以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
[第1実施形態]
図1から図27は本発明の第1実施形態を示したものである。
以下に具体的に説明する本実施形態の画像機器は、光電変換によって画像信号を得る撮像素子ユニットを備える撮像装置となっている。そして、撮像装置の中でもとりわけデジタルカメラ(以下「カメラ」と略称する)を例に挙げている。すなわち、本実施形態は、デジタルカメラの塵埃除去機構に関する実施形態である。なお、以下では、レンズ交換可能な一眼レフレックス方式のデジタルカメラについて説明する。
まず、図1は、第1実施形態における画像機器としてのデジタルカメラの主に電気的なシステム構成例を概略的に示すブロック図である。また、図2は、デジタルカメラの塵埃除去機構を含む撮像素子ユニットの側断面図(図3におけるAA線断面図)であり、図3は、塵埃除去機構をレンズ側から見た正面図である。
まず、図1を参照して本実施形態におけるデジタルカメラ10のシステム構成例について説明する。
このデジタルカメラ10は、カメラ本体としてのボディユニット100と、アクセサリ装置の一つである交換レンズとしてのレンズユニット200とを含むシステムとして構成されている。
レンズユニット200は、ボディユニット100の前面に設けられた図示しないレンズマウントを介して着脱自在である。レンズユニット200の制御は、自身が有するレンズ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Lucom”と称する)201が行う。ボディユニット100の制御は、ボディ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Bucom”と称する)101が行う。これらLucom201とBucom101とは、ボディユニット100にレンズユニット200を装着した状態において通信コネクタ102を介して互いに通信可能に電気的に接続される。そして、Lucom201がBucom101に従属的に協働しながら、カメラシステムとして稼動するように構成されている。
レンズユニット200は、撮影光学系である撮影レンズ202と絞り203とを備える。撮影レンズ202は、レンズ駆動機構204内に設けられた図示しないDCモータによって駆動される。絞り203は、絞り駆動機構205内に設けられた図示しないステッピングモータによって駆動される。Lucom201は、Bucom101の指令に基づいてこれら各モータを制御する。
ボディユニット100内には、以下のような構成部材が図示のように配設されている。すなわち、ボディユニット100内には、例えば、光学系としての一眼レフ方式の構成部材(ペンタプリズム103、スクリーン104、クイックリターンミラー105、接眼レンズ106、サブミラー107)と、撮影光軸上のフォーカルプレーン式のシャッタ108と、サブミラー107からの反射光束を受けてデフォーカス量を検出するためのAFセンサユニット109と、が設けられている。
また、AFセンサユニット109を駆動制御するAFセンサ駆動回路110と、クイックリターンミラー105を駆動制御するミラー駆動機構111と、シャッタ108の先幕と後幕を駆動するばねをチャージするシャッタチャージ機構112と、これら先幕と後幕の動きを制御するシャッタ制御回路113と、ペンタプリズム103からの光束を検出する測光センサ114に基づき測光処理を行う測光回路115が設けられている。
撮影光軸上には、上述の光学系を通過した被写体像を光電変換するための撮像素子ユニット116が設けられている。撮像素子ユニット116は、光学素子としての撮像素子であるCCD117と、その前面に配設された光学ローパスフィルタ(LPF)118と、防塵部材である防塵フィルタ119とを、ユニットとして一体化したものである。
ここで、本実施形態では、少なくとも透明部(後述)が空気と異なる屈折率を有する透明なガラス板(光学素子)を、防塵部材である上記防塵フィルタ119として使用している。しかしながら、防塵フィルタ119は、上記ガラス板に限定されるものではなく、光路上に在り光の透過性をもった部材であればよい。防塵フィルタ119(防塵部材)は、透明なガラス板に換えて、例えば、光学ローパスフィルタ(LPF)、赤外カットフィルタ、偏光フィルタ、ハーフミラーなどであってもよい。この場合、振動に係わる周波数や駆動時間、加振部材の設置位置などはその部材に対応した値に設定する。また、ここでは撮像素子としてCCD117を例に挙げているが、もちろん、CMOSやその他の撮像素子であっても構わない。
防塵部材である防塵フィルタ119については、上述したように光学ローパスフィルタ(LPF)等の様々な部材と兼用することができるが、本実施形態では、板ガラスを採用した専用の部材であるものとして以下の説明を行う。
防塵フィルタ119の周縁部には、一方の外周部側とこれに対向する他方の外周部側とに加振部材を構成する略長方形状(ここに、「略長方形状」とは、長方形状および長方形に準ずる形状の両方を含む)をなす2つの圧電素子120a,120bが取り付けられている。図3に示すように、圧電素子120aは、2つの信号電極171a,172aを有し、圧電素子120bも2つの信号電極171b,172bを有している。ここで非加振部を構成する信号電極172a,172bは各圧電素子120a,120bの防塵フィルタ119側(圧電素子の裏面側)全面に設けた電極(裏面電極)に電気接続されている。この裏面電極は、さらに防塵フィルタ制御回路121(図20参照)のグランドに電気接続されているため、伸縮用の電気信号は印加されない。なお、グランドに電気接続されている裏面電極と信号電極172a,172bとが電気接続されていない場合、すなわち、信号電極172a,172bがグランド(同電位)に電気接続されておらず、信号電極172a,172bに電気信号を印加可能に構成した場合には、これらの信号電極172a,172bに電気信号を印加しないように制御すれば非加振部として機能させることができる。従って、上述のように構成しても構わない。また、信号電極172a,172bに電気信号を印加可能に構成した場合であっても、これらの信号電極172a,172bに対応する圧電素子120a,120bの部分が「分極」されていなければ電気信号が印加されても振動子として機能しないために、このように構成しても良い。
一方、加振部を構成する信号電極171a,171bには振動発生手段であり駆動制御手段である防塵フィルタ制御回路121によって、防塵フィルタ119と圧電素子120a,120bの寸法や材質によって定まる所定の周波数の周波電圧(伸縮用の電気信号)が印加される。これにより、信号電極171a,171bと裏面電極とで挟まれた圧電素子120a,120bの加振部が伸縮し、防塵フィルタ119に所定の振動を発生させ、フィルタ表面に付着した塵埃を除去し得るように構成されている。なお、図3に示すように、振動子170(図4等参照)の加振部を構成する信号電極171a,171bは、細長の矩形状をなす圧電素子120a,120bに対して、その矩形の長辺方向に偏って配置されている。
また、デジタルカメラ10は、CCD117に接続したCCDインターフェース回路122と、液晶モニタ123と、記憶領域として機能するSDRAM124やフラッシュROM(Flash ROM)125などを利用して画像処理する画像処理コントローラ126とを備え、電子撮像機能とともに電子記録機能および表示機能を備えるように構成されている。
ここで、記録メディア127は、各種のメモリカードや外付けのHDD等の外部記録媒体であり、通信コネクタを介してボディユニット100と通信可能且つ交換可能に装着される。そして、この記録メディア127に撮影により得られた画像データが記録される。その他の記憶領域としては、カメラ制御に必要な所定の制御パラメータを記憶する、例えばEEPROMからなる不揮発性メモリ128がBucom101からアクセス可能に設けられている。
Bucom101には、当該デジタルカメラ10の動作状態を表示出力によってユーザへ告知するための動作表示用LCD129及び動作表示用LED130と、カメラ操作スイッチ(カメラ操作SW)131と、ストロボ132を駆動するストロボ制御回路133と、が接続されている。ここで、動作表示用LCD129あるいは動作表示用LED130には、防塵フィルタ制御回路121が動作している期間、防塵フィルタ119の振動動作を表示する表示部が設けられている。カメラ操作SW131は、例えばレリーズSW、モード変更SW及びパワーSWなど、当該デジタルカメラ10を操作するために必要な操作釦を含むスイッチ群である。さらに、該ボディユニット100内には、電源としての電池134と、該電池134の電圧を当該デジタルカメラ10を構成する各回路ユニットが必要とする電圧に変換して該電池134からの電力を供給する電源回路135とが設けられ、また、外部電源から不図示のジャックを介して電流が供給されたときの電圧変化を検知する電圧検出回路(図示せず)も設けられている。
上述のように構成されたデジタルカメラ10の各部は、概略的には以下のように稼動する。まず、画像処理コントローラ126は、Bucom101の指令に従ってCCDインターフェース回路122を制御してCCD117から画像データを取り込む。この画像データは画像処理コントローラ126によりビデオ信号に変換され、液晶モニタ123に出力表示される。ユーザは、この液晶モニタ123の表示画像から、撮影した画像イメージを確認できる。
SDRAM124は、画像データの一時的保管用メモリであり、画像データが変換される際のワークエリアなどに使用される。また、画像データは、JPEGデータに変換された後に、記録メディア127に保管される。
ミラー駆動機構111は、クイックリターンミラー105をアップ位置とダウン位置へ駆動するための機構であり、このクイックリターンミラー105がダウン位置にあるときに、撮影レンズ202からの光束はAFセンサユニット109側とペンタプリズム103側とへ分割されて導かれる。AFセンサユニット109内のAFセンサからの出力は、AFセンサ駆動回路110を介してBucom101へ送信される。そしてBucom101により周知の測距処理が行われる。一方、ペンタプリズム103を通過した光束の一部は測光回路115内の測光センサ114へ導かれる。測光センサ114からの出力は、測光回路115を介してBucom101へ送信される。そしてBucom101により、検知された光量に基づき周知の測光処理が行われる。
次に、図2及び図3を参照してCCD117を含む撮像素子ユニット116について説明する。
撮像素子ユニット116は、撮影レンズ202を透過し自己の光電変換面(通常、矩形形状をなしている)上に照射された光に対応した画像信号を得るCCD117と、CCD117の光電変換面側に配設され、撮影レンズ202を透過して照射される被写体光束から高周波成分を取り除く光学LPF118と、この光学LPF118の前面側において所定間隔をあけて対向配置された防塵部材である防塵フィルタ119と、この防塵フィルタ119の周縁部に配設されて防塵フィルタ119に対して所定の振動を与えるための加振部材を構成する圧電素子120a,120bと、を備える。
ここで、CCD117のCCDチップ136は、固定板137上に配設されたフレキシブルプリント基板(以下、「フレキ」と省略する)138上に直接実装され、このフレキ138の両端から延出された接続部139a,139bが、主回路基板140に設けられたコネクタ141a,141bを介して主回路基板140側と接続されている。また、CCD117が有する保護ガラス142は、スペーサ143を介してフレキ138上に固着されている。
また、CCD117と光学LPF118との間には、弾性部材等からなるフィルタ受部材144が配設されている。このフィルタ受部材144は、CCD117の前面側周縁部で光電変換面の有効範囲を避ける位置に配設され、且つ、光学LPF118の背面側周縁部の近傍において一周に渡って光学LPF118および保護ガラス142に当接している。これにより、CCD117と光学LPF118との間の略気密性(塵埃が通過しない程度の気密性)が保持されるように構成されている。そして、CCD117と光学LPF118とを気密的に覆うホルダ145が配設されている。このホルダ145は、撮影光軸周りの略中央部分に矩形状の開口146を有し、この開口146の防塵フィルタ119側の内周縁部には断面が略L字形状の段部147が形成されている。そして、この段部147に光学LPF118の前方側角部が突き当たるように、開口146の後方側から光学LPF118及びCCD117が配設されている。ここで、光学LPF118の前面側周縁部を段部147に対して略気密的に接触させるように配置することで、光学LPF118は段部147によって撮影光軸方向における位置規制がなされ、ホルダ145の内部から前面側に対する抜け止めがなされている。尚、ここでの気密状態とは、塵埃の侵入によって撮影画像に塵埃が写り込み、当該画像に塵埃の影響の出ることを防止可能なレベルであれば良く、必ずしも気体の侵入を完全に防止するレベルでなくても良い。
一方、ホルダ145の前面側の周縁部には、防塵フィルタ受部148が全周に亘って形成されている。この防塵フィルタ受部148は、防塵フィルタ119を光学LPF118の前面に所定間隔あけて保持するために、段部147周りで段部147よりも前面側に突出されている。そして、この防塵フィルタ受部148の開口部分が、結像光線通過エリア149となる。
防塵部材であり、光学部材でもある防塵フィルタ119は、表裏に光線を透過する光線透過部を有する平面を有していて、全体として多角形(ここでは四角形)の板状に形成されたガラス板からなり、押圧部材151により押圧された状態で防塵フィルタ受部148に支持される。この押圧部材151は、板ばね等の弾性体によって形成されていて、ねじ150により防塵フィルタ受部148に固定されている。
ここで、押圧部材151と防塵フィルタ119の前面との間には、ゴムや樹脂等の振動減衰性のある材料により形成された受部材152が介在されている。一方、防塵フィルタ119の背面側であって防塵フィルタ受部148との間には、ゴムや軟質の樹脂等の振動減衰性のある材料により形成された受部153(第2の支持部材)が設置されている。この受部153は、光軸に略対称な複数位置に配置され、かつ、通常の状態(防塵フィルタ119が光軸前方側から押圧等されていない状態)のときには、防塵フィルタ119との間に所定の間隔ΔZを保つ位置に配設されている。これら受部材152および受部153は、後に述べる防塵フィルタ119に発生する振動の節位置に設置されている。
また、防塵フィルタ119のY方向の位置決めは、防塵フィルタ119を、押圧部材151のZ方向曲げ部に位置決め部材154を介して受けることにより行う。一方、防塵フィルタ119のX方向の位置決めは、図3に示すように、防塵フィルタ119を、ホルダ145に設けた支持部155に位置決め部材154を介して受けることにより行う。この支持部155との間に設けられた位置決め部材154も、押圧部材151のZ方向曲げ部との間に設けられた位置決め部材154と同様に、ゴムや樹脂等の振動減衰性のある材料で形成されていて、防塵フィルタ119の振動を阻害しないようになっている。
また、防塵フィルタ119の周辺部と防塵フィルタ受部148との間には、防塵フィルタ119の中心を含む光線透過部を取り囲む環状のシール156が設置されている。このシール156は、防塵フィルタ119と接触するように張り出されたリップ部156aを備えている。このリップ部156aは、取り付け状態において、押圧部材151からの押圧力により撓ませられて、防塵フィルタ119に押圧されている。これにより、開口146を含む空間の気密状態が確保されるとともに、防塵フィルタ119を支持している。一方、シール156の本体156bは、内周側がホルダ145の開口146の回りに設けた環状の凸部145aの外周部に圧入されて位置決めされている。このようにシール156は、防塵部材である防塵フィルタ119を、防塵フィルタ119の裏面が空密(塵埃が通過しない程度の気密)となるように支持する支持手段となっている。
このような構成において、防塵フィルタ119が外力(慣性力、あるいは防塵フィルタ119をクリーニングするときに外部からかかる押圧力など)を受けると、押圧部材151あるいはシール156にその外力が加わることになる。ここに、押圧部材151はバネ用りん青銅やバネ用ステンレスなどの板材により形成されていて曲げの剛性が高いのに対し、シール156はゴム材により形成されていて曲げの剛性が低いために、外力による変形はシール156に発生することになる。
シールが所定量(Z負方向にΔZ)変形すると、防塵フィルタ119は受部153に接触し、外力が受部153(4箇所)を圧縮する力として作用することになる。しかし、受部153は、圧縮剛性が、シール156の曲げ剛性よりも非常に高くなるように構成されている。従って、外力を受けた状態であっても受部153は殆ど変形することはなく、シール156の変形量も上述したΔZをほぼ上限とする極めて小さなものとなる。このように、外力によるシール156の変形量はほぼΔZであって微小であるために、シール156に過大な力が加わることはない。従って、シール156が捩れて気密状態が損なわれることはなく、外力が除去された後にシール156が防塵フィルタ119に過大な押圧力で接触することもない。
また、防塵フィルタ119が例え受部153に押圧された状態で支持されていても、受部153は防塵フィルタ119に発生する振動の振幅が極めて小さい節の部分を支持するものであるために、防塵フィルタ119の振動をさほど阻害することがない。従って、振動振幅が大きく、高効率な塵埃除去機構を構成することが可能となる。
シール156の設置は、接着等で本体156bをホルダ145に対して固着することにより行っても勿論良いし、ゴム等の軟質材料で形成されている場合にはリップ部156aを防塵フィルタ119に対して固着することにより行っても良い。
そして、設置後のシール156が発揮するべき押圧力量は、防塵フィルタ119と圧電素子120a,120b等を含んで構成される振動子170を支持可能であれば良い。例えば、振動子170の質量が数g程度(従って、10g(=0.01kg)未満)である場合を考える。そして、デジタルカメラ10が水平方向、垂直上方向、垂直下方向の何れの方向を向いているときにも振動子170を支持可能にするためには、重力加速度をG(=9.81m/(sec×sec))で表したときに最低2G以上の加速度に対応する必要があり、余裕を見てもその数倍から10G程度の加速度に対応可能であれば足りると考えられる。この場合には、シール156が発揮するべき押圧力量は、0.01×10×9.81≒1N(Nはニュートン)程度の小さいものとなる。この程度の押圧力量であれば、後に述べるように防塵フィルタ119に発生する振動をシール156が阻害することは殆どなく、塵埃の除去を非常に効率良く行うことが可能である。撮像素子ユニット116は、このようにしてCCD117を搭載する所望の大きさに形成されたホルダ145を備える気密構造に構成されている。
さらに、加振部材を構成する圧電素子120a,120bは、上述したように略長方形状をなし、伸縮用の電気信号(周波電圧)を印加するための加振部と伸縮用の電気信号を印加しない非加振部とを電極無部を挟んで備えて構成されている。加振部は、表面に設けられた信号電極171a,171bと、裏面に設けられグランドに接続される信号電極172a,172bと、にそれぞれ挟まれた部分である。また、非加振部は、ともにグランドに接続されて同電位となる、表面に設けられた信号電極172a,172bと裏面に設けられた信号電極172a,172bとにそれぞれ挟まれた部分である。
信号電極171a,171b,172a,172bは、回路手段であるフレキ157の電極端子157a,157b,157c,157dに電気接続されている。そして、防塵フィルタ制御回路121から所定の電気信号を圧電素子120a,120bの加振部に入力すると、防塵フィルタ119の対称軸に対称配置された圧電素子120a,120b(従って、防塵フィルタ119の対称軸は、圧電素子120a,120bの各々から略等距離の位置を通る仮想の対称軸となっている)に所定の振動が発生する。圧電素子120a,120bは防塵フィルタ119の対称軸に対して対称な形状および配置であり、後に述べるように振動振幅が大きな振動を発生することができる形状となっている。
圧電素子120a,120bの加振部は、後で具体的に示すが、定在波屈曲振動の節に対して非対称になっており、接続端子157j,157kが接続されていない状態(接続端子157j,157kは、振動子170を検査する段階では接続されておらず、検査合格後に製品に搭載する前に半田付け等により接続されるようになっている。そして、接続端子157j,157kが接続されていないときには、接続端子157jと電極端子157aとの間の導電性パターンと、接続端子157kと電極端子157cとの間の導電性パターンと、の何れか一方が2つの加振部の内の一方の加振部に電気信号を入力するための第1の回路を構成する。そして他方の導電性パターンが、第1の回路に電気信号が入力された際に発生する一方の加振部材の振動に基づき、他方の加振部に発生する電気信号を該他方の加振部から出力するための第2の回路を構成する。従って、接続端子157j,157kは、第1の回路と第2の回路とを電気的に接続するための接続部となっている。そして、防塵フィルタ制御回路121は、第1の回路と第2の回路とが接続部である接続端子157j,157kによって接続された状態で、両方の加振部材を駆動することが可能な駆動制御手段として機能する。)で、検査端子157e,157f間に所定の電気信号を印加すると、検査端子157g、157f間に定在波屈曲振動による電圧が発生し、振動状態(振動周波数と振動振幅に対応した電圧)を検出することができる。
フレキ157の電極端子157a,157bは、樹脂と銅箔等で作製されて柔軟性があることから圧電素子120a,120bを含む振動子170の振動を減衰させることが少ない。また、圧電素子120a,120bを振動振幅の小さいところ(後に述べる振動の節位置)に設けることで、振動の減衰をより抑制することができる。
一方、以下に述べるような手ブレ補正機構を持つ場合には、圧電素子120a,120bはボディユニット100に対して相対的に移動する。このために、防塵フィルタ制御回路121がボディユニット100と一体の固定部材にあるときには、手ブレ補正機構の動作に従って、フレキ157の電極端子157a,157bと、フレキ157に電気接続されたリード線309a,309bとが、変形し、変位する。これらの内のフレキ157の電極端子157a,157bは、上述したように、柔軟性があって薄いために、手ブレ補正の動作を阻害することがない。さらに、リード線309a,309bは、X方向、Y方向の何れの方向にも柔軟性があるように形成されていて、同様に、手ブレ補正の動作を阻害することがない。
また、本実施形態の場合には、フレキ157は、一体に形成された電極端子157a,157bにより圧電素子120a,120bの2ヶ所から引き出すという簡単な構成である。さらに、フレキ157は、一体に形成された2つのリード端子157h,157iによりリード線309a,309bを介して防塵フィルタ制御回路121に接続されるという最小限の簡単な構成である。従って、フレキ157は、小型軽量に構成することができ、手ブレ補正機構をもつカメラには最適である。
防塵フィルタ119の振動によって塵埃に作用する慣性力により、後に述べるように防塵フィルタ119の表面から離脱した塵埃は、重力の作用によりボディユニット100の下側に落下する。そこで、本実施形態では、防塵フィルタ119の下側直近に設けた台158に、粘着材や粘着テープ等で形成された保持材159a,159bを配設して、落下した塵埃を確実に保持し、再び防塵フィルタ119の表面に戻らないようにしてある。
次に、手ブレ補正機構について簡単に説明する。ここで、撮影光軸の方向をZ軸方向とし、撮影光軸に直交するXY平面内における第1の方向をX軸方向、このX軸方向に直交する第2の方向をY軸方向とする。
この手ブレ補正機構は、図1に示すように、X軸ジャイロ160、Y軸ジャイロ161、防振制御回路162、駆動源であるX軸アクチュエータ163、駆動源であるY軸アクチュエータ164、X枠165、Y枠166(ホルダ145)、フレーム167、位置検出センサ168、及びアクチュエータ駆動回路169を備えて構成されている。そして、防振制御回路162が、カメラのX軸回りの手ブレの角速度を検出するX軸ジャイロ160からの角速度信号と、カメラのY軸周りの手ブレの角速度を検出するY軸ジャイロ161からの角速度信号とに基づいて、手ブレ補償量を演算する。この手ブレ補償量に基づいて、アクチュエータ駆動回路169が、X軸方向及びY軸方向に、ブレを補償するようにCCD117を移動(変位)させるものである。
すなわち、CCD117を含む撮像素子ユニット116は、Y枠166(ホルダ145)に支持され、Y軸方向に移動可能となっている。さらに、撮像素子ユニット116およびY枠166は、X枠165に支持され、フレーム167に対してX軸方向に移動可能となっている。そして、X軸アクチュエータ163は、アクチュエータ駆動回路169から所定の駆動信号を入力すると、X枠165をX軸方向に駆動する。Y軸アクチュエータ164は、同様に所定の駆動信号を入力すると、Y枠166をY軸方向に駆動する。
ここで、X軸アクチュエータ163及びY軸アクチュエータ164は、電磁回転モータとネジ送り機構等を組み合わせたものや、ボイスコイルモータを用いた直進電磁モータや、直進圧電モータ等が用いられている。尚、位置検出センサ168は、X枠165及びY枠166の位置を検出するものであり、防振制御回路162は、この位置検出センサ168の検出結果に基づいて、X軸アクチュエータ163及びY軸アクチュエータ164を駆動し、CCD117の位置を制御するようになっている。
このような構成の手ブレ補正機構においては、防塵フィルタ119もCCD117と一体に駆動される。このために、防塵フィルタ119の質量は小さいことが要求される。さらに、フレキ157と防振制御回路162との間の電気接続部材は、同様に、質量が小さいこと、かつ動作時の負荷が小さいことが要求される。本実施形態の場合には、フレキ157における接続端子(リード端子157h,157i)の数が最小になっていることから、フレキ157と防振制御回路162との間の電気接続部材であるリード線309a,309bの本数を最小にすることができ、質量を小さくして、動作時の変形により発生する負荷も小さくすることができる。
ここで、第1実施形態の塵埃除去機構について、図4、図5〜図14、図15、図16、及び図17を参照してさらに詳しく説明する。
図4は、塵埃除去機構を構成する主要部(振動子)の分解斜視図である。図5は振動子を構成する圧電素子の電極構成と圧電素子に接続されるフレキシブルプリント基板の構造を示す正面図である。図6は、防塵フィルタ119に発生する振動の様子、及び、加振部と振動の節位置を説明するための図であり、図6(A)は防塵フィルタ119の正面図、図6(B)は図6(A)のBB線断面図、図6(C)は図6(A)のCC線断面図、図6(D)は図6(A)のDD線断面図である。図7は、防塵フィルタ119の長辺寸法、短辺寸法、及び、防塵フィルタ119に対する加振部の位置を示す図である。図8は、防塵フィルタ119の振動発生の概念を説明するための図であり、同時に加振部と振動の節位置の関係を示してある。図8(A)は、振動の殆ど発生しない節エリアが格子状に発生する振動モードでの防塵フィルタ119の正面図、図8(B)は図8(A)のAA線断面図、図8(C)は図8(A)のBB線断面図である。図9、図10、図15は防塵フィルタ119に発生する異なる振動の様子を説明するための図であり、加振部と振動の節位置の関係もそれぞれ示してある。図9は、図8と同様の格子状の振動の節をもつモードであるが、防塵フィルタに発生する異なる振動の様子を説明するための図である。図10において、図10(A)は防塵フィルタに発生する更に異なる振動の様子を説明するための正面図であり、図10(B)は図10(A)のAA線断面図であり、図10(C)は図10(A)のBB線断面図であり、図10(D)は図10(A)のCC線断面図である。図15において、図15(A)は防塵フィルタに発生する別の振動の様子を説明するための正面図であり、図15(B)は図15(A)のBB線断面図であり、図15(C)は図15(A)のCC線断面図である。また、図11は、図6で示される防塵フィルタ119における振動速度比(防塵フィルタ119の中央位置における面に垂直な振動速度Vを基準に最大振動速度Vmaxとの比をとった)と縦横比(長辺の長さを基準に短辺の長さの比をとった)のグラフを示す図である。図12及び図13はそれぞれ、防塵フィルタ119の異なる形態を示す図である。図12において、図12(A)は防塵フィルタ及びフレキシブルプリント基板の異なる形態を示すための正面図であり、図12(B)は側面図である。図13において、図13(A)は防塵フィルタ及びフレキシブルプリント基板の更に異なる形態を示すための正面図であり、図13(B)側面図である。図14は、防塵フィルタ119に発生する定在波を説明するための防塵フィルタ119の概念図(図6(B)に相当)である。図16は、振動検出装置を示す概念図である。図17は、図16の振動検出装置で計測した検出電圧と図20の防塵フィルタ制御回路で2つの圧電素子に信号電圧を印加した場合の図15の振動モードで振動する防塵フィルタ119の振動速度比を示す図である。
次に、振動子170を形成する防塵フィルタ119について述べる。ガラス板からなる防塵フィルタ119は、ある対称軸に対して対称な辺を少なくとも一つ持つ、全体として多角形の板状(本実施形態は四角形)を成し、少なくとも、最大の振動振幅が得られる位置、あるいは、最大振幅の得られる領域に挟まれた振動の節から放射方向に所定の広がりを持つ領域が、透明部である光線透過部を構成している。尚、防塵フィルタ119は、全体として円形を成し、その円の一部を直線状にカットして一辺を持つ略D字形状であっても良いし(図12参照)、四角形の左右二辺を円弧状に形成し、上下二辺を持つ形状としても構わない(図13参照)。そして、上述した取り付け手段により、この防塵フィルタ119の透明部である光線透過部が光学LPF118の前面側に所定の間隔をもって対向配置されている。尚、防塵フィルタ119は、上述したように、上記ガラス板に限定されるものではなく、光路上に在り光の透過性をもった部材であれば、例えば、透明なガラス板に換えて、光学ローパスフィルタ(LPF)、赤外カットフィルタ、偏光フィルタ、ハーフミラーなどであってもよい。
また、防塵フィルタ119の一方の面(本実施形態では背面側)の上側及び下側周縁部には、当該防塵フィルタ119に対して振動を与えるための加振部材を構成する圧電素子120a,120bが、例えば接着剤による貼着等の手段により配設されている。防塵フィルタ119に圧電素子120a,120bをそれぞれ配設することにより、振動子170が形成されている。該振動子170は、圧電素子120a,120bに所定の周波電圧を印加すると共振振動して、図6、図9、図10、図15に例示するような2次元の屈曲振動を発生する。
図4に示すように、圧電素子120a,120bには、信号電極171a,171bと、該信号電極171a,171bに対向した裏面に設けられ、側面を通して上記信号電極171a,171bのある側の面に引き回された信号電極172a,172bと、がそれぞれ形成されている。そして、信号電極171a,171bおよび信号電極172a,172bに、上記導電性パターンを持つフレキ157が電気的にそれぞれ接続されている。そして、フレキ157を介して接続された防塵フィルタ制御回路121から所定周期を有する駆動電圧をそれぞれの信号電極171a,171b,172a,172bに印加することにより、圧電素子120a,120bの加振部が駆動電圧に応じて伸縮する。これにより防塵フィルタ119が強制的に振動され、この強制振動により過渡的に発生した屈曲進行波が防塵フィルタ119の縁で反射されて、継続して発生している進行波と所定時間重ね合わされることにより、防塵フィルタ119に図6に示すような2次元の定在波共振屈曲振動を発生させることができる。
なお、図5に示すフレキ157は、図3に示したものよりも端子の数を増やした例となっており、電極端子157bと電極端子157dとを結ぶ導電性パターン上にさらに接続端子304a,304bと検査端子305bとが設けられている。
防塵フィルタ119の寸法は、長辺の長さがLA、それに直交する短辺の長さがLBである(図7の寸法表記に対応)。図6に示す屈曲振動は定在波振動を示し、図6(A)において実細線により示す振動の節エリア(振動振幅の小さいエリア)173は、必ずしも完全に振動振幅が0になる訳ではなく、例えば節同士が交差する場所において振動振幅がより小さくなるなどの特徴をもっている。尚、図6(A)中に示すメッシュは、有限要素法により演算する際に用いる分割メッシュである。
振動速度が大きい場合、図6(A)に示すように節エリア173の間隔が小さいと、節エリア173には大きな面内振動(面に沿った方向の振動)が発生し、節エリア173にある塵埃には面内振動方向に大きな慣性力が発生する(後述する図14に示すような、節177における質点の動きを参照。質点は、節177を中心にして、点Y2と点Y2’との間を円弧振動する)。塵埃の付着面に沿った力が作用するように防塵フィルタ119の面を重力方向に対して平行になる方向に傾けると、慣性力と重力が作用して塵埃を除去することができる。
また、図6(A)における節同士の間のエリアは、振動振幅が大きな腹エリア(この腹エリアにおいて、振幅の山または谷が異なる時刻に交代に形成される)を示し、振動振幅の山の稜線174を細点線により示している。この腹エリアに付着した塵埃は、振動により塵埃に与えられる慣性力によって除去される。なお、振動の節エリア173に付着した塵埃は、図6において節エリア173となっている部分に振幅をもつ他の振動モードによって加振することでも除去することができる。
図6に示す屈曲の振動モードは、X方向の屈曲振動と、Y方向の屈曲振動との合成により形成される。この合成の基本状態の様子を示したのが、図8(A)〜図8(C)および図9である。振動子170を振動減衰の殆どないスポンジ等の部材の上に置いて自由振動させると、図8(A)〜図8(C)および図9に示すような格子状の節エリア173が発生する振動モードが簡単に得られる。図8(A)および図9において、節エリア173の中心を破線で示している。図には、X方向に波長λxの定在波屈曲振動が発生し、且つY方向に波長λyの定在波屈曲振動が発生して、両方の定在波が合成されている状態が示されている。
O点をx=0,y=0の原点として取ると、任意の位置(x,y)における点P(x,y)のZ方向の振動Z(x,y)は、Aを振幅、m、nを振動モードに対応した固有振動の次数であって0を含む正の整数、γを任意の位相角とすると、任意の位置x、yでの最大振幅Z(x,y)は、次の(1)式で表される。
Z(x,y)=A・Wmn(x,y)・cos(γ)
+A・Wnm(x,y)・sin(γ) …(1)
但し、
Wmn(x,y)=sin(nπ・x+π/2)・sin(mπ・y+π/2)
Wnm(x,y)=sin(mπ・x+π/2)・sin(nπ・y+π/2)
である。
ここで、例えば、位相角γ=0とすると、上記(1)式は、
Z(x,y)=A・Wmn(x,y)
=A・sin(n・π・x/λx+π/2)
・sin(m・π・y/λy+π/2)
となり、ここでλx=λy=λ=1とする(屈曲の波長を単位長さとしてx,yを表記)と、
Z(x,y)=A・Wmn(x,y)
=A・sin(n・π・x+π/2)
・sin(m・π・y+π/2)
となる。同様にγ=π/2でも(1)式の前側の項が零となり、同様な定在波が発生する。
図8(A)は、m=nの場合の振動モードを示しており、X方向、Y方向に等間隔で振動の山、節、谷が現れ、碁盤目状に振動の節エリア173が現れている。
また、m=0、n=1の振動モードでは、Y方向に平行な辺(辺LB)に対して、平行な山、節、谷ができる振動になる。
以上に述べた形態の振動モードでは、X方向の振動とY方向の振動が独立に発生しており、X方向の振動とY方向の振動とを合成しても、単独でX方向の振動(辺LBに平行な節、山谷のできる振動)、あるいはY方向の振動(辺LAに並行な節、山谷のできる振動)を発生させた場合と同等の振動振幅(あるいは振動速度)となってしまう(図9に示す振動モードも同じ)。これらの振動モードでは先に述べたように、kを0及び整数(正負いずれでも良い)とすると位相角γ=k×π/2となる。つまり、cosγ、sinγが0となる場合のモードである。
次に、位相角γがこれとは異なる場合の振動モードについて述べる。
ここで、m=3、n=2の振動モードを選択し、位相角γを+π/4、または−π/4〜−π/8とすると、振動振幅が非常に大きくなる振動モードとなる。例えば、γ=+π/4であると、図6の振動モードとなり、防塵フィルタ119が矩形であるにも関わらず、光軸中心(上記仮想の対称軸と後述する仮想の中心線との仮想交点)に対して、後述するように面対称となる振動振幅の山の稜線174が複数の閉曲線を構成し、X方向の辺からの反射波とY方向の辺からの反射波とが効率良く合成されて、大きな振動振幅をもつ定在波が作られる。
また、図10は、γ=−π/4の場合の振動モードであり、振動振幅の山の稜線174が各辺の中心を囲むように形成され、防塵フィルタ119の中心が振動のほとんどない節エリア173となる。
図15は、振動の山が辺に平行となる従来の振動モードに近い状態で、図6の振動モードの振動が発生した場合を示している。この図15に示す振動モードは、位相角を+π/4より少し大きくしたり、あるいは小さくしたりするように、防塵フィルタ119及び圧電素子120a,120bの構成(後に述べるように、防塵フィルタ119の縦横比を変化させること等)を変えることにより実現される。
図6に示す振動子170の防塵フィルタ119は、30.8mm(X方向:LA)×28.5mm(Y方向:LB)×0.65mm(厚さ)の板ガラスである。また、圧電素子120a,120bは、各々、21mm(X方向)×3mm(Y方向)×0.8mm(厚さ)のチタン酸ジルコン酸鉛のセラミックで作られ、防塵フィルタ119の上下の辺に沿って、X方向は防塵フィルタ119の中心線に対して左右対称となるようにエポキシ系の接着剤で接着固定されている。
そして、図6で示される振動モードの共振周波数は91kHz付近であり、最も大きな振動速度、振動振幅が得られる。このときの振動速度、振動振幅の大きさは、防塵フィルタ119の中央位置に、四角形の防塵フィルタ119が内接する大きさの円形に防塵フィルタを構成した場合にほぼ匹敵する。
この防塵フィルタ119の中央位置における面に垂直な振動速度Vを基準に最大振動速度Vmaxとの比をとることで、図11に示すような振動速度比が得られ、その最大値は1.000となる。なお、図11において、圧電素子120a,120bを防塵フィルタ119の長辺に平行に配置した場合が長辺側、短辺に平行に配置した場合が短辺側のグラフである。この場合、防塵フィルタ119の長辺側に圧電素子120a,120bを配置した方が、より大きな振動速度が得られる。
このような構成の振動子170は、材質、形状、組立のバラツキや支持部の材質形状、支持位置、支持力量によっては、目標としている振動速度が発生せず、充分な塵埃除去効果を得られない場合がある。製造工程において、あるいは修理品を対象として、検査を行う場合には、製品に用いられる防塵フィルタ制御回路121(図20参照)を用いて防塵フィルタ119に振動を発生させ、その振動速度をレーザードップラー速度計等を用いて測定することが可能である。しかし、防塵フィルタ119の振動面は透明であるために、例えば光反射テープを貼り付けないと測定を行うことができない。さらに、例えば図6等に示したように、振動モードに応じて、かつ防塵フィルタ119上の場所に応じて振幅が大きく変化し、つまり振動速度が大きく変化するために、測定対象とする位置を正確にセットする必要があった。このために、レーザードップラー速度計等を用いると、計測を簡単に行うことができず、製造工程において採用するには手間やコストがかかり過ぎ、適用が困難であった。
そのために、上述したように、防塵フィルタの一部に振動検出用の圧電素子を設けたものや、矩形の防塵フィルタに本実施形態と同様に2つの圧電素子を設けて片側の圧電素子に電気信号を加えて他方の圧電素子により防塵フィルタの振動を検出するものがあった。ところが、圧電素子の一部に検出用圧電素子を設けたものは、検出用圧電素子が防塵フィルタ119の振動を阻害し、検出用圧電素子を設けることで振動子が大型になっていた。また、振動子を大型化させないために検出用圧電素子を小さく形成した場合には、検出用圧電素子の設置位置によっては防塵フィルタに発生する振動を正しく検出することができなかった。加えて、検出用圧電素子に異常があると、振動発生用振動子に異常がなくても振動子が異常であると判定してしまうことも発生していた。
一方、2つの圧電素子を用いる技術では、本実施形態のように防塵フィルタに対称でかつ複雑な振動形態を発生させた場合に、防塵フィルタの振動状態をその振動振幅を反映させて検出することができなかった。
本実施形態では、圧電素子120a,120bは、各々から略等距離の位置を通る仮想の対称軸と、各々の重心を結ぶ仮想の中心線との両方に対して、互いに重量バランスが対称となるように構成されている。加振部は、圧電素子120a,120bの仮想の中心線に対して非対称となるように配設されている。従って、仮想の中心線に対して対称となる振動モードの振動を発生させた場合には、加振部は、該加振部自体の中心軸(仮想の対称軸と垂直で、かつ、加振部の表面面積を1/2ずつに2分割する線であり、振動中心軸)に対する振動振幅の大きさが非対称となる。
具体的に、図6に示す例では、加振部に対応する信号電極171a,171bにおいて、X3とX5は同じ位相で振動する振動領域であり、X4はX3およびX5と逆位相で振動する振動領域である。そして、防塵フィルタ119の振動を一方の圧電素子で検出した場合には、X3およびX5に発生する電荷とX4に発生する電荷とは正負が逆になる。しかし、上述したように、加振部は、加振部自体の中心軸に対して振動振幅の大きさが非対称になるように構成されているために、発生した電荷は、全てが相殺されることなく一部が残り、X3、X4、X5の振動振幅に対応した電圧を発生することができる。
次に、図15に示す振動形態のときに防塵フィルタ119に発生する振動を、図16の振動検出装置310(本実施形態)で検出した圧電素子120aに発生する検出電圧と、防塵フィルタ119の中央部での振動速度比(任意の状態での振動速度V、所定の塵埃を除去するのに必要な振動速度V0としたとき、V/V0)とを図17に示してある。
上述したように、かつ図2、図3に示すように、防塵フィルタ119に対して圧電素子120a,120bは対称(仮想の対称軸と仮想の中心線との各々に対して互いに重量バランスが対称)に設置され、形状も同じものであるために、防塵フィルタ119に発生する振動は対称(仮想の中心線を含み仮想の対称軸に垂直な面に対して面対称)である。
加振部は、振動領域X3およびX5に同じ位相の振動が発生し、振動領域X4に振動領域X3およびX5とは逆位相の振動が発生し、振動位相が異なる領域の面積はそれぞれ同じで振動により発生する電荷は振動領域X3およびX5と振動領域X4とは正負が逆になるために、電荷が相殺されて発生電圧は零になるように見える。しかし、この振動形態では、振動振幅は、振動領域X3が一番大きく、振動領域X4、振動領域X5の順番に小さくなるために、振動により発生する総電荷は零にはならない。つまり、図15の振動形態においても、加振部の中心線に対して振動振幅は非対称になっているために、圧電素子に発生する検出電圧は零にはならず、発生する振動の振幅を含めて正確に検出することができる。
矩形の防塵フィルタ119において各辺に平行な振動の節が発生する場合(図8、図9参照)は、加振部の中心線を振動の節に一致させると、振動により発生する加振部の電荷総量は零となり、防塵フィルタ119に発生する振動を全く検出することができない。また、加振する圧電素子に問題がある場合と、振動検出側の圧電素子に問題がある場合と、の何れにおいても、検出される電気信号は低いものになり、製品で両方の圧電素子に電気信号を入力した場合に発生する振動の強さを正確に反映したものとなる。
図17は図16の振動検出装置を用いて検出した複数の防塵フィルタの検出電圧と、圧電素子120a,120bの両方に防塵フィルタ制御回路121から電気信号を印加した場合の防塵フィルタ119の振動速度比とをグラフにしたものである。ここでの振動形態(振動モード)は、93kHz付近に共振を持つものであり、検出電圧と振動速度比とに相関があり、本実施形態で示す検出方法で両方の圧電素子に電気信号を加えた場合の防塵フィルタ119に発生する振動の振動速度が正確に予測することができる。したがって、振動検出装置310を用いると、防塵フィルタ119と圧電素子120a,120b,フレキ157で構成される振動子170が良品か不良品かを簡単に見極められるとともに、図3に示すように製品として組立てられた状態の防塵フィルタ119の保持方法も含めて良品か不良品かも検査することができる。
また、防塵フィルタ119は82kHz付近にも振動モードをもつが、93kHzの振動モードでの検出電圧と82kHzの振動モードの振動速度比は、図17に示した例と同様に相関をもつために、1つの振動モードで検出を行えば、他の振動モードにおける振動速度を予測することができる。
図9の振動形態においては、振動領域X1とX2は、振動位相は逆で、振動振幅はほぼ同一である。図9においても加振部の中心線に対して振動振幅が非対称になっているために、防塵フィルタ119に発生する振動の振動振幅も含めた振動状態を加振部からの検出電圧によって正確に検出することができる。図10の振動形態においても振動領域X2とX3は逆位相の振動であり、振動振幅は振動領域X2の方が振動領域X3よりも大きい。この振動形態においても加振部の中心線は振動振幅が非対称であるために、防塵フィルタ119に発生する振動を振動振幅も含めて正確に検出することができる。
図12は、振動子170の変形例を示す図であり、防塵フィルタ119として、円盤の一部が切り欠かれて一つの辺を形成したものが用いられている。すなわち、防塵フィルタ119として、Y方向の対称軸に対して対称な一辺を持つ略D字形状のものを使用している。
圧電素子120aは、防塵フィルタ119の一辺に平行で、且つ、辺の中点(Y方向の対称軸)に対して対称となるように、防塵フィルタ119の面上に配置されている。一方、圧電素子120bは、防塵フィルタ119の外周円に略内接し、上記一辺に平行に配置されている。
防塵フィルタ119の形状をこのように形成すると、防塵フィルタ119の中心(重心と考えて良い)に対する形状の対称性が高くなり、より図6の振動状態が作り易くなる。加えて、形状が、円形よりも小型になることは勿論である。
本実施形態では2つの圧電素子120a,120bが設けられており、これら2つは同一形状である。各圧電素子120a,120bは、フレキ157により電気的に結合されている。フレキ157の導電パターンは、2つの圧電素子120a,120bに各々電気接続される状態と、両方の圧電素子120a,120bを並列接続させる状態と、の何れにもすることができるように形成されている(図4、図5参照)。
さらに、図12に示すように円盤の一部が切り欠かれたことにより発生する非対称性(振動に対する非対称性)は、圧電素子120a,120bを辺に平行に配置し、かつ剛性を上げることにより、対称なものに近付けることができ、必要とする振動状態をほぼ達成することができる。
なお、図12に示す防塵フィルタ119は矩形ではないために、そのままでは短辺および長辺を設定することができない。そこで、図12に示す防塵フィルタ119に対して、切り欠かれて形成された上記一辺を1辺とし、この1辺に対向する辺を圧電素子120bの外側の辺に沿って設定し、さらに防塵フィルタ119と面積が等しくなるように他の1組の辺を設定した仮想矩形175を想定する。そして、この仮想矩形175の長辺、短辺を、図12に示す防塵フィルタ119の長辺、短辺として設定する。
また、図12に示す構成では、防塵フィルタ119の対称軸に対して、圧電素子120a,120bは対称に配置されていないが、仮想矩形175の対称軸に対して対称に配置されているために、防塵フィルタ119の対称軸に対して対称に配置されたものと同様の効果を得ることができる。
一方、防塵フィルタ119の支持は、図3に示すような形状(例えて言えば、変形トラック形状)をなすシール156がホルダ145との間に配置され、図2に示すような押圧部材151によって押圧されることにより行われている。シール156は、図2に示したようにリップ部156aを備え、このリップ部156aが防塵フィルタ119に接することにより、防塵フィルタ119、ホルダ145、光学LPF118、シール156に囲まれた空間を略密閉している。
さらに、受部153がホルダ145の3箇所に設けられており、外力が加わった場合に防塵フィルタ119を支持する構成となっている。ここでシール156がトラック形状をなすリップ部156aにより防塵フィルタ119に接するために、防塵フィルタ119の中心を取り囲んで発生する振動の節エリアに沿うことになり、防塵フィルタ119の振動を阻害することがより少なくなる。
図13は、振動子170の別の変形例を示す図であり、防塵フィルタ119として、円盤に対称に2つの切り欠きを設けて平行な二辺を形成したものを用いている。すなわち、防塵フィルタ119として、Y方向の対称軸に対して対称な辺を2つ持つものを使用している。さらに、この図13に示す変形例においては、圧電素子120a,120bを、直線状をなす2辺の近傍ではなく、円周を形成する部分(円弧状の部分)に配置している。このときには、圧電素子120a,120bも円弧状の形状のものを用いている。このような構成によれば、圧電素子120a,120bの配置が効率的となるために、振動子170を図12に示した変形例よりも小型に形成することができる。
なお、図13に示す防塵フィルタ119も矩形ではないために、そのままでは短辺および長辺を設定することができない。そこで、図12に示した防塵フィルタ119に対して仮想矩形175を設定したのと同様に、この図13に示す防塵フィルタ119に対しても仮想矩形175を設定する。すなわち、防塵フィルタ119に切り欠かれて形成された平行な2辺を、仮想矩形175の対向する2辺とする。さらに防塵フィルタ119と面積が等しくなるように他の1組の辺(2辺)を設定した仮想矩形175を想定する。そして、この仮想矩形175の長辺、短辺を、図12に示す防塵フィルタ119の長辺、短辺として設定する。
また、図13に示す構成における、圧電素子120a,120bとフレキ157の電気接続、および防塵フィルタ119の支持については、図12を参照して説明したこととほぼ同様となるために、ここでは説明を省略する。
次に、図14を用いて塵埃の除去について詳しく説明する。図14は、図6のBB線断面図と同じ断面を示している。
図14において、矢印176は、圧電素子120a,120bの分極方向を示している。このような分極方向の圧電素子120a,120bに所定の周波電圧が印加された場合には、ある時刻t0において、振動子170が実線に示した状態となる。振動子170の表面の任意の位置yにある質点Y1の任意の時刻tにおけるZ方向の振動zは、振動の角速度をω、Z方向の振幅をA、Y=2πy/λ(λ:屈曲振動の波長)とすると、下記の(2)式のように表される。
z=Asin(Y)・cos(ωt) …(2)
この(2)式は、図6における定在波振動を表している。すなわち、y=s・λ/2のとき(ここで、sは整数)にY=sπとなり、sin(Y)は零になる。従って、時間に関係なくZ方向の振動振幅が零になる節177をλ/2毎の位置に持つことになり、これは定在波振動である。そして、図14において破線で示した状態は、上述した時刻t0の状態に対して、振動が逆相となるt=kπ/ωでの状態を示している(ここで、kは奇数)。
次に、防塵フィルタ119上の点Y1の振動は、屈曲定在波の振動の腹178の位置になるために、Z方向の振動で振動振幅はAとなり、Z方向の点Y1の位置z(Y1)は、(3)式のように、
z(Y1)=Acos(ωt) …(3)
となる。
Y1の振動速度Vz(Y1)は、振動の周波数をfとすると、ω=2πfであるために、上記(3)式を時間で微分して、
Vz(Y1)=d(z(Y1))/dt
=−2πf・Asin(ωt) …(4)
となる。
Y1の振動加速度αz(Y1)は、上記(4)式をさらに時間で微分して、
αz(Y1)=d(Vz(Y1))/dt
=−4π×π×f×f・Acos(ωt) …(5)
となる。従って、点Y1に付着している塵埃179は、上記(5)式の加速度を受けることになる。ここで塵埃179の質量をMとすれば、このときに塵埃179の受ける慣性力Fkは、
Fk=αz(Y1)・M
=−4π×π×f×f・Acos(ωt)・M …(6)
となる。
上記(6)式から、慣性力Fkは周波数fを上げるとfの2乗に比例して大きくなるために、慣性力Fkを大きくするためには周波数fを大きくするのが効果的であることが判る。ただし、このときの振動振幅Aが小さいと、いくら周波数fを大きくしたからと言って、慣性力をあまり大きくすることはできない。
一般的には、加振の振動エネルギーを発生させる圧電素子120a,120bの大きさを一定とすると、入力可能なエネルギーは限られ、所定の振動エネルギーしか発生することができない。従って、同じ振動モードで周波数を上げると振動振幅Aは周波数fの2乗に逆比例し、共振周波数を上げて高次の共振モードにすると、振動振幅は低下し、振動速度が上がらず、振動加速度も上がらない(むしろ、周波数が高くなると、理想的に共振させることが難しく、振動エネルギー損失が大きくなり、振動加速度は下がる)。このように、単に共振モードで振動を発生させることだけでは大きな振幅を持つ振動モードにはならず、場合によっては塵埃除去の効果が著しく低下してしまうことになる。従って、振動加速度を上げるには単に振動周波数を上げるだけでなく、効率的に防塵フィルタ119に共振振動を発生させる(振動振幅を大きくする)ことが必要である。
また、実際に製造された防塵フィルタ119を含んで構成される振動子170にどの程度の振動振幅が発生しているかを検出することで、振動の周波数(回路から入力された周波数)と振動振幅とに基づいて、振動速度及び振動加速度を算出可能であり、除塵効果をも検出できることになる。カメラを組み立てる前に除塵効果が検出できれば、製造された振動子170が適切なものかを判断できるし、振動子170の押圧や支持が適切であるかを判定できることになる。
防塵フィルタ119が矩形であるにも関わらず、図6に示す形態の振動モードは、振動振幅の山の稜線174が光軸中心に対して閉曲線を構成し、また、図10に示す形態の振動モードは、振動振幅の山の稜線174が辺の中心を取り囲む曲線を構成し、X方向の辺からの反射波と、Y方向の辺からの反射波を効率良く合成して振動振幅の大きな定在波を作っている。図10に示す振動モードでの防塵フィルタ119の支持方法は図6の場合と同様であり、シール156における防塵フィルタ119とのシール接触部181と、外力が防塵フィルタ119に作用したときに防塵フィルタ119を支持する受部153の接触部となる支持エリア180とを、図10(A)に示している。いずれの接触部も、振動モードの振動の節エリア173に近い、振動振幅の小さい部分に位置するようにしてあり、防塵フィルタ119に発生する振動を阻害することが殆どない。
上記のような合成定在波を効率良く作るための要因に、防塵フィルタ119の形状寸法が大きく寄与しており、図11に示すように、防塵フィルタ119の長辺の長さに対する短辺の長さの比である縦横比(短辺/長辺)を1にする、すなわち正方形にするよりも、ある範囲内で縦横比を1より小さく設定した方が、圧電素子120a,120bの配置に関わらず、防塵フィルタ119の中央位置のZ方向の振動速度が最も大きくなる。例えば、図11のグラフにおいて、振動速度比が0.7以上になる領域を振動速度が最も大きくなる領域とすることができる。この図11においては、グラフの縦軸が、この領域での最大振動速度Vmaxを基準(つまり1)にしたときの振動速度Vの比(V/Vmax)を示している。勿論、縦横比(短辺/長辺)の最大値は1であり(図面上では、縦横比が1を超える領域(この領域は、(長辺/短辺)を示していることになる)についても幾らか図示している)、縦横比0.9以下において振動速度比が急速に小さくなっている。この図11を参照すれば、防塵フィルタ119の縦横比(短辺/長辺)を、0.9以上、1未満とすることが好ましいことが分かる。また、図11の「短辺側」の2つの点は、防塵フィルタ119の短辺側に圧電素子120a,120bを配置したときの振動速度比を示しており、何れも、防塵フィルタ119の長辺側に圧電素子120a,120bを配置した「長辺側」の曲線よりも低い振動速度比となっている。このことから、圧電素子120a,120bは、防塵フィルタ119の長辺側に配置した方が、短辺側に配置するよりも振動速度比が高くなり、高い塵埃除去性能が得られることが分かる。また、図11において最大の振動速度比が得られているときの振動モードは図6に示した振動モードであり、式(1)においてγ=π/4の場合である。
このように振動振幅の山の稜線174が光軸中心に対して閉曲線を構成する振動や辺の中心を取り囲む曲線を構成する振動を発生させれば、防塵フィルタ119が円盤状の形状の場合に発生する同心円状の振動の振幅とほぼ同等の振動振幅を達成することができる。一方、単に辺に平行な振動振幅を発生する振動モードでは、本実施形態で示したような振動モードの数分の1から10分の1程度の振動加速度しか得ることができない。
また、振動振幅の山の稜線174が閉曲線を構成する振動や辺の中心を取り囲む曲線を構成する振動では、振動子170の中心が最も振動振幅が大きく、周辺の閉曲線へ行くほど、又は外側において取り囲む曲線であるほど、振動振幅は小さくなる。そこで、振動子170の中心を光軸に合わせることにより、画像の中心ほど塵埃除去の能力が高い領域となり、画質が高い画像の中心部ほど塵埃179が写り込むことがなくなると言った利点もある。そして、防塵フィルタ119の中心から周辺に行くに従って振動振幅が小さくなることから、圧電素子120a,120bの加振部の中心線に対して振動振幅領域を非対称にし易く、より簡単な構成で振動検出を実現することができる。
さらに、結像光線通過エリア149内の振動振幅の小さいエリアである節エリア173は圧電素子120a,120bに与える駆動周波数を変えて異なる振動モードで共振させることにより、節177位置を変化させて塵埃179を除去できることは勿論である。このような高い振動加速度を発生する振動子170の場合、振動子170を構成する防塵フィルタ119、圧電素子120a,120bの材質、形状寸法、設置位置のバラツキにより、振動加速度の大きさは変化する。さらに、振動子170の振動加速度は、フレキ157の取り付けバラツキ、振動子170への押圧力や支持部材のバラツキによっても変化する。従って、防塵装置を製造する場合は、振動加速度を検出することが非常に重要になる。これに対して、本実施形態によれば、振動加速度を簡単にかつ正確に検出することが可能(ただし実際に検出が可能であるのは、振動により発生する圧電電圧である。そして、検出した圧電電圧の絶対値が図17に示したように振動速度と高い相関性をもって関連しているために、その周波数も合わせて検出することにより、振動加速度を算出することが可能となる。)となる。従って、上記諸パラメータのバラツキにより所定の振動加速度を発生できない振動子170、あるいは該振動子170が設置された装置を、不良品として検出することが可能となる。しかも、振動を検出するための新たな振動検出部材を従来のもののように設ける必要がないために、振動子170を小型化することができる。さらに、余分な構成が振動子170に付加されていないために、振動をより高い効率で発生する振動装置を構成することができる。
次に、図18および図19は、圧電素子120a,120bの周波数を共振周波数付近で変化させた場合の振動状態を説明するための図であって、図18は圧電素子の等価回路を示す回路図、図19は機械共振時における圧電素子の等価回路を示す回路図である。
圧電素子120a,120bを含む振動子170の共振周波数付近における電気等価回路は、図18に示すようになる。この図18において、C0は圧電素子120a,120bが並列接続されている状態の静電容量である。また、L、C、Rは、振動子170の機械的振動を電気回路素子であるコイル、コンデンサ、抵抗に置き換えた等価回路上の数値であり、当然、周波数に依存して変化する。
周波数が機械的な共振周波数f0になったときには、LとCの共振となり、図19に示すような電気等価回路図となる。すなわち、全く共振していない周波数(例えば、共振周波数よりも低い周波数)から共振周波数側へ周波数を上げていくと、圧電素子120a,120bの加振の位相に対して、振動子170の振動位相が変化していき、共振のときには位相がπ/2進み、さらに周波数を上げていくと位相はπまで進む。それ以上周波数を上げていくと位相は減少し、共振域でなくなると周波数が低い状態における非共振状態の位相と同じになる。実際には振動子170の構成により、理想状態とはならず、位相がπまで変化しない場合もあるが、駆動周波数を共振周波数に設定することは可能である。
なお、図6(A)及び図10(A)において振動子170の4隅に示した支持エリア180は、振動振幅が殆どないエリアとなるために、外力が防塵フィルタ119に加わった場合でも防塵フィルタ119のこの部分をゴム等の振動減衰性のある受部153を介して支持すれば、振動の減衰を小さくして、確実な支持を行うことができる(ゴム等で形成された受部153は、防塵フィルタ119の面内方向の振動を許容するために、面内方向の振動を殆ど減衰させることがない)。また、防塵フィルタ119が外力によりZ方向に押圧されたときに、シール156のリップ部156aの変位が少なくなるとともに、シール156による押圧力の増加も少なくなるために、外力が取り除かれたときにリップ部156aはもとの状態に確実に復帰する。
そして、防塵フィルタ119の表面の微細な塵埃を取り去るために、交換レンズを取り外して清掃器具で清掃するときに、防塵フィルタ119に外力がかかることがある。このときに、この支持構造を取っていないと、シール156に直接、その外力が加わり、シール156を捩ったり、外力を除いてもリップ部156aの形状が復帰しない等の不具合が発生して、振動振幅が小さくなり、除塵効果が低下してしまう(先に述べたように、塵埃を防塵フィルタ119から除去する力は塵埃の質量に比例するために、微細な塵埃や微細液体は防塵フィルタ119を振動させても除去することはできない。そして、微細な塵埃等が多数付着すると防塵フィルタ119の結像光線の透過率が低下するために、防塵フィルタ119の表面に所定以上の微細塵埃あるいは微細液体が付着した場合には、清掃器具等を用いて清掃する必要がある)。
一方、シール156は、振動振幅があるエリアにも設けなければならないが、本実施形態の振動モードでは、周辺における振動振幅の山ほど振動振幅が小さいこと、さらに、防塵フィルタ119の周辺部をリップ形状で受けていてその押圧力量が小さいことから、強い力が屈曲振動振幅方向に作用することはなく、シール156による振動の減衰を極めて少なくすることができる。本実施形態では、図6、図9及び図10に示すように、振動振幅の小さいエリアである節エリア173にシール接触部181が多く接触するように構成しているために、さらに振動減衰は小さい。なお、この支持形態を採用した場合に、押圧力のバラツキや、シール156の材質、形状寸法のバラツキによって、振動の阻害状況も大きく異なる。そして、シール156が捩れて組み立てられたか否かを目視で確認することは困難であったが、本実施形態によれば、防塵フィルタ119に発生する振動振幅(振動速度)と相関関係のある振動電圧を簡単に測定することができるために、不良品を容易に検出することが可能となる。
また、圧電素子120a,120bを振動させる上記所定の周波数は、振動子170を構成する防塵フィルタ119の形状寸法、材質や支持の状態によって決まるものである。ここに、温度は、振動子170の弾性係数に影響するために、その固有振動数を変化させる要因の1つとなっている。そのため、運用時に振動子170の温度を計測して、その固有振動数の変化を考慮して駆動制御することが好ましい。この場合には、まず、温度に対応した振動子170の振動周波数の補正値を、予め求めておいて、不揮発性メモリ128に予め記憶させておく。そして、温度測定回路(不図示)に接続された温度センサ(不図示)をデジタルカメラ10内に設けて、Bucom101が、温度センサの計測温度に対応した振動子170の振動周波数の補正値を不揮発性メモリ128から取得する。そして、Bucom101が、補正値を用いて補正された駆動周波数を演算し、補正後の駆動周波数を防塵フィルタ制御回路121の駆動周波数とすることによって、温度が変化しても常に効率の良い振動を発生することが可能となる。
次に、本実施形態におけるデジタルカメラ10の防塵フィルタ制御回路121について、以下に説明する。
図20は、デジタルカメラ10のボディユニット100における防塵フィルタ制御回路121の構成を概略的に示す回路図である。図21は、図20の防塵フィルタ制御回路121における各構成部材から出力される各信号形態を示すタイムチャートである。
ここに例示した防塵フィルタ制御回路121は、図20に示すような回路構成を有し、その各部において図21のタイムチャートに示すような波形の信号(Sig1〜Sig4)が生成され、これらの信号に基づいて次のように制御される。
防塵フィルタ制御回路121は、図20に例示するように、N進カウンタ182、1/2分周回路183、インバータ184、複数のMOSトランジスタQ00,Q01,Q02、トランス185、及び抵抗R00を備えて構成されている。
上記トランス185の1次側に接続されたMOSトランジスタQ01及びMOSトランジスタQ02のオン/オフ切替え動作によって、そのトランス185の2次側に所定周期の信号(Sig4)が発生するように構成されている。そして、この所定周期の信号に基づき圧電素子120a,120bを駆動し、防塵フィルタ119を固着した振動子170に共振屈曲定在波を発生させるようになっている。
Bucom101は、制御ポートとして設けられた2つのIOポートP_PwCont及びIOポートD_NCntと、このBucom101の内部に存在するクロックジェネレータ186とを介して、防塵フィルタ制御回路121を次のように制御する。
まず、クロックジェネレータ186は、圧電素子120a,120bへ印加する信号周波数よりも充分に高い周波数でパルス信号(基本クロック信号)をN進カウンタ182へ出力する。この出力信号が、図21のタイムチャートに示す波形の信号Sig1である。そしてこの基本クロック信号は、N進カウンタ182へ入力される。
N進カウンタ182は、入力されたパルス信号をカウントして、所定の値“N”に達する毎にカウント終了パルス信号を出力する。これにより、N進カウンタ182は、基本クロック信号を1/Nに分周することになる。この出力信号が、図21中のタイムチャートに示す波形の信号Sig2である。
この分周されたパルス信号はハイレベル(High)とローレベル(Low)のデューティ比が1:1ではない。そこで、1/2分周回路183によってデューティ比を1:1へ変換する。尚、この変換されたパルス信号は、図21中のタイムチャートに示す波形の信号Sig3に対応する。
この変換されたパルス信号がMOSトランジスタQ01に入力されると、MOSトランジスタQ01は、信号のハイレベル(High)状態においてオンする。一方、MOSトランジスタQ02へは、インバータ184を経由してこのパルス信号が印加される。従って、このパルス信号がMOSトランジスタQ02へ入力されると、MOSトランジスタQ02は、パルス信号のローレベル(Low)状態においてオンする。こうして、トランス185の1次側に接続されたMOSトランジスタQ01とMOSトランジスタQ02とが交互にオンすると、2次側には図21中の信号Sig4に示すような周期の信号が発生する。
トランス185の巻き線比は、電源回路135のユニットの出力電圧と圧電素子120a,120bの駆動に必要な電圧とから決定される。尚、抵抗R00はトランス185に過大な電流が流れることを制限するために設けられている。
圧電素子120a,120bを駆動するに際しては、MOSトランジスタQ00がオン状態にあり、且つ、電源回路135からトランス185のセンタータップに電圧が印加されていなければならない。そして、この場合のMOSトランジスタQ00のオン/オフ制御は、Bucom101のIOポートP_PwContを介して行われるようになっている。また、N進カウンタ182の設定値“N”は、Bucom101のIOポートD_NCntから設定することができる。Bucom101は、このように設定値“N”を適宜に制御することにより、圧電素子120a,120bの駆動周波数を任意に変更することが可能となっている。
このときの駆動周波数は、次の(7)式を用いて、Bucom101のCPU(制御手段)により算出されるようになっている。
fdrv=fpls/2N …(7)
但し、NはN進カウンタ182への設定値、fplsはクロックジェネレータ186の出力パルスの周波数、fdrvは圧電素子120a,120bに印加される信号の周波数である。
さらに、このデジタルカメラ10は、超音波域(20kHz以上の周波数帯域)の周波数で防塵フィルタ119を振動させる場合に、デジタルカメラ10の操作者に防塵フィルタ119の動作を告知する表示部を、動作表示用LCD129あるいは動作表示用LED130に備えている。つまり、上記CCD117の前面に配置され振動可能な透光性をもつ防塵部材(防塵フィルタ119)に対して、加振部材(圧電素子120a,120bを含む)で振動を与えるとき、加振部材の駆動回路(防塵フィルタ制御回路121)の動作と連動してデジタルカメラ10の表示部を動作させ、防塵フィルタ119の動作を告知することも実施する(詳細は後述する)。
上述のようなBucom101が行う制御動作について、図22及び図23〜図26を参照しながら具体的に説明する。
図22は、本実施形態のデジタルカメラ10の制御動作を示すフローチャートであり、Bucom101が行うカメラシーケンス(メインルーチン)の手順の一例を示している。
Bucom101により処理される図22のフローチャートに示すような制御プログラムは、カメラのボディユニット100の電源SW(不図示)がオン操作されると、その実効が開始される。
まず最初に、このデジタルカメラ10を起動するための処理が実行される(ステップS101)。すなわち、電源回路135を制御して、デジタルカメラ10を構成する各回路ユニットへ電力を供給する。さらに、各回路の初期設定も行う。
次に、後述するサブルーチン「無音加振動作」をコールして、無音(すなわち可聴範囲外の周波数)で防塵フィルタ119を振動させる(ステップS102)。尚、ここで云う可聴範囲は、人間の一般的な聴力を基準にして、約20Hz〜20000Hzの範囲内であるものとする。
続くステップS103からステップS124までは、周期的に実行されるステップ群である。すなわち、まず、デジタルカメラ10に対するアクセサリの着脱を検出する(ステップS103)。この検出の代表例としては、アクセサリの1つであるレンズユニット200が、ボディユニット100に装着されたか否かの検出が挙げられる。この着脱検出動作は、Bucom101がLucom201と通信することによって行われる。すなわち、Bucom101がLucom201と通信することができればレンズユニット200が装着されていると判定でき、そうでなければ装着されていないと判定することができる。
もし、所定のアクセサリがボディユニット100に装着されたことが検出された場合には(ステップS104)、サブルーチン「無音加振動作」をコールして、無音で防塵フィルタ119を振動させる(ステップS105)。
このように、各種のアクセサリの中でもとりわけレンズユニット200がカメラ本体であるボディユニット100に装着されていない期間は、ボディユニット100の内部に外気が循環して、防塵フィルタ119や各レンズ等に塵埃が付着する可能性が特に高いために、上述のようにレンズユニット200の装着を検出したタイミング(例えばレンズ交換時)で塵埃を払う動作を実行することは、画像に塵埃が写り込まないようにするために有効である。その後、撮影直前であるとみなして、ステップS106へ移行する。
一方、上記ステップS104において、レンズユニット200がボディユニット100から外された状態であることを検出した場合は、そのまま次のステップS106へ移行する。
そして、当該デジタルカメラ10が備える所定のカメラ操作スイッチ131の状態検出が行われる(ステップS106)。
ここで、レリーズSWを構成するファーストレリーズSW(1st.レリーズSW)(不図示)が操作されたか否かを、このスイッチのオン/オフ状態により判定する(ステップS107)。そして、もし1st.レリーズSWが所定時間以上オン操作されない場合には、次に電源SWの状態を判別する(ステップS108)。ここで、電源SWがオンのままであれば上記ステップS103に戻り、オフされている場合には終了処理(スリープ等)となる。
一方、上記ステップS107において1st.レリーズSWがオン操作されたと判定した場合には、測光回路115から被写体の輝度情報を取得して、この輝度情報に基づき撮像素子ユニット116の露光時間(Tv値)とレンズユニット200の絞り設定値(Av値)とを算出する(ステップS109)。
その後、AFセンサ駆動回路110を経由してAFセンサユニット109の検知データを取得し、このデータに基づきピントのズレ量を算出する(ステップS110)。そして、その算出されたズレ量が許可された範囲内にあるか否かを判定し(ステップS111)、否の場合は撮影レンズ202の駆動制御を行って(ステップS112)、上記ステップS103へ戻る。
一方、許可された範囲内にズレ量が在る場合は、レリーズSWを構成するセカンドレリーズSW(2nd.レリーズSW)(不図示)がオン操作されたか否かを判定する(ステップS114)。この2nd.レリーズSWがオン状態であるときは、続くステップS115へ移行して所定の撮影動作(詳細後述)を開始するが、オフ状態であるときは上記ステップS108へ移行する。
尚、撮像動作中は、通常の撮像と同様に、露出のために予め設定された秒時(露出秒時)に対応した時間の電子撮像制御が行われる。
上記撮影動作として、ステップS115からステップS121までは、所定の順序によって被写体の撮像が行われる。まずLucom201へAv値を送信して、絞り203の駆動を指令し(ステップS115)、クイックリターンミラー105をアップ(UP)位置へ移動させる(ステップS116)。そして、シャッタ108の先幕走行を開始させて開(OPEN)制御し(ステップS117)、画像処理コントローラ126に対して「撮像動作」の実行を指令する(ステップS118)。その後、Tv値で示された時間だけのCCD117への露光(撮像)が終了すると、シャッタ108の後幕走行を開始させて閉(CLOSE)制御する(ステップS119)。そして、クイックリターンミラー105をダウン(Down)位置へ駆動すると共に、シャッタ108のチャージ動作を行う(ステップS120)。
その後、Lucom201に対して絞り203を開放位置へ復帰させるように指令して(ステップS121)、一連の撮像動作を終了する。
続いて、記録メディア127がボディユニット100に装着されているか否かを検出し(ステップS122)、否の場合は、警告表示を行う(ステップS123)。そして再び上記ステップS103へ移行して、同様な一連の処理を繰り返す。
一方、記録メディア127が装着されている場合には、画像処理コントローラ126に対して、撮影した画像データを記録メディア127へ記録するように指令する(ステップS124)。この画像データの記録動作が終了すると、再び、上記ステップS103へ移行して、同様な一連の処理を繰り返す。
以下、詳しい振動形態と表示の関係について、上述した3つのステップ(S102,S105)でコールされる「無音加振動作」サブルーチンの制御手順を図23〜図26に基づき説明する。尚、この「振動形態」とは、加振部材を構成する圧電素子120a,120bによって引き起こされる振動の形態である。
図23は、上記サブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートであり、図24〜図26は、図23のサブルーチン「無音加振動作」の各タイミングにおいて並行して実行される「加振モード表示」、「加振動作表示」、「加振終了表示」の処理をそれぞれ示すフローチャートである。図27は、振動装置の無音加振動作において、加振部材へ連続的に供給される共振周波数の波形を表わすグラフである。
図23のサブルーチン「無音加振動作」と図24〜図26の「表示動作」は、防塵フィルタ119の塵埃除去のためにだけの加振動作を目的とするルーチンであるので、振動周波数f0は、その防塵フィルタ119の共振周波数付近の所定の周波数に設定されている。例えば図6の振動モードの場合は、f0は91kHzであり、少なくとも20kHz以上の周波数の振動であるために、ユーザにとっては無音である。
まず、防塵フィルタ119を振動させるための駆動時間(Toscf0)と駆動周波数(共振周波数:Noscf0)に関するデータを、不揮発性メモリ128の所定領域に記憶されている中から読み出す(ステップS201)。このタイミングで、動作表示用LCD129あるいは動作表示用LED130に設けた表示部への加振モードの表示をオンする(ステップS301)。そして、所定時間が経過したかを判定し(ステップS302)、所定時間が経過していないときは加振モードの表示を継続し、所定時間経過後は加振モード表示をオフする(ステップS303)。
次に、Bucom101のIOポートD_NCntから、駆動周波数Noscf0を、防塵フィルタ制御回路121のN進カウンタ182へ出力する(ステップS202)。
続くステップS203〜ステップS205では、次のように塵埃除去動作が行われる。すなわち、まず塵埃除去動作の実行を開始させる。また、制御フラグP_PwContがハイレベル(High)になったタイミングで、加振動作の表示を開始させる(ステップS311)。次に、所定時間が経過したか否かを判定して(ステップS312)、所定時間が経過していないときには加振動作の表示を継続し、所定時間が経過した後は加振動作表示を終了する(ステップS313)。このときの加振動作表示は、経過時間、あるいは塵埃除去の経過状態に応じて変化する表示にすると良い(不図示)。この場合の所定時間は、後に述べる加振動作の継続時間であるToscf0に略等しい。また、塵埃除去のために制御フラグP_PwContをハイレベル(High)に設定すると(ステップS203)、圧電素子120a,120bは所定の駆動周波数(Noscf0)で防塵フィルタ119を加振し、防塵フィルタ119の表面に付着した塵埃179を振り払う。この塵埃除去動作により防塵フィルタ119の表面に付着した塵埃179が振り払われるとき、同時に、空気振動が起こり、超音波が発生する。(但し、駆動周波数Noscf0で駆動されても、人間の一般的な可聴範囲内の音にはならず、聞こえることはない)。
所定駆動時間(Toscf0)だけ防塵フィルタ119を振動させている間は待機し(ステップS204)、この所定駆動時間(Toscf0)が経過した後に、制御フラグP_PwContをローレベル(Low)に設定することで、加振終了表示をオンする(ステップS321)とともに、塵埃除去動作を停止させる(ステップS205)。加振終了表示は、所定時間が経過した後(ステップS322)にオフされ、表示が終了する(ステップS323)。その後は、コールされたステップの次のステップへリターンする。
このサブルーチンで適用される振動周波数f0(共振周波数(Noscf0))と駆動時間(Toscf0)は、図27のグラフのような波形を示す。すなわち、一定の振動(f0=91kHz)が、塵埃を除去するのに充分な時間(Toscf0)だけ続く連続的な波形となる。
つまり、この振動形態は、加振部に供給する共振周波数を調整して制御するものとなっている。
このような第1実施形態によれば、防塵部材を小型化しても、振動が正常に発生するか否かを容易かつ確実に検査することができ、検査後に特別な構成を付加しなくても製品に適用できる、塵埃除去能力の高い小型な振動装置となる。
また、振動振幅を最大にするような定在波振動を防塵部材に発生させることが可能となる。
さらに、加振部材の重量バランスが対称となるようにし、かつ、発生した定在波の振動の節に対して振動受け側である第2の加振部が非対称となるようにしたために、定在波の振動振幅に対応した電圧信号強度を確実に得ることができる。
[第2実施形態]
図28は本発明の第2実施形態を示したものであり、画像機器としてのデジタルカメラのBucomが行うカメラシーケンス(メインルーチン)においてコールされるサブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートである。
この第2実施形態において、上述の第1実施形態と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
図28に示すサブルーチンは、上記第1実施形態における図23に示すサブルーチン「無音加振動作」の動作を変更したものであり、本第2実施形態は、防塵フィルタ119の動作が、上記第1実施形態と異なる。すなわち、上記第1実施形態では、防塵フィルタ119の駆動周波数はf0と言う固定値にして定在波が発生する形態としていたが、本第2実施形態は、駆動周波数を順次変更して加えることで、厳密に駆動周波数を制御しなくても、共振周波数を含む、振動振幅の大きな振動を発生するようにしたものである。
また、図11の縦横比0.9付近では縦横比が製造バラツキで変化した場合に振動モードが大きく変化する(振動速度比が急激に減少する)ために、製品ごとに正確に共振周波数を設定して圧電素子120a,120bを駆動する必要がある(共振周波数ではない周波数で駆動すると振動速度がさらに下がる)。特にこのような構成に本第2実施形態のような周波数制御方法を適用すれば、非常に簡単な制御回路で、正確な共振周波数での駆動が可能となり、製造バラツキによる共振周波数のバラツキの影響をなくす制御が可能となる。
なお、図28のサブルーチン「無音加振動作」では、振動周波数f0は、その防塵フィルタ119の共振周波数付近の所定の周波数に設定されている。例えば図6の場合は、91kHzであり、少なくとも20kHz以上の周波数の振動であるために、ユーザにとっては無音である。
まず、防塵フィルタ119を振動させるための駆動時間(Toscf0)と駆動開始周波数(Noscfs)と周波数変移量(Δf)と駆動終了周波数(Noscft)とに関するデータを、不揮発性メモリ128の所定領域に記憶されている中から読み出す(ステップS211)。このタイミングで、図24に示したような加振モードの表示を行うことは上記第1実施形態と同様である。
次に、駆動周波数(Noscf)に駆動開始周波数(Noscfs)を設定する(ステップS212)。また、Bucom101のIOポートD_NCntから、駆動周波数(Noscf)を、防塵フィルタ制御回路121のN進カウンタ182へ出力する(ステップS213)。
続くステップS214以降では、次のように塵埃除去動作が行われる。すなわち、まず塵埃除去動作の実行を開始させる。また、このとき、図25に示したような加振動作表示を行うことは上記第1実施形態と同様である。
まず、塵埃除去のために制御フラグP_PwContをハイレベル(High)に設定すると(ステップS214)、圧電素子120a,120bは所定の駆動周波数(Noscf)で防塵フィルタ119を加振し、防塵フィルタ119に振動振幅の小さな定在波振動を生じさせる。防塵フィルタ119の表面に付着した塵埃179は振動振幅が小さいと、除去することができない。駆動時間(Toscf0)の間、この振動は継続される(ステップS215)。次に、駆動周波数(Noscf)が駆動終了周波数(Noscft)であるか否かを比較して判定し(ステップS216)、一致していなければ(NOの判定)、駆動周波数(Noscf)に周波数変移量(Δf)を加算して、再び駆動周波数(Noscf)に設定し(ステップS217)、上記ステップS212の動作から上記ステップS216までの動作を繰り返す。
そして、上記ステップS216で駆動周波数(Noscf)が駆動終了周波数(Noscft)に一致したとき(YES)には、P_PwContをローレベル(Low)に設定し、圧電素子120a,120bの加振動作が終了して(ステップS218)、一連の「無音加振動作」が終了する。また、このとき、図26に示したような加振終了表示を行うことは上記第1実施形態と同様である。
このように周波数を変更していった場合に、定在波振動の振幅が増大していく。そこで、定在波の共振周波数を通過するように駆動開始周波数(Noscfs)と周波数変移量(Δf)と駆動終了周波数(Noscft)とを設定すれば、防塵フィルタ119に振動振幅の小さな定在波振動がまず発生し、次第に定在波振動の振幅が増大していき、共振振動になった後、定在波振動振幅が再び小さくなるといった制御をすることができる。そして、所定以上の振動振幅(振動速度)があれば、塵埃179を除去することができるために、上述したような制御を行えば、ある所定の周波数範囲に渡って塵埃179を除去することが可能である。そして、本実施形態の場合には、共振時の振動振幅が大きいことからその周波数範囲も広くなる。
また、駆動開始周波数(Noscfs)と駆動終了周波数(Noscft)との間をある程度広くとれば、振動子170の温度や製造バラツキによる共振周波数の変化を吸収することが可能であり、極めて簡単な回路構成で防塵フィルタ119に付着した塵埃179を確実に振り払うことが可能となる。
さらに、この回路構成を図16の振動検出装置310の防塵フィルタ駆動回路311に適用すると良い。このようにすれば、振動子170の構成部材の材料や寸法バラツキ、組立バラツキにより発生振動モードの共振周波数が変化したとしても、振動検出電圧が最大になった周波数が共振周波数となるために、簡単に共振周波数とそのときの検出電圧を検出することができる。
このような第2実施形態によれば、上述した第1実施形態とほぼ同様の効果を奏するとともに、駆動周波数を厳密に制御する必要なく、振動振幅の大きな振動を発生することが可能となり、塵埃を確実に除去することが可能となる。また、温度変化等により駆動周波数が変化したとしても、制御方法を変えることなく、そのまま柔軟に対応することができる。
[第3実施形態]
図29は本発明の第3実施形態を示したものであり、振動検出装置の回路構成の概要を示す図である。
この第3実施形態において、上述の第1,第2実施形態と同様である部分については同一の符号を付して説明を省略し、主として異なる点についてのみ説明する。
この図29は、振動検出装置310をカメラに組み込んだ場合の回路構成を示したものとなっている。図29に示す構成において、図16に示す構成と異なるのは、図16のフレキ157に設けられた接続端子157j,157kの代わりに、スイッチ313を設けた点である。なお、スイッチ313としては、機械的なスイッチでも良いし、トランジスタ等の電気的なスイッチあっても構わない。このように構成すると、第1実施形態においては回路の接続/非接続を半田付けするか否かにより設定していたのに対して、より簡単に、かつ所望に、接続/非接続の設定を制御することが可能となる。
このような構成を採用すれば、防塵フィルタ駆動回路311により両方の圧電素子120a,120bを駆動する状態と、防塵フィルタ駆動回路311により一方の圧電素子120bを駆動しながら電圧検出回路312により他方の圧電素子120aの電圧を検出する状態と、を簡単に切り替えることが可能となる。
従って、電圧検出回路312により検出した振動電圧から共振周波数を推定し、推定した共振周波数を利用すれば、第1実施形態の回路によりカメラ個別に周波数を設定することが可能となる。
また、検出した電圧レベルから、振動が適切であるか否か、あるいは振動装置が正常であるか否かを判定することもできる。
このような第3実施形態によれば、上述した第1,第2実施形態とほぼ同様の効果を奏するとともに、振動装置をカメラに組み込んだ後にも、振動子170の検査を所望かつ容易に行うことが可能となる。
なお、上述した各実施形態においては、加振部材による塵埃除去機構を示した。しかしこれのみに限らず、空気流によって防塵フィルタ119に付着した塵埃179を除去する機構、あるいはワイパーによって防塵フィルタ119に付着した塵埃179を除去する機構などを、加振部材による塵埃除去機構に組み合わせて用いるようにしても構わない。
また、上述した各実施形態においては、加振部材として圧電素子を用いていたが、これに代えて、電歪材料や超磁歪材を用いても勿論良い。
また、上述では、位相角γを、γ=π/4あるいはγ=−π/8〜−π/4としたが、正確にその値でなければならないわけではなく、若干のズレがあっても振動振幅を大きくすることは可能である。
例えば、図15は、γ=+π/4から少し小さい側になった場合の振動モードを示す図であり、この振動モードにおいても、振動振幅の山の稜線174が光軸中心に対して閉曲線を構成し、振動子170の中央位置のZ方向の振動速度が大きくなっている。なお、この図15において、防塵フィルタ119は30.8mm(X方向:LA,LF)×28.5mm(Y方向:LB)×0.65mm(厚さ)の板ガラスであり、圧電素子120a,120bは各々30mm(X方向:LP)×3mm(Y方向)×0.8mm(厚さ)のチタン酸ジルコン酸鉛のセラミックである。このように圧電素子120a,120bは、防塵フィルタ119のX方向の辺長さLFとほぼ同じX方向長さを有するように形成されている。そして、圧電素子120a,120bは、防塵フィルタ119の上下の辺に沿って、X方向が防塵フィルタ119の中心線に対して左右対称となるように、エポキシ系の接着剤を用いて接着固定されている。このような振動子に図15に示すような振動モードの振動が発生しているときの共振周波数は、68kHz付近となっている。
なお、図15に示す防塵フィルタ119の縦横比は0.925、防塵フィルタ119のX方向長さに対する圧電素子120a,120bのX方向長さの比は0.974である。この構成は、防塵フィルタ119に対する圧電素子120a,120bの長さ比が1に近く、振動モードの節エリア173は矩形網目状の形態(図9参照)にかなり近くなっており、振動速度比は0.7程度となっている。これは、振動速度を、塵埃179を除去し得る所定レベル以上に保つための限界に近い。
また、この図15の場合も、図2、図3と同様に、防塵フィルタ119の支持はシール156のリップ部156aによりなされている。また、外力が加わった場合の支持部材として、4つの受部153がホルダ145に設置されている。
加振する対象は、上述したような防塵フィルタ119に限るものではなく、光路上に存在する光の透過性をもった部材(例えば、光学ローパスフィルタ(LPF)、赤外カットフィルタ、偏光フィルタ、ハーフミラー等)の何れかであっても構わないことを記載したが、加振する対象となる部材は、表面に付着している塵埃179を振動によって振り払う必要があるために、充分な振動加速度を発生し得る程度に軽量で肉薄であり、さらに、振動に耐え得る剛性を備えていることなどが必要である。また、振動に係る周波数や駆動時間、加振部材の設置位置などは、加振する対象となる部材に対応した値に設定することはもちろんである。
また、振動の際、加振する対象部材に付着している塵をより効率よく振り落とせるよう、その表面に、例えば、透明導電膜であるITO(酸化インジウム・錫)膜、インジウム亜鉛膜、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン膜、吸湿型静電気防止膜である界面活性剤膜、シロキサン系膜、等をコーティング処理しても良い。但し、振動に係わる周波数や駆動時間、振動吸収部材の設置位置などはその部材に対応した値に設定する必要がある。
また、本願の1実施例として記載した光学ローパスフィルタ(LPF)118を、複屈折性を有する複数枚の光学ローパスフィルタ(LPF)として構成し、複数枚に構成した光学ローパスフィルタ(LPF)のうちの最も被写体側に配置された光学ローパスフィルタ(LPF)を、図2に記載した防塵フィルタ119の代わりに防塵部材(加振対象)として使用しても良い。
また、本願の1実施例として図2に記載した光学ローパスフィルタ(LPF)118を有さないカメラとし、防塵フィルタ119自体が光学ローパスフィルタ(LPF)を兼ねるようにしても良い。あるいは、防塵フィルタ119として、例えば、赤外カットフィルタ、偏光フィルタ、ハーフミラー等の防塵部材のいずれかを使用するようにしても良い。
また、上記光学ローパスフィルタ(LPF)118を有さないカメラとするだけでなく、防塵フィルタ119の機能を、図2に記載の保護ガラス142に兼ねさせる構成としても良い。この場合、保護ガラス142とCCDチップ136との防塵・防湿状態を維持するようにするとともに、保護ガラス142を支持しつつ振動させる構成として、図2に記載の防塵フィルタ119を支持しつつ振動させる構成を利用すれば良い。尚、保護ガラス142は、光学ローパスフィルタ(LPF)、赤外カットフィルタ、偏光フィルタ、ハーフミラー等の防塵部材のいずれかを兼ねるようにしても良いのはいうまでもない。
そして、上述においては、画像機器として撮像装置(デジタルカメラ)を例に挙げて、撮像素子の前面に塵埃を除去するための振動装置を配置したが、これに限るものではない。例えば、画像機器としての画像投影装置の場合には、液晶等の表示素子と光源の間、あるいは表示素子と投影レンズとの間に振動装置を配置することが考えられる。さらに、これらの例に限らず、塵埃除去を必要とする画像機器に対して、広く適用することができる。
加えて、上述では、対称軸を挟んで一対の圧電素子を設けているが、複数対の圧電素子を設けても構わない。
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。このように、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることは勿論である。