JP4573671B2 - 熱線遮蔽シート - Google Patents
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このような構成からなるターポリンは、熱線の遮蔽性の面では決して良いものではなく、特に半恒久的に使用されるテント倉庫などでは、夏季の日中の倉庫内温度の上昇が激しく、倉庫内の製品はもとより、作業者にとって快適なものではない。
さらには、有事の際に使用される軍事用テントや災害時に使用される仮設のテントなども同様にテント内の温度上昇は大きな問題である。
含浸したものなどが使用されているが、上記のテントと同様に真夏の日中にはトラック荷台内の温度上昇は大きな問題であり、運送する荷物に制限がある。
(α)特定の波長の光を反射させる「反射層」と、この反射層を透過した光であって特に発熱に寄与する波長の光を吸収する「吸収層」との積層構造体とすることで、最外層の「反射層」により太陽光を反射させ、反射しきれない透過光を「吸収層」により有効に吸収させることにより、テントなどのシート状構造体内部の太陽光による温度上昇を防止すると共に、熱線遮蔽シート自体の過度の加熱をも抑制できるとの知見を得た。
(β)「吸収層」の比熱容量を「反射層」のそれよりも大きく設定することで、「吸収層」が吸収した太陽エネルギーを該「吸収層」内に封じ込め、該エネルギーのシート状構造体の内部への逃散、この結果による構造体内部の温度上昇を効果的に抑制することができることを見出し、さらに、
(γ)このような積層シートが、特定の波長の光に対し特定の日射反射率と日射吸収率を有することによって、シート自体の蓄熱やシート表面の発熱をより一層効率的に防止できることをも見出し、本発明を完成するに至った。
このとき、(1)反射層が、0.1〜1mmの厚みを有し、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルから選ばれる少なくとも1つを5〜20重量部、酸化チタン系白色顔料を3〜30重量部を含んでなることが好ましく、また、(2)吸収層が、25〜500μmの厚みを有し、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つを含んでもよい。
波長350〜2100nm、特に800〜1600nmの日射反射率が低すぎると、シートの蓄熱が充分に避けられないので、上記反射率以上、好ましくは各々85%以上とする。他方、波長350〜2100nmの日射吸収率が低すぎると、シート状構造体内部の温度が過度に上昇するため、上記吸収率以上、好ましくは15%以上とする。
熱容量は、反射層と吸収層をそれぞれDSC(示差走査熱量計)にて測定することにより求められる値であり、比熱容量は、これら各層の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量を単位重量当たりに換算した値である。
本発明では、太陽光により加熱されるシートの温度の代表値として47℃を採用し、この温度での熱容量を代表値として、吸収層と反射層の比熱容量を求め、吸収層の比熱容量を、反射層のそれの10%以上大きくする(すなわち、反射層の比熱容量をHaとし、吸収層の比熱容量をHbとすると、Hb≧1.1Haとなる)。
吸収層の比熱容量が反射層のそれ(光を反射させると言う特性上、反射層の比熱容量はそれ程大きくすることはできない)と同程度あるいはそれより小さい場合には、吸収層が吸収した熱が、吸収層の内部に留まることなく、シート状構造体内部へ逃散し、該構造体内部の温度上昇を招いてしまう。
但し、大きすぎても、吸収層に留めておくべき熱容量が飽和するため、上限は、反射層の比熱容量の50%程度大きくする(すなわち、Hb≧1.5Haを上限とする)ことが実用的である。
反射層の日射反射率が75%未満では、反射が不充分でありシートの蓄熱を避けにくいため、75%以上とし、85%以上が好ましい。
吸収層の日射吸収率が60%未満では、反射層を透過した光が吸収層により十分取りきれなく、物体の表面を発熱してしまうため、60%以上とし、80%以上が好ましい。
なぜなら、反射層によって熱線遮蔽シート全体の反射率が制御され、この反射作用により遮蔽性をある程度確保すると共に、この反射層を透過した光であってかつ発熱に寄与する波長領域の光を吸収層によって効率的に吸収することにより、優れた熱線遮蔽性能を発現できるからである。
反射層の厚みが薄すぎると、充分な日射反射率が確保し難くなり、厚すぎてもこの作用が飽和するばかりか、重量増を招き取り扱い性が低化する。より好ましい厚みは、0.2〜0.8mmである。
他方、吸収層の厚みが薄すぎると、所望の日射吸収率を得ることが難しく、厚すぎてもこの作用が飽和するのみならず、重量増を招き取り扱い性が低化する。より好ましい厚みは、25〜500μmである。
吸収層の厚さに対し、反射層が薄すぎると、上記の反射層の厚みが薄すぎる場合と同様に、反射層での所望の日射反射率を得ることが困難になり、厚すぎれば、やはり上記の反射層の厚みが厚すぎる場合と同様に、反射層の作用が飽和し、無駄な厚み増を招くことになる。
これらポリ塩化ビニル系樹脂は、エマルジョン重合法(乳化重合法)、マイクロサスペンジョン重合法、ソープフリーエマルジョン重合法、サスペンジョン重合法(懸濁重合法)などによるものを用いることができ、中でも、充填材を多量に入れることができ、可塑剤との混合によりペーストプラスチゾルを形成することが可能なエマルジョン重合法によるものが好ましい。
充填材としては、ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルなどが挙げられ、顔料としては、酸化チタン系白色顔料などが挙げられる。
粒径が大きすぎると、組成物の調製時あるいはシートへの成型時の作業性が悪化し、小さすぎると、充填材の添加による所望の遮蔽効果を得ることが困難となる。より好ましい粒径は5〜100μm、さらに好ましい粒径は8〜80μmである。
また、マイクロカプセルの場合、殻組成に関して特に制限は無く、加熱膨張型や既膨張型のものも使用できるし、中空型や中実(ビーズ)型のものも使用できる。
これらが少なすぎると、充分な遮蔽効果を得ることができず、多すぎると、シートへの成形が困難となる傾向がある。
また、この酸化チタン系白色顔料は、あらかじめ可塑剤などに分散させたトナー状態で配合することも任意に実施できる。
少なすぎると、反射効果が小さい場合があり、多すぎても、それほどの反射効果の増大が認められず、かえってシートへの成形性に問題が生じる傾向がある。
上記可塑剤の添加量は、特に制限されるものではないが、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、25〜150重量部、好ましくは60〜100重量部である。可塑剤の添加量が少なすぎると、ペーストの粘度が高くなって、積層作業が困難になり、良好なシートが得られにくく、多すぎると、シートそのものが柔らかくなりすぎ、使用時に軟化し、耐熱性を悪化させる場合がある。
さらに必要に応じて、未分散物を取り除く目的で濾過することも、気泡を取り除く目的で減圧脱泡することも任意に実施できる。
具体的には、黄鉛、群青、チタンイエロー、カーボンブラック、アルミ粉などが例として挙げられ、この中で、特にカーボンブラック系の黒色顔料が特に好適に使用される。
上記顔料の添加量は、特に制限されるものではないが、樹脂成分100重量部に対し、3〜20重量部、好ましくは5〜10重量部である。顔料の添加量が少なすぎると、光の吸収効果が小さい場合があり、多すぎると、それほどの吸収効果の増大が認められず、コスト高となる。
積層方法としては、各種の方法が選択可能であるが、はじめに反射層を、押出成形等によってシート状に成形しておき、その一方の面に吸収層を積層することも可能であるが、逆に、はじめに吸収層を成形しておき、その一方の面に反射層を積層することも任意に実施できる。
また、反射層、吸収層の両方にポリ塩化ビニル系樹脂ペーストプラスチゾルを用いる場合、離型性を有する紙またはフィルム上に反射層(または吸収層)を適宜手法により所定厚みにコーティングし、加熱固化した後、この反射層(または吸収層)上に、吸収層(または反射層)を適宜手法により所定厚みにコーティングし、加熱固化し、その後、上記の剥離紙またはフィルムより剥離することにより、2層積層体を成形することもできる。この方法は、中空ガラスバルーンなどの充填材が、成形中に破壊されないという点で特に優れている。
さらに、吸収層にアクリル系樹脂またはウレタン系樹脂を用いる場合、反射層のみを離型性を有する紙またはフィルムにコーティングし、加熱固化させた後に剥離して、反射層シートを作成した後に、この反射層に、別行程で、吸収層をラミネーターなどにより積層させることも可能である。
このような補強層を設けることにより、シート自体の引裂き強度や引張強度が高まり、また使用時の耐久性や施工時の寸法安定性が向上する。
防汚層は、例えば、アクリル樹脂系、塩化ビニル樹脂系、セルロース樹脂系、フッ素樹脂系、ポリアミド樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系、シリコーン樹脂系などの溶剤系塗料;アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系、ウレタン樹脂系、エポキシ樹脂系などの水系塗料;アクリル樹脂系、アクリル変性ウレタン樹脂系、アクリル変性エポキシ樹脂系、メルカプト誘導体系、エポキシ樹脂系などの紫外線硬化型塗料などからなる防汚塗料等を塗工することによって形成することができる。
表面保護層は、各種ハードコート層、表面滑性層等を設けることができる。
テントやトラックの幌などのシート状構造体に利用した場合、該シート構造体の内部に置かれた物体の太陽光による温度上昇を効果的に抑えることができ、さらにシート表面の温度上昇に伴う長期使用による劣化をも軽減することができる。
表1に示す熱伝導率、日射反射率および日射吸収率を各々有するように調製した反射層用のペースト状プラスチゾルを、離型紙上に、表1に示す厚みとなるようナイフコーティング法によりコーティングし、140℃で2分間加熱した。
次に、表1に示す日射吸収率を各々有するように調製した吸収層用のペースト状プラスチゾルを、上記加熱後の反射層上に、表1に示す厚みとなるようコーティングし、195℃で3分間加熱を行った。
その後、冷却して離型紙を剥離し、2層の積層シートを作成した。
日射反射率は、自記分光光度計(日本分光(株)社製 商品名“V−570”)を用いて、標準白色板(フッ素樹脂多孔質体)を反射率100%とし、波長350〜2100nmの範囲での分光反射率を測定し、JIS-A5759付表3を用いて、日射反射率を導き出した。
日射吸収率は、日射反射率の場合と同様にして日射透過率を測定し、100%から日射反射率および日射透過率を差し引くことにより算出した。
得られた積層シートの厚み、比熱容量、日射反射率、日射吸収率および日射透過率を、表1に併せて示す。
日射反射率1:波長350〜1600nmのJIS-A5759を基にして算出される日射反射率。
日射反射率2:波長350〜2100nmのJIS-A5759で規定される日射反射率。
日射反射率3:波長800〜1600nmのJIS-A5759を基にして算出される日射反射率。
日射吸収率1:波長350〜1600nmのJIS-A5759を基にして算出される日射反射率。
日射吸収率2:波長800〜1600nmのJIS-A5759を基にして算出される日射反射率。
日射吸収率3:波長350〜2100nmのJIS-A5759で規定される日射吸収率。
日射透過率1:波長350〜2100nmのJIS-A5759で規定される日射透過率。
図1に示すような厚み30mmの発泡ポリスチレンで作成した高さ150mm、巾220mm、長さ310mmの大きさの上面以外を囲われた箱の上面に、各実施例および比較例で得た積層シートを設置し、サンプル(シート)上方300mmの高さから200Wの白熱灯を40分間照射した後の、A)サンプル表面、B)裏面、C)箱内部、D)底部に置いた黒板、の温度をそれぞれ熱電対により測定した。
表2に、測定結果を示す。
比較例1〜5については、実施例1〜4に比較して明らかに遮蔽効果が劣ることが判った。
(使用原料)
塩化ビニル樹脂1(エマルジョン重合ポリ塩化ビニル):新第一塩ビ社製 商品名“PQHPN”
塩化ビニル樹脂2(エマルジョン重合ポリ塩化ビニル):鐘淵化学工業社製 商品名“PSH−23”
充填材1(中空ガラスバルーン≪粒子系63μm≫):旭ガラス社製 商品名“セルスター Z27”
充填材2(セラミックバルーン≪粒子系100μm≫):太平洋セメント社製 商品名“E−SPHERES”
顔料1(酸化チタン系白色顔料):テイカ社製 商品名“JR−600A”
顔料2(カーボンブラック):東海カーボン社製 商品名“シーストS”
顔料3(緑色顔料):特殊色料工業社製 商品名“KT−1800”
可塑剤(イソノニルフタレート):積水化学工業社製 商品名“DINP”
安定剤:旭電化工業社製 商品名“AC183”
2 発泡ポリスチレン製箱
3 黒板
4 白熱灯
Claims (3)
- 少なくとも反射層と吸収層の2層を積層した構造のシートであって、
太陽光を直接受ける最外層に反射層、反射層の内側に吸収層を配してなり、
前記反射層が、JIS-A5759の規定を基に算出される波長350〜1600nmの日射反射率が75%以上、日射吸収率が10%以下であり、
前記吸収層が、波長800〜1600nmの日射吸収率が60%以上であり、
シート全体として、JIS-A5759の規定を基に算出される波長350〜2100nmの日射反射率が75%以上、波長800〜1600nmの日射反射率が80%以上、波長350〜2100nmの日射吸収率が10%以上であり、かつ
前記吸収層の比熱容量が前記反射層の比熱容量より10%以上大きいことを特徴とする熱線遮蔽シート。 - 反射層が、0.1〜1mmの厚みを有し、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、ガラスビーズ、中空ガラスバルーン、マイクロカプセルから選ばれる少なくとも1つを5〜20重量部、酸化チタン系白色顔料を3〜30重量部を含んでなることを特徴とする請求項1に記載の熱線遮蔽シート。
- 吸収層が、25〜500μmの厚みを有し、ポリ塩化ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つを含んでなることを特徴とする請求項1または2に記載の熱線遮蔽シート。
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