷し、示差走査熱量計(パ−キン・エルマ−社製DSC−2型)により、16℃/minの昇温速度で測定した。
【0045】
(7)フイルム中のアセトアルデヒド含有量
フイルムの微粉末を2g採取しイオン交換水と共に耐圧容器に仕込み、120℃で60分間水抽出後、高感度ガスクロで定量した。
【0046】
(8)粒子の平均粒径
フィルムから樹脂をプラズマ低温灰化処理法で除去し粒子を露出させる。処理条件は樹脂は灰化するが粒子はダメージを受けない条件を選択する。これを走査型電子顕微鏡で粒子数5000〜10000個を観察し、粒子画像を画像処理装置により円相当径から求めた。
【0047】
粒子が内部粒子の場合、ポリマ断面を切断し厚さ0.1〜1μm程度の超薄切片を作成し、透過型電子顕微鏡を用いて倍率5000〜20000程度で写真を(10枚:25cm×25cm)撮影し、内部粒子の平均分散径を円相当径より計算した。
【0048】
(9)フィルムの表面粗さ(中心線平均粗さRa、最大粗さRt)
小坂研究所製の高精度薄膜段差測定器ET−10を用いて測定した。条件は次の通りであり、20回の測定の平均値をもって値とした。
【0049】
・触針先端半径:0.5μm
・触針荷重 :5mg
・測定長 :1mm
・カットオフ値:0.08mm
なお、Ra、Rtの定義は、例えば、奈良次郎著「表面粗さの測定・評価法」(総合技術センター、1983)に示されているものである。
【0050】
(10)熱収縮率
フィルムサンプルを10mm×200mmに切断し、120℃、30分熱風で加熱後の収縮率を長手方向、幅方向について各5点測定し、平均値を求めた。
【0051】
(11)成形性
a.熱処理前
50m/分でフィルムと140〜280℃に加熱されたTFS鋼板(厚さ0.25mm)をB層が接着面となるようにラミネート、急冷した後、絞り成形機で成形(成形比(最大厚み/最小厚み)=2.0、80〜100℃において成形可能温度領域で成形)した缶を得た。得られた缶内に1%の食塩水を入れて、1日放置後食塩水中の電極と金属缶に6vの電圧をかけて3秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
【0052】
A級:0.001mA未満
B級:0.001mA以上0.01mA未満
C級:0.01mA以上0.05mA未満
D級:0.05mA以上
【0053】
b.熱処理後
上記ラミネート鋼板を200℃、30秒熱処理後に、成型機で130%延伸した後、同様に得られた缶内に1%の食塩水を入れて、1日放置後食塩水中の電極と金属缶に6vの電圧をかけて3秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
【0054】
A級:0.005mA未満
B級:0.005mA以上0.01mA未満
C級:0.01mA以上0.05mA未満
D級:0.05mA以上
【0055】
(12)耐衝撃性
成形した缶を200℃、30秒熱処理した後、水を350g充填し蓋をした。その後30℃、72時間放置し、缶を底面が落下した際にコンクリートの地面に対して45゜となるようにして30cmの高さから落下させて衝撃を与えた後、内容物を除き缶側内面をろうでマスキングしてカップ内に1%食塩水を入れて、1日放置後食塩水中の電極と金属缶に6Vの電圧をかけて3秒後の電流値を読み取り、10缶測定後の平均値を求めた。
【0056】
A級:0.3mA未満
B級:0.3mA以上0.5mA未満
C級:0.5mA以上1.0mA以下
D級:1.0mA以上
【0057】
(13)味特性
(a)ポリエステルフィルムが香料水溶液(d−リモネン30ppm 水溶液)に接するようにして(接触面積:500cm2 )40℃14日間放置した後、熱可塑性樹脂Aのガラス転移温度+5℃で30分間窒素気流中で加熱し追い出される成分を、ガスクロマトグラフィーによりフイルム1gあたりのd−リモネンの吸着量を定量し味特性を評価した。
【0058】
(b)また、缶(直径6cm、高さ12cm)に120℃×30分の加圧蒸気処理を行った後、水を充填し、35℃密封後1ヶ月放置し、その後開封して官能検査によって、臭気の変化を以下の基準で評価した。
【0059】
A級 臭気に全く変化が見られない。
B級 臭気にほとんど変化が見られない。
C級 臭気にやや変化が見られる。
D級 臭気に変化が大きく見られる。
【0060】
実施例1
ポリエステルとして平均粒子径の異なるコロイダルシリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーを190℃で2時間熱処理した後、エステル化反応終了後にスラリーを添加し、重縮合反応を行い該粒子を所定量含有するポリエチレンテレフタレート(ゲルマニウム系触媒、固有粘度0.71、ジエチレングリコール3モル%、ΔTcg=82℃)のチップを製造した。ポリエステルを170℃4時間真空乾燥して単軸押出機に供給し、通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た(ドラム回転速度30m/分)。この未延伸フィルムを温度110℃にて長手方向に3.0倍延伸、40℃に冷却後、温度115℃で5秒予熱後に同温度で幅方向に3.0倍延伸した後、190℃にてリラックス5%、5秒間熱処理した。得られたフィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、さらに面配向係数のばらつきも0.010と小さく良好な成形性、耐衝撃性、味特性を得ることができた。
【0061】
参考例2、実施例3〜11、比較例1〜5
ポリエステルの製造、製膜方法、積層比、ポリエステルの種類などを変更し実施例1と同様にして製膜し、フィルムを得た。結果を表1〜6に示す。
【0062】
参考例2は、平均粒子径0.3μmの乾式シリカ粒子と内部粒子として、酸成分100部に対してグリコール成分64部と酢酸カルシウム0.1部を触媒として常法によりエステル交換反応を行い、酢酸リチウム0.17部、トリメチルホスフェート0.15部、亜リン酸0.02部、三酸化アンチモン0.02部を添加し重縮合して得た内部粒子含有ポリエチレンテレフタレートを無粒子のポリエチレンテレフタレート、及び高結晶性ポリエチレンテレフタレートとブレンドすることによりポリエステルを形成させた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。得られたフィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、良好な味特性を有していたがポリエステルの結晶性が高くやや耐衝撃性が低下した。
【0063】
実施例3は、ポリエステルとして平均粒子径の異なるコロイダルシリカ粒子を含有するエチレングリコールスラリーを190℃で2時間熱処理した後、エステル交換反応終了後にスラリーを添加し、重縮合反応を行い該粒子を所定量含有するポリエチレンテレフタレート(アンチモン系触媒、固有粘度0.65、ジエチレングリコール2.0モル%、ΔTcg=68℃)のチップを製造した。該ポリエステルを固有粘度0.70になるまで固相重合し、さらに真空ベント方式の二軸押出機に供給し、ギアポンプで計量して通常の口金から吐出後、静電印加(10kv)で鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを温度105℃にて長手方向に3.1倍延伸、35℃に冷却後、温度110℃で6秒予熱して同温度で幅方向に3.0倍延伸した後、200℃にてリラックス5%、5秒間熱処理した。得られたフィルム特性、缶特性は表1に示した通りであり、良好な成形性、味特性を得ることができた。
【0064】
実施例4では、ジエチレングリコール6モル%共重合ポリマを使用し、延伸倍率3.5倍、熱処理温度を230℃10秒としたところ、フィルムの密度が高くなり特性が悪化した。
【0065】
実施例5では、参考例2のポリマを使用し、縦延伸倍率3.5倍、横延伸倍率3.0倍としたところ、成形性がやや悪化した。
【0066】
実施例6では、実施例4のポリエステルをΔTcg=50℃のポリエチレンテレフタレートとし、熱処理温度140℃としたところ、成形性、耐衝撃性が悪化した。
【0067】
実施例7では、イソフタル酸6モル%共重合ポリエチレンテレフタレート融点(242℃)を使用し、縦延伸温度98℃、縦延伸倍率3.3倍、横延伸温度102℃、横延伸倍率3.2倍、熱処理温度190℃としたが、味特性、耐衝撃性が低下した。
【0068】
実施例8では、イソフタル酸3モル%共重合ポリエチレンテレフタレート融点(249℃)を使用し、縦延伸温度100℃、縦延伸倍率3.2倍、横延伸温度105℃、横延伸倍率3.0倍、熱処理温度190℃としたが、味特性が低下した。
【0069】
実施例9では、ポリエチレンテレフタレート、イソフタル酸6モル%共重合ポリマ(固有粘度0.75)を使用し、積層フィルム(PET:共重合PET=4/1)化して、縦延伸温度100℃、縦延伸倍率3.3倍、横延伸温度108℃、横延伸倍率3.2倍、熱処理温度190℃としたところ、良好な特性が得られるだけでなく、製缶、熱処理後の加工性も良好であった。
【0070】
実施例10では、ポリエチレンテレフタレート、高固有粘度のジエチレングリコール5モル%共重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.8、融点248℃)を使用し、積層フィルム(PET:共重合PET=6/1)化して、縦延伸温度110℃、縦延伸倍率3.0倍、横延伸温度115℃、横延伸倍率3.0倍、熱処理温度200℃としたところ、良好な特性が得られるだけでなく、製缶、熱処理後の加工性も良好であった。
【0071】
比較例1では、表4に示す未延伸フィルムを得た。得られたフィルムは特性が大きく低下した。
【0072】
比較例2では、二軸延伸後に再縦延伸により15μmのフィルムを得た。得られたフィルムは成形性が大きく低下した。
【0073】
比較例3ではイソフタル酸13モル%共重合ポリエステルを使用したところ、得られたフィルムは、耐衝撃性、味特性が低下した。
【0074】
比較例4では、IV=0.53のポリエチレンテレフタレートを使用し縦延伸条件(温度:90℃、倍率2.7倍)、横延伸条件(予熱12秒、温度105、倍率2.6倍)とし、熱処理条件を210℃としたところ、伸度のバランスがくずれ、特に熱処理後の成形性、耐衝撃性が大きく低下した。
【0075】
比較例5では、縦、横の延伸倍率を2.2倍としたところフィルム伸度が低下し、成形性が悪化した。
【0076】
実施例11では、2、6ナフタレンジカルボン酸5モル%共重合ポリエチレンテレフタレートを使用(固有粘度0.78)し、縦延伸温度123℃、縦延伸倍率2.9倍、横延伸温度120℃、横延伸倍率2.8倍とし、熱処理を205℃で5秒行った。製缶性は良好であり、味にも優れていた。
【0077】
【表1】
【0078】
【表2】
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
なお、表中の略号は以下の通りである。
【0084】
PET:ポリエチレンテレフタレート
PET/I:イソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート(数字は共重合モル%)
DEG:ジエチレングリコール
【0085】
【発明の効果】
本発明の容器成形用二軸延伸ポリエステルフィルムは缶などに成形する際の成形性に優れているだけでなく、味特性、特にレトルト後の味特性に優れた特性を有し、成形加工によって製造される金属缶に好適に使用することができる。
Claims (5)
- エチレンテレフタレートを主たる構成成分とするポリエステルからなり、長手方向の破断伸度(SMD)と幅方向の破断伸度(STD)が[式1]及び[式2]を満足することを特徴とするラミネート金属缶成形用二軸延伸ポリエステルフィルム。
120%≦(SMD+STD)/2≦193% …[式1]
|SMD−STD|≦60% …[式2] - ポリエステルの熱結晶化パラメータΔTcgが[式3]を満足することを特徴とする請求項1に記載のラミネート金属缶成形用二軸延伸ポリエステルフイルム。
60(℃)≦ΔTcg≦150(℃) …[式3]
ここで、
ΔTcg=Tc −Tg
Tc :DSCにおける昇温結晶化ピーク温度(℃)
Tg :DSCにおけるガラス転移温度(℃) - 構成単位の93モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のラミネート金属缶成形用二軸延伸ポリエステルフイルム。
- 構成単位の95モル%以上がエチレンテレフタレート単位であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のラミネート金属缶成形用二軸延伸ポリエステルフイルム。
- 融点が246℃以上280℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のラミネート金属缶成形用二軸延伸ポリエステルフイルム。
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