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JP4774774B2 - トリアルキルガリウムの製造方法 - Google Patents

トリアルキルガリウムの製造方法 Download PDF

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JP4774774B2 JP2005085053A JP2005085053A JP4774774B2 JP 4774774 B2 JP4774774 B2 JP 4774774B2 JP 2005085053 A JP2005085053 A JP 2005085053A JP 2005085053 A JP2005085053 A JP 2005085053A JP 4774774 B2 JP4774774 B2 JP 4774774B2
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Description

本発明は、MOCVD(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)法等を用いたエピタキシャル結晶成長によりGaNのような化合物半導体薄膜を形成するための材料として有用なトリアルキルガリウムの製造方法に関する。
近年の携帯電話や光通信技術の進展により、化合物半導体の需要は、携帯電話に使用される高電子移動度トランジスタ(HEMT: High Electron Mobility Transistor)、ヘテロバイポーラトランジスタ(HBT: Heterojunction Bipolar Transistor)などの高速電子デバイス、光通信やDVDなどに使用される半導体レーザー、ディスプレーに使用される白色・青色の超高輝度LEDなどの光デバイス等の用途で急速に伸びている。
一般に化合物半導体の原料となる有機金属化合物(MO: Metal Organics)としては、周期律表第II族元素やIII族元素のアルキル金属化合物、特にメチル化合物やエチル化合物が多用されている。中でも周期律表第III族のアルキルガリウムは、窒素、砒素のような周期律表第V族の元素とともに化合物半導体をMOCVDで製造するための材料としての需要が大きい。
従来報告されているトリアルキルガリウム化合物の代表的な合成方法として以下の(a)〜(g)の反応による合成方法が挙げられる。
(a)ハロゲン化ガリウム化合物とグリニャール試薬との反応(例えば特許文献1(米国特許第4604473号公報))
(b)ハロゲン化ガリウム化合物とトリアルキルアルミニウム化合物との反応(例えば非特許文献1((K.K.Fukin,I.A.Frolov,Tr.Khim.Khim.Tekhnol.,,40(1973))
(c)ハロゲン化ガリウム化合物とアルキルリチウム化合物との反応(例えば非特許文献2(R.A.Kovar,H.Derr,D.Brandau,J.O.Calloway,Inorg.Chem.,14,2809(1975))
(d)ハロゲン化ガリウム化合物とジアルキル亜鉛化合物との反応(例えば非特許文献3(C.A.Claus,F.E.Toonder,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,19,192(1933))
(e)ガリウムとジアルキル水銀との反応(例えば非特許文献4(G.E.Coates,J.Chem.Soc.,2003(1951))
(f)ガリウムーマグネシウム混合物とハロゲン化アルキル化合物との反応(例えば特許文献2(ソビエト連邦国特許第325847号公報)
(g)ガリウム−マグネシウム合金とハロゲン化アルキル化合物との反応(例えば特許文献3(米国特許第5248800号公報))
このように、ガリウム原料としては、ハロゲン化ガリウム又はガリウムが用いられている。しかし、その他のガリウム原料を用いて収率良くトリアルキルガリウムを合成できる実用的な方法は知られていない。
本発明は、トリアルキルガリウムの製造原料として従来用いられていない新たなガリウム原料を用いて収率良くトリアルキルガリウムを製造できる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、下記一般式(1)
Ga6−m (1)
(式中、Rはメチル基又はエチル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。mは1〜5の整数を示す)
で表される少なくとも1種のハロゲン化アルキルガリウム化合物と、アルキル化剤として少なくとも1種のアルキル金属化合物とを反応させることにより、トリアルキルガリウム化合物を収率良く製造できることを見出した。
本発明は上記知見に基づき完成されたものであり、以下のトリアルキルガリウムの製造方法を提供する。
項1.下記一般式(1)
Ga6−m (1)
(式中、Rはメチル基またはエチル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。mは1〜5の整数を示す)
で表される少なくとも1種のハロゲン化アルキルガリウム化合物と、リチウム含有化合物、マグネシウム含有化合物、及び亜鉛含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルキル金属化合物とを反応させることによりトリアルキルガリウム化合物を合成するトリアルキルガリウムの製造方法。
項2.少なくとも1種のアルキル金属化合物が、アルキルリチウム化合物、ハロゲン化アルキルマグネシウム化合物、及びジアルキル亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である項1に記載の方法。
項3.少なくとも1種のアルキル金属化合物が、メチル金属化合物、及びエチル金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である項1又は2に記載の方法。
項4.上記一般式(1)で表される化合物1モルに対して、少なくとも1種のアルキル金属化合物を化学量論的組成比となるモル数の0.5〜2倍用いる項1〜3のいずれかに記載の方法。
本発明によれば、従来用いられていない新たなガリウム原料である一般式(1)のハロゲン化アルキルガリウム化合物をアルキル金属化合物でアルキル化するという簡単な方法により、実用上十分高い収率でトリアルキルガリウム化合物が得られることが見出された。本発明により、トリアルキルガリウム合成の新たな途が開けた。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のトリアルキルガリウムの製造方法は、上記一般式(1)で表される少なくとも1種のハロゲン化アルキルガリウム化合物と、少なくとも1種のアルキル金属化合物とを反応させることによりトリアルキルガリウムを合成する方法である。
原料
<ガリウム化合物>
一般式(1)のハロゲン化アルキルガリウム化合物におけるハロゲン原子の種類は特に限定されないが、通常は塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子とすればよい。中でも、反応性が高い点で、ヨウ化アルキルガリウム及び臭化アルキルガリウムが好ましく、ヨウ化アルキルガリウムが最も好ましい。
また一般式(1)において、MOCVD原料としてトリメチルガリウムの需要が多い点では、Rはメチル基であることが好ましい。
一般式(1)で表される化合物の具体例は、GaMeCl、GaMeCl、GaMeCl、GaMeCl、GaMeCl;GaMeClBr、GaMeBr、GaMeBr、GaMeBr、GaMeBr;GaMeClI、GaMe、GaMe、GaMe、GaMeI;GaEtCl、GaEtCl、GaEtCl、GaEtCl、GaEtCl;GaEtClBr、GaEtBr、GaEtBr、GaEtBr、GaEtBr;GaEtClI、GaEt、GaEt、GaEt、GaEtIである。中でも、GaMeBr、GaMeBr、GaMeBr、GaMeBr;GaMe、GaMe、GaMe、GaMeI;GaEtBr、GaEtBr、GaEtBr、GaEtBr;GaEt、GaEt、GaEt、GaEtIが好ましく、GaMe、GaMe、GaMe、GaMeIがより好ましい。
一般式(1)で表される化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
一般式(1)のハロゲン化アルキルガリウム化合物は、ガリウムとハロゲン化アルキルとを反応させる公知の方法で合成することができる。例えば、GaはM.J.S.Gynane,I.J.Worrall,J.Organomet.Chem.,40,C59(1972)に記載の方法で合成することができ、GaはM.Wilkinson,I.J.Worrall,J.Organomet.Chem.,93,39(1975)に記載の方法で合成することができ、GaRBrはW.Lind,I.J.Worrall,J.Organomet.Chem.,36.35(1972)及びW.Lind,I.J.Worrall,J.Organomet.Chem.,40.35(1972)記載の方法で合成することができる。一般式(1)に包含されるその他の化合物は、当業者であれば、上記文献に記載の方法に準じて製造することができる。また、一般式(1)の化合物は、ハロゲン化ガリウムとアルキル金属化合物とを反応させる公知の方法で合成することもできる。
MOCVDにより製造される化合物半導体の電気的特性及び光学的特性は、原料である有機金属化合物の純度に大きく左右される。従って、本発明方法においても高純度なトリアルキルガリウムを合成することが求められる。生成するトリアルキルガリウムの純度は原料化合物の純度にも依存することから、上記一般式(1)の化合物は高純度であることが望ましい。
上記一般式(1)の化合物は、原料として高純度のガリウムまたはハロゲン化ガリウムを用いて合成されたものを用いればよい。ガリウムまたはハロゲン化ガリウムは、純度99.9%(3N)〜99.99999%(7N)のガリウム市販品を使用すればよい。4Nを超える高純度のガリウムまたはハロゲン化ガリウムは、市販品もあるが、3Nまたは4N純度の市販品を再結晶、減圧精製、電解精錬などにより精製することにより得ることができる。原料ガリウムまたはハロゲン化ガリウムの純度は99.999%(5N)以上が好ましく、99.9999%(6N)以上がより好ましい。
<アルキル金属化合物>
アルキル金属化合物はアルキル基と金属との間に結合を有する化合物である。アルキル金属化合物の種類は、特に限定されない。中でも、アルキルリチウム化合物、アルキルマグネシウム化合物、アルキルアルミニウム化合物、及びアルキル亜鉛化合物が好ましい。また、アルキル基は、通常メチル基又はエチル基であり、MOCVD原料としてトリメチルガリウムの需要が多い点では、メチル基が好ましい。
アルキル金属化合物としては、アルキル基としてメチル基またはエチル基を有する、ハロゲン化アルキルマグネシウム化合物(グリニャール試薬)、アルキルリチウム化合物、トリアルキルアルミニウム化合物、及びジアルキル亜鉛化合物などを例示できる。中でも、トリアルキルガリウム製造工程の安全性が高く、また得られるトリアルキルガリウムを精製し易い点で、ハロゲン化アルキルマグネシウム化合物、及びトリアルキルアルミニウム化合物がより好ましい。
ハロゲン化アルキルマグネシウム化合物(グリニャール試薬)の具体例としては、塩化メチルマグネシウム、塩化エチルマグネシウム、臭化メチルマグネシウム、臭化エチルマグネシウム、ヨウ化メチルマグネシウム、ヨウ化エチルマグネシウムを挙げることができる。特に、反応性が高い点で、ヨウ化メチルマグネシウム、及びヨウ化エチルマグネシウムが好ましい。
アルキルリチウム化合物の具体例としては、メチルリチウム、エチルリチウムを挙げることができる。トリアルキルアルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムを挙げることができる。ジアルキル亜鉛化合物の具体例としては、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛を挙げることができる。
ハロゲン化アルキルマグネシウムの製造方法は周知であり、エーテル等の溶媒中で、マグネシウムとハロゲン化アルキルとを反応させることにより合成できる。また、アルキル基としてメチル基またはエチル基を有するハロゲン化アルキルマグネシウム化合物(グリニャール試薬)は市販もされている。
アルキルリチウム化合物の製造方法は周知であり、例えば、エーテル化合物中で、塩化アルキル又は臭化アルキルと金属リチウムとを反応させることにより合成できる。また、メチルリチウム及びエチルリチウムは市販もされている。
トリアルキルアルミニウムの製造方法は周知であり、例えば“Comprehensive Organometallic Chemistry,The Synthesis,Reactions and Structures of Organometallic Compounds Vol.1”,ed.S.G.Wilkinson,F.G.A.Stones,E.W.Abel,Pergamon Press Ltd.,(1982),Chapter 6に記載の方法により合成できる。また、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムは市販もされている。
ジアルキル亜鉛化合物の製造方法は周知であり、例えば、エーテル又は炭化水素溶媒中で、ヨウ化アルキルと金属亜鉛とを反応させることにより合成できる。また、ジメチル亜鉛、及びジエチル亜鉛は市販もされている。
アルキル金属化合物の純度について説明すれば、トリアルキルアルミニウム化合物、及びジアルキル亜鉛化合物は、電子材料用途の純度5N若しくは6Nの市販品をそのまま使用することができ、又は一般グレードの純度2Nの市販品を蒸留精製により高純度化して使用することができる。ハロゲン化アルキルマグネシウム化合物、及びアルキルリチウム化合物は、高純度の市販品がないため3N以上のマグネシウム、又はリチウムを原料として合成したものを使用することができる。なお、純度3N以上のマグネシウム及びリチウムは市販されているが、より高純度のマグネシウム及びリチウムは高価であるため、2N〜4Nの市販品を真空蒸留、真空昇華などにより精製したものを用いて合成したハロゲン化アルキルマグネシウム化合物、及びアルキルリチウム化合物を使用することができる。
アルキル金属化合物は、1種を単独で、又は同種の化合物の範囲内で2種以上を組み合わせて使用できる。例えば、アルキルリチウム化合物の範囲内であれば2種以上を組み合わせて使用できるが、例えば、アルキルリチウム化合物とトリアルキルアルミニウム化合物とを組み合わせて使用することは難しい。
<溶媒>
本発明の合成反応は、アルキル金属化合物が液体である場合は無溶媒で行うこともできるが、通常は溶媒を用いればよい。また、ハロゲン化アルキルマグネシウム化合物(Grignard試薬)の市販品やアルキルリチルム化合物市販品は、通常、溶媒に溶けた溶液として販売されているため、このようなアルキル金属化合物を使用する場合は溶媒を別途用いなくてよい。
溶媒の種類は、生成物であるトリアルキルガリウム化合物と反応する活性水素を有する化合物、例えばアルコール化合物又はチオール化合物を除き、特に限定されない。例えば、エーテル化合物、炭化水素化合物、アミン化合物のような公知の溶媒を用いることができる。中でも、トリアルキルガリウム合成の反応性が高くなる点で、エーテル化合物、及びアミン化合物が好ましい。
炭化水素化合物としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン等の飽和脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロヘプタン等の飽和脂環式炭化水素;トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、エチルトルエン、インデン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。
炭化水素化合物は生成物であるトリアルキルガリウムとの分離が容易なものが好ましい。一般にはトリアルキルガリウムとの沸点差が大きい炭化水素化合物が好ましい。しかし、沸点差が十分大きくても、トリアルキルガリウムより低沸点の炭化水素化合物を用いると、少量の共沸による収率低下が見られるため、炭化水素化合物としてはトリアルキルガリウムより高沸点のものを選択することが望ましい。但し、常温で固体の炭化水素化合物は取扱いに手間がかかることから、このような炭化水素化合物よりは低沸点のものを選択する方が望ましい。
エーテル化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジイソペンチルエーテル(ジイソアミルエーテル)等の脂肪族エーテル化合物;アニソール、メチルアニソール、ベンジルメチルエーテル、エチルアニソール、ジメチルアニソール、イソプロピルアニソール、フェネトール等の芳香族エーテル化合物などが挙げられる。
エーテル化合物は生成物であるトリアルキルガリウム化合物と付加体を形成するため、合成工程の後、後述するように蒸留を行うことにより、トリアルキルガリウムのエーテル付加体を熱分解させて、トリアルキルガリウム化合物を単離することが好ましい。このため、エーテル化合物は、トリアルキルガリウムより高沸点の化合物を用いることが好ましい。また、トリアルキルガリウムのエーテル付加体の熱分解温度がトリアルキルガリウム化合物の熱分解温度より高い場合は、エーテル付加体の熱分解によりトリアルキルガリウム化合物の分解も進行するため、エーテル付加体の分解温度がトリアルキルガリウムの分解温度より低くなるようなエーテル化合物を選択することが好ましい。
アミン化合物としては、例えば3級アミン化合物を用いることができる。具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリ−tert−ブチルアミン等の脂肪族3級アミン化合物;ピリジン、ピロール、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、1,3,5−トリアジン、ヘキサヒドロトリアジン等の複素環式3級アミン化合物を挙げることができる。
アミン化合物は生成物であるトリアルキルガリウム化合物と付加体を形成するため、合成反応後、後述するように蒸留を行うことにより、トリアルキルガリウムのアミン付加体を熱分解させてトリアルキルガリウム化合物を単離することが好ましい。このため、トリアルキルガリウムのアミン付加体の熱分解温度がトリアルキルガリウム化合物の熱分解温度より高い場合は、トリアルキルガリウム化合物の分解も進行するため、アミン付加体の分解温度がトリアルキルガリウムの分解温度より低くなるようなアミン化合物を選択することが好ましい。
溶媒は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。但し、得られるトリアルキルガリウムの精製が容易になる点で、1種の溶媒を単独で使用することが好ましい。
使用比率
一般式(1)で表されるハロゲン化アルキルガリウム化合物とアルキル金属化合物との使用比率は、アルキル金属化合物の種類によって異なる。
アルキル金属化合物がハロゲン化アルキルマグネシウム化合物である場合は、トリアルキルガリウム合成反応は下記式(2)で表すことができる。
Ga6−m+(6−m)RMgX
→2GaR+(6−m)MgX (2)
式(2)より、化学量論的組成比は、一般式(1)のハロゲン化アルキルガリウム化合物1モルに対して、ハロゲン化アルキルマグネシウム化合物(6−m)モルである。従って、一般式(1)の化合物1モルに対して、ハロゲン化アルキルマグネシウムを0.5(6−m)〜2(6−m)モル程度使用するのが好ましく、0.7(6−m)〜1.5(6−m)モル程度使用するのがより好ましい。
また、アルキル金属化合物がアルキルリチウム化合物である場合は、トリアルキルガリウム合成反応は下記式(3)で表すことができる。
Ga6−m+(6−m)RLi
→2GaR+(6−m)LiX (3)
式(3)より、化学量論的組成比は、一般式(1)のハロゲン化アルキルガリウム化合物1モルに対して、アルキルリチウム化合物(6−m)モルである。従って、一般式(1)の化合物1モルに対して、アルキルリチウム化合物を0.5(6−m)〜2(6−m)モル程度使用するのが好ましく、0.7(6−m)〜1.5(6−m)モル程度使用するのがより好ましい。
また、アルキル金属化合物がトリアルキルアルミニウム化合物である場合は、トリアルキルガリウム合成反応は下記式(4)で表すことができる。
Ga6−m+(6−m)/3AlR
→2GaR+(6−m)/3AlX (4)
式(4)より、化学量論的組成比は、一般式(1)のハロゲン化アルキルガリウム化合物1モルに対して、トリアルキルアルミニウム化合物(6−m)/3モルである。従って、一般式(1)の化合物1モルに対して、トリアルキルアルミニウムを0.5〔(6−m)/3〕〜2〔(6−m)/3〕モル程度使用するのが好ましく、0.7〔(6−m)/3〕〜1.5〔(6−m)/3〕モル程度使用するのがより好ましい。
また、アルキル金属化合物がジアルキル亜鉛化合物である場合は、トリアルキルガリウム合成反応は下記式(5)で表すことができる。
Ga6−m+(6−m)/2ZnR
→2GaR+(6−m)/2ZnX(5)
式(5)より、化学量論的組成比は、一般式(1)のハロゲン化アルキルガリウム化合物1モルに対して、ジアルキル亜鉛化合物(6−m)/2モルである。従って、一般式(1)の化合物1モルに対して、ジアルキル亜鉛を0.5〔(6−m)/2〕〜2〔(6−m)/2〕モル程度使用するのが好ましく、0.7〔(6−m)/2〕〜1.5〔(6−m)/2〕モル程度使用するのがより好ましい。
いずれのアルキル金属化合物を使用する場合も、上記範囲であれば、十分に反応を進行させることができる。また余りにアルキル金属化合物の使用比率が高くてもそれ以上の効果は得られず、却って廃棄物が増えて後処理にその分手間がかかったり、コスト高になるだけであるが、上記の範囲であればこのような問題は生じない。
合成反応工程
本発明において、合成反応は、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン等の不活性ガス雰囲気下で行う。ハロゲン化アルキルガリウム化合物やアルキル金属化合物を合成する場合も、不活性ガス雰囲気下で行う。これら不活性ガスの純度は、好ましく99.99%(4N)以上、特に好ましくは99.9999%(6N)以上である。
特に、雰囲気ガス中の水分や酸素は、トリアルキルガリウムの収率を低下させるばかりでなく、純度低下の原因ともなり得るため、水分や酸素は極力除去した雰囲気ガスを使用することが望まれる。反応雰囲気ガスは好ましくは露点−80℃以下、酸素濃度100ppb以下、特に好ましくは露点−100℃以下、酸素濃度10ppb以下であることが望ましい。このような高純度の不活性ガスは、膜分離法、触媒反応法、液化精留法、PSA(Pressure Swing Adsorption)法などにより得ることができる。
反応は、不活性ガス雰囲気下、通常溶媒中で一般式(1)のハロゲン化アルキルガリウム化合物とアルキル金属化合物とを接触させる。反応容器内へのこれらの化合物の添加順序は特に限定されないが、通常は、溶媒とハロゲン化アルキルガリウム化合物を入れ、次いで、アルキル金属化合物を加えることが好ましい。ハロゲン化アルキルガリウム化合物とアルキル金属化合物との反応性が高い場合は、アルキル金属化合物を少量づつ添加すればよい。反応性が低い場合は、一度に全量を加えることができる。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、アルキル金属化合物仕込終了時に溶媒中のハロゲン化アルキルガリウム濃度及びアルキル金属濃度(ぞれぞれ、溶媒1Lに対するモル数を意味する。以下、同様。)のいずれもが0.01〜10moL/L程度となる量が好ましく、0.1〜5moL/L程度となる量がより好ましい。上記濃度範囲であれば、反応性、ひいてはトリアルキルガリウム収率が十分高くなるとともに、容易に反応を制御でき、即ち、突然反応が進みすぎたり、生成するハロゲン化アルキルマグネシウムの析出で反応が途中で終わってしまったり、副生するハロゲン化マグネシウムにより攪拌が困難となったりすることがない。
反応温度は、用いるハロゲン化アルキルガリウム化合物、アルキル金属化合物、溶媒の種類、及びその他の条件を考慮して、効率良く反応が進行する温度とすればよい。通常0〜200℃程度、好ましくは40〜160℃程度、より好ましくは60〜120℃程度の温度で反応を行えばよい。この温度下で、通常3〜30時間程度の反応によりトリアルキルガリウムが生成する。
また、合成反応圧力は特に限定されず、大気圧下、減圧下、または加圧下で合成反応を行うことができる。
精製工程
反応終了後に得られるトリアルキルガリウムには、エーテル化合物やハロゲン化アルキルが付加したトリアルキルガリウムが含まれている。従って、反応液を蒸留することにより、これらの付加体を分解してトリアルキルガリウムを分留により単離すればよい。加熱温度は、トリアルキルガリウムの分解温度より低く、かつトリアルキルガリウムのエーテル付加体やハロゲン化アルキル付加体の分解温度より高い温度とすることが好ましい。蒸留は、常圧で行えばよいが、減圧蒸留を行ってもよい。
さらに、精密蒸留や昇華等の方法で精製することにより、MOCVD原料として使用できる純度99.999(5N)%以上のトリアルキルガリウムが得られる。
精製工程も、通常、不活性ガス雰囲気下で行う。
ガリウム系化合物半導体素子
本発明方法により得られるトリアルキルガリウムと、窒素含有化合物、リン含有化合物、及び砒素含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のIII族元素含有化合物とを原料として、例えばMOCVDによるエピタキシャル成長により、ガリウム系化合物半導体素子のガリウム系化合物半導体薄膜を形成することができる。ガリウム系化合物半導体薄膜の代表例としては、トリアルキルガリウムと、アンモニアのような窒素含有化合物とを原料として形成される窒化ガリウム系化合物半導体薄膜が挙げられる。
半導体の構造としては、MIS(Metal Insulator Semiconductor)接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
窒化ガリウム系化合物半導体薄膜を例に挙げて説明すれば、窒化ガリウム系化合物半導体の基板にはサファイア、スピネル、SiC、Si、ZnO、およびGaN等の材料が好適に用いられる。結晶性の良い窒化物半導体を量産性よく形成させるためにはサファイア基板を用いることが好ましい。このサファイア基板上にMOCVD法などを用いて窒化ガリウム系化合物半導体を形成することができる。サファイア基板上にGaN、AlN、GaAIN等のバッファー層を形成しその上にpn接合を有する窒化物半導体を形成する。
窒化ガリウム系化合物半導体を使用したpn接合を有する発光素子例として、バッファー層上に、n型窒化ガリウムで形成した第1のコンタクト層、n型窒化アルミニウム・ガリウムで形成させた第1のクラッド層、窒化インジウム・ガリウムで形成した活性層、p型窒化アルミニウム・ガリウムで形成した第2のクラッド層、p型窒化ガリウムで形成した第2のコンタクト層を順に積層させたダブルへテロ構成などが挙げられる。
窒化ガリウム系化合物半導体は、不純物をドープしない状態でn型導電性を示す。発光効率を向上させるなど所望のn型窒化物半導体を形成させる場合は、n型ドーパントとしてSi、Ge、Se、Te、C等を適宜導入することが好ましい。一方、p型窒化ガリウム系化合物半導体を形成させる場合は、p型ドーパントであるZn、Mg、Be、Ca、Sr、Ba等をドープさせる。窒化ガリウム系化合物半導体は、p型ドーパントをドープしただけではp型化しにくいためp型ドーパント導入後に、炉による加熱やプラズマ照射等により低抵抗化させることが好ましい。電極形成後、半導体ウエハーからチップ状にカットさせることで窒化物半導体からなる発光素子が得られる。
実施例
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]トリメチルガリウムの合成
(1)Ga Me の合成
窒素置換した100mL容量のガラス製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で、純度6Nのガリウム5.00g(72mmoL)、ヨウ化メチル22.78g(161mmoL)を導入する。オートクレーブ内を90℃まで昇温し、同温度で24時間加熱攪拌する。ガリウムは全て溶解し黄色液体となっている。生成物の同定は、M.J.S.Gynane,I.J.Worral,J.Organomet.Chem.,40,C59(1972)の記載を参考にして、IRスペクトルおよびラマンスペクトルにより行う。
(2)ヨウ化メチルマグネシウムの合成
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコに、室温で純度3Nの削状マグネシウム4.01g(167mmoL)、モレキュラーシーブスで十分脱水したジイソアミルエーテル68mLを加える。ドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、ヨウ化メチル27.89g(197mmoL)を約2時間かけてフラスコ内溶液中に滴下する。この間、フラスコ内の温度は40℃を越えないように調節する。滴下終了後、室温で12時間攪拌する。
得られた反応混合物をろ過する。Gilman二重滴定法(H.Gilman,F.K.Cantledge,J.Organomet.Chem.,,447(1964)に記載の方法)により測定した結果、97.0%収率(162mmoL)でヨウ化メチルマグネシウムが生成している。
(3)Ga Me とヨウ化メチルマグネシウムとの反応
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコに、室温で上記合成したGaMeI全量とモレキュラーシーブスで十分脱水したジイソアミルエーテル48mLとを加える。ドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、上記合成したヨウ化メチルマグネシウム56g(114mmoL)相当のジイソアミルエーテル溶液をゆっくりと滴下する。滴下終了後90℃までオートクレーブ内温度を上げ、6時間加熱攪拌を行う。
GaMeの合成時、ヨウ化メチルマグネシウムの合成時、及びトリアルキルガリウム合成時に使用される窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。ヨウ化メチルマグネシウム仕込終了時の溶媒中のGaMe濃度は0.31moL/Lであり、ヨウ化メチルマグネシウム濃度は0.97moL/Lである(それぞれ、溶媒1Lに対するモル数。以下、同じ。)。
反応終了後、ジイソアミルエーテルが沸騰する状態で反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectrometerによるガリウム定量により、6.09g(ガリウム換算で73.5%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。
[実施例2]トリメチルガリウムの合成
Ga Me とトリメチルアルミニウムとの反応
窒素置換した100mL容量のガラス製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で、実施例1で合成するGaMe全量にモレキュラーシーブスで十分脱水したトルエン50mL加える。次いで市販のトリメチルアルミニウム8.36g(116mmoL)を加え120℃で20時間加熱攪拌を行う。
使用される窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。トリメチルアルミニウム仕込終了時の溶媒中のGaMe濃度は0.50moL/Lであり、トリメチルアルミニウム濃度は1.61moL/Lである。
反応終了後、トルエンが沸騰する状態で反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、6.74g(ガリウム換算で81.5%収率)の粗トリエチルガリウムが得られる。
[実施例3]トリメチルガリウムの合成
(1)Ga Me Br の合成
窒素置換した100mL容量のガラス製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で純度6Nのガリウム5.00g(72mmoL)、臭化メチル14.73g(155mmoL)を導入する。オートクレーブ内を90℃まで昇温し24時間加熱攪拌する。ガリウムは全て溶解し黄色液体となっている。
生成物の同定は、M.J.S.Gynane,I.J.Worral,J.Organomet.Chem.,40,C59(1972)の記載を参考にしてIRスペクトルおよびラマンスペクトルにより行う。
(2)Ga Me Br とヨウ化メチルマグネシウムの反応
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコに、室温で上記のように合成するGaMeBr全量とモレキュラーシーブスで十分脱水したジイソアミルエーテル48mLとを加える。ドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、実施例1で合成するヨウ化メチルマグネシウム56g(114mmoL)相当のジイソアミルエーテル溶液をゆっくりと滴下する。滴下終了後90℃までオートクレーブ内温度を上げ、6時間加熱攪拌を行う。
GaMeBrの合成時、ヨウ化メチルマグネシウムの合成時、及びトリアルキルガリウム合成時に使用される窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。ヨウ化メチルマグネシウム仕込終了時の溶媒中のGaMeBr濃度は0.32moL/Lであり、ヨウ化メチルマグネシウム濃度は1.02moL/Lである。
反応終了後、ジイソアミルエーテルが沸騰する状態で反応混合物よりガラスビーズを充填した30cm×1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、5.92g(ガリウム換算で71.5%収率)の粗トリメチルガリウムが得られる。
[実施例4]トリエチルガリウムの合成
(1)Ga Et の合成
窒素置換した100mL容量のガラス製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で純度6Nのガリウム5.00g(72mmoL)、ヨウ化エチル24.11g(155mmoL)を導入する。オートクレーブ内を90℃まで昇温し24時間加熱攪拌する。ガリウムは全て溶解し黄色液体となっている。生成物の同定は、M.J.S.Gynane,I.J.Worral,J.Organomet.Chem.,40,C59(1972)の記載を参考にしてIRスペクトルおよびラマンスペクトルにより行う。
(2)ヨウ化エチルマグネシウムの合成
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコに、室温で純度3Nの削状マグネシウム4.17g(174mmoL)、及びモレキュラーシーブスで十分脱水したジエチルエーテル68mLを加える。ドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、ヨウ化エチル29.65g(190mmoL)を約2時間かけてフラスコ内溶液中に滴下する。この間、フラスコ内の温度はジエチルエーテルが軽く沸騰するように調節する。滴下終了後、室温で12時間攪拌する。
得られた反応混合物をろ過する。Gilman二重滴定法(H.Gilman,F.K.Cantledge,J.Organomet.Chem.,,447(1964)に記載の方法)により測定した結果、98.0%収率(171mmoL)でヨウ化エチルマグネシウムが生成している。
(3)Ga Et とヨウ化エチルマグネシウムとの反応
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコに、室温で上記のようにして合成するGaEt全量とモレキュラーシーブスで十分脱水したジエチルエーテル48mLとを加える。このフラスコにドライアイスコンデンサーを取り付け、内温20℃に調整した後、上記のようにして合成するヨウ化エチルマグネシウム56g(114mmoL)相当のジエチルエーテル溶液をゆっくりと滴下する。滴下終了後加熱し6時間還流する。
GaEtの合成時、ヨウ化エチルマグネシウムの合成時、及びトリアルキルガリウム合成時に使用する窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。ヨウ化エチルマグネシウム仕込終了時の溶媒中のGaEt濃度は0.30moL/Lであり、ヨウ化エチルマグネシウム濃度は0.96moL/Lである。
反応終了後、反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いてまず常圧でジエチルエーテルを分留する。次いで、100Torrの減圧下で粗トリエチルガリウムを分留する(79〜81℃)。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、7.90g(ガリウム換算で69.9%収率)の粗トリエチルガリウムが得られる。
[実施例5]トリメチルガリウムの合成
Ga Et とエチルリチウムの反応
窒素置換した300mL容量の4つ口フラスコに、室温で実施例4で合成するGaEt全量とモレキュラーシーブスで十分脱水したジエチルエーテル48mLとを加える。このフラスコにドライアイスコンデンサーを取り付け、内温を20℃に調整した後、市販のエチルリチウムのジエチルエーテル溶液(1.0moL/L)72mL(72mmoL相当)をゆっくりと滴下する。滴下終了後加熱し6時間還流する。
使用する窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。エチルリチウム仕込終了時の溶媒中のGaEt濃度は0.27moL/Lであり、エチルリチウム濃度は0.54moL/Lである。
反応終了後、反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いてまず常圧でジエチルエーテルを分留する。次いで、100Torrの減圧下で粗トリエチルガリウムを分留する(79〜81℃)。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、9.20g(ガリウム換算で81.5%収率)の粗トリエチルガリウムが得られる。
[実施例6]トリメチルガリウムの合成
Ga Me とジメチル亜鉛との反応
窒素置換した(100)mL容量のガラス製オートクレーブにマグネチックスタラーチップを入れ、室温で実施例1で合成するGaMe全量にモレキュラーシーブスで十分脱水したトルエン50mL加える。次いで市販のジメチル亜鉛5.73g(60mmoL)を加え120℃で20時間加熱攪拌を行う。
使用される窒素は、純度6N、露点−110℃、酸素濃度1ppbである。ジメチル亜鉛仕込終了時の溶媒中のGaMe濃度は(0.52)moL/Lであり、ジメチル亜鉛濃度は(0.87)moL/Lである。
反応終了後、トルエンが沸騰する状態で反応混合物よりガラスビーズを充填した長さ30cm、直径1.5cmのカラムを用いて粗トリメチルガリウムを分留する。
誘導結合プラズマ発光分析装置によるガリウム定量により、7.08g(ガリウム換算で85.7%収率)の粗トリエチルガリウムが得られる。

以上より、ハロゲン化アルキルガリウム化合物を、アルキル金属化合物を用いてアルキル化することにより、実用上十分な約70%以上の収率でトリアルキルガリウムが得られることが分かる。

[実施例7]窒化ガリウム系化合物半導体素子の製造
サファイア(C面)よりなる基板をMOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy)の反応容器内にセットし、水素を流しながら、基板の温度を1050℃まで上昇させ、基板のクリーニングを行う。
(バッファ層)
続いて、温度を510℃まで下げ、キャリアガスに水素、原料ガスにアンモニアと上記の実施例1で得られ、さらに精製されるトリメチルガリウムとを用い、基板上にGaNよりなるバッファ層を約150オングストロームの膜厚で成長させる。この反応は以下の式で表される。
Ga(CH+NH→GaN+3CH
(アンドープGaN層)
バッファ層成長後、トリメチルガリウムのみ止めて、温度を1050℃まで上昇させる。1050℃になったら、同じく原料ガスにトリメチルガリウム、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を1.5μmの膜厚で成長させる。
(n側コンタクト層)
続いて1050℃で、同じく原料ガスにトリメチルガリウム、アンモニアガス、不純物ガスにシランガスを用い、Siを4.5×1018/cmドープしたGaNよりなるn側コンタクト層を2.25μmの膜厚で成長させる。
(n側第1多層膜層)
次にシランガスのみを止め、1050℃で、トリメチルガリウム、アンモニアガスを用い、アンドープGaN層を75オングストロームの膜厚で成長させ、続いて同温度にてシランガスを追加しSiを4.5×1018/cmドープしたGaN層を25オングストロームの膜厚で成長させる。このようにして、75オングストロームのアンドープGaN層からなるA層と、SiドープGaN層を有する25オングストロームのB層とからなるペアを成長させる。そしてペアを25層積層して2500オングストローム厚として、超格子構造の多層膜よりなるn側第1多層膜層を成長させる。
(n側第2多層膜層)
次に、同様の温度で、アンドープGaNよりなる第2の窒化物半導体層を40オングストローム成長させ、次に温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニアを用い、アンドープIn0.13Ga0.87Nよりなる第1の窒化物半導体層を20オングストローム成長させる。そしてこれらの操作を繰り返し、第2+第1の順で交互に10層づつ積層させ、最後にGaNよりなる第2の窒化物半導体層を40オングストローム成長さた超格子構造の多層膜よりなるn側第2多層膜層を640オングストロームの膜厚で成長させる。
(活性層)
次に、アンドープGaNよりなる障壁層を200オングストロームの膜厚で成長させ、続いて温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニアを用いアンドープIn0.4Ga0.6Nよりなる井戸層を30オングストロームの膜厚で成長させる。そして障壁+井戸+障壁+井戸・・・・+障壁の順で障壁層を5層、井戸層を4層、交互に積層して、総膜厚1120オングストロームの多重量子井戸構造よりなる活性層を成長させる。
(p側多層膜クラッド層)
次に、温度1050℃でトリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用い、Mgを1×1020/cmドープしたp型Al0.2Ga0.8Nよりなる第3の窒化物半導体層を40オングストロームの膜厚で成長させ、続いて温度を800℃にして、トリメチルガリウム、トリメチルインジウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用いMgを1×1020/cmドープしたIn0.03Ga0.97Nよりなる第4の窒化物半導体層を25オングストロームの膜厚で成長させる。そしてこれらの操作を繰り返し、第3+第4の順で交互に5層ずつ積層し、最後に第3の窒化物半導体層を40オングストロームの膜厚で成長させた超格子構造の多層膜よりなるp側多層膜クラッド層を365オングストロームの膜厚で成長させる。
(p側GaNコンタクト層)
続いて1050℃で、トリメチルガリウム、アンモニア、ビスシクロペンタジエニルマグネシウムを用い、Mgを1×1020/cmドープしたp型GaNよりなるp側コンタクト層を700オングストロームの膜厚で成長させる。
反応終了後、温度を室温まで下げ、さらに窒素雰囲気中、ウエハーを反応容器内において、700℃でアニーリングを行い、p型層をさらに低抵抗化する。
アニーリング後、ウエハーを反応容器から取り出し、最上層のp側コンタクト層の表面に所定の形状のマスクを形成し、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)装置でp側コンタクト層側からエッチングを行い、n側コンタクト層の表面を露出させる。
エッチング後、最上層にあるp側コンタクト層のほぼ全面に膜厚200オングストロームのNiとAuを含む透光性のp電極10と、そのp電極の上にボンディング用のAuよりなるpパッド電極を0.5μmの膜厚で形成する。一方、エッチングにより露出させたn側コンタクト層の表面にはWとAlを含むn電極を形成して窒化ガリウム系化合物半導体素子とする。
この窒化ガリウム系化合物半導体素子は順方向電流20mAにおいて、520nmの純緑色発光を示す。
なお、別の構成を有する窒化ガリウム系化合物半導体素子にもトリメチルガリウムを使用することができる。例えば、原料ガスにアンモニアとトリメチルガリウムとを用い、基板上にGaNよりなるバッファ層を成長させる。このGaNよりなる第1のバッファ層の上に、アンドープGaNよりなる第2のバッファ層、SiドープGaNよりなるn側コンタクト層、多重量子井戸構造よりなる活性層、単一のMgドープAl0.1Ga0.9N層、MgドープGaNからなるp側コンタクト層を順に積層したものなどがある。
本発明方法により得られるトリアルキルガリウムは、エピタキシャル結晶成長によりガリウム系化合物半導体薄膜を形成するための原料として好適に使用できる。

Claims (4)

  1. 下記一般式(1)
    Ga6−m (1)
    (式中、Rはメチル基またはエチル基を示し、Xはハロゲン原子を示す。mは1〜5の整数を示す)
    で表される少なくとも1種のハロゲン化アルキルガリウム化合物と、リチウム含有化合物、マグネシウム含有化合物、及び亜鉛含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルキル金属化合物とを反応させることによりトリアルキルガリウム化合物を合成するトリアルキルガリウムの製造方法。
  2. 少なくとも1種のアルキル金属化合物が、アルキルリチウム化合物、ハロゲン化アルキルマグネシウム化合物、及びジアルキル亜鉛化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の方法。
  3. 少なくとも1種のアルキル金属化合物が、メチル金属化合物、及びエチル金属化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1又は2に記載の方法。
  4. 上記一般式(1)で表される化合物1モルに対して、少なくとも1種のアルキル金属化合物を化学量論的組成比となるモル数の0.5〜2倍用いる請求項1〜のいずれかに記載の方法。
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