JP4501611B2 - 液晶レンズ素子および光ヘッド装置 - Google Patents
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Description
ところで、従来、一般に用いられているDVDは、情報記録層が単層でカバー厚が0.6mmである(以下、「単層光ディスク」という)。ところが、近年、光ディスク1枚当たりの情報量を増大させるために、情報記録層を2層とした(再生専用、または再生および記録可能な)光ディスク(以下、「2層光ディスク」という)も開発されている。
近年、さらに光ディスクの記録密度を向上させるため、カバー厚が0.1mmの光ディスク(以下、「高密度光ディスク」とよぶ)も提案されている。一方、この光ディスクへの情報記録用の光ヘッド装置には、光源として波長が405nm帯の青色レーザ光を出射する半導体レーザと、NAが0.85の対物レンズとを備えるタイプのものも開発されている。ところが、このタイプの光ヘッド装置の場合も、記録型の2層光ディスクについては、カバー厚の相違に応じて発生する球面収差が書き込みエラーを招くため、問題となる。
(I)例えば、可動レンズ群を用いて球面収差補正を行うために、図16に示すような、光ディスクDの記録・再生を行う光ヘッド装置100が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この光ヘッド装置100は、光源110と、各種の光学系120と、受光素子130と、制御回路140と、変調/復調回路150とのほかに、第1、第2の可動レンズ群160、170とを備えている。また、第1の可動レンズ群160は、凹レンズ161と、凸レンズ162と、アクチュエータ163とを備えており、アクチュエータ163に固定された凸レンズ162を光軸方向に移動することにより、可動レンズ群160のパワーが正(凸レンズ)から負(凹レンズ)へと連続的に変わる焦点距離可変レンズ機能を発現する。
この可動レンズ群160は、光ディスクDの光路中に配置することにより、光ディスクDのカバー厚の異なる情報記録層(図略)に入射光の焦点を合わせることができるパワー成分を含む球面収差の補正が可能となる。
ところが、この可動レンズ群160を用いた場合、一対のレンズ161、162とアクチュエータ163とが必要となる分、光ヘッド装置100の大型化を招くとともに、可動させるための機構設計が複雑になる問題があった。
この液晶レンズ200は、平坦な一面に透明電極210および配向フィルム220が形成された基板230と、軸対称で半径rのベキ乗の和である次式
S(r)=α1r2+α2r4+α3r6+・・・+αmr2m+・・・
・・・(1) 但し、r2=x2+y2
α1、α2、α3、・・・、αm;定数
で記述される表面形状S(r)を有する曲面に透明電極240と配向フィルム250が形成された、基板260とにより狭持されるネマティック液晶270とを備えた構成となっている。
この液晶レンズ200は、透明電極210、240間に電圧が印加されると、液晶270の分子配向が変化し、屈折率が変わる。その結果、基板260と液晶270の屈折率差に応じて、透過光の波面が変化する。
ここで、基板260の屈折率は電圧非印加時の液晶270に等しい。従って、この電圧非印加時の場合には、入射光の透過波面は変化しない。一方、透明電極210、240間に電圧を印加すると、基板260と液晶270とに屈折率差△nが発生し、△n×S(r)(但し、S(r)は(1)式参照)に相当する透過光の位相差が生じる。
従って、光ディスクDのカバー厚の相違に起因して発生する球面収差を補正するように基板260の表面形状S(r)を加工し、印加電圧に応じて屈折率差△nを調整することにより収差補正が可能となる。
ところが、図17に記載の液晶レンズの場合、印加電圧に対する液晶270の屈折率変化は最大0.3程度であるため、入射光の焦点を変化させるパワー成分に相当する大きな位相差分布△n×S(r)を発生させるためには、S(r)の凹凸差を大きくしなければならない。その結果、液晶270の層が厚くなり、駆動電圧の増加および応答が遅くなる問題が生じる。
そこで、液晶層を薄くするためには、パワー成分を除いた収差補正量が最も少ない球面収差のみを補正することが有効である。しかし、球面収差のみを補正するように基板260の表面形状S(r)を加工した場合、光ディスクの情報記録層に入射光を集光する対物レンズの光軸と液晶レンズの光軸とが偏心した時、コマ収差が発生してしまい、情報記録層への集光性が劣化して記録や再生ができない問題が生じる。
この液晶回折レンズ300は、所定の鋸歯状レリーフが形成された基板310の片面に透明電極320が形成され、この透明電極320と対向電極330により液晶層340を狭持している。この電極320、330間に電圧を印加すると、異常光偏光に対して液晶層340の実質的な屈折率は異常光屈折率neから常光屈折率noへと変化する。ここで、実質的な屈折率とは液晶層の厚さ方向の平均屈折率を意味する。
鋸歯状レリーフ構造を有する基板310の屈折率をn1、入射光の波長をλとしたときに、鋸歯状レリーフの溝の深さdが、次式の関係を満たすように
d=λ/(ne−n1)
形成することにより、電圧非印加時に波長λで最大回折効率が得られ、回折レンズとなる。また、入射光の波長λが変化しても、波長λで最大回折となるように印加電圧を調整できる。
このような構成の液晶回折レンズ300では、鋸歯状レリーフの溝を埋めるように液晶層340に液晶を充填すればよいため、前述の図17に示す液晶レンズ200を用いてパワー成分を含む球面収差を補正するタイプの液晶層に比べて、液晶層340は薄くできる。
しかしながら、この液晶回折レンズ300では、鋸歯状レリーフ構造と液晶の屈折率差が印加電圧と共に変化し、屈折率差と鋸歯状レリーフの溝の深さdとの積が、前記波長λの整数倍になった状態においてのみ、波面が連続的につながりパワー成分を得ることができるため、発生するパワーは電圧に応じて離散的にしか変化させることができない。
一方で、光ディスクのカバー厚は製造誤差によりばらつくことが一般的である。特に、NAが0.85の対物レンズを備える光ヘッド装置においては、カバー厚のばらつきにより発生する球面収差が、対物レンズNAの4乗に比例することから、カバー厚の製造誤差を原因とする球面収差に関しても適正に補正する必要がある。従って、離散的なパワー成分しか得られない液晶回折レンズ300では、カバー厚の製造ばらつきを適正に補正することは困難である。
前記一方の複合電極は、高抵抗平面電極とストライプ状に配された複数の低抵抗電極とからなるとともに、前記もう一方の複合電極は、前記高抵抗平面電極と前記低抵抗電極の配置方向と直交する方向に、ストライプ状に配された複数の低抵抗電極からなることを特徴とする液晶レンズ素子を提供する。
前記第1の電極レンズ部は、一対の透明基板により挟持した前記第3液晶層と、この第3液晶層に電圧を印加するために透明基板の表面に設置して、そのうちの少なくとも一方が、低抵抗電極と高抵抗平面電極から成る複合電極である対向する電極対とを備え、
前記第2の電極レンズ部は、一対の透明基板により挟持した第4液晶層と、この第4液晶層に電圧を印加するために透明基板の表面に設置して、そのうちの少なくとも一方が、低抵抗電極と高抵抗平面電極から成る複合電極である対向する電極対とを備え、
前記第1、第2、第3、第4の液晶層は電圧非印加時または電圧印加時に平行配向したネマティック液晶であって、第1液晶層の常光屈折率方向と、第2、第3液晶層の異常光屈折率方向および第4液晶層の常光屈折率方向とが、一致することを特徴とする上記の液晶レンズ素子を提供する。
この複合電極は、高抵抗平面電極と、前記光の光軸を中心とする複数の同心円形状からなる低抵抗電極とからなることを特徴とする上記の液晶レンズ素子を提供する。
一方の前記複合電極は、高抵抗平面電極とストライプ状に配された複数の低抵抗電極とからなるとともに、
もう一方の前記複合電極は、高抵抗平面電極と前記低抵抗電極の配置方向と直交する方向に、ストライプ状に配された複数の低抵抗電極とからなることを特徴とする上記の液晶レンズ素子を提供する。
前記第1のフレネルレンズ部と第2の電極レンズ部を積層し一体化した往路用液晶レンズ素子と、前記第2のフレネルレンズ部と第1の電極レンズ部を積層し一体化した復路用液晶レンズ素子からなる請求項7から10記載の液晶レンズ素子の、往路用液晶レンズ素子を光源とビームスプリッタの間の光路中に配置し、復路用液晶レンズ素子をビームスプリッタと光検出器の間の光路中に配置することを特徴とする光ヘッド装置を提供する。
従って、このような液晶レンズ素子を備えた光ヘッド装置では、2層光ディスクにおけるカバー厚の相違に起因して発生する球面収差を補正するのみならず、カバー厚のばらつきに起因して発生する球面収差をも有効に補正できる。また、トラッキング時に対物レンズが液晶レンズ素子と偏心が生じた場合でも収差劣化が少ないため、安定した記録および/または再生ができる光ヘッド装置が提供できる。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る液晶レンズ素子の構成例について以下に説明する。
図1は本発明の液晶レンズ素子の第1の実施形態を示す断面図である。本実施形態に係る液晶レンズ素子10は、大略構成として、第1のフレネルレンズ部10Aと、第2のフレネルレンズ部10Bと、電極レンズ部10Cとを備えており、4枚の透明基板11〜14及び3つの液晶層24〜26により積層一体化されている。
第1のフレネルレンズ部10Aは、透明基板11,12と、透明基板11,12及びシール21により挟持された第1の液晶層24と、第1の凹凸部27と、第1の液晶層24に電圧を印加するための対向する透明電極15、16を備えている。同様に、第2のフレネルレンズ部10Bは、透明基板12,13と、透明基板12,13及びシール22により挟持された第2の液晶層25と、第2の凹凸部28と、第2の液晶層25に電圧を印加するための対向する透明電極17、18を備えている。
一方、電極レンズ部10Cは、透明基板13,14と、透明基板13,14及びシール23により挟持された第3の液晶層26と、第3の液晶層26に電圧を印加するための透明電極19と、複合電極20を備えている。
透明電極15、17及び16、18は、電極取出部15A、17A及び16A、18A及び導通接続手段29により、外部信号源30に接続されている。透明電極19は、電極取出部19Aおよび図示外の接続線を介して外部信号源30に接続されている。複合電極20は、図3に示すように、光軸を中心とする同心円状に配置された低抵抗電極31〜34と、一様な高抵抗平面電極35を備えている。このうち、低抵抗電極31〜34は、電極取出部31A〜34Aおよび図示外の接続線を介して外部信号源30に接続されている。
凹凸部27、28は、断面が鋸歯状または鋸歯を階段状で近似した形状を有するものであり、均一屈折率透明材料を用いて形成しており、有効径φの領域では入射光の光軸(Z軸)に関して回転対称性を有する。凹凸部27、28の詳細に関しては後述する。
はじめに、透明基板11の一面及び透明基板12、13の両面に、透明電極15〜19を形成する。さらに、透明電極16、18の上面に、屈折率nsの均一屈折率透明材料で、断面が鋸歯状または鋸歯を階段状で近似した形状の凹凸部27、28を形成する。凹凸部27、28は、透明電極16、18の面に所定の膜厚の均一屈折率透明材料層を形成した後、フォトリソグラフィーや反応性イオンエッチングにより凹凸状に加工してもよいし、金型を用いて均一屈折率透明材料層に凹凸部形状を転写してもよい。透明基板14の一方の表面には、図3に示すように、低抵抗電極31〜34を形成した後、高抵抗平面電極35を形成して複合電極20とする。
次に、透明電極15及び凹凸部27の表面には、第1の液晶層24の異常光屈折率方向がY方向を向くよう平行配向処理を施し、透明電極17、19、凹凸部28、及び複合電極20表面には、第2、第3の液晶層25、26の異常光屈折率方向がX方向を向くよう平行配向処理を施す。配向処理は、ポリイミドなどを主成分とする配向膜を基板表面にスピンコートした後、布などでラビングする方法や、SiO斜蒸着膜を基板表面に成膜する方法、光配向膜を基板表面にスピンコートした後、偏光紫外線を照射する方法などを利用すれば良い。
次に、ギャップ制御材が混入された図示外の接着材を印刷パターニングしてシール21〜23を形成し、前記透明基板11〜14を重ね合わせ、圧着して空セルを作製する。シール21〜23の一部に設けられた注入口(図示せず)から常光屈折率noおよび異常光屈折率ne(但し、no≠ne)を有する液晶を注入し、この注入口を封止して液晶をセル内に密封し、本実施形態の液晶レンズ素子10とする。
本発明の液晶レンズ素子10は、液晶の配向方向が直交した第1のフレネルレンズ部10A、10Bと、第2のフレネルレンズ部10Bに平行な液晶配向方向を有する電極レンズ部10Cにより構成されている。フレネルレンズ部10A、10Bは、透明電極15、16又は透明電極17、18間に印加する電圧を変化することで、液晶層24、25の実質的な屈折率を変化させることにより、離散的に焦点可変なフレネルレンズとして機能する。
一方、電極レンズ部10Cは、複合電極20に生ずる電圧分布に応じて、液晶層26の実質的な屈折率分布を変化させることにより、連続的に焦点可変なレンズとして機能する。
・ フレネルレンズ部10A、10Bの説明
本発明の液晶レンズ10を用いて、正または負のパワー成分が付与された透過波面を生成するためには、液晶レンズ10に入射する透過波面において、光軸中心(座標原点:x=y=0)の光線に対して半径r離れた位置を通過する光線の位相差φが、次式のようなベキ級数
φ(r)=a1r2+a2r4+a3r6+a4r8+ ・・・(3) 但し、r2=x2+y2
a1、a2、・・・;定数
で記述されるようにする。
ここで、横軸を半径rとし、位相差φを入射光の波長λの単位で表記した曲線の具体例を図4に符号P1及びP2で示す。
位相が揃ったコヒーレントな波長λの入射光の場合、λの整数倍の位相差をもつ透過波面は同等と見なせる。従って、図4のP1、P2で示すグラフを波長λ間隔で分割して位相差ゼロの面に移動した位相差を示すグラフF1、F2は、グラフP1、P2とは実質的に同等である。グラフF1、F2に示す位相差分布は、全てλ以内であり、断面が鋸歯状となっている。
液晶レンズ素子10により、グラフF1、F2に相当する位相差を得るには、フレネルレンズ部10Aまたは10Bに備えた凹凸部27、28の形状が、グラフF1、F2と相似な形状となるように加工すればよい。ここで、凹凸部27、28は、均一屈折率透明材料であればよく、紫外線硬化樹脂や熱効果樹脂、感光性樹脂などの有機材料でもよいし、SiO2やAl2O3やSiOxNy(但し、x,yはOとNの元素比率を示す)などの無機材料でもよい。これらの材料は、透明電極15〜18を構成する材料に比べ体積抵抗率が極めて大きく、液晶材料と比べても十分小さくはないため、誘電体と見なすことができる。
透明基板11、12(または、12、13)の表面に形成された透明電極15(または、17)と16(または、18)の間隔をGとし、凹凸部27(または、28)の膜厚dFはゼロからdまで分布し、液晶層24(または、25)の層厚dLCはGからG−dまで分布している。ここで、間隔G(=dF+dLC)は一定値である。
凹凸部27は、透明電極15、16の間に設置されているので、凹凸部27を構成する材料の比誘電率εFに応じて、液晶層24に印加される実効的な電圧VLCが変化する。具体的には、電極15、16間に印加した交流電圧Vとすると、VLC/Vは、次式で記載される。
VLC/V=1/{1+(εLC/εF)×(dF/dLC)}
・・・(4)
ここで、凹凸部27の膜厚dFはフレネルレンズを形成する鋸歯状または鋸歯を階段形状で近似した断面形状に対応してゼロからdまで分布するため、dF/dLCはゼロからd/(G−d)まで分布する。その結果、液晶層24に印加される実効的な電圧VLCは凹凸部27の形状に応じて空間分布が生じる。
また、液晶は誘電率異方性を有し、液晶分子長軸方向の比誘電率ε//と液晶分子短軸方向の比誘電率ε⊥が異なるため、電圧印加に伴い液晶分子の配向が変化し、液晶分子の配向の変化により液晶層24の比誘電率εLCも変化する。従って、(4)式において、比誘電率εLCのVLCに応じた変化を反映し、凹凸部27の形状に応じた液晶層24に印加される実効的な電圧VLCの空間分布が定まる。ここで、VLCは膜厚dFに応じて変化するため、今後、印加電圧はVLC[dF]と表記する。なお、膜厚dFがゼロである位置においてVLC[0]は、電極間印加電圧Vに等しい。
φdF={ns×dF+n(VLC[dF])×(G−dF)}
−n(V)×G ・・・(5)
ここで、膜厚dFはゼロからdまで分布し、位相差φdFはゼロから次式のφdまで分布する。
φd={ns×d+n(VLC[d])×(G−d)}−n(V)×G
={n(VLC[d])−n(V)}×G
−{n(VLC[d])−ns}×d
例えば、印加電圧V+1において、図4のグラフF1に相当する透過波面の位相差を生成するためには、位相差φdが略λ(すなわち、0.75λ〜1.25λ)となるように、凹凸部の膜厚dおよび透明電極の間隔Gを決定すると共に、凹凸部27の膜厚がゼロからdFに至る断面形状とすればよい。
i)凹凸部27の膜厚dFがゼロからdまで分布するとき、(5)式の位相差が入射光の波長λに対して充分小さな値となる印加電圧V0が存在する。このとき、液晶レンズ素子10の透過波面は変化しない。ここで、充分小さな位相差は、具体的にはλ/5以下、さらに好ましくはλ/10以下である。また、
ii)位相差φdが略−λ(すなわち、−0.75λから−1.25λ)となる印加電圧V−1において、図4のグラフF2に示す位相差の透過波面を生成できる。これは、位相差ゼロの面に対して図4のグラフF1と面対称の位相差の透過波面に相当する。
従って、印加電圧V+1、V0、V−1を切り替えることにより、3種類の透過波面を選択的に切り替えることが可能となる。
ここで、印加電圧V+1、V0、V−1において液晶レンズ10に平面波が入射した場合、それぞれ図6(A)、(B)、(C)に示す透過波面となって出射する。すなわち、透明電極15、16、又は透明電極17、18の印加電圧に応じて、正のパワー、パワーなし、負のパワーに対応するレンズ機能が得られる。液晶と凹凸部27の屈折率および比誘電率、凹凸部27の膜厚d、および透明電極間隔Gなどの選択により、得られる位相差の電気光学特性の設計自由度が高いため、低電圧駆動あるいは多種多様の透過波面を生成することができる。
φd=(ns−no)×d ・・・(6)
であり、凹凸部27の屈折率nsと液晶の常光屈折率noの差に比例する。ここで、凹凸部27の屈折率nsと液晶の常光屈折率noを等しくすることが望ましい。このような構成とすることにより、常光偏光に対して印加電圧の大きさに関わらずφdが0となるため、透過光波面は変化しない。
また、図4のP1、P2で示す位相差を波長λ間隔で区切った位相差であるF1、F2を生成する液晶レンズ素子以外に、位相差φdが略mλ(m=2または3)に相当する液晶レンズ素子の形態でもよい。この場合、図4のP1、P2を波長m・λ(ここでは、m=2または3)間隔で区切った位相差に対応した透過波面となる。
また、本実施形態では、(3)式で記述される軸対称の位相差を生成する液晶レンズ素子10の場合について、その素子構造および動作原理について説明したが、(3)式以外の軸非対称なコマ収差や非点収差などの補正に相当する位相差を生成する液晶レンズ素子についても、同様の原理で、均一屈折率透明材料の凹凸形状加工および凹部の液晶充填により作製できる。
また、補正すべき位相差の絶対値が入射光の波長λ以下の場合は、液晶レンズ素子10の均一屈折率透明材料からなる凹凸部27、28の断面形状を鋸歯状とする必要はなく、目的とする波面に一致した形状であれば良い。この場合、印加電圧の大きさに応じて位相差は連続的に変化する。
また、本実施形態では、凹凸部を形成する材料を屈折率nsの均一屈折率透明材料としているが、分子配向方向が基板面内で一方向に揃った高分子液晶などの複屈折材料を用いてもよい。この場合、複屈折材料の異常光屈折率をnsとし、常光屈折率を液晶の常光屈折率noと等しくするとともに、複屈折材料の分子配向方向(異常光屈折率の方向)を液晶分子の配向方向と一致させることが好ましい。このような構成とすることにより、常光偏光入射光に対して印加電圧の大きさに関わらず液晶と複屈折材料の常光屈折率が一致するため、透過光波面は変化しない。
また、本実施形態では、液晶層24、25には、それぞれ透明電極15、16及び透明電極17、18を介して交流電圧を印加する構成のものを示した。本発明では、これ以外に、例えば透明電極15、17と透明電極16、18の少なくとも一方の電極を、空間的に分割して独立に異なる交流電圧を印加でき得る分割電極としてもよい。これにより、さらに多様な位相差分布を生成できる。
次に、本発明の液晶レンズ素子10に備えた電極レンズ部10Cについて、以下に説明する。
この電極レンズ部10Cは、液晶層26の異常光屈折率方向に一致する偏光成分の光に対し、連続的に変化するパワー成分を付与することを目的としている。そこで、電極レンズ部10Cの一方に設ける複合電極20は、図3に示すように、高抵抗平面電極35と、目的とするパワー成分に対応した電圧分布を高抵抗平面電極35に発生させるための低抵抗電極31〜34とを備える。
図7は電極レンズ部10Cが発生する位相差分布を示す模式図である。低抵抗電極31〜34に各々異なる電圧を印加すると、高抵抗平面電極35には、低抵抗電極31〜34間の電圧差に応じて連続的に変化する電圧分布が形成される。液晶分子は、電圧分布に応じて配向が変化するため、液晶層26には実効的な屈折率分布が形成され、位相差分布が発生する。
図7に示すA、B、C、Dの各点は、各々、低抵抗電極31、32、33、34の位置に対応し、目的とするパワーαに略一致した位相差βを発生する。ここで、「略一致」するとは、目的とするパワーαと位相差βの差の標準偏差が、入射する光の波長λの20分の1以下であればよく、これを満足するように低抵抗電極31〜34の形状や印加する電圧を設定することが、十分な結像性能を得るために望ましい。
高抵抗平面電極35は、低抵抗電極31〜34に比べてシート抵抗値が十分高く、かつ、透明な材料であれば良く、亜鉛、鉛、錫、インジウムなどの酸化物を含む組成物であっても良い。低抵抗電極31〜34も、亜鉛、鉛、錫、インジウムなどの酸化物を含む透明な組成物であっても良く、光学的に問題がなければ、アルミニウム、金、銀、クロムなどの金属膜であっても良い。
また、図3の構成例においては、低抵抗電極31〜34は、電極取出部31A〜34Aに接続されて(図示せず)外部信号源30に接続されているが、液晶レンズ素子10の内部において、低抵抗電極31〜34同士を適当な薄膜抵抗体で接続することにより、外部信号源30により印加される電圧を分圧させて低抵抗電極31〜34に配分しても良い。このように構成すれば、外部信号源30の信号数を減らすことができるため、好ましい。
また、本実施形態では、図3に示す複合電極20により、パワー成分を生成する電極レンズ部10Cの場合について、その動作原理を説明したが、パワー成分以外に、複合電極20の構造を変えれば、軸対称な球面収差も同様な原理で生成することができる。更に、パワーと球面収差の両成分からなる位相差分布を得ることもできる。
また、本実施形態では、電圧非印加時に基板面に平行に配向し、印加電圧の大きさに応じて基板面に垂直方向に液晶分子が配列する正の誘電率異方性を有する液晶を用いる例を示したが、別の液晶配向あるいは液晶材料でもよい。例えば、電圧非印加時に基板面に垂直に配向し、印加電圧Vに応じて基板面に平行方向に液晶分子が配列する負の誘電率異方性を有する液晶を用いてもよい。
また、本発明の液晶レンズ素子を構成する、第1、第2のフレネルレンズ部、電極レンズ部は、光軸に対して適切な位置に設置されていれば、一体である必要はない。しかし、このように構成すれば、液晶レンズ素子の設置スペースが大きくなったり、位置調整が複雑になる問題が発生するので、図1に示すように、全てを積層し一体化することは大変望ましい。この場合、3つの液晶層を挟持するには、4枚以上の基板を用いれば良いが、4枚の透明基板により積層することは、液晶レンズ素子の厚さを薄くできるため好ましい。
また、本発明の液晶レンズ素子の表面に、位相差板や、回折格子、複屈折性ホログラム素子、波長依存性回折格子などの光部品を適宜積層して一体化しても良く、光ヘッド装置を構成する光部品数が減り、光ヘッド装置の組立が簡易になるため好ましい。また、上記光部品は、透明基板に成型されていたり、張合わされていてもよい。
次に、本発明の第2の実施形態に係る液晶レンズ素子について、図8を参照しながら説明する。
図8は、本発明の液晶レンズ素子の第2の実施形態に備えられた、複合電極の上面図である。本実施形態の液晶レンズ素子は、図1に示した第1の実施形態に係る液晶レンズ素子10において、電極レンズ部10Cに備えられた透明電極19及び複合電極20を、図8に示す複合電極40、50に置き換えた構成になっている。従って、本実施形態において、電極レンズ部10C以外は第1の実施形態と同じであるため、以下では説明を省略し、電極レンズ部10Cのみを説明する。
ここで、図7を用いて、本実施形態の電極レンズ部が発生する位相分布に関し説明する。低抵抗電極41〜44に各々異なる電圧を印加すると、高抵抗平面電極45には、低抵抗電極41〜44間の電圧差に応じて連続的に変化する電位分布が形成される。ストライプ状に配された低抵抗電極41〜44の位置が、図7に示すA、B、C、Dにそれぞれ対応する場合、X方向に関しては目的とするパワーαに略一致した位相差βを生成する電圧分布を得ることができる。一方、Y方向に関しては、複合電極40に発生する電圧分布はY方向で変化しない。また、Y方向にストライブ状に配置された低抵抗電極51〜54の位置が、図7のA、B、C、Dに対応する場合、Y方向に関しては目的とするパワーαに略一致した位相差βを生成する電圧分布を得ることができる。
なお、低抵抗電極41〜44、51〜54及び高抵抗平面電極45、55の材質及び作製方法は、第1の実施形態における複合電極20と同じでよい。また、低抵抗電極41〜44または低抵抗電極51〜54は、外部信号源30と接続する際、信号線数を減らすために各低抵抗電極間を薄膜抵抗体により接続しても良く、少ない信号線数で駆動できるため好ましい。
次に、本発明の液晶レンズ素子を搭載した光ヘッド装置について以下に説明する。
図9は、本発明の液晶レンズ素子を搭載した光ヘッド装置60の一例を示す模式図であり、2層光ディスクDに情報を記録および/または再生するための光ヘッド装置であり、半導体レーザ61と、偏光ビームスプリッタ62と、コリメータレンズ63と、本発明に係る液晶レンズ素子64と、4分の1波長板65と、対物レンズ66と、シリンドリカルレンズ67と、光検出器68とを備えている。なお、2層光ディスクDには、第1記録層D1及び第2記録層D2を有する、DVDや高密度光ディスクなどが用いられている。
半導体レーザ61の波長は、光ディスクDの種類に応じて780nm帯、660nm帯、405nm帯の何れか一つであっても良いし、別の場所に異なる波長の複数の半導体レーザを搭載してあっても良い。液晶レンズ素子64は、上記に説明した、第1の実施形態または第2の実施形態などの形態をとりえる。従って、液晶レンズ素子64の構造及び作製方法や、動作原理の説明は省略する。
さらに、本発明の光ヘッド装置では、図9に図示した光部品以外に、回折格子、ホログラム素子、偏光依存性選択素子、波長選択性素子、波面変換手段などの異なる光部品または機構部品を適宜組み合わせて適用することができる。
光源である半導体レーザ61から出射されたX方向の直線偏光は、偏光ビームスプリッタ92を透過した後、コリメータレンズ63、液晶レンズ素子64、4分の1波長板65を透過した後に円偏光に変換され、対物レンズ66により、光ディスクDに備えられた第1記録層D1又は第2記録層D2に集光する。その後、光ディスクDから反射された光は、再度、対物レンズ66、4分の1波長板65を通過した後、Y方向の直線偏光に変換され、液晶レンズ素子64、コリメータレンズ63を通過し、偏光ビームスプリッタ62で反射し、シリンドリカルレンズ67によって非点収差を与えられ、光検出器68に入射する。
例えば、設計と異なるカバー厚の記録層に集光する際、カバー厚の記録層厚さから設計厚さを差し引いたカバー厚差に比例した球面収差が発生し、情報の読み書きが困難になる。この球面収差は、対物レンズ66に入射する光を、平面波にパワー成分を付加した発散光または収束光とすることにより、補正することができる。つまり、カバー厚差が負である第1記録層D1では、正のパワーを付加することで収束光とする一方、カバー厚差が正である第2記録層D2では、負のパワーを付加することで発散光に変換する。その後、対物レンズ95で集光すれば、球面収差が補正され正常に情報を読み書きすることができる。
(i)第1記録層D1(カバー厚差が負)への記録および/または再生の場合:
第1記録層D1への記録および/または再生においては、前述のように、液晶レンズ素子10の透過波面が若干集光する球面波となるよう、透明電極15、16間及び透明電極17、18間に交流電圧V+1を印加する。すると、液晶層24及び25の配向方向が変化し、図6(A)に示すように、正のパワー、すなわち凸レンズ相当の透過波面となる。従って、第1記録層D1へ集光する光の球面収差を補正することができる。
(ii)第2記録層D2(カバー厚差が正)への記録および/または再生の場合:
第2記録層D2への記録および/または再生においては、液晶レンズ素子10の透過波面が若干発散する球面波となるよう、透明電極15、16間及び透明電極17、18間に交流電圧V−1を印加する。すると、液晶層24及び25の配向方向が変化し、図6(C)に示すように、負のパワーすなわち凹レンズ相当の透過波面となる。従って、第2記録層D2へ集光する光の球面収差を補正することができる。
以上のようにして、液晶層に印加する電圧を変化することで、異なるカバー厚をもつ2つの記録層の球面収差を補正することができる。
前述のように、図9に例示した光ヘッド装置60は、光ディスクDに入射する光である往路光と、光ディスクDから反射した光である復路光の偏光が直交している。従って、往路光の偏光と第2のフレネルレンズ部の液晶配向方向と一致し、復路光の偏光と第1のフレネルレンズ部の液晶配向方向が一致していれば、往復路光で球面収差を補正することができる。また、凹凸部27、28の屈折率が、液晶の常光屈折率と一致していれば、常光屈折率方向の偏光成分に関して、波面は変化しないため好ましい。
フレネルレンズ部10A、10Bを用いることにより、第1、第2記録層D1,D2の基準カバー厚差に関しては、精度良く補正することができる。しかしながら、フレネルレンズ部10A、10Bは、ある所定の離散的パワー成分しか発生することができいため、記録層のカバー厚が基準値と異なるような個々のカバー厚ばらつきに対応することは困難である。一方、電極レンズ部は、フレネルレンズ部に比べ同等若しくは大きなパワーを得ることは困難である。
そこで、本発明の液晶レンズ素子10では、第1記録層と第2記録層の切り替えにより生じる球面収差に関しては、主に前記フレネルレンズ部が発生する離散的なパワーにより補正し、各記録層でのカバー厚ばらつきに関しては、主に電極レンズ部が発生する連続的なパワーにより補正するように用いれば、便宜である。
本発明の第4の実施形態に係る液晶レンズ素子70の構成例について以下に説明する。図10は、本発明の液晶レンズ素子の第4の実施形態を示す断面図である。なお、図10において、図1と同じ構成要素は同一符号を用いて重複説明を避けている。
第4の実施形態に係る液晶レンズ素子70は、図1に示す本発明の第1の実施形態に係る液晶レンズ素子10と比較して、電極レンズ部として、第1の実施形態の電極レンズ部10C(第1の電極レンズ部)に、さらに電極レンズ部10D(第2の電極レンズ部)が付加された構成としている点が異なる。
他の大略構成は、第1の実施形態に係る液晶レンズ素子10と同じであり、透明基板13A、13B、13Cは透明基板13と同じである。
図9に示す光ヘッド装置60において、液晶レンズ素子70を、液晶レンズ素子64の代わりに用いると、第3の実施形態で説明した作用効果が得られる。特に、電極レンズ部70Bは、往路のX方向の入射偏光のみならず復路のY方向の入射偏光に対しても連続的に焦点可変なレンズとして機能するため、復路の球面収差も有効に補正することができる。その結果、フォーカスサーボの精度が向上し、より安定した2層光ディスクの記録・再生ができる。
本発明の第5の実施形態に係る液晶レンズ素子80の構成例について、以下に説明する。図11は本発明の液晶レンズ素子の第5の実施形態を示す断面図である。図11において、図10と同じ構成要素は同一符号を用いている。
本実施形態に係る液晶レンズ素子80は、図10に示す本発明の第4の実施形態に係る液晶レンズ素子70と異なり、第1フレネルレンズ部10Aと第2電極レンズ部10Dとが一体化されたY方向の入射偏光に対してレンズ機能が発現する復路用液晶レンズ部80Aと、第2フレネルレンズ部10Bと第1電極レンズ部10Cとが一体化されたX方向の入射偏光に対してレンズ機能が発現する往路用液晶レンズ部80Bとからなる。復路用液晶レンズ部80Aと往路用液晶レンズ部80Bは、分離されており、それぞれ独立に外部信号電源30C、30Dに接続されている。他の大略構成は、第4の実施形態に係る液晶レンズ素子70と同じである。
また、光ヘッド装置の光路中で、往路の光路中に往路用液晶レンズ部80Bを配置するとともに、復路の光路中に復路用液晶レンズ部80Aを配置する構成の光ヘッド装置90を図12に示す。この図12において、図9と同じ構成要素は同一符号を用いて重複説明を避ける。
図12の光ヘッド装置90において、往路用と復路用でそれぞれコリメータレンズ63A、63Bを用いるとともに、コリメータレンズ63A、63Bと4分の1波長板65との間の光路中に偏光ビームスプリッタ62が配置されている点が、光ヘッド装置60と異なる。さらに、光ヘッド装置90では、往路の直線偏光(紙面内の偏光)に対してレンズ作用を有する液晶レンズ部80Bと、復路の直線偏光(紙面に垂直な偏光)に対してレンズ作用を有する液晶レンズ部80Aとが、それぞれコリメータレンズ63B、63Aと偏光ビームスプリッタ62との間に配置されている。その結果、光ヘッド装置60の場合と比較し、往路と復路でレンズ作用のない液晶層を通過することがないため、高い透過率が得やすい、といった特徴がある。
次に、本発明の第6の実施形態に係る液晶レンズ素子の構成例について、以下に説明する。
本実施形態の液晶レンズ素子では、フレネルレンズ部の構成が他の実施形態と異なる。
すなわち、図1、図10及び図11に示す、液晶レンズ素子の第1のフレネルレンズ部10A及び第2のフレネルレンズ部10Bにおいて、第1液晶層24及び第2液晶層25には、負の誘電率異方性を有するネマティック液晶を用いている。そして、液晶層に電圧が印加されないオフ状態のときには、液晶分子の配向方向が基板表面に対して垂直または垂直に近い角度であるとともに、第1凹凸部27と第2凹凸部28の屈折率nFが液晶層の常光屈折率noと同一またはこれに近い値の均一屈折率材料からなる。このように、液晶分子の配向方向が基板表面に対して垂直または垂直に近い角度とするためには、液晶の垂直配向膜を液晶層と接する基板表面に形成すればよい。
一方、液晶層に電圧印加されたオン状態では、液晶分子の配向方向が特定方向に傾斜するように、配向膜表面が配向処理されていることが好ましい。具体的には、第1液晶層24はY方向に、第2液晶層25はX方向に液晶分子が傾斜するよう配向処理を施す。
例えば、フレネルレンズの凹凸部の中心が凹の場合、オフ状態では、図6(B)に示すように、透過波面変化なしで、オン状態では、図6(A)に示すように凸レンズ相当の収束透過波面とすることができる。すなわち、印加電圧のオン・オフ切り替えにより、パワーなしとパワー有りの2値焦点切り替えレンズとなる。
なお、第1液晶層24と第2液晶層25は、オン状態で液晶分子の傾斜方向のXY面内射影成分が直交するため、第1及び第2のフレネルレンズ部における凹凸部27、28の形状及び液晶層24、25の層厚が同じで、外部信号源より透明電極15と16間及び透明電極17と18間に同一のオン状態の印加電圧とすれば、入射光の偏光状態に係わらず単一の収束波面となる。なお、本実施形態のフレネルレンズ部を構成要素とする液晶レンズ素子は、電極レンズ部との組み合わせにおいて、図1、図10或いは図11に示す何れの構成としてもよい。
カバー厚100μmの第2記録層D2の記録・再生時には、液晶レンズ素子のフレネルレンズ部には電圧印加せずオフ状態とすることで、対物レンズ66の収差性能が維持され、安定した集光性能が実現する。一方、カバー厚75μmmの第1記録層D1の記録・再生時には、液晶レンズ素子のフレネルレンズ部の透明電極15と16間及び透明電極17と18間に電圧印加しオン状態とすることで正のパワーを付加した収束光とし、球面収差が補正され、その結果安定した集光性能が実現する。
また、高密度光ディスクの製造ばらつきなどにより、第1記録層D1及び第2記録層D2のカバー厚ばらつきに起因して発生する球面収差は、第3或いは第4の実施形態と同様に、電極レンズ部に印加する電圧に応じて発生する連続的なパワーにより補正する。
本発明の液晶レンズ素子は、印加電圧に応じて焦点距離を変化させることによりカバー厚の相違に起因して発生する球面収差を補正するため、液晶レンズ素子を対物レンズと分離して配置し、対物レンズがトラッキング時に液晶レンズ素子と偏心が生じた場合でも、収差劣化がほとんどないといった長所がある。その結果、単層及び2層の高密度光ディスクの安定した記録・再生が実現できる。
第3の実施形態の液晶レンズ素子では、フレネルレンズ部の透明電極15、16間及び、透明電極17、18間に印加する電圧をV+1、V+0、V−1に切り替えることにより、それぞれ“凸レンズ”、“レンズ作用なし”、“凹レンズ”の3値焦点切り替えレンズ機能が得られるが、本実施形態の液晶レンズ素子では、印加電圧のオフ・オン切り替えで、それぞれ“レンズ作用なし”、“凸レンズ”の2値焦点切り替えレンズ機能が得られる。第3の実施形態の3値焦点切り替えに比べ、本実施形態の2値焦点切り替えの方が必用な電極間の光路長変化が半分程度となるため、透明電極間の間隔Gを薄くできる。すなわち、液晶層の層厚及び凹凸部の膜厚dを薄くできるため、焦点切り替え時の応答速度が速くなる。また、凹凸部の膜厚dが薄いほど、凹凸部の作製工程が短縮できるとともに、凹凸部表面の液晶分子の配向が安定するため、液晶分子配向の不均一に起因して発生する不要な散乱光が軽減し、高い効率が得やすいといった長所がある。
また、液晶レンズ素子に入射する光ヘッド装置の配置構成において、本実施形態の液晶レンズの場合、高密度光ディスクで用いる波長と異なるDVDやCDの波長の光も、電圧非印加時のオフ状態で入射光の波長に係わらず透過波面変化がないため、DVDやCDの光ヘッド装置としての性能劣化を及ぼすことがなく好ましい。
次に、第1の実施形態に示した本発明の液晶レンズ素子10の具体的な実施例について、図1を参照しながら以下に説明する。
初めに、この液晶レンズ素子10の作製方法について説明する。
ガラスを素材とする透明基板11〜13の片面若しくは両面に透明導電膜(ITO膜)を成膜し、パターニングを行ってこれを透明電極15〜19とする。さらにその透明電極16、18上に、屈折率nS(=1.52)、比誘電率εS(=4)の均一屈折率材料であるSiON膜を膜厚d(=2.9μmm)となるように蒸着する。次に、図4のグラフF1の形状に相当するように、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により、SiON膜を加工し、断面形状が鋸歯状で入射光の光軸(Z軸)に関して回転対称性を有する、図1に示すような凹凸部27、28を形成する。
一方、ガラスを素材とする透明基板14の表面にシート抵抗値が40Ω/□のITO膜を成膜した後、図3に示すように、パターニングして低抵抗電極31〜34を形成する。さらに、シート抵抗値が106Ω/□の酸化錫膜を成膜した後、パターニングして高抵抗平面電極35を形成し、複合電極20とする。その後、電極が形成された全ての透明基板表面に、ポリイミドからなる液晶配向膜を塗布、焼成した後、透明電極15、16の表面をY軸方向に、透明電極17〜19及び複合電極20の表面をX軸方向にラビング配向処理する。さらに透明電極15、17、19が形成された透明基板11、12、13の表面に、直径15μmのギャップ制御材が混入された接着材を印刷パターニングしてシール21〜23を形成し、透明基板11〜14を重ね合わせて圧着し、透明電極間隔が15μmの空セルを作製する。
その後、常光屈折率no(=1.52)および異常光屈折率ne(=1.70)の正の誘電異方性を有するネマティック液晶を空セルの注入口(図示せず)から注入し、液晶層24、25、26とする。その後、注入口を紫外線硬化樹脂により封止した後、導通接続手段29を接続して図1に示す液晶レンズ素子10とする。
図1において、X方向の直線偏光を入射すると、液晶層24はY方向に配向しているので、凹凸部27との実質的な屈折率差は生じないため、印加電圧によらず光は透過する。一方、液晶層25及び凹凸部28で発生する位相差は、凹凸部28の膜厚dFに応じて(5)式のように電圧により変化する。
印加電圧1.35Vでは、n(VLC[dF])>nSであり、凹凸部28の最薄部と最厚部の位相差がλとなって、図6(A)に示すように、入射平面波は+1次のフレネル回折波として、若干集光するような波面に変換される。+1次のフレネル回折効率は、図13のグラフAのように、印加電圧1.35Vで最大となる。
同様に、印加電圧2.85Vでは、n(VLC[dF])<nSであり、−1次のフレネル回折効率は、図13のグラフCのように印加電圧2.85Vで最大となる。
一方、印加電圧1.74Vでは、n(VLC[dF])≒nSとなり、波面はほとんど変化せず、0次のフレネル回折として図13のグラフBのように、印加電圧1.74Vで最大になる。
以上のように、印加電圧を1.35V、1.74V、2.85Vと変化させると、本発明の液晶レンズ素子は“凸レンズ”、“レンズ作用なし”、“凹レンズ”として作用する。
次に、Y方向の直線偏光を入射すれば、液晶層25の実質的な屈折率はno=nSとなるのでレンズ作用はない。上記した凹凸部27、28は同一であり、液晶層24、25は液晶材料が等しく配向方向が直交しているので、前記と同様に、1.35V、1.74V、2.85Vと変化させると、“凸レンズ”、“レンズ作用なし”、“凹レンズ”として作用する。
次に、透明電極15、16間及び透明電極17、18間には電圧を印加せずに、電極レンズ部10C、つまり透明電極19、複合電極20間に電圧を印加する。
例えば、液晶層26の配向方向X方向に等しい直線偏光を入射した場合、低抵抗電極31〜34に印加する電圧をVA、VB、VC、VDとし、0(V)<VA<VB<VC<VDとなる適切な電圧を印加する。すると、図7のグラフβに示すように、最大1.5λの位相差を得ることができる。逆に、0(V)<VD<VC<VB<VAとなる適切な電圧を印加すれば、図7のグラフβを負符号にした位相差を得ることができる。従って、低抵抗電極31〜34の電圧制御により、最大±1.5λの位相差を有するパワーを含んだ波面を連続的に変化することができる。
以上のように、本発明の液晶レンズ素子を用いれば、直交する直線偏光で等しく作用する焦点切り替えフレネンルレンズを得る事ができる。また、複合電極に印加する電圧を制御することにより、液晶層26に一致した直線偏光の波面を連続的に変化することができる。
次に、図9に示す光ヘッド装置60に、例1で示した液晶レンズ素子10を液晶レンズ素子64として組み込む。なお、2層光ディスクDに備えられた第1記録層D1のカバー厚は75μm、第2記録層D2のカバー厚は100μmである。
この光ヘッド装置60において、光源61は、波長405nmの半導体レーザであり、コリメータレンズ63により平行光にされ、液晶レンズ素子10に入射する。対物レンズ66のNAは0.85、瞳直径は3mmであり、87.5μmのカバー厚で波面収差が最小となるよう設計されている。
次に、透明電極15、16間及び透明電極17、18間に電圧V+1=1.35Vを印加して第1記録層D1に集光する場合と、透明電極間にV−1=2.85Vを印加して、第2記録層D2に集光する場合では、球面収差は補正されて0.01λrms以下になり、集光性能が改善される。
図14に示すように、液晶レンズ素子10では、カバー厚が75μm、100μmの各々で波面収差が最小となるように設計されたフレネルレンズ部10A、10Bにより収差補正されており、グラフAは電極レンズ部10Cのレンズ作用を使わない方式、グラフBは電極レンズ10Cの発生するパワーを最適に調整した場合である。
この図14に示すように、本発明の液晶レンズ素子10を用いれば、カバー厚が70〜80μm又は95〜105μmの範囲で残存する波面収差の大きさをλ/30rms以下にできるため、記録層のカバー厚に製造ばらつきなどが発生していた場合でも、波面収差を補正して、集光性能を維持することができる。
次に、第6の実施形態に示した本発明の液晶レンズ素子70の具体的な実施例について、図10を参照しながら以下に説明する。なお、液晶レンズ素子10と同一構成要素の内容は同じであるため、説明を省略する。
この「例3」において「例1」の液晶レンズ素子10(図1参照)との主な相違点は、第1のフレネルレンズ部10A及び第2のフレネルレンズ部10Bの構成と、電極レンズ部が第1の電極レンズ部10Cと第2の電極レンズ部10Dからなる点である。
第1のフレネルレンズ部10Aについては、片面にITO膜から成る透明電極15、18が形成された透明基板11、13Aと、両面にITOから成る透明電極膜16、17が形成された透明基板12とを用い、透明電極16、18上に、屈折率nS(=1.52)、比誘電率εS(=4)の均一屈折率材料であるSiON膜を膜厚d(=1.5μmm)となるように成膜する。次に、このSiON膜について、図4のグラフF1の形状に相当するように、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術により、断面形状が鋸歯状で入射光の光軸(Z軸)に対して回転対称性を有する、図10に示すような凹凸部27、28を形成する。さらに、透明電極15、17の表面と、凹凸部27、28の表面にポリイミドからなる液晶の垂直配向膜(図示せず)を塗布、焼成した後、透明電極15及び凹凸部27の表面をY軸方向に、透明電極17及び凹凸部28の表面をX軸方向にラビング配向処理する。さらに透明電極16、18が形成された透明基板の表面に、直径7μmのギャップ制御材が混入された接着材を印刷パターニングしてシール21、22を形成し、透明基板11、12、13Aを重ね合わせて圧着し、透明電極間隔が7μmの空セルを作製する。
その後、常光屈折率no(=1.52)及び異常光屈折率ne(=1.70)の負の誘電異方性を有するネマティック液晶を空セルの注入口(図示せず)から注入し、液晶層24、25とする。その後、注入口を紫外線硬化樹脂により封止し、図10に示すフレネルレンズ部70Aとし、外部信号源30Aと透明電極とを電気的に接続し、液晶層24、25に電圧を印加できるようにする。
第1電極レンズ部10C及び第2電極レンズ部10Dは、主な構成として、片面にITO膜から成る透明電極19が形成された透明基板13Bと、一方の表面にITO膜から成る透明電極19Bが形成されるとともに他方の表面に複合電極20が形成された透明基板14と、片面に複合電極20Bが形成された透明基板13Cとを備える。
第1電極レンズ部10C及び第2電極レンズ部10Dの作製については、特に、複合電極20、20Bには、各透明基板14、13C上に、シート抵抗値が40Ω/□のITO膜を成膜した後、パターニングして低抵抗電極31〜35(図3参照)を形成し、さらに、シート抵抗値が106Ω/□の酸化錫膜を成膜した後、パターニングして高抵抗平面電極35(図3参照)を形成する。さらに、透明電極19、19B及び前述の複合電極20、20Bの表面には、ポリイミドからなる液晶の水平配向膜を塗布、焼成した後、透明電極19及び複合電極部20の表面をX軸方向に、透明電極19B及び複合電極部20Bの表面をY軸方向に、それぞれラビング配向処理する。その後、常光屈折率no(=1.52)及び異常光屈折率ne(=1.70)の正の誘電異方性を有するネマティック液晶を空セルの注入口(図示せず)から注入し、液晶層26、27とする。その後、注入口を紫外線硬化樹脂により封止し、図10に示す電極レンズ部70Bとし、外部信号源30Bと各電極とを電気的に接続し、液晶層26、27に同一の電圧を印加できるようにする。
このようにして作製した液晶レンズ素子70において、外部信号源30A、30Bより生成される交流印加電圧を0Vから増加させると、液晶層24と25は負の誘電率異方性を有する垂直配向液晶で、液晶層26と27は正の誘電率異方性を有する水平配向液晶であるため、液晶層24、25のラビング方向の実質的な屈折率はno(=1.52)からne(=1.70)まで変化し、液晶層26、27のラビング方向の実質的な屈折率はne(=1.70)からno(=1.52)まで変化する。
(I)電圧非印加時のオフ状態では、液晶層と凹凸部との屈折率が入射光の偏光状態に係わらず一致するため、透過波面は不変である。すなわち、“レンズ作用なし”となる。
(II)一方、電圧印加時のオン状態では、X方向の直線偏光を入射すると、液晶層24はY方向に配向しているので、凹凸部27との実質的な屈折率差は生じないため、印加電圧によらず光は透過する。一方、液晶層25はX方向に配向しているので、液晶層25及び凹凸部28で発生する位相差は、凹凸部28の膜厚dFに応じて印加電圧により変化する。印加電圧3.5Vで、凹凸部の最薄部と最厚部の位相差がλとなって、図6(A)に示すように、入射平面波は+1次のフレネル回折波の効率が最大となり、凸レンズ相当の収束波面に変換される。
また、Y方向の直線偏光を入射すると、液晶層25はX方向に配向しているので、凹凸部28との実質的な屈折率差は生じないため、印加電圧によらず光は透過する。一方、液晶層24はY方向に配向しているので、液晶層24及び凹凸部27で発生する位相差は、凹凸部27の膜厚dFに応じて印加電圧により変化する。印加電圧3.5Vで、凹凸部の最薄部と最厚部の位相差がλとなって、図6(A)に示すように、入射平面波は+1次のフレネル回折波の効率が最大となり、凸レンズ相当の収束波面に変換される。なお、図13および図15の印加電圧単位Vrmsのrmsは交流実効電圧を意味する。
次に、フレネルレンズ部70Aの透明電極15と16間及び、透明電極17と18間には電圧を印加せずに、電極レンズ部70Bの透明電極19と複合電極20間及び、透明電極19Bと複合電極20B間に電圧を印加する。液晶層26と液晶層26Bの配向方向が直交しているため、X方向及びY方向の直線偏光に対して、低抵抗電極31〜34の電圧制御により、パワーを含んだ波面を連続的に変化することができる。
以上のように、本発明の液晶レンズ素子70を用いれば、入射光の偏光状態に係わらず作用する2値焦点切り替えレンズを得ることができる。また、電極レンズ部に印加する電圧を制御することにより、入射光の偏光状態に係わらず作用するパワーを含んだ波面を連続的に変化することができる。
(I)初めに、カバー厚100μmの第2記録層D2の記録・再生時は、液晶レンズ素子70のフレネルレンズ部70Aをオフ状態とし、カバー厚75μmの第1記録層D1の記録・再生時は、外部信号源30Aより液晶レンズ素子70のフレネルレンズ部70Aに3.5Vの電圧を印加してオン状態に切り替える。
ここで、第1記録層D1及び第2記録層D2のカバー厚が±5μm変動した場合に、残留するRMS波面収差の計算結果を図14のAに示す。カバー厚100μm及び75μmにおいて、RMS波面収差は0.01λrms以下となり、カバー厚が±5μm変動した場合、0.05λrms程度のRMS波面収差が発生する。
(II)さらに、第1記録層D1及び第2記録層D2のカバー厚の変動に応じて、液晶レンズ素子70の電極レンズ部70Bに外部信号源30Bより電圧を印加し、収差補正を行った場合の残留するRMS波面収差の計算結果を図14(B)に示す。カバー厚が±5μm変動した場合でも、0.03λrms以下のRMS波面収差発生に低減できる。
(III)また、トラッキング時に、対物レンズ66が液晶レンズ素子70と±0.3mm程度の偏心が生じた場合でも、図14に示すRMS波面収差はほとんど劣化しない。従って、本発明の液晶レンズ素子70を搭載した光ヘッド装置90を用いることにより、単層及び2層の高密度光ディスクの安定した記録・再生が実現する。
10A 第1のフレネルレンズ部
10B 第2のフレネルレンズ部
10C (第1の)電極レンズ部
10D (第2の)電極レンズ部
11、12、13、13A、13B、13C、14 透明基板
15、16、17、18、19、19B 透明電極
15A〜18A 電極取出部
19A 電極取出部
20、20B 複合電極
21、22、23、23B シール
24、25、26、26B 液晶層
27、28 凹凸部
29 導通接続手段
30、30A、30B、30C、30D 外部信号源
31〜34 低抵抗電極
31A〜34A 電極取出部
35 高抵抗平面電極
40、50 複合電極
45、55 高抵抗平面電極
41〜44、51〜54 低抵抗電極
61 半導体レーザ
62 偏光ビームスプリッタ
63 コリメータレンズ
64 液晶レンズ素子
65 4分の1波長板
66 対物レンズ
67 シリンドリカルレンズ
68 光検出器
70A フレネルレンズ部
70B 電極レンズ部
80A 復路用液晶レンズ部
80B 往路用液晶レンズ部
D 光ディスク
D1 第1記録層
D2 第2記録層
Claims (15)
- 液晶に印加する電圧の大きさに応じて、前記液晶を透過する光の焦点距離を変化させる液晶レンズ素子であって、
第1のフレネルレンズ部と、第2のフレネルレンズ部と、電極レンズ部とを備え、
前記第1のフレネルレンズ部は、一対の透明基板により挟持した第1液晶層と、この第1液晶層に電圧を印加するために前記透明基板の表面にそれぞれ設置した対向する電極対と、前記光の光軸に関して回転対称性を有する鋸歯状の断面形状または鋸歯を階段形状に近似した断面形状を有し、前記対向する電極対の少なくとも一方の上面に透明材料で形成した第1凹凸部とを備え、
前記第2のフレネルレンズ部は、一対の透明基板により挟持した第2液晶層と、この第2液晶層に電圧を印加するために前記透明基板の表面にそれぞれ設置した対向する電極対と、前記光の光軸に関して回転対称性を有する鋸歯状の断面形状または鋸歯を階段形状に近似した断面形状を有し、前記対向する電極対の少なくとも一方の上面に透明材料で形成した第2凹凸部とを備え、
前記電極レンズ部は、一対の透明基板により挟持した第3液晶層と、この第3液晶層に電圧を印加するために前記透明基板の表面に対向して設置し、そのうちの少なくとも一方が低抵抗電極と高抵抗平面電極とからなる複合電極である電極対とを備え、
前記第1、第2、第3液晶層は電圧非印加時または電圧印加時に平行配向したネマティック液晶であって、前記第1液晶層の常光屈折率方向と、前記第2液晶層及び前記第3液晶層の異常光屈折率方向とが一致することを特徴とする液晶レンズ素子。 - 前記電極レンズ部に設置された対向する前記電極対のいずれか一方が前記複合電極であって、
前記複合電極は、高抵抗平面電極と、前記光の光軸を中心とする複数の同心円形状からなる低抵抗電極とからなる請求項1に記載の液晶レンズ素子。 - 前記電極レンズ部に設置された対向する電極の両方が前記複合電極であって、
前記一方の複合電極は、高抵抗平面電極とストライプ状に配された複数の低抵抗電極とからなるとともに、前記もう一方の複合電極は、前記高抵抗平面電極と前記低抵抗電極の配置方向と直交する方向に、ストライプ状に配された複数の低抵抗電極からなる請求項1に記載の液晶レンズ素子。 - 前記第1、第2凹凸部を形成する前記透明材料の屈折率は、前記第1液晶層および第2液晶層の常光屈折率に等しい請求項1から3記載の液晶レンズ素子。
- 前記第1のフレネルレンズ部、第2のフレネルレンズ部及び電極レンズ部は、積層して一体化してあるとともに、
前記第1、第2、第3液晶層は、互いに対向する4枚の透明基板が形成する3つの基板の間隙にそれぞれ設置されている請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶レンズ素子。 - 前記光の波長に対する位相差がπ/2の奇数倍である位相板を一体化している請求項5に記載の液晶レンズ素子。
- 前記液晶レンズ素子の電極レンズ部は、第1の電極レンズ部と第2の電極レンズ部からなり、
前記第1の電極レンズ部は、一対の透明基板により挟持した前記第3液晶層と、この第3液晶層に電圧を印加するために透明基板の表面に設置して、そのうちの少なくとも一方が、低抵抗電極と高抵抗平面電極から成る複合電極である対向する電極対とを備え、
前記第2の電極レンズ部は、一対の透明基板により挟持した第4液晶層と、この第4液晶層に電圧を印加するために透明基板の表面に設置して、そのうちの少なくとも一方が、低抵抗電極と高抵抗平面電極から成る複合電極である対向する電極対とを備え、
前記第1、第2、第3、第4の液晶層は電圧非印加時または電圧印加時に平行配向したネマティック液晶であって、第1液晶層の常光屈折率方向と、第2、第3液晶層の異常光屈折率方向および第4液晶層の常光屈折率方向とが、一致することを特徴とする請求項1に記載の液晶レンズ素子。 - 前記電極レンズ部に設置された対向する電極は、一方が前記複合電極であって、
この複合電極は、高抵抗平面電極と、前記光の光軸を中心とする複数の同心円形状からなる低抵抗電極とからなる請求項7に記載の液晶レンズ素子。 - 前記電極レンズ部に設置された対向する電極は、両方が前記複合電極であって、
一方の前記複合電極は、高抵抗平面電極とストライプ状に配された複数の低抵抗電極とからなるとともに、
もう一方の前記複合電極は、高抵抗平面電極と前記低抵抗電極の配置方向と直交する方向に、ストライプ状に配された複数の低抵抗電極とからなる請求項7に記載の液晶レンズ素子。 - 前記第1、第2凹凸部を形成する前記透明材料の屈折率は、前記第1液晶層および第2液晶層の常光屈折率に等しい請求項7から9のいずれか1項に記載の液晶レンズ素子。
- 前記第1のフレネルレンズ部と第2のフレネルレンズ部を積層し一体化しているとともに、前記第1の電極レンズ部と第2の電極レンズ部を積層し一体化していることを特徴とする請求項7から10記載の液晶レンズ素子。
- 光源と、
この光源からの出射光を光記録媒体上に集光させるための対物レンズと、
前記光記録媒体上に集光されて反射する光を検出する光検出器と、
前記光源と前記対物レンズとの間の光路中に配置する請求項1から6のいずれか1項に記載の液晶レンズ素子と
を備えていることを特徴とする光ヘッド装置。 - 前記光源から前記光記録媒体へ向かう光の光路上において、前記液晶レンズ素子に入射する前記光源からの光の偏光方向が、前記液晶レンズ素子の第3液晶層の異常光屈折率方向と一致する請求項12に記載の光ヘッド装置。
- 光源と、光源からの出射光を光記録媒体上に集光させるための対物レンズと、光源と対物レンズとの間の光路中に、請求項7から11のいずれか1項に記載の液晶レンズ素子を配置することを特徴とする光ヘッド装置。
- 光源と、光源からの出射光を光記録媒体の情報記録層に集光させる対物レンズと、前記情報記録層の反射光を受光する光検出器と、光源から光記録媒体に向かう往路の光束と前記情報記録層の反射光が光検出器と向かう復路の光束とを分離するビームスプリッタを少なくとも含む光ヘッド装置において、
前記第1のフレネルレンズ部と第2の電極レンズ部を積層し一体化した往路用液晶レンズ素子と、前記第2のフレネルレンズ部と第1の電極レンズ部を積層し一体化した復路用液晶レンズ素子からなる請求項7から10記載の液晶レンズ素子の、往路用液晶レンズ素子を光源とビームスプリッタの間の光路中に配置し、復路用液晶レンズ素子をビームスプリッタと光検出器の間の光路中に配置することを特徴とする光ヘッド装置。
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