本発明の目的は、医薬の重要中間体である2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの工業的な製造方法を提供することにある。
非特許文献1に開示された、2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの製造方法では、腐食性が強いフッ化水素酸を高温下で過剰に用いて反応を行うため、反応器の材質に大幅な制限があった。また基質を反応溶媒で高度に希釈するため生産性が悪く、反応収率自体も低いものであった。さらに工業的な観点から見た場合、大量の取り扱いが困難なフッ化水素酸を使用し、また得られた生成物の精製にはカラムクロマトグラフィーを必要とするため、工業的な製造方法とは言い難いものであった。
一方、非特許文献2の製造方法では、工業的に高価で且つ大量の取り扱いに問題のある特殊なフッ素化剤を使用する必要があり、反応収率も中程度で、工業的な製造方法とは言い難いものであった。
また非特許文献3〜6に開示された、2’−デオキシ−2’−フルオロアデノシンまたは2’−デオキシ−2’−フルオログアノシンの合成方法は、ごく低い収率でしか、目的物を与えなかった。
非特許文献3〜6に開示されている、2’−トリフレート体をフッ素化し、2’−デオキシ−2’−フルオロアデノシンもしくは2’−デオキシ−2’−フルオログアノシンを得る反応は、フッ素アニオン(F-)による求核的なSN2置換反応と考えられるが、この反応においては副反応として「トリフレート基(CF3SO3 -基)の脱離反応」が競合して起こり、1’位炭素と2’位炭素が二重結合で結ばれた化合物を副生する。上記の非特許文献3における低収率の原因もこの副反応に由来する。これはフッ素アニオン(F-)による求核的なSN2置換反応に内在する本質的な問題であり、同様の問題は本発明の目的化合物2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの製造にも当てはまる。
このように2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンを工業的に有利に製造する方法が強く望まれていた。
さらに、本願発明における最終目的化合物である2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンは水溶性で且つ難結晶性の化合物であるため、高純度な白色結晶性粉末として回収率良く精製するには、カラムクロマトグラフィーによる精製を必要とし(非特許文献1、非特許文献2)、精製操作に負荷がかかるものであった。再結晶精製のように簡便な精製操作で高純度な白色結晶性粉末として回収率良く精製できる方法は未だ報告されていない。このように2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの工業的な精製方法も強く望まれていた。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明で対象とする1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体を基質とした場合に、目的とする2’位でのトリフルオロメタンスルホニル化、および引き続く2’位でのフッ素アニオン(F-)による求核的なSN2置換反応が、特定の条件下、良好に進行することを明らかにした。
本発明の特に重要な点は、2’−トリフレート体のフッ素化工程におけるフッ素化剤として、「有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」を用いることにある。
前記のように、フッ素アニオン(F-)による求核的なSN2置換反応においては、副反応としてトリフレート基(CF3SO3 -基)の脱離反応が競合する。しかし本発明者らは、この脱離反応が、上記の非特許文献3〜6で使用された強塩基性のフッ素化剤であるテトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)を、フッ素アニオン(F-)の求核性が比較的高く且つ塩基性の弱いフッ素化剤である、「有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」に代えることにより、高度に抑制できることを明らかにした。
さらに本発明者らは、このフッ素化剤として、「ピリジンまたはトリエチルアミンとフッ化水素酸からなる、塩または錯体」が特に好ましいことを見出した。
特に、工業的に安価に市販されており且つ取り扱いが比較的安全な、「トリエチルアミン1モルとフッ化水素酸3モルからなる錯体((C2H5)3N・3HF)」および、「ピリジン約30%(約10モル%)とフッ化水素酸約70%(約90モル%)からなる錯体(商品名:〜10モル%C5H5N・〜90モル%HF)」が好適に使用できることを明らかにした。
特にトリエチルアミン1モルとフッ化水素酸3モルからなる錯体((C2H5)3N・3HF)はガラス製反応容器を使用しても失透や腐食等の問題が起こらないため、反応容器の材質の点からも特に有利である。
従来の技術(非特許文献3〜6)における2’−デオキシ−2’−フルオロアデノシンおよび2’−デオキシ−2’−フルオログアノシンの合成では、何れもフッ素化剤としてテトラブチルアンモニウムフルオライド(TBAF)が用いられていた。この場合、過剰に使用したTBAFや、水との後処理操作で生成するテトラブチルアンモニウムヒドロキシド((n−Bu)4NOH)を生成物から選択的に取り除くことは一般的に難しい。ところが上記のフッ素化剤を使用した場合には、水洗等の簡単な精製操作で過剰に使用したフッ素化剤を生成物から選択的に取り除くことができ、工業的な生産時における大幅な操作性の向上が達成された。
さらに、本発明においては、2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの製造における3’位および5’位の水酸基の保護化剤に関する、新たな知見が得られた。
3’位および5’位の水酸基の保護化剤としては、2’−デオキシ−2’−フルオロアデノシンおよび2’−デオキシ−2’−フルオログアノシンの合成における脱保護化工程において、3’位および5’位の水酸基の保護基はテトラヒドロフラニル基(THF基)の方がテトラヒドロピラニル基(THP基)よりも優れていることが開示されている(非特許文献4、非特許文献5)。しかしながらテトラヒドロフラニル基(THF基)の保護化剤である2,3−ジヒドロフランは、テトラヒドロピラニル基(THP基)の保護化剤である3,4−ジヒドロ−2H−ピランに比べて沸点が低いため(54℃ vs.86℃)取り扱いが困難で、さらに工業的により高価である。
ところが本発明で対象とする2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの製造においては、3’位および5’位の水酸基の保護基がテトラヒドロピラニル基(THP基)であっても脱保護化工程が良好に進行することが明らかになった。
このTHP基を保護基として用いた場合に中間体として生成する、式[7]で示される「3’位および5’位の水酸基がテトラヒドロピラニル基(THP基)で保護された2’−トリフレート体」は新規化合物であり、2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの工業的な製造方法における好適な中間体である。
さらに本発明においては、1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の2’位水酸基のトリフルオロメタンスルホニル化反応において、トリフルオロメタンスルホニルフルオライド(CF3SO2F)が好適に使用できることを明らかにした。
2’位水酸基に対するトリフルオロメタンスルホニル化剤としては、トリフルオロメタンスルホン酸無水物((CF3SO2)2O)を使用しても反応は進行するが、トリフルオロメタンスルホン酸無水物((CF3SO2)2O)は二つのトリフルオロメタンスルホニル基(CF3SO2基)を持つが、反応に利用されるのは一つであり、残りはトリフレート基(CF3SO3 -基)の形で脱離基として働く。従って原子経済性の観点から言えば、トリフルオロメタンスルホン酸無水物((CF3SO2)2O)の使用は必ずしも効率的ではない。
また、トリフルオロメタンスルホニルクロライド(CF3SO2Cl)を使用しても反応は進行するが、2’−デオキシ−2’−フルオログアノシンの合成において、反応の進行に伴い副生する塩素アニオン(Cl-)が、生成物である2’−トリフレート体と反応系中で引き続き置換反応を起こし、2’位に塩素原子が置換した副生成物を与えることが開示されている(非特許文献6)。塩素アニオン(Clー)の求核性はフッ素アニオン(F-)の求核性よりも格段に高いため重大な副反応になる。従ってトリフルオロメタンスルホニルクロライド(CF3SO2Cl)の使用も制限される。
一連のトリフルオロメタンスルホン酸誘導体の工業的な製造方法をスキーム1に示す。このフローの中で、トリフルオロメタンスルホニルフルオライド(CF3SO2F)はより上流に位置しており、トリフルオロメタンスルホニルフルオライド(CF3SO2F)を使用することが工業的には最も有利である。
このような背景を踏まえて鋭意検討を行った結果、本発明で対象とする1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体のトリフルオロメタンスルホニル化において、トリフルオロメタンスルホニルフルオライド(CF3SO2F)を使用しても反応が良好に進行することが見出された。この結果、上記の問題点、つまり(1)トリフルオロメタンスルホニル基(CF3SO2基)の利用率の低さ、(2)2’位に塩素原子が置換した化合物の副生、を本質的に回避できることとなった。また、このトリフルオロメタンスルホニル化反応には、塩基を共存させる必要があるが、塩基としては、工業的に高価で且つ発火の危険性がある水素化ナトリウムを使用する必要がなく、工業的に安価で且つ取り扱いが安全なピリジンやトリエチルアミン等の有機塩基を使用することが可能である。
さらに本発明者らは、得られた2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの新規な精製方法を見出した。すなわち、2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の易結晶性に着目し、2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの低純度品を一度3’,5’−ジアセチル体に誘導し、この3’,5’−ジアセチル体を再結晶精製することにより純度を高め、再び脱アセチル化することにより高純度の2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンに精製できることを明らかにした。このようにして得られた2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンはアモルファスにはならず、高純度な白色結晶性粉末として収率良く回収できる。このように、カラムクロマトグラフィーによる精製のような負荷のかかる精製方法を回避しつつ、高純度な白色結晶性粉末として2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンが得られることを明らかにした。
最後に本発明の製造方法は各反応工程ともに選択性が高く分離の難しい不純物を殆ど副生しないことから、第一工程のトリフルオロメタンスルホニル化工程と第二工程のフッ素化工程をワンポットの反応として行うことができ、また第三工程の脱保護化工程と第四工程のアセチル化工程をワンポットの反応として行うこともでき、2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンを工業的に製造するための極めて有用な方法である。
すなわち本発明は、一般式[1]
[式中、Rは水酸基の保護基を表す]で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3',5'−水酸基保護体を、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジメチルラウリルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ピリジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−トリメチルピリジン、イミダゾール、ピリミジン、及び、ピリダジンからなる群より選ばれる少なくとも一つの有機塩基の存在下、式[5]
で示されるトリフルオロメタンスルホニル化剤と反応させることにより、一般式[3]
[式中、Rは水酸基の保護基を表し、TfはCF3SO2基を表す]で示される2’−トリフレート体に変換し、次いで、前記2’−トリフレート体を単離することなく、「前記群より選ばれる少なくとも一つの有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」よりなるフッ素化剤と反応させることにより、一般式[4]
[式中、Rは水酸基の保護基を表す]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体を製造する方法を提供する。
また本発明は、一般式[1]
[式中、Rは水酸基の保護基を表す]で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体をトリエチルアミンの存在下、式[5]
で示されるトリフルオロメタンスルホニル化剤と反応させることにより、一般式[3]
[式中、Rは水酸基の保護基を表し、TfはCF3SO2基を表す]で示される2’−トリフレート体に変換し、次いで、前記2’−トリフレート体を単離することなく、「トリエチルアミンとフッ化水素酸からなる、塩または錯体」よりなるフッ素化剤と反応させることにより、一般式[4]
[式中、Rは水酸基の保護基を表す]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体を製造する方法を提供する。
また本発明は、式[6]
[式中、THPはテトラヒドロピラニル基を表す]で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体をトリエチルアミンの存在下、式[5]
で示されるトリフルオロメタンスルホニル化剤と反応させることにより、式[7]
[式中、THPはテトラヒドロピラニル基を表し、TfはCF3SO2基を表す]で示される2’−トリフレート体に変換し、次いで、前記2’−トリフレート体を単離することなく、「トリエチルアミンとフッ化水素酸からなる、塩または錯体」よりなるフッ素化剤と反応させることにより、式[8]
[式中、THPはテトラヒドロピラニル基を表す]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体を製造する方法を提供する。
また本発明は、上記の何れかの方法により製造した、一般式[4]
[式中、Rは水酸基の保護基を表す]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体、または式[8]
[式中、THPはテトラヒドロピラニル基を表す]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体を脱保護化剤と反応させることにより、式[9]
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンを製造する方法を提供する。
また本発明は、式[9]
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンを、前記群より選ばれる少なくとも一つの有機塩基の存在下、アセチル化剤と反応させることにより、式[10]
[式中、Acはアセチル基を表す]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体に変換し、次いで該2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体を再結晶精製し、さらに脱アセチル化剤と反応させることを特徴とする、式[9]
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの精製方法を提供する。
また本発明は、上記の方法により製造した、式[9]
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンを、前記群より選ばれる少なくとも一つの有機塩基の存在下、アセチル化剤と反応させることにより、式[10]
[式中、Acはアセチル基を表す]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体に変換し、次いで該2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体を再結晶精製し、さらに脱アセチル化剤と反応させることを特徴とする、式[9]
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの精製方法を提供する。
医薬の重要中間体である2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの製造方法を提供する。
以下、本発明の2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの製造方法について詳細に説明する。本発明はスキーム2で示されるように、(1)トリフルオロメタンスルホニル化工程、(2)フッ素化工程、(3)脱保護化工程、(4)アセチル化工程、(5)再結晶精製工程、(6)脱アセチル化工程の六つの製造工程からなる。
まず、第一工程のトリフルオロメタンスルホニル化工程について詳細に説明する。第一工程のトリフルオロメタンスルホニル化工程は、一般式[1]で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体を、前記群より選ばれる少なくとも1つの有機塩基(以下、たんに「有機塩基」とも呼ぶ。)の存在下、式[5]で示されるトリフルオロメタンスルホニル化剤と反応させることにより達する。
出発原料である一般式[1]で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体のRとしては、トリチル基(トリフェニルメチル基)、テトラヒドロピラニル基(THP基)、テトラヒドロフラニル基(THF基)等が挙げられる。その中でもテトラヒドロピラニル基(THP基)およびテトラヒドロフラニル基(THF基)が好ましく、特にテトラヒドロピラニル基(THP基)がより好ましい。一般式[1]で示される化合物は非特許文献2および、Khim.Geterotsikl.Soedin.(ロシア),1996年,第7号,p.975−977、を参考にして製造することができる。これらの文献の方法にならえば、3’位と5’位を選択的に保護したものが得られる。
式[5]で示されるトリフルオロメタンスルホニル化剤の使用量としては、一般式[1]で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体1モルに対して1モル以上使用すればよく、通常は1〜20モルが好ましく、特に1〜10モルがより好ましい。
有機塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジメチルラウリルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ピリジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−トリメチルピリジン、イミダゾール、ピリミジン、ピリダジンが挙げられる。その中でもトリエチルアミンおよびピリジンが好ましく、特にトリエチルアミンがより好ましい。
有機塩基の使用量としては、一般式[1]で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体1モルに対して通常1モル以上使用すればよく、2〜20モルが好ましく、特に3〜10モルがより好ましい。
反応溶媒としては、特に使用しなくても反応を行うことはできるが、使用することが好ましい。かかる反応溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その中でもトルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシドが好ましく、特に塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリルがより好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。
反応溶媒の使用量としては、一般式[1]で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体1モルに対して通常0.1L以上使用すればよく、0.1〜20Lが好ましく、特に0.1〜10Lがより好ましい。
温度条件としては、通常、−100〜+50℃であり、−80〜+20℃が好ましく、特に−60〜−10℃がより好ましい。式[5]で示されるトリフルオロメタンスルホニル化剤である、トリフルオロメタンスルホニルフルオライド(CF3SO2F)を使用して沸点(−21℃)以上の温度条件で反応を行う場合には耐圧反応容器を使用することができる。
反応時間としては、通常0.1〜24時間であるが、基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡して原料が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
後処理としては、特に制限はないが、通常は反応終了液に水、炭酸水素ナトリウム水溶液または食塩水等を加え、トルエン、塩化メチレンまたは酢酸エチル等の有機溶媒で抽出し、回収有機層を水または食塩水等で洗浄し、無水硫酸ナトリウムまたは無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥し、濾過し、濃縮し、真空乾燥し、粗生成物を得ることができる。必要に応じて粗生成物を活性炭処理または再結晶等の精製操作に付すことにより、目的の一般式[3]で示される2’−トリフレート体を高い化学純度で得ることができる。しかしながら本2’−トリフレート体は反応性が高いため、後処理操作を行い系外に単離することなく、反応終了液に直接、「有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」よりなるフッ素化剤を加えて、第一工程のトリフルオロメタンスルホニル化工程と第二工程のフッ素化工程をワンポットの反応として行う。さらに有機塩基と「有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」よりなるフッ素化剤の存在下、式[5]で示されるトリフルオロメタンスルホニル化剤を加えて、第一工程のトリフルオロメタンスルホニル化工程と第二工程のフッ素化工程をワンポットの反応として行うことも有効である。また式[5]で示されるトリフルオロメタンスルホニル化剤としてトリフルオロメタンスルホニルフルオライド(CF3SO2F)を用いると、反応の進行に伴い「有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」を副生するが、引き続くフッ素化反応は殆ど進行せず、新たに「有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」よりなるフッ素化剤を加える必要がある。
次に第二工程のフッ素化工程について詳細に説明する。第二工程のフッ素化工程は、第一工程で得られた、一般式[3]で示される2’−トリフレート体を「有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」よりなるフッ素化剤と反応させることにより達する。
「有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」よりなるフッ素化剤における有機塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジメチルラウリルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ピリジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−トリメチルピリジン、イミダゾール、ピリミジン、ピリダジンが挙げられる。その中でもトリエチルアミンおよびピリジンが好ましく、特にトリエチルアミンがより好ましい。
フッ素化剤における有機塩基とフッ化水素酸のモル比としては、通常、100:1〜1:100の範囲であり、50:1〜1:50の範囲が好ましく、特に25:1〜1:25の範囲がより好ましい。さらにアルドリッチ(Aldrich、2003−2004総合カタログ)から市販されている、「トリエチルアミン1モルとフッ化水素酸3モルからなる錯体((C2H5)3N・3HF)」および、「ピリジン約30%(約10モル%)とフッ化水素酸約70%(約90モル%)からなる錯体(商品名:〜10モル%C5H5N・〜90モル%HF)」を使用するのが極めて便利である。
「有機塩基とフッ化水素酸からなる、塩または錯体」よりなるフッ素化剤の使用量としては、一般式[3]で示される2’−トリフレート体1モルに対して通常1モル以上使用すればよく、1〜20モルが好ましく、特に1〜10モルがより好ましい。
反応溶媒としては、特に使用しなくても反応を行うことはできるが、使用することが好ましい。かかる反応溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その中でもトルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシドが好ましく、特に塩化メチレン、N,N−ジメチルホルムアミドおよびアセトニトリルがより好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。
反応溶媒の使用量としては、一般式[3]で示される2’−トリフレート体1モルに対して通常0.1L以上使用すればよく、0.1〜20Lが好ましく、特に0.1〜10Lがより好ましい。
温度条件としては、通常−100〜+100℃であり、−80〜+80℃が好ましく、特に−60〜+60℃がより好ましい。
反応時間としては、通常0.1〜120時間であるが、基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡して原料が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
後処理としては、特に制限はないが、通常は反応終了液に水、炭酸水素ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液または食塩水等を加え、トルエン、塩化メチレンまたは酢酸エチル等の有機溶媒で抽出し、回収有機層を水または食塩水等で洗浄し、無水硫酸ナトリウムまたは無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥し、濾過し、濃縮し、真空乾燥し、粗生成物を得ることができる。必要に応じて粗生成物を活性炭処理または再結晶等の精製操作に付すことにより、目的の一般式[4]で示される2’−デオキシ−2'−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体を高い化学純度で得ることができる。
次に第三工程の脱保護化工程について詳細に説明する。第三工程の脱保護化工程は、第二工程で得られた、一般式[4]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体を脱保護化剤と反応させることにより達する。
脱保護化反応は脱保護化剤に酸触媒を使用することが好ましく、アルコール系の反応溶媒中で行うことが好ましい。
酸触媒としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、PPTS(ピリジニウムp−トルエンスルホネート)、10−カンファースルホン酸等の有機酸、Amberlyst H−15、Dowex 50W−X8等のイオン交換樹脂、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸が挙げられる。その中でも酢酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸および硫酸が好ましく、特にp−トルエンスルホン酸および硫酸がより好ましい。
酸触媒の使用量としては、一般式[4]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体通常、1モルに対して触媒量以上使用すればよく、0.01〜100モルが好ましく、特に0.03〜50モルがより好ましい。
反応溶媒としては、アルコール系の反応溶媒を使用することが好ましく、かかる反応溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。その中でもメタノール、エタノール、n−プロパノールおよびn−ブタノールが好ましく、特にメタノール、エタノールおよびn−プロパノールがより好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。
反応溶媒の使用量としては、一般式[4]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3',5'−水酸基保護体1モルに対して通常0.1L以上使用すればよく、0.1〜20Lが好ましく、特に0.1〜10Lがより好ましい。
温度条件としては、通常、−20〜+100℃であり、−10〜+80℃が好ましく、特に0〜+60℃がより好ましい。
反応時間としては、通常、0.1〜48時間であるが、基質および反応条件により異なるため、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡して原料が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
後処理としては、特に制限はないが、通常は反応終了液に有機塩基または無機塩基を加え、アルコール系の反応溶媒を濃縮することにより、目的の式[9]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの粗生成物を得ることができる。第四工程のアセチル化反応は、本粗生成物をアセチル化剤と反応させることにより、十分良好に進行する。
次に第四工程のアセチル化工程について詳細に説明する。第四工程のアセチル化工程は、第三工程で得られた、式[9]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンを有機塩基の存在下、アセチル化剤と反応させることにより達する。
アセチル化剤としては、無水酢酸、アセチルフルオライド、アセチルクロライド、アセチルブロマイド等が挙げられる。その中でも無水酢酸、アセチルクロライドおよびアセチルブロマイドが好ましく、特に無水酢酸およびアセチルクロライドがより好ましい。
アセチル化剤の使用量としては、式[9]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジン1モルに対して、通常2モル以上使用すればよく、2〜20モルが好ましく、特に2〜10モルがより好ましい。
有機塩基としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリn−ブチルアミン、ジメチルラウリルアミン、4−ジメチルアミノピリジン、N,N−ジメチルアニリン、ジメチルベンジルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノン−5−エン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセ−7−エン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ピリジン、2,4−ルチジン、2,5−ルチジン、2,6−ルチジン、3,4−ルチジン、3,5−ルチジン、2,4,6−トリメチルピリジン、イミダゾール、ピリミジン、ピリダジンが挙げられる。その中でもトリエチルアミンおよびピリジンが好ましく、特にピリジンがより好ましい。
有機塩基の使用量としては、式[9]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジン1モルに対して通常2モル以上使用すればよく、2〜20モルが好ましく、特に2〜10モルがより好ましい。
反応溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。その中でもトルエン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリルおよびジメチルスルホキシドが好ましく、特に塩化メチレンおよびN,N−ジメチルホルムアミドがより好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。またアセチル化剤と有機塩基を過剰量用いて反応溶媒を兼ね合わせることもできる。
温度条件としては、通常−20〜+100℃であり、−10〜+80℃が好ましく、特に0〜+60℃がより好ましい。
反応時間としては、通常、0.1〜48時間であるが、反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡して原料が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
後処理としては、特に制限はないが、通常は反応終了液中の過剰に使用したアセチル化剤および有機塩基と反応溶媒を濃縮し、濃縮残査に水を加え、析出した結晶を濾過し、水、またはトルエン、塩化メチレンまたは酢酸エチル等の有機溶媒で洗浄し、真空乾燥することにより、目的の式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶を得ることができる。
次に第五工程の再結晶精製工程について詳細に説明する。第五工程の再結晶精製工程は、第四工程で得られた、式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶を再結晶精製することにより達する。
再結晶溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、t−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルi−ブチルケトン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール等のアルコール系、水等が挙げられる。その中でもn−ヘキサン、n−ヘプタン、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールおよび水が好ましく、特にn−ヘプタン、アセトン、アセトニトリル、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノールおよび水がより好ましい。これらの再結晶溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。
再結晶溶媒の使用量としては、式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶1gに対して、通常1ml以上使用すればよく、1〜100mlが好ましく、特に1〜50mlがより好ましい。
本再結晶精製においては、種結晶を加えることにより円滑に且つ効率良く結晶を析出させることができる。種結晶の使用量としては、式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶1gに対して通常0.0001g以上使用すればよく、0.0001〜0.1gが好ましく、特に0.001〜0.05gがより好ましい。
温度条件としては、使用する再結晶溶媒の沸点および凝固点により適宜決めることができ、通常は約30℃から再結晶溶媒の沸点付近の温度で精製前の粗結晶を溶解し、静置下または撹拌下、徐々に降温しながら結晶を析出させ、最終的には−20℃〜室温(25℃)まで冷却する。
本再結晶精製においては、析出した結晶の化学純度が向上するため、析出した結晶を濾過等で回収することにより、高い化学純度の式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体を得ることができる。また本再結晶操作を繰り返すことにより、さらに高い化学純度のものを得ることができる。また精製前の粗結晶を再結晶溶媒に溶解した溶液を活性炭処理することにより脱色することもできる。
精製時間としては、通常、0.1〜120時間であるが、精製条件により異なるため、析出した結晶の化学純度および結晶の析出量をモニター分析して高い化学純度で収率良く回収できた時点を終点とすることが好ましい。
最後に第六工程の脱アセチル化工程について詳細に説明する。第六工程の脱アセチル化工程は、第五工程で得られた、高い化学純度の式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体を脱アセチル化剤と反応させることにより達する。
脱アセチル化反応は脱アセチル化剤に酸触媒または塩基を使用することが好ましく、アルコール系の反応溶媒中で行うことが好ましい。
酸触媒としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、PPTS(ピリジニウムp−トルエンスルホネート)、10−カンファースルホン酸等の有機酸、Amberlyst H−15、Dowex 50W−X8等のイオン交換樹脂、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸等の無機酸が挙げられる。その中でも酢酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸および硫酸が好ましく、特にp−トルエンスルホン酸および塩酸がより好ましい。
酸触媒の使用量としては、式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の高純度品1モルに対して触媒量以上使用すればよく、通常は0.01〜100モルが好ましく、特に0.03〜50モルがより好ましい。
塩基としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン等の炭素数1から6の低級アルキル一級アミン、アンモニア等が挙げられる。その中でもメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミンおよびアンモニアが好ましく、特にメチルアミン、エチルアミンおよびアンモニアがより好ましい。
塩基の使用量としては、式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の高純度品1モルに対して、通常2モル以上使用すればよく、2〜200モルが好ましく、特に2〜100モルがより好ましい。
反応溶媒としては、アルコール系の反応溶媒を使用することが好ましく、かかる反応溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等が挙げられる。その中でもメタノール、エタノール、n−プロパノールおよびn−ブタノールが好ましく、特にメタノール、エタノールおよびn−プロパノールがより好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて使用することができる。
反応溶媒の使用量としては、式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の高純度品1モルに対して、通常0.1L以上使用すればよく、0.1〜20Lが好ましく、特に0.1〜10Lがより好ましい。
温度条件としては、通常−20〜+100℃であり、−10〜+80℃が好ましく、特に0〜+60℃がより好ましい。使用する塩基の沸点以上の温度条件で反応を行う場合には耐圧反応容器を使用することができる。
反応時間としては、通常0.1〜120時間であるが、反応条件により異なるため、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、NMR等の分析手段により反応の進行状況を追跡して原料が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
後処理としては、特に制限はないが、通常は反応終了液中の過剰に使用した酸触媒および塩基と反応溶媒を濃縮し、高純度な白色結晶性粉末を収率良く回収することができる。必要に応じて高純度な白色結晶性粉末を活性炭処理または再結晶等の精製操作に付すことにより、目的の式[9]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンをさらに高い化学純度で得ることができる。特に塩基としてアンモニアを使用した場合に副生するアセトアミドは再結晶精製により効率的に除くことができる。本再結晶精製は第五工程の再結晶精製工程を参考にして同様に行うことができる。この場合に、式[10]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶を、式[9]で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの高純度な白色結晶性粉末に読み替えて行う。
以下、実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[参考例1] 出発原料である1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の製造
ガラス製反応容器に、下記式
で示される2,2’−アンヒドロウリジン 50.00g(0.221mol、1eq)、N,N−ジメチルホルムアミド 320mlと3,4−ジヒドロ−2H−ピラン 129.08g(1.534mol、6.94eq)を加え、0℃に冷却し、p−トルエンスルホン酸・一水和物 25.60g(0.135mol、0.61eq)を加え、室温で18時間50分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が98.1%で、下記式
で示される2,2’−アンヒドロウリジンの3’,5’−水酸基保護体が生成していることを確認した。反応終了液にトリエチルアミン 13.07g(0.129mol、0.58eq)を加え、0℃に冷却し、2N水酸化ナトリウム水溶液 230ml(0.460mol、2.08eq)を加え、室温で2時間15分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が98.7%で、下記式
で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体が生成していることを確認した。反応終了液に酢酸 29.37g(0.489mol、2.21eq)と水 200mlを加え、酢酸エチル 250mlで抽出した。回収水層はさらに酢酸エチル 150mlで2回抽出した。回収有機層は、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下濃縮し、少量のトルエンで3回共沸し、上記式で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 196.12gを得た。粗生成物の回収量は理論収率の重量 91.15gを超えていた。
[実施例1] 第一工程のトリフルオロメタンスルホニル化工程と第二工程のフッ素化工程
SUS製耐圧反応容器に、[参考例1]で製造した、下記式
で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 142.90g(0.145molとする、1eq)、N,N−ジメチルホルムアミド 290mlとトリエチルアミン 87.12g(0.861mol、5.94eq)を加え、内温を−54℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホニルフルオライド 45.00g(0.296mol、2.04eq)を加え、撹拌しながら2時間30分かけて−20℃まで昇温した。反応終了液を19F−NMRで分析したところ、下記式
で示される2’−トリフレート体が生成していることを確認した。2’−トリフレート体の19F−NMRスペクトルを下に示す。
19F−NMR(基準物質:C6F6,溶媒:CDCl3)、δ ppm:87.06,87.09,87.17,87.20.
反応終了液に−20℃で(C2H5)3N・3HF 118.00g(0.732mol、5.05eq)を加え、室温で62時間45分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が>99%で、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体が生成していることを確認した。反応終了液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。回収水層はさらに酢酸エチルで抽出した。回収有機層は、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下濃縮し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 177.18gを得た。粗生成物の回収量は理論収率の重量 60.09gを超えていた。2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体の19F−NMRスペクトルを下に示す。
19F−NMR(基準物質:C6F6,溶媒:CDCl3)、δ ppm:−43.13(dt,51.9Hz,15.4Hz),−42.50(dt,51.5Hz,15.4Hz),−37.62(dt,51.5Hz,15.0Hz),−37.55(dt,51.9Hz,15.0Hz).
[実施例2] 第三工程の脱保護化工程と第四工程のアセチル化工程
ガラス製反応容器に、[実施例1]で製造した、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 177.18g(0.145molとする、1eq)、メタノール 150mlとp−トルエンスルホン酸・一水和物 13.80g(0.073mol、0.50eq)を加え、室温で16時間30分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が99.0%で、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンが生成していることを確認した。反応終了液にピリジン 6.88g(0.087mol、0.60eq)を加え、減圧下濃縮し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの粗生成物を得た。
ガラス製反応容器に粗生成物全量を加え、0℃に冷却し、ピリジン 68.46g(0.865mol、5.97eq)と無水酢酸 54.10g(0.530mol、3.66eq)を加え、室温で19時間10分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が>99%で、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体が生成していることを確認した。反応終了液を50℃で減圧下濃縮し、濃縮残査に水 80mlを加え、析出した結晶を濾過し、酢酸エチル 20mlで洗浄し、真空乾燥し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶 58.00gを得た。粗結晶の回収量は理論収率の重量 47.89gを超えていた。粗結晶を液体クロマトグラフィーで分析したところ、HPLC純度が90.17%であった。2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の1H,19F−NMRスペクトルを下に示す。
1H−NMR(基準物質:TMS,溶媒:DMSO−D6)、δ ppm:1.96(s,3H),2.03(s,3H),4.08(dd,5.6Hz,12.0Hz,1H),4.19(ddd,2.4Hz,5.6Hz,8.0Hz,1H),4.26(dd,2.4Hz,12.0Hz,1H),5.18(ddd,5.2Hz,8.0Hz,17.6Hz,1H),5.46(ddd,2.0Hz,5.2Hz,52.4Hz,1H),5.61(d,8.0Hz,1H),5.79(dd,2.0Hz,22.6Hz,1H),7.64(d,8.0
Hz,1H),11.41(br,1H).
19F−NMR(基準物質:C6F6,溶媒:DMSO−D6)、δ ppm:−35.34(dt,51.9Hz,21.4Hz).
[実施例3] 第五工程の再結晶精製工程
ガラス製反応容器に、[実施例2]で製造した、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶 58.00g、メタノール 330mlと水 120mlを加え、還流条件下で加熱溶解し、撹拌しながら室温まで降温した。析出した結晶を濾過し、メタノールで洗浄し、真空乾燥し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の高純度品 33.48gを得た。1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物から2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の高純度品までのトータル収率は70%であった(理論収率の重量 47.89g)。高純度品を液体クロマトグラフィーで分析したところ、HPLC純度が99.49%であった。
再度、高純度品 33.48gをメタノール 200mlと水 100mlから同様に再結晶精製したところ、さらに高純度の上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体 31.51gを得た。二回目再結晶精製の回収率は94%であった。1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物から2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の二回目再結晶品までのトータル収率は66%であった(理論収率の重量 47.89g)。二回目再結晶品を液体クロマトグラフィーで分析したところ、HPLC純度が99.95%であった。
[実施例4] 第六工程の脱アセチル化工程
SUS製耐圧反応容器に、[実施例3]で製造した、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の二回目再結晶品 5.00g(15.14mmol、1eq)、メタノール50mlとアンモニア 12.89g(756.90mmol、49.99eq)を加え、室温で6時間30分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が99.9%で、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンが生成していることを確認した。
反応終了液を減圧下濃縮し、高純度な白色結晶性粉末 6.77gを得た。ガラス製反応容器に、高純度な白色結晶性粉末 6.77g、i−プロパノール 70mlとn−ヘプタン 3mlを加え、還流条件下で加熱溶解し、撹拌しながら室温まで降温した。析出した結晶を濾過し、i−プロパノールで洗浄し、真空乾燥し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンのさらに高純度な白色結晶性粉末 3.10gを得た。脱アセチル化反応と再結晶精製のトータル収率は83%であった。1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物から2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの再結晶品までのトータル収率を換算すると55%であった。再結晶品を液体クロマトグラフィーで分析したところ、HPLC純度が99.84%であった。2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの1H,19F−NMRスペクトルを下に示す。
1H−NMR(基準物質:TMS,溶媒:DMSO−D6)、δ ppm:3.57(d,12.8Hz,1H),3.75(d,12.8Hz,1H),3.86(d,7.6Hz,1H),4.13(ddd,4.4Hz,7.6Hz,20.8Hz,1H),5.02(ddd,2.0Hz,4.4Hz,53.2Hz,1H),5.20(br−t,1H),5.61(br,1H),5.61(dd,2.0Hz,8.0Hz,1H),5.89(dd,2.0Hz,17.6Hz,1H),7.91(d,8.0Hz,1H),11.38(br−d,1H).
19F−NMR(基準物質:C6F6,溶媒:DMSO−D6)、δ ppm:−39.77(dt,51.5Hz,18.4Hz).
[実施例5] 第六工程の脱アセチル化工程
ガラス製反応容器に、[参考例1]および[実施例1]から[実施例3]を参考にして同様に製造した、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の高純度品 199.00g(0.603mol、1eq、HPLC純度99.60%)とメタノール 4020mlを加え、60℃で1時間撹拌した。内温を55℃に冷却し、2.11M塩酸メタノール 200ml(0.422mol、0.70eq)を加え、45℃で19時間撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が>99.5%で、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンが生成していることを確認した。反応終了液を濾過し、減圧下濃縮し、高純度な白色結晶性粉末 196.38gを得た。ガラス製反応容器に、高純度な白色結晶性粉末 196.38g、i−プロパノール 900mlとn−ヘプタン 300mlを加え、50℃で30分間加熱攪拌洗浄し、室温まで降温した。析出した結晶を濾過し、真空乾燥し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンのさらに高純度な白色結晶性粉末 137.51gを得た。脱アセチル化反応と加熱攪拌洗浄のトータル収率は93%であった。加熱攪拌洗浄品を液体クロマトグラフィーで分析したところ、HPLC純度が99.50%であった。2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの1H,19F−NMRスペクトルは[実施例4]に示したものと同様であった。
[参考例2] 出発原料である1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の製造
ガラス製反応容器に、N,N−ジメチルホルムアミド 700mlと3,4−ジヒドロ−2H−ピラン 235.00g(2.794mol、4.00eq)を加え、0℃に冷却し、p−トルエンスルホン酸・一水和物 80.00g(0.421mol、0.60eq)を加え、さらに同温度にて、下記式
で示される2,2’−アンヒドロウリジン 158.00g(0.699mol、1eq)を加え、室温で15時間35分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が99.3%で、下記式
で示される2,2’−アンヒドロウリジンの3’,5’−水酸基保護体が生成していることを確認した。反応終了液を0℃に冷却し、5N水酸化ナトリウム水溶液 360ml(1.800mol、2.58eq)を加え、室温で1時間55分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が98.7%で、下記式
で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体が生成していることを確認した。反応終了液に酢酸 89.17g(1.485mol、2.12eq)を加え、酢酸エチル 450mlで抽出した。回収水層はさらに酢酸エチル 200mlで抽出した。回収有機層は、減圧下濃縮し、上記式で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 479.94gを得た。粗生成物の回収量は理論収率の重量 288.29gを超えていた。
[実施例6] 第一工程のトリフルオロメタンスルホニル化工程と第二工程のフッ素化工程
SUS製耐圧反応容器に、[参考例2]で製造した、下記式
で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 479.94g(0.699molとする、1eq)、アセトニトリル 880mlとトリエチルアミン 428.34g(4.233mol、6.06eq)を加え、0℃に冷却し、(C2H5)3N・3HF 451.00g(2.797mol、4.00eq)を加え、さらに冷却し、内温−23〜−45℃にて、トリフルオロメタンスルホニルフルオライド 191.00g(1.256mol、1.80eq)を加え、室温で110時間55分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が99.8%で、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体が生成していることを確認した。炭酸カリウム 350.00g(2.532mol、3.62eq)を水 3000mlに溶解し、酢酸エチル 800mlを加えて調製した二相系溶液に、反応終了液を攪拌しながら加え、酢酸エチルで抽出した。回収水層はさらに酢酸エチル 500mlで抽出した。回収有機層は、減圧下濃縮し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 794.54gを得た。粗生成物の回収量は理論収率の重量 289.69gを超えていた。2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体の19F−NMRスペクトルは[実施例1]に示したものと同様であった。
[実施例7] 第三工程の脱保護化工程と第四工程のアセチル化工程
ガラス製反応容器に、[実施例6]で製造した、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 794.54g(0.699molとする、1eq)、メタノール 700mlとp−トルエンスルホン酸・一水和物 66.60g(0.350mol、0.50eq)を加え、室温で40時間30分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が100%で、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンが生成していることを確認した。反応終了液にピリジン 88.02g(1.113mol、1.59eq)を加え、減圧下濃縮し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの粗生成物を得た。
ガラス製反応容器に粗生成物全量を加え、ピリジン 489.00g(6.182mol、8.84eq)を加え、0℃に冷却し、無水酢酸 541.00g(5.299mol、7.58eq)を加え、室温で40分撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が96.6%で、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体が生成していることを確認した。反応終了液を減圧下濃縮し、濃縮残査を0℃に冷却し、水 160mlと酢酸エチル 160mlを加え、同温度にて攪拌し、析出した結晶を濾過し、真空乾燥し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶 175.36gを得た。2,2’−アンヒドロウリジンから2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶までのトータル収率は76%であった(理論収率の重量 230.86g)。粗結晶を液体クロマトグラフィーで分析したところ、HPLC純度が96.90%であった。2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の1H,19F−NMRスペクトルは[実施例2]に示したものと同様であった。
[実施例8] 第五工程の再結晶精製工程
ガラス製反応容器に、[実施例7]で製造した、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の粗結晶 175.36gとアセトニトリル 700mlを加え、還流条件下で加熱溶解し、撹拌しながら室温まで降温した。析出した結晶を濾過し、真空乾燥し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の高純度品 143.22gを得た。2,2’−アンヒドロウリジンから2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−ジアセチル体の高純度品までのトータル収率は62%であった(理論収率の重量 230.86g)。高純度品を液体クロマトグラフィーで分析したところ、HPLC純度が99.80%であった。
[参考例3] 第一工程のトリフルオロメタンスルホニル化工程と第二工程のフッ素化工程
ガラス製反応容器に、[参考例1]を参考にして同様に製造した、下記式
で示される1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 0.412g(0.999mmolとする、1eq)、N,N−ジメチルホルムアミド 5mlとトリエチルアミン 0.799g(7.896mmol、7.90eq)を加え、−78℃に冷却し、トリフルオロメタンスルホン酸無水物 0.335g(1.187mmol、1.19eq)を加え、−78℃で10分間撹拌した。
反応終了液を19F−NMRで分析したところ、下記式
で示される2’−トリフレート体が生成していることを確認した。2’−トリフレート体の19F−NMRスペクトルは[実施例1]に示したものと同様であった。
反応終了液に−78℃で「ピリジン〜30%(〜10モル%)とフッ化水素酸〜70%(〜90モル%)からなる錯体(〜10モル%C5H5N・〜90モル%HF)」 0.2mlを加え、室温で3時間撹拌した。反応終了液を液体クロマトグラフィーで分析したところ、変換率が62%で、下記式
で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体が生成していることを確認した。反応終了液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。回収有機層は、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下濃縮し、上記式で示される2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物 0.816gを得た。粗生成物の回収量は理論収率の重量 0.414gを超えていた。そこでカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/酢酸エチル:n−ヘキサン=1:1)による精製操作に付し、精製品の正確な重量を測定したところ、精製品 0.324gを得た。1−β−D−アラビノフラノシルウラシルの3’,5’−水酸基保護体の粗生成物から2'−デオキシ−2'−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体の精製品までのトータル収率は78%であった。2’−デオキシ−2’−フルオロウリジンの3’,5’−水酸基保護体の19F−NMRスペクトルは[実施例1]に示したものと同様であった。