以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
1.プロジェクタの光学系
図1は、本発明の一実施例としてのプロジェクタ500を示す説明図である。プロジェクタ500は、光源装置200と、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、3つの液晶ライトバルブ330R、330G、330Bと、クロスダイクロイックプリズム340と、投写光学系350とを有している。
光源装置200は、光源ユニット210と、放電灯点灯装置10と、を有している。光源ユニット210は、主反射鏡112と放電灯90とを有している。放電灯点灯装置10は、放電灯90に電力を供給して、放電灯90を点灯させる。主反射鏡112は、放電灯90から放出された光を、照射方向Dに向けて反射する。照射方向Dは、光軸AXと平行である。光源ユニット210からの光は、平行化レンズ305を通過して照明光学系310に入射する。この平行化レンズ305は、光源ユニット210からの光を、平行化する。
照明光学系310は、光源装置200からの光の照度を液晶ライトバルブ330R、330G、330Bにおいて均一化する。また、照明光学系310は、光源装置200からの光の偏光方向を一方向に揃える。この理由は、光源装置200からの光を液晶ライトバルブ330R、330G、330Bで有効に利用するためである。照度分布と偏光方向とが調整された光は、色分離光学系320に入射する。色分離光学系320は、入射光を、赤(R)、緑(G)、青(B)の3つの色光に分離する。3つの色光は、各色に対応付けられた液晶ライトバルブ330R、330G、330Bによって、それぞれ変調される。液晶ライトバルブ330R、330G、330Bは、液晶パネル560R、560G、560Bと、液晶パネル560R、560G、560Bのそれぞれの光入射側および出射側に配置される偏光板を備える。変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム340によって合成される。合成光は、投写光学系350に入射する。投写光学系350は、入射光を、図示しないスクリーンに投写する。これにより、スクリーン上には画像が表示される。
なお、平行化レンズ305と、照明光学系310と、色分離光学系320と、クロスダイクロイックプリズム340と、投写光学系350とのそれぞれの構成としては、周知の種々の構成を採用可能である。
図2は、光源装置200の構成を示す説明図である。光源装置200は、光源ユニット210と放電灯点灯装置10とを有している。図中には、光源ユニット210の断面図が示されている。光源ユニット210は、主反射鏡112と放電灯90と副反射鏡50とを有している。
放電灯90の形状は、第1端部90e1から第2端部90e2まで、照射方向Dに沿って延びる棒形状である。放電灯90の材料は、例えば、石英ガラス等の透光性材料である。放電灯90の中央部は球状に膨らんでおり、その内には、放電空間91が形成されている。放電空間91内には、希ガス、金属ハロゲン化合物等を含む放電媒体であるガスが封入されている。
また、放電空間91内には、2つの電極92、93が、放電灯90から突出している。第1電極92は、放電空間91の第1端部90e1側に配置され、第2電極93は、放電空間91の第2端部90e2側に配置されている。これらの電極92、93の形状は、光軸AXに沿って延びる棒形状である。放電空間91内では、各電極92、93の電極先端部(「放電端」とも呼ぶ)が、所定距離だけ離れて向かい合っている。なお、これらの電極92、93の材料は、例えば、タングステン等の金属である。
放電灯90の第1端部90e1には、第1端子536が設けられている。第1端子536と第1電極92とは、放電灯90の内部を通る導電性部材534によって電気的に接続されている。同様に、放電灯90の第2端部90e2には、第2端子546が設けられている。第2端子546と第2電極93とは、放電灯90の内部を通る導電性部材544によって電気的に接続されている。各端子536、546の材料は、例えば、タングステン等の金属である。また、各導電性部材534、544としては、例えば、モリブデン箔が利用される。
これらの端子536、546は、放電灯点灯装置10に接続されている。放電灯点灯装置10は、これらの端子536、546に、交流電流を供給する。その結果、2つの電極92、93の間でアーク放電が起きる。アーク放電により発生した光(放電光)は、破線の矢印で示すように、放電位置から全方向に向かって放射される。
放電灯90の第1端部90e1には、固定部材114によって、主反射鏡112が固定されている。主反射鏡112の反射面(放電灯90側の面)の形状は、回転楕円形状である。主反射鏡112は、放電光を照射方向Dに向かって反射する。なお、主反射鏡112の反射面の形状としては、回転楕円形状に限らず、放電光を照射方向Dに向かって反射するような種々の形状を採用可能である。例えば、回転放物線形状を採用してもよい。この場合は、主反射鏡112は、放電光を、光軸AXにほぼ平行な光に変換することができる。従って、平行化レンズ305を省略することができる。
放電灯90の第2端部90e2側には、固定部材522によって、副反射鏡50が固定されている。副反射鏡50の反射面(放電灯90側の面)の形状は、放電空間91の第2端部90e2側を囲む球面形状である。副反射鏡50は、放電光を、主反射鏡112に向かって反射する。これにより、放電空間91から放射される光の利用効率を高めることができる。
なお、固定部材114、522の材料としては、放電灯90の発熱に耐える任意の耐熱材料(例えば、無機接着剤)を採用可能である。また、主反射鏡112及び副反射鏡50と放電灯90との配置を固定する方法としては、主反射鏡112及び副反射鏡50を放電灯90に固定する方法に限らず、任意の方法を採用可能である。例えば、放電灯90と主反射鏡112とを、独立に、プロジェクタの筐体(図示せず)に固定してもよい。副反射鏡50についても同様である。
2.第1の実施の形態に係る放電灯点灯装置
(1)放電灯点灯装置の回路構成例
図3は、本実施の形態に係る放電灯点灯装置の回路図の一例である。
放電灯点灯装置10は、電力制御回路20を含む。電力制御回路20は、放電灯90に供給する駆動電力を制御する。本実施の形態においては、電力制御回路20は、直流電源80を入力とし、当該入力電圧を降圧して直流電流Idを出力するダウンチョッパー回路で構成されている。
電力制御回路20は、スイッチ素子21、ダイオード22、コイル23及びコンデンサ24を含んで構成されてもよい。スイッチ素子21は、例えばトランジスタで構成されてもよい。本実施の形態においては、スイッチ素子21の一端は直流電源80の正電圧側に接続され、他端はダイオード22のカソード端子及びコイル23の一端に接続されている。また、コイル23の他端にはコンデンサ24の一端が接続され、コンデンサ24の他端はダイオード22のアノード端子及び直流電源80の負電圧側に接続されている。スイッチ素子21の制御端子には制御手段40から電流制御信号が入力されてスイッチ素子21のON/OFFが制御される。電流制御信号には、例えばPWM制御信号が用いられてもよい。
ここで、スイッチ素子21がONすると、コイル23に電流が流れ、コイル23にエネルギーが蓄えられる。その後、スイッチ素子21がOFFすると、コイル23に蓄えられたエネルギーがコンデンサ24とダイオード22とを通る経路で放出される。その結果、スイッチ素子21がONする時間の割合に応じた直流電流Idが発生する。
放電灯点灯装置10は、交流変換回路30を含む。交流変換回路30は、電力制御回路20から出力される直流電流Idを入力し、所与のタイミングで極性反転することにより、任意の周波数及びデューティ比をもつ放電灯駆動用の駆動電流を生成出力する。デューティ比は、第1極性と第2極性に反転する放電灯駆動用の交流電流Iの1周期に占める第1極性の時間の割合である。本実施の形態においては、交流変換回路30はインバータブリッジ回路(フルブリッジ回路)で構成されている。
交流変換回路30は、例えば、トランジスタなどの第1乃至第4のスイッチ素子31乃至34を含んで構成され、直列接続された第1及び第2のスイッチ素子31及び32と、直列接続された第3及び第4のスイッチ素子33及び34を、互いに並列接続して構成される。第1乃至第4のスイッチ素子31乃至34の制御端子には、それぞれ制御手段40から周波数制御信号が入力され、第1乃至第4のスイッチ素子31乃至34のON/OFFが制御される。
交流変換回路30は、第1及び第4のスイッチ素子31及び34と、第2及び第3のスイッチ素子32及び33を交互にON/OFFを繰り返すことにより、電力制御回路20から出力される直流電流Idの極性を交互に反転し、第1及び第2のスイッチ素子31及び32の共通接続点及び第3及び第4のスイッチ素子33及び34の共通接続点から、制御された周波数及びデューティ比をもった放電灯駆動用の交流電流Iを生成出力する。
すなわち、第1及び第4のスイッチ素子31及び34がONの時には第2及び第3のスイッチ素子32及び33をOFFにし、第1及び第4のスイッチ素子31及び34がOFFの時には第2及び第3のスイッチ素子32及び33をONにするように制御する。従って、第1及び第4のスイッチ素子31及び34がONの時には、コンデンサ24の一端から第1のスイッチ素子31、放電灯90、第4のスイッチ素子34の順に流れる放電灯駆動用の交流電流Iが発生する。また、第2及び第3のスイッチ素子32及び33をONの時には、コンデンサ24の一端から第3のスイッチ素子33、放電灯90、第2のスイッチ素子32の順に流れる放電灯駆動用の交流電流Iが発生する。
放電灯点灯装置10は、制御手段40を含む。制御手段40は、電力制御回路20及び交流変換回路30を制御することにより、放電灯駆動用の交流電流Iの電流値、周波数、デューティ比及び波形を制御する。制御手段40は、交流変換回路30に対して放電灯駆動用の交流電流Iの極性反転タイミングにより周波数及びデューティ比を制御する交流変換制御処理を行うとともに、電力制御回路20に対して、極性反転タイミング区間ごとに、出力される直流電流Idの電流値を制御する区間電流制御処理を行う。ここで、極性反転区間とは、時間的に隣接する極性反転タイミング同士の間の時間である。すなわち、放電灯駆動用の交流電流Iの1周期には2つの極性反転タイミング区間が含まれる。
また、制御手段40は、後述する動作検出部の出力を基に、放電灯90におけるフリッカの発生有無及びフリッカ発生電極を判定してもよい。
制御手段40の構成は、特に限定されるものではないが、本実施の形態においては、制御手段40は、システムコントローラ41、電力制御回路コントローラ42及び交流変換回路コントローラ43含んで構成されている。なお、制御手段40は、その一部又は全てを半導体集積回路で構成してもよい。
システムコントローラ41は、電力制御回路コントローラ42及び交流変換回路コントローラ43を制御することにより、電力制御回路20及び交流変換回路30を制御する。システムコントローラ41は、後述する放電灯点灯装置10内部に設けた動作検出部60により検出した放電灯駆動電圧及び放電灯駆動用の交流電流Iに基づき、電力制御回路コントローラ42及び交流変換回路コントローラ43を制御してもよい。
本実施の形態においては、システムコントローラ41は記憶部44を含んで構成されている。なお、記憶部44は、システムコントローラ41とは独立に設けてもよい。
システムコントローラ41は、記憶部44に格納された情報に基づき、電力制御回路20及び交流変換回路30を制御してもよい。記憶部44には、例えば放電灯駆動用の交流電流Iの電流値、周波数、デューティ比及び波形に関する情報が格納されていてもよい。
電力制御回路コントローラ42は、システムコントローラ41からの制御信号に基づき、電力制御回路20へ電流制御信号を出力することにより、電力制御回路20を制御する。
交流変換回路コントローラ43は、システムコントローラ41からの制御信号に基づき、交流変換回路30へ反転制御信号を出力することにより、交流変換回路30を制御する。
放電灯点灯装置10は、動作検出部60を含んでもよい。動作検出部60は、放電灯90の動作、例えば放電灯の放電灯駆動電圧や放電灯駆動用の交流電流Iを検出し、駆動電圧情報や駆動電流情報を出力してもよい。本実施の形態においては、動作検出部60は、第1乃至第3の抵抗61乃至63を含んで構成されている。
動作検出部60は、放電灯90と並列に、互いに直列接続された第1及び第2の抵抗61及び62で分圧した電圧により放電灯駆動電圧を検出し、放電灯90に直列に接続された第3の抵抗63に発生する電圧により放電灯駆動用の交流電流Iを検出している。
放電灯点灯装置10は、イグナイタ回路70を含んでもよい。イグナイタ回路70は、放電灯90の点灯開始時にのみ動作し、放電灯90の点灯開始時に放電灯90の電極間を絶縁破壊して放電路を形成するために必要な高電圧(通常制御動作時よりも高い電圧)を放電灯90の電極間に供給する。本実施の形態においては、イグナイタ回路70は、放電灯90と並列に接続されている。
図4(A)〜4(D)は、放電灯90に供給する駆動電力の極性と電極の温度との関係を示す説明図である。図4(A)、図4(B)は、2つの電極92、93の動作状態を示している。図中には、2つの電極92、93の先端部分が示されている。電極92、93の先端には突起552p、562pがそれぞれ設けられている。放電は、これらの突起552p、562pの間で生じる。本実施例では、突起が無い場合と比べて、各電極92、93における放電位置(アーク位置)の移動を抑えることができる。ただし、このような突起を省略してもよい。
図4(A)は、第1電極92が陽極として動作し、第2電極93が陰極として動作する第1極性状態P1を示している。第1極性状態P1では、放電によって、第2電極93(陰極)から第1電極92(陽極)へ電子が移動する。陰極(第2電極93)からは、電子が放出される。陰極(第2電極93)から放出された電子は、陽極(第1電極92)の先端に衝突する。この衝突によって熱が生じ、そして、陽極(第1電極92)の先端(突起552p)の温度が上昇する。
図4(B)は、第1電極92が陰極として動作し、第2電極93が陽極として動作する第2極性状態P2を示している。第2極性状態P2では、第1極性状態P1とは逆に、第1電極92から第2電極93へ電子が移動する。その結果、第2電極93の先端(突起562p)の温度が上昇する。
このように、陽極の温度は、陰極と比べて高くなりやすい。ここで、一方の電極の温度が他方の電極と比べて高い状態が続くことは、種々の不具合を引き起こし得る。例えば、高温電極の先端が過剰に溶けた場合には、意図しない電極変形が生じ得る。その結果、アーク長が適正値からずれる場合がある。また、低温電極の先端の溶融が不十分な場合には、先端に生じた微少な凹凸が溶けずに残り得る。その結果、いわゆるアークジャンプが生じる場合がある(アーク位置が安定せずに移動する)。
このような不具合を抑制する技術として、各電極の極性を繰り返し交替させる交流駆動を利用可能である。図4(C)は、放電灯90(図2)に供給される交流電力(駆動信号)を示すタイミングチャートである。横軸は時間Tを示し、縦軸は電流Iを示している。電流Iは、放電灯90を流れる電流を示す。正値は、第1極性状態P1を示し、負値は、第2極性状態P2を示す。図4(C)の例では、矩形波交流電流が利用されている。そして、第1極性状態P1と第2極性状態P2とが交互に繰り返される。ここで、第1極性区間Tpは、第1極性状態P1が続く時間を示し、第2極性区間Tnは、第2極性状態P2が続く時間を示す。また、第1極性区間Tpの平均電流値は+A0であり、第2極性区間Tnの平均電流値は−A0である。なお、駆動周波数は、放電灯90の特性に合わせて、実験的に決定可能である(例えば、30Hz〜1kHzの範囲の値が採用される)。他の値+A0、−A0、Tp、Tnも、同様に実験的に決定可能である。
図4(D)は、第1電極92の温度変化を示すタイミングチャートである。横軸は時間Tを示し、縦軸は温度Hを示している。第1極性状態P1では、第1電極92の温度Hが上昇し、第2極性状態P2では、第1電極92の温度Hが降下する。また、第1極性状態P1と第2極性状態P2状態が繰り返されるので、温度Hは、最小値Hminと最大値Hmaxとの間で周期的に変化する。なお、図示は省略するが、第2電極93の温度は、第1電極92の温度Hとは逆位相で変化する。すなわち、第1極性状態P1では、第2電極93の温度が降下し、第2極性状態P2では、第2電極93の温度が上昇する。
第1極性状態P1では、第1電極92(突起552p)の先端が溶融するので、第1電極92(突起552p)の先端が滑らかになる。これにより、第1電極92での放電位置の移動を抑制できる。また、第2電極93(突起562p)の先端の温度が降下するので、第2電極93(突起562p)の過剰な溶融が抑制される。これにより、意図しない電極変形を抑制できる。第2極性状態P2では、第1電極92と第2電極93の立場が逆である。従って、2つの状態P1、P2を繰り返すことによって、2つの電極92、93のそれぞれにおける不具合を抑制できる。
ここで、電流Iの波形が対称である場合、すなわち、電流Iの波形が「|+A0|=|−A0|、Tp=Tn」という条件を満たす場合には、2つの電極92、93の間で、供給される電力の条件が同じである。従って、2つの電極92、93の間の温度の差が小さくなると推定される。ところが、このような対称の電流波形での駆動を維持し続けると、放電空間91内に定常的な対流が発生し電極の軸部の局所に電極材料が堆積或いは偏析して針状に成長し、放電空間91を包囲する透光性材料の壁面に向けて意図しない放電が生じる可能性がある。このような意図しない放電は、当該内壁を劣化させ、放電灯90の寿命を低下させる原因となる。また、このような対称の電流波形での駆動を維持し続けると、電極が一定の温度分布で長時間持続されるため、経時的な状態変化に伴って生じた電極の非対称性が、時間と共により助長される方向に向かう。
(2)放電灯点灯装置の制御例
次に、本実施の形態に係る放電灯点灯装置10の制御の具体例について説明する。
本実施の形態に係る放電灯点灯装置10の制御手段40は、所与のタイミングで放電灯駆動用の交流電流の1周期中に放電灯の各電極に供給される累積エネルギーを周期的なパターンで変化させる補修制御を行う。この周期的なパターンは、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯の各電極に供給される累積エネルギーを同一値に維持する区分期間を複数含み、これらの区分期間のうち少なくとも2つの区分期間で放電灯の各電極に供給される累積エネルギーが互いに異なるパターンである。
なお、累積エネルギーは、各電極が陽極になっている期間に、放電灯点灯装置から供給される電力量に相当するエネルギーである。また、所与のタイミングは、例えば、定期的なタイミングであっても、フリッカ発生を検出したタイミングであってもよい。
この制御によれば、所与のタイミングで補修制御を行うため、常に放電灯駆動用の交流電流の1周期中に放電灯の各電極に供給される累積エネルギーを周期的なパターンで変化させる制御に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
また、補修制御時においては、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを同一値に維持する区分期間を複数含んだ周期的なパターンで、1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させている。このため、複数の区分期間を有する周期的なパターンにおいて交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させつつも、少なくともひとつの区分期間中において交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを一時的に固定することができる。
つまり、両電極及びその周辺の熱的状態を比較的長いタイムスケールで大きく変動させることができる。したがって、電極温度を適切に変動し、電極の偏った消耗や電極材料の偏った析出を防止することができる。また、補修制御により、電極の不要な突起を溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を抑制することができる。
放電灯駆動用の交流電流Iの1周期中に各電極に供給される累積エネルギーは、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比で制御してもよいし、放電灯駆動用の交流電流Iの電流値で制御してもよい。
各電極に供給される累積エネルギーを、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比で制御する場合について、図1乃至図11を参照して説明する。
この場合、制御手段40は、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を周期的なパターンで変化させる交流変換制御処理を行う補修制御を行う。この周期的なパターンは、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比が同一値に維持される区分期間を複数含み、区分期間のうち少なくとも2つの区分期間における放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比が互いに異なるパターンである。
ここで、放電灯90の第1電極が陽極になる場合を、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性とし、デューティ比は、第1極性と第2極性に反転する放電灯駆動用の交流電流の1周期に占める第1極性の時間の割合とする。
図5は、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を変化させる周期的なパターンの一例である。横軸は時間、縦軸はデューティ比を示している。
図5に示す例では、制御手段40は、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比が同一値に維持される区分期間を周期的なパターンの1周期Taの期間中に11の区分期間(区分期間D1乃至D11)の11期間を含み、段階的にデューティ比を変化させる交流変換制御処理を行う補修制御行っている。すなわち、区分期間とは、放電灯駆動用の交流電流Iの1周期単位で見ると、同一の交流変換制御処理が継続する期間である。本実施の形態においては、区分期間D1乃至D11の1区分期間当たりの長さは、4秒間としている。
なお、本実施の形態においては、補修制御は定期的なタイミング(例えば、360秒ごとのタイミング)で行っている。
また、図5に示す例では、補修制御時以外においては、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比は50%で固定している。補修制御が開始されると、区分期間D1ではデューティ比を60%とし、その後10%刻みでデューティ比を上げ、区分期間D3ではデューティ比を最大の80%としている。さらにその後10%刻みでデューティ比を下げ、区分期間D9ではデューティ比を最小の20%としている。またさらにその後10%刻みでデューティ比を上げ、周期Taでデューティ比の増減を繰り返す。
なお、放電灯90が、2つの電極92,93の一方の電極が他方の電極より動作中の温度が高くなる条件を備えている場合は、補修制御時以外において、他方の電極が一方の電極より温度が上がりやすいようにデューティ比を設定してもよい。例えば、図2に示される光源ユニット110のように、放電空間91の第2端部90e2側を副反射鏡50で囲まれている放電灯90の場合、放電空間91の第2端部90e2側からの放熱が少ないので、第1電極92に比べて第2電極93の温度が高くなりやすい場合がある。このような場合は、補修制御時以外においては、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を60%で固定してもよい。
なお、図5に示す例では、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を変化させる周期的なパターンが1周期Ta分のみ含まれる補修制御を行っているが、周期的なパターンを複数周期分含んだ補修制御を行ってもよい。
図6(a)乃至図6(c)は、補修制御時において図5に示す周期的なパターンでデューティ比を変化させた場合の、放電灯駆動用の交流電流Iの波形推移を示した図である。横軸は時間、縦軸は電流値を示す。本実施の形態においては、第1極性時の平均電流値を+A0、第2極性時の平均電流値を−A0となるように、電流制御処理を行っている。
図6(a)は、図5における区分期間D1から区分期間D4までに亘る交流電流Iの波形推移を示す。区分期間D1ではデューティ比60%の電流波形が継続する。区分期間D2になると、デューティ比70%の電流波形に変化し、区分期間D2の間継続する。区分期間D3になると、デューティ比80%の電流波形に変化し、区分期間D3の間継続する。区分期間D4になると、デューティ比70%の電流波形に変化し、区分期間D4の間継続する。
図6(b)は、図5における区分期間D5から区分期間D8までに亘る交流電流Iの波形推移を示す。区分期間D5ではデューティ比60%の電流波形が継続する。区分期間D6になると、デューティ比50%の電流波形に変化し、区分期間D6の間継続する。区分期間D7になると、デューティ比40%の電流波形に変化し、区分期間D7の間継続する。区分期間D8になると、デューティ比30%の電流波形に変化し、区分期間D8の間継続する。
図6(c)は、図5における区分期間D9から区分期間D11までに亘る交流電流Iの波形推移を示す。区分期間D9ではデューティ比20%の電流波形が継続する。区分期間D10になると、デューティ比30%の電流波形に変化し、区分期間D10の間継続する。区分期間D11になると、デューティ比40%の電流波形に変化し、区分期間D11の間継続する。
この制御によれば、所与のタイミングで補修制御を行うため、常に放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を周期的なパターンで変化させる制御に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
また、補修制御時においては、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を同一値に維持する区分期間を複数含んだ周期的なパターンで、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を変化させている。このため、複数の区分期間を有する周期的なパターンにおいて交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させつつも、少なくともひとつの区分期間中において交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを一時的に固定することができる。
つまり、両電極及びその周辺の熱的状態を比較的長いタイムスケールで大きく変動させることができる。よって、電極温度を適切に変動し、電極の偏った消耗や電極材料の偏った析出を防止することができる。また、補修制御により、電極の不要な突起を溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を抑制することができる。
〔第1の変形例〕
上述の実施の形態においては、制御手段40は、補修制御時以外の場合において、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を固定して制御していたが、制御手段40は、補修制御時以外の場合において、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を上述とは別の周期的なパターンで制御する定常制御を行ってもよい。その際は、補修制御時においては、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比の最大値及び最小値の差が定常制御時におけるそれらの差よりも大きい周期的なパターンで制御してもよい。
図7は、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を変化させる補修制御時の周期的なパターンの1周期Taと定常制御時の周期的なパターンの1周期Tbとの一例である。横軸は時間、縦軸はデューティ比を示している。
図7に示す例では、制御手段40は、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比が同一値に維持される区分期間を1周期Taの期間中に12の区分期間(区分期間D1乃至D12)を含み、1周期Taの周期的なパターンで段階的にデューティ比を変化させる交流変換制御処理を行う補修制御行っている。本実施の形態においては、区分期間D1乃至D12の1区分期間当たりの長さは、4秒間としている。
また、制御手段40は、補修制御時以外の場合において、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比が同一値に維持される区分期間を1周期Tbの期間中に4つの区分期間(区分期間S1乃至S4)を含み、1周期Tbの周期的なパターンで段階的にデューティ比を変化させる交流変換制御処理を行う定常制御行っている。本実施の形態においては、区分期間S1乃至S4の1区分期間当たりの長さは、4秒間としている。
補修制御時においては、区分期間D1ではデューティ比を60%とし、その後10%刻みでデューティ比を上げ、区分期間D3ではデューティ比を最大の80%としている。さらにその後10%刻みでデューティ比を下げ、区分期間D9ではデューティ比を最小の20%としている。またさらにその後10%刻みでデューティ比を上げ、周期Taでデューティ比の増減を繰り返す。
定常制御時においては、区分期間S1ではデューティ比を最大の60%とし、その後10%刻みでデューティ比を下げ、区分期間S3ではデューティ比を最小の40%としている。またさらにその後10%刻みでデューティ比を上げ、周期Tbでデューティ比の増減を繰り返す。
このような制御により、定常制御時においては補修制御時に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
また、定常制御時においても、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を同一値に維持する区分期間を複数含んだ周期的なパターンで、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を変化させているため、複数の区分期間を有する周期的なパターンにおいて交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させつつも、少なくともひとつの区分期間中において交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを一時的に固定することができる。したがって、定常駆動時においても、両電極及びその周辺の熱的状態を比較的長いタイムスケールで大きく変動させることができる。これにより、電極温度が適切に変動し、両電極が偏って消耗することや、電極材料が偏って析出することを抑えることができる。
さらに、補修制御により、定常制御時に溶融させることができなかった電極の不要な突起を溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を防止することができる。
〔第2の変形例〕
上述の実施の形態においては、制御手段40は、定期的なタイミングで補修制御を行っていたが、放電灯駆動電圧に基づきフリッカ検出を行うフリッカ検出手段を含み、制御手段40は、フリッカ検出手段のフリッカ検出タイミングに基づき補修制御を行ってもよい。
また例えば、制御手段40は、フリッカ検出手段のフリッカ検出タイミングに基づきフリッカ発生電極を判定し、フリッカ発生電極が陽極になる時間が長くなるようにデューティ比を周期的なパターンで変化させる補修制御を行ってもよい。
フリッカ検出手段は、制御手段40と動作検出部60を組み合わせて実現してもよい。この場合、例えば、動作検出部60が出力する放電灯90の駆動電圧情報に基づき、放電灯90の駆動電圧が所定範囲から外れた場合に、放電灯90においてフリッカが発生したものと判定してもよい。
また、制御手段40は、フリッカ検出タイミングにおいて、陰極になっている電極をフリッカ発生電極と判定してもよい。
図8(a)及び図8(b)は、上述したフリッカ発生の判定方法とフリッカ発生電極の判定方法の例を説明するための図である。図8(a)は、放電灯90の駆動電圧をデジタルサンプリングした結果の一例を示したグラフである。横軸は時間、縦軸は放電灯90の駆動電圧を示す。また、フリッカの発生がない状態での放電灯90の駆動電圧は、V0からV1の範囲(所定範囲)にあるものとする。
図8(b)は、図8(a)に対応した放電灯90の駆動電流を示したグラフである。横軸は時間、縦軸は放電灯90の駆動電流を示す。また、放電灯90の第1電極が陽極、第2電極が陰極となる場合の放電灯90の駆動電流を+A0、放電灯90の第2電極が陽極、第1電極が陰極となる場合の放電灯90の駆動電流を−A0とする。
図8(a)において、測定点Aにおける放電灯90の駆動電圧がV0からV1の範囲から外れている。したがって、制御手段40は、測定点Aのタイミングで放電灯90にフリッカが発生したものと判断する。
測定点Aのタイミングのとき、図8(b)において、放電灯90の駆動電流は、放電灯90の第2電極が陽極、第1電極が陰極となっているので、制御手段40は、フリッカ発生電極は第1電極であるものと判定する。
図9は、本変形例における制御のフローを示すフローチャートの一例である。
まず、動作検出部60が放電灯90の駆動電圧を検出し、制御手段40が、動作検出部60が出力する放電灯90の駆動電圧情報を取得する(ステップS100)。次に、制御手段40は、放電灯90の駆動電圧が所定範囲内にあるか否かを判定する(ステップS102)。放電灯90の駆動電圧が所定範囲内にある場合には、制御手段40は、定常制御を行う(ステップS110)。
放電灯90の駆動電圧が所定範囲内にない場合には、フリッカが発生しているものと判断し、制御手段40は、フリッカ発生電極が第1電極であるか否かを判定する(ステップS104)。制御手段40は、フリッカ発生電極が第1電極である場合には、第1電極用補修制御を行い(ステップS106)、フリッカ発生電極が第1電極ではない場合には、第2電極用補修制御を行う(ステップS108)。
このような制御フローを、順次繰り返し行ってもよいし、所定期間ごとに繰り返し行ってもよい。
なお、本変形例では、フリッカ発生電極の判定を行って第1電極用補修制御と第2電極用補修制御とを分けて行っているが、フリッカ発生電極の判定を行わず、フリッカ発生時には同一の補修制御を行う構成としてもよい。
図10は、放電灯90の第1電極でフリッカが発生した場合(すなわち、第1電極用補修制御の場合)での、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を変化させる周期的なパターンの一例である。横軸は時間、縦軸はデューティ比を示している。区分期間D1乃至D5において、制御手段40は、フリッカ発生電極である第1電極の陽極時間が長くなるようにデューティ比を周期的なパターンで制御する交流変換制御処理を行っている(第1電極用補修制御)。
このように、フリッカ発生電極である第1電極の陽極時間が長くなるようにデューティ比を周期的なパターンで制御することにより、フリッカが発生していない電極、すなわち、消耗していない電極に対する熱負荷を低減することができる。またフリッカ発生電極については、補修制御により、電極の不要な突起を溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を抑制することができる。
なお、放電灯90の第2電極でフリッカが発生した場合(すなわち、第2電極用補修制御の場合)には、制御手段40は、フリッカ発生電極である第2電極の陽極時間が長くなるようにデューティ比を周期的なパターンで制御する交流変換制御処理を行う(第2電極用補修制御)。
本変形例に加えて、制御手段40は、補修制御時以外の場合において、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を周期的なパターンで制御する定常制御を組み合わせることも可能である。
このような制御により、フリッカが発生していない電極、すなわち、消耗していない電極に対する熱負荷を低減することができることに加え、定常制御時においては補修制御時に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
また、定常制御時においても、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を同一値に維持する区分期間を複数含んだ周期的なパターンで、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を変化させているため、複数の区分期間を有する周期的なパターンにおいて交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させつつも、少なくともひとつの区分期間で一時的に固定することができる。したがって、定常駆動時においても、両電極及びその周辺の熱的状態を比較的長いタイムスケールで大きく変動させることができる。これにより、電極温度が適切に変動し、両電極が偏って消耗することや、電極材料が偏って析出することを抑えることができる。
さらに、フリッカ発生電極が陽極になる時間が長くなるようにデューティ比を周期的なパターンで変化させる補修制御により、該フリッカ発生電極の陽極時に供給される累積エネルギーを大きくして定常制御時に溶融させることができなかった電極の不要な突起を溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を防止することができる。
〔第3の変形例〕
上述の第1の変形例においては、制御手段40は、1区分期間当たりの時間が定常制御時と同一の長さの区分期間を含む周期的なパターンで補修制御を行っていたが、第3の変形例においては、制御手段40は、定常制御時における1区分期間当たりの時間よりも短い時間の区分期間を含む周期的なパターンで補修制御を行ってもよい。
図11は、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を変化させる補修制御時の周期的なパターンの1周期Taと定常制御時の周期的なパターンの1周期Tbとの一例である。横軸は時間、縦軸はデューティ比を示している。
定常制御時の制御については、図7を用いて説明した例と同様であるが、補修制御時の制御については、区分期間D1乃至D12の1区分期間当たりの長さを2秒としており、区分期間S1乃至S4の1区分期間当たりの長さである4秒に比べて短い点が相違する。
このように補修制御時の1区分期間当たりの時間を定常制御時の1区分期間当たりの時間よりも短くさせて、周期的なパターンによって、補修制御時に陽極になる時間が短くなる電極(図11の例では、区分期間D3での第2電極及び区分期間D9の第1電極)が、低温になる期間を短くすることができる。したがって、フリッカの発生を抑制することができる。
また、定常制御時においてはデューティ比の最大値及び最小値の差が補修制御時に比べ小さい周期的パターンで制御するので、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
なお、制御手段40が補修制御を行うタイミングは、定期的なタイミングであってもよいし、第2の変形例と同様に、フリッカ検出手段のフリッカ検出タイミングに基づき補修制御を行ってもよい。
このような制御により、フリッカが発生していない電極、すなわち、消耗していない電極に対する熱負荷を低減することができることに加え、定常制御時においては補修制御時に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
また、定常制御時においても、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を同一値に維持する区分期間を複数含んだ周期的なパターンで、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比を変化させているため、複数の区分期間を有する周期的なパターンにおいて交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させつつも、少なくともひとつの区分期間中において交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを一時的に固定することができる。したがって、定常駆動時においても、両電極及びその周辺の熱的状態を比較的長いタイムスケールで大きく変動させることができる。これにより、電極温度が適切に変動し、両電極が偏って消耗することや、電極材料が偏って析出することを抑えることができる。
さらに、補修制御により、定常制御時に溶融させることができなかった電極の不要な突起を、さらに効率よく溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を防止することができる。
〔その他の変形例〕
例えば、上述した実施の形態の説明においては、極性反転タイミング区間内において、電流値は一定である場合について説明したが、制御手段40は、極性反転タイミング区間の後半で極性反転タイミング区間内の直流電流Idの電流値を最大とする区間電流制御処理を行ってもよい。
また、制御手段40は、極性反転タイミング区間内で直流電流Idの電流値を単調増加させる区間電流制御処理を行ってもよい。
このような制御を組み合わせることにより、補修制御時において、電極の不要な突起をさらに効率よく溶融させることができる。したがって、より効果的にフリッカの発生を抑制することができる。
3.第2の実施の形態に係る放電灯点灯装置
放電灯駆動用の交流電流Iの1周期中に各電極に供給される累積エネルギーを、放電灯駆動用の交流電流Iの電流値で制御する場合について、図1乃至図4及び図12乃至図17を参照して説明する。なお、第1の実施の形態と共通する構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この場合、制御手段40は、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を周期的なパターンで変化させる区間電流制御処理を行う補修制御を行う。この周期的なパターンは、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が同一値に維持される区分期間を複数含み、区分期間のうち少なくとも2つの区分期間における第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が互いに異なるパターンである。
図12は、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させる周期的なパターンの一例である。横軸は時間、縦軸は放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を示している。
図12に示す例では、制御手段40は、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が同一値に維持される区分期間を1周期Taの期間中に11の区分期間(区分期間D1乃至D11)を含み、1周期Taの周期的なパターンで段階的に放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させる交流変換制御処理を行う補修制御行っている。すなわち、区分期間とは、放電灯駆動用の交流電流Iの1周期単位で見ると、同一の区間電流制御処理が継続する期間である。本実施の形態においては、区分期間D1乃至D11の1区分期間当たりの長さは、4秒間としている。
なお、本実施の形態においては、補修制御は定期的なタイミング(例えば、360秒ごとのタイミング)で行っている。
また、図12に示す例では、補修制御時以外においては、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差は0Aで固定している。補修制御が開始されると、区分期間D1では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を0.2Aとし、その後0.2A刻みで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を大きくし、区分期間D3では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を最大の0.6Aとしている。
なお、放電灯90が、2つの電極92,93の一方の電極が他方の電極より動作中の温度が高くなる条件を備えている場合は、補修制御時以外において、他方の電極が一方の電極より温度が上がりやすいように放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を設定してもよい。例えば、図2に示される光源ユニット110のように、放電空間91の第2端部90e2側を副反射鏡50で囲まれている放電灯90の場合、放電空間91の第2端部90e2側からの放熱が少ないので、第1電極92に比べて第2電極93の温度が高くなりやすい場合がある。このような場合は、補修制御時以外においては、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を0.2Aで固定してもよい。
さらにその後0.2A刻みで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を小さくし、区分期間D9では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を最小の−0.6Aとしている。
またさらにその後0.2A刻みで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を上げ、周期Taで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差の増減を繰り返す。
なお、図12に示す例では、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させる周期的なパターンが1周期Ta分のみ含まれる補修制御を行っているが、周期的なパターンを複数周期分含んだ補修制御を行ってもよい。
次に、本実施の形態に係る放電灯点灯装置10における区間電流制御処理の具体例について説明する。
図13(a)は、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間Tpの電流値と第2極性区間Tnの電流値との絶対値の差が0Aに場合の電力制御回路20から出力される直流電流Id及び放電灯駆動用の交流電流Iの波形を示している。横軸は時間、縦軸は電流値を示している。時刻t1、t2及びt3は、放電灯駆動用の交流電流Iの極性反転タイミングを示す。極性反転タイミング区間には、放電灯駆動用の交流電流Iが第1極性(2つの電極のうち第1電極が陽極)になる第1極性区間を区間Tp、第2極性(2つの電極のうち第1電極が陰極)になる第2極性区間を区間Tnとし、区間Tpと区間Tnを合わせて交流電流Iの1周期となっている。すなわち、極性反転タイミング区間には、第1極性区間(区間Tp)と、第2極性区間(区間Tn)とがある。ここで、放電灯駆動用の交流電流Iのデューティ比は、交流電流Iの1周期に占める第1極性区間Tpの割合とする。なお、図13(a)乃至図13(e)に示す例では、いずれもデューティ比を50%としている。
図13(a)に示す例においては、区間Tp及び区間Tnのそれぞれの区間内において、電力制御回路20から出力される直流電流Idを同一の電流値(+A0)にする区間電流制御処理を行っている。その結果、放電灯駆動用の交流電流Iは、区間Tpにおいては電流値(+A0)、区間Tnにおいては電流値(−A0)となっている。すなわち、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差は0Aである。
図13(b)に示す例においては、区間Tpにおいては、電力制御回路20から出力される直流電流Idの電流値を+A0+0.1A、区間Tnにおいては、電力制御回路20から出力される直流電流Idの電流値を+A0−0.1Aとする区間電流制御処理を行っている。その結果、放電灯駆動用の交流電流Iは、区間Tpにおいては電流値(+A0+0.1A)、区間Tnにおいては電流値(−A0+0.1A)となっている。放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差は+0.2Aである。
同様に、図13(c)に示す例では、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差は+0.4A、図10(d)に示す例では、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差は−0.2A、図13(e)に示す例では、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差は−0.4Aとなる。
図14(a)乃至図14(c)は、補修制御時において図12に示す周期的なパターンで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させた場合の、放電灯駆動用の交流電流Iの波形推移を示した図である。横軸は時間、縦軸は電流値を示す。
図14(a)は、図12における区分期間D1から区分期間D4までに亘る交流電流Iの波形推移を示す。区分期間D1では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が+0.2Aである電流波形が継続する。区分期間D2になると、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が+0.4Aである電流波形に変化し、区分期間D2の間継続する。区分期間D3になると、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が+0.6Aである電流波形に変化し、区分期間D3の間継続する。区分期間D4になると、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が+0.4Aである電流波形に変化し、区分期間D4の間継続する。
図14(b)は、図12における区分期間D5から区分期間D8までに亘る交流電流Iの波形推移を示す。区分期間D5では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が+0.2Aである電流波形が継続する。区分期間D6になると、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が0Aである電流波形に変化し、区分期間D6の間継続する。区分期間D7になると、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が−0.2Aである電流波形に変化し、区分期間D7の間継続する。区分期間D8になると、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差−0.4Aである電流波形に変化し、区分期間D8の間継続する。
図14(c)は、図12における区分期間D9から区分期間D11までに亘る交流電流Iの波形推移を示す。区分期間D9では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が−0.6Aである電流波形が継続する。区分期間D10になると、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が−0.4Aである電流波形に変化し、区分期間D10の間継続する。区分期間D11になると、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が−0.2Aである電流波形に変化し、区分期間D11の間継続する。
この制御によれば、所与のタイミングで補修制御を行うため、常に放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を周期的なパターンで変化させる制御に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
また、補修制御時においては、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を同一値に維持する区分期間を複数含んだ周期的なパターンで、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させている。このため、複数の区分期間を有する周期的なパターンにおいて交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させつつも、少なくともひとつの区分期間中において交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを一時的に固定することができる。
つまり、両電極及びその周辺の熱的状態を比較的長いタイムスケールで大きく変動させることができる。よって、電極温度が適切に変動し、電極の偏った消耗や電極材料の偏った析出を防止することができる。また、補修制御により、電極の不要な突起を溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を抑制することができる。
〔第1の変形例〕
上述の実施の形態においては、制御手段40は、補修制御時以外の場合において、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を固定して制御していたが、制御手段40は、補修制御時以外の場合において、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を上述とは別の周期的なパターンで制御する定常制御を行ってもよい。その際は、補修制御時においては、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差の最大値及び最小値の差が定常制御時のそれらの差よりも大きい周期的なパターンで制御してもよい。
図15は、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させる補修制御時の周期的なパターンの1周期Taと定常制御時の周期的なパターンの1周期Tbとの一例である。横軸は時間、縦軸は放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を示している。
図15に示す例では、制御手段40は、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が同一値に維持される区分期間を1周期Taの期間中に12の区分期間(区分期間D1乃至D12)を含み、1周期Taの周期的なパターンで段階的に放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させる区間電流制御処理を行う補修制御行っている。本実施の形態においては、区分期間D1乃至D12の1区分期間当たりの長さは、4秒間としている。
また、制御手段40は、補修制御時以外の場合において、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差が同一値に維持される区分期間を1周期Tbの期間中に区分期間S1乃至S4の4期間を含み、段階的に放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させる区間電流制御処理を行う定常制御行っている。本実施の形態においては、区分期間S1乃至S4の長さは、4秒間としている。
補修制御時においては、区分期間D1では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を+0.2Aとし、その後0.2A刻みで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を上げ、区分期間D3では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を最大の+0.6Aとしている。
さらにその後0.2A刻みで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を下げ、区分期間D9では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を最小の−0.6Aとしている。またさらにその後0.2A刻みで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を上げ、周期Taで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差の増減を繰り返す。
定常制御時においては、区分期間S1では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を最大の+0.2Aとし、その後0.2A刻みで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を下げ、区分期間S3では放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を最小の−0.2Aとしている。またさらにその後0.2A刻みで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を上げ、周期Tbで放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差の増減を繰り返す。
このような制御により、定常制御時においては補修制御時に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
また、定常制御時においても、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を同一値に維持する区分期間を複数含んだ周期的なパターンで、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させているため、複数の区分期間を有する周期的なパターンにおいて交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させつつも、少なくともひとつの区分期間中において交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを一時的に固定することができる。したがって、定常駆動時においても、両電極及びその周辺の熱的状態を比較的長いタイムスケールで大きく変動させることができる。これにより、電極温度が適切に変動し、両電極が偏って消耗することや、電極材料が偏って析出することを抑えることができる。
さらに、補修制御により、定常制御時に溶融させることができなかった電極の不要な突起を溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を防止することができる。
〔第2の変形例〕
上述の実施の形態においては、制御手段40は、定期的なタイミングで補修制御を行っていたが、放電灯駆動電圧に基づきフリッカ検出を行うフリッカ検出手段を含み、制御手段40は、フリッカ検出手段のフリッカ検出タイミングに基づき補修制御を行ってもよい。
また例えば、制御手段40は、フリッカ検出手段のフリッカ検出タイミングに基づきフリッカ発生電極を判定し、フリッカ発生電極が陽極になる区間で、電力制御回路20から出力される直流電流Idが大きくなるように放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を周期的なパターンで変化させる補修制御を行ってもよい。
フリッカ検出手段でのフリッカ発生の判定方法とフリッカ発生電極の判定方法の例は、図8(a)及び図8(b)を用いてすでに説明したとおりであり、またフリッカ発生時の制御フローの例は図9を用いてすでに説明したとおりであるので、再度の説明を省略する。
図16は、放電灯90の第1電極でフリッカが発生した場合(すなわち、第1電極用補修制御の場合)での、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させる周期的なパターンの一例である。横軸は時間、縦軸は放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を示している。
区分期間D1乃至D4において、制御手段40は、フリッカ発生電極である第1電極が陽極になる区間で、電力制御回路20から出力される直流電流Idが大きくなるように放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を周期的なパターンで制御する区間電流制御処理を行っている(第1電極用補修制御)。
このように、フリッカ発生電極である第1電極が陽極になる区間で、電力制御回路20から出力される直流電流Idが大きくなるように放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を周期的なパターンで制御することにより、フリッカが発生していない第2電極、すなわち、消耗していない電極に対する熱負荷を低減することができる。またフリッカ発生電極については、補修制御により、電極の不要な突起を溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を抑制することができる。
なお、放電灯90の第2電極でフリッカが発生した場合(すなわち、第2電極用補修制御の場合)には、制御手段40は、フリッカ発生電極である第2電極が陽極になる区間で、電力制御回路20から出力される直流電流Idが大きくなるように放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を周期的なパターンで制御する区間電流制御処理を行う(第2電極用補修制御)。
本変形例に加えて、制御手段40は、補修制御時以外の場合において、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を周期的なパターンで制御する定常制御を組み合わせることも可能である。
このような制御により、フリッカが発生していない電極、すなわち、消耗していない電極に対する熱負荷を低減することができることに加え、定常制御時においては補修制御時に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
また、定常制御時においても、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を同一値に維持する区分期間を複数含んだ周期的なパターンで、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させているため、複数の区分期間を有する周期的なパターンにおいて交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させつつも、少なくともひとつの区分期間中において交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを一時的に固定することができる。したがって、定常駆動時においても、両電極及びその周辺の熱的状態を比較的長いタイムスケールで大きく変動させることができる。これにより、電極温度が適切に変動し、両電極が偏って消耗することや、電極材料が偏って析出することを抑えることができる。
さらに、補修制御により、定常制御時に溶融させることができなかった電極の不要な突起を溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を防止することができる。
〔第3の変形例〕
上述の第1の変形例においては、制御手段40は、1区分期間当たりの時間が定常制御時と同一の長さの区分期間を含む周期的なパターンで補修制御を行っていたが、第3の変形例においては、制御手段40は、定常制御時における1区分期間当たりの時間よりも短い時間の区分期間を含む周期的なパターンで補修制御を行ってもよい。
図17は、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させる補修制御時の周期的なパターンの1周期Taと定常制御時の周期的なパターンの1周期Tbとの一例である。横軸は時間、縦軸は放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を示している。
定常制御時の制御については、図15を用いて説明した例と同様であるが、補修制御時の制御については、区分期間D1乃至D12の1区分期間当たりの長さを2秒としており、区分期間S1乃至S4の1区分期間当たりの長さである4秒に比べて短い点が相違する。
このように放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を定常制御時よりも短時間で変化させる補修制御を組み合わせることにより、定常制御時においては補修制御時に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができるとともに、定常駆動時においても、補修駆動時においては、定常制御時に溶融させることができなかった電極の不要な突起を、さらに効率よく溶融させることができる。
また、陽極になる区間での電流値が小さくなる電極(図17の例では第2電極)は、温度が低下し、フリッカが発生しやすくなるが、区分期間D1乃至D12の1区分期間当たりの長さを短くすることにより、電極が低温になる期間を短くすることができる。したがって、フリッカの発生を抑制することができる。
なお、制御手段40が補修制御を行うタイミングは、定期的なタイミングであってもよいし、第2の変形例と同様に、フリッカ検出手段のフリッカ検出タイミングに基づき補修制御を行ってもよい。
このような制御により、フリッカが発生していない電極、すなわち、消耗していない電極に対する熱負荷を低減することができることに加え、定常制御時においては補修制御時に比べ、放電灯電極への熱負荷を軽減することができる。
また、定常制御時においても、放電灯駆動用の交流電流Iの複数周期に亘り、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を同一値に維持する区分期間を複数含んだ周期的なパターンで、放電灯駆動用の交流電流Iの第1極性区間の電流値と第2極性区間の電流値との絶対値の差を変化させているため、複数の区分期間を有する周期的なパターンにおいて交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを変化させつつも、少なくともひとつの区分期間中において交流電流Iの1周期中に放電灯90の各電極に供給される累積エネルギーを一時的に固定することができる。したがって、定常駆動時においても、両電極及びその周辺の熱的状態を比較的長いタイムスケールで大きく変動させることができる。これにより、電極温度が適切に変動し、両電極が偏って消耗することや、電極材料が偏って析出することを抑えることができる。
さらに、補修制御により、定常制御時に溶融させることができなかった電極の不要な突起を、さらに効率よく溶融させることができる。したがって、フリッカの発生を防止することができる。
〔その他の変形例〕
例えば、上述した実施の形態の説明においては、極性反転タイミング区間内において、電流値は一定である場合について説明したが、制御手段40は、極性反転タイミング区間の後半で極性反転タイミング区間内の直流電流Idの電流値を最大とする区間電流制御処理を行ってもよい。
また、制御手段40は、極性反転タイミング区間内で直流電流Idの電流値を単調増加させる区間電流制御処理を行ってもよい。
このような制御を組み合わせることにより、補修制御時において、電極の不要な突起をさらに効率よく溶融させることができる。したがって、より効果的にフリッカの発生を抑制することができる。
4.プロジェクタの回路構成
図18は、本実施の形態に係るプロジェクタの回路構成の一例を示す図である。プロジェクタ500は、先に説明した光学系のほかに、画像信号変換部510、直流電源装置520、放電灯点灯装置530、放電灯540、液晶パネル560R、560G、560B、画像処理装置570を含む。
画像信号変換部510は、外部から入力された画像信号502(輝度−色差信号やアナログRGB信号など)を所定のワード長のデジタルRGB信号に変換して画像信号512R、512G、512Bを生成し、画像処理装置570に供給する。
画像処理装置570は、3つの画像信号512R、512G、512Bに対してそれぞれ画像処理を行い、液晶パネル560R、560G、560Bをそれぞれ駆動するための駆動信号572R、572G、572Bを出力する。
直流電源装置520は、外部の交流電源600から供給される交流電圧を一定の直流電圧に変換し、トランス(図示しないが、直流電源装置520に含まれる)の2次側にある画像信号変換部510、画像処理装置570及びトランスの1次側にある放電灯点灯装置530に直流電圧を供給する。
放電灯点灯装置530は、起動時に放電灯540の電極間に高電圧を発生して絶縁破壊させて放電路を形成し、以後放電灯540が放電を維持するための駆動電流を供給する。本実施の形態においては、図1を用いて説明した放電灯点灯装置10と同じ構成の放電灯点灯装置を使用している。
液晶パネル560R、560G、560Bは、画像信号に応じたそれぞれ駆動信号572R、572G、572Bにより各液晶パネルに入射する色光の輝度が変調する。
CPU580は、プロジェクタの点灯開始から消灯に至るまでの動作を制御する。プロジェクタの電源が投入され直流電源装置520の出力電圧が所定の値になると、点灯信号582を発生して放電灯点灯装置530に供給する。CPU580は、放電灯点灯装置530から放電灯540の点灯情報532を受け取ってもよい。
このように構成したプロジェクタ500は、放電灯540の電極への熱負荷を軽減しつつ放電灯540のフリッカを抑制することができるため、放電灯540の長寿命化を図ったプロジェクタを実現することができる。
〔変形例〕
上述のプロジェクタの構成例に加え、放電灯の光量に基づきフリッカ検出を行うフリッカ検出手段を含み、放電灯点灯装置530の制御手段40は、フリッカ検出手段のフリッカ検出タイミングに基づき補修制御を行ってもよい。
なお、本変形例では放電灯の光量に基づきフリッカ検出を行うフリッカ検出手段はプロジェクタに含まれているが、放電灯点灯装置530に含んで構成してもよい。
フリッカ検出手段は、例えば、制御手段40と、液晶パネル560R、560G、560B近傍やスクリーン700近傍に配置された光量センサーやスクリーン700に投射された映像を撮像するカメラと組み合わせて実現してもよい。
この場合、例えば、制御手段40は、放電灯540の光量が所定値を下回った場合に、放電灯540においてフリッカが発生したものと判定してもよい。
また、制御手段40は、フリッカ検出タイミングにおいて、陰極になっている電極をフリッカ発生電極と判定してもよい。
このように構成したプロジェクタ500は、放電灯540の電極への熱負荷をさらに軽減しつつ放電灯540のフリッカを抑制することができるため、放電灯540の長寿命化を図ったプロジェクタを実現することができる。
上記各実施形態においては、3つの液晶パネルを用いたプロジェクタを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ、2つ又は4つ以上の液晶パネルを用いたプロジェクタにも適用可能である。
上記各実施形態においては、透過型のプロジェクタを例示して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、反射型のプロジェクタにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、透過型の液晶パネル等のように光変調手段としての電気光学変調装置が光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、反射型の液晶パネルやマイクロミラー型光変調装置などのように光変調手段としての電気光学変調装置が光を反射するタイプであることを意味している。マイクロミラー型光変調装置としては、例えば、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)(Texas Instruments社の商標)を
用いることができる。反射型のプロジェクタにこの発明を適用した場合にも、透過型のプロジェクタと同様の効果を得ることができる。
本発明は、投写画像を観察する側から投写するフロント投写型プロジェクタに適用する場合にも、投写画像を観察する側とは反対の側から投写するリア投写型プロジェクタに適用する場合にも可能である。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。