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JP4564257B2 - 高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体 - Google Patents

高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体 Download PDF

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JP4564257B2 JP2003428004A JP2003428004A JP4564257B2 JP 4564257 B2 JP4564257 B2 JP 4564257B2 JP 2003428004 A JP2003428004 A JP 2003428004A JP 2003428004 A JP2003428004 A JP 2003428004A JP 4564257 B2 JP4564257 B2 JP 4564257B2
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Description

本発明は高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体に係り、特に熱伝導率が高く放熱性および強度特性に優れた窒化アルミニウム焼結体に関する。
従来の金属材料と比較して強度、耐熱性、耐食性、耐摩耗性、軽量性などの諸特性に優れたセラミックス焼結体が、半導体、電子機器材料、エンジン用部材、高速切削工具用材料、ノズル、ベアリングなど、従来の金属材料では耐えられない過酷な温度、応力、摩耗条件下で使用される機械部品、構造材や装飾品材料として広く利用されている。
特に窒化アルミニウム(AlN)焼結体は高熱伝導性を有する絶縁体であり、シリコン(Si)に近い熱膨張係数を有することから高集積化した半導体装置の放熱板や基板として、その用途を拡大している。
従来、上記窒化アルミニウム焼結体は一般的に下記の製造方法によって量産されている。すなわち、セラミックス原料としての窒化アルミニウム粉末にYなどの焼結助剤と、有機バインダーと、必要に応じて各種添加剤や溶媒、分散剤とを添加して原料混合体を調製し、得られた原料混合体をロール成形法やドクターブレード法によって成形し、薄板状ないしシート状の成形体としたり、原料混合体をプレス成形して厚板状ないし大型の成形体を形成する。次に得られた成形体は、空気または窒素ガス雰囲気において400〜500℃に加熱され脱脂処理され、有機バインダーとして添加された炭化水素成分等が成形体から排除脱脂される。そして脱脂された成形体は窒素ガス雰囲気等で高温度に加熱され緻密化焼結されて窒化アルミニウム焼結体が形成される。
窒化アルミニウム(AlN)は難焼結性セラミックスであり、その緻密化を促進するため、およびAlN原料粉末中の不純物酸素がAlN結晶粒子内へ固溶して熱抵抗が増加することを防止するために焼結助剤として酸化イットリウム(Y)などの希土類酸化物を添加することが一般的に行われている。これらの焼結助剤はAlN原料粉末中に含まれる酸素と反応して、Yの場合は3Y・5Al(YAG),Y・Al(YAL)2Y・Al(YAM)などから成る液相組成物を形成し、焼結体の緻密化を達成するとともに、上記熱抵抗となる不純物酸素を粒界相として固定し高熱伝導化を達成するものと考えられている。
このような従来の高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体として、例えば窒化アルミニウムから成り、その結晶粒子の平均粒径が2〜10μmである主相と2Y・Al或いはY・Al或いは3Y・5Alのいずれかの単一成分からなり、Y含有量が1.0〜4.6重量%である副相から構成され、熱伝導率が200W/m・K以上で、且つ曲げ強度が40Kg/mm以上である窒化アルミニウム焼結体が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開平10−25160号公報(第1−2頁、請求項1)
しかしながら、従来の製造方法においては、原料粉末の平均粒径、不純物、焼結助剤の種類および添加量、脱脂、焼結条件などを厳正に管理した場合においても、前記不純物酸素を固定するのに必要な多量の希土類酸化物を添加しているため、熱抵抗となる酸化物量が多くなり215W/m・K以上の高い熱伝導率が得られず、AlN焼結体固有の最大特性である優れた放熱特性が損なわれる場合が多く、技術的改善が強く要請されている。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、特に熱伝導率が高く放熱性や機械的特性が優れた高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明者らは焼結助剤の添加量、熱伝導の阻害要因である酸素の低減法、脱脂状態が焼結体の緻密化や組織状態、熱伝導率に及ぼす影響を比較検討した。その結果、焼結助剤としてのGd,Dy元素(Re元素)の添加量および酸素量を適正範囲に調整して緻密化を促進し、熱伝導率の阻害要因である酸素を除去するために必要な適正量の炭素量を脱脂工程の条件制御により残存させ、次の焼結工程における緻密化焼結前に仮焼処理工程を導入し、焼結後の粒界相を熱抵抗が低いReAl、Re、およびReAl(但し、ReはGdおよびDyの少なくとも一方の元素)の少なくとも一方とから成るように限定することにより、焼結体中の不純物酸素量が減少し、215W/m・K以上、好ましくは235W/m・K以上の高熱伝導率および良好な機械的強度を有する窒化アルミニウム焼結体が量産性良く容易に得られるという知見を得た。
また、緻密化焼結後における焼結体の冷却速度を毎時150℃以下にして徐冷することにより、粗大な粒界相が発生せず微細で緻密な結晶組織を有するAlN焼結体が得られるという知見も得られた。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本願第1の発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対するAlGd(310面)のX線回折強度IAlGdの比(IAlGd/IAlN)が0.04以下であり、上記X線回折強度IAlNに対するAlGdO(112面)のX線回折強度IAlGdOの比(IAlGdO/IAlN)が0.05以下であり、且つ上記X線回折強度IAlNに対するGd(401面)のX線回折強度IGdの比(IGd/IAlN)が0.002〜0.06であり、Gd元素を0.3〜4.5質量%含有し、酸素を0.1〜0.75質量%含有し、酸素とGd元素との質量比率(O/Gd)が0.4以下であり、窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が4μm以上であり、任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が450個以下であり、粒界相の最大径が0.7μm以下であり、熱伝導率が215W/m・K以上、三点曲げ強度が250MPa以上であることを特徴とする。
また、本願第2の発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対するAlGd(310面)のX線回折強度IAlGdの比(IAlGd/IAlN)が0.004〜0.04であり、上記X線回折強度IAlNに対するAlGdO(112面)のX線回折強度IAlGdOの比(IAlGdO/IAlN)が0.03以下であり、且つ上記X線回折強度IAlNに対するGd(401面)のX線回折強度IGdの比(IGd/IAlN)が0.005〜0.04であり、Gd元素を0.3〜3質量%含有し、酸素を0.1〜0.6質量%含有し、酸素とGd元素との質量比率(O/Gd)が0.3以下であり、窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が5μm以上であり、任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が350個以下であり、粒界相の最大径が0.6μm以下であり、熱伝導率が235W/m・K以上、三点曲げ強度が200MPa以上であることを特徴とする。
さらに、本願第3の発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対するAlDy(320面)のX線回折強度IAlDyの比(IAlDy/IAlN)が0.04以下であり、上記X線回折強度IAlNに対するAlDyO(121面)のX線回折強度IAlDyOの比(IAlDyO/IAlN)が0.05以下であり、且つ上記X線回折強度IAlNに対するDy(222面)のX線回折強度IDyの比(IDy/IAlN)が0.002〜0.06であり、Dy元素を0.3〜4.5質量%含有し、酸素を0.1〜0.75質量%含有し、酸素とDy元素との質量比率(O/Dy)が0.4以下であり、窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が4μm以上であり、任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が450個以下であり、粒界相の最大径が0.7μm以下であり、熱伝導率が215W/m・K以上、三点曲げ強度が250MPa以上であることを特徴とする。
また、本願第4の発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体は、窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対するAlDy(320面)のX線回折強度IAlDyの比(IAlDy/IAlN)が0.004〜0.04であり、上記X線回折強度IAlNに対するAlDyO(121面)のX線回折強度IAlDyOの比(IAlDyO/IAlN)が0.03以下であり、且つ上記X線回折強度IAlNに対するDy(222面)のX線回折強度IDyの比(IDy/IAlN)が0.005〜0.04であり、Dy元素を0.3〜3質量%含有し、酸素を0.1〜0.6質量%含有し、酸素とDy元素との質量比率(O/Dy)が0.3以下であり、窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が5μm以上であり、任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が350個以下であり、粒界相の最大径が0.6μm以下であり、熱伝導率が235W/m・K以上、三点曲げ強度が200MPa以上であることを特徴とする。
記第1または第3の発明において、高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体が酸素とGd、Dy(Re)元素との質量比率(O/Re)が0.4以下であり、窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が4μm以上であり、任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が450個以下であり、粒界相の最大径が0.7μm以下になっている
記第2または第4の発明において、高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体が酸素とGd、Dy(Re)元素との質量比率(O/Re)が0.3以下であり、窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が5μm以上であり、任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が350個以下であり、粒界相の最大径が0.6μm以下になっている
上記第1および第2の発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体において、焼結体を構成する主相は窒化アルミニウム(AlN)である一方、副相となる粒界相は熱抵抗が低いGdAl(GAM)やGdAlO(GAL)やGdから成る相に限定される。上記GAM相はX線回折分析においてAlGd(310面)の回折ピーク強度として同定・定量される一方、上記GAL相はX線回折分析においてGdAlO(112面)の回折ピーク強度として同定・定量される。同様にGdから成る相は、X線回折分析においてGd(401面)の回折ピーク強度として同定・定量される。粒界相にGdAl12(GAG)などの、熱抵抗が高い第3相を含む場合は、AlN焼結体の熱伝導率が低下する。
同様に上記第3および第4の発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体において、焼結体を構成する主相は窒化けい素(AlN)である一方、副相となる粒界相は熱抵抗が低いDyAl(DAM)やDyAlO(DAL)やDyから成る相に限定される。上記DAM相はX線回折分析においてAlDy(320面)の回折ピーク強度として同定・定量される一方、上記DAL相はX線回折分析においてDyAlO(121面)の回折ピーク強度として同定・定量される。同様にDyから成る相は、X線回折分析においてDy(222面)の回折ピーク強度として同定・定量される。粒界相にDyAl12(DAG)などの、熱抵抗が高い第3相を含む場合は、AlN焼結体の熱伝導率が低下する。
上記第1から第4の発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体において、X線回折強度比(IAlGd/IAlN)または(IAlDy/IAlN)は上記GAM相またはDAM相の生成割合を示すものであり、焼結体の熱伝導率および三点曲げ強度の要求特性に応じて0.04以下の範囲または0.004〜0.04の範囲とされる。上記GAM相またはDAM相のX線回折強度比が上記下限値未満になると、AlN結晶粒子を相互に結合せしめる粒界相の機能が低下し焼結体の構造強度が低下する場合がある。一方、上記X線回折強度比が上限値を超えると熱抵抗が増加し、焼結体の熱伝導率が低下し易い。
また窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対するAlGdOの(112面)のX線回折強度IAlGdOの比(IAlGdO/IAlN)またはAlDyOの(121面)のX線回折強度IAlDyOの比(IAlDyO/IAlN)は、焼結体の熱伝導率の要求特性に応じて0.05以下の範囲または0.03以下の範囲とされる。このX線回折強度比が上記上限値を超えると焼結体の熱伝導率が低下し易くなる。
また、Gd(401面)のX線回折強度IGdの窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対する比(IGd/IAlN)またはDy(222面)のX線回折強度IDyの窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対する比(IDy/IAlN)は、粒界相に析出したGd相またはDy相の生成割合を示すものであり、焼結体の熱伝導率および三点曲げ強度の要求特性に応じて0.002〜0.06の範囲または0.005〜0.04の範囲とされる。上記Gd相またはDy相のX線回折強度比が上記下限値未満であると、焼結性の改善効果が不十分であり、焼結体の構造強度が低下したり、AlN結晶中に酸素が固溶して熱伝導率が低下したりする。一方、上記X線回折強度比が上限値を超えると、焼結体中に気孔が残存して収縮率が減少し、熱伝導率が低下する。
上記X線回折強度比(IAlGd/IAlNまたはIAlDy/IAlN)を0.04以下の範囲とし、X線回折強度比(IAlGdO/IAlNまたはIAlDyO/IAlN)を0.05以下の範囲とし、且つX線回折強度比(IGd/IAlNまたはIDy/IAlN)を0.002〜0.06の範囲にした場合に、熱伝導率が215W/m・K以上であり、三点曲げ強度が250MPa以上である窒化アルミニウム焼結体が得られ易い。
また、上記X線回折強度比(IAlGd/IAlNまたはIAlDy/IAlN)を0.004〜0.04の範囲とし、X線回折強度比(IAlGdO/IAlNまたはIAlDyO/IAlN)を0.03以下の範囲とし、且つX線回折強度比(IGd/IAlNまたはIDy/IAlN)を0.005〜0.04の範囲にした場合に、熱伝導率が235W/m・K以上であり、三点曲げ強度が200MPa以上である窒化アルミニウム焼結体が得られ易い。
Gd,Dy元素は、AlN原料粉末に含まれる不純物酸素と反応して、Re酸化物−アルミナ化合物(ReAl)などから成る液相を形成し、焼結体の緻密化を達成する焼結助剤として作用するとともに、この不純物酸素を粒界相として固定し高熱伝導化も達成するために、第1,3の発明では0.3〜4.5質量%の範囲で含有され、第2,4の発明では0.3〜3質量%の範囲で含有される。
特に、熱伝導率が215W/m・K以上であり、三点曲げ強度が250MPa以上である高強度高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体を得るためには、Gd、Dy元素の少なくとも1種を0.3〜4.5質量%、酸素を0.1〜0.75質量%含有させることが必要である。
また、熱伝導率が235W/m・K以上であり、三点曲げ強度が200MPa以上である高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体を得るためには、Gd、Dy元素の少なくとも1種を0.3〜3質量%、酸素を0.1〜0.6質量%含有させることが必要である。
このGd、Dy元素の含有量が上記下限値未満の場合は、焼結性の改善効果が充分に発揮されず、焼結体が緻密化されず低強度の焼結体が形成されたり、AlN結晶中に酸素が固溶し、高い熱伝導率を有する焼結体が形成できない。一方、含有量が上記上限値を超える過量となると、過量の粒界相が焼結体中に残存したり、熱処理により除去される粒界相の体積が大きいため、焼結体中に空孔(気孔)が残ったりして収縮率が減少し、焼結体の熱伝導率が低下してしまう。
一方、酸素(O)は上記粒界相を形成する成分であり、上記熱伝導率および三点曲げ強度の要求度合いに応じてAlN焼結体中に0.1〜0.75質量%の範囲で含有される。上記酸素含有量が上記下限値未満の場合には、粒界相の形成割合が少なくなり、粒界相のよるAlN結晶粒を相互に結合する効果が減少し、AlN焼結体全体の構造強度が低下してしまう。すなわち、前記Re成分および酸素からなる液相は焼結後においてAlN結晶粒の粒界部にガラス質または結晶質として凝固して粒界相を形成し、この粒界相がAlN結晶粒を相互に強固に結合せしめAlN焼結体全体の構造強度を高める。
しかしながら、酸素含有量が上記上限値を超える過量になると、熱抵抗が高い粒界相の割合が相対的に増加するために、焼結体の熱伝導率が低下する。また、過量の粒界相が焼結体中に残存したり、熱処理により除去される粒界相の体積が大きいため、焼結体中に空孔(気孔)が残ったりして収縮率が増大し、変形を生じ易くなる。
また、本発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体において、酸素とRe元素(Gd,Dy)との質量比率(O/Re)は0.4以下とすることが好ましい。この質量比率(O/Re)が0.4を超えるように過大になると、熱抵抗が高い酸素化合物が多くなり、焼結体の熱伝導率が低下する。この質量比率(O/Re)は0.3以下であることがさらに好ましい。
さらに、本発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体において、AlN結晶粒子の平均粒子径は、好ましくは4μm以上、さらに好ましくは5μm以上とすると良い。これはAlN結晶の粒成長によって結晶粒子が粗大化することによって、熱抵抗が大きい粒界相の数を相対的に減少させることが可能になり、焼結体の熱伝導率を向上させることができるからである。
また、本発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体において、AlN焼結体の粒界相の最大径は、熱伝導率の要求特性に応じて0.7μm以下、好ましくは0.6μm以下に規定される。上記粒界相の最大径が上記上限値を超えるようになると、熱抵抗となる粒界相の割合が相対的に増加することになり、焼結体の熱伝導率が低下してしまう。
特に、窒化アルミニウム結晶粒子の平均径を4μm以上、粒界相の最大径を0.7μm以下とし、任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数を450個以下とすることにより、熱伝導率が215W/m・K以上であり、三点曲げ強度が250MPa以上である高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体が得られ易くなる。
一方、窒化アルミニウム結晶粒子の平均径を5μm以上、粒界相の最大径を0.6μm以下とし、任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数を350個以下とすることにより、熱伝導率が235W/m・K以上、三点曲げ強度が200MPa以上である高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体が得られ易くなる。
上記窒化アルミニウム結晶粒子の単位結晶組織面積当たりに存在する粒子数が上記上限値を超えると、構造強度はやや増加するが、粒界相の存在数が増加するため、焼結体の熱伝導性が低下してしまう。
ここで、上記窒化アルミニウム結晶粒子の平均径および粒界相の最大径は、以下のように測定できる。すなわち、各AlN焼結体から切り出した5mm×10mm×0.6mmまたは4mm×4mm×10mmの試料片の断面組織から100μm×100μmの領域を有する3箇所の測定領域を選定し、各領域を倍率が1000〜4000倍であるSEMにて観察し、その組織影像から測定される。なお測定対象は各粒子全体が現れている粒子および3重点全体が現れている粒界相に限定する。
具体的には、各窒化アルミニウム結晶粒子の直径は、AlN結晶粒子に外接する最小円の直径で測定される一方、粒界相の直径は、AlN焼結体の断面結晶組織に存在する粒界相の三重点等に内接する最大円の直径で測定される。そして、本発明における粒界相の最大径は、上記3領域に存在する粒界直径の最大値を示す。一方、窒化アルミニウム結晶粒子の平均径は、上記3領域に存在する全AlN結晶粒の直径の平均値を示す。
上記粒界相の最大径が0.7μmを超えるように液相の凝集偏析が著しくなると、AlN結晶粒子相互の液相による結合作用が低下し焼結体全体としての強度が低下し易くなると同時に粗大な粒界相は熱伝導の妨げとなり、AlN焼結体の熱伝導率を低下させる。
本発明に係る高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、例えば酸素量が1質量%以下、平均粒径1.5μm以下の窒化アルミニウム粉末にRe元素(Gd,Dy)を0.3〜4.5質量%と酸素を0.1〜0.75質量%と有機バインダーとを添加した原料混合体を成形して成形体を調製し、得られた成形体を脱脂して成形体中に残留する炭素量が0.3〜0.6質量%の範囲になるように制御した後に、非酸化性雰囲気中で仮焼処理を実施し、しかる後に本焼結する方法が採用できる。
特に上記製法において、Re元素の酸化物等により焼結時に形成された液相が凝固する温度までに至る焼結体の冷却速度を毎時150℃以下にして徐冷することにより、気孔を微細化できるとともに、窒化アルミニウムの結晶組織をより微細かつ均一に形成することができる。
本発明方法において使用され、焼結体の主成分となる窒化アルミニウム(AlN)粉末としては、焼結性および熱伝導性を考慮して不純物酸素含有量が1質量%以下、好ましくは0.7質量%以下に抑制され、平均粒径が0.05〜1.5μm程度、好ましくは1μm以下のものを使用する。使用する窒化アルミニウム(AlN)粉末の平均粒径が1.5μmを超える場合は、焼結性が劣るために長時間または高温度での焼結が必要となり、焼結体の機械的強度も低下するために好ましくない。
また、本発明で使用し得る有機バインダー(結合剤)としては、何ら限定されるものではなく、一般にセラミックス粉末の成形に使用されるポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート等の有機高分子系結合材が好適に使用できる。
前記の通り、Gd,Dy元素は焼結助剤成分として0.3〜4.5質量%の割合で窒化アルミニウム原料粉末に添加される。焼結助剤の具体例としてはGd,Dyの酸化物、もしくは焼結操作によりこれらの化合物となる物質(炭酸塩等)が単独で、または2種以上混合して使用され、特に酸化ガドリニウム(Gd)や酸化ジスプロシウム(Dy)が好ましい。これらの焼結助剤は、窒化アルミニウムの原料粉末表面のアルミニウム酸化物相と反応してReAl、Re、およびReAlOなどの複合酸化物の液相を形成し、この液相が焼結体の高密度化(緻密化)をもたらす。GdやDyを焼結助剤として用いた場合、アルミン酸ガドリニウムやアルミン酸ジスプロシウムが生成し液相焼結が進行すると考えられる。これらの焼結助剤を添加して常圧焼結すると、焼結性の向上(緻密化)のみではなく、熱伝導率も向上できる。すなわち焼結時にAlN中に固溶していた不純物酸素がGdやDyと反応して結晶粒界の酸化物相として偏析するため、格子欠陥の少ない焼結体が得られ、熱伝導率が向上する。
次に上記窒化アルミニウム焼結体を製造する場合の概略工程について説明する。すなわち酸素含有量を規定した所定粒径の窒化アルミニウム粉末に、所定量の焼結助剤としてのGd,Dy化合物,酸素成分および有機バインダー、必要に応じて非晶質炭素等の必要な添加剤を加えて原料混合体を調製し、次に得られた原料混合体を成形して所定形状の成形体を得る。原料混合体の成形法としては、汎用の金型プレス法、冷間静水圧プレス(CIP)法、あるいはドクターブレード法、ロール成形法のようなシート成形法などが適用できる。
上記成形操作に引き続いて、成形体を非酸化性雰囲気中、例えば窒素ガス雰囲気中で温度500〜800℃で1〜4時間加熱して、予め添加していた大部分の有機バインダーの脱脂・除去を行い、成形体に残存する炭素量を厳密に調整する。
次に脱脂処理された成形体は、窒素ガス(N)等の非酸化性雰囲気または減圧雰囲気中で温度1300〜1550℃に加熱し1〜8時間保持する仮焼処理を実施する。この仮焼処理により、成形体に残留していた炭素と酸素成分とが効果的に結合して成形体外に蒸発飛散し、緻密化に必要な粒界相を形成するための最少量の酸素を残して酸素含有量が低減される。
上記仮焼処理を実施しない場合には、脱酸に有効に働く残存炭素が酸素と結合して蒸発飛散しないため、添加したReが還元窒化されReNを生成したり、炭素がそのまま残存して緻密化を阻害したりする。
上記脱脂処理後において、すなわち本焼結前の段階において、成形体に残留する炭素量が0.3〜0.6質量%の範囲になるように制御することが重要である。
なお、上記脱脂処理した成形体に残存する炭素量は、炭素分析装置(EMIA−521、堀場製作所製)を用いて測定できる。
上記成形体に残留する炭素量が0.3質量%未満の場合には、後工程である焼結工程において、残留炭素が酸素と結合して蒸発飛散する炭素量が適正量より少ないため、焼結体中の酸素成分量が多くなり、熱伝導率が低下してしまう。一方、上記残留炭素量が0.6質量%を超えるように過大になると、焼結時においても炭素がそのまま残存して焼結体の緻密化が阻害される。
仮焼処理された成形体は、次に焼成容器内に収容され焼成炉内において多段に積層され、この配置状態で複数の成形体は一括して所定温度で焼結される。焼結操作は、窒素ガスなどの非酸化性雰囲気で成形体を温度1800〜1950℃に8〜18時間程度加熱して実施される。焼結雰囲気は、窒素ガス雰囲気、または窒素ガスを含む還元性雰囲気で行なう。還元性ガスとしてはHガス、COガスを使用してもよい。なお、焼結操作は真空(僅かな還元雰囲気を含む)、減圧、加圧および常圧を含む雰囲気中で実施してもよい。焼結温度が1800℃未満と低温状態で焼成すると、原料粉末の粒径、含有酸素量によって異なるが、緻密な焼結体が得にくい一方、1950℃より高温度で焼成すると、焼成炉内におけるAlN自体の蒸気圧が高くなり緻密化が困難になるおそれがあるため、焼結温度は上記範囲に制御すべきである。
なお、上記仮焼処理と焼結操作とは、それぞれ別の加熱炉を使用して非連続的に実施することも可能であるが、仮焼処理と焼結操作とを同一の焼成炉を使用して連続的に実施した方が工業規模での量産性に優れるため好ましい。
上記焼結操作において緻密な焼結体を得るためにも、また焼結体の熱伝導率を向上させるためにも、ある程度の焼結助剤の添加は必要である。しかしながら、焼結助剤はAlNや不純物酸素と反応して3Gd・5Al,Gd・Alや3Dy・5Al,Dy・Alなどの酸化物を形成して粒界相に析出する。これら粒界相の酸化物は熱伝導を妨げる作用を有することが確認されている。したがって過剰量の粒界相が形成されないように焼結助剤の添加量は厳正に管理する必要がある。
上記のように窒化アルミニウム結晶組織に形成される粒界相の最大径を0.7μm以下にしたり、またAlN結晶粒子を微細化したり、所定のアルミン酸ガドリニウムやアルミン酸ジスプロシウム等から成る粒界相を形成したり、焼結体の気孔を微細化するためには、焼結操作完了直後における焼結体の冷却速度を毎時150℃以下に制御して徐冷することが好ましい。上記冷却速度を毎時150℃を超えるように高速度に設定した場合には、焼結体に生成した液相が粒界部に凝集偏析し易く、粗大な粒界相および気孔が形成されたり、焼結体表面に粒界成分の滲み出しにより縞模様や亀の子状の模様が形成されて外観不良が発生し易い。
特に焼結完了後に焼成炉の加熱用電源をOFFして炉冷を実施した場合には、冷却速度は毎時400〜500℃となる。このように、焼結後に急冷した場合には焼結助剤により生成した液相の凝集偏析によるシマ模様などが発生し、焼結体の均質性が損なわれるだけでなく熱伝導率も低下する。そのため、焼結後に毎時150℃以下の降温速度で液相が凝固する温度まで冷却するが、毎時120℃以下の徐冷速度がより好ましい。
上記冷却速度を調節する温度範囲は、所定の焼結温度(1800〜1950℃)から、前記の焼結助剤の反応によって生じる液相が凝固するまでの温度(液相凝固点)までで充分である。前記のような焼結助剤を使用した場合の液相凝固点は概略1650〜1500℃程度である。こうして少なくとも焼結温度から液相凝固点に至るまでの焼結体の冷却速度を毎時150℃以下に制御することにより、微細な粒界相がAlN結晶粒周囲に均一に分布し、気孔の形成が少ない焼結体が得られる。
上記製法によって製造された窒化アルミニウム焼結体は、いずれも多結晶体として非常に高い215w/m・K(25℃)以上、好ましくは235w/m・K以上の熱伝導率を有し、また三点曲げ強度も200MPa以上、好ましくは250MPa以上であり機械的強度特性にも優れている。
上記構成に係る窒化アルミニウム焼結体によれば、焼結助剤としてのGd,Dy元素添加量および酸素成分量を緻密化に必要な最少量に抑制し、熱伝導率の阻害要因である酸素を除去するために緻密化焼結前に脱酸熱処理工程を実施し、焼結後の粒界相を熱抵抗が低いReAl、Re、およびReAl(但し、ReはGdおよびDyの少なくとも一方の元素)の少なくとも1種に限定しているため、焼結体中の不純物酸素量が大幅に減少し、215W/m・K以上の高熱伝導率を有する窒化アルミニウム焼結体が量産性良く得られる。
また、本発明の焼結体を製造する際に、特に焼結処理完了直後における焼結体の冷却速度を毎時150℃以下と小さく設定した場合には、炉冷のような急速冷却を実施した場合と異なり、焼結時に生成した液相の凝集偏析が少なく、微細な粒界相が均一に分布した結晶組織が得られる。また結晶組織に形成される気孔も微細化すると同時に減少させることができる。したがって、粗大な粒界相や気孔によって熱伝達や緻密化が阻害されることが少なく、高強度で高い熱伝導率を有する窒化アルミニウム焼結体が得られる。
次に本発明の実施形態を以下に示す実施例を参照して具体的に説明する。
[実施例1〜15]
不純物として酸素を0.8質量%含有し、平均粒径1.0μmの窒化アルミニウム粉末に対して、焼結助剤としての平均粒径0.8μmのGd(酸化ガドリニウム)またはDy(酸化ジスプロシウム)とを表1に示すGd,Dy元素量および酸素量となるように添加し、エチルアルコール中で30時間湿式混合した後に乾燥して原料粉末混合体を調製した。さらにこの原料混合体100重量部に対して有機バインダーとしてのブチルメタクリレートを12重量部添加し、ボールミル混合を十分に実施した。
次に乾燥して得た原料粉末混合体をプレス成形機の成形用金型内に充填して1200kg/cmの加圧力にて圧縮成形して実施例1〜15用の成形体を多数調製し、引き続き各成形体を表1に示す条件で加熱して脱脂処理した。
しかる後に、各成形体を表1に示す雰囲気、温度、時間条件で加熱する仮焼処理を実施した。引き続いて各成形体を、Nガス雰囲気中にて表1に示す条件にて緻密化焼結を実施した後に、焼成炉に付設した加熱装置への通電量を減少させて焼成炉内温度が1500℃まで降下するまでの間における焼結体の冷却速度がそれぞれ表1に示す値になるように調整して焼結体を徐冷した。その結果、寸法が40mm×40mm×4mmである実施例1〜15に係る各AlN焼結体を調製した。
[実施例16〜19]
実施例1において使用した窒化アルミニウム粉末に対して、焼結助剤としてのGd(酸化ガドリニウム)を表1に示すGd元素量となるように添加してボールミル混合を十分に実施した後に乾燥して各原料混合体を調製した。さらにこの原料混合体100重量部に対して有機バインダーとしてのブチルメタクリレートを12重量部と、可塑剤としてのジブチルフタレートを4重量部と、トルエンを15重量部とを添加し、さらにボールミル混合を十分に実施してスラリー状の各原料混合体を調製した。
次に各原料混合体スラリーから溶媒を除去して粘度を15000cpsに調整した後に、湿式シート成形法(ドクターブレード法)によりシート成形して乾燥し、さらに所定寸法に打ち抜いて実施例16〜19用の成形体(グリーンシート)を多数調製した。引き続き各成形体を表1に示す条件にて脱脂処理した。
しかる後に、各成形体を表1に示す雰囲気、温度、時間条件で加熱する仮焼処理を実施した。引き続いて各成形体を、Nガス雰囲気中にて表1に示す条件にて緻密化焼結を実施した後に、焼成炉に付設した加熱装置への通電量を減少させて焼成炉内温度が1500℃まで降下するまでの間における焼結体の冷却速度がそれぞれ表1に示す値になるように調整して焼結体を徐冷した。その結果、寸法が75mm×75mm×0.6mmである実施例16〜19に係る各AlN焼結体を調製した。
[比較例1]
一方、仮焼処理を実施しない点以外は実施例1と同一条件で成形・脱脂・焼結処理して同一寸法を有する比較例1に係るAlN焼結体を調製した。
[比較例2]
また、緻密化焼結完了直後に、加熱装置電源をOFFにし、従来の炉冷による冷却速度(約500℃/hr)で焼結体を冷却した点以外は実施例1と同一条件で焼結処理して同一寸法を有する比較例2に係るAlN焼結体を調製した。
[比較例3]
また、緻密化焼結完了直後における焼結体の冷却速度を250℃/hrと過大に設定した以外は実施例1と同一条件で焼結処理して同一寸法を有する比較例3に係るAlN焼結体を調製した。
[比較例4〜7]
また、空気中で脱脂処理を実施し成形体中の残留炭素量を過少にした比較例4、仮焼処理の温度を低温度側(1100℃)に設定した比較例5、焼結体中のGd量および酸素量を過少にした比較例6、Gdの添加量を過大にした比較例7の各AlN焼結体を表1に示す処理条件でそれぞれ調製した。
[比較例8]
一方、表1に示すように脱脂処理を低温度で実施し、脱脂処理後の成形体中の残留炭素量を0.80質量%と過大にした点以外は実施例1と同一条件で成形・仮焼・焼結処理して同一寸法を有する比較例8に係るAlN焼結体を調製した。
各実施例および比較例に係る焼結体中のGdおよびDyの含有量は、原料粉末へのGdおよびDyの添加量より若干減少することが確認された。
そして得られた実施例1〜19および比較例1〜8に係る各窒化アルミニウム焼結体の特性を評価するため、各焼結体を粉砕して粉末にした後にX線解折法(XRD)によって分析し、焼結体の主相および副相を同定しX線回折強度比で表した。さらに各焼結体の破面についての倍率3500倍の走査型電子顕微鏡写真を観察計測することによって、AlN結晶粒子の平均粒径、単位面積(100μm×100μm)当りの結晶粒子の存在数および粒界相の最大径を測定するとともに、窒化アルミニウム結晶組織における粒界相の凝集の有無および気孔の凝集の有無を観察した。さらに各焼結体の熱伝導率および三点曲げ強度の平均値を測定し、下記表1右欄に示す結果を得た。
なお、各焼結体のGd,Dy元素量および酸素量は、焼結体溶液のICP発光分光分析によりGd,Dy濃度および酸素濃度を定量した。また熱伝導率はレーザーフラッシュ法により測定する一方、曲げ強度はJIS R−1601に準じて、三点曲げ強度を測定した。
Figure 0004564257
上記表1に示す結果から明らかなように、所定のGd,Dy元素および酸素を含有する実施例1〜19に係る窒化アルミニウム焼結体においては、比較例2〜3と比較して緻密化焼結完了直後における焼結体の冷却速度を従来法より低く設定しているため、結晶組織内において液相の凝集偏析が少なく、また気孔の凝集もなかった。また焼結体を顕微鏡観察したところ、結晶組織はいずれも粒界相の最大径が0.5μm以下と小さく、また気孔の最大径も0.8μm未満と微小であった。そして微細な粒界相が均一に分布した結晶組織であるため、高密度(高強度)で高熱伝導度を有する放熱性の高い焼結体が得られた。
一方、比較例1のように仮焼処理を実施しない場合には、添加したGdが還元窒化されGdNを生成したり、炭素がそのまま残存して緻密化が阻害されており、十分に焼結が進行しなかった。
また、緻密化焼結完了直後に、従来の炉冷による冷却速度(約500℃/hr)で焼結体を冷却した比較例2に係るAlN焼結体では、粒界相の最大径が1.2μmとなるような粗大な粒界相が形成され、また最大径が4μmと大きな気孔が各所に観察され、また副相として熱抵抗が大きいGdAl12(GAG)が形成されており、焼結性が低下して強度および熱伝導率も低下した。さらに、焼結体表面に縞状の模様も発生しており外観不良が発生した。
一方、緻密化焼結完了直後における焼結体の冷却速度を250℃/hrと過大に設定した比較例3に係るAlN焼結体では、粒界相の最大径が0.8μmとなるような粗大な粒界相が形成され、また大きな気孔が各所に観察され、焼結性が低下して強度および熱伝導率も低下した。さらに、焼結体表面に縞状の模様も発生しており外観不良が発生した。
また、空気中で脱脂処理を実施し成形体中の残留炭素量を過少にした比較例4に係るAlN焼結体では、強度は高いが、熱抵抗が低いGdAl(GAM)やGdAlO(GAL)やGdから成る相が殆ど形成されず、熱抵抗が高いGdAl12(GAG)のみが形成されているため、熱伝導値が大幅に低下した。
さらに、仮焼処理の温度を低温度側(1100℃)に設定した比較例5に係るAlN焼結体においても、熱抵抗が低いGdAl(GAM)やGdAlO(GAL)やGdから成る相が殆ど形成されず、熱抵抗が高いGdAl12(GAG)が形成されているため、熱伝導値が大幅に低下した。
一方、焼結体中のGd量および酸素量を過少にした比較例6に係るAlN焼結体においては、十分に緻密化が進行せず、焼結体の熱伝導率および曲げ強度が共に不十分であった。
さらに、Gdの添加量を過大にした比較例7のAlN焼結体においては、結晶組織が微細化されるため曲げ強度特性は向上するが、熱抵抗が大きいGAGの副相が形成されるため、熱伝導率は低下した。
一方、脱脂処理を低温度で実施し、脱脂処理後の成形体中の残留炭素量を0.80質量%と過大にした比較例8においては、AlN成形体の緻密化が困難であり、焼結が不可能であり、未焼結状態であった。また焼結体組織においてGdが還元窒化されGdNを生成したり、炭素がそのまま残存して緻密化が阻害されていた。

Claims (4)

  1. 窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対するAlGd(310面)のX線回折強度IAlGdの比(IAlGd/IAlN)が0.04以下であり、
    上記X線回折強度IAlNに対するAlGdO(112面)のX線回折強度IAlGdOの比(IAlGdO/IAlN)が0.05以下であり、
    且つ上記X線回折強度IAlNに対するGd(401面)のX線回折強度IGdの比(IGd/IAlN)が0.002〜0.06であり、
    Gd元素を0.3〜4.5質量%含有し、酸素を0.1〜0.75質量%含有し、
    酸素とGd元素との質量比率(O/Gd)が0.4以下であり、
    窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が4μm以上であり、
    任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が450個以下であり、
    粒界相の最大径が0.7μm以下であり、
    熱伝導率が215W/m・K以上、三点曲げ強度が250MPa以上であることを特徴とする高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体。
  2. 窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対するAlGd(310面)のX線回折強度IAlGdの比(IAlGd/IAlN)が0.004〜0.04であり、
    上記X線回折強度IAlNに対するAlGdO(112面)のX線回折強度IAlGdOの比(IAlGdO/IAlN)が0.03以下であり、
    且つ上記X線回折強度IAlNに対するGd(401面)のX線回折強度IGdの比(IGd/IAlN)が0.005〜0.04であり、
    Gd元素を0.3〜3質量%含有し、酸素を0.1〜0.6質量%含有し、
    酸素とGd元素との質量比率(O/Gd)が0.3以下であり、
    窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が5μm以上であり、
    任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が350個以下であり、
    粒界相の最大径が0.6μm以下であり、
    熱伝導率が235W/m・K以上、三点曲げ強度が200MPa以上であることを特徴とする高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体。
  3. 窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対するAlDy(320面)のX線回折強度IAlDyの比(IAlDy/IAlN)が0.04以下であり、
    上記X線回折強度IAlNに対するAlDyO(121面)のX線回折強度IAlDyOの比(IAlDyO/IAlN)が0.05以下であり、
    且つ上記X線回折強度IAlNに対するDy(222面)のX線回折強度IDyの比(IDy/IAlN)が0.002〜0.06であり、
    Dy元素を0.3〜4.5質量%含有し、酸素を0.1〜0.75質量%含有し、
    酸素とDy元素との質量比率(O/Dy)が0.4以下であり、
    窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が4μm以上であり、
    任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が450個以下であり、
    粒界相の最大径が0.7μm以下であり、
    熱伝導率が215W/m・K以上、三点曲げ強度が250MPa以上であることを特徴とする高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体。
  4. 窒化アルミニウム(101面)のX線回折強度IAlNに対するAlDy(320面)のX線回折強度IAlDyの比(IAlDy/IAlN)が0.004〜0.04であり、
    上記X線回折強度IAlNに対するAlDyO(121面)のX線回折強度IAlDyOの比(IAlDyO/IAlN)が0.03以下であり、
    且つ上記X線回折強度IAlNに対するDy(222面)のX線回折強度IDyの比(IDy/IAlN)が0.005〜0.04であり、
    Dy元素を0.3〜3質量%含有し、酸素を0.1〜0.6質量%含有し、
    酸素とDy元素との質量比率(O/Dy)が0.3以下であり、
    窒化アルミニウム結晶粒子の平均径が5μm以上であり、
    任意の結晶組織面積100μm×100μm当りに存在する結晶粒子数が350個以下であり、
    粒界相の最大径が0.6μm以下であり、
    熱伝導率が235W/m・K以上、三点曲げ強度が200MPa以上であることを特徴とする高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体。
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