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JP4082072B2 - 光ヘッド装置 - Google Patents

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JP4082072B2
JP4082072B2 JP2002112164A JP2002112164A JP4082072B2 JP 4082072 B2 JP4082072 B2 JP 4082072B2 JP 2002112164 A JP2002112164 A JP 2002112164A JP 2002112164 A JP2002112164 A JP 2002112164A JP 4082072 B2 JP4082072 B2 JP 4082072B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光ディスクや光磁気ディスクなどの光記録媒体の情報の記録・再生を行う光ヘッド装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
光ディスクであるDVDは、同じく光ディスクであるCDに比べデジタル情報が高密度で記録されており、DVDを再生するための光ヘッド装置は、光源の波長をCDの780nmよりも短い660nmとしたり、対物レンズの開口数(NA)をCDの0.45よりも大きい0.6〜0.65にして光ディスク面上に集光するスポット径を小さくしている。
【0003】
しかし、光源の短波長化や対物レンズの高NA化が原因で、光ディスク面が光軸に対して直角より傾くディスクチルトの許容量が小さくなる。
【0004】
ディスクチルトの許容量が小さくなる理由は、ディスクチルトが生じた場合コマ収差が発生するために、光ヘッド装置の集光特性が劣化して信号の読み取りが困難になることによる。高密度記録において、ディスクチルトに対する光ヘッド装置の許容量を拡げるためにいくつかの方式が提案されている。
【0005】
一つの方式として、2軸方向に移動する対物レンズのアクチュエータに、検出されたチルト角に応じて対物レンズを傾けるように傾斜用の軸を追加する方式がある。しかし、この追加方式ではアクチュエータの構造が複雑になるなどの問題がある。
【0006】
また別の方式として、対物レンズと光源との間に備えた位相補正素子によりコマ収差を補正する方式がある。この補正方式では、アクチュエータに大幅な改造を施すことなく光ヘッド装置に素子を組み入れるだけでディスクチルトの許容量を拡げることができる。
【0007】
例えば、位相補正素子を用いてディスクチルトを補正する上記の補正方式に特開平10−20263がある。これは、位相補正素子を構成している液晶などの複屈折性材料を挟持している一対の基板のそれぞれに、電極が分割されて形成された分割電極に電圧を印加して、複屈折性材料の実質的な屈折率を光ディスクのチルト角に応じて変化させ、この屈折率の変化により発生した透過光の位相(波面)変化により、光ディスクのチルトで発生したコマ収差を補正する方式である。したがって、位相補正素子が発生する位相差分布と、補正する波面収差分布が概ね一致する必要がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、位相補正素子を光ヘッド装置に組み込む場合に生ずる位置ずれや、トラッキングサーボ時の対物レンズ移動のように、位相補正素子の光軸と対物レンズの光軸との位置ずれであるレンズシフトが生じた場合、位相補正素子の位相差分布が補正すべき波面収差分布からずれてしまうために、波面収差補正機能が低下し信号特性が劣化する。
【0009】
特に、コマ収差補正においてレンズシフトが生じた場合には、非点収差が発生してしまい、信号品質が大きく劣化する。近年、情報記録の高密度化が進行中であり、このレンズシフトによる非点収差の発生が問題となっており、これを解決する手段が求められている。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、光源と、前記光源からの出射光を光記録媒体上に集光させるための対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間に設けられ前記出射光の波面を変化させる位相補正素子と、波面を変化させるための電圧を前記位相補正素子へ出力する制御電圧発生手段とを備えた光ヘッド装置であって、前記位相補正素子はその表面に透明電極が形成された一対の透明基板と、前記透明基板間に挟持された液晶層とを備え、少なくとも一方の透明基板表面には、コマ収差を補正するための複数個のコマ収差補正電極と、前記対物レンズと前記位相補正素子の光軸のずれであるレンズシフトにより生じる収差の量に応じて補正用の位相差を発生させるためのレンズシフト補正電極とが形成され、前記コマ収差補正電極は光軸を挟み光ディスクの径方向に対称に、島状の電極31、32および周縁部の円弧状の電極34、35とからなり、電極31と電極35とが同じ位相分布を有し、電極32と電極34とが同じ位相分布を有するように形成され、前記レンズシフト補正電極は、電極31と電極34との間および電極32と電極35との間に円弧状の電極として光軸を挟み光ディスクの径方向に対称に形成されており、残余の領域は電極33が形成されており、光軸ずれがない場合には、コマ収差を補正するために電極31と電極35、電極32と電極34、電極33、36、37には夫々同じ位相補正用の同じ電圧が印加され、光軸ずれがある場合には、コマ収差および非点収差を補正するために、電極32と電極34、電極31と電極35には夫々同じ位相補正用の同じ電圧が印加されるとともに、レンズシフト補正電極36と電極37は、電極33と異なる電圧が印加されることを特徴とする光ヘッド装置を提供する。
【0011】
また、前記レンズシフト補正電極の前記位相補正素子表面における形成位置は、対物レンズ瞳直径の0.6倍の直径を有し中心と光軸が一致する円の外にあって、かつ前記光軸ずれが発生していない場合において、前記レンズシフト補正電極の形成位置におけるコマ収差分布の位相差が光軸位置におけるコマ収差分布の位相差と実質的に等しい位置であって、さらに、前記光記録媒体の径方向に配された少なくとも2つの位置である上記の光ヘッド装置を提供する。
【0012】
さらに、前記制御電圧発生手段は、前記レンズシフト補正電極を透過する波面に対して、前記光軸ずれ量と前記コマ収差補正電極が発生する位相差の積に比例する位相差を与える手段を有する上記の光ヘッド装置を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図2に本発明における光ヘッド装置の原理構成の一例を示す。図2に示した光ヘッド装置はCDまたはDVDなどの光ディスク8に情報を記録、再生するためのものであり、光源である半導体レーザ1から出射した光は例えばホログラムタイプの偏光ビームスプリッタ2を透過した後、コリメートレンズ3により平行光となり、位相補正素子4を透過後、4分の1波長板5を透過し、立ち上げミラー11で90°方向に反射され、アクチュエータ7に設置された対物レンズ6により光ディスク8上に集光される。
【0014】
集光された光は光ディスク8により反射され対物レンズ6、立ち上げミラー11、4分の1波長板5、位相補正素子4、コリメートレンズ3を順次先程とは逆に透過した後、偏光ビームスプリッタ2により回折され光検出器9に入射する。前述の半導体レーザ1からの出射光が光ディスク8により反射される際、光ディスクの面上に記録された情報により反射光は変調され、光検出器9により記録情報を読み取ることができる。
【0015】
偏光ビームスプリッタ2は例えば偏光性のホログラムを備えており、異方性方向(屈折率に差がある方向)に偏光成分を有する光を強く回折して光検出器9に導く。光検出器9より得られる光ディスクの例えば再生信号の強度が最適となるように、位相補正素子4に向けて制御電圧発生手段である位相補正素子制御回路10により電圧が出力される。位相補正素子制御回路10より出力される電圧は、ディスクチルトに応じた電圧であり、位相補正素子4の電極に印加する実質的に変化する電圧となる。
【0016】
次に本発明において使用する位相補正素子の構成を図3を用いて説明する。透明基板21a、21bが、例えばエポキシ系樹脂を主成分とするシール材22により接着され液晶セルを形成している。透明基板21a、21bには、ガラス、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネートなどが使用できるが、耐久性などの点からガラスの基板が好ましい。したがって、以下では基板の材料としてガラスを使用する場合について説明する。
【0017】
シール材22には例えばガラス製のスペーサと、例えば樹脂の表面に金などを被膜した導電性スペーサが含有されている。ガラス基板21aの内側表面には、内側表面から電極24a、シリカなどを主成分とする絶縁膜25a、配向膜26aがこの順に、またガラス基板21bの内側表面には、内側表面から電極24b、シリカなどを主成分とする絶縁膜25b、配向膜26bがこの順に被膜されている。液晶セルの外側表面には反射防止膜が被膜されていてもよい。
【0018】
電極24aは電極引出部27でフレキシブル基板などによって位相補正素子制御回路と接続できるようパターン配線されている。また電極24bは上述の金などを被膜した導電性スペーサによりガラス基板21a上に形成された電極24aと電気的に接続しており、したがって、電極24bは電極引出部27で接続線によって位相補正素子制御回路と接続できる。図3には、電極24bと電極24aとがシール材22と接している様子が示されていないが、紙面と平行なシール材とは接しており両電極は電性スペーサを通じて電気的に接続されている。液晶セル内部には液晶が充填され液晶層23とされており、図3に示した液晶分子28は、一方向に配向されたホモジニアス配向の状態にある。使用される液晶はディスプレイなどで用いられているネマティック液晶が好ましく、ツイストしていてもよい。
【0019】
配向膜26a、26bの材料としては、液晶分子28のプレチルト角が2〜10゜となれば好ましく、ポリイミド膜を図2の紙面に平行で左右方向にラビングしたものや、シリカ膜を斜め蒸着したものなどがよい。電極24a、24bの材質は透過率が高い方が望ましく、ITO膜などの透明導電膜を使用すればよい。
【0020】
以上は位相補正素子を用いて波面を変化させる機能に必要な構成を述べたが、波長板や偏光性のホログラムを位相補正素子4に積層することにより、波長板5や偏光ビームスプリッタ2の機能を位相補正素子4が併せ持つようにできる。この場合、光ヘッド装置を構成する光学部品の点数が減ることで組立、調整が簡易となり、生産性が向上して好ましい。
【0021】
また位相補正素子4に、回折格子や光源の波長により光束径を変化させるためのダイクロイック開口制限層などを積層し、またガラス基板21a、21bの外側表面上に直接形成することもでき、この場合も個々の部品を新たに追加することに比べて生産性が向上して好ましい。波長板を積層する場合には、光ディスク側のガラス基板に直接貼り合せるか、または貼り合わせたガラス基板をさらに積層すればよい。
【0022】
次に本発明における位相補正素子を用いて波面収差を補正する方法について述べる。図4はディスクチルト角が1°において発生するコマ収差分布を示すものであり、光源波長が660nm、対物レンズNAが0.65、光ディスク厚さが0.6mmである。コマ収差は波長λを単位として大きさごとに表してある。
【0023】
図1は本発明における位相補正素子の電極パターンの一例を示す模式図であり、光ディスクの径方向であるラディアル方向(図中X軸の方向)のディスクチルトにより発生したコマ収差を補正するものである。分割されたコマ収差補正電極31〜35およびレンズシフト補正電極36、37は、図3に例示した位相補正素子内部の電極24aまたは24bを、フォトリソグラフィー技術を用いてパターニングしたものである。
【0024】
レンズシフトがない場合、すなわち図1の電極中心と対物レンズ瞳(図1破線)の中心が一致している場合には、コマ収差補正電極31〜35により生じる位相差分布と図4に示したコマ収差分布が概ね一致するために、ディスクチルトにより発生するコマ収差を精度よく補正できる。具体的には、図4のコマ収差分布と等しい大きさで反対の符号を持つ位相差分布が生じるように、コマ収差補正電極31〜35の形状を決め、適切な電圧を各電極に印加すればよい。
【0025】
図5は位相補正素子が発生する対物レンズ瞳内の位相差分布を模式的に示したした図であり、斜線部はコマ収差補正電極33を透過する光と同じ位相を発生させる電極、白抜き部はコマ収差補正電極33を透過する光の位相より進んだ位相を発生させる電極、黒塗り部はコマ収差補正電極33を透過する光の位相より遅れた位相を発生させる電極を示す。
【0026】
レンズシフトがない場合(図5の(a))では、レンズシフト補正電極36、37はコマ収差補正電極33と同じ位相差になればよいので、同じ電圧を印加すればよい。コマ補正電極31、32、34、35には、ディスクチルトにより発生したコマ収差量に応じて位相差を変化できるように、コマ収差補正電極33とは異なる電圧を印加する。図4に示したコマ収差分布から、コマ収差補正電極31と35、およびコマ収差補正電極32と34の収差量は概ね等しいため、各々の電極の組には同じ電圧を印加してもよい。
【0027】
ラディアル方向にレンズシフトが生じた場合、レンズシフトの向きと大きさ、およびディスクチルト量に応じてレンズシフト補正電極36、37にコマ収差補正電極33とは異なる電圧を印加する。図5の(b)はX軸の正方向にレンズシフトが生じた場合であり、レンズシフト補正電極36、37にコマ収差補正電極31、35と同程度の電圧を印加して、コマ収差補正電極33と異なる位相差を発生させている様子を示している。
【0028】
この場合、レンズシフト補正電極36、37に対して適切な電圧を印加することにより、電極31〜37により発生する位相分布は、レンズシフトが生じた場合においても、図4に示したコマ収差分布と概ね同等にできる。
【0029】
すなわち、本発明における位相補正素子を用いれば、レンズシフトが生じた場合においても、レンズシフト補正電極の発生する位相差によって、コマ収差補正性能の改善、および非点収差発生の抑制が期待できる。同様に、X軸の負方向にレンズシフトが生じた場合(図5の(c))においても、レンズシフト補正電極36、37にコマ収差補正電極32、34と同程度の電圧を印加することで、レンズシフトに応じた位相差を発生させればよい。
【0030】
レンズシフト補正電極36、37の形成位置は、コマ収差分布がレンズシフトにより非点収差となることを抑制するために、コマ収差の方向であるラディアル方向に沿って配置することが最も効果的に非点収差の発生が抑えられるために好ましい。さらに、図5を用いた上記の説明で述べたように、レンズシフトがない場合では、レンズシフト電極は光軸を通るコマ収差補正電極33と同じ電圧を印加するため、コマ収差補正電極33と等位相面を形成する。
【0031】
したがって、レンズシフト補正電極36、37の形成位置は、図4に示したコマ収差分布において、光軸位置の位相差と実質的に等しい位相差を有する領域に形成することが好ましい。例えば、図1に例示した電極においては、コマ収差補正電極32と35の間、またはコマ収差補正電極31と34の間の領域が相当する。すなわち、2つのレンズシフト補正電極は、径方向にありかつ光軸に関して対称の位置にある。また、図4から明らかなように、この領域の位相差は補正するコマ収差分布の最大位相差(位相の最も進んだ部分と、位相の最も遅れた部分との位相差)の30%程度以内であれば、実質的に等しいとしてよい。
【0032】
またこの領域の位置、すなわちレンズシフト補正電極36、37の位置は、対物レンズ瞳(図1破線)直径の0.6倍の直径を有する円の外にあることが好ましい。0.6倍としたのはレンズシフトが発生していない場合においても残留収差の発生を抑制できることによる。
【0033】
次に、レンズシフト補正電極36、37の印加電圧の例を詳細に説明する。コマ収差補正電極33には基準電圧として電圧Vを印加する。一方、コマ収差補正電極31と35、およびコマ収差補正電極32と34には、V+ΔVθ、およびV−ΔVθをそれぞれ印加する。ここで、ΔVθはディスクチルト角に応じて変化するコマ収差補正電圧であり、ディスクチルトにより発生したコマ収差の大きさに概ね比例した電圧である。ここで、ΔVθとディスクチルトとの間に比例関係を得るためには、電圧制御範囲が液晶の位相差電圧特性における線形領域にあればよく、例えば、基準電圧Vを前記線形領域の中心電圧になるよう設定すればよい。
【0034】
一方、レンズシフト補正電極36、37には例えばV+ΔVを印加する。ここで、ΔVはレンズシフト補正電圧であり、レンズシフト量εとコマ収差補正電圧ΔVθに概ね比例する。したがって、比例係数をβとすれば、(1)式が成立する。
【0035】
【数1】
Figure 0004082072
【0036】
レンズシフトがない場合(ε=0)にはΔV=0となり、レンズシフト補正電極36、37にはコマ収差補正電極33と同じ電圧を印加すればよい。一方、レンズシフトが発生した場合には、コマ収差補正電圧に連動する形で、レンズシフト補正電圧を変化する必要がある。比例係数βは光ヘッド装置における対物レンズのNAなどの光学条件や、コマ収差補正電極形状などにより決まる値である。このようにレンズシフト電極をコマ収差補正電圧の1次式で制御できれば、実使用上、レンズシフト電極制御回路が単純化されるので好ましい。
【0037】
次に一例として、位相補正素子を光ヘッド装置に組み込む場合に発生する、組立誤差に起因したレンズシフトを補正する場合について述べる。この場合、組立後に画像計測などの方法を用いてレンズシフト量εを得て、これを例えば駆動回路上の可変抵抗値を増減するなどの手段により位相補正素子制御回路に値β、εを反映させる。これにより、コマ収差補正の発生に追従して、自動的にレンズシフトの影響を正しく補正しながらディスクチルト補正を行うことができる。
【0038】
同様に、トラッキングサーボによるレンズシフトεの影響を補正する例については、レンズシフトに対応するトラッキングサーボ信号を(1)式に対してその都度、動的に帰還させΔVを変化させればよい。
【0039】
図1に示した電極パターンの電極数、電極形状、印加電圧数などは、コマ収差の補正性能、位相補正素子制御回路の製作コストなどの条件に対して最適になるよう選択すればよい。例えば、コマ収差補正性能を高めるためには、コマ収差補正電極31、32を相似な形を有する複数の電極が同心円的に配列された構成にしてもよい。しかし、電極数を増やすことは、信号線が増えたり駆動回路が複雑になるなどの課題が生じる場合もある。
【0040】
また、上述の説明では、レンズシフト補正電極36、37に同じ電圧を印加するとしたが、最適にレンズシフト補正を行うために、各々の電極に異なる電圧を印加してもよい。
【0041】
図1に示した例では、コマ収差補正電極と同一基板面上にレンズシフト補正電極を形成したが、例えばコマ収差補正電極と対向する基板表面に形成された、球面収差補正用電極などとの同一基板面上にレンズシフト補正電極を形成してもよい。
【0042】
以上のように、本発明における位相補正素子では、コマ収差補正電極31〜35にレンズシフト補正電圧36、37を付加しこれを適切に制御することにより、レンズシフトが生じた場合においても、ディスクチルトによるコマ収差を補正することができるために、レンズシフト許容量やディスクチルト許容量を拡大することができる。
【0043】
【実施例】
本例の光ヘッド装置は、ディスクチルトにより発生するコマ収差および光ディスクの厚みムラにより発生する球面収差を補正する位相補正素子を備えており、コマ収差補正電極と同一基板面上に形成されたレンズシフト補正電極により、レンズシフトが生じた場合においても広いディスクチルトのマージンを確保できる。
【0044】
光ヘッド装置の光源波長は660nm、対物レンズのNAは0.65、瞳径は3.0mmである。図3は本例で使用した位相補正素子の断面図であり、透明電極24aには図1に示すコマ収差補正電極31〜35と、レンズシフト補正電極36、37が透明基板の同一面上に形成されている。なお、レンズシフト補正電極36、37の形成位置は、光軸を中心とする直径が1.8mmの円の外側となる位置とした。
【0045】
一方、透明電極24bには、図6に示す球面収差補正電極41〜45が備えられており、各電極の中心(光軸)が一致するように位相補正素子は構成されており、図2に示した光ヘッド装置の位相補正素子4として組み込まれている。また、図1、図および図6に示したX軸方向は図2におけるラディアル方向、すなわち光ディスクの光記録媒体の中心を通って対物レンズが移動する半径方向に一致している。
【0046】
位相補正素子4には位相補正素子制御回路10が接続されており、コマ収差補正電極33に電圧V=1.8Vrms、コマ収差補正電極31、35に電圧V+ΔVθ、コマ収差補正電極32、34に電圧V−ΔVθ、レンズシフト補正電極36、37に電圧V+ΔVが印加され、また球面収差補正電極41〜45には球面収差補正用電圧が印加される。ΔVθはコマ収差補正電圧であり、補正するコマ収差量に応じて−1.0Vrms〜+1.0Vrmsまで印加できる。同様に、ΔVはレンズシフト補正電圧であり、−1.0Vrms〜+1.0Vrmsまで印加できる。
【0047】
ΔVθとΔVとの間には(1)式に示される関係になるように、位相補正素子制御回路10が構成されている。本例の場合、(1)式のβは6.7/mmが最適であり、εは位相補正素子を光ヘッド装置に組み込んだ後に、画像計測によりX軸方向の位置ズレとして計測した結果、0.09mmであった。したがって、比例係数βεは0.6となり、位相補正素子制御回路内の分圧抵抗トリマーを調整することにより、ΔV=0.6ΔVθとなるよう構成した。
【0048】
図7に本発明における位相補正素子により得られた、波面収差(残留収差値)とディスクチルトとの関係のグラフ示す。図中実線(A)はβε=0.6としてレンズシフト補正を行った場合である。一方、破線(B)は比較のために、βε=0としてレンズシフト補正を行わなかった場合である。全波面収差はレンズシフト補正の有無で変わらなかったものの、レンズシフト補正を行ったものは、非点収差を大きく減少することができた結果、光ディスクの信号品質を大幅に改善することができた。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光ヘッド装置においては、複数個のコマ収差補正電極を形成した透明基板と同一基板上にレンズシフト補正電極を形成することにより、レンズシフトが生じた場合においても非点収差の発生を抑制できるために、ディスクチルト許容量を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における位相補正素子の電極パターンの一例を示す模式図。
【図2】本発明の光ヘッド装置の原理構成の一例を示す概念的断面図。
【図3】本発明における位相補正素子の一例を示す断面図。
【図4】光ディスクのチルトが1゜のとき発生したコマ収差分布を示す図。
【図5】本発明における位相補正素子の位相差分布の一例を示す概念図であり、(a)レンズシフトがない場合、(b)X軸の正方向にレンズシフトが発生した場合、(c)X軸の負方向にレンズシフトが発生した場合。
【図6】本発明における位相補正素子の電極パターンの一例を示す模式図。
【図7】実施例1における波面収差とディスクチルトの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1:半導体レーザ
2:偏光ビームスプリッタ
3:コリメートレンズ
4:位相補正素子
5:4分の1波長板
6:対物レンズ
7:アクチュエータ
8:光ディスク
9:光検出器
10:位相補正素子制御回路
11:立ち上げミラー
21a、21b:ガラス基板
22:シール材
23:液晶層
24a、24b:電極
25:絶縁膜
26:配向膜
27:電極引出部
28:液晶分子
31〜35:コマ収差補正電極
36、37:レンズシフト補正電極
41〜45:球面収差補正電極

Claims (3)

  1. 光源と、前記光源からの出射光を光記録媒体上に集光させるための対物レンズと、前記光源と前記対物レンズとの間に設けられ前記出射光の波面を変化させる位相補正素子と、波面を変化させるための電圧を前記位相補正素子へ出力する制御電圧発生手段とを備えた光ヘッド装置であって、
    前記位相補正素子はその表面に透明電極が形成された一対の透明基板と、前記透明基板間に挟持された液晶層とを備え、少なくとも一方の透明基板表面には、コマ収差を補正するための複数個のコマ収差補正電極と、前記対物レンズと前記位相補正素子の光軸のずれであるレンズシフトにより生じる収差の量に応じて補正用の位相差を発生させるためのレンズシフト補正電極とが形成され
    前記コマ収差補正電極は光軸を挟み光ディスクの径方向に対称に、島状の電極31、32および周縁部の円弧状の電極34、35とからなり、電極31と電極35とが同じ位相分布を有し、電極32と電極34とが同じ位相分布を有するように形成され、
    前記レンズシフト補正電極は、電極31と電極34との間および電極32と電極35との間に円弧状の電極として光軸を挟み光ディスクの径方向に対称に形成されており、
    残余の領域は電極33が形成されており、
    光軸ずれがない場合には、コマ収差を補正するために電極31と電極35、電極32と電極34、電極33、36、37には夫々同じ位相補正用の同じ電圧が印加され、
    光軸ずれがある場合には、コマ収差および非点収差を補正するために、電極32と電極34、電極31と電極35には夫々同じ位相補正用の同じ電圧が印加されるとともに、レンズシフト補正電極36と電極37は、電極33と異なる電圧が印加されることを特徴とする光ヘッド装置。
  2. 前記レンズシフト補正電極の前記位相補正素子表面における形成位置は、対物レンズ瞳直径の0.6倍の直径を有し中心と光軸が一致する円の外にあって、かつ前記光軸ずれが発生していない場合において、前記レンズシフト補正電極の形成位置におけるコマ収差分布の位相差が光軸位置におけるコマ収差分布の位相差と実質的に等しい位置であって、さらに、前記光記録媒体の径方向に配された少なくとも2つの位置である請求項1記載の光ヘッド装置。
  3. 前記制御電圧発生手段は、前記レンズシフト補正電極を透過する波面に対して、前記光軸ずれ量と前記コマ収差補正電極が発生する位相差の積に比例する位相差を与える手段を有する請求項1または2記載の光ヘッド装置。
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