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JP4652489B2 - 脳波インタフェースシステムのための起動装置、方法およびコンピュータプログラム - Google Patents

脳波インタフェースシステムのための起動装置、方法およびコンピュータプログラム Download PDF

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JP4652489B2 JP2010541615A JP2010541615A JP4652489B2 JP 4652489 B2 JP4652489 B2 JP 4652489B2 JP 2010541615 A JP2010541615 A JP 2010541615A JP 2010541615 A JP2010541615 A JP 2010541615A JP 4652489 B2 JP4652489 B2 JP 4652489B2
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Description

本発明は、脳波を利用して機器を操作するインタフェース(脳波インタフェース)システムに関する。
近年、機器の小型軽量化により、ヘッドマウントディスプレイ(以下「HMD」とも記述する。)等のウェアラブル機器が普及してきている。通常、機器のインタフェースとして、ボタンを押す、カーソルを移動させて決定する、画面を見ながらマウスを操作するなどの方法が用いられていた。しかしながら、眼鏡型のHMDのように本体が小型でハンズフリーを特徴とする機器の操作では、上記のような物理的な機器操作を必須とするとハンズフリーの特徴を損ない、有効ではない。そこで、物理的な操作を行わずに手軽に機器を制御するインタフェース、具体的には、考えただけで機器をすばやく制御できる、脳波を利用したインタフェースが注目を浴びてきている。
脳波とは、基準極と計測対象極の電位の差により電気信号として計測される脳活動(脳神経細胞の電気的活動)である。この脳波を利用したインタフェースとして、たとえば特許文献1に記載された、事象関連電位を利用した人の心理状態等の判定方法及び装置があげられる。特許文献1では、脳波の事象関連電位の特徴的な信号を用いてユーザが選択したいと思っている選択肢を判別する技術が開示されている。
具体的には、頭頂部に電極を装着し、画面上にランダムに単語を表示し、ユーザが選択したいと思っている単語が表示されたタイミングを起点に300msから500msの時間帯に出現する陽性成分(P300成分)などを利用して、ユーザが選択した単語の判別を行う脳波インタフェースが実現されている。
従来の脳波計測では、電極を国際10−20法の場所表記にしたがって装着し、頭部に計測対象極を装着することで計測が行われてきた。特許文献1では、国際10−20法における位置Pz(正中頭頂)およびCz(正中中心)の位置の特徴信号を用いて脳波計測が行われている。特許文献1で利用される特徴信号は位置Pzの位置で強く計測できることが知られている。そのため、従来の脳波インタフェースの電極の位置は、Pzが主に利用されている。
脳波計測は、一般に、上述のように頭頂部に装着した電極を利用して行われなければならない。そのため、頭頂部と接触する構造を持たない機器、たとえば上述のHMDを用いる場合には、脳波計の形状は、オーバーヘッドタイプのヘッドホンのように頭部をまたぐ必要がある。しかしながら、HMDのように顔面部に装着するウェアラブル機器に対しては、小型化してほしいという要望が強いため、将来的にはヘッドホンのように頭部にまたがる部分が不要と判断される可能性が高い。また、頭部にまたがった形状は見た目も悪く、装着による髪型の乱れにもつながることから、将来的なHMDの形状としては理想的でない。そこでHMDの形状は、頭部をまたがないことが前提となる。
上記事情に鑑みると、HMD型デバイスに脳波インタフェースを組み合わせて利用するためには、HMD以外に、何らかの手段で頭頂部の脳波を計測するための電極を別途装着する必要がある。
例えば、特許文献2は、HMDがコードを有する電極を複数備え、各電極を所望の場所(頭部)に貼り付けるという方法を開示している(図4)。
しかし、HMDは、常時装着せず頻繁に脱着が行われる機器であるため、HMD以外に別途機器を装着することは、ユーザにとって大きな負担となる。
そこで、眼鏡の形状の範囲内に電極を配置して脳波計測を行う例として、特許文献3があげられる。図24は、特許文献3に開示された脳波電極装着具の構成を示している。この脳波電極装着具は、C字状のヘッドバンドの内側に伸縮性を有する接触ベルトを備え、接触ベルト上に配置された電極により脳波を計測することを可能としている。この脳波電極装着具によれば、機器装着と同時に電極の装着も可能となり、別の機器を装着する手間も無いため、ユーザの機器装着負担が軽減できる。
特開2005−34620号公報 特開2004−16658号公報 実開平6−70704号公報
しかしながら、特許文献3の構成を用いて眼鏡型脳波インタフェース装置を構築しようとした場合、視覚刺激を呈示するための出力部を眼鏡のレンズの位置に配置する必要があるため、顔前面に配置した電極がずれやすくなる。その理由は特許文献3の構成が、ヘッドバンドの締め付けによるユーザのコメカミ部での支持と、接触ベルトの圧迫によるユーザの額部での支持とによってウェアラブル装置を支えているためである。
ウェアラブル装置は、いずれもユーザへ押し付けられることで支えられている。そのため、眼鏡のレンズの位置に映像出力装置など設置されると、ウェアラブル装置前面にかかる重量が大きくなり、接触ベルトに配置された(顔前面に配置された)電極が、下向きにずれやすくなる。
電極のずれを軽減するために、ヘッドバンドの締め付けまたは接触ベルトの圧迫を強くする対応も考えられるが、ユーザへの圧迫が強くすると、締め付けによるユーザへの負担が大きくなり、長時間の装着が困難になる。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、ユーザへの締め付けを強くし負担を増加させること無く安定した電極接触を確保できる脳波インタフェース装置を提供することにある。
本発明による脳波インタフェースシステムは、ユーザの頭部に装着される、眼鏡型の脳波インタフェースシステムであって、ユーザに視覚刺激を呈示する出力部と、装着されたときに前記ユーザの耳に接する位置に配置された耳電極部と、装着されたときに前記ユーザの目尻と目頭を結ぶ直線よりも下側で前記ユーザの顔面部に接し、前記眼鏡型の脳波インタフェースシステムの重量を支持する位置に配置された顔電極部と、前記視覚刺激が呈示されたタイミングを起点にして、前記耳電極部と前記顔電極部の電位差に基づいて事象関連電位を計測する脳波計測判定部とを備えている。
前記顔電極部は、前記眼鏡型の脳波インタフェースシステムのノーズパッド部であってもよい。
前記耳電極部は、前記ユーザの目尻と目頭を結ぶ直線に対して、顔電極部と同じ側に配置されてもよい。
前記耳電極部は、前記ユーザの耳後で接してもよい。
前記脳波計測判定部は、事象関連電位に関する複数の波形のデータが蓄積された判別基準データベースを保持しており、前記判別基準データベースには、選択を希望するときに現れる事象関連電位の波形のデータと、選択を希望しないときに現れる事象関連電位の波形のデータとが蓄積されており、前記脳波計測判定部は、計測した前記事象関連電位の波形が前記選択を希望するときに現れる事象関連電位に最も近いと判断したときは、前記視覚刺激に対応付けられた処理を実行してもよい。
前記脳波インタフェースシステムは、前記ユーザの脳波信号のうち、前記ユーザの瞬きに起因する信号の振幅が、予め定められた上限閾値および下限閾値の間に入っているか否かに応じて、前記顔電極部の位置を判定する顔電極位置判別部をさらに備えていてもよい。
前記脳波計測判定部は、前記耳電極部および前記顔電極部の電位差に基づいて脳波信号を計測し、前記顔電極位置判別部は、計測された前記脳波信号のうちの、所定の周波数帯の信号を、前記ユーザの瞬きに起因する信号として採用してもよい。
前記顔電極位置判別部は、計測された前記脳波信号のうちの、1.7Hz〜2.2Hzの周波数帯の信号を、前記ユーザの瞬きに起因する信号として採用してもよい。
前記ユーザの瞬きに起因する信号の振幅が、前記上限閾値よりも大きい場合、または、前記下限閾値よりも小さい場合には、前記出力部は、前記眼鏡型の脳波インタフェースシステムがずれていることを示す警告を呈示してもよい。
本発明によれば、ユーザに対して、電極装着のために別の機器の装着や、装置の固定具の締め付けを強くするなどの大きな負担を強いることなく、眼鏡の形状の範囲内の電極で脳波インタフェース装置を実現することができる。
(a)および(b)は、HMD形状の範囲に含まれる電極位置を示す図である。 顔面に配置した電極を基準極とした場合の精度の結果を示す図である。 左右の耳のマストイド(左マストイドおよび右マストイド)を基準とした場合の精度の結果を示す図である。 実施形態における脳波インタフェースシステム1の機能ブロックの構成を示す図である。 脳波インタフェースシステム1の装置形状の例を示す図である。 脳波インタフェースシステム1のハードウェア構成図である。 (a)は顔電極部12をHMDのリム部23に配置した例を示す図であり、(b)は、(a)に示すHMD型の脳波インタフェースシステム1をユーザ10が装着した状態を示す図である。 (a)は、HMDのリム部23にさらに異なる加工を施して、顔電極部12を配置した例を示す図であり、(b)は、(a)に示すHMD型の脳波インタフェースシステム1をユーザ10が装着した状態を示す図である。 人間の顔における、耳付根上部から眼窩上縁部の距離の関係を示す図である。 顔面片側に装着する脳波インタフェースシステム1の構成例を示す図である。 (a)は本実施形態による脳波インタフェース装置2の構成を示す図であり、(b)は装着時の脳波インタフェース装置2の位置を示す図である。 脳波インタフェース装置2の機能ブロックの構成を示す図である。 脳波インタフェース装置2の処理の手順を示すフローチャートである。 図13のステップS102、ステップS103およびステップS104に示した顔電極位置判別部15の処理の詳細な手順を示すフローチャートである。 (a)は、耳電極部11を右マストイド、顔電極部12を右眼窩上縁部に装着し、瞬きをした場合の脳波信号の例示図であり、(b)は、(a)の信号にFFTをかけて周波数解析した結果の例示図である。 (a)〜(c)は、耳電極部11を右マストイド、顔電極部12を右眼窩上縁部の上部、中部、下部に装着し、瞬きをした場合の脳波信号の例を示す図である。 (a)および(b)はユーザに警告を呈示する例示図である。 (a)および(b)は、HMDの装着状態を通知する例示図である。 (a)〜(c)は種々の形状の電極を示す図である。 (a)〜(d)は、種々の形状の先セル部を示す図である。 (a)〜(c)はそれぞれ弾性部111および張力検出部112を含むテンプル部の一部を示す図である。 目頭231および目尻232の位置関係を示す図である。 他の脳波インタフェースシステムの構成例を示す図である。 従来の脳波電極装着具の構成を示す図である。
以下、添付の図面を参照して、本発明による脳波インタフェースシステムの実施形態を説明する。
眼鏡の形状の範囲内の電極で脳波インタフェース装置を実現するためには、電極を安定して配置できる場所やノイズ混入の少ない電極位置を特定する必要がある。
本願発明者らは、まず、眼鏡型ウェアラブル装置の形状の範囲内において、どの位置に電極を配置するのが効果的であるかの探索を行った。ここでは、例として「眼鏡型のヘッドマウントディスプレイ」を採用した。この「眼鏡型のヘッドマウントディスプレイ」を以下、単に「HMD」と記述する。以下の実施形態の説明では、HMDの形状は、ユーザの頭部をまたがないことを前提とする。
なお、本明細書において、HMD等のウェアラブル装置の「形状の範囲」とは、その装置に通常必要とされる形状が占める範囲をいうとする。頭部に電極を配置した場合と同程度の精度で脳波インタフェースの提供が可能な電極配置を見つけ出すために、まずHMD形状の範囲内において識別率の高い電極位置を知る必要がある。実施形態の説明に入る前に、本願発明者らが実施したHMD形状の範囲内における最適基準極位置探索実験を説明する。
図1は、HMD形状の範囲に含まれる電極位置を示す。なお、HMDの形状については、たとえば図5に示されるとおりである。図5については後に詳述する。
図1(a)に示すように、目の上28aの電極は眼窩29の上縁に装着され、目の横28bの電極は眼窩29の外縁(外眼瞼角)に、鼻の電極は鼻根28cに、耳の上の電極は耳付根上部30eに装着される。HMD形状の範囲を考察すると、眼電計測で利用されている顔面部の電極に加えて、HMDの形状では、耳朶部30b、耳後部30d(耳の付け根の後部)、耳下部(耳の付け根の下部)、耳前部30cなどの耳周辺部(図1(b)に図示。マストイド30a、耳朶30b、耳珠30c、耳付根後部30dの破線部内の範囲。)も計測対象として利用が可能である。そこで、本願発明者らは、上記耳周辺部を代表して、耳の裏の付け根の頭蓋骨の突起部であるマストイド30a(乳様突起)を選択した。
実験は、HMD形状においてユーザの顔面に接触する位置の例として、図1に示す位置をあげ、それらの部分を利用した具体的な精度の検証を行った。
実験には、20代の被験者15名に対して計測実験を行い、覚醒度が高く維持されていた8名を対象に解析を行った。
脳波計測は、ポリメイトAP−1124(デジテックス製)を使用し、サンプリング周波数は200Hz、時定数は3秒、フィルタは30Hzのローパスフィルタをかけた。
本実験では、図1に示した各電極を基準極とし、他の電極との電位差により脳波を計測し、脳波インタフェースの評価実験を実施した。各被験者に40回ずつ選択してもらい、判別結果が的中した割合を識別率として精度検証を行った。
同様の手法で頭頂部(Pz)を計測対象極として脳波計測を行ったところ、識別率は81.3%であった。
顔面部における最適基準極位置探索のため、図1に示す位置の電極を組み合わせて脳波を計測し、脳波インタフェースの識別率の比較を行った。電極の組合せと識別率との関係を図2、図3に示す。
図2は、顔面に配置した電極を基準極とした場合の精度の結果を示し、図3は、左右の耳のマストイド(左マストイドおよび右マストイド)を基準とした場合の精度の結果を示す。図3の実験結果より、左マストイド基準で57.8%、右マストイド基準で66.6%の平均識別率が得られた。左右のマストイドを基準に顔面部の電位を計測した脳波は、図2に示した顔面部の電極を基準して計測されたいずれの脳波よりも平均識別率が高くなっており、後述する脳波インタフェースシステムを動作させるために必要な脳波信号を含んでいることがわかった。また、右マストイドを基準極にして左目上の電極の識別率を計測したところ75.0%、同様に右目上の電極の識別率は75.3%と8割弱の精度があり、ほぼ頭頂部で計測した場合と同等の識別率であることがわかった。これは、マストイドに基準電極を配置することで、マストイドと顔面部の電極の間に脳の一部が含まれ、これらの間の電位を計測することによって、脳活動の一部を計測することが可能となり、識別率が高くなっていると考えられる。
このように耳周辺部(特にマストイド)を基準とした顔面部の電極の電位差により脳波を計測することで、頭頂部で脳波を計測した場合と同様の精度で脳波の計測が可能で、頭頂部に電極を装着しなくても十分な性能が得られることが確認できた。
よって精度のよい脳波インタフェースシステムを構築するためには、耳周辺部(マストイド)を基準とした電極を少なくとも1つ配置しておく必要がある。
次に、本願発明者らは、眼鏡型ウェアラブル装置の形状の範囲内において、ノイズ混入の少ない位置の検討を行った。
脳波計測において、ノイズ要因の一つとして、瞬きによるノイズが挙げられる。眼鏡型ウェアラブル装置の形状の範囲内(顔面部)に電極を配置した場合、電極と眼球の距離が近いため、大きなノイズとして計測される。よって、瞬きノイズが混入しづらい位置に電極を配置することが重要となる。
まず、瞬きノイズの混入メカニズムについて説明する。瞬き時、まぶたが角膜上をスライドする。眼球の角膜は陽性に帯電しており、まぶたが角膜とこすれることで、角膜の陽性の電位がまぶたに伝わる。まぶたに伝わった陽性の電位は、目の上側に配置された電極へと伝わり、瞬きのノイズとして計測される。
図22は、目周辺の目頭231および目尻232の位置関係を示す。図22には左目の例が示されている。瞬きの前後においてまぶたは目頭231と目尻232とを結んだ直線233の上側に位置するため、陽性電位の伝播も、この直線233の上側で発生すると考えられる。従って、顔面部の電極を目頭231と目尻232とを結んだ直線233よりも下側に配置することにより、瞬きによるノイズの影響を抑えた脳波計測が可能になると考えられる。一例を挙げると、図22中の直線233より下に位置する鼻234の鼻根部に顔面部の電極を設ければよい。HMDなどの眼鏡型脳波インタフェースシステムの場合には、そのような顔面部の電極はノーズパッドとして機能する。さらに、上述の耳周辺部の電極を、上述の直線233に対して、顔面部の電極と同じ側の、たとえばマストイド30aや耳後部30dなどに配置することにより、瞬きに起因するノイズの影響をより確実に抑えることが可能になる。
(実施形態1)
図4は、本実施形態における脳波インタフェースシステム1の機能ブロックの構成を示す。図5は、脳波インタフェースシステム1の装置形状の例を示す。そして図6は、脳波インタフェースシステム1のハードウェア構成の例を示す。
図4に示されるように、脳波インタフェースシステム1は、耳電極部11と、顔電極部12と、脳波計測判定部13と、出力部14とを有する。なお、図4では、ユーザ10は理解の便宜のために記載されている。
図5に示されるように、HMDの各部位の名称は眼鏡と同様である。以下では、ユーザ10の耳に引っ掛かりHMD本体を固定する部分を「先セル部21」と呼び、ユーザ10の鼻に接地しHMD本体を支える部分を「ノーズパッド部24」、ユーザ10の各眼球の前に設置される出力部16を保持し固定する部分を「リム部23」、両目の前のリム部23をつなぎ支える部分を「ブリッジ部25」、リム部23と先セル部21をつなぎ支える部分を「テンプル部22」と呼ぶ。
脳波インタフェースシステム1は眼鏡型ウェアラブル機器として実現される。耳電極部11はユーザの耳周辺部に設けられ、顔電極部12はユーザの顔面周辺に設けられる。より具体的には、耳電極部11は眼鏡の先セル部21の内側に設置され、ユーザ10の片側の耳周辺部と接触する。また顔電極部12は、ノーズパッド部24のいずれかの位置において、HMDとユーザの顔面部の皮膚とが接する位置に設置される。なお、顔電極部12が眼鏡のテンプル部22、リム部23に配置されてもよい。 脳波計測判定部13は、HMDのブリッジ部25に設置されている。脳波計測判定部13は、耳電極部11と顔電極部12との電位の差から脳波を計測し、脳波が計測されているか否かを判定する。脳波が計測されていない場合には、出力部14に対し、その事実を知らせる判別結果(信号)を出力する。脳波が計測された場合には、脳波計測判定部13は、当該脳波に基づいてユーザ10がどのメニュー項目の実行を希望しているかを判別する。この処理は後述する。
出力部14は、映像出力を行う機能を有している。出力部14は、ユーザの眼の前、眼鏡のレンズの部分に設置されている。出力部16は、脳波計測判定部13の判別結果に基づいて、その判別結果に対応する情報の表示を行う。たとえば、脳波が計測されなかった場合には、出力部14は、「HMDがずれています。調整してください。」というメッセージを表示し、電極の位置を適切にするようユーザに警告を表示する。一方、脳波が計測された場合には、出力部14は、複数のメニュー項目を順次ハイライト表示する。このハイライト表示を起点として脳波計測判定部13は、ユーザ10がどのメニュー項目の選択を希望するかを判定することが可能になる。また、出力部14は、選択されたメニュー項目に対応する処理が実行された結果を表示する。
以下、主として脳波計測判定部13の動作を説明することにより、脳波インタフェースシステムの基本的な機能を説明する。
脳波が計測されている場合には、脳波計測判定部13は、耳電極部11と顔電極部12との電位の差から脳波を計測し、そのうち、出力部14において視覚刺激の呈示(たとえばメニュー項目のハイライト表示)したタイミングを起点として、200〜400msまでのユーザ10の脳波を抽出して、その特徴信号からユーザが選択したメニュー項目を判別する。そして、その判別結果を出力する。この脳波は「事象関連電位のP300成分」とも呼ばれている。
視覚刺激は、上述のメニュー項目のハイライト以外にも利用される。
たとえば、視覚刺激は、メニュー項目の選択結果の成否の判定でも利用される。より具体的には、フィードバック結果が視覚刺激として呈示されたときに、その視覚刺激の呈示タイミングを起点として、400〜700msまでの脳波を抽出する。この脳波により、呈示されていた結果が予期していたものか間違っていたかを判別することができる。(森川、足立、「事象関連脳電位を用いたユーザビリティ評価手法」、松下テクニカルジャーナル(現パナソニック技報)、Vol.53、No.1、pp.51−55、Oct.2007)
また、視覚刺激は、自動車運転時や歩行時における周辺視野に対する注意量の判定でも利用される。図23は、注意量を判定する際の脳波インタフェースシステムの構成例を示す。この脳波インタフェースシステムは、レンズ部の周辺に複数のLED(たとえばLED235)を有している。各LEDは、ユーザの周辺視野領域において見えるよう配置されている。脳波インタフェースシステムは、ユーザの周辺視野領域の視覚刺激(LED)をランダムな間隔で点灯させ、点灯タイミングから200〜400msまでのユーザの脳波(P300成分)を抽出する。このP300成分の大きさから、脳波インタフェースシステムは、周辺視野に対してどの程度注意を向けていたかを判定することができる。
以下では、メニュー項目のハイライト表示を例として説明する。
メニュー項目がハイライト表示された瞬間から事象関連電位を取得することにより、ハイライト表示されたメニュー項目に対するユーザの反応が得られる。
脳波計測判定部13は、計測された事象関連電位の波形データを、判別基準データベースに蓄積された判断基準と照合し、ユーザがそのメニュー項目の選択を希望したか否かを判定する。判別基準データベースには、種々の被験者に対して行った実験結果が格納されており、たとえば脳波計測判定部13に予め保持されている。
具体的には、あるメニュー項目の選択を希望している被験者に対して複数のメニュー項目を順次ハイライトさせ、ハイライトのタイミングで事象関連電位を取得する。そして、選択を希望するメニュー項目がハイライトされたときの事象関連電位の波形データAと、選択を希望しないメニュー項目がハイライトされたときの事象関連電位の波形データBとをそれぞれ平均化し、それぞれを判別基準データベースとして蓄積する。脳波計測判定部13は、波形データAおよび波形データBのそれぞれをテンプレートとして用い、脳波インタフェースシステム1の操作者であるユーザ10の事象関連電位の波形がどちらの波形に近いか、すなわち、最も近い波形はどれかを、マハラノビス距離に基づいて判別してもよい。
このマハラノビス距離は、データの分散・共分散を考慮に入れたグループの重心からの距離を示す。そのため、マハラノビス距離を用いた判別は、単純に閾値処理によって判別するよりも、識別能力が高い。この結果、ユーザが選択を希望するメニュー項目を判別できる。
このような処理によって、ボタン操作等することなく、脳波によってメニュー項目の選択が実現される。
図6は、脳波インタフェースシステム1のハードウェア構成図である。
耳電極部11と顔面部に装着された顔電極部12はバス131に接続されており、脳波計測判定部13との信号の授受が行われる。脳波計測判定部13は、CPU112aとRAM112bとROM112cとを有している。CPU112aは、ROM112cに格納されているコンピュータプログラム112dをRAM112bに読み出し、RAM112b上に展開して実行する。脳波計測判定部13は、このコンピュータプログラム112dにしたがって、脳波データの検出時および非検出時の処理を切り替えて実行する。ROM111c、ROM112cは書き換え可能なROM(たとえばEEPROM)であってもよい。
出力部14であるディスプレイ14は、画像処理回路121および画面122を有している。画像処理回路121は、CPU112aの結果に従い、選択されたコンテンツ映像表示などの映像信号を画面122へ出力する。
なお、上述のディスプレイ16は、映像機器の制御を想定して、ディスプレイ16が画像処理回路121や画面122を有すると説明した。しかしながら、制御する機器のモーダルの種類に応じて、画像処理回路121や画面122を音声処理回路やスピーカーなどとしてもよい。
上述のコンピュータプログラムは、CD−ROM等の記録媒体に記録されて製品として市場に流通され、または、インターネット等の電気通信回線を通じて伝送される。なお、脳波計測判定部13や画像処理回路121は、半導体回路にコンピュータプログラムを組み込んだDSP等のハードウェアとして実現することも可能である。
次に、本実施形態における特徴のひとつである、電極の配置に関してより詳細に説明する。
図1(b)に示したとおり、耳電極部11は、ユーザ10の耳周辺部の範囲に装着される必要がある。眼鏡の形状を考慮した場合、眼鏡の先セル部21の内側先端に電極を配置することにより、ユーザ10の耳付根後部またはマストイドの位置の皮膚に電極を接触させることが可能となる。
また、図5の例では耳電極部11を右側の先セル部21の内側に設置する例を示した。しかしながら、図3の実験の結果によれば、右側左側の基準電極の位置で精度に大きな違いは無い。よって、耳電極部11を、他方の側(左側)の先セル部21の内側に設置しても同様に高い精度の脳波計測ができる。
顔電極部12は、図1(a)に図示したユーザ10の顔面部の範囲に装着される。通常の眼鏡型形状では、ユーザ10の顔面部において、HMDと強く接している部分は、ユーザ10の耳付根上部からコメカミの位置と鼻根部である。ユーザ10のコメカミでは、ユーザ10の頭を挟み込んでHMDが左右にぶれないように固定され、HMDの重量は、ユーザ10の耳付根上部と鼻根部で支えられている。
出力部14は液晶表示装置などによって構成される。そのため、出力部14は、脳波インタフェースシステム1を構成するハードウェア(図6)の中では、最も重く、また最も大きいといえる。HMDの形状を考慮すると、最も重い出力部14をレンズの位置に有し、かつ、体積が大きい構成要素がレンズ周辺部(前方)に集中している。したがって、HMDの重量は前方に重量が集中し、重心が前方に偏っているため、HMDの重さのほとんどは、ユーザ10の顔面前方(鼻根)の位置で支えられていると考えられる。
そこで、ノーズパッド部24の先端に顔電極部12を配置することで、HMDの重さを顔電極部12が支える形となり、顔電極部12がユーザ10の鼻根横の位置にHMDの重さによって強く接する状態となる。
よって、顔電極部12には、HMDを支える以上の過剰な圧迫はかからず、かつ、HMDを支える力で顔電極部12が支えられることにより、顔電極部12がずれにくくなる。
また、先セル部がユーザ10の耳付根上部と接触し、ユーザ10の耳に引っかかる構造をとることにより、ユーザ10の顔が前方に傾いた場合でも、先セル部がHMDの前方へのズレを軽減し、顔電極部12が適度な圧力でユーザ10の顔面に固定されることにより、顔電極部12のズレや浮きを防ぐことができる。よって先セル部は、耳に引っかかるように曲がった形状をとる必要がある。
上記のように、HMDの重さを支持する位置に電極を配置することで、ヘアバンドのような過剰な圧迫をかけて電極を固定する必要がなくなるため、ユーザのHMD装着負担を軽減できる。
顔面部の電極を鼻根に配置することで、電極が目頭と目尻を結んだ直線の下側に位置し、瞬きに起因するノイズの影響が抑制される。その結果、アーチファクトの少ないきれいな脳波の計測が可能になる。
さらに、耳電極部を、目頭と目尻を結んだ直線233(図23)に対して顔電極部と同じ側に配置することにより、縦方向の眼球運動のアーチファクトを軽減することができる。例えば、耳電極部をマストイド30aや耳後部30d(図1)に配置することにより、目頭と目尻を結んだ直線233に対して、耳電極部は鼻根に配置された顔電極部と同じ側に配置されることになる。耳電極部と顔電極部とが同側に配置されることで、眼球が上下方向に動いた際の電位の影響が耳電極部および顔電極部にほぼ均等に発生する。よって、耳電極部、顔電極部の電位差を計測した際、上下方向の眼電の影響がキャンセルされ、ノイズの少ない脳波計測が可能になる。
尚、本実施形態では、顔電極部12をノーズパット部に配置する例を示したが、それ以外の電極配置も可能である。図7および図8を参照しながら、電極配置の他の例を説明する。
図7(a)に顔電極部12をHMDのリム部23に配置した例を示す。HMDの重さをユーザの眼窩上縁部の位置で支えられるように、HMDのリム部23を加工し、リム部23とユーザ10の眼窩上縁部が接する位置に顔電極部12を配置した例である。図7(b)は、図7(a)に示す脳波インタフェースシステム1をユーザ10が装着した状態を示している。
図8(a)は、HMDのリム部23にさらに異なる加工を施して、顔電極部12を配置した例を示す。これは、リム部23とブリッジ部25を一体化し、先セル部21とリム部23でユーザの頭を挟み込んでHMDを固定する形状とすることで、リム部23でHMD前面の重さを支えるようにした例である。図8(b)は、図8(a)に示す脳波インタフェースシステム1をユーザ10が装着した状態を示している。この場合も、リム部23に配置された顔電極部12がリム部23にかかるHMDの重さにより固定され、ずれにくくなる。
図9は、人間の顔における、耳付根上部から眼窩上縁部の距離の関係を示している。人間の顔の形状において、耳付根上部30eから眼窩上縁部28aまでの距離は、眼窩上縁部28aの下端から上端に行くに従って、短くなっている。すなわち、耳付根上部30eから眼窩上縁部28aの上端までの距離αと、耳付根上部から眼窩上縁部28aの下端までの距離βとを比較すると、前者のほうが短い。
よって、図7(a)に示す脳波インタフェースシステム1の先セル部21の付け根から顔電極部12までの距離をα以上β未満の長さにしておくことにより、先セル部の付け根がユーザ10の耳に引っかかり、先セル部と顔電極部が頭を挟み込むような形でユーザ10の頭に固定される。よってHMDは、耳付根上部に引っ掛けるため、先が曲がっている先セル部が必要となる。これは、先セル部21の付け根から顔電極部12までの距離をα以上β未満の長さにしておくことは、図8の例にも当てはまる。
上記のように装着されることにより、HMDの重量のほとんどは、図5に示した脳波インタフェース装置同様、顔前方の電極に支持されることになり、過剰な圧迫がかからずに顔電極12がユーザ10に押し当てられる。
図5、図7または図8の形状により、HMDの重さを利用して、顔電極部12を固定し、電極がずれにくい脳波インタフェース装置が構築できる。
さらに、上記のようにリム部23においてHMDの重さを支えるようにした場合、HMDのノーズパッド部24を無くすことで、HMDの重さの分散が防げる。ノーズパッド部24を無くし、HMDの重さが集中してユーザの眼窩上縁部28aにかかるようにすると、リム部23に配置された顔電極部12においてHMDが強く支持される状態になり、よりずれにくい状態になる。
尚、本実施形態では、脳波計測判別部13をHMDのブリッジ部25、リム部23に配置する例を示したが、HMDの重量のバランスを考慮し、テンプル部22や先セル部21などHMDのいずれの位置に配置することも、本発明の範疇である。
図10は、顔面片側に装着する脳波インタフェースシステム1の構成例を示す。耳電極部11と顔電極部12とにおいてHMDが強く支持される状態を保つことができるため、この例のように顔面片側に装着する構成であっても、ずれにくい状態でユーザの頭部に長時間装着することができる。
(実施形態2)
実施形態1では、図5、図7、図8、図10に示すように、先セル部をユーザ10の耳付根上部に引っ掛け、ユーザ10の顔面部に接する顔電極部12がHMDの重量を支え、先セル部と顔電極部12で頭を挟み込むような状態で固定する構成を説明した。特に、図7および図8のHMDの例では、図9に示す耳付根上部から眼窩上縁部の上端までの距離αと、耳付根上部から眼窩上縁部の下端までの距離βとの差を利用して、ユーザ10の頭を挟み込む状態でHMDの固定を行った。
しかし、顔や頭部の形状は人によって異なっており、図9に示した距離αおよびβも個人によって異なることが考えられる。よって、先セル部と顔電極部12によるユーザ頭部の挟み込みがうまくいかないケースが考えられる。
また、ユーザ自身はうまく装着しているつもりでも、HMD自体の重さやユーザの動きの影響により、顔面部に接する顔電極部12の位置がずれてきてしまうことが考えられる。このように電極がずれた場合、ユーザ10は自分の目で電極のずれ具合を直接見ることができないため、ユーザ10は電極がずれたことに気づくのが難しい。よって、ユーザ10はHMDを正しく装着しているつもりで脳波インタフェースを動作させても、識別率が低く使用に耐えない状態になってしまう。
本実施形態では、上記のような個人による顔や頭部の形状にかかわらず顔電極部12のずれを少なくするようHMDを固定し、ユーザ10の姿勢や動作の影響により顔面部の電極の位置がずれた場合には、ユーザ10に対して警告音で知らせ、安定した脳波計測が行えるHMD型脳波インタフェース装置を実現する。
図11および図12を参照しながら、図9の距離αやβの個人差に対応することが可能な脳波インタフェース装置の一例を説明する。
図11(a)は本実施形態による脳波インタフェース装置2の構成を示し、(b)は装着時の脳波インタフェース装置2の位置を示す。実施形態1の脳波インタフェース装置1の構成に対し、新たにテンプル部の長さを調節する弾性部111aおよび111bと、弾性部に張力が発生しているかを検出する張力検出部112と、顔電極部12がユーザ10の顔の正しい位置に装着されているかを判別する顔電極位置判別部15とが設けられている。
弾性部111aおよび111bは、テンプル部22に配置され、テンプル部22の長さを調節できる。弾性部111aおよび111bは、たとえばバネやゴムなどの弾性体で形成されている。弾性部111aは、その内部に耳電極部11で検出された信号(脳波信号)を伝達するための信号線を有しており、弾性部111aが絶縁物質であっても耳電極部11で計測した脳波信号を顔電極位置判別部15と脳波計測判定部13にその脳波信号を伝達できる。
張力検出部112および顔電極位置判別部15については、次の図12を参照しながら説明する。
図12は、脳波インタフェース装置1の機能ブロックの構成を示す。以下、図12を参照しながら、脳波インタフェース装置1の各構成要素を説明する。 張力検出部112は、弾性部111aと接続され、弾性部111aにかかる張力の大きさを測定するセンサである。本例では、弾性部111bに対して張力検出部は設けていない。しかしながら、個々に張力検出部を設けてもよい。以下では、張力検出部112と接続された弾性部111aを単に「弾性部111」と記述する。
耳電極部11および顔電極部12は、それぞれユーザ10の耳周辺部、顔面部に装着され、ユーザ10の脳波を計測する。計測された脳波信号は顔電極位置判別部15と脳波計測判定部13に送られる。
顔電極位置判別部15は、HMDのテンプル部やリム部などに設置され、計測された脳波信号を入力として、顔電極部12がユーザ10の額の正しい位置に装着されているか判別を行う。正しく装着が行えていないと判断した場合は、出力部14に対し、ユーザ10への警告を出力するよう指示する。詳しい処理の流れに関しては後述する。
脳波計測判定部13は、出力部14に対し、ユーザ10への視覚刺激呈示を指示する。また、計測された脳波信号から視覚刺激呈示を行ったタイミングを起点とした事象関連電位を抽出し、事象関連電位に含まれる特徴的な信号(N100成分やP300成分など)を用いてユーザが選択したいと思っている選択肢を判別し、出力部14に対して、判別結果を出力する。
出力部14では、ユーザ10に対する視覚刺激の呈示や選択結果の表示、HMD装着に不具合があった場合の警告音呈示、メニュー選択画面、映像音声などを出力する。出力部14は、例えばディスプレイやスピーカなどで構成される。
なお、本実施形態にかかる脳波インタフェースシステム2のハードウェアについても図6と同様である。ただし、張力検出部112としてセンサを追加する必要がある。なお、顔電極位置判別部15については、別途CPU、RAM等を設けてもよいが、図6に脳波計測判定部13を構成するものとして記載されたCPU112aが、顔電極位置判別部15に対応する処理を行うことによって、顔電極位置判別部15として機能してもよい。
図13は、脳波インタフェース装置1の処理の手順を示す。図13を用いて、上述した各ブロックの処理の流れを説明する。
ステップS101において、張力検出部112は弾性部111を監視し、弾性部111に張力が発生したかどうかの計測を行う。たとえば弾性部111がバネで構成されているとき、バネが縮んだ状態かつテンプル部の長さをあらかじめ短くしておくことにより、ユーザ10がHMDを装着した場合、必ず弾性部111に張力が発生する。よって、張力検出部112は、テンプル部22の張力を監視することで、ユーザ10がHMDを装着したタイミングを知ることができる。
張力検出部112は、張力が発生したか否かを検出する。張力検出部112は、片側をテンプル部に固定し、反対側を弾性部111と固定することで、弾性部111にかかる張力を計測する。弾性部111にかかる力と閾値(例えば0(ゼロ)ニュートン)とを比較し、弾性部111にかかる力が閾値を超えた場合をユーザ10がHMDを装着したタイミングとして検知を行う。張力検出部112は、張力計測センサが常に張力を計測し続ける形態でもよいし、弾性部111に張力が発生したときに物理的に接続が確立されるスイッチを有することにより張力が閾値を超えたことを判別する回路であってもよい。
弾性部111aおよび111bが伸縮することにより、ユーザごとに異なる耳付根上部から眼窩上縁部までの長さ(図9の距離α)に対応することが可能になる。
ユーザ10がHMDの装着を検知した後、ステップS102において、顔電極位置判別部15は、耳電極部11、顔電極部12により脳波の計測を行う。脳波信号は顔電極位置判別部15と脳波計測判定部13に出力される。
ステップS103で、顔電極位置判別部15は、計測された脳波信号からユーザ10に装着された顔電極部12の位置が正しい位置に装着されているかの判別を行う。判別方法に関しては後述する。
顔電極部12の位置が最適でないと判断された場合は、処理はステップS104に進み、最適であると判断された場合には、処理はステップS105に進む。
ステップS104において、顔電極位置判別部15は、出力部14に対し警告を呈示する指示を出す。たとえば顔電極位置判別部15は、出力部14において表示すべき警告の映像信号を出力部14に出力する。この指示を受けて、出力部14は、ユーザ10に対し、顔電極部の位置が正しい位置でないことを知らせるための電極ずれの警告を行う。この電極ずれの警告として、出力部14は例えば、スピーカを用いた警告音の呈示や、ディスプレイを用いた警告画面の呈示などを行う。
その後、顔電極位置判別部15は再度、ステップS103の顔電極位置の判別を行い、顔電極部12の位置が最適と判別されるまで繰り返し警告(ステップS104)、判別(ステップS103)が繰り返される。
顔電極部12の位置が正しい位置であると判別されると、ステップS105で、脳波計測判別部13は、耳電極部11、顔電極部12により計測された脳波信号から瞬きや筋電などのノイズ成分の除去を行う。ノイズ成分の除去は、例えば、脳波信号の振幅が±100μVを超えた部分の削除や、FFTにより30Hz以上を筋電とみなしてフィルタ除去する方法などがある。
ステップS106で、脳波計測判定部13は、ノイズ除去した脳波信号から、出力部14が出力した視覚刺激の呈示したタイミングを起点とした事象関連電位の切り出しを行う。脳波計測判定部13は、呈示した複数選択肢の刺激に対応する事象関連電位を抽出し、事象関連電位の特徴信号から、ユーザ10がどの選択肢を選んだのかを判別する。
判別の方法としては、例えば、各選択肢の事象関連電位のP300成分(刺激呈示を0msとした場合の200ms〜400msの区間平均電位)の大きさを比較し、最も大きなP300成分を持つ選択肢の刺激を、ユーザ10が選択した選択肢として判別する。判別結果は、出力部14に出力される。
ステップS107で、出力部14は、判別された結果を液晶画面などのディスプレイデバイスを利用してユーザ10にフィードバックする。また、ユーザ10が選択した選択肢の内容にしたがって、映像や音声の出力を行う。
なお、ステップS101の処理を省略してもよい。HMDに電源を投入したタイミングを、ユーザ10がHMDを装着したタイミングであると見なして、ステップS102以降の処理を行ってもよい。または脳波インタフェース装置1が動作するときには、ユーザ10がHMDを装着しているとしてステップS102以降の処理を行ってもよい。
図14は、図13のステップS102、ステップS103およびステップS104に示した顔電極位置判別部15の処理の詳細な手順を示す。
ステップS102では、図13のステップS102と同様、顔電極位置判別部15は、電極部11、顔電極部12により脳波の計測を行う。
ステップS201で、顔電極位置判別部15は、計測された脳波信号に瞬きに起因した信号が含まれているかを検出する。瞬きの検出方法の詳細を以下に説明する。
図15を用いて、瞬きに起因した信号の特徴を説明する。図15(a)は、耳電極部11を右マストイド、顔電極部12を右眼窩上縁部に装着し、瞬きをした場合の脳波信号の例である。図15(a)のプラス方向にとがった形状をしている信号が、瞬きに起因する脳波信号である。脳活動に起因する脳波信号の電位は通常±100μV以内で計測されることを考慮すると、瞬きに起因する信号は±100μVを超える振幅を有していることがわかる。また、図15(b)は、図15(a)の信号にFFTをかけて周波数解析した結果を示す。瞬きに起因した脳波信号は、一般的にδ帯域(0.5Hz〜4Hz)に出現するといわれている(たとえば特開2004−350797号公報の段落0024)。今回の実験結果では、瞬きに起因した信号を含む場合、1.7Hz〜2.2Hzに強い反応が出ていることがわかる。そこで以下の説明では、1.7Hz〜2.2Hzの周波数帯を瞬きに起因した脳波信号の検出の周波数帯の一例として説明を行う。
上記の特徴を利用し、計測した脳波信号が1.7Hz〜2.2Hzの周波数帯の信号を含み、その信号が±100μVを超えているかを判定することにより、脳波信号に瞬きに起因した信号が含まれているかを判別できる。例えば、脳波信号に1.7Hz〜2.2Hzのバンドパスフィルタをかけることにより、瞬きに起因する波形のみを抽出し、その波形の振幅が100μVを超えているかを判別する。
ステップS201にて瞬きが存在しないと判別された場合は、顔電極部の位置検出は行わずに、図13のステップS105で説明したように、脳波計測判別部13による処理が行われる。
ステップS201にて瞬きが存在した場合、顔電極位置判別部15は、脳波インタフェース装置1が顔面の下方/上方のいずれかにずれたのか判別を行う。脳波インタフェース装置1のずれ、すなわち顔電極部12のずれの方向を判別する方法を、図16を用いて説明する。
図16(a)〜(c)は、耳電極部11を右マストイド、顔電極部12を右眼窩上縁部に装着し、瞬きをした場合の脳波信号の例である。脳波信号の計測は、ポリメイトAP−1124(デジテックス製)を使用し、サンプリング周波数は200Hz、時定数は1秒、フィルタは30Hzのローパスフィルタをかけ、アクティブ電極を利用して行った。また計測位置は、右眼黒目中心からの距離6cm、4.5cm、3cmの位置を眼窩上縁部の上部、中部、下部として電極を配置した。
図16(a)は眼窩上縁部の上部に顔電極部12を配置した場合の脳波信号を示し、図16(b)は眼窩上縁部の中部に顔電極部12を配置した場合の脳波信号を示し、図16(c)は眼窩上縁部の下部に顔電極部12を配置した場合の脳波信号を示している。図16(a)、(b)および(c)に示されるように、顔電極部12が眼窩上縁部の上方から下方に行くにしたがって、瞬きに起因する信号の振幅が大きくなっていることがわかる。これは、先に図22を参照しながら説明したように、陽性に帯電した眼球の角膜とまぶたとが瞬きによってこすられ、角膜の陽性の電位がまぶたに伝わったためと考えられる。眼窩上縁部の下部の方がノイズが大きい理由は、眼窩上縁部の下部が角膜により近く、陽性の電位の影響が大きく出たためといえる。
よって、瞬きに起因する信号の振幅の大きさを計測することで、顔電極部12が眼窩上縁部のどの位置に装着されているかの予測が可能となり、顔電極部12が適正な位置に装着されているかの判別を行うことができる。
顔電極部12のずれ判別として、図14のステップS202において、顔電極位置判別部15は、瞬きに起因する信号(計測した脳波信号の1.7Hz〜2.2Hzの周波数帯の信号)の振幅を計測し、その振幅が上限閾値を超えているかを判別する。上限閾値は、図16(c)に基づいて設定すると、例えば1200μVに設定される。
信号の振幅が上限閾値よりも大きい場合、顔電極部12の位置が眼窩上縁部の下方にずれていると判別される。そこで、ステップS203で顔電極位置判別部15は、出力部14に対し、ユーザ10へ「HMDが下方にずれている」こと、または「HMDを上方に移動させるべき」ことを知らせる警告を呈示するよう指示する。出力部14は、ディスプレイやスピーカを利用して、ユーザ10への警告表示や警告音を鳴らすなどの警告呈示を行う。
図17(a)および(b)を参照しながら、図6に示すディスプレイ14を利用してユーザに警告を呈示する例を示す。図17(a)は、ディスプレイ上に「HMDが下方にずれています。調整してください」という文字を表示することで、ユーザに調整の指示を与えるものである。この場合、文字列を点滅させるなどしてHMDのずれが改善されるまで呈示をし続けてもよいし、ずれが発生した直後5秒間など一定時間の表示を行ってもよい。
また図17(b)は、ディスプレイ14上に、アイコンを利用してユーザに警告を呈示する例である。HMDが下方にずれている場合、HMDを上方に移動させる必要があるため、ディスプレイ上にHMDを調整する方向などの上向き矢印アイコンを表示する。
信号の振幅が上限閾値以下であった場合、図14のステップS204にて、顔電極位置判別部15は、瞬きに起因する信号の振幅が下限閾値よりも小さいか否かを判別する。図16(a)に基づけば、下限閾値は、例えば400μVに設定される。
信号の振幅が下限閾値よりも小さい場合、顔電極部12の位置が眼窩上縁部の上方にずれていると判別され、ステップS205で顔電極位置判別部15は、出力部14に対し、ユーザ10へ「HMDが上方にずれている」ことを知らせる警告を呈示するよう指示する。出力部14は、ディスプレイやスピーカを利用して、ユーザ10への警告表示や警告音を鳴らすなどの警告呈示を行う。この場合の警告表示方法も、上述の呈示方法と同様である。
信号の振幅が下限閾値以上であった場合、顔電極部12はユーザ10の眼窩上縁部に正しく装着されていると判別され、ユーザ10への警告表示は行わない。
顔電極位置判別部15は、上記の図14に記載の処理の流れで、脳波インタフェース装置1の位置の判別を継続する。
上記のように、顔電極位置判別部15は、瞬きに起因する信号の振幅が予め定められた上限閾値および下限閾値の間に入っているか否かに応じて、顔電極部12の位置を判別する。ここで顔電極位置判別部15は、計測した脳波信号の1.7Hz〜2.2Hzの周波数帯の信号を瞬きに起因する信号として採用する。そして、瞬きに起因する信号の振幅が上限閾値と下限閾値との間に入っていない場合には、HMDは正しく装着されていないと判断されるため、顔電極位置判別部15は、出力部14を介してユーザ10に警告を与える。この警告は、HMDがずれていること、または、HMDのずれを修正すべき方向などの、ユーザに対してずれの存在を告知する情報である。これにより、(1)個人ごとに異なる顔の形により脳波インタフェース装置1の装着位置がずれやすくなってしまう場合、(2)脳波インタフェース装置1の自重により装着位置が少しずつ下方にずれてしまう場合、(3)ユーザ10の動作、姿勢などにより、脳波インタフェース装置1の位置が変化してしまった場合などの、ユーザ10自身が脳波インタフェース装置1のずれに気づかない状態でもユーザ10に脳波インタフェース装置1を正しく装着するよう注意を促すことが可能になる。上記の警告により、常に正しい電極位置で脳波を計測することができるようになり、安定した精度で脳波インタフェースが動作させることができる。
尚、本実施形態では、顔電極部12の位置の判別に瞬きの振幅を利用する方式を用いたが、眼球運動に起因する信号の振幅の大きさや、脳波信号の振幅や形状のマッチングを行うことにより、判別を行ってもよい。
尚、本実施形態では、脳波インタフェース装置1の装着が不適切な場合に、出力部14よりユーザ10に警告を呈示する例を示したが、装置の装着が適切に行われている状態においても、ユーザへのHMD装着状態の呈示を行ってもよい。呈示の例を、図18を用いて説明する。
図18(a)は、出力部14により装置に備えられたLEDや図6のディスプレイ14を利用して、正しく設定された状態は「青色」、ずれている場合は「赤色」のようにアイコンの色で装着状態を表示する例である。また、図18(b)は、ディスプレイ14またはLED180上に、眼窩上縁部の範囲を示すバーを表示し、顔電極位置判別部15が判別した顔電極部12の位置をリアルタイムにユーザ10に呈示することによりHMDの装着状態を通知する例を示す。
以上、本発明の実施形態を説明した。
上述した各実施形態に関連する図面では、電極は脳波計測で一般的に利用されている円形の皿電極を示した。しかしながら、これは一例であり、他の形状の電極を採用してもよい。
図19は、種々の形状の電極を示す。図19(a)は四角い形状の電極を示し、図19(b)は長い電極(たとえば楕円や長方形)を示し、図19(c)は、表面に突起191を含む電極を示している。
また、上述した各実施形態に関連する図面では、先セル部21の形状は一般的な眼鏡の先セル部の形状と同じであるとした。先セル部21についても、他の形状を採用してもよい。
図20(a)は、先に説明したテンプル部の先端がカーブした形状の先セル部21aを示している。
図20(b)は、テンプル部に突起をもたせ、ユーザ10の耳上部に引っかかる形状の先セル部21bを示している。また図20(c)は、先セル部に代えて、テンプル部またはリム部に設置された紐を示す。この紐(またはゴム)により、脳波インタフェースシステム1をユーザ10の耳に固定する。また、図20(d)は、テンプル部に挿入することで取り外し可能な先セル部21dを示している。また、上記の電極の形状を含めて考えると、先セル部の一部に耳電極部11が配置されるだけでなく、耳電極部11自体が先セル部の形状となっている場合も考えられる。
さらに、実施形態2において説明した弾性部111(図11等)の具体的な構成も種々考えられる。
図21(a)〜(c)はそれぞれ弾性部111および張力検出部112を含むテンプル部の一部を図示している。
図21(a)は、実施形態2で言及した、バネを含む弾性部210aを示している。細い実線はテンプル部で、破線は弾性部210aを示す。弾性部111の中にバネなどの弾性体が含まれ、弾性体の片側が張力検出部112と接続され、反対側が先セル部側のテンプル部と接続されている。弾性体が伸びると張力検出部112に接続された弾性体の位置に力が加わり、張力検出部112は張力の検出が可能となり、ユーザ10のHMD装着タイミングを検出することができる。また、耳電極部11の脳波信号を伝達するための信号線は、弾性体の内部または外部を通して、顔電極位置判別部15や脳波計測判定部13と接続される。
図21(b)は、弾性体がバネではなく、ゴムの例を示している。このように、弾性体は、バネやゴムなどに限らず、長さを変化させることが可能な様々な弾性体を利用することができる。
さらに図21(c)は、弾性部111中に弾性体ではなくスライド式の固定具210cが含まれている例を示している。これはテンプル部が段階的に長さを調節できる機構となっており、一方のテンプル部の突起が他方のテンプル部の穴にはまることにより、長さの固定を可能としている。張力検出部112は、上記両方のテンプル部に接続され、テンプル部の突起がはまっている穴の位置、もしくは、上記両方のテンプル部にかかる張力を検出することにより、ユーザ10のHMD装着タイミングを検出する。尚、上記の長さの調節の方法は一例であり、段階的ではなく、ねじ等で無段階に長さを調節できる機構も本特許の範疇である。
本発明にかかる脳波インタフェース装置では、顔面部において脳波計測をする場合に広く利用可能であり、両眼の前にレンズを有する眼鏡型のHMDにとどまらず、図10に示す顔面片側に装着するウェアラブルデバイスなど顔面部に装着するウェアラブル機器において、脳波を利用したインタフェースを構築する際に利用可能である。
1 脳波インタフェース装置
10 ユーザ
11 耳電極部
12 顔電極部
13 脳波計測判定部
14 出力部
15 顔電極位置判別部

Claims (4)

  1. ユーザの頭部に装着される、眼鏡型の脳波インタフェースシステムであって、
    ユーザに視覚刺激を呈示する出力部と、
    装着されたときに前記ユーザの耳に接する位置に配置された耳電極部と、
    装着されたときに前記ユーザの目尻と目頭を結ぶ直線よりも下側で前記ユーザの顔面部に接し、前記眼鏡型の脳波インタフェースシステムの重量を支持する位置に配置された顔電極部と、
    前記視覚刺激が呈示されたタイミングを起点にして、前記耳電極部と前記顔電極部の電位差に基づいて脳波信号を計測する脳波計測判定部
    前記ユーザの脳波信号のうち、前記ユーザの瞬きに起因する信号の振幅が、予め定められた上限閾値および下限閾値の間に入っているか否かに応じて、前記顔電極部の位置を判定する顔電極位置判別部
    を備えた、脳波インタフェースシステム。
  2. 前記脳波計測判定部は、前記耳電極部および前記顔電極部の電位差に基づいて前記脳波信号を計測し、
    前記顔電極位置判別部は、計測された前記脳波信号のうちの、所定の周波数帯の信号を、前記ユーザの瞬きに起因する信号として採用する、請求項に記載の脳波インタフェースシステム。
  3. 前記顔電極位置判別部は、計測された前記脳波信号のうちの、1.7Hz〜2.2Hzの周波数帯の信号を、前記ユーザの瞬きに起因する信号として採用する、請求項に記載の脳波インタフェースシステム。
  4. 前記ユーザの瞬きに起因する信号の振幅が、前記上限閾値よりも大きい場合、または、前記下限閾値よりも小さい場合には、前記出力部は、前記眼鏡型の脳波インタフェースシステムがずれていることを示す警告を呈示する、請求項に記載の脳波インタフェースシステム。
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