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JP4579840B2 - ハニカム構造を有する生分解性フィルムの製造方法 - Google Patents

ハニカム構造を有する生分解性フィルムの製造方法 Download PDF

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本発明は、ハニカム構造を有する生分解性フィルムの製造方法に関する。
生分解性ポリマーおよび親水性のアクリルアミドポリマーを主鎖骨格とし、疎水性側鎖としてドデシル基を、親水性側鎖としてラクトース基或いはカルボキシル基を併せ持つ両親媒性ポリマーを1から50%添加したポリマーから作成したハニカム構造を有するフィルムおよびその製造方法について記載されている。(特許文献1)
然しながら、ここで用いられている基材のポリマーは生体適合性の高いポリマーではあるが、両親媒性ポリマーは分解してアクリルアミド系化合物を生成すると予想され、当該分解物は必ずしも生体に対して安全とは言い切れない。できればこのような両親媒性ポリマーの使用量は極力低く抑えることが望ましい。
このように生体組織へ利用する目的で微細構造を有するフィルムを使用する場合、生体適合性が大きな問題となる。そのため、使用するポリマーだけでなく微細構造を形成する為の試薬、すなわち両親媒性ポリマー等の界面活性剤も生体適合性および生体への安全性を持っていることが望まれている。そのためにはポリマーの含有量を高め、界面活性剤の使用量を抑えることが安全性の確保という観点からも望ましい。
現状では、適度な生分解性と生体適合性を有し、取扱性に優れ、所望の期間にわたり安定して良好な癒着防止効果を発揮する癒着防止材は存在せず、その出現が望まれている。
特開2001−157574号公報
本発明者らは、リン脂質を界面活性剤として生分解性ポリマーに配合し、これを高湿度下にキャストすることにより、細胞培養の基材としても有用であり、生体適合性に優れたハニカム構造を有するフィルムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は生分解性ポリマーの有機溶媒溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることでハニカム構造を有する生分解性ポリマーフィルムを製造する方法に関するものである。
すなわち、本発明は
1.生分解性ポリマー、リン脂質、および有機溶媒とからなる溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることを特徴とするハニカム構造を有する生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
2.該生分解性ポリマーが生分解性脂肪族ポリエステルおよび/または生分解性脂肪族ポリカーボネートである上記に記載の生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
3.該生分解性脂肪族ポリエステルがポリ乳酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどの生分解性脂肪族ポリエステルからなる群から選択される少なくとも一つのポリマーである上記に記載の生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
4.該生分解性脂肪族ポリカーボネートがポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネートからなる群から選択される少なくとも一つのポリマーである上記に記載の生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
5.該生分解性ポリマーがポリ乳酸またはポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体であることを特徴とする上記に記載の生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
6.該リン脂質がホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールおよびそれらの誘導体からなる群から選択されてなる上記に記載の生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
7.該リン脂質がL−α−ホスファチジルエタノールアミンであることを特徴とする上記に記載の生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
8.該リン脂質がL−α−ホスファチジルエタノールアミン ジオレオイルであることを特徴とする上記に記載の生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
9.該生分解性ポリマーと該リン脂質の組成比が1:1から1000:1(wt/wt)であることを特徴とする上記に記載の生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
本発明により細胞培養の基材としても有用であり、生体適合性に優れたハニカム構造を有するフィルムが得られる。
本発明における生分解性フィルムを作製するために用いる生分解性ポリマーとしてはポリ乳酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどの生分解性脂肪族ポリエステル、ポリブチレンカーボネート、ポリエチレンカーボネート等の脂肪族ポリカーボネート等が、有機溶媒への溶解性の観点から好ましい。中でも、ポリ乳酸、ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体、ポリカプロラクトンが入手の容易さ、価格等の観点から望ましい。
ハニカム構造を簡便に再現性よく作製するためにリン脂質を界面活性剤として加える。
リン脂質は生体膜系を構成している物質であり、元来、生体内にあるため、生体適合性が高く、ドラッグデリバリーシステムにも利用されている物質であり安全性も高いことが知られている。さらに、本発明で界面活性剤として使用するリン脂質は容易に手に入れることができる。
本発明に用いるリン脂質は、動物組織から抽出したものでも、また人工的に合成して製造したものでもその起源を問うことなく使用できる。リン脂質としてはホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロールおよびそれらの誘導体からなる群から選択されてなるものを利用することが望ましい。好ましくはホスファチジルエタノールアミンであり、さらに好ましくはL−α−ホスファチジルエタノールアミン ジオレオイルである。
本発明のハニカム構造体を作製するに当たってはポリマー溶液上に微小な水滴粒子を形成させることが必須である事から、使用する有機溶剤としては非水溶性である事が必要である。これらの例としてはクロロホルム、塩化メチレン等のハロゲン系有機溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルイソブチルケトン、などの非水溶性ケトン類、二硫化炭素などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で使用しても、又、これらの溶媒を組み合わせた混合溶媒として使用してもかまわない。
前記溶媒に溶解する生分解性ポリマーとリン脂質両者併せての溶液濃度は0.01から10wt%、より好ましくは0.05から5wt%である。ポリマー濃度が0.01wt%より低いと得られるフィルムの力学強度が不足し望ましくない。又、10wt%以上では溶液濃度が高くなりすぎ、十分なハニカム構造が得られない。又、生分解性ポリマーとリン脂質の組成比は重量比で1:1から1000:1(wt/wt)である。リン脂質が生分解性ポリマーにたいして1000分の1以下では均一なハニカム構造が得られず、又、該重量比が1:1以上ではフィルムとしての自己支持性を有しておらず、コストも高く、経済性に乏しいため好ましくない。
本発明においては該ポリマー有機溶媒溶液を基板上にキャストしハニカム構造体を調製するわけであるが、該基板としてはガラス、金属、シリコンウェハー、等の無機材料、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルケトン、等の耐有機溶剤性に優れた高分子、水、流動パラフィン、液状ポリエーテル等の液体が使用できる。中でも、基材に水を使用した場合、該ハニカム構造体の特徴である自立性を生かすことで、該構造体を単独で容易に基板から取り出すことが出来、好適である。
本発明で、ハニカム構造が形成される機構は次のように考えられる。疎水性有機溶媒が蒸発するとき、潜熱を奪う為に、キャストフィルム表面の温度が下がり、微小な水の液滴がポリマー溶液表面に凝集、付着する。ポリマー溶液中の親水性部分の働きによって水と疎水性有機溶媒の間の表面張力が減少し、このため、水微粒子が凝集して1つの塊になろうとするにさいし、安定化される。溶媒が蒸発していくに伴い、ヘキサゴナルの形をした液滴が最密充填した形で並んでいき、最後に、水が飛び、ポリマーが規則正しくハニカム状に並んだ形として残る。従って、該フィルムを調製する環境としては相対湿度が50から95%の範囲にあることが望ましい。50%以下ではキャストフィルム上への結露が不十分になり、又、95%以上では環境のコントロールが難しく好ましくない。このようにしてできるハニカム構造の空隙内径の大きさは0.1から20μmである。
このようにして作製したフィルムは、表面がハニカム構造を有し、膜厚が充分厚い場合は、基盤に接していた裏面は孔が貫通していない平らな面となる。また、膜厚が水滴の大きさよりも薄い場合は孔が貫通したフィルムが得られる。
従って、使用目的により、貫通または非貫通膜を選択することが望ましい。
以下、実施例により本発明の実施の形態を説明するが、これらは本発明の発明を制限するものではない。
[実施例1]
ポリ乳酸(分子量100000)のクロロホルム溶液(5g/L)に界面活性剤としてホスファチジルエタノールアミン−ジオレオイルを10:1の割合で混合し、ガラス基板上にキャストし室温、湿度70%の条件下に静置し、溶媒を徐々に飛ばすことでハニカム構造を有するフィルムを調製した。こうして得られた構造体中のハニカム構造を構成する個々の孔の空隙内径の大きさは約5μmで、膜厚は13μmであり、非貫通フィルムであった。フィルムは白濁していた。ポリ乳酸フィルムは一般のキャスト法で作成すると無色透明であるが、本発明のようにハニカム構造を有すると光の散乱により、フィルムは白濁する。SEM写真を図1に示す。
[実施例2]
ポリ乳酸(分子量100000)のクロロホルム溶液(5g/L)に界面活性剤としてホスファチジルエタノールアミン−ジオレオイルを200:1の割合で混合し、ガラス基板上にキャストし室温、湿度70%の条件下に静置し、溶媒を徐々に飛ばすことでハニカム構造を有するフィルムを調製した。こうして得られた構造体中のハニカム構造を構成する個々の孔の空隙内径の大きさは約5μmで、膜厚は13μmであり、非貫通フィルムであった。フィルムは白濁していた。このことから実施例1と同様にハニカム構造が生じていることが判る。SEM写真を図2に示す。
[実施例3]
ポリ乳酸(分子量100000)のクロロホルム溶液(5g/L)に界面活性剤としてホスファチジルエタノールアミン−ジオレオイルを800:1の割合で混合し、ガラス基板上にキャストし室温、湿度70%の条件下に静置し、溶媒を徐々に飛ばすことでハニカム構造を有するフィルムを調製した。こうして得られた構造体中のハニカム構造を構成する個々の孔の空隙内径の大きさは約5μmで、膜厚は13μmであり、非貫通フィルムであった。フィルムは白濁していた。このことから実施例1と同様にハニカム構造が生じていることが判る。光学顕微鏡写真を図3に示す。
[実施例4]
ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体(分子量101000)のクロロホルム溶液(5g/L)に界面活性剤としてホスファチジルエタノールアミン−ジオレオイルを10:1の割合で混合し、ガラス基板上にキャストし室温、湿度70%の条件下に静置し、溶媒を徐々に飛ばすことでハニカム構造を有するフィルムを調製した。こうして得られた構造体中のハニカム構造を構成する個々の孔の空隙内径の大きさは約3μmで、膜厚は10μmであり、非貫通フィルムであった。フィルムは白濁していた。ポリ乳酸フィルムは一般のキャスト法で作成すると無色透明であるが、本発明のようにハニカム構造を有すると光の散乱により、フィルムは白濁する。光学顕微鏡写真を図4に示す。
[実施例5]
ポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体(分子量101000)のクロロホルム溶液(5g/L)に界面活性剤としてホスファチジルエタノールアミン−ジオレオイルを200:1の割合で混合し、ガラス基板上にキャストし室温、湿度70%の条件下に静置し、溶媒を徐々に飛ばすことでハニカム構造を有するフィルムを調製した。こうして得られた構造体中のハニカム構造を構成する個々の孔の空隙内径の大きさは約5μmで、膜厚は10μmであり、非貫通フィルムであった。フィルムは白濁していた。このことから実施例4と同様にハニカム構造が生じていることが判る。光学顕微鏡写真を図5に示す。
[比較例1]
ポリ乳酸(分子量100000)のクロロホルム溶液(5g/L)を実施例1と同様の方法でハニカム構造を有するフィルムの作製を試みた。しかし、ハニカム構造は形成されず、不均一なフィルムが作製された。
[比較例2]
ホスファチジルエタノールアミン−ジオレオイルのクロロホルム溶液(5g/L)を実施例1と同様の方法でハニカム構造体の作製を試みた。しかし、フィルムは作製できず、自己支持性も有していなかった。
本願発明のハニカム構造を有する生分解性フィルムは、癒着防止材として生体への適用が可能である。
実施例1で得られたハニカム構造を有するフィルムの電子顕微鏡写真である。 実施例2で得られたハニカム構造を有するフィルムの電子顕微鏡写真である。 実施例3で得られたハニカム構造を有するフィルムの光学顕微鏡写真である。 実施例4で得られたハニカム構造を有するフィルムの光学顕微鏡写真である。 実施例5で得られたハニカム構造を有するフィルムの光学顕微鏡写真である。

Claims (4)

  1. ポリ乳酸およびポリ乳酸−ポリグリコール酸共重合体からなる群から選択される少なくとも一つのポリマー、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンからなる群から選択される少なくとも一つのリン脂質、および有機溶媒とからなる溶液を、相対湿度50〜95%の大気下で基板上にキャストし、該有機溶媒を徐々に蒸散させると同時に該キャスト液表面で結露させ、該結露により生じた微小水滴を蒸発させることを特徴とするハニカム構造を有する生分解性ポリマーフィルムの製造方法。
  2. 該リン脂質がL−α−ホスファチジルエタノールアミンである請求項1に記載の製造方法。
  3. 該リン脂質がL−α−ホスファチジルエタノールアミンジオレオイルである請求項1に記載の製造方法。
  4. 該ポリマーと該リン脂質の組成比が1:1から1000:1(wt/wt)である請求項1〜のいずれかに記載の製造方法。
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