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JP4560873B2 - カウンタシャフトブレーキの潤滑装置 - Google Patents

カウンタシャフトブレーキの潤滑装置 Download PDF

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JP4560873B2
JP4560873B2 JP2000083274A JP2000083274A JP4560873B2 JP 4560873 B2 JP4560873 B2 JP 4560873B2 JP 2000083274 A JP2000083274 A JP 2000083274A JP 2000083274 A JP2000083274 A JP 2000083274A JP 4560873 B2 JP4560873 B2 JP 4560873B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、カウンタシャフトブレーキの潤滑装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用の自動変速機として、二軸式の変速機とオートクラッチとを備え、変速機内のカウンタシャフトにブレーキを設けたタイプが知られている。この種の自動変速機は、機械的なシンクロ機構を設けていないので、シフトアップ時に、変速スリーブを低段側の変速ギヤのスプラインから抜いて高段側の変速ギヤのスプラインに入れるとき、高段側の変速ギヤのスプラインの回転数(rpm) を減速して変速スリーブの回転数(rpm) に合わせるべく、上記ブレーキによってカウンタシャフトの回転を減速し、動機制御をしている。
【0003】
このカウンタシャフトブレーキは、シフトアップ毎に作動されるため、耐焼付性・耐久性・信頼性を確保すべく、潤滑油が供給される湿式タイプが採用される。従来、かかるカウンタシャフトブレーキの潤滑装置として、当該ブレーキを油没させて使用するタイプ、またはブレーキにオイルをポンプによって圧送供給するタイプ等が知られている。これらのタイプによれば、油温上昇が抑えられ、性能劣化を抑制できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、油没タイプでは、油没させるためのスペースが必要となる。また、油没させているのみでは、油の循環が良くないのでブレーキ作動による発熱がオイルに蓄積されるため、結局オイルを循環させる必要が生じ、構造が複雑となる。
他方、オイル圧送タイプでは、ポンプからブレーキへのオイル経路を確保しなければならない。
【0005】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、コンパクトで簡単な構造のカウンタシャフトブレーキの潤滑装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
記目的を達成すべく創案された本発明に係るカウンタシャフトブレーキの潤滑装置は、変速機のカウンタシャフトの端部に設けられたブレーキと、該ブレーキに隣接させてカウンタシャフトの端部に設けられたギヤと、静止時に記ギヤの一部が浸漬されるミッションケース内のオイルと、記ギヤの回転によって掻き上げられた記オイルを前記ブレーキに案内するオイル通路とを備え、前記ブレーキは、ミッションケースに取り付けられたブレーキケース内に収容され、カウンタシャフトの端部に固定されたハブと、該ハブに軸方向に移動自在に且つ周方向に固定して取り付けられた複数のフリクションプレートと、各フリクションプレートに対向させて前記ブレーキケースに軸方向に移動自在に且つ周方向に固定して取り付けられた複数のセパレータプレートと、それらセパレータプレートとフリクションプレートとを押し付けるべく前記ブレーキケースに軸方向にスライド自在に設けられた筒体状のピストンとを有し、該ピストンに、前記オイル通路からのオイルを当該ピストンおよび前記ハブの内方に導く第1通路を形成し、前記ハブに、内方に導かれたオイルを前記フリクションプレートおよびセパレータプレートに供給するための第2通路を形成し、該第2通路を経由したオイルを前記ミッションケースに戻すオイル排出路が前記フリクションプレートおよびセパレータプレートよりも径方向外方に形成されると共に、前記第2通路から前記オイル排出路にかけてカウンタシャフトの回転に伴う遠心力によってオイルを供給することを特徴とする。
【0008】
また、前記ブレーキにオイルを案内する前記オイル通路のオイル入口が、少なくとも前記ギヤの回転中のオイル油面より高い位置に配置されていることが望ましい。オイル入口が油中に没していると、油が循環し難く冷却性が悪化するからである。
【0009】
また、前記ブレーキからオイルを排出するオイル排出路のオイル出口が、前記ギヤの回転中のオイル油面より高い位置にあると共に、前記ギヤの停止中のオイル油面より低い位置に配置されることが望ましい。ギヤ停止中にオイル出口が油面下にあれば、ギヤ停止中であってもオイル出口から流れ込むオイルによってブレーキがオイルに浸漬された状態となって、潤滑状態を保つことができ、ギヤ回転中にオイル出口が油面より上であれば、オイル出口から排出されるオイルの流動抵抗が少なく循環性がよいからである。
【0010】
また、前記ブレーキが、ミッションケースのメインケースの外側のクラッチケース内に配置されることが好ましい。こうすれば、メインケースにスペースが無く、クラッチケースの空きスペースを活用でき、全長を短くできる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基いて説明する。
【0012】
図8は本実施形態に係るカウンタシャフトブレーキの潤滑装置を備えた自動変速機の概要図である。
【0013】
図8に示すように、オートクラッチ1は、エンジンEと変速機2(トランスミッション)との間に介設されたクラッチ3と、クラッチ3を断接するクラッチアクチュエータ(図示せず)と、クラッチアクチュエータに断接指令を与えるコントロールユニット(図示せず)とを備え、発進時・変速時・停止時にコントロールユニットから発せられる断接指令に基きクラッチアクチュエータを作動させ、クラッチ3をその都度適宜断接するものである。
【0014】
クラッチ3は、エンジンEのクランクシャフトCに接続されたフライホイール6(ドライブプレート)と、そのフライホイール6に対向配置されたドリブンプレート7と、ドリブンプレート7をフライホイール6との間に挟むプレッシャプレート8とを有する。クラッチアクチュエータは、コントロールユニットから発せられる断接指令に基き、プレッシャプレート8をフライホイール6側とその反対側とに適宜移動制御し、クラッチ3を接・断してエンジンEの出力を変速機2に対してオン・オフする。
【0015】
図8に示すように、変速機2は、ドリブンプレート7に連結されたインプットシャフト9と、それと同軸に配置されたメインシャフト10と、それと同軸に配置されたアウトプットシャフト11と、それらシャフト9、10、11と平行に配置されたカウンタシャフト12とを備えている。インプットシャフト9には、スプライン13が固設されていると共に、インプットギヤ14が軸支されている。インプットギヤ14には、スプライン15が固設されている。
【0016】
カウンタシャフト12には、インプットギヤ14に噛合するインプットカウンタギヤ16と、4速カウンタギヤ17と、3速カウンタギヤ18と、2速カウンタギヤ19と、1速カウンタギヤ20と、リバースカウンタギヤ21とが、夫々固設されている。他方、メインシャフト10には、4速カウンタギヤ17に噛合する4速メインギヤ22と、3速カウンタギヤ18に噛合する3速メインギヤ23と、2速カウンタギヤ19に噛合する2速メインギヤ24と、1速カウンタギヤ20に噛合する1速メインギヤ25と、リバースカウンタギヤ21にアイドルギヤ26を介して噛合するリバースメインギヤ27とが、夫々軸支されている。
【0017】
4速メインギヤ22の左右両側にはスプライン28、29が夫々固設されており、3速メインギヤ23の左方にはスプライン30が固設されており、2速メインギヤ24の右方にはスプライン31が固設されており、1速メインギヤ25の左方にはスプライン32が固設されており、リバースメインギヤ27の右方にはスプライン33が固設されている。また、メインシャフト10には、スプライン29、30の間に位置してスプライン34が固設され、スプライン31、32の間に位置してスプライン35が固設され、スプライン33の右方に位置してスプライン36が固設されている。
【0018】
スプライン13には、隣接するスプライン13、15(13、28)同士を噛合接続するか中央のスプライン13にのみ噛合するスリーブ37が設けられ、スプライン34には、隣接するスプライン34、29(34、30)同士を噛合接続するか中央のスプライン34にのみ噛合するスリーブ38が設けられ、スプライン35には、隣接するスプライン35、31(35、32)同士を噛合接続するか中央のスプライン35にのみ噛合するスリーブ39が設けられ、スプライン36には、隣接するスプライン33、36同士を噛合接続するかスプライン36にのみ噛合するスリーブ40が設けられている。
【0019】
スリーブ37には、通常のコーンシンクロ機構が設けられているが、スリーブ38、39、40には、コーンシンクロ機構が設けられていない。よって、スリーブ37で変速するときには、スリーブ37とスプライン15、28との回転が合ってなくとも変速できるが、スリーブ38、39、40で変速するときには、スリーブ38とスプライン29、30との回転が合っていないと変速できず、スリーブ39とスプライン31、32との回転が合っていないと変速できず、スリーブ40とスプライン33との回転が合っていないと変速できない。
【0020】
図8に示すように、メインシャフト10の右方端部には、遊星歯車機構41のサンギヤ42が固設されている。サンギヤ42の周りには、複数の遊星ギヤ43が配置されている。各遊星ギヤ43は、キャリヤ44によって纏めて軸支されている。これら遊星ギヤ43の外側には、リングギヤ45が配置されている。リングギヤ45にはスプライン46が固設され、ミッションケース部材47にはスプライン48が固設されている。キャリヤ44にはアウトプットシャフト11が固設され、アウトプットシャフト11にはスプライン49が固設されている。
【0021】
スプライン46、48、49には、隣接するいずれかのスプライン46、48(46、49)同士を噛合接続するスリーブ50が設けられている。スリーブ50には、通常のコーンシンクロ機構が設けられている。よって、スリーブ50で変速するときには、スリーブ50とスプライン46、48(46、49)との回転が合ってなくとも変速できる。なお、各スリーブ38、39、40にはコーンシンクロ機構を設けていないので、その分だけ変速機2の軸長を短くできる。
【0022】
また、各スリーブ37、38、39、40、50には、図示しないシフトフォークが係合され、コントロールユニットから指令を受けて作動するギヤシフトユニットによって、適宜軸方向に移動されるようになっている。例えば、スリーブ37がスプライン13上に位置するときには(ニュートラル位置)、インプットシャフト9の回転はインプットギヤ14に伝わらず、カウンタシャフト12、メインシャフト10およびアウトプットシャフト11は停止状態となる。
【0023】
スリーブ37がスプライン15、13上に移動されると、インプットシャフト9の回転がインプットギヤ14およびインプットカウンタギヤ16を介してカウンタシャフト12に増速されて伝わり、全てのカウンタギヤ16〜21およびメインギヤ22〜27が回転する。また、スリーブ37がスプライン13、28上に切換移動されると、インプットシャフト9の回転が4速メインギヤ22および4速カウンタギヤ17を介してカウンタシャフト12に減速されて伝わり、全てのカウンタギヤ16〜21およびメインギヤ22〜27が切換前より減速されて回転する。
【0024】
ここで、各スリーブ38、39、40が各スプライン34、35、36上の位置(ニュートラル位置)であると、各メインギヤ22〜27はメインシャフト10上を空回りするのみであり、メインシャフト10が回転することはないが、スリーブ39がスプライン35、32上に位置すると1速となり、メインシャフト10が1速相当で回転する。同様に、スリーブ39がスプライン35、31上に位置すると2速となり、スリーブ38がスプライン34、30上に位置すると3速となり、スリーブ38がスプライン34、29上に位置すると4速となり、夫々、メインシャフト10が2速相当、3速相当、4速相当で回転する。
【0025】
このとき、メインシャフト10の右方端部に固設されたサンギヤ42は、メインシャフト10と同速度で回転し、遊星ギヤ43およびリングギヤ45を回転させる。そして、スリーブ50がスプライン48、46上の位置のとき、サンギヤ42の回転数が遊星歯車機構41の所定の減速比で減速されてアウトプットシャフト11に伝達され、スリーブ50がスプライン46、49上の位置のとき、サンギヤ42の回転が直結状態でアウトプットシャフト11に伝達される。
【0026】
このように上記トランスミッション2は、図8に示すスプリット変速ギヤ機構51で2段変速され、その下流側のメイン変速ギヤ機構52で4段変速され、その下流側のレンジ変速ギヤ機構53で2段変速され、結局2×4×2=16段変速となる。オートクラッチ1は、上記トランスミッション2をギヤシフトユニットによって変速操作するとき、または車両の発進・停止時に、コントロールユニットから発せられる断接指令に基きクラッチアクチュエータを作動し、クラッチ3をその都度適宜断接するものである。
【0027】
さて、本実施形態においては、図8に示すように、各スリーブ37、38、39、40、50の位置を検出してギヤ段がニュートラル位置であることを検出するニュートラルスイッチ(図示せず)を有する。ニュートラルスイッチは、各スリーブ37、38、39、40、50を軸方向に移動させるシフトフォークの位置に基いて現在のギヤ段がニュートラル位置であるか否かを検出し、その検出結果をコントロールユニットに送るものである。
【0028】
ここでいうギヤ段がニュートラル位置とは、スリーブ37がスプライン13、15(又は13、28)上に位置され、スリーブ38がスプライン34上に位置され、スリーブ39がスプライン35上に位置され、スリーブ40がスプライン36上に位置され、スリーブ50がスプライン46、48(又は46、49)上に位置されている状態をいう。
【0029】
このようなニュートラルの状態で、クラッチ3を繋ぎエンジンEを仮想アクセルによって空吹しすると、各メインギヤ22〜27および各スプライン28〜33が回転される。これにより、シフトダウン時に、それら各スプライン28〜33の回転を、各スリーブ38〜40の回転と合わせる(シンクロさせる)べく高めることができる。
【0030】
すなわち、コントロールユニットは、変速時(シフトダウン時)に、一旦クラッチ3を切ってギヤをニュートラル位置にしてクラッチ3を繋ぎ、エンジンEを空吹しして変速すべきメインギヤ22〜27の回転を変速に用いるスリーブ38、39又は40の回転に合わせた後、再びクラッチ3を切って変速に用いる変速スリーブ38、39又は40を変速すべきメインギヤ22〜27のスプライン29〜33に噛合させる、というダブルクラッチ制御を有する。
【0031】
このように、コントロールユニットがダブルクラッチ制御を行い、変速すべきメインギヤ22〜27の回転を変速に用いるスリーブ38〜40の回転に合わせているので、上述したように本実施形態にかかる変速機2では各スリーブ38、39、40に一般的なコーンシンクロ機構を設けていないものの、スムーズに引っ掛かりなく変速できるのである。なお、各スリーブ38、39、40に、コーンシンクロ機構を設けてもよいことは勿論である。また、スリーブ37、50には、上述したようにコーンシンクロ機構を設けている。
【0032】
上記仮想アクセルは、上述のようにコントロールユニットからの指令を受け、シフトダウン時等に適宜エンジンEを空吹しするものである。他方、シフトアップ時には、変速すべきメインギヤ22〜27のスプライン28〜33の回転の方が、変速に用いるスリーブ38〜40の回転よりも高い場合が大半である。よって、カウンタシャフト12の端部でクラッチケース61b内にカウンタシャフトブレーキ58を設け、変速すべきメインギヤ22〜27のスプライン28〜33の回転を減速調節し、変速に用いるスリーブ38〜40の回転と合わせている。
【0033】
このようにカウンタシャフト12の回転数を調節するカウンタシャフトブレーキ58は、シフトアップ毎に作動されるため、耐焼付性・耐久性・信頼性を確保すべく、潤滑油が供給される湿式タイプが採用されている。かかるカウンタシャフトブレーキ58の潤滑装置60についての詳細を、図1乃至図7を用いて説明する。
【0034】
図1に示すように、この潤滑装置60は、カウンタシャフト12の端部に設けられたブレーキ58(カウンタシャフトブレーキ)と、ブレーキ58に隣接させてカウンタシャフト12の端部に設けられたギヤ16(インプットカウンタギヤ)と、静止時にインプットカウンタギヤ16の一部が浸漬されるミッションケース61内のオイル62と(図8参照)、インプットカウンタギヤ16の回転によって掻き上げられたオイル62をせき止めるリブ63と(図3参照)、リブ63によってせき止められたオイル62をカウンタシャフトブレーキ58に案内するオイル通路64とを備えている。
【0035】
ミッションケース61は、図8に示すように、スプリット変速ギヤ機構51およびメイン変速ギヤ機構52が収容されるメインケース61aと、クラッチ3およびカウンタシャフトブレーキ58が収容されるクラッチケース61bと、レンジ変速ギヤ機構53が収容されるレンジケース61cとからなる。オイル62は、メインケース61a内の底部に貯留されており、静止時(メインケース61a内の各ギヤの静止時)に図8に仮想線で示す油面62aとなっている。油面62aが傾いているのは、変速機2が車両に縦置きされ、エンジンE側が高くなるように傾斜されているからである。
【0036】
メインケース61aとクラッチケース61bとを仕切る隔壁65には、図1および図6に示すように、カウンタシャフト12の端部がローラベアリング66を介して軸支されている。隔壁65には、クラッチケース61b側に位置させて、カウンタシャフトブレーキ58を収容するためのブレーキケース67が取り付けられている。図1は図2の I-I線断面図であり、図6は図2の VI-VI線断面図である。
【0037】
図1に示すように、隔壁65には、メインケース61a内のオイル62をブレーキケース67内に取り込むためのオイル入口68が形成されている。オイル入口68には、そこを通過したオイル62をカウンタシャフトブレーキ58に案内すべく、ブレーキケース67に凹設成形されたオイル導入路69が、接続されている。これらオイル入口68およびオイル導入路69は、メインケース61a内のオイル62をカウンタシャフトブレーキ58に案内するオイル通路64を構成する。
【0038】
ブレーキケース67には、オイル通路64を通ってブレーキケース67内に取り込まれ各部(後述するフリクションプレート70やセパレータプレート71等)を潤滑し終わったオイル62をメインケース61a内に戻すためのオイル排出路72が、凹設成形されている。そして、隔壁65には、オイル排出路72を通過したオイル62をメインケース61a内に戻すオイル出口73が形成されている(図1〜図3参照)。
【0039】
ブレーキケース67内には、図1および図6に示すように、カウンタシャフト12の端部に固定されたハブ74が収容されている。ハブ74は、カウンタシャフト12の端部に取り付けられる円板部74aと、円板部74aに一体成形された円筒部74bとからなる。円筒部74bの外周面には、図2に示すようにスプライン76が形成されている。
【0040】
円筒部74bには、スプライン76の谷の部分に位置させて、ハブ74内方のオイル62をカウンタシャフト12の回転に伴う遠心力によって外方に飛び出させる第2通路77が形成されている(図7参照)。第2通路77は、図1および図7に示すように円筒部74bの軸方向に所定間隔を隔てて複数形成されており、図2に示すように円筒部74bの周方向に所定間隔を隔てて複数形成されている。
【0041】
円筒部74bのスプライン76には、図1および図7に示すように、複数のフリクションプレート70が軸方向に移動自在に且つ周方向に固定されて係合されている。これらフリクションプレート70の間には、セパレータプレート71が配置されている。セパレータプレート71は、図2および図6に示すように、ブレーキケース67の内周面に成形されたスプライン78に係合されており、軸方向に移動自在に且つ周方向に固定されている。
【0042】
図1および図6に示すように、ブレーキケース67には、セパレータプレート71とフリクションプレート70とを押し付けるための筒体状のピストン79が、軸方向にスライド自在に設けられている。ピストン79は、図5にも示すように、ブレーキケース67のボス部80にスライド自在に被嵌される内側円筒部79aと、内側円筒部79aに一体成形されたドーナッツ状の円板部79bと、円板部79bに一体成形されブレーキケース67の凹部81にスライド自在に嵌め込まれる外側円筒部79cとからなる。
【0043】
ピストン79の外側円筒部79cには、上記オイル通路64からのオイル62をピストン79およびハブ74の内方に導く第1通路82が形成されている。第1通路82は、外側円筒部79cの端部に、周方向に所定間隔を隔てて形成された複数の溝からなる。また、外側円筒部79cには、リング状のシール83を収容する円環状の溝84が形成されている。また、内側円筒部79aと円板部79bとの接続部には、エアチャンバ85を区画する凹部86が形成されている。エアチャンバ85には、ブレーキケース67にネジ込まれたエア供給ナット87から高圧エアが供給される。
【0044】
上記ボス部80には、シール88を収容する円環状の溝89が形成されていると共に、ピストン79のリターンバネ90を押さえるリテーナ91が取り付けられている。この構成によれば、エア供給ナット87からエアチャンバ85内に高圧エアが供給されると、図6および図7において、ピストン79が右方に移動してフリクションプレート70とセパレータプレート71とがストッパリング92に当るまで右方に移動され、それらプレートが相互に押し付けられる。これにより、制動力が発生し、カウンタシャフト12が減速される。
【0045】
そして、高圧エアの供給を中止してエアチャンバ85内からエアを抜くと、ピストン79がリターンバネ90により左方に移動されて元の位置にリセットされ、フリクションプレート70とセパレータプレート71とは押し付けから解放される。これにより、制動力がカットされ、カウンタシャフト12が減速されることはない。上記ストッパリング92は、図7に示すように、ブレーキケース67の内周面に凹設された溝93に嵌め込まれるスナップリングからなる。
【0046】
さて、図3に示すように、ミッションケース61のメインケース61a内には、メインケース61a内のギヤの静止時に一点鎖線で示す油面62aとなるオイル62が収容されている。図示するようにオイル62は、この状態でインプットカウンタギヤ16の一部を浸漬している。よって、この状態でインプットカウンタギヤ16が回転されると、当該ギヤ16によってオイル62が掻き上げられ、オイル62が二点鎖線62bで示すようにメインケース61aの内周面に張り付く。インプットカウンタギヤ16が回転するときには、メインケース61a内の全てのギヤが回転するからである。
【0047】
メインケース61aの内周面には、図3および図4に示すように、インプットカウンタギヤ16の回転によって掻き上げられたオイル62をせき止めるリブ63が設けられている。リブ63は、掻き上げられたオイル62をオイル入口68に案内できる位置に設けられており、オイル入口68の僅かに上方に斜めに設けられている。また、オイル入口68の近傍には、掻き上げられたオイル62を当該オイル入口68に案内する案内部材68aが設けられている。
【0048】
なお、オイル入口68は一点鎖線で示す静止時の油面62aよりも高い位置にあり、他方、オイル出口73は一点鎖線で示す静止時の油面62aよりも低い位置にある。また、リブ63の幅は、図4に示すように、インプットカウンタギヤ16の幅よりも広い。
【0049】
以上の構成からなる本実施形態の作用を述べる。
【0050】
図3および図8に示すように、ミッションケース61のメインケース61a内のオイル62は、メインケース61a内の各ギヤが静止状態のときには一点鎖線で示す油面62aとなっており、インプットカウンタギヤ16の一部を浸漬している。その後、メインケース61a内の各ギヤが回転すると、オイル62は、インプットカウンタギヤ16および他のカウンタギヤによって掻き上げられ、図3に二点鎖線62bで示すようにメインケース61aの内周面に張り付く。
【0051】
その後、オイル62は、図3および図4に示すように、メインケース61aの内周面に設けられたリブ63によってせき止められ、図1に示すように、その一部が案内部材68aに案内されてオイル入口68を通ってメインケース61a側からブレーキケース67内へ流れる。オイル入口68を通過したオイル62は、図1および図2に示すオイル導入路64を通り、ピストン79に形成された第1通路82(図5に示すように周方向に間隔を隔てて複数形成された第1通路82のうちオイル導入路69に臨む第1通路82)を通ってピストン及びスリーブ内に導かれる。
【0052】
このとき、オイル導入路69内のオイル62は、ハブ74はカウンタシャフト12の回転に伴って回転しているものの、ピストン79は回転していないので、静止状態のピストン79に形成された上記第1通路82を通って速やかにピストン79及びハブ74内に導かれる。すなわち、オイル導入路69内のオイル62は、当該オイル導入路69に臨むフリクションプレート70およびセパレータプレート71にも供給されるが、フリクションプレート70はハブ74と一体的に回転していて遠心力が発生しているため、第2通路77を通ってピストン79及びハブ74内に導かれることはない。
【0053】
ピストン79及びハブ74内に導かれたオイル62の殆どは、カウンタシャフト12の回転に伴って回転するハブ74による遠心力を受け、ハブ74に形成された第2通路77を通ってハブ74の外方に飛び出し、フリクションプレート70とセパレータプレート71との間を通って、ブレーキケース67の内周面(スプライン78)に至る(図7参照)。このとき、フリクションプレート70とセパレータプレート71とは、そこを通過するオイル62によって冷却・洗浄・潤滑される。
【0054】
ここで、本実施形態では、図7に示すように第2通路77を複数のフリクションプレート70で仕切られた全ての部屋にオイル62が供給されるように配置・成形したので、各フリクションプレート70およびセパレータプレート71にオイル62が供給されることになる。各部屋のオイル62は、フリクションプレート70およびセパレータプレート71によって仕切られているため、軸方向に行き来することはない。このため、本実施形態では、第2通路77の位置・大きさを図7のように設定し、各部屋にオイル62が供給されるようにしているのである。但し、必ずしもこのようになっていなくとも構わない。
【0055】
その後、遠心力によってフリクションプレート70とセパレータプレート71との間に飛び出たオイル62は、ハブ74の回転に伴って回転するフリクションプレート70に引き摺られてその周方向に移動し、図2に示すようにブレーキケース67に形成されたオイル排出路72に導かれる。図2において、矢印95はハブ74(カウンタシャフト12)の回転方向である。詳しくは、図1および図7において、フリクションプレート70とセパレータプレート71との相互押付けが解放されているとき即ちカウンタシャフトブレーキ58のOFF時には、第2通路77から飛び出たオイル62は、回転するフリクションプレート70によって引き摺られて周方向に移動され、各プレート70、71の間のスペース97を通ってオイル排出路72に導かれる。
【0056】
他方、フリクションプレート70とセパレータプレート71とが相互に押し付けられているとき即ちカウンタシャフトブレーキ58のON時には、第2通路77から飛び出たオイル62は、フリクションプレート70の回転が減速されているものの、ブレーキONによってフリクションプレート70が完全に回転停止されるわけではないので、図7に示すように、減速回転されるフリクションプレート70によってその先端部のスペース98のオイル62が引き摺られ、スペース98を通って周方向に移動され、オイル排出路72に導かれる。
【0057】
また、ピストン79及びハブ74内に導かれたオイル62は、上記第2通路77のみならず、図1に示すように、ピストン79に形成された第1通路82(図5に示すように周方向に間隔を隔てて複数形成された第1通路82のうちオイル排出路72に臨む第1通路82)を通って、ピストン79及びハブ74から外方に排出され、ブレーキケース67に形成されたオイル排出路72に導かれる。こうして種々のルートを通ってオイル排出路72に導かれたオイル62は、隔壁65に形成されたオイル出口73を通り、ブレーキケース67側からメインケース61a側に戻される。そして、再びギヤ16によって掻き上げられて循環する。
【0058】
オイル出口73は、図3に示すように、ギヤ16の静止時にはメインケース61a内の油面62a(一点鎖線)より低いものの、ギヤ16が回転されるとオイル62が二点鎖線62bで示すようにメインケース61aの内周面に張り付くため、油面より高くなる。このため、ブレーキケース67側からオイル出口73を通ってメインケース61a内に導かれたオイル62は、ギヤ16の回転中は重力によって二点鎖線62bで示す油面に落下し、メインケース61a内のオイル62によってせき止められることはない。また、ギヤ16の停止中は、そもそもカウンタシャフト12が回転停止しており、カウンタシャフトブレーキ58を掛ける必要がないので、問題とならない。
【0059】
本実施形態に係るカウンタシャフトブレーキ58の潤滑装置60よれば、インプットカウンタギヤ16をオイル62の掻き揚げ・圧送手段として利用し、そのギヤ16によって掻き揚げられたオイル62をリブ63でせき止めてメインケース61a側からブレーキケース67側へ導くようにしているので、専用のオイル圧送ポンプは不要であり、またカウンタブレーキ58を油没させる専用スペースも不要であるので、コンパクトで簡単な構造の潤滑装置を実現できる。
【0060】
なお、本実施形態では、図1および図6に示すように、カウンタシャフト12の軸芯に沿ってオイル通路99を形成し、図8に示すようにカウンタシャフト12の反対端部に設けたオイルポンプ100によって加圧されたオイル62の一部をカウンタシャフト12の中心に形成されたオイル通路99を介してピストン79およびハブ74に内方に導くようにしているが、このオイル通路99は無くても構わない。また、本発明は、図8に示す構造の変速機2に限定されるものではなく、通常の二軸式の4速または5速ミッション等に適用してもよい。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、コンパクトで簡単な構造のカウンタシャフトブレーキの潤滑装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すカウンタシャフトブレーキの潤滑装置の側断面図であり、図2の I-I線断面図である。
【図2】図1の II-II線断面図である。
【図3】図1の III-III線断面図である。
【図4】図3の IV-IV線断面図である。
【図5】ピストンの説明図であり、(a) は側断面図(a−a線断面図)、(b) は背面図、(c) はc矢示図である。
【図6】上記カウンタシャフトブレーキの潤滑装置の側断面図であり、図2の VI-VI線断面図である。
【図7】上記カウンタシャフトブレーキの要部拡大図である。
【図8】上記カウンタシャフトブレーキを備えた自動変速機の概要図である。
【符号の説明】
2 変速機
12 カウンタシャフト
16 ギヤ(インプットカウンタギヤ)
58 ブレーキ(カウンタシャフトブレーキ)
61a ミッションケース(メインケース)
62 オイル
63 リブ
64 オイル通路
70 フリクションプレート
71 セパレータプレート
74 スリーブ
77 第2通路
79 ピストン
82 第1通路

Claims (4)

  1. 変速機のカウンタシャフトの端部に設けられたブレーキと、該ブレーキに隣接させてカウンタシャフトの端部に設けられたギヤと、静止時に記ギヤの一部が浸漬されるミッションケース内のオイルと、記ギヤの回転によって掻き上げられた記オイルを前記ブレーキに案内するオイル通路とを備え、前記ブレーキは、ミッションケースに取り付けられたブレーキケース内に収容され、カウンタシャフトの端部に固定されたハブと、該ハブに軸方向に移動自在に且つ周方向に固定して取り付けられた複数のフリクションプレートと、各フリクションプレートに対向させて前記ブレーキケースに軸方向に移動自在に且つ周方向に固定して取り付けられた複数のセパレータプレートと、それらセパレータプレートとフリクションプレートとを押し付けるべく前記ブレーキケースに軸方向にスライド自在に設けられた筒体状のピストンとを有し、該ピストンに、前記オイル通路からのオイルを当該ピストンおよび前記ハブの内方に導く第1通路を形成し、前記ハブに、内方に導かれたオイルを前記フリクションプレートおよびセパレータプレートに供給するための第2通路を形成し、該第2通路を経由したオイルを前記ミッションケースに戻すオイル排出路が前記フリクションプレートおよびセパレータプレートよりも径方向外方に形成されると共に、前記第2通路から前記オイル排出路にかけてカウンタシャフトの回転に伴う遠心力によってオイルを供給することを特徴とするカウンタシャフトブレーキの潤滑装置。
  2. 前記ブレーキにオイルを案内する前記オイル通路のオイル入口が、少なくとも前記ギヤの回転中のオイル油面より高い位置に配置されている請求項1記載のカウンタシャフトブレーキの潤滑装置。
  3. 前記ブレーキからオイルを排出するオイル排出路のオイル出口が、前記ギヤの回転中のオイル油面より高い位置にあると共に、前記ギヤの停止中のオイル油面より低い位置に配置された請求項1又は2記載のカウンタシャフトブレーキの潤滑装置。
  4. 前記ブレーキが、ミッションケースのメインケースの外側のクラッチケース内に配置された請求項1乃至3の何れかに記載のカウンタシャフトブレーキの潤滑装置。
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