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JP4647370B2 - 繊維強化炭化ケイ素複合材料及びその製造方法 - Google Patents

繊維強化炭化ケイ素複合材料及びその製造方法 Download PDF

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JP4647370B2
JP4647370B2 JP2005112348A JP2005112348A JP4647370B2 JP 4647370 B2 JP4647370 B2 JP 4647370B2 JP 2005112348 A JP2005112348 A JP 2005112348A JP 2005112348 A JP2005112348 A JP 2005112348A JP 4647370 B2 JP4647370 B2 JP 4647370B2
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Description

この発明は、宇宙用、地上用の大型望遠鏡や高温用構造部材に適した炭素繊維強化炭化ケイ素複合材料(以下、C/SiC複合材料と適宜称す)及びその製造方法に関するものである。
炭化ケイ素セラミックスは、高温耐食部材用、ヒーター材用、耐摩耗部材用や、さらには研削材、砥石などの用途に幅広く用いられているが、破壊靭性値が低いために高温用構造部材として実用化されていない。
このため、セラミックスの靭性を向上させることを目的として、繊維状の強化材を複合化させたセラミックス複合材料が提案されている。一般的に、繊維強化炭化ケイ素複合材料は、有機金属ポリマーの含浸、熱分解焼成の繰り返し法、化学蒸着法(CVI法)、シリコン溶融含浸法(反応焼結法)などにより製造されている。
しかしながら、有機金属ポリマーの含浸、熱分解焼成の繰り返しにより製造する方法では、一回の含浸で密度も強度特性も低いものしか得られない。この方法で強度特性を上げるには、10回程度の含浸・焼成を繰り返して開気孔率を少なくとも10%以内に減少する必要がある。このため、製造期間が長くなって、実用化には大きな問題点がある。
また、化学蒸着法では、1100℃程度の比較的低温で、かつ複雑な形状のものも製造し得るが、充填に数週間という長時間を要する上、使用するガスが有毒であるなどの欠点がある。しかも、当該方法、又は、上述した有機金属ポリマーの含浸、熱分解焼成の繰り返しにより製造する方法のみでは開気孔率が5%以下の複合材料を得ることは非常に困難である。
反応焼結法は、反応時間も短く、短期間に緻密な複合材料が製造できるという長所がある。従来のシリコンの溶融含浸法による繊維強化炭化ケイ素系複合材料の製造には、繊維束部分を樹脂からのガラス状炭素で緻密に覆い、シリコンと樹脂からの炭素との体積減少を伴った炭化ケイ素生成反応により生じるポーラスな部分をマトリックスの特定部分のみに生成させ、このポーラスな部分にシリコンの溶融含浸を行うものが提案されている。これにより、繊維強化炭化ケイ素複合材料を、繊維表面にBN等のコーティングを施すことなく、製造することが可能である。
例えば、特許文献1には、上述したシリコンの溶融含浸法による繊維強化炭化ケイ素系複合材料の製造方法が開示されている。この方法を簡単に説明すると、先ずシリコン粉末と炭素源としての樹脂と繊維からなるプリプレグを製作し成形するか、或いは、樹脂を含んだ繊維のプリプレグ、シリコン粉末及び樹脂を含んだプリプレグを交互に積層して成形する。
次に、不活性雰囲気下で900〜1350℃程度の温度で炭素化する。続いて、得られた複合材料に樹脂を含浸し、再び不活性雰囲気下で900〜1350℃程度の温度で炭素化する。この樹脂含浸及び炭素化処理を繰り返した後、真空或いは不活性雰囲気下で1300℃以上の温度で反応焼結する。
この後、最終的に真空或いは不活性雰囲気下において1300〜1800℃程度の温度でシリコンを溶融含浸する。これにより、繊維強化炭化ケイ素複合体を得る。このようにして得られた複合材料は、非線形な破壊挙動を示し緻密質であるとされる。
特開2000−313676号公報
従来のC/SiC複合材料の製造方法では、強化繊維としての炭素繊維に連続繊維を用いてプリプレグを作製し、それを積層して成形している。このため、強化繊維の配向の影響によりC/SiC複合材料の材料物性に異方性が生じてしまい、この成形体を各種構造部材に適応する際に構造設計が複雑になり汎用性が低かった。
また、C/SiC複合材料の製造プロセスは、樹脂を含浸及び炭素化(900〜1350℃)を繰り返した後、さらに真空或いは不活性雰囲気下で1300℃以上の温度で反応焼結し、最終的には真空或いは不活性雰囲気下において1300〜1800℃程度の温度でシリコンを溶融含浸して製造するものであった。このため、製造プロセスが比較的長く、製造に長期間を要する。さらに、炭素化や反応焼結において1300℃以上の温度で処理をする必要があり、焼成炉としてかなり特別な仕様の設備が必要である。このため、製造コストがかさむという課題があった。
さらに、従来のC/SiC複合材料の材料物性では、炭素繊維及び炭素マトリックス含有率が高く、これにより焼結SiCと比較して強度や剛性が低いという課題があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、特殊な製造設備を使用しない簡素なプロセスで、製造工程の短縮化、コスト低減を可能とし、材料物性も焼結SiC並みの強度、剛性を有し、かつ異方性のない繊維強化炭化ケイ素複合材料及びその製造方法を得ることを目的とする。
この発明に係る繊維強化炭化ケイ素複合材料は、シリコンとの反応性が異なるピッチ系炭素繊維及びPAN系炭素繊維と黒鉛粉末とを含有し、黒鉛粉末の体積含有率が5%以下、空隙率が30%〜40%の炭素繊維強化炭素基材を形成し、当該炭素繊維強化炭素基材を炭化ケイ素化したものである。
この発明によれば、シリコンとの反応性が異なる複数種類の炭素繊維と黒鉛粉末とを含有し、含有した炭素繊維の一部を炭化ケイ素化したので、シリコンとの反応性の異なる種類の炭素繊維及び炭素マトリックスの組み合わせや配合比率を制御することにより、含有した炭素繊維の一部をシリコンと反応させず残し、残りの炭素質部分をシリコンと反応させて炭化ケイ素化させることが可能となる。これにより、SiC化を促進させることができ、SiC比率の高い組織が得られる。この結果、焼結SiC並みの優れた強度、剛性を有した炭素繊維強化炭化ケイ素基材が製造可能になり、耐熱構造部材への適応性を向上させることができる。
また、この発明では、炭素繊維基材の成形において、シリコンとの反応性が異なる複数種類の炭素短繊維と黒鉛粉末と粉末樹脂の混合体を低圧力で加熱し成形しているため、従来のセラミック等の成形時のような高圧力は必要としない。これにより、内部の炭素繊維が配向せずにランダムに内在するために等方性の物性が得られるという効果がある。
さらに、炭素繊維基材の緻密化処理が不要でありピッチ或いは樹脂含浸プロセスを実施しないため、含浸設備は不要である。さらに、反応焼結プロセスを必要とせず、炭化処理も800℃程度の温度で十分であり、特殊な炭化焼成炉を必要とせず、汎用的な焼成炉で製造が可能であり、製造納期、製造コストが従来より大幅に低減可能となる。
実施の形態1.
本発明では、耐熱構造部材に適した素材として以下の(1)〜(4)に示す条件を満たすものを考える。
(1)比強度、比剛性が高く破壊靭性値が高い素材であること。
(2)従来のC/SiC材のような物性に異方性がなく、等方性であること。
(3)製造プロセスが簡単で、形状製造性が優れていること。
(4)汎用設備による製造が可能で、素材の加工性が優れていること。
本発明は、上記耐熱構造部材に要求される諸特性を得るために、炭素繊維強化炭化ケイ素(以下、C/SiCと称する)複合材料における構成要素の組み合わせ、配合比率の制御、製造プロセスの改善とともに、SiC比率を高め、物性を等方性化することを実現したものである。以下に、実施の形態を説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による繊維強化炭化ケイ素複合材料の製造方法を示す図であり、実質的に炭化ケイ素からなるマトリックスに強化用の炭素繊維が分散されたC/SiC複合材料で耐熱構造材を構成する工程を示している。先ず、図1(a)に示す工程では、シリコンとの反応性の異なる2種類の炭素繊維であるピッチ系炭素繊維とPAN(PolyAcryloNitrile)系炭素繊維との各短繊維1,2、黒鉛粉末3、及び、粉末樹脂4を特定重量比で混合し、ミキサーに装填して均一に混合させて混合体5を得る。
図1(b)に示す工程では、均一に混合された混合体5を成形型に移し、加熱、加圧して一定の形に成型する。この後、型から取り出し、2種の異なる炭素繊維1,2によるハイブリッド炭素繊維、樹脂バインダー及び黒鉛粉末3からなる炭素繊維成形体(炭素繊維基材)6を得る。次に、図1(c)に示す工程に進む。この工程では、炭素繊維成形体6を真空或いは不活性雰囲気中で加熱して樹脂バインダー成分を炭化し、炭素繊維強化炭素(以下、C/Cと称する)複合材料によるC/C成形体7を得る。
図1(d)の工程では、C/C成形体7を耐熱構造部材の形状に切削加工して耐熱構造部材8を得る。この後、図1(e)の工程に進み、耐熱構造部材8に真空中で熔融金属シリコンを含浸させて炭化ケイ素(C/SiC)化処理を施し、C/SiC成形体9を得る。最後に、図1(e)の工程では、炭素繊維1,2、SiCを主体とした少量の炭素とシリコンを含むマトリックスからなる耐熱構造部材C/SiC成形体9に対して詳細寸法仕上げ加工を施すことにより、C/SiC複合材料の耐熱構造部材10が得られる。
なお、本実施の形態1において、出発原材料としてピッチ系炭素繊維の短繊維1とPAN系炭素繊維の短繊維2とを混ぜる理由は、ピッチ系炭素繊維はシリコンと反応し難いが、PAN系炭素繊維はピッチ系炭素繊維よりシリコンと反応し易いので、この反応性の差を利用して炭素繊維部分もSiC化反応させてSiCの生成比率を高めるためである。
また、黒鉛粉末を添加する理由は、炭素マトリックスの生成において樹脂だけを用いて炭素化して炭素マトリックスを生成すると、炭素マトリックスが炭素繊維成形体中に凝集し偏在してしまうためである。このように、黒鉛粉末3を添加して炭素マトリクスの凝集による偏在を改善することにより、シリコンとの反応性が改善されてSiCの生成比率を高めることが可能となる。
ピッチ系炭素繊維だけを使用した場合、SiC化を促進さるためには、シリコン含浸温度を高くし、さらに反応時間を長くする必要がある。しかし、シリコン含浸処理は減圧下で行うので、温度を上げたり、処理時間を長くすると、シリコンが気化し易くなり、気化・消失により基材に多量のボイドが発生する。
このボイドは、強度低下の原因となり、好ましくない。また、シリコンが気化されると、処理設備内部に多くのシリコンが付着したり、シリコンとの反応によって設備内部の劣化、排気ラインへのシリコン蒸気の引き込み等の影響がある。それ故、高温での含浸処理や長時間処理は実際上困難である。
一方、PAN系炭素繊維だけを使用して作成した場合、容易に脆化し、所望の材料強度を得ることができない。
さらに、ピッチ系炭素繊維及びPAN系炭素繊維のみを使用し、黒鉛粉末を使用しない場合、粉末樹脂の使用量を多くする必要があり、炭素化により生成した炭素マトリックスが凝集するためにSiC化され難い。この条件でSiC化を促進させるためには、シリコン含浸温度を高くし反応時間を長くする必要があり好ましくない。
以上のように、この実施の形態1によれば、耐熱構造部材に用いられるC/SiC複合材料の製造出発原材料としての炭素繊維基材の成形プロセスにおいて、ピッチ系とPAN系の2種の短炭素繊維1,2と黒鉛粉末3と粉末樹脂4とを混合し成形した炭素繊維成形体6を、さらに炭素化したC/C成形体7を得ることを特徴とする。このような原材料の使用により、C/SiC複合材料において、高強度、高剛性、などの優れた特性が得られる効果がある。これにより、汎用性の高い高性能な複合材料の耐熱構造部材が製造可能になる。
実施の形態2.
本実施の形態2は、上記実施の形態1で説明した複合材料の耐熱構造部材において、炭素繊維基材の構成要素として用いるピッチ系炭素繊維の平均繊維長を1mm以下とし、PAN系炭素繊維の平均繊維長を0.5mm以下、黒鉛粉末の粒度を100μm以下と規定したことを特徴とするものである。
ピッチ系炭素繊維の平均繊維長が1mmを超えるか、又はPAN系炭素繊維の平均繊維長が0.5mmを超え、さらに黒鉛粉末の粒径が100μmを超える場合、C/SiC成形体において、炭素繊維の均一な分散が得られにくくなり、等方性の材料物性が得られない場合があるという問題が生じる。
そこで、本実施の形態2では、炭素繊維基材の構成要素として用いるピッチ系炭素繊維の平均繊維長を1mm以下、PAN系炭素繊維の平均繊維長を0.5mm以下、黒鉛粉末の粒径を100μm以下と規定する。これにより、上記基材において炭素繊維が均質に分散するようになり、炭化ケイ素化工程でシリコンとPAN系炭素繊維との反応が、好ましい程度に促進され、C/SiC成形体におけるSiC比率が適度に増大するとともに、SiC組織を均一に分散させる効果がある。その結果、C/SiC成形体は、異方性の物性を示さず、等方性の物性になり、機械的強度・剛性が向上する。
実施の形態3.
本実施の形態3では、上記実施の形態1又は上記実施の形態2において、炭素繊維基材における炭素繊維の体積含有率を15%以上40%以下とし、さらに炭素繊維基材における空隙率を30%〜40%と規定したものである。
つまり、本実施の形態3は、耐熱構造部材として実用可能な諸特性を得るために、炭素繊維の体積含有率を上記範囲内とするものである。炭素繊維基材におけるピッチ系及びPAN系の2種類の炭素繊維による総計体積含有率が15%未満であると、シリコン含浸前のC/C基材が、マトリックスと炭素繊維との分散性及び含有量が不十分となる。このため、金属シリコン含浸によるSiC反応が不十分となり、多くの未反応シリコンが内在してしまい、さらに反応後の炭素繊維含有量が少ないものとなってしまう。
その結果、十分な機械的強度、剛性が得られなかったり、熱膨張係数が大きくなるという問題が生じる場合がある。また、炭素繊維の体積含有率が40%を超える場合は、繊維を均質分散させるのが困難になるため、物性に異方性が生じてしまい、シリコン含浸がしにくいという問題がある。
そこで、本実施の形態3では、炭素繊維基材における炭素繊維の体積含有率を上述のような適切な範囲に規定することにより、最終製品としてのC/SiC複合材料の耐熱構造部材において、等方性の物性を有し、曲げ強度、破壊靭性値などにおいて従来より優れた特性が得られ、実用に適した耐熱構造部材を得ることができる。特に、優れた機械的強度、剛性が得られる効果がある。
以下に、本発明の実施例について説明する。
実施例1.
ピッチ系炭素繊維として平均繊維長さが200μmのもの(三菱化学(株)製K7351Mのミルドファイバー)を用い、PAN系炭素繊維として平均繊維長さが130μmのもの(東レ(株)製MLD−300のミルドファイバー)を用いた。また、黒鉛粉末には和光純薬工業(株)製の黒鉛粉末を用い、さらに粉末樹脂は群栄化学(株)製PG652を使用した。
これらピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、黒鉛粉末、粉末樹脂を重量比で56:117:99:12.4の比率で混合し、V型ミキサーを用いて均一な混合体になるように混合させた。この後、当該混合体を金型に移しプレスで加圧して一定の形状に成型した。これにより、炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂からなる炭素繊維成形体を得た。この成形体に含まれる炭素繊維の体積含有率は約31.5%であり、黒鉛粉末の体積含有率は約2%であった。
次に、この成形体を不活性雰囲気(真空中或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガス)中で約800℃まで昇温することにより炭素化してC/C化した。このC/Cの成形体の空隙率は約38.5%であった。続いて、作成したC/Cの成形体を真空中で1700℃に加熱し、金属シリコンを熔融させて含浸することによりC/SiC化した。
こうして得られた、C/SiC複合材料成形体を解析したところ、マトリックス炭素とPAN系炭素繊維は、含浸したシリコンと殆ど反応してSiCに変化していたが、ピッチ系炭素繊維は殆ど反応していないことが確認された。また、C/SiC複合材料成形体のボイドはシリコン含浸によってほぼ完全に埋まっており、ボイドは1%以下であった。
この複合材料成形体の特性を評価したところ、図2に表で示すような値となり、従来のC/SiC複合材料より、約3倍の強度、1.5倍以上のヤング率、1.5倍以上の破壊靭性値になり、さらに物性の異方性が解消されて、等方性の物性であった。
実施例2.
ピッチ系炭素繊維として平均繊維長さが200μmのもの(三菱化学(株)製K7351Mのミルドファイバー)を用い、PAN系炭素繊維として平均繊維長さが130μmのもの(東レ(株)製MLD−300のミルドファイバー)を用いた。また、黒鉛粉末には和光純薬工業(株)製の黒鉛粉末を用い、さらに粉末樹脂は群栄化学(株)製PG652を使用した。
これらピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、黒鉛粉末、粉末樹脂を重量比で61.9:119.2:106:31の比率でV型ミキサーを用いて均一な混合体になるように混合させた。この後、当該混合体を金型に移し、プレスで加圧して一定の形状に成型した。これにより、炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂からなる炭素繊維成形体を得た。
この成形体に含まれる炭素繊維の体積含有率は約33%であり、黒鉛粉末の体積含有率は約5%であった。次に、この成形体を不活性雰囲気(真空中或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガス)中で約800℃まで昇温することにより炭素化してC/C化した。このC/Cの成形体の空隙率は、約32%であった。続いて、作成したC/Cの成形体を真空中で1700℃に加熱し、金属シリコンを熔融させて含浸しC/SiC化した。
こうして得られたC/SiC複合材料成形体を解析したところ、マトリックス炭素とPAN系炭素繊維は、含浸したシリコンと殆ど反応してSiCに変化していたが、ピッチ系炭素繊維は殆ど反応していないことが確認された。また、C/SiC複合材料成形体のボイドは、シリコン含浸によってほぼ完全に埋まっており、ボイドは1%以下であった。
この複合材料成形体の特性を評価したところ、図2に表で示すような値となり、強度、ヤング率、破壊靭性値が従来のC/SiC複合材料より改善され、物性が等方性になっていることが確認できた。
実施例3.
ピッチ系炭素繊維として平均繊維長さが200μmのもの(三菱化学(株)製K7351Mのミルドファイバー)を用い、PAN系炭素繊維として平均繊維長さが130μmのもの(東レ(株)製MLD−300のミルドファイバー)を用いた。また、黒鉛粉末には和光純薬工業(株)製の黒鉛粉末を用い、さらに粉末樹脂は群栄化学(株)製PG652を使用した。
これらピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、黒鉛粉末、粉末樹脂を重量比で108.9:55.7:97.2:24.7の比率でV型ミキサーを用いて均一な混合体になるように混合させた。この後、当該混合体を金型に移し、プレスで加圧して一定の形状に成型した。これにより、炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂からなる炭素繊維成形体を得た。
この成形体に含まれる炭素繊維の体積含有率は約30%であり、黒鉛粉末の体積含有率は約4%であった。次に、この成形体を不活性雰囲気(真空中或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガス)中で約800℃まで昇温することにより炭素化してC/C化した。なお、このC/Cの成形体の空隙率は、約38.5%であった。続いて、作成したC/Cの成形体を真空中で1700℃に加熱することにより金属シリコンを熔融させて含浸しC/SiC化した。
こうして得られたC/SiC複合材料成形体を解析したところ、マトリックス炭素とPAN系炭素繊維は、含浸したシリコンと殆ど反応してSiCに変化していたが、ピッチ系炭素繊維は殆ど反応していないことが確認された。また、C/SiC複合材料成形体のボイドは、シリコン含浸によってほぼ完全に埋まっており、ボイドは1%以下であった。
この複合材料成形体の特性を評価したところ、図2に表で示すような値となり、強度、ヤング率、破壊靭性値が従来のC/SiC複合材料より改善され、物性が等方性になっていることが確認できた。
比較例1.
ピッチ系炭素繊維として平均繊維長さが200μmのもの(三菱化学(株)製K7351Mのミルドファイバー)を用い、PAN系炭素繊維として平均繊維長さが130μmのもの(東レ(株)製MLD−300のミルドファイバー)を用いた。また、黒鉛粉末には和光純薬工業(株)製の黒鉛粉末を用い、さらに粉末樹脂は群栄化学(株)製PG652を使用した。
これらピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、黒鉛粉末、粉末樹脂を重量比で61.9:103.7:6.2:144.9の比率でV型ミキサーを用いて均一な混合体になるように混合させた。この後、当該混合体を金型に移し、プレスで加圧して一定の形状に成型した。これにより、炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂からなる炭素繊維成形体を得た。
この成形体に含まれる炭素繊維の体積含有率は約30%であり、黒鉛粉末の体積含有率は約1%であった。次に、この成形体を不活性雰囲気(真空中或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガス)中で約800℃まで昇温することにより炭素化してC/C化した。なお、このC/Cの成形体の空隙率は、約28%であった。続いて、作成したC/Cの成形体を真空中で1700℃に加熱することにより金属シリコンを熔融させて含浸しC/SiC化した。
こうして得られたC/SiC複合材料成形体を解析したところ、C/SiC成形体にシリコン含浸によるSiC化で発生したクラックが認められた。また、マトリックス炭素とPAN系炭素繊維は、含浸したシリコンと殆ど反応してSiCに変化していたが、ピッチ系炭素繊維は殆ど反応していないことが確認された。
比較例1のように、炭素繊維強化炭素基材の空隙率を28%と小さくすると、上記結果のように、C/SiC成形体でSiC化反応による体積膨張でC/SiC成形体にクラックが発生する。このため、炭素繊維強化炭素基材の空隙率を小さくし過ぎることは、好ましくないことが明らかになった。
比較例2.
ピッチ系炭素繊維として平均繊維長さが200μmのもの(三菱化学(株)製K7351Mのミルドファイバー)を用い、PAN系炭素繊維として平均繊維長さが130μmのもの(東レ(株)製MLD−300のミルドファイバー)を用いた。また、黒鉛粉末には和光純薬工業(株)製の黒鉛粉末を用い、さらに粉末樹脂は群栄化学(株)製PG652を使用した。
これらピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、黒鉛粉末、粉末樹脂を重量比で61.9:103.7:30.9:81.3の比率でV型ミキサーを用いて均一な混合体になるように混合させた。この後、当該混合体を金型に移し、プレスで加圧して一定の形状に成型した。これにより、炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂からなる炭素繊維成形体を得た。
この成形体に含まれる炭素繊維の体積含有率は約30%であり、黒鉛粉末の体積含有率は約5%であった。次に、この成形体を不活性雰囲気(真空中或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガス)中で約800℃まで昇温することにより炭素化してC/C化した。なお、このC/Cの成形体の空隙率は、約42%であった。続いて、作成したC/Cの成形体を真空中で1700℃に加熱することにより金属シリコンを熔融させて含浸しC/SiC化した。
こうして得られたC/SiC複合材料成形体を解析したところ、マトリックス炭素とPAN系炭素繊維は、含浸したシリコンと殆ど反応してSiCに変化していたが、ピッチ系炭素繊維は殆ど反応していないことが確認された。また、C/SiC複合材料成形体には反応し切れなかったSiが多く存在していることが確認された。
比較例2のように炭素繊維強化炭素基材の空隙率を42%と大きくした場合は、上記結果のように、C/SiC成形体でSiC化反応が不十分となり、未反応のシリコンが多く存在する為、強度、剛性が低くなり好ましくないことが明らかになった。
比較例3.
ピッチ系炭素繊維として平均繊維長さが200μmのもの(三菱化学(株)製K7351Mのミルドファイバー)を用い、PAN系炭素繊維として平均繊維長さが130μmのもの(東レ(株)製MLD−300のミルドファイバー)を用いた。また、黒鉛粉末には和光純薬工業(株)製の黒鉛粉末を用い、さらに粉末樹脂は群栄化学(株)製PG652を使用した。
これらピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、黒鉛粉末、粉末樹脂を重量比で61.9:103.7:37.1:84.8の比率でV型ミキサーを用いて均一な混合体になるように混合させた。この後、当該混合体を金型に移し、プレスで加圧して一定の形状に成型した。これにより、炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂からなる炭素繊維成形体を得た。
この成形体に含まれる炭素繊維の体積含有率は約30%であり、黒鉛粉末の体積含有率は約6%であった。次に、この成形体を不活性雰囲気(真空中或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガス)中で約800℃まで昇温することにより炭素化してC/C化した。なお、このC/Cの成形体の空隙率は、約40%であった。続いて、作成したC/Cの成形体を真空中で1700℃に加熱することにより金属シリコンを熔融させて含浸しC/SiC化した。
こうして得られたC/SiC複合材料成形体を解析したところ、C/SiC成形体にシリコン含浸によるSiC化で発生したクラックが認められた。
比較例3のように炭素繊維強化炭素基材の空隙率を40%と大きくしても、黒鉛粉末を6%と多くした場合は、上記結果のように、C/SiC成形体でSiC化反応による体積膨張でC/SiC成形体にクラックが発生する。このため、炭素粉末の配合比率を多くし過ぎることは、好ましくないことが明らかになった。
比較例4.
ピッチ系炭素繊維として平均繊維長さが200μmのもの(三菱化学(株)製K7351Mのミルドファイバー)を用い、PAN系炭素繊維として平均繊維長さが130μmのもの(東レ(株)製MLD−300のミルドファイバー)を用いた。また、黒鉛粉末には和光純薬工業(株)製の黒鉛粉末を用い、さらに粉末樹脂は群栄化学(株)製PG652を使用した。
ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂を重量比でそれぞれ61.9:103.7:0:141.4の比率でV型ミキサーを用いて均一な混合体になるように混合させた。この後、当該混合体を金型に移し、プレスで加圧して一定の形状に成型した。これにより、炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂からなる炭素繊維成形体を得た。
この成形体に含まれる炭素繊維の体積含有率は約30%であり、黒鉛粉末の体積含有率は0%であった。次に、この成形体を不活性雰囲気(真空中或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガス)中で約800℃まで昇温することにより炭素化してC/C化した。なお、このC/Cの成形体の空隙率は、約30%であった。続いて、作成したC/Cの成形体を真空中で1700℃に加熱することにより金属シリコンを熔融させて含浸しC/SiC化した。
こうして得られたC/SiC複合材料成形体を解析したところ、マトリックス炭素の一部がシリコンと反応せずに残っており、SiC化反応が不十分であった。
比較例4のように炭素繊維強化炭素基材の空隙率を30%とし、黒鉛粉末の添加をしなかった場合は炭素マトリックスが多くなり、上記結果のようにC/SiC成形体で未反応のマトリックス炭素が発生し、SiC化反応が不十分となる。このため、炭素繊維強化炭素基材の空隙率を小さくし、黒鉛粉末を添加しないのは、好ましくないことが明らかになった。
比較例5.
ピッチ系炭素繊維を用いず、PAN系炭素繊維として平均繊維長さが130μmのもの(東レ(株)製MLD−300のミルドファイバー)を用いた。また、黒鉛粉末には和光純薬工業(株)製の黒鉛粉末を用い、さらに粉末樹脂は群栄化学(株)製PG652を使用した。
これらPAN系炭素繊維、黒鉛粉末、粉末樹脂を重量比で155.5:6.2:120.2の比率でV型ミキサーを用いて均一な混合体になるように混合させた。この後、当該混合体を金型に移し、プレスで加圧して一定の形状に成型した。これにより、炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂からなる炭素繊維成形体を得た。
この成形体に含まれる炭素繊維の体積含有率は約30%であり、黒鉛粉末の体積含有率は1%であった。次に、この成形体を不活性雰囲気(真空中或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガス)中で約800℃まで昇温することにより炭素化してC/C化した。なお、このC/Cの成形体の空隙率は、約35%であった。続いて、作成したC/Cの成形体を真空中で1700℃に加熱することにより金属シリコンを熔融させて含浸しC/SiC化した。
こうして得られたC/SiC複合材料成形体を解析したところ、C/SiC成形体にシリコン含浸によるSiC化で発生したクラックが認められた。
比較例5のように、炭素繊維強化炭素基材の炭素繊維にピッチ系炭素繊維を用いず、PAN系炭素繊維だけを用いた場合、上記結果のようにC/SiC成形体でSiC化反応による体積膨張でC/SiC成形体にクラックが発生する。このため、PAN系炭素繊維だけを用いることは、好ましくないことが明らかになった。
比較例6.
PAN系炭素繊維を用いず、ピッチ系炭素繊維として平均繊維長さが200μmのもの(三菱化学(株)製K7351Mのミルドファイバー)を用いた。また、黒鉛粉末には和光純薬工業(株)製の黒鉛粉末を用い、さらに粉末樹脂は群栄化学(株)製PG652を使用した。
これらピッチ系炭素繊維、黒鉛粉末、粉末樹脂を重量比で185.6:24.7:109.6の比率でV型ミキサーを用いて均一な混合体になるように混合させた。この後、当該混合体を金型に移し、プレスで加圧して一定の形状に成型した。これにより、炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂からなる炭素繊維成形体を得た。
この成形体に含まれる炭素繊維の体積含有率は約30%であり、黒鉛粉末の体積含有率は4%であった。次に、この成形体を不活性雰囲気(真空中或いは窒素やアルゴンなどの不活性ガス)中で約800℃まで昇温することにより炭素化してC/C化した。なお、このC/Cの成形体の空隙率は、約35%であった。続いて、作成したC/Cの成形体を真空中で1700℃に加熱することにより金属シリコンを熔融させて含浸しC/SiC化した。
こうして得られたC/SiC複合材料成形体を解析したところ、マトリックス炭素と黒鉛粉末は、含浸したシリコンと殆ど反応してSiCに変化していたが、ピッチ系炭素繊維は殆ど反応していないで残っており、さらに炭素繊維が成形面内に配向していることが確認された。
比較例6のように、炭素繊維強化炭素基材の炭素繊維にPAN系炭素繊維を用いず、ピッチ系炭素繊維だけを用いた場合は、上記結果のように炭素繊維が配向する。このため、C/SiC成形体の物性に異方性が生じるため、好ましくない。
この発明係る炭素繊維強化炭化ケイ素複合材料は、焼結SiC並みの強度、剛性を有し、かつ異方性のない材料物性を有することから、宇宙用、地上用の大型望遠鏡や高温用構造部材に適用可能である。
この発明の実施の形態1による繊維強化炭化ケイ素複合材料の製造方法を示す図である。 この発明の実施例、従来のC/SiC及び比較例の材料物性を示す表である。
符号の説明
1 ピッチ系炭素繊維の短繊維、2 PAN系炭素繊維の短繊維、3 黒鉛粉末、4 粉末樹脂、5 混合体、6 炭素繊維成形体(炭素繊維基材)、7 C/C成形体、8 耐熱構造部材、9 C/SiC成形体、10 C/SiC複合材料の耐熱構造部材。


















Claims (3)

  1. シリコンとの反応性が異なるピッチ系炭素繊維及びPAN系炭素繊維と黒鉛粉末とを含有し、黒鉛粉末の体積含有率が5%以下、空隙率が30%〜40%の炭素繊維強化炭素基材を形成し、当該炭素繊維強化炭素基材を炭化ケイ素化した繊維強化炭化ケイ素複合材料。
  2. ピッチ系炭素繊維の平均繊維長が1mm以下、PAN系炭素繊維の平均繊維長が0.5mm以下、黒鉛粉末の粒度が100μm以下であることを特徴とする請求項記載の繊維強化炭化ケイ素複合材料。
  3. シリコンとの反応性が異なるピッチ系炭素繊維及びPAN系炭素繊維、黒鉛粉末及び粉末樹脂を混合して加熱し加圧成形を施して炭素繊維体積含有率が15%〜40%、黒鉛粉末の体積含有率が5%以下、空隙率が30%〜40%の炭素繊維基材を形成する第1工程と、加熱処理にて前記炭素繊維基材を炭化して炭素繊維強化炭素基材を形成する第2工程と、シリコンの溶融含浸により前記炭素繊維強化炭素基材を炭化ケイ素化して炭素繊維強化炭化ケイ素基材を形成する第3工程とを備えた繊維強化炭化ケイ素複合材料の製造方法。
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