[基本原理]
まず、本発明の電磁流量計の説明に必要な物理現象について説明しておく。変化する磁場中を物体が移動する場合、電磁誘導によって2種類の電界、(a) 磁場の時間変化によって発生する電界E(i)=∂A/∂t 、(b) 磁場中を物体が動くことにより発生する電界E(v)=v×B が発生する。v×BはvとBの外積を示し、∂A/∂tはAの時間による偏微分を示す。v、B、Aはそれぞれ下記に対応しており、3次元(x、y、z)に方向をもつベクトルである(v:流速、B:磁束密度、A:ベクトルポテンシャル(磁束密度とはB=rotAの関係がある))。ただし、ここでの3次元ベクトルは複素平面上のベクトルとは意味が異なる。この2種類の電界によって、電位分布が流体中に発生し、この電位は電極によって検出することができる。
なお、磁場の方向と検出する電極の軸が平行になる場合には、電極軸に垂直な磁場成分が0となり、v×B成分も∂A/∂t成分も検出することができないので、以下の説明においてこの特殊な配置は除外されることを付け加えておく。
本発明は、電磁流量計の電極で検出される電極間起電力から∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルとの合成ベクトルを求めたとき、∂A/∂t成分のベクトルは磁場の時間変化のみに依存し、被測定流体の流速に無関係なベクトルであり、v×B成分のベクトルは被測定流体の流速に比例して大きさが変化するベクトルであることに着目している。本発明では、合成ベクトルの中から∂A/∂t成分のベクトルを抽出し、このベクトルにより、合成ベクトル中のv×B成分の平均流速Vにかかる係数(スパン)の変動要因を消去する。このスパン補正した複数の電極における出力に基づいて流速分布の影響を消去すれば、全てのスパンの変動要因が消去された出力を得ることができる。
また、この技術思想は次のように表現することができる。すなわち、測定管の円周方向に異なる角度で配置した複数の電極の出力を線形結合した合成ベクトルはv×B成分と∂A/∂t成分とからなる。この合成ベクトル中のv×B成分の平均流速にVにかかるスパンの変動要因が消去可能な∂A/∂t成分を抽出する。この∂A/∂t成分を用いて合成ベクトルを正規化すれば、流速分布の影響による変動も含めて、全てのスパンの変動要因が消去された出力を得ることができる。
次に、本発明の電磁流量計の第1の構成について説明する。図1は、第1の構成の原理を説明するためのブロック図である。図1の電磁流量計は、測定管1と、被測定流体に印加される磁場および測定管軸PAXの双方と直交し、かつ被測定流体と接触するように測定管1に対向配置され、前記磁場と被測定流体の流れとによって生じた起電力を検出する第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、測定管軸PAXと直交する、第1の電極2a,2bを含む平面をPLN1、測定管軸PAXと直交する、第2の電極2c,2dを含む平面をPLN2としたとき、平面PLN1を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加すると同時に、平面PLN2を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁コイル3とを有する。
第1の電極2a,2bは、励磁コイル3の軸を含む、測定管軸PAXの方向と垂直な平面PLNから例えば上流側にオフセット距離d1だけ離れた位置に配設され、第2の電極2c,2dは、平面PLNから第1の電極と同じく例えば上流側にオフセット距離d2だけ離れた位置に配設される。また、第1の電極2a,2bと第2の電極2c,2dは、図2に示すように、励磁コイル3の軸をY軸とし、測定管軸PAX及びY軸の双方と直交する軸をX軸としたとき、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1のX軸からの角度が例えば−φe1、電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2のX軸からの角度が例えばφe2となるように、測定管の円周方向の異なる位置に配設される。
励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B1と、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B2は、以下のように与えられるものとする。
B1=b1・cos(ω0・t−θ1) ・・・(27)
B2=b2・cos(ω0・t−θ2) ・・・(28)
但し、B1,B2は1つの励磁コイル3から発生しているので、b1とb2、θ1とθ2は互いに関係があり、独立変数ではない。式(27)、式(28)において、b1,b2はそれぞれ磁束密度B1,B2の振幅、ω0は角周波数、θ1は磁束密度B1とω0・tとの位相差、θ2は磁束密度B2とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B1を磁場B1とし、磁束密度B2を磁場B2とする。
このとき、平面PLN1内でX軸と直交する磁場成分(磁束密度)Ba1の大きさをba1、平面PLN2内でX軸と直交する磁場成分(磁束密度)Ba2の大きさをba2とすると、電極軸EAX1と直交する磁場成分の大きさb1と、電極軸EAX2と直交する磁場成分の大きさb2には、次式の関係が成立する。
b1=ba1・cos(−φe1)=ba1・cos(φe1) ・・・(29)
b2=ba2・cos(φe2) ・・・(30)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、励磁コイル3から発生する磁場BaのうちB1,B2を次式のように微分する。
dB1/dt=ω0・cos(ω0・t)・b1・{sin(θ1)}
+ω0・sin(ω0・t)・b1・{−cos(θ1)}
・・・(31)
dB2/dt=ω0・cos(ω0・t)・b2・{sin(θ2)}
+ω0・sin(ω0・t)・b2・{−cos(θ2)}
・・・(32)
以下、渦電流や起電力の挙動を説明するために、図3に示す第1の電極軸EAX1及び測定管軸PAXを含む平面と、図4に示す電極軸EAX2及び測定管軸PAXを含む平面の2つの平面を用いる。
被測定流体の流量が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Baの変化による渦電流Iは、図5に示すような向きとなる。図5は図3に対応する図である。したがって、第1の電極軸EAX1と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Baの変化によって発生する、流速と無関係な第1の電極間起電力E1は、図5に示すような向きとなる。この向きをマイナス方向とする。また、電極軸EAX2と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Baの変化によって発生する、流速と無関係な第2の電極間起電力E2は、図6に示すような向きとなる。図6は図4に対応する図である。
このとき、第1の電極間起電力E1と第2の電極間起電力E2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場の時間微分(−dB1/dt,−dB2/dt)に比例係数(rk1,rk2)をかけ、位相差θ1,θ2をそれぞれθ1+θ00、θ2+θ00で置き換えたものとなる(rk1,rk2,θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E1=rk1・ω0・cos(ω0・t)・b1・{−sin(θ1+θ00)}
+rk1・ω0・sin(ω0・t)・b1・{cos(θ1+θ00)}
・・・(33)
E2=rk2・ω0・cos(ω0・t)・b2・{−sin(θ2+θ00)}
+rk2・ω0・sin(ω0・t)・b2・{cos(θ2+θ00)}
・・・(34)
ここで、式(33)の第1の電極間起電力E1をω0・tを基準として複素座標平面に写像したときの実軸成分E1x及び虚軸成分E1yは次式で表される。
E1x=rk1・ω0・b1・{cos(π/2+θ1+θ00)} ・・・(35)
E1y=rk1・ω0・b1・{sin(π/2+θ1+θ00)} ・・・(36)
また、式(34)の第2の電極間起電力E2をω0・tを基準として複素座標平面に写像したときの実軸成分E2x及び虚軸成分E2yは次式で表される。
E2x=rk2・ω0・b2・{cos(π/2+θ2+θ00)} ・・・(37)
E2y=rk2・ω0・b2・{sin(π/2+θ2+θ00)} ・・・(38)
さらに、式(35)、式(36)に示した実軸成分E1x、虚軸成分E1yを次式に示す複素ベクトルE1cに変換する。
E1c=E1x+j・E1y
=rk1・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}
・・・(39)
同様に、式(37)、式(38)に示した実軸成分E2x、虚軸成分E2yを次式に示す複素ベクトルE2cに変換する。
E2c=E2x+j・E2y
=rk2・ω0・b2・exp{j・(π/2+θ2+θ00)}
・・・(40)
ここで、前述の比例係数rk1及び角度θ00は、次の複素ベクトルkc1で表すことができる。
kc1=rk1・cos(θ00)+j・rk1・sin(θ00)
=rk1・exp(j・θ00) ・・・(41)
式(41)において、rk1はベクトルkc1の大きさ、θ00は実軸に対するベクトルkc1の角度である。
同様に、前述の比例係数rk2及び角度θ00は、次の複素ベクトルkc2で表すことができる。
kc2=rk2・cos(θ00)+j・rk2・sin(θ00)
=rk2・exp(j・θ00) ・・・(42)
式(42)において、rk2はベクトルkc2の大きさ、θ00は実軸に対するベクトルkc2の角度である。
次に、被測定流体の流速に起因する電極間起電力について説明する。被測定流体の平均流速の大きさがV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流Iに加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Baが発生するため、流速ベクトルvと磁場Baによる渦電流Ivは、図7、図8に示すような向きとなる。図7は図3に対応する図であり、図8は図4に対応する図である。したがって、流速ベクトルvと磁場Baによって発生する第1の電極間起電力Ev1と、流速ベクトルvと磁場Baによって発生する第2の電極間起電力Ev2は、同じ向きとなる。
このとき、第1の電極間起電力Ev1と第2の電極間起電力Ev2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場(B1,B2)に比例係数(rkv1,rkv2)をかけ、位相差θ1,θ2をそれぞれθ1+θ01、θ2+θ01で置き換えたものとなる(rkv1,rkv2,θ01は、流速の大きさとその分布、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev1=rkv1・cos(ω0・t)・b1・cos(θ1+θ01)
+rkv1・sin(ω0・t)・b1・sin(θ1+θ01)
・・・(43)
Ev2=rkv2・cos(ω0・t)・b2・cos(θ2+θ01)
+rkv2・sin(ω0・t)・b2・sin(θ2+θ01)
・・・(44)
ここで、式(43)の第1の電極間起電力Ev1をω0・tを基準として複素座標平面に写像したときの実軸成分Ev1x及び虚軸成分Ev1yは次式で表される。
Ev1x=rkv1・b1・{cos(θ1+θ01)} ・・・(45)
Ev1y=rkv1・b1・{sin(θ1+θ01)} ・・・(46)
同様に、式(44)の第2の電極間起電力Ev2をω0・tを基準として複素座標平面に写像したときの実軸成分Ev2x及び虚軸成分E2yは次式で表される。
Ev2x=rkv2・b2・{cos(θ2+θ01)} ・・・(47)
Ev2y=rkv2・b2・{sin(θ2+θ01)} ・・・(48)
さらに、式(45)、式(46)に示した実軸成分Ev1x、虚軸成分Ev1yを次式に示す複素ベクトルEv1cに変換する。
Ev1c=Ev1x+j・Ev1y
=rkv1・b1・exp{j・(θ1+θ01)} ・・・(49)
同様に、式(47)、式(48)に示した実軸成分Ev2x、虚軸成分Ev2yを次式に示す複素ベクトルEv2cに変換する。
Ev2c=E2x+j・E2y
=rkv1・b2・exp{j・(θ2+θ01)} ・・・(50)
また、前述の比例係数rkv1,rkv2及び角度θ01は、次の複素ベクトルkv1c,kv2cで表すことができる。
kv1c=rkv1・cos(θ01)+j・rkv・sin(θ01)
=rkv1・exp(j・θ01) ・・・(51)
kv2c=rkv2・cos(θ01)+j・rkv・sin(θ01)
=rkv2・exp(j・θ01) ・・・(52)
式(51)、式(52)において、rkv1はベクトルkv1cの大きさ、rkv2はベクトルkv2cの大きさ、θ01は実軸に対するベクトルkv1cの角度である。
ここで、rkv1は、平均流速の大きさVと、電極2a,2bで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ1とを比例係数rk1にかけたものに相当する。また、rkv2は、平均流速の大きさVと、電極2c,2dで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ2とを比例係数rk2にかけたものに相当する。すなわち、次式が成立する。
rkv1=γ1・rk1・V ・・・(53)
rkv2=γ2・rk2・V ・・・(54)
図5〜図8で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、電極2a,2b間の第1の電極間起電力Ea1cは、式(49)に式(53)を適用して、式(39)に加えれば次式で表される。
Ea1c=rk1・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}
+γ1・rk1・V・b1・exp{j・(θ1+θ01)} ・・(55)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、電極2c,2d間の第2の電極間起電力Ea2cは、式(50)に式(54)を適用して、式(40)に加えれば次式で表される。
Ea2c=rk2・ω0・b2・exp{j・(π/2+θ2+θ00)}
+γ2・rk2・V・b2・exp{j・(θ2+θ01)} ・・(56)
ここで、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(55)の第1の電極間起電力Ea1cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをE101とすると第1の電極間起電力E101は次式で表される。
E101=rk1・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}
+γ1・rk1・V・b1・exp{j・(θ1+θ00+Δθ01)}
・・・(57)
また、式(56)の第2の電極間起電力Ea2cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをE102とすると、第2の電極間起電力E102は次式で表される。
E102=rk2・ω0・b2・exp{j・(π/2+θ2+θ00)}
+γ2・rk2・V・b2・exp{j・(θ2+θ00+Δθ01)}
・・・(58)
式(57)に示した第1の電極間起電力E101の合成ベクトル中の∂A/∂t成分を、∂A/∂t成分における定数項Ka=exp(j・π/2)と、磁場に関連する項B1c=b1・exp(j・θ1)と、流体の特性や状態に関係する項C1=rk1・exp(j・θ00)と、角周波数ω0との積Va101で表すと、式(57)の右辺第1項は式(59)で表される。
Va101=Ka・B1c・C1・ω0 ・・・(59)
同様に、式(57)の合成ベクトル中のv×B成分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ1と、v×B成分における定数項Kb=exp(j・Δθ01)と、磁場に関連する項B1c=b1・exp(j・θ1)と、流体の特性や状態に関係する項C1=rk1・exp(j・θ00)と、平均流速の大きさVとの積Vb101で表すと、式(57)の右辺第2項は式(60)で表される。
Vb101=γ1・Kb・B1c・C1・V ・・・(60)
また、式(58)に示した第2の電極間起電力E102の合成ベクトル中の∂A/∂t成分を、∂A/∂t成分における定数項Ka=exp(j・π/2)と、磁場に関連する項B2c=b2・exp(j・θ2)と、流体の特性や状態に関係する項C2=rk2・exp(j・θ00)と、角周波数ω0との積Va102で表すと、式(58)の右辺第1項は式(61)で表される。
Va102=Ka・B2c・C2・ω0 ・・・(61)
同様に、式(58)の合成ベクトル中のv×B成分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ2と、v×B成分における定数項Kb=exp(j・Δθ01)と、磁場に関連する項B2c=b2・exp(j・θ2)と、流体の特性や状態に関係する項C2=rk2・exp(j・θ00)と、平均流速の大きさVとの積Vb102で表すと、式(58)の右辺第2項は式(62)で表される。
Vb102=γ2・Kb・B2c・C2・V ・・・(62)
電極2a,2bで検出される合成ベクトルVa101+Vb101の中からVa101のみを抽出し、それに基づいて合成ベクトルVa101+Vb101中のv×B成分を正規化すると共に、電極2c,2dで検出される合成ベクトルVa102+Vb102の中からVa102のみを抽出し、それに基づいて合成ベクトルVa102+Vb102中のv×B成分を正規化すれば、流速分布のみに影響される2つの正規化された合成ベクトルを得ることができる。この2つの合成ベクトルを基に流速分布の影響を補正すれば、流速分布の影響も含めてスパンの変動要因が除去できることになる。この方法については、後ほど一般化して説明する。
次に、本発明の電磁流量計の第2の構成について説明する。第2の構成は、第2の電極を、励磁コイルの軸を含む平面を挟んで第1の電極と逆側に配置したものである。このような第2の構成の場合、第1の電極で検出されるv×B成分と、第2の電極で検出されるv×B成分とは同じ方向になるが、第1の電極で検出される∂A/∂t成分と第2の電極で検出される∂A/∂t成分とは逆向きになる。この現象を利用すれば、∂A/∂t成分を効率的に取り出すことができる。
図9は、第2の構成の原理を説明するためのブロック図である。図9の電磁流量計は、測定管1と、被測定流体に印加される磁場および測定管軸PAXの双方と直交し、かつ被測定流体と接触するように測定管1に対向配置され、前記磁場と被測定流体の流れとによって生じた起電力を検出する第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、測定管軸PAXと直交する、第1の電極2a,2bを含む平面をPLN1、測定管軸PAXと直交する、第2の電極2c,2dを含む平面をPLN2としたとき、平面PLN1を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加すると同時に、平面PLN2を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁コイル3とを有する。
第1の電極2a,2bは、励磁コイル3の軸を含む、測定管軸PAXの方向と垂直な平面PLNから例えば上流側にオフセット距離d3だけ離れた位置に配設され、第2の電極2c,2dは、平面PLNから例えば下流側にオフセット距離d4だけ離れた位置に、平面PLNを挟んで第1の電極2a,2bと対向するように配設される。また、第1の電極2a,2bと第2の電極2c,2dは、図10に示すように、励磁コイル3の軸をY軸とし、測定管軸PAX及びY軸の双方と直交する軸をX軸としたとき、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1のX軸からの角度が例えば−φe3、電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2のX軸からの角度が例えばφe4となるように、測定管1の円周方向の異なる位置に配設される。
励磁コイル3から発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B3と、励磁コイル3から発生する磁場Bbのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B4は、以下のように与えられるものとする。
B3=b3・cos(ω0・t−θ3) ・・・(63)
B4=b4・cos(ω0・t−θ4) ・・・(64)
但し、B3,B4は1つの励磁コイル3から発生しているので、b3とb4、θ3とθ4は互いに関係があり、独立変数ではない。式(63)、式(64)において、b3,b4はそれぞれ磁束密度B3,B4の振幅、ω0は角周波数、θ3は磁束密度B3とω0・tとの位相差、θ4は磁束密度B4とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B3を磁場B3とし、磁束密度B4を磁場B4とする。
このとき、平面PLN1内でX軸と直交する磁場成分(磁束密度)Bb3の大きさをbb3、平面PLN2内でX軸と直交する磁場成分(磁束密度)Bb4の大きさをbb4とすると、電極軸EAX1と直交する磁場成分の大きさb3と、電極軸EAX2と直交する磁場成分の大きさb4には、次式の関係が成立する。
b3=bb3・cos(−φe3)=bb3・cos(φe3) ・・・(65)
b4=bb4・cos(φe4) ・・・(66)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、励磁コイル3から発生する磁場BbのうちB3,B4を次式のように微分する。
dB3/dt=ω0・cos(ω0・t)・b3・{sin(θ3)}
+ω0・sin(ω0・t)・b3・{−cos(θ3)}
・・・(67)
dB4/dt=ω0・cos(ω0・t)・b4・{sin(θ4)}
+ω0・sin(ω0・t)・b4・{−cos(θ4)}
・・・(68)
以下、渦電流や起電力の挙動を説明するために、図11に示す電極軸EAX1及び測定管軸PAXを含む平面と、図12に示す電極軸EAX2及び測定管軸PAXを含む平面の2つの平面を用いる。
被測定流体の流量が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Bbの変化による渦電流Iは、図13に示すような向きとなる。図13は図11に対応する図である。したがって、電極軸EAX1と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な第1の電極間起電力E1は、図13に示すような向きとなる。この向きをマイナス方向とする。また、電極軸EAX2と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な第2の電極間起電力E2は図14に示すようにE1と逆向きとなる。図14は図12に対応する図である。
このとき、第1の電極間起電力E1と第2の電極間起電力E2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場の時間微分(−dB3/dt,dB4/dt)に比例係数rkをかけ、位相差θ3,θ4をそれぞれθ3+θ00、θ4+θ00で置き換えたものとなる(rk,θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。なお、境界条件(例えば、測定管1の上流側の端面から電極2a,2bまでの距離と測定管1の下流側の端面から電極2c,2dまでの距離など)を等しくしておけば、電極2a,2bと電極2c,2dにおいてrkは等しくなる。
E1=rk・ω0・cos(ω0・t)・b3・{−sin(θ3+θ00)}
+rk・ω0・sin(ω0・t)・b3・{cos(θ3+θ00)}
・・・(69)
E2=rk・ω0・cos(ω0・t)・b4・{sin(θ4+θ00)}
+rk・ω0・sin(ω0・t)・b4・{−cos(θ4+θ00)}
・・・(70)
ここで、前述の比例係数rk及び角度θ00は、次の複素ベクトルkcで表すことができる。
kc=rk・exp(j・θ00) ・・・(71)
式(71)において、rkはベクトルkcの大きさ、θ00は実軸に対するベクトルkcの角度である。
次に、被測定流体の流速に起因する電極間起電力について説明する。被測定流体の平均流速の大きさがV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流Iに加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Bbが発生するため、流速ベクトルvと磁場Bbによる渦電流Ivは、図15、図16に示すような向きとなる。図15は図11に対応する図であり、図16は図12に対応する図である。したがって、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する第1の電極間起電力Ev1と、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する第2の電極間起電力Ev2は、同じ向きとなる。
このとき、第1の電極間起電力Ev1と第2の電極間起電力Ev2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場(B3,B4)に比例係数(rkv3,rkv4)をかけ、位相差θ3,θ4をそれぞれθ3+θ01、θ4+θ01で置き換えたものとなる(rkv3,rkv4,θ01は、平均流速の大きさとその分布、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev1=rkv3・cos(ω0・t)・b3・cos(θ3+θ01)
+rkv3・sin(ω0・t)・b3・sin(θ3+θ01)
・・・(72)
Ev2=rkv4・cos(ω0・t)・b4・cos(θ4+θ01)
+rkv4・sin(ω0・t)・b4・sin(θ4+θ01)
・・・(73)
ここで、前述の比例係数rkv3,rkv4及び角度θ01は、次の複素ベクトルkv3c,kv4cで表すことができる。
kv3c=rkv3・exp(j・θ01) ・・・(74)
kv4c=rkv4・exp(j・θ01) ・・・(75)
式(74)、式(75)において、rkv3はベクトルkv3cの大きさ、rkv4はベクトルkv4cの大きさ、θ01は実軸に対するベクトルkv3c,kv4cの角度である。
rkv3は、平均流速の大きさVと、電極2a,2bで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ3とを式(71)の比例係数rkにかけたものに相当する。また、rkv4は、平均流速の大きさVと、電極2c,2dで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ4とを比例係数rkにかけたものに相当する。すなわち、式(53)、式(54)に対応して次式が成立する。
rkv3=γ3・rk・V ・・・(76)
rkv4=γ4・rk・V ・・・(77)
図13〜図16で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、電極2a,2b間の第1の電極間起電力Ea3cは、式(55)に対応して次式で表される。
Ea3c=rk・ω0・b3・exp{j・(π/2+θ3+θ00)}
+γ3・rk・V・b3・exp{j・(θ3+θ01)} ・・・(78)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、電極2c,2d間の第2の電極間起電力Ea4cは、式(56)に対応して次式で表される。
Ea4c=rk・ω0・b4・exp{j・(−π/2+θ4+θ00)}
+γ4・rk・V・b4・exp{j・(θ4+θ01)} ・・・(79)
ここで、ω0・tに対する磁場B3の位相遅れθ3とω0・tに対する磁場B4の位相遅れθ4との関係をθ4=θ3+Δθ4とし、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(78)の第1の電極間起電力Ea3cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをE201とすると、第1の電極間起電力E201は次式で表される。
E201=rk・ω0・b3・exp{j・(π/2+θ3+θ00)}
+γ3・rk・V・b3・exp{j・(θ3+θ00+Δθ01)}
・・・(80)
また、式(79)の第2の電極間起電力Ea4cにθ4=θ3+Δθ4、θ01=θ00+Δθ01を代入したものをE202とすると、第2の電極間起電力E202は次式で表される。
E202=rk・ω0・b4・exp{j・(−π/2+θ3+Δθ4+θ00)}
+γ4・rk・V・b4
・exp{j・(θ3+Δθ4+θ00+Δθ01)} ・・・(81)
電極間起電力E201とE202との和をE20sとすれば、起電力和E20sは次式で表される。
E20s=E201+E202
=rk・exp{j・(θ3+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b3−b4・exp(j・Δθ4)}・ω0
+rk・exp{j・(θ3+θ00)}
・exp(j・Δθ01)
・{γ3・b3+γ4・b4・exp(j・Δθ4)}・V ・・(82)
電極間起電力E201とE202との差をE20dとすれば、起電力差E20dは次式で表される。
E20d=E201−E202
=rk・exp{j・(θ3+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b3+b4・exp(j・Δθ4)}・ω0
+rk・exp{j・(θ3+θ00)}
・exp(j・Δθ01)
・{γ3・b3−γ4・b4・exp(j・Δθ4)}・V ・・(83)
電極2a,2bで検出される電極間起電力と電極2c,2dで検出される電極間起電力との起電力和の中の∂A/∂t成分は式(82)の右辺第1項で表され、起電力和の中のv×B成分は式(82)の右辺第2項で表される。電極2a,2bで検出される電極間起電力と電極2c,2dで検出される電極間起電力との起電力差の中の∂A/∂t成分は式(83)の右辺第1項で表され、起電力差の中のv×B成分は式(83)の右辺第2項で表される。
ここで、電極2a,2bを含む平面PLN1から励磁コイル3までの距離d3と電極2c,2dを含む平面PLN2から励磁コイル3までの距離d4とが略等しいとし(d3≒d4)、また電極軸EAX1のX軸からの角度φe3と電極軸EAX2のX軸からの角度φe4とが略等しいとすると、b3≒b4、Δθ4≒0になる。この場合、式(82)、式(83)は以下のようになる。
E20s≒rk・exp{j・(θ3+θ00)}
・{b3・(γ3+γ4)・V・exp(j・Δθ01)} ・・(84)
E20d≒rk・exp{j・(θ3+θ00)}
・{2・b3・ω0・exp(j・π/2)} ・・・(85)
すなわち、起電力和E20sはほぼv×B成分の起電力のみとなり、起電力差E20dはほぼ∂A/∂t成分の起電力のみとなるので、∂A/∂t成分の抽出やv×B成分の抽出、および正規化演算の際の演算誤差を小さくすることができる。この点が、第2の構成と第1の構成の技術的な意義における相違点である。
式(80)に示した第1の電極間起電力E201の合成ベクトル中の∂A/∂t成分を、∂A/∂t成分における定数項Ka=exp(j・π/2)と、磁場に関連する項B3c=b3・exp(j・θ3)と、流体の特性や状態に関係する項C=rk・exp(j・θ00)と、角周波数ω0との積Va201で表すと、式(80)の右辺第1項は式(86)で表される。
Va201=Ka・B3c・C・ω0 ・・・(86)
同様に、式(80)の合成ベクトル中のv×B成分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ3と、v×B成分における定数項Kb=exp(j・Δθ01)と、磁場に関連する項B1c=b3・exp(j・θ3)と、流体の特性や状態に関係する項C=rk・exp(j・θ00)と、平均流速の大きさVとの積Vb201で表すと、式(80)の右辺第2項は式(87)で表される。
Vb201=γ3・Kb・B3c・C・V ・・・(87)
また、式(81)に示した第2の電極間起電力E202の合成ベクトル中の∂A/∂t成分を、∂A/∂t成分における定数項−Ka=exp{j・(−π/2)}と、磁場に関連する項B4c=b4・exp{j・(θ3+Δθ4)}と、流体の特性や状態に関係する項C=rk・exp(j・θ00)と、角周波数ω0との積Va202で表すと、式(81)の右辺第1項は式(88)で表される。
Va202=−Ka・B4c・C・ω0 ・・・(88)
第1の電極間起電力E201と第2の電極間起電力E202との差をとる場合は、(E201−E202)となることを考慮し、式(88)のVa202の符号を反転させたものをVa202Rとして(Va202R=−Va202)、式(89)のように定義しておく。
Va202R=Ka・B4c・C・ω0 ・・・(89)
式(81)の合成ベクトル中のv×B成分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ4と、v×B成分における定数項Kb=exp(j・Δθ01)と、磁場に関連する項B4c=b4・exp{j・(θ3+Δθ4)}と、流体の特性や状態に関係する項C=rk・exp(j・θ00)と、平均流速の大きさVとの積Vb202で表すと、式(81)の右辺第2項は式(90)で表される。
Vb202=γ4・Kb・B4c・C・V ・・・(90)
第1の電極間起電力E201と第2の電極間起電力E202との差をとる場合は、(E201−E202)となることを考慮し、式(90)のVb202の符号を反転させたものをVb202Rとして(Vb202R=−Vb202)、式(91)のように定義しておく。
Vb202R=−γ4・Kb・B4c・C・V ・・・(91)
式(82)、式(86)、式(87)、式(88)、式(90)より第1の電極間起電力E201と第2の電極間起電力E202との和E20s中の∂A/∂t成分Va20sは、次式で表される。
Va20s=Va201+Va202
=Ka・(B3c−B4c)・C・ω0 ・・・(92)
また、起電力和E20s中のv×B成分Vb20sは、次式で表される。
Vb20s=Vb201+Vb202
=Kb・(γ3・B3c+γ4・B4c)・C・V ・・・(93)
式(83)、式(86)、式(87)、式(89)、式(91)より第1の電極間起電力E201と第2の電極間起電力E202との差E20d中の∂A/∂t成分Va20dは、次式で表される。
Va20d=Va201+Va202R
=Ka・(B3c+B4c)・C・ω0 ・・・(94)
また、起電力差E20d中のv×B成分Vb20dは、次式で表される。
Vb20d=Vb201+Vb202R
=Kb・(γ3・B3c−γ4・B4c)・C・V ・・・(95)
電極2a,2bで検出される合成ベクトルと電極2c,2dで検出される合成ベクトルとの差である起電力差の合成ベクトルVa20d+Vb20dの中からVa20dのみを抽出し、それに基づいて起電力和の合成ベクトルVa20s+Vb20sの中のv×B成分を正規化すれば、流速分布の影響も含めてスパンの変動要因が除去できることになる。この方法については、後ほど一般化して説明する。
次に、本発明の電磁流量計の第3の構成について説明する。第3の構成は、前記第1の構成に対して第2の励磁コイルを、電極を含む平面を挟んで第1の励磁コイルと逆側に追加したものである。電極で検出される、第1の励磁コイルから発生する磁場及び流速に起因するv×B成分と、第2の励磁コイルから発生する磁場及び流速に起因するv×B成分とが同じ方向を向く場合、第1の励磁コイルの磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と第2の励磁コイルの磁場の変化に起因する∂A/∂t成分とは逆向きになる。この現象を利用すれば、∂A/∂t成分を効率的に取り出すことができる。
図17は、第3の構成の原理を説明するためのブロック図である。図17の電磁流量計は、測定管1と、被測定流体に印加される磁場および測定管軸PAXの双方と直交し、かつ被測定流体と接触するように測定管1に対向配置され、前記磁場と被測定流体の流れとによって生じた起電力を検出する第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、測定管軸PAXと直交する、第1の電極2a,2bを含む平面をPLN1、測定管軸PAXと直交する、第2の電極2c,2dを含む平面をPLN2としたとき、平面PLN1を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加すると同時に、平面PLN2を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁コイル3a,3bとを有する。
第1の励磁コイル3aは、平面PLN1から例えば下流側にオフセット距離d1だけ離れ、かつ平面PLN2からオフセット距離d2だけ離れた位置に配設される。第2の励磁コイル3bは、平面PLN1から例えば上流側にオフセット距離d5だけ離れ、かつ平面PLN2からオフセット距離d6だけ離れた位置に、平面PLN1,平面PLN2を挟んで第1の励磁コイル3aと対向するように配設される。また、第1の構成と同様に、第1の電極2a,2bと第2の電極2c,2dは、図18に示すように、励磁コイル3a,3bの軸をY軸とし、測定管軸PAX及びY軸の双方と直交する軸をX軸としたとき、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1のX軸からの角度が例えば−φe1、電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2のX軸からの角度が例えばφe2となるように、測定管1の円周方向の異なる位置に配設される。
励磁コイル3aから発生する磁場Baのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B1と、励磁コイル3aから発生する磁場Baのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B2は、第1の構成と同じく式(27)、式(28)で与えられるものとする。
また、励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B5と、励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B6は、以下のように与えられるものとする。
B5=b5・cos(ω0・t−θ5) ・・・(96)
B6=b6・cos(ω0・t−θ6) ・・・(97)
但し、B5,B6は1つの励磁コイル3bから発生しているので、b5とb6、θ5とθ6は互いに関係があり、独立変数ではない。式(96)、式(97)において、b5,b6はそれぞれ磁束密度B5,B6の振幅、ω0は角周波数、θ5は磁束密度B5とω0・tとの位相差、θ6は磁束密度B6とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B5を磁場B5とし、磁束密度B6を磁場B6とする。
このとき、平面PLN1内でX軸と直交する磁場成分(磁束密度)Bcの大きさをbc5、平面PLN2内でX軸と直交する磁場成分(磁束密度)Bcの大きさをbc6とすると、電極軸EAX1と直交する磁場成分の大きさb5と、電極軸EAX2と直交する磁場成分の大きさb6には、次式の関係が成立する。
b5=bc5・cos(−φe1)=bc5・cos(φe1) ・・・(98)
b6=bc6・cos(φe2) ・・・(99)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、励磁コイル3bから発生する磁場BcのうちB5,B6を次式のように微分する。
dB5/dt=ω0・cos(ω0・t)・b5・{sin(θ5)}
+ω0・sin(ω0・t)・b5・{−cos(θ5)}
・・・(100)
dB6/dt=ω0・cos(ω0・t)・b6・{sin(θ6)}
+ω0・sin(ω0・t)・b6・{−cos(θ6)}
・・・(101)
以下、渦電流や起電力の挙動を説明するために、図19に示す電極軸EAX1及び測定管軸PAXを含む平面と、図20に示す電極軸EAX2及び測定管軸PAXを含む平面の2つの平面を用いる。
被測定流体の流量が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Baの変化による渦電流Ia、及び磁場Bcの変化による渦電流Icは、図21に示すような向きとなる。図21は図19に対応する図である。したがって、電極軸EAX1と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Baの変化によって発生する、流速と無関係な第1の電極間起電力Ea1と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な第1の電極間起電力Ec1とは、図21に示すように逆向きとなる。
また、電極軸EAX2と測定管軸PAXとを含む平面内においても、磁場Baの変化によって発生する、流速と無関係な第2の電極間起電力Ea2と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な第2の電極間起電力Ec2とは、図22に示すように逆向きとなる。図22は図20に対応する図である。
このとき、磁場Bcによる電極間起電力Ec1とEc2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場の時間微分(dB5/dt,dB6/dt)に第1の構成と同じ比例係数(rk1,rk2)をかけ、位相差θ5,θ6をそれぞれθ5+θ00、θ6+θ00で置き換えたものとなる(rk1,rk2,θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ec1=rk1・ω0・cos(ω0・t)・b5・{sin(θ5+θ00)}
+rk1・ω0・sin(ω0・t)・b5・{−cos(θ5+θ00)}
・・・(102)
Ec2=rk2・ω0・cos(ω0・t)・b6・{sin(θ6+θ00)}
+rk2・ω0・sin(ω0・t)・b6・{−cos(θ6+θ00)}
・・・(103)
ここで、式(102)の電極間起電力Ec1、式(103)の電極間起電力Ec2をω0・tを基準として複素座標平面に写像したものをそれぞれEc1c,Ec2cとすると、次式で表される。
Ec1c=rk1・ω0・b5・exp{j・(−π/2+θ5+θ00)}
・・・(104)
Ec2c=rk2・ω0・b6・exp{j・(−π/2+θ6+θ00)}
・・・(105)
また、磁場Baによる電極間起電力Ea1,Ea2をω0・tを基準として複素座標平面に写像したものをそれぞれEa1c,Ea2cとすると、次式で表される。
Ea1c=rk1・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}
・・・(106)
Ea2c=rk2・ω0・b2・exp{j・(π/2+θ2+θ00)}
・・・(107)
磁場Baの変化による起電力Ea1cと磁場Bcの変化による起電力Ec1cとを合わせた第1の電極間起電力E1cは、式(104)と式(106)から次式で表される。
E1c=Ea1c+Ec1c
=rk1・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}
+rk1・ω0・b5・exp{j・(−π/2+θ5+θ00)}
・・・(108)
また、磁場Baの変化による起電力Ea2cと磁場Bcの変化による起電力Ec2cとを合わせた第2の電極間起電力E2cは、式(105)と式(107)から次式で表される。
E2c=Ea2c+Ec2c
=rk2・ω0・b2・exp{j・(π/2+θ2+θ00)}
+rk2・ω0・b6・exp{j・(−π/2+θ6+θ00)}
・・・(109)
次に、被測定流体の流速に起因する電極間起電力について説明する。被測定流体の平均流速の大きさがV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流Ia,Icに加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Ba,v×Bcが発生するため、流速ベクトルvと磁場Baによる渦電流Iva及び流速ベクトルvと磁場Bcによる渦電流Ivcは、図23、図24に示すような向きとなる。図23は図19に対応する図であり、図24は図20に対応する図である。したがって、流速ベクトルvと磁場Baによって発生する第1の電極間起電力Eva1と流速ベクトルvと磁場Baによって発生する第2の電極間起電力Eva2は同じ向きとなり、流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する第1の電極間起電力Evc1と流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する第2の電極間起電力Evc2も同じ向きとなる。
このとき、流速と磁場Bcに起因する、第1の電極間起電力Evc1と第2の電極間起電力Evc2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場(B5,B6)に第1の構成と同じ比例係数(rkv1,rkv2)をかけ、位相差θ5,θ6をそれぞれθ5+θ01、θ6+θ01で置き換えたものとなる(rkv1,rkv2,θ01は、流速の大きさとその分布、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Evc1=rkv1・cos(ω0・t)・b5・cos(θ5+θ01)
+rkv1・sin(ω0・t)・b5・sin(θ5+θ01)
・・・(110)
Evc2=rkv2・cos(ω0・t)・b6・cos(θ6+θ01)
+rkv2・sin(ω0・t)・b6・sin(θ6+θ01)
・・・(111)
ここで、式(110)の電極間起電力Evc1、式(111)の電極間起電力Evc2をω0・tを基準として複素座標平面に写像したものをそれぞれEvc1c,Evc2cとすると、次式で表される。
Evc1c=rkv1・b5・exp{j・(θ5+θ01)} ・・・(112)
Evc2c=rkv2・b6・exp{j・(θ6+θ01)} ・・・(113)
また、流速と磁場Baに起因する電極間起電力Eva1,Eva2をω0・tを基準として複素座標平面に写像したものをそれぞれEva1c,Eva2cとすると、次式で表される。
Eva1c=rkv1・b1・exp{j・(θ1+θ01)} ・・・(114)
Eva2c=rkv2・b2・exp{j・(θ2+θ01)} ・・・(115)
流速と磁場Baに起因する起電力Eva1cと、流速と磁場Bcに起因する起電力Evc1cとを合わせた第1の電極間起電力Ev1cは、式(112)と式(114)から次式で表される。
Ev1c=rkv1・b1・exp{j・(θ1+θ01)}
+rkv1・b5・exp{j・(θ5+θ01)} ・・・(116)
また、流速と磁場Baに起因する起電力Eva2cと、流速と磁場Bcに起因する起電力Evc2cとを合わせた第2の電極間起電力Ev2cは、式(113)と式(115)から次式で表される。
Ev2c=rkv2・b2・exp{j・(θ2+θ01)}
+rkv2・b6・exp{j・(θ6+θ01)} ・・・(117)
図21〜図24で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、電極2a,2b間の第1の電極間起電力Ea5cは、式(116)に式(53)を適用して、式(108)に加えれば次式で表される。
Ea5c=rk1・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}
+γ1・rk1・V・b1・exp{j・(θ1+θ01)}
+rk1・ω0・b5・exp{j・(−π/2+θ5+θ00)}
+γ1・rk1・V・b5・exp{j・(θ5+θ01)}
・・・(118)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、電極2c,2d間の第2の電極間起電力Ea6cは、式(117)に式(54)を適用して、式(109)に加えれば次式で表される。
Ea6c=rk2・ω0・b2・exp{j・(π/2+θ2+θ00)}
+γ2・rk2・V・b2・exp{j・(θ2+θ01)}
+rk2・ω0・b6・exp{j・(−π/2+θ6+θ00)}
+γ2・rk2・V・b6・exp{j・(θ6+θ01)}
・・・(119)
ここで、ω0・tに対する磁場B1の位相遅れθ1とω0・tに対する磁場B5の位相遅れθ5との関係がθ5=θ1+Δθ5であり、ω0・tに対する磁場B2の位相遅れθ2とω0・tに対する磁場B6の位相遅れθ6との関係がθ6=θ2+Δθ6であり、角度θ00とθ01との関係がθ01=θ00+Δθ01である状態を第1の励磁状態とする。この第1の励磁状態において電極2a,2bで検出される第1の電極間起電力E301は次式で表される。
E301=rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b1−b5・exp(j・Δθ5)}・ω0
+rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・γ1・exp(j・Δθ01)
・{b1+b5・exp(j・Δθ5)}・V ・・・(120)
第1の励磁状態において電極2c,2dで検出される第2の電極間起電力E302は次式で表される。
E302=rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b2−b6・exp(j・Δθ6)}・ω0
+rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・γ2・exp(j・Δθ01)
・{b2+b6・exp(j・Δθ6)}・V ・・・(121)
また、磁場B1と磁場B5との位相差及び磁場B2と磁場B6との位相差が第1の励磁状態から一定値πだけ変化し(θ5=π+θ1+Δθ5、θ6=π+θ2+Δθ6)、かつθ01=θ00+Δθ01である状態を第2の励磁状態とする。この第2の励磁状態における第1の電極間起電力Ea5cをE301Rとすると、第1の電極間起電力E301Rは式(120)より次式のようになる。
E301R=rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b1+b5・exp(j・Δθ5)}・ω0
+rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・γ1・exp(j・Δθ01)
・{b1−b5・exp(j・Δθ5)}・V ・・・(122)
第2の励磁状態における第2の電極間起電力Ea6cをE302Rとすると、第2の電極間起電力E302Rは式(121)より次式のようになる。
E302R=rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b2+b6・exp(j・Δθ6)}・ω0
+rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・γ2・exp(j・Δθ01)
・{b2−b6・exp(j・Δθ6)}・V ・・・(123)
式(120)、式(122)の右辺第1項が励磁コイル3a,3bから発生する磁場の変化に起因し、電極2a,2bで検出される全ての∂A/∂t成分であり、式(121)、式(123)の右辺第1項が励磁コイル3a,3bから発生する磁場の変化に起因し、電極2c,2dで検出される全ての∂A/∂t成分である。また、式(120)、式(122)の右辺第2項が励磁コイル3a,3bから発生する磁場及び流速に起因し、電極2a,2bで検出される全てのv×B成分であり、式(121)、式(123)の右辺第2項が励磁コイル3a,3bから発生する磁場及び流速に起因し、電極2c,2dで検出される全てのv×B成分である。
ここで、測定管軸PAXと直交する、電極2a,2bを含む平面PLN1から第1の励磁コイル3aまでの距離d1と平面PLN1から第2の励磁コイル3bまでの距離d5とが略等しく(d1≒d5)、電極2c,2dを含む平面PLN2から第1の励磁コイル3aまでの距離d2と平面PLN2から第2の励磁コイル3bまでの距離d6とが略等しいとすると(d2≒d6)、b1≒b5,Δθ5≒0,b2≒b6,Δθ6≒0になる。この場合、式(120)〜式(123)は以下のようになる。
E301≒rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・{2・b1・γ1・V・exp(j・Δθ01)} ・・・(124)
E302≒rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・{2・b2・γ2・V・exp(j・Δθ01)} ・・・(125)
E301R≒rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・{2・b1・ω0・exp(j・π/2)} ・・・(126)
E302R≒rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・{2・b2・ω0・exp(j・π/2)} ・・・(127)
すなわち、第1の電極間起電力E301、第2の電極間起電力E302はほぼv×B成分の起電力のみとなり、第1の電極間起電力E301R、第2の電極間起電力E302Rはほぼ∂A/∂t成分の起電力のみとなるので、∂A/∂t成分の抽出やv×B成分の抽出、および正規化や0補正演算の際の演算誤差を小さくすることができる。この点が、第3の構成と第1の構成の技術的な意義における相違点になる。
式(120)、式(121)において第1の励磁コイル3aから発生する磁場による第1の電極間起電力の中の∂A/∂t成分は式(59)で表され、この第1の電極間起電力の中のv×B成分は式(60)で表される。また、第1の励磁コイル3aから発生する磁場による第2の電極間起電力の中の∂A/∂t成分は式(61)で表され、この第2の電極間起電力の中のv×B成分は式(62)で表される。
一方、式(120)の第1の電極間起電力E301の合成ベクトル中の∂A/∂t成分の中で第2の励磁コイル3bの磁場の変化に関連する成分を、∂A/∂t成分における定数項Ka=exp(j・π/2)と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項B5c=b5・exp{j・(θ1+Δθ5)}と、流体の特性や状態に関係する項C1=rk1・exp(j・θ00)と、角周波数ω0との積Va501で表すと、式(120)の右辺第1項において第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化による∂A/∂t成分Va501は次式で表される。
Va501=−Ka・B5c・C1・ω0 ・・・(128)
第2の励磁状態は第1の励磁状態と比べて磁場の位相がπだけずれるので磁場の向きが反転し、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項が−B5c=−b5・exp{j・(θ1+Δθ2)}になる。したがって、式(122)の合成ベクトル中の∂A/∂t成分において、第2の励磁コイル3bの磁場の変化に関連する成分を、∂A/∂t成分における定数項Kaと、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項−B5cと、流体の特性や状態に関係する項C1と、角周波数ω0との積Va501Rで表すと、Va501Rは次式で表される。
Va501R=−Ka・(−B5c)・C1・ω0 ・・・(129)
同様に、式(120)の合成ベクトル中のv×B成分の中で第2の励磁コイル3bの磁場及び流速に関連する成分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ1と、v×B成分における定数項Kb=exp(j・Δθ01)と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項B5c=b5・exp{j・(θ1+Δθ5)}と、流体の特性や状態に関係する項C1=rk1・exp(j・θ00)と、平均流速の大きさVとの積Vb501で表すと、式(120)の右辺第2項において第2の励磁コイル3bから発生する磁場及び流速によるv×B成分Vb501は次式で表される。
Vb501=γ1・Kb・B5c・C1・V ・・・(130)
前述のとおり、第2の励磁状態は第1の励磁状態と比べて磁場の位相がπだけずれるので、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項が、−B5c=−b5・exp{j・(θ1+Δθ5)}になる。したがって、式(122)の合成ベクトル中のv×B成分において、第2の励磁コイル3bから発生する磁場による部分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ1と、v×B成分における定数項Kbと、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項−B5cと、流体の特性や状態に関係する項C1と、平均流速の大きさVとの積Vb501Rで表すと、Vb501Rは次式で表される。
Vb501R=γ1・Kb・(−B5c)・C1・V ・・・(131)
次に、式(121)の第2の電極間起電力E302の合成ベクトル中の∂A/∂t成分の中で第2の励磁コイル3bの磁場の変化に関連する成分を、∂A/∂t成分における定数項Ka=exp(j・π/2)と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項B6c=b6・exp{j・(θ2+Δθ6)}と、流体の特性や状態に関係する項C2=rk2・exp(j・θ00)と、角周波数ω0との積Va602で表すと、式(121)の右辺第1項において第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化による∂A/∂t成分Va602は次式で表される。
Va602=−Ka・B6c・C2・ω0 ・・・(132)
前述のとおり、第2の励磁状態は第1の励磁状態と比べて磁場の位相がπだけずれるので、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項が−B6c=−b6・exp{j・(θ2+Δθ6)}になる。したがって、式(123)の合成ベクトル中の∂A/∂t成分において、第2の励磁コイル3bから発生する磁場による部分を、∂A/∂t成分における定数項Kaと、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項−B6cと、流体の特性や状態に関係する項C2と、角周波数ω0との積Va602Rで表すと、Va602Rは次式で表される。
Va602R=−Ka・(−B6c)・C2・ω0 ・・・(133)
同様に、式(121)の合成ベクトル中のv×B成分の中で第2の励磁コイル3bの磁場及び流速に関連する成分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ2と、v×B成分における定数項Kb=exp(j・Δθ01)と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項B6c=b6・exp{j・(θ2+Δθ6)}と、流体の特性や状態に関係する項C2=rk2・exp(j・θ00)と、平均流速の大きさVとの積Vb602で表すと、式(121)の右辺第2項において第2の励磁コイル3bから発生する磁場と流速によるv×B成分Vb602は次式で表される。
Vb602=γ2・Kb・B6c・C2・V ・・・(134)
前述のとおり、第2の励磁状態は第1の励磁状態と比べて磁場の位相がπだけずれるので、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項が−B6c=−b6・exp{j・(θ2+Δθ6)}になる。したがって、式(123)の合成ベクトル中のv×B成分において、第2の励磁コイル3bから発生する磁場による部分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ2と、v×B成分における定数項Kbと、第2の励磁コイル3bから発生する磁場に関連する項−B6cと、流体の特性や状態に関係する項C2と、平均流速の大きさVとの積Vb602Rで表すと、Vb602Rは次式で表される。
Vb602R=γ2・Kb・(−B6c)・C2・V ・・・(135)
式(59)、式(60)、式(120)、式(128)、式(130)より、第1の励磁状態において電極2a,2bで検出される電極間起電力E301中の∂A/∂t成分Va301は式(136)で表され、また電極間起電力E301中のv×B成分Vb301は式(137)で表される。
Va301=Va101+Va501
=Ka・(B1c−B5c)・C1・ω0 ・・・(136)
Vb301=Vb101+Vb501
=γ1・Kb・(B1c+B5c)・C1・V ・・・(137)
式(59)、式(60)、式(122)、式(129)、式(131)より、第2の励磁状態において電極2a,2bで検出される電極間起電力E301R中の∂A/∂t成分Va301Rは式(138)で表され、また電極間起電力E301R中のv×B成分Vb301Rは式(139)で表される。
Va301R=Va101+Va501R
=Ka・(B1c+B5c)・C1・ω0 ・・・(138)
Vb301R=Vb101+Vb501R
=γ1・Kb・(B1c−B5c)・C1・V ・・・(139)
式(61)、式(62)、式(121)、式(132)、式(134)より、第1の励磁状態において電極2c,2dで検出される電極間起電力E302中の∂A/∂t成分Va302は式(140)で表され、また電極間起電力E302中のv×B成分Vb302は式(141)で表される。
Va302=Va102+Va602
=Ka・(B2c−B6c)・C2・ω0 ・・・(140)
Vb302=Vb102+Vb602
=γ2・Kb・(B2c+B6c)・C2・V ・・・(141)
式(61)、式(62)、式(123)、式(133)、式(135)より、第2の励磁状態において電極2c,2dで検出される電極間起電力E302R中の∂A/∂t成分Va302Rは式(142)で表され、また電極間起電力E302R中のv×B成分Vb302Rは式(143)で表される。
Va302R=Va102+Va602R
=Ka・(B2c+B6c)・C2・ω0 ・・・(142)
Vb302R=Vb102+Vb602R
=γ2・Kb・(B2c−B6c)・C2・V ・・・(143)
第2の励磁状態において電極2a,2bで検出される合成ベクトルVa301R+Vb301Rの中からVa301Rのみを抽出し、それに基づいて第1の励磁状態において電極2a,2bで検出される合成ベクトルVa301+Vb301中のv×B成分を正規化すると共に、第2の励磁状態において電極2c,2dで検出される合成ベクトルVa302R+Vb302Rの中からVa302Rのみを抽出し、それに基づいて合成ベクトルVa302+Vb302中のv×B成分を正規化すれば、流速分布のみに影響される2つの正規化された合成ベクトルを得ることができる。この2つの合成ベクトルを基に流速分布の影響を補正すれば、流速分布の影響も含めてスパンの変動要因が除去できることになる。この方法については、後ほど一般化して説明する。
次に、本発明の電磁流量計の第4の構成について説明する。第4の構成は、前記第1の構成に対して第3の電極を、励磁コイルの軸を含む平面を挟んで第1の電極と逆側に追加し、第4の電極を、励磁コイルの軸を含む平面を挟んで第2の電極と逆側に追加したものである。第1の電極で検出されるv×B成分と第3の電極で検出されるv×B成分は同じ方向になるが、第1の電極で検出される∂A/∂t成分と第3の電極で検出される∂A/∂t成分は逆向きになる。また、第2の電極で検出されるv×B成分と第4の電極で検出されるv×B成分は同じ方向になるが、第2の電極で検出される∂A/∂t成分と第4の電極で検出される∂A/∂t成分は逆向きになる。このような現象を利用すれば、∂A/∂t成分を効率的に取り出すことができる。
図25は、第4の構成の原理を説明するためのブロック図である。図25の電磁流量計は、測定管1と、被測定流体に印加される磁場および測定管軸PAXの双方と直交し、かつ被測定流体と接触するように測定管1に対向配置され、前記磁場と被測定流体の流れとによって生じた起電力を検出する第1の電極2a,2b、第2の電極2c,2d、第3の電極2e,2f及び第4の電極2g,2hと、測定管軸PAXと直交する、第1の電極2a,2bを含む平面をPLN1、測定管軸PAXと直交する、第2の電極2c,2dを含む平面をPLN2、測定管軸PAXと直交する、第3の電極2e,2fを含む平面をPLN3、測定管軸PAXと直交する、第4の電極2g,2hを含む平面をPLN4としたとき、平面PLN1、平面PLN2、平面PLN3、平面PLN4を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁コイル3とを有する。
第1の電極2a,2bは、励磁コイル3の軸を含む、測定管軸PAXの方向と垂直な平面PLNから例えば上流側にオフセット距離d1だけ離れた位置に配設され、第2の電極2c,2dは、平面PLNから第1の電極と同じ上流側にオフセット距離d2だけ離れた位置に配設される。また、第3の電極2e,2fは、平面PLNから例えば下流側にオフセット距離d7だけ離れた位置に、平面PLNを挟んで第1の電極2a,2bと対向するように配設される。第4の電極2g,2hは、平面PLNから第3の電極と同じ下流側にオフセット距離d8だけ離れた位置に、平面PLNを挟んで第2の電極2c,2dと対向するように配設される。
また、第1の電極2a,2bと第2の電極2c,2dは、図26に示すように、励磁コイル3の軸をY軸とし、測定管軸PAX及びY軸の双方と直交する軸をX軸としたとき、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1のX軸からの角度が例えば−φe1、電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2のX軸からの角度が例えばφe2となるように、測定管1の円周方向の異なる位置に配設される。また、第3の電極2e,2fと第4の電極2g,2hは、電極2e,2f間を結ぶ第3の電極軸EAX3のX軸からの角度が例えば−φe1、電極2g,2h間を結ぶ第4の電極軸EAX4のX軸からの角度が例えばφe2となるように、測定管1の円周方向の異なる位置に配設される。
励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B1と、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B2は、第1の構成と同じく式(27)、式(28)で与えられるものとする。
また、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極2e,2f間を結ぶ電極軸EAX3上において電極軸EAX3および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B7と、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極2g,2h間を結ぶ電極軸EAX4上において電極軸EAX4および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B8は、以下のように与えられるものとする。
B7=b7・cos(ω0・t−θ7) ・・・(144)
B8=b8・cos(ω0・t−θ8) ・・・(145)
但し、B7,B8は1つの励磁コイル3から発生しているので、b7とb8、θ7とθ8は互いに関係があり、独立変数ではない。式(144)、式(145)において、b7,b8はそれぞれ磁束密度B7,B8の振幅、ω0は角周波数、θ7は磁束密度B7とω0・tとの位相差、θ8は磁束密度B8とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B7を磁場B7とし、磁束密度B8を磁場B8とする。
このとき、平面PLN3内でX軸と直交する磁場成分(磁束密度)Baの大きさをba7、平面PLN4内でX軸と直交する磁場成分(磁束密度)Baの大きさをba8とすると、電極軸EAX3と直交する磁場成分の大きさb7と、電極軸EAX4と直交する成分の大きさb8には、次式の関係が成立する。
b7=ba7・cos(−φe1)=ba7・cos(φe1) ・・・(146)
b8=ba8・cos(φe2) ・・・(147)
以下、渦電流や起電力の挙動を説明するために、図27に示す電極軸EAX1、電極軸EAX3及び測定管軸PAXを含む平面と、図28に示す電極軸EAX2、電極軸EAX4及び測定管軸PAXを含む平面の2つの平面を用いる。
第1の電極2a,2b、第2の電極2c,2dで検出される電極間起電力は第1の構成で説明しているとおりなので、第3の電極2e,2f、第4の電極2g,2hで検出される電極間起電力について以下説明する。
被測定流体の流量が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Baの変化による渦電流Iは、図29に示すような向きとなる。図29は図27に対応する図である。したがって、電極軸EAX3と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Baの変化によって発生する、流速と無関係な第3の電極間起電力E3は、図29に示すような向きとなり、第1の電極間起電力E1とは逆向きとなる。また、電極軸EAX4と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Baの変化によって発生する、流速と無関係な第4の電極間起電力E4も図30に示すように第3の電極間起電力と同じ向きとなり、第2の電極間起電力とは逆向きとなる。図30は図28に対応する図である。
このとき、第3の電極間起電力E3と第4の電極間起電力E4は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場の時間微分(−dB7/dt,−dB8/dt)に比例係数(rk1,rk2)をかけ、位相差θ7,θ8をそれぞれθ7+θ00、θ8+θ00で置き換えたものとなる(rk1,rk2,θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2e,2f,2g,2hの配置を含む測定管1の構造に関係するが、第1の構成において説明したrk1,rk2と同じに設定しておく)。なお、電極2a,2bと電極2e,2fの境界条件(測定管1の上流側の端面から電極2a,2bまでの距離と測定管1の下流側の端面から電極2e,2fまでの距離など)を等しくしておけば、電極2a,2bと電極2e,2fにおいてrk1は等しくなる。また、電極2c,2dと電極2g,2hの境界条件(測定管1の上流側の端面から電極2c,2dまでの距離と測定管1の下流側の端面から電極2g,2hまでの距離など)を等しくしておけば、電極2c,2dと電極2g,2hにおいてrk2は等しくなる。
E3=rk1・ω0・cos(ω0・t)・b7・{sin(θ7+θ00)}
+rk1・ω0・sin(ω0・t)・b7・{−cos(θ7+θ00)}
・・・(148)
E4=rk2・ω0・cos(ω0・t)・b8・{sin(θ8+θ00)}
+rk2・ω0・sin(ω0・t)・b8・{−cos(θ8+θ00)}
・・・(149)
次に、被測定流体の流速に起因する電極間起電力について説明する。被測定流体の平均流速の大きさがV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流Iに加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Baが発生するため、流速ベクトルvと磁場Baによる渦電流Ivは、図31、図32に示すような向きとなる。図31は図27に対応する図であり、図32は図28に対応する図である。したがって、流速ベクトルvと磁場Baによって発生する第3の電極間起電力Ev3と、流速ベクトルvと磁場Baによって発生する第4の電極間起電力Ev4は同じ向きとなり、第1の電極間起電力Ev1及び第2の電極間起電力Ev2とも同じ向きとなる。
このとき、第3の電極間起電力Ev3と第4の電極間起電力Ev4は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場(B7,B8)に比例係数(rkv1,rkv2)をかけ、位相差θ7、θ8をそれぞれθ7+θ01、θ8+θ01で置き換えたものとなる(rkv1,rkv2,θ01は、流速の大きさとその分布、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2e,2f,2g,2hの配置を含む測定管1の構造に関係するが、第1の構成において説明したrkv1,rkv2と同じに設定しておく)。なお、電極2a,2bと電極2e,2fの境界条件を等しくしておけば、電極2a,2bと電極2e,2fにおいてrkv1は等しくなる。また、電極2c,2dと電極2g,2hの境界条件を等しくしておけば、電極2c,2dと電極2g,2hにおいてrkv2は等しくなる。
Ev3=rkv1・cos(ω0・t)・b7・cos(θ7+θ01)
+rkv1・sin(ω0・t)・b7・sin(θ7+θ01)
・・・(150)
Ev4=rkv2・cos(ω0・t)・b8・cos(θ8+θ01)
+rkv2・sin(ω0・t)・b8・sin(θ8+θ01)
・・・(151)
図29〜図32で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、電極2e,2f間の第3の電極間起電力Ea7cは、式(55)に対応して次式で表される。
Ea7c=rk1・ω0・b7・exp{j・(−π/2+θ7+θ00)}
+γ1・rk1・V・b7・exp{j・(θ7+θ01)}
・・・(152)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、電極2g,2h間の第4の電極間起電力Ea8cは、式(56)に対応して次式で表される。
Ea8c=rk2・ω0・b8・exp{j・(π/2+θ8+θ00)}
+γ2・rk2・V・b8・exp{j・(θ8+θ01)}
・・・(153)
ここで、ω0・tに対する磁場B1の位相遅れθ1とω0・tに対する磁場B7の位相遅れθ7との関係をθ7=θ1+Δθ7とし、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(152)の第3の電極間起電力Ea7cにθ7=θ1+Δθ7及びθ01=θ00+Δθ01を代入したものをE403とすると、第3の電極間起電力E403は次式で表される。
E403=rk1・ω0・b7・exp{j・(−π/2+θ1+Δθ7+θ00)}
+γ1・rk1・V・b7
・exp{j・(θ1+Δθ7+θ00+Δθ01)} ・・・(154)
また、ω0・tに対する磁場B2の位相遅れθ2とω0・tに対する磁場B8の位相遅れθ8との関係をθ8=θ2+Δθ8とし、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(153)の第4の電極間起電力Ea8cにθ8=θ2+Δθ8及びθ01=θ00+Δθ01を代入したものをE404とすると、第4の電極間起電力E404は次式で表される。
E404=rk2・ω0・b8・exp{j・(−π/2+θ2+Δθ8+θ00)}
+γ2・rk2・V・b8
・exp{j・(θ2+Δθ8+θ00+Δθ01)} ・・・(155)
式(57)に示した第1の電極間起電力E101と第3の電極間起電力E403との和を第1の起電力和E40s1とすると、第1の起電力和E40s1は次式で表される。
E40s1=E101+E403
=rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b1−b7・exp(j・Δθ7)}・ω0
+rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・γ1・exp(j・Δθ01)・{b1+b7・exp(j・Δθ7)}・V
・・・(156)
また、第1の電極間起電力E101と第3の電極間起電力E403との差を第1の起電力差E40d1とすると、第1の起電力差E40d1は次式で表される。
E40d1=E101−E403
=rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b1+b7・exp(j・Δθ7)}・ω0
+rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・γ1・exp(j・Δθ01)・{b1−b7・exp(j・Δθ7)}・V
・・・(157)
式(156)の右辺第1項が第1の起電力和E40s1中の∂A/∂t成分となり、式(156)の右辺第2項が第1の起電力和E40s1中のv×B成分となる。また、式(157)の右辺第1項が第1の起電力差E40d1中の∂A/∂t成分となり、式(157)の右辺第2項が第1の起電力差E40d1中のv×B成分となる。
さらに、式(58)に示した第2の電極間起電力E102と第4の電極間起電力E404との和を第2の起電力和E40s2とすると、第2の起電力和E40s2は次式で表される。
E40s2=E102+E404
=rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b2−b8・exp(j・Δθ8)}・ω0
+rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・γ2・exp(j・Δθ01)・{b2+b8・exp(j・Δθ8)}・V
・・・(158)
また、第2の電極間起電力E102と第4の電極間起電力E404との差を第2の起電力差E40d2とすると、第2の起電力差E40d2は次式で表される。
E40d2=E102−E404
=rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b2+b8・exp(j・Δθ8)}・ω0
+rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・γ2・exp(j・Δθ01)・{b2−b8・exp(j・Δθ8)}・V
・・・(159)
式(158)の右辺第1項が第2の起電力和E40s2中の∂A/∂t成分となり、式(158)の右辺第2項が第2の起電力和E40s2中のv×B成分となる。また、式(159)の右辺第1項が第2の起電力差E40d2中の∂A/∂t成分となり、式(159)の右辺第2項が第2の起電力差E40d2中のv×B成分となる。
ここで、測定管軸PAXと直交する、電極2a,2bを含む平面PLN1から励磁コイル3までの距離d1と電極2e,2fを含む平面PLN3から励磁コイル3までの距離d7とが略等しいととすると(d1≒d7)、b1≒b7、Δθ7≒0になる。この場合、式(156)、式(157)は以下のようになる。
E40s1≒rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・{2・b1・γ1・V・exp(j・Δθ01)} ・・・(160)
E40d1≒rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・{2・b1・ω0・exp(j・π/2)} ・・・(161)
さらに、測定管軸PAXと直交する、電極2c,2dを含む平面PLN2から励磁コイル3までの距離d2と電極2g,2hを含む平面PLN4から励磁コイル3までの距離d8とが略等しいととすると(d2≒d8)、b2≒b8、Δθ8≒0になる。この場合、式(158)、式(159)は以下のようになる。
E40s2≒rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・{2・b2・γ2・V・exp(j・Δθ01)} ・・・(162)
E40d2≒rk2・exp{j・(θ2+θ00)}
・{2・b2・ω0・exp(j・π/2)} ・・・(163)
すなわち、第1の起電力和E40s1及び第2の起電力和E40s2はほぼv×B成分の起電力のみとなり、第1の起電力差E40d1及び第2の起電力差E40d2はほぼ∂A/∂t成分の起電力のみとなるので、∂A/∂t成分の抽出やv×B成分の抽出、および正規化演算の際の演算誤差を小さくすることができる。この点が、第4の構成と第1の構成の技術的な意義における相違点である。
式(154)に示した第3の電極間起電力E403の合成ベクトル中の∂A/∂t成分を、∂A/∂t成分における定数項−Ka=exp{j・(−π/2)}と、磁場に関連する項B7c=b7・exp{j・(θ1+Δθ7)}と、流体の特性や状態に関係する項C1=rk1・exp(j・θ00)と、角周波数ω0との積Va403で表すと、式(154)の右辺第1項は式(164)で表される。
Va403=−Ka・B7c・C1・ω0 ・・・(164)
第1の電極間起電力E101と第3の電極間起電力E403との差をとる場合は、(E101−E403)となることを考慮し、式(164)のVa403の符号を反転させたものをVa403Rとして(Va403R=−Va403)、式(165)のように定義しておく。
Va403R=Ka・B7c・C1・ω0 ・・・(165)
同様に、式(154)の合成ベクトル中のv×B成分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ1と、v×B成分における定数項Kb=exp(j・Δθ01)と、磁場に関連する項B7c=b7・exp{j・(θ1+Δθ7)}と、流体の特性や状態に関係する項C1=rk1・exp(j・θ00)と、平均流速の大きさVとの積Vb403で表すと、式(154)の右辺第2項は式(166)で表される。
Vb403=γ1・Kb・B7c・C1・V ・・・(166)
第1の電極間起電力E101と第3の電極間起電力E403との差をとる場合は、(E101−E403)となることを考慮し、式(166)のVb403の符号を反転させたものをVb403Rとして(Vb403R=−Vb403)、式(167)のように定義しておく。
Vb403R=−γ1・Kb・B7c・C1・V ・・・(167)
また、式(155)に示した第4の電極間起電力E404の合成ベクトル中の∂A/∂t成分を、∂A/∂t成分における定数項−Ka=exp{j・(−π/2)}と、磁場に関連する項B8c=b8・exp{j・(θ2+Δθ8)}と、流体の特性や状態に関係する項C2=rk2・exp(j・θ00)と、角周波数ω0との積Va404で表すと、式(155)の右辺第1項は式(168)で表される。
Va404=−Ka・B8c・C2・ω0 ・・・(168)
第2の電極間起電力E102と第4の電極間起電力E404との差をとる場合は、(E102−E404)となることを考慮し、式(168)のVa404の符号を反転させたものをVa404Rとして(Va404R=−Va404)、式(169)のように定義しておく。
Va404R=Ka・B8c・C2・ω0 ・・・(169)
同様に、式(155)の合成ベクトル中のv×B成分を、v×B成分において流速分布の影響を受ける項γ2と、v×B成分における定数項Kb=exp(j・Δθ01)と、磁場に関連する項B8c=b8・exp{j・(θ2+Δθ8)}と、流体の特性や状態に関係する項C2=rk2・exp(j・θ00)と、平均流速の大きさVとの積Vb404で表すと、式(155)の右辺第2項は式(170)で表される。
Vb404=γ2・Kb・B8c・C2・V ・・・(170)
第2の電極間起電力E102と第4の電極間起電力E404との差をとる場合は、(E102−E404)となることを考慮し、式(170)のVb404の符号を反転させたものをVb404Rとして(Vb404R=−Vb404)、式(171)のように定義しておく。
Vb404R=−γ2・Kb・B8c・C2・V ・・・(171)
式(156)、式(59)、式(60)、式(164)、式(166)より、第1の起電力和E40s1の中の∂A/∂t成分Va40s1は式(172)で表され、また第1の起電力和E40s1の中のv×B成分Vb40s1は式(173)で表される。
Va40s1=Va101+Va403
=Ka・(B1c−B7c)・C1・ω0 ・・・(172)
Vb40s1=Vb101+Vb403
=γ1・Kb・(B1c+B7c)・C1・V ・・・(173)
式(157)、式(59)、式(60)、式(165)、式(167)より、第1の起電力差E40d1の中の∂A/∂t成分Va40d1は式(174)で表され、また第1の起電力差E40d1の中のv×B成分Vb40d1は式(175)で表される。
Va40d1=Va101+Va403R
=Ka・(B1c+B7c)・C1・ω0 ・・・(174)
Vb40d1=Vb101+Vb403R
=γ1・Kb・(B1c−B7c)・C1・V ・・・(175)
式(158)、式(61)、式(62)、式(168)、式(170)より、第2の起電力和E40s2の中の∂A/∂t成分Va40s2は式(176)で表され、また第2の起電力和E40s2の中のv×B成分Vb40s2は式(177)で表される。
Va40s2=Va102+Va404
=Ka・(B2c−B8c)・C2・ω0 ・・・(176)
Vb40s2=Vb102+Vb404
=γ2・Kb・(B2c+B8c)・C2・V ・・・(177)
式(159)、式(61)、式(62)、式(169)、式(171)より、第2の起電力差E40d2の中の∂A/∂t成分Va40d2は式(178)で表され、また第2の起電力差E40d2の中のv×B成分Vb40d2は式(179)で表される。
Va40d2=Va102+Va404R
=Ka・(B2c+B8c)・C2・ω0 ・・・(178)
Vb40d2=Vb102+Vb404R
=γ2・Kb・(B2c−B8c)・C2・V ・・・(179)
電極2a,2bで検出される合成ベクトルと電極2e,2fで検出される合成ベクトルとの差である第1の起電力差の合成ベクトルVa40d1+Vb40d1の中からVa40d1のみを抽出し、それに基づいて第1の起電力和の合成ベクトルVa40s1+Vb40s1の中のv×B成分を正規化すると共に、電極2c,2dで検出される合成ベクトルと電極2g,2hで検出される合成ベクトルとの差である第2の起電力差の合成ベクトルVa40d2+Vb40d2の中からVa40d2のみを抽出し、それに基づいて第2の起電力和の合成ベクトルVa40s2+Vb40s2の中のv×B成分を正規化すれば、流速分布のみに影響される2つの正規化された合成ベクトルを得ることができる。この2つの合成ベクトルを基に流速分布の影響を補正すれば、流速分布の影響も含めてスパンの変動要因が除去できることになる。この方法については、後ほど一般化して説明する。
[第1の原理]
次に、流速分布の影響を含めたスパン補正の第1の原理について説明する。励磁コイルの軸を含む平面PLNに対して上流側又は下流側のいずれか一方に、測定管1の円周方向の位置が異なるように配置した複数の電極で検出される合成ベクトルはv×B成分と∂A/∂t成分とからなる。この複数の電極で検出される各合成ベクトルの中の∂A/∂t成分を抽出する。抽出した∂A/∂t成分により、抽出元の合成ベクトル中のv×B成分の平均流速Vにかかる係数(スパン)の変動要因を消去することが可能である。すなわち、抽出した∂A/∂t成分を用いて、抽出元の合成ベクトルを正規化すれば、スパンの変動要因が消去された複数の正規化ベクトルを得ることができる。ただし、このままでは流速分布の影響によるスパン変動要因を消去できない。そこで、複数の正規化ベクトルを平均化することにより、流速分布の影響によるスパン変動要因を消去することができ、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を消去した出力を得ることができる。以上が本発明のスパン補正の第1の原理である。
また、複数の正規化ベクトルを平均化して流速分布の影響を補正することは、複数の電極の合成ベクトルの線形結合をとれば実現できるので、第1の原理を下記のように別形態で表現することもできる。複数の電極で検出される合成ベクトルの線形結合をとれば、線形結合した合成ベクトル中のv×B成分のスパン変動要因のうち流速分布の影響によるものが消去される。この合成ベクトルの線形結合はv×B成分と∂A/∂t成分とからなる。この線形結合した合成ベクトル中から∂A/∂t成分を抽出する。抽出した∂A/∂t成分により、抽出元の合成ベクトル中のv×B成分のスパン変動要因を消去することが可能である。すなわち、抽出した∂A/∂t成分を用いて、線形結合した合成ベクトルを正規化すれば、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を消去した出力を得ることができる。
以上の第1の原理を図1の第1の構成に適用する場合について説明する。まず、流速に依存しない∂A/∂t成分の抽出方法について説明する。第1の構成の場合、第1の電極間起電力における第1の∂A/∂t成分と第2の電極間起電力における第2の∂A/∂t成分の2つの∂A/∂t成分を抽出する必要がある。第1の構成の場合、∂A/∂t成分は励磁周波数により変動するが、v×B成分は励磁周波数に依存しないことを利用して、∂A/∂t成分を抽出する方法(以下、第1の抽出方法と呼ぶ)が適用できる。なお、この第1の抽出方法は電磁流量計の構成によらず適用できる。
まず、第1の電極間起電力における∂A/∂t成分(第1の∂A/∂t成分)を抽出する。角周波数ω0の励磁電流を励磁コイル3に供給した場合に電極2a,2bで検出される第1の電極間起電力は、式(59)に示した∂A/∂t成分のベクトルVa101と式(60)に示したv×B成分のベクトルVb101の合成ベクトルVa101+Vb101に相当する。図33にベクトルVa101とベクトルVb101と合成ベクトルVa101+Vb101とを示す。図33において、Reは実軸、Imは虚軸である。
図34は、合成ベクトルVa101+Vb101から第1の∂A/∂t成分のベクトルVa101を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。電極間起電力から直接求めることができる複素ベクトルは合成ベクトルVa101+Vb101であり、ベクトルVa101,Vb101が直接的に計測できるわけではない。そこで、∂A/∂t成分の大きさは励磁角周波数ωに比例し、v×B成分は励磁角周波数ωに依存しないことに着眼する。具体的には、ある角周波数ω0で励磁したときの合成ベクトルと別の角周波数ω2で励磁したときの合成ベクトルとの差を求める。この差は、∂A/∂t成分の大きさの変化分だけを与えるベクトルになるので、この変化分から∂A/∂t成分を抽出することができる。
励磁角周波数をω2としたときのv×B成分のベクトルは、式(60)に示したベクトルVb101と同じである。一方、励磁角周波数をω2としたときの∂A/∂t成分のベクトルVa121は、式(59)においてω0をω2で置き換えたものとなり、次式で表される。
Va121=Ka・B1c・C1・ω2 ・・・(180)
第1の電極間起電力に含まれる角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分との差分を求めると、v×B成分がキャンセルされ、求めた差分はVa101−Va121と同じになる。この差分を角周波数ω0のときの値に戻すためにω0/(ω0−ω2)倍すれば、次式のようにベクトルVa101と同じになる。よって、合成ベクトルVa101+Vb101中の∂A/∂t成分のベクトルVa101を、異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。
(Va101−Va121)・ω0/(ω0−ω2)
=Ka・B1c・C1・(ω0−ω2)・ω0/(ω0−ω2)
=Ka・B1c・C1・ω0
=Va101 ・・・(181)
同様の手順により、電極2c,2dで検出される第2の電極間起電力における∂A/∂t成分(第2の∂A/∂t成分)Va102=Ka・B2c・C2・ω0を、異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。
図35は、合成ベクトルVa101+Vb101を第1の∂A/∂t成分のベクトルVa101により正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。抽出した第1の∂A/∂t成分Va101により、合成ベクトルVa101+Vb101を正規化する。正規化した合成ベクトルをω0倍した合成ベクトルは、以下の∂A/∂t成分のベクトルVna101とv×B成分のベクトルVnb101の合成ベクトルVna101+Vnb101で表される。
Vna101=(Va101/Va101)・ω0
=ω0 ・・・(182)
Vnb101=(Vb101/Va101)・ω0
=γ1・(Kb/Ka)・V ・・・(183)
なお、正規化した合成ベクトルをω0倍する理由は、平均流速の大きさVにかかる係数(スパン)からω0を取り除くためである。式(183)によれば、正規化ベクトルVnb101のVにかかる係数の中に、流速分布の影響を受けるスパン変動要因γ1は残っているが、それ以外のスパン変動要因B1c・C1は除去されていることが分かる。
第1の∂A/∂t成分を用いた正規化と同様に、抽出した第2の∂A/∂t成分Va102により、合成ベクトルVa102+Vb102を正規化する。正規化した合成ベクトルをω0倍した合成ベクトルは、以下の∂A/∂t成分のベクトルVna102とv×B成分のベクトルVnb102の合成ベクトルVna102+Vnb102で表される。
Vna102=(Va102/Va102)・ω0
=ω0 ・・・(184)
Vnb102=(Vb102/Va102)・ω0
=γ2・(Kb/Ka)・V ・・・(185)
式(185)によれば、第2の電極における正規化ベクトルVnb102のVにかかる係数の中に、流速分布の影響を受けるスパン変動要因γ2は残っているが、それ以外のスパン変動要因B2c・C2は除去されていることが分かる。
ここで、第1の電極間起電力を正規化した合成ベクトルをVn101、第2の電極間起電力を正規化した合成ベクトルをVn102とすると、正規化ベクトルVn101,Vn102は式(182)〜式(185)から次式で表される。
Vn101=Vna101+Vnb101
=ω0+γ1・(Kb/Ka)・V ・・・(186)
Vn102=Vna102+Vnb102
=ω0+γ2・(Kb/Ka)・V ・・・(187)
次に、流速分布の影響を受けるスパン変動要因の補正について説明する。図36は、正規化ベクトルVn101とVn102を平均化する処理を複素ベクトル表現した図である。流速分布の影響によるスパンを補正する代表的な例として、曲がり管による影響を補正する場合を説明する。流速分布によりスパンが受ける影響は測定管の直管長と関連しており、文献「“電磁流量計解説”,日本規格協会,JIS B 7554−1993,1993改訂版」の解18−解23に詳しく記載されている。この文献の解18−解19、解説図14によれば、曲がり管によって発生する流速分布の影響を受ける場合、スパンは、曲がり管の軸を含む平面と電極軸とのなす角度がπ/4のときは軸対称流の場合と同じになり、角度が0°のときが最小となり、角度がπ/2のときが最大となる。
したがって、曲がり管の軸を含む平面に対して、π/4の角度を中心としてそこから第1の電極と第2の電極を逆向きに同じ角度で配置して、第1の電極と第2の電極の起電力の平均をとれば、流速分布の影響をなくすことができる。特に、測定管の円周方向の異なる位置に配置する第1の電極と第2の電極との角度をおよそπ/2に設定しておけば、曲がり管の軸を含む平面に対する角度を規定することなく、スパン補正ができることになる。つまり、流速分布に関わる項の値が軸対称流の状態で校正されたときにγであるとすると、上述のように正規化ベクトルの平均の値においてγ=(γ1+γ2)/2に設定すれば、第1の電極と第2の電極の2対の電極により、流速分布の影響が補正できることになる。
式(186)、式(187)より、正規化ベクトルVn101とVn102の平均をとれば、次式で表されるように流速分布の影響が補正できる。
(Vn101+Vn102)/2
={ω0+γ1・(Kb/Ka)・V+ω0+γ2・(Kb/Ka)・V}/2
=ω0+γ・(Kb/Ka)・V ・・・(188)
Ka=exp(j・π/2)、Kb=exp(j・Δθ01)であることを考慮すると、式(188)より平均流速の大きさVは次式のように表される。
V=|{(Vn101+Vn102)/2−ω0}/{γ・(Kb/Ka)}|
=|{(Vn101+Vn102)/2−ω0}|/γ ・・・(189)
[第2の原理]
次に、流速分布の影響を含めたスパン補正の第2の原理について説明する。測定管1の円周方向の異なる位置に配置した複数の電極で検出される各合成ベクトルの線形結合をとれば、線形結合した合成ベクトル中のv×B成分のスパン変動要因のうち流速分布の影響を受けるものが消去される。また、励磁コイルの軸を含む平面PLNに対して上流側に配置した電極で検出される合成ベクトルの線形結合と下流側に配置した電極で検出される合成ベクトルの線形結合との差は、v×B成分と∂A/∂t成分とからなる。この合成ベクトルの差の中から∂A/∂t成分を抽出する。抽出した∂A/∂t成分により、全ての合成ベクトルの線形結合の中のv×B成分のスパン変動要因を消去することが可能である。すなわち、抽出した∂A/∂t成分を用いて、全ての合成ベクトルを線形結合したものを正規化すれば、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を消去した出力を得ることができる。以上が本発明のスパン補正の第2の原理である。
以上の第2の原理を図9の第2の構成に適用する場合について説明する。まず、∂A/∂t成分の抽出方法について説明する。式(93)に示した第1の電極間起電力と第2の電極間起電力の起電力和E20sの中のv×B成分Vb20sを式(92)に示した∂A/∂t成分Va20sで補正することを考える。例えば簡単のためにγ3=γ4=γ0とすると、式(93)は次式のようになる。
Vb20s=γ0・Kb・(B3c+B4c)・C・V ・・・(190)
起電力和E20sの∂A/∂t成分Va20sを合成ベクトルから抽出できたとしても、∂A/∂t成分Va20sにおける変動要因(B3c−B4c)・Cと、v×B成分Vb20sにおける、流速分布の影響を除いた変動要因(B3c+B4c)・Cとは異なる値となる。したがって、補正の対象となる合成ベクトル中の∂A/∂t成分Va20sでv×B成分Vb20sの正規化を行っても、次式のとおり磁場の変動要因(B3c−B4c)/(B3c+B4c)が残り、スパン変動要因が除去できない。
Vb20s/Va20s
=γ0・(Kb/Ka)・{(B3c−B4c)/(B3c+B4c)}・(V/ω)
・・・(191)
そこで、v×B成分の磁場の変動要因と同じ変動要因(B3c+B4c)・Cを持つ∂A/∂t成分を抽出する必要がある。このような∂A/∂t成分を抽出するためには、第1の電極間起電力と第2の電極間起電力の差をとればB4cが反転することを利用する。式(94)から、起電力差E20d中の∂A/∂t成分Va20dにおけるスパンの変動要因は(B3c+B4c)・Cで表され、補正の対象となるv×B成分Vb20sにおけるスパンの変動要因と同じになる。つまり第1の電極間起電力と第2の電極間起電力の差Va20d+Vb20dの中からVa20dを取り出せば、Vb20sの正規化が可能となる。
∂A/∂t成分のベクトルVa20dを抽出する方法としては、以下の2つの方法がある。第1の抽出方法は、第1の原理において∂A/∂t成分を抽出する際にも使用した方法、すなわち複数の励磁周波数による磁場を被測定流体に印加し、電極間起電力に含まれる複数の周波数成分の出力差を利用して∂A/∂t成分を抽出する方法である。第2の抽出方法は、励磁コイルの軸を含む平面PLNに対して管軸方向の前後でv×B成分は同じ方向を向いているが、∂A/∂t成分は逆方向を向いていることを利用して、v×B成分をキャンセルする方法である。
まず、第1の抽出方法により∂A/∂t成分のベクトルVa20dを抽出する方法について説明する。第1の電極間起電力と第2の電極間起電力の差における∂A/∂t成分を抽出する。角周波数ω0の励磁電流を励磁コイル3に供給した場合に電極2a,2bで検出される第1の電極間起電力と電極2c,2dで検出される第2の電極間起電力との差は、式(94)に示した∂A/∂t成分のベクトルVa20dと式(95)に示したv×B成分のベクトルVb20dの合成ベクトルVa20d+Vb20dに相当する。図37に電極2a,2bで検出される合成ベクトルVa201+Vb201(第1の電極間起電力)を示し、図38に電極2c,2dで検出される合成ベクトルVa202+Vb202(第2の電極間起電力)を示し、図39に起電力差のベクトルVa20d+Vb20dを示す。
∂A/∂t成分の大きさは励磁角周波数ωに比例し、v×B成分は励磁角周波数ωに依存しないことに着眼し、ある角周波数ω0で励磁したときの合成ベクトルと別の角周波数ω2で励磁したときの合成ベクトルとの差を求める。この差は、∂A/∂t成分の大きさの変化分だけを与えるベクトルになるので、この変化分から∂A/∂t成分を抽出することができる。図40は、起電力差の合成ベクトルVa20d+Vb20dから∂A/∂t成分のベクトルVa20dを抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。
励磁角周波数をω2としたときの起電力差のv×B成分は、式(95)に示したベクトルVb20dと同じである。一方、励磁角周波数をω2としたときの起電力差の∂A/∂t成分のベクトルVa22dは、式(94)においてω0をω2で置き換えたものとなり、次式で表される。
Va22d=Ka・(B3c+B4c)・C・ω2 ・・・(192)
励磁角周波数ω0における起電力差の合成ベクトルと励磁角周波数ω2における起電力差の合成ベクトルとの差分を求めると、v×B成分がキャンセルされ、求めた差分はVa20d−Va22dと同じになる。この差分を角周波数ω0のときの値に戻すためにω0/(ω0−ω2)倍すれば、次式のように励磁角周波数ω0のときの起電力差の∂A/∂t成分Va20dを、異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。
(Va20d−Va22d)・ω0/(ω0−ω2)
=Ka・(B3c+B4c)・C・(ω0−ω2)・ω0/(ω0−ω2)
=Ka・(B3c+B4c)・C・ω0
=Va20d ・・・(193)
次に、第2の抽出方法により∂A/∂t成分のベクトルVa20dを抽出する方法について説明する。第1の抽出方法と同様に、合成ベクトルVa20d+Vb20dの中からVa20dを抽出する。ここで、Va20d≫Vb20dと近似できる場合は、Vb20d≒0となり、近似的に∂A/∂t成分のベクトルVa20dを抽出できる。
初期状態(校正時の状態)において、磁場B3と磁場B4を等しく設定しておくと、その後の磁場B3とB4との差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b3+b4・exp(j・Δθ4)|≫|b3−b4・exp(j・Δθ4)|
・・・(194)
また、通常ω0>γ3・V、ω0>γ4・Vが成り立つことから、式(194)の条件を考慮すると、式(83)の起電力差E20dにおいて次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b3+b4・exp(j・Δθ4)}|
≫|V・exp(j・Δθ01)
・{γ3・b3−γ4・b4・exp(j・Δθ4)}| ・・・(195)
式(195)の条件を用いて、起電力差E20dを近似した起電力差をE20d’とすると、起電力差E20d’は次式で表される。
E20d’≒Va20d+Vb20d ・・・(196)
E20d’=rk・exp{j・(θ3+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b3+b4・exp(j・Δθ4)}
=Va20d ・・・(197)
式(197)より、合成ベクトルVa20d+Vb20d中の∂A/∂t成分のベクトルVa20dを第2の抽出方法を用いて抽出できることが分かる。
次に、流速分布の影響も含めたスパン変動要因の補正について説明する。第1の原理と同様にγ=(γ3+γ4)/2と設定すれば、流速分布の影響を補正することができる。ここで、γ3=γ+Δγ、γ4=γ−Δγと置き換える。γは校正時に求めることができる値であり、Δγはγからのずれを表す。
図41は、スパン補正の対象となる起電力和の合成ベクトルVa20s+Vb20sを示す図、図42は、合成ベクトルVa20s+Vb20sを∂A/∂t成分のベクトルVa20dにより正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。式(93)のv×B成分のベクトルVb20sにγ3=γ+Δγ、γ4=γ−Δγを代入した上で、この代入を行った後の合成ベクトルVa20s+Vb20sを、∂A/∂t成分のベクトルVa20dにより正規化する。正規化した合成ベクトルをω0倍した合成ベクトルは、以下の∂A/∂t成分のベクトルVna20sとv×B成分のベクトルVnb20sの合成ベクトルVna20s+Vnb20sで表される。
Vna20s=(Va20s/Va20d)・ω0
={Ka・(B3c−B4c)・C・ω0}
/{Ka・(B3c+B4c)・C・ω0}・ω0
=(B3c−B4c)/(B3c+B4c)・ω0 ・・・(198)
Vnb20s=(Vb20s/Va20d)・ω0
=[Kb・{(γ+Δγ)・B3c+(γ−Δγ)・B4c}・C・V]
/{Ka・(B3c+B4c)・C・ω0}・ω0
=γ・(Kb/Ka)・V
+Δγ・(Kb/Ka)・(B3c−B4c)/(B3c+B4c)・V
・・・(199)
なお、正規化した合成ベクトルをω0倍する理由は、平均流速の大きさVにかかる係数(スパン)からω0を取り除くためである。正規化した合成ベクトルVna20s+Vnb20sをVn20sとすると、正規化合成ベクトルVn20sは次式で表される。
Vn20s=γ・(Kb/Ka)・V
+Δγ・(Kb/Ka)・(B3c−B4c)/(B3c+B4c)・V
+(B3c−B4c)/(B3c+B4c)・ω0 ・・・(200)
ここで、電極軸EAX1に直交する磁場成分と電極軸EAX2に直交する磁場成分との間にB3c≒B4c(式(65)、式(66)よりbb3・cos(φe3)≒bb4・cos(φe4))が成り立つように電極2a,2b,2c,2dを配置すれば、式(200)の右辺第2項及び第3項は無視できるので、式(200)の右辺第1項のみを見れば、平均流速Vにかかる係数(スパン)から流速分布の影響も含めたスパンの変動要因(γ3・B3c+γ4・B4c)・Cが除去されていることが分かる。
式(200)において上記の条件B3c≒B4cを適用し、Ka=exp(j・π/2)、Kb=exp(j・Δθ01)であることを考慮すれば、平均流速の大きさVは次式で表される。
V=|Vn20s/{γ・(Kb/Ka)}|
=|Vn20s|/γ ・・・(201)
[第3の原理]
次に、流速分布の影響を含めたスパン補正の第3の原理について説明する。2つの励磁コイルの間に、測定管1の円周方向の位置が異なるように配置した複数の電極で検出される合成ベクトルはv×B成分と∂A/∂t成分からなる。前記第1の励磁状態において複数の電極で検出される各合成ベクトル中のv×B成分のスパン変動要因を消去するために、前記第2の励磁状態において複数の電極で検出される各合成ベクトルからそれぞれ∂A/∂t成分を抽出する。抽出した各∂A/∂t成分を用いて、第1の励磁状態の対応する合成ベクトルを正規化すれば、スパンの変動要因が消去された複数の正規化ベクトルを得ることができる。ただし、このままでは流速分布の影響によるスパン変動要因を消去できない。そこで、複数の正規化ベクトルを平均化することにより、流速分布の影響によるスパン変動要因を消去することができ、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を消去した出力を得ることができる。以上が本発明のスパン補正の第3の原理である。
また、複数の正規化ベクトルを平均化して流速分布の影響を補正することは、複数の電極の合成ベクトルの線形結合をとれば実現できるので、第3の原理を下記のように別形態で表現することもできる。2つの励磁コイルから発生する磁場が第1の励磁状態において、複数の電極で検出される合成ベクトルの線形結合をとれば、線形結合した合成ベクトル中のv×B成分のスパン変動要因のうち流速分布の影響によるものが消去される。第1の励磁状態における線形結合した合成ベクトル中のv×B成分のスパン変動要因を消去するために、第2の励磁状態における線形結合した合成ベクトル中の∂A/∂t成分を抽出する。抽出した∂A/∂t成分を用いて、第1の励磁状態における線形結合した合成ベクトルを正規化すれば、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を消去した出力を得ることができる。
以上の第3の原理を図17の第3の構成に適用する場合について説明する。まず、∂A/∂t成分の抽出方法について説明する。第3の構成の場合、第1の電極間起電力における第1の∂A/∂t成分と第2の電極間起電力における第2の∂A/∂t成分の2つの∂A/∂t成分を抽出する必要がある。
まず、第1の励磁状態において電極2a,2bで検出される合成ベクトルVa301+Vb301の中のv×B成分を∂A/∂t成分で補正することを考える。
第1の励磁状態における∂A/∂t成分のベクトルVa301を合成ベクトルから抽出できたとしても、ベクトルVa301における変動要因(B1c−B5c)・C1とv×B成分のベクトルVb301における、流速分布の影響を除いた変動要因(B1c+B5c)・C1は異なる値となる。したがって、補正の対象となる合成ベクトル中の∂A/∂t成分Va301でv×B成分Vb301の正規化を行っても、次式のとおり磁場の変動要因(B1c−B5c)/(B1c+B5c)が残り、スパン変動要因が除去できない。
Vb301/Va301
=γ1・(Kb/Ka)・{(B1c−B5c)/(B1c+B5c)}・(V/ω) ・・・(202)
そこで、v×B成分の磁場の変動要因と同じ変動要因(B1c+B5c)・C1を持つ∂A/∂t成分を抽出する必要がある。このような∂A/∂t成分を抽出するための方法として、磁場B1とB5との位相差がΔθ5で、磁場B2とB6との位相差がΔθ6である第1の励磁状態から位相差がΔθ5+π、Δθ6+πである第2の励磁状態に変化させると、B5cが反転することを利用する。式(138)から、第2の励磁状態における第1の電極間起電力の中に含まれる∂A/∂t成分のベクトルVa301Rにかかるスパンの変動要因は、(B1c+B5c)・C1で表され、補正の対象となるv×B成分のベクトルVb301にかかるスパンの変動要因と同じになる。つまり、第2の励磁状態における第1の電極間起電力Va301R+Vb301Rの中からVa301Rを取り出せば、Vb301の正規化が可能となる。
∂A/∂t成分のベクトルVa301Rを抽出する方法としては、第2の構成のときと同じく複数の周波数成分の出力差を利用する第1の抽出方法と、v×B成分と∂A/∂t成分の向きを考慮した第2の抽出方法の2つがある。
まず、第1の抽出方法により∂A/∂t成分のベクトルVa301R及びVa302Rを抽出する方法について説明する。
第2の励磁状態において第1の電極間起電力の中の∂A/∂t成分(第1の∂A/∂t成分)Va301Rを抽出する。角周波数ω0の励磁電流を励磁コイル3a,3bに供給した場合の第2の励磁状態において電極2a,2bで検出される第1の電極間起電力は、式(138)に示した∂A/∂t成分のベクトルVa301Rと式(139)に示したv×B成分のベクトルVb301Rの合成ベクトルVa301R+Vb301Rに相当する。
図43に、第1の励磁コイル3aのみに角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される∂A/∂t成分のベクトルVa101とv×B成分のベクトルVb101と合成ベクトルVa101+Vb101とを示し、図44に、第1の励磁状態の位相条件で第2の励磁コイル3bのみに角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される∂A/∂t成分のベクトルVa501とv×B成分のベクトルVb501と合成ベクトルVa501+Vb501とを示し、図45に、第1の励磁状態の位相条件で励磁コイル3aと3bの両方に角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される∂A/∂t成分のベクトルVa301とv×B成分のベクトルVb301と合成ベクトルVa301+Vb301とを示す。また、図46に、第2の励磁状態の位相条件で第2の励磁コイル3bのみに角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される∂A/∂t成分のベクトルVa501Rとv×B成分のベクトルVb501Rと合成ベクトルVa501R+Vb501Rとを示し、図47に、第2の励磁状態の位相条件で励磁コイル3aと3bの両方に角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される∂A/∂t成分のベクトルVa301Rとv×B成分のベクトルVb301Rと合成ベクトルVa301R+Vb301Rとを示す。
∂A/∂t成分の大きさは励磁角周波数ωに比例し、v×B成分は励磁角周波数ωに依存しないことに着眼し、ある角周波数ω0で励磁したときの合成ベクトルと別の角周波数ω2で励磁したときの合成ベクトルとの差を求める。この差は、∂A/∂t成分の大きさの変化分だけを与えるベクトルになるので、この変化分から∂A/∂t成分を抽出することができる。図48は、第2の励磁状態の合成ベクトルVa301R+Vb301Rから第1の∂A/∂t成分のベクトルVa301Rを抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。
第2の励磁状態において励磁角周波数をω2としたときに電極2a,2bで検出されるv×B成分のベクトルは、式(139)に示したベクトルVb301Rと同じである。一方、第2の励磁状態において励磁角周波数をω2としたときの∂A/∂t成分のベクトルVa321Rは、式(138)においてω0をω2で置き換えたものとなり、次式で表される。
Va321R=Ka・(B1c+B5c)・C1・ω2 ・・・(203)
励磁角周波数ω0における合成ベクトルと励磁角周波数ω2における合成ベクトルとの差分を求めると、v×B成分がキャンセルされ、求めた差分はVa301R−Va321Rと同じになる。この差分を角周波数ω0のときの値に戻すためにω0/(ω0−ω2)倍すれば、次式のように角周波数ω0のときの∂A/∂t成分Va301Rを、異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。
(Va301R−Va321R)・ω0/(ω0−ω2)
=Ka・(B1c+B5c)・C1・(ω0−ω2)・ω0/(ω0−ω2)
=Ka・(B1c+B5c)・C1・ω0
=Va301R ・・・(204)
同様の手順により、第2の励磁状態において電極2c,2dで検出される第2の電極間起電力の中の∂A/∂t成分(第2の∂A/∂t成分)Va302R=Ka・(B2c+B6c)・C2・ω0を、異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。
次に、第2の抽出方法により∂A/∂t成分のベクトルVa301R及びVa302Rを抽出する方法について説明する。第1の抽出方法と同様に、第2の励磁状態における第1の電極間起電力の中の第1の∂A/∂t成分Va301Rを抽出する。ここで、Va301R≫Vb301Rと近似できる場合は、Vb301R≒0となり、近似的に∂A/∂t成分のベクトルVa301Rを抽出できる。
初期状態(校正時の状態)において、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B1と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B5を等しく設定しておくと、その後の磁場B1とB5との差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b1+b5・exp(j・Δθ5)|≫|b1−b5・exp(j・Δθ5)|
・・・(205)
また、通常ω0>γ1・Vが成り立つことから、式(205)の条件を考慮すると、式(122)の第1の電極間起電力E301Rにおいて次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b1+b5・exp(j・Δθ4)}|
≫|γ1・V・exp(j・Δθ01)・{b1−b5・exp(j・Δθ5)}|
・・・(206)
式(206)の条件を用いて、第1の電極間起電力E301Rを近似した電極間起電力をE301R’とすると、電極間起電力E301R’は次式で表される。
E301R’≒Vad031+Vbd031 ・・・(207)
E301R’=rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b1+b5・exp(j・Δθ5)}
=Vad031 ・・・(208)
式(208)より、合成ベクトルVa301R+Vb301R中の第1の∂A/∂t成分のベクトルVa301Rを第2の抽出方法を用いて抽出できることが分かる。
同様の手順により、第2の励磁状態における第2の電極間起電力の中の第2の∂A/∂t成分のベクトルVa302R=Ka・(B2c+B6c)・C2・ω0を第2の抽出方法を用いて抽出することができる。
図49は、合成ベクトルVa301+Vb301を第1の∂A/∂t成分のベクトルVa301Rにより正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。抽出した第1の∂A/∂t成分のベクトルVa301Rにより、第1の励磁状態において電極2a,2bで検出される合成ベクトルVa301+Vb301を正規化する。正規化した合成ベクトルをω0倍した合成ベクトルは、以下の∂A/∂t成分のベクトルVna301とv×B成分のベクトルVnb301の合成ベクトルVna301+Vnb301で表される。
Vna301=(Va301/Va301R)・ω0
={(B1c−B5c)/(B1c+B5c)}・ω0 ・・(209)
Vnb301=(Vb301/Va301R)・ω0
=γ1・(Kb/Ka)・V ・・・(210)
なお、正規化した合成ベクトルをω0倍する理由は、平均流速の大きさVにかかる係数(スパン)からω0を取り除くためである。式(210)によれば、電極2a,2bにおける正規化ベクトルVnb301のVにかかる係数の中に、流速分布の影響を受けるスパン変動要因γ1は残っているが、それ以外のスパン変動要因(B1c+B5c)・C1は除去されていることが分かる。
第1の∂A/∂t成分を用いた正規化と同様に、抽出した第2の∂A/∂t成分のベクトルVa302により、第1の励磁状態において電極で2c,2dで検出される合成ベクトルVa302+Vb302を正規化する。正規化した合成ベクトルをω0倍した合成ベクトルは、以下の∂A/∂t成分のベクトルVna302とv×B成分のベクトルVnb302の合成ベクトルVna302+Vnb302で表される。
Vna302=(Va302/Va302R)・ω0
={(B2c−B6c)/(B2c+B6c)}・ω0 ・・(211)
Vnb302=(Vb302/Va302R)・ω0
=γ2・(Kb/Ka)・V ・・・(212)
式(212)によれば、電極2c,2dにおける正規化ベクトルVnb302のVにかかる係数の中に、流速分布の影響を受けるスパン変動要因γ2は残っているが、それ以外のスパン変動要因(B2c+B6c)・C2は除去されていることが分かる。
ここで、第1の電極間起電力を正規化した合成ベクトルをVn301、第2の電極間起電力を正規化した合成ベクトルをVn302とすると、正規化ベクトルVn301,Vn302は式(209)〜式(212)から次式で表される。
Vn301=Vna301+Vnb301
={(B1c−B5c)/(B1c+B5c)}・ω0
+γ1・(Kb/Ka)・V ・・・(213)
Vn302=Vna302+Vnb302
={(B2c−B6c)/(B2c+B6c)}・ω0
+γ2・(Kb/Ka)・V ・・・(214)
次に、流速分布の影響を受けるスパン変動要因の補正について説明する。第1の原理のときと同様に正規化ベクトルの平均の値においてγ=(γ1+γ2)/2に設定すれば、2対の電極により、流速分布の影響を補正することができる。式(213)、式(214)より、正規化ベクトルVn301とVn302の平均をとれば、次式に示すように、平均流速の大きさVにかかる係数から、流速分布の影響によるスパン変動要因γ1,γ2を除去できることが分かる。図50は、正規化ベクトルVn301とVn302を平均化する処理を複素ベクトル表現した図である。
(Vn301+Vn302)/2
=γ・(Kb/Ka)・V
+[{(B1c−B5c)/(B1c+B5c)}
+{(B2c−B6c)/(B2c+B6c)}]・ω0 ・・・(215)
ここで、励磁コイル3aと電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3bと電極2a,2bとの距離d5がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、B1c≒B5cとなり、また励磁コイル3aと電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3bと電極2c,2dとの距離d6がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、B2c≒B6cとなる。このとき、Ka=exp(j・π/2)、Kb=exp(j・Δθ01)であることを考慮すると、式(215)より平均流速の大きさVは次式で表される。
V=|{(Vn301+Vn302)/2}/{γ・(Kb/Ka)}|
=|(Vn301+Vn302)/2|/γ ・・・(216)
[第4の原理]
次に、流速分布の影響を含めたスパン補正の第4の原理について説明する。励磁コイルの軸を含む平面PLNを挟んで上流側と下流側に配置した第1の電極と第3の電極で検出される合成ベクトルの和及び差は、v×B成分と∂A/∂t成分とからなる。合成ベクトルの和の中のv×B成分のスパン変動要因を消去するために、合成ベクトルの差の中の∂A/∂t成分を抽出する。抽出した∂A/∂t成分を用いて、合成ベクトルの和を正規化すれば、スパンの変動要因が消去された正規化ベクトルを得ることができる。ただし、このままでは流速分布の影響によるスパン変動要因を消去できない。そこで、第1の電極と測定管1の円周方向の位置が異なる第2の電極、第3の電極と円周方向の位置が異なる第4の電極においても、同様の正規化を行うことにより複数の正規化ベクトルを得ることができる。複数の正規化ベクトルを平均化することにより、流速分布の影響によるスパン変動要因を消去することができ、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を消去した出力を得ることができる。以上が本発明のスパン補正の第4の原理である。
また、複数の正規化ベクトルを平均化して流速分布の影響を補正することは、複数の電極の合成ベクトルの線形結合をとれば実現できるので、第4の原理を下記のように別形態で表現することもできる。励磁コイルの軸を含む平面PLNを挟んで複数の電極を測定管の円周方向の異なる位置に複数組配置する。各々の電極の組における電極で検出される合成ベクトルの和を電極の組の数だけ線形結合をとれば、合成ベクトルの和の線形結合の中のv×B成分の平均流速Vにかかる係数(スパン)の変動要因のうち流速分布の影響によるものが消去される。合成ベクトルの和の線形結合の中のv×B成分の平均流速Vにかかるスパンの変動要因を消去するために、各々の電極の組において、電極で検出される合成ベクトルの差を電極の組の数だけ線形結合し、合成ベクトルの差の線形結合の中の∂A/∂t成分を抽出する。抽出した∂A/∂t成分を用いて、線形結合した合成ベクトルの和を正規化すれば、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を消去した出力を得ることができる。
以上の第4の原理を図25の第4の構成に適用する場合について説明する。まず、∂A/∂t成分の抽出方法について説明する。第4の構成の場合、第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の差(第1の起電力差)における第1の∂A/∂t成分と、第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の差(第2の起電力差)における第2の∂A/∂t成分の2つの∂A/∂t成分を抽出する必要がある。
まず、第1の電極間起電力と第3の電極間起電力との第1の起電力和の合成ベクトルVa40s1+Vb40s1中のv×B成分を∂A/∂t成分で補正することを考える。第1の起電力和における∂A/∂t成分Va40s1を合成ベクトルから抽出できたとしても、ベクトルVa40s1における変動要因(B1c−B7c)・C1とv×B成分のベクトルVb40s1における、流速分布の影響を除いた変動要因(B1c+B7c)・C1は異なる値となる。したがって、スパン補正の対象となる合成ベクトル中の∂A/∂t成分Va40s1でv×B成分Vb40s1の正規化を行っても次式のとおり磁場の変動要因(B1c−B5c)/(B1c+B5c)が残り、スパン変動要因が除去できない。
Vb40s1/Va40s1
=γ1・(Kb/Ka)・{(B1c−B7c)/(B1c+B7c)}・(V/ω) ・・・(217)
そこで、v×B成分の磁場の変動要因と同じ変動要因(B1c+B7c)・C1を持つ∂A/∂t成分を抽出する必要がある。このような∂A/∂t成分を抽出するための方法として、第1の電極間起電力と第3の電極間起電力との差をとれば、B7cが反転することを利用する。式(174)から、第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の起電力差の中に含まれる∂A/∂t成分のベクトルVa40d1にかかるスパンの変動要因は、(B1c+B7c)・C1で表され、補正の対象となるv×B成分のベクトルVb40s1にかかるスパンの変動要因と同じになる。つまり、第2の励磁状態における第1の起電力差Va40d1+Vb40d1の中からVa40d1を取り出せば、Vb40s1の正規化が可能となる。
∂A/∂t成分のベクトルVa40d1を抽出する方法としては、第2の構成のときと同じく複数の周波数成分の出力差を利用する第1の抽出方法と、v×B成分と∂A/∂t成分の向きを考慮した第2の抽出方法の2つがある。
まず、第1の抽出方法により∂A/∂t成分のベクトルVa40d1及びVa40d2を抽出する方法について説明する。
第1の電極間起電力と第3の電極間起電力との第1の起電力差における第1の∂A/∂t成分のベクトルVa40d1を抽出する。角周波数ω0の励磁電流を励磁コイル3に供給した場合に電極2a,2bで検出される第1の電極間起電力と電極2e,2fで検出される第3の電極間起電力との差は、式(174)に示した∂A/∂t成分のベクトルVa40d1と式(175)に示したv×B成分のベクトルVb40d1の合成ベクトルVa40d1+Vb40d1に相当する。図51に電極2a,2bで検出される合成ベクトルVa101+Vb101(第1の電極間起電力)を示し、図52に電極2e,2fで検出される合成ベクトルVa403+Vb403 (第3の電極間起電力)を示し、図53に第1の起電力差のベクトルVa40d1+Vb40d1を示す。
∂A/∂t成分の大きさは励磁角周波数ωに比例し、v×B成分は励磁角周波数ωに依存しないことに着眼し、ある角周波数ω0で励磁したときの合成ベクトルと別の角周波数ω2で励磁したときの合成ベクトルとの差を求める。この差は、∂A/∂t成分の大きさの変化分だけを与えるベクトルになるので、この変化分から∂A/∂t成分を抽出することができる。図54は、第1の起電力差の合成ベクトルVa40d1+Vb40d1から第1の∂A/∂t成分のベクトルVa40d1を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。
励磁角周波数をω2としたときの第1の起電力差のv×B成分は、式(175)に示したベクトルVb40d1と同じである。一方、励磁角周波数をω2としたときの第1の起電力差の∂A/∂t成分のベクトルVa42d1は、式(174)においてω0をω2で置き換えたものとなり、次式で表される。
Va42d1=Ka・(B1c+B7c)・C1・ω2 ・・・(218)
励磁角周波数ω0における第1の起電力差の合成ベクトルと励磁角周波数ω2における第1の起電力差の合成ベクトルとの差分を求めると、v×B成分がキャンセルされ、求めた差分はVa40d1−Va42d1と同じになる。この差分を角周波数ω0のときの値に戻すためにω0/(ω0−ω2)倍すれば、次式のように励磁角周波数ω0のときの∂A/∂t成分Va40d1を、異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。
(Va40d1−Va42d1)・ω0/(ω0−ω2)
=Ka・(B1c+B7c)・C1・(ω0−ω2)・ω0/(ω0−ω2)
=Ka・(B1c+B7c)・C1・ω0
=Va40d1 ・・・(219)
同様の手順により、電極2c,2dで検出される第2の電極間起電力と電極2g,2hで検出される第4の電極間起電力の第2の起電力差における第2の∂A/∂t成分のベクトルVa40ds2=Ka・(B2c+B8c)・C2・ω0を、異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。
次に、第2の抽出方法により∂A/∂t成分のベクトルVa40d1及びVa40d2を抽出する方法について説明する。第1の抽出方法と同様に、第1の起電力差における第1の∂A/∂t成分のベクトルVa40d1を抽出する。ここで、Va40d1≫Vb40d1と近似できる場合は、Vb40d1≒0となり、近似的に∂A/∂t成分のベクトルVa40d1を抽出できる。
初期状態(校正時の状態)において、磁場B1と磁場B7を等しく設定しておくと、その後の磁場B1とB7との差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b1+b7・exp(j・Δθ7)|≫|b1−b7・exp(j・Δθ7)|
・・・(220)
また、通常ω0>γ1・Vが成り立つことから、式(220)の条件を考慮すると、式(157)の第1の起電力差E40d1において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b1+b7exp(j・Δθ7)|
≫|γ1・V・exp(j・Δθ01)・{b1−b7exp(j・Δθ7)|
・・・(221)
式(221)の条件を用いて、第1の起電力差E40d1を近似した起電力差をE40d1’とすると、起電力差E40d1’は次式で表される。
E40d1’≒Va40d1+Vb40d1 ・・・(222)
E40d1’=rk1・exp{j・(θ1+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b1+b7・exp(j・Δθ7)}
=Va40d1 ・・・(223)
式(223)より、合成ベクトルVa40d1+Vb40d1中の第1の∂A/∂t成分のベクトルVa40d1を第2の抽出方法を用いて抽出できることが分かる。
同様の手順により、第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の第2の起電力差における第2の∂A/∂t成分のベクトルVa40d2=Ka・(B2c+B8c)・C2・ω0を第2の抽出方法を用いて抽出することができる。
図55は、スパン補正の対象となる第1の起電力和の合成ベクトルVa40s1+Vb40s1を示す図、図56は、合成ベクトルVa40s1+Vb40s1を∂A/∂t成分のベクトルVa40d1により正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。抽出した第1の∂A/∂t成分のベクトルVa40d1により、第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の第1の起電力和における合成ベクトルVa40s1+Vb40s1を正規化する。正規化した合成ベクトルをω0倍した合成ベクトルは、以下の∂A/∂t成分のベクトルVna401とv×B成分のベクトルVnb401の合成ベクトルVna401+Vnb401で表される。
Vna401=(Va40s1/Va40d1)・ω0
={(B1c−B7)/(B1c+B7)}・ω0 ・・・(224)
Vnb401=(Vb40s1/Va40d1)・ω0
=γ1・(Kb/Ka)・V ・・・(225)
なお、正規化した合成ベクトルをω0倍する理由は、平均流速の大きさVにかかる係数(スパン)からω0を取り除くためである。式(225)によれば、正規化ベクトルVnb401のVにかかる係数の中に、流速分布の影響を受けるスパン変動要因γ1は残っているが、それ以外のスパン変動要因(B1c+B7c)・C1は除去されていることが分かる。
第1の∂A/∂t成分を用いた正規化と同様に、抽出した第2の∂A/∂t成分Va40d2により、第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の第2の起電力和における合成ベクトルVa40s2+Vb40s2を正規化する。正規化した合成ベクトルをω0倍した合成ベクトルは、以下の∂A/∂t成分のベクトルVna402とv×B成分のベクトルVnb402の合成ベクトルVna402+Vnb402で表される。
Vna402=(Va40s2/Va40d2)・ω0
={(B2c−B8c)/(B2c+B8c)}・ω0 ・・(226)
Vnb402=(Vb40s2/Va40d2)・ω0
=γ2・(Kb/Ka)・V ・・・(227)
式(227)によれば、正規化ベクトルVnb402のVにかかる係数の中に、流速分布の影響を受けるスパン変動要因γ2は残っているが、それ以外のスパン変動要因(B2c+B8c)・C2は除去されていることが分かる。
ここで、第1の起電力和を正規化した合成ベクトルをVn401、第2の起電力和を正規化した合成ベクトルをVn402とすると、正規化ベクトルVn401,Vn402は式(224)〜式(227)から次式で表される。
Vn401=Vna401+Vnb401
={(B1c−B7c)/(B1c+B7c)}・ω0
+γ1・(Kb/Ka)・V ・・・(228)
Vn402=Vna402+Vnb402
={(B2c−B8c)/(B2c+B8c)}・ω0
+γ2・(Kb/Ka)・V ・・・(229)
次に、流速分布の影響を受けるスパン変動要因の補正について説明する。第1の原理のときと同様に正規化ベクトルの平均の値においてγ=(γ1+γ2)/2に設定すれば、2対で1組の電極を2組設けることにより、流速分布の影響を補正することができる。式(228)、式(229)より、正規化ベクトルVn401とVn402の平均をとれば、次式に示すように、平均流速の大きさVにかかる係数から、流速分布の影響によるスパンの変動要因γ1,γ2を除去できることが分かる。図57は、正規化ベクトルVn401とVn402を平均化する処理を複素ベクトル表現した図である。
(Vn401+Vn402)/2
=γ・(Kb/Ka)・V
+[{(B1c−B7c)/(B1c+B7c)}
+{(B2c−B8c)/(B2c+B8c)}]・ω0 ・・・(230)
ここで、励磁コイル3と電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3と電極2e,2fとの距離d7がほぼ等しくなるように電極2e,2fを配置すれば、B1c≒B7cとなり、また励磁コイル3と電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3と電極2g,2hとの距離d8がほぼ等しくなるように電極2g,2hを配置すれば、B2c≒B8cとなる。このとき、Ka=exp(j・π/2)、Kb=exp(j・Δθ01)であることを考慮すると、式(230)より平均流速の大きさVは次式で表される。
V=|{(Vn401+Vn402)/2}/{γ・(Kb/Ka)}|
=|(Vn401+Vn402)/2|/γ ・・・(231)
[第1の実施の形態]
次に、本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第1の原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図1に示した電磁流量計と同様であるので、図1の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法として前記第1の抽出方法を用いるものである。
1対の第1の電極2a,2bともう1対の第2の電極2c,2dは、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2とのなす角が略π/2となるように配置されている(φe1+φe2≒π/2)。図1において、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B11と、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B12は、以下のように与えられるものとする。
B11=b11・cos(ω0・t−θ11)+b11・cos(ω2・t−θ11)
・・・(232)
B12=b12・cos(ω0・t−θ12)+b12・cos(ω2・t−θ12)
・・・(233)
但し、B11,B12は1つの励磁コイル3から発生しているので、b11とb12、θ11とθ12は互いに関係があり、独立変数ではない。式(232)、式(233)において、b11,b12はそれぞれ磁束密度B11,B12の振幅、ω0,ω2は異なる角周波数、θ11は磁場B11の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差及び角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差、θ12は磁場B12の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差及び角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差である。以下、磁束密度B11を磁場B11とし、磁束密度B12を磁場B12とする。
電極2a,2bにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk1(式(41))をrk11とし、電極2a,2bで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ1(式(53))をγ11とする。また、電極2c,2dにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk2(式(42))をrk12とし、電極2c,2dで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ2(式(54))をγ12とする。
このとき、電極2a,2b間で検出される第1の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx101cとすると、電極間起電力Ex101cは式(55)に対応して次式で表される。
Ex101c=rk11・ω0・b11・exp{j・(π/2+θ11+θ00)}
+γ11・rk11・V・b11・exp{j・(θ11+θ01)}
・・・(234)
第1の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx121cとすると、電極間起電力Ex121cは式(55)に対応して次式で表される。
Ex121c=rk11・ω2・b11・exp{j・(π/2+θ11+θ00)}
+γ11・rk11・V・b11・exp{j・(θ11+θ01)}
・・・(235)
また、電極2c,2d間で検出される第2の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx102cとすると、電極間起電力Ex102cは式(56)に対応して次式で表される。
Ex102c=rk12・ω0・b12・exp{j・(π/2+θ12+θ00)}
+γ12・rk12・V・b12・exp{j・(θ12+θ01)}
・・・(236)
第2の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx122cとすると、電極間起電力Ex122cは式(56)に対応して次式で表される。
Ex122c=rk12・ω2・b12・exp{j・(π/2+θ12+θ00)}
+γ12・rk12・V・b12・exp{j・(θ12+θ01)}
・・・(237)
ここで、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(234)の電極間起電力Ex101cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをEx101とすると、電極間起電力Ex101は次式で表される。
Ex101=rk11・B11・exp{j・(θ11+θ00)}
・{ω0・exp(j・π/2)+γ11・V・exp(j・Δθ01)}
・・・(238)
式(235)の電極間起電力Ex121cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをEx121とすると、電極間起電力Ex121は次式で表される。
Ex121=rk11・B11・exp{j・(θ11+θ00)}
・{ω2・exp(j・π/2)+γ11・V・exp(j・Δθ01)}
・・・(239)
式(236)の電極間起電力Ex102cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをEx102とすると、電極間起電力Ex102は次式で表される。
Ex102=rk12・B12・exp{j・(θ12+θ00)}
・{ω0・exp(j・π/2)+γ12・V・exp(j・Δθ01)}
・・・(240)
式(237)の電極間起電力Ex122cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをEx122とすると、電極間起電力Ex122は次式で表される。
Ex122=rk12・B12・exp{j・(θ12+θ00)}
・{ω2・exp(j・π/2)+γ12・V・exp(j・Δθ01)}
・・・(241)
電極間起電力Ex101とEx121との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果を起電力差EdA11とすれば、起電力差EdA11は次式で表される。この起電力差EdA11は、第1の原理の第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA11=(Ex101−Ex121)・ω0/(ω0−ω2)
=[rk11・B11・exp{j・(π/2+θ11+θ00)}]・ω0
・・・(242)
電極間起電力Ex102とEx122との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果を起電力差EdA12とすれば、起電力差EdA12は次式で表される。この起電力差EdA12は、第1の原理の第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA12=(Ex102−Ex122)・ω0/(ω0−ω2)
=[rk12・B12・exp{j・(π/2+θ12+θ00)}]・ω0
・・・(243)
起電力差EdA11,EdA12は、平均流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この起電力差EdA11,EdA12を用いてそれぞれ電極間起電力Ex101,Ex102中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。なお、起電力差EdA11は、正確には電極間起電力Ex101とEx121との起電力差をω0/(ω0−ω2)倍したものであるが、ω0/(ω0−ω2)倍した理由は、式の展開を容易にするためである。電極間起電力Ex102とEx122との起電力差をω0/(ω0−ω2)倍して起電力差EdA12とする理由も同じである。
式(238)の第1の電極間起電力Ex101を式(242)の起電力差EdA11で正規化し、ω0倍した結果をExn101とすれば、正規化起電力Exn101は次式のようになる。
Exn101=(Ex101/EdA11)・ω0
=ω0+[γ11・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(244)
また、式(240)の第2の電極間起電力Ex102を式(243)の起電力差EdA12で正規化し、ω0倍した結果をExn102とすれば、正規化起電力Exn102は次式のようになる。
Exn102=(Ex102/EdA12)・ω0
=ω0+[γ12・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(245)
式(244)の右辺第2項及び式(245)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。なお、第1の電極間起電力Ex101を起電力差EdA11で正規化した結果をω0倍した理由は、平均流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。第2の電極間起電力Ex102を起電力差EdA12で正規化した結果をω0倍した理由も同じである。
式(244)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ11の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもち、(245)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ12の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度を持つ。係数γ11,γ12は流速分布の影響により変化する値であり、角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(244)の右辺第2項及び式(245)の右辺第2項は被測定流体の流速及び流速分布が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
さらに上述のように、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2の角度はほぼπ/2に保たれているので、図82、図83に示したような軸対称流のときの流速分布に関係する比例係数をγ10とすると、γ10,γ11,γ12の関係は次式で表すことができる。比例係数γ10の値は校正時に確認することができる。
γ10=(γ11+γ12)/2 ・・・(246)
よって、電極2a,2bにおける正規化起電力Exn101と電極2c,2dにおける正規化起電力Exn102の平均をとったものをExn10aとすると、平均化起電力Exn10aでは、次式のように流速分布に影響する比例係数γ11,γ12が除去され、代わりに校正時に確認できる比例係数γ10が平均流速の大きさVにかかっていることが分かる。
Exn10a=(Exn101+Exn102)/2
=ω0+[γ10・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(247)
式(247)の右辺第2項において、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ10の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。よって、流速分布の影響も含めて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。式(247)より、平均流速の大きさVは次式のように表される。
V=|(Exn10a−ω0)
/[γ10・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|(Exn10a−ω0)|/γ10 ・・・(248)
なお、第1の原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表1のとおりである。本実施の形態は、表1から明らかなように、前述の第1の原理を具体的に実現する1つの例である。
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。図58は本実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、励磁コイル3と、励磁コイル3に励磁電流を供給する電源部4と、電極2a,2bから第1の合成起電力を検出し、この第1の合成起電力のうち同時又は交互に得られる第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求めると共に、電極2c,2dから第2の合成起電力を検出し、この第2の合成起電力のうち同時又は交互に得られる第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求める信号検出部5と、第1の合成起電力における2つの周波数成分の起電力差を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の合成起電力における2つの周波数成分の起電力差を第2の∂A/∂t成分として抽出する∂A/∂t成分抽出部6と、第1の合成起電力における第1の周波数成分又は第2の周波数成分の中のv×B成分に含まれるスパンを第1の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第1の正規化起電力を求めると共に、第2の合成起電力における第1の周波数成分又は第2の周波数成分の中のv×B成分に含まれるスパンを第2の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第2の正規化起電力を求める信号正規化部7と、第1の正規化起電力と第2の正規化起電力を線形結合する線形結合部8と、この線形結合の結果から流体の流量を算出する流量出力部9とを有する。
励磁コイル3と電源部4とは、平面PLNに対して非対称、かつ時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁部となる。
電源部4は、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む励磁電流を励磁コイル3に供給する。このとき、励磁電流における角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分の振幅は同一である。
図59は、信号検出部5と∂A/∂t成分抽出部6と信号正規化部7と線形結合部8と流量出力部9の動作を示すフローチャートである。
まず、信号検出部5は、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力Ex101の振幅r101を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex101との位相差φ101を図示しない位相検波器により求める。また、信号検出部5は、第1の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力Ex121の振幅r121を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex121との位相差φ121を位相検波器により求める(図59ステップ101)。
同様に、信号検出部5は、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力Ex102の振幅r102を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex102との位相差φ102を図示しない位相検波器により求める。また、信号検出部5は、第2の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力Ex122の振幅r122を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex122との位相差φ122を位相検波器により求める(ステップ102)。電極間起電力Ex101,Ex121,Ex102,Ex122は、バンドパスフィルタによっても周波数分離することができるが、実際にはコムフィルタとよばれる櫛形のデジタルフィルタを使用すれば、2つの角周波数ω0,ω2の成分に簡単に分離することができる。
続いて、∂A/∂t成分抽出部6は、電極間起電力Ex101の実軸成分Ex101xと虚軸成分Ex101y、および電極間起電力Ex121の実軸成分Ex121xと虚軸成分Ex121yを次式のように算出する(ステップ103)。
Ex101x=r101・cos(φ101) ・・・(249)
Ex101y=r101・sin(φ101) ・・・(250)
Ex121x=r121・cos(φ121) ・・・(251)
Ex121y=r121・sin(φ121) ・・・(252)
式(249)〜式(252)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6は、電極間起電力Ex101とEx121との起電力差EdA11の大きさと角度を求める(ステップ104)。このステップ104の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(242)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6は、起電力差EdA11の大きさ|EdA11|を次式のように算出する。
|EdA11|={(Ex101x−Ex121x)2
+(Ex101y−Ex121y)2}1/2・ω0/(ω0−ω2)
・・・(253)
そして、∂A/∂t成分抽出部6は、起電力差EdA11の角度∠EdA11を次式のように算出する。
∠EdA11=tan−1{(Ex101y−Ex121y)
/(Ex101x−Ex121x)} ・・・(254)
これで、ステップ104の処理が終了する。
また、∂A/∂t成分抽出部6は、電極間起電力Ex102の実軸成分Ex102xと虚軸成分Ex102y、および電極間起電力Ex122の実軸成分Ex122xと虚軸成分Ex122yを次式のように算出する(ステップ105)。
Ex102x=r102・cos(φ102) ・・・(255)
Ex102y=r102・sin(φ102) ・・・(256)
Ex122x=r122・cos(φ122) ・・・(257)
Ex122y=r122・sin(φ122) ・・・(258)
式(255)〜式(258)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6は、電極間起電力Ex102とEx122との起電力差EdA12の大きさと角度を求める(ステップ106)。このステップ106の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(243)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6は、起電力差EdA12の大きさ|EdA12|を次式のように算出する。
|EdA12|={(Ex102x−Ex122x)2
+(Ex102y−Ex122y)2}1/2・ω0/(ω0−ω2)
・・・(259)
そして、∂A/∂t成分抽出部6は、起電力差EdA12の角度∠EdA12を次式のように算出する。
∠EdA12=tan−1{(Ex102y−Ex122y)
/(Ex102x−Ex122x)} ・・・(260)
これで、ステップ106の処理が終了する。
次に、信号正規化部7は、電極間起電力Ex101を起電力差EdA11で正規化した正規化起電力Exn101の大きさと角度を求める(ステップ107)。このステップ107の処理は、式(244)の算出に相当する処理である。信号正規化部7は、正規化起電力Exn101の大きさ|Exn101|を次式のように算出する。
|Exn101|=(r101/|EdA11|)・ω0 ・・・(261)
そして、信号正規化部7は、正規化起電力Exn101の角度∠Exn101を次式のように算出する。
∠Exn101=φ101−∠EdA11 ・・・(262)
さらに、信号正規化部7は、正規化起電力Exn101の実軸成分Exn101xと虚軸成分Exn101yを次式のように算出する。
Exn101x=|Exn101|・cos(∠Exn101) ・・・(263)
Exn101y=|Exn101|・sin(∠Exn101) ・・・(264)
これで、ステップ107の処理が終了する。
また、信号正規化部7は、電極間起電力Ex102を起電力差EdA12で正規化した正規化起電力Exn102の大きさと角度を求める(ステップ108)。このステップ108の処理は、式(245)の算出に相当する処理である。信号正規化部7は、正規化起電力Exn102の大きさ|Exn102|を次式のように算出する。
|Exn102|=(r102/|EdA12|)・ω0 ・・・(265)
そして、信号正規化部7は、正規化起電力Exn102の角度∠Exn102を次式のように算出する。
∠Exn102=φ102−∠EdA12 ・・・(266)
さらに、信号正規化部7は、正規化起電力Exn102の実軸成分Exn102xと虚軸成分Exn102yを次式のように算出する。
Exn102x=|Exn102|・cos(∠Exn102) ・・・(267)
Exn102y=|Exn102|・sin(∠Exn102) ・・・(268)
これで、ステップ108の処理が終了する。
次に、線形結合部8は、正規化起電力Exn101とExn102を平均化(線形結合)した平均化起電力Exn10aの実軸成分Exn10axと虚軸成分Exn10ayを次式のように算出する(ステップ109)。このステップ109の処理は、式(247)の算出に相当する処理である。
Exn10ax=(Exn101x+Exn102x)/2 ・・・(269)
Exn10ay=(Exn101y+Exn102y)/2 ・・・(270)
流量出力部9は、被測定流体の平均流速の大きさVを算出する(ステップ110)。このステップ110の処理は、式(248)の算出に相当する処理である。まず、流量出力部9は、平均化起電力Exn10aと角周波数ω0との差の大きさ|(Exn10a−ω0)|を次式のように算出する。
|(Exn10a−ω0)|={(Exn10ax−ω0)2
+(Exn10ay)2}1/2 ・・・(271)
そして、流量出力部9は、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出する。
V=|(Exn10a−ω0)|/γ10 ・・・(272)
これで、ステップ110の処理が終了する。なお、比例係数γ10は、校正等により予め求めることができる定数である。
信号検出部5と∂A/∂t成分抽出部6と信号正規化部7と線形結合部8と流量出力部9とは、以上のようなステップ101〜110の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ111においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、励磁コイル3から大きさが等しくかつ周波数が異なる2つの成分を含む磁場を被測定流体に印加し、電極2a,2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分Ex101と角周波数ω2の成分Ex121とから起電力差EdA11(第1の∂A/∂t成分)を抽出すると共に、電極2c,2d間の起電力のうち角周波数ω0の成分Ex102と角周波数ω2の成分Ex122とから起電力差EdA12(第2の∂A/∂t成分)を抽出し、起電力差EdA11を用いて第1の電極間起電力Ex101中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、起電力差EdA121を用いて第2の電極間起電力Ex102中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力Exn101とExn102を線形結合し、この線形結合した結果から被測定流体の流量を算出するようにしたので、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を排除することができ、正確なスパン補正を自動的に行うことができる。その結果、高精度の流量計測を行うことができる。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力Ex101,Ex102をスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力Ex121,Ex122をスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように電極間起電力Ex121からEx101を引いて起電力差EdA11を求める。
EdA11=(Ex121−Ex101)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(273)
また、電極間起電力Ex122からEx102を引いて起電力差EdA12を求める。
EdA12=(Ex122−Ex102)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(274)
そして、次式のように起電力差EdA11を用いて電極間起電力Ex121中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
Exn121=(Ex121/EdA11)・ω2 ・・・(275)
また、起電力差EdA12を用いて電極間起電力Ex122中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
Exn122=(Ex122/EdA12)・ω2 ・・・(276)
さらに、正規化起電力Exn121とExn122を平均化した平均化起電力Exn12aを次式のように求める。
Exn12a=(Exn121+Exn122)/2 ・・・(277)
そして、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出すればよい。その他の処理は電極間起電力Ex101,Ex102をスパン補正の対象とする場合と同じである。
V=|(Exn12a−ω2)|/γ10 ・・・(278)
また、本実施の形態では、複数の励磁周波数ω0,ω2で同時に励磁する例を示したが、単一の励磁周波数ω0又はω2で励磁を行い、励磁周波数をω0とω2で交互に切り替えながら励磁をした場合でも同じ効果を得ることができる。
また、本実施の形態において、電極2a,2b,2c,2dに対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極を追加することにより、流速分布の影響に対するスパン補正の性能を上げることが可能になる。この場合、追加する1対の電極間を結ぶ電極軸ともう1対の電極間を結ぶ電極軸とのなす角を、電極2a,2b,2c,2dの場合と同様にほぼπ/2に設定し、それぞれの電極の∂A/∂t成分で正規化した正規化起電力を、追加した電極の分も含めて平均化すればよい。
また、本実施の形態では、各電極における∂A/∂t成分を抽出し、正規化を行った後に各正規化起電力を平均化する例を示したが、第1の原理の別形態として示したとおり、各電極の起電力を線形結合し、また各電極の起電力の和をとり、起電力の和の中の∂A/∂t成分を抽出し、前記線形結合した起電力中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化すれば、本実施の形態と同等の結果を得ることができる。
この場合の電磁流量計の構成を図60に示す。信号検出部5の動作は本実施の形態と同様である。∂A/∂t成分抽出部6aは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力和、または第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分との起電力和を求め、求めた起電力の和の中の∂A/∂t成分を抽出する。
線形結合部8aは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分とを線形結合するか、あるいは第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分とを線形結合する。信号正規化部7aは、線形結合した起電力の中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化する。このとき、線形結合した起電力とそれを正規化する∂A/∂t成分には、同一周波数のものを用いる。流量出力部9aは、正規化の結果から流体の流量を算出する。
また、本実施の形態において磁場を有効に利用するために、図61の構成が利用できる。この構成では励磁コイル3a,3bの2つを用いる。電源部4から励磁コイル3a,3bに供給する励磁電流は図58の場合と同じである。電極軸EAX1と第1の励磁コイル3aの軸が垂直となり、また電極軸EAX2と第2の励磁コイル3bの軸が垂直となるように、励磁コイル3a,3bを配置する。
これにより、電極軸EAX1に垂直な磁場の成分は励磁コイル3aから発生する磁場から与えられ、また電極軸EAX2に垂直な磁場の成分は励磁コイル3bから発生する磁場から与えられることとなり、式(232)、式(233)で与えられる電極軸上の磁場の式がそのまま使用できる。磁場B11,B12はそれぞれ励磁コイル3a,3bから発生することになるので、b11とb12、θ11とθ12は独立変数となる。図61の構成によれば、図58の構成に比べて、電極軸EAX1,EAX2と直角に交差する磁場の成分が大きくなるので、信号検出部5で検出する各起電力を大きくすることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第2の原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図9に示した電磁流量計と同様であるので、図9の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法として前記第1の抽出方法を用いるものである。
1対の第1の電極2a,2bともう1対の第2の電極2c,2dは、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2とのなす角が略π/2となるように配置されている(φe3+φe4≒π/2)。図9において、励磁コイル3から発生する磁場Bbのうち、電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B13と、励磁コイル3から発生する磁場Bbのうち、電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B14は、以下のように与えられるものとする。
B13=b13・cos(ω0・t−θ13)+b13・cos(ω2・t−θ13)
・・・(279)
B14=b14・cos(ω0・t−θ14)+b14・cos(ω2・t−θ14)
・・・(280)
但し、B13,B14は1つの励磁コイル3から発生しているので、b13とb14、θ13とθ14は互いに関係があり、独立変数ではない。式(279)、式(280)において、b13,b14はそれぞれ磁束密度B13,B14の振幅、ω0,ω2は異なる角周波数、θ13は磁場B13の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差及び角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差、θ14は磁場B14の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差及び角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差である。以下、磁束密度B13を磁場B13とし、磁束密度B14を磁場B14とする。
磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk(式(71))をrk20とし、電極2a,2bで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ3(式(74))をγ13とし、電極2c,2dで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ4(式(75))をγ14とする。
このとき、電極2a,2b間で検出される第1の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx201cとすると、電極間起電力Ex201cは式(78)に対応して次式で表される。
Ex201c=rk20・ω0・b13・exp{j・(π/2+θ13+θ00)}
+γ13・rk20・V・b13・exp{j・(θ13+θ01)}
・・・(281)
第1の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx221cとすると、電極間起電力Ex221cは式(78)に対応して次式で表される。
Ex221c=rk20・ω2・b13・exp{j・(π/2+θ13+θ00)}
+γ13・rk20・V・b13・exp{j・(θ13+θ01)}
・・・(282)
また、電極2c,2d間で検出される第2の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx202cとすると、電極間起電力Ex202cは式(79)に対応して次式で表される。
Ex202c=rk20・ω0・b14
・exp{j・(−π/2+θ14+θ00)}
+γ14・rk20・V・b14・exp{j・(θ14+θ01)}
・・・(283)
第2の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx222cとすると、電極間起電力Ex222cは式(79)に対応して次式で表される。
Ex222c=rk20・ω2・b14
・exp{j・(−π/2+θ14+θ00)}
+γ14・rk20・V・b14・exp{j・(θ14+θ01)}
・・・(284)
ここで、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(281)の電極間起電力Ex201cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをEx201とすると、電極間起電力Ex201は次式で表される。
Ex201=rk20・B13・exp{j・(θ13+θ00)}
・{ω0・exp(j・π/2)+γ13・V・exp(j・Δθ01)}
・・・(285)
式(282)の電極間起電力Ex221cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをEx221とすると、電極間起電力Ex221は次式で表される。
Ex221=rk20・B13・exp{j・(θ13+θ00)}
・{ω2・exp(j・π/2)+γ13・V・exp(j・Δθ01)}
・・・(286)
また、位相差θ13とθ14との関係をθ14=θ13+Δθ14とする。式(283)の電極間起電力Ex202cにθ01=θ00+Δθ01、θ14=θ13+Δθ14を代入したものをEx202とすると、電極間起電力Ex202は次式で表される。
Ex202=rk20・B14
・exp(j・Δθ14)・exp{j・(θ13+θ00)}
・[ω0・exp{j・(−π/2)}
+γ14・V・exp(j・Δθ01)] ・・・(287)
式(284)の電極間起電力Ex222cにθ01=θ00+Δθ01、θ14=θ13+Δθ14を代入したものをEx222とすると、電極間起電力Ex222は次式で表される。
Ex222=rk20・B14
・exp(j・Δθ14)・exp{j・(θ13+θ00)}
・[ω2・exp{j・(−π/2)}
+γ14・V・exp(j・Δθ01)] ・・・(288)
電極間起電力Ex201とEx202との和をEx20sとすると、起電力和Ex20sは次式で表される。
Ex20s=Ex201+Ex202
=rk20・exp{j・(θ13+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b13−b14・exp(j・Δθ14)}・ω0
+rk20・exp{j・(θ13+θ00)}
・exp(j・Δθ01)
・{γ13・b13+γ14・b14・exp(j・Δθ14)}・V
・・・(289)
電極間起電力Ex201とEx202との差をEx20dとすると、起電力差Ex20dは次式で表される。
Ex20d=Ex201−Ex202
=rk20・exp{j・(θ13+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b13+b14・exp(j・Δθ14)}・ω0
+rk20・exp{j・(θ13+θ00)}
・exp(j・Δθ01)
・{γ13・b13−γ14・b14・exp(j・Δθ14)}・V
・・・(290)
電極間起電力Ex221とEx222との和をEx22sとすると、起電力和Ex22sは式(289)においてω0をω2で置き換えたものとなる。また、電極間起電力Ex221とEx222との差をEx22dとすると、起電力差Ex22dは式(290)においてω0をω2で置き換えたものとなる。
起電力差Ex20dとEx22dとの差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA2dとすれば、差分EdA2dは次式で表される。
EdA2d=(Ex20d−Ex22d)・ω0/(ω0−ω2)
=rk20・exp{j・(θ13+θ00)}・exp(j・π/2)
・{b13+b14・exp(j・Δθ14)}・ω0 ・・(291)
差分EdA2dは、平均流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この差分EdA2dを用いて起電力和Ex20s中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。なお、差分EdA2dは、正確には起電力差Ex20dとEx22dとの差をω0/(ω0−ω2)倍したものであるが、ω0/(ω0−ω2)倍した理由は、式の展開を容易にするためである。
ここで、第2の原理で説明したとおり、γ20=(γ13+γ14)/2と設定すれば、流速分布の影響を補正することができる。また、γ13=γ20+Δγ20、γ14=γ20−Δγ20と置き換える。式(289)の起電力和Ex20sを式(291)の差分EdA2dで正規化し、ω0倍した結果をExn20sとすれば、正規化起電力和Exn20sは次式のようになる。
Exn20s=(Ex20s/EdA2d)・ω0
={b13−b14・exp(j・Δθ14)}
/{b13+b14・exp(j・Δθ14)}・ω0
+Δγ20・exp{j・(−π/2+Δθ01)}
・{b13−b14・exp(j・Δθ14)}
/{b13+b14・exp(j・Δθ14)}・V
+γ20・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V ・・(292)
式(292)の右辺第2項及び第3項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。ここで、磁場B13と磁場B14がほぼ等しくなるように電極2a,2b,2c,2dを配置すると(b13≒b14、Δθ≒0)、式(292)の右辺第1項及び第2項は第3項に比べて無視できる。よって、式(292)の右辺は第3項のみとなり、これがv×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。
なお、起電力和Ex20sを差分EdA2dで正規化した結果をω0倍した理由は、平均流速の大きさVに係る右辺第3項から励磁角周波数ω0を消去するためである。式(292)の右辺第3項によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ20の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度を持つ。比例係数γ20は校正時に求めることのできる定数であり、式(292)の右辺第3項は被測定流体の平均流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、起電力差から抽出した∂A/∂t成分を用いて起電力和におけるv×B成分の正規化を行うことにより、流速分布による影響も含めて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
式(292)より、平均流速の大きさVは次式のように表される。
V=|(Exn20s)/[γ20・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|Exn20s|/γ20 ・・・(293)
なお、第2の原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表2のとおりである。本実施の形態は、表2から明らかなように、前述の第2の原理を具体的に実現する1つの例である。
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。図62は本実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図であり、図9と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、励磁コイル3と、励磁コイル3に励磁電流供給する電源部4bと、電極2a,2bから第1の合成起電力を検出し、この第1の合成起電力のうち同時又は交互に得られる第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求めると共に、電極2c,2dから第2の合成起電力を検出し、この第2の合成起電力のうち同時又は交互に得られる第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求める信号検出部5bと、第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力差を第1の周波数と第2の周波数の各々について求め、この2つの起電力差の差分を∂A/∂t成分として抽出する∂A/∂t成分抽出部6bと、線形結合部8bで求められた起電力和の中のv×B成分に含まれるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより正規化起電力和を求める信号正規化部7bと、第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和を第1の周波数又は第2の周波数のいずれか一方について求める線形結合部8bと、正規化の結果から流体の流量を算出する流量出力部9bとを有する。
電源部4bは、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む励磁電流を励磁コイル3に供給する。このとき、励磁電流における角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分の振幅は同一である。
図63は、信号検出部5bと∂A/∂t成分抽出部6bと信号正規化部7bと線形結合部8bと流量出力部9bの動作を示すフローチャートである。
まず、信号検出部5bは、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力Ex201の振幅r201を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex201との位相差φ201を図示しない位相検波器により求める。また、信号検出部5bは、第1の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力Ex221の振幅r221を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex221との位相差φ221を位相検波器により求める(図63ステップ201)。
同様に、信号検出部5bは、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力Ex202の振幅r202を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex202との位相差φ202を位相検波器により求める。また、信号検出部5bは、第2の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力Ex222の振幅r222を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex222との位相差φ222を位相検波器により求める(ステップ202)。電極間起電力Ex201,Ex221,Ex202,Ex222は、バンドパスフィルタやコムフィルタによって周波数分離することができる。
次に、∂A/∂t成分抽出部6bは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex201と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex202との起電力差Ex20dを算出する(ステップ203)。∂A/∂t成分抽出部6bは、電極間起電力Ex201の実軸成分Ex201xと虚軸成分の算出Ex201y、および電極間起電力Ex202の実軸成分Ex202xと虚軸成分の算出Ex202yを次式のように算出する。
Ex201x=r201・cos(φ201) ・・・(294)
Ex201y=r201・sin(φ201) ・・・(295)
Ex202x=r202・cos(φ202) ・・・(296)
Ex202y=r202・sin(φ202) ・・・(297)
そして、∂A/∂t成分抽出部6bは、起電力差Ex20dの実軸成分Ex20dxと虚軸成分Ex20dyを次式のように算出する。
Ex20dx=Ex201x−Ex202x ・・・(298)
Ex20dy=Ex201y−Ex202y ・・・(299)
これで、ステップ203の処理が終了する。
同様に、∂A/∂t成分抽出部6bは、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex221と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex222との起電力差Ex22dを算出する(ステップ204)。∂A/∂t成分抽出部6bは、電極間起電力Ex221の実軸成分Ex221xと虚軸成分の算出Ex221y、および電極間起電力Ex222の実軸成分Ex222xと虚軸成分の算出Ex222yを次式のように算出する。
Ex221x=r221・cos(φ221) ・・・(300)
Ex221y=r221・sin(φ221) ・・・(301)
Ex222x=r222・cos(φ222) ・・・(302)
Ex222y=r222・sin(φ222) ・・・(303)
そして、∂A/∂t成分抽出部6bは、起電力差Ex22dの実軸成分Ex22dxと虚軸成分Ex22dyを次式のように算出する。
Ex22dx=Ex221x−Ex222x ・・・(304)
Ex22dy=Ex221y−Ex222y ・・・(305)
これで、ステップ204の処理が終了する。
続いて、∂A/∂t成分抽出部6bは、起電力差Ex20dとEx22dとの差分EdA2dの大きさと角度を求める(ステップ205)。このステップ205の処理は、∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(291)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6bは、差分EdA2dの大きさ|EdA2d|を次式のように算出する。
|EdA2d|={(Ex20dx−Ex22dx)2
+(Ex20dy−Ex22dy)2}1/2・ω0/(ω0−ω2)
・・・(306)
そして、∂A/∂t成分抽出部6bは、差分EdA2dの角度∠EdA2dを次式のように算出する。
∠EdA2d=tan−1{(Ex20dy−Ex22dy)
/(Ex20dx−Ex22dx)} ・・・(307)
これで、ステップ205の処理が終了する。
次に、線形結合部8bは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex201と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex202との起電力和Ex20sを算出する(ステップ206)。線形結合部8bは、起電力和Ex20sの大きさ|Ex20s|と角度∠Ex20sを次式のように算出する。
|Ex20s|={(Ex201x+Ex202x)2
+(Ex201y+Ex202y)2}1/2 ・・・(308)
∠Ex20s=tan−1{(Ex201y+Ex202y)
/(Ex201x+Ex202x)} ・・・(309)
信号正規化部7bは、起電力和Ex20sを差分EdA2dで正規化した正規化起電力和Exn20sの大きさと角度を求める(ステップ207)。このステップ207の処理は、式(292)の算出に相当する処理である。信号正規化部7bは、正規化起電力和Exn20sの大きさ|Exn20s|と角度∠Exn20sを次式のように算出する。
|Exn20s|=(|Ex20s|/|EdA2d|)・ω0 ・・・(310)
∠Exn20s=∠Ex20s−∠EdA2d ・・・(311)
流量出力部9bは、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ208)。このステップ208の処理は、式(293)の算出に相当する処理である。
V=|Exn20s|/γ20 ・・・(312)
なお、比例係数γ20は、校正等により予め求めることができる定数である。また流速(流量)を求めるステップ208で∠Exn20sを用いていないが、この角度は校正時に求められる角度と比較することにより、より高精度な測定を行う場合に使用し、スパン補正の本質的な動作と直接関係しないので、ここでの説明は省略する。
信号検出部5bと∂A/∂t成分抽出部6bと信号正規化部7bと線形結合部8bと流量出力部9bとは、以上のようなステップ201〜208の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ209においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、励磁コイル3から大きさが等しくかつ周波数が異なる2つの成分を含む磁場を被測定流体に印加し、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex201と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex202との起電力差Ex20d、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex221と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex222との起電力差Ex22d、および第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex201と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex202との起電力和Ex20sを求め、起電力差Ex20dとEx22dとから差分EdA2d(∂A/∂t成分)を抽出し、この∂A/∂t成分を用いて起電力和Ex20s中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、この正規化した結果から被測定流体の流量を算出するようにしたので、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を排除することができ、正確なスパン補正を自動的に行うことができる。その結果、高精度の流量計測を行うことができる。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力和Ex20sをスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力和をスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように起電力差Ex22dからEx20dを引いて差分EdA2dを求める。
EdA2d=(Ex22d−Ex20d)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(313)
そして、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex221と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex222との起電力和Ex22sを次式のように求める。
Ex22s=(Ex221+Ex222) ・・・(314)
さらに、差分EdA2dを用いて起電力和Ex22s中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
Exn22s=(Ex22s/EdA2d)・ω2 ・・・(315)
そして、正規化起電力和Exn22sから被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出すればよい。その他の処理は起電力和Ex20sをスパン補正の対象とする場合と同じである。
V=|Exn22s|/γ20 ・・・(316)
また、本実施の形態では、複数の励磁周波数ω0,ω2で同時に励磁する例を示したが、単一の励磁周波数ω0又はω2で励磁を行い、励磁周波数をω0とω2で交互に切り替えながら励磁をした場合でも同じ効果を得ることができる。
また、本実施の形態において、電極2a,2b,2c,2dに対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極を追加することにより、流速分布の影響に対するスパン補正の性能を上げることが可能になるが、このときの構成は第4の構成と同等になるので、説明は省略する。
また、本実施の形態において磁場を有効に利用するために、図64または図65の構成が利用できる。この構成では励磁コイル3a,3bの2つを用いる。電源部4bから励磁コイル3a,3bに供給する励磁電流は図62の場合と同じである。電極軸EAX1と第1の励磁コイル3aの軸が垂直となり、また第2の電極軸EAX2と第2の励磁コイル3bの軸が垂直となるように、励磁コイル3a,3bを配置する。
これにより、電極軸EAX1に垂直な磁場の成分は励磁コイル3aから発生する磁場から与えられ、また電極軸EAX2に垂直な磁場の成分は励磁コイル3bから発生する磁場から与えられることとなり、式(279)、式(280)で与えられる電極軸上の磁場の式がそのまま使用できる。磁場B13,B14はそれぞれ励磁コイル3a,3bから発生することになるので、b13とb14、θ13とθ14は独立変数となる。図64または図65の構成によれば、図62の構成に比べて、電極軸EAX1,EAX2と直角に交差する磁場の成分が大きくなるので、信号検出部5bで検出する各起電力を大きくすることができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第2の原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図9に示した電磁流量計と同様であるので、図9の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法として前記第2の抽出方法を用いるものである。
1対の第1の電極2a,2bともう1対の第2の電極2c,2dは、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2とのなす角が略π/2となるように配置されている(φe3+φe4≒π/2)。図9において、励磁コイル3から発生する磁場Bbのうち、電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B15と、励磁コイル3から発生する磁場Bbのうち、電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B16は、以下のように与えられるものとする。
B15=b15・cos(ω0・t−θ15) ・・・(317)
B16=b16・cos(ω0・t−θ16) ・・・(318)
但し、B15,B16は1つの励磁コイル3から発生しているので、b15とb16、θ15とθ16は互いに関係があり、独立変数ではない。式(317)、式(318)において、b15,b16はそれぞれ磁束密度B15,B16の振幅、ω0は角周波数、θ15は磁束密度B15とω0・tとの位相差、θ16は磁束密度B16とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B15を磁場B15とし、磁束密度B16を磁場B16とする。
磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk(式(71))をrk30とし、電極2a,2bで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ3(式(74))をγ15とし、電極2c,2dで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ4(式(75))をγ16とする。
このとき、電極2a,2b間で検出される第1の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx301cとすると、電極間起電力Ex301cは式(78)に対応して次式で表される。
Ex301c=rk30・ω0・b15・exp{j・(π/2+θ15+θ00)}
+γ15・rk30・V・b15・exp{j・(θ15+θ01)}
・・・(319)
また、電極2c,2d間で検出される第2の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx302cとすると、電極間起電力Ex302cは式(79)に対応して次式で表される。
Ex302c=rk30・ω0・b16
・exp{j・(−π/2+θ16+θ00)}
+γ16・rk30・V・b16・exp{j・(θ16+θ01)}
・・・(320)
ここで、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(319)の電極間起電力Ex301cにθ01=θ00+Δθ01を代入したものをEx301とすると、電極間起電力Ex301は次式で表される。
Ex301=rk30・b15・exp{j・(θ15+θ00)}
・{ω0・exp(j・π/2)+γ15・V・exp(j・Δθ01)}
・・・(321)
また、位相差θ15とθ16との関係をθ16=θ15+Δθ16とする。式(320)の電極間起電力Ex302cにθ01=θ00+Δθ01、θ16=θ15+Δθ16を代入したものをEx302とすると、電極間起電力Ex302は次式で表される。
Ex302=rk30・b16・exp(j・Δθ16)
・exp{j・(θ15+θ00)}
・[ω0・exp{j・(−π/2)}
+γ16・V・exp(j・Δθ01)] ・・・(322)
電極間起電力Ex301とEx302との和をEx30sとすると、起電力和Ex30sは次式で表される。
Ex30s=Ex301+Ex302
=rk30・exp{j・(θ15+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b15−b16・exp(j・Δθ16)}・ω0
+rk30・exp{j・(θ15+θ00)}
・exp(j・Δθ01)
・{γ15・b15+γ16・b16・exp(j・Δθ16)}・V
・・・(323)
電極間起電力Ex301とEx302との差をEx30dとすると、起電力差Ex30dは次式で表される。
Ex30d=Ex301−Ex302
=rk30・exp{j・(θ15+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b15+b16・exp(j・Δθ16)}・ω0
+rk30・exp{j・(θ15+θ00)}
・exp(j・Δθ01)
・{γ15・b15−γ16・b16・exp(j・Δθ16)}・V
・・・(324)
ここで、Ex30dにおける∂A/∂t成分≫Ex30dにおけるv×B成分と近似できる場合には、Ex30dにおけるv×B成分≒0となり、近似的にEx30dにおける∂A/∂t成分を抽出することができる。初期状態(校正時の状態)において、磁場B15と磁場B16を等しく設定しておくと、その後の磁場B15とB16との差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b15+b16・exp(j・Δθ16)|
≫|b15−b16・exp(j・Δθ16)| ・・・(325)
また、通常ω0>γ15・V、ω0>γ16・Vが成り立つことから、式(325)の条件を考慮すると、式(324)の起電力差Ex30dにおいて次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b15+b16・exp(j・Δθ16)}|
≫|V・exp(j・Δθ01)
・{γ15・b15−γ16・b16・exp(j・Δθ16)}|
・・・(326)
式(326)の条件を用いて、起電力差Ex30dを近似した起電力差をEdA3dとすると、起電力差EdA3dは次式で表される。
EdA3d≒Ex30d ・・・(327)
EdA3d=rk30・exp{j・(θ15+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b15+b16・exp(j・Δθ16)} ・・・(328)
起電力差EdA3dは、平均流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この起電力差EdA3dを用いて起電力和Ex30s中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
ここで、第2の原理で説明したとおり、γ30=(γ15+γ16)/2と設定すれば、流速分布の影響を補正することができる。また、γ15=γ30+Δγ30、γ16=γ30−Δγ30と置き換える。式(323)の起電力和Ex30sを式(328)の起電力差EdA3dで正規化し、ω0倍した結果をExn30sとすれば、正規化起電力和Exn30sは次式のようになる。
Exn30s=(Ex30s/EdA3d)・ω0
={b15−b16・exp(j・Δθ16)}
/{b15+b16・exp(j・Δθ16)}・ω0
+Δγ30・exp{j・(−π/2+Δθ01)}
・{b15−b16・exp(j・Δθ16)}
/{b15+b16・exp(j・Δθ16)}・V
+γ30・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V ・・(329)
式(329)の右辺第2項及び第3項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。ここで、第2の実施の形態と同様に、磁場B15と磁場B16がほぼ等しくなるように電極2a,2b,2c,2dを配置すると(b15≒b16,Δθ≒0)、式(329)の右辺第1項及び第2項は第3項に比べて無視できる。よって、式(329)の右辺は第3項のみとなり、これがv×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。
なお、起電力和Ex30sを起電力差EdA3dで正規化した結果をω0倍した理由は、平均流速の大きさVに係る右辺第3項から励磁角周波数ω0を消去するためである。式(329)の右辺第3項によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ30の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度を持つ。比例係数γ30は校正時に求めることのできる定数であり、式(329)の右辺第3項は被測定流体の平均流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、起電力差から抽出した∂A/∂t成分を用いて起電力和におけるv×B成分の正規化を行うことにより、流速分布による影響も含めて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
式(329)より、平均流速の大きさVは次式のように表される。
V=|(Exn30s)/[γ30・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|Exn30s|/γ30 ・・・(330)
なお、第2の原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表3のとおりである。本実施の形態は、表3から明らかなように、前述の第2の原理を具体的に実現する1つの例である。
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第2の実施の形態と同様であるので、図62の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、励磁コイル3と、電源部4bと、電極2a,2bから第1の合成起電力を検出し、この第1の合成起電力の振幅と位相を求めると共に、電極2c,2dから第2の合成起電力を検出し、この第2の合成起電力の振幅と位相を求める信号検出部5bと、第1の合成起電力と第2の合成起電力の起電力差を∂A/∂t成分として抽出する∂A/∂t成分抽出部6bと、線形結合部8bで求められた起電力和の中のv×B成分に含まれるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化する信号正規化部7bと、第1の合成起電力と第2の合成起電力の起電力和を求める線形結合部8bと、正規化の結果から流体の流量を算出する流量出力部9bとを有する。
本実施の形態の電源部4bは、角周波数ω0の正弦波成分を含む励磁電流を励磁コイル3に供給する。
図66は、本実施の形態の信号検出部5bと∂A/∂t成分抽出部6bと信号正規化部7bと線形結合部8bと流量出力部9bの動作を示すフローチャートである。
まず、信号検出部5bは、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力Ex301の振幅r301を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex301との位相差φ301を図示しない位相検波器により求める(図66ステップ301)。同様に、信号検出部5bは、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力Ex302の振幅r302を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex302との位相差φ302を位相検波器により求める(ステップ302)。電極間起電力Ex301,Ex302は、バンドパスフィルタやコムフィルタによって周波数分離することができる。
次に、∂A/∂t成分抽出部6bは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex301と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex302との起電力差を近似した起電力差EdA3dの大きさと角度を求める(ステップ303)。このステップ303の処理は、∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(328)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6bは、電極間起電力Ex301の実軸成分Ex301xと虚軸成分の算出Ex301y、および電極間起電力Ex302の実軸成分Ex302xと虚軸成分の算出Ex302yを次式のように算出する。
Ex301x=r301・cos(φ301) ・・・(331)
Ex301y=r301・sin(φ301) ・・・(332)
Ex302x=r302・cos(φ302) ・・・(333)
Ex302y=r302・sin(φ302) ・・・(334)
そして、∂A/∂t成分抽出部6bは、起電力差EdA3dの大きさ|EdA3d|と角度∠EdA3dを次式のように算出する。
|EdA3d|={(Ex301x−Ex302x)2
+(Ex301y−Ex302y)2}1/2 ・・・(335)
∠EdA3d=tan−1{(Ex301y−Ex302y)
/(Ex301x−Ex302x)} ・・・(336)
次に、線形結合部8bは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex301と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex302との起電力和Ex30sを算出する(ステップ304)。線形結合部8bは、起電力和Ex30sの大きさ|Ex30s|と角度∠Ex30sを次式のように算出する。
|Ex30s|={(Ex301x+Ex302x)2
+(Ex301y+Ex302y)2}1/2 ・・・(337)
∠Ex30s=tan−1{(Ex301y+Ex302y)
/(Ex301x+Ex302x)} ・・・(338)
信号正規化部7bは、起電力和Ex30sを起電力差EdA3dで正規化した正規化起電力和Exn30sの大きさと角度を求める(ステップ305)。このステップ305の処理は、式(329)の算出に相当する処理である。信号正規化部7bは、正規化起電力和Exn30sの大きさ|Exn30s|と角度∠Exn30sを次式のように算出する。
|Exn30s|=(|Ex30s|/|EdA3d|)・ω0 ・・・(339)
∠Exn30s=∠Ex30s−∠EdA3d ・・・(340)
流量出力部9bは、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ306)。このステップ306の処理は、式(330)の算出に相当する処理である。
V=|Exn30s|/γ30 ・・・(341)
なお、比例係数γ30は、校正等により予め求めることができる定数である。また流速(流量)を求めるステップ306で∠Exn30sを用いていないが、この角度は校正時に求められる角度と比較することにより、より高精度な測定を行う場合に使用し、スパン補正の本質的な動作と直接関係しないので、ここでの説明は省略する。
信号検出部5bと∂A/∂t成分抽出部6bと信号正規化部7bと線形結合部8bと流量出力部9bとは、以上のようなステップ301〜306の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ307においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、励磁コイル3から発生する磁場B15とB16とが等しくなるように調整しておくと、起電力差Ex30dが近似的に∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、この∂A/∂t成分を用いて起電力和Ex30s中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、この正規化した結果から被測定流体の流量を算出するようにしたので、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を排除することができ、正確なスパン補正を自動的に行うことができる。その結果、高精度の流量計測を行うことができる。また、本実施の形態では、角周波数ω0の起電力和Ex30sのv×B成分を同じ角周波数ω0の起電力差Ex30dから抽出した∂A/∂t成分を用いて正規化するので、第2の実施の形態に比べて周波数による誤差の影響を少なくすることができる。
なお、本実施の形態において、電極2a,2b,2c,2dに対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極を追加することにより、流速分布の影響に対するスパン補正の性能を上げることが可能になるが、このときの構成は第4の構成と同等になるので、説明は省略する。
また、本実施の形態において磁場を有効に利用するために、図64または図65の構成が利用できる。電源部4bから励磁コイル3a,3bに供給する励磁電流は本実施の形態と同じである。電極軸EAX1と第1の励磁コイル3aの軸が垂直となり、また第2の電極軸EAX2と第2の励磁コイル3bの軸が垂直となるように、励磁コイル3a,3bを配置する。
これにより、電極軸EAX1に垂直な磁場の成分は励磁コイル3aから発生する磁場から与えられ、また電極軸EAX2に垂直な磁場の成分は励磁コイル3bから発生する磁場から与えられることとなり、式(317)、式(318)で与えられる電極軸上の磁場の式がそのまま使用できる。磁場B15,B16はそれぞれ励磁コイル3a,3bから発生することになるので、b15とb16、θ15とθ16は独立変数となる。図64または図65の構成によれば、図62の構成に比べて、電極軸EAX1,EAX2と直角に交差する磁場の成分が大きくなるので、信号検出部5bで検出する各起電力を大きくすることができる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第3の原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図17に示した電磁流量計と同様であるので、図17の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法として前記第1の抽出方法を用いるものである。
本実施の形態は、第1の実施の形態の構成に対して第2の励磁コイルを、電極を含む平面を挟んで第1の励磁コイルと逆側に追加したものである。1対の第1の電極2a,2bともう1対の第2の電極2c,2dは、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2とのなす角が略π/2となるように配置されている(φe1+φe2≒π/2)。
図17において、励磁コイル3aから発生する磁場Baのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B11と、同じ励磁コイル3aから発生する磁場Baのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B12は、第1の実施の形態と同じく式(232)、式(233)で与えられるものとする。
また、図17において、励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B17と、同じ励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B18は、以下のように与えられるものとする。
B17=b17・cos(ω0・t−θ17)+b17・cos(ω2・t−θ17)
・・・(342)
B18=b18・cos(ω0・t−θ18)+b18・cos(ω2・t−θ18)
・・・(343)
但し、B17,B18は1つの励磁コイル3bから発生しているので、b17とb18、θ17とθ18は互いに関係があり、独立変数ではない。式(342)、式(343)において、b17,b18はそれぞれ磁束密度B17,B18の振幅、ω0,ω2は異なる角周波数、θ17は磁場B17の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差及び角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差、θ18は磁場B18の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差及び角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差である。以下、磁束密度B17を磁場B17とし、磁束密度B18を磁場B18とする。
電極2a,2bにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk1(式(41))をrk41とし、電極2a,2bで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ1(式(53))をγ41とし、電極2c,2dにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk2(式(42))をrk42とし、電極2c,2dで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ2(式(54))をγ42とする。
このとき、図21、図23で示される起電力の向きを考慮すれば、電極2a,2b間で検出される第1の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx401cとすると、電極間起電力Ex401cは式(118)に対応して次式で表される。
Ex401c=rk41・ω0・b11・exp{j・(π/2+θ11+θ00)}
+γ41・rk41・V・b11・exp{j・(θ11+θ01)}
+rk41・ω0・b17
・exp{j・(−π/2+θ17+θ00)}
+γ41・rk41・V・b17・exp{j・(θ17+θ01)}
・・・(344)
第1の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx421cとすると、電極間起電力Ex421cは式(118)に対応して次式で表される。
Ex421c=rk41・ω2・b11・exp{j・(π/2+θ11+θ00)}
+γ41・rk41・V・b11・exp{j・(θ11+θ01)}
+rk41・ω2・b17
・exp{j・(−π/2+θ17+θ00)}
+γ41・rk41・V・b17・exp{j・(θ17+θ01)}
・・・(345)
また、図22、図24で示される起電力の向きを考慮すれば、電極2c,2d間で検出される第2の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx402cとすると、電極間起電力Ex402cは式(119)に対応して次式で表される。
Ex402c=rk42・ω0・b12・exp{j・(π/2+θ12+θ00)}
+γ42・rk42・V・b12・exp{j・(θ12+θ01)}
+rk42・ω0・b18
・exp{j・(−π/2+θ18+θ00)}
+γ42・rk42・V・b18・exp{j・(θ18+θ01)}
・・・(346)
第2の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx422cとすると、電極間起電力Ex422cは式(119)に対応して次式で表される。
Ex422c=rk42・ω2・b12・exp{j・(π/2+θ12+θ00)}
+γ42・rk42・V・b12・exp{j・(θ12+θ01)}
+rk42・ω2・b18
・exp{j・(−π/2+θ18+θ00)}
+γ42・rk42・V・b18・exp{j・(θ18+θ01)}
・・・(347)
ここで、磁場B11の位相遅れθ11と磁場B17の位相遅れθ17との関係がθ17=θ11+Δθ17であり、また磁場B12の位相遅れθ12と磁場B18の位相遅れθ18との関係がθ18=θ12+Δθ18であり、角度θ00とθ01との関係がθ01=θ00+Δθ01である状態を第1の励磁状態とする。この第1の励磁状態において電極2a,2bで検出される第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex401は、式(344)から次式で表される。
Ex401=rk41・exp{j・(θ11+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b11−b17・exp(j・Δθ17)}・ω0
+rk41・exp{j・(θ11+θ00)}
・γ41・exp(j・Δθ01)
・{b11+b17・exp(j・Δθ17)}・V ・・・(348)
第1の励磁状態において電極2c,2dで検出される第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex402は、式(346)から次式で表される。
Ex402=rk42・exp{j・(θ12+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b12−b18・exp(j・Δθ18)}・ω0
+rk42・exp{j・(θ12+θ00)}
・γ42・exp(j・Δθ01)
・{b12+b18・exp(j・Δθ18)}・V ・・・(349)
また、磁場B11と磁場B17との位相差及び磁場B12と磁場B18との位相差が第1の励磁状態から一定値πだけ変化し(θ17=π+θ11+Δθ17、θ18=π+θ12+Δθ18)、かつθ01=θ00+Δθ01である状態を第2の励磁状態とする。この第2の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分をEx401Rとすると、電極間起電力Ex401Rは式(344)より次式で表される。
Ex401R=rk41・exp{j・(θ11+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b11+b17・exp(j・Δθ17)}・ω0
+rk41・exp{j・(θ11+θ00)}
・γ41・exp(j・Δθ01)
・{b11−b17・exp(j・Δθ17)}・V ・・(350)
第2の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分をEx421Rとすると、電極間起電力Ex421Rは式(345)より次式で表される。
Ex421R=rk41・exp{j・(θ11+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b11+b17・exp(j・Δθ17)}・ω2
+rk41・exp{j・(θ11+θ00)}
・γ41・exp(j・Δθ01)
・{b11−b17・exp(j・Δθ17)}・V ・・(351)
第2の励磁状態における第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分をEx402Rとすると、電極間起電力Ex402Rは式(346)より次式で表される。
Ex402R=rk42・exp{j・(θ12+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b12+b18・exp(j・Δθ18)}・ω0
+rk42・exp{j・(θ12+θ00)}
・γ42・exp(j・Δθ01)
・{b12−b18・exp(j・Δθ18)}・V ・・(352)
第2の励磁状態における第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分をEx422Rとすると、電極間起電力Ex422Rは式(347)より次式で表される。
Ex422R=rk42・exp{j・(θ12+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b12+b18・exp(j・Δθ18)}・ω2
+rk42・exp{j・(θ12+θ00)}
・γ42・exp(j・Δθ01)
・{b12−b18・exp(j・Δθ18)}・V ・・(353)
第2の励磁状態における第1の電極間起電力Ex401RとEx421Rとの差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果を起電力差EdA41とすれば、起電力差EdA41は次式で表される。この起電力差EdA41は、第3の原理の第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA41=(Ex401R−Ex421R)・ω0/(ω0−ω2)
=rk41・exp{j・(θ11+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b11+b17・exp(j・Δθ17)}・ω0
・・・(354)
第2の励磁状態における第2の電極間起電力Ex402RとEx422Rとの差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果を起電力差EdA42とすれば、起電力差EdA42は次式で表される。この起電力差EdA42は、第3の原理の第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA42=(Ex402R−Ex422R)・ω0/(ω0−ω2)
=rk42・exp{j・(θ12+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b12+b18・exp(j・Δθ18)}・ω0
・・・(355)
起電力差EdA41,EdA42は、平均流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この起電力差EdA41,EdA42を用いてそれぞれ第1の励磁状態における第1の電極間起電力Ex401,Ex402中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。なお、起電力差EdA41は、正確には第2の励磁状態における第1の電極間起電力Ex401RとEx421Rとの起電力差をω0/(ω0−ω2)倍したものであるが、ω0/(ω0−ω2)倍した理由は、式の展開を容易にするためである。第2の励磁状態における第2の電極間起電力Ex402RとEx422Rとの起電力差をω0/(ω0−ω2)倍して起電力差EdA42とする理由も同じである。
式(348)の第1の励磁状態における第1の電極間起電力Ex401を式(354)の起電力差EdA41で正規化し、ω0倍した結果をExn401とすれば、正規化起電力Exn401は次式のようになる。
Exn401=(Ex401/EdA41)・ω0
={b11−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b11+b17・exp(j・Δθ17)}・ω0
+[γ41・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(356)
また、式(349)の第1の励磁状態における第2の電極間起電力Ex402を式(355)の起電力差EdA42で正規化し、ω0倍した結果をExn402とすれば、正規化起電力Exn402は次式のようになる。
Exn402=(Ex402/EdA42)・ω0
={b12−b18・exp(j・Δθ18)}
/{b12+b18・exp(j・Δθ18)}・ω0
+[γ42・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(357)
式(356)の右辺第2項及び式(357)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。なお、第1の電極間起電力Ex401を起電力差EdA41で正規化した結果をω0倍した理由は、平均流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。第2の電極間起電力Ex402を起電力差EdA42で正規化した結果をω0倍した理由も同じである。
式(356)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ41の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもち、式(357)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ42の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度を持つ。係数γ41,γ42は流速分布の影響により変化する値であり、角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(356)の右辺第2項及び式(357)の右辺第2項は被測定流体の流速及び流速分布が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
さらに上述のように、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2の角度はほぼπ/2に保たれているので、図82、図83に示したような軸対称流のときの流速分布に関係する比例係数をγ40とすると、γ40,γ41,γ42の関係は次式で表すことができる。比例係数γ40の値は校正時に確認することができる。
γ40=(γ41+γ42)/2 ・・・(358)
よって、電極2a,2bにおける正規化起電力Exn401と電極2c,2dにおける正規化起電力Exn402の平均をとったものをExn40aとすると、平均化起電力Exn40aでは、次式のように流速分布に影響する比例係数γ41,γ42が除去され、代わりに校正時に確認できる比例係数γ40が平均流速の大きさVにかかっていることが分かる。
Exn40a=(Exn401+Exn402)/2
=k4・ω0+[γ40・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(359)
なお、式(359)においてk4は磁場に関連する項であり、次式で表される。
k4=[{b11−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b11+b17・exp(j・Δθ17)}
+{b12−b18・exp(j・Δθ18)}
/{b12+b18・exp(j・Δθ18)}]/2 ・・・(360)
式(359)の右辺第2項において、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ40の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。よって、流速分布の影響も含めて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
ここで、励磁コイル3aと電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3bと電極2a,2bとの距離d5がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b11≒b17、Δθ17≒0となり、また励磁コイル3aと電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3bと電極2c,2dとの距離d6がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b12≒b18、Δθ18≒0となる。このとき、式(359)と式(360)より平均流速の大きさVは次式のように表される。
V=|(Exn40a)/[γ40・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|Exn40a|/γ40 ・・・(361)
なお、第3の原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表4のとおりである。本実施の形態は、表4から明らかなように、前述の第3の原理を具体的に実現する1つの例である。
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。図67は本実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図であり、図17と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、第1の励磁コイル3a及び第2の励磁コイル3bと、励磁コイル3a,3bに励磁電流を供給する電源部4cと、励磁コイル3aにより発生する第1の磁場と励磁コイル3bにより発生する第2の磁場との位相差が第1の値である第1の励磁状態において、電極2a,2bから第1の合成起電力を検出すると共に、電極2c,2dから第2の合成起電力を検出し、同時又は交互に得られる第1の周波数又は第2の周波数の2つの周波数成分のうちいずれか一方の振幅と位相を第1の励磁状態における第1の合成起電力と第2の合成起電力の各々について求め、第1の磁場と第2の磁場との位相差が第1の励磁状態と異なる第2の励磁状態において、第1の合成起電力と第2の合成起電力を検出し、同時又は交互に得られる第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を第2の励磁状態における第1の合成起電力と第2の合成起電力の各々について求める信号検出部5cと、第2の励磁状態における第1の合成起電力の2つの周波数成分の起電力差を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の励磁状態における第2の合成起電力の2つの周波数成分の起電力差を第2の∂A/∂t成分として抽出する∂A/∂t成分抽出部6cと、第1の励磁状態における第1の合成起電力の第1の周波数成分又は第2の周波数成分の中のv×B成分に含まれるスパンを第1の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第1の正規化起電力を求めると共に、第1の励磁状態における第2の合成起電力の第1の周波数成分又は第2の周波数成分の中のv×B成分に含まれるスパンを第2の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第2の正規化起電力を求める信号正規化部7cと、第1の正規化起電力と第2の正規化起電力を線形結合する線形結合部8cと、線形結合の結果から流体の流量を算出する流量出力部9cとを有する。
本実施の形態では、前述のとおり励磁コイル3aと電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3bと電極2a,2bとの距離d5が略等しく、励磁コイル3aと電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3bと電極2c,2dとの距離d6が略等しいとする。
電源部4cは、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、第1の励磁電流との位相差が0で、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、この第1の励磁状態に対して第1の励磁電流と第2の励磁電流との位相差をπに変更した第2の励磁状態をT2秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2である。
図68は、信号検出部5cと∂A/∂t成分抽出部6cと信号正規化部7cと線形結合部8cと流量出力部9cの動作を示すフローチャートである。
まず、信号検出部5cは、第1の励磁状態において、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分Ex401の振幅r401を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex401との位相差φ401を図示しない位相検波器により求める。また、信号検出部5cは、第1の励磁状態において、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分Ex402の振幅r402を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex402との位相差φ402を位相検波器により求める(図68ステップ401)。
続いて、信号検出部5cは、第2の励磁状態において、第1の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分Ex401Rの振幅r401Rを求めると共に、実軸と電極間起電力Ex401Rとの位相差φ401Rを位相検波器により求め、また第1の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分Ex421Rの振幅r421Rを求めると共に、実軸と電極間起電力Ex421Rとの位相差φ421Rを位相検波器により求める。さらに、信号検出部5cは、第2の励磁状態において、第2の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分Ex402Rの振幅r402Rを求めると共に、実軸と電極間起電力Ex402Rとの位相差φ402Rを位相検波器により求め、また第2の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分Ex422Rの振幅r422Rを求めると共に、実軸と電極間起電力Ex422Rとの位相差φ422Rを位相検波器により求める(ステップ402)。
次に、∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力Ex401Rの実軸成分Ex401Rxと虚軸成分Ex401Ry、および電極間起電力Ex421Rの実軸成分Ex421Rxと虚軸成分Ex421Ryを次式のように算出する(ステップ403)。
Ex401Rx=r401R・cos(φ401R) ・・・(362)
Ex401Ry=r401R・sin(φ401R) ・・・(363)
Ex421Rx=r421R・cos(φ421R) ・・・(364)
Ex421Ry=r421R・sin(φ421R) ・・・(365)
式(362)〜式(365)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力Ex401RとEx421Rとの起電力差EdA41の大きさと角度を求める(ステップ404)。このステップ404の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(354)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差EdA41の大きさ|EdA41|を次式のように算出する。
|EdA41|={(Ex401Rx−Ex421Rx)2
+(Ex401Ry−Ex421Ry)2}1/2・ω0/(ω0−ω2)
・・・(366)
そして、∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差EdA41の角度∠EdA41を次式のように算出する。
∠EdA41=tan−1{(Ex401Ry−Ex421Ry)
/(Ex401Rx−Ex421Rx)} ・・・(367)
これで、ステップ404の処理が終了する。
また、∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力Ex402Rの実軸成分Ex402Rxと虚軸成分Ex402Ry、および電極間起電力Ex422Rの実軸成分Ex422Rxと虚軸成分Ex422Ryを次式のように算出する(ステップ405)。
Ex402Rx=r402R・cos(φ402R) ・・・(368)
Ex402Ry=r402R・sin(φ402R) ・・・(369)
Ex422Rx=r422R・cos(φ422R) ・・・(370)
Ex422Ry=r422R・sin(φ422R) ・・・(371)
式(368)〜式(371)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力Ex402RとEx422Rとの起電力差EdA42の大きさと角度を求める(ステップ406)。このステップ406の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(355)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差EdA42の大きさ|EdA42|を次式のように算出する。
|EdA42|={(Ex402Rx−Ex422Rx)2
+(Ex402Ry−Ex422Ry)2}1/2・ω0/(ω0−ω2)
・・・(372)
そして、∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差EdA42の角度∠EdA42を次式のように算出する。
∠EdA42=tan−1{(Ex402Ry−Ex422Ry)
/(Ex402Rx−Ex422Rx)} ・・・(373)
これで、ステップ406の処理が終了する。
次に、信号正規化部7cは、電極間起電力Ex401を起電力差EdA41で正規化した正規化起電力Exn401の大きさと角度を求める(ステップ407)。このステップ407の処理は、式(356)の算出に相当する処理である。信号正規化部7cは、正規化起電力Exn401の大きさ|Exn401|を次式のように算出する。
|Exn401|=(r401/|EdA41|)・ω0 ・・・(374)
そして、信号正規化部7cは、正規化起電力Exn401の角度∠Exn401を次式のように算出する。
∠Exn401=φ401−∠EdA41 ・・・(375)
さらに、信号正規化部7cは、正規化起電力Exn401の実軸成分Exn401xと虚軸成分Exn401yを次式のように算出する。
Exn401x=|Exn401|・cos(∠Exn401) ・・・(376)
Exn401y=|Exn401|・sin(∠Exn401) ・・・(377)
これで、ステップ407の処理が終了する。
また、信号正規化部7cは、電極間起電力Ex402を起電力差EdA42で正規化した正規化起電力Exn402の大きさと角度を求める(ステップ408)。このステップ408の処理は、式(357)の算出に相当する処理である。信号正規化部7cは、正規化起電力Exn402の大きさ|Exn402|を次式のように算出する。
|Exn402|=(r402/|EdA42|)・ω0 ・・・(378)
そして、信号正規化部7cは、正規化起電力Exn402の角度∠Exn402を次式のように算出する。
∠Exn402=φ402−∠EdA42 ・・・(379)
さらに、信号正規化部7cは、正規化起電力Exn402の実軸成分Exn402xと虚軸成分Exn402yを次式のように算出する。
Exn402x=|Exn402|・cos(∠Exn402) ・・・(380)
Exn402y=|Exn402|・sin(∠Exn402) ・・・(381)
これで、ステップ408の処理が終了する。
次に、線形結合部8cは、正規化起電力Exn401とExn402を平均化(線形結合)した平均化起電力Exn40aの実軸成分Exn40axと虚軸成分Exn40ayを次式のように算出する(ステップ409)。このステップ409の処理は、式(359)の算出に相当する処理である。
Exn40ax=(Exn401x+Exn402x)/2 ・・・(382)
Exn40ay=(Exn401y+Exn402y)/2 ・・・(383)
流量出力部9cは、被測定流体の平均流速の大きさVを算出する(ステップ410)。このステップ410の処理は、式(361)の算出に相当する処理である。まず、流量出力部9cは、平均化起電力Exn40aの大きさ|Exn40a|を次式のように算出する。
|Exn40a|={(Exn40ax)2+(Exn40ay)2}1/2
・・・(384)
そして、流量出力部9cは、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出する。
V=|Exn40a|/γ40 ・・・(385)
これで、ステップ410の処理が終了する。なお、比例係数γ40は、校正等により予め求めることができる定数である。
信号検出部5cと∂A/∂t成分抽出部6cと信号正規化部7cと線形結合部8cと流量出力部9cとは、以上のようなステップ401〜410の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ411においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ402〜410の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第2の励磁状態のときの第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex401Rと角周波数ω2の成分Ex421Rとから起電力差EdA41(第1の∂A/∂t成分)を抽出し、この起電力差EdA41を用いて第1の励磁状態のときの第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex401中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、また第2の励磁状態のときの第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex402Rと角周波数ω2の成分Ex422Rとから起電力差EdA42(第2の∂A/∂t成分)を抽出し、この起電力差EdA42を用いて第1の励磁状態のときの第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex402中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力Exn401とExn402を線形結合し、この線形結合した結果から被測定流体の流量を算出するようにしたので、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を排除することができ、正確なスパン補正を自動的に行うことができる。その結果、高精度の流量計測を行うことができる。
なお、本実施の形態では、第1の励磁状態における角周波数ω0の成分の起電力Ex401,Ex402をスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力Ex421,Ex422をスパン補正の対象としてもよい。この場合は、第1の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex421と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex422を信号検出部5cで求めた後、次式のように電極間起電力Ex421RからEx401Rを引いて起電力差EdA41を求める。
EdA41=(Ex421R−Ex401R)・ω2/(ω2−ω0)
・・・(386)
また、電極間起電力Ex422RからEx402Rを引いて起電力差EdA42を求める。
EdA42=(Ex422R−Ex402R)・ω2/(ω2−ω0)
・・・(387)
そして、次式のように起電力差EdA41を用いて電極間起電力Ex421中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
Exn421=(Ex421/EdA41)・ω2 ・・・(388)
また、起電力差EdA42を用いて電極間起電力Ex422中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
Exn422=(Ex422/EdA42)・ω2 ・・・(389)
さらに、正規化起電力Exn421とExn422を平均化した平均化起電力Exn42aを次式のように求める。
Exn42a=(Exn421+Exn422)/2 ・・・(390)
そして、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出すればよい。その他の処理は電極間起電力Ex401,Ex402をスパン補正の対象とする場合と同じである。
V=|Exn42a|/γ40 ・・・(391)
また、本実施の形態では、複数の励磁周波数ω0,ω2で同時に励磁する例を示したが、単一の励磁周波数ω0又はω2で励磁を行い、励磁周波数をω0とω2で交互に切り替えながら励磁をした場合でも同じ効果を得ることができる。
また、本実施の形態において、電極2a,2b,2c,2dに対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極を追加することにより、流速分布の影響に対するスパン補正の性能を上げることが可能になる。この場合、追加する1対の電極間を結ぶ電極軸ともう1対の電極間を結ぶ電極軸とのなす角を、電極2a,2b,2c,2dの場合と同様にほぼπ/2に設定し、それぞれの電極の∂A/∂t成分で正規化した正規化起電力を、追加した電極の分も含めて平均化すればよい。
また、本実施の形態では、各電極における∂A/∂t成分を抽出し、正規化を行った後に各正規化起電力を平均化する例を示したが、第3の原理の別形態として示したとおり、各電極の起電力を線形結合し、また各電極の起電力の和をとり、起電力の和の中の∂A/∂t成分を抽出し、前記線形結合した起電力中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化すれば、本実施の形態と同等の結果を得ることができる。
この場合の電磁流量計の構成を図69に示す。信号検出部5cの動作は本実施の形態と同様である。∂A/∂t成分抽出部6dは、第2の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力和、または第2の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分との起電力和を求め、求めた起電力の和の中の∂A/∂t成分を抽出する。
線形結合部8dは、第1の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分とを線形結合するか、あるいは第1の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分とを線形結合する。信号正規化部7dは、線形結合した起電力の中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化する。このとき、線形結合した起電力とそれを正規化する∂A/∂t成分には、同一周波数のものを用いる。流量出力部9dは、正規化の結果から流体の流量を算出する。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第3の原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図17に示した電磁流量計と同様であるので、図17の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法として前記第2の抽出方法を用いるものである。
第4の実施の形態と同様に、1対の第1の電極2a,2bともう1対の第2の電極2c,2dは、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2とのなす角が略π/2となるように配置されている(φe1+φe2≒π/2)。
図17において、励磁コイル3aから発生する磁場Baのうち、電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B19と、同じ励磁コイル3aから発生する磁場Baのうち、電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B20は、次式で与えられるものとする。
B19=b19・cos(ω0・t−θ19) ・・・(392)
B20=b20・cos(ω0・t−θ20) ・・・(393)
但し、B19,B20は1つの励磁コイル3aから発生しているので、b19とb20、θ19とθ20は互いに関係があり、独立変数ではない。式(392)、式(393)において、b19,b20はそれぞれ磁束密度B19,B20の振幅、ω0は角周波数、θ19は磁束密度B19とω0・tとの位相差、θ20は磁束密度B20とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B19を磁場B19とし、磁束密度B20を磁場B20とする。
また、図17において、励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B21と、同じ励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B22は、以下のように与えられるものとする。
B21=b21・cos(ω0・t−θ21) ・・・(394)
B22=b22・cos(ω0・t−θ22) ・・・(395)
但し、B21,B22は1つの励磁コイル3bから発生しているので、b21とb22、θ21とθ22は互いに関係があり、独立変数ではない。式(394)、式(395)において、b21,b22はそれぞれ磁束密度B21,B22の振幅、ω0は角周波数、θ21は磁束密度B21とω0・tとの位相差、θ22は磁束密度B22とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B21を磁場B21とし、磁束密度B22を磁場B22とする。
電極2a,2bにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk1(式(41))をrk51とし、電極2a,2bで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ1(式(53))をγ51とし、電極2c,2dにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk2(式(42))をrk52とし、電極2c,2dで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ2(式(54))をγ52とする。
このとき、図21、図23で示される起電力の向きを考慮すれば、電極2a,2b間で検出される第1の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx501cとすると、電極間起電力Ex501cは式(118)に対応して次式で表される。
Ex501c=rk51・ω0・b19・exp{j・(π/2+θ19+θ00)}
+γ51・rk51・V・b19・exp{j・(θ19+θ01)}
+rk51・ω0・b21
・exp{j・(−π/2+θ21+θ00)}
+γ51・rk51・V・b21・exp{j・(θ21+θ01)}
・・・(396)
また、図22、図24で示される起電力の向きを考慮すれば、電極2c,2d間で検出される第2の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx502cとすると、電極間起電力Ex502cは式(119)に対応して次式で表される。
Ex502c=rk52・ω0・b20・exp{j・(π/2+θ20+θ00)}
+γ52・rk52・V・b20・exp{j・(θ20+θ01)}
+rk52・ω0・b22
・exp{j・(−π/2+θ22+θ00)}
+γ52・rk52・V・b22・exp{j・(θ22+θ01)}
・・・(397)
ここで、ω0・tに対する磁場B19の位相遅れθ19とω0・tに対する磁場B21の位相遅れθ21との関係がθ21=θ19+Δθ21であり、またω0・tに対する磁場B20の位相遅れθ20とω0・tに対する磁場B22の位相遅れθ22との関係がθ22=θ20+Δθ22であり、角度θ00とθ01との関係がθ01=θ00+Δθ01である状態を第1の励磁状態とする。この第1の励磁状態において電極2a,2bで検出される第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex501は、式(396)から次式で表される。
Ex501=rk51・exp{j・(θ19+θ00)}・exp(j・π/2)
・{b19−b21・exp(j・Δθ21)}・ω0
+rk51・exp{j・(θ19+θ00)}・γ51
・exp(j・Δθ01)
・{b19+b21・exp(j・Δθ21)}・V ・・・(398)
第1の励磁状態において電極2c,2dで検出される第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex502は、式(397)から次式で表される。
Ex502=rk52・exp{j・(θ20+θ00)}・exp(j・π/2)
・{b20−b22・exp(j・Δθ22)}・ω0
+rk52・exp{j・(θ20+θ00)}・γ52
・exp(j・Δθ01)
・{b20+b22・exp(j・Δθ22)}・V ・・・(399)
また、磁場B19と磁場B21との位相差及び磁場B20と磁場B22との位相差が第1の励磁状態から一定値πだけ変化し(θ21=π+θ19+Δθ21、θ22=π+θ20+Δθ22)、かつθ01=θ00+Δθ01である状態を第2の励磁状態とする。この第2の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分をEx501Rとすると、電極間起電力Ex501Rは式(398)より次式で表される。
Ex501R=rk51・exp{j・(θ19+θ00)}・exp(j・π/2)
・{b19+b21・exp(j・Δθ21)}・ω0
+rk51・exp{j・(θ19+θ00)}・γ51
・exp(j・Δθ01)
・{b19−b21・exp(j・Δθ21)}・V ・・(400)
第2の励磁状態における第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分をEx502Rとすると、電極間起電力Ex502Rは式(399)より次式で表される。
Ex502R=rk52・exp{j・(θ20+θ00)}・exp(j・π/2)
・{b20+b22・exp(j・Δθ22)}・ω0
+rk52・exp{j・(θ20+θ00)}・γ52
・exp(j・Δθ01)
・{b20−b22・exp(j・Δθ22)}・V ・・(401)
ここで、Ex501Rにおける∂A/∂t成分≫Ex501Rにおけるv×B成分と近似できる場合には、Ex501Rにおけるv×B成分≒0となり、近似的にEx501Rにおける∂A/∂t成分を抽出することができる。初期状態(校正時の状態)において、磁場B19と磁場B21を等しくし、また磁場B20と磁場B22を等しく設定しておくと、その後の磁場B19とB21との差、及び磁場B20とB22との差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b19+b21・exp(j・Δθ21)|
≫|b19−b21・exp(j・Δθ21)| ・・・(402)
|b20+b22・exp(j・Δθ22)|
≫|b20−b22・exp(j・Δθ22)| ・・・(403)
また、通常ω0>γ51・Vが成り立つことから、式(402)の条件を考慮すると、式(400)の電極間起電力Ex501Rにおいて次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b19+b21・exp(j・Δθ21)}|
≫|V・exp(j・Δθ01)
・γ51・{b19−b21・exp(j・Δθ21)}| ・・・(404)
式(404)の条件を用いて、電極間起電力Ex501Rを近似した電極間起電力をEdA51とすると、電極間起電力EdA51は次式で表される。この電極間起電力EdA51は第3の原理の第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA51≒Ex501R ・・・(405)
EdA51=rk51・exp{j・(θ19+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b19+b21・exp(j・Δθ21)} ・・・(406)
また、通常ω0>γ52・Vが成り立つことから、式(403)の条件を考慮すると、式(401)の電極間起電力Ex502Rにおいて次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b20+b22・exp(j・Δθ22)}|
≫|V・exp(j・Δθ01)
・γ52・{b20−b22・exp(j・Δθ22)}| ・・・(407)
式(407)の条件を用いて、電極間起電力Ex502Rを近似した電極間起電力をEdA52とすると、電極間起電力EdA52は次式で表される。この電極間起電力EdA52は第3の原理の第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA52≒Ex502R ・・・(408)
EdA52=rk52・exp{j・(θ20+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b20+b22・exp(j・Δθ22)} ・・・(409)
電極間起電力EdA51,EdA52は、平均流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この電極間起電力EdA51,EdA52を用いてそれぞれ第1の励磁状態における電極間起電力Ex501,Ex502中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
式(398)の第1の励磁状態における第1の電極間起電力Ex501を式(406)の電極間起電力EdA51で正規化し、ω0倍した結果をExn501とすれば、正規化起電力Exn501は次式のようになる。
Exn501=(Ex501/EdA51)・ω0
={b19−b21・exp(j・Δθ21)}
/{b19+b21・exp(j・Δθ21)}・ω0
+[γ51・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(410)
また、式(399)の第1の励磁状態における第2の電極間起電力Ex502を式(409)の電極間起電力EdA52で正規化し、ω0倍した結果をExn502とすれば、正規化起電力Exn502は次式のようになる。
Exn502=(Ex502/EdA52)・ω0
={b20−b22・exp(j・Δθ22)}
/{b20+b22・exp(j・Δθ22)}・ω0
+[γ52・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(411)
式(410)の右辺第2項及び式(411)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。なお、第1の電極間起電力Ex501を電極間起電力EdA51で正規化した結果をω0倍した理由は、平均流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。第2の電極間起電力Ex502を電極間起電力EdA52で正規化した結果をω0倍した理由も同じである。
式(410)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ51の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもち、式(411)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ52の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度を持つ。係数γ51,γ52は流速分布の影響により変化する値であり、角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(410)の右辺第2項及び式(411)の右辺第2項は被測定流体の流速及び流速分布が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
さらに上述のように、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2の角度はほぼπ/2に保たれているので、図82、図83に示したような軸対称流のときの流速分布に関係する比例係数をγ50とすると、γ50,γ51,γ52の関係は次式で表すことができる。比例係数γ50の値は校正時に確認することができる。
γ50=(γ51+γ52)/2 ・・・(412)
よって、電極2a,2bにおける正規化起電力Exn501と電極2c,2dにおける正規化起電力Exn502の平均をとったものをExn50aとすると、平均化起電力Exn50aでは、次式のように流速分布に影響する比例係数γ51,γ52が除去され、代わりに校正時に確認できる比例係数γ50が平均流速の大きさVにかかっていることが分かる。
Exn50a=(Exn501+Exn502)/2
=k5・ω0+[γ50・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(413)
なお、式(413)においてk5は磁場に関連する項であり、次式で表される。
k5=[{b19−b21・exp(j・Δθ21)}
/{b19+b21・exp(j・Δθ21)}
+{b20−b22・exp(j・Δθ22)}
/{b20+b22・exp(j・Δθ22)}]/2 ・・・(414)
式(413)の右辺第2項において、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ50の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。よって、流速分布の影響も含めて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
ここで、励磁コイル3aと電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3bと電極2a,2bとの距離d5がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b19≒b21、Δθ21≒0となり、また励磁コイル3aと電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3bと電極2c,2dとの距離d6がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b20≒b22、Δθ22≒0となる。このとき、式(413)と式(414)より平均流速の大きさVは次式のように表される。
V=|(Exn50a)/[γ50・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|Exn50a|/γ50 ・・・(415)
なお、第3の原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表5のとおりである。本実施の形態は、表5から明らかなように、前述の第3の原理を具体的に実現する1つの例である。
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第4の実施の形態と同様であるので、図67の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、第1の励磁コイル3a及び第2の励磁コイル3bと、電源部4cと、励磁コイル3aにより発生する第1の磁場と励磁コイル3bにより発生する第2の磁場との位相差が第1の値である第1の励磁状態において、電極2a,2bから第1の合成起電力を検出し、この第1の合成起電力の振幅と位相を求めると共に、電極2c,2dから第2の合成起電力を検出し、この第2の合成起電力の振幅と位相を求め、第1の磁場と第2の磁場との位相差が第1の励磁状態と異なる第2の励磁状態において、第1の合成起電力を検出し、この第1の合成起電力の振幅と位相を求めると共に、第2の合成起電力を検出し、この第2の合成起電力の振幅と位相を求める信号検出部5cと、第2の励磁状態における第1の合成起電力を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の励磁状態における第2の合成起電力を第2の∂A/∂t成分として抽出する∂A/∂t成分抽出部6cと、第1の励磁状態における第1の合成起電力の中のv×B成分に含まれるスパンを第1の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第1の正規化起電力を求めると共に、第1の励磁状態における第2の合成起電力の中のv×B成分に含まれるスパンを第2の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第2の正規化起電力を求める信号正規化部7cと、第1の正規化起電力と第2の正規化起電力を線形結合する線形結合部8cと、線形結合の結果から流体の流量を算出する流量出力部9cとを有する。
本実施の形態では、前述のとおり励磁コイル3aと電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3bと電極2a,2bとの距離d5が略等しく、励磁コイル3aと電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3bと電極2c,2dとの距離d6が略等しいとする。
本実施の形態の電源部4cは、角周波数ω0の正弦波成分を含む第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、第1の励磁電流との位相差が0で、角周波数ω0の正弦波成分を含む第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、この第1の励磁状態に対して第1の励磁電流と第2の励磁電流との位相差をπに変更した第2の励磁状態をT2秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2である。
図70は、信号検出部5cと∂A/∂t成分抽出部6cと信号正規化部7cと線形結合部8cと流量出力部9cの動作を示すフローチャートである。
まず、信号検出部5cは、第1の励磁状態において、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分Ex501の振幅r501を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex501との位相差φ501を図示しない位相検波器により求める。また、信号検出部5cは、第1の励磁状態において、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分Ex502の振幅r502を求めると共に、実軸と電極間起電力Ex502との位相差φ502を位相検波器により求める(図70ステップ501)。
続いて、信号検出部5cは、第2の励磁状態において、第1の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分Ex501Rの振幅r501Rを求めると共に、実軸と電極間起電力Ex501Rとの位相差φ501Rを位相検波器により求める。また、信号検出部5cは、第2の励磁状態において、第2の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分Ex502Rの振幅r502Rを求めると共に、実軸と電極間起電力Ex502Rとの位相差φ502Rを位相検波器により求める(ステップ502)。
次に、∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力Ex501Rの実軸成分Ex501Rxと虚軸成分Ex501Ryを次式のように算出する(ステップ503)。
Ex501Rx=r501R・cos(φ501R) ・・・(416)
Ex501Ry=r501R・sin(φ501R) ・・・(417)
式(416)、式(417)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力Ex501Rを近似した電極間起電力EdA51の大きさと角度を求める(ステップ504)。このステップ504の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(406)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力EdA51の大きさ|EdA51|と角度∠EdA51を次式のように算出する。
|EdA51|={(Ex501Rx)2+(Ex501Ry)2}1/2
・・・(418)
∠EdA51=tan−1{(Ex501Ry)/(Ex501Rx)}
・・・(419)
また、∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力Ex502Rの実軸成分Ex502Rxと虚軸成分Ex502Ryを次式のように算出する(ステップ505)。
Ex502Rx=r502R・cos(φ502R) ・・・(420)
Ex502Ry=r502R・sin(φ502R) ・・・(421)
式(420)、式(421)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力Ex502Rを近似した電極間起電力EdA52の大きさと角度を求める(ステップ506)。このステップ506の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(409)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6cは、電極間起電力EdA52の大きさ|EdA52|と角度∠EdA52を次式のように算出する。
|EdA52|={(Ex502Rx)2+(Ex502Ry)2}1/2
・・・(422)
∠EdA52=tan−1{(Ex502Ry)/(Ex502Rx)}
・・・(423)
次に、信号正規化部7cは、電極間起電力Ex501を電極間起電力EdA51で正規化した正規化起電力Exn501の大きさと角度を求める(ステップ507)。このステップ507の処理は、式(410)の算出に相当する処理である。信号正規化部7cは、正規化起電力Exn501の大きさ|Exn501|を次式のように算出する。
|Exn501|=(r501/|EdA51|)・ω0 ・・・(424)
そして、信号正規化部7cは、正規化起電力Exn501の角度∠Exn501を次式のように算出する。
∠Exn501=φ501−∠EdA51 ・・・(425)
さらに、信号正規化部7cは、正規化起電力Exn501の実軸成分Exn501xと虚軸成分Exn501yを次式のように算出する。
Exn501x=|Exn501|・cos(∠Exn501) ・・・(426)
Exn501y=|Exn501|・sin(∠Exn501) ・・・(427)
これで、ステップ507の処理が終了する。
また、信号正規化部7cは、電極間起電力Ex502を電極間起電力EdA52で正規化した正規化起電力Exn502の大きさと角度を求める(ステップ508)。このステップ508の処理は、式(411)の算出に相当する処理である。信号正規化部7cは、正規化起電力Exn502の大きさ|Exn502|を次式のように算出する。
|Exn502|=(r502/|EdA52|)・ω0 ・・・(428)
そして、信号正規化部7cは、正規化起電力Exn502の角度∠Exn502を次式のように算出する。
∠Exn502=φ502−∠EdA52 ・・・(429)
さらに、信号正規化部7cは、正規化起電力Exn502の実軸成分Exn502xと虚軸成分Exn502yを次式のように算出する。
Exn502x=|Exn502|・cos(∠Exn502) ・・・(430)
Exn502y=|Exn502|・sin(∠Exn502) ・・・(431)
これで、ステップ508の処理が終了する。
次に、線形結合部8cは、正規化起電力Exn501とExn502を平均化(線形結合)した平均化起電力Exn50aの実軸成分Exn50axと虚軸成分Exn50ayを次式のように算出する(ステップ509)。このステップ509の処理は、式(413)の算出に相当する処理である。
Exn50ax=(Exn501x+Exn502x)/2 ・・・(432)
Exn50ay=(Exn501y+Exn502y)/2 ・・・(433)
流量出力部9cは、被測定流体の平均流速の大きさVを算出する(ステップ510)。このステップ510の処理は、式(415)の算出に相当する処理である。まず、流量出力部9cは、平均化起電力Exn50aの大きさ|Exn50a|を次式のように算出する。
|Exn50a|={(Exn50ax)2+(Exn50ay)2}1/2
・・・(434)
そして、流量出力部9cは、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出する。
V=|Exn50a|/γ50 ・・・(435)
これで、ステップ510の処理が終了する。なお、比例係数γ50は、校正等により予め求めることができる定数である。
信号検出部5cと∂A/∂t成分抽出部6cと信号正規化部7cと線形結合部8cと流量出力部9cとは、以上のようなステップ501〜510の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ511においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ502〜510の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、励磁コイル3aから発生する磁場B19と励磁コイル3bから発生する磁場B21とが等しくなるように調整しておくと、第1の電極間起電力Ex501Rが近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また励磁コイル3aから発生する磁場B20と励磁コイル3bから発生する磁場B22とが等しくなるように調整しておくと、第2の電極間起電力Ex502Rが近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて第1の励磁状態のときの第1の電極間起電力Ex501中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、第2の∂A/∂t成分を用いて第1の励磁状態のときの第2の電極間起電力Ex502中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力Exn501とExn502を線形結合し、この線形結合した結果から被測定流体の流量を算出するようにしたので、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を排除することができ、正確なスパン補正を自動的に行うことができる。その結果、高精度の流量計測を行うことができる。
また、本実施の形態では、角周波数ω0の電極間起電力Ex501,EX502を同じ角周波数ω0の電極間起電力Ex501R,Ex502Rから抽出した∂A/∂t成分を用いて正規化するので、第4の実施の形態に比べて周波数による誤差の影響を少なくすることができる。
なお、本実施の形態において、電極2a,2b,2c,2dに対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極を追加することにより、流速分布の影響に対するスパン補正の性能を上げることが可能になる。この場合、追加する1対の電極間を結ぶ電極軸ともう1対の電極間を結ぶ電極軸とのなす角を、電極2a,2b,2c,2dの場合と同様にほぼπ/2に設定し、それぞれの電極の∂A/∂t成分で正規化した正規化起電力を、追加した電極の分も含めて平均化すればよい。
また、本実施の形態では、各電極における∂A/∂t成分を抽出し、正規化を行った後に各正規化起電力を平均化する例を示したが、第3の原理の別形態として示したとおり、各電極の起電力を線形結合し、また各電極の起電力の和をとり、起電力の和の中の∂A/∂t成分を抽出し、前記線形結合した起電力中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化すれば、本実施の形態と同等の結果を得ることができる。
この場合の電磁流量計の構成は図69に示したものとなる。信号検出部5cの動作は本実施の形態と同様である。∂A/∂t成分抽出部6dは、第2の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力和を∂A/∂t成分として近似的に抽出する。線形結合部8dは、第1の励磁状態における第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分とを線形結合する。信号正規化部7dは、線形結合した起電力の中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化する。流量出力部9dは、正規化の結果から流体の流量を算出する。
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第4の原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと4対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図25に示した電磁流量計と同様であるので、図25の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法として前記第1の抽出方法を用いるものである。
本実施の形態は、第1の実施の形態の構成に対して第3の電極を、励磁コイルの軸を含む平面を挟んで第1の電極と逆側に追加し、第4の電極を、励磁コイルの軸を含む平面を挟んで第2の電極と逆側に追加したものである。1対の第1の電極2a,2bともう1対の第2の電極2c,2dは、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2とのなす角が略π/2となるように配置されている(φe1+φe2≒π/2)。同様に、1対の第3の電極2e,2fともう1対の第4の電極2g,2hは、電極2e,2f間を結ぶ第3の電極軸EAX3と電極2g,2h間を結ぶ第4の電極軸EAX4とのなす角が略π/2となるように配置されている(φe1+φe2≒π/2)。
図25において、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B11と、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B12は、第1の実施の形態と同じく式(232)、式(233)で与えられるものとする。
また、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX3上において電極軸EAX3および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B23と、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX4上において電極軸EAX4および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B24は、以下のように与えられるものとする。
B23=b23・cos(ω0・t−θ23)+b23・cos(ω2・t−θ23)
・・・(436)
B24=b24・cos(ω0・t−θ24)+b24・cos(ω2・t−θ24)
・・・(437)
但し、B11,B12,B23,B24は1つの励磁コイル3から発生しているので、b11,b12,b23,b24とθ11,θ12,θ23,θ24は互いに関係があり、独立変数ではない。式(436)、式(437)において、b23,b24はそれぞれ磁束密度B23,B24の振幅、ω0,ω2は異なる角周波数、θ23は磁場B23の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差及び角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差、θ24は磁場B24の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差及び角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差である。以下、磁束密度B23を磁場B23とし、磁束密度B24を磁場B24とする。
電極2a,2b及び電極2e,2fにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk1(式(41))をrk61とし、電極2a,2b及び電極2e,2fで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ1(式(53))をγ61とし、電極2c,2d及び電極2g,2hにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk2(式(42))をrk62とし、電極2c,2d及び電極2g,2hで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ2(式(54))をγ62とする。
このとき、図29、図31で示される起電力の向きを考慮すれば、電極2a,2b間で検出される第1の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx601cとすると、電極間起電力Ex601cは式(55)に対応して次式で表される。
Ex601c=rk61・ω0・b11・exp{j・(π/2+θ11+θ00)}
+γ61・rk61・V・b11・exp{j・(θ11+θ01)}
・・・(438)
第1の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx621cとすると、電極間起電力Ex621cは式(55)に対応して次式で表される。
Ex621c=rk61・ω2・b11・exp{j・(π/2+θ11+θ00)}
+γ61・rk61・V・b11・exp{j・(θ11+θ01)}
・・・(439)
電極2e,2f間で検出される第3の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx603cとすると、電極間起電力Ex603cは式(152)に対応して次式で表される。
Ex603c=rk61・ω0・b23
・exp{j・(−π/2+θ23+θ00)}
+γ61・rk61・V・b23・exp{j・(θ23+θ01)}
・・・(440)
第3の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx623cとすると、電極間起電力Ex623cは式(152)に対応して次式で表される。
Ex623c=rk61・ω2・b23
・exp{j・(−π/2+θ23+θ00)}
+γ61・rk61・V・b23・exp{j・(θ23+θ01)}
・・・(441)
また、図30、図32で示される起電力の向きを考慮すれば、電極2c,2d間で検出される第2の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx602cとすると、電極間起電力Ex602cは式(56)に対応して次式で表される。
Ex602c=rk62・ω0・b12・exp{j・(π/2+θ12+θ00)}
+γ62・rk62・V・b12・exp{j・(θ12+θ01)}
・・・(442)
第2の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx622cとすると、電極間起電力Ex622cは式(56)に対応して次式で表される。
Ex622c=rk62・ω2・b12・exp{j・(π/2+θ12+θ00)}
+γ62・rk62・V・b12・exp{j・(θ12+θ01)}
・・・(443)
電極2g,2h間で検出される第4の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx604cとすると、電極間起電力Ex604cは式(153)に対応して次式で表される。
Ex604c=rk62・ω0・b24
・exp{j・(−π/2+θ24+θ00)}
+γ62・rk62・V・b24・exp{j・(θ24+θ01)}
・・・(444)
第4の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分をEx624cとすると、電極間起電力Ex624cは式(153)に対応して次式で表される。
Ex624c=rk62・ω2・b24
・exp{j・(−π/2+θ24+θ00)}
+γ62・rk62・V・b24・exp{j・(θ24+θ01)}
・・・(445)
ここで、磁場B11の位相遅れθ11と磁場B23の位相遅れθ23との関係をθ23=θ11+Δθ23とし、磁場B12の位相遅れθ12と磁場B24の位相遅れθ24との関係をθ24=θ12+Δθ24とし、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(438)の第1の電極間起電力Ex601cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、式(440)の第3の電極間起電力Ex603cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの和をEx60s1とすると、第1の起電力和Ex60s1は次式で表される。
Ex60s1=rk61・exp{j・(θ11+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b11−b23・exp(j・Δθ23)}・ω0
+rk61・exp{j・(θ11+θ00)}
・γ61・exp(j・Δθ01)
・{b11+b23・exp(j・Δθ23)}・V ・・(446)
式(442)の第2の電極間起電力Ex602cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、式(444)の第4の電極間起電力Ex604cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの和をEx60s2とすると、第2の起電力和Ex60s2は次式で表される。
Ex60s2=rk62・exp{j・(θ12+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b12−b24・exp(j・Δθ24)}・ω0
+rk62・exp{j・(θ12+θ00)}
・γ62・exp(j・Δθ01)
・{b12+b24・exp(j・Δθ24)}・V ・・(447)
また、式(438)の第1の電極間起電力Ex601cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、式(440)の第3の電極間起電力Ex603cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの差をEx60d1とすると、第1の起電力差Ex60d1は次式で表される。
Ex60d1=rk61・exp{j・(θ11+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b11+b23・exp(j・Δθ23)}・ω0
+rk61・exp{j・(θ11+θ00)}
・γ61・exp(j・Δθ01)
・{b11−b23・exp(j・Δθ23)}・V ・・(448)
式(439)の第1の電極間起電力Ex621cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、式(441)の第3の電極間起電力Ex623cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの差をEx62d1とすると、起電力差Ex62d1は次式で表される。
Ex62d1=rk61・exp{j・(θ11+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b11+b23・exp(j・Δθ23)}・ω2
+rk61・exp{j・(θ11+θ00)}
・γ61・exp(j・Δθ01)
・{b11−b23・exp(j・Δθ23)}・V ・・(449)
式(442)の第2の電極間起電力Ex602cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、式(444)の第4の電極間起電力Ex604cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの差をEx60d2とすると、第2の起電力差Ex60d2は次式で表される。
Ex60d2=rk62・exp{j・(θ12+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b12+b24・exp(j・Δθ24)}・ω0
+rk62・exp{j・(θ12+θ00)}
・γ62・exp(j・Δθ01)
・{b12−b24・exp(j・Δθ24)}・V ・・(450)
式(443)の第2の電極間起電力Ex622cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、式(445)の第4の電極間起電力Ex624cにθ23=θ11+Δθ23、θ24=θ12+Δθ24、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの差をEx62d2とすると、起電力差Ex62d2は次式で表される。
Ex62d2=rk62・exp{j・(θ12+θ00)}
・exp(j・π/2)
・{b12+b24・exp(j・Δθ24)}・ω2
+rk62・exp{j・(θ12+θ00)}
・γ62・exp(j・Δθ01)
・{b12−b24・exp(j・Δθ24)}・V ・・(451)
起電力差Ex60d1とEx62d1との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA61とすれば、差分EdA61は次式で表される。この差分EdA61は、第4の原理の第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA61=(Ex60d1−Ex62d1)・ω0/(ω0−ω2)
=rk61・exp{j・(θ11+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b11+b23・exp(j・Δθ23)}・ω0
・・・(452)
起電力差Ex60d2とEx62d2との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA62とすれば、差分EdA62は次式で表される。この差分EdA62は、第4の原理の第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA62=(Ex60d2−Ex62d2)・ω0/(ω0−ω2)
=rk62・exp{j・(θ12+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b12+b24・exp(j・Δθ24)}・ω0
・・・(453)
差分EdA61,EdA62は、平均流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この差分EdA61,EdA62を用いてそれぞれ起電力和Ex60s1,Ex60s2中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。なお、差分EdA61は、正確には起電力差Ex60d1とEx62d1との差をω0/(ω0−ω2)倍したものであるが、ω0/(ω0−ω2)倍した理由は、式の展開を容易にするためである。起電力差Ex60d2とEx62d2との差をω0/(ω0−ω2)倍したものを差分EdA62とする理由も同じである。
式(446)の第1の起電力和Ex60s1を式(452)の差分EdA61で正規化し、ω0倍した結果をExn601とすれば、正規化起電力和Exn601は次式のようになる。
Exn601=(Ex60s1/EdA61)・ω0
={b11−b23・exp(j・Δθ23)}
/{b11+b23・exp(j・Δθ23)}・ω0
+[γ61・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(454)
また、式(447)の第2の起電力和Ex60s2を式(453)の差分EdA62で正規化し、ω0倍した結果をExn602とすれば、正規化起電力和Exn602は次式のようになる。
Exn602=(Ex60s2/EdA62)・ω0
={b12−b24・exp(j・Δθ24)}
/{b12+b24・exp(j・Δθ24)}・ω0
+[γ62・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(455)
式(454)の右辺第2項及び式(455)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。なお、起電力和Ex60s1を差分EdA61で正規化した結果をω0倍した理由は、平均流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。なお、起電力和Ex602を差分EdA62で正規化した結果をω0倍した理由も同じである。
式(454)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ61の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもち、式(455)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ62の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度を持つ。係数γ61,γ62は流速分布の影響により変化する値であり、角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(454)の右辺第2項及び式(455)の右辺第2項は被測定流体の流速及び流速分布が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
さらに上述のように、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2の角度はほぼπ/2に保たれ、また電極2e,2f間を結ぶ電極軸EAX3と電極2g,2h間を結ぶ電極軸EAX4の角度もほぼπ/2に保たれているので、図82、図83に示したような軸対称流のときの流速分布に関係する比例係数をγ60とすると、γ60,γ61,γ62の関係は次式で表すことができる。比例係数γ60の値は校正時に確認することができる。
γ60=(γ61+γ62)/2 ・・・(456)
よって、正規化起電力和Exn601とExn602の平均をとったものをExn60aとすると、平均化起電力和Exn60aでは、次式のように流速分布に影響する比例係数γ61,γ62が除去され、代わりに校正時に確認できる比例係数γ60が平均流速の大きさVにかかっていることが分かる。
Exn60a=(Exn601+Exn602)/2
=k6・ω0+[γ60・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(457)
なお、式(457)においてk6は磁場に関連する項であり、次式で表される。
k6=[{b11−b23・exp(j・Δθ23)}
/{b11+b23・exp(j・Δθ23)}
+{b12−b24・exp(j・Δθ24)}
/{b12+b24・exp(j・Δθ24)}]/2 ・・・(458)
式(457)の右辺第2項において、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ60の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。よって、流速分布の影響も含めて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
ここで、励磁コイル3と電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3と電極2e,2fとの距離d7がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b11≒b23、Δθ23≒0となり、また励磁コイル3と電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3と電極2g,2hとの距離d8がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b12≒b24、Δθ24≒0となる。このとき、式(457)と式(458)より平均流速の大きさVは次式のように表される。
V=|(Exn60a)/[γ60・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|Exn60a|/γ60 ・・・(459)
なお、第4の原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表6のとおりである。本実施の形態は、表6から明らかなように、前述の第6の原理を具体的に実現する1つの例である。
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。図71は本実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図であり、図25と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2b、第2の電極2c,2d、第3の電極2e,2f及び第4の電極2g,2hと、励磁コイル3と、励磁コイル3に励磁電流を供給する電源部4eと、電極2a,2bから第1の合成起電力を検出し、電極2c,2dから第2の合成起電力を検出し、電極2e,2fから第3の合成起電力を検出し、電極2g,2hから第4の合成起電力を検出し、同時又は交互に得られる第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を第1の合成起電力と第2の合成起電力と第3の合成起電力と第4の合成起電力の各々について求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の合成起電力と第3の合成起電力の同一周波数成分の起電力和、及び第2の合成起電力と第4の合成起電力の同一周波数成分の起電力和を第1の周波数成分又は第2の周波数成分のいずれか一方について求め、第1の合成起電力と第3の合成起電力の同一周波数成分の起電力差、及び第2の合成起電力と第4の合成起電力の同一周波数成分の起電力差を第1の周波数成分と第2の周波数成分の各々について求める信号検出部5eと、第1の合成起電力と第3の合成起電力との間で第1の周波数成分と第2の周波数成分について求められた2つの起電力差の差分を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の合成起電力と第4の合成起電力との間で第1の周波数成分と第2の周波数成分について求められた2つの起電力差の差分を第2の∂A/∂t成分として抽出する∂A/∂t成分抽出部6eと、第1の合成起電力と第3の合成起電力との間で求められた第1の周波数成分における起電力和又は第2の周波数成分における起電力和の中のv×B成分に含まれるスパンを第1の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第1の正規化起電力和を求めると共に、第2の合成起電力と第4の合成起電力との間で求められた第1の周波数成分における起電力和又は第2の周波数成分における起電力和の中のv×B成分に含まれるスパンを第2の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第2の正規化起電力和を求める信号正規化部7eと、第1の正規化起電力和と第2の正規化起電力和を線形結合する線形結合部8eと、線形結合の結果から流体の流量を算出する流量出力部9eとを有する。
本実施の形態では、前述のとおり励磁コイル3と電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3と電極2e,2fとの距離d7が略等しく、励磁コイル3と電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3と電極2g,2hとの距離d8が略等しいとする。
電源部4eは、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む励磁電流を励磁コイル3に供給する。このとき、励磁電流における角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分の振幅は同一である。
図72は、信号検出部5eと∂A/∂t成分抽出部6eと信号正規化部7eと線形結合部8eと流量出力部9eの動作を示すフローチャートである。
まず、信号検出部5eは、電極2a,2b間の第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と電極2e,2f間の第3の電極間起電力の角周波数ω0の成分との和Ex60s1の振幅r60s1を求めると共に、実軸と起電力和Ex60s1との位相差φ60s1を図示しない位相検波器により求める。また、信号検出部5eは、電極2c,2d間の第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と電極2g,2h間の第4の電極間起電力の角周波数ω0の成分との和Ex60s2の振幅r60s2を求めると共に、実軸と起電力和Ex60s2との位相差φ60s2を位相検波器により求める(図72ステップ601)。
同様に、信号検出部5eは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω0の成分との差Ex60d1の振幅r60d1を求めると共に、実軸と起電力差Ex60d1との位相差φ60d1を位相検波器により求め、また第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω2の成分との差Ex62d1の振幅r62d1を求めると共に、実軸と起電力差Ex62d1との位相差φ62d1を位相検波器により求める。さらに、信号検出部5eは、第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω0の成分との差Ex60d2の振幅r60d2を求めると共に、実軸と起電力差Ex60d2との位相差φ60d2を位相検波器により求め、また第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω2の成分との差Ex62d2の振幅r62d2を求めると共に、実軸と起電力差Ex62d2との位相差φ62d2を位相検波器により求める(ステップ602)。
続いて、∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差Ex60d1の実軸成分Ex60d1xと虚軸成分Ex60d1y、および起電力差Ex62d1の実軸成分Ex62d1xと虚軸成分Ex62d1yを次式のように算出する(ステップ603)。
Ex60d1x=r60d1・cos(φ60d1) ・・・(460)
Ex60d1y=r60d1・sin(φ60d1) ・・・(461)
Ex62d1x=r62d1・cos(φ62d1) ・・・(462)
Ex62d1y=r62d1・sin(φ62d1) ・・・(463)
式(460)〜式(463)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差Ex60d1とEx62d1との差分EdA61の大きさと角度を求める(ステップ604)。このステップ604の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(452)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6eは、差分EdA61の大きさ|EdA61|を次式のように算出する。
|EdA61|={(Ex60d1x−Ex62d1x)2
+(Ex60d1y−Ex62d1y)2}1/2・ω0/(ω0−ω2)
・・・(464)
そして、∂A/∂t成分抽出部6eは、差分EdA61の角度∠EdA61を次式のように算出する。
∠EdA61=tan−1{(Ex60d1y−Ex62d1y)
/(Ex60d1x−Ex62d1x)} ・・・(465)
これで、ステップ604の処理が終了する。
また、∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差Ex60d2の実軸成分Ex60d2xと虚軸成分Ex60d2y、および起電力差Ex62d2の実軸成分Ex62d2xと虚軸成分Ex62d2yを次式のように算出する(ステップ605)。
Ex60d2x=r60d2・cos(φ60d2) ・・・(466)
Ex60d2y=r60d2・sin(φ60d2) ・・・(467)
Ex62d2x=r62d2・cos(φ62d2) ・・・(468)
Ex62d2y=r62d2・sin(φ62d2) ・・・(469)
式(466)〜式(469)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差Ex60d2とEx62d2との差分EdA62の大きさと角度を求める(ステップ606)。このステップ606の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(453)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6eは、差分EdA62の大きさ|EdA62|を次式のように算出する。
|EdA62|={(Ex60d2x−Ex62d2x)2
+(Ex60d2y−Ex62d2y)2}1/2・ω0/(ω0−ω2)
・・・(470)
そして、∂A/∂t成分抽出部6eは、差分EdA62の角度∠EdA62を次式のように算出する。
∠EdA62=tan−1{(Ex60d2y−Ex62d2y)
/(Ex60d2x−Ex62d2x)} ・・・(471)
これで、ステップ606の処理が終了する。
信号正規化部7eは、第1の起電力和Ex60s1を差分EdA61で正規化した正規化起電力和Exn601の大きさと角度を求める(ステップ607)。このステップ607の処理は、式(454)の算出に相当する処理である。信号正規化部7eは、正規化起電力和Exn601の大きさ|Exn601|と角度∠Exn601を次式のように算出する。
|Exn601|=(r60s1/|EdA61|)・ω0 ・・・(472)
∠Exn601=φ60s1−∠EdA61 ・・・(473)
さらに、信号正規化部7eは、正規化起電力和Exn601の実軸成分Exn601xと虚軸成分Exn601yを次式のように算出する。
Exn601x=|Exn601|・cos(∠Exn601) ・・・(474)
Exn601y=|Exn601|・sin(∠Exn601) ・・・(475)
これで、ステップ607の処理が終了する。
また、信号正規化部7eは、第2の起電力和Ex60s2を差分EdA62で正規化した正規化起電力和Exn602の大きさと角度を求める(ステップ608)。このステップ608の処理は、式(455)の算出に相当する処理である。信号正規化部7eは、正規化起電力和Exn602の大きさ|Exn602|と角度∠Exn602を次式のように算出する。
|Exn602|=(r60s2/|EdA62|)・ω0 ・・・(476)
∠Exn602=φ60s2−∠EdA62 ・・・(477)
さらに、信号正規化部7eは、正規化起電力和Exn602の実軸成分Exn602xと虚軸成分Exn602yを次式のように算出する。
Exn602x=|Exn602|・cos(∠Exn602) ・・・(478)
Exn602y=|Exn602|・sin(∠Exn602) ・・・(479)
これで、ステップ608の処理が終了する。
次に、線形結合部8eは、正規化起電力和Exn601とExn602を平均化(線形結合)した平均化起電力和Exn60aの実軸成分Exn60axと虚軸成分Exn60ayを次式のように算出する(ステップ609)。このステップ609の処理は、式(457)の算出に相当する処理である。
Exn60ax=(Exn601x+Exn602x)/2 ・・・(480)
Exn60ay=(Exn601y+Exn602y)/2 ・・・(481)
流量出力部9eは、被測定流体の平均流速の大きさVを算出する(ステップ610)。このステップ610の処理は、式(459)の算出に相当する処理である。まず、流量出力部9eは、平均化起電力和Exn60aの大きさ|Exn60a|を次式のように算出する。
|Exn60a|={(Exn60ax)2
+(Exn60ay)2}1/2 ・・・(482)
そして、流量出力部9eは、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出する。
V=|Exn60a|/γ60 ・・・(483)
これで、ステップ610の処理が終了する。なお、比例係数γ60は、校正等により予め求めることができる定数である。
信号検出部5eと∂A/∂t成分抽出部6eと信号正規化部7eと線形結合部8eと流量出力部9eとは、以上のようなステップ601〜610の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ611においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の角周波数ω0の成分の起電力差と、第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の角周波数ω2の成分の起電力差とから差分EdA61(第1の∂A/∂t成分)を抽出し、この差分EdA61を用いて第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の起電力和Ex60s1中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、また第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の角周波数ω0の成分の起電力差と、第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の角周波数ω2の成分の起電力差とから差分EdA62(第2の∂A/∂t成分)を抽出し、この差分EdA62を用いて第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の起電力和Ex60s2中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力和Exn601とExn602を線形結合し、この線形結合した結果から被測定流体の流量を算出するようにしたので、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を排除することができ、正確なスパン補正を自動的に行うことができる。その結果、高精度の流量計測を行うことができる。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力和Ex60s1,Ex60s2をスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力和Ex62s1,Ex62s2をスパン補正の対象としてもよい。この場合は、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω2の成分との起電力和Ex62s1、第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω2の成分との起電力和Ex62s2を信号検出部5eで求めた後、次式のように起電力差Ex62d1からEx60d1を引いて差分EdA61を求める。
EdA61=(Ex62d1−Ex60d1)・ω2/(ω2−ω0)
・・・(484)
また、起電力差Ex62d2からEx60d2を引いて差分EdA62を求める。
EdA62=(Ex62d2−Ex60d2)・ω2/(ω2−ω0)
・・・(485)
そして、次式のように差分EdA61を用いて起電力和Ex62s1中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
Exn621=(Ex62s1/EdA61)・ω2 ・・・(486)
また、差分EdA62を用いて起電力和Ex62s2中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
Exn622=(Ex62s2/EdA62)・ω2 ・・・(487)
さらに、正規化起電力和Exn621とExn622を平均化した平均化起電力和Exn62aを次式のように求める。
Exn62a=(Exn621+Exn622)/2 ・・・(488)
そして、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出すればよい。その他の処理は起電力和Ex60s1,Ex60s2をスパン補正の対象とする場合と同じである。
V=|Exn62a|/γ ・・・(489)
また、本実施の形態では、複数の励磁周波数ω0,ω2で同時に励磁する例を示したが、単一の励磁周波数ω0又はω2で励磁を行い、励磁周波数をω0とω2で交互に切り替えながら励磁をした場合でも同じ効果を得ることができる。
また、本実施の形態において、2対の電極2a,2b,2c,2d(第1組と呼ぶ)に対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極(第3組と呼ぶ)を追加し、2対の電極2e,2f,2g,2h(第2組と呼ぶ)に対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極(第4組と呼ぶ)を追加することにより、流速分布の影響に対するスパン補正の性能を上げることが可能になる。この場合、第3組の1対の電極間を結ぶ電極軸ともう1対の電極間を結ぶ電極軸とのなす角をほぼπ/2に設定すると共に、第4組の1対の電極間を結ぶ電極軸ともう1対の電極間を結ぶ電極軸とのなす角をほぼπ/2に設定し、第1組と第2組の電極の場合で説明したように、第3組と第4組の電極において起電力差の中の∂A/∂t成分を用いて起電力和を正規化し、第1組と第2組の電極の場合で説明した2つの正規化起電力和と、第3組と第4組の電極で求めた2つの正規化起電力和とを平均化すればよい。
また、本実施の形態では、起電力差における∂A/∂t成分を抽出し、起電力和の正規化を行った後に各正規化起電力和を平均化する例を示したが、第4の原理の別形態として示したとおり、第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の起電力和と、第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の起電力和とを線形結合し、また第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の起電力差と、第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の起電力差との和を求め、この起電力差の和の中の∂A/∂t成分を抽出し、前記線形結合した起電力和の中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化すれば、本実施の形態と同等の結果を得ることができる。
この場合の電磁流量計の構成を図73に示す。信号検出部5eの動作は本実施の形態と同様である。∂A/∂t成分抽出部6fは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力差と、第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力差との間で和を求め、この起電力差の和の中の∂A/∂t成分を抽出する。あるいは、∂A/∂t成分抽出部6fは、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω2の成分との起電力差と、第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω2の成分との起電力差との間で和を求め、この起電力差の和の中の∂A/∂t成分を抽出する。
線形結合部8fは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力和と、第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力和とを線形結合する。あるいは、線形結合部8fは、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω2の成分との起電力和と、第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω2の成分との起電力和とを線形結合する。信号正規化部7eは、線形結合した起電力和の中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化する。このとき、線形結合した起電力和とそれを正規化する∂A/∂t成分には、同一周波数のものを用いる。流量出力部9fは、正規化の結果から流体の流量を算出する。
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第4の原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと4対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図25に示した電磁流量計と同様であるので、図25の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法として前記第2の抽出方法を用いるものである。
第6の実施の形態と同様に、1対の第1の電極2a,2bともう1対の第2の電極2c,2dは、電極2a,2b間を結ぶ第1の電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ第2の電極軸EAX2とのなす角が略π/2となるように配置されている(φe1+φe2≒π/2)。同様に、1対の第3の電極2e,2fともう1対の第4の電極2g,2hは、電極2e,2f間を結ぶ第3の電極軸EAX3と電極2g,2h間を結ぶ第4の電極軸EAX4とのなす角が略π/2となるように配置されている(φe1+φe2≒π/2)。
図25において、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B25と、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B26は、次式で与えられるものとする。
B25=b25・cos(ω0・t−θ25) ・・・(490)
B26=b26・cos(ω0・t−θ26) ・・・(491)
また、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX3上において電極軸EAX3および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B27と、励磁コイル3から発生する磁場Baのうち、電極軸EAX4上において電極軸EAX4および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B28は、以下のように与えられるものとする。
B27=b27・cos(ω0・t−θ27) ・・・(492)
B28=b28・cos(ω0・t−θ28) ・・・(493)
但し、B25,B26,B27,B28は1つの励磁コイル3から発生しているので、b25,b26,b27,b28とθ25,θ26,θ27,θ28は互いに関係があり、独立変数ではない。式(490)〜式(493)において、b25,b26,b27,b28はそれぞれ磁束密度B25,B26,B27,B28の振幅、ω0は角周波数、θ25は磁場B25とω0・tとの位相差、θ26は磁場B26とω0・tとの位相差、θ27は磁場B27とω0・tとの位相差、θ28は磁場B28とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B25を磁場B25とし、磁束密度B26を磁場B26とし、磁束密度B27を磁場B27とし、磁束密度B28を磁場B28とする。
電極2a,2b及び電極2e,2fにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk1(式(41))をrk71とし、電極2a,2b及び電極2e,2fで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ1(式(53))をγ71とし、電極2c,2d及び電極2g,2hにおいて磁場の変化に起因する起電力にかかる比例係数rk2(式(42))をrk72とし、電極2c,2d及び電極2g,2hで検出される電位に対する偏流の影響を考慮した比例係数γ2(式(54))をγ72とする。
このとき、図29、図31で示される起電力の向きを考慮すれば、電極2a,2b間で検出される第1の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx701cとすると、電極間起電力Ex701cは式(55)に対応して次式で表される。
Ex701c=rk71・ω0・b25・exp{j・(π/2+θ25+θ00)}
+γ71・rk71・V・b25・exp{j・(θ25+θ01)}
・・・(494)
電極2e,2f間で検出される第3の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx703cとすると、電極間起電力Ex703cは式(152)に対応して次式で表される。
Ex703c=rk71・ω0・b27
・exp{j・(−π/2+θ27+θ00)}
+γ71・rk71・V・b27・exp{j・(θ27+θ01)}
・・・(495)
また、図30、図32で示される起電力の向きを考慮すれば、電極2c,2d間で検出される第2の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx702cとすると、電極間起電力Ex702cは式(56)に対応して次式で表される。
Ex702c=rk72・ω0・b26・exp{j・(π/2+θ26+θ00)}
+γ72・rk72・V・b26・exp{j・(θ26+θ01)}
・・・(496)
電極2g,2h間で検出される第4の電極間起電力において、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分をEx704cとすると、電極間起電力Ex704cは式(153)に対応して次式で表される。
Ex704c=rk72・ω0・b28
・exp{j・(−π/2+θ28+θ00)}
+γ72・rk72・V・b28・exp{j・(θ28+θ01)}
・・・(497)
ここで、磁場B25の位相遅れθ25と磁場B27の位相遅れθ27との関係をθ27=θ25+Δθ27とし、磁場B26の位相遅れθ26と磁場B28の位相遅れθ28との関係をθ28=θ26+Δθ28とし、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(494)の第1の電極間起電力Ex701cにθ27=θ25+Δθ27、θ28=θ26+Δθ28、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、式(495)の第3の電極間起電力Ex703cにθ27=θ25+Δθ27、θ28=θ26+Δθ28、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの和をEx70s1とすると、第1の起電力和Ex70s1は次式で表される。
Ex70s1=rk71・exp{j・(θ25+θ00)}・exp(j・π/2)
・{b25−b27・exp(j・Δθ27)}・ω0
+rk71・exp{j・(θ25+θ00)}
・γ71・exp(j・Δθ01)
・{b25+b27・exp(j・Δθ27)}・V ・・(498)
式(496)の第2の電極間起電力Ex702cにθ27=θ25+Δθ27、θ28=θ26+Δθ28、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、式(497)の第4の電極間起電力Ex704cにθ27=θ25+Δθ27、θ28=θ26+Δθ28、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの和をEx70s2とすると、第2の起電力和Ex70s2は次式で表される。
Ex70s2=rk72・exp{j・(θ26+θ00)}・exp(j・π/2)
・{b26−b28・exp(j・Δθ28)}・ω0
+rk72・exp{j・(θ26+θ00)}
・γ72・exp(j・Δθ01)
・{b26+b28・exp(j・Δθ28)}・V ・・(499)
また、第1の電極間起電力Ex701cにθ27=θ25+Δθ27、θ28=θ26+Δθ28、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、第3の電極間起電力Ex703cにθ27=θ25+Δθ27、θ28=θ26+Δθ28、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの差をEx70d1とすると、第1の起電力差Ex70d1は次式で表される。
Ex70d1=rk71・exp{j・(θ25+θ00)}・exp(j・π/2)
・{b25+b27・exp(j・Δθ27)}・ω0
+rk71・exp{j・(θ25+θ00)}
・γ71・exp(j・Δθ01)
・{b25−b27・exp(j・Δθ27)}・V ・・(500)
第2の電極間起電力Ex702cにθ27=θ25+Δθ27、θ28=θ26+Δθ28、θ01=θ00+Δθ01を代入したものと、第4の電極間起電力Ex704cにθ27=θ25+Δθ27、θ28=θ26+Δθ28、θ01=θ00+Δθ01を代入したものとの差をEx70d2とすると、第2の起電力差Ex70d2は次式で表される。
Ex70d2=rk72・exp{j・(θ26+θ00)}・exp(j・π/2)
・{b26+b28・exp(j・Δθ28)}・ω0
+rk72・exp{j・(θ26+θ00)}
・γ72・exp(j・Δθ01)
・{b26−b28・exp(j・Δθ28)}・V ・・(501)
ここで、Ex70d1における∂A/∂t成分≫Ex70d1におけるv×B成分と近似できる場合には、Ex70d1におけるv×B成分≒0となり、近似的にEx70d1における∂A/∂t成分を抽出することができる。初期状態(校正時の状態)において、磁場B25と磁場B27を等しくし、また磁場B26と磁場B28を等しく設定しておくと、その後の磁場B25とB27との差、及び磁場B26とB28との差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b25+b27・exp(j・Δθ27)|
≫|b25−b27・exp(j・Δθ27)| ・・・(502)
|b26+b28・exp(j・Δθ28)|
≫|b26−b28・exp(j・Δθ28)| ・・・(503)
また、通常ω0>γ71・Vが成り立つことから、式(502)の条件を考慮すると、式(500)の起電力差Ex70d1において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b25+b27・exp(j・Δθ27)}|
≫|V・exp(j・Δθ01)
・γ71・{b25−b27・exp(j・Δθ27)}| ・・・(504)
式(504)の条件を用いて、起電力差Ex70d1を近似した起電力差をEdA71とすると、起電力差EdA71は次式で表される。この起電力差EdA71は、第4の原理の第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA71≒Ex70d1 ・・・(505)
EdA71=rk71・exp{j・(θ25+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b25+b27・exp(j・Δθ27)} ・・・(506)
また、通常ω0>γ72・Vが成り立つことから、式(503)の条件を考慮すると、式(501)の起電力差Ex70d2において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b26+b28・exp(j・Δθ28)}|
≫|V・exp(j・Δθ01)
・γ72・{b26−b28・exp(j・Δθ28)}| ・・・(507)
式(507)の条件を用いて、起電力差Ex70d2を近似した起電力差をEdA72とすると、起電力差EdA72は次式で表される。この起電力差EdA72は、第4の原理の第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA72≒Ex70d2 ・・・(508)
EdA72=rk72・exp{j・(θ26+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b26+b28・exp(j・Δθ28)} ・・・(509)
起電力差EdA71,EdA72は、平均流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この起電力差EdA71,EdA72を用いてそれぞれ起電力和Ex70s1,Ex70s2中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
式(498)の第1の起電力和Ex70s1を式(506)の起電力差EdA71で正規化し、ω0倍した結果をExn701とすれば、正規化起電力和Exn701は次式のようになる。
Exn701=(Ex70s1/EdA71)・ω0
={b25−b27・exp(j・Δθ27)}
/{b25+b27・exp(j・Δθ27)}・ω0
+[γ71・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(510)
また、式(499)の第2の起電力和Ex70s2を式(509)の起電力差EdA72で正規化し、ω0倍した結果をExn702とすれば、正規化起電力和Exn702は次式のようになる。
Exn702=(Ex70s2/EdA72)・ω0
={b26−b28・exp(j・Δθ28)}
/{b26+b28・exp(j・Δθ28)}・ω0
+[γ72・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(511)
式(510)の右辺第2項及び式(511)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。なお、第1の起電力和Ex70s1を起電力差EdA71で正規化した結果をω0倍した理由は、平均流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。第2の起電力和Ex70s2を起電力差EdA72で正規化した結果をω0倍した理由も同じである。
式(510)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ71の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもち、式(511)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ72の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度を持つ。係数γ71,γ72は流速分布の影響により変化する値であり、角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(510)の右辺第2項及び式(511)の右辺第2項は被測定流体の流速及び流速分布が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
さらに上述のように、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2の角度はほぼπ/2に保たれ、また電極2e,2f間を結ぶ電極軸EAX3と電極2g,2h間を結ぶ電極軸EAX4の角度もほぼπ/2に保たれているので、図82、図83に示したような軸対称流のときの流速分布に関係する比例係数をγ70とすると、γ70,γ71,γ72の関係は次式で表すことができる。比例係数γ70の値は校正時に確認することができる。
γ70=(γ71+γ72)/2 ・・・(512)
よって、正規化起電力和Exn701とExn702の平均をとったものをExn70aとすると、平均化起電力和Exn70aでは、次式のように流速分布に影響する比例係数γ71,γ72が除去され、代わりに校正時に確認できる比例係数γ70が平均流速の大きさVにかかっていることが分かる。
Exn70a=(Exn701+Exn702)/2
=k7・ω0+[γ70・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(513)
なお、式(513)においてk7は磁場に関連する項であり、次式で表される。
k7=[{b25−b27・exp(j・Δθ27)}
/{b25+b27・exp(j・Δθ27)}
+{b26−b28・exp(j・Δθ28)}
/{b26+b28・exp(j・Δθ28)}]/2 ・・・(514)
式(513)の右辺第2項において、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ70の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。よって、流速分布の影響も含めて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
ここで、励磁コイル3と電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3と電極2e,2fとの距離d7がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b25≒b27、Δθ27≒0となり、また励磁コイル3と電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3と電極2g,2hとの距離d8がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b26≒b28、Δθ28≒0となる。このとき、式(513)と式(514)より平均流速の大きさVは次式のように表される。
V=|(Exn70a)/[γ70・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|Exn70a|/γ70 ・・・(515)
なお、第4の原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表7のとおりである。本実施の形態は、表7から明らかなように、前述の第6の原理を具体的に実現する1つの例である。
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第6の実施の形態と同様であるので、図71の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2b、第2の電極2c,2d、第3の電極2e,2f及び第4の電極2g,2hと、励磁コイル3と、電源部4eと、電極2a,2bから第1の合成起電力を検出し、電極2c,2dから第2の合成起電力を検出し、電極2e,2fから第3の合成起電力を検出し、電極2g,2hから第4の合成起電力を検出し、その振幅と位相を第1の合成起電力と第2の合成起電力と第3の合成起電力と第4の合成起電力の各々について求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の合成起電力と第3の合成起電力の起電力和、及び第2の合成起電力と第4の合成起電力の起電力和を求めると共に、第1の合成起電力と第3の合成起電力の起電力差、及び第2の合成起電力と第4の合成起電力の起電力差を求める信号検出部5eと、第1の合成起電力と第3の合成起電力の起電力差を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の合成起電力と第4の合成起電力の起電力差を第2の∂A/∂t成分として抽出する∂A/∂t成分抽出部6eと、第1の合成起電力と第3の合成起電力の起電力和の中のv×B成分に含まれるスパンを第1の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第1の正規化起電力和を求めると共に、第2の合成起電力と第4の合成起電力の起電力和の中のv×B成分に含まれるスパンを第2の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第2の正規化起電力和を求める信号正規化部7eと、第1の正規化起電力和と第2の正規化起電力和を線形結合する線形結合部8eと、この線形結合の結果から流体の流量を算出する流量出力部9eとを有する。
本実施の形態では、前述のとおり励磁コイル3と電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3と電極2e,2fとの距離d7が略等しく、励磁コイル3と電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3と電極2g,2hとの距離d8が略等しいとする。
本実施の形態の電源部4eは、角周波数ω0の正弦波成分を含む励磁電流を励磁コイル3に供給する。
図74は、信号検出部5eと∂A/∂t成分抽出部6eと信号正規化部7eと線形結合部8eと流量出力部9eの動作を示すフローチャートである。
まず、信号検出部5eは、電極2a,2b間の第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と電極2e,2f間の第3の電極間起電力の角周波数ω0の成分との和Ex70s1の振幅r70s1を求めると共に、実軸と起電力和Ex70s1との位相差φ70s1を図示しない位相検波器により求める。また、信号検出部5eは、電極2c,2d間の第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と電極2g,2h間の第4の電極間起電力の角周波数ω0の成分との和Ex70s2の振幅r70s2を求めると共に、実軸と起電力和Ex70s2との位相差φ70s2を位相検波器により求める(図74ステップ701)。
同様に、信号検出部5eは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω0の成分との差Ex70d1の振幅r70d1を求めると共に、実軸と起電力差Ex70d1との位相差φ70d1を位相検波器により求める。また、信号検出部5eは、第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω0の成分との差Ex70d2の振幅r70d2を求めると共に、実軸と起電力差Ex70d2との位相差φ70d2を位相検波器により求める(ステップ702)。
続いて、∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差Ex70d1の実軸成分Ex70d1xと虚軸成分Ex70d1yを次式のように算出する(ステップ703)。
Ex70d1x=r70d1・cos(φ70d1) ・・・(516)
Ex70d1y=r70d1・sin(φ70d1) ・・・(517)
式(516)、式(517)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差Ex70d1を近似した起電力差EdA71の大きさと角度を求める(ステップ704)。このステップ704の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(506)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差EdA71の大きさ|EdA71|と角度∠EdA71を次式のように算出する。
|EdA71|={(Ex70d1x)2+(Ex70d1y)2}1/2
・・・(518)
∠EdA71=tan−1{(Ex70d1y)/(Ex70d1x)}
・・・(519)
また、∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差Ex70d2の実軸成分Ex70d2xと虚軸成分Ex70d2yを次式のように算出する(ステップ705)。
Ex70d2x=r70d2・cos(φ70d2) ・・・(520)
Ex70d2y=r70d2・sin(φ70d2) ・・・(521)
式(520)、式(521)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差Ex70d2を近似した起電力差EdA72の大きさと角度を求める(ステップ706)。このステップ706の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(509)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6eは、起電力差EdA72の大きさ|EdA72|と角度∠EdA72を次式のように算出する。
|EdA72|={(Ex70d2x)2+(Ex70d2y)2}1/2
・・・(522)
∠EdA72=tan−1{(Ex70d2y)/(Ex70d2x)}
・・・(523)
信号正規化部7eは、第1の起電力和Ex70s1を起電力差EdA71で正規化した正規化起電力和Exn701の大きさと角度を求める(ステップ707)。このステップ707の処理は、式(510)の算出に相当する処理である。信号正規化部7eは、正規化起電力和Exn701の大きさ|Exn701|と角度∠Exn701を次式のように算出する。
|Exn701|=(r70s1/|EdA71|)・ω0 ・・・(524)
∠Exn701=φ70s1−∠EdA71 ・・・(525)
さらに、信号正規化部7eは、正規化起電力和Exn701の実軸成分Exn701xと虚軸成分Exn701yを次式のように算出する。
Exn701x=|Exn701|・cos(∠Exn701) ・・・(526)
Exn701y=|Exn701|・sin(∠Exn701) ・・・(527)
これで、ステップ707の処理が終了する。
また、信号正規化部7eは、第2の起電力和Ex70s2を起電力差EdA72で正規化した正規化起電力和Exn702の大きさと角度を求める(ステップ708)。このステップ708の処理は、式(511)の算出に相当する処理である。信号正規化部7eは、正規化起電力和Exn702の大きさ|Exn702|と角度∠Exn702を次式のように算出する。
|Exn702|=(r70s2/|EdA72|)・ω0 ・・・(528)
∠Exn702=φ70s2−∠EdA72 ・・・(529)
さらに、信号正規化部7eは、正規化起電力和Exn702の実軸成分Exn702xと虚軸成分Exn702yを次式のように算出する。
Exn702x=|Exn702|・cos(∠Exn702) ・・・(530)
Exn702y=|Exn702|・sin(∠Exn702) ・・・(531)
これで、ステップ708の処理が終了する。
次に、線形結合部8eは、正規化起電力和Exn701とExn702を平均化(線形結合)した平均化起電力和Exn70aの実軸成分Exn70axと虚軸成分Exn70ayを次式のように算出する(ステップ709)。このステップ709の処理は、式(513)の算出に相当する処理である。
Exn70ax=(Exn701x+Exn702x)/2 ・・・(532)
Exn70ay=(Exn701y+Exn702y)/2 ・・・(533)
流量出力部9eは、被測定流体の平均流速の大きさVを算出する(ステップ710)。このステップ710の処理は、式(515)の算出に相当する処理である。まず、流量出力部9eは、平均化起電力和Exn70aの大きさ|Exn70a|を次式のように算出する。
|Exn70a|={(Exn70ax)2+(Exn70ay)2}1/2
・・・(534)
そして、流量出力部9eは、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出する。
V=|Exn70a|/γ70 ・・・(535)
これで、ステップ710の処理が終了する。なお、比例係数γ70は、校正等により予め求めることができる定数である。
信号検出部5eと∂A/∂t成分抽出部6eと信号正規化部7eと線形結合部8eと流量出力部9eとは、以上のようなステップ701〜710の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ711においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、励磁コイル3から発生する磁場B25と磁場B27とが等しくなるように調整しておくと、起電力差Ex70d1が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、励磁コイル3から発生する磁場B26と磁場B28とが等しくなるように調整しておくと、起電力差Ex70d2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の起電力和Ex70s1中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、また第2の∂A/∂t成分を用いて第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の起電力和Ex70s2中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力和Exn701とExn702を線形結合し、この線形結合した結果から被測定流体の流量を算出するようにしたので、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を排除することができ、正確なスパン補正を自動的に行うことができる。その結果、高精度の流量計測を行うことができる。
また、本実施の形態では、角周波数ω0の起電力和Ex70s1,Ex70s2を同じ角周波数ω0の起電力差Ex70d1,Ex70d2から抽出した∂A/∂t成分を用いて正規化するので、第6の実施の形態に比べて周波数による誤差の影響を少なくすることができる。
なお、本実施の形態において、2対の電極2a,2b,2c,2d(第1組と呼ぶ)に対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極(第3組と呼ぶ)を追加し、2対の電極2e,2f,2g,2h(第2組と呼ぶ)に対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極(第4組と呼ぶ)を追加することにより、流速分布の影響に対するスパン補正の性能を上げることが可能になる。この場合、第3組の1対の電極間を結ぶ電極軸ともう1対の電極間を結ぶ電極軸とのなす角をほぼπ/2に設定すると共に、第4組の1対の電極間を結ぶ電極軸ともう1対の電極間を結ぶ電極軸とのなす角をほぼπ/2に設定し、第1組と第2組の電極の場合で説明したように、第3組と第4組の電極において起電力差の中の∂A/∂t成分を用いて起電力和を正規化し、第1組と第2組の電極の場合で説明した2つの正規化起電力和と、第3組と第4組の電極で求めた2つの正規化起電力和とを平均化すればよい。
また、本実施の形態では、起電力差における∂A/∂t成分を抽出し、起電力和の正規化を行った後に各正規化起電力和を平均化する例を示したが、第4の原理の別形態として示したとおり、第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の起電力和と、第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の起電力和とを線形結合し、また第1の電極間起電力と第3の電極間起電力の起電力差と、第2の電極間起電力と第4の電極間起電力の起電力差との和を求め、この起電力差の和の中の∂A/∂t成分を抽出し、前記線形結合した起電力和の中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化すれば、本実施の形態と同等の結果を得ることができる。
この場合の電磁流量計の構成は図73に示したものとなる。信号検出部5eの動作は本実施の形態と同様である。∂A/∂t成分抽出部6fは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力差と、第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力差との間で和を求め、この起電力差の和を∂A/∂t成分として近似的に抽出する。
線形結合部8fは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第3の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力和と、第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第4の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力和とを線形結合する。信号正規化部7eは、線形結合した起電力和の中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化する。流量出力部9fは、正規化の結果から流体の流量を算出する。
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第3の原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図17に示した電磁流量計と同様であるので、図17の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法として前記第1の抽出方法と第2の抽出方法を組み合わせて用いるものである。
第4の実施の形態では、第1の励磁コイル3aと第2の励磁コイル3bから2つの角周波数ω0,ω2の磁場を同時に印加する場合について示したが、励磁コイル3aから角周波数ω0の磁場を印加し、励磁コイル3bから角周波数ω2の磁場を印加するといったように各励磁コイルに励磁角周波数を1つずつ割り当てる場合にも第3の原理が適用できる。
各励磁コイルに励磁角周波数を1つずつ割り当てる場合、式(232)、式(233)において第1の励磁コイル3aから発生する磁場B11,B12は次式で表される。
B11=b11・cos(ω0・t−θ11) ・・・(536)
B12=b12・cos(ω0・t−θ12) ・・・(537)
また、各励磁コイルに励磁角周波数を1つずつ割り当てる場合、式(342)、式(343)において第2の励磁コイル3bから発生する磁場B17,B18は次式で表される。
B17=b17・cos(ω2・t−θ17) ・・・(538)
B18=b18・cos(ω2・t−θ18) ・・・(539)
電極2a,2b間で検出される第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex401cは、式(344)に対応して次式で表される。
Ex401c=rk41・ω0・b11・exp{j・(π/2+θ11+θ00)}
+γ41・rk41・V・b11・exp{j・(θ11+θ01)}
・・・(540)
第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex421cは、式(345)に対応して次式で表される。
Ex421c=rk41・ω2・b17
・exp{j・(−π/2+θ17+θ00)}
+γ41・rk41・V・b17・exp{j・(θ17+θ01)}
・・・(541)
また、電極2c,2d間で検出される第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分Ex402cは、式(346)に対応して次式で表される。
Ex402c=rk42・ω0・b12・exp{j・(π/2+θ12+θ00)}
+γ42・rk42・V・b12・exp{j・(θ12+θ01)}
・・・(542)
第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分Ex422cは、式(347)に対応して次式で表される。
Ex422c=rk42・ω2・b18
・exp{j・(−π/2+θ18+θ00)}
+γ42・rk42・V・b18・exp{j・(θ18+θ01)}
・・・(543)
ここで、磁場B11の位相遅れθ11と磁場B17の位相遅れθ17との関係をθ17=θ11+Δθ17とし、磁場B12の位相遅れθ12と磁場B18の位相遅れθ18との関係をθ18=θ12+Δθ18とし、角度θ00とθ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とし、ω0=ω1+Δω1、ω2=ω1−Δω1とする。式(540)の第1の電極間起電力Ex401cにθ17=θ11+Δθ17、θ18=θ12+Δθ18、θ01=θ00+Δθ01、ω0=ω1+Δω1、ω2=ω1−Δω1を代入したものをEx801とすると、電極間起電力Ex801は次式で表される。
Ex801=rk81・exp{j・(θ11+θ00)}・b11
・{exp(j・π/2)・(ω1+Δω1)
+γ81・exp(j・Δθ01)・V} ・・・(544)
式(541)の電極間起電力Ex421cにθ17=θ11+Δθ17、θ18=θ12+Δθ18、θ01=θ00+Δθ01、ω0=ω1+Δω1、ω2=ω1−Δω1を代入したものをEx821とすると、電極間起電力Ex821は次式で表される。
Ex821=rk81・exp{j・(θ11+θ00)}・b17
・exp(j・Δθ17)
・[exp{j・(−π/2)}・(ω1−Δω1)
+γ81・exp(j・Δθ01)・V] ・・・(545)
式(542)の電極間起電力Ex402cにθ17=θ11+Δθ17、θ18=θ12+Δθ18、θ01=θ00+Δθ01、ω0=ω1+Δω1、ω2=ω1−Δω1を代入したものをEx802とすると、電極間起電力Ex802は次式で表される。
Ex802=rk82・exp{j・(θ12+θ00)}・b12
・{exp(j・π/2)・(ω1+Δω1)
+γ82・exp(j・Δθ01)・V} ・・・(546)
式(543)の電極間起電力Ex422cにθ17=θ11+Δθ17、θ18=θ12+Δθ18、θ01=θ00+Δθ01、ω0=ω1+Δω1、ω2=ω1−Δω1を代入したものをEx822とすると、電極間起電力Ex822は次式で表される。
Ex822=rk82・exp{j・(θ12+θ00)}・b18
・exp(j・Δθ18)
・[exp{j・(−π/2)}・(ω1−Δω1)
+γ82・exp(j・Δθ01)・V] ・・・(547)
電極間起電力Ex801とEx821との和をEx8s1とすると、起電力和Ex8s1は次式で表される。
Ex8s1=Ex801+Ex821
=rk81・exp{j・(θ11+θ00)}
・{exp(j・π/2)・ω1・{b11−b17・exp(j・Δθ17)}
+exp(j・π/2)・Δω1
・{b11+b17・exp(j・Δθ17)}
+γ81・exp(j・Δθ01)・V
・{b11+b17・exp(j・Δθ17)} ・・・(548)
電極間起電力Ex801とEx821との差をEx8d1とすると、起電力差Ex8d1は次式で表される。
Ex8d1=Ex801−Ex821
=rk81・exp{j・(θ11+θ00)}
・{exp(j・π/2)・ω1・{b11+b17・exp(j・Δθ17)}
+exp(j・π/2)・Δω1
・{b11−b17・exp(j・Δθ17)}
+γ81・exp(j・Δθ01)・V
・{b11−b17・exp(j・Δθ17)} ・・・(549)
電極間起電力Ex802とEx822との和をEx8s2とすると、起電力和Ex8s2は次式で表される。
Ex8s2=Ex802+Ex822
=rk82・exp{j・(θ12+θ00)}
・{exp(j・π/2)・ω1・{b12−b18・exp(j・Δθ18)}
+exp(j・π/2)・Δω1
・{b12+b18・exp(j・Δθ18)}
+γ81・exp(j・Δθ01)・V
・{b12+b18・exp(j・Δθ18)} ・・・(550)
電極間起電力Ex802とEx822との差をEx8d2とすると、起電力差Ex8d2は次式で表される。
Ex8d2=Ex802−Ex822
=rk82・exp{j・(θ12+θ00)}
・{exp(j・π/2)・ω1・{b12+b18・exp(j・Δθ18)}
+exp(j・π/2)・Δω1
・{b12−b18・exp(j・Δθ18)}
+γ82・exp(j・Δθ01)・V
・{b12−b18・exp(j・Δθ18)} ・・・(551)
ここで、Ex8d1における∂A/∂t成分≫Ex8d1におけるv×B成分と近似できる場合には、Ex8d1におけるv×B成分≒0となり、近似的にEx8d1における∂A/∂t成分を抽出することができる。初期状態(校正時の状態)において、磁場B11と磁場B17を等しくし、また磁場B12と磁場B18を等しく設定しておくと、その後の磁場B11とB17との差、及び磁場B12とB18との差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b11+b17・exp(j・Δθ17)|
≫|b11−b17・exp(j・Δθ17)| ・・・(552)
|b12+b18・exp(j・Δθ18)|
≫|b12−b18・exp(j・Δθ18)| ・・・(553)
また、通常ω1>γ81・V、ω1>Δω1が成り立つことから、式(552)の条件を考慮すると、式(549)の起電力差Ex8d1において次式の条件が成り立つ。
|ω1・exp(j・π/2)・{b11+b17・exp(j・Δθ17)}|
≫|γ81・exp(j・Δθ01)
・V・{b11−b17・exp(j・Δθ17)}| ・・・(554)
|ω1・exp(j・π/2)・{b11+b17・exp(j・Δθ17)}|
≫|exp(j・π/2)・Δω1
・{b11−b17・exp(j・Δθ17)}| ・・・(555)
式(554)、式(555)の条件を用いて、式(549)の起電力差Ex8d1を近似した起電力差をEdA81とすると、起電力差EdA81は次式で表される。この起電力差EdA81は、第3の原理の第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA81≒Ex8d1 ・・・(556)
EdA81=rk81・exp{j・(θ11+θ00)}・ω1
・exp(j・π/2)・{b11+b17・exp(j・Δθ17)}
・・・(557)
また、通常ω1>γ82・V、ω1>Δω1が成り立つことから、式(553)の条件を考慮すると、式(551)の起電力差Ex8d2において次式の条件が成り立つ。
|ω1・exp(j・π/2)・{b12+b18・exp(j・Δθ18)}|
≫|γ82・exp(j・Δθ01)
・V・{b12−b18・exp(j・Δθ18)}| ・・・(558)
|ω1・exp(j・π/2)・{b12+b18・exp(j・Δθ18)}|
≫|exp(j・π/2)・Δω1
・{b12−b18・exp(j・Δθ18)}| ・・・(559)
式(558)、式(559)の条件を用いて、式(551)の起電力差Ex8d2を近似した起電力差をEdA82とすると、起電力差EdA82は次式で表される。この起電力差EdA82は、第3の原理の第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA82≒Ex8d2 ・・・(560)
EdA82=rk82・exp{j・(θ11+θ00)}・ω1
・exp(j・π/2)・{b12+b18・exp(j・Δθ18)}
・・・(561)
起電力差EdA81,EdA82は、平均流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この起電力差EdA81,EdA82を用いてそれぞれ起電力和Ex8s1,Ex8s2中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化する。
式(548)の第1の起電力和Ex8s1を式(557)の起電力差EdA81で正規化し、ω1倍した結果をExn811とすれば、正規化起電力和Exn811は次式のようになる。
Exn811=(Ex8s1/EdA81)・ω1
={b11−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b11+b17・exp(j・Δθ17)}・ω1
+Δω1
+[γ81・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(562)
式(550)の第2の起電力和Ex8s2を式(561)の起電力差EdA82で正規化し、ω1倍した結果をExn812とすれば、正規化起電力和Exn812は次式のようになる。
Exn812=(Ex8s2/EdA82)・ω1
={b12−b18・exp(j・Δθ18)}
/{b12+b18・exp(j・Δθ18)}・ω1
+Δω1
+[γ82・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(563)
式(562)の右辺第3項及び式(563)の右辺第3項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。なお、起電力和Ex8s1を起電力差EdA81で正規化した結果をω1倍した理由は、平均流速の大きさVに係る右辺第3項から励磁角周波数ω1を消去するためである。起電力和Ex8s2を起電力差EdA82で正規化した結果をω1倍した理由も同じである。
式(562)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ81の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもち、式(563)によれば、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ82の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度を持つ。係数γ81,γ82は流速分布の影響により変化する値であり、角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(562)の右辺第2項及び式(563)の右辺第2項は被測定流体の流速及び流速分布が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
さらに上述のように、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1と電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2の角度はほぼπ/2に保たれているので、図82、図83に示したような軸対称流のときの流速分布に関係する比例係数をγ80とすると、γ80,γ81,γ82の関係は次式で表すことができる。比例係数γ80の値は校正時に確認することができる。
γ80=(γ81+γ82)/2 ・・・(564)
よって、正規化起電力和Exn811とExn812の平均をとったものをExn81aとすると、平均化起電力和Exn81aでは、次式のように流速分布に影響する比例係数γ81,γ82が除去され、代わりに校正時に確認できる比例係数γ80が平均流速の大きさVにかかっていることが分かる。
Exn81a=(Exn811+Exn812)/2
=k4・ω0+Δω1+[γ80・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
・・・(565)
なお、式(565)においてk4は磁場に関連する項であり、次式で表される。
k4=[{b11−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b11+b17・exp(j・Δθ17)}
+{b12−b18・exp(j・Δθ18)}
/{b12+b18・exp(j・Δθ18)}]/2 ・・・(566)
式(565)の右辺第3項において、平均流速の大きさVにかかる複素係数は、γ80の大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。よって、流速分布の影響も含めて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
ここで、励磁コイル3aと電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3bと電極2a,2bとの距離d5がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b11≒b17、Δθ17≒0となり、また励磁コイル3aと電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3bと電極2c,2dとの距離d6がほぼ等しくなるように励磁コイルと電極を配置すれば、b12≒b18、Δθ18≒0となる。このとき、式(565)と式(566)より平均流速の大きさVは次式のように表される。
V=|(Exn81a−Δω1)
/[γ80・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|(Exn81a−Δω1)|/γ80 ・・・(567)
なお、第3の原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表8のとおりである。本実施の形態は、表8から明らかなように、前述の第3の原理を具体的に実現する1つの例である。
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第4の実施の形態と同様であるので、図67の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、第1の励磁コイル3a及び第2の励磁コイル3bと、電源部4cと、電極2a,2bから第1の合成起電力を検出すると共に、電極2c,2dから第2の合成起電力を検出し、第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を第1の合成起電力と第2の合成起電力の各々について求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の合成起電力における第1の周波数成分と第2の周波数成分の起電力和、第1の合成起電力における第1の周波数成分と第2の周波数成分の起電力差、第2の合成起電力における第1の周波数成分と第2の周波数成分の起電力和、及び第2の合成起電力における第1の周波数成分と第2の周波数成分の起電力差を求める信号検出部5cと、第1の合成起電力における起電力差を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の合成起電力における起電力差を第2の∂A/∂t成分として抽出する∂A/∂t成分抽出部6cと、第1の合成起電力における起電力和の中のv×B成分に含まれるスパンを第1の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第1の正規化起電力和を求めると共に、第2の合成起電力における起電力和の中のv×B成分に含まれるスパンを第2の∂A/∂t成分に基づいて正規化することにより第2の正規化起電力和を求める信号正規化部7cと、第1の正規化起電力和と第2の正規化起電力和を線形結合する線形結合部8cと、線形結合の結果から流体の流量を算出する流量出力部9cとを有する。
本実施の形態では、前述のとおり励磁コイル3aと電極2a,2bとの距離d1と、励磁コイル3bと電極2a,2bとの距離d5が略等しく、励磁コイル3aと電極2c,2dとの距離d2と、励磁コイル3bと電極2c,2dとの距離d6が略等しいとする。
本実施の形態の電源部4cは、角周波数ω0(=ω1+Δω1)の正弦波成分を含む第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、第1の励磁電流との位相差が略0で、角周波数ω2(=ω1−Δω1)の正弦波成分を含む第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する。
図75は、信号検出部5cと∂A/∂t成分抽出部6cと信号正規化部7cと線形結合部8cと流量出力部9cの動作を示すフローチャートである。
まず、信号検出部5cは、電極2a,2b間の第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分との和Ex8s1の振幅r8s1を求めると共に、実軸と起電力和Ex8s1との位相差φ8s1を図示しない位相検波器により求める。また、信号検出部5cは、電極2c,2d間の第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分との和Ex8s2の振幅r8s2を求めると共に、実軸と起電力和Ex8s2との位相差φ8s2を位相検波器により求める(図75ステップ801)。
同様に、信号検出部5cは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分との差Ex8d1の振幅r8d1を求めると共に、実軸と起電力差Ex8d1との位相差φ8d1を位相検波器により求める。また、信号検出部5cは、第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分との差Ex8d2の振幅r8d2を求めると共に、実軸と起電力差Ex8d2との位相差φ8d2を位相検波器により求める(ステップ802)。
続いて、∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差Ex8d1の実軸成分Ex8d1xと虚軸成分Ex8d1yを次式のように算出する(ステップ803)。
Ex8d1x=r8d1・cos(φ8d1) ・・・(568)
Ex8d1y=r8d1・sin(φ8d1) ・・・(569)
式(568)、式(569)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差Ex8d1を近似した起電力差EdA81の大きさと角度を求める(ステップ804)。このステップ804の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(557)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差EdA81の大きさ|EdA81|と角度∠EdA81を次式のように算出する。
|EdA81|={(Ex8d1x)2+(Ex8d1y)2}1/2 ・・・(570)
∠EdA81=tan−1{(Ex8d1y)/(Ex8d1x)} ・・・(571)
また、∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差Ex8d2の実軸成分Ex8d2xと虚軸成分Ex8d2yを次式のように算出する(ステップ805)。
Ex8d2x=r8d2・cos(φ8d2) ・・・(572)
Ex8d2y=r8d2・sin(φ8d2) ・・・(573)
式(572)、式(573)の算出後、∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差Ex8d2を近似した起電力差EdA82の大きさと角度を求める(ステップ806)。このステップ806の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(561)の算出に相当する処理である。∂A/∂t成分抽出部6cは、起電力差EdA82の大きさ|EdA82|と角度∠EdA82を次式のように算出する。
|EdA82|={(Ex8d2x)2+(Ex8d2y)2}1/2 ・・・(574)
∠EdA82=tan−1{(Ex8d2y)/(Ex8d2x)} ・・・(575)
信号正規化部7cは、第1の起電力和Ex8s1を起電力差EdA81で正規化した正規化起電力和Exn811の大きさと角度を求める(ステップ807)。このステップ807の処理は、式(562)の算出に相当する処理である。信号正規化部7cは、正規化起電力和Exn811の大きさ|Exn811|と角度∠Exn811を次式のように算出する。
|Exn811|=(r8s1/|EdA81|)・ω1 ・・・(576)
∠Exn811=φ8s1−∠EdA81 ・・・(577)
さらに、信号正規化部7cは、正規化起電力和Exn811の実軸成分Exn811xと虚軸成分Exn811yを次式のように算出する。
Exn811x=|Exn811|・cos(∠Exn811) ・・・(578)
Exn811y=|Exn811|・sin(∠Exn811) ・・・(579)
これで、ステップ807の処理が終了する。
また、信号正規化部7cは、第2の起電力和Ex8s2を起電力差EdA82で正規化した正規化起電力和Exn812の大きさと角度を求める(ステップ808)。このステップ808の処理は、式(563)の算出に相当する処理である。信号正規化部7cは、正規化起電力和Exn812の大きさ|Exn812|と角度∠Exn812を次式のように算出する。
|Exn812|=(r8s2/|EdA82|)・ω1 ・・・(580)
∠Exn812=φ8s2−∠EdA82 ・・・(581)
さらに、信号正規化部7cは、正規化起電力和Exn812の実軸成分Exn812xと虚軸成分Exn812yを次式のように算出する。
Exn812x=|Exn812|・cos(∠Exn812) ・・・(582)
Exn812y=|Exn812|・sin(∠Exn812) ・・・(583)
これで、ステップ808の処理が終了する。
次に、線形結合部8cは、正規化起電力和Exn811とExn812を平均化(線形結合)した平均化起電力和Exn81aの実軸成分Exn81axと虚軸成分Exn81ayを次式のように算出する(ステップ809)。このステップ809の処理は、式(565)の算出に相当する処理である。
Exn81ax=(Exn811x+Exn812x)/2 ・・・(584)
Exn81ay=(Exn811y+Exn812y)/2 ・・・(585)
流量出力部9cは、被測定流体の平均流速の大きさVを算出する(ステップ810)。このステップ810の処理は、式(567)の算出に相当する処理である。まず、流量出力部9cは、平均化起電力和Exn81aとΔω1との差の大きさ|(Exn81a−Δω1)|を次式のように算出する。
|(Exn81a−Δω1)|={(Exn81ax−Δω1)2
+(Exn81ay)2}1/2 ・・・(586)
そして、流量出力部9cは、被測定流体の平均流速の大きさVを次式のように算出する。
V=|(Exn81a−Δω1)|/γ80 ・・・(587)
これで、ステップ810の処理が終了する。なお、比例係数γ80は、校正等により予め求めることができる定数である。
信号検出部5cと∂A/∂t成分抽出部6cと信号正規化部7cと線形結合部8cと流量出力部9cとは、以上のようなステップ801〜810の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ811においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、励磁コイル3aから発生する磁場B11と励磁コイル3bから発生する磁場B17とが等しくなるように調整しておくと、起電力差Ex8d1が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、励磁コイル3aから発生する磁場B12と励磁コイル3bから発生する磁場B18とが等しくなるように調整しておくと、起電力差Ex8d2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて第1の電極間起電力の起電力和Ex8s1中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、また第2の∂A/∂t成分を用いて第2の電極間起電力の起電力和Ex8s2中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力和Exn811とExn812を線形結合し、この線形結合した結果から被測定流体の流量を算出するようにしたので、流速分布の影響も含めて全てのスパン変動要因を排除することができ、正確なスパン補正を自動的に行うことができる。その結果、高精度の流量計測を行うことができる。
なお、本実施の形態において、電極2a,2b,2c,2dに対して測定管1の円周方向の位置が異なるところに2対の電極を追加することにより、流速分布の影響に対するスパン補正の性能を上げることが可能になる。この場合、追加する1対の電極間を結ぶ電極軸ともう1対の電極間を結ぶ電極軸とのなす角を、電極2a,2b,2c,2dの場合と同様にほぼπ/2に設定し、それぞれの電極の∂A/∂t成分で正規化した正規化起電力を、追加した電極の分も含めて平均化すればよい。
また、本実施の形態では、各電極における∂A/∂t成分を抽出し、正規化を行った後に各正規化起電力和を平均化する例を示したが、第3の原理の別形態として示したとおり、各電極の起電力を線形結合し、また各電極の起電力の和をとり、起電力の和の中の∂A/∂t成分を抽出し、前記線形結合した起電力中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化すれば、本実施の形態と同等の結果を得ることができる。
この場合の電磁流量計の構成は図69に示したものとなる。信号検出部5cの動作は本実施の形態と同様である。∂A/∂t成分抽出部6dは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分との起電力和、または第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分との起電力和を求め、求めた起電力の和を∂A/∂t成分として近似的に抽出する。
線形結合部8dは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分とを線形結合するか、あるいは第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分と第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分とを線形結合する。信号正規化部7dは、線形結合した起電力の中のv×B成分の平均流速の大きさVにかかるスパンを∂A/∂t成分に基づいて正規化する。このとき、線形結合した起電力とそれを正規化する∂A/∂t成分には、同一周波数のものを用いる。流量出力部9dは、正規化の結果から流体の流量を算出する。
なお、第1の実施の形態〜第8の実施の形態において、∂A/∂t成分抽出部6,6a,6b,6c,6d,6eと、信号正規化部7,7a,7b,7c,7d,7eと、線形結合部8,8a,8b,8c,8d,8eと、流量出力部9,9a,9b,9c,9d,9eは、CPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って前述のような処理を実行する。
また、第1の実施の形態〜第8の実施の形態では、励磁電流に正弦波を用いる正弦波励磁方式を採用しているが、矩形波の場合正弦波の組み合わせと考えることができるので、励磁電流に矩形波を用いる矩形波励磁方式を採用してもよい。
また、第1の実施の形態〜第8の実施の形態で使用する電極2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hとしては、図76に示すように、測定管1の内壁から露出して被測定流体に接触する形式の電極でもよいし、図77に示すように、被測定流体と接触しない容量結合式の電極でもよい。容量結合式の場合、電極2a,2b,2c,2d,2e,2f,2g,2hは、測定管1の内壁に形成されるセラミックやテフロン(登録商標)等からなるライニング10によって被覆される。
また、第1の実施の形態〜第8の実施の形態では、第1の電極として1対の電極2a,2bを使用し、第2の電極として1対の電極2c,2dを使用し、第3の電極として1対の電極2e,2fを使用し、第4の電極として1対の電極2g,2hを使用しているが、これに限るものではなく、第1の電極と第2の電極と第3の電極と第4の電極をそれぞれ1個ずつにしてもよい。電極が1個だけの場合には、被測定流体の電位を接地電位にするための接地リングや接地電極が測定管1に設けられており、1個の電極に生じた起電力(接地電位との電位差)を信号変換部5,5b,5c,5eで検出すればよい。電極軸は、1対の電極を使用する場合はこの1対の電極間を結ぶ直線である。一方、電極が1個だけの場合、この1個の実電極を含む平面PLN上において、測定管軸PAXを挟んで実電極と対向する位置に仮想の電極を配置したと仮定したとき、実電極と仮想の電極とを結ぶ直線が電極軸となる。
1…測定管、2a、2b、2c、2d、2e、2f、2g、2h…電極、3、3a、3b…励磁コイル、4、4b、4c、4e…電源部、5、5b、5c,5e…信号検出部、6、6a、6b、6c、6d、6e…∂A/∂t成分抽出部、7、7a、7b、7c、7d、7e…信号正規化部、8、8a、8b、8c、8d、8e…線形結合部、9、9a、9b、9c、9d、9e…流量出力部。