JP4501355B2 - アーク溶接制御方法及びアーク溶接機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アークを発生させて溶接出力制御を行うアーク溶接制御方法及びアーク溶接機に関する。
【0002】
【従来の技術】
アーク溶接、例えば消耗電極式アーク溶接は、溶接用ワイヤ先端に電圧を供給し、ワイヤ先端と母材間にアーク放電を発生させ、発生する熱量を利用した接合方法である。
【0003】
消耗電極式アーク溶接の短絡移行時は、アーク状態と短絡状態を交互に繰り返す。ただし、溶接用チップ内の通電点の変化、ワイヤの品質のばらつき、送給性のばらつき等に起因し、安定した短絡移行溶接中においても不規則にアーク切れが発生する場合がある。
【0004】
アーク切れは、溶接安定性を損なう原因となり、スパッタの増加等をともない、溶接品質へ悪影響がある。
【0005】
AS判定部は、アーク状態か短絡状態かを、溶接出力電圧とあらかじめ設定された値とを比較することにより、判別動作を行う。
【0006】
従来の技術では、AS判定部により、溶接状態がアーク状態か短絡状態かを判別し、アーク状態中は、溶接出力電圧制御を行い、短絡状態中であれば、溶接出力電流制御を行っている。(例えば特許文献1参照)
また、近年の溶接電源の開発動向として、インバータ制御周波数の向上や、高速プロセッサの安価供給、また機種統合のニーズに伴い、マルチプロセス電源が指向されている。
【0007】
【特許文献1】
特開昭62−214872号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、マルチプロセス電源では、制御により溶接をコントロールする必要性があるため、設計上di/dtを大きく確保する必要がある。
【0009】
di/dtを確保する為には、メイントランスの無負荷電圧を上げることや、2次側のDCLのターン数を減らし、L値を小さくすることが考えられるが、実際には、安全規格上の制限がある為、無負荷電圧には限界が有り、DCLのL値を小さくして対応している。
【0010】
小さいL値を持つ溶接電源を用いて、消耗電極式アーク溶接をおこなうと、L値が大きい場合と比較し、短絡からアークに移行した際に出力電流が急峻に落ちるため、アーク切れが発生しやすい。
【0011】
さらに、シールドガスにCO2ガスを用いるとその傾向が顕著となる。
【0012】
これは、CO2ガスはアルゴンリッチなシールドガスに比較してアーク中の電圧勾配が大きいためアーク状態を維持するために必要となる電圧が大きくなるためである。また、DCLのL値が小さくなると、インバータの点弧毎の電流リップルが大きくなり、このこともアーク切れを誘因する原因となる。
【0013】
このような中で、上述した従来のアーク溶接制御方法においては、短絡状態からアーク状態に移行した瞬間の電流の急峻な落ち込みにより、アーク状態を維持できず、アーク切れが発生するといった問題があった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するために、本発明の消耗電極式アーク溶接制御方法は、短絡状態からアークが再発生した時点を時間起点として予め設定した第1ア−ク制御時間の間出力電流を予め設定した第1アーク制御設定電流値に制御する。
【0015】
また、上記問題を解決するために、本発明のアーク溶接機は、上記溶接制御方法を用いる。
【0016】
これらの方法により、本発明の消耗電極式アーク溶接方法は、DCLのL値が小さくなり、溶接状態が短絡からアークに状態が移行した際にも、アーク切れの発生を防止する作用を有する。
【0017】
【発明の実施の形態】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明における一実施の形態を示す。
【0019】
図2は、本発明における溶接制御方法の一実施の形態を説明する図を示す。
【0020】
図3は、本発明における溶接制御方法の一実施の形態を説明する図を示す。
【0021】
図中、1は1次整流部、2は平滑コンデンサ、3はスイッチング素子、4はトランス、5は2次整流部、6はDCL、7は駆動部、8は切替部、9は設定部、10は電圧検出部、11は電流検出部、12はAS判定部、13は比較部、14は微分部、15は第1アーク制御用タイマ、16は第1短絡制御用タイマ、17は第1アーク制御部、18は第1短絡制御部、19は短絡制御部、20はアーク制御部、Tsは短絡状態期間、Taはアーク状態期間、Ta1は第1アーク制御時間、Ia1は第1アーク制御設定電流値、E1は短絡状態からアークが再発生した時点、E2は短絡からアークへの移行が開始した時点、Is1は第1短絡制御設定電流値、Vaslは第1短絡制御判定値である。
【0022】
図2は、消耗電極アーク溶接の短絡移行時の溶出力電流波形、溶接出力電圧波形、AS判定部からの出力値を示している。AS判定部は、溶接状態が短絡の時はLレベル、アーク状態の時はHレベルを出力する。
【0023】
本図においては、E1時点で短絡からアークに移行している。
【0024】
本発明では短絡状態からアークが再発生した時点E1を起点として、予め設定される第1アーク制御時間Ta1の期間、予め設定される第1アーク制御設定電流値Ia1へ出力電流制御する。
【0025】
第1アーク制御時間Ta1は、設定電流値とワイヤ種類とワイヤ径により参照される予め作成されたテーブルデータベースの参照値でもよく、また設定電流と出力電流から算出される値でもよい。
【0026】
また予め設定される固定値(たとえば0.6ms)でもよく、第1アーク制御設定電流値Ialは、アーク再点弧時点で検出された出力電流値に係数を乗算した値(たとえば0.75)でもよく、また予め設定される固定値(たとえば350A)でもよい。
【0027】
第1アーク制御時間が終了後は、電圧制御であるアーク制御へ移行する。
【0028】
上記方法によると、短絡からアークに移行した時点から、一定期間定電流特性にするために、急激な電流の垂下が発生しない。よって、出力電流が0値(=アーク切れ)になりにくい。また、アーク状態が安定した後にアーク制御(電圧制御)に移行するため安定した制御が可能となる。上記方法により、短絡からアーク移行した時点に発生する急激な電流の垂下に伴い発生するアーク切れを防止することができる。
【0029】
次に、図1、3より、次の実施の形態例を説明する。
【0030】
図3は、消耗電極アーク溶接の短絡移行時の溶出力電流波形、溶接出力電圧波形、AS判定部からの出力値溶接出力電圧の微分値を示している。
【0031】
AS判定部は、溶接状態が短絡の時は、Lレベル、アーク状態の時はHレベルを出力する。図3において、E2時点で短絡からアークへの移行開始点が確認できる。本発明において、溶接出力電圧の微分値が予め設定される第1短絡制御判定値Vaslを超えた時点から溶接電源の出力がOFFされる。溶接電源の出力をONするのは、上記微分値の値がVaslより小さくなった時点でもよく、また予め設定される第1短絡制御出力停止時間Ts1が経過した時点でよく、また溶接状態がアーク状態となった時点でもよい。第1短絡制御出力停止時間Ts1は、予め設定されてもよい。溶接電源の出力がONした後、予め設定される第1短絡制御設定電流値Is1に出力電流制御する。
【0032】
溶接状態がアークとなると、溶接電源出力はONされ、アーク制御に移る。上記方法によって、短絡からアークへ移行する瞬間に発生するスパッタの発生を防止することができる。
【0033】
図1よりその他の実施の形態例を説明する。
【0034】
消耗電極溶接の短絡移行時に、AS判定部12は短絡時はLレベル、アーク時はHレベルを出力する。短絡からアークへ移行すると、AS判定部12は、切替部8と第1アーク制御用タイマ15にHレベルを出力する。第1アーク制御用タイマ15は、切替部8からのHレベルをうけカウントを開始し、設定部9により予め設定される第1ア−ク制御時間Ta1までの期間、切替部8にHレベルを出力する。切替部8は、第1アーク制御用タイマ15からのHレベル、AS判定部12からのHレベルを受ける期間、第1アーク制御部17からの入力信号を駆動部7へ選択出力する。
【0035】
第1アーク制御部17は、電流検出部11で検出される溶接出力電流値と設定部9で予め設定される第1アーク制御設定電流値Ia1とをフィードバック演算した結果を切替部8に出力する。
【0036】
また、第1アーク制御設定電流値Ia1は、設定部9が、AS判定部12からの入力がHレベルであることを検知した瞬間に、電流検出部11からの溶接出力電流値をホールドし、係数(たとえば0.75)を乗算した値でもよい。
【0037】
また、第1アーク制御設定電流値Ia1は、設定部9がア−ク再発生直前までに検出している溶接出力電流値、溶接出力電圧値、設定電流値、設定電圧値、ワイヤ送給量、シ−ルドガス種類、ワイヤ材質、ワイヤ径の入力値から参照するテーブル固定値でもよい。駆動部7は、切替部8からの信号をうけ、スイッチング素子3をドライブし電源出力を制御する。
【0038】
本構成により、短絡からアークへ移行した瞬間の、アーク電流の急峻な減衰に伴う、アーク切れを防止することができる。
【0039】
図1よりさらにその他の実施の形態を説明する。
【0040】
消耗電極溶接の短絡移行時に、電圧検出部10が検出した溶接出力電圧値は、微分部14へ出力される。
【0041】
微分部14は、溶接出力電圧値を微分演算した値を比較部13へ出力する。比較部13は、微分値と設定部9により予め設定される第1短絡制御判定値Vaslとを比較し、微分値が大きくなると、Hレベルを駆動部7へ出力する。駆動部7は、比較部13からのHレベルをうけ、スイッチング素子3のドライブを停止する。
【0042】
また、駆動部7がAS判定部12からのHレベルを受けている間は、駆動部7によるスイッチング素子3のドライブの停止を禁止してももよい。
【0043】
本構成により、短絡からアークへ移行した瞬間の、スパッタの発生を低減できる。
【0044】
また、比較部13は、微分値と設定部9により予め設定される第1短絡制御判定値Vaslとを比較し、微分値が小さくなると、Lレベルを駆動部7へ出力する。
駆動部7は、比較部13からのLレベルをうけ、スイッチング素子3のドライブをただちに開始してもよい。
【0045】
また、比較部13からのHレベルをうけカウントを開始し、設定部9により予め設定される第1短絡制御時間Ts1までの期間のみ駆動部7にHレベルを出力する第1短絡制御用タイマ16からのLレベルの信号を受けた時でもよい。
【0046】
さらに、第1アーク制御用タイマ15は、切替部8からのHレベルをうけカウントを開始し、設定部9により予め設定される第1ア−ク制御時間Ta1までの期間、切替部8にHレベルを出力する。
切替部8は、比較部13からのHレベルを受けてからAS判定部12がHレベルになるまでの期間、第1短絡制御部18からの入力信号を駆動部7へ選択出力する。第1短絡制御部18は、電流検出部11で検出される溶接出力電流値と設定部9で予め設定される第1短絡制御設定電流値Is1とをフィードバック演算した結果を切替部8に出力する。
【0047】
上記構成により、比較部による短絡からア−クへの移行開始点検出の後は、アーク点弧までの間、電流一定に保つことができ、スパッタの発生を防ぐことができる。
【0048】
なお、上記における実施の形態は、消耗電極式溶接の短絡移行時で説明したが、これに限定されるものではない。
【0049】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、短絡からアークに移行した際のアーク切れの発生を防止ができ、アーク切れにともなう溶接不安定を防止する。結果、溶接品質の向上、スパッタ量の減少が図れる。
【0050】
さらに、短絡からアークへ移行する際に発生するスパッタ発生量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における溶接制御方法の構成を示す図
【図2】本発明における溶接制御方法を示す図
【図3】本発明における溶接制御方法を示す図
【符号の説明】
1 1次整流部
2 平滑コンデンサ
3 スイッチング素子
4 トランス
5 2次整流部
6 DCL
7 駆動部
8 切替部
9 設定部
10 電圧検出部
11 電流検出部
12 AS判定部
13 比較部
14 微分部
15 第1アーク制御用タイマ
16 第1短絡制御用タイマ
17 第1アーク制御部
18 第1短絡制御部
19 短絡制御部
20 アーク制御部
Ts 短絡状態期間
Ta アーク状態期間
Ta1 第1アーク制御時間
Ia1 第1アーク制御設定電流値
E1 短絡状態からアークが再発生した時点
E2 短絡からアークへの移行が開始した時点
Is1 第1短絡制御設定電流値
Vasl 第1短絡制御判定値
Claims (13)
- 短絡状態からアークが再発生した時点を時間起点として予め設定した第1アーク制御時間の間、溶接出力電流を予め設定した第1アーク制御設定電流値に制御するアーク溶接制御方法であって、前記第1アーク制御時間の間は電流制御を行い、前記第1アーク制御時間の終了後は電圧制御を行い、前記第1アーク制御設定電流値は、前記電流制御によりア−ク再発生直前の溶接出力電流値より小さくアーク切れが発生しない値としたアーク溶接制御方法。
- 前記第1アーク制御設定電流値は、ア−ク再発生直前の溶接出力電流値に1より小さい係数を乗じて算出された値とした請求項1記載のアーク溶接制御方法。
- 前記第1アーク制御設定電流値は、予め設定される一定の固定値とした請求項1記載のアーク溶接制御方法。
- 第1アーク制御時間が終了後で短絡が発生するまでの間は電圧制御を行う請求項1から3のいずれか1項に記載のアーク溶接制御方法。
- 第1アーク制御時間は予め設定される固定値である請求項1から4のいずれか1項に記載のアーク溶接制御方法。
- 前記第1ア−ク制御時間及び前記第1アーク制御設定電流値はア−ク再発生直前までに検出している溶接出力電流値、溶接出力電圧値、ワイヤ送給量、シ−ルドガス種類、ワイヤ材質、ワイヤ径の少なくとも1つ以上の関数とした請求項1から5のいずれか1項に記載のアーク溶接制御方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載のアーク溶接制御方法を用いるアーク溶接機。
- 溶接出力電流を検出する電流検出部と、溶接出力電圧を検出する電圧検出部と、溶接状態が、短絡もしくはアークかを判別するアーク短絡検出部(AS検出部)とを備え、短絡状態からアークが再発生した時点を時間起点として予め設定した第1ア−ク制御時間の間、出力電流を予め設定した第1アーク制御設定電流値に制御するアーク溶接機であって、前記第1アーク制御時間の間は電流制御を行い、前記第1アーク制御時間の終了後は電圧制御を行い、前記第1アーク制御設定電流値は、前記電流制御によりア−ク再発生直前の溶接出力電流値より小さくアーク切れが発生しない値とするアーク溶接機。
- 前記第1アーク制御設定電流値は、ア−ク再発生直前の溶接出力電流値に1より小さい係数を乗じて算出された値とする請求項8記載のアーク溶接機。
- 前記第1アーク制御設定電流値は、予め設定される一定の固定値とした請求項8記載のアーク溶接装置。
- 第1アーク制御時間が終了後で短絡が発生するまでの間は電圧制御を行う請求項8から10のいずれか1項に記載のアーク溶接機。
- 第1アーク制御時間は予め設定される固定値である請求項8から11のいずれか1項に記載のアーク溶接機。
- 前記第1ア−ク制御時間及び前記第1アーク制御設定電流値は、ア−ク再発生直前までに検出している溶接出力電流値、溶接出力電圧値、ワイヤ送給量、シ−ルドガス種類、ワイヤ材質、ワイヤ径、の少なくとも1つ以上の関数とした請求項8から12のいずれか1項に記載のアーク溶接機。
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