しかしながら、上記構成の排気浄化システムでは、EGRを行うとNOx触媒を通過する排気の流量が減少してしまうと考えられる。その場合には排気の有する熱エネルギが効率的にNOx触媒に伝わないため、例えばNOx触媒を活性温度まで迅速に昇温させることが困難となる虞があった。一方、EGRを行わずにNOx触媒を早期昇温させる場合には、その期間に亘りEGRによって内燃機関におけるNOxの生成量を低減することが困難となる場合があった。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排気の一部を内燃機関の吸気系に再循環させるEGR装置を備えた内燃機関の排気浄化システムにおいて、排気通路に設けられるNOx触媒の温度が低いときに、内燃機関におけるNOxの生成量を低減させつつ、NOx触媒を迅速に昇温可能な技術を提供することである。
上記目的を達成するための本発明は、排気の一部を排気通路に設けられるNOx触媒よ
りも上流側から吸気系に導く第1の経路および/またはNOx触媒よりも下流側から吸気系に導く第2の経路により排気を再循環させるEGR装置を備え、NOx触媒の温度がより低いときにおける第1の経路と第2の経路とにより吸気系に導かれる排気の流量の和に対する第2の経路により吸気系に導かれる排気の流量の比率をNOx触媒の温度がより高いときにおける該比率以上にすることを最大の特徴とする。
より詳しくは、一端が内燃機関に接続されて該内燃機関からの排気が通過する排気通路と、
前記排気通路に設けられるとともに前記排気に含まれるNOxを浄化するNOx触媒と、
前記排気の一部を前記排気通路における前記NOx触媒よりも上流側から前記内燃機関の吸気系に導く第1の経路および/または前記排気の一部を前記排気通路における前記NOx触媒よりも下流側から前記内燃機関の吸気系に導く第2の経路により前記排気の一部を吸気系に再循環させるEGR装置と、
前記第1の経路により前記吸気系に導かれる排気の流量である第1EGRガス量および/または前記第2の経路により前記吸気系に導かれる排気の流量である第2EGRガス量を変更するEGRガス量変更手段と、
を備え、
前記EGRガス量変更手段は、前記NOx触媒の温度がより低いときにおける前記第1EGRガス量と前記第2EGRガス量との和である総EGRガス量に対する前記第2EGRガス量の比率を前記NOx触媒の温度がより高いときにおける前記比率以上にすることを特徴とする。
本発明におけるEGR装置は、排気通路におけるNOx触媒よりも上流側から排気の一部を内燃機関の吸気系に導く第1の経路と排気通路におけるNOx触媒よりも下流側から排気の一部を内燃機関の吸気系に導く第2の経路との少なくとも何れか一方の経路により排気を再循環させる。この、内燃機関の吸気系に再循環される排気を、以下「EGRガス」と称す。また、第1の経路によって導かれるEGRガスを第1EGRガス、第2の経路によって導かれるEGRガスを第2EGRガスと称す。
ここで、第1の経路と第2の経路とは、EGRガスがNOx触媒を通過する前の排気を吸気系に導くか、NOx触媒を通過した後の排気を導くかの点で相違する。本発明では、EGRガス量変更手段が、NOx触媒の温度がより低いときにおける総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率が前記NOx触媒の温度がより高いときにおける前記比率以上になるように第1EGRガス量および/または第2EGRガス量を変更する。
これにより、NOx触媒の温度が低いときには、NOx触媒を通過する排気の流量を増加させることができる。つまり、上記のようにNOx触媒を昇温させる際に、排気の熱エネルギを好適にNOx触媒に流入させることにより、NOx触媒を迅速に昇温させることができる。
本発明において、NOx触媒の温度が低いときほど総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を大きくし、NOx触媒の温度が高いときほど総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を小さくするようにしても良い。あるいは、NOx触媒の温度が上昇することに伴い、総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を段階的に小さくするようにしても良い。
また、本発明における前記EGRガス量変更手段は、前記NOx触媒の温度が所定温度よりも低いときにおける総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を前記NOx触媒の温度が前記所定温度以上であるときにおける総EGRガス量に対する第2EGRガス
量の比率よりも大きくしても良い。これにより、NOx触媒の温度を所定温度まで迅速に上昇させることが可能となる。
また、「所定温度」とは、NOx触媒に要求される目標温度を意味するものである。例えば、本発明における所定温度は、NOx触媒に対し、該NOx触媒に流入した排気中のNOxを好適に浄化するために要求される温度であっても良く、NOx触媒の活性温度に所定のマージンを見込んだ温度としても良い。
ここで、NOx触媒の上流側から排気を吸気系に導く第1の経路は、NOx触媒の下流側から排気を吸気系に導く第2の経路に比べて経路が短い。そして、NOx触媒の温度が所定温度まで上昇した以降は、NOx触媒の温度が所定温度よりも低いときに比べて総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率が相対的に小さくなるように第1EGRガス量および/または第2EGRガス量が変更される。
これにより、EGRガスが吸気系に導かれるまでに流通する経路の短い第1の経路によって、より多くのEGRガスを内燃機関に再循環させることができる。その結果、例えば内燃機関の運転状態に応じたEGRガス量の変更時における制御の応答性を向上させることができる。
また、NOx触媒を通過した後の排気は、その組成が変化することにより、NOx触媒を通過する前の排気に比べてその比熱が低下する場合がある。一方、EGRガスにより燃焼室における混合気の燃焼温度を下げるためには、EGRガスの比熱が高い方が望ましい。
これに対し、第1の経路は排気の一部を排気通路におけるNOx触媒よりも上流側から内燃機関の吸気系に導くことができる。従って、NOx触媒の温度が所定以上になった後は、総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を小さくし、第2EGRガス量よりも第1EGRガス量を相対的に多くさせることによって好適に内燃機関におけるNOxの生成量を低減することができる。
ここで、NOx触媒の温度が所定温度より低いときには、総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を可及的に大きくし、より多くの排気にNOx触媒を通過させるとより好適である。
そこで、本発明においては、前記EGRガス量変更手段は、前記NOx触媒の温度が前記所定温度よりも低いときに総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を略1にしても良い。つまり、内燃機関に再循環される排気を第2の経路のみによって吸気系に導くようにしても良い。これにより、より迅速にNOx触媒の温度を所定温度まで上昇させることができる。
一方、NOx触媒の温度が所定温度以上であるときには、総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を可及的に小さくし、より多くの排気を経路の短い第1の経路によって内燃機関の吸気系に導くとより好適である。そこで、本発明において、前記EGRガス量変更手段は、前記NOx触媒の温度が前記所定温度以上であるときに総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を略零にしても良い。つまり、内燃機関に再循環される排気を第1の経路のみによって吸気系に導くようにしても良い。これにより、EGRガス量変更時の応答性を向上させ、また内燃機関におけるNOxの生成量をより効率的に低減することが可能となる。
ところで、例えば内燃機関の低温始動時には、NOx触媒の温度が該NOx触媒の活性
温度よりも低くなり、NOx触媒におけるNOxの浄化率が著しく低下する場合がある。
そこで、本発明における所定温度とはNOx触媒の活性温度であっても良い。即ち、本発明におけるEGRガス量変更手段は、NOx触媒の温度が活性温度よりも低いときにおける総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を、NOx触媒の温度が活性温度以上であるときにおける総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率よりも大きくしても良い。
また、EGRガス量変更手段は、NOx触媒の温度が活性温度よりも低いときに総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を略1にするとともに、NOx触媒の温度が活性温度以上であるときに総EGRガス第2EGRガス量の比率を略零としても良い。
そうすれば、NOx触媒の温度が活性温度よりも低いときに、NOx触媒の温度を迅速に活性温度まで昇温させ、NOx触媒におけるNOxの浄化率が著しく低下する期間を短くすることができる。そして、NOx触媒の温度が活性温度まで到達する前において、排気の一部が少なくとも第2の経路により吸気系に導かれるため、内燃機関の燃焼室における混合気の燃焼温度を低下させることができる。従って、NOx触媒の温度が活性温度よりも低い時期においても、NOxの生成量を低減させ、エミッションが過度に悪化することを抑制できる。
また、本発明においては、内燃機関の排気温度を上昇させることによってNOx触媒の温度を上昇させる昇温手段を、更に備えていても良い。これにより、より迅速にNOx触媒の温度を所定温度(例えば、活性温度)まで上昇させることができる。
また、本発明に係る内燃機関の排気浄化システムは、前記排気通路に設けられるとともに排気中の微粒子物質(以下、単に「PM」ともいう。)を捕集するフィルタを更に備えていても良い。そして、前記第1の経路および第2の経路は前記フィルタを通過した後の排気の一部を前記内燃機関の吸気系に導くようにしても良い。
これにより、内燃機関にPMが吸入されることを抑制できる。また、例えば本排気浄化システムがターボチャージャや、該ターボチャージャにより過給された吸気を冷却するためのインタークーラ等を備える場合には、流入したPMがターボチャージャやインタークーラ等に堆積してしまうことを抑制できる。
また、本発明においては、前記排気通路における前記NOx触媒よりも上流側に設けられるとともに該排気通路内の排気に還元剤を添加する還元剤添加手段を更に備え、前記NOx触媒の温度が前記所定温度以上であるときに前記還元剤添加手段に還元剤を添加させるようにしても良い。
ここで、所定温度は還元剤添加手段に燃料を添加させるときの目的に応じて異なる温度に設定しても良い。例えば、NOx触媒に還元剤(例えば、燃料等)を流入させ、該NOx触媒においてNOxを還元浄化させるNOx還元処理がなされる場合がある。そのような場合に、上記所定温度はNOx触媒の活性温度とすれば好適である。そうすれば、NOx触媒の温度が確実に活性温度以上になった後に還元剤が排気中に添加されるため、排気中に添加された還元剤がNOx触媒をすり抜けてしまう虞がない。従って、還元剤が未浄化のまま大気中に放出されることを抑制できる。そして、添加された還元剤が無駄になってしまうことを抑制できる。
また、NOx触媒が排気に含まれるSOxに被毒された場合には、NOx触媒の温度を高温(例えば、600℃乃至650℃)に維持するとともに、還元剤をNOx触媒に供給
させるSOx被毒回復処理がなされる場合がある。そのような場合に、上記所定温度をNOx触媒からSOxを放出可能な温度(例えば、600℃乃至650℃)とすれば好適である。NOx触媒の温度をSOxが放出される温度まで迅速に上昇させることができるからである。
また、本発明においては、前記第1の経路は前記還元剤添加手段によって還元剤が添加される前の排気の一部を前記内燃機関の吸気系に導くようにしても良い。これにより、還元剤添加手段から添加された還元剤が第2の経路によって内燃機関の吸気系に導かれ、燃焼室内における混合気の燃焼が不安定になることを抑制できる。また、ドライバビリティが悪化することを抑制できる。
これは、還元剤添加手段から還元剤が添加されるのは、総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率が小さくなるように第1EGRガスおよび/または第2EGRガス量が変更された後であるからである。また、上記において、EGRガス量変更手段は、総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率が略零になるように第1EGRガスおよび/または第2EGRガス量を変更すると好適である。より確実に還元剤が吸気系に回り込むことを抑制できるからである。
また、本発明に係る内燃機関の排気浄化システムとしては、以下のような構成を例示することができる。即ち、
前記EGR装置は、
前記排気通路における前記NOx触媒よりも上流側の部分と前記内燃機関の吸気通路とを連通する第1EGR通路と、
前記第1EGR通路に設けられるとともに該第1EGR通路を流通する排気の流量を変更可能な第1EGR弁と、
前記排気通路における前記NOx触媒よりも下流側の部分と前記内燃機関の吸気通路とを連通する第2EGR通路と、
前記第2EGR通路に設けられるとともに該第2EGR通路を流通する排気の流量を変更可能な第2EGR弁と、を有していても良い。
ここで、上記の排気浄化システムに係る構成を第1の構成と称す。第1の構成に係る排気浄化システムでは、前記第1の経路により前記排気を前記内燃機関の吸気系に導くときは該排気に前記第1EGR通路を流通させ、前記第2の経路により前記排気を前記内燃機関の吸気系に導くときは該排気に前記第2EGR通路を流通させても良い。
そして、前記EGRガス量変更手段は、前記総EGRガス量に対する前記第2EGRガス量の比率を変更するときに前記第1EGR弁の開度および/または第2EGR弁の開度を変更するようにしても良い。
また、本発明に係る内燃機関の排気浄化システムとしては、以下のような構成をも例示することができる。即ち、
前記EGR装置は、
一端が前記内燃機関の吸気通路に接続される第3EGR通路と、
一端が前記排気通路における前記NOx触媒よりも上流側の部分に接続され、他端が前記第3EGR通路の他端に接続される第4EGR通路と、
一端が前記排気通路における前記NOx触媒よりも下流側の部分に接続され、他端が前記第3EGR通路と前記第4EGR通路との接続部に接続される第5EGR通路と、
前記接続部に設けられ、前記第4EGR通路および前記第5EGR通路から前記第3EGR通路に流入する排気の流量の総和に対する前記第5EGR通路から前記第3EGR通路に流入する排気の流量の比率を変更可能な流入比率変更弁と、
前記第3EGR通路に設けられるとともに該第3EGR通路を流通する排気の流量を変更可能な第3EGR弁と、を有していても良い。
ここで、上記の排気浄化システムに係る構成を第2の構成と称す。第2の構成に係る排気浄化システムでは、前記第1の経路により前記排気を前記内燃機関の吸気系に導くときは該排気に前記第4EGR通路および前記第3EGR通路を流通させ、前記第2の経路により前記排気を前記内燃機関の吸気系に導くときは該排気に前記第5EGR通路および前記第3EGR通路を流通させるようにしても良い。
そして、前記EGRガス量変更手段は、前記総EGRガス量に対する前記第2EGRガス量の比率を変更するときに前記流入比変更弁の開度および/または第3EGR弁の開度を変更するようにしても良い。
つまり、上記第2の構成では、流入比変更弁の開度を調節することにより、総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を変更できる。そして、第3EGR弁の開度を調節することにより、流入比率変更弁の開度により決せられる総EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率を維持しつつEGRガス量を調節することができる。
また、上記の流量比率変更弁は、第4EGR通路と第5EGR通路との何れか一方を第3EGR通路と導通させ、他方を遮断させることの可能な流入路切換弁であっても良い。例えば、NOx触媒の温度が所定温度よりも低いときに、第2の経路により排気を内燃機関の吸気系に導くべく、流量比率変更弁は第3EGR通路と第5EGR通路とを導通させ、第3EGR通路と第4EGR通路とを遮断するようにしても良い。
一方、NOx触媒の温度が所定温度以上であるときには、第1の経路により排気を内燃機関の吸気系に導くべく、流量比率変更弁は第3EGR通路と第4EGR通路とを導通させ、第3EGR通路と第5EGR通路とを遮断するようにしても良い。
これにより、より簡易な構成により、内燃機関から排出される排気を第1の経路と第2の経路との何れかにより吸気系に導くかを切り換えることができる。
また、第2の構成に係る排気浄化システムでは、第1の経路と第2の経路とが第3EGR通路から第5EGR通路の接続部において合流している。これにより、第1の構成に比べてEGR装置のコンパクト化を実現し、EGR装置を設置する際のコストの低減を図ることができる。
また、EGR通路には、内燃機関における混合気の燃焼温度を効率的に低下させるため、該EGR通路を流通するEGRガスを冷却するためのEGRクーラが設けられることが多い。本発明においても、前記EGR装置は前記第3EGR通路に設けられるとともに該第3EGR通路を流通する排気を冷却可能なEGRクーラを有していても良い。
その場合に、本構成(第2の構成)によれば排気浄化システムを構築するためのコストを更に低減することができる。つまり、本来ならば第1の経路、第2の経路毎に上記EGRクーラを備える必要があるところ、本構成では、単一のEGRクーラを備えれば良いからである。以上のように、本構成では、上記の流量比率変更弁を備えることによって、EGR弁およびEGRクーラの配置数を少なくすることができる。これにより内燃機関の排気浄化システムを構築するために必要な総コストを低く抑えることが可能となる。
本発明にあっては、排気通路に設けられるNOx触媒の温度が低いときに、内燃機関に
おけるNOxの生成量を低減させつつ、NOx触媒を迅速に昇温させることができる。
図1は本実施例における内燃機関1と、その吸排気系及び制御系の概略構成を示す図である。図1に示す内燃機関1は、4つの気筒2を有するディーゼルエンジンである。内燃機関1には、気筒2の燃焼室に直接燃料を噴射する燃料噴射弁3を各気筒に備えている。
<吸気系>
内燃機関1には、吸気マニホールド8が接続されており、吸気マニホールド8の各枝管は吸気ポートを介して各気筒2の燃焼室と連通されている。吸気マニホールド8と吸気通路9との接続部近傍には、吸気通路9内を流通する吸気の流量を調節可能な第1吸気絞り弁11が設けられている。また、吸気通路9における第1吸気絞り弁11よりも上流側には、吸気通路9を流れるガスを冷却するインタークーラ13が設けられている。
さらに、吸気通路9におけるインタークーラ13よりも上流側には、排気のエネルギを駆動源として作動するターボチャージャ10のコンプレッサハウジング6が設けられている。また、コンプレッサハウジング6よりも上流側には吸気通路9内を流通する吸気量に対応した電気信号を出力するエアフローメータ14が配置されており、該エアフローメータ14よりも上流側にはエアクリーナ4が設けられている。また、吸気通路9におけるエアフローメータ14よりも下流側であって、後述する第2EGR通路41と吸気通路9との接続部よりも上流側には、吸気通路9内を流通する吸気の流量を調節可能な第2吸気絞り弁12が設けられている。
このように構成された内燃機関1の吸気系では、エアクリーナ4によって吸気中の塵や埃が除去された後、吸気通路9を介してコンプレッサハウジング6に流入する。コンプレッサハウジング6に流入した吸気は、該コンプレッサハウジング6に内装されたコンプレッサホイールの回転によって圧縮される。そして、圧縮されて高温となった吸気は、インタークーラ13にて冷却された後、必要に応じて第1吸気絞り弁11によって流量を調節されて吸気マニホールド8に流入する。そして、吸気マニホールド8に流入した吸気は、各枝管を介して各気筒2に分配され、各気筒2の燃料噴射弁3から噴射された燃料を着火源として燃焼される。
<排気系>
一方、内燃機関1には、排気マニホールド18が接続されており、排気マニホールド18の各枝管は排気ポートを介して各気筒2の燃焼室と接続されている。排気マニホールド18にはターボチャージャ10のタービンハウジング7が接続されている。このタービンハウジング7には排気通路19が接続されており、排気通路19は下流にてマフラー(図示省略)に接続されている。
また、排気通路19の途中には、排気中のPMを捕集するパティキュレートフィルタ(以下、単に「フィルタ」という。)20が設けられている。また、排気通路19におけるフィルタ20よりも下流側には吸蔵還元型NOx触媒(以下、「NOx触媒」という。)21が設けられている。ここで、NOx触媒21は、流入する排気の酸素濃度が高い時は排気中のNOxを吸蔵し、流入する排気の酸素濃度が低い時は吸蔵しているNOxを放出する。その際、周囲の排気中に燃料などの還元成分が存在していれば、放出されたNOxと燃料がNOx触媒21上で還元反応してNOxが還元・浄化される。
また、排気通路19におけるフィルタ20とNOx触媒21との間には後述するECU22からの指令信号により開弁して還元剤としての燃料を排気中に添加する燃料添加弁15が設けられている。そして、燃料添加弁15から排気通路19内の排気に添加された燃料は該排気の酸素濃度を低下させる。このようにして形成された酸素濃度の低い排気はNOx触媒21に流入し、該NOx触媒21に吸蔵されていたNOxを放出させつつ窒素(N2)に還元することになる。
また、排気通路19におけるNOx触媒21の直上流には排気の温度を検出する温度センサ25が設けられている。また、排気通路19における燃料添加弁15よりも上流側であって、後述する第1EGR通路31と排気通路19との接続部よりも下流側には、排気通路19内を流通する排気の流量を調節可能な第1排気絞り弁16が設けられている。また、排気通路19における該排気通路19と後述する第2EGR通路41との接続部よりも下流側には排気通路19内を流通する排気の流量を調節可能な第2排気絞り弁17が設けられている。
このように構成された内燃機関1の排気系では、内燃機関1の各気筒2で燃焼された既燃ガスが排気ポートを介して排気マニホールド18に排出され、次いで排気マニホールド18からターボチャージャ10のタービンハウジング7に流入する。タービンハウジング7に流入した排気は、該排気が持つ熱エネルギを利用してタービンハウジング7内に回転自在に支持されたタービンホイールを回転させる。その際、タービンホイールの回転トルクはコンプレッサハウジング6のコンプレッサホイールに伝達される。
そして、コンプレッサハウジング6から排出された排気は、排気通路19を介してフィルタ20へ流入し排気中のPMが捕集される。そして、次にNOx触媒21に流入し排気中のNOxが吸蔵される。このようにPM、NOxが除去または浄化された排気は、必要に応じて第2排気絞り弁17によって流量を調節された後にマフラーを介して大気中に放出される。
<排気再循環機構>
また、内燃機関1には、排気通路19におけるフィルタ20よりも下流側であって且つNOx触媒21よりも上流側を通過する排気の一部を吸気通路9におけるコンプレッサハウジング6よりも上流側に再循環させる第1EGR装置30が設けられている。この第1EGR装置30は、排気通路19におけるフィルタ20よりも下流側であって且つ第1排気絞り弁16よりも上流側の部分と吸気通路9におけるコンプレッサハウジング6よりも上流側であって且つ第2吸気絞り弁12よりも下流側の部分とを接続する第1EGR通路31と、第1EGR通路31内を流れる排気(以下、「第1EGRガス」という。)の流量(以下、「第1EGRガス量」という。)を調節可能な第1EGR弁32と、第1EGR通路31における第1EGR弁32よりも上流側を流れるEGRガスを冷却する第1EGRクーラ33とを備えている。
このように構成された第1EGR装置30では、第1EGR弁32が開弁されると、第1EGR通路31が導通状態となり、NOx触媒21に流入する前の排気の一部が第1EGR通路31を経由して吸気通路9に流入する。吸気通路9に流入した第1EGRガスはコンプレッサハウジング6、吸気マニホールド8を経由して内燃機関1の燃焼室に過給される。ここで、本実施例においては、EGRガスに第1EGR通路31を流通させて内燃機関1の吸気系に再循環させる経路が本発明における第1の経路に相当する。
また、内燃機関1には、排気通路19におけるNOx触媒21よりも下流側を通過する排気の一部を吸気通路9におけるコンプレッサハウジング6よりも上流側に再循環させる第2EGR装置40が設けられている。この第2EGR装置40は、排気通路19におけるNOx触媒21よりも下流側であって且つ第2排気絞り弁17よりも上流側の部分と吸気通路9における第1EGR通路31との接続部よりも上流側であって且つ第2吸気絞り弁12よりも下流側の部分とを接続する第2EGR通路41と、第2EGR通路41内を流れる排気(以下、「第2EGRガス」という。)の流量(以下、「第2EGRガス量」という。)を調節可能な第2EGR弁42と、第2EGR通路41における第2EGR弁42よりも上流側を流れるEGRガスを冷却する第2EGRクーラ43とを備えている。
このように構成された第2EGR装置40では、第2EGR弁42が開弁されると、第2EGR通路41が導通状態となり、NOx触媒21から流出した排気の一部が第2EGR通路41を経由して吸気通路9に流入する。吸気通路9に流入した第2EGRガスはコンプレッサハウジング6、吸気マニホールド8を経由して内燃機関1の燃焼室に過給される。ここで、本実施例においては、EGRガスに第2EGR通路41を流通させて内燃機関1の吸気系に再循環させる経路が本発明における第2の経路に相当する。
ここで、第1EGR装置30によって再循環される第1EGRガス、第2EGR装置40によって再循環される第2EGRガスは、共にフィルタ20を通過した後に再循環される。つまり、フィルタ20によってPMを除去されたあとの排気が吸気系に再循環される。これにより、内燃機関1にPMが吸入されることを抑制できる。また、インタークーラ13、第1EGRクーラ33、第2EGRクーラ43等にPMが堆積してしまうことを抑制できる。
また、第1EGRガス量および第2EGRガス量は、第1排気絞り弁16の開度や第2排気絞り弁17の開度を調節して排気通路19における第1EGR通路31との接続部の排気の圧力、或いは排気通路19における第2EGR通路41との接続部の排気の圧力を増減することによって調節することができる。例えば、第1排気絞り弁16の開度を閉弁側に調節すると、排気通路19における第1EGR通路31との接続部における排気の圧力が上昇するため、第1EGR通路31の上流側と下流側の差圧が増大し、第1EGRガス量が増大する。また、第2排気絞り弁17の開度を閉弁側に調節すると、排気通路19における第2EGR通路41との接続部における排気の圧力が上昇するため、第2EGR通路41の上流側と下流側の差圧が増大し、第2EGRガス量が増大する。
同様に、第1EGRガス量および第2EGRガス量は、第2吸気絞り弁12の開度を調節して吸気通路9における第1EGR通路31との接続部の吸気の圧力、或いは吸気通路9における第2EGR通路41との接続部の吸気の圧力を増減することによって調節することができる。例えば、第2吸気絞り弁12の開度を閉弁側に調節すると、該接続部に負圧が生じるため、第1EGRガス量および第2EGRガス量が増大する。
また、第1EGRガスや第2EGRガスには、水(H2O)や二酸化炭素(CO2)等のように、自らが燃焼することがなく、且つ、熱容量が高い不活性ガス成分が含まれているため、第1EGRガスや第2EGRガスが混合気中に含有されると、混合気の燃焼温度が低められ、以って内燃機関1におけるNOxの生成量が抑制される。
さらに、第1EGRクーラ33において第1EGRガスが、第2EGRクーラ43において第2EGRガスが冷却されると、第1EGRガスおよび第2EGRガス自体の温度が低下するとともにガスの体積が縮小されるため、第1EGRガスや第2EGRガスが燃焼室内に供給されたときに該燃焼室内の雰囲気温度が不要に上昇することがなくなるとともに、燃焼室内に供給される新気の量(新気の体積)が不要に減少する虞もない。
内燃機関にPMが吸入されることを抑制できる。また、例えば本排気浄化システムがターボチャージャや、該ターボチャージャにより過給された吸気を冷却するためのインタークーラ等を備える場合には、流入したPMがターボチャージャ等に堆積してしまうことを抑制できる。
以上述べたように構成された内燃機関1には、該内燃機関1及び吸排気系を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)22が併設されている。このECU22は、内燃機関1の運転条件や運転者の要求に応じて内燃機関1の運転状態等を制御するほか、第1EGR弁32の開度(以下、「第1EGR開度」という。)Df、第2EGR弁42の開度(以下、「第2EGR開度」という。)Ds等を制御する。
また、ECU22には、エアフローメータ14や、機関回転数を検出するクランクポジションセンサ23、アクセル開度を検出するアクセルポジションセンサ24などの内燃機関1の運転状態の制御に係るセンサ類や温度センサ25が電気配線を介して接続され、それらの出力信号がECU22に入力されるようになっている。一方、ECU22には、燃料噴射弁3、燃料添加弁15、第1吸気絞り弁11、第2吸気絞り弁12、第1排気絞り弁16、第2排気絞り弁17、第1EGR弁32、第2EGR弁42等が電気配線を介して接続されており、ECU22によって制御されるようになっている。
また、ECU22には、CPU、ROM、RAM等が備えられており、ROMには、内燃機関1の種々の制御を行うためのプログラムや、データを格納したマップが記憶されている。また、後述する各種ルーチンはECU22のROMに記憶されているプログラムの一つである。
次に本実施例におけるEGR制御について説明する。本実施例に係るEGR制御では、EGR率ERが内燃機関1の運転状態に応じた目標EGR率ERtgになるように制御される。この目標EGR率ERtgは、予め定められた目標値であり、例えば、排出ガス規制値と該規制値に対する適合マージンとを考慮して定められた目標NOx低減率に基づいて、該目標NOx低減率を達成するために要求されるEGR率として定められても良い。
そして目標EGR率ERtgは、具体的には内燃機関1の機関回転数NEと機関負荷Tqと目標EGR率ERtgとの関係が格納されたマップから目標EGR率ERtgを読み出すことにより導出される。その際、機関回転数NEはクランクポジションセンサ23によるクランク角度の検出値により求められ、機関負荷Tqはアクセルポジションセンサ24によるアクセル開度の検出値から求められる。そして、ECU22によって、エアフローメータ14による検出値から求められる吸入新気量Gaと目標EGR率ERtgとに基づいて目標EGRガス量(第1EGRガス量+第2EGRガス量の和)が算出される。
ここで、本実施例に係る排気浄化システムは第1EGR装置30と第2EGR装置40を備えている。本実施例では、NOx触媒の温度Tnに応じて、EGRガス量に対する第1EGRガス量の比率(以下、「第1EGRガス量の再循環比率」)Rfと、EGRガス量に対する第2EGRガス量の比率(以下、「第2EGRガス量の再循環比率」)Rsが変更される。以下、図2を参照して詳しく説明する。
図2は、本実施例におけるNOx触媒の温度TnとNOx浄化率Rp、第1EGRガス量の再循環比率Rf、第2EGRガス量の再循環比率Rsの関係を例示した図である。(a)は、NOx触媒の温度TnとNOx浄化率Rpとの相関関係を例示した図である。(b)は、NOx触媒の温度Tnと第1EGRガス量の再循環比率Rfとの関係を例示した図である。(c)は、NOx触媒の温度Tnと第2EGRガス量の再循環比率Rsとの関係を例示した図である。
ここで、図2(a)に示す「NOx浄化率Rp」が「Rp0」以上であればNOx触媒21が排気中のNOxを好適に浄化できることを意味する。そして、図中の横軸に示す温度「Tn0」は、「NOx浄化率Rp」が「Rp0」のときのNOx触媒21の温度である。つまり、「Tn0」はNOx触媒21の活性温度を意味しており、NOx触媒21が排気中のNOxを効率良く浄化することができる下限温度を意味する。
また、図2(b)に示す「第1EGRガス量の再循環比率Rf」が「1」のときは、第1EGR装置30のみによってEGRを行っていることを意味する。また、「第1EGRガス量の再循環比率Rf」が「0」のときは、第2EGR装置40のみによってEGRを行っていることを意味する。
また、図2(c)に示す「第2EGRガス量の再循環比率Rs」が「1」のときは、第2EGR装置40のみによってEGRを行っていることを意味する。また、「第2EGRガス量の再循環比率Rs」が「0」のときは、第1EGR装置30のみによってEGRを行っていることを意味する。
また、第1EGR装置30と第2EGR装置40とを併用してEGRを行う場合、例えば第1EGRガス量と第2EGRガス量の比が2:8になるようにEGRが行われるときには、第1EGRガス量の再循環比率Rfが「0.2」、第2EGRガス量の再循環比率Rsが「0.8」となる。
図2(a)に示すように、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いときにはNOx浄化率RpがRp0よりも低く、NOx触媒21において良好にNOxを浄化することが困難となる。そこで、本実施例では、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いときには排気温度を上昇させてNOx触媒21を活性温度Tn0以上に昇温させる。例えば、内燃機関1の燃焼サイクルにおける主噴射のあとの膨張行程や排気行程に燃料を燃料噴射弁3から副噴射させることによって、排気温度を上昇させても良い。
そして、図2(b)、(c)に示すように本実施例では、上記のようにNOx触媒21に対する昇温制御が行われるとき、即ちNOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いときに、第1EGRガス量の再循環比率Rfが0、第2EGRガス量の再循環比率Rsが1に制御される。つまり、第1EGR開度Dfは第1EGRガス量が零になるように全閉に制御される。一方、第2EGR開度Dsは、第2EGRガス量を上述の目標EGRガス量にするために必要な目標開度Dstgに制御される。
以上のように、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いときは第2EGR装置40のみを介してEGRが行われる。そうすると、上記昇温制御によって温度の上昇した排気の全てがNOx触媒21を通過するため、排気の有する熱エネルギを効率よくNOx触媒21に伝えることができる。つまり、迅速にNOx触媒21を活性温度Tn0まで上昇させることができる。
また、NOx触媒21の昇温中においても、排気の一部は第2EGR装置40によって再循環されるので、内燃機関1の燃焼室内の混合気の燃焼温度を低下させ、内燃機関1におけるNOxの生成量が低減される。
一方、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0以上に上昇したあとは、第1EGRガス量の再循環比率Rfが1、第2EGRガス量の再循環比率Rsが0に変更される。つまり、第2EGR開度Dsは第2EGRガス量が零になるように全閉に制御される。一方、第1EGR開度Dfは、第1EGRガス量を上述の目標EGRガス量にするために必要な目標開度Dftgに制御される。
以上のように、本実施例においては、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0以上になった後は第1EGR装置30のみを介してEGRが行われる。ここで、第1EGR通路31は第2EGR通路41に比べてその経路が短い。これにより、内燃機関1の目標EGR率ERtgが変化した場合等、第1EGRガス量を変更する際の応答性を向上できる。
また、NOx触媒21を通過した後の排気は、通過する前に比べてその比熱が低下してしまう場合があるところ、第1EGR装置30はNOx触媒21を通過する前の排気を再循環させるため、排気の比熱を低下させることなく効率よく混合気の燃焼温度を低下させることができる。これにより、内燃機関1におけるNOxの生成量をより好適に低減することができる。なお、本実施例においては、NOx触媒の活性温度Tn0が本発明における所定温度に相当する。
<EGR制御ルーチン>
以下、本実施例におけるNOx触媒21に対する昇温制御が行われるときの第1EGR装置30および第2EGR装置40に係るEGR制御について、図3のフローチャートを参照しながら説明する。図3は、本実施例におけるEGR制御ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンはECU22内のROMに記憶されたプログラムであり、所定期間毎に実行される。
まず、ステップS101では、ECU22によって、内燃機関1の機関回転数NE、機関負荷Tq、吸入新気量Gaが検出される。そして、続くステップS102では、機関回転数NE、機関負荷Tqに応じた目標EGR率ERtgが演算される。続くステップS103では、目標EGR率ERtgと吸入新気量Gaとに基づいて目標EGRガス量Gtgが算出される。そして、ステップS103の処理が終わるとステップS104に進む
ステップS104では、ECU22によって、NOx触媒の温度Tnが推定される。具体的には、温度センサ25の検出値に基づいてNOx触媒の温度Tnが推定される。また、例えば、内燃機関1の機関回転数NEおよび機関負荷TqとNOx触媒の温度Tnとの関係を予め実験等で求めておき、該関係を制御マップの形でECU22内に格納しておいても良い。そして、該制御マップに機関回転数NEおよび機関負荷Tqをパラメータとしてアクセスすることで、NOx触媒の温度Tnを導出しても良い。
続くステップS105では、ECU22によって、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いか否かが判定される。つまり、本ステップでは、NOx触媒21を早期昇温する必要があるか否かが判定される。そして、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いと判定された場合には、ステップS103に進む。一方、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0以上であると判定された場合には、後述するステップS111に進む。
ステップS106では、ECU22から第1EGR弁32および第2EGR弁42に指令が出され、第1EGR開度Dfが全閉に、第2EGR開度Dsが第2EGRガス量をステップS103で算出された目標EGRガス量にするために必要な目標開度Dstgに変更される。ここで、本実施例においては、第1EGR開度Df、第2EGR開度Dsを変更させるECU22が本発明におけるEGRガス量変更手段に相当する。そして、ステップS106の処理が終わるとステップS107に進む。
ステップS107では、ECU22からの指令によってNOx触媒21の昇温制御が開
始される。具体的には、燃料噴射弁3に対し、燃料の副噴射を行うよう指令が出される。ここで、副噴射される燃料の量は予め実験的に求められる。そして、ステップS107の処理が終わるとステップS108に進む。
ステップS108では、ECU22によって、NOx触媒の温度Tnが推定される。続くステップS109では、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0以上であるか否かが判定される。つまり、本ステップでは、NOx触媒21に対する昇温制御を停止しても良いかどうかが判定される。
そして、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0以上であると判定された場合には、ステップS110に進む。一方、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いと判定された場合には、ステップS106の処理の後の状態に戻る。つまり、NOx触媒21に対する昇温制御が継続される。
ステップS110では、NOx触媒21に対する昇温制御が停止される。具体的には、ECU22から燃料噴射弁3に対し、燃料の副噴射を停止するよう指令が出される。そして、ステップS110の処理が終わるとステップS111に進む。
ステップS111では、ECU22から第1EGR弁32および第2EGR弁42に指令が出され、第1EGR開度Dfが第1EGRガス量をステップS103で算出された目標EGRガス量Gtgにするために必要な目標開度Dftgに、第2EGR開度Dsが全閉に変更される。そして、ステップS111の処理が終わると本ルーチンを一旦終了する。
以上のように、本ルーチンでは、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いときは迅速にNOx触媒21を活性温度Tn0まで上昇させることができる。また、NOx触媒の昇温中においても第2EGR装置40によってEGRを行うことが可能であり、内燃機関1におけるNOxの生成量を低減できる。
<EGR制御の変形例>
また、本実施例おいては、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いか否かに応じて、第1EGRガス量の再循環比率Rfおよび第2EGRガス量の再循環比率Rsを1または0の何れかに変更する場合を例示的に説明したが、これに限定されるものではない。
例えば、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いときに、第1EGRガス量の再循環比率Rfが第2EGRガス量の再循環比率Rsよりも大きい値であれば良く、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0以上であるときに、第2EGRガス量の再循環比率Rsが第1EGRガス量の再循環比率Rfよりも大きい値であれば良い。以下、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いときの第1EGRガス量の再循環比率Rfを0.8、活性温度Tn0以上であるときの第1EGRガス量の再循環比率Rfを0.2とする場合、上記ルーチンの適用について説明する。
つまり、本EGR制御では、上記ルーチンのステップS106において、第1EGRガス量の目標値および第2EGRガス量の目標値を算出すれば良い。ここで、上記の目標値はステップS103において算出された目標EGRガス量に、第1EGRガス量の再循環比率Rf(0.8)、第2EGRガス量の再循環比率Rs(0.2)を乗じて算出される。
そして、第1EGRガス量および第2EGRガス量をそれぞれの目標値に変更するため
に必要な開度に第1EGR開度Df、第2EGR開度Dsを変更すれば良い。
そして、上記ルーチンのステップS111では、第1EGRガス量の目標値および第2EGRガス量の目標値が再び算出される。つまり、第1EGRガス量の再循環比率Rfを0.2、第2EGRガス量の再循環比率Rsを0.8としてそれぞれの目標値が算出される。そして、第1EGRガス量および第2EGRガス量を各目標値に変更すべく第1EGR開度Df、第2EGR開度Dsを変更すれば良い。
なお、本実施例においては、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0以上になった後、NOx触媒21に対するNOx還元処理、SOx被毒回復処理を行うため、燃料添加弁15に還元剤としての燃料を排気中に添加させても良い。これにより、確実に活性状態となっているNOx触媒21に対して燃料を供給できる。また、上記燃料の添加が行われるときは第1EGR装置によってEGRが行われるため、燃料が第2EGR通路41を介して内燃機関1に再循環されてしまう虞がない。従って、内燃機関1の燃焼室内における混合気の燃焼が不安定になることを抑制でき、ドライバビリティが悪化することも抑制できる。
また、本実施例におけるフィルタ20には、酸化触媒或いはNOx触媒が担持されていても良く、また、NOx触媒21は吸蔵還元型NOx触媒でなく選択還元型NOx触媒等であっても良い。その場合、選択還元型NOx触媒に対するNOx還元処理を行うときに供給される還元剤は尿素水溶液やアンモニア水溶液であっても良い。
また、本実施例における排気浄化システムは、吸気を過給するターボチャージャ10を備え、排気の一部を吸気通路9におけるコンプレッサハウジング6よりも上流側であって且つ第2吸気絞り弁12よりも下流側の部分に再循環させているが、これは、内燃機関1の吸気系に再循環させるときの一例である。そして、本発明はターボチャージャを備えていない排気浄化システムにおいても当然に適用することができる。
次に、本発明に係る内燃機関1の排気浄化システムの実施例1とは異なる実施例について説明する。図4は、本実施例における内燃機関1と、その吸排気系及び制御系の概略構成を示す図である。ここで、実施例1の排気浄化システムと同一又は同等の構成部分については同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
本実施例と実施例1に係る排気浄化システムでは以下の点で相違する。即ち、本実施例における排気浄化システムでは、排気の一部を吸気系に再循環させる排気再循環機構として、第1EGR装置30および第2EGR装置40の代わり第3EGR装置50が備わっている。以下、第3EGR装置50の構成について説明する。
内燃機関1には、排気通路19におけるフィルタ20よりも下流側であってNOx触媒21よりも上流側を通過する排気の一部および/または排気通路19におけるNOx触媒21よりも下流側を通過する排気の一部を吸気通路9におけるコンプレッサハウジング6よりも上流側に再循環させる第3EGR装置50が設けられている。
この第3EGR装置50は、一端が吸気通路9におけるコンプレッサハウジング6よりも上流側の部分に接続される第3EGR通路51と、一端が排気通路19におけるフィルタ20よりも下流側であって且つNOx触媒21よりも上流側の部分に接続され他端が第3EGR通路51の他端に接続される第4EGR通路52と、一端が排気通路19におけるNOx触媒21よりも下流側の部分に接続され他端が第3EGR通路51と第4EGR通路52との接続部に接続される第5EGR通路53とを備えている。
さらに、第3EGR装置50は、第3EGR通路51から第5EGR通路53までが接続される接続部に設けられるとともに、第3EGR通路51に流入する排気を第4EGR通路52と第5EGR通路53との何れから流入させるかを切換可能な流入路変更弁54と、第3EGR通路51内を流れる排気を調節可能な第3EGR弁55と、第3EGR通路51を流れるEGRガスを冷却する第3EGRクーラ56とを備えている。
ここで、流入路変更弁54は、ECU22に電気配線を介して接続されており、ECU22によって制御されるようになっている。そして、ECU22は、流入路変更弁54に第3EGR通路51と第4EGR通路52とを導通させ、第3EGR通路51と第5EGR通路53とを遮断させ(以下、このときの流入路変更弁54の切換位置を「第1経路位置」という。)、NOx触媒21を通過する前の排気の一部を第4EGR通路52、第3EGR通路51の順に流通させ、内燃機関1に再循環させることができる。
本実施例においては、ECU22が流入路変更弁54を第1経路位置側に制御し、EGRガスに第4EGR通路52および第3EGR通路51を流通させて内燃機関1に再循環させるときの経路が本発明における第1の経路に相当する。そして、本実施例では、この経路により再循環されるEGRガスを「第1EGRガス」と称す。ここで、本実施例においては第1EGRガスの流量が本発明における第1EGRガス量に相当する。
また、ECU22は、流入路変更弁54に第3EGR通路51と第4EGR通路52とを遮断させ、第3EGR通路51と第5EGR通路53とを導通させ(以下、このときの流入路変更弁54の切換位置を「第2経路位置」という。)、NOx触媒21を通過した後の排気の一部を第5EGR通路53、第3EGR通路51の順に流通させ、内燃機関1に再循環させることができる。
本実施例においては、ECU22が流入路変更弁54の切換位置を第2経路位置側に制御し、EGRガスに第5EGR通路53および第3EGR通路51を流通させて内燃機関1に再循環させるときの経路が本発明における第2の経路に相当する。そして、本実施例では、この経路により再循環されるEGRガスを「第2EGRガス」と称す。ここで、本実施例においては第2EGRガスの流量が本発明における第2EGRガス量に相当する。
さらに、第3EGR弁55は、ECU22に電気配線を介して接続されており、ECU22によって第3EGR弁55の開度(以下、「第3EGR開度」という。)Dtが制御される。そして、本実施例においては、ECU22が、流入路変更弁54の切換位置および第3EGR開度Dtを制御することによって、上記の第1EGRガス量と第2EGRガス量とを変更させることができる。本実施例においては流入路変更弁54の切換位置および第3EGR開度Dtを制御するECU22が本発明におけるEGRガス量変更手段に相当する。
以上のように、上記構成の排気浄化システムによれば、第1EGRガスと第2EGRガスのいずれを内燃機関1に再循環させるときも、第3EGR通路51を通過するため、実施例1の排気浄化システムに比べてEGR装置をコンパクトにすることが可能となり、コストを削減することができる。
また、実施例1の排気浄化システムと比較して流入路変更弁54が追加される代わりにEGR弁、EGRクーラの配置数が減るため、排気浄化システムの構築に必要な総コストを低く抑えることが可能となる。
次に本実施例におけるEGR制御について説明する。本実施例では、NOx触媒の温度
Tnに応じてECU22が流入路変更弁54の切換位置の切り換え制御が行われる。詳しくは、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いときに流入路変更弁54を第1経路位置に切り換え、活性温度Tn0以上であるときに流入路変更弁54を第2経路位置に切り換えるものとした。以下、ECU22によって行われる本実施例のEGR制御について、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
<第2EGR制御ルーチン>
図5は本実施例における第2EGR制御ルーチンを示すフローチャートである。本ルーチンはECU22内のROMに記憶されたプログラムであり、所定期間毎に実行される。
また、本ルーチンと実施例1におけるEGR制御ルーチンの処理内容が同一のステップは、同じ数字を用いることで詳しい説明を省略する。また、本ルーチンの実行時において、流入路変更弁54の切換位置が第1経路位置に制御されている状態を前提に説明する。そして、ステップS101〜S105は、EGR過渡時制御ルーチンにおいて対応するステップにおける処理内容と同様であり、説明を省略する。そして、ステップS105の処理が終わるとステップS206に進む。
ステップS206では、ECU22から流入路変更弁54および第3EGR弁55に指令が出され、流入路変更弁54の切換位置が第2経路位置に切り換えられる。また、第5EGR通路53から流入し第3EGR通路51内を流れる排気の流量(本ステップでは、第2EGRガス量)をステップS103で算出された目標EGRガス量にするために必要な目標開度Dttgに第3EGR開度Dtが変更される。そして、ステップS206の処理が終わるとステップS107に進む。
ここで、ステップS107〜S110は、EGR過渡時制御ルーチンにおいて対応するステップにおける処理内容と同様であり、詳しい説明を省略する。なお、ステップS109において否定判定された場合には、つまりNOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0よりも低いと判定された場合には、ステップS206の処理の後の状態に戻る。そして、ステップS110において、NOx触媒21に対する昇温制御が停止されると、ステップS211に進む。
ステップS211では、ECU22から流入路変更弁54および第3EGR弁55に指令が出され、流入路変更弁54の切換位置が第1経路位置に切り換えられる。その結果、第2EGRガスが第4EGR通路52から第3EGR通路51に流入し、内燃機関1に再循環される。また、本ステップでは、ECU22からの指令により燃料添加弁15が開弁され、該燃料添加弁15から排気中に燃料が添加される。これにより、NOx触媒21に吸蔵されているNOxが還元浄化される。本実施例においては、燃料添加弁15に燃料を添加させるECU22が本発明における還元剤添加手段に相当する。そして、ステップS211の処理が終わると、本ルーチンを一旦終了する。
以上のように、本ルーチンによれば、NOx触媒の温度Tnが低いとき(本ルーチンでは活性温度Tn0よりも低いとき)は、排気温度を上昇させるために昇温制御が実行されるとともに、その高温の排気がNOx触媒21に導入される。その結果、NOx触媒21を迅速に昇温させることができる。
また、ステップS211において、NOx触媒の温度Tnは既に活性温度Tn0以上であるため、燃料添加弁15から排気中に添加された燃料がNOx触媒21をすり抜けて多量に大気中に放出される虞はない。また、燃料添加弁15から燃料が添加されるときは、流入路変更弁54の切換位置が第1経路位置に制御されるため、添加された燃料が再循環されることもない。従って、内燃機関1における混合気の燃焼が不安定になることが抑制
され、ドライバビリティが悪化することが抑制される。
また、本ルーチンでは、NOx触媒の温度Tnが活性温度Tn0より低いか否かにより流入路変更弁54の切換位置を制御する場合を例示的に説明したが、それに限定されるものではない。例えば、SOxによって被毒されたNOx触媒21を回復させる場合には、NOx触媒の温度Tnを高温(例えば、600℃乃至650℃)に維持する必要がある。そこで、NOx触媒21に対するSOx被毒回復処理を行うときに本実施例にかかるEGR制御を適用すると好適である。NOx触媒の温度TnをNOx触媒21からSOxが放出される温度まで迅速に昇温させることができるからである。
また、本実施例におけるNOx触媒21が、例えば排気中のPMを捕集可能なフィルタに担持されている場合、フィルタの温度をPMが酸化(燃焼)可能な温度(例えば、500℃乃至700℃)まで上昇させる場合がある。そこで、フィルタにPM再生処理を行うときに本実施例にかかるEGR制御を適用し、フィルタの温度を迅速に昇温させるようにしても良い。
また、本実施例における流入路変更弁54は、第1EGRガスと第2EGRガスとの何れかを選択的に第3EGR通路51に流入させる構成としているが、これに限定されない。流入路変更弁54は、例えば第1EGRガス量と第2EGRガス量との和(総EGRガス量)に対する第2EGRガス量との比率を変更可能な流入比率変更弁であっても良い。