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JP4665508B2 - 印刷用画像処理装置 - Google Patents

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JP4665508B2
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Description

本発明は、複数色の液体インクの微粒子を印刷用紙(記録材)上に吐出出力して所定の文字や画像を描画するようにしたインクジェットプリンタ用の画像処理装置に関し、特に予め設定された色のインクを吐出出力するノズルを印字走査方向と直交方向に直線状に複数配設するラインヘッド型のインクジェットプリンタ用の画像処理装置に好適なものである。
このようなインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このようなインクジェットプリンタは、一般に、インクカートリッジと印字ヘッドとが一体的に備えられたキャリッジなどと称される移動体が印刷媒体(用紙)上をその紙送り方向の左右に往復しながらその印字ヘッドのノズルから液体インクの粒子をドット状に吐出(噴射)出力することで、印刷用紙上に所定の文字や画像を描画して所望の印刷物を作成するようになっている。そして、このキャリッジに黒色(ブラック)を含めた4色(イエロー、マゼンタ、シアン)のインクカートリッジと各色毎の印字ヘッドを備えることで、モノクロ印刷のみならず、各色を組み合わせたフルカラー印刷も容易に行えるようになっている(更に、これらの各色に、ライトシアンやライトマゼンタなどを加えた6色や7色、或いは8色のものも実用化されている)。
また、このようにキャリッジ上の印字ヘッドを紙送り方向の左右(印刷用紙の幅方向)に往復させながら印刷を実行するようにしたタイプのインクジェットプリンタでは、1頁全体をきれいに印刷するために印字ヘッドを数十回から100回以上も往復動させる必要があるため、他の方式の印刷装置、例えば複写機などのような電子写真技術を用いたレーザプリンタなどに比べて大幅に印刷時間がかかるといった欠点がある。
これに対し、印刷用紙の幅と同じ寸法の長尺の印字ヘッドを配置してキャリッジを使用しないタイプのインクジェットプリンタでは、印字ヘッドを印刷用紙の幅方向に移動させる必要がなく、所謂1パスでの印刷が可能となるため、前記レーザプリンタと同様な高速な印刷が可能となる。なお、前者方式のインクジェットプリンタを一般に「マルチパス型プリンタ」、後者方式のインクジェットプリンタを一般に「ラインヘッド型プリンタ」と呼んでいる。
ところで、このようなインクジェットプリンタに不可欠な印字ヘッドは、直径が10〜70μm程度の微細なノズルを一定の間隔で直列、又は印刷方向に多段に配設してなるものであるため、製造誤差によって一部のノズルのインクの吐出方向が傾いてしまったり、ノズルの位置が理想位置と外れた位置に配置されたりしてしまい、そのノズルで形成されるドットが目標点よりもずれてしまうといった、所謂「飛行曲がり現象」を発生してしまうことがある。
この結果、その不良ノズル部分に相当する印刷部分に、所謂「バンディング(スジ)現象」と称される印刷不良が発生して、印刷品質を著しく低下させてしまうことがある。即ち、「飛行曲がり現象」が発生すると隣接ドット間の距離が不均一となり、隣接ドット間の距離が長い部分には「白スジ(印刷用紙が白紙の場合)」が発生し、隣接ドット間の距離が短い部分には「濃いスジ」が発生する。このように「スジ」が見えることを「バンディング現象」という。
特に、このようなバンディング現象は、前述したような「マルチパス型プリンタ」の場合よりも、印字ヘッドが固定(1パス印刷)で、且つノズルの数がマルチパス型プリンタよりも格段に多い「ラインヘッド型プリンタ」の方に顕著に発生し易い(マルチパス型プリンタでは、印字ヘッドを何回も往復させることを利用して白スジを目立たなくする技術がある)。
そこで、以下に示す特許文献1では、複数のノズルが直線状に配設されたヘッドチップを千鳥状に配設し且つ隣接するヘッドチップ間にオーバラップ部を形成し、このオーバラップ部では、何れのヘッドチップのノズルでインクドットを出力するかを乱数的に選択し、これによりヘッドチップ間の継ぎ目に発生するバンディング現象を低減するようにしている。
特開2004−50445号公報
しかしながら、前記特許文献1に記載される印刷装置では、ヘッドチップ間の継ぎ目に発生するバンディング現象が低減されるものの、オーバラップ部でインクドットを出力するヘッドチップのノズルを乱数的に選択しているため、同じヘッドチップのノズルでインクドットを出力する部分が続くとバンディング現象が発生してしまう。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、印字走査方向上の二以上のノズルで同一の位置に同一の色のインクドットを出力可能なインクジェットプリンタでバンディング現象を効果的に低減可能な印刷用画像処理装置を提供することを目的とするものである。
[発明1]上記課題を解決するために、発明1の印刷用画像処理装置は、予め設定された色のインクを出力するノズルを印字走査方向と交差する方向に直線状に複数配設してノズルラインを構成し、このノズルラインを走査方向に互いに重合するように複数配設し、各ノズルラインのノズルで同一の色のインクドットを同一の位置に出力できるようにしたインクジェットプリンタの印刷用画像処理装置であって、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分を所定の階調で表現するために、印字走査方向上の二以上のノズルで同一の位置に同一の色のインクドットを出力する重ね打ち制御手段を備えたことを特徴とするものである。
この発明に言うインクドットとは、ノズルから吐出出力する液体インクの微粒子を意味し、インクドットが大きくなると、複数のドットで構成される或る範囲の濃度は濃く(数値では大きく)なり、インクドットが小さくなると濃度は薄く(数値では小さく)なる。また、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分を所定の階調で表現するために、該当する色のインクドットに変換する処理は2値化処理(N値化処理ともいう)と呼ばれる。2(N)値化処理は、後の実施の形態で詳述するが、多値(例えば8ビット、256階調)の画像データを或る閾値に基づいて、各画素毎に2(N)種類に分類する処理であり、インクドットを打つ、打たないといった、所謂「2値化」の他に、各画素の階調度の大きさに応じてインクドットの大きさを数段階に変化させることを含む概念である。換言すれば、インクドットの有無だけでは表現できない、所謂中間階調を表現するための処理を含む処理である。
この発明1の印刷用画像処理装置によれば、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分を所定の階調で表現するために、印字走査方向上の二以上のノズルで同一の位置に同一の色のインクドットを出力する構成としたため、各ノズルのインクドット形成位置のずれを互いに補ってバンディング現象を効果的に低減することができる。
ここでいう「バンディング現象」とは、「飛行曲がり現象」などによって「白スジ」や「濃いスジ」が発生する現象をいう。「飛行曲がり現象」とは、単なる一部のノズルの不吐出現象とは異なり、インクは吐出するものの、その一部のノズルの吐出方向が傾くなどしてドットが目標位置よりずれて形成されてしまう現象をいう。また、「白スジ」とは、「飛行曲がり現象」などによって隣接ドット間の距離が所定の距離よりも広くなる現象が連続的に発生して印刷媒体の下地の色がスジ状に目立ってしまう部分(領域)をいい、また、「濃いスジ」とは、同じく「飛行曲がり現象」などによって隣接ドット間の距離が所定の距離よりも狭くなる現象が連続的に発生して印刷媒体の下地の色が見えなくなったり、或いはドット間の距離が短くなることによって相対的に濃く見えたり、更にはずれて形成されたドットの一部が正常なドットと重なり合ってその重なり合った部分が濃いスジ状に目立ってしまう部分(領域)をいう。
[発明2]発明2の印刷用画像処理装置は、前記発明1の印刷用画像処理装置において、前記重ね打ち制御手段は、前記印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分の階調が維持されるように、前記印字走査方向上の二以上のノズルから出力するインクドットの大きさ又はその大きさに応じた濃度相当のインクドット出力指令値を設定するインクドット出力指令値設定手段を備えたことを特徴とするものである。
この発明2の印刷用画像処理装置によれば、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分の階調が維持されるように、印字走査方向上の二以上のノズルから出力するインクドットの大きさ又はその大きさに応じた濃度相当のインクドット出力指令値を設定する構成としたため、所定範囲の画像データの視覚特性が保持され、印刷された画像情報と入力された画像情報とを整合することができる。
[発明3]発明3の印刷用画像処理装置は、前記発明2の印刷用画像処理装置において、前記同一の位置に同一の色のインクドットを出力する二以上のノズルのインク出力特性を記憶するインク出力特性記憶手段を備え、前記インクドット出力指令値設定手段は、前記インク出力特性記憶手段で記憶されているインク出力特性に基づいて前記インクドット出力指令値を設定することを特徴とするものである。
この発明3の印刷用画像処理装置によれば、同一の位置に同一の色のインクドットを出力する二以上のノズルのインク出力特性を記憶し、その記憶されているインク出力特性に基づいて各ノズルへのインクドット出力指令値を設定する構成としたため、各ノズルのインク出力特性を夫々のノズルへのインクドット出力指令値に適正に反映することができ、これにより所定範囲の画像データの視覚特性を保持しながら、バンディング現象を効果的に低減することができる。
[発明4]発明4の印刷用画像処理装置は、前記発明3の印刷用画像処理装置において、前記インク出力特性記憶手段は、前記二以上のノズルから同一の位置に出力される同一の色のインクドットの所定位置からの位置ずれ量をインク出力特性として記憶し、前記インクドット出力指令値設定手段は、前記インクドットの所定位置からの位置ずれ量に基づいて前記インクドット出力指令値を設定することを特徴とするものである。
この発明4の印刷用画像処理装置によれば、二以上のノズルから同一の位置に出力される同一の色のインクドットの所定位置からの位置ずれ量をインク出力特性として記憶し、その記憶されている各ノズルのインクドットの所定位置からの位置ずれ量に基づいて各ノズルへのインクドット出力指令値を設定する構成としたため、各ノズルのインクドットの所定位置からの位置ずれ量を夫々のノズルへのインクドット出力指令値に適正に反映することができ、これにより所定範囲の画像データの視覚特性を保持しながら、バンディング現象を効果的に低減することができる。
[発明5]発明5の印刷用画像処理装置は、前記発明1乃至4の何れかの印刷用画像処理装置において、前記重ね打ち制御手段は、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分の階調に応じて一つのノズルで該当する色のインクドットを出力する非重ね打ち制御手段を備えたことを特徴とするものである。
この発明5の印刷用画像処理装置によれば、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分の階調に応じて一つのノズルで該当する色のインクドットを出力する構成としたため、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分に該当するインクドットを一つのノズルで出力したり、二以上のノズルで出力したりすることにより、夫々のインク出力特性に応じたインクドットをばらつかせ、これにより所定範囲の画像データの視覚特性を保持しながら、バンディング現象を効果的に低減することができる。
[発明6]発明6の印刷用画像処理装置は、前記発明5の印刷用画像処理装置において、前記重ね打ち制御手段は、非重ね打ち制御手段によるインクドットの出力形態と、印字走査方向上の二以上のノズルで同一の位置に同一の色のインクドットを出力する出力形態とを交互に又は順番に又は乱数的に選択することを特徴とするものである。
この発明6の印刷用画像処理装置によれば、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分に該当するインクドットを一つのノズルで出力する形態と、二以上のノズルで出力する形態とを交互に又は順番に又は乱数的に選択する構成としたため、夫々のインク出力特性に応じたインクドットを効果的にばらつかせ、これにより所定範囲の画像データの視覚特性を保持しながら、バンディング現象を効果的に低減することができる。
次に、本発明の印刷用画像処理装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の印刷用画像処理装置を適用したインクジェットプリンタとそれを駆動するためのホストコンピュータを表している。ホストコンピュータ6は、パーソナルコンピュータを始めとして各種のコンピュータが適用可能である。本実施形態のインクジェットプリンタは、前述したラインヘッド型プリンタ1であり、例えば図2に示すように、予め設定された色のインクを出力するノズル5を印字走査方向と交差する方向に直線状に複数配設してノズルラインを構成し、このノズルラインを印字走査方向に2列ずつ(複数)互いに重合するように配設してラインヘッド(図1ではヘッドユニット)2が構成されている。本実施形態のラインヘッド型プリンタ1は、ヘッドユニット2によるインク出力状態を制御するプリンタ制御部3及びヘッドユニット2の各ノズル5の出力特性を記憶するノズル出力特性記憶部(ノズル出力特性記憶手段)4を備えている。このうち、プリンタ制御部3はマイクロコンピュータなどの演算処理装置で構成され、ノズル出力特性記憶部4はROM、RAMなどの記憶装置で構成されている。つまり、これらの制御装置や記憶装置も、コンピュータシステムで構築されている。
図2は、前述したラインヘッド型のヘッドユニット2であり、前述したシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の各色毎に、ノズルラインを印字走査方向に二列ずつ備えている。実際のノズルラインは、印刷用紙上を1パスで印刷するので、図示するよりも遙かにノズル数が多く、長さ(幅)も大きい。そして、各色の2つのノズルラインのノズル5で同一の色のインクを同一の位置に出力できるようにした。なお、以後、1つの色に対して2列に配設されたノズルラインのうち、図3に示すように、印字走査方向手前側のノズルラインの列をA列、印字走査方向先方側のノズルラインの列をB列と定義し、更に図示左方から右方に向けてノズル番号を0,1,2…の順に附すものとする。また、本実施形態では、1つのノズルで、印刷対象となる画像情報の1画素の1つの色成分を所定の階調(この場合は全階調)で表現することができる。換言すれば、印刷対象となる画像情報の1画素の1つの色成分を所定の階調(この場合は全階調)で表現するために必要な最小限のノズル数は1つということになる。なお、本実施形態では、後述する2値化処理によって、印刷対象となる画像情報の1画素の1つの色成分に対して濃度表示で120%、80%、40%(、0%)に対応するドットサイズL、M、Sの3種類(ドットなしを含めて4種類)のドットサイズが設定されるので、各ノズルでは、夫々のドットサイズのインクドットを出力することができるように設定されている。
図4は、前記プリンタ制御部で行われる演算処理の機能ブロック図である。このプリンタ制御部では、ステップS1でRGB画像データを読み込む。このRGB画像データは、例えば1画素あたりの各色(R、G、B)毎の階調(輝度値)が8ビット(0〜255)で表現される多値の画像データとしてホストコンピュータから読み込まれる。次のステップS2では、前記ステップS1で読み込まれたRGB画像データを前述した4色のCMYK色に変換してCMYK画像データを得る。
次のステップS3では、前記CMYK画像データを構成する各画素の2値化処理を行う。この2値化処理とは、例えば画像データを構成する任意の1画素に注目し、その注目画素に対してインクドットを打つ、つまりノズルから液体インクを吐出出力するか否かの所謂「2値化処理」を実行すると共に、単にインクドットの有無だけでは表現できない中間階調の表現処理、本実施形態では、前記「2値化処理」によって発生した画素の誤差について通常のデータ変換と同様に所定の誤差拡散マトリックスに基づいた誤差拡散処理を実行する。この誤差拡散処理とは、多値のデータを或る閾値を境に2値化処理する際に、その閾値との差を捨ててしまうのではなく、誤差としてこれから処理する複数の画素に拡散させて活用するようにしたものである。例えば、処理対象となる注目画素が8ビット(256階調)で表現可能で且つその階調が「101」であった場合、通常の2値化処理では、その階調は閾値(中間値)である「127」に満たないため、「0」即ちドットを形成しない画素として処理されてしまい、「101」は、そのまま捨てられてしまう。
これに対し、誤差拡散処理の場合は、その「101」が所定の誤差拡散マトリックスに従ってその周囲の未処理の画素に対して拡散されることになるため、例えば、注目画素の右隣の画素が通常の2値化処理のみでは注目画素と同じく閾値に満たないことから「ドットを形成しない」として処理されてしまっていたのが、注目画素の誤差を受け取ることによってその画素値が閾値を超えて「ドットを形成する」というような取り扱いを受けることになり、より元の画像データに近い2値化データを得ることが可能となる。そして、このようにして注目画素についての誤差拡散処理が終了したならば、その2値化処理の結果、その注目画素の位置にドットが形成されるか否かを判定する。この2値化処理によって、本実施形態では、各画素の各色毎に、濃度表示で120%、80%、40%(、0%)に対応するドットサイズL、M、Sの3種類(ドットなしを含めて4種類)のドットサイズが設定される。なお、中間階調の表現方法には、この他に「ディザマトリックス法」などがある。
次のステップS4では、後述するようにして前記ノズル出力特性記憶部に記憶されているノズル出力特性を読み出す。次のステップS5では、後述するようにして、前記ステップS4で読み出されたノズル出力特性に基づいて各ノズルへのインクドット出力指令値を設定する。このステップS5及び前記ステップ4が、前記プリンタ制御部3内に構築される重ね打ち制御部(重ね打ち制御手段)を構成している。そして、次のステップS6では、前記ステップS5で設定されたインクドット出力指令値に基づいて、ヘッドユニットへ信号出力を行う。
次に、本実施形態でのノズル出力特性の内容と、その記憶方法について説明する。本実施形態では、印字走査方向上の2つのノズルで、少なくとも設定上は、同一位置に同一色のインクドットを出力できるようになっている。そこで、図5に示すように、それらのノズルをペアとし、ノズルペア番号毎に、A列ノズルのインクドットの位置ズレ量及びB列ノズルのインクドットの位置ズレ量を記憶する。このインクドットの位置ずれ量は、例えば図7aに示す位置をインクドットの理想形成位置(理想着弾位置ともいう)としたとき、図7bに示すように実際のインクドットの理想形成位置からのズレ量を位置ズレ量SA、SBとして記憶する。サフィックスA、Bはノズル列のA列、B列を示す。
次に、図6のインクドット出力指令値設定のための演算処理について説明する。なお、演算処理中の符号x,yは、図4のステップS3で2値化された印刷用画像データの各画素の座標であり、例えば左上を0として、右方向にx座標を、下方向にy座標を設定する。注目画素は左上から右方向に順に移行し、画像データの右端に到達したら下のライン(行)の左端の画素に移行する、といったように繰り返す。また、この演算処理は、前述したCMYKの各色毎に行われる。
この演算処理では、まずステップS11で、記憶されている注目画素座標[x,y]を共に0に初期化する。次にステップS12に移行して、次の注目画素座標[x,y]の濃度(要求濃度値)P[x,y]を入力する。次にステップS13に移行して、ステップS12で入力した要求濃度値P[x,y]が重ね打ちに分割可能か否かを判定し、当該要求濃度値P[x,y]が重ね打ちに分割可能である場合にはステップS14に移行し、そうでない場合にはステップS15に移行する。要求濃度値P[x,y]が重ね打ちに分割可能か否かとは、つまり同一位置に2つのノズルから同一色のインクドットを出力して要求濃度値P[x,y]に相当するドットサイズを達成することができるか否かという意味である。例えば、要求濃度値P[x,y]がドットサイズLに相当する120%であるときには、濃度値80%のドットサイズMのインクドットと濃度値40%のドットサイズSのインクドットとを同一位置に、乾燥する前に出力すれば、結果としてドットサイズLに相当する濃度値120%を得ることができる。同様に、要求濃度値P[x,y]がドットサイズMに相当する80%であるときには、濃度値40%のドットサイズSのインクドットを同一位置に2回、乾燥する前に出力すれば、結果としてドットサイズMに相当する濃度値80%を得ることができる。一方、要求濃度値P[x,y]がドットサイズSに相当する40%であるときには、本実施形態では、各ノズルから出力可能な2つのインクドットに分割することができないので、重ね打ちできないことになる。
ステップS14では、ステップS13の判定で重ね打ち分割可能と判定されたものについて、要求濃度値P[x,y]の重ね打ち分割を乱数的に選択し、要求濃度値P[x,y]を重ね打ち分割する場合にはステップS16に移行し、そうでない場合にはステップS15に移行する。ステップS16では、下記1式に従って、分割したA列ノズルの要求濃度値PA[x,y]を算出してからステップS17に移行する。なお、算出されたA列ノズルの要求濃度値PA[x,y]については、四捨五入などによって、出力可能値、つまりドットサイズS又はドットサイズMに相当する濃度値40%又は80%にクリッピングする(まとめる)。
A[x,y]=P[x,y]×SB/(SA+SB) ……… (1)
ステップS17では、下記2式に従って、分割したB列ノズルの要求濃度値PB[x,y]を算出してからステップS18に移行する。なお、算出されたB列ノズルの要求濃度値PB[x,y]については、四捨五入などによって、出力可能値、つまりドットサイズS又はドットサイズMに相当する濃度値40%又は80%にクリッピングする(まとめる)。
B[x,y]=P[x,y]×SA/(SA+SB) ……… (2)
一方、ステップS15では、注目画素座標[x,y]の要求濃度値P[x,y]をA列又はB列のノズルに乱数的に割り当ててからステップS18に移行する。ステップS18では、全ての画素についてインクドット出力指令値の設定処理を行ったか否かを判定し、全ての画素を処理した場合には図4の演算処理のステップS6に移行し、そうでない場合にはステップS12に移行する。
この演算処理によって形成される重ね打ちインクドットの一例を図7cに示す。この重ね打ちインクドットは、図7bのA列ノズルのインクドット位置ズレ量SA及びB列ノズルのインクドット位置ズレ量SBに基づいて設定されたものである。前記1式で設定されるA列ノズルの要求濃度値PA[x,y]及び2式で設定されるB列ノズルの要求濃度値PB[x,y]は、夫々、位置ズレ量の比の逆比を重みとする重み付け平均値であるから、位置ズレ量が大きいほど要求濃度値は小さく、位置ズレ量が小さいほど要求濃度値は大きくなる。従って、重ね打ちされる2つのインクドットの重心点は、凡そ理想着弾位置の重心点に近づく。
図8には、重ね打ちインクドットの各種形態を示す。図8aは、前記図7と同様に、A列ノズルのインクドットとB列ノズルのインクドットとが理想着弾位置を挟んで左右に分離しているものであり、重ね打ちインクドットの重心点は、A列ノズルインクドット又はB列ノズルインクドット単体の重心点よりも、理想着弾位置の重心点に近づく。また、図8bは、A列ノズルのインクドットとB列ノズルのインクドットが理想着弾位置を挟んで上下に分離しているものであり、重ね打ちインクドットの重心点は、A列ノズルインクドット又はB列ノズルインクドット単体の重心点よりも、理想着弾位置の重心点に近づく。一方、図8cは、A列ノズルのインクドットもB列ノズルのインクドットも理想着弾位置に対して同じ方向、図では左下(第3象限)方向にずれているものであり、一見すると、重ね打ちインクドットの重心点は理想着弾位置の重心点に近づいていないように見える。しかしながら、2つのノズルからは、互いに乾燥しないうちにインクドットが重ね打ちされるので、インクの重なり部分を中心としてにじみが生じ、全体としては、僅かながら重心点が理想着弾位置の重心点に近づく。
図9には、インクドットの各種形態を示す。図9aは、全てのインクドットが理想着弾位置に形成されたもの、図9bは、図7bのインクドットを、A列、B列、交互(又は順番)に出力したもの、図9cは、本実施形態のインクドットであり、上からA列、重ね打ち、B列、重ね打ち、A列、B列の順に出力したものである。理想着弾位置には及ばないが、本実施形態のインクドットは全般に重心点が理想着弾位置の重心点に近づいて見える。前述したように、インクジェットプリンタのノズルピッチが10〜70μmであることを考え合わせると、インクドットの出力が乱数的だからこそ、見た目には、それが均一であるかのように映り、隣り合うドット間のスジ、所謂バンディング現象が効果的に低減される。なお、この効果は、重ね打ちインクドットを含めて、種々のインクドットを交互に又は順番に出力する場合にも同様に得られる。では、図9bのような場合は、どのように見えるかというと、図から明らかなように隣り合うインクドット間の隙間が大きくなるので、その部分がざらついているような感じ、所謂粒状感が高まる。
このように、本実施形態の印刷用画像処理装置によれば、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分を所定の階調で表現するために、印字走査方向上の二以上のノズルで同一の位置に同一の色のインクドットを出力することとしたため、各ノズルのインクドット形成位置のずれを互いに補ってバンディング現象を効果的に低減することができる。
また、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分の階調が維持されるように、印字走査方向上の二以上のノズルから出力するインクドットの大きさ又はその大きさに応じた濃度相当のインクドット出力指令値を設定することとしたため、所定範囲の画像データの視覚特性が保持され、印刷された画像情報と入力された画像情報とを整合することができる。
また、同一の位置に同一の色のインクドットを出力する二以上のノズルのインク出力特性を記憶し、その記憶されているインク出力特性に基づいて各ノズルへのインクドット出力指令値を設定することとしたため、各ノズルのインク出力特性を夫々のノズルへのインクドット出力指令値に適正に反映することができ、これにより所定範囲の画像データの視覚特性を保持しながら、バンディング現象を効果的に低減することができる。
また、二以上のノズルから同一の位置に出力される同一の色のインクドットの所定位置からの位置ずれ量をインク出力特性として記憶し、その記憶されている各ノズルのインクドットの所定位置からの位置ずれ量に基づいて各ノズルへのインクドット出力指令値を設定することとしたため、各ノズルのインクドットの所定位置からの位置ずれ量を夫々のノズルへのインクドット出力指令値に適正に反映することができ、これにより所定範囲の画像データの視覚特性を保持しながら、バンディング現象を効果的に低減することができる。
また、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分の階調に応じて一つのノズルで該当する色のインクドットを出力することとしたため、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分に該当するインクドットを一つのノズルで出力したり、二以上のノズルで出力したりすることにより、夫々のインク出力特性に応じたインクドットをばらつかせ、これにより所定範囲の画像データの視覚特性を保持しながら、バンディング現象を効果的に低減することができる。
また、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分に該当するインクドットを一つのノズルで出力する形態と、二以上のノズルで出力する形態とを交互に又は順番に又は乱数的に選択する構成としたため、夫々のインク出力特性に応じたインクドットを効果的にばらつかせ、これにより所定範囲の画像データの視覚特性を保持しながら、バンディング現象を効果的に低減することができる。
なお、前記各実施形態では、一つの色のインクに対してノズルラインが印字走査方向に2列配列されたものについて説明したが、ノズルラインの数はこれに限定されない。例えばノズルラインが4列配列されたものであっても何ら問題ない。
また、前記各実施形態では、一つの色のインクに対してノズルラインが2列配列されたものについて説明したが、本発明の印刷用画像処理装置に適するインクジェットプリンタは、例えばノズルラインの一部がオーバラップし、少なくともその部分では、2つ以上のノズルブロックで同一の位置に同一の色のインクを出力することが可能であれば、そのような部分にのみ適用することも可能である。
本発明の印刷用画像処理装置の一実施形態を示す印刷システムの構成図である。 図1のヘッドユニットの詳細図である。 図2のヘッドユニットにおける「A列」「B列」の説明図である。 図1のプリンタ制御部で行われる機能ブロック図である。 図1の記憶部に記憶されるインク出力特性値の説明図である。 図4の機能ブロックで行われるサブルーチンを示すフローチャートである。 インクドットを重ね打ちする説明図である。 重ね打ちインクドットの各種形態の説明図である。 インクドットの各種形態の説明図である。
符号の説明
1はラインヘッド型プリンタ、2はヘッドユニット(ラインヘッド)、3はプリンタ制御部、4はノズル出力特性記憶部、5はノズル、6はホストコンピュータ

Claims (3)

  1. 予め設定された色のインクを出力するノズルを、記録材とノズルとの相対移動方向である印字走査方向と交差する方向に直線状に複数配設してノズルラインを構成し、このノズルラインを前記印字走査方向に互いに重合するように複数配設し、各ノズルラインのノズルで同一の色のインクドットを同一の位置に出力できるようにしたインクジェットプリンタの印刷用画像処理装置であって、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分を所定の階調で表現するために、印字走査方向上の二以上のノズルで同一の位置に同一の色のインクドットを出力する重ね打ち制御手段と、前記同一の位置に同一の色のインクドットを出力する二以上のノズルのインクドットの理想形成位置と実際の形成位置とのずれ量であるインク出力特性を記憶するインク出力特性記憶手段と、を備え、
    前記重ね打ち制御手段は、前記印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分の階調が維持されるように、前記印字走査方向上の二以上のノズルから出力するインクドットの大きさ又はその大きさに応じた濃度相当のインクドット出力指令値を設定するインクドット出力指令値設定手段を備え、
    前記インクドット出力指令値設定手段は、要求濃度値に相当するドットサイズを各ノズルから出力可能なドットサイズのインクドットに分割して、分割した各ドットサイズを前記二以上のノズルから出力することにより、当該要求濃度値に相当するインクドットを形成できる場合には、前記インク出力特性の逆比を重み付けした要求濃度値の平均値により重ね打ちするための前記インクドット出力指令値を設定することを特徴とする印刷用画像処理装置。
  2. 前記重ね打ち制御手段は、印刷対象となる画像情報の一画素の一つの色成分の階調に応じて一つのノズルで該当する色のインクドットを出力する非重ね打ち制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の印刷用画像処理装置。
  3. 前記重ね打ち制御手段は、非重ね打ち制御手段によるインクドットの出力形態と、印字走査方向上の二以上のノズルで同一の位置に同一の色のインクドットを出力する出力形態とを交互に又は順番に又は乱数的に選択することを特徴とする請求項2に記載の印刷用画像処理装置。
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