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JP4573671B2 - 熱線遮蔽シート - Google Patents

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JP4573671B2
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Description

本発明は、テント、タープなどのようなシート状の構造体に使用した際に、該構造体の内側に置いた物体の太陽光による温度上昇を効果的に抑えることができ、しかも該シート表面の温度上昇に伴うシートの劣化を防止することができる熱線遮蔽シートに関する。
従来、テントなどに使用される材料は、ターポリンと呼ばれ、ポリエステルの編物、織物等の繊維基材の両面をポリ塩化ビニルやゴムで被覆した構成のものが一般的である。
このような構成からなるターポリンは、熱線の遮蔽性の面では決して良いものではなく、特に半恒久的に使用されるテント倉庫などでは、夏季の日中の倉庫内温度の上昇が激しく、倉庫内の製品はもとより、作業者にとって快適なものではない。
さらには、有事の際に使用される軍事用テントや災害時に使用される仮設のテントなども同様にテント内の温度上昇は大きな問題である。
また、従来からトラックの幌として、同様のターポリンや、帆布等に樹脂を
含浸したものなどが使用されているが、上記のテントと同様に真夏の日中にはトラック荷台内の温度上昇は大きな問題であり、運送する荷物に制限がある。
ところで、熱線の遮蔽性(以下「遮熱性」とも言う)を有するシートに関する技術は、古くから研究されており、例えば、特開平8−81567号公報(特許文献1)には、プラスチック樹脂にアルミニウム粉末を特定量含有させることにより遮熱性を持たせたシート、特開2002−12679号公報(特許文献2)には、熱可塑性樹脂フィルムに遮熱性を持たせた顔料を2種以上混合して成形される遮熱性カラーフィルム、特開2000−71858号公報(特許文献3)には、プラスチック層と金属蒸着ポリエステルフイルムを積層させたシート、などが知られている。
しかし、特許文献1に記載のシートは、表面にアルミニウムが多量に含有された層が有るため眩しく、しかも該シート表面は印刷等にも適していない。さらに、このような構成のシートは、日射反射率を75%以上に高めることも、日射吸収率を10%以下にすることも、困難である。
特許文献2に記載のフィルムは、遮熱性能に優れた高価な顔料の使用を余儀なくされるばかりか、このような高価な顔料に比べ、一般の低廉な白色酸化チタン顔料が反射性能に優れる場合もある。しかも、該フイルムは、表面の温度は低く保つことができるものの、フィルム全体としては光の透過量が多く、従って該フィルムを使用した構造体の内部に置かれた物体を直接加熱することとなり、この物体の温度は高くなる傾向にある。
特許文献3に記載のシートは、内部に直接太陽光は届かないものの、金属蒸着ポリエステルフイルムが光を吸収してシート自体が高温に加熱されるため、熱伝播による間接的な加熱が考えられ、さらにシート自体の劣化も懸念される。
シートに遮熱性を付与する方法として、他には、遮熱効果を有する塗料を該シート表面に塗布する方法も考えられるが、この塗料自体が、一般の塗料に比して高価であるうえ、テント等の構造体を作成した後に一定の性能を発揮するように塗料を塗布する必要があり、例えば、塗料を何度も重ね塗りして厚くする作業を余儀なくされるなどのように、非常に手間がかかるという問題がある。
特開平8−81567号公報 特開2002−12679号公報 特開2000−71858号公報
本発明は、これまで使用されている、あるいは提案されている上記のような遮熱性シートにおける種々の問題を解決するものであって、高い反射性能を有するシートであり、太陽光線の多くを反射させ、反射しきれない光線を吸収層で吸収することで、優れた熱線遮蔽性を発現するシートを提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、種々検討を行ったところ、まず、
(α)特定の波長の光を反射させる「反射層」と、この反射層を透過した光であって特に発熱に寄与する波長の光を吸収する「吸収層」との積層構造体とすることで、最外層の「反射層」により太陽光を反射させ、反射しきれない透過光を「吸収層」により有効に吸収させることにより、テントなどのシート状構造体内部の太陽光による温度上昇を防止すると共に、熱線遮蔽シート自体の過度の加熱をも抑制できるとの知見を得た。
次に、この知見の下でさらに検討を重ねた結果、
(β)「吸収層」の比熱容量を「反射層」のそれよりも大きく設定することで、「吸収層」が吸収した太陽エネルギーを該「吸収層」内に封じ込め、該エネルギーのシート状構造体の内部への逃散、この結果による構造体内部の温度上昇を効果的に抑制することができることを見出し、さらに、
(γ)このような積層シートが、特定の波長の光に対し特定の日射反射率と日射吸収率を有することによって、シート自体の蓄熱やシート表面の発熱をより一層効率的に防止できることをも見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、少なくとも反射層と吸収層の2層を積層した構成のシートであって、太陽光を直接受ける最外層に反射層、反射層の内側に吸収層を配してなり、反射層が、JIS-A5759の規定を基に算出される波長350〜1600nmの日射反射率が75%以上、日射吸収率が10%以下であり、吸収層が、波長800〜1600nmの日射吸収率が60%以上であり、シート全体として、JIS-A5759の規定を基に算出される波長350〜2100nmの日射反射率が75%以上、波長800〜1600nmの日射反射率が80%以上、波長350〜2100nmの日射吸収率が10%以上であり、かつ前記吸収層の比熱容量が前記反射層の比熱容量より10%以上大きいことを特徴とする熱線遮蔽シートを要旨とする。
このとき、(1)反射層が、0.1〜1mmの厚みを有し、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルから選ばれる少なくとも1つを5〜20重量部、酸化チタン系白色顔料を3〜30重量部を含んでなることが好ましく、また、()吸収層が、25〜500μmの厚みを有し、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
本発明による熱線遮蔽シートは、少なくとも反射層と吸収層を積層した構成であって、JIS-A5759の規定を基に算出される波長350〜2100nmの日射反射率が75%以上、波長800〜1600nmの日射反射率が80%以上、波長350〜2100nmの日射吸収率が10%以上とする。
波長350〜2100nm、特に800〜1600nmの日射反射率が低すぎると、シートの蓄熱が充分に避けられないので、上記反射率以上、好ましくは各々85%以上とする。他方、波長350〜2100nmの日射吸収率が低すぎると、シート状構造体内部の温度が過度に上昇するため、上記吸収率以上、好ましくは15%以上とする。
なお、このとき、波長350〜2100nmのJIS-A5759の規定を基に算出される日射透過率が7%以下であることが好ましい。熱線遮蔽シートの日射透過率が高すぎると、やはりシート状構造体内部の温度が上昇してしまうため、上記透過率以下が好ましく、より好ましくは0%である。
また、吸収層は、反射層よりも、比熱容量が大きことが重要であり、吸収層において、より多くの熱を蓄える構成にすることで、シート状構造体内部への太陽光エネルギーによる熱の逃散を極力少なくし、該構造体内部の温度上昇を抑制するものである。
熱容量は、反射層と吸収層をそれぞれDSC(示差走査熱量計)にて測定することにより求められる値であり、比熱容量は、これら各層の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量を単位重量当たりに換算した値である。
本発明では、太陽光により加熱されるシートの温度の代表値として47℃を採用し、この温度での熱容量を代表値として、吸収層と反射層の比熱容量を求め、吸収層の比熱容量を、反射層のそれの10%以上大きくする(すなわち、反射層の比熱容量をHaとし、吸収層の比熱容量をHbとすると、Hb≧1.1Haとなる)。
吸収層の比熱容量が反射層のそれ(光を反射させると言う特性上、反射層の比熱容量はそれ程大きくすることはできない)と同程度あるいはそれより小さい場合には、吸収層が吸収した熱が、吸収層の内部に留まることなく、シート状構造体内部へ逃散し、該構造体内部の温度上昇を招いてしまう。
但し、大きすぎても、吸収層に留めておくべき熱容量が飽和するため、上限は、反射層の比熱容量の50%程度大きくする(すなわち、Hb≧1.5Haを上限とする)ことが実用的である。
テントなどのシート状構造体として使用する際には、太陽光を直接受ける最外層には反射層を、また反射層で反射しきれずに透過してしまう太陽光を吸収して構造体内部に達する太陽光による影響を少なくするために最内層には吸収層を位置させることが合理的である。最外層に吸収層が位置すると、シート自体が発熱してしまい、最内層に反射層が位置しても、反射層の特性を十分に生かすことができなくなる。
さらに、本発明の熱線遮蔽シートにおいて、反射層、JIS-A5759の規定を基に算出される波長350〜1600nmの日射反射率が75%以上、日射吸収率が10%以下であり、吸収層、波長800〜1600nmの日射吸収率が60%以上である。
反射層の日射反射率が75%未満では、反射が不充分でありシートの蓄熱を避けにくいため、75%以上とし、85%以上が好ましい。
吸収層の日射吸収率が60%未満では、反射層を透過した光が吸収層により十分取りきれなく、物体の表面を発熱してしまうため、60%以上とし、80%以上が好ましい。
反射層と吸収層がこのような日射反射率と日射吸収率とをそれぞれ有することで、より高い遮蔽性能が発現し、かつ、シート自体(表面・裏面)の過度の発熱をより一層防止することが可能となる。
なぜなら、反射層によって熱線遮蔽シート全体の反射率が制御され、この反射作用により遮蔽性をある程度確保すると共に、この反射層を透過した光であってかつ発熱に寄与する波長領域の光を吸収層によって効率的に吸収することにより、優れた熱線遮蔽性能を発現できるからである。
従って、以上のような比熱容量、日射反射率、日射吸収率の範囲内において、反射層および吸収層の厚み(各層の厚みおよび層比)、組成物(配合割合)、色彩などを定めればよい。
本発明の熱線遮蔽シートにおいては、反射層が、0.1〜1mmの厚みを有し、吸収層が、25〜500μmの厚みを有することが好ましい。
反射層の厚みが薄すぎると、充分な日射反射率が確保し難くなり、厚すぎてもこの作用が飽和するばかりか、重量増を招き取り扱い性が低化する。より好ましい厚みは、0.2〜0.8mmである。
他方、吸収層の厚みが薄すぎると、所望の日射吸収率を得ることが難しく、厚すぎてもこの作用が飽和するのみならず、重量増を招き取り扱い性が低化する。より好ましい厚みは、25〜500μmである。
そして、本発明の少なくとも反射層と吸収層の2層を積層した構造の熱線遮蔽シートにおいて、反射層と吸収層との厚さ比は、特に限定されないが、熱伝導率、柔軟性、形性などの観点から、反射層:吸収層=4:1〜1:2の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1:1より若干反射層が厚いものである。
吸収層の厚さに対し、反射層が薄すぎると、上記の反射層の厚みが薄すぎる場合と同様に、反射層での所望の日射反射率を得ることが困難になり、厚すぎれば、やはり上記の反射層の厚みが厚すぎる場合と同様に、反射層の作用が飽和し、無駄な厚み増を招くことになる。
また、本発明における反射層は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルから選ばれる少なくとも1つを5〜20重量部、酸化チタン系白色顔料を3〜30重量部含んでなるものであることが好ましい。
上記のポリ塩化ビニル系樹脂としては、ポリ塩化ビニルモノマーの単独重合体、ポリ塩化ビニルモノマーと、酢酸ビニルモノマー、アクリロニトリルモノマーなどのポリ塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が使用できる。
これらポリ塩化ビニル系樹脂は、エマルジョン重合法(乳化重合法)、マイクロサスペンジョン重合法、ソープフリーエマルジョン重合法、サスペンジョン重合法(懸濁重合法)などによるものを用いることができ、中でも、充填材を多量に入れることができ、可塑剤との混合によりペーストプラスチゾルを形成することが可能なエマルジョン重合法によるものが好ましい。
ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とする反射層には、波長350〜1600nmにおける日射反射率を75%以上、日射吸収率を10%以下とするために、充填材や顔料などを配合することができる。
充填材としては、ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルなどが挙げられ、顔料としては、酸化チタン系白色顔料などが挙げられる。
充填材であるガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルは、一般に市販されているものをそのまま用いることができるが、いずれもその粒径が1〜150μm程度のものが好適に使用される。
粒径が大きすぎると、組成物の調製時あるいはシートへの成型時の作業性が悪化し、小さすぎると、充填材の添加による所望の遮蔽効果を得ることが困難となる。より好ましい粒径は5〜100μm、さらに好ましい粒径は8〜80μmである。
ガラスビーズ、中空ガラスバルーンの場合、ガラス組成、比重(中空率)などは特に制限されず、さらに塩化ビニル系樹脂成分との密着を高めるために各種のカップリング処理などを施すことも任意に実施できる。
また、マイクロカプセルの場合、殻組成に関して特に制限は無く、加熱膨張型や既膨張型のものも使用できるし、中空型や中実(ビーズ)型のものも使用できる。
これらビーズ等の充填材は、熱反射性をより高めるために、透明、半透明、白色または乳白色であることが好ましい。
反射層における、これら充填材、特にガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルから選ばれる少なくとも1つの添加量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、5〜20重量部が好ましく、より好ましくは10〜15重量部である。
これらが少なすぎると、充分な遮蔽効果を得ることができず、多すぎると、シートへの成形が困難となる傾向がある。
また、顔料である酸化チタン系白色顔料としては、ルチル型およびアナターゼ型のどちらも使用可能であるが、一般的なルチル型が好ましく使用される。
また、この酸化チタン系白色顔料は、あらかじめ可塑剤などに分散させたトナー状態で配合することも任意に実施できる。
反射層における、この白色顔料の添加量は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、3〜30重量部が好ましく、より好ましくは10〜20重量部である。
少なすぎると、反射効果が小さい場合があり、多すぎても、それほどの反射効果の増大が認められず、かえってシートへの成形性に問題が生じる傾向がある。
本発明による熱線遮蔽シートの反射層用の配合組成物として、上記充填材、顔料のほかに、必要に応じて、本発明の特性(遮蔽性や成形加工性など)を損なわない範囲において、可塑剤、安定剤、ヒンダートアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾチアゾール系化合物などの紫外線吸収剤、酸化防止剤、加工性を向上させるための減粘剤や増粘剤などの各種添加剤を適宜添加することができる。
可塑剤としては、通常のポリ塩化ビニル系樹脂に使用されている化合物が使用でき、具体的にはジ−2−エチルヘキシルフタレート(DEHP)、ジイソノニルフタレート(DINP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジウンデシルフタレート(DUP)、ブチルベンジルフタレート(BBP)などに代表されるフタル酸エステル系、トリオクチルトリメリテート(TOTM)などに代表されるトリメリット酸エステル系、ジオクチルアジペート(DOA)、ジオクチルセバケート(DOS)、ジオクチルアゼレート(DOZ)などに代表される脂肪酸エステル系、ポリプロピレンアジペートなどに代表されるポリエステル系などの可塑剤を使用することができる。
上記可塑剤の添加量は、特に制限されるものではないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、25〜150重量部、好ましくは60〜100重量部である。可塑剤の添加量が少なすぎると、ペーストの粘度が高くなって、積層作業が困難になり、良好なシートが得られにくく、多すぎると、シートそのものが柔らかくなりすぎ、使用時に軟化し、耐熱性を悪化させる場合がある。
安定剤としては、通常のポリ塩化ビニル系樹脂に使用されている化合物が使用でき、具体的にはBa-Zn系、Ca-Zn系、酸化亜鉛系などの金属安定剤を広範囲に使用することができる。
以上のような反射層用の組成物は、各成分を計量の上、デイゾルバーミキサーなどの混合攪拌機で均質混合させることにより調製することができる。
さらに必要に応じて、未分散物を取り除く目的で濾過することも、気泡を取り除く目的で減圧脱泡することも任意に実施できる。
このようにして得られる組成物は、押出成形、カレンダー成形、プレス成形等の公知の手段によってシート状に加工すればよく、あるいは、ポリ塩化ビニル系樹脂を主成分とするペーストプラスチゾルを、基材(離型性を有する紙またはフィルム)にコーティングし、加熱固化させることによりシート状に形成してもよい。
さらに、本発明における吸収層は、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つを含むものであることが好ましい。
吸収層を構成するポリ塩化ビニル系樹脂としては、反射層と同様、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと共重合可能なモノマーとの共重合体が使用でき、これらポリ塩化ビニル系樹脂は、どのような重合方法によるものであってもよく、中でも、反射層の場合と同様にエマルジョン重合法によるものが好適に使用される。
また、上記のアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂としては、シート状物に通常使用されている通常のものが、それぞれ好適に使用できる。
上記樹脂から選ばれる少なくとも1つを主成分とする吸収層には、反射層から透過してくる光を吸収する目的を効率的に達成するために、各種の濃色系の顔料や染料を添加することができる。
具体的には、黄鉛、群青、チタンイエロー、カーボンブラック、アルミ粉などが例として挙げられ、この中で、特にカーボンブラック系の黒色顔料が特に好適に使用される。
上記顔料の添加量は、特に制限されるものではないが、樹脂成分100重量部に対し、3〜20重量部、好ましくは5〜10重量部である。顔料の添加量が少なすぎると、光の吸収効果が小さい場合があり、多すぎると、それほどの吸収効果の増大が認められず、コスト高となる。
さらに、熱線遮蔽シートの表面に金属薄膜を蒸着またはスパッタリング加工することにより吸収層を形成させてもよい。
また、吸収層用の組成物として、上記顔料や染料のほかに、必要に応じて、本発明の特性(遮光性や成形加工性など)を損なわない範囲において、反射層で添加されるものと同様の可塑剤、安定剤、充填材、紫外線吸収剤、酸化防止剤、減粘剤、増粘剤などの各種添加剤を適宜添加することができる。
吸収層用の組成物は、反射層の場合と同様、デイゾルバーミキサーなどの混合攪拌機で均質混合させることにより調製することができ、必要に応じて、未分散物を取り除く目的で濾過することも、気泡を取り除く目的で減圧脱泡することも任意に実施できる。
このようにして得られる組成物は、反射層の場合と同様、押出成形、カレンダー成形、プレス成形等の公知の手段によってシート状に加工すればよく、あるいは、上記樹脂から選ばれる少なくとも1つを主成分とするペーストプラスチゾルを、基材(離型性を有する紙またはフィルム)にコーティングし、加熱固化させることによりシート状に形成してもよい。
本発明による熱線遮蔽シートにおいては、少なくとも反射層と吸収層の2層を積層した構造である。
積層方法としては、各種の方法が選択可能であるが、はじめに反射層を、押出成形等によってシート状に成形しておき、その一方の面に吸収層を積層することも可能であるが、逆に、はじめに吸収層を成形しておき、その一方の面に反射層を積層することも任意に実施できる。
また、反射層、吸収層の両方にポリ塩化ビニル系樹脂ペーストプラスチゾルを用いる場合、離型性を有する紙またはフィルム上に反射層(または吸収層)を適宜手法により所定厚みにコーティングし、加熱固化した後、この反射層(または吸収層)上に、吸収層(または反射層)を適宜手法により所定厚みにコーティングし、加熱固化し、その後、上記の剥離紙またはフィルムより剥離することにより、2層積層体を成形することもできる。この方法は、中空ガラスバルーンなどの充填材が、成形中に破壊されないという点で特に優れている。
さらに、吸収層にアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を用いる場合、反射層のみを離型性を有する紙またはフィルムにコーティングし、加熱固化させた後に剥離して、反射層シートを作成した後に、この反射層に、別行程で、吸収層をラミネーターなどにより積層させることも可能である。
また、本発明の熱線遮蔽シートにおいて、反射層と吸収層との間に、あるいは、反射層と吸収層を積層したものの吸収層側に、編布、織布、不織布などの繊維質基材による補強層を設けてもよい。
この補強層は、反射層と吸収層との積層体の吸収層側に接着剤等で積層させても良いし、補強層の両面に反射層、吸収層を順次あるいは同時に積層させることも可能である。この際、各層を軟化点以上に加熱し、熱融着させることもできる。あるいは、各層の樹脂組成物を繊維質基材に含浸させた後、固化させて層を形成することもできる。
このような補強層を設けることにより、シート自体の引裂き強度や引張強度が高まり、また使用時の耐久性や施工時の寸法安定性が向上する。
さらに、補強層に吸収層の役割を兼ねさせる様に、補強層である繊維質基材自体を、群青や黒色などに染色し、波長800〜1600nmの日射吸収率を60%以上にすることも可能である。
なお、本発明の熱線遮蔽シートにおいては、反射層の表面に、防汚層または表面保護層を設けてもよい。
防汚層は、例えば、アクリル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、セルロース樹脂系、フッ素樹脂系、ポリアミド樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系などの溶剤系塗料;アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系などの水系塗料;アクリル樹脂系、アクリル変性ウレタン樹脂系、アクリル変性エポキシ樹脂系、メルカプト誘導体系、エポキシ樹脂系などの紫外線硬化型塗料などからなる防汚塗料等を塗工することによって形成することができる。
表面保護層は、各種ハードコート層、表面滑性層等を設けることができる。
以上のような本発明による熱線遮蔽シート全体の厚みは、用途により適宜調節されるが、一般には、0.2〜0.7mm程度である。
本発明の熱線遮蔽シートは、(1)特定の波長の光を反射させる「反射層」と、この反射層で反射しきれない透過光、特に発熱に寄与する波長の光を吸収する「吸収層」との積層構造体であり、また(2)「吸収層」が「反射層」より高い比熱容量を有し、さらに(3)このような積層構造体(シート)が、特定の波長の光に対し特定の日射反射率と日射吸収率を有することによって、
テントやトラックの幌などのシート状構造体に利用した場合、該シート構造体の内部に置かれた物体の太陽光による温度上昇を効果的に抑えることができ、さらにシート表面の温度上昇に伴う長期使用による劣化をも軽減することができる。
実施例1〜4、比較例1〜5
表1に示す熱伝導率、日射反射率および日射吸収率を各々有するように調製した反射層用のペースト状プラスチゾルを、離型紙上に、表1に示す厚みとなるようナイフコーティング法によりコーティングし、140℃で2分間加熱した。
次に、表1に示す日射吸収率を各々有するように調製した吸収層用のペースト状プラスチゾルを、上記加熱後の反射層上に、表1に示す厚みとなるようコーティングし、195℃で3分間加熱を行った。
その後、冷却して離型紙を剥離し、2層の積層シートを作成した。
比熱容量は、各層をDSC(示差走査熱量計)にて測定し、本発明では上記したように、47℃での熱容量を代表値とした。
日射反射率は、自記分光光度計(日本分光(株)社製 商品名“V−570”)を用いて、標準白色板(フッ素樹脂多孔質体)を反射率100%とし、波長350〜2100nmの範囲での分光反射率を測定し、JIS-A5759付表3を用いて、日射反射率を導き出した。
日射吸収率は、日射反射率の場合と同様にして日射透過率を測定し、100%から日射反射率および日射透過率を差し引くことにより算出した。
得られた積層シートの厚み、比熱容量、日射反射率、日射吸収率および日射透過率を、表1に併せて示す。
表1中、
日射反射率1:波長350〜1600nmのJIS-A5759を基にして算出される日射反射率。
日射反射率2:波長350〜2100nmのJIS-A5759で規定される日射反射率。
日射反射率3:波長800〜1600nmのJIS-A5759を基にして算出される日射反射率。
日射吸収率1:波長350〜1600nmのJIS-A5759を基にして算出される日射反射率。
日射吸収率2:波長800〜1600nmのJIS-A5759を基にして算出される日射反射率。
日射吸収率3:波長350〜2100nmのJIS-A5759で規定される日射吸収率。
日射透過率1:波長350〜2100nmのJIS-A5759で規定される日射透過率。
〔遮蔽性能試験法〕
図1に示すような厚み30mmの発泡ポリスチレンで作成した高さ150mm、巾220mm、長さ310mmの大きさの上面以外を囲われた箱の上面に、各実施例および比較例で得た積層シートを設置し、サンプル(シート)上方300mmの高さから200Wの白熱灯を40分間照射した後の、A)サンプル表面、B)裏面、C)箱内部、D)底部に置いた黒板、の温度をそれぞれ熱電対により測定した。
表2に、測定結果を示す。
実施例1〜4については、シートの表面および裏面の温度がいずれも45℃以下に抑えられ、またシート内部の温度は32℃以内に抑えられ、優れた遮蔽効果を示した。
比較例1〜5については、実施例1〜4に比較して明らかに遮蔽効果が劣ることが判った。
なお、表1における比熱容量、日射反射率および日射吸収率を得るために、反射層と吸収層の配合組成については、表3に示す通りとした。このとき、各配合物はディゾルバーミキサーにて均一に混合され、各層用毎にペースト状プラスチゾルを調製した。
表3中の数字は、重量部を示す。
(使用原料)
塩化ビニル樹脂1(エマルジョン重合ポリ塩化ビニル):新第一塩ビ社製 商品名“PQHPN”
塩化ビニル樹脂2(エマルジョン重合ポリ塩化ビニル):鐘淵化学工業社製 商品名“PSH−23”
充填材1(中空ガラスバルーン≪粒子系63μm≫):旭ガラス社製 商品名“セルスター Z27”
充填材2(セラミックバルーン≪粒子系100μm≫):太平洋セメント社製 商品名“E−SPHERES”
顔料1(酸化チタン系白色顔料):テイカ社製 商品名“JR−600A”
顔料2(カーボンブラック):東海カーボン社製 商品名“シーストS”
顔料3(緑色顔料):特殊色料工業社製 商品名“KT−1800”
可塑剤(イソノニルフタレート):積水化学工業社製 商品名“DINP”
安定剤:旭電化工業社製 商品名“AC183”
本発明の熱線遮蔽シートは、テント等のシート状構造体に利用した場合、太陽光による内部の温度上昇が抑えられ、しかも、シート表面の温度上昇も抑えられるため、長期使用による劣化も軽減されるので、軍事用テント、災害時などの仮設テント、長期間半恒久的に使用されるテント倉庫、トラックの幌などとして好適に用いることができ、とくに、夏季の日中での使用や太陽光線が強い熱帯や砂漠気候下などで用いると効果的である。
遮蔽性能を評価するための装置を示す概略図である。
符号の説明
1 熱線遮蔽シート
2 発泡ポリスチレン製箱
3 黒板
4 白熱灯

Claims (3)

  1. 少なくとも反射層と吸収層の2層を積層した構造のシートであって、
    太陽光を直接受ける最外層に反射層、反射層の内側に吸収層を配してなり、
    前記反射層が、JIS-A5759の規定を基に算出される波長350〜1600nmの日射反射率が75%以上、日射吸収率が10%以下であり、
    前記吸収層が、波長800〜1600nmの日射吸収率が60%以上であり、
    シート全体として、JIS-A5759の規定を基に算出される波長350〜2100nmの日射反射率が75%以上、波長800〜1600nmの日射反射率が80%以上、波長350〜2100nmの日射吸収率が10%以上であり、かつ
    前記吸収層の比熱容量が前記反射層の比熱容量より10%以上大きいことを特徴とする熱線遮蔽シート。
  2. 反射層が、0.1〜1mmの厚みを有し、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルから選ばれる少なくとも1つを5〜20重量部、酸化チタン系白色顔料を3〜30重量部を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽シート。
  3. 吸収層が、25〜500μmの厚みを有し、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つを含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽シート。
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