JP4515038B2 - MoSi2粉末、同粉末の製造方法、同粉末を用いた発熱体及び発熱体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、573°K〜873°Kの範囲で、MoとSiの同時酸化が起こり、さらにMo酸化物の蒸発減少が伴うという、ペスト(粉化現象)防止できるMoSi2粉末、同粉末の製造方法、同粉末を用いた発熱体及び発熱体の製造方法に関する。
なお、本明細書で使用するMoSi2を主成分として80wt%以上含む基材は、MoSi2基材に絶縁性酸化物であるSiO2を含有させて電気抵抗を増加させたMoSi2を主成分とする発熱体に適用できるものであり、該発熱体に供することのできるMoSi2粉末及び方法である。
【0002】
【従来の技術】
最近、半導体デバイスの微細化及びデバイス製造時間の短縮化と省エネルギー化のために、従来の金属発熱体に替えて、CVD装置や拡散炉等の半導体製造装置に、MoSi2を主成分とする高出力性能の発熱体が利用されるようになってきた。
一般に、半導体製造装置に使用される熱処理炉は炉内の温度分布を厳密に制御するなど、非常に高精度な温度特性が要求されるが、MoSi2を主成分とする発熱体は優れた耐熱特性を有し、金属発熱体の約10倍の表面負荷が可能であり、また急速加熱昇温することができるという大きな特長を有するので、好適な材料と言える。
【0003】
ところが、MoSi2を主成分とする発熱体は573°K〜873°Kの範囲で、MoとSiの同時酸化が起こり、さらにMo酸化物の蒸発減少が伴う、ペスト(粉化現象)という低温酸化が起こるという問題がある。
通常、これを防止するために1500°K以上で酸化処理して緻密なシリカ保護被膜を形成する等、発熱体自体の材料開発がなされている。
【0004】
例えば、ペスト(粉化現象)対策として、二珪化モリブデン系セラミックス発熱体において、MoSi2で表せる組成を有する発熱体の不純物としてFe、Cu、Au、Ca、Alがそれぞれ0.05mass%以下であり、かつ不純物総量が0.1mass%以下であり、さらに導電性金属をコーティングした給電部を除いた部分で、膜厚が10〜100μmのシリカ保護皮膜がMoSi2セラミックス表面を被覆しているという低温加熱寿命が長い二珪化モリブデン系セラミックス発熱体が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
また、同ペスト(粉化現象)対策として、酸化保護皮膜を一旦形成した二珪化モリブデン系発熱値による加熱中に該酸化保護皮膜が破壊した際に、雰囲気の酸素濃度0.1〜7.0容量%、温度850〜1200°Cの条件で二珪化モリブデン系発熱体を熱処理することにより酸化保護皮膜が破壊した発熱体表面に、厚さ0.5μm以上の緻密な酸化保護皮膜を生成させる二珪化モリブデン系発熱体の保護皮膜再生方法が開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、同ペスト(粉化現象)対策として、二珪化モリブデン系複合セラミックス発熱体において、網目状構造を持つMoSi2マトリックス中にMoSi2に比べて比較的低融点のシリカ系酸化物相またはガラス相がMoSi2結晶粒界に網状に分布している低温加熱寿命が長い二珪化モリブデン系複合セラミックス発熱体が開示されている(特許文献3参照)。
以上のペスト(粉化現象)対策としては、いずれもMoSi2セラミックス表面シリカ保護皮膜を形成することが必要であり、そのための特別な熱処理工程が必須となる。しかし、このような保護皮膜を形成しても、ペスト(粉化現象)を十分に防止できないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−324571号
【特許文献2】
特開平11−130541号
【特許文献3】
特開平11−317282号
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、573°K〜873°Kの範囲で、MoとSiの同時酸化が起こり、さらにMo酸化物の蒸発減少が伴うという、ペスト(粉化現象)を効果的に防止できるMoSi2粉末、同粉末の製造方法、同粉末を用いた発熱体及び発熱体の製造方法に関する。特に、半導体製造装置用熱処理炉(酸化・拡散炉を含む)に有用である発熱体及びその製造方法を提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明者らは、原料であるMoSi2粉末を改善することにより、MoSi2を主成分とする発熱体のペスト(粉化現象)を効果的に防止でき、特に半導体製造装置用熱処理炉(酸化・拡散炉を含む)に有用であるMoSi2を主成分として80wt%以上含む発熱体を低コストで提供できるとの知見を得た。
本発明はこの知見に基づき、
1.MoSi2粉末の比表面積が0.2m2/g以上であり、かつ表面に酸化皮膜を備えることを特徴とするMoSi2粉末
2.MoSi2粉末の酸素含有量が2000ppm以上であることを特徴とする発熱体用MoSi2粉末
3.MoSi2粉末の酸素含有量が1000ppm以上であることを特徴とする上記1記載の発熱体用MoSi2粉末
4.MoSi2を主成分として80wt%以上含み、残余SiO2と不純物からなることを特徴する上記1〜3のいずれかに記載のMoSi2粉末を用いた発熱体
5.MoSi2粉末を酸化性の酸又は酸化剤を含む酸で洗浄することを特徴とする発熱体用MoSi2粉末の製造方法
6.MoSi2粉末の表面に酸化皮膜を備えることを特徴とする上記5記載の発熱体用MoSi2粉末の製造方法
7.MoSi2粉末の比表面積が0.2m2/g以上であることを特徴とする上記5又は6記載の発熱体用MoSi2粉末の製造方法
8.MoSi2粉末の酸素含有量が2000ppm以上であることを特徴とする上記5〜7のいずれかに記載の発熱体用MoSi2粉末の製造方法
9.MoSi2原料粉末を酸化性の酸又は酸化剤を含む酸で洗浄し、比表面積を0.2m 2 /g以上とした粉末を乾燥する工程、乾燥後のMoSi 2 粉末とSiO2とを混合粉砕する工程、バインダーと混合し脱脂する工程、通電焼結する工程からなることを特徴とするMoSi2を主成分とする発熱体の製造方法
10.脱脂後一次焼結する工程を含むことを特徴とする上記9記載のMoSi2を主成分とする発熱体の製造方法、を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の発熱体は、MoSi2粉末の比表面積が0.2m2/g以上であり、かつ表面に酸化皮膜を有するMoSi2粉末を使用する。この酸化皮膜は、硝酸又は過酸化水素等の酸化力が強い酸又は酸化剤を含む酸で洗浄することによって得ることができる。酸化力が強い酸であれば、例えば次亜塩素酸ナトリウム等を使用することもできる。
この酸化膜を形成したMoSi2粉末は、そのトータルの酸素含有量を3000ppm以上とするのが望ましい。これによってMoSi2粉末に十分な酸化膜を形成することができる。
本発明の発熱体は、MoSi2を主成分として80wt%以上、好ましくは90wt%以上含む基材であり、このMoSi2基材に絶縁性酸化物であるSiO2を含有させて電気抵抗を増加させたMoSi2を主成分とする発熱体に適用できる。
さらに、高純度シリカはガラス質形成材料として20wt%以下、好ましくは10wt%以下含有させる。これは、SiO2の体積変化を伴う相転移を考慮したもので、SiO2の含有量が多くなり過ぎるとその影響が大きくなり、発熱体の強度に支障をきたす可能性があるためである。
【0011】
このMoSi2製発熱体は、MoSi2原料粉を酸化性の酸又は酸化剤を含む酸で洗浄した後これを乾燥し、次にSiO2と混合粉砕した後、バインダーと混合し、さらに例えば押出しによって棒状又は平板状に成形する。
このようにして得た成形体を脱脂、一次焼結及び通電加熱焼結することによって、密度の高いMoSi2製発熱体を製造する。
さらに、このようにして作製した棒状又は平板状の発熱体を接合し、例えば円弧状又はU字形状等に製造する。このように、MoSi2製発熱体を各種の形状に成形した後、例えば半導体製造装置用熱処理炉に設置する。
上記のMoSi2原料粉の酸による洗浄は、さほどの労力や費用を必要としない。それにもかかわらず、発熱体のペスト(粉化現象)を効果的に防止できる。
【0012】
【実施例及び比較例】
以下に実施例及び比較例を説明するが、本実施例は理解を容易にするためのものであり、本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内での他の変形あるいは他の実施例は、当然本発明に含まれる。
【0013】
(実施例1)
発熱体原料として純度3NレベルのMoSi2粉末を用いた。これを硝酸で洗浄した。原料粉末及び酸による洗浄後の粉末の比表面積(m2/g)、酸素含有量(ppm)、酸化膜の有無を表1に示す。表1に示すように、不純物量は酸による洗浄で著しく減少した。一方、酸化膜の形成により、酸素は900ppmから3000ppmに上昇した。また、MoSi2粉末の比表面積が0.13m2/gから2.5m2/gとなった。
【0014】
【表1】
【0015】
上記MoSi2粉95wt%とSiO2粉末5wt%とをバインダーと混合、(なお、バインダーは混合比率には計算しない。以下、同様とする。)、この混合物を型から押出して棒状の成形体とした。
この棒状の成形体(グリーン)を脱脂、一次焼結及び通電加熱焼結することによって、MoSi2製棒状発熱体を得た。
この発熱体について熱サイクル特性試験を実施した。この実施条件は、例えば1サイクル480°Cで10時間保持する条件で行った。この結果、500サイクル後でも粉状化(ペスト)せず、抗折試験でも300MPa以上であった。
【0016】
(実施例2)
発熱体原料として純度3NレベルのMoSi2粉末を用いた。この発熱体原料を塩酸と過酸化水素水で洗浄した。酸による洗浄後の粉末の比表面積(m2/g)、酸素含有量(ppm)、酸化膜の有無を実施例1と同様に、表1に示す。酸化膜の形成により、酸素は900ppmから4500ppmの上昇し、また、MoSi2粉末の比表面積が0.13m2/gから3.0m2/gとなった。
一方、SiO2粉末は市販品を用いた。この市販品から不純物を選別除去した後、さらに1650°C以上の高温で長時間熱処理することにより、含有する金属成分を蒸発させて精製した材料を使用した。なお、SiO2の高温熱処理は、実施例1と同様にSiO2の結晶構造を石英から高温で安定なクリストバライトに相転移させるために必要である。
【0017】
上記MoSi2粉95wt%とSiO2粉末5wt%とをバインダーと混合し、この混合物を型から押出して棒状の成形体とした。この棒状の成形体(グリーン)を脱脂、一次焼結及び通電加熱焼結することによって、MoSi2製棒状発熱体を得た。
この発熱体について熱サイクル特性試験を実施した。この実施条件は、例えば1サイクル480°Cで10時間保持する条件で行った。この結果、500サイクル後でも粉状化(ペスト)せず、抗折試験でも300MPa以上であった。
【0018】
(実施例3)
発熱体原料として純度3NレベルのMoSi2粉末を用いた。この発熱体原料を希硝酸で洗浄した。酸による洗浄後の粉末の比表面積(m2/g)、酸素含有量(ppm)、酸化膜の有無を実施例1と同様に、表1に示す。酸化膜の形成により、酸素は900ppmから2100ppmの上昇した。また、MoSi2粉末の比表面積が0.13m2/gから2.1m2/gとなった。
一方、SiO2粉末には市販品を用い実施例1と同様に処理した。そして、上記MoSi2粉95wt%とSiO2粉末5wt%とをバインダーと混合し、この混合物を型から押出して棒状の成形体とした。この棒状の成形体(グリーン)を脱脂、一次焼結及び通電加熱焼結することによって、MoSi2製棒状発熱体を得た。
この発熱体について、実施例1と同様に熱サイクル特性試験を実施した。この実施条件は、1サイクル480°Cで10時間保持する条件で行った。この結果、500サイクル後でも粉状化(ペスト)せず、抗折試験でも300MPa以上であった。
【0019】
(比較例1)
一般に高純度と言われている市販品のMoSi2粉末95wt%(O:900wtppm)と、同様に市販品であるSiO2粉末5wt%とを微粉砕後、バインダーと混合し、この混合物を型から押出して棒状の成形体とした。
この棒状の成形体(グリーン)を脱脂、一次焼結及び通電加熱焼結することによって、MoSi2製棒状発熱体を得た。
この発熱体について熱サイクル特性試験を実施した。この実施条件は、例えば1サイクル480°Cで10時間保持する条件で行った。この結果、50サイクル後でも粉状化(ペスト)がいたるところで起き、抗折試験では200MPa以下となり、脆弱な発熱体となった。
以上から、半導体製造装置用熱処理炉と使用する場合、発熱体のペストが生じ、発熱体材としては好ましくない結果が得られた。
【0020】
【発明の効果】
本発明は原料であるMoSi2粉末を酸化性の酸で洗浄し、同粉末を酸化膜で覆うことにより、MoSi2を主成分とする発熱体のペスト(粉化現象)を効果的に防止できるという優れた効果、すなわち、酸洗浄という比較的簡単な操作により、低コストで発熱体のペスト(粉化現象)を抑制し、発熱体の寿命を大幅に向上させることができるという著しい効果を有する。
また、同時にMoSi2粉末内、すなわち同粉末を用いた発熱体内の不純物を低減することが可能であり、特に半導体ウエハの不純物による汚染を防止できるという効果を有する。
Claims (2)
- 表面に酸化皮膜を形成したMoSi2粉末であって、酸洗浄によって得られる比表面積が2.1〜3.0m 2 /gの範囲にあり、酸素含有量が2100ppm〜4500ppmであることを特徴とする焼結発熱体用MoSi2粉末。
- 表面に酸化皮膜を形成したMoSi2粉末であって、酸洗浄によって得られる比表面積が2.1〜3.0m 2 /gの範囲にあり、酸素含有量が2100ppm〜4500ppmである焼結発熱体用MoSi2粉末を用いて焼結したことを特徴とするMoSi2を主成分として80wt%以上含み、残余SiO2と不純物からなる発熱体。
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