JP4501298B2 - 内燃機関の空燃比制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リーン限界制御モードを有する内燃機関の空燃比制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、例えば特開平10−47122号公報には、内燃機関において、機関の始動時から所定の期間だけ燃焼安定度に応じて空燃比をリーン化することで、機関の運転性を悪化させることなくリーン化によるHC低減等のエミッション向上効果を最大限に引き出そうとする技術が開示されている。
【0003】
この技術では、燃焼安定度に応じて空燃比をリーン化するため燃焼安定度が悪化しない範囲の限界までリーン化されることになり、低揮発性の燃料であっても良好なリーン制御を行なうことができるものとなっている。
なお、上記のように、燃焼安定度に応じて空燃比をリーン化する制御をリーン限界制御と呼ぶが、このようなリーン限界制御には、リーンバーンエンジンにおいて走行中に空燃比をリーン化する制御も含まれる。このようなリーン限界制御では、HC或いはNOx低減等のエミッション向上効果の他、燃費向上効果も期待される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述の従来の技術では、単に燃焼安定度に応じて空燃比補正量を変更するものとなっているため、同じ燃焼安定度であれば低揮発性燃料でも高揮発性燃料でも同じように空燃比がリーン化されてしまうことになる。
しかしながら、低揮発燃料を用いた場合には、燃焼安定度が空燃比をリーン化できる領域に高まってきたからといって、即座に空燃比をリーン化すると一時的に燃焼が悪化しやすいため燃焼変動の増大や失火につながるとともに、さらには制御ハンチングを招き制御安定性が低下することになり、HC低減効果や燃費向上効果に悪影響を及ぼすという課題がある。
【0005】
空燃比の変更速度をより遅くすることも考えられるが、この場合は、高揮発性燃料を用いた場合にリーン限界空燃比に到達するのが遅くなりHC低減効果や燃費向上効果が低下してしまうという課題が発生する。
本発明は、上述の課題に鑑み創案されたもので、燃料の揮発性を考慮して内燃機関のリーン限界制御を行なうようにして、制御安定性を確保しながら効果的に空燃比のリーン化を行なえるようにした、内燃機関の空燃比制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の本発明の内燃機関の空燃比制御装置は、リーン限界制御モードを有する内燃機関において、燃焼安定度検出手段が上記内燃機関の燃焼安定度を検出し、燃料性状検出手段が上記内燃機関に供給される燃料の揮発性を検出すると、空燃比制御手段が、上記内燃機関の上記リーン限界制御中において、上記燃焼安定度検出手段により検出される燃焼安定度が所定基準よりも高い時には上記空燃比をリーン化させる。空燃比制御手段では、この時に、上記燃料性状検出手段が検出した燃料の揮発性の低さに応じて、燃料の揮発性が低いほど、リーン限界制御時の空燃比のリーン化は緩やかに行ない空燃比のリッチ化は速やかに行なう。
【0007】
上記の内燃機関のリーン限界制御は、内燃機関の始動後所定期間内に行なうことが好ましい。この場合、内燃機関の始動後においても、低揮発性燃料を用いてもリーン化時の燃焼安定性及び制御安定性が向上し安定したエミッション向上効果が得られ、高揮発性燃料に対しては応答性良くリーン化が実行され十分なエミッション向上効果が得られる。
【0008】
また、上記空燃比制御手段は、燃焼安定度が上記所定基準、若しくは上記所定基準よりも低い第2所定基準より低いときには、上記空燃比をリッチ化させると共に、上記燃料性状検出手段が検出した燃料の揮発性の低さに応じて上記リッチ化の変更速度を速くすることが好ましい。これによって、燃焼が一時的に悪化した場合に低揮発燃料でも安定燃焼に即座に復帰させることができる。
【0009】
上記燃料性状検出手段は、ナビゲーション装置が検出した給油場所情報に基づいて燃料の揮発性を検出することが好ましい(請求項2)。
上記燃料性状検出手段は、ナビゲーション装置が検出した給油場所情報と内燃機関に発生したノッキング情報とに基づいて燃料の揮発性を検出することが好ましい。これによって、より正確に燃料の揮発性を把握することができ、エミッション向上効果をより一層高めることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明すると、図1〜図3は本発明の一実施形態としての内燃機関の空燃比制御装置について示すもので、これらの図に基づいて説明する。
まず、本実施形態にかかる内燃機関(以下、エンジンという)を説明すると、図1に示すように、本エンジンは、筒内噴射型火花点火式の直列複数気筒ガソリンエンジンとして構成されており、燃焼室8内への燃料供給を自由なタイミングで実施できるため、吸気行程を中心とした燃料噴射による予混合燃焼のほか、圧縮行程を中心とした燃料噴射によって逆タンブル流を利用して層状燃焼を行なうことができ、次のような運転モード(燃料噴射モード)のいずれかを選択して運転を制御されるようになっている。また、本エンジンは、自動車に搭載されている。
【0011】
予混合燃焼の運転モードとしては、O2センサの検出情報に基づくフィードバック制御により空燃比を理論空燃比近傍に保持するストイキオ運転モード,空燃比を理論空燃比よりもリッチにするエンリッチ運転モード,空燃比を理論空燃比よりもリーンにするリーン運転モード(吸気リーン運転モード)が設けられ、これらは主として吸気行程で燃料噴射が行なわれる。層状燃焼の運転モードとしては、空燃比を理論空燃比よりも大幅にリーンにする超リーン運転モード(圧縮リーン運転モード)が設けられ、主として圧縮行程で燃料噴射が行なわれる。
【0012】
具体的に、本エンジンは、図1に示すように、シリンダヘッド2及びシリンダブロック3からなる機関本体(エンジン本体)1と、エンジン本体1に接続された吸気マニホールド10を有する吸気系と、エンジン本体1に接続された排気マニホールド12及び排気管14からなる排気通路を有する排気系と、エンジン本体1の作動を制御する電子制御ユニット(ECU)40とをそなえている。
【0013】
シリンダヘッド2には、各気筒毎に点火プラグ4とともに電磁式の燃料噴射弁6が燃焼室8内に直接燃料噴射しうるように設けられており、燃料噴射弁6には燃料タンクを擁する燃料供給装置(いずれも図示せず)が接続されている。そして、シリンダヘッド2の各気筒上部に略直立方向に形成された吸気ポート10Aには、吸気マニホールド10の各下流端が接続され、シリンダヘッド2の各気筒上部に側方へ湾曲形成された排気ポート12Aには、排気マニホールド12の各上流端が接続されている。
【0014】
また、吸気マニホールド10の上流端には、スロットル弁11を有するスロットルボディが接続され、スロットル弁11にはスロットル開度θthを検出するスロットルセンサ11aが付設されている。さらに、排気マニホールド12には空燃比が理論空燃比よりもリッチかリーンを検出するO2センサ15が設けられ、クランクシャフト13Aにはクランク角を検出するクランク角センサ13が設けられ、シリンダブロック3のウォータジャケット3aにはエンジンの冷却水温度を検出する水温センサ17が設けられ、シリンダブロック3には振動検出によりノッキングを検出するノックセンサ18が設けられている。これらのセンサ11a,15,13,17,18はECU40に接続され各検出信号をECU40に送信するようになっている。
【0015】
また、リーン運転(特に、圧縮リーン運転)を行なうと排気が酸素過剰となり、三元触媒では排気中のNOx(窒素酸化物)を十分に浄化できないため、排気管14には、本発明にかかる排気浄化装置の要部である排気浄化触媒装置(以下、触媒装置という)30が設けられている。この触媒装置30は、図1に示すように、上流側に吸蔵型NOx触媒30aを、下流側に三元触媒30bをそなえている。また、この触媒装置30よりも上流側には、エンジン本体1に近接して小型の近接三元触媒20が設けられている。
【0016】
したがって、燃焼室8から排出された排気は、排気マニホールド12から排気管14に進むと、近接三元触媒20を経て触媒装置30に進み、吸蔵型NOx触媒30aでNOxを浄化され、三元触媒30bを経て図示しないマフラーで消音され外部に排出される。特に、エンジンの冷態時には、吸蔵型NOx触媒30aや三元触媒30bは活性温度に達しないが、この時には、近接三元触媒20が速やかに昇温して排気を浄化するようになっている。
【0017】
また、本車両には、本車両の給油口(図示略)には給油口の開閉を検出する(例えば給油口の開口時にオン信号を出力する)給油口スイッチ50が設けられ、給油口スイッチ50の検出情報がECU40に送られるようになっており、給油口スイッチ50のオン・オフ信号により給油口の開閉状態を把握することで給油中であるか否かを判定できるようになっている。
【0018】
さらに、本車両にはナビゲーションシステム60が搭載されており、自車両位置を推定できるようになっている。特に、このナビゲーションシステム60の情報はECU40に送られ、本車両の給油時にその給油所を特定することができるようになっている。さらに、特定できた給油所での給油量を把握するために、燃料計70で検出された燃料タンク(図示略)内の燃料レベル情報がECU40に送られるようになっている。
【0019】
ECU40は、入出力装置,記憶装置(ROM,RAM,不揮発性RAM等)、中央処理装置(CPU),タイマカウンタ等をそなえており、このECU40により、スロットルセンサ11a,O2センサ15,クランク角センサ13,水温センサ17,ノックセンサ18,給油口スイッチ50,ナビゲーションシステム60,燃料計(燃料レベルゲージ或いはレベルセンサ等)70等の各検出情報に基づいて燃料噴射弁6,点火プラグ4の制御とともに、本内燃機関の排気浄化装置にかかる制御が行なわれるようになっている。
【0020】
つまり、ECU40では、エンジン回転数Neと平均有効圧(即ち、エンジン負荷に対応する目標筒内圧)Peとに基づいて、前述の運転モードを選択する運転モード選択手段41と、選択した運転モードとエンジン回転数Neと平均有効圧Pe等に基づいて目標空燃比(目標A/F)を設定して空燃比を制御する空燃比制御手段42と、さらに、この目標A/Fやその他の情報(例えば吸入空気流量やノックセンサ18からの情報等)に基づいて、燃料噴射量,燃料噴射時期,点火時期がいずれもエンジン運転状態に応じて最適になるように、燃料噴射弁6,点火プラグ4の作動を制御する燃料噴射制御手段43,点火制御手段44をそなえている。
【0021】
なお、エンジン回転数Neはクランク角センサ13の検出情報から算出され、目標平均有効圧Peは、このエンジン回転数Neとスロットルセンサ11aの検出情報に基づいたスロットル開度θthとに基づいて算出される。運転モード選択手段41では、エンジン回転数Neと平均有効圧Peとがともに小さい場合は、超リーン運転モード(圧縮行程噴射のリーン運転モード)が選択され、エンジン回転数Ne又は平均有効圧Peが大きくなると吸気行程噴射による運転モードに切り換わり、エンジン回転数Ne又は平均有効圧Peの増大に応じてリーン運転モード,ストイキオ運転モード,エンリッチ運転モードの順に切り換わる。
【0022】
また、空燃比制御手段42では、エンジンの冷態始動時には、暖気のために所定期間(例えば、予め設定された時間内)だけ燃料噴射量を増量して空燃比を例えばストイキよりもリッチ化する暖気制御機能をそなえており、この暖気制御時には、まず所定量の燃料増量を行なって、その後エンジンの燃焼安定性を監視しながら燃焼安定性が損なわれない範囲で燃料の暖気用増量分を減少させていき、暖気用の燃料増量を終了するようにしている。
【0023】
このように、暖気用の燃料増量後に、この増量開始時よりも可能な限り燃料増量分を減少させて空燃比をリーン方向にもっていく制御をここではリーン限界制御と称することとし、この時のエンジンの運転モードをリーン限界制御モードという。
さらに、運転モード選択手段41では、エンジンの暖気後の通常運転時に、エンジンへの要求負荷(目標平均有効圧Pe)が小さくエンジン回転数が低ければ、リーン運転モード更には超リーン運転モードを選択するが、このようなリーン運転時にも、空燃比制御手段42では、エンジンの燃焼安定性を監視しながら燃焼安定性が損なわれない範囲で燃料噴射量を減少させていき、可能な限り空燃比をリーンにして燃料消費の抑制を図るようにしている。
【0024】
このように、リーン運転モード又は超リーン運転モード時に、可能な限り燃料噴射量を減少させて空燃比をリーン方向にもっていく制御についてもリーン限界制御と称することとし、この時のエンジンの運転モードをリーン限界制御モードという。
空燃比制御手段42では、このようなリーン限界制御時に、上記のようにエンジンの燃焼安定性を監視しながら徐々にリーン化を行ない、リーン化した結果、エンジンの燃焼安定性が損なわれたら空燃比を微小量だけリッチ側に戻すように制御して、エンジンの燃焼安定性が極力損なわれないようにして、可能な限り空燃比をリーン化する。
【0025】
さらに具体的には、空燃比制御手段42は、リーン限界制御中において、燃焼安定度が所定基準領域内にあれば空燃比をそのままに維持し、燃焼安定度が所定基準領域よりも高い時には空燃比をリーン化させ、もしもこのリーン化によって燃焼安定度が所定基準領域よりも低くなれば空燃比をリッチ化させる。
ここで、燃焼安定度の所定基準領域には幅を持たせて、所定基準領域の上限値よりも燃焼安定度が高いときにはリーン化させ、所定基準領域の下限値よりも燃焼安定度が低いときにはリッチ化させるようにしているが、上限値と下限値ととを等しい値、即ち、燃焼安定度の所定基準領域を幅を持たせない所定基準値として、所定基準値よりも燃焼安定度が高いときにはリーン化させ、所定基準値よりも燃焼安定度が低いときにはリッチ化させるようにしてもよい。
【0026】
特に、本空燃比制御手段42では、このリーン化時に、燃料の揮発性の低さに応じてリーン化の変更速度を遅くするようになっている。このリーン化の変更速度を遅くすることは、具体的には、1制御サイクルでの空燃比のリーン化の程度(ゲイン)を低くすること(空燃比の増加補正量又は増加補正係数)を小さくすることである。
【0027】
このようにするのは、燃料の揮発性が低いほど噴射した燃料が霧化し難いため、噴射した燃料のうちの未燃分が多くなり易く、燃焼悪化につながり易い。また、揮発性が低いほど十分に揮発しない燃料が存在する分、実際上の空燃比はリーンとなって、これも燃焼悪化の原因となる。特に、リーン限界制御のような空燃比のリーン化に対しては、揮発性の低さからくる燃料の霧化しにくさの影響が大きく現れる。すなわち、リーン化が速過ぎると実際に燃焼に供される燃料の大幅な不足を招き、エンジンの燃焼安定性が損なわれ易くなるためである。
【0028】
また、揮発性が低い燃料を用いた場合に、このようなリーン化によって招いたエンジンの燃焼不安定を速やかに解消するには、空燃比を速やかにリッチ側に戻すことが有効であるため、ここでは、揮発性が低い燃料を用いた場合には、リッチ側に戻す程度を大きく設定している。
さらに具体的に説明すれば、この装置では、後述するように、燃料の揮発性度合に応じた係数(燃料性状補正係数)を求めて、この係数によってリーン化時の空燃比基準変更量を補正してリーン化の変更速度を調整するようにしている。
【0029】
燃料性状補正係数は、燃料の揮発性が高いほど大きな値に、また、燃料の揮発性が低いほど小さな値に設定され、この設定された燃料性状補正係数をリーン化のための空燃比基準増加補正量(空燃比基準変更量)ΔAFに乗算したものを空燃比増加補正量(空燃比変更ゲイン)とする。したがって、燃料の揮発性が高いほど空燃比増加補正量は大きくされてリーン化が速やかに行なわれ、逆に、燃料の揮発性が低いほど空燃比増加補正量は小さくされてリーン化がゆっくりと行なわれるようになっている。
【0030】
また、このリーン化によりエンジンの燃焼安定性が損なわれた場合のリッチ側に戻す程度(空燃比減少補正量)は、設定された燃料性状補正係数によってリーン化のための空燃比基準増加補正量(空燃比基準変更量)ΔAFを除算したものを空燃比減少補正量(空燃比変更ゲイン)とする。したがって、燃料の揮発性が高いほど空燃比減少補正量は小さくされてリッチ側への戻りは抑えられ、逆に、燃料の揮発性が低いほど空燃比減少補正量は大きくされてリッチ側への戻りが速められるようになっている。
【0031】
なお、空燃比補正量により空燃比(目標空燃比)が補正されると、これに応じて燃料噴射弁6からの燃料噴射量が補正される。
このような空燃比のリーン限界制御を実施するため、本装置には、エンジンの燃焼安定度を検出する燃焼安定度検出手段(燃焼安定度算出手段)45と、エンジンに供給される燃料の揮発性を検出する燃料性状検出手段46とがそなえられている。
【0032】
このうち、燃焼安定度検出手段45は、エンジンの回転角加速度の変動に基づいて燃焼安定度を検出(又は算出)する。エンジンの回転角加速度の変動は、クランク角センサ13から検出しうるクランク軸の回転変動により従来技術(例えば特開平10−47122号公報)を用いて算出することができる。
クランク軸の直近の数回転の回転角速度ωcrの平均値AVωcrを算出し、この現在の回転角速度平均値AVωcr(n)と、所定期間(例えばクランク軸1回転分)前のかかる回転角速度平均値AVωcr(n−1)との差Dを次式(1)より算出し、この差Dに適宜の補正(例えば補正係数Cを掛ける)を施すなどして、次式(2)に示すように、差Dに基づいて燃焼安定度BSを算出することができる。
【0033】
D=|AVωcr(n)−AVωcr(n−1)| ・・・(1)
BS=C*D ・・・(2)
燃料性状検出手段46は、給油口スイッチ50を通じて得られる車両が給油中であるか否かの情報(給油情報)と、ナビゲーションシステム60を通じて得られる給油中の給油所を特定する情報とから車両に給油された燃料の種類を特定して特定された燃料種類に応じた揮発性情報を得て、こうして得られた揮発性情報に、燃料計70を通じて得られる給油量情報を加味して、本車両の燃料タンク内に貯留されている燃料全体の揮発性(平均揮発性)を推定する。
【0034】
ここでは、揮発性情報としては、基準となる燃料(標準的な揮発性を有する燃料)を基準(1.0)として揮発性の度合を数値で表した「燃料性状補正係数」を用いており、各燃料の種類に応じた燃料性状補正係数を予めメモリに記憶しておき、給油した燃料の種類の情報とこの記憶データとから、給油した燃料の燃料性状補正係数(揮発性の度合)を把握するようにしている。
【0035】
ここで、燃料性状検出手段46についてさらに詳述する。燃料性状検出手段46には、車両が給油中であるか否かを判定する機能(給油判定手段)47がそなえられている。この給油判定手段47は、車両が停止中であり、且つ、給油口スイッチ50がオンになっていると車両が給油中であると判定する。なお、車両が停止中であるか否かは、図示しない車速センサで検出された車速から判定することができる。
【0036】
燃料性状検出手段46では、この給油判定手段47により車両が給油中であると判定されたら、燃料計70で得られる燃料タンク内の燃料レベル情報から燃料残量の増加量、即ち、給油量VSNを算出するとともに、ナビゲーションシステム60の情報から給油している給油所を特定し、この特定した給油所における燃料の燃料性状補正係数(揮発性の度合)PSNを推定した上で、これらの給油量VSN及び燃料の燃料性状補正係数PSNと、この給油前の燃料タンク内の残存燃料量VS(n−1)と及びこの残存燃料の燃料性状補正係数PS(n−1)とから、給油後の燃料タンク内の燃料全体の燃料性状補正係数(平均燃料性状補正係数)PS(n)を算出する。
【0037】
ここでは、揮発性度合の異なる複数の燃料を混合した場合の揮発性度合は、揮発性の度合は、混合した燃料の量に応じて重み付けした加重平均に相当するものとして次式(3)を用いて求めている。
【0038】
【数1】
上式のうちの給油量VSNは、燃料計70で得られる燃料タンク内の燃料増加量として求めることができ、新たに給油した燃料の揮発性(燃料性状)PSNについては、一般に、国(州)や地域や給油所単位でこの揮発性を特定できることから、各給油所における燃料の揮発性(燃料性状補正係数)を予め記憶しておくことで、給油している給油所が特定されれば新たに給油した燃料の揮発性を推定することができるのである。
【0039】
なお、給油している給油所を特定できない場合や給油所を特定できても該給油所における燃料の揮発性(燃料性状補正係数)が予め記憶されていない場合には、ナビゲーションシステム60の情報から給油している地域を特定して、地域に応じて燃料の揮発性を特定して使用すればよい。さらに、給油している地域における燃料の揮発性が予め記憶されていない場合には、ナビゲーションシステム60の情報から給油している国(州)を特定して、国(州)に応じて燃料の揮発性を特定して使用すればよい。
【0040】
ところで、燃料の揮発性は温度に大きく依存し、温度が高くなるほど揮発性は高まり、温度が低くなるほど揮発性は低下する。そこで、この装置では、燃料温度に応じたパラメータとしてエンジンの冷却水温WTを用い、水温センサ17で検出された冷却水温WTに応じた温度補正係数CTによって次式のように現在の燃料性状補正係数PS(n)を補正し、補正後燃料性状補正係数PS(n)Cを得るようにしている。
PS(n)C=CT*PS(n) ・・・(4)
また、燃料の揮発性はハイオク又はレギュラといった燃料種別にも依存するので、燃料種別の判定が必要になるが、ノッキングとオクタン価との間には相関があることから、新たに燃料を給油してから、燃焼中に発生するノッキングをノックセンサ18により検出して、新しく給油した燃料のオクタン価OCNを求め、このオクタン価から新しく給油した燃料の種別を判断することができる。
【0041】
つまり、新しく給油した燃料のオクタン価OCNは、給油時残っていた燃料のオクタン価OC(n−1)と現在の燃料(新旧の燃料が混ざったもの)のオクタン価OC(n)とから次式(5)により算出できる。また、式(5)中の各オクタン価OC(n−1),OC(n)は、予め記憶したデータをもとにノック補正値から求めることができる。
【0042】
【数2】
このように、新しく給油した燃料のオクタン価OCNが求められれば、ハイオク又はレギュラといった燃料種別を判定することができ、上記の給油所,地域,国(州)の情報と、この燃料種別の判定結果とから、給油した燃料の揮発性を推定することができる。
【0043】
本発明の一実施形態としての内燃機関の空燃比制御装置は、上述のように構成されているので、リーン限界制御時には、例えば図2のフローチャートに示すような処理を所定の周期で行ないながらリーン限界制御を行なう。また、これとは別に、燃料の給油があった時点で、及びその給油直後にハイオク又はレギュラといった燃料種別を判定できた段階で、例えば図3のフローチャートに示すようにして燃料性状補正係数(揮発性)を算出する。
【0044】
まず、燃料性状補正係数(揮発性)の算出を説明すると、図3に示すように、燃料の給油が完了したか否かを給油判定手段47によって判定し(ステップA10)、燃料の給油が完了したらナビゲーションシステム60の情報から給油している場所[給油所又は地域又は国(州)]を特定して(ステップA20)、さらに、燃料種別を特定する(ステップA30)。
【0045】
この時点では、ハイオク又はレギュラといった燃料種別は、その車両に予め指定されたもの(ハイオク指定車ならハイオク、そうでないならレギュラ)を採用するか、又は、過去の燃料種別の判定結果に基づいて、燃料種別を指定する。この場合、直近の判定結果ほど重視するようにして燃料種別を指定する。また、燃料の給油完了後に、ノックセンサ18によりノッキングを検出し新しく給油した燃料のオクタン価OCNを求めハイオク又はレギュラといった燃料種別を判定することができたら、この時点で、この燃料種別判定に基づいて、図3に示すフローを実行する。
【0046】
このようにして、給油場所,燃料種別を判定できたら、給油場所と予め記憶された給油場所及び燃料種別と燃料性状特性との対応関係に基づいて、給油した燃料の揮発性を示す燃料性状補正係数を推定する(ステップA40)。
一方、リーン限界制御は、図2のフローチャートに示すように、まず、リーン限界制御中か否かを判定し(ステップS10)、リーン限界制御中なら燃料性状補正係数(揮発性)を読み取り(ステップS20)、この燃料性状補正係数に温度補正を施して(ステップS30)、次に燃焼安定度が所定の限界領域にあるか、或いは所定の限界領域よりも高い(安定性が良)か低い(安定性が悪)かを判定する(ステップS40)。
【0047】
燃焼安定度が所定の限界領域よりも高い(安定性が良)場合は、ステップS30で求めた補正後燃料性状補正係数に応じて目標空燃比をリーン化し(ステップS50)、燃焼安定度が所定の限界領域よりも低い(安定性が悪)場合は、ステップS30で求めた補正後燃料性状補正係数に応じて目標空燃比をリッチ化し(ステップS60)、燃焼安定度が所定の限界領域にある場合は、目標空燃比を前回のままに保持する。
【0048】
これによって、燃料の揮発性が低いほど、リーン限界制御時の空燃比のリーン化が緩やかに行なわれ、このリーン化によって招いたエンジンの燃焼不安定を速やかに解消するための空燃比のリッチ化は速やかに行なわれることになる。燃料の揮発性が低いほど燃料の霧化しにくさの影響から燃焼安定性を確保し難いが、このような制御によって燃焼安定を確保しながらリーン限界制御を実施することができる。
【0049】
一方、燃料の揮発性が高いほど、リーン限界制御時の空燃比のリーン化が速やかに行なわれ、燃料に揮発性が高い場合には、リーン化によって燃焼が不安定になりにくいのでエンジンの燃焼不安定を解消するための空燃比のリッチ化は緩やかに行なわれることになる。燃料の揮発性が高いほど燃料は霧化し易いため燃焼安定を確保し易く、このような制御によって燃焼安定を確保しながら速やかに空燃比を限界までリーンにすることができ、HC低減等のエミッション向上効果の向上や、燃費向上の効果を促進することができる。
【0050】
また、燃料の揮発性の推定に燃料温度(ここでは、冷却水温をパラメータとする)を用いているので、冷態始動時などエンジン各部の壁面温度が低く燃料がより蒸発しにくい場合にも対応して、適切な制御が行なわれる利点もある。
なお、図4は本装置にかかるエンジンの始動時の燃料暖気増量時のリーン限界制御(空燃比制御)の一例を示すタイムチャートであり、エンジン始動後アイドリング期間を経て発進する過程の車速,エンジン回転数,空燃比(A/F),暖気増量係数(空燃比に反比例するもの)を示している。実線a,bはともに本装置にかかる制御(燃料の揮発性を考慮したリーン限界制御)を加えた暖気制御を示し、このうち、実線aは燃料の揮発性が比較的高い場合の例を示し、破線bは燃料の揮発性が実線aの場合よりも低い場合の例を示す。エンジン回転数は各場合で共通である。
【0051】
図示するように、燃料の揮発性を考慮したリーン限界制御によって、揮発性が比較的高い場合には、暖気増量係数が速やかに低下され、空燃比が速やかにリーン化され、これよりも燃料の揮発性が低い場合には、暖気増量係数速度が緩められ、空燃比が緩やかにリーン化されることがわかる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0052】
例えば、上記実施形態は、筒内噴射エンジンであるが本発明は吸気ポート噴射エンジンなど他のエンジンであっても適用できる。
また、上記では、リーン限界制御時の空燃比のリーン化の速さとリッチ化の速さとの両方を燃料の揮発性に応じて変更するようにしたが、リーン化の速さのみを燃料の揮発性に応じて変更するようにしてもよい。
【0053】
また、上記の燃料性状補正係数を、燃料噴射時期によって別設定としてもよい。これは、筒内噴射エンジンの場合は吸気行程噴射と圧縮行程噴射との間で、吸気ポート噴射エンジンの場合は排気行程噴射と吸気行程噴射との間で、エンジン各部の壁面に付着する燃料量が異なり、蒸発する燃料量も影響を受けるためであり、このような点を考慮すればより適切に制御を行なうことができる。
【0054】
また、上記の燃料性状補正係数を、定常運転時と加速運転時で別設定としてもよい。これは、加速運転時など燃料噴射量が変化する過渡時には、エンジン各部の壁面に付着した燃料が蒸発する量も変化していくので、影響が大きい。一方、定常運転時には常に同じ量の燃料が噴射され、エンジン各部の壁面に付着した燃料が蒸発する量も同じなので影響が小さいためであり、このような点を考慮すればより適切に制御を行なうことができる。
【0055】
このほか、燃料性状補正係数の設定は様々な態様が考えられる。
また、給油中であるかどうかの判定は、車両が停止中であり(車速センサで判定)かつ給油口が開いている(給油ロスイッチで判定)ということから判定するようにしたが、車両が停止中であり且つ燃料計70で得られる燃料タンク内の燃料レベル情報が燃料増加を示すことからこのような判定を行なってもよい。
【0056】
また、カレンダ機能を有していれば、季節の違いを判断して夏ガソリンと冬ガソリンとによる燃料揮発係数の違いも判断しこれを制御に反映させてもよい。
また、燃焼安定度の検出には、エンジンの回転角加速度の変動以外に、エンジンの回転角速度の変動、さらには、エンジンの燃焼室内筒内圧の変動(筒内圧は筒内圧センサ等で検出できる)、或いは、点火プラグ近傍のイオン電流の変動等に基づいて検出してもよい。
【0057】
さらに、従来技術の始動時のエンジン回転数等により燃料性状を判定する方法と組み合わせて使用してもよい。
また、本実施形態では、燃料の揮発性を給油箇所を検出してこの給油箇所と予め記憶された給油箇所と燃料性状との関係とから推定しているが、燃料タンク内の燃料の揮発性を直接検出できれば、この検出結果を用いて制御を行なっても良い。
【0058】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1記載の本発明の内燃機関の空燃比制御装置によれば、内燃機関のリーン限界制御中において、燃焼安定度が所定基準よりも高い時は空燃比をリーン化させると共に、燃料性状検出手段が検出した燃料の揮発性の低さに応じて、燃料の揮発性が低いほど、リーン限界制御時の空燃比のリーン化は緩やかに行ない空燃比のリッチ化は速やかに行なうことにより、低揮発性燃料を用いてもリーン化時の制御安定性が向上し安定したエミッション向上効果が得られるうえ、高揮発性燃料に対しては応答性良くリーン化が実行され十分なエミッション向上効果が得られる。
【0059】
上記燃料性状検出手段が、ナビゲーション装置が検出した給油場所情報に基づいて燃料の揮発性を検出するように構成すれば(請求項2)、燃料の揮発性を的確に検出することができ、より適切なリーン化制御を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内燃機関の模式的な構成図である。
【図2】本発明の一実施形態としての内燃機関の空燃比制御装置による空燃比制御を示すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態としての内燃機関の空燃比制御装置による空燃比制御にかかる燃料の揮発特性の算出を示すフローチャートである。
【図4】
本発明の一実施形態としての内燃機関の空燃比制御装置による空燃比制御を説
明するタイムチャートである。
【符号の説明】
40 電子制御ユニット(ECU)
41 運転モード選択手段
42 空燃比制御手段
43 燃料噴射制御手段
44 点火制御手段
45 燃焼安定度検出手段(燃焼安定度算出手段)
46 燃料性状検出手段
47 給油判定手段
Claims (2)
- 内燃機関の燃焼安定度を検出する燃焼安定度検出手段と、
上記内燃機関に供給される燃料の揮発性を検出する燃料性状検出手段と、
上記内燃機関のリーン限界制御中において、上記燃焼安定度検出手段により検出される燃焼安定度が所定基準よりも高い時には上記空燃比をリーン化させると共に、上記燃料性状検出手段が検出した燃料の揮発性の低さに応じて、燃料の揮発性が低いほど、リーン限界制御時の空燃比のリーン化は緩やかに行ない空燃比のリッチ化は速やかに行なう空燃比制御手段とを備えた
ことを特徴とする、内燃機関の空燃比制御装置。 - 上記燃料性状検出手段は、ナビゲーション装置が検出した給油場所情報に基づいて燃料の揮発性を検出する
ことを特徴とする、請求項1記載の内燃機関の空燃比制御装置。
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