JP4663869B2 - 有機ゴム組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は有機ゴム組成物に関し、詳しくは、硬化前には加工性が優れ、硬化して、ゴム弾性、機械的強度、および耐磨耗性が優れるゴム成形体を形成する有機ゴム組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車,自転車等の空気入りタイヤに使用されているゴムとしては、スチレン/ブタジエン共重合体ゴム,ポリブタジエンゴム,天然ゴム等の有機系ゴムにカーボンブラックを配合して強度を増強させた有機系ゴムが使用されている。ところが、近年、カーボンブラックの一部または全部をシリカ系充填剤に置き換え、ゴム弾性優れ、引き裂き強さ,破断時の伸び,耐摩耗性等機械的強度に優れた加硫ゴムを得る試みが行われている。
【0003】
しかし、一般にシリカ系充填剤は有機系ゴムに対して親和性を有さず、これを有機系ゴムに配合した場合、シリカ系充填剤同士が凝集して、シリカ系充填剤が均一に分散せず、硬化前粘度が低く加工性に優れた有機系ゴム組成物を得ることは難しかった。そのため、シリカ系充填剤の配合時にオルガノシランを併用する方法が提案されている。例えば、特公昭58−36009号公報には、スチレン/ブタジエン共重合体ゴムにシリカ微粉末と塩素原子含有オルガノシランを配合してゴム組成物を得る方法が提案されている。また、特公昭59−15940号公報には、スチレン/ブタジエン共重合体ゴムにシリカ微粉末と硫黄原子含有オルガノシランを配合してゴム組成物を得る方法が提案されている。しかし、これらの方法に従っても、シリカ系充填剤が均一に分散した組成物を得ることは難く、結果として良好な物理特性を有するゴム成形体を得ることはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明の目的は、硬化前には加工性が優れ、硬化して、ゴム弾性、機械的強度、および耐磨耗性が優れるゴム成形体を形成する有機ゴム組成物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の有機ゴム組成物は、
(A)有機ゴム 100重量部、
(B)シリカ系充填剤 5〜180重量部、
(C)カーボンブラック 0〜200重量部、
(D)一般式:
【化3】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、R3は炭素数2〜15の二価炭化水素基であり、R4は水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基であり、aは1〜3の整数であり、xは1〜6の整数であり、mは0以上の整数であり、pは0以上の整数である。)
で示される含硫黄有機珪素化合物および/または一般式:
【化4】
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、R3は炭素数2〜15の二価炭化水素基であり、R4は水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基であり、aは1〜3の整数であり、xは1〜6の整数であり、nは1以上の整数であり、pは0以上の整数である。)
で示される含硫黄有機珪素化合物{(B)成分に対して0.1〜20重量%}、
および
(E)加硫剤(本組成物を硬化させる量)
からなることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の有機ゴム組成物を詳細に説明する。
(A)成分は、加硫剤により架橋してゴム成形体を形成する有機ゴムであり、その種類は限定されないが、スチレン/ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、シス−ポリブタジエン共重合体ゴム、スチレン/イソプレン共重合体ゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、および天然ゴムからなる群より選択される少なくとも1種の有機ゴムであることが好ましい。
【0007】
(B)成分は本組成物を硬化して得られるゴム成形体に補強性や耐磨耗性を付与するためのシリカ系充填剤であり、乾式シリカ微粉末、湿式シリカ微粉末が例示され、好ましくは、そのBET比表面積が少なくとも50m2/gであるものであり、さらに好ましくは、そのBET比表面積が少なくとも100m2/gであるものである。
【0008】
本組成物において、(B)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して5〜180重量部であり、好ましくは10〜100重量部である。これは、(B)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるゴム成形体の機械的強度や耐磨耗性が乏しくなる恐れがあるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる有機ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあるからである。
【0009】
(C)成分は本組成物を硬化して得られるゴム成形体に補強性や耐磨耗性を付与するためのカーボンブラックであり、例えば、サーマルブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラックが挙げられる。
【0010】
本組成物において、(C)成分の含有量は、(A)成分100重量部に対して0〜200重量部であり、好ましくは10〜120重量部である。これは、(C)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られるゴム成形体の機械的強度や耐磨耗性が乏しくなる恐れがあるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる有機ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあるからである
【0011】
(D)成分は(A)成分と(B)成分の分散性を向上させ、本組成物の加工性を向上させるための含硫黄有機珪素化合物であり、一般式:
【化5】
で示される含硫黄有機珪素化合物および/または一般式:
【化6】
で示される含硫黄有機珪素化合物である。上式中のR1は炭素数1〜4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が例示され、特に、メチル基、エチル基が好ましい。また、上式中のR2は炭素数1〜4のアルキル基であり、前記R1と同様のアルキル基が例示され、特に、メチル基、エチル基が好ましい。また、上式中のR3は炭素数2〜15の二価炭化水素基であり、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等のアルキレン基;メチレンフェニレン基、エチレンフェニレン基等のアルキレンアリーレン基が例示され、特に、アルキレン基が好ましく、特に、エチレン基、プロピレン基が好ましい。また、上式中のR4は水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基であり、R4のアルキル基としては、前記R1と同様のアルキル基が例示される。特に、R4は水素原子であることが好ましい。また、上式中のaは1〜3の整数であり、特に、3であることが好ましい。また、上式中のxは1〜6の整数である。また、上式中のmは0以上の整数である。また、上式中のpは0以上の整数である。さらに、上式中のnは1以上の整数である。
【0012】
このような(D)成分の含硫黄有機珪素化合物としては、次のような化合物が例示される。但し、式中のxは1〜6の整数であり、mは0以上の整数であり、nは1以上の整数であり、pは0以上の整数である。
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
(削除)
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0013】
このような(D)成分を調製する方法は限定されないが、例えば、一般式:
R4−CH=CH−CH2−R3−Si(OR1)aR2 (3-a)
(式中、R1は炭素数1〜4のアルキル基であり、R2は炭素数1〜4のアルキル基であり、R3は炭素数2〜15の二価炭化水素基であり、R4は水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基であり、aは1〜3の整数である。)
で示される有機珪素化合物と、該有機珪素化合物1モルに対して0.5〜4モルの硫黄原子となる量の硫黄を、室温〜200℃で反応させることにより調製することができる。
【0014】
上記の有機珪素化合物において、式中のR1は炭素数1〜4のアルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、上式中のR2は炭素数1〜4のアルキル基であり、前記と同様の基が例示される。また、上式中のR3は炭素数2〜15の二価炭化水素基であり、前記と同様の基が例示される。また、上式中のR4は水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基であり、R4のアルキル基としては、前記と同様の基が例示される。また、上式中のaは1〜3の整数であり、好ましくは、3である。
【0015】
このような有機珪素化合物としては、5−ヘキセニルトリメトキシシラン、5−ヘキセニルメチルジメトキシシラン、5−ヘキセニルトリエトキシシラン、5−ヘキセニルメチルジエトキシシランが例示される。
【0016】
この製造方法で用いることのできる硫黄は限定されない。この硫黄は無水の硫黄であることが好ましく、また、この形状は粉末状あるいはフレーク状であることが好ましい。
【0017】
この製造方法において、硫黄の添加量は、上記の有機珪素化合物1モルに対して、硫黄原子が0.5〜4モルとなる量であり、得られる含硫黄有機珪素化合物が一分子中に4個の硫黄原子を有するテトラスルフィド構造を有するためには、上記の有機珪素化合物1モルに対して、硫黄原子が4モルとなる量であることが好ましく、また、トリスルフィド構造を有するためには、硫黄原子が3モルとなる量であることが好ましく、さらに、ジスルフィド構造を有するためには、硫黄原子が2モルとなる量であることが好ましい。
【0018】
この製造方法では、硫黄の反応性を高めるため、公知の加硫促進剤を使用することができる。この加硫促進剤としては、ジチオカルバメート促進剤、キサントゲネート促進剤、チウラム促進剤、メルカプトおよびスルフィンアミド促進剤が含まれるチアゾール促進剤、アミン促進剤、アルデヒドアミン促進剤、メルカプト促進剤、ジスルフィド促進剤、ポリスルフィド促進剤が例示され、特に、反応終了後に、減圧下で加熱することにより留去できる低沸点の加硫促進剤であることが好ましい。このような加硫促進剤としては、構造上類似したビス(トリアルコキシシリルアルキル)ポリスルフィド、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン等が好ましい。
【0019】
また、この製造方法では、反応を溶媒中で行うこともできる。溶媒としてアルコール類を使用する場合は、上記有機珪素化合物中の珪素原子に結合するアルコキシ基と同様の基を有するアルコールであることが好ましい。これは、異なる基を有するアルコールを使用した場合には、アルコキシ基が交換反応を起こし、2種のアルコキシ基が混在した化合物が得られるためである。
【0020】
この製造方法では、乾燥不活性ガス雰囲気下、室温から200℃の温度範囲で反応を行うことができ、特に、硫黄の融点(112.8℃)〜200℃の温度範囲で反応を行うことが好ましい。これは、反応温度が上記範囲の上限をこえると、上記の有機珪素化合物が分解したりする恐れがあるからであり、また、上記範囲の下限未満では、反応が著しく遅くなるからである。次に、この製造方法では、反応終了後、減圧下で加熱して、未反応の有機珪素化合物を留去することにより、目的の含硫黄有機珪素化合物を得ることができる。
【0021】
本組成物において、(D)成分の含有量は、(B)成分に対して0.1〜20重量%であり、好ましくは、1〜10重量%である。これは、(D)成分の含有量が上記範囲の下限未満であると、得られる有機ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあるからであり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られるゴム成形体の機械的強度が低下する恐れがあるあるからである。
【0022】
(E)成分は本組成物を硬化させるための加硫剤であり、一般に、有機ゴムの加硫剤として用いられるものであれば特に限定されず、例えば、粉末硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル等の有機過酸化物が挙げられる。
【0023】
本組成物には、有機ゴムの成形性、加工性を改良するために使用される、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素、芳香族系炭化水素等のゴム用可塑剤の他、有機ゴムへの配合が公知である、亜鉛華、ステアリン酸等の加硫剤助剤;ジフェニルアミン類、トリメチルジヒドロキノン類、フェニレンジアミン類等の老化防止剤;その他、耐熱添加剤、補強性添加剤を配合してもよい。
【0024】
本組成物は上記(A)成分〜(E)成分、さらには、その他任意の成分を均一に混合することによって調製することができる。これらの成分を混合する方法は限定されず、一般に有機ゴム組成物を調製するために使用される、ニーダミキサー、バンバリーミキサー、スクリューエクストルーダー等の混合装置を用いることができる。
【0025】
本組成物は加工性が優れ、硬化して、ゴム弾性、機械的強度、および耐磨耗性が優れるゴム成形体を形成することができるので、例えば、自動車や自転車のタイヤ形成用ゴム組成物として好適である。
【0026】
【実施例】
本発明の有機ゴム組成物を実施例により詳細に説明する。なお、有機ゴム組成物およびゴム成形体の特性を次のようにして測定した。
[有機ゴム組成物のムーニー粘度]
JIS K 6300-1994に準拠して、予熱1分、測定4分、温度130℃にて測定した。なお、表1中の値は、比較例1で調製した有機ゴム組成物の粘度を100とした指数で示した。この指数が小さいほど、ムーニー粘度が低く、加工性が優れていることを示す。
[ゴムの硬さ]
JIS K 6253-1997に準拠して、タイプAデュロメータにより硬さを測定した。なお、表1中の値は、比較例1で調製した有機ゴム組成物を硬化して得られたゴム成形体の硬さを100とした指数で示した。この指数が大きいほど硬いことを示し、低いほど柔らかいことを示す。
[ゴムの伸び、引張強さ]
JIS K 6251-1993に準拠して、ダンベル状3号サンプルを用いて25℃で引張試験を行なった時の、引張強さ、切断時伸びを測定した。なお、表1中の値は、比較例1で調製した有機ゴム組成物を硬化して得られたゴム成形体の引張強さ、および伸びを100とした指数で示した。この指数が大きいほど、引張強さが強く、伸びが大きいことを示す。
[ゴムの耐磨耗性]
耐磨耗性を表わす耐磨耗性指数はランボーン磨耗試験機を用い、BS(British Standard)規格903(part A)D法に準じた方法により、接地圧5kg/cm2、スリップ率40%にて測定し、次式により求めた。
耐磨耗性指数=(対象物の損失重量/供試試験片の損失重量)×100
なお、表1中の値は、比較例1で調製した有機ゴム組成物を硬化して得られたゴム成形体の耐磨耗性指数を100とした指数で示した。この指数が大きいほど耐磨耗性が大きいことを示す。
【0027】
[参考例1]
乾燥窒素気流下、還流冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、5−ヘキセニルトリエトキシシラン246g(1.00モル)、硫黄粉末64.0g(硫黄原子として2.00モル)を投入し、これを150℃で攪拌しながら、3時間反応させた。次に、得られた反応混合物を室温まで冷却した後、100℃/10torrの条件で未反応物を留去したところ、赤褐色液状物303gが得られた。この液状物をIR、13C−NMR、および29Si−NMRにより分析したところ、二重結合の減少が確認され、下記の平均式で示される含硫黄有機珪素化合物であることが同定された。
【0028】
【化18】
【0029】
[参考例2]
乾燥窒素気流下、還流冷却器、温度計を備えた500mlの四つ口フラスコに、5−ヘキセニルトリエトキシシラン246g(1.00モル)、硫黄粉末32.0g(硫黄原子として1.00モル)を投入し、これを150℃で攪拌しながら、3時間反応させた。次に、得られた反応混合物を室温まで冷却した後、100℃/10torrの条件で未反応物を留去したところ、赤褐色液状物257gが得られた。この液状物をIR、13C−NMR、および29Si−NMRにより分析したところ、二重結合の減少が確認され、下記の平均式で示される含硫黄有機珪素化合物であることが同定された。
【0030】
【化19】
【0031】
[実施例1]
バンバリーミキサーにより、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム100重量部、BET比表面積200m2/gである湿式シリカ微粉末40重量部、カーボンブラック5重量部、参考例1で調製した含硫黄有機珪素化合物4重量部を混合した後、さらに、粉末硫黄1.5重量部、亜鉛華3重量部、ステアリン酸2重量部、加硫促進剤2.7重量部、および老化防止剤1重量部を混合して有機ゴム組成物を調製した。この有機ゴム組成物およびゴム成形体の特性を表1に示した。
【0032】
[実施例2]
実施例1において、含硫黄有機珪素化合物の配合量を2重量部とした以外は実施例1と同様にして有機ゴム組成物を調製した。この有機ゴム組成物およびゴム成形体の特性を表1に示した。
【0033】
[実施例3]
実施例1において、参考例1で調製した含硫黄有機珪素化合物の代わりに、参考例2で調製した含硫黄有機珪素化合物を同量配合した以外は実施例1と同様にして有機ゴム組成物を調製した。この有機ゴム組成物およびゴム成形体の特性を表1に示した。
【0034】
[比較例1]
実施例1において、参考例1で調製した含硫黄有機珪素化合物の代わりに、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを同量配合した以外は実施例1と同様にして有機ゴム組成物を調製した。この有機ゴム組成物およびゴム成形体の特性を表1に示した。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】
本発明の有機ゴム組成物は、加工性が優れ、硬化して、ゴム弾性、機械的強度、および耐磨耗性が優れるゴム成形体を形成することができるという特徴を有する。
Claims (2)
- (A)有機ゴム 100重量部、
(B)シリカ系充填剤 5〜180重量部、
(C)カーボンブラック 0〜200重量部、
(D)一般式:
で示される含硫黄有機珪素化合物および/または一般式:
で示される含硫黄有機珪素化合物{(B)成分に対して0.1〜20重量%}、
および
(E)加硫剤{本組成物を硬化させる量}
からなる有機ゴム組成物。 - (A)成分が、スチレン/ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、シス−ポリブタジエンゴム、スチレン/イソプレン共重合体ゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエン共重合体ゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体ゴム、イソプレンゴム、および天然ゴムからなる群より選択される少なくとも1種の有機ゴムであることを特徴とする、請求項1記載の有機ゴム組成物。
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