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JP4301617B2 - Dbc回路基板用窒化アルミニウム焼結体の製造方法およびdbc回路基板の製造方法 - Google Patents

Dbc回路基板用窒化アルミニウム焼結体の製造方法およびdbc回路基板の製造方法 Download PDF

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JP4301617B2 JP37127598A JP37127598A JP4301617B2 JP 4301617 B2 JP4301617 B2 JP 4301617B2 JP 37127598 A JP37127598 A JP 37127598A JP 37127598 A JP37127598 A JP 37127598A JP 4301617 B2 JP4301617 B2 JP 4301617B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板等に使用されるDBC回路基板用窒化アルミニウム焼結体の製造方法およびDBC回路基板の製造方法に係り、特に窒化アルミニウム特有の高熱伝導性を損うことなく、強度ならびに破壊靭性値を共に大幅に改善し、放熱性に優れたDBC回路基板用窒化アルミニウム焼結体の製造方法およびDBC回路基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の金属材料と比較して強度、耐熱性、耐食性、耐摩耗性、軽量性などの諸特性に優れたセラミックス焼結体が、半導体基板、電子機器材料、エンジン用部材、高速切削工具用材料、ノズル、ベアリングなど、従来の金属材料では対応できない苛酷な温度、応力、摩耗条件下で使用される機械部品、機能部品、構造材や装飾品材料として広く利用されている。
【0003】
特に窒化アルミニウム(AlN)焼結体は高熱伝導性を有する絶縁体であり、シリコン(Si)に近い熱膨張係数を有することから高集積化した半導体装置の放熱板や基板として、その用途を拡大している。
【0004】
従来上記窒化アルミニウム焼結体は一般的に下記の製造方法によって量産されている。すなわち、窒化アルミニウム原料粉末に焼結助剤と、有機バインダと、必要に応じて各種添加剤や溶媒、分散剤とを添加して原料混合体を調製し、得られた原料混合体をドクターブレード法や泥漿鋳込み法(スリップキャスティング法)によって成形し、薄板状ないしシート状の成形体としたり、原料混合体をプレス成形して厚板状ないし大型の成形体を形成する。次に得られた成形体は、空気または窒素ガス雰囲気において加熱され脱脂処理され、有機バインダとして使用された炭化水素成分等が成形体から排除脱脂される。そして脱脂された成形体は窒素ガス雰囲気等で高温度に加熱され緻密化焼結されて窒化アルミニウム焼結体が形成される。
【0005】
上記製造方法において、原料AlN粉末として平均粒径が0.5μm以下程度の超微細な原料粉末を使用する場合は、AlN粉末単独でもかなりの緻密な焼結体が得られる。しかしながら、原料粉末表面等に付着した多量の酸素等の不純物が焼結時に、AlN結晶格子中に固溶したり、格子振動の伝播を妨げるAl−O−N化合物等の複合酸化物を生成する結果、焼結助剤を使用しないAlN焼結体の熱伝導率は比較的に低かった。
【0006】
一方原料粉末として平均粒径1μm以上のAlN粉末を使用する場合は、その原料粉末単独では焼結性が良好でないため、ホットプレス法以外には助剤無添加では緻密な焼結体を得ることが困難であり、量産性が低い欠点があった。そこで常圧焼結法によって効率的に焼結体を製造しようとする場合には、焼結体の緻密化およびAlN原料粉末中の不純物酸素がAlN結晶粒子内へ固溶することを防止するために、焼結助剤として、酸化イットウリム(Y2 3 )などの希土類酸化物や酸化カルシウムなどのアルカリ土類金属酸化物等を添加することが一般に行なわれている。
【0007】
これらの焼結助剤は、AlN原料粉末に含まれる不純物酸素やAl2 3 と反応して液相を形成し、焼結体の緻密化を達成するとともに、この不純物酸素を粒界相として固定し、高熱伝導率化も達成するものと考えられている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記従来の製造方法においては、本来、AlNと液相化合物との濡れ性が低く、また液相自体が偏析し易い性質を有することから、焼結後に液相が凝固する際に、液相はAlN粒子の間隙部に偏在するように残留し、凝固して粗大で脆弱な粒界相を形成する傾向がある。また、結晶粒の粒成長が進行し易く、さらに焼結体の結晶組織に平均粒径が5〜10μmと粗大な結晶粒が形成され易く、また微小な気孔が消滅せずに結晶粒内に残存し、焼結体の緻密化を阻害し、最終的に3点曲げ強度が350〜400MPa程度の低強度であり、また破壊靭性値が2.8MPa・m1/2 以下という低靭性の窒化アルミニウム焼結体しか得られない問題点があった。
【0009】
上記問題点を解決するために、粒径が均一で細かい窒化アルミニウム原料粉末を使用して可及的に微細な結晶組織を有するAlN焼結体を形成したり、各種添加物を添加して焼結性を高める工夫も試行されている。例えばW成分等を含有させることにより、焼結性を改善して高強度のAlN焼結体を得る方法も本願発明者らが発案した。しかしながら、W成分を含有させることにより、結晶組織が微細で均一化されるため、焼結体の強度は改善される反面、破壊靭性値は逆に低下してしまうことも判明した。したがって、強度および靭性値が共に優れた半導体基板用のAlN焼結体を得ることは困難であった。
【0010】
近年、半導体素子の高集積化、高出力化に伴って増加する発熱量に対応するために、高熱伝導性(高放熱性)を有する上記窒化アルミニウム材料が普及しつつあり、その放熱性については大体満足する結果が得られている。しかしながら上記のように構造部材としての強度ならびに靭性値が不足するため、例えば窒化アルミニウム焼結体で形成した半導体基板を実装ボードに装着する際に作用する僅かな曲げ応力や取扱時に作用する衝撃力によって半導体基板が損傷し易く、半導体回路基板の製造歩留りが大幅に低下してしまう問題点があった。
【0011】
また、焼結体を適正に焼結できる温度幅が狭く、その適正温度幅を超えると焼結体表面に液相の凝集偏析が顕著になる欠点がある。この欠点は、CuOと酸素との共晶化合物を介して銅回路板等を基板表面に直接的に接合するDBC(銅直接接合)法で回路基板を製造する際に悪影響を及ぼす。すなわち、銅回路形成工程において重要な前工程である基板の表面酸化熱処理において、酸化膜が均一に形成されず、DBC法による回路基板の製造歩留りを低下させる要因のひとつとなっている。
【0012】
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、AlN焼結体の結晶粒の大きさおよび微構造を適正に制御し焼結体組織を微細化するとともに、粒界相と結晶粒との結合強化を図って焼結体の強度ならびに破壊靭性値の向上を図り、放熱特性を損うことなく機械的強度を高め、さらに適正に焼結できる温度範囲を拡げることができ、また焼結体表面における液相の凝集偏析を大幅に抑制することが可能なAlN焼結体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本願発明者は上記目的を達成するため、窒化アルミニウム原料粉末の合成方法,AlN原料粉末の粒度分布,原料窒化アルミニウム粉末に添加する焼結助剤や添加物の種類や添加量を種々変えて、それらが焼結体や焼結体の表面の液相状態,結晶組織の微構造,強度特性や破壊靭性値および伝熱特性に及ぼす影響について実験検討を進めた。
【0014】
その結果、所定のAlN原料粉末に焼結助剤の他に添加剤としてのSi成分と、炭化ボロン(B4 C)と、HfおよびZrの少なくとも1一方とを複合的に微量添加し、その混合体を成形焼結したときに、平均結晶粒径が3〜4.5μmと微細であり、かつ上記炭化ボロンが粒界相とAlN結晶粒との結合度を改善するとともに均一に分散した焼結体組織が得られ、強度特性および破壊靭性値が共に優れたAlN焼結体が得られた。また、焼結体表面に液相の凝集偏析が発生せず、適正に焼結できる温度範囲が大幅に拡大したAlN焼結体が得られた。本発明は上記知見に基づいて完成されたものである。
【0015】
すなわち本発明に係る窒化アルミニウム焼結体は、周期律表IIIa族元素,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、炭化ボロンを0.2〜2.0重量%と、SiO,Si,SiC,SiO,β−サイアロン,α−サイアロンおよびポリタイプの窒化アルミニウム(Al−Si−O−N)から選択された少なくとも1種のけい素化合物として含有されるをSi成分換算で0.2重量%以下と、HfおよびZrの少なくとも1種を酸化物換算で0.1〜2重量%と、残部を構成する窒化アルミニウムとから成る窒化アルミニウム焼結体であって、破壊靭性値が3MPa・m 1/2 以上であり、3点曲げ強度が450MPa以上であり、熱伝導率が130W/m・K以上であり、窒化アルミニウム結晶粒の平均結晶粒径が3〜4.5μmであり、上記窒化アルミニウム焼結体の表面に酸化膜を具備していることを特徴とする。
さらにTi,Fe,Ni,Cr,Co,Li,Mgから選択される少なくとも1種の金属元素を酸化物換算で0.05〜0.5重量%含有させるとよい。さらに焼結体の平均結晶粒径が2〜4.5μmであるとよい。そして上記組成から成り、かつ広い結晶粒径分布を有するAlN焼結体は、熱伝導率が130W/m・K以上であり、また3点曲げ強度が450MPaであり、破壊靭性値が3.0MPa・m1/2以上となる。さらに、焼結体を適正に焼結できる温度範囲は±20〜±30℃程度拡大される。
【0016】
また本発明に係るDBC回路基板用窒化アルミニウム焼結体の製造方法は、窒化アルミニウム原料粉末に、周期律表IIIa族元素,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、炭化ボロン(BC)を0.2〜2.0重量%と、SiO,Si,SiC,SiO,β−サイアロン,α−サイアロンおよびポリタイプの窒化アルミニウム(Al−Si−O−N)から選択された少なくとも1種のけい素化合物をSi成分換算で0.2重量%以下と、HfおよびZrの少なくとも1種を酸化物換算で0.1〜2重量%とを添加した混合粉末を成形する工程と、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で1650〜1900℃の温度域で焼結することにより、表面の液相の凝集偏析が抑制され均一な表面を有し、破壊靭性値が3MPa・m1/2以上であり、3点曲げ強度が450MPa以上であり、熱伝導率が130W/m・K以上であり、窒化アルミニウム結晶粒の平均結晶粒径が3〜4.5μmである窒化アルミニウム焼結体を得る工程と、得られた焼結体を酸化熱処理することにより焼結体表面に均一な酸化膜を形成する工程とを具備することを特徴とする。
【0017】
本発明方法において使用され、焼結体の主成分となる窒化アルミニウム(AlN)原料粉末としては、焼結性および熱伝導性を考慮して不純物酸素含有量が1.5重量%以下に抑制され、平均粒径が0.5〜2μm程度、好ましくは1.5μm以下の微細なAlN原料粉末を使用する。
【0018】
周期律表IIIa族元素,Ca,Sr,Baの酸化物は、焼結助剤として作用し、AlN焼結体を緻密化するために、AlN原料粉末に対して1〜10重量%の範囲で添加される。上記焼結助剤の具体例としては希土類元素(Y,Sc,Ce,Dyなど)の酸化物、窒化物、アルカリ土類金属(Ca)の酸化物、もしくは焼結操作によりこれらの化合物となる物質が使用され、特に酸化イットリウム(Y2 3 )、酸化セリウム(CeO)や酸化カルシウム(CaO)が好ましい。上記焼結助剤の添加量が1重量%未満の場合は、焼結性の改善効果が充分に発揮されず、焼結体が緻密化されず低強度の焼結体が形成されたり、AlN結晶中に酸素が固溶し、高い熱伝導率を有する焼結体が形成できない。
【0019】
一方添加量が10重量%を超える過量となると、焼結助剤としての効果は飽和状態に達して無意味となるばかりでなく、却って焼結して得られるAlN焼結体の熱伝導率が低下する一方、粒界相が焼結体中に多量に残存したり、熱処理により除去される粒界相の体積が大きいため、焼結体中に空孔が残ったりして収縮率が増大し、変形を生じ易くなる。
【0020】
Si成分は、焼結性を向上させるとともに焼結温度を低下させる効果を有するが、特に上記焼結助剤と複合添加することにより、焼結体の粒成長を抑止することができ、微細なAlN結晶組織を形成し、焼結体の構造強度を高めるために添加される。上記Si成分としては、SiO2 ,Si3 4 ,SiC,Si2 2 O,β−サイアロン,α−サイアロンおよびポリタイプの窒化アルミニウム(Al−Si−O−N)等のけい素化合物を使用することが望ましい。このけい素化合物の含有量はSi成分として0.2重量%以下の範囲に調整される。しかしながら、Si成分の含有量が0.01重量%未満の場合は、粒成長の抑止効果が不充分となり、粗大な結晶組織となり、高強度のAlN焼結体が得られない。一方、含有量が0.2重量%を超える過量となると、焼結体の熱伝導率が低下するとともに、曲げ強度が低下する場合もある。
【0021】
また炭化ボロン(B4 C)はAlN焼結体の粒界相と結晶粒との結合度を高めるとともに、焼結体組織内に均一に分散してクラックの伝播を阻止する作用を発揮しAlN焼結体の破壊靭性値をさらに向上させる効果を有し、このB4 Cの含有量は0.2〜2重量%の範囲に調整される。B4 Cの含有量が0.2重量%未満の場合には、上記靭性改善効果が不充分となる一方、含有量が2重量%を超える過量となると、焼結体の熱伝導率が低下してしまう。
【0022】
Hf成分およびZr成分は、焼結性をさらに向上させると共に焼結体表面に発生し易い液相の凝集偏析を抑制し、適正に焼結できる温度範囲を拡大する効果を有する。上記成分としては酸化物,炭化物,窒化物,珪化物,硼化物等の化合物を使用することが望ましい。このHf化合物およびZr化合物は酸化物換算で0.1〜2重量%の範囲で添加される。添加量が0.1重量%未満の場合は上記改善効果が不十分となる一方、添加量が2重量%を超えると過量となると、他の不純物と同様にAlN焼結体の熱伝導率を低下させる。
【0023】
Ti,Fe,Ni,Cr,Co,Li,Mgの酸化物は、焼結温度を下げて焼結性を向上させる一方、焼結体を着色して不透明な焼結体を形成する等、AlN焼結体の特性を改善するために有効であり、酸化物換算で0.05〜0.5重量%の範囲で添加してもよい。添加量が0.05重量%未満の場合は、上記特性改善効果が不充分となる一方、添加量が0.5重量%を超える過量となると、他の不純物と同様にAlN焼結体の熱伝導率を低下させる。
【0024】
また上記各種添加物以外の不純物陽イオンはAlN焼結体の熱伝導を阻害する化合物を形成し易いため、AlN焼結体中の含有量は0.2重量%以下とする。
【0025】
上記AlN原料粉末、各種焼結助剤,Si成分用Si化合物,B4 CおよびHf,Zr化合物は、例えばボールミル等の粉砕混合機に投入され、所定時間混合されることによって原料混合体となる。次に得られた原料混合体を所定形状の金型に充填し加圧成形して成形体が形成される。このとき予め原料混合体にパラフィン、ステアリン酸等の有機バインダを5〜10重量%添加しておくことにより、成形操作を円滑に実施することができる。
【0026】
成形法としては、汎用の金型プレス法、泥漿鋳込み法、静水圧プレス法、押出し成形法あるいはドクターブレード法のようなシート成形法などが適用できる。
【0027】
上記成形操作に引き続いて、成形体を空気中で温度400〜550℃に加熱したり、または非酸化性雰囲気中、例えば窒素ガス雰囲気中で温度400〜800℃に加熱して、予め添加していた有機バインダを充分に脱脂除去する。
【0028】
次に脱脂処理された複数のシート状の成形体は、例えばセラミックス焼結粉から成るしき粉を介して焼成炉内において多段に積層され、この配置状態で複数の成形体は一括して所定温度で焼結される。焼結操作は、窒素ガスなどの非酸化性雰囲気で成形体を温度1650〜1900℃で2〜6時間程度加熱して実施される。特にSi成分と、HfおよびZrの少なくとも1種とを添加することにより、1700〜1780℃程度と従来より低い温度で焼結することが可能となる。焼結雰囲気は、AlNと反応しない非酸化性雰囲気あればよいが、通常は窒素ガス、または窒素ガスを含む還元性雰囲気で行う。還元性ガスとしてはH2 ガス、COガスを使用してもよい。なお、焼結は真空(僅かな還元雰囲気を含む)、減圧、加圧および常圧を含む雰囲気で行ってもよい。焼結温度が1650℃未満と低温状態で焼成すると、原料粉末の粒径、含有酸素量によって異なるが、緻密化が困難であり、強度および熱伝導性などの特性に難点が生じ易い一方、1900℃より高温度で焼成すると、焼成炉内におけるAlN自体の蒸気圧が高くなり緻密化が困難になるとともに熱伝導率が急激に低下するおそれがあるため、焼結温度は上記範囲に設定される。
【0029】
そして上記AlN原料粉末に焼結助剤,B4 C,Si成分およびHf,Zr成分を添加した所定の組成を有する原料混合体を成形、脱脂、焼結することにより、平均結晶粒径が3〜4.5μm程度と微細であり、かつ粒界相とAlN結晶粒との結合度が改善されるとともに、B4 C粒子が均一に分散した結晶組織を有し、熱伝導率が130W/m・K以上であり、かつ曲げ強度が450MPa以上,破壊靭性値が3.0MPa・m1/2 以上である高強度で高靭性のAlN焼結体が得られる。また、より広い焼結温度範囲において、焼結体表面における液相の凝集偏析が少ないAlN焼結体が得られる。
【0030】
上記構成に係る窒化アルミニウム焼結体およびその製造方法によれば、周期律表IIIa族元素,Ca,Sr,Baの酸化物から成る焼結助剤とともに所定量のSi成分とB4 Cと、HfおよびZrの少なくとも1種とを複合添加してAlN焼結体としているため、Si成分によって結晶粒の大きさが適正に制御された結晶組織が得られる。またB4 Cによって粒界相とAlN結晶粒との結合度が改善され、かつB4 C粒子が均一に分散した微構造を有する結晶組織が得られる。したがって、クラックの伝播が効果的に阻止され強度特性および破壊靭性値が共に優れた窒化アルミニウム焼結体が得られる。また、Hf成分やZr成分を添加しているため、焼結体表面における液相の凝集偏析が効果的に抑制され、均一な表面を有する焼結体が得られる。したがって、DBC法で回路基板を製造する際に重要な前工程である基板の酸化熱処理工程において酸化膜が均一に形成されるため、高品質の回路基板が得られる。
【0031】
【発明の実施の形態】
次に下記の実施例を参照して本発明に係る窒化アルミニウム焼結体をより具体的に説明する。
【0032】
実施例1〜50
還元窒化合成法によって製造され、不純物として酸素を0.8重量%含有し、平均粒径1μmの窒化アルミニウム原料粉末に対して、表1および表2に示すようにSi成分,B4 C,Hf化合物,Zr化合物および焼結助剤としてのY2 3 ,TiO2 ,Fe2 3 ,NiO,Cr2 3 ,CoO,Li2 O,MgO,SiO2 ,Si3 4 ,SiC,Si2 2 O,α−サイアロン,β−サイアロン,ポリタイプAlN等をそれぞれ所定量ずつ添加し、エチルアルコールを溶媒としてボールミルで48時間混合して原料混合体を調製した。次にこの原料混合体に有機バインダとしてのパラフィンを7.5重量%添加して造粒粉を調製した。
【0033】
次に得られた造粒粉をプレス成形機の成形用金型内に充填して1000kg/cm2 の加圧力にて一軸方向に圧縮成形して、縦50mm×横50mm×厚さ5mmの角板状成形体を多数調製した。引き続き各成形体を空気中で450℃で1時間加熱して脱脂処理した。
【0034】
次に脱脂処理した各成形体をAlN製焼成容器内に収容し、焼成炉において表1および表2に示す焼成温度1700〜1820℃で4時間緻密化焼結を実施し、その後冷却速度200℃/hrで冷却してそれぞれ実施例1〜50に係るAlN焼結体を製造した。
【0035】
比較例1
一方、表2に示すように、Si成分,B4 C,Hf成分およびZr成分を全く添加せず、従来の焼結助剤のみを添加し1800℃で焼結した以外は実施例1と同一条件で原料調整、成形、脱脂、焼結処理して同一寸法を有する比較例1に係るAlN焼結体を製造した。
【0036】
比較例2
また、Si成分を全く添加せず、かつ温度1760℃で焼結した以外は実施例1と同一条件で処理して比較例2に係るAlN焼結体を製造した。
【0037】
比較例3
4 C成分を全く添加せず、かつ1740℃で焼結した以外は実施例1と同一条件で原料調整,成形,脱脂,焼結処理して同一寸法を有する比較例3に係るAlN焼結体を製造した。
【0038】
比較例4
また、Hf成分を全く添加せず、かつ温度1760℃で焼結した以外は実施例1と同一条件で処理して比較例4に係るAlN焼結体を製造した。
【0039】
比較例5
焼結助剤としてのY2 3 を過剰量15重量%添加し、かつ1780℃で焼結した以外は実施例1と同様に処理して比較例5に係るAlN焼結体を製造した。
【0040】
比較例6
4 Cを過剰量3重量%添加し、かつ1740℃で焼結した以外は実施例1と同様に処理して比較例6に係るAlN焼結体を製造した。
【0041】
比較例7
HfO2 を過剰量3重量%添加し、かつ1740℃で焼結した以外は実施例1と同様に処理して比較例7に係るAlN焼結体を製造した。
【0042】
比較例8
Si成分としてのSiO2 を過剰量0.3重量%(Si換算)添加し、かつ1740℃で焼結した以外は実施例1と同様に処理して比較例8に係るAlN焼結体を製造した。
【0043】
比較例9
焼結助剤としてY2 3 に加えてTiO2 を過剰量1重量%添加し、かつ1740℃で焼結した以外は実施例1と同様に処理して比較例9に係るAlN焼結体を製造した。
【0044】
こうして得られた実施例1〜50および比較例1〜9に係る各AlN焼結体の強度特性および放熱特性に加えて表面状態を評価するために、各試料の3点曲げ強度、破壊靭性値,熱伝導率および平均結晶粒径(D50)を測定するとともに、表面における液相の凝集偏析の有無を観察する一方、各AlN焼結体を酸化熱処理したときに形成された酸化膜の均一性を調査し、下記表1〜2に示す結果を得た。なお、破壊靭性値は、マイクロインデンテーション法における新原方式により測定した値である。
【0045】
【表1】
Figure 0004301617
【0046】
【表2】
Figure 0004301617
【0047】
上記表1〜2に示す結果から明らかなように、Y2 3 ,CaO等の焼結助剤に加えてB4 Cと、Hf,Zrの少なくとも一方と、Si成分とを微量ずつ複合添加した実施例1〜50に係るAlN焼結体においては、結晶粒径がいずれも3〜4.5μmと極めて微細であり、かつB4 Cによって粒界相とAlN結晶粒との結合度が改善されるとともに、B4 C粒子が均一に分散した結晶組織が得られ、B4 C粒子によってクラック伝播が阻止されるため、高い曲げ強度に加えて破壊靭性値および熱伝導率が共に優れていることが判明した。さらに、Hf成分やZr成分を添加することにより、焼結体表面における液相の凝集偏析が効果的に抑制される。そのためDBC工程において重要な前処理である基板の酸化熱処理工程においてAlN製基板表面に酸化膜が均一に形成されることも判明した。
【0048】
一方、Si成分を全く添加しない比較例1および比較例2に係るAlN焼結体は、熱伝導率においては実施例1〜50より優れているものがある反面、概して曲げ強度が低く、耐久性および取扱性において難点がある。また
Si成分を過量に添加した比較例8の試料では、熱伝導率が不充分となり、また従来の焼結助剤としてのY2 3 を過量に添加した比較例5の試料では、Si成分を添加したにも拘らず、熱伝導率および強度が共に低下することが確認された。
【0049】
また、B4 Cを全く添加しない比較例3に係るAlN焼結体は、熱伝導率においては実施例1〜50より優れていものがある反面、概して破壊靭性値が低く、耐久性および取扱性において難点がある。
【0050】
またB4 Cを過量に添加した比較例6に係るAlN焼結体は熱伝導率が低下することが確認された。Hf成分を全く添加しない比較例4に係るAlN焼結体は、熱伝導率,曲げ強度ならびに靭性値は実施例1〜50と同等であるが、焼結体表面における液相の凝集偏析が中程度であり、また、酸化熱処理によるAlN焼結体製基板への酸化膜の形成が不均一になり、DBC法による回路基板の製造時に難点があった。
【0051】
さらにHf成分を適量に添加した比較例7に係るAlN焼結体は曲げ強度ならびに靭性値は実施例1〜50と同等であるが、熱伝導率が不十分となる。また、TiO2 を適量に添加した比較例9に係るAlN焼結体は曲げ強度ならびに靭性値は実施例1〜50と同等であるが、熱伝導率が不十分となる。
【0052】
【発明の効果】
以上説明の通り本発明に係るセラミックス焼結体およびその製造方法によれば、周期律表IIIa族元素,Ca,Sr,Baの酸化物から成る焼結助剤とともに所定量のSi成分とB4 CとHfおよびZrの少なくとも1種とを複合添加してAlN焼結体としているため、Si成分によって結晶粒の大きさが適正に制御された結晶組織が得られる。またB4 Cによって粒界相とAlN結晶粒との結合度が改善され、かつB4 C粒子が均一に分散した微構造を有する結晶組織が得られる。したがって、クラックの伝播が効果的に阻止され強度特性および破壊靭性値が共に優れた窒化アルミニウム焼結体が得られる。さらに、HfおよびZrから選択される少なくとも1種の成分を添加しているため、焼結体表面における液相の凝集偏析が効果的に抑制される。そのため、DBC法で回路基板を製造する際に重要な前処理である酸化熱処理工程において、AlN焼結体製基板表面に酸化膜を均一に形成することができる。

Claims (4)

  1. 窒化アルミニウム原料粉末に、周期律表IIIa族元素,Ca,Sr,Baから選択される少なくとも1種の元素の酸化物を1〜10重量%と、炭化ボロンを0.2〜2.0重量%と、SiO,Si,SiC,SiO,β−サイアロン,α−サイアロンおよびポリタイプの窒化アルミニウム(Al−Si−O−N)から選択された少なくとも1種のけい素化合物をSi成分換算で0.2重量%以下と、HfおよびZrの少なくとも1種を酸化物換算で0.1〜2重量%とを添加した混合粉末を成形する工程と、得られた成形体を非酸化性雰囲気中で1650〜1900℃の温度域で焼結することにより、表面の液相の凝集偏析が抑制され均一な表面を有し、破壊靭性値が3MPa・m1/2以上であり、3点曲げ強度が450MPa以上であり、熱伝導率が130W/m・K以上であり、窒化アルミニウム結晶粒の平均結晶粒径が3〜4.5μmである窒化アルミニウム焼結体を得る工程と、得られた焼結体を酸化熱処理することにより焼結体表面に均一な酸化膜を形成する工程とを具備することを特徴とするDBC回路基板用窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
  2. 窒化アルミニウム原料粉末に0.05〜0.5重量%の、Ti,Fe,Ni,Cr,Co,LiおよびMgから選択される少なくとも1種の金属元素の酸化物を添加することを特徴とする請求項記載のDBC回路基板用窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
  3. 窒化アルミニウム原料粉末の酸素含有量が1.5重量%以下であることを特徴とする請求項記載のDBC回路基板用窒化アルミニウム焼結体の製造方法。
  4. 請求項記載の製造方法によって製造されたDBC回路基板用窒化アルミニウム焼結体から成る基板表面に銅直接接合法(DBC法)によって回路板を接合することを特徴とするDBC回路基板の製造方法。
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