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JP4530418B2 - 燃焼圧検知機能付スパークプラグ - Google Patents

燃焼圧検知機能付スパークプラグ Download PDF

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JP4530418B2
JP4530418B2 JP2006047705A JP2006047705A JP4530418B2 JP 4530418 B2 JP4530418 B2 JP 4530418B2 JP 2006047705 A JP2006047705 A JP 2006047705A JP 2006047705 A JP2006047705 A JP 2006047705A JP 4530418 B2 JP4530418 B2 JP 4530418B2
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Description

本発明は、内燃機関の燃焼圧力の測定を行う環状の圧力センサがガスケットとともにスパークプラグによって締め付け固定される構成である燃焼圧検知機能付スパークプラグ関するものである。
エンジン等の内燃機関の点火装置としてのスパークプラグに燃焼圧検知機能を付加した燃焼圧検知機能付スパークプラグは、たとえば特許文献1に記載の圧電素子を内装する圧力検出装置(圧力センサ)を備えたスパークプラグが提案されている。
この圧力検出装置は、スパークプラグの主体金具の雄ねじの後端側に形成された鍔部の座面に当接するように挿嵌され、内燃機関(シリンダーヘッド)へスパークプラグとともに取り付けられる。この取り付けに際しては内燃機関の駆動中にガス漏れを防ぐため、銅またはこれらを主体とする合金からなる環状平板のガスケットが主体金具の座面と圧力検出装置との間に配置される。そして、圧力検出装置内の圧電素子にはスパークプラグの取り付けのための締め付けトルクによって予荷重が掛けられている(特許文献2参照。)。
この圧力検出装置は次のように作動する。内燃機関の燃焼室内で燃料と空気の混合ガスが爆発すると燃焼室内の内圧が上昇する。すると、シリンダーヘッドに取り付けられたスパークプラグは僅かながら軸線方向に変位する。その変位によって圧電素子に掛けられた予荷重が変化し、この荷重の変化に伴い生じた電荷がセンサ出力として取り出される。
実開昭61−57830号公報 特開2002−243569号公報
上記特許文献1においては従前の鉄製のS字、U字形状のガスケットでは所定の出力が得られないこと、また、締め付けトルクに対して出力が大幅に変動してしまうことを解決するために上記材質による環状平板のガスケットを用いることを開示している。また、特許文献2では銅合金のガスケットを使用することは示唆しているものの、ガスケットに求められる特性およびその特性を満足する手段までは言及されていない。
ところで、近年ではエンジンの高出力化の実現に伴い燃焼圧力が増大する傾向や、燃焼圧力によるエンジン制御を行うために高精度なセンサ出力が求められる背景がある。このようなエンジンに対して上記の従来材質によるガスケットでは期待したほどのシール性能、耐緩み性能等が得られないおそれがある。ガスケットが緩んだり気密漏れが生じたりすると燃焼圧力によって生じるスパークプラグの変位が僅少となるため、センサ出力が小さくなり正確な燃焼圧力や燃焼状態を検知することができない。そればかりではなく、エンジンにとっても気密漏れが生じてしまうと、出力や燃費の悪化に結びついてしまう。
そこで本発明者等が鋭意研究を行ったところ、上記性能を得るためにガスケットに求められる特性は、バネ定数が大きいこと、真実接触面積が大きいこと、ガスケットの変位量が小さいこと、応力緩和特性に優れる(応力緩和率が小さい)こと等が重要であることを見いだした。
本発明は上記に鑑みなされたものであって、センサ出力の損失が少なく、気密性が良好で、かつ緩みを抑制することができるガスケットを備えた燃焼圧検知機能付スパークプラグを提供することを目的とする。
その解決手段は、
軸線方向先端側で火花放電を行い、雄ねじの後端側に前記軸線に垂直な方向に突出する鍔部を備える主体金具を有してなるスパークプラグと、
前記鍔部の先端側に配置される環状平板のガスケットと、
感圧素子を備える環状の圧力センサと、
を備えて構成される燃焼圧検知機能付スパークプラグであって、
前記ガスケットは、0.80〜1.20質量%のNi、0.50〜1.10質量%のSn、0.03〜0.07質量%のP、97.63〜98.67質量%のCuとしてなる銅基合金からなり、
前記ガスケットのヤング率をE(kN/mm2)としたときに、
100≦E≦170
を満足するようにすることである。
ガスケットを構成する材料のヤング率が100kN/mm以上であると、ガスケットは弾性変形しにくく機械的に剛である状態を維持することができる。一方、100kN/mm未満であると、スパークプラグを伝搬して伝わる燃焼圧力がガスケットに吸収されてしまうため、圧力センサへ燃焼圧力の変化をリニアに伝搬させることができなくなってしまう。したがってセンサ出力が小さく(損失が大きく)、S/N比(signal-noise ratio)が悪くなる。一方、ヤング率が170を超えるようなものは硬く、スパークプラグを締め付けたときに弾性変形し難く、気密が保てず燃焼ガスが漏洩してしまう。すると、燃焼圧力によってスパークプラグが軸線方向に変位したときに、主体金具の座面とガスケットとの間で微少な隙間が生じてしまい、その隙間から燃焼ガスが漏洩するため正常なセンサ出力が得られなくなってしまう。
一般的に材質のヤング率とばね定数は比例関係にある。ガスケットがスパークプラグの締め付けや燃焼圧力による力F(以後、軸力ともいう)によって弾性変形(変形量x)を生じるとき、その関係式は、ばね定数kを有するばねを変形量xだけ変形させるのに要する力(数式1参照)と同様に考えることができる。ガスケットにかかる軸力が一定であれば、ばね定数kが大きいほど変形量xは小さくなる。変形量xが小さくなれば、ガスケットは燃焼圧力を圧力センサへ伝える際に変形してしまうことが少なくなり、S/N比が改善される。一方、ばね定数kが大きすぎると、変形量x自体は小さくなるもののガスケットが燃焼室の気密を十分保つことができずに燃焼ガスの漏洩が生じてしまい、燃焼圧力が圧力センサに十分伝わらなくなってしまうのである。
(数1)
F=kx
また、前記ガスケットの0.2%耐力が250N/mm以下であるとよい。燃焼圧検知機能付スパークプラグにおけるガスケットの役割は圧力センサへ確実に燃焼圧力を伝達することに加え、ガスケット本来の機能である燃焼ガスの漏洩を抑制する効果(シール性)を備えていることが望まれる。この燃焼ガスの漏洩に関してはガスケットの数式2に示す真実接触面積が問われる。真実接触面積とはその面(スパークプラグの軸線方向を上下方向としたときのガスケットの上下面)に加わる圧力を0.2%耐力で除算した値で表される。この真実接触面積が大きければ、すなわち0.2%耐力が250N/mm以下であると、燃焼ガスの漏洩量を低減する良好なシール性を得ることができる。一方、0.2%耐力が10未満であると、柔らかくシール性は良好であるものの、出力が歪んでしまい、圧力センサとして十分な出力を得ることができない。また、0.2%耐力が250N/mmを超えると、真実接触面積を大きくするためには面に加わる圧力、すなわちスパークプラグのエンジンへの締め付けトルクをスパークプラグごとに規定された値(たとえば主体金具の工具係合部の呼び径がM14では27.5N・m、M12では17.5N・m程度である)を超えて過大としなければならず、スパークプラグを破壊してしまうおそれが生じる。
(数2)
真実接触面積=(面に加わる圧力/面の0.2%耐力)
また、前記ガスケットはさらに自身の表面粗さRyが3.2S以下であることが望ましい。前述の通りガスケットとしての役割のひとつには燃焼室から外部へ燃焼ガスが漏洩してしまうことを防ぐことがある。さらに上記のような圧力センサとともに用いられるガスケットとしては燃焼圧の変動による荷重の変化を圧力センサに精度よく伝達できることが必要である。かような役割を果たす際にガスケットの表面粗さが粗くては気密性が低下、すなわち燃焼室内の気圧が抜け、圧力センサへの荷重の変化がリニアに伝達されないためセンサ出力の精度が悪くなってしまう。そこで、本発明を構成するガスケットの表面粗さは3.2S以下となるようにするのである。
また、前記ガスケットは自身のビッカース硬度がHv60以上90以下であることが望ましい。上記のガスケットが果たす効果を有効に得るためにはガスケットの表面はなめらかであること、すなわち表面粗さが低くなるものを用いることが望ましいといえる。このなめらかな表面を有するガスケットを実現する一助の構成がビッカース硬度をHv60以上90以下とすることである。Hv90を超えてしまうと、スパークプラグをエンジンに規定トルクにて取り付けたときにガスケットは自身に加わる荷重に対して十分に変形することができず、スパークプラグの鍔部やエンジンヘッドとの当接面での密着性低下による気密性の低下が生ずるおそれがある。一方、Hv60の場合、センサ出力として利用できるものの僅かではあるが出力値の低下が確認されている。そのためHv60未満となるとセンサの検出精度に問題が生じるおそれもあり好ましいものではない。なお、Hv70の場合はHv60の場合に生じた低下が確認できなかったため、より望ましくはHv70以上90以下とするとよい。
ところで、従来技術としての銅基合金、たとえば黄銅からなるガスケットであると耐クリープ特性に乏しく、エンジンの駆動・休止に伴う加熱・冷却によりクリープ変形が生じてしまい、スパークプラグをエンジンへ固定する軸力が低下することとなり、使用中にエンジン自身の振動によってねじ緩みが生じてしまう。また、たとえばリン青銅からなるガスケットであると、上記の黄銅よりも初期の耐クリープ特性は勝るものの、繰り返し長時間使用されることによって黄銅同等にまで応力緩和率が低下してしまい、やはりねじ緩みの発生のおそれがある。
そこで、前記ガスケットは0.80〜1.20質量%のNi、0.50〜1.10質量%のSn、0.03〜0.07質量%のP、97.63〜98.67質量%のCuとしてなる銅基合金からなるものとした。銅基合金であって、Niの含有量を0.80〜1.20質量%とすることによって優れた耐クリープ特性を有することができる。これはCuの組織中にNi成分が微細な析出物として存在して耐クリープ特性が上昇するものと推測できる。0.80質量%未満であると、応力緩和特性が小さく、クリープ変形を生じやすくなってしまい、他方1.20質量%を超えてしまうと析出物が大きくなり、Niの性能が色濃く出てしまい、応力緩和特性を高めることができず、優れた耐クリープ特性を得ることができない。また、Snを0.5〜1.10質量%、Pを0.03〜0.07質量%として含有させることで、合金としての堅さを向上させるとともに良好な延性を得ることができる。したがって出力を向上させ、シール性を向上させられるガスケットを得ることができる。
以下、本発明の実施にかかる燃焼圧検知機能付スパークプラグについて図面を参照して説明する。
図1は燃焼圧検知機能付スパークプラグを内燃機関に取り付けた状態における半断面図を示している。このスパークプラグ100は、その全体図を図1に示すように、絶縁碍子10と、絶縁碍子10の長手方向略中央部から先端側に向かって絶縁碍子10の周囲に設けられ当該絶縁碍子10を保持する主体金具20と、絶縁碍子10の内部に保持された中心電極30と、主体金具20に接合された接地電極40と、絶縁碍子10の後端側に設けられた端子金具50と、ガスケット60と、圧力センサ70とから構成されている。
まず、絶縁碍子10について説明する。絶縁碍子10は、長手方向である軸線O方向に沿って自身の内部に軸孔11を有しており、周知のようにアルミナ等を焼成して略筒状に形成されている。軸線O方向略中央部には径方向外向きに突出したダイヤ部12が形成され、ダイヤ部12の後端側には後端側胴部13が形成されている。一方、ダイヤ部12の先端側には後端側胴部13より径小の先端側胴部14、さらに径小で先端へ向かって縮径するテーパ形状に脚長部15が段部16を経て形成されている。後端側胴部13の後端部(図1における上部)には、端子金具50と主体金具20との沿面距離を稼ぐためのコルゲーション17が形成されている。
絶縁碍子10の軸孔11には、先端側胴部14の先端部に段部17を形成し、中心電極30と係合する面を有する。中心電極30はこの段部17に係合するように自身の後端部を径方向に突出させており、ニッケル系合金(たとえばインコネル600等:商標)を棒状に加工してなる。その内部には熱引きを改善するために銅系の合金31が内挿されている。先端部には耐消耗性を向上させるための耐消耗性向上部材32(白金やイリジウム等の貴金属およびそれらの合金もしくはタングステン合金等の卑金属)が接合されている。一方後端側はガラスシール5や抵抗体6を介して電気的に端子金具50に接続されている。この端子金具50には図示外の高圧ケーブルがプラグキャップを介して接続され、高電圧が印加されるようになっている。
中心電極30と火花放電間隙Gを形成する接地電極40は中心電極30同様にニッケル系合金等が用いられる。自身の長手方向の断面は略矩形を有しており、先端部41には耐消耗性向上部材42を設けてもよい。一方、自身の後端側は後端面43を主体金具20の先端面21に、たとえば抵抗溶接によって接合されている。
主体金具20は略円筒形状の鉄系材料からなり、絶縁碍子10の外周にて絶縁碍子10を自身の内周側に保持する。具体的には、主体金具20の内周面には段部22が形成されており、この段部22に絶縁碍子10の段部16が当接される。この段部22と段部16との間には金属製板パッキン7を介在させてもよい。段部22の後端側には絶縁碍子10の先端側胴部14の外径と略同一径の内孔が続く。更に後端側では、内孔はダイヤ部12を収容するために拡径している。このダイヤ部12が収容された部位の外周面にはスパークプラグ100を取り付けるために断面が六角形等の多角形状の工具係合部23が形成される。工具係合部23の後端側では主体金具20の一部が径方向内側へ折り曲げ(加締め)られた加締め蓋24が形成され、絶縁碍子10は主体金具20に一体に固定される。なお、この加締め蓋24を加締める際にはタルク(滑石)8や環状のパッキン9、9を内装し、燃焼室からの燃焼ガスの漏洩を防ぎ、気密性を高めることもできる。工具係合部23の先端側には径方向外向きに全周に突出した鍔部25が形成され、その先端面は座面26として内燃機関ICに取り付けたときに内燃機関ICの外表面に向き合う面を形成している。内燃機関ICに取り付けられる際には、ガスケット60および圧力センサ70を雄ねじ28に挿通させ、工具係合部23によって回胴され、雄ねじ28が内燃機関のプラグホールに設けられた雌ねじへ締め付けられることによってスパークプラグ100が装着される。
この取り付けの際に使用されるガスケット60は次のように作製される。
Niを1.00質量%、Snを0.90質量%、Pを0.05質量%、不可避成分を含み残部をCuとしてなる銅基合金を厚さが1.5mmとなるように板形状に加工する。次いでガスケット外形形状となるように打ち抜き加工を行う。その後、500℃まで1.5時間を要して緩やかに加熱し、500℃の状態を1時間保持する。そして室温まで炉冷することによってガスケットは完成する(焼鈍工程)。なお、ガスケットの形状を整えるための研磨・研削加工等を適宜行ってもよい。
圧力センサ70は概略以下の構成を備える。ケース部材71は、環状の圧電素子72を自身の内部に収容可能な環状底部を形成するステンレス製(たとえばSUS304)の部材である。圧電素子72の一端面側(図2において上面側)には燃焼圧の信号を取り出すための電極板73と、該電極板73とケース部材71との短絡を防止するためのアルミナ等からなる絶縁板74が配置され、この絶縁板74がケース部材71の内面に当接する。他方、他端面側(図2において下面側)にはステンレス製の環状台座75が配置され、環状台座75とケース部材71は当接し、圧電素子72はケース部材71に挟まれる構成となる。なお、ケース部材71の内周面には電極板73との接触および短絡を防止するためにゴム製の絶縁チューブ76が被覆されている。
この圧力センサ70はケース部材71の外方から軸方向に予荷重が与えられた状態で取り付けられ、この予荷重が変化することによって圧電素子72の表面(上面と下面)に電荷を生じ、電極板73およびこの電極板73に接続された出力リード線76によってセンサ出力が取り出される。なお、環状台座75、ケース部材71が導電性の材質を使用しているのでエンジンヘッドと共通電位とすることができる。したがって圧電素子72の下面側には特に出力リード線を必要とはしないが、別途出力リード線によって出力を取り出してもよいことは言うまでもない。
前述の通りに構成されたガスケットはヤング率130kN/mmを有する。そのため、ガスケットのばね定数が大きく、燃焼圧力によって変動するスパークプラグのリフト量(変位量)を感度良く圧力センサに伝えることが可能となり、優れたセンサ出力特性を有することができる。
また、上記ガスケットは0.2%耐力が172N/mmを有する。つまり、250N/mm以下の0.2%耐力を有しているため、真実接触面積は相対的に大きくなり、ガスケットとしての良好に、長期に亘って性能を維持することができる。
以下、本発明のガスケットの効果を確認するための試験を行った。本発明のガスケットを実施例として、比較に使用したガスケットを比較例として表1に示す。なお、表1に示す実施例および比較例1、2は上記本発明と同様に、材料合金を板状に圧延し、打ち抜き加工および焼鈍を行っている。また、さらなる比較のため、比較例3、4については通常のスパークプラグに用いられる断面S字形状のガスケットについても以下の試験を行い、また比較例3については燃焼圧検知機能である圧力センサを備えないスパークプラグ(M14)についても同試験を行っている。以下の評価試験に際して使用したスパークプラグの雄ねじの呼び径はM12のものを使用した。なお、完成したガスケットの寸法は厚さ1.5mm、内径φ12mm、外形φ16.7mmである。
Figure 0004530418
(センサ出力評価試験)
センサ出力の評価試験に関して図3に示す測定系300にて試験を行った。エアチャンバ310は図示外の高気圧空気発生装置を接続する電磁弁AINと、エアチャンバ310と大気とを接続する電磁弁AOUTと、試験測定口311と、基準測定口312を備えている。電磁弁AINおよび電磁弁AOUTは、公知の電磁ソレノイドで開閉する空気弁である。電磁弁AINおよび電磁弁AOUTは、電圧を加えない状態では弁が閉じて空気を遮断し、電圧を加えると弁が開いて通気するように構成されている。
このエアチャンバの310の試験測定口311には呼び径がM12の雌ねじが挿通形成されたアルミブッシュ313が取り付けられる。エアチャンバ310とアルミブッシュ313との接続は両者の当接部位において気密な状態にて接続されており、挿通形成されたねじ孔のみがエアチャンバ310の内外を連通している。このアルミブッシュ313にはスパークプラグ100が取り付けられる。この取り付けに際し、スパークプラグ100の雄ねじ28の後端側にて鍔部25の座面26にガスケット60を当接させて配置し、圧力センサ70はアルミブッシュ313の後端面と鍔部25の座面26との間でガスケット60を介して挟まれる形で予荷重が掛けられる。このスパークプラグ100の取り付けに関し、その締め付けトルクは17.5N・mとしている。
圧力センサ70の出力リード線76はチャージアンプ330(KISTLER社製5011)に入力され、その出力がオシロスコープ350に入力される。また、エアチャンバ310の基準測定口312には基準圧力センサ320(KISTLER社製6052A)が取り付けられており、その出力はチャージアンプ340(KISTLER社製5011)に入力され、その出力がオシロスコープ350に入力に接続される。
測定を行う際には電磁弁AOUTを閉めた状態で電磁弁AINを開口し、2MPaでエアを0.3秒間印加する。エアを印加した後、電磁弁AINを閉じるとともに電磁弁AOUTを開口してエアチャンバ310内の圧力を大気圧まで戻す。この一連の動作は1秒以内に行われ、数秒間連続してチャージアンプ330、340からの出力をオシロスコープ350にて測定する。この測定による出力が安定した時の値を測定値とする。
上記測定値から基準圧力センサ320の出力に対する圧力センサ70の出力の相関を求め、基準圧力センサ320の出力が100%のときの圧力センサ70の出力の低下分を出力ひずみ率として算出したものを図4に示す。
(シール性評価試験)
一方、ガスケット本来の性能であるシール性を確認するために図5に示す測定系400にて評価試験を行った。なお、測定系400はセンサ出力特性評価試験の測定系300と大半の構成を同じとするため、同一の部分については同一の符号を付し、説明を省略する。
エアチャンバ310には電磁弁AINと、試験測定口311とを備える。この試験測定口311へセンサ出力試験と同様にアルミブッシュ313を固定し、このアルミブッシュ313へガスケット60、圧力センサ70を介してスパークプラグ100が取り付けられる。漏洩エア測定ケース410はスパークプラグ100とアルミブッシュ313とを取り囲んで固定されている。この測定ケース410は内部が液体(たとえばエタノール)で満たされ、漏洩したエアによってそのレベル(水位)が変動し、漏洩エア量を測定することができる。このため、漏洩エア測定ケース410にはメスシリンダーのように自身の側面に目盛りが表示されている。また、この漏洩エア測定ケース410には内部に充填する液体やエアを任意に出し入れ可能なよう電磁弁EIOを設けてもよい。
前述の通りシール性は数式2に示したとおりガスケットの真実接触面積に依存するため、真実接触面積をガスケットに加わる荷重から算出する。このガスケットに加わる荷重は測定系400とは別に、ロードワッシャ(KISTLER社製9135AA、図示外)を使用して測定が可能である。この測定した荷重と表1に示すガスケットに固有の0.2%耐力から真実接触面積を算出し、これを横軸とし、エアの漏洩量を縦軸としたグラフが図6である。
なお、このシール性評価試験結果を示す図6には、実車走行の前と後とを想定し、加熱振動試験の前と後とで測定を行っている。加熱振動試験は、アルミブッシュに取り付けたスパークプラグを恒温槽内へ設置し、50℃から200℃まで1.5時間かけて昇温し、200℃を1時間保持、その後1。5時間かけて50℃まで戻す。この温度サイクルを1サイクルとし、8サイクルを行う。前半4サイクルは恒温槽内でスパークプラグの軸線方向に加速度294m/s(30G)、50〜500Hzにて振動させ、後半4サイクルは同条件にて振動方向を軸線に垂直の方向としている。また、初期軸力とはスパークプラグを規定トルクにて取り付けたときにガスケットにかかる軸力を示したものである。
以上の試験結果によれば、ばね定数が小さいと出力ひずみが生じ、圧力センサ70の出力の損失が大きくなることが確認できる。この評価試験によれば本発明である実施例のものはばね定数が大きく、すなわちヤング率が大きいことからスパークプラグのリフト量が微少であっても、ガスケットに応力が吸収されることなく圧力センサへ応力を伝達することが可能であることがわかる。また、ヤング率が大きすぎることもなく、0.2%耐力が250N/mm以下であるので、シール性評価試験の実施例のものはエアの漏洩量も少なく、ガスケットとしての気密性についても優れたものであることが確認できる。
さらにガスケットの表面粗さおよびビッカース硬度がもたらす燃焼圧検知機能付スパークプラグとしての性能検証を行った。
(表面粗さRy)
上記実施例に用いた材料構成(Cu−1Ni−0.9Sn−0.05P)のガスケットを複数用意し、研磨・研削加工を、それぞれ時間を違えて行い、その表面粗さRyを測定する。その結果、表2に示す表面粗さRyがそれぞれ0.5S,1.6S,3.0S,3,2S,10Sであるガスケットを得た。それぞれ表面粗さRyの異なるガスケットを用いて燃焼圧検知機能付スパークプラグを構成し、上記シール性評価試験の測定系を使用し、加熱振動試験を行わないエンジンへの装着初期の状況を想定して表面粗さRyが与える気密性への影響を確認した。なお、表面粗さRyは図7に矢印d1,d2,d3と示す部分に対し、その矢印方向へ表面粗さ計のスライタスを用いて測定し、その平均から表面粗さRyを得ている。また、前述のセンサ出力評価試験やシール性評価試験において実施例に用いたガスケットは表面粗さRyが3.0Sのものである。
Figure 0004530418
この結果、表面粗さRyが0.5S,1.6S,3.0S,3,2Sのものについてはいずれもエアの漏洩量が0ないし0.1ml/min.のオーダーであり良好なものであった(「OK」と表記)。一方、表面粗さRyが10Sのものは50〜100ml/min.のエアの漏洩量であったため、この比較において相対的に劣り「NG」と判定している。この試験および結果から、表面粗さRyは小さいほど気密性がよい傾向が確認されたが、過度に表面をなめらかにすることはその分だけ工数、コストの増大に結びつくため、この観点からは下限値として3.2S程度あればガスケットとして十分にその性能を発揮するものと判断している。
次いでガスケットのビッカース硬度について出力及び気密性に与える影響を確認した。試験品は上記に同じくCu−1Ni−0.9Sn−0.05P製のガスケットを形成した。なお、形成する際に焼鈍条件を種々変化させ、ビッカース硬度が各種異なるように複数のガスケットを作成している。その結果、表3に示すビッカース硬度Hvがそれぞれ60,70,85,90,110であるガスケットを得た。それぞれビッカース硬度が異なるガスケットを用いて燃焼圧検知機能付スパークプラグを構成し、上記センサ出力試験と同様の測定系を使用してセンサ出力を、また、上記シール性評価試験の測定系を使用し、前記同様に装着初期の状況を想定した気密性への影響を確認した。なお、作成したガスケットの硬度は、図8(a)に示すようにガスケットの中心点を通るA−A断面を研磨によって露出させ、露出した2つの断面(図8(b)参照)についてそれぞれ3点(P)ずつビッカース硬度試験器にて測定し、その平均から硬度を得ている。また、上記センサ出力試験、シール性評価試験、表面粗さRyの気密性に与える影響を検証する試験はいずれもビッカース硬度Hv85のものを使用している。
Figure 0004530418
この結果、上記のセンサ出力試験における出力値、すなわちビッカース硬度Hvが85のものを100%としたときに、ビッカース硬度Hvが70,90,110のものはいずれも同程度の出力(100%)が得られたのに対し、ビッカース硬度Hvが60のものは僅かに低下した出力(91%)であったことが確認できた。また、エアの漏洩量については、ビッカース硬度Hvが60,70,85,90のものはいずれも0ないし0.1ml/min.のオーダーで良好であり「OK」と判定した。これに対し、ビッカース硬度Hvが110のものは30ml/min.であったため、この比較において相対的に劣り「NG」と判定した。この結果から、ビッカース硬度Hvは60以上であればいずれもセンサ出力としては問題が無いことが確認できた。しかし、ビッカース硬度Hvが60のものは僅かに出力の低下が認められたため、より望ましくはビッカース硬度Hvは70以上がよいと言える。一方、気密性に関してはビッカース硬度Hvが110のものではエアの漏洩量が他に対して多かったため、ビッカース硬度Hvは90以下であることが望ましいと言える。
以上の如く、本発明を実施例として各種評価を行った。この際、ガスケットは主体金具20の鍔部25の座面26に当接させて取り付けているが、この形態に限定されることなく、ガスケットと圧力センサ70とを入れ替えて装着しても良い。すなわち、圧力センサ70がガスケットと上記座面とに挟まれる形態であっても何ら問題はない。
本発明のガスケットを備えた燃焼圧力検知機能付スパークプラグの全体およびその内燃機関への取り付けの様子を示す半断面図である。 圧力センサおよびガスケット周囲の拡大図である。 センサ出力評価試験の測定系を示す図である。 図3の測定系を使用して得られた、ばね定数と圧力センサの出力ひずみ率との関係を示すグラフである。 シール性評価試験の測定系を示す図である。 図5の測定系を使用して得られた、真実接触面積とエアの漏洩量との関係を示す図である。 ガスケットの表面粗さRyの測定箇所を説明するための上面図である。 ガスケットのビッカース硬度の測定箇所を説明するための(a)上面図、(b)A−A断面図である。
符号の説明
60 ガスケット
70 圧力センサ
100 スパークプラグ

Claims (4)

  1. 軸線方向先端側で火花放電を行い、雄ねじの後端側に前記軸線に垂直な方向に突出する鍔部を備える主体金具を有してなるスパークプラグと、
    前記鍔部の先端側に配置される環状平板のガスケットと、
    感圧素子を備える環状の圧力センサと、
    を備えて構成される燃焼圧検知機能付スパークプラグであって、
    前記ガスケットは、0.80〜1.20質量%のNi、0.50〜1.10質量%のSn、0.03〜0.07質量%のP、97.63〜98.67質量%のCuとしてなる銅基合金からなり、
    前記ガスケットのヤング率をE(kN/mm2)としたときに、
    100≦E≦170
    を満足することを特徴とする燃焼圧検知機能付スパークプラグ。
  2. 前記ガスケットは0.2%耐力が250(N/mm2)以下であることを特徴とする請求項1記載の燃焼圧検知機能付スパークプラグ。
  3. 前記ガスケットは自身の表面粗さRyが3.2S以下であることを特徴とする請求項1または2記載のスパークプラグ。
  4. 前記ガスケットは自身のビッカース硬度がHv60以上90以下であることを特徴とする請求項1ないし3記載のスパークプラグ。
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