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JP4550523B2 - 電磁流量計 - Google Patents

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本発明は、電磁流量計に係り、特に電極で検出される電極間起電力のうち被測定流体の流量に起因する成分の流速にかかる係数を自動的に補正するスパン補正と、磁場の変動に起因する0点のずれを自動的に補正する0補正の技術に関するものである。
従来技術と本発明を理解するために必要な両者に共通する理論的前提部分について説明する。まず、一般に知られている数学的基礎知識について説明する。
同一周波数で異なる振幅の余弦波P・cos(ω・t)、正弦波Q・sin(ω・t)は、以下のような余弦波に合成される。P,Qは振幅、ωは角周波数である。
P・cos(ω・t)+Q・sin(ω・t)=(P2+Q21/2 ・cos(ω・t−ε)
ただし、ε=tan−1(Q/P) ・・・(1)
式(1)の合成を分析するには、余弦波P・cos(ω・t)の振幅Pを実軸、正弦波Q・sin(ω・t)の振幅Qを虚軸にとるように複素座標平面に写像すると都合がよい。すなわち、複素座標平面上において、原点からの距離(P2+Q21/2 が合成波の振幅を与え、実軸との角度ε=tan−1(Q/P)が合成波とω・tとの位相差を与えることになる。
また、複素座標平面上においては、以下の関係式が成り立つ。
L・exp(j・ε)=L・cos(ε)+j・L・sin(ε) ・・・(2)
式(2)は複素ベクトルに関する表記であり、jは虚数単位である。Lは複素ベクトルの長さを与え、εは複素ベクトルの方向を与える。したがって、複素座標平面上の幾何学的関係を分析するには、複素ベクトルへの変換を活用すると都合がよい。
以下の説明では、電極間起電力がどのような挙動を示し、従来技術はこの挙動をどのように利用しているかを説明するために、上記のような複素座標平面への写像と、複素ベクトルによる幾何学的分析を採用する。
次に、発明者が提案した電磁流量計(特許文献1参照)におけるコイル1組、電極1対の場合の複素ベクトル配置について説明する。
図29は、特許文献1の電磁流量計の原理を説明するためのブロック図である。この電磁流量計は、被測定流体が流れる測定管1と、被測定流体に印加される磁場および測定管1の軸PAXの双方と直交し、かつ被測定流体と接触するように測定管1に対向配置され、前記磁場と被測定流体の流れとによって生じた起電力を検出する一対の電極2a,2bと、測定管軸PAXの方向と直交する、電極2a,2bを含む平面PLNを測定管1の境としたとき、この平面PLNを境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁コイル3とを有する。
ここで、励磁コイル3から発生する磁場のうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B1は、以下のように与えられるものとする。
B1=b1・cos(ω0・t−θ1) ・・・(3)
式(3)において、b1は振幅、ω0は角周波数、θ1はω0・tとの位相差(位相遅れ)である。以下、磁束密度B1を磁場B1とする。
まず、磁場の変化に起因し、被測定流体の流速とは無関係な電極間起電力について説明する。磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、励磁コイル3から発生する磁場B1を次式のように微分する。
dB1/dt=−ω0・b1・sin(ω0・t−θ1) ・・・(4)
被測定流体の流速が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Baの変化による渦電流Iは、図30に示すような向きとなる。したがって、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Baの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力Eは、図30に示すような向きとなる。この向きをマイナス方向とする。
このとき、電極間起電力Eは、次式に示すように向きを考えた磁場の時間微分−dB1/dtに比例係数rkをかけ、位相θ1をθ1+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E=rk・ω0・b1・sin(ω0・t−θ1−θ00) ・・・(5)
そして、式(5)を変形すると次式となる。
E=rk・ω0・b1・{sin(−θ1−θ00)}・cos(ω0・t)
+rk・ω0・b1・{cos(−θ1−θ00)}・sin(ω0・t)
=rk・ω0・b1・{−sin(θ1+θ00)}・cos(ω0・t)
+rk・ω0・b1・{cos(θ1+θ00)}・sin(ω0・t)
・・・(6)
ここで、式(6)をω0・tを基準として複素座標平面に写像すると、実軸成分Ex、虚軸成分Eyは次式となる。
Ex=rk・ω0・b1・{−sin(θ1+θ00)}
=rk・ω0・b1・{cos(π/2+θ1+θ00)} ・・・(7)
Ey=rk・ω0・b1・{cos(θ1+θ00)}
=rk・ω0・b1・{sin(π/2+θ1+θ00)} ・・・(8)
さらに、式(7)、式(8)に示したEx,Eyを次式に示す複素ベクトルEcに変換する。
Ec=Ex+j・Ey
=rk・ω0・b1・{cos(π/2+θ1+θ00)}
+j・rk・ω0・b1・{sin(π/2+θ1+θ00)}
=rk・ω0・b1
・{cos(π/2+θ1+θ00)+j・sin(π/2+θ1+θ00)} =rk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)} ・・・(9)
複素座標に変換された式(9)の電極間起電力Ecは、磁場の時間変化のみに起因し、流速とは無関係な電極間起電力となる。式(9)のrk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}は、長さがrk・ω0・b1、実軸からの角度がπ/2+θ1+θ00の複素ベクトルである。
また、前述の比例係数rk及び角度θ00は、次の複素ベクトルkcで表すことができる。
kc=rk・cos(θ00)+j・rk・sin(θ00)
=rk・exp(j・θ00) ・・・(10)
式(10)において、rkはベクトルkcの大きさ、θ00は実軸に対するベクトルkcの角度である。
次に、被測定流体の流速に起因する電極間起電力について説明する。被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流Iに加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Baが発生するため、流速ベクトルvと磁場Baによる渦電流Ivは、図31に示すような向きとなる。したがって、流速ベクトルvと磁場Baによって発生する電極間起電力Evは時間変化によって発生する電極間起電力Eと逆向きとなり、Evの方向をプラス方向とする。
このとき、流速に起因する電極間起電力Evは、次式に示すように、磁場B1に比例係数rkvをかけ、位相θ1をθ1+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev=rkv・{b1・cos(ω0・t−θ1−θ01)} ・・・(11)
式(11)を変形すると次式となる。
Ev=rkv・b1・cos(ω0・t)・cos(−θ1−θ01)
−rkv・b1・sin(ω0・t)・sin(−θ1−θ01)
=rkv・b1・{cos(θ1+θ01)}・cos(ω0・t)
+rkv・b1・{sin(θ1+θ01)}・sin(ω0・t)
・・・(12)
ここで、式(12)をω0・tを基準として複素座標平面に写像すると、実軸成分Evx、虚軸成分Evyは次式となる。
Evx=rkv・b1・{cos(θ1+θ01)} ・・・(13)
Evy=rkv・b1・{sin(θ1+θ01)} ・・・(14)
さらに、式(13)、式(14)に示したEvx,Evyを次式に示す複素ベクトルEvcに変換する。
Evc=Evx+j・Evy
=rkv・b1・{cos(θ1+θ01)}
+j・rkv・b1・{sin(θ1+θ01)}
=rkv・b1・{cos(θ1+θ01)+j・sin(θ1+θ01)}
=rkv・b1・exp{j・(θ1+θ01)} ・・・(15)
複素座標に変換された式(15)の電極間起電力Evcは、被測定流体の流速に起因する電極間起電力となる。式(15)のrkv・b1・exp{j・(θ1+θ01)}は、長さがrkv・b1、実軸からの角度がθ1+θ01の複素ベクトルである。
また、前述の比例係数rkv及び角度θ01は、次の複素ベクトルkvcで表すことができる。
kvc=rkv・cos(θ01)+j・rkv・sin(θ01)
=rkv・exp(j・θ01) ・・・(16)
式(16)においてrkvはベクトルkvcの大きさ、θ01は実軸に対するベクトルkvcの角度である。ここで、rkvは、前記比例係数rk(式(10)参照)に流速の大きさVと比例係数γをかけたものに相当する。すなわち、次式が成立する。
rkv=γ・rk・V ・・・(17)
磁場の時間変化に起因する電極間起電力Ecと流体の流速に起因する電極間起電力Evcとを合わせた全体の電極間起電力Eacは、式(15)に式(17)を代入した式と、式(9)とを足すことにより、次式で表される。
Eac=rk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}
+γ・rk・V・b1・exp{j・(θ1+θ01)} ・・・(18)
式(18)から分かるように、電極間起電力Eacは、rk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}とγ・rk・V・b1・exp{j・(θ1+θ01)}の2個の複素ベクトルにより記述される。複素ベクトルrk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}は後述する∂A/∂t成分であり、複素ベクトルγ・rk・V・b1・exp{j・(θ1+θ01)}は後述するv×B成分である。この2個の複素ベクトルを合成した合成ベクトルの長さが出力(電極間起電力Eac)の振幅を表し、この合成ベクトルの角度φが入力(励磁電流)の位相ω0・tに対する電極間起電力Eacの位相差(位相遅れ)を表す。
なお、流量は流速に測定管の断面積をかけたものとなるため、通常、初期状態での校正において流速と流量は一対一の関係となり、流速を求めることと流量を求めることは同等に扱えるので、以下(流量を求めるために)流速を求める方式として説明を進める。
特許文献1の電磁流量計は、上記のような理論を背景に、スパンのシフトに影響されないパラメータ(非対称励磁パラメータ)を抽出し、これに基づき流量を出力することで、スパンのシフトの問題を解決している。
ここで、図32を用いてスパンのシフトについて説明する。被測定流体の流速が変化していないにもかかわらず、電磁流量計によって計測される流速の大きさVが変化したとすると、この出力変動の要因としてスパンのシフトが考えられる。
例えば、初期状態において被測定流体の流速が0のときに電磁流量計の出力が0(v)となり、流速が1(m/sec)のときに出力が1(v)となるように校正したとする。ここでの電磁流量計の出力は、流速の大きさVを表す電圧である。このような校正により、被測定流体の流速が1(m/sec)であれば、電磁流量計の出力は当然1(v)になるはずである。ところが、ある時間t1が経過したところで、被測定流体の流速が同じく1(m/sec)であるにもかかわらず、電磁流量計の出力が1.2(v)になることがある。この出力変動の要因として考えられるのが、スパンのシフトである。スパンのシフトという現象は、例えば電磁流量計の周囲温度の変化などにより、励磁コイルを流れる励磁電流値が一定値を維持できなくなるなどの原因により発生する。
特許文献1の電磁流量計は、スパンのシフトを補正することにより正確な流量計測を実現するものであるが、流量計測の精度に影響を与える他の要因として、出力の0点のシフトがある。ここで、図33を用いて出力の0点のシフトについて説明しておく。被測定流体の流速が変化していないにもかかわらず、電磁流量計によって計測される流速の大きさVが変化したとすると、この出力変動の要因として0点のシフトが考えられる。
例えば、初期状態において被測定流体の流量が0のときに電磁流量計の出力が0(v)となり、流速が1(m/sec)のときに出力が1(v)となるように校正したとする。ここでの電磁流量計の出力は、流速の大きさVを表す電圧である。このような校正により、被測定流体の流速が1(m/sec)であれば、電磁流量計の出力は当然1(v)になるはずである。ところが、ある時間t1が経過したところで、被測定流体の流速が同じく1(m/sec)であるにもかかわらず、電磁流量計の出力が1.5(v)になり、さらに流速を0に戻しても0.5(v)が出力され、0にならないことがある。この出力変動の要因として考えられるのが、0点のシフトである。0点のシフトという現象は、例えば電磁流量計の周囲温度の変化などにより、磁場の変化によって発生する電圧が変動し、キャンセルできなくなることから生じる。
励磁コイルに供給する励磁電流に正弦波を用いる正弦波励磁方式の電磁流量計には、商用周波数ノイズの影響を受けやすいという欠点があるが、この欠点は励磁電流の周波数を高くした高周波励磁方式によって解決することができる(例えば、非特許文献1参照)。また、高周波励磁方式には、電気化学ノイズやスパイクノイズといった1/fノイズに強いという利点があり、さらに応答性(流量変化に対して流量信号を素早く追従させる特性)を向上させることができるという利点がある。正弦波励磁方式の電磁流量計では、常に磁場が変化しており、この磁場の変化によって発生する電極間起電力の成分の影響をなくすために、電極軸を境とする測定管の前後で磁場が対称に分布するような構造となっている。しかし、実際には電極や取り出し線の位置ずれ、コイルから発生する磁場の対称性のずれなどにより、磁場の時間変化によって発生する成分の影響を受ける。そこで、正弦波励磁方式の電磁流量計では、磁場の時間変化によって発生する成分の影響を校正時にオフセットとして取り除いているが、磁場のシフトや磁場の分布の変化等により影響をうけ、電磁流量計の出力の0点がシフトしてしまうことが避けられない。また、正弦波励磁方式の電磁流量計では、位相検波により磁場の変化による成分をキャンセルするようにしているが、この位相検波が安定しないため、出力の0点の安定性が悪いという欠点があった。
一方、励磁コイルに供給する励磁電流に矩形波を用いる矩形波励磁方式の電磁流量計の場合、磁場の変化がなくなったところで、電極間起電力を検出するという手法をとっているため、出力の0点の安定性が正弦波励磁方式に比べて優れている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、矩形波励磁方式の電磁流量計では、励磁電流が高周波になると、励磁コイルのインピーダンスや、励磁電流の応答性、磁場の応答性、励磁コイルのコアや測定管での過電流損失といった影響を無視できなくなり、矩形波励磁を維持すること(すなわち、磁場の変化がないところで電極間起電力を検出すること)が難しくなり、出力の0点の安定性を確保できなくなる。結果として、矩形波励磁方式の電磁流量計の場合、高周波励磁が難しく、流量変化に対する応答性の向上や1/fノイズの除去を実現できないという問題点があった。
また、正弦波励磁方式と矩形波励磁方式のいずれにおいても、被測定流体を流したままでは0点がシフトしたかどうかを確認することができないので、被測定流体を止めて流量を0にした上で、出力の0点がシフトしたかどうかを確認し、設定している0点のオフセットを修正する作業が必要となる。
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
WO 03/027614 社団法人日本計量機器工業連合会編,「計装エンジニアのための流量計測 AtoZ」,工業技術社,1995年,p.143−160
まず、電磁流量計のスパン補正の問題を説明するために必要な物理現象について説明しておく。変化する磁場中を物体が移動する場合、電磁誘導によって2種類の電界、(a) 磁場の時間変化によって発生する電界E(i)=∂A/∂t 、(b) 磁場中を物体が動くことにより発生する電界E(v)=v×B が発生する。v×BはvとBの外積を示し、∂A/∂tはAの時間による偏微分を示す。v、B、Aはそれぞれ下記に対応しており、3次元(x、y、z)に方向をもつベクトルである(v:流速、B:磁束密度、A:ベクトルポテンシャル(磁束密度とはB=rotAの関係がある))。ただし、ここでの3次元ベクトルは複素平面上のベクトルとは意味が異なる。この2種類の電界によって、電位分布が流体中に発生し、この電位は電極によって検出することができる。
特許文献1の電磁流量計では、基本的な理論展開においては実軸に対するベクトルkcの角度θ00、実軸に対するベクトルkvcの角度θ01を考慮しているが、スパンのシフトの問題を解決できる電磁流量計の制約条件として、θ00=θ01=0を前提においている。すなわち、上記前提が成立するように電磁流量計の条件を整えることが制約条件になる。なお、θ1は初期位相であり、励磁電流と電極間起電力に共通の位相部分である。ゆえに、従来技術および本発明のように、励磁電流と電極間起電力の位相差のみを考える場合は、理解を容易にするためθ1=0とする。
前記制約条件が流量計測に与える影響について、図34を用いて複素ベクトルの考え方で説明する。図34において、Reは実軸、Imは虚軸である。まず、磁場の時間変化のみに依存し、被測定流体の流速に依存しない電極間起電力Ecを∂A/∂t成分と呼び、この∂A/∂t成分をベクトルVaで表すと共に、被測定流体の流速に依存する電極間起電力Evcをv×B成分と呼び、このv×B成分をベクトルVbで表す。前述のスパンとは、この被測定流体の流速に依存するv×B成分の流速の大きさVにかかる係数である。なお、θ00,θ01の前述の定義を言い換えると、θ00は虚軸に対するベクトルVaの角度、θ01は実軸に対するベクトルVbの角度である。
図29に示した電磁流量計の構成において、θ00=θ01=0ということは、ベクトルVaが虚軸Im上に存在し、ベクトルVbが実軸Re上に存在することを意味する。すなわち、ベクトルVaとVbは直交する位置関係にある。このように、特許文献1の電磁流量計は、∂A/∂t成分のベクトルVaとv×B成分のベクトルVbが直交することを前提としている。
しかしながら、現実の電磁流量計において、上記前提は必ずしも常に成立するとは限らない。その理由は、ミクロ的には∂A/∂t成分のベクトルVaとv×B成分のベクトルVbの直交性は保証されるが、マクロ的に見ると、被測定流体に印加される磁場が理想的な分布になっていないため、電極で検出されるマクロ的な∂A/∂t成分のベクトルVaとv×B成分のベクトルVbが若干のゆがみを含むと考えなければならないからである。したがって、ベクトルVaとVbは直交しないし、θ00≠0、θ01≠0、θ00≠θ01と考えなければならない。
以上の説明から明らかなように、高精度の流量計測を指向する場合には、ベクトルVaとVbの直交性を精密に考慮しなければならないが、特許文献1の電磁流量計では、ベクトルVaとVbの直交性を前提としているので、直交性に誤差が生じる場合には、正確なスパン補正や流量計測ができない可能性があった。
また、電磁流量計の材料や構造によっては磁場の損失により、励磁コイルから発生する磁場の振幅が周波数によって変化する可能性がある。したがって、特許文献1の電磁流量計において正確なスパン補正や流量測定を行うためには、励磁コイルから発生する磁場の振幅が周波数で変動しないように調整するといった手順が必要になる可能性があった。
次に、電磁流量計の0補正の問題について説明すると、特許文献1の電磁流量計では、出力の0点のシフトを考慮しておらず、0点の誤差を補正することができないという問題点があった。特許文献1の電磁流量計で0点のシフトによる流量計測誤差が生じることは、式(18)において∂A/∂t成分が変動すると、流速の大きさVが0であっても、電極間起電力Eacが0にならないことから明らかである。
一方、非特許文献1に記載された電磁流量計では、校正時に0点の誤差を補正することができる。しかし、正弦波励磁方式の電磁流量計では、校正した後に0点がシフトしてしまうことがあり、0点の安定性を確保することができないという問題点があった。また、矩形波励磁方式の電磁流量計においても、高周波励磁において0点の安定性を確保することができないという問題点があった。
さらに、特許文献1および非特許文献1に記載されたいずれの電磁流量計においても、被測定流体を流したままの状態では出力の0点の誤差を補正することができないという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ高周波励磁においても出力の0点の安定性を確保することができ、被測定流体の流量を0にすることなく0点の誤差を補正することができる電磁流量計を提供することを目的とする。
本発明の電磁流量計は、被測定流体が流れる測定管と、この測定管に配設され、前記流体に印加される磁場と前記流体の流れとによって生じた起電力を検出する電極と、この電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面に対して非対称かつ時間変化する磁場を前記流体に印加する励磁部と、前記電極で検出される、前記流体の流速とは無関係な∂A/∂t成分の起電力と前記流体の流速に起因するv×B成分の起電力との合成起電力から、第1の周波数における第1の∂A/∂t成分と第1の補正対象起電力とを抽出すると共に、第2の周波数における第2の∂A/∂t成分と第2の補正対象起電力とを抽出し、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去すると共に、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行うスパン補正部と、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力に基づいて、前記流体の流速とは無関係であり、前記磁場の時間変化に起因する第3の∂A/∂t成分を抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部と、前記抽出されたv×B成分から前記流体の流量を算出する流量出力部とを備えるものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差および励磁角周波数を切り替えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給する電源部とからなるものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第1の実施の形態)において、前記スパン補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差がΔθ3で、励磁角周波数がω0の第1の励磁状態と、この第1の励磁状態に対して前記第1の磁場と第2の磁場との位相差をΔθ3+πに変更した第2の励磁状態と、前記第1の励磁状態に対して励磁角周波数をω2に変更した第3の励磁状態と、前記第2の励磁状態に対して励磁角周波数をω2に変更した第4の励磁状態の4つの励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第2の励磁状態の合成起電力を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第4の励磁状態の合成起電力を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第3の励磁状態の合成起電力を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差を切り替えながら、複数の励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する電源部とからなるものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第2の実施の形態)において、前記電源部は、角周波数ω0とω2の異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給し、前記スパン補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差がΔθ7で、励磁角周波数がω0,ω2の第1の励磁状態と、この第1の励磁状態に対して前記第1の磁場と第2の磁場との位相差をΔθ7+πに変更した第2の励磁状態の2つの励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差および励磁角周波数を切り替えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに複数の励磁角周波数を同時に与える励磁電流を供給する電源部とからなるものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第3の実施の形態)において、前記電源部は、角周波数ω0±Δωの異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する励磁状態と、角周波数ω2±Δωの異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する励磁状態とを切り換えながら前記励磁コイルに励磁電流を供給し、前記スパン補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差がΔθ9で、励磁角周波数がω0±Δωの第1の励磁状態と、この第1の励磁状態に対して前記第1の磁場と第2の磁場との位相差をΔθ9+πに変更した第2の励磁状態と、前記第1の励磁状態に対して励磁角周波数をω2±Δωに変更した第3の励磁状態と、この第3の励磁状態に対して前記第1の磁場と第2の磁場との位相差をΔθ9+πに変更した第4の励磁状態の4つの励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+Δωの成分と角周波数ω0−Δωの成分との起電力和を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第4の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+Δωの成分と角周波数ω2−Δωの成分との起電力和を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+Δωの成分と角周波数ω0−Δωの成分との起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第3の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+Δωの成分と角周波数ω2−Δωの成分との起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに複数の励磁角周波数を同時又は交互に与える励磁電流を供給する電源部とからなるものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記電源部は、複数の周波数の搬送波をこの搬送波と異なる周波数の変調波によって変調した複数の成分を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第4の実施の形態)において、前記電源部は、角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波によって振幅変調した第1の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω0の搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第2の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の搬送波を角周波数ω1の変調波によって振幅変調した第3の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω2の搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第4の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給し、前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ω1の成分と角周波数ω0−ω1の成分との起電力和を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ω1の成分と角周波数ω2−ω1の成分との起電力和を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第5の実施の形態)において、前記電源部は、角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波によって振幅変調した第1の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω0の搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第2の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の搬送波を角周波数ω1の変調波によって振幅変調した第3の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω2の搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第4の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給し、前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ω1の成分と角周波数ω0−ω1の成分との起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ω1の成分と角周波数ω2−ω1の成分との起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1(第6の実施の形態)構成例において、前記電源部は、角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波によって位相変調又は周波数変調した第1の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω0の搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調又は周波数変調した第2の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の搬送波を角周波数ω1の変調波によって位相変調又は周波数変調した第3の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω2の搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調又は周波数変調した第4の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給し、前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ζ1・ω1(ζ1は正の整数)の成分と角周波数ω0−ζ1・ω1の成分との起電力和を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ζ2・ω1(ζ2は正の整数)の成分と角周波数ω2−ζ2・ω1の成分との起電力和を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第7の実施の形態)において、前記電源部は、角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波によって位相変調又は周波数変調した第1の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω0の搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調又は周波数変調した第2の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の搬送波を角周波数ω1の変調波によって位相変調又は周波数変調した第3の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω2の搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調又は周波数変調した第4の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給し、前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ζ1・ω1(ζ1は正の整数)の成分と角周波数ω0−ζ1・ω1の成分との起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ζ2・ω1(ζ2は正の整数)の成分と角周波数ω2−ζ2・ω1の成分との起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、この励磁コイルに励磁角周波数を切り替えながら励磁電流を供給する電源部とからなり、前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなるものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第8の実施の形態)において、前記電源部は、角周波数ω0の励磁電流を前記励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の励磁電流を前記励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら前記励磁コイルに励磁電流を供給し、前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と前記第2の合成起電力の同一励磁状態の起電力和および同一励磁状態の起電力差を前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々について求め、前記第1の励磁状態の起電力差を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の起電力差を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなるものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第9の実施の形態)において、前記電源部は、角周波数ω0とω2の異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給し、前記スパン補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和および同一周波数成分の起電力差を角周波数ω0とω2の各々について求め、前記角周波数ω0の起電力差を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記角周波数ω2の起電力差を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記角周波数ω0の起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記角周波数ω2の起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記電源部は、異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第10の実施の形態)において、前記電源部は、角周波数ω0±Δωの異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2±Δωの異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら前記励磁コイルに励磁電流を供給し、前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和および同一周波数成分の起電力差を、前記第1の励磁状態の角周波数ω0±Δωと前記第2の励磁状態の角周波数ω2±Δωの各々について求め、前記第1の励磁状態の角周波数ω0+Δωの起電力差と角周波数ω0−Δωの起電力差との和を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の角周波数ω2+Δωの起電力差と角周波数ω2−Δωの起電力差との和を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の角周波数ω0+Δωの起電力和と角周波数ω0−Δωの起電力和との和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の角周波数ω2+Δωの起電力和と角周波数ω2−Δωの起電力和との和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁角周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなるものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記電源部は、複数の周波数の搬送波をこの搬送波と異なる周波数の変調波によって変調した複数の成分を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給するものである。
本発明によれば、電極で検出される、流体の流速とは無関係な∂A/∂t成分の起電力と流体の流速に起因するv×B成分の起電力との合成起電力から、第1の周波数における第1の∂A/∂t成分と第1の補正対象起電力とを抽出すると共に、第2の周波数における第2の∂A/∂t成分と第2の補正対象起電力とを抽出し、抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去すると共に、抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、スパン補正した第1の補正対象起電力とスパン補正した第2の補正対象起電力に基づいて、流体の流速とは無関係な第3の∂A/∂t成分を抽出し、このスパン補正した2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、抽出したv×B成分から流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。また、本発明では、第1の周波数における第1の補正対象起電力を同じ第1の周波数における第1の∂A/∂t成分を用いてスパン補正すると共に、第2の周波数における第2の補正対象起電力を同じ第2の周波数における第2の∂A/∂t成分を用いてスパン補正し、それぞれスパン補正した2つの補正対象起電力に基づいて0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。その結果、本発明では、高精度の流量計測を行うことができる。
[基本原理]
本発明は、電磁流量計の電極で検出される電極間起電力から、∂A/∂t成分のベクトルVaとv×B成分のベクトルVbとの合成ベクトルVa+Vbを求めたとき、ベクトルVaは磁場の時間変化のみに依存し、被測定流体の流速の大きさVに無関係なベクトルであり、ベクトルVbは被測定流体の流速の大きさVに比例して大きさが変化するベクトルであることに着目している。
本発明では、合成ベクトルVa+Vbの中から、v×B成分に含まれるスパン変動要因を消去することが可能な第1の∂A/∂t成分を抽出し、この第1の∂A/∂t成分を用いて合成ベクトルVa+Vbを正規化することにより、合成ベクトルVa+Vb中のv×B成分に含まれるスパン変動要因を消去する。第1の∂A/∂t成分を抽出することにより、第1の∂A/∂t成分とv×B成分とが直交するか否かに関係なく、第1の∂A/∂t成分とv×B成分を別々のベクトルとして扱えることが重要である。
次に、本発明では、正規化した合成ベクトルVa+Vbの中から0点の変動要因となる第2の∂A/∂t成分を抽出して、正規化した合成ベクトルVa+Vbから第2の∂A/∂t成分を引くことにより、v×B成分のみを抽出している。これにより、本発明では、スパンの変動要因と0点の変動要因がともに消去された出力を得ることができ、v×B成分から被測定流体の流量を算出することができる。v×B成分を0にすることなく(流量を0にすることなく)、また∂A/∂t成分を0にすることなく(励磁周波数を0にすることなく)、v×B成分のみを取り出せることが重要である。また、本発明では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、励磁角周波数ω0,ω2の成分においてそれぞれ合成ベクトルの正規化を行い、それぞれの正規化した∂A/∂t成分の差を基に0補正を行うことにより、磁場の損失の影響が少ない0補正を行うことが可能になる。
以下、0点とスパンを実際に補正するための本発明の基本原理について説明する。
まず、本発明の基本原理に基づく電磁流量計のうち、2個の励磁コイルと1対の電極とを有する電磁流量計の原理を図1を用いて説明する。図1の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、測定管軸PAXの方向と直交する、電極2a,2bを含む平面PLNを測定管1の境としたとき、この平面PLNを境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する第1の励磁コイル3a、第2の励磁コイル3bとを有する。第1の励磁コイル3aは、平面PLNから例えば下流側にオフセット距離d1だけ離れた位置に配設される。第2の励磁コイル3bは、平面PLNから例えば上流側にオフセット距離d2だけ離れた位置に、平面PLNを挟んで第1の励磁コイル3aと対向するように配設される。
第2の励磁コイル3bを平面PLNを挟んで第1の励磁コイル3aと対向するように配設した場合、電極2a,2bで検出される電極間起電力のうち、第1の励磁コイル3aから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分とは同じ方向になる。一方、電極間起電力のうち、第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分とは逆向きになる。そのため、第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と、第1の励磁コイル3aから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分とを合わせた全ての合成ベクトルにおけるv×B成分の変動要因と∂A/∂t成分の変動要因は、等しくならないことを考慮して補正を行う必要がある。
ここで、第1の励磁コイル3aから発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B2と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B3は、以下のように与えられるものとする。
B2=b2・cos(ω0・t−θ2) ・・・(19)
B3=b3・cos(ω0・t−θ3) ・・・(20)
式(19)、式(20)において、b2,b3はそれぞれ磁束密度B2,B3の振幅、ω0は角周波数、θ2は磁束密度B2とω0・tとの位相差(位相遅れ)、θ3は磁束密度B3とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B2を磁場B2とし、磁束密度B3を磁場B3とする。
被測定流体の流速が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Bbの変化による渦電流I1、磁場Bcの変化による渦電流I2は、図2に示すような向きとなる。したがって、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E1と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E2は、図2に示すように互いに逆向きとなる。
被測定流体の流速がV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流I1,I2に加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Bb,v×Bcが発生するため、流速ベクトルvと磁場Bbによる渦電流Iv1、流速ベクトルvと磁場Bcによる渦電流Iv2は、図3に示すような向きとなる。したがって、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する電極間起電力Ev2は、同じ向きとなる。
図2、図3で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力とを合わせた全体の電極間起電力を複素ベクトルであらわした起電力Eac2は、式(10)、式(16)、式(17)を用いれば、式(18)に対応して次式で表される。
Eac2=rk・ω0・b2・exp{j・(π/2+θ2+θ00)}
+γ・rk・V・b2・exp{j・(θ2+θ01)}
+rk・ω0・b3・exp{j・(−π/2+θ3+θ00)}
+γ・rk・V・b3・exp{j・(θ3+θ01)} ・・・(21)
ここで、ω0・tに対する磁場B2の位相遅れθ2とω0・tに対する磁場B3の位相遅れθ3との関係がθ3=θ2+Δθ3で、虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係がθ01=θ00+Δθ01である状態を第1の励磁状態とし、この第1の励磁状態における電極間起電力Eac2をEac20とすると、電極間起電力Eac20は次式のようになる。
Eac20=rk・exp{j・(θ2+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b2−b3・exp(j・Δθ3)}・ω0
+rk・exp{j・(θ2+θ00)}
・γ・exp(j・Δθ01)・{b2+b3・exp(j・Δθ3)} ・V ・・・(22)
また、磁場B2と磁場B3との位相差が第1の励磁状態から一定値πだけ変化し(θ3=π+θ2+Δθ3)、かつθ01=θ00+Δθ01である状態を第2の励磁状態とし、この第2の励磁状態における電極間起電力Eac2をEac2Rとしたときの電極間起電力Eac2Rは式(22)より次式のようになる。
Eac2R=rk・exp{j・(θ2+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b2+b3・exp(j・Δθ3)}・ω0
+rk・exp{j・(θ2+θ00)}
・γ・exp(j・Δθ01)・{b2−b3・exp(j・Δθ3)} ・V ・・・(23)
式(21)の右辺第1項は第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分、右辺第2項は第1の励磁コイル3aから発生する磁場と流体の流速に起因するv×B成分、右辺第3項は第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分、右辺第4項は第2の励磁コイル3bから発生する磁場と流体の流速に起因するv×B成分となる。
また、式(22)の右辺第1項と式(23)の右辺第1項とを合わせたものが、第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分とを合わせた全ての∂A/∂t成分、式(22)の右辺第2項と式(23)の右辺第2項とを合わせたものが、第1の励磁コイル3aから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分と第2の励磁コイル3bから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分とを合わせた全てのv×B成分となる。
式(22)において、全てのv×B成分の流速の大きさVに係る係数の変動要因と、全ての∂A/∂t成分の角周波数ω0に係る係数の変動要因とが一致しないことから分かるように、図1の電磁流量計の構成では、合成ベクトルから取り出した1つの∂A/∂t成分を用いて0補正とスパン補正とを行うことはできない。そこで、コイル間の位相差を第1の励磁状態での位相差プラスπとすると、式(22)における全てのv×B成分の流速の大きさVに係る係数の変動要因と式(23)における全ての∂A/∂t成分の角周波数ω0に係る係数の変動要因とが等しくなり、この第2の励磁状態の∂A/∂t成分を取り出せば、補正が可能になる。この場合に適用できる原理を以下説明する。
第1の励磁コイル3aのみに角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVa10とv×B成分のベクトルVb10の合成ベクトルVa10+Vb10に相当する。
Va10=ra・exp(j・θa)・B1c[ω0]・C・ω0 ・・・(24)
Vb10=rb・exp(j・θb)・B1c[ω0]・C・V ・・・(25)
図4に、ベクトルVa10とベクトルVb10と合成ベクトルVa10+Vb10とを示す。
ここで、∂A/∂t成分のベクトルVa10は、磁場の変化により発生する起電力なので、励磁角周波数ω0に比例する大きさになる。このベクトルVa10の大きさの既知の比例定数部分をra、ベクトルVa10の既知の方向をθaとし、励磁角周波数がω0のときの磁場に関係する項をB1c[ω0]として関数形式で表すと、C(複素ベクトル)が磁場の変動以外の要因で変化する要素として与えられる。また、v×B成分のベクトルVb10は、測定管中の流体の移動により発生する起電力なので、流速の大きさVに比例する大きさになる。このベクトルVb10の大きさの既知の比例定数部分をrb、ベクトルVb10の既知の方向をθbとし、励磁周波数がω0のときの磁場に関係する項をB1c[ω0]として関数形式で表すと、C(複素ベクトル)が磁場の変動以外の要因で変化する要素として与えられる。したがって、∂A/∂t成分のベクトルVa10におけるCとv×B成分のベクトルVb10におけるCは、同一の要素になる。
一方、第2の励磁コイル3bのみに角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVa20とv×B成分のベクトルVb20の合成ベクトルVa20+Vb20に相当する。
Va20=−ra・exp(j・θa)・B2c[ω0]・C・ω0 ・・・(26)
Vb20=rb・exp(j・θb)・B2c[ω0]・C・V ・・・(27)
図5に、ベクトルVa20とベクトルVb20と合成ベクトルVa20+Vb20とを示す。
ここで、∂A/∂t成分のベクトルVa20の大きさの既知の比例定数部分をra、ベクトルVa20の既知の方向をθaとし、励磁角周波数がω0のときの磁場に関係する項をB2c[ω0]として関数形式で表すと、C(複素ベクトル)が磁場の変動以外の要因で変化する要素として与えられる。また、v×B成分のベクトルVb20の大きさの既知の比例定数部分をrb、ベクトルVb20の既知の方向をθbとし、励磁周波数がω0のときの磁場に関係する項をB2c[ω0]として関数形式で表すと、C(複素ベクトル)が磁場の変動以外の要因で変化する要素として与えられる。したがって、∂A/∂t成分のベクトルVa20におけるCとv×B成分のベクトルVb20におけるCは、同一の要素になる。
第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分(図4)と第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分(図5)とが逆方向を向いていることに注意すれば、励磁コイル3aと3bの両方に角周波数ω0の励磁電流を供給した場合の電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVas0とv×B成分のベクトルVbs0の合成ベクトルVas0+Vbs0に相当することが分かる。
Vas0=Va10+Va20
=ra・exp(j・θa)・(B1c[ω0]−B2c[ω0])・C・ω0
・・・(28)
Vbs0=Vb10+Vb20
=rb・exp(j・θb)・(B1c[ω0]+B2c[ω0])・C・V
・・・(29)
図6に、ベクトルVas0とベクトルVbs0と合成ベクトルVas0+Vbs0とを示す。式(29)に示すベクトルVbs0の流速の大きさVにかかる係数の中で(B1c[ω0]+B2c[ω0])・Cが、スパン変動要因として与えられる。また、流速の大きさVが0の時は、ベクトルVas0が変動することにより、合成ベクトルの大きさが変動する(すなわち、0点が変動する)。
0補正及びスパン補正の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0中の∂A/∂t成分のベクトルVas0におけるスパン変動要因(B1c[ω0]−B2c[ω0])・Cとv×B成分のベクトルVbs0におけるスパン変動要因(B1c[ω0]+B2c[ω0])・Cは異なる値となる。したがって、合成ベクトルVas0+Vbs0中の∂A/∂t成分のベクトルVas0でv×B成分のベクトルVbs0の正規化を行っても次式の通り、スパンの変動要因(B1c[ω0]−B2c[ω0])/(B1c[ω0]+B2c[ω0])が残り、スパンの変動要因を除去することはできない。
Vbs0/Vas0=(rb/ra)・exp{j・(θb−θa)}
・{(B1c[ω0]−B2c[ω0])
/(B1c[ω0]+B2c[ω0])}・(V/ω) ・・(30)
そのため、v×B成分の変動要因と同じスパン変動要因(B1c[ω0]+B2c[ω0])・Cを含む第1の∂A/∂t成分を抽出する必要がある。このような第1の∂A/∂t成分を抽出するために、第1の励磁コイル3aから発生する磁場と第2の励磁コイル3bから発生する磁場との位相差がΔθ3である第1の励磁状態から位相差がΔθ3+πである第2の励磁状態に変化させると、B2c[ω0]・Cが反転することを利用する。つまり、第1の励磁状態に対して位相差を+π変化させた第2の励磁状態の位相条件で第2の励磁コイル3bのみを角周波数ω0で励磁した場合に電極2a,2bで検出される合成ベクトルは、第1の励磁状態で検出した合成ベクトル(図5)に対して反転し、以下の∂A/∂t成分のベクトルVa20Rとv×B成分のベクトルVb20Rの合成ベクトルVa20R+Vb20Rに相当する。
Va20R=ra・exp(j・θa)・B2c[ω0]・C・ω0 ・・・(31)
Vb20R=−rb・exp(j・θb)・B2c[ω0]・C・V ・・・(32)
図7に、ベクトルVa20RとベクトルVb20Rと合成ベクトルVa20R+Vb20Rとを示す。
角周波数ω0の第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給し、第1の励磁電流との位相差がΔθ3+πで角周波数がω0の第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給した場合の電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rとv×B成分のベクトルVbs0Rの合成ベクトルVas0R+Vbs0Rに相当する。
Vas0R=Va10+Va20R
=ra・exp(j・θa)・(B1c[ω0]+B2c[ω0])・C・ω0
・・・(33)
Vbs0R=Vb10+Vb20R
=rb・exp(j・θb)・(B1c[ω0]−B2c[ω0])・C・V
・・・(34)
図8に、ベクトルVas0RとベクトルVbs0Rと合成ベクトルVas0R+Vbs0Rとを示す。
∂A/∂t成分のベクトルVas0Rにおけるスパン変動要因は、前述のv×B成分のベクトルVbs0のスパン変動要因(B1c[ω0]+B2c[ω0])・Cと等しい。したがって、第1の∂A/∂t成分としてVas0Rを抽出すれば、ベクトルVbs0の正規化が可能になる。第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを抽出する方法としては、以下の2つの方法がある。第1の抽出方法は、Vas0R≫Vbs0Rと近似できる場合に、Vbs0R≒0として、近似的に第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを抽出する方法である。第2の抽出方法は、角周波数(ω0±Δω)で励磁した場合の合成ベクトルから近似的に∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを抽出する方法である。
第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rにより、合成ベクトルVas0+Vbs0を正規化する。この正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法としては、以下の2つの方法がある。第1の検出方法は、角周波数ω0で励磁して合成ベクトルVas0+Vbs0を直接求める方法である。第2の検出方法は、上記第1の∂A/∂t成分を抽出したときと同様に、角周波数(ω0±Δω)で励磁した場合の合成ベクトルから近似的に合成ベクトルVas0+Vbs0を求める方法である。
第2の検出方法を用いる例として励磁角周波数(ω0+Δω)と(ω0−Δω)をとる場合を記しておく。第1の励磁状態の位相条件で励磁コイル3aと3bの両方に角周波数(ω0+Δω)の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVaspとv×B成分のベクトルVbspの合成ベクトルVasp+Vbspに相当する。
Vasp=ra・exp(j・θa)
・(B1c[ω0+Δω]−B2c[ω0+Δω])・C・(ω0+Δω)
・・・(35)
Vbsp=rb・exp(j・θb)
・(B1c[ω0+Δω]+B2c[ω0+Δω])・C・V ・・(36)
次に、第1の励磁状態の位相条件で励磁コイル3aと3bの両方に角周波数(ω0−Δω)の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVasmとv×B成分のベクトルVbsmの合成ベクトルVasm+Vbsmに相当する。
Vasm=ra・exp(j・θa)
・(B1c[ω0−Δω]−B2c[ω0−Δω])・C・(ω0−Δω)
・・・(37)
Vbsm=rb・exp(j・θb)
・(B1c[ω0−Δω]+B2c[ω0−Δω])・C・V ・・(38)
励磁角周波数(ω0+Δω)における∂A/∂t成分のベクトルVaspとv×B成分のベクトルVbspと励磁角周波数(ω0−Δω)における∂A/∂t成分のベクトルVasmとv×B成分のベクトルVbsmとを合成したベクトルから、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を次式のように近似的に抽出することができる。
Vas0+Vbs0≒{(Vasp+Vbsp)+(Vasm+Vbsm)}/2
・・・(39)
ここで、式(39)のように合成ベクトルVas0+Vbs0を近似的に求めることができる理由について説明する。文献「太田恵造著,“磁気工学の基礎II”,共立出版株式会社,昭和59年4月15日初版第8版発行,p304−318」に述べられているように渦電流による磁場の損失は磁場の大きさと周波数に比例するので、第1の励磁コイル3aから発生する磁場の損失と第2の励磁コイル3bから発生する磁場の損失とを同じにしておけば、次式の関係が成り立つ。
B1c[ω0]=B1c−B1c・ω0・ec ・・・(40)
B2c[ω0]=B2c−B2c・ω0・ec ・・・(41)
式(40)、式(41)において、ecは励磁コイル3a,3bのコアの材質やコアの構造による複素係数である。
第1の励磁コイル3aのみに角周波数(ω0+Δω)の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される合成ベクトルにおいて、磁場に関係する項をB1c[ω0+Δω]とし、同様に第1の励磁コイル3aのみに角周波数(ω0−Δω)の励磁電流を供給した場合に検出される合成ベクトルにおいて、磁場に関係する項B1c[ω0−Δω]とする。B1c[ω0+Δω]とB1c[ω0−Δω]との間には、式(40)、式(41)より次の関係が成り立つ。
B1c[ω0+Δω]+B1c[ω−Δω]
=B1c−B1c・(ω0+Δω)・ec+B1c−B1c・(ω0−Δω)・ec
=2・B1c・(1−ω0・ec)
=2・B1c[ω0] ・・・(42)
B1c[ω0+Δω]−B1c[ω−Δω]
=B1c−B1c・(ω0+Δω)・ec−B1c+B1c・(ω0−Δω)・ec
=−B1c・(Δω)・ec+B1c・(−Δω)・ec
=−2・B1c・Δω・ec ・・・(43)
また、第2の励磁コイル3bのみに角周波数(ω0+Δω)の励磁電流を供給した場合に検出される合成ベクトルにおいて、磁場に関係する項をB2c[ω0+Δω]とし、第2の励磁コイル3bのみに角周波数(ω0−Δω)の励磁電流を供給した場合に検出される合成ベクトルにおいて、磁場に関係する項をB2c[ω0−Δω]とする。B2c[ω0+Δω]とB2c[ω0−Δω]との間には、式(40)、式(41)より次の関係が成り立つ。
B2c[ω0+Δω]+B2c[ω0−Δω]=2・B2c[ω0] ・・・(44)
B2c[ω0+Δω]−B2c[ω0−Δω]=−2・B2c・Δω・ec ・・(45)
式(42)〜式(45)の関係式を用いれば、励磁角周波数(ω0+Δω)における∂A/∂t成分のベクトルVaspと励磁角周波数(ω0−Δω)における∂A/∂t成分のベクトルVasmとを合成したベクトルは、次式のように変形できる。
Vasp+Vasm
=ra・exp(j・θa)・C
・{(ω0+Δω)・(B1c[ω0+Δω]−B2c[ω0+Δω])
+(ω0−Δω)・(B1c[ω0−Δω]−B2c[ω0−Δω])}
=2・ra・exp(j・θa)・C
・{ω0・(B1c[ω0]−B2c[ω0])
−(Δω・Δω)・(B1c−B2c)・ec} ・・・(46)
また、同じく式(42)〜式(45)の関係式を用いれば、励磁角周波数(ω0+Δω)におけるv×B成分のベクトルVbspと励磁角周波数(ω0−Δω)におけるv×B成分のベクトルVbsmとを合成したベクトルは、次式のように変形できる。
Vbsp+Vbsm
=2・rb・exp(j・θb)・C・V
・(B1c[ω0+Δω]+B2c[ω0+Δω]
+B1c[ω0−Δω]+B2c[ω0−Δω])
=2・rb・exp(j・θb)・C・V・(B1c[ω0]+B2c[ω0])
・・・(47)
励磁角周波数(ω0+Δω)における∂A/∂t成分のベクトルVaspとv×B成分のベクトルVbspと励磁角周波数(ω0−Δω)における∂A/∂t成分のベクトルVasmとv×B成分のベクトルVbsmとを合成したベクトルは、式(46)、式(47)より次式で表される。
Vasp+Vasm+Vbsp+Vbsm
=2・ra・exp(j・θa)・C・ω0・(B1c[ω0]−B2c[ω0])
−2・ra・exp(j・θa)・C・(Δω・Δω)・(B1c−B2c)・ec
+2・rb・exp(j・θb)・C・V・(B1c[ω0]+B2c[ω0])
・・・(48)
式(48)の右辺第1項及び右辺第3項に対して右辺第2項は無視することができ、次式のように近似することができる。
Vasp+Vasm+Vbsp+Vbsm
≒2・ra・exp(j・θa)・C・ω0・(B1c[ω0]−B2c[ω0])
+2・rb・exp(j・θb)・C・V・(B1c[ω0]+B2c[ω0])
=2・(Vas0+Vbs0) ・・・(49)
こうして式(49)より、前記の式(39)を導出することができる。
次に、合成ベクトルVas0+Vbs0の正規化について説明する。図9は、第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rと合成ベクトルVas0+Vbs0とを示す図であり、図10は、合成ベクトルVas0+Vbs0を第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rにより正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。合成ベクトルVas0+Vbs0を正規化し、ω0倍した合成ベクトルは、以下の∂A/∂t成分のベクトルVnas0とv×B成分のベクトルVnbs0の合成ベクトルVnas0+Vnbs0で表される。
Vnas0=(Vas0/Vas0R)・ω0
={(B1c[ω0]−B2c[ω0])/(B1c[ω0]+B2c[ω0])}・ω0
={(B1c−B2c)/(B1c+B2c)}・ω0 ・・・(50)
Vnbs0=(Vbs0/Vas0R)・ω0
=(rb/ra)・exp{j・(θb−θa)}・V ・・・(51)
なお、正規化した合成ベクトルをω0倍する理由は、流速の大きさVにかかる係数(スパン)からω0を取り除くためである。(B1c[ω0]−B2c[ω0])/(B1c[ω0]+B2c[ω0])に式(40)、式(41)を代入すると、次式のように角周波数ω0に関係しない形に変形できる。
(B1c[ω0]−B2c[ω0])/(B1c[ω0]+B2c[ω0])
=(B1c−B1c・ω0・ec−B2c+B2c・ω0・ec)
/(B1c−B1c・ω0・ec+B2c−B2c・ω0・ec)
={(B1c−B2c)・(1−ω0・ec)}
/{(B1c+B2c)・(1−ω0・ec)}
=(B1c−B2c)/(B1c+B2c) ・・・(52)
式(50)では、式(52)に基づいて(B1c[ω0]−B2c[ω0])/(B1c[ω0]+B2c[ω0])を角周波数ω0に関係しない形に変形している。
式(51)によれば、正規化されたv×B成分のベクトルVnbs0のVにかかる係数から変動要因(B1c[ω0]+B2c[ω0])・Cが消去され、スパンが補正されていることが分かる。また、正規化された∂A/∂t成分のベクトルVnas0においては、{}の中で周波数に関連する項がなくなり、磁場の損失を考慮しなくても良いことが分かる。
図11は、正規化した合成ベクトルVnas0+Vnbs0から第3の∂A/∂t成分のベクトルVnas0を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。正規化した合成ベクトルVnas0+Vnbs0から第3の∂A/∂t成分を抽出する方法としては、複数の励磁周波数による磁場を被測定流体に印加し、電極間起電力に含まれる複数の周波数成分の出力差を利用して∂A/∂t成分を抽出する方法を用いる。この方法は、∂A/∂t成分の大きさは励磁周波数に比例し、v×B成分は励磁周波数に依存しないことに着目したものである。具体的には、ある角周波数ω0で励磁したときの合成ベクトルを正規化したベクトルと別の角周波数ω2で励磁したときの合成ベクトルを正規化したベクトルとの差を求める。この差は、∂A/∂t成分の大きさの変化分だけを与えるベクトルになるので、この変化分から∂A/∂t成分を抽出することができる。
励磁コイル3aと3bの両方に角周波数ω2の励磁電流を供給した場合の電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVas2とv×B成分のベクトルVbs2の合成ベクトルVas2+Vbs2に相当することが分かる。
Vas2=ra・exp(j・θa)・(B1c[ω2]−B2c[ω2])・C・ω2
・・・(53)
Vbs2=Vbs0
=rb・exp(j・θb)・(B1c[ω2]+B2c[ω2])・C・V
・・・(54)
B1c[ω2]は第1の励磁コイル3aのみに角周波数ω2の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される合成ベクトルにおいて磁場に関係する項である。また、B2c[ω2]は、第2の励磁コイル3bのみに角周波数ω2の励磁電流を供給した場合に検出される合成ベクトルにおいて磁場に関係する項である。
角周波数ω2の第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給し、第1の励磁電流との位相差がΔθ3+πで角周波数がω2の第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給した場合に電極2a,2bで検出される合成ベクトルのうち、∂A/∂t成分のベクトルVas2Rは次式で表される。
Vas2R=ra・exp(j・θa)・(B1c[ω2]+B2c[ω2])・C・ω2
・・・(55)
式(55)で示されるベクトルVas2Rを第2の∂A/∂t成分とする。
第2の∂A/∂t成分のベクトルVas2Rを用いて合成ベクトルVas2+Vbs2を正規化し、ω2倍した合成ベクトルは、以下の∂A/∂t成分のベクトルVnas2とv×B成分のベクトルVnbs2の合成ベクトルVnas2+Vnbs2で表される。
Vnas2=(Vas2/Vas2R)・ω2
={(B1c[ω2]−B2c[ω2])/(B1c[ω2]+B2c[ω2])}・ω2
={(B1c−B2c)/(B1c+B2c)}・ω2 ・・・(56)
Vnbs2=Vnbs0
=(Vbs2/Vas2R)・ω2
=(rb/ra)・exp{j・(θb−θa)}・V ・・・(57)
励磁角周波数をω2としたときの正規化されたv×B成分のベクトルVnbs2は、式(51)に示したベクトルVnbs0と同じになる。一方、励磁角周波数をω2としたときの正規化された∂A/∂t成分のベクトルVnas2は、式(50)においてω0をω2で置き換えたものとなる。
励磁角周波数をω0としたときの正規化された合成ベクトルVnas0+Vnbs0と、励磁角周波数をω2としたときの正規化された合成ベクトルVnas2+Vnbs2との差分を求めると、v×B成分がキャンセルされ、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍したものは次式のとおりベクトルVnas0と同じになる。
{(Vnas0+Vnbs0)−(Vnas2+Vnbs2)}・ω0/(ω0−ω2)
=(Vnas0−Vnas2)・ω0/(ω0−ω2)
={(B1c−B2c)/(B1c+B2c)}・ω0
=Vnas0 ・・・(58)
よって、正規化した合成ベクトルVnas0+Vnbs0中の∂A/∂t成分のベクトルVnas0を異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。この抽出した∂A/∂t成分のベクトルVnas0を第3の∂A/∂t成分とする。
図12は、正規化した合成ベクトルVnas0+Vnbs0からv×B成分のベクトルVnbs0を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。正規化した合成ベクトルVnas0+Vnbs0から第3の∂A/∂t成分のベクトルVnas0を引けば、式(51)に示したv×B成分のベクトルVnbs0を抽出することができる。式(51)より、v×B成分のベクトルVnbs0には、角周波数ω0,ω2に関連する項(0点変動要因)が含まれていないことが分かる。
式(51)より、被測定流体の流速の大きさVを以下のように算出することができる。
V=|Vnbs0/[(rb/ra)・exp{j・(θb−θa)}]|
=|Vnbs0|/(rb/ra) ・・・(59)
次に、本発明の基本原理に基づく電磁流量計のうち、1個の励磁コイルと2対の電極とを有する電磁流量計の原理を図13を用いて説明する。図13の電磁流量計は、測定管1と、被測定流体に印加される磁場および測定管軸PAXの双方と直交し、かつ被測定流体と接触するように測定管1に対向配置され、前記磁場と被測定流体の流れとによって生じた起電力を検出する第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、測定管軸PAXと直交する、第1の電極2a,2bを含む平面をPLN1、測定管軸PAXと直交する、第2の電極2c,2dを含む平面をPLN2としたとき、平面PLN1を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加すると同時に、平面PLN2を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁コイル3とを有する。
第1の電極2a,2bは、励磁コイル3の軸を含む、測定管軸PAXの方向と垂直な平面PLN3から例えば上流側にオフセット距離d3だけ離れた位置に配設される。第2の電極2c,2dは、平面PLN3から例えば下流側にオフセット距離d4だけ離れた位置に配設され、平面PLN3を挟んで第1の電極2a,2bと対向するように配設される。
第2の電極2c,2dを平面PLN3を挟んで第1の電極2a,2bと対向するように配設した場合、第1の電極2a,2bで検出される電極間起電力のうち、励磁コイル3から発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分と、第2の電極2c,2dで検出される電極間起電力のうち、励磁コイル3から発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分とは、同じ方向になる。一方、第1の電極2a,2bで検出される電極間起電力のうち、励磁コイル3から発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と、第2の電極2c,2dで検出される電極間起電力のうち、励磁コイル3から発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分とは逆向きになる。そのため、第1の電極2a,2bで検出される∂A/∂t成分およびv×B成分と、第2の電極2c,2dで検出される∂A/∂t成分およびv×B成分とを合わせた全ての合成ベクトルにおけるv×B成分の変動要因と∂A/∂t成分の変動要因は、等しくならないことを考慮して補正を行う必要がある。
ここで、励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B4と、励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B5は、以下のように与えられるものとする。
B4=b4・cos(ω0・t−θ4) ・・・(60)
B5=b5・cos(ω0・t−θ5) ・・・(61)
但し、B4、B5は1つの励磁コイル3から発生しているので、b4とb5、θ4とθ5は互いに関係があり、独立変数ではない。式(60)、式(61)において、b4,b5はそれぞれ磁束密度B4,B5の振幅、ω0は角周波数、θ4は磁束密度B4とω0・tとの位相差(位相遅れ)、θ5は磁束密度B5とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B4を磁場B4とし、磁束密度B5を磁場B5とする。
被測定流体の流速が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Bdの変化による渦電流Iは、図14に示すような向きとなる。したがって、電極軸EAX1と測定管軸PAXとを含む平面内において磁場Bdの変化によって発生する電極2a,2b間の、流速と無関係な起電力E1と、電極軸EAX2と測定管軸PAXとを含む平面内において磁場Bdの変化によって発生する電極2c,2d間の、流速と無関係な起電力E2とは、図14に示すように互いに逆向きとなる。
被測定流体の流速がV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流Iに加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Bdが発生するため、流速ベクトルvと磁場Bdによる渦電流Ivは、図15に示すような向きとなる。したがって、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する電極2a,2bの起電力Ev1と、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する電極2c,2d間の起電力Ev2とは、同じ向きとなる。
図14、図15で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2a,2b間の第1の電極間起電力Eac31は、式(10)、式(16)、式(17)を用いれば、式(18)に対応して次式で表される。
Eac31=rk・ω0・b4・exp{j・(π/2+θ4+θ00)}
+γ・rk・V・b4・exp{j・(θ4+θ01)} ・・・(62)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2c,2d間の第2の電極間起電力Eac32は、式(10)、式(16)、式(17)を用いれば、式(18)に対応して次式で表される。
Eac32=rk・ω0・b5・exp{j・(−π/2+θ5+θ00)}
+γ・rk・V・b5・exp{j・(θ5+θ01)} ・・・(63)
式(62)の右辺第1項は第1の電極2a,2bで検出される∂A/∂t成分、式(62)の右辺第2項は第1の電極2a,2bで検出されるv×B成分となる。式(63)の右辺第1項は第2の電極2c,2dで検出される∂A/∂t成分、式(63)の右辺第2項は第2の電極2c,2dで検出されるv×B成分となる。
ここで、ω0・tに対する磁場B4の位相遅れθ4とω0・tに対する磁場B5の位相遅れθ5との関係をθ5=θ4+Δθ5とし、虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(62)にθ5=θ4+Δθ5、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力Eac31と式(63)にθ5=θ4+Δθ5、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力Eac32との和をEac3sとすれば、起電力和Eac3sは次式で表される。
Eac3s=rk・exp{j・(θ4+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b4−b5・exp(j・Δθ5)}・ω0
+rk・exp{j・(θ4+θ00)}
・γ・exp(j・Δθ01)・{b4+b5・exp(j・Δθ5)} ・V ・・・(64)
また、式(62)にθ5=θ4+Δθ5、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力Eac31と式(63)にθ5=θ4+Δθ5、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力Eac32との差をEac3dとすれば、起電力差Eac3dは次式で表される。
Eac3d=rk・exp{j・(θ4+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b4+b5・exp(j・Δθ5)}・ω0
+rk・exp{j・(θ4+θ00)}
・γ・exp(j・Δθ01)・{b4−b5・exp(j・Δθ5)} ・V ・・・(65)
式(64)の右辺第1項は起電力和Eac3sの中の∂A/∂t成分、式(64)の右辺第2項は起電力和Eac3sの中のv×B成分となる。式(65)の右辺第1項は起電力差Eac3dの中の∂A/∂t成分、式(65)の右辺第2項は起電力差Eac3dの中のv×B成分となる。
式(64)において、起電力和Eac3sの中のv×B成分の流速の大きさVに係る係数の変動要因と、起電力和Eac3sの中の∂A/∂t成分の角周波数ω0に係る係数の変動要因とが一致しないことから分かるように、図13の電磁流量計の構成では、合成ベクトルから取り出した1つの∂A/∂t成分を用いて0補正とスパン補正とを行うことはできない。そこで、式(64)に示した起電力和Eac3sの中のv×B成分の流速の大きさVに係る係数の変動要因と、式(65)に示した起電力差Eac3dの中の∂A/∂t成分の角周波数ω0に係る係数の変動要因とが等しくなることを利用して、起電力差Eac3dの中の∂A/∂t成分を取り出せば、0補正とスパン補正が可能になり、図1の電磁流量計と同じ原理を補正に適用できる。
図1の電磁流量計の場合で説明した原理の内容を図13の電磁流量計に対応させるには、第1の励磁コイル3aから発生する磁場の影響に起因する起電力を第1の電極2a,2bで検出される起電力Eac31に置き換え、第2の励磁コイル3bから発生する磁場の影響に起因する起電力を第2の電極2c,2dで検出される起電力Eac32に置き換え、第1の励磁状態で検出される起電力を起電力和Eac3sに置き換え、第2の励磁状態で検出される起電力を起電力差Eac3dに置き換えればよい。
[第1の実施の形態]
次に、本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図1に示した電磁流量計と同様であるので、図1の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第1の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第1の抽出方法を用いるものである。第2の励磁コイルを第1の励磁コイルと同じ側に追加した場合には、図29の電磁流量計の冗長な構成となる。したがって、第2の励磁コイルは、電極を含む平面を挟んで第1の励磁コイルと異なる側に配設する必要がある。
第1の励磁コイル3aから発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B2と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B3は、以下のように与えられるものとする。
B2=b2・cos(ω0・t−θ2) ・・・(66)
B3=b3・cos(ω0・t−θ3) ・・・(67)
式(66)、式(67)において、b2,b3はそれぞれ磁束密度B2,B3の振幅、ω0は角周波数、θ2は磁束密度B2とω0・tとの位相差(位相遅れ)、θ3は磁束密度B3とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B2を磁場B2とし、磁束密度B3を磁場B3とする。
磁場の損失を考慮して、角周波数ω0における磁場B2,B3の振幅b2,b3をそれぞれb2[ω0],b3[ω0]と関数表記に変更し、同様に磁場B2,B3の位相差θ2,θ3をそれぞれθ2[ω0],θ3[ω0]と変更すると、式(66)、式(67)は式(68)、式(69)に置き換わる。
B2=b2[ω0]・cos(ω0・t−θ2[ω0]) ・・・(68)
B3=b3[ω0]・cos(ω0・t−θ3[ω0]) ・・・(69)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B2と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B3を次式のように微分する。
dB2/dt=ω0・cos(ω0・t)・b2[ω0]・{sin(θ2[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)・b2[ω0]・{−cos(θ2[ω0])}
・・・(70)
dB3/dt=ω0・cos(ω0・t)・b3[ω0]・{sin(θ3[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)・b3[ω0]・{−cos(θ3[ω0])}
・・・(71)
被測定流体の流速が0の場合、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E1と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E2は、図2に示すように互いに逆向きとなる。このとき、電極間起電力E1とE2とを足した全体の電極間起電力Eは、次式に示すように、磁場の時間微分dB2/dtとdB3/dtとの差(−dB2/dt+dB3/dt)に比例係数rkをかけ、位相差θ2,θ3をそれぞれθ2+θ00,θ3+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E=rk・ω0・cos(ω0・t)
・{−b2[ω0]・sin(θ2[ω0]+θ00)
+b3[ω0]・sin(θ3[ω0]+θ00)}
+rk・ω0・sin(ω0・t)
・{b2[ω0]・cos(θ2[ω0]+θ00)
−b3[ω0]・cos(θ3[ω0]+θ00)} ・・・(72)
被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する電極間起電力Ev2は、図3に示すように同じ向きとなる。このとき、電極間起電力Ev1とEv2とを足した全体の電極間起電力Evは、次式に示すように、磁場B2と磁場B3との和に比例係数rkvをかけ、位相差θ2,θ3をそれぞれθ2+θ01,θ3+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev=rkv・cos(ω0・t)
・{b2[ω0]・cos(θ2[ω0]+θ01)
+b3[ω0]・cos(θ3[ω0]+θ01)}
+rkv・sin(ω0・t)
・{b2[ω0]・sin(θ2[ω0]+θ01)
+b3[ω0]・sin(θ3[ω0]+θ01)} ・・・(73)
図2、図3で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分の起電力E10cは、式(72)、式(73)に式(17)を適用することにより次式で表される。
E10c=rk・ω0・b2[ω0]・exp{j・(π/2+θ2[ω0]+θ00)}
+rk・ω0・b3[ω0]
・exp{j・(−π/2+θ3[ω0]+θ00)}
+γ・rk・V・b2[ω0]・exp{j・(θ2[ω0]+θ01)}
+γ・rk・V・b3[ω0]・exp{j・(θ3[ω0]+θ01)}
・・・(74)
ここで、ω0・tに対する磁場B2の位相遅れθ2[ω0]とω0・tに対する磁場B3の位相遅れθ3[ω0]との関係がθ3[ω0]=θ2[ω0]+Δθ3[ω0]で、かつ虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係がθ01=θ00+Δθ01である状態を第1の励磁状態とし、この第1の励磁状態における電極間起電力E10cをE10とすると、電極間起電力E10は次式のようになる。
E10=rk・exp{j・(θ2[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b2[ω0]−b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b2[ω0]+b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}]
・・・(75)
また、磁場B2と磁場B3との位相差が第1の励磁状態から一定値πだけ変化し(θ3[ω2]=π+θ2[ω2]+Δθ3[ω2])、かつθ01=θ00+Δθ01である状態を第2の励磁状態とし、この第2の励磁状態における電極間起電力E10cをE1π0とすると、電極間起電力E1π0は次式のようになる。
E1π0=rk・exp{j・(θ2[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b2[ω0]+b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b2[ω0]−b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}]
・・・(76)
さらに、第1の励磁状態において励磁角周波数をω0からω2に変更した状態を第3の励磁状態とし、この第3の励磁状態における電極間起電力E10cをE12とすると、電極間起電力E12は式(75)より次式のようになる。
E12=rk・exp{j・(θ2[ω2]+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)
・{b2[ω2]−b3[ω2]・exp(j・Δθ3[ω2])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b2[ω2]+b3[ω2]・exp(j・Δθ3[ω2])}]
・・・(77)
また、第2の励磁状態において励磁角周波数をω0からω2に変更した状態を第4の励磁状態とし、この第4の励磁状態における電極間起電力E10cをE1π2とすると、電極間起電力E1π2は式(76)より次式のようになる。
E1π2=rk・exp{j・(θ2[ω2]+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)
・{b2[ω2]+b3[ω2]・exp(j・Δθ3[ω2])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b2[ω2]−b3[ω2]・exp(j・Δθ3[ω2])}]
・・・(78)
まず、角周波数ω0の状態のスパンを補正することについて説明する。初期状態(校正時の状態)において、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B2と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B3とを等しく設定しておくと、その後の磁場B2とB3の初期状態からの差は小さくなり、式(79)の条件が成り立つ。
|b2[ω0]+b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])|
≫|b2[ω0]−b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])| ・・・(79)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(79)の条件を考慮すると、式(76)において式(80)の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)
・{b2[ω0]+b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b2[ω0]−b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}|
・・・(80)
式(80)の条件を用いて、電極間起電力E1π0を近似した起電力EdA11は次式のように表される。この起電力EdA11は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA11≒E1π0 ・・・(81)
EdA11=rk・exp{j・(θ2[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b2[ω0]+b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}
・・・(82)
起電力EdA11は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この起電力EdA11を用いて電極間起電力E10(合成ベクトルVas0+Vbs0)中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。式(75)の電極間起電力E10を式(82)の起電力EdA11で正規化し、ω0倍した結果をEn10とすれば、正規化起電力En10は次式のようになる。
En10=(E10/EdA11)・ω0
=rk・exp{j・(θ2[ω0]+θ00)}・[ω0・exp(j・π/2)
・{b2[ω0]−b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b2[ω0]+b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}]
/[rk・exp{j・(θ2[ω0]+θ00)}・ω0・exp(j・π/2)
・{b2[ω0]+b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}]・ω0
=ω0・{b2[ω0]−b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}
/{b2[ω0]+b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(83)
式(83)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b2[ω0]−b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}/{b2[ω0]+b3[ω0]・exp(j・Δθ3[ω0])}も正規化されることにより角周波数ω0に関係しない値{b2−b3・exp(j・Δθ3)}/{b2+b3・exp(j・Δθ3)}で表されるので、式(83)を次式のように置き換えることができる。
En10=ω0・{b2−b3・exp(j・Δθ3)}
/{b2+b3・exp(j・Δθ3)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(84)
式(84)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。なお、電極間起電力E10を起電力EdA11で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。式(84)によれば、流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(84)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(84)の右辺第1項を除去する方法について説明する。角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。まず、式(78)の電極間起電力E1π2を近似した起電力EdA12は次式で表される。この起電力EdA12は基本原理における第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA12≒E1π2 ・・・(85)
EdA12=rk・exp{j・(θ2[ω0]+θ00)}
・ω2・exp(j・π/2)
・{b2[ω2]+b3[ω2]・exp(j・Δθ3[ω2])}
・・・(86)
式(77)の電極間起電力E12を起電力EdA12で正規化し、ω2倍した結果をEn12とすれば、正規化起電力En12は式(84)より次式で表される。
En12=(E12/EdA12)・ω2
=ω2・{b2[ω2]−b3[ω2]・exp(j・Δθ3[ω2])}
/{b2[ω2]+b3[ω2]・exp(j・Δθ3[ω2])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
=ω2・{b2−b3・exp(j・Δθ3)}
/{b2+b3・exp(j・Δθ3)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(87)
正規化起電力En10とEn12との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA13とすれば、起電力差EdA13は次式で表される。この起電力差EdA13は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdA13=(En10−En12)・ω0/(ω0−ω2)
=[ω0・{b2−b3・exp(j・Δθ3)}
/{b2+b3・exp(j・Δθ3)}
+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−ω2・{b2−b3・exp(j・Δθ3)}
/{b2+b3・exp(j・Δθ3)}
−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]・ω0/(ω0−ω2)
=ω0・{b2−b3・exp(j・Δθ3)}
/{b2+b3・exp(j・Δθ3)} ・・・(88)
起電力差EdA13は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(84)の右辺第1項と等しくなるので、この正規化起電力差EdA13を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力En10から取り出すことができる。式(84)の正規化起電力En10から式(88)の正規化起電力差EdA13を引いたときに得られるv×B成分をEvBn1とすると、v×B成分EvBn1は次式で表される。
EvBn1=En10−EdA13
=ω0・{b2−b3・exp(j・Δθ3)}
/{b2+b3・exp(j・Δθ3)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−ω0・{b2−b3・exp(j・Δθ3)}
/{b2+b3・exp(j・Δθ3)}
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(89)
v×B成分EvBn1は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBn1も0となることから分かるように、v×B成分EvBn1より、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。式(89)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn1/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn1|/γ ・・・(90)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表1のとおりである。本実施の形態は、表1から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。図16は本実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bに励磁電流を供給する電源部4と、信号変換部5と、信号変換部5によって抽出されたv×B成分から流体の流量を算出する流量出力部6とを有する。第1、第2の励磁コイル3a,3bと電源部4とは、平面PLNに対して非対称、かつ時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁部となる。
信号変換部5は、第1の励磁状態〜第4の励磁状態の各々において電極2a,2bで検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第2の励磁状態の合成起電力を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第4の励磁状態の合成起電力を第2の∂A/∂t成分として抽出し、第1の励磁状態の合成起電力を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、第3の励磁状態の合成起電力を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51と、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52とから構成される。
電源部4は、第1の角周波数ω0の第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、第1の励磁電流との位相差がΔθ3で、第1の角周波数ω0の第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、この第1の励磁状態に対して第1の励磁電流と第2の励磁電流との位相差をΔθ3+πに変更した第2の励磁状態をT2秒継続し、第1の励磁状態に対して励磁角周波数をω0からω2に変更した第3の励磁状態をT3秒継続し、さらに第2の励磁状態に対して励磁角周波数をω0からω2に変更した第4の励磁状態をT4秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2+T3+T4である。
図17は信号変換部5と流量出力部6の動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5のスパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E10の振幅r10を求めると共に、実軸と電極間起電力E10との位相差φ10を図示しない位相検波器により求める(図17ステップ101)。続いて、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E1π0の振幅r1π0を求めると共に、実軸と電極間起電力E1π0との位相差φ1π0を位相検波器により求める(ステップ102)。
また、スパン補正部51は、第3の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E12の振幅r12を求めると共に、実軸と電極間起電力E12との位相差φ12を位相検波器により求める(ステップ103)。さらに、スパン補正部51は、第4の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E1π2の振幅r1π2を求めると共に、実軸と電極間起電力E1π2との位相差φ1π2を位相検波器により求める(ステップ104)。なお、電極間起電力E10,E1π0,E12,E1π2は、バンドパスフィルタによっても周波数分離することができるが、実際にはコムフィルタとよばれる櫛形のデジタルフィルタを使用すれば、簡単に分離することができる。
次に、スパン補正部51は、電極間起電力E1π0を近似した起電力EdA11の大きさと角度を求める(ステップ105)。このステップ105の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(82)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、起電力EdA11の大きさ|EdA11|を次式のように算出する。
|EdA11|=r1π0 ・・・(91)
そして、スパン補正部51は、起電力EdA11の角度∠EdA11を次式のように算出する。
∠EdA11=φ1π0 ・・・(92)
これで、ステップ105の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、電極間起電力E10を起電力EdA11で正規化した正規化起電力En10の大きさと角度を求める(ステップ106)。このステップ106の処理は、式(84)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力En10の大きさ|En10|を次式のように算出する。
|En10|=(r10/|EdA11|)・ω0 ・・・(93)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力En10の角度∠En10を次式のように算出する。
∠En10=φ10−∠EdA11 ・・・(94)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力En10の実軸成分En10xと虚軸成分En10yを次式のように算出する。
En10x=|En10|・cos(∠En10) ・・・(95)
En10y=|En10|・sin(∠En10) ・・・(96)
これで、ステップ106の処理が終了する。
次に、スパン補正部51は、電極間起電力E1π2を近似した起電力EdA12の大きさと角度を求める(ステップ107)。このステップ107の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(86)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、起電力EdA12の大きさ|EdA12|を次式のように算出する。
|EdA12|=r1π2 ・・・(97)
そして、スパン補正部51は、起電力EdA12の角度∠EdA12を次式のように算出する。
∠EdA12=φ1π2 ・・・(98)
これで、ステップ107の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、電極間起電力E12を起電力EdA12で正規化した正規化起電力En12の大きさと角度を求める(ステップ108)。このステップ108の処理は、式(87)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力En12の大きさ|En12|を次式のように算出する。
|En12|=(r12/|EdA12|)・ω2 ・・・(99)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力En12の角度∠En12を次式のように算出する。
∠En12=φ12−∠EdA12 ・・・(100)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力En12の実軸成分En12xと虚軸成分En12yを次式のように算出する。
En12x=|En12|・cos(∠En12) ・・・(101)
En12y=|En12|・sin(∠En12) ・・・(102)
これで、ステップ108の処理が終了する。
次に、信号変換部5の0点補正部52は、正規化起電力En10とEn12との起電力差EdA13の大きさを求める(ステップ109)。このステップ109の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(88)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、起電力差EdA13の実軸成分EdA13xと虚軸成分EdA13yを次式のように算出する。
EdA13x=(En10x−En12x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(103)
EdA13y=(En10y−En12y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(104)
そして、0点補正部52は、正規化起電力En10から起電力差EdA13を取り除き、v×B成分EvBn1の大きさを求める(ステップ110)。このステップ110の処理は、式(89)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、v×B成分EvBn1の大きさ|EvBn1|を次式のように算出する。
|EvBn1|={(En10x−EdA13x)2
+(En10y−EdA13y)21/2 ・・・(105)
流量出力部6は、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ111)。このステップ111の処理は、式(90)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn1|/γ ・・・(106)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5と流量出力部6とは、以上のようなステップ101〜111の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ112においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ104〜111の処理は第4の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B2と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B3とが等しくなるように設定しておくと、電極間起電力E1π0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また電極間起電力E1π2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて第1の励磁状態における電極間起電力E10中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて第3の励磁状態における電極間起電力E12中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力En10とEn12とから起電力差EdA13(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力En10から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、角周波数ω0の起電力E10のv×B成分を同じ角周波数ω0の起電力E1π0から抽出した第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、角周波数ω2の起電力E12のv×B成分を同じ角周波数ω2の起電力E1π2から抽出した第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力En10とEn12との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力E10を0補正およびスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力E12を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力En12とEn10とから起電力差EdA13(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdA13=(En12−En10)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(107)
そして、次式のように正規化起電力En12から起電力差EdA13を引くことによりv×B成分EvBn1を求めるようにすればよい。その他の処理は電極間起電力E10を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn1|=|En12−EdA13| ・・・(108)
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図1に示した電磁流量計と同様であるので、図1の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第1の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第1の抽出方法を用いるものである。
第1の励磁コイル3aから発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B6と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B7は、以下のように与えられるものとする。
B6=b6・cos(ω0・t−θ6)+b6・cos(ω2・t−θ6)
・・・(109)
B7=b7・cos(ω0・t−θ7)+b7・cos(ω2・t−θ7)
・・・(110)
式(109)、式(110)において、ω0,ω2は異なる角周波数、b6は磁束密度B6の角周波数ω0の成分の振幅および角周波数ω2の成分の振幅、b7は磁束密度B7の角周波数ω0の成分の振幅および角周波数ω2の成分の振幅、θ6は磁束密度B6の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差(位相遅れ)および角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差、θ7は磁束密度B7の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差および角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差である。以下、磁束密度B6を磁場B6とし、磁束密度B7を磁場B7とする。
それぞれの角周波数における磁場の損失を考慮して、磁場B6,B7の角周波数ω0の成分の振幅b6,b7をそれぞれb6[ω0],b7[ω0]と関数表記に変更し、同様に角周波数ω0の成分の位相差θ6,θ7をそれぞれθ6[ω0],θ7[ω0]と変更する。さらに、磁場B6,B7の角周波数ω2の成分の振幅b6,b7をそれぞれb6[ω2],b7[ω2]と関数表記に変更し、同様に角周波数ω2の成分の位相差θ6,θ7をそれぞれθ6[ω2],θ7[ω2]と変更する。これにより、式(109)、式(110)は式(111)、式(112)に置き換わる。
B6=b6[ω0]・cos(θ6[ω0])・cos(ω0・t)
+b6[ω0]・sin(θ6[ω0])・sin(ω0・t)
+b6[ω2]・cos(θ6[ω2])・cos(ω2・t)
+b6[ω2]・sin(θ6[ω2])・sin(ω2・t) ・・・(111)
B7=b7[ω0]・cos(θ7[ω0])・cos(ω0・t)
+b7[ω0]・sin(θ7[ω0])・sin(ω0・t)
+b7[ω2]・cos(θ7[ω2])・cos(ω2・t)
+b7[ω2]・sin(θ7[ω2])・sin(ω2・t) ・・・(112)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B6と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B7を次式のように微分する。
dB6/dt=ω0・cos(ω0・t)・b6[ω0]・{sin(θ6[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)・b6[ω0]・{−cos(θ6[ω0])}
+ω2・cos(ω2・t)・b6[ω2]・{sin(θ6[ω2])}
+ω2・sin(ω2・t)・b6[ω2]・{−cos(θ6[ω2])}
・・・(113)
dB7/dt=ω0・cos(ω0・t)・b7[ω0]・{sin(θ7[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)・b7[ω0]・{−cos(θ7[ω0])}
+ω2・cos(ω2・t)・b7[ω2]・{sin(θ7[ω2])}
+ω2・sin(ω2・t)・b7[ω2]・{−cos(θ7[ω2])}
・・・(114)
被測定流体の流速が0の場合、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E1と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E2は、図2に示すように互いに逆向きとなる。このとき、電極間起電力E1とE2とを足した全体の電極間起電力Eは、次式に示すように、磁場の時間微分dB6/dtとdB7/dtとの差(−dB6/dt+dB7/dt)にω0,ω2それぞれの角周波数成分における比例係数rkをかけ、位相差θ6,θ7をそれぞれθ6+θ00,θ7+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E=rk・ω0・cos(ω0・t)
・{−b6[ω0]・sin(θ6[ω0]+θ00)
+b7[ω0]・sin(θ7[ω0]+θ00)}
+rk・ω0・sin(ω0・t)
・{b6[ω0]・cos(θ6[ω0]+θ00)
−b7[ω0]・cos(θ7[ω0]+θ00)}
+rk・ω2・cos(ω2・t)
・{−b6[ω2]・sin(θ6[ω2]+θ00)
+b7[ω2]・sin(θ7[ω2]+θ00)}
+rk・ω2・sin(ω2・t)
・{b6[ω2]・cos(θ6[ω2]+θ00)
−b7[ω2]・cos(θ7[ω2]+θ00)} ・・・(115)
被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する電極間起電力Ev2は、図3に示すように同じ向きとなる。このとき、電極間起電力Ev1とEv2とを足した全体の電極間起電力Evは、次式に示すように、磁場B6と磁場B7との和にω0,ω2それぞれの角周波数成分における比例係数rkvをかけ、位相差θ6,θ7をそれぞれθ6+θ01,θ7+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev=rkv・cos(ω0・t)
・{b6[ω0]・cos(θ6[ω0]+θ01)
+b7[ω0]・cos(θ7[ω0]+θ01)}
+rkv・sin(ω0・t)
・{b6[ω0]・sin(θ6[ω0]+θ01)
+b7[ω0]・sin(θ7[ω0]+θ01)}
+rkv・cos(ω2・t)
・{b6[ω2]・cos(θ6[ω2]+θ01)
+b7[ω2]・cos(θ7[ω2]+θ01)}
+rkv・sin(ω2・t)
・{b6[ω2]・sin(θ6[ω2]+θ01)
+b7[ω2]・sin(θ7[ω2]+θ01)} ・・・(116)
図2、図3で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分の起電力E20cは、式(115)の第1項および第2項と式(116)の第1項および第2項と式(17)とから次式で表される。
E20c=rk・ω0・b6[ω0]・exp{j・(π/2+θ6[ω0]+θ00)}
+γ・rk・V・b6[ω0]・exp{j・(θ6[ω0]+θ01)}
+rk・ω0・b7[ω0]
・exp{j・(−π/2+θ7[ω0]+θ00)}
+γ・rk・V・b7[ω0]・exp{j・(θ7[ω0]+θ01)}
・・・(117)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω2の成分の起電力E22cは、式(115)の第3項および第4項と式(116)の第3項および第4項と式(17)とから次式で表される。
E22c=rk・ω2・b6[ω2]・exp{j・(π/2+θ6[ω2]+θ00)}
+γ・rk・V・b6[ω2]・exp{j・(θ6[ω2]+θ01)}
+rk・ω2・b7[ω2]
・exp{j・(−π/2+θ7[ω2]+θ00)}
+γ・rk・V・b7[ω2]・exp{j・(θ7[ω2]+θ01)}
・・・(118)
ここで、磁場B6の角周波数ω0の成分の位相遅れθ6[ω0]と磁場B7の角周波数ω0の成分の位相遅れθ7[ω0]との関係がθ7[ω0]=θ6[ω0]+Δθ7[ω0]で、かつ虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係がθ01=θ00+Δθ01である状態を第1の励磁状態とし、この第1の励磁状態における電極間起電力E20cをE20とすると、電極間起電力E20は次式のようになる。
E20=rk・exp{j・(θ6[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b6[ω0]−b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b6[ω0]+b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}]
・・・(119)
また、第1の励磁状態における電極間起電力E22cをE22とすると、電極間起電力E22は次式のようになる。
E22=rk・exp{j・(θ6[ω2]+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)
・{b6[ω2]−b7[ω2]・exp(j・Δθ7[ω2])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b6[ω2]+b7[ω2]・exp(j・Δθ7[ω2])}]
・・・(120)
また、磁場B6と磁場B7との位相差が第1の励磁状態から一定値πだけ変化し(θ7[ω0]=π+θ6[ω0]+Δθ7[ω0])、かつθ01=θ00+Δθ01である状態を第2の励磁状態とし、この第2の励磁状態における電極間起電力E20cをE2π0とすると、電極間起電力E2π0は次式のようになる。
E2π0=rk・exp{j・(θ6[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b6[ω0]+b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b6[ω0]−b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}]
・・・(121)
また、第2の励磁状態における電極間起電力E22cをE2π2とすると、電極間起電力E2π2は次式のようになる。
E2π2=rk・exp{j・(θ6[ω2]+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)
・{b6[ω2]+b7[ω2]・exp(j・Δθ7[ω2])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b6[ω2]−b7[ω2]・exp(j・Δθ7[ω2])}]
・・・(122)
ここで、初期状態(校正時の状態)の磁場B6、B7おいて、b6[ω0]=b7[ω0]、Δθ7[ω0]=0と設定しておくと、その後のずれを考慮してもb6[ω0]≒b7[ω0]、Δθ7[ω0]≒0であり、次の条件式が成り立つ。
|b6[ω0]+b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])|
≫|b6[ω0]−b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])| ・・・(123)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(123)の条件を考慮すると、式(121)において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)
・{b6[ω0]+b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)・b6[ω0]
−b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])| ・・・(124)
式(124)の条件を用いて、式(121)の電極間起電力E2π0を近似した起電力EdA21は次式で表される。この起電力EdA21は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA21≒E2π0 ・・・(125)
EdA21=rk・exp{j・(θ6[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b6[ω0]+b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}
・・・(126)
起電力EdA21は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この起電力EdA21を用いて電極間起電力E20(合成ベクトルVas0+Vbs0)中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。電極間起電力E20を起電力EdA21で正規化し、ω0倍した結果をEn20とすれば、正規化起電力En20は次式で表される。
En20=(E20/EdA21)・ω0
=rk・exp{j・(θ6[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b6[ω0]−b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b6[ω0]+b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}]
/[rk・exp{j・(θ6[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b6[ω0]+b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}]・ω0
=ω0・{b6[ω0]−b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}
/{b6[ω0]+b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(127)
式(52)を用いると、式(127)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b6[ω0]−b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}/{b6[ω0]+b7[ω0]・exp(j・Δθ7[ω0])}を、角周波数ω0に関係しない値{b6−b7・exp(j・Δθ7)}/{b6+b7・exp(j・Δθ7)}で表すことができる。したがって、式(127)を次式のように置き換えることができる。
En20=ω0・{b6−b7・exp(j・Δθ7)}
/{b6+b7・exp(j・Δθ7)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(128)
式(128)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を正規化した項となる。なお、電極間起電力E20を起電力EdA21で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。式(128)によれば、流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(128)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(128)の右辺第1項を除去する方法について説明する。角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。式(124)において、角周波数ω0をω2に置き換えても、同様の近似が成り立つので、式(122)の電極間起電力E2π2を近似した起電力EdA22は次式で表される。この起電力EdA22は基本原理における第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA22≒E2π2 ・・・(129)
EdA22=rk・exp{j・(θ6[ω2]+θ00)}
・ω2・exp(j・π/2)
・{b6[ω2]+b7[ω2]・exp(j・Δθ7[ω2])}
・・・(130)
式(120)の電極間起電力E22を式(130)の起電力EdA22で正規化し、ω2倍した結果をEn22とすれば、正規化起電力En22は式(128)より次式で表される。
En22=ω2・{b6−b7・exp(j・Δθ7)}
/{b6+b7・exp(j・Δθ7)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(131)
正規化起電力En20とEn22との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA23とすれば、起電力差EdA23は次式で表される。この起電力差EdA23は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdA23=(En20−En22)・ω0/(ω0−ω2)
=[{b6−b7・exp(j・Δθ7)}
/{b6+b7・exp(j・Δθ7)}
・ω0+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−{b6−b7・exp(j・Δθ7)}
/{b6+b7・exp(j・Δθ7)}
・ω2−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]
・ω0/(ω0−ω2)
={b6−b7・exp(j・Δθ7)}/{b6+b7・exp(j・Δθ7)}
・ω0 ・・・(132)
起電力差EdA23は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(128)の右辺第1項と等しくなるので、この正規化起電力差EdA23を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力En20から取り出すことができる。式(128)の正規化起電力En20から式(132)の正規化起電力差EdA23を引いたときに得られるv×B成分をEvBn2とすると、v×B成分EvBn2は次式で表される。
EvBn2=En20−EdA23
={b6−b7・exp(j・Δθ7)}/{b6+b7・exp(j・Δθ7)}
・ω0
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−{b6−b7・exp(j・Δθ7)}/{b6+b7・exp(j・Δθ7)}
・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(133)
v×B成分EvBn2は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBn2も0となることから分かるように、v×B成分EvBn2より、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。また、このとき流速の大きさVにかかる係数の大きさと方向は、複素ベクトル[γ・rk・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]で表される。式(133)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn2/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn2|/γ ・・・(134)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表2のとおりである。本実施の形態は、表2から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図16の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bと、電源部4と、信号変換部5と、流量出力部6とを有する。
信号変換部5は、第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において電極2a,2bで検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の∂A/∂t成分として抽出し、第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51と、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52とから構成される。
本実施の形態の電源部4は、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、第1の励磁電流との位相差がΔθ7で、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、この第1の励磁状態に対して第1の励磁電流と第2の励磁電流との位相差をΔθ7+πに変更した第2の励磁状態をT2秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2である。
図18は本実施の形態の信号変換部5と流量出力部6の動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5のスパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E20の振幅r20を求めると共に、実軸と電極間起電力E20との位相差φ20を図示しない位相検波器により求める。また、スパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E22の振幅r22を求めると共に、実軸と電極間起電力E22との位相差φ22を位相検波器により求める(図18ステップ201)。
続いて、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E2π0の振幅r2π0を求めると共に、実軸と電極間起電力E2π0との位相差φ2π0を位相検波器により求める。また、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E2π2の振幅r2π2を求めると共に、実軸と電極間起電力E2π2との位相差φ2π2を位相検波器により求める(ステップ202)。電極間起電力E20,E22,E2π0,E2π2は、バンドパスフィルタやコムフィルタによって周波数分離することができる。
次に、スパン補正部51は、電極間起電力E2π0を近似した起電力EdA21の大きさと角度を求める(ステップ203)。このステップ203の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(126)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、起電力EdA21の大きさ|EdA21|を次式のように算出する。
|EdA21|=r2π0 ・・・(135)
そして、スパン補正部51は、起電力EdA21の角度∠EdA21を次式のように算出する。
∠EdA21=φ2π0 ・・・(136)
これで、ステップ203の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、電極間起電力E20を起電力EdA21で正規化した正規化起電力En20の大きさと角度を求める(ステップ204)。このステップ204の処理は、式(128)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力En20の大きさ|En20|を次式のように算出する。
|En20|=(r20/|EdA21|)・ω0 ・・・(137)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力En20の角度∠En20を次式のように算出する。
∠En20=φ20−∠EdA21 ・・・(138)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力En20の実軸成分En20xと虚軸成分En20yを次式のように算出する。
En20x=|En20|・cos(∠En20) ・・・(139)
En20y=|En20|・sin(∠En20) ・・・(140)
これで、ステップ204の処理が終了する。
次に、スパン補正部51は、電極間起電力E2π2を近似した起電力EdA22の大きさと角度を求める(ステップ205)。このステップ205の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(130)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、起電力EdA22の大きさ|EdA22|を次式のように算出する。
|EdA22|=r2π2 ・・・(141)
そして、スパン補正部51は、起電力EdA22の角度∠EdA22を次式のように算出する。
∠EdA22=φ2π2 ・・・(142)
これで、ステップ205の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、電極間起電力E22を起電力EdA22で正規化した正規化起電力En22の大きさと角度を求める(ステップ206)。このステップ206の処理は、式(131)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力En22の大きさ|En22|を次式のように算出する。
|En22|=(r22/|EdA22|)・ω2 ・・・(143)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力En22の角度∠En22を次式のように算出する。
∠En22=φ22−∠EdA22 ・・・(144)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力En22の実軸成分En22xと虚軸成分En22yを次式のように算出する。
En22x=|En22|・cos(∠En22) ・・・(145)
En22y=|En22|・sin(∠En22) ・・・(146)
これで、ステップ206の処理が終了する。
次に、信号変換部5の0点補正部52は、正規化起電力En20とEn22との起電力差EdA23の大きさを求める(ステップ207)。このステップ207の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(132)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、起電力差EdA23の実軸成分EdA23xと虚軸成分EdA23yを次式のように算出する。
EdA23x=(En20x−En22x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(147)
EdA23y=(En20y−En22y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(148)
そして、0点補正部52は、正規化起電力En20から起電力差EdA23を取り除き、v×B成分EvBn2の大きさを求める(ステップ208)。このステップ208の処理は、式(133)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、v×B成分EvBn2の大きさ|EvBn2|を次式のように算出する。
|EvBn2|={(En20x−EdA23x)2
+(En20y−EdA23y)21/2 ・・・(149)
流量出力部6は、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ209)。このステップ209の処理は、式(134)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn2|/γ ・・・(150)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5と流量出力部6とは、以上のようなステップ201〜209の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ210においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ202〜209の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、周波数が異なる2つの成分を含む磁場B6を第1の励磁コイル3aから被測定流体に印加すると同時に、磁場B6との位相差がΔθ7で、周波数が異なる2つの成分を含む磁場B7を第2の励磁コイル3bから被測定流体に印加する第1の励磁状態において、角周波数ω0の成分の起電力E20と角周波数ω2の成分の起電力E22とを求め、磁場B6と磁場B7との位相差を第1の励磁状態から一定値πだけ変化させた第2の励磁状態において、角周波数ω0の成分の起電力E2π0と角周波数ω2の成分の起電力E2π2とを求める。そして、本実施の形態では、磁場B6と磁場B7とが等しくなるように設定しておくと、電極間起電力E2π0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また電極間起電力E2π2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて電極間起電力E20中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて電極間起電力E22中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力En20とEn22とから起電力差EdA23(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力En20から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、角周波数ω0の起電力E20のv×B成分を同じ角周波数ω0の起電力E2π0から抽出した第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、角周波数ω2の起電力E22のv×B成分を同じ角周波数ω2の起電力E2π2から抽出した第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力En20とEn22との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。
また、本実施の形態では、第1の実施の形態のように励磁周波数を切り替える必要がないため、より高速に流量を算出することが可能になる。
なお、本実施の形態では、2種類の周波数成分で励磁する例を示したが、3種類以上の周波数成分で励磁すれば、0補正の精度をさらに向上させることができる。3種類以上の周波数成分で励磁する例としては、変調が使用できる。角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波で励磁すれば、振幅変調の場合は角周波数ω0,ω0±ω1の成分の起電力を得ることができ、位相変調又は周波数変調の場合は角周波数ω0,ω0±ζ・ω1(ζは正の整数)の成分の起電力を得ることができる。この場合も、第1の励磁コイル3aから発生する磁場と第2の励磁コイル3bから発生する磁場の位相差を切り換えながら励磁することにより、スパン補正および0補正が可能となる。この変調を使用する例は第4の実施の形態〜第7の実施の形態で示す。
また、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力E20を0補正およびスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力E22を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力En22とEn20とから起電力差EdA23(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdA23=(En22−En20)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(151)
そして、次式のように正規化起電力En22から起電力差EdA23を引くことによりv×B成分EvBn2を求めるようにすればよい。その他の処理は電極間起電力E20を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn2|=|En22−EdA23| ・・・(152)
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図1に示した電磁流量計と同様であるので、図1の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第2の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第2の抽出方法を用いるものである。まず、最初に第2の抽出方法について説明しておく。
図19は、第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。励磁コイル3aと3bの両方に角周波数(ω0+Δω)と(ω0−Δω)の成分を含む励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される電極間起電力のうち、角周波数(ω0+Δω)の成分の起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVaspRとv×B成分のベクトルVbspRの合成ベクトルVaspR+VbspRに相当する。
VaspR=ra・exp(j・θa)
・(B1c[ω0+Δω]+B2c[ω0+Δω])・C・(ω0+Δω)
・・・(153)
VbspR=rb・exp(j・θb)
・(B1c[ω0+Δω]−B2c[ω0+Δω])・C・V
・・・(154)
また、励磁コイル3aと3bの両方に角周波数(ω0+Δω)と(ω0−Δω)の成分を含む励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される電極間起電力のうち、角周波数(ω0−Δω)の成分の起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVasmRとv×B成分のベクトルVbsmRの合成ベクトルVasmR+VbsmRに相当する。
VasmR=ra・exp(j・θa)
・(B1c[ω0−Δω]+B2c[ω0−Δω])・C・(ω0−Δω)
・・・(155)
VbsmR=rb・exp(j・θb)
・(B1c[ω0−Δω]−B2c[ω0−Δω])・C・V
・・・(156)
角周波数(ω0+Δω)における合成ベクトルと角周波数(ω0−Δω)における合成ベクトルから、角周波数ω0で励磁したときと同等な第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを次式のように近似的に抽出することができる。
Vas0R≒{(VaspR+VbspR)+(VasmR+VbsmR)}/2
・・・(157)
このように角周波数(ω0±Δω)で励磁した場合の合成ベクトルから、近似的に第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを抽出することが可能で、周波数帯を効率的に使用することができる。ここで、式(157)のように第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを近似的に求めることができる理由について説明する。
前記の式(42)〜式(45)の関係式を用いれば、角周波数(ω0+Δω)における∂A/∂t成分のベクトルVaspRと角周波数(ω0−Δω)における∂A/∂t成分のベクトルVasmRとを合成したベクトルは、次式のように変形できる。
VaspR+VasmR
=ra・exp(j・θa)・C
・{(ω0+Δω)・(B1c[ω0+Δω]+B2c[ω0+Δω])
+(ω0−Δω)・(B1c[ω0−Δω]+B2c[ω0−Δω])}
=ra・exp(j・θa)・C
・{ω0・(B1c[ω0+Δω]+B1c[ω0−Δω])
+ω0・(B2c[ω0+Δω]+B2c[ω0−Δω])
+Δω・(B1c[ω0+Δω]−B1c[ω0−Δω])
+Δω・(B2c[ω0+Δω]−B2c[ω0−Δω])}
=ra・exp(j・θa)・C
・{2・ω0・B1c[ω0]+2・ω0・B2c[ω0]
+Δω・(−2・B1c・Δω・ec)+Δω・(−2・B2c・Δω・ec)} =2・ra・exp(j・θa)・C
・{ω0・(B1c[ω0]+B2c[ω0])
−(Δω・Δω)・(B1c+B2c)・ec} ・・・(158)
また、同じく式(42)〜式(45)の関係式を用いれば、角周波数(ω0+Δω)におけるv×B成分のベクトルVbspRと角周波数(ω0−Δω)におけるv×B成分のベクトルVbsmRとを合成したベクトルは、次式のように変形できる。
VbspR+VbsmR
=rb・exp(j・θb)・C・V
・(B1c[ω0+Δω]−B2c[ω0+Δω]
+B1c[ω0−Δω]−B2c[ω0−Δω])
=rb・exp(j・θb)・C・V
・{(B1c[ω0+Δω]+B1c[ω0−Δω])
−(B2c[ω0+Δω]+B2c[ω0−Δω])}
=2・rb・exp(j・θb)・C・V・(B1c[ω0]−B2c[ω0])
・・・(159)
角周波数(ω0+Δω)における∂A/∂t成分とv×B成分の合成ベクトルと、角周波数(ω0−Δω)における∂A/∂t成分とv×B成分の合成ベクトルとを合成したベクトルは、次式で表される。
VaspR+VasmR+VbspR+VbsmR
=2・ra・exp(j・θa)・C・ω0・(B1c[ω0]+B2c[ω0])
−2・ra・exp(j・θa)・C・(Δω・Δω)・(B1c+B2c)・ec}
+2・rb・exp(j・θb)・C・V・(B1c[ω0]−B2c[ω0])
・・・(160)
式(160)の右辺第1項に対して右辺第2項及び第3項は無視することができ、式(33)を用いれば次式のように近似することができる。
VaspR+VasmR+VbspR+VbsmR
≒2・ra・exp(j・θa)・C・ω0・(B1c[ω0]+B2c[ω0])
=2・Vas0R ・・・(161)
こうして、式(161)より、前記の式(157)を導出することができる。
本実施の形態において、第1の励磁コイル3aから発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B8と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B9は、以下のように与えられるものとする。
B8=b8・cos(ωp・t−θ8)+b8・cos(ωm・t−θ8)
・・・(162)
B9=b9・cos(ωp・t−θ9)+b9・cos(ωm・t−θ9)
・・・(163)
式(162)、式(163)において、ωp,ωmは異なる角周波数、b8は磁束密度B8の角周波数ωpの成分の振幅および角周波数ωmの成分の振幅、b9は磁束密度B9の角周波数ωpの成分の振幅および角周波数ωmの成分の振幅、θ8は磁束密度B8の角周波数ωpの成分とωp・tとの位相差(位相遅れ)および角周波数ωmの成分とωm・tとの位相差、θ9は磁束密度B9の角周波数ωpの成分とωp・tとの位相差および角周波数ωmの成分とωm・tとの位相差である。以下、磁束密度B8を磁場B8とし、磁束密度B9を磁場B9とする。
それぞれの角周波数における磁場の損失を考慮して、磁場B8,B9の角周波数ωpの成分の振幅b8,b9をそれぞれb8[ωp],b9[ωp]と関数表記に変更し、同様に角周波数ωpの成分の位相差θ8,θ9をそれぞれθ8[ωp],θ9[ωp]と変更する。さらに、磁場B8,B9の角周波数ωmの成分の振幅b8,b9をそれぞれb8[ωm],b9[ωm]と関数表記に変更し、同様に角周波数ωmの成分の位相差θ8,θ9をそれぞれθ8[ωm],θ9[ωm]と変更する。これにより、式(162)、式(163)は式(164)、式(165)に置き換わる。
B8=b8[ωp]・cos(θ8[ωp])・cos(ωp・t)
+b8[ωp]・sin(θ8[ωp])・sin(ωp・t)
+b8[ωm]・cos(θ8[ωm])・cos(ωm・t)
+b8[ωm]・sin(θ8[ωm])・sin(ωm・t) ・・・(164)
B9=b9[ωp]・cos(θ9[ωp])・cos(ωp・t)
+b9[ωp]・sin(θ9[ωp])・sin(ωp・t)
+b9[ωm]・cos(θ9[ωm])・cos(ωm・t)
+b9[ωm]・sin(θ9[ωm])・sin(ωm・t) ・・・(165)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B8と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B9を次式のように微分する。
dB8/dt=ωp・cos(ωp・t)・b8[ωp]・{sin(θ8[ωp])}
+ωp・sin(ωp・t)・b8[ωp]・{−cos(θ8[ωp])}
+ωm・cos(ωm・t)・b8[ωm]・{sin(θ8[ωm])}
+ωm・sin(ωm・t)・b8[ωm]・{−cos(θ8[ωm])}
・・・(166)
dB9/dt=ωp・cos(ωp・t)・b9[ωp]・{sin(θ9[ωp])}
+ωp・sin(ωp・t)・b9[ωp]・{−cos(θ9[ωp])}
+ωm・cos(ωm・t)・b9[ωm]・{sin(θ9[ωm])}
+ωm・sin(ωm・t)・b9[ωm]・{−cos(θ9[ωm])}
・・・(167)
被測定流体の流速が0の場合、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E1と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E2は、図2に示すように互いに逆向きとなる。このとき、電極間起電力E1とE2とを足した全体の電極間起電力Eは、次式に示すように、磁場の時間微分dB8/dtとdB9/dtとの差(−dB8/dt+dB9/dt)にωp,ωmそれぞれの角周波数成分における比例係数rkをかけ、位相差θ8,θ9をそれぞれθ8+θ00,θ9+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E=rk・ωp・cos(ωp・t)
・{−b8[ωp]・sin(θ8[ωp]+θ00)
+b9[ωp]・sin(θ9[ωp]+θ00)}
+rk・ωp・sin(ωp・t)
・{b8[ωp]・cos(θ8[ωp]+θ00)
−b9[ωp]・cos(θ9[ωp]+θ00)}
+rk・ωm・cos(ωm・t)
・{−b8[ωm]・sin(θ8[ωm]+θ00)
+b9[ωm]・sin(θ9[ωm]+θ00)}
+rk・ωm・sin(ωm・t)
・{b8[ωm]・cos(θ8[ωm]+θ00)
−b9[ωm]・cos(θ9[ωm]+θ00)} ・・・(168)
被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する電極間起電力Ev2は、図3に示すように同じ向きとなる。このとき、電極間起電力Ev1とEv2とを足した全体の電極間起電力Evは、次式に示すように、磁場B8と磁場B9との和にωp,ωmそれぞれの周波数成分における比例係数rkvをかけ、位相差θ8,θ9をそれぞれθ8+θ01,θ9+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev=rkv・cos(ωp・t)
・{b8[ωp]・cos(θ8[ωp]+θ01)
+b9[ωp]・cos(θ9[ωp]+θ01)}
+rkv・sin(ωp・t)
・{b8[ωp]・sin(θ8[ωp]+θ01)
+b9[ωp]・sin(θ9[ωp]+θ01)}
+rkv・cos(ωm・t)
・{b8[ωm]・cos(θ8[ωm]+θ01)
+b9[ωm]・cos(θ9[ωm]+θ01)}
+rkv・sin(ωm・t)
・{b8[ωm]・sin(θ8[ωm]+θ01)
+b9[ωm]・sin(θ9[ωm]+θ01)} ・・・(169)
図2、図3で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ωpの成分の起電力E3pcは、式(168)の第1項および第2項と式(169)の第1項および第2項と式(17)とから次式で表される。
E3pc=rk・ωp・b8[ωp]・exp{j・(π/2+θ8[ωp]+θ00)}
+γ・rk・V・b8[ωp]・exp{j・(θ8[ωp]+θ01)}
+rk・ωp・b9[ωp]
・exp{j・(−π/2+θ9[ωp]+θ00)}
+γ・rk・V・b9[ωp]・exp{j・(θ9[ωp]+θ01)}
・・・(170)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ωmの成分の起電力E3mcは、式(168)の第3項および第4項と式(169)の第3項および第4項と式(17)とから次式で表される。
E3mc=rk・ωm・b8[ωm]・exp{j・(π/2+θ8[ωm]+θ00)}
+γ・rk・V・b8[ωm]・exp{j・(θ8[ωm]+θ01)}
+rk・ωm・b9[ωm]
・exp{j・(−π/2+θ9[ωm]+θ00)}
+γ・rk・V・b9[ωm]・exp{j・(θ9[ωm]+θ01)}
・・・(171)
ここで、ωp=ω0+Δω、ωm=ω0−Δωと定義し、さらに磁場B8の角周波数ω0の成分の位相遅れθ8[ω0]と磁場B9の角周波数ω0の成分の位相遅れθ9[ω0]との関係がθ9[ω0]=θ8[ω0]+Δθ9[ω0]で、かつ虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係がθ01=θ00+Δθ01である状態を第1の励磁状態とし、この第1の励磁状態における電極間起電力のうち角周波数ωpの成分の起電力E3pcをE3p0とすると、電極間起電力E3p0は次式のようになる。
E3p0=rk・exp(j・θ00))
・[(ω0+Δω)・exp(j・π/2)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
−b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
+b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])}]
・・・(172)
また、第1の励磁状態における電極間起電力のうち角周波数ωmの成分の起電力E3mcをE3m0とすると、電極間起電力E3m0は次式のようになる。但し、式(172)、式(173)ではθ9[ω0]=θ8[ω0]+Δθ9[ω0]は適用せず、後の式で適用する。
E3m0=rk・exp(j・θ00)
・[(ω0−Δω)・exp(j・π/2)
・{b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
−b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
+b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}]
・・・(173)
また、同じくωp=ω0+Δω、ωm=ω0−Δωと定義し、磁場B9の角周波数ω0の成分の位相遅れθ9[ω0]がπ+θ9[ω0]に変化し、かつθ01=θ00+Δθ01である状態を第2の励磁状態とし、この第2の励磁状態における電極間起電力のうち角周波数ωpの成分の起電力E3pcをE3πp0とすると、電極間起電力E3πp0は次式のようになる。
E3πp0=rk・exp(j・θ00))
・[(ω0+Δω)・exp(j・π/2)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
+b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
−b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])}]
・・・(174)
また、第2の励磁状態における電極間起電力のうち角周波数ωmの成分の起電力E3mcをE3πm0とすると、電極間起電力E3πm0は次式のようになる。但し、式(174)、式(175)ではθ9[ω0]=θ8[ω0]+Δθ9[ω0]は適用せず、後の式で適用する。
E3πm0=rk・exp(j・θ00)
・[(ω0−Δω)・exp(j・π/2)
・{b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
+b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
−b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}]
・・・(175)
電極間起電力E3p0とE3m0との和をE3s0とすれば、起電力和E3s0は次式で表される。
E3s0=E3p0+E3m0
=rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
−b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])
+b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
−b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}
+Δω・exp(j・π/2)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
−b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])
−b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
+b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
+b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])
+b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
+b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}]
・・・(176)
また、電極間起電力E3πp0とE3πm0との和をE3πs0とすれば、電極間起電力E3πs0は次式で表される。
E3πs0=E3πp0+E3πm0
=rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
+b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])
+b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
+b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}
+Δω・exp(j・π/2)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
+b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])
−b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
−b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
−b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])
+b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])
−b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}]
・・・(177)
ここで、通常ω0>Δωが成り立つことから式(178)〜式(181)の条件式が成り立つ。
2・b8[ω0]・exp(j・θ8[ω0])
≒b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
+b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω]) ・・・(178)
2・b9[ω0]・exp(j・θ9[ω0])
≒b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])
+b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω]) ・・・(179)
|ω0・exp(j・π/2)・{2・b8[ω0]・exp(j・θ8[ω0])}|
≫|±Δω・exp(j・π/2)
・{b8[ω0+Δω]・exp(j・θ8[ω0+Δω])
−b8[ω0−Δω]・exp(j・θ8[ω0−Δω])}| ・・・(180)
|ω0・exp(j・π/2)・{2・b9[ω0]・exp(j・θ9[ω0])}|
≫|±Δω・exp(j・π/2)
・{b9[ω0+Δω]・exp(j・θ9[ω0+Δω])
−b9[ω0−Δω]・exp(j・θ9[ω0−Δω])}| ・・・(181)
式(178)〜式(181)の条件を式(176)に適用して起電力和E3s0を近似したものをE3s0aとおくと、起電力和E3s0aは次式で表される。
E3s0a≒E3s0 ・・・(182)
E3s0a=rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{2・b8[ω0]・exp(j・θ8[ω0])
−2・b9[ω0]・exp(j・θ9[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{2・b8[ω0]・exp(j・θ8[ω0])
+2・b9[ω0]・exp(j・θ9[ω0])} ・・・(183)
同様に式(178)〜式(181)の条件を式(177)に適用して起電力和E3πs0を近似したものをE3πs0aとおくと、起電力和E3πs0aは次式で表される。
E3πs0a≒E3πs0 ・・・(184)
E3πs0a=rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{2・b8[ω0]・exp(j・θ8[ω0])
+2・b9[ω0]・exp(j・θ9[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{2・b8[ω0]・exp(j・θ8[ω0])
−2・b9[ω0]・exp(j・θ9[ω0])}]
・・・(185)
θ9[ω0]=θ8[ω0]+Δθ9[ω0]を起電力和E3s0aに代入したものをE3s0bとすれば、起電力和E3s0bは次式で表される。
E3s0b=2・rk・exp{j・(θ8[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b8[ω0]−b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b8[ω0]+b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}]
・・・(186)
また、θ9[ω0]=θ8[ω0]+Δθ9[ω0]を起電力和E3πs0aに代入したものをE3πs0bとすれば、起電力和E3πs0bは次式で表される。
E3πs0b=2・rk・exp{j・(θ8[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b8[ω0]+b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b8[ω0]−b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}]
・・・(187)
ここで、初期状態(校正時の状態)の磁場B8、B9おいて、b8[ω0]=b9[ω0]、Δθ9[ω0]=0と設定しておくと、その後のずれを考慮してもb8[ω0]≒b9[ω0]、Δθ9[ω0]≒0であり、次の条件式が成り立つ。
|b8[ω0]+b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])|
≫|b8[ω0]−b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])| ・・・(188)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(188)の条件を考慮すると、式(187)において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)
・{b8[ω0]+b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)
・b8[ω0] −b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])| ・・・(189)
式(189)の条件を用いて、式(187)の起電力和E3πs0bを近似した起電力和EdA31は次式で表される。この起電力和EdA31は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA31≒E3πs0b≒E3πs0 ・・・(190)
EdA31=2・rk・exp{j・(θ8[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b8[ω0]+b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}
・・・(191)
起電力和EdA31は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この起電力和EdA31を用いて起電力和E3s0b(合成ベクトルVas0+Vbs0)中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。起電力和E3s0bを起電力和EdA31で正規化し、ω0倍した結果をEn30とすれば、正規化起電力和En30は次式で表される。
En30=(E3s0b/EdA31)・ω0
=2・rk・exp{j・(θ8[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b8[ω0]−b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b8[ω0]+b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}]
/[2・rk・exp{j・(θ8[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b8[ω0]+b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}]・ω0
=ω0・{b8[ω0]−b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}
/{b8[ω0]+b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(192)
式(52)を用いると、式(192)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b8[ω0]−b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}/{b8[ω0]+b9[ω0]・exp(j・Δθ9[ω0])}を、角周波数ω0に関係しない値{b8−b9・exp(j・Δθ9)}/{b8+b9・exp(j・Δθ9)}で表すことができる。したがって、式(192)を次式のように置き換えることができる。
En30=ω0・{b8−b9・exp(j・Δθ9)}
/{b8+b9・exp(j・Δθ9)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(193)
式(193)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を正規化した項となる。なお、起電力和E3s0bを起電力和EdA31で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。式(193)によれば、流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(193)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(193)の右辺第1項を除去する方法について説明する。式(164)、式(165)において励磁角周波数ωp,ωmの代わりに、ωc,ωdを用いると磁場B8、B9は次式で表される。
B8=b8[ωc]・cos(θ8[ωc])・cos(ωc・t)
+b8[ωc]・sin(θ8[ωc])・sin(ωc・t)
+b8[ωd]・cos(θ8[ωd])・cos(ωd・t)
+b8[ωd]・sin(θ8[ωd])・sin(ωd・t) ・・・(194)
B9=b9[ωc]・cos(θ9[ωc])・cos(ωc・t)
+b9[ωc]・sin(θ9[ωc])・sin(ωc・t)
+b9[ωd]・cos(θ9[ωd])・cos(ωd・t)
+b9[ωd]・sin(θ9[ωd])・sin(ωd・t) ・・・(195)
ここで、角周波数ωc,ωdは、ωc=ω2+Δω、ωd=ω2−Δωの関係になるように設定しておく。角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。角周波数ω2においてスパン補正の対象となる起電力和E3s2は、式(172)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E3p2と、式(173)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E3m2との和E3p2+E3m2で表される。また、第2の∂A/∂t成分の基となる起電力和E3πs2は、式(174)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E3πp2と、式(175)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E3πm2との和E3πp2+E3πm2で表される。さらに、第2の∂A/∂t成分となる起電力和EdA32は、式(191)において角周波数ω0をω2で置き換えたものとなる。
起電力和E3s2を起電力和EdA32で正規化し、ω2倍した結果をEn32とすれば、正規化起電力和En32は式(193)より次式で表される。
En32=ω2・{b8−b9・exp(j・Δθ9)}
/{b8+b9・exp(j・Δθ9)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(196)
正規化起電力和En30とEn32との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA33とすれば、差分EdA33は次式で表される。この起電力和の差分EdA33は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdA33=(En30−En32)・ω0/(ω0−ω2)
=[{b8−b9・exp(j・Δθ9)}
/{b8+b9・exp(j・Δθ9)}
・ω0+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−{b8−b9・exp(j・Δθ9)}
/{b8+b9・exp(j・Δθ9)}
・ω2−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]
・ω0/(ω0−ω2)
={b8−b9・exp(j・Δθ9)}
/{b8+b9・exp(j・Δθ9)}・ω0 ・・・(197)
差分EdA33は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(193)の右辺第1項と等しくなるので、この差分EdA33を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力和En30から取り出すことができる。式(193)の正規化起電力和En30から式(197)の差分EdA33を引いたときに得られるv×B成分をEvBn3とすると、v×B成分EvBn3は次式で表される。
EvBn3=En30−EdA33
={b8−b9・exp(j・Δθ9)}
/{b8+b9・exp(j・Δθ9)}・ω0
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−{b8−b9・exp(j・Δθ9)}
/{b8+b9・exp(j・Δθ9)}・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(198)
v×B成分EvBn3は角周波数ωに関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBn3も0となることから分かるように、v×B成分EvBn3より、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。式(198)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn3/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn3|/γ ・・・(199)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表3のとおりである。本実施の形態は、表3から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図16の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bと、電源部4と、信号変換部5と、流量出力部6とを有する。
信号変換部5は、第1の励磁状態〜第4の励磁状態の各々において電極2a,2bで検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+Δωの成分と角周波数ω0−Δωの成分との起電力和を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第4の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+Δωの成分と角周波数ω2−Δωの成分との起電力和を第2の∂A/∂t成分として抽出し、第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+Δωの成分と角周波数ω0−Δωの成分との起電力和を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、第3の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+Δωの成分と角周波数ω2−Δωの成分との起電力和を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51と、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52とから構成される。
本実施の形態の電源部4は、角周波数(ω0+Δω)の正弦波成分と角周波数(ω0−Δω)の正弦波成分とを含む第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、第1の励磁電流との位相差がΔθ9で、角周波数(ω0+Δω)の正弦波成分と角周波数(ω0−Δω)の正弦波成分とを含む第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、この第1の励磁状態に対して第1の励磁電流と第2の励磁電流との位相差をΔθ9+πに変更した第2の励磁状態をT2秒継続し、角周波数(ω2+Δω)の正弦波成分と角周波数(ω2−Δω)の正弦波成分とを含む第3の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、第3の励磁電流との位相差がΔθ9で、角周波数(ω2+Δω)の正弦波成分と角周波数(ω2−Δω)の正弦波成分とを含む第4の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第3の励磁状態をT3秒継続し、この第3の励磁状態に対して第3の励磁電流と第4の励磁電流との位相差をΔθ9+πに変更した第4の励磁状態をT4秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2+T3+T4である。
図20は本実施の形態の信号変換部5と流量出力部6の動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5のスパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω0+Δω)の成分と角周波数(ω0−Δω)の成分との起電力和E3s0の振幅r3s0を求めると共に、実軸と起電力和E3s0との位相差φ3s0を図示しない位相検波器により求める(図20ステップ301)。続いて、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω0+Δω)の成分と角周波数(ω0−Δω)の成分との起電力和E3πs0の振幅r3πs0を求めると共に、実軸と起電力和E3πs0との位相差φ3πs0を位相検波器により求める(ステップ302)。
また、スパン補正部51は、第3の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω2+Δω)の成分と角周波数(ω2−Δω)の成分との起電力和E3s2の振幅r3s2を求めると共に、実軸と起電力和E3s2との位相差φ3s2を位相検波器により求める(ステップ303)。さらに、スパン補正部51は、第4の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω2+Δω)の成分と角周波数(ω2−Δω)の成分との起電力和E3πs2の振幅r3πs2を求めると共に、実軸と起電力和E3πs2との位相差φ3πs2を位相検波器により求める(ステップ304)。起電力和E3s0,E3πs0,E3s2,E3πs2は、バンドパスフィルタやコムフィルタによって周波数分離することができる。
次に、スパン補正部51は、起電力和E3πs0を近似した起電力和EdA31の大きさと角度を求める(ステップ305)。このステップ305の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(191)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、起電力和EdA31の大きさ|EdA31|を次式のように算出する。
|EdA31|=r3πs0 ・・・(200)
そして、スパン補正部51は、起電力和EdA31の角度∠EdA31を次式のように算出する。
∠EdA31=φ3πs0 ・・・(201)
これで、ステップ305の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、起電力和E3s0を起電力和EdA31で正規化した正規化起電力和En30の大きさと角度を求める(ステップ306)。このステップ306の処理は、式(193)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力和En30の大きさ|En30|を次式のように算出する。
|En30|=(r3s0/|EdA31|)・ω0 ・・・(202)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力和En30の角度∠En30を次式のように算出する。
∠En30=φ3s0−∠EdA31 ・・・(203)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力和En30の実軸成分En30xと虚軸成分En30yを次式のように算出する。
En30x=|En30|・cos(∠En30) ・・・(204)
En30y=|En30|・sin(∠En30) ・・・(205)
これで、ステップ306の処理が終了する。
次に、スパン補正部51は、起電力和E3πs2を近似した起電力和EdA32の大きさと角度を求める(ステップ307)。このステップ307の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理である。スパン補正部51は、起電力和EdA32の大きさ|EdA32|を次式のように算出する。
|EdA32|=r3πs2 ・・・(206)
そして、スパン補正部51は、起電力和EdA32の角度∠EdA32を次式のように算出する。
∠EdA32=φ3πs2 ・・・(207)
これで、ステップ307の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、起電力和E3s2を起電力和EdA32で正規化した正規化起電力和En32の大きさと角度を求める(ステップ308)。このステップ308の処理は、式(196)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力和En32の大きさ|En32|を次式のように算出する。
|En32|=(r3s2/|EdA32|)・ω2 ・・・(208)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力和En32の角度∠En32を次式のように算出する。
∠En32=φ3s2−∠EdA32 ・・・(209)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力和En32の実軸成分En32xと虚軸成分En32yを次式のように算出する。
En32x=|En32|・cos(∠En32) ・・・(210)
En32y=|En32|・sin(∠En32) ・・・(211)
これで、ステップ308の処理が終了する。
次に、信号変換部5の0点補正部52は、正規化起電力和En30とEn32との差分EdA33の大きさを求める(ステップ309)。このステップ309の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(197)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、差分EdA33の実軸成分EdA33xと虚軸成分EdA33yを次式のように算出する。
EdA33x=(En30x−En32x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(212)
EdA33y=(En30y−En32y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(213)
そして、0点補正部52は、正規化起電力和En30から差分EdA33を取り除き、v×B成分EvBn3の大きさを求める(ステップ310)。このステップ310の処理は、式(198)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、v×B成分EvBn3の大きさ|EvBn3|を次式のように算出する。
|EvBn3|={(En30x−EdA33x)2
+(En30y−EdA33y)21/2 ・・・(214)
流量出力部6は、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ311)。このステップ311の処理は、式(199)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn3|/γ ・・・(215)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5と流量出力部6とは、以上のようなステップ301〜311の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ312においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ304〜311の処理は第4の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第1の励磁状態において角周波数(ω0+Δω)の成分と角周波数(ω0−Δω)の成分との起電力和E3s0を求め、第2の励磁状態において角周波数(ω0+Δω)の成分と角周波数(ω0−Δω)の成分との起電力和E3πs0を求め、第3の励磁状態において角周波数(ω2+Δω)の成分と角周波数(ω2−Δω)の成分との起電力和E3s2を求め、第4の励磁状態において角周波数(ω2+Δω)の成分と角周波数(ω2−Δω)の成分との起電力和E3πs2を求める。そして、本実施の形態では、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B8と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B9とが等しくなるように設定しておくと、起電力和E3πs0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また起電力和E3πs2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて起電力和E3s0中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて起電力和E3s2中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力和En30とEn32とから差分EdA33(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力和En30から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、起電力和E3s0のv×B成分を同じ角周波数の起電力和E3πs0から抽出した第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、起電力和E3s2のv×B成分を同じ角周波数の起電力和E3πs2から抽出した第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力和En30とEn32との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。また、本実施の形態では、周波数を分散させて励磁するので、周波数帯の効率的な使用が可能になる。
なお、本実施の形態の別の例として、変調が使用できる。角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波で励磁すれば、振幅変調の場合は角周波数ω0,ω0±ω1の成分の起電力を得ることができ、位相変調又は周波数変調の場合は角周波数ω0,ω0±ζ・ω1(ζは正の整数)の成分の起電力を得ることができる。この場合も、第1の励磁コイル3aから発生する磁場と第2の励磁コイル3bから発生する磁場の位相差を切り換えながら励磁することにより、スパン補正および0補正が可能となる。この変調を使用する例は第4の実施の形態〜第7の実施の形態で示す。
また、本実施の形態では、起電力和E3s0を0補正およびスパン補正の対象としたが、起電力和E3s2を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力和En32とEn30とから差分EdA33(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdA33=(En32−En30)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(216)
そして、次式のように正規化起電力和En32から差分EdA33を引くことによりv×B成分EvBn3を求めるようにすればよい。その他の処理は起電力和E3s0を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn3|=|En32−EdA33| ・・・(217)
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図1に示した電磁流量計と同様であるので、図1の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第2の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第2の抽出方法を用いるものである。
第1の励磁コイル3aから発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B10と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B11は、以下のように与えられるものとする。
B10=b10・{1+ma・cos(ω1・t)}・cos(ω0・t−θ10) ・・・(218)
B11=b11・{1−ma・cos(ω1・t)}・cos(ω0・t−θ11) ・・・(219)
式(218)、式(219)において、b10、b11はそれぞれ磁束密度B10,B11の振幅、ω0は搬送波の角周波数、ω1は変調波の角周波数、θ10は磁束密度B10とω0・tとの位相差(位相遅れ)、θ11は磁束密度B11とω0・tとの位相差、maは振幅変調指数である。以下、磁束密度B10を磁場B10とし、磁束密度B11を磁場B11とする。式(218)、式(219)は次式のように変形できる。
B10=b10・{1+ma・cos(ω1・t)}・cos(ω0・t−θ10)
=b10・cos(θ10)・cos(ω0・t)
+b10・sin(θ10)・sin(ω0・t)
+(1/2)・ma・b10・cos(θ10)・cos{(ω0+ω1)・t}
+(1/2)・ma・b10・sin(θ10)・sin{(ω0+ω1)・t}
+(1/2)・ma・b10・cos(θ10)・cos{(ω0−ω1)・t}
+(1/2)・ma・b10・sin(θ10)・sin{(ω0−ω1)・t}
・・・(220)
B11=b11・{1−ma・cos(ω1・t)}・cos(ω0・t−θ11)
=b11・cos(θ11)・cos(ω0・t)
+b11・sin(θ11)・sin(ω0・t)
+(1/2)・ma・b11・{−cos(θ11)}
・cos{(ω0+ω1)・t}
+(1/2)・ma・b11・{−sin(θ11)}
・sin{(ω0+ω1)・t}
+(1/2)・ma・b11・{−cos(θ11)}
・cos{(ω0−ω1)・t}
+(1/2)・ma・b11・{−sin(θ11)}
・sin{(ω0−ω1)・t} ・・・(221)
それぞれの角周波数における磁場の損失を考慮して、磁場B10,B11の角周波数ω0の成分の振幅b10,b11をそれぞれb10[ω0],b11[ω0]と関数表記に変更し、同様に角周波数ω0の成分の位相差θ10,θ11をそれぞれθ10[ω0],θ11[ω0]と変更する。また、磁場B10,B11の角周波数(ω0+ω1)の成分の振幅b10,b11をそれぞれb10[ω0+ω1],b11[ω0+ω1]と関数表記に変更し、同様に角周波数(ω0+ω1)の成分の位相差θ10,θ11をそれぞれθ10[ω0+ω1],θ11[ω0+ω1]と変更する。さらに、磁場B10,B11の角周波数(ω0−ω1)の成分の振幅b10,b11をそれぞれb10[ω0−ω1],b11[ω0−ω1]と関数表記に変更し、同様に角周波数(ω0−ω1)の成分の位相差θ10,θ11をそれぞれθ10[ω0−ω1],θ11[ω0−ω1]と変更する。これにより、式(220)、式(221)は式(222)、式(223)に置き換わる。
B10=b10・{1+ma・cos(ω1・t)}・cos(ω0・t−θ10)
=b10[ω0]・cos(θ10[ω0])・cos(ω0・t)
+b10[ω0]・sin(θ10[ω0])・sin(ω0・t)
+(1/2)・ma・b10[ω0+ω1]・cos(θ10[ω0+ω1])
・cos{(ω0+ω1)・t}
+(1/2)・ma・b10[ω0+ω1]・sin(θ10[ω0+ω1])
・sin{(ω0+ω1)・t}
+(1/2)・ma・b10[ω0−ω1]・cos(θ10[ω0−ω1])
・cos{(ω0−ω1)・t}
+(1/2)・ma・b10[ω0−ω1]・sin(θ10[ω0−ω1])
・sin{(ω0−ω1)・t} ・・・(222)
B11=b11・{1−ma・cos(ω1・t)}・cos(ω0・t−θ11)
=b11[ω0]・cos(θ11[ω0])・cos(ω0・t)
+b11[ω0]・sin(θ11[ω0])・sin(ω0・t)
+(1/2)・ma・b11[ω0+ω1]・{−cos(θ11[ω0+ω1])}
・cos{(ω0+ω1)・t}
+(1/2)・ma・b11[ω0+ω1]・{−sin(θ11[ω0+ω1])}
・sin{(ω0+ω1)・t}
+(1/2)・ma・b11[ω0−ω1]・{−cos(θ11[ω0−ω1])}
・cos{(ω0−ω1)・t}
+(1/2)・ma・b11[ω0−ω1]・{−sin(θ11[ω0−ω1])}
・sin{(ω0−ω1)・t} ・・・(223)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B10と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B11を次式のように微分する。
dB10/dt=ω0・cos(ω0・t)
・b10[ω0]・{sin(θ10[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)
・b10[ω0]・{−cos(θ10[ω0])}
+(1/2)・ma・(ω0+ω1)・cos{(ω0+ω1)・t}
・b10[ω0+ω1]・{sin(θ10[ω0+ω1])}
+(1/2)・ma・(ω0+ω1)・sin{(ω0+ω1)・t
・b10[ω0+ω1]・{−cos(θ10[ω0+ω1])}
+(1/2)・ma・(ω0−ω1)・cos{(ω0−ω1)・t}
・b10[ω0−ω1]・{sin(θ10[ω0−ω1])}
+(1/2)・ma・(ω0−ω1)・sin{(ω0−ω1)・t}
・b10[ω0−ω1]・{−cos(θ10[ω0−ω1])}
・・・(224)
dB11/dt=ω0・cos(ω0・t)
・b11[ω0]・{sin(θ11[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)
・b11[ω0]・{−cos(θ11[ω0])}
+(1/2)・ma・(ω0+ω1)・cos{(ω0+ω1)・t}
・b11[ω0+ω1]・{−sin(θ11[ω0+ω1])}
+(1/2)・ma・(ω0+ω1)・sin{(ω0+ω1)・t}
・b11[ω0+ω1]・{cos(θ11[ω0+ω1])}
+(1/2)・ma・(ω0−ω1)・cos{(ω0−ω1)・t}
・b11[ω0−ω1]・{−sin(θ11[ω0−ω1])}
+(1/2)・ma・(ω0−ω1)・sin{(ω0−ω1)・t}
・b11[ω0−ω1]・{cos(θ11[ω0−ω1])}
・・・(225)
被測定流体の流速が0の場合、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E1と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E2は、図2に示すように互いに逆向きとなる。このとき、電極間起電力E1とE2とを足した全体の電極間起電力Eは、次式に示すように、磁場の時間微分dB10/dtとdB11/dtとの差(−dB10/dt+dB11/dt)にω0,(ω0−ω1),(ω0+ω1)それぞれの角周波数成分における比例係数rkをかけ、位相差θ10,θ11をそれぞれθ10+θ00,θ11+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E=rk・ω0・cos(ω0・t)
・{−b10[ω0]・sin(θ10[ω0]+θ00)
+b11[ω0]・sin(θ11[ω0]+θ00)}
+rk・ω0・sin(ω0・t)
・{b10[ω0]・cos(θ10[ω0]+θ00)
−b11[ω0]・cos(θ11[ω0]+θ00)}
+(1/2)・ma・rk・(ω0+ω1)・cos{(ω0+ω1)・t}
・{−b10[ω0+ω1]・sin(θ10[ω0+ω1]+θ00)
−b11[ω0+ω1]・sin(θ11[ω0+ω1]+θ00)}
+(1/2)・ma・rk・(ω0+ω1)・sin{(ω0+ω1)・t}
・{b10[ω0+ω1]・cos(θ10[ω0+ω1]+θ00)
+b11[ω0+ω1]・cos(θ11[ω0+ω1]+θ00)}
+(1/2)・ma・rk・(ω0−ω1)・cos{(ω0−ω1)・t}
・{−b10[ω0−ω1]・sin(θ10[ω0−ω1]+θ00)
−b11[ω0−ω1]・sin(θ11[ω0−ω1]+θ00)}
+(1/2)・ma・rk・(ω0−ω1)・sin{(ω0−ω1)・t}
・{b10[ω0−ω1]・cos(θ10[ω0−ω1]+θ00)
+b11[ω0−ω1]・cos(θ11[ω0−ω1]+θ00)}
・・・(226)
被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する電極間起電力Ev2は、図3に示すように同じ向きとなる。このとき、電極間起電力Ev1とEv2とを足した全体の電極間起電力Evは、次式に示すように、磁場B10と磁場B11との和にω0,(ω0−ω1),(ω0+ω1)それぞれの角周波数成分における比例係数rkvをかけ、位相差θ10,θ11をそれぞれθ10+θ01,θ11+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev=rkv・cos(ω0・t)
・{b10[ω0]・cos(θ10[ω0]+θ01)
+b11[ω0]・cos(θ11[ω0]+θ01)}
+ rkv・sin(ω0・t)
・{b10[ω0]・sin(θ10[ω0]+θ01)
+b11[ω0]・sin(θ11[ω0]+θ01)}
+(1/2)・ma・rkv・cos{(ω0+ω1)・t}
・{b10[ω0+ω1]・cos(θ10[ω0+ω1]+θ01)
−b11[ω0+ω1]・cos(θ11[ω0+ω1]+θ01)}
+(1/2)・ma・rkv・sin{(ω0+ω1)・t}
・{b10[ω0+ω1]・sin(θ10[ω0+ω1]+θ01)
−b11[ω0+ω1]・sin(θ11[ω0+ω1]+θ01)}
+(1/2)・ma・rkv・cos{(ω0−ω1)・t}
・{b10[ω0−ω1]・cos(θ10[ω0−ω1]+θ01)
−b11[ω0−ω1]・cos(θ11[ω0−ω1]+θ01)}
+(1/2)・ma・rkv・sin{(ω0−ω1)・t}
・{b10[ω0−ω1]・sin(θ10[ω0−ω1]+θ01)
−b11[ω0−ω1]・sin(θ11[ω0−ω1]+θ01)}
・・・(227)
図2、図3で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分の起電力E40cは、式(226)の第1項および第2項と式(227)の第1項および第2項と式(17)とから次式で表される。
E40c=rk・ω0・b10[ω0]
・exp{j・(π/2+θ10[ω0]+θ00)}
+γ・rk・V・b10[ω0]・exp{j・(θ10[ω0]+θ01)}
+rk・ω0・b11[ω0]
・exp{j・(−π/2+θ11[ω0]+θ00)}
+γ・rk・V・b11[ω0]・exp{j・(θ11[ω0]+θ01)}
・・・(228)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数(ω0+ω1)の成分の起電力E4pcは、式(226)の第3項および第4項と式(227)の第3項および第4項と式(17)とから次式で表される。
E4pc=(1/2)・ma・rk・(ω0+ω1)・b10[ω0+ω1]
・exp{j・(π/2+θ10[ω0+ω1]+θ00)}
+(1/2)・ma・γ・rk・V・b10[ω0+ω1]
・exp{j・(θ10[ω0+ω1]+θ01)}
+(1/2)・ma・rk・(ω0+ω1)・b11[ω0+ω1]
・exp{j・(π/2+θ11[ω0+ω1]+θ00)}
+(1/2)・ma・γ・rk・V・b11[ω0+ω1]
・exp{j・(π+θ11[ω0+ω1]+θ01)} ・・・(229)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数(ω0−ω1)の成分の起電力E4mcは、式(226)の第5項および第6項と式(227)の第5項および第6項と式(17)とから次式で表される。
E4mc=(1/2)・ma・rk・(ω0−ω1)・b10[ω0−ω1]
・exp{j・(π/2+θ10[ω0−ω1]+θ00)}
+(1/2)・ma・γ・rk・V・b10[ω0−ω1]
・exp{j・(θ10[ω0−ω1]+θ01)}
+(1/2)・ma・rk・(ω0−ω1)・b11[ω0−ω1]
・exp{j・(π/2+θ11[ω0−ω1]+θ00)}
+(1/2)・ma・γ・rk・V・b10[ω0−ω1]
・exp{j・(π+θ11[ω0−ω1]+θ01)} ・・・(230)
ここで、磁場B10の角周波数ω0の成分の位相遅れθ10[ω0]と磁場B11の角周波数ω0の成分の位相遅れθ11[ω0]との関係がθ11[ω0]=θ10[ω0]+Δθ11[ω0]で、かつ虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係がθ01=θ00+Δθ01であるとき、式(228)にθ01=θ00+Δθ01及びθ11[ω0]=θ10[ω0]+Δθ11[ω0]を代入したときの電極間起電力E40は次式で表される。
E40=rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}]
・・・(231)
式(229)にθ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E4p0は次式で表される。
E4p0=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[(ω0+ω1)・exp(j・π/2)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
+b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
−b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])}]
・・・(232)
式(230)にθ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E4m0は次式で表される。
E4m0=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[(ω0−ω1)・exp(j・π/2)
・{b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
+b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
−b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}]
・・・(233)
ここで、電極間起電力E4p0とE4m0との和をE4s0とすると、起電力和E4s0は次式で表される。
E4s0=E4p0+E4m0
=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[(ω0+ω1)・exp(j・π/2)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
+b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
−b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])}]
+(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[(ω0−ω1)・exp(j・π/2)
・{b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
+b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
−b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}]
=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
+b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])
+b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
+b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}
+ω1・exp(j・π/2)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
+b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])
−b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
−b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
−b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])
+b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
−b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}]
・・・(234)
ここで、通常ω0>ω1が成り立つことから式(235)〜式(238)の条件式が成り立つ。
2・b10[ω0]・exp(j・θ10[ω0])
≒b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
+b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1]) ・・・(235)
2・b11[ω0]・exp(j・θ11[ω0])
≒b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])
+b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1]) ・・・(236)
|ω0・exp(j・π/2)・{2・b10[ω0]
・exp(j・θ10[ω0])}|
≫|ω1・exp(j・π/2)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
−b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])}|
・・・(237)
|ω0・exp(j・π/2)・{2・b11[ω0]
・exp(j・θ11[ω0])}|
≫|ω1・exp(j・π/2)
・{b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])
−b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}|
・・・(238)
式(235)〜式(238)の条件を式(234)に適用して起電力和E4s0を近似したものをE4s0aとおくと、起電力和E4s0aは式(239)、式(240)で表される。
E4s0a≒E4s0 ・・・(239)
E4s0a=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{2・b10[ω0]・exp(j・θ10[ω0])
+2・b11[ω0]・exp(j・θ11[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{2・b10[ω0]・exp(j・θ10[ω0])
−2・b11[ω0]・exp(j・θ11[ω0])} ・・(240)
式(231)と同じくθ11[ω0]=θ10[ω0]+Δθ11[ω0]を式(240)の起電力和E4s0aに代入したものをE4s0bとすれば、起電力和E4s0bは次式で表される。
E4s0b=ma・rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}]
・・・(241)
さらに、初期状態(校正時の状態)の磁場B10、B11おいて、b10[ω0]=b11[ω0]、Δθ11[ω]=0と設定しておくと、その後のずれを考慮してもb10[ω0]≒b11[ω0]、Δθ11[ω]≒0であり、次の条件式が成り立つ。
|b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])|
≫|b10[ω0] −b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])|
・・・(242)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(242)の条件を考慮すると、式(241)において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)・b10[ω0]
−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])| ・・・(243)
式(243)の条件を用いて、式(241)の起電力和E4s0bを近似したものを(1/ma)倍した起電力和EdA41は次式で表される。この起電力和EdA41は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA41≒E4s0b・(1/ma)≒E4s0・(1/ma) ・・・(244)
EdA41=rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
・・・(245)
起電力和EdA41は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この起電力和EdA41を用いて電極間起電力E40(合成ベクトルVas0+Vbs0)中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。電極間起電力E40を起電力和EdA41で正規化し、ω0倍した結果をEn40とすれば、正規化起電力En40は次式で表される。
En40=(E40/EdA41)・ω0
=rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}]
/[rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}・ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}]・ω0
=ω0・{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
/{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(246)
式(52)を用いると、式(246)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}/{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}を、角周波数ω0に関係しない値{b10−b11・exp(j・Δθ11)}/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}で表すことができる。したがって、式(246)を次式のように置き換えることができる。
En40=ω0・{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(247)
式(247)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を正規化した項となる。なお、電極間起電力E40を起電力和EdA41で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(247)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(247)の右辺第1項を除去する方法について説明する。式(218)、式(228)において搬送波の角周波数をω0の代わりにω2とすると、磁場B10,B11は次式で表される。
B10=b10・{1+ma・cos(ω1・t)}・cos(ω2・t−θ10) ・・・(248)
B11=b11・{1−ma・cos(ω1・t)}・cos(ω2・t−θ11) ・・・(249)
角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。角周波数ω2においてスパン補正の対象となる電極間起電力E42は、式(231)において角周波数ω0をω2で置き換えたものとなる。第2の∂A/∂t成分の基となる起電力和E4s2は、式(232)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E4p2と、式(233)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E4m2との和E4p2+E4m2で表される。第2の∂A/∂t成分となる起電力和EdA42は、式(245)において角周波数ω0をω2で置き換えたものとなる。
電極間起電力E42を起電力和EdA42で正規化し、ω2倍した結果をEn42とすれば、正規化起電力En42は式(247)より次式で表される。
En42=ω2・{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(250)
正規化起電力En40とEn42との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA43とすれば、起電力差EdA43は次式で表される。この起電力差EdA43は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdA43=(En40−En42)・ω0/(ω0−ω2)
=[{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}
・ω0+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}
・ω2−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]
・ω0/(ω0−ω2)
={b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}・ω0 ・・(251)
起電力差EdA43は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(247)の右辺第1項と等しくなるので、この起電力差EdA43を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力En40から取り出すことができる。式(247)の正規化起電力En40から式(251)の起電力差EdA43を引いたときに得られるv×B成分をEvBn4とすると、v×B成分EvBn4は次式で表される。
EvBn4=En40−EdA43
={b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}・ω0
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(252)
v×B成分EvBn4は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBn4も0となることから分かるように、v×B成分EvBn4より、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。式(252)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn4/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn4|/γ ・・・(253)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表4のとおりである。本実施の形態は、表4から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図16の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bと、電源部4と、信号変換部5と、流量出力部6とを有する。
信号変換部5は、第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において電極2a,2bで検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ω1の成分と角周波数ω0−ω1の成分との起電力和を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ω1の成分と角周波数ω2−ω1の成分との起電力和を第2の∂A/∂t成分として抽出し、第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51と、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52とから構成される。
本実施の形態の電源部4は、角周波数ω0の正弦波搬送波を角周波数ω1の正弦波変調波によって振幅変調した第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、前記角周波数ω0の正弦波搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、角周波数ω2の正弦波搬送波を角周波数ω1の正弦波変調波によって振幅変調した第3の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、前記角周波数ω2の正弦波搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第4の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第2の励磁状態をT2秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2である。振幅変調指数maは任意の値とする。
図21は本実施の形態の信号変換部5と流量出力部6の動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5のスパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E40の振幅r40を求めると共に、実軸と電極間起電力E40との位相差φ40を図示しない位相検波器により求める(図21ステップ401)。また、スパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω0+ω1)の成分と角周波数(ω0−ω1)成分との和E4s0の振幅r4s0を求めると共に、実軸と起電力和E4s0との位相差φ4s0を位相検波器により求める(ステップ402)。
続いて、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E42の振幅r42を求めると共に、実軸と電極間起電力E42との位相差φ42を位相検波器により求める(ステップ403)。また、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω2+ω1)の成分と角周波数(ω2−ω1)成分との和E4s2の振幅r4s2を求めると共に、実軸と起電力和E4s2との位相差φ4s2を位相検波器により求める(ステップ404)。電極間起電力E40,E42と電極間起電力の角周波数(ω0+ω1),(ω0−ω1),(ω2+ω1),(ω2−ω1)の成分は、バンドパスフィルタやコムフィルタによって周波数分離することができる。
次に、スパン補正部51は、起電力和E4s0を近似した起電力和EdA41の大きさと角度を求める(ステップ405)。このステップ405の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(245)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、起電力和EdA41の大きさ|EdA41|を次式のように算出する。
|EdA41|=r4s0 ・・・(254)
そして、スパン補正部51は、起電力和EdA41の角度∠EdA41を次式のように算出する。
∠EdA41=φ4s0 ・・・(255)
これで、ステップ405の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、電極間起電力E40を起電力和EdA41で正規化した正規化起電力En40の大きさと角度を求める(ステップ406)。このステップ406の処理は、式(247)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力En40の大きさ|En40|を次式のように算出する。
|En40|=(r40/|EdA41|)・ω0 ・・・(256)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力En40の角度∠En40を次式のように算出する。
∠En40=φ40−∠EdA41 ・・・(257)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力En40の実軸成分En40xと虚軸成分En40yを次式のように算出する。
En40x=|En40|・cos(∠En40) ・・・(258)
En40y=|En40|・sin(∠En40) ・・・(259)
これで、ステップ406の処理が終了する。
次に、スパン補正部51は、起電力和E4s2を近似した起電力和EdA42の大きさと角度を求める(ステップ407)。このステップ407の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理である。スパン補正部51は、起電力和EdA42の大きさ|EdA42|を次式のように算出する。
|EdA42|=r4s2 ・・・(260)
そして、スパン補正部51は、起電力和EdA42の角度∠EdA42を次式のように算出する。
∠EdA42=φ4s2 ・・・(261)
これで、ステップ407の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、電極間起電力E42を起電力和EdA42で正規化した正規化起電力En42の大きさと角度を求める(ステップ408)。このステップ408の処理は、式(250)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力En42の大きさ|En42|を次式のように算出する。
|En42|=(r42/|EdA42|)・ω2 ・・・(262)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力En42の角度∠En42を次式のように算出する。
∠En42=φ42−∠EdA42 ・・・(263)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力En42の実軸成分En42xと虚軸成分En42yを次式のように算出する。
En42x=|En42|・cos(∠En42) ・・・(264)
En42y=|En42|・sin(∠En42) ・・・(265)
これで、ステップ408の処理が終了する。
次に、信号変換部5の0点補正部52は、正規化起電力En40とEn42との起電力差EdA43の大きさを求める(ステップ409)。このステップ409の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(251)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、起電力差EdA43の実軸成分EdA43xと虚軸成分EdA43yを次式のように算出する。
EdA43x=(En40x−En42x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(266)
EdA43y=(En40y−En42y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(267)
そして、0点補正部52は、正規化起電力En40から起電力差EdA43を取り除き、v×B成分EvBn4の大きさを求める(ステップ410)。このステップ410の処理は、式(252)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、v×B成分EvBn4の大きさ|EvBn4|を次式のように算出する。
|EvBn4|={(En40x−EdA43x)2
+(En40y−EdA43y)21/2 ・・・(268)
流量出力部6は、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ411)。このステップ411の処理は、式(253)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn4|/γ ・・・(269)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5と流量出力部6とは、以上のようなステップ401〜411の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ412においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ403〜411の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第1の励磁状態において、角周波数ω0の成分の起電力E40と、角周波数(ω0+ω1)の成分と角周波数(ω0−ω1)成分との起電力和E4s0を求め、第2の励磁状態において、角周波数ω2の成分の起電力E42と、角周波数(ω2+ω1)の成分と角周波数(ω2−ω1)成分との起電力和E4s2を求める。そして、本実施の形態では、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B10と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B11とが等しくなるように設定しておくと、起電力和E4s0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また起電力和E4s2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて電極間起電力E40中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて電極間起電力E42中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力En40とEn42とから起電力差EdA43(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力En40から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、角周波数ω0の起電力E40のv×B成分を起電力和E4s0から抽出した同じ角周波数の第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、角周波数ω2の起電力E42のv×B成分を起電力和E4s2から抽出した同じ角周波数の第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力En40とEn42との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。
また、本実施の形態では、搬送波の周波数を切り換えるだけで、磁場の位相差を切り換える必要がなく、第1の実施の形態のように4つの励磁状態を用いる必要がないので、より高速に流量を算出することが可能になる。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力E40を0補正およびスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力E42を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力En42とEn40とから起電力差EdA43(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdA43=(En42−En40)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(270)
そして、次式のように正規化起電力En42から起電力差EdA43を引くことによりv×B成分EvBn4を求めるようにすればよい。その他の処理は電極間起電力E40を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn4|=|En42−EdA43| ・・・(271)
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図1に示した電磁流量計と同様であるので、図1の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第2の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第2の抽出方法を用いるものである。
本実施の形態における励磁条件は第4の実施の形態と同様である。前記の式(228)において、磁場B11の角周波数ω0の成分の位相差θ11[ω0]をπ+θ11[ω0]で置き換え、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E5π0は次式で表される。
E5π0=rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}]
・・・(272)
また、式(229)において、位相差θ11[ω0]をπ+θ11[ω0]で置き換え、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E5πp0は次式で表される。
E5πp0=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[(ω0+ω1)・exp(j・π/2)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
−b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
+b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])}]
・・・(273)
また、式(230)において、位相差θ11[ω0]をπ+θ11[ω0]で置き換え、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E5πm0は次式で表される。但し、式(272)、式(273)、式(274)ではθ11[ω0]=θ10[ω0]+Δθ11[ω0]は適用せず、後の式で適用する。また、変調部分の位相差はもともと逆位相であったので同位相となることに注意が必要である。
E5πm0=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[(ω0−ω1)・exp(j・π/2)
・{b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
−b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
+b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}]
・・・(274)
電極間起電力E5πp0とE5πm0との和をE5πs0とすれば、起電力和E5πs0は次式で表される。
E5πs0=E5πp0+E5πm0
=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[(ω0+ω1)・exp(j・π/2)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
−b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
+b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])}]
+(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[(ω0−ω1)・exp(j・π/2)
・{b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
−b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
+b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}]
=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
−b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])
+b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
−b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}
+ω1・exp(j・π/2)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
−b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])
−b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
+b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0+ω1]・exp(j・θ10[ω0+ω1])
+b11[ω0+ω1]・exp(j・θ11[ω0+ω1])
+b10[ω0−ω1]・exp(j・θ10[ω0−ω1])
+b11[ω0−ω1]・exp(j・θ11[ω0−ω1])}]
・・・(275)
式(235)〜式(238)の条件を式(275)に適用して起電力和E5πs0を近似したものをE5πs0aとおくと、起電力和E5πs0aは式(276)、式(277)で表される。
E5πs0a≒E5πs0 ・・・(276)
E5πs0a=(1/2)・ma・rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{2・b10[ω0]・exp(j・θ10[ω0])
−2・b11[ω0]・exp(j・θ11[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{2・b10[ω0]・exp(j・θ10[ω0])
+2・b11[ω0]・exp(j・θ11[ω0])}
・・・(277)
ここで、θ11[ω0]=θ10[ω0]+Δθ11[ω0]を式(277)の起電力和E5πs0aに代入したものをE5πs0bとすれば、起電力和E5πs0bは次式で表される。
E5πs0b=ma・rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}]
・・・(278)
初期状態(校正時の状態)の磁場B10,B11おいて、b10[ω0]=b11[ω0]、Δθ11[ω0]=0と設定しておくと、その後のずれを考慮してもb10[ω0]≒b11[ω0]、Δθ11[ω0]≒0であり、第3の実施の形態で示した式(243)の条件式が成り立つ。
式(243)の条件を用いて、式(272)の電極間起電力E5π0を近似したものをma倍した起電力EdA51は次式で表される。この起電力EdA51は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA51≒E5π0・ma ・・・(279)
EdA51=ma・rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
・・・(280)
起電力EdA51は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この起電力EdA51を用いて起電力和E5πs0b(合成ベクトルVas0+Vbs0)中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。起電力和E5πs0bを起電力EdA51で正規化し、ω0倍した結果をEn50とすれば、正規化起電力和En50は次式で表される。
En50=(E5πs0b/EdA51)・ω0
=ma・rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}]
/[ma・rk・exp{j・(θ10[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}]・ω0
=ω0・{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
/{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(281)
式(52)を用いると、式(281)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b10[ω0]−b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}/{b10[ω0]+b11[ω0]・exp(j・Δθ11[ω0])}を、角周波数ω0に関係しない値{b10−b11・exp(j・Δθ11)}/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}で表すことができる。したがって、式(281)を次式のように置き換えることができる。
En50=ω0・{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(282)
式(282)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を正規化した項となる。なお、起電力和E5πs0bを起電力EdA51で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(282)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(282)の右辺第1項を除去する方法について説明する。搬送波の角周波数をω0の代わりにω2とする場合、前記の式(248)、式(249)においてθ11をπ+θ11で置き換えた式で磁場B10,B11が表される。角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。角周波数ω2においてスパン補正の対象となる起電力和E5πs2は、式(273)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E5πp2と式(274)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E5πm2との和E5πp2+E5πm2で表される。第2の∂A/∂t成分の基となる電極間起電力E5π2は、式(272)において角周波数ω0をω2で置き換えたもので表される。第2の∂A/∂t成分となる起電力EdA52は、式(280)において角周波数ω0をω2で置き換えたものとなる。
起電力和E5πs2を起電力EdA52で正規化し、ω2倍した結果をEn52とすれば、正規化起電力和En52は式(282)より次式で表される。
En52=ω2・{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(283)
正規化起電力和En50とEn52との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA53とすれば、差分EdA53は次式で表される。この差分EdA53は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdA53=(En50−En52)・ω0/(ω0−ω2)
=[{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}
・ω0+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}
・ω2−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]
・ω0/(ω0−ω2)
={b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}・ω0 ・・(284)
差分EdA53は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(282)の右辺第1項と等しくなるので、この差分EdA53を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力和En50から取り出すことができる。式(282)の正規化起電力和En50から式(284)の差分EdA53を引いたときに得られるv×B成分をEvBn5とすると、v×B成分EvBn5は次式で表される。
EvBn5=En50−EdA53
={b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}・ω0
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−{b10−b11・exp(j・Δθ11)}
/{b10+b11・exp(j・Δθ11)}・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(285)
v×B成分EvBn5は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBn5も0となることから分かるように、v×B成分EvBn5より、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。式(285)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn5/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn5|/γ ・・・(286)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表5のとおりである。本実施の形態は、表5から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図16の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bと、電源部4と、信号変換部5と、流量出力部6とを有する。
信号変換部5は、第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において電極2a,2bで検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の∂A/∂t成分として抽出し、第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ω1の成分と角周波数ω0−ω1の成分との起電力和を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ω1の成分と角周波数ω2−ω1の成分との起電力和を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51と、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52とから構成される。
電源部4の動作は第4の実施の形態と同じである。図22は本実施の形態の信号変換部5と流量出力部6の動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5のスパン補正部51は、第4の実施の形態で説明した第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E5π0の振幅r5π0を求めると共に、実軸と電極間起電力E5π0との位相差φ5π0を図示しない位相検波器により求める(図22ステップ501)。また、スパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω0+ω1)の成分と角周波数(ω0−ω1)成分との和E5πs0の振幅r5πs0を求めると共に、実軸と起電力和E5πs0との位相差φ5πs0を位相検波器により求める(ステップ502)。
続いて、スパン補正部51は、第4の実施の形態で説明した第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E5π2の振幅r5π2を求めると共に、実軸と電極間起電力E5π2との位相差φ5π2を位相検波器により求める(ステップ503)。また、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω2+ω1)の成分と角周波数(ω2−ω1)成分との和E5πs2の振幅r5πs2を求めると共に、実軸と起電力和E5πs2との位相差φ5πs2を位相検波器により求める(ステップ504)。
次に、スパン補正部51は、電極間起電力E5π0を近似した起電力EdA51の大きさと角度を求める(ステップ505)。このステップ505の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(280)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、起電力EdA51の大きさ|EdA51|を次式のように算出する。
|EdA51|=r5π0 ・・・(287)
そして、スパン補正部51は、起電力EdA51の角度∠EdA51を次式のように算出する。
∠EdA51=φ5π0 ・・・(288)
これで、ステップ505の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、起電力和E5πs0を起電力EdA51で正規化した正規化起電力和En50の大きさと角度を求める(ステップ506)。このステップ506の処理は、式(282)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力和En50の大きさ|En50|を次式のように算出する。
|En50|=(r5πs0/|EdA51|)・ω0 ・・・(289)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力和En50の角度∠En50を次式のように算出する。
∠En50=φ5πs0−∠EdA51 ・・・(290)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力和En50の実軸成分En50xと虚軸成分En50yを次式のように算出する。
En50x=|En50|・cos(∠En50) ・・・(291)
En50y=|En50|・sin(∠En50) ・・・(292)
これで、ステップ506の処理が終了する。
次に、スパン補正部51は、電極間起電力E5π2を近似した起電力EdA52の大きさと角度を求める(ステップ507)。このステップ507の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理である。スパン補正部51は、起電力EdA52の大きさ|EdA52|を次式のように算出する。
|EdA52|=r5π2 ・・・(293)
そして、スパン補正部51は、起電力EdA52の角度∠EdA52を次式のように算出する。
∠EdA52=φ5π2 ・・・(294)
これで、ステップ507の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、起電力和E5πs2を起電力EdA52で正規化した正規化起電力和En52の大きさと角度を求める(ステップ508)。このステップ508の処理は、式(283)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力和En52の大きさ|En52|を次式のように算出する。
|En52|=(r5πs2/|EdA52|)・ω2 ・・・(295)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力和En52の角度∠En52を次式のように算出する。
∠En52=φ5πs2−∠EdA52 ・・・(296)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力和En52の実軸成分En52xと虚軸成分En52yを次式のように算出する。
En52x=|En52|・cos(∠En52) ・・・(297)
En52y=|En52|・sin(∠En52) ・・・(298)
これで、ステップ508の処理が終了する。
次に、信号変換部5の0点補正部52は、正規化起電力和En50とEn52との差分EdA53の大きさを求める(ステップ509)。このステップ509の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(284)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、差分EdA53の実軸成分EdA53xと虚軸成分EdA53yを次式のように算出する。
EdA53x=(En50x−En52x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(299)
EdA53y=(En50y−En52y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(300)
そして、0点補正部52は、正規化起電力和En50から差分EdA53を取り除き、v×B成分EvBn5の大きさを求める(ステップ510)。このステップ510の処理は、式(285)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、v×B成分EvBn5の大きさ|EvBn5|を次式のように算出する。
|EvBn5|={(En50x−EdA53x)2
+(En50y−EdA53y)21/2 ・・・(301)
流量出力部6は、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ511)。このステップ511の処理は、式(286)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn5|/γ ・・・(302)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5と流量出力部6とは、以上のようなステップ501〜511の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ512においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ503〜511の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第1の励磁状態において、角周波数ω0の成分の起電力E5π0と、角周波数(ω0+ω1)の成分と角周波数(ω0−ω1)成分との起電力和E5πs0を求め、第2の励磁状態において、角周波数ω2の成分の起電力E5π2と、角周波数(ω2+ω1)の成分と角周波数(ω2−ω1)成分との起電力和E5πs2を求める。そして、本実施の形態では、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B10と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B11とが等しくなるように設定しておくと、電極間起電力E5π0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また電極間起電力E5π2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて起電力和E5πs0中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて起電力和E5πs2中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力和En50とEn52とから差分EdA53(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力和En50から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、起電力和E5πs0のv×B成分を起電力E5π0から抽出した同じ角周波数の第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、起電力和E5πs2のv×B成分を起電力E5π2から抽出した同じ角周波数の第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力和En50とEn52との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。
また、本実施の形態では、搬送波の周波数を切り換えるだけで、磁場の位相差を切り換える必要がなく、第1の実施の形態のように4つの励磁状態を用いる必要がないので、より高速に流量を算出することが可能になる。
なお、本実施の形態では、起電力和E5πs0を0補正およびスパン補正の対象としたが、起電力和E5πs2を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力和En52とEn50とから差分EdA53(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdA53=(En52−En50)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(303)
そして、次式のように正規化起電力和En52から差分EdA53を引くことによりv×B成分EvBn5を求めるようにすればよい。その他の処理は起電力和E5πs0を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn5|=|En52−EdA53| ・・・(304)
[第6の実施の形態]
次に、本発明の第6の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図1に示した電磁流量計と同様であるので、図1の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第2の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第2の抽出方法を用いるものである。
第1の励磁コイル3aから発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B12と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B13は、以下のように与えられるものとする。
B12=b12・cos{ω0・t−mp・cos(ω1・t)−θ12} ・・・(305)
B13=b13・cos{ω0・t+mp・cos(ω1・t)−θ13} ・・・(306)
式(305)、式(306)において、b12,b13は磁束密度B12,B13の振幅、ω0は搬送波の角周波数、ω1は変調波の角周波数、θ12は磁束密度B12とω0・t−mp・cos(ω1・t)との位相差(位相遅れ)、θ13は磁束密度B13とω0・t−mp・cos(ω1・t)との位相差、mpは位相変調指数である。以下、磁束密度B12を磁場B12とし、磁束密度B13を磁場B13とする。式(305)、式(306)は次式のように変形できる。
B12=b12・cos{ω0・t−mp・cos(ω1・t)−θ12}
=b12・cos(ω0・t−θ12)・cos{−mp・cos(ω1・t)}
−b12・sin(ω0・t−θ12)・sin{−mp・cos(ω1・t)}
=b12・cos{ mp・cos(ω1・t)}
・{cos(ω0・t)・cos(−θ12)
−sin(ω0・t)・sin(−θ12)}
+b12・sin{ mp・cos(ω1・t)}
・{sin(ω0・t)・cos(−θ12)
+cos(ω0・t)・sin(−θ12)} ・・・(307)
B13=b13・cos{ω0・t+mp・cos(ω1・t)−θ13}
=b13・cos(ω0・t−θ13)・cos{mp・cos(ω1・t)}
−b13・sin(ω0・t−θ13)・sin{mp・cos(ω1・t)}
=−b13・cos{mp・cos(ω1・t)}
・{cos(ω0・t)・cos(−θ13)
−sin(ω0・t)・sin(−θ13)}
−b13・sin{mp・cos(ω1・t)}
・{sin(ω0・t)・cos(−θ13)
+cos(ω0・t)・sin(−θ13)} ・・・(308)
ここで、式(307)、式(308)のcos{mp・cos(ω1・t)}、sin{mp・cos(ω1・t)}は次式のように変換できる。
Figure 0004550523
式(309)、式(310)においてJn(mp) (n=0,1,2,・・・・)は第1種ベッセル関数として知られており、この第1種ベッセル関数Jn(mp) は次式で与えられる。
Figure 0004550523
なお、式(311)においてk!はkの階乗を意味する。式(309)、式(310)においてn=0,1の場合のみ採用すると、式(307)、式(308)は以下のように変形できる。
B12=J0(mp)・b12・{cos(θ12)}・cos(ω0・t)
+J0(mp)・b12・{sin(θ12)}・sin(ω0・t)
+J1(mp)・b12・{−sin(θ12)}・cos{(ω0+ω1)・t}
+J1(mp)・b12・{cos(θ12)}・sin{(ω0+ω1)・t}
+J1(mp)・b12・{−sin(θ12)}・cos{(ω0−ω1)・t}
+J1(mp)・b12・{cos(θ12)}・sin{(ω0−ω1)・t}
・・・(312)
B13=J0(mp)・b13・{cos(θ13)}・cos(ω0・t)
+J0(mp)・b13・{sin(θ13)}・sin(ω0・t)
+J1(mp)・b13・{sin(θ13)}・cos{(ω0+ω1)・t}
+J1(mp)・b13・{−cos(θ13)}・sin{(ω0+ω1)・t}
+J1(mp)・b13・{sin(θ13)}・cos{(ω0−ω1)・t}
+J1(mp)・b13・{−cos(θ13)}・sin{(ω0−ω1)・t}
・・・(313)
それぞれの角周波数における磁場の損失を考慮して、磁場B12,B13の角周波数ω0の成分の振幅b12,b13をそれぞれb12[ω0],b13[ω0]と関数表記に変更し、同様に角周波数ω0の成分の位相差θ12,θ13をそれぞれθ12[ω0],θ13[ω0]と変更する。また、磁場B12,B13の角周波数(ω0+ω1)の成分の振幅b12,b13をそれぞれb12[ω0+ω1],b13[ω0+ω1]と関数表記に変更し、同様に角周波数(ω0+ω1)の成分の位相差θ12,θ13をそれぞれθ12[ω0+ω1],θ13[ω0+ω1]と変更する。さらに、磁場B12,B13の角周波数(ω0−ω1)の成分の振幅b12,b13をそれぞれb12[ω0−ω1],b13[ω0−ω1]と関数表記に変更し、同様に角周波数(ω0−ω1)の成分の位相差θ12,θ13をそれぞれθ12[ω0−ω1],θ13[ω0−ω1]と変更する。これにより、式(312)、式(313)は式(314)、式(315)に置き換わる。
B12=J0(mp)・b12[ω0]
・{cos(θ12[ω0])}・cos(ω0・t)
+J0(mp)・b12[ω0]・{sin(θ12[ω0])}・sin(ω0・t)
+J1(mp)・b12[ω0+ω1]・{−sin(θ12[ω0+ω1])}
・cos{(ω0+ω1)・t}
+J1(mp)・b12[ω0+ω1]・{cos(θ12[ω0+ω1])}
・sin{(ω0+ω1)・t}
+J1(mp)・b12[ω0−ω1]・{−sin(θ12[ω0−ω1])}
・cos{(ω0−ω1)・t}
+J1(mp)・b12[ω0−ω1]・{cos(θ12[ω0−ω1])}
・sin{(ω0−ω1)・t} ・・・(314)
B13=J0(mp)・b13[ω0]
・{cos(θ13[ω0])}・cos(ω0・t)
+J0(mp)・b13[ω0]・{sin(θ13[ω0])}・sin(ω0・t)
+J1(mp)・b13[ω0+ω1]・{sin(θ13[ω0+ω1])}
・cos{(ω0+ω1)・t}
+J1(mp)・b13[ω0+ω1]・{−cos(θ13[ω0+ω1])}
・sin{(ω0+ω1)・t}
+J1(mp)・b13[ω0−ω1]・{sin(θ13[ω0−ω1])}
・cos{(ω0−ω1)・t}
+J1(mp)・b13[ω0−ω1]・{−cos(θ13[ω0−ω1])}
・sin{(ω0−ω1)・t} ・・・(315)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B12と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B13を次式のように微分する。
dB12/dt=J0(mp)・ω0・cos(ω0・t)
・b12[ω0]・{sin(θ12[ω0])}
+J0(mp)・ω0・sin(ω0・t)
・b12[ω0]・{−cos(θ12[ω0])}
+J1(mp)・(ω0+ω1)・cos{(ω0+ω1)・t}
・b12[ω0+ω1]・{cos(θ12[ω0+ω1])}
+J1(mp)・(ω0+ω1)・sin{(ω0+ω1)・t}
・b12[ω0+ω1]・{sin(θ12[ω0+ω1])}
+J1(mp)・(ω0−ω1)・cos{(ω0−ω1)・t}
・b12[ω0−ω1]・{cos(θ12[ω0−ω1])}
+J1(mp)・(ω0−ω1)・sin{(ω0−ω1)・t}
・b12[ω0−ω1]・{sin(θ12[ω0−ω1])}
・・・(316)
dB13/dt=J0(mp)・ω0・cos(ω0・t)
・b13[ω0]・{sin(θ13[ω0])}
+J0(mp)・ω0・sin(ω0・t)
・b13[ω0]・{−cos(θ13[ω0])}
+J1(mp)・(ω0+ω1)・cos{(ω0+ω1)・t}
・b13[ω0+ω1]・{−cos(θ13[ω0+ω1])}
+J1(mp)・(ω0+ω1)・sin{(ω0+ω1)・t}
・b13[ω0+ω1]・{−sin(θ13[ω0+ω1])}
+J1(mp)・(ω0−ω1)・cos{(ω0−ω1)・t}
・b13[ω0−ω1]・{−cos(θ13[ω0−ω1])}
+J1(mp)・(ω0−ω1)・sin{(ω0−ω1)・t}
・b13[ω0−ω1]・{−sin(θ13[ω0−ω1])}
・・・(317)
被測定流体の流速が0の場合、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E1と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E2は、図2に示すように互いに逆向きとなる。このとき、電極間起電力E1とE2とを足した全体の電極間起電力Eは、次式に示すように、磁場の時間微分dB12/dtとdB13/dtとの差(−dB12/dt+dB13/dt)にω0,(ω0−ω1),(ω0+ω1)それぞれの角周波数成分における比例係数rkをかけ、位相差θ12,θ13をそれぞれθ12+θ00,θ13+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E=J0(mp)・rk・ω0・cos(ω0・t)
・{−b12[ω0]・sin(θ12[ω0]+θ00)
+b13[ω0]・sin(θ13[ω0]+θ00)}
+J0(mp)・rk・ω0・sin(ω0・t)
・{b12[ω0]・cos(θ12[ω0]+θ00)
−b13[ω0]・cos(θ13[ω0]+θ00)}
+J1(mp)・rk・(ω0+ω1)・cos{(ω0+ω1)・t}
・{−b12[ω0+ω1]・cos(θ12[ω0+ω1]+θ00)
−b13[ω0+ω1]・cos(θ13[ω0+ω1]+θ00)}
+J1(mp)・rk・(ω0+ω1)・sin{(ω0+ω1)・t}
・{−b12[ω0+ω1]・sin(θ12[ω0+ω1]+θ00)
−b13[ω0+ω1]・sin(θ13[ω0+ω1]+θ00)}
+J1(mp)・rk・(ω0−ω1)・cos{(ω0−ω1)・t}
・{−b12[ω0−ω1]・cos(θ12[ω0−ω1]+θ00)
−b13[ω0−ω1]・cos(θ13[ω0−ω1]+θ00)}
+J1(mp)・rk・(ω0−ω1)・sin{(ω0−ω1)・t}
・{−b12[ω0−ω1]・sin(θ12[ω0−ω1]+θ00)
−b13[ω0−ω1]・sin(θ13[ω0−ω1]+θ00)}
・・・(318)
被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する電極間起電力Ev2は、図3に示すように同じ向きとなる。このとき、電極間起電力Ev1とEv2とを足した全体の電極間起電力Evは、次式に示すように、磁場B12と磁場B13との和にω0,(ω0−ω1),(ω0+ω1)それぞれの角周波数成分における比例係数rkvをかけ、位相差θ12,θ13をそれぞれθ12+θ01,θ13+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev=J0(mp)・rkv・cos(ω0・t)
・{b12[ω0]・cos(θ12[ω0]+θ01)
+b13[ω0]・cos(θ13[ω0]+θ01)}
+J0(mp)・rkv・sin(ω0・t)
・{b12[ω0]・sin(θ12[ω0]+θ01)
+b13[ω0]・sin(θ13[ω0]+θ01)}
+J1(mp)・rkv・cos{(ω0+ω1)・t}
・{−b12[ω0+ω1]・sin(θ12[ω0+ω1]+θ01)
+b13[ω0+ω1]・sin(θ13[ω0+ω1]+θ01)}
+J1(mp)・rkv・sin{(ω0+ω1)・t}
・{b12[ω0+ω1]・cos(θ12[ω0+ω1]+θ01)
−b13[ω0+ω1]・cos(θ13[ω0+ω1]+θ01)}
+J1(mp)・rkv・cos{(ω0−ω1)・t}
・{−b12[ω0−ω1]・sin(θ12[ω0−ω1]+θ01)
+b13[ω0−ω1]・sin(θ13[ω0−ω1]+θ01)}
+J1(mp)・rkv・sin{(ω0−ω1)・t}
・{b12[ω0−ω1]・cos(θ12[ω0−ω1]+θ01)
−b13[ω0−ω1]・cos(θ13[ω0−ω1]+θ01)}
・・・(319)
図2、図3で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分の起電力E60cは、式(318)の第1項および第2項と式(319)の第1項および第2項と式(17)とから次式で表される。
E60c=J0(mp)・rk・ω0・b12[ω0]
・exp{j・(π/2+θ12[ω0]+θ00)}
+J0(mp)・γ・rk・V・b12[ω0]
・exp{j・(θ12[ω0]+θ01)}
+J0(mp)・rk・ω0・b13[ω0]
・exp{j・(−π/2+θ13[ω0]+θ00)}
+J0(mp)・γ・rk・V・b13[ω0]
・exp{j・(θ13[ω0]+θ01)} ・・・(320)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数(ω0+ω1)の成分の起電力E6pcは、式(318)の第3項および第4項と式(319)の第3項および第4項と式(17)とから次式で表される。
E6pc=J1(mp)・rk・(ω0+ω1)・b12[ω0+ω1]
・exp{j・(π+θ12[ω0+ω1]+θ00)}
+J1(mp)・γ・rk・V・b12[ω0+ω1]
・exp{j・(π/2+θ12[ω0+ω1]+θ01)}
+J1(mp)・rk・(ω0+ω1)・b13[ω0+ω1]
・exp{j・(π+θ13[ω0+ω1]+θ00)}
+J1(mp)・γ・rk・V・b13[ω0+ω1]
・exp{j・(−π/2+θ13[ω0+ω1]+θ01)}
・・・(321)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数(ω0−ω1)の成分の起電力E6mcは、式(318)の第5項および第6項と式(319)の第5項および第6項と式(17)とから次式で表される。
E6mc=J1(mp)・rk・(ω0−ω1)・b12[ω0−ω1]
・exp{j・(π+θ12[ω0−ω1]+θ00)}
+J1(mp)・γ・rk・V・b12[ω0−ω1]
・exp{j・(π/2+θ12[ω0−ω1]+θ01)}
+J1(mp)・rk・(ω0−ω1)・b13[ω0−ω1]
・exp{j・(π+θ13[ω0−ω1]+θ00)}
+J1(mp)・γ・rk・V・b12[ω0−ω1]
・exp{j・(−π/2+θ13[ω0−ω1]+θ01)}
・・・(322)
ここで、磁場B12の角周波数ω0の成分の位相遅れθ12[ω0]と磁場B13の角周波数ω0の成分の位相遅れθ13[ω0]との関係がθ13[ω0]=θ12[ω0]+Δθ13[ω0]で、かつ虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係がθ01=θ00+Δθ01であるとき、式(320)にθ01=θ00+Δθ01及びθ13[ω0]=θ12[ω0]+Δθ13[ω0]を代入したときの電極間起電力E60は次式で表される。
E60=J0(mp)・rk・exp{j・(θ12[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}]
・・・(323)
式(321)にθ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E6p0は次式で表される。
E6p0=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[(ω0+ω1)・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
+b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
−b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])}]
・・・(324)
式(322)にθ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E6m0は次式で表される。
E6m0=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[(ω0−ω1)・exp(j・π/2)
・{b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
+b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
−b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}]
・・・(325)
電極間起電力E6p0とE6m0との和をE6s0とすると、起電力和E6s0は次式で表される。
E6s0=E6p0+E6m0
=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[(ω0+ω1)・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
+b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
−b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])}]
+J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[(ω0−ω1)・exp(j・π/2)
・{b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
+b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
−b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}]
=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
+b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
+b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
+b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}
+ω1・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
+b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
−b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
−b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
−b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
+b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
−b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}]
・・・(326)
ここで、通常ω0>ω1が成り立つことから式(327)〜式(330)の条件式が成り立つ。
2・b12[ω0]・exp(j・θ12[ω0])
≒b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
+b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1]) ・・・(327)
2・b13[ω0]・exp(j・θ13[ω0])
≒b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
+b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1]) ・・・(328)
|ω0・exp(j・π/2)
・{2・b12[ω0]・exp(j・θ12[ω0])}|
≫|ω1・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
−b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])}|
・・・(329)
|ω0・exp(j・π/2)
・{2・b13[ω0]・exp(j・θ13[ω0])}|
≫|ω1・exp(j・π/2)
・{b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
−b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}|
・・・(330)
式(327)〜式(330)の条件を式(326)に適用して起電力和E6s0を近似したものをE6s0aとおくと、起電力和E6s0aは式(331)、式(332)で表される。
E6s0a≒E6s0 ・・・(331)
E6s0a=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{2・b12[ω0]・exp(j・θ12[ω0])
+2・b13[ω0]・exp(j・θ13[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{2・b12[ω0]・exp(j・θ12[ω0])
−2・b13[ω0]・exp(j・θ13[ω0])} ・・(332)
式(323)と同じくθ13[ω0]=θ12[ω0]+Δθ13[ω0]を式(332)の起電力和E6s0aに代入したものをE6s0bとすれば、起電力和E6s0bは次式で表される。
E6s0b=2・J1(mp)・rk
・exp{j・(π/2+θ12[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}]
・・・(333)
さらに、初期状態(校正時の状態)の磁場B12,B13おいて、b12[ω0]=b13[ω0]、Δθ13[ω]=0と設定しておくと、その後のずれを考慮してもb12[ω0]≒b13[ω0]、Δθ13[ω]≒0であり、次の条件式が成り立つ。
|b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])|
≫|b12[ω0] −b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])|
・・・(334)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(334)の条件を考慮すると、式(333)において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)・b12[ω0]
−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])| ・・・(335)
式(335)の条件を用いて、式(333)の起電力和E6s0bを近似したものをJ0(mp)/{2・J1(mp)・exp(j・π/2)}倍した起電力和EdA61は次式で表される。この起電力和EdA61は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA61≒E6s0b・[J0(mp)
/{2・J1(mp)・exp(j・π/2)}] ・・・(336)
EdA61=J0(mp)・rk・exp{j・(θ12[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
・・・(337)
起電力和EdA61は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この起電力和EdA61を用いて電極間起電力E60(合成ベクトルVas0+Vbs0)中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。式(323)の電極間起電力E60を式(337)の起電力和EdA61で正規化し、ω0倍した結果をEn60とすれば、正規化起電力En60は次式で表される。
En60=(E60/EdA61)・ω0
=J0(mp)・rk・exp{j・(θ12[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}]
/[J0(mp)・rk・exp{j・(θ12[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}]・ω0
=ω0・{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
/{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(338)
式(52)を用いると、式(338)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}/{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}を、角周波数ω0に関係しない値{b12−b13・exp(j・Δθ13)}/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}で表すことができる。したがって、式(338)を次式のように置き換えることができる。
En60=ω0・{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(339)
式(339)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を正規化した項となる。なお、電極間起電力E60を起電力和EdA61で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(339)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(339)の右辺第1項を除去する方法について説明する。式(305)、式(306)において搬送波の角周波数をω0の代わりにω2とすると、磁場B12,B13は次式で表される。
B12=b12・cos{ω2・t−mp・cos(ω1・t)−θ12} ・・・(340)
B13=b13・cos{ω2・t+mp・cos(ω1・t)−θ13} ・・・(341)
角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。角周波数ω2においてスパン補正の対象となる電極間起電力E62は、式(323)において角周波数ω0をω2で置き換えたものとなる。第2の∂A/∂t成分の基となる起電力和E6s2は、式(324)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E6p2と式(325)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E6m2との和E6p2+E6m2で表される。第2の∂A/∂t成分となる起電力和EdA62は、式(337)において角周波数ω0をω2で置き換えたものとなる。
電極間起電力E62を起電力和EdA62で正規化し、ω2倍した結果をEn62とすれば、正規化起電力En62は式(339)より次式で表される。
En62=ω2・{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(342)
正規化起電力En60とEn62との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA63とすれば、起電力差EdA63は次式で表される。この起電力差EdA63は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdA63=(En60−En62)・ω0/(ω0−ω2)
=[{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}
・ω0+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}
・ω2−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]
・ω0/(ω0−ω2)
={b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}・ω0 ・・(343)
起電力差EdA63は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(339)の右辺第1項と等しくなるので、この起電力差EdA63を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力En60から取り出すことができる。式(339)の正規化起電力En60から式(343)の起電力差EdA63を引いたときに得られるv×B成分をEvBn6とすると、v×B成分EvBn6は次式で表される。
EvBn6=En60−EdA63
={b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}・ω0
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(344)
v×B成分EvBn6は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBn6も0となることから分かるように、v×B成分EvBn6より、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。式(344)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn6/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn6|/γ ・・・(345)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表6のとおりである。本実施の形態は、表6から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図16の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bと、電源部4と、信号変換部5と、流量出力部6とを有する。
信号変換部5は、第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において電極2a,2bで検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ω1の成分と角周波数ω0−ω1の成分との起電力和を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ω1の成分と角周波数ω2−ω1の成分との起電力和を第2の∂A/∂t成分として抽出し、第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51と、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52とから構成される。
本実施の形態の電源部4は、角周波数ω0の正弦波搬送波を角周波数ω1の正弦波変調波によって位相変調した第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、前記角周波数ω0の正弦波搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調した第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、角周波数ω2の正弦波搬送波を角周波数ω1の正弦波変調波によって位相変調した第3の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、前記角周波数ω2の正弦波搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調した第4の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第2の励磁状態をT2秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2である。位相変調指数mpは任意の値とする。
本実施の形態の信号変換部5と流量出力部6の処理の流れは第4の実施の形態と同様であるので、図21の符号を用いて信号変換部5と流量出力部6の動作を説明する。まず、信号変換部5のスパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E60の振幅r60を求めると共に、実軸と電極間起電力E60との位相差φ60を図示しない位相検波器により求める(図21ステップ401)。また、スパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω0+ω1)の成分と角周波数(ω0−ω1)成分との和E6s0の振幅r6s0を求めると共に、実軸と起電力和E6s0との位相差φ6s0を位相検波器により求める(ステップ402)。
続いて、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E62の振幅r62を求めると共に、実軸と電極間起電力E62との位相差φ62を位相検波器により求める(ステップ403)。また、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω2+ω1)の成分と角周波数(ω2−ω1)成分との和E6s2の振幅r6s2を求めると共に、実軸と起電力和E6s2との位相差φ6s2を位相検波器により求める(ステップ404)。電極間起電力E60,E62と電極間起電力の角周波数(ω0+ω1),(ω0−ω1),(ω2+ω1),(ω2−ω1)の成分は、バンドパスフィルタやコムフィルタによって周波数分離することができる。
次に、スパン補正部51は、起電力和E6s0を近似した起電力和EdA61の大きさと角度を求める(ステップ405)。このステップ405の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(337)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、起電力和EdA61の大きさ|EdA61|を次式のように算出する。
|EdA61|=r6s0 ・・・(346)
そして、スパン補正部51は、起電力和EdA61の角度∠EdA61を次式のように算出する。
∠EdA61=φ6s0 ・・・(347)
これで、ステップ405の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、電極間起電力E60を起電力和EdA61で正規化した正規化起電力En60の大きさと角度を求める(ステップ406)。このステップ406の処理は、式(339)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力En60の大きさ|En60|を次式のように算出する。
|En60|=(r60/|EdA61|)・ω0 ・・・(348)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力En60の角度∠En60を次式のように算出する。
∠En60=φ60−∠EdA61 ・・・(349)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力En60の実軸成分En60xと虚軸成分En60yを次式のように算出する。
En60x=|En60|・cos(∠En60) ・・・(350)
En60y=|En60|・sin(∠En60) ・・・(351)
これで、ステップ406の処理が終了する。
次に、スパン補正部51は、起電力和E6s2を近似した起電力和EdA62の大きさと角度を求める(ステップ407)。このステップ407の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理である。スパン補正部51は、起電力和EdA62の大きさ|EdA62|を次式のように算出する。
|EdA62|=r6s2 ・・・(352)
そして、スパン補正部51は、起電力和EdA62の角度∠EdA62を次式のように算出する。
∠EdA62=φ6s2 ・・・(353)
これで、ステップ407の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、電極間起電力E62を起電力和EdA62で正規化した正規化起電力En62の大きさと角度を求める(ステップ408)。このステップ408の処理は、式(342)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力En62の大きさ|En62|を次式のように算出する。
|En62|=(r62/|EdA62|)・ω2 ・・・(354)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力En62の角度∠En62を次式のように算出する。
∠En62=φ62−∠EdA62 ・・・(355)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力En62の実軸成分En62xと虚軸成分En62yを次式のように算出する。
En62x=|En62|・cos(∠En62) ・・・(356)
En62y=|En62|・sin(∠En62) ・・・(357)
これで、ステップ408の処理が終了する。
次に、信号変換部5の0点補正部52は、正規化起電力En60とEn62との起電力差EdA63の大きさを求める(ステップ409)。このステップ409の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(343)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、起電力差EdA63の実軸成分EdA63xと虚軸成分EdA63yを次式のように算出する。
EdA63x=(En60x−En62x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(358)
EdA63y=(En60y−En62y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(359)
そして、0点補正部52は、正規化起電力En60から起電力差EdA63を取り除き、v×B成分EvBn6の大きさを求める(ステップ410)。このステップ410の処理は、式(344)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、v×B成分EvBn6の大きさ|EvBn6|を次式のように算出する。
|EvBn6|={(En60x−EdA63x)2
+(En60y−EdA63y)21/2 ・・・(360)
流量出力部6は、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ411)。このステップ411の処理は、式(345)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn6|/γ ・・・(361)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5と流量出力部6とは、以上のようなステップ401〜411の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ412においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ403〜411の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第1の励磁状態において、角周波数ω0の成分の起電力E60と、角周波数(ω0+ω1)の成分と角周波数(ω0−ω1)成分との起電力和E6s0を求め、第2の励磁状態において、角周波数ω2の成分の起電力E62と、角周波数(ω2+ω1)の成分と角周波数(ω2−ω1)成分との起電力和E6s2を求める。そして、本実施の形態では、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B12と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B13とが等しくなるように設定しておくと、起電力和E6s0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また起電力和E6s2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて電極間起電力E60中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて電極間起電力E62中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力En60とEn62とから起電力差EdA63(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力En60から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、角周波数ω0の起電力E60のv×B成分を起電力和E6s0から抽出した同じ角周波数の第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、角周波数ω2の起電力E62のv×B成分を起電力和E6s2から抽出した同じ角周波数の第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力En60とEn62との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。
また、本実施の形態では、搬送波の周波数を切り換えるだけで、磁場の位相差を切り換える必要がなく、第1の実施の形態のように4つの励磁状態を用いる必要がないので、より高速に流量を算出することが可能になる。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力E60を0補正およびスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力E62を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力En62とEn60とから起電力差EdA63(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdA63=(En62−En60)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(362)
そして、次式のように正規化起電力En62から起電力差EdA63を引くことによりv×B成分EvBn6を求めるようにすればよい。その他の処理は電極間起電力E60を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn6|=|En62−EdA63| ・・・(363)
また、本実施の形態では、搬送波を変調波によって位相変調した励磁電流を励磁コイル3a,3bに供給しているが、これに限るものではなく、搬送波を変調波によって周波数変調した励磁電流を励磁コイル3a,3bに供給するようにしてもよい。
以下、周波数変調が位相変調と同等に扱えることについて説明する。図1において、第1の励磁コイル3aから発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B12は、以下のように与えられるものとする。
B12=b12・cos{ω0・t−mf・sin(ω1・t)−θ12}
・・・(364)
式(364)において、b12は磁場B12の振幅、ω0は搬送波の角周波数、ω1は変調波の角周波数、θ12は磁場B12の搬送波とω0・t−mf・sin(ω1・t)との位相差(位相遅れ)、mfは周波数変調指数である。
また、周波数変調指数mfは次式で表される。
mf=Δω1/ω1 ・・・(365)
式(365)において、Δω1は角周波数帯域を表し、変調波の最大振幅のときの周波数偏移量をΔFとすると、Δω1=2π・ΔFである。式(364)は次式のように変形できる。
B12=b12・cos{ω0・t−mf・sin(ω1・t)−θ12}
=b12・cos(ω0・t−θ12)・cos{−mf・sin(ω1・t)}
−b12・sin(ω0・t−θ12)・sin{−mf・sin(ω1・t)}
=b12・cos{ mf・sin(ω1・t)}
・{cos(ω0・t)・cos(−θ12)
−sin(ω0・t)・sin(−θ12)}
+b12・sin{ mf・sin(ω1・t)}
・{sin(ω0・t)・cos(−θ12)
+cos(ω0・t)・sin(−θ12)} ・・・(366)
ここで、式(366)のcos{mf・sin(ω1・t)}、sin{mf・sin(ω1・t)}は次式のように変換できる。
Figure 0004550523
式(367)、式(368)においてJn(mf) (n=0,1,2,・・・・)は第1種ベッセル関数として知られており、この第1種ベッセル関数Jn(mf) は次式で与えられる。
Figure 0004550523
なお、式(369)においてk!はkの階乗を意味する。式(367)、式(368)においてn=0,1の場合のみ採用すると、式(366)は以下のように変形できる。
B12=b12・J0(mf)
・{cos(ω0・t)・cos(−θ12)
−sin(ω0・t)・sin(−θ12)}
+b12・2・J1(mf)・cos(ω1・t)
・{sin(ω0・t)・cos(−θ12)
+cos(ω0・t)・sin(−θ12)}
=J0(mf)・b12・{cos(θ12)}・cos(ω0・t)
+J0(mf)・b12・{sin(θ12)}・sin(ω0・t)
+J1(mf)・b12・{−sin(θ12)}・cos{(ω0+ω1)・t}
+J1(mf)・b12・{cos(θ12)}・sin{(ω0+ω1)・t}
+J1(mf)・b12・{−sin(θ12)}・cos{(ω0−ω1)・t}
+J1(mf)・b12・{cos(θ12)}・sin{(ω0−ω1)・t}
・・・(370)
式(370)においてmf=mpとおけば式(312)とまったく同じ式になるので、周波数変調を位相変調と同等に扱えることが分かる。搬送波を位相変調した励磁電流を励磁コイルに供給する以下の実施の形態においても、周波数変調は位相変調の場合と同じに扱うことができるので、周波数変調の説明は省略する。
[第7の実施の形態]
次に、本発明の第7の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図1に示した電磁流量計と同様であるので、図1の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第2の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第2の抽出方法を用いるものである。
本実施の形態における励磁条件は第6の実施の形態と同様である。前記の式(320)において、磁場B13の角周波数ω0の成分の位相差θ13[ω0]をπ+θ13[ω0]で置き換え、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E7π0は次式で表される。
E7π0=J0(mp)・rk・exp{j・(θ12[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}]
・・・(371)
また、式(321)において、位相差θ13[ω0]をπ+θ13[ω0]で置き換え、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E7πp0は次式で表される。
E7πp0=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[(ω0+ω1)・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
−b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
+b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])}]
・・・(372)
また、式(322)において、位相差θ13[ω0]をπ+θ13[ω0]で置き換え、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E7πm0は次式で表される。但し、式(371)、式(372)、式(373)ではθ13[ω0]=θ12[ω0]+Δθ13[ω0]は適用せず、後の式で適用する。また、変調部分の位相差はもともと逆位相であったので同位相となることに注意が必要である。
E7πm0=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[(ω0−ω1)・exp(j・π/2)
・{b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
−b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
+b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}]
・・・(373)
電極間起電力E7πp0とE7πm0との和をE7πs0とすれば、起電力和E7πs0は次式で表される。
E7πs0=E7πp0+E7πm0
=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[(ω0+ω1)・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
−b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
+b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])}]
+J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[(ω0−ω1)・exp(j・π/2)
・{b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
−b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
+b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}]
=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
−b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
+b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
−b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}
+ω1・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
−b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
−b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
+b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
+b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
+b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])
+b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}]
・・・(374)
ここで、通常ω0>ω1が成り立つことから式(375)〜式(378)の条件式が成り立つ。
2・b12[ω0]・exp(j・θ12[ω0])
≒b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
+b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1]) ・・・(375)
2・b13[ω0]・exp(j・θ13[ω0])
≒b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
+b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1]) ・・・(376)
|ω0・exp(j・π/2)
・{2・b12[ω0]・exp(j・θ12[ω0])}|
≫|ω1・exp(j・π/2)
・{b12[ω0+ω1]・exp(j・θ12[ω0+ω1])
−b12[ω0−ω1]・exp(j・θ12[ω0−ω1])}|
・・・(377)
|ω0・exp(j・π/2)
・{2・b13[ω0]・exp(j・θ13[ω0])}|
≫|ω1・exp(j・π/2)
・{b13[ω0+ω1]・exp(j・θ13[ω0+ω1])
−b13[ω0−ω1]・exp(j・θ13[ω0−ω1])}|
・・・(378)
式(375)〜式(378)の条件を式(374)に適用して起電力和E7πs0を近似したものをE7πs0aとおくと、起電力和E7πs0aは式(379)、式(380)で表される。
E7πs0a≒E7πs0 ・・・(379)
E7πs0a=J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{2・b12[ω0]・exp(j・θ12[ω0])
−2・b13[ω0]・exp(j・θ13[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{2・b12[ω0]・exp(j・θ12[ω0])
+2・b13[ω0]・exp(j・θ13[ω0])}
・・・(380)
ここで、θ13[ω0]=θ12[ω0]+Δθ13[ω0]を式(380)の起電力和E7πs0aに代入したものをE7πs0bとすれば、起電力和E7πs0bは次式で表される。
E7πs0b=2・J1(mp)・rk
・exp{j・(π/2+θ12[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}]
・・・(381)
初期状態(校正時の状態)の磁場B12,B13おいて、b12[ω0]=b13[ω0]、Δθ13[ω0]=0と設定しておくと、その後のずれを考慮してもb12[ω0]≒b13[ω0]、Δθ13[ω0]≒0であり、次の条件式が成り立つ。
|b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])|
≫|b12[ω0] −b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])|
・・・(382)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(382)の条件を考慮すると、式(371)において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)・b12[ω0]
−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])| ・・・(383)
式(383)の条件を用いて、式(371)の電極間起電力E7π0を近似したものを2・{J1(mp)/J0(mp)}・exp(j・π/2)倍した起電力EdA71は次式で表される。この起電力EdA71は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA71≒E7π0・2・{J1(mp)/J0(mp)}・exp(j・π/2)
・・・(384)
EdA71=2・J1(mp)・rk
・exp{j・(π/2+θ12[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
・・・(385)
起電力EdA71は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この起電力EdA71を用いて起電力和E7πs0b(合成ベクトルVas0+Vbs0)中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。式(381)の起電力和E7πs0bを式(385)の起電力EdA71で正規化し、ω0倍した結果をEn70とすれば、正規化起電力和En70は次式で表される。
En70=(E7πs0b/EdA71)・ω0
=2・J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ12[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}]
/[2・J1(mp)・rk・exp{j・(π/2+θ12[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}]・ω0
=ω0・{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
/{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(386)
式(52)を用いると、式(386)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b12[ω0]−b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}/{b12[ω0]+b13[ω0]・exp(j・Δθ13[ω0])}を、角周波数ω0に関係しない値{b12−b13・exp(j・Δθ13)}/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}で表すことができる。したがって、式(386)を次式のように置き換えることができる。
En70=ω0・{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(387)
式(387)の第2項が、v×Bにより発生する成分を正規化した項となる。なお、起電力和E7πs0bを起電力EdA71で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(387)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(387)の右辺第1項を除去する方法について説明する。搬送波の角周波数をω0の代わりにω2とする場合、前記の式(340)、式(341)においてθ13をπ+θ13で置き換えた式で磁場B12,B13が表される。角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。角周波数ω2においてスパン補正の対象となる起電力和E7πs2は、式(372)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E7πp2と式(373)において角周波数ω0をω2で置き換えた電極間起電力E7πm2との和E7πp2+E7πm2で表される。第2の∂A/∂t成分の基となる電極間起電力E7π2は、式(371)において角周波数ω0をω2で置き換えたもので表される。第2の∂A/∂t成分となる起電力EdA72は、式(385)において角周波数ω0をω2で置き換えたものとなる。
起電力和E7πs2を起電力EdA72で正規化し、ω2倍した結果をEn72とすれば、正規化起電力和En72は式(387)より次式で表される。
En72=ω2・{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(388)
正規化起電力和En70とEn72との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA73とすれば、差分EdA73は次式で表される。この差分EdA73は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdA73=(En70−En72)・ω0/(ω0−ω2)
=[{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}
・ω0+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}
・ω2−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]
・ω0/(ω0−ω2)
={b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}・ω0 ・・(389)
差分EdA73は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(387)の右辺第1項と等しくなるので、この差分EdA73を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力和En70から取り出すことができる。式(387)の正規化起電力和En70から式(389)の差分EdA73を引いたときに得られるv×B成分をEvBn7とすると、v×B成分EvBn7は次式で表される。
EvBn7=En70−EdA73
={b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}・ω0
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−{b12−b13・exp(j・Δθ13)}
/{b12+b13・exp(j・Δθ13)}・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(390)
v×B成分EvBn7は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBn7も0となることから分かるように、v×B成分EvBn7より、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。流速の大きさVにかかる係数の大きさと方向は、複素ベクトル[γ・rk・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]で表される。式(390)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn7/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn7|/γ ・・・(391)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表7のとおりである。本実施の形態は、表7から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第1の実施の形態と同様であるので、図16の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bと、電源部4と、信号変換部5と、流量出力部6とを有する。
信号変換部5は、第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において電極2a,2bで検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の∂A/∂t成分として抽出し、第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ω1の成分と角周波数ω0−ω1の成分との起電力和を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ω1の成分と角周波数ω2−ω1の成分との起電力和を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51と、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52とから構成される。
電源部4の動作は第6の実施の形態と同じである。本実施の形態の信号変換部5と流量出力部6の処理の流れは第5の実施の形態と同様であるので、図22の符号を用いて信号変換部5と流量出力部6の動作を説明する。まず、信号変換部5のスパン補正部51は、第6の実施の形態で説明した第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E7π0の振幅r7π0を求めると共に、実軸と電極間起電力E7π0との位相差φ7π0を図示しない位相検波器により求める(図22ステップ501)。また、スパン補正部51は、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω0+ω1)の成分と角周波数(ω0−ω1)成分との和E7πs0の振幅r7πs0を求めると共に、実軸と起電力和E7πs0との位相差φ7πs0を位相検波器により求める(ステップ502)。
続いて、スパン補正部51は、第6の実施の形態で説明した第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E7π2の振幅r7π2を求めると共に、実軸と電極間起電力E7π2との位相差φ7π2を位相検波器により求める(ステップ503)。また、スパン補正部51は、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数(ω2+ω1)の成分と角周波数(ω2−ω1)成分との和E7πs2の振幅r7πs2を求めると共に、実軸と起電力和E7πs2との位相差φ7πs2を位相検波器により求める(ステップ504)。
次に、スパン補正部51は、電極間起電力E7π0を近似した起電力EdA71の大きさと角度を求める(ステップ505)。このステップ505の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(385)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、起電力EdA71の大きさ|EdA71|を次式のように算出する。
|EdA71|=r7π0 ・・・(392)
そして、スパン補正部51は、起電力EdA71の角度∠EdA71を次式のように算出する。
∠EdA71=φ7π0 ・・・(393)
これで、ステップ505の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、起電力和E7πs0を起電力EdA71で正規化した正規化起電力和En70の大きさと角度を求める(ステップ506)。このステップ506の処理は、式(387)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力和En70の大きさ|En70|を次式のように算出する。
|En70|=(r7πs0/|EdA71|)・ω0 ・・・(394)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力和En70の角度∠En70を次式のように算出する。
∠En70=φ7πs0−∠EdA71 ・・・(395)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力和En70の実軸成分En70xと虚軸成分En70yを次式のように算出する。
En70x=|En70|・cos(∠En70) ・・・(396)
En70y=|En70|・sin(∠En70) ・・・(397)
これで、ステップ506の処理が終了する。
次に、スパン補正部51は、電極間起電力E7π2を近似した起電力EdA72の大きさと角度を求める(ステップ507)。このステップ507の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理である。スパン補正部51は、起電力EdA72の大きさ|EdA72|を次式のように算出する。
|EdA72|=r7π2 ・・・(398)
そして、スパン補正部51は、起電力EdA72の角度∠EdA72を次式のように算出する。
∠EdA72=φ7π2 ・・・(399)
これで、ステップ507の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51は、起電力和E7πs2を起電力EdA72で正規化した正規化起電力和En72の大きさと角度を求める(ステップ508)。このステップ508の処理は、式(388)の算出に相当する処理である。スパン補正部51は、正規化起電力和En72の大きさ|En72|を次式のように算出する。
|En72|=(r7πs2/|EdA72|)・ω2 ・・・(400)
そして、スパン補正部51は、正規化起電力和En72の角度∠En72を次式のように算出する。
∠En72=φ7πs2−∠EdA72 ・・・(401)
さらに、スパン補正部51は、正規化起電力和En72の実軸成分En72xと虚軸成分En72yを次式のように算出する。
En72x=|En72|・cos(∠En72) ・・・(402)
En72y=|En72|・sin(∠En72) ・・・(403)
これで、ステップ508の処理が終了する。
次に、信号変換部5の0点補正部52は、正規化起電力和En70とEn72との差分EdA73の大きさを求める(ステップ509)。このステップ509の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(389)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、差分EdA73の実軸成分EdA73xと虚軸成分EdA73yを次式のように算出する。
EdA73x=(En70x−En72x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(404)
EdA73y=(En70y−En72y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(405)
そして、0点補正部52は、正規化起電力和En70から差分EdA73を取り除き、v×B成分EvBn7の大きさを求める(ステップ510)。このステップ510の処理は、式(390)の算出に相当する処理である。0点補正部52は、v×B成分EvBn7の大きさ|EvBn7|を次式のように算出する。
|EvBn7|={(En70x−EdA73x)2
+(En70y−EdA73y)21/2 ・・・(406)
流量出力部6は、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ511)。このステップ511の処理は、式(391)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn7|/γ ・・・(407)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5と流量出力部6とは、以上のようなステップ501〜511の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ512においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ503〜511の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第1の励磁状態において、角周波数ω0の成分の起電力E7π0と、角周波数(ω0+ω1)の成分と角周波数(ω0−ω1)成分との起電力和E7πs0を求め、第2の励磁状態において、角周波数ω2の成分の起電力E7π2と、角周波数(ω2+ω1)の成分と角周波数(ω2−ω1)成分との起電力和E7πs2を求める。そして、本実施の形態では、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B12と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B13とが等しくなるように設定しておくと、電極間起電力E7π0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また電極間起電力E7π2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて起電力和E7πs0中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて起電力和E7πs2中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力和En70とEn72とから差分EdA73(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力和En70から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、起電力和E7πs0のv×B成分を起電力E7π0から抽出した同じ角周波数の第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、起電力和E7πs2のv×B成分を起電力E7π2から抽出した同じ角周波数の第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力和En70とEn72との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。
また、本実施の形態では、搬送波の周波数を切り換えるだけで、磁場の位相差を切り換える必要がなく、第1の実施の形態のように4つの励磁状態を用いる必要がないので、より高速に流量を算出することが可能になる。
なお、本実施の形態では、起電力和E7πs0を0補正およびスパン補正の対象としたが、起電力和E7πs2を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力和En72とEn70とから差分EdA73(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdA73=(En72−En70)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(408)
そして、次式のように正規化起電力和En72から差分EdA73を引くことによりv×B成分EvBn7を求めるようにすればよい。その他の処理は起電力和E7πs0を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn7|=|En72−EdA73| ・・・(409)
[第8の実施の形態]
次に、本発明の第8の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図13に示した電磁流量計と同様であるので、図13の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。新たに追加する第2の電極を既存の第1の電極と同じ側に追加した場合には、第1の実施の形態の冗長な構成となる。したがって、第2の電極は、励磁コイルを挟んで第1の電極と異なる側に配設する必要がある。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第1の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第1の抽出方法を用いるものである。
励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B4と、励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B5は、以下のように与えられるものとする。
B4=b4・cos(ω0・t−θ4) ・・・(410)
B5=b5・cos(ω0・t−θ5) ・・・(411)
但し、B4、B5は1つの励磁コイル3から発生しているので、b4とb5、θ4とθ5は互いに関係があり、独立変数ではない。式(410)、式(411)において、b4,b5はそれぞれ磁束密度B4,B5の振幅、ω0は角周波数、θ4は磁束密度B4とω0・tとの位相差(位相遅れ)、θ5は磁束密度B5とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B4を磁場B4とし、磁束密度B5を磁場B5とする。
磁場の損失を考慮して、角周波数ω0における磁場B4,B5の振幅b4,b5をそれぞれb4[ω0],b5[ω0]と関数表記に変更し、同様に磁場B4,B5の位相差θ4,θ5をそれぞれθ4[ω0],θ5[ω0]と変更すると、式(410)、式(411)は式(412)、式(413)に置き換わる。
B4=b4[ω0]・cos(ω0・t−θ4[ω0]) ・・・(412)
B5=b5[ω0]・cos(ω0・t−θ5[ω0]) ・・・(413)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、励磁コイル3から発生する磁場BdのうちB4,B5を次式のように微分する。
dB4/dt=ω0・cos(ω0・t)・b4[ω0]・{sin(θ4[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)・b4[ω0]・{−cos(θ4[ω0])}
・・・(414)
dB5/dt=ω0・cos(ω0・t)・b5[ω0]・{sin(θ5[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)・b5[ω0]・{−cos(θ5[ω0])}
・・・(415)
被測定流体の流量が0の場合、電極軸EAX1と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bdの変化によって発生する、流速と無関係な第1の電極間起電力E1と、電極軸EAX2と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bdの変化によって発生する、流速と無関係な第2の電極間起電力E2は、図14に示すように互いに逆向きとなる。このとき、第1の電極間起電力E1と第2の電極間起電力E2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場の時間微分(−dB4/dt、dB5/dt)に比例係数rkをかけ、位相差θ4,θ5をそれぞれθ4+θ00,θ5+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E1=rk・ω0・cos(ω0・t)・b4[ω0]
・{−sin(θ4[ω0]+θ00)}
+rk・ω0・sin(ω0・t)・b4[ω0]
・{cos(θ4[ω0]+θ00)} ・・・(416)
E2=rk・ω0・cos(ω0・t)・b5[ω0]
・{sin(θ5[ω0]+θ00)}
+rk・ω0・sin(ω0・t)・b5[ω0]
・{−cos(θ5[ω0]+θ00)} ・・・(417)
被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する第1の電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する第2の電極間起電力Ev2は、図15に示すように同じ向きとなる。このとき、第1の電極間起電力Ev1と第2の電極間起電力Ev2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場(B4、B5)に比例係数rkvをかけ、位相差θ4,θ5をそれぞれθ4+θ01,θ5+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev1=rkv・cos(ω0・t)・b4[ω0]・cos(θ4[ω0]+θ01)
+rkv・sin(ω0・t)・b4[ω0]・sin(θ4[ω0]+θ01)
・・・(418)
Ev2=rkv・cos(ω0・t)・b5[ω0]・cos(θ5[ω0]+θ01)
+rkv・sin(ω0・t)・b5[ω0]・sin(θ5[ω0]+θ01)
・・・(419)
図14、図15で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E810cは、式(416)、式(418)に式(17)を適用することにより次式で表される。
E810c=rk・ω0・b4[ω0]
・exp{j・(π/2+θ4[ω0]+θ00)}
+γ・rk・V・b4[ω0]・exp{j・(θ4[ω0]+θ01)}
・・・(420)
磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E82cは、式(417)、式(419)に式(17)を適用することにより次式で表される。
E820c=rk・ω0・b5[ω0]
・exp{j・(−π/2+θ5[ω0]+θ00)}
+γ・rk・V・b5[ω0]・exp{j・(θ5[ω0]+θ01)}
・・・(421)
ここで、磁場B4の角周波数ω0の成分の位相遅れθ4[ω0]と磁場B5の角周波数ω0の成分の位相遅れθ5[ω0]との関係をθ5[ω0]=θ4[ω0]+Δθ5[ω0]とし、かつ虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(420)にθ5[ω0]=θ4[ω0]+Δθ5[ω0]、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分E810cと式(421)にθ5[ω0]=θ4[ω0]+Δθ5[ω0]、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分E820cとの和をE8s0とすれば、起電力和E8s0は次式で表される。
E8s0=rk・exp{j・(θ4[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b4[ω0]−b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b4[ω0]+b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}]
・・・(422)
また、式(420)にθ5[ω0]=θ4[ω0]+Δθ5[ω0]、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分E810cと式(421)にθ5[ω0]=θ4[ω0]+Δθ5[ω0]、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分E820cとの差をE8d0とすれば、起電力差E8d0は次式で表される。
E8d0=rk・exp{j・(θ4[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b4[ω0]+b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b4[ω0]−b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}]
・・・(423)
初期状態(校正時の状態)において、励磁コイル3から発生する磁場B4とB5とを等しく設定しておくと、その後の磁場B4とB5の初期状態からの差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b4[ω0]+b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])|
≫|b4[ω0]−b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])| ・・・(424)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(424)の条件を考慮すると、式(423)において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)
・{b4[ω0]+b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b4[ω0]−b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}|
・・・(425)
式(425)の条件を用いて、起電力差E8d0を近似した起電力差EdA81は次式のように表される。この起電力EdA81は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA81≒E8d0 ・・・(426)
EdA81=rk・exp{j・(θ4[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b4[ω0]+b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}
・・・(427)
起電力差EdA81は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この起電力差EdA81を用いて起電力和E8s0中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。式(422)の起電力和E8s0を式(426)の起電力差EdA81で正規化し、ω0倍した結果をEn80とすれば、正規化起電力和En80は次式で表される。
En80=(E8s0/EdA81)・ω0
=rk・exp{j・(θ4[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b4[ω0]−b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b4[ω0]+b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}]
/[rk・exp{j・(θ4[ω0]+θ00)}・ω0・exp(j・π/2)
・{b4[ω0]+b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}]・ω0
=ω0・{b4[ω0]−b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}
/{b4[ω0]+b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(428)
式(52)を用いると、式(428)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b4[ω0]−b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}/{b4[ω0]+b5[ω0]・exp(j・Δθ5[ω0])}を、角周波数ω0に関係しない値{b4−b5・exp(j・Δθ5)}/{b4+b5・exp(j・Δθ5)}で表すことができる。したがって、式(428)を次式のように置き換えることができる。
En80=ω0・{b4−b5・exp(j・Δθ5)}
/{b4+b5・exp(j・Δθ5)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(429)
式(429)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を∂A/∂tにより発生する成分で正規化した項となる。なお、起電力和E8s0を起電力差EdA81で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。式(429)によれば、流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(429)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(429)の右辺第1項を除去する方法について説明する。式(412)、式(413)において励磁角周波数をω0の代わりにω2とすると、磁場B4,B5は次式で表される。
B4=b4[ω2]・cos(ω2・t−θ4[ω2]) ・・・(430)
B5=b5[ω2]・cos(ω2・t−θ5[ω2]) ・・・(431)
角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。角周波数ω2においてスパン補正の対象となる起電力和E8s2は、式(422)において角周波数ω0をω2で置き換えたもので表される。第2の∂A/∂t成分の基となる起電力差E8d2は、式(423)において角周波数ω0をω2で置き換えたもので表される。第2の∂A/∂t成分となる起電力差EdA82は、式(427)において角周波数ω0をω2で置き換えたものとなる。
起電力和E8s2を起電力差EdA82で正規化し、ω2倍した結果をEn82とすれば、正規化起電力和En82は式(429)より次式で表される。
En82=ω2・{b4−b5・exp(j・Δθ5)}
/{b4+b5・exp(j・Δθ5)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(432)
正規化起電力和En80とEn82との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA83とすれば、差分EdA83は次式で表される。この起電力和の差分EdA83は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdA83=(En20−En22)・ω0/(ω0−ω2)
=[ω0・{b4−b5・exp(j・Δθ5)}
/{b4+b5・exp(j・Δθ5)}
+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−ω2・{b4−b5・exp(j・Δθ5)}
/{b4+b5・exp(j・Δθ5)}
−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]
・ω0/(ω0−ω2)
=ω0・{b4−b5・exp(j・Δθ5)}
/{b4+b5・exp(j・Δθ5)} ・・・(433)
差分EdA83は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(429)の右辺第1項と等しくなるので、この差分EdA83を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力和En80から取り出すことができる。式(429)の正規化起電力和En80から式(433)の差分EdA83を引いたときに得られるv×B成分をEvBn8とすると、v×B成分EvBn8は次式で表される。
EvBn8=En80−EdA83
=ω0・{b4−b5・exp(j・Δθ5)}
/{b4+b5・exp(j・Δθ5)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−ω0・{b4−b5・exp(j・Δθ5)}
/{b4+b5・exp(j・Δθ5)}
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(434)
v×B成分EvBn8は角周波数ω0に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBn8も0となることから分かるように、v×B成分EvBn8より、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。式(434)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn8/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn8|/γ ・・・(435)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表8のとおりである。本実施の形態は、表8から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。図23は本実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図であり、図13と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bと、第2の電極2c,2dと、励磁コイル3と、電源部4aと、信号変換部5aと、信号変換部5aによって抽出されたv×B成分から流体の流量を算出する流量出力部6aとを有している。
信号変換部5aは、第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において第1の電極2a,2bで検出される第1の合成起電力と第2の電極2c,2dで検出される第2の合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一励磁状態の起電力和および同一励磁状態の起電力差を第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々について求め、第1の励磁状態の起電力差を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の励磁状態の起電力差を第2の∂A/∂t成分として抽出し、第1の励磁状態の起電力和を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、第2の励磁状態の起電力和を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51aと、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52aとから構成される。
電源部4aは、角周波数ω0の励磁電流を励磁コイル3に供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、続いて角周波数ω2の励磁電流を励磁コイル3に供給する第2の励磁状態をT2秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2である。
図24は信号変換部5aと流量出力部6aの動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5aのスパン補正部51aは、第1の励磁状態において、電極2a,2b間の第1の電極間起電力と電極2c,2d間の第2の電極間起電力との和E8s0の振幅r8s0を求めると共に、実軸と起電力和E8s0との位相差φ8s0を図示しない位相検波器により求める。また、スパン補正部51aは、第1の励磁状態において、第1の電極間起電力と第2の電極間起電力との差E8d0の振幅r8d0を求めると共に、実軸と起電力差E8d0との位相差φ8d0を位相検波器により求める(図24ステップ601)。
続いて、スパン補正部51aは、第2の励磁状態において、第1の電極間起電力と第2の電極間起電力との和E8s2の振幅r8s2を求めると共に、実軸と起電力和E8s2との位相差φ8s2を位相検波器により求める。また、スパン補正部51aは、第2の励磁状態において、第1の電極間起電力と第2の電極間起電力との差E8d2の振幅r8d2を求めると共に、実軸と起電力差E8d2との位相差φ8d2を位相検波器により求める(ステップ602)。
次に、スパン補正部51aは、起電力差E8d0を近似した起電力差EdA81の大きさと角度を求める(ステップ603)。このステップ603の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(427)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、起電力差EdA81の大きさ|EdA81|を次式のように算出する。
|EdA81|=r8d0 ・・・(436)
そして、スパン補正部51aは、起電力差EdA81の角度∠EdA81を次式のように算出する。
∠EdA81=φ8d0 ・・・(437)
これで、ステップ603の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51aは、起電力和E8s0を起電力差EdA81で正規化した正規化起電力和En80の大きさと角度を求める(ステップ604)。このステップ604の処理は、式(429)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、正規化起電力和En80の大きさ|En80|を次式のように算出する。
|En80|=(r8s0/|EdA81|)・ω0 ・・・(438)
そして、スパン補正部51aは、正規化起電力和En80の角度∠En80を次式のように算出する。
∠En80=φ8s0−∠EdA81 ・・・(439)
さらに、スパン補正部51aは、正規化起電力和En80の実軸成分En80xと虚軸成分En80yを次式のように算出する。
En80x=|En80|・cos(∠En80) ・・・(440)
En80y=|En80|・sin(∠En80) ・・・(441)
これで、ステップ604の処理が終了する。
次に、スパン補正部51aは、起電力差E8d2を近似した起電力差EdA82の大きさと角度を求める(ステップ605)。このステップ605の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理である。スパン補正部51aは、起電力差EdA82の大きさ|EdA82|を次式のように算出する。
|EdA82|=r8d2 ・・・(442)
そして、スパン補正部51aは、起電力差EdA82の角度∠EdA82を次式のように算出する。
∠EdA82=φ8d2 ・・・(443)
これで、ステップ605の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51aは、起電力和E8s2を起電力差EdA82で正規化した正規化起電力和En82の大きさと角度を求める(ステップ606)。このステップ606の処理は、式(432)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、正規化起電力和En82の大きさ|En82|を次式のように算出する。
|En82|=(r8s2/|EdA82|)・ω2 ・・・(444)
そして、スパン補正部51aは、正規化起電力和En82の角度∠En82を次式のように算出する。
∠En82=φ8s2−∠EdA82 ・・・(445)
さらに、スパン補正部51aは、正規化起電力和En82の実軸成分En82xと虚軸成分En82yを次式のように算出する。
En82x=|En82|・cos(∠En82) ・・・(446)
En82y=|En82|・sin(∠En82) ・・・(447)
これで、ステップ606の処理が終了する。
次に、信号変換部5aの0点補正部52aは、正規化起電力和En80とEn82との差分EdA83の大きさを求める(ステップ607)。このステップ607の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(433)の算出に相当する処理である。0点補正部52aは、差分EdA83の実軸成分EdA83xと虚軸成分EdA83yを次式のように算出する。
EdA83x=(En80x−En82x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(448)
EdA83y=(En80y−En82y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(449)
そして、0点補正部52aは、正規化起電力和En80から差分EdA83を取り除き、v×B成分EvBn8の大きさを求める(ステップ608)。このステップ608の処理は、式(434)の算出に相当する処理である。0点補正部52aは、v×B成分EvBn8の大きさ|EvBn8|を次式のように算出する。
|EvBn8|={(En80x−EdA83x)2
+(En80y−EdA83y)21/2 ・・・(450)
流量出力部6aは、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ609)。このステップ609の処理は、式(435)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn8|/γ ・・・(451)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5aと流量出力部6aとは、以上のようなステップ601〜609の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ610においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ602〜609の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第1の励磁状態において起電力和E8s0と起電力差E8d0を求め、第2の励磁状態において起電力和E8s2と起電力差E8d2を求める。そして、本実施の形態では、励磁コイル3から発生する磁場B4とB5とが等しくなるように設定しておくと、起電力差E8d0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また起電力差E8d2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて起電力和E8s0中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて起電力和E8s2中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力和En80とEn82とから差分EdA83(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力和En80から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、起電力和E8s0のv×B成分を起電力差E8d0から抽出した同じ角周波数の第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、起電力和E8s2のv×B成分を起電力差E8d2から抽出した同じ角周波数の第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力和En80とEn82との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。
なお、本実施の形態では、起電力和E8s0を0補正およびスパン補正の対象としたが、起電力和E8s2を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力和En82とEn80とから差分EdA83(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdA83=(En82−En80)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(452)
そして、次式のように正規化起電力和En82から差分EdA83を引くことによりv×B成分EvBn8を求めるようにすればよい。その他の処理は起電力和E8s0を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn8|=|En82−EdA83| ・・・(453)
[第9の実施の形態]
次に、本発明の第9の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図13に示した電磁流量計と同様であるので、図13の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第1の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第1の抽出方法を用いるものである。
励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B14と、励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B15は、以下のように与えられるものとする。
B14=b14・cos(ω0・t−θ14)+b14・cos(ω2・t−θ14) ・・・(454)
B15=b15・cos(ω0・t−θ15)+b15・cos(ω2・t−θ15) ・・・(455)
但し、B14,B15は1つの励磁コイル3から発生しているので、b14とb15、θ14とθ15は互いに関係があり、独立変数ではない。式(454)、式(455)において、ω0,ω2は異なる角周波数、b14は磁束密度B14の角周波数ω0の成分の振幅および角周波数ω2の成分の振幅、b15は磁束密度B15の角周波数ω0の成分の振幅および角周波数ω2の成分の振幅、θ14は磁束密度B14の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差(位相遅れ)および角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差、θ15は磁束密度B15の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差および角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差である。以下、磁束密度B14を磁場B14とし、磁束密度B15を磁場B15とする。
それぞれの角周波数における磁場の損失を考慮して、磁場B14,B15の角周波数ω0の成分の振幅b14,b15をそれぞれb14[ω0],b15[ω0]と関数表記に変更し、同様に角周波数ω0の成分の位相差θ14,θ15をそれぞれθ14[ω0],θ15[ω0]と変更する。さらに、磁場B14,B15の角周波数ω2の成分の振幅b14,b15をそれぞれb14[ω2],b15[ω2]と関数表記に変更し、同様に角周波数ω2の成分の位相差θ14,θ15をそれぞれθ14[ω2],θ15[ω2]と変更する。これにより、式(454)、式(455)は式(456)、式(457)に置き換わる。
B14=b14[ω0]・cos(θ14[ω0])・cos(ω0・t)
+b14[ω0]・sin(θ14[ω0])・sin(ω0・t)
+b14[ω2]・cos(θ14[ω2])・cos(ω2・t)
+b14[ω2]・sin(θ14[ω2])・sin(ω2・t)
・・・(456)
B15=b15[ω0]・cos(θ15[ω0])・cos(ω0・t)
+b15[ω0]・sin(θ15[ω0])・sin(ω0・t)
+b15[ω2]・cos(θ15[ω2])・cos(ω2・t)
+b15[ω2]・sin(θ15[ω2])・sin(ω2・t)
・・・(457)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、励磁コイル3から発生する磁場BdのうちB14,B15を次式のように微分する。
dB14/dt=ω0・cos(ω0・t)・b14[ω0]
・{sin(θ14[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)・b14[ω0]
・{−cos(θ14[ω0])}
+ω2・cos(ω2・t)・b14[ω2]
・{sin(θ14[ω2])}
+ω2・sin(ω2・t)・b14[ω2]
・{−cos(θ14[ω2])} ・・・(458)
dB15/dt=ω0・cos(ω0・t)・b15[ω0]
・{sin(θ15[ω0])}
+ω0・sin(ω0・t)・b15[ω0]
・{−cos(θ15[ω0])}
+ω2・cos(ω2・t)・b15[ω2]
・{sin(θ15[ω2])}
+ω2・sin(ω2・t)・b15[ω2]
・{−cos(θ15[ω2])} ・・・(459)
被測定流体の流量が0の場合、電極軸EAX1と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bdの変化によって発生する、流速と無関係な第1の電極間起電力E1と、電極軸EAX2と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bdの変化によって発生する、流速と無関係な第2の電極間起電力E2は、図14に示すように互いに逆向きとなる。このとき、第1の電極間起電力E1と第2の電極間起電力E2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場の時間微分(−dB14/dt、dB15/dt)にω0,ω2それぞれの角周波数成分における比例係数rkをかけ、位相差θ14,θ15をそれぞれθ14+θ00,θ15+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E1=rk・ω0・cos(ω0・t)・b14[ω0]
・{−sin(θ14[ω0]+θ00)}
+rk・ω0・sin(ω0・t)・b14[ω0]
・{cos(θ14[ω0]+θ00)}
+rk・ω2・cos(ω2・t)・b14[ω2]
・{−sin(θ14[ω2]+θ00)}
+rk・ω2・sin(ω2・t)・b14[ω2]
・{cos(θ14[ω2]+θ00)} ・・・(460)
E2=rk・ω0・cos(ω0・t)・b15[ω0]
・{sin(θ15[ω0]+θ00)}
+rk・ω0・sin(ω0・t)・b15[ω0]
・{−cos(θ15[ω0]+θ00)}
+rk・ω2・cos(ω2・t)・b15[ω2]
・{sin(θ15[ω2]+θ00)}
+rk・ω2・sin(ω2・t)・b15[ω2]
・{−cos(θ15[ω2]+θ00)} ・・・(461)
被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する第1の電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する第2の電極間起電力Ev2は、図15に示すように同じ向きとなる。このとき、第1の電極間起電力Ev1と第2の電極間起電力Ev2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場(B14、B15)にω0,ω2それぞれの角周波数成分における比例係数rkvをかけ、位相差θ14,θ15をそれぞれθ14+θ01,θ15+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev1=rkv・cos(ω0・t)・b14[ω0]
・cos(θ14[ω0]+θ01)
+rkv・sin(ω0・t)・b14[ω0]
・sin(θ14[ω0]+θ01)
+rkv・cos(ω2・t)・b14[ω2]
・cos(θ14[ω2]+θ01)
+rkv・sin(ω2・t)・b14[ω2]
・sin(θ14[ω2]+θ01) ・・・(462)
Ev2=rkv・cos(ω0・t)・b15[ω0]
・cos(θ15[ω0]+θ01)
+rkv・sin(ω0・t)・b15[ω0]
・sin(θ15[ω0]+θ01)
+rkv・cos(ω2・t)・b15[ω2]
・cos(θ15[ω2]+θ01)
+rkv・sin(ω2・t)・b15[ω2]
・sin(θ15[ω2]+θ01) ・・・(463)
図14、図15で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E910cは、式(460)の第1項および第2項と式(462)の第1項および第2項と式(17)とから次式で表される。
E910c=rk・ω0・b14[ω0]
・exp{j・(π/2+θ14[ω0]+θ00)}
+γ・rk・V・b14[ω0]・exp{j・(θ14[ω0]+θ01)}
・・・(464)
磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E912cは、式(460)の第3項および第4項と式(462)の第3項および第4項と式(17)とから次式で表される。
E912c=rk・ω2・b14[ω2]
・exp{j・(π/2+θ14[ω2]+θ00)}
+γ・rk・V・b14[ω2]・exp{j・(θ14[ω2]+θ01)}
・・・(465)
磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E920cは、式(461)の第1項および第2項と式(463)の第1項および第2項と式(17)とから次式で表される。
E920c=rk・(ω0)・b15[ω0]
・exp{j・(−π/2+θ15[ω0]+θ00)}
+γ・rk・V・b15[ω0]・exp{j・(θ15[ω0]+θ01)}
・・・(466)
磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E922cは、式(461)の第3項および第4項と式(463)の第3項および第4項と式(17)とから次式で表される。
E922c=rk・(ω2)・b15[ω2]
・exp{j・(−π/2+θ15[ω2]+θ00)}
+γ・rk・V・b15[ω2]・exp{j・(θ15[ω2]+θ01)}
・・・(467)
ここで、磁場B14の角周波数ω0の成分の位相遅れθ14[ω0]と磁場B15の角周波数ω0の成分の位相遅れθ15[ω0]との関係をθ15[ω0]=θ14[ω0]+Δθ15[ω0]とし、かつ虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(464)にθ01=θ00+Δθ01、θ15[ω0]=θ14[ω0]+Δθ15[ω0]を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分E910cと式(466)にθ01=θ00+Δθ01、θ15[ω0]=θ14[ω0]+Δθ15[ω0]を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分E920cとの和をE9s0とすれば、起電力和E9s0は次式で表される。
E9s0=rk・exp{j・(θ14[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b14[ω0]−b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b14[ω0]+b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}]
・・・(468)
また、式(464)にθ01=θ00+Δθ01、θ15[ω0]=θ14[ω0]+Δθ15[ω0]を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分E910cと式(466)にθ01=θ00+Δθ01、θ15[ω0]=θ14[ω0]+Δθ15[ω0]を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分E920cとの差をE9d0とすれば、起電力差E9d0は次式で表される。
E9d0=rk・exp{j・(θ14[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b14[ω0]+b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b14[ω0]−b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}]
・・・(469)
また、磁場B14の角周波数ω2の成分の位相遅れθ14[ω2]と磁場B15の角周波数ω2の成分の位相遅れθ15[ω2]との関係をθ15[ω2]=θ14[ω2]+Δθ15[ω2]とする。式(465)にθ01=θ00+Δθ01、θ15[ω2]=θ14[ω2]+Δθ15[ω2]を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分E912cと式(467)にθ01=θ00+Δθ01、θ15[ω2]=θ14[ω2]+Δθ15[ω2]を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分E922cとの和をE9s2とすれば、起電力和E9s2は次式で表される。
E9s2=rk・exp{j・(θ14[ω2]+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)
・{b14[ω2]−b15[ω2]・exp(j・Δθ15[ω2])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b14[ω2]+b15[ω2]・exp(j・Δθ15[ω2])}]
・・・(470)
さらに、式(465)にθ01=θ00+Δθ01、θ15[ω2]=θ14[ω2]+Δθ15[ω2]を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分E912cと式(467)にθ01=θ00+Δθ01、θ15[ω2]=θ14[ω2]+Δθ15[ω2]を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分E922cとの差をE9d2とすれば、起電力差E9d2は次式で表される。
E9d2=rk・exp{j・(θ14[ω2]+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)
・{b14[ω2]+b15[ω2]・exp(j・Δθ15[ω2])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b14[ω2]−b15[ω2]・exp(j・Δθ15[ω2])}]
・・・(471)
初期状態(校正時の状態)において、励磁コイル3から発生する磁場B14とB15とを等しく設定しておくと、その後の磁場B14とB15の初期状態からの差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b14[ω0]+b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])|
≫|b14[ω0]−b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])|
・・・(472)
|b14[ω2]+b15[ω2]・exp(j・Δθ15[ω2])|
≫|b15[ω2]−b15[ω2]・exp(j・Δθ15[ω2])|
・・・(473)
また、通常ω0>γ・V、ω2>γ・Vが成り立つことから、式(472)の条件を考慮すると、式(469)において式(474)の条件が成り立ち、式(473)の条件を考慮すると式(471)において式(475)の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)
・{b14[ω0]+b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b14[ω0]−b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}|
・・・(474)
|ω2・exp(j・π/2)
・{b14[ω2]+b15[ω2]・exp(j・Δθ15[ω2])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b14[ω2]−b15[ω2]・exp(j・Δθ15[ω2])}|
・・・(475)
式(474)の条件を用いて、式(469)の起電力差E9d0を近似したものをEdA91とすれば、起電力差EdA91は次式で表される。この起電力差EdA91は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA91≒E9d0 ・・・(476)
EdA91=rk・exp{j・(θ14[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b14[ω0]+b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}
・・・(477)
起電力差EdA91は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この起電力差EdA91を用いて起電力和E9s0中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。起電力和E9s0を起電力差EdA91で正規化し、ω0倍した結果をEn90とすれば、正規化起電力和En90は次式で表される。
En90=(E9s0/EdA91)・ω0
=rk・exp{j・(θ1[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b14[ω0]−b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b14[ω0]+b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}]
/[rk・exp{j・(θ14[ω0]+θ00)}・ω0・exp(j・π/2)
・{b14[ω0]+b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}]・ω0
=ω0・{b14[ω0]−b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}
/{b14[ω0]+b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(478)
式(52)を用いると、式(478)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b14[ω0]−b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}/{b14[ω0]+b15[ω0]・exp(j・Δθ15[ω0])}を、角周波数ω0に関係しない値{b14−b15・exp(j・Δθ15)}/{b14+b15・exp(j・Δθ15)}で表すことができる。したがって、式(478)を次式のように置き換えることができる。
En90=ω0・{b14−b15・exp(j・Δθ15)}
/{b14+b15・exp(j・Δθ15)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(479)
式(479)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を正規化した項となる。なお、起電力和E9s0を起電力差EdA91で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(479)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂t成分を用いてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(479)の右辺第1項を除去する方法について説明する。角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。式(475)の条件を用いて、式(471)の起電力差E9d2を近似したものをEdA92とすれば、起電力差EdA92は次式で表される。この起電力EdA92は基本原理における第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA92≒E9d2 ・・・(480)
EdA92=rk・exp{j・(θ14[ω2]+θ00)}
・ω2・exp(j・π/2)
・{b14[ω2]+b15[ω2]・exp(j・Δθ15[ω2])}
・・・(481)
式(470)の起電力和E9s2を式(481)の起電力差EdA92で正規化し、ω2倍した結果をEn92とすれば、正規化起電力和En92は式(479)より次式で表される。
En92=ω2・{b14−b15・exp(j・Δθ15)}
/{b14+b15・exp(j・Δθ15)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(482)
正規化起電力和En90とEn92との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA93とすれば、差分EdA93は次式で表される。この差分EdA93は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdA93=(En9a−En9b)・ω0/(ω0−ω2)
=[ω0・{b14−b15・exp(j・Δθ15)}
/{b14+b15・exp(j・Δθ15)}
+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−ω2・{b14−b15・exp(j・Δθ15)}
/{b14+b15・exp(j・Δθ15)}
−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]
・ω0/(ω0−ω2)
=ω0・{b14−b15・exp(j・Δθ15)}
/{b14+b15・exp(j・Δθ15)} ・・・(483)
差分EdA93は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(479)の右辺第1項と等しくなるので、この差分EdA93を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力和En90から取り出すことができる。式(479)の正規化起電力和En90から式(483)の差分EdA93を引いたときに得られるv×B成分をEvBn9とすると、v×B成分EvBn9は次式で表される。
EvBn9=En90−EdA93
=ω0・{b14−b15・exp(j・Δθ15)}
/{b14+b15・exp(j・Δθ15)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−ω0・{b14−b15・exp(j・Δθ15)}
/{b14+b15・exp(j・Δθ15)}
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(484)
v×B成分EvBn9は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBn9も0となることから分かるように、v×B成分EvBn9より、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。式(484)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn9/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn9|/γ ・・・(485)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表9のとおりである。本実施の形態は、表9から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第8の実施の形態と同様であるので、図23の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bと、第2の電極2c,2dと、励磁コイル3と、電源部4aと、信号変換部5aと、流量出力部6aとを有する。
信号変換部5aは、第1の電極2a,2bで検出される第1の合成起電力と第2の電極2c,2dで検出される第2の合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和および同一周波数成分の起電力差を角周波数ω0とω2の各々について求め、角周波数ω0の起電力差を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、角周波数ω2の起電力差を第2の∂A/∂t成分として抽出し、角周波数ω0の起電力和を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、角周波数ω2の起電力和を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51aと、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52aとから構成される。
本実施の形態の電源部4aは、角周波数ω0の正弦波成分と角周波数ω2の正弦波成分とを含む励磁電流を励磁コイル3に供給する。このとき、励磁電流における角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分の振幅は同一である。
図25は本実施の形態の信号変換部5aと流量出力部6aの動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5aのスパン補正部51aは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分E910cと第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分E920cとの和E9s0の振幅r9s0を求めると共に、実軸と起電力和E9s0との位相差φ9s0を図示しない位相検波器により求める。また、スパン補正部51aは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分E910cと第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分E920cとの差E9d0の振幅r9d0を求めると共に、実軸と起電力差E9d0との位相差φ9d0を位相検波器により求める。また、スパン補正部51aは、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分E912cと第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分E922cとの和E9s2の振幅r9s2を求めると共に、実軸と起電力和E9s2との位相差φ9s2を位相検波器により求める。さらに、スパン補正部51aは、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分E912cと第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分E922cとの差E9d2の振幅r9d2を求めると共に、実軸と起電力差E9d2との位相差φ9d2を位相検波器により求める(図25ステップ701)。電極間起電力E910c,E920c,E912c,E922cは、バンドパスフィルタやコムフィルタによって周波数分離することができる。
次に、スパン補正部51aは、起電力差E9d0を近似した起電力差EdA91の大きさと角度を求める(ステップ702)。このステップ702の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(477)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、起電力差EdA91の大きさ|EdA91|を次式のように算出する。
|EdA91|=r9d0 ・・・(486)
そして、スパン補正部51aは、起電力差EdA91の角度∠EdA91を次式のように算出する。
∠EdA91=φ9d0 ・・・(487)
これで、ステップ702の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51aは、起電力和E9s0を起電力差EdA91で正規化した正規化起電力和En90の大きさと角度を求める(ステップ703)。このステップ703の処理は、式(479)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、正規化起電力和En90の大きさ|En90|を次式のように算出する。
|En90|=(r9s0/|EdA91|)・ω0 ・・・(488)
そして、スパン補正部51aは、正規化起電力和En90の角度∠En90を次式のように算出する。
∠En90=φ9s0−∠EdA91 ・・・(489)
さらに、スパン補正部51aは、正規化起電力和En90の実軸成分En90xと虚軸成分En90yを次式のように算出する。
En90x=|En90|・cos(∠En90) ・・・(490)
En90y=|En90|・sin(∠En90) ・・・(491)
これで、ステップ703の処理が終了する。
次に、スパン補正部51aは、起電力差E9d2を近似した起電力差EdA92の大きさと角度を求める(ステップ704)。このステップ704の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(481)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、起電力差EdA92の大きさ|EdA92|を次式のように算出する。
|EdA92|=r9d2 ・・・(492)
そして、スパン補正部51aは、起電力差EdA92の角度∠EdA92を次式のように算出する。
∠EdA92=φ9d2 ・・・(493)
これで、ステップ704の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51aは、起電力和E9s2を起電力差EdA92で正規化した正規化起電力和En92の大きさと角度を求める(ステップ705)。このステップ705の処理は、式(482)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、正規化起電力和En92の大きさ|En92|を次式のように算出する。
|En92|=(r9s2/|EdA92|)・ω2 ・・・(494)
そして、スパン補正部51aは、正規化起電力和En92の角度∠En92を次式のように算出する。
∠En92=φ9s2−∠EdA92 ・・・(495)
さらに、スパン補正部51aは、正規化起電力和En92の実軸成分En92xと虚軸成分En92yを次式のように算出する。
En92x=|En92|・cos(∠En92) ・・・(496)
En92y=|En92|・sin(∠En92) ・・・(497)
これで、ステップ705の処理が終了する。
次に、信号変換部5aの0点補正部52aは、正規化起電力和En90とEn92との差分EdA93の大きさを求める(ステップ706)。このステップ706の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(483)の算出に相当する処理である。0点補正部52aは、差分EdA93の実軸成分EdA93xと虚軸成分EdA93yを次式のように算出する。
EdA93x=(En90x−En92x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(498)
EdA93y=(En90y−En92y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(499)
そして、0点補正部52aは、正規化起電力和En90から差分EdA93を取り除き、v×B成分EvBn9の大きさを求める(ステップ707)。このステップ707の処理は、式(484)の算出に相当する処理である。0点補正部52aは、v×B成分EvBn9の大きさ|EvBn9|を次式のように算出する。
|EvBn9|={(En90x−EdA93x)2
+(En90y−EdA93y)21/2 ・・・(500)
流量出力部6aは、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ708)。このステップ708の処理は、式(485)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn9|/γ ・・・(501)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5aと流量出力部6aとは、以上のようなステップ701〜708の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ709においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、角周波数ω0の起電力和E9s0と起電力差E9d0とを求めると共に、角周波数ω2の起電力和E9s2と起電力差E9d2とを求める。そして、本実施の形態では、励磁コイル3から発生する磁場B14とB15とが等しくなるように設定しておくと、起電力差E9d0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また起電力差E9d2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて起電力和E9s0中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて起電力和E9s2中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力和En90とEn92とから差分EdA93(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力和En90から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、起電力和E9s0のv×B成分を起電力差E9d0から抽出した同じ角周波数の第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、起電力和E9s2のv×B成分を起電力差E9d2から抽出した同じ角周波数の第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力和En90とEn92との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。
また、本実施の形態では、第8の実施の形態のように励磁周波数を切り替える必要がないため、より高速に流量を算出することが可能になる。
なお、本実施の形態では、2種類の周波数成分で励磁する例を示したが、3種類以上の周波数成分で励磁すれば、0補正の精度をさらに向上させることができる。3種類以上の周波数成分で励磁する例としては、変調が使用できる。角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波で励磁すれば、振幅変調の場合は角周波数ω0,ω0±ω1の成分の起電力を得ることができ、位相変調又は周波数変調の場合は角周波数ω0,ω0±ζ・ω1(ζは正の整数)の成分の起電力を得ることができる。この変調を使用する例は第4の実施の形態〜第7の実施の形態で示したものと同等なので、詳細な説明は省略する。
また、本実施の形態では、起電力和E9s0を0補正およびスパン補正の対象としたが、起電力和E9s2を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力和En92とEn90とから差分EdA93(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdA93=(En92−En90)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(502)
そして、次式のように正規化起電力和En92から差分EdA93を引くことによりv×B成分EvBn9を求めるようにすればよい。その他の処理は起電力和E9s0を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn9|=|En92−EdA93| ・・・(503)
[第10の実施の形態]
次に、本発明の第10の実施の形態について説明する。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図13に示した電磁流量計と同様であるので、図13の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。本実施の形態は、正規化の対象となる合成ベクトルVas0+Vbs0を検出する方法として基本原理で説明した第2の検出方法を用い、第1の∂A/∂t成分を抽出する方法として基本原理で説明した第2の抽出方法を用いるものである。
励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B16と、励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B17は、以下のように与えられるものとする。
B16=b16・cos(ωp・t−θ16)+b16・cos(ωm・t−θ16) ・・・(504)
B17=b17・cos(ωp・t−θ17)+b17・cos(ωm・t−θ17) ・・・(505)
但し、B16,B17は1つの励磁コイル3から発生しているので、b16とb17、θ16とθ17は互いに関係があり、独立変数ではない。式(504)、式(505)において、ωp,ωmは異なる角周波数、b16は磁束密度B16の角周波数ωpの成分の振幅および角周波数ωmの成分の振幅、b17は磁束密度B17の角周波数ωpの成分の振幅および角周波数ωmの成分の振幅、θ16は磁束密度B16の角周波数ωpの成分とωp・tとの位相差(位相遅れ)および角周波数ωmの成分とωm・tとの位相差、θ17は磁束密度B17の角周波数ωpの成分とωp・tとの位相差および角周波数ωmの成分とωm・tとの位相差である。以下、磁束密度B16を磁場B16とし、磁束密度B17を磁場B17とする。
それぞれの角周波数における磁場の損失を考慮して、磁場B16,B17の角周波数ωpの成分の振幅b16,b17をそれぞれb16[ωp],b17[ωp]と関数表記に変更し、同様に角周波数ωpの成分の位相差θ16,θ17をそれぞれθ16[ωp],θ17[ωp]と変更する。さらに、磁場B16,B17の角周波数ωmの成分の振幅b16,b17をそれぞれb16[ωm],b17[ωm]と関数表記に変更し、同様に角周波数ωmの成分の位相差θ16,θ17をそれぞれθ16[ωm],θ17[ωm]と変更する。これにより、式(504)、式(505)は式(506)、式(507)に置き換わる。
B16=b16[ωp]・cos(θ16[ωp])・cos(ωp・t)
+b16[ωp]・sin(θ16[ωp])・sin(ωp・t)
+b16[ωm]・cos(θ16[ωm])・cos(ωm・t)
+b16[ωm]・sin(θ16[ωm])・sin(ωm・t)
・・・(506)
B17=b17[ωp]・cos(θ17[ωp])・cos(ωp・t)
+b17[ωp]・sin(θ17[ωp])・sin(ωp・t)
+b17[ωm]・cos(θ17[ωm])・cos(ωm・t)
+b17[ωm]・sin(θ17[ωm])・sin(ωm・t)
・・・(507)
磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、励磁コイル3から発生する磁場BdのうちB16,B17を次式のように微分する。
dB16/dt=ωp・cos(ωp・t)・b16[ωp]
・{sin(θ16[ωp])}
+ωp・sin(ωp・t)・b16[ωp]
・{−cos(θ16[ωp])}
+ωm・cos(ωm・t)・b16[ωm]
・{sin(θ16[ωm])}
+ωm・sin(ωm・t)・b16[ωm]
・{−cos(θ16[ωm])} ・・・(508)
dB17/dt=ωp・cos(ωp・t)・b17[ωp]
・{sin(θ17[ωp])}
+ωp・sin(ωp・t)・b17[ωp]
・{−cos(θ17[ωp])}
+ωm・cos(ωm・t)・b17[ωm]
・{sin(θ17[ωm])}
+ωm・sin(ωm・t)・b17[ωm]
・{−cos(θ17[ωm])} ・・・(509)
被測定流体の流量が0の場合、電極軸EAX1と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bdの変化によって発生する、流速と無関係な第1の電極間起電力E1と、電極軸EAX2と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bdの変化によって発生する、流速と無関係な第2の電極間起電力E2は、図14に示すように互いに逆向きとなる。このとき、第1の電極間起電力E1と第2の電極間起電力E2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場の時間微分(−dB16/dt、dB17/dt)にωp,ωmそれぞれの角周波数成分における比例係数rkをかけ、位相差θ16,θ17をそれぞれθ16+θ00,θ17+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E1=rk・ωp・cos(ωp・t)・b16[ωp]
・{−sin(θ16[ωp]+θ00)}
+rk・ωp・sin(ωp・t)・b16[ωp]
・{cos(θ16[ωp]+θ00)}
+rk・ωm・cos(ωm・t)・b16[ωm]
・{−sin(θ16[ωm]+θ00)}
+rk・ωm・sin(ωm・t)・b16[ωm]
・{cos(θ16[ωm]+θ00)} ・・・(510)
E2=rk・ωp・cos(ωp・t)・b17[ωp]
・{sin(θ17[ωp]+θ00)}
+rk・ωp・sin(ωp・t)・b17[ωp]
・{−cos(θ17[ωp]+θ00)}
+rk・ωm・cos(ωp・t)・b17[ωm]
・{sin(θ17[ωm]+θ00)}
+rk・ωm・sin(ωm・t)・b17[ωm]
・{−cos(θ17[ωm]+θ00)} ・・・(511)
被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する第1の電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する第2の電極間起電力Ev2は、図15に示すように同じ向きとなる。このとき、第1の電極間起電力Ev1と第2の電極間起電力Ev2は、次式に示すように、起電力の向きを加えた磁場(B16、B17)にω0,ω2それぞれの周波数成分における比例係数rkvをかけ、位相差θ16,θ17をそれぞれθ16+θ01,θ17+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2b,2c,2dの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev1=rkv・cos(ωp・t)・b16[ωp]
・cos(θ16[ωp]+θ01)
+rkv・sin(ωp・t)・b16[ωp]
・sin(θ16[ωp]+θ01)
+rkv・cos(ωm・t)・b16[ωm]
・cos(θ16[ωm]+θ01)
+rkv・sin(ωm・t)・b16[ωm]
・sin(θ16[ωm]+θ01) ・・・(512)
Ev2=rkv・cos(ωp・t)・b17[ωp]
・cos(θ17[ωp]+θ01)
+rkv・sin(ωp・t)・b17[ωp]
・sin(θ17[ωp]+θ01)
+rkv・cos(ωm・t)・b17[ωm]
・cos(θ17[ωm]+θ01)
+rkv・sin(ωm・t)・b17[ωm]
・sin(θ17[ωm]+θ01) ・・・(513)
図14、図15で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ωpの成分の起電力EX1pcは、式(510)の第1項および第2項と式(512)の第1項および第2項と式(17)とから次式で表される。
EX1pc=rk・ωp・b16[ωp]
・exp{j・(π/2+θ16[ωp]+θ00)}
+γ・rk・V・b16[ωp]・exp{j・(θ16[ωp]+θ01)}
・・・(514)
磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち角周波数ωmの成分の起電力EX1mcは、式(510)の第3項および第4項と式(512)の第3項および第4項と式(17)とから次式で表される。
EX1mc=rk・ωm・b16[ωm]
・exp{j・(π/2+θ16[ωm]+θ00)}
+γ・rk・V・b16[ωm]・exp{j・(θ16[ωm]+θ01)}
・・・(515)
磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ωpの成分の起電力EX2pcは、式(511)の第1項および第2項と式(513)の第1項および第2項と式(17)とから次式で表される。
EX2pc=rk・(ωp)・b17[ωp]
・exp{j・(−π/2+θ17[ωp]+θ00)}
+γ・rk・V・b17[ωp]・exp{j・(θ17[ωp]+θ01)}
・・・(516)
磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち角周波数ωmの成分の起電力EX2mcは、式(511)の第3項および第4項と式(513)の第3項および第4項と式(17)とから次式で表される。
EX2mc=rk・(ωm)・b17[ωm]
・exp{j・(−π/2+θ17[ωm]+θ00)}
+γ・rk・V・b17[ωm]・exp{j・(θ17[ωm]+θ01)}
・・・(517)
ここで、ωp=ω0+Δω、ωm=ω0−Δωと定義し、さらに磁場B16の角周波数ω0の成分の位相遅れθ16[ω0]と磁場B17の角周波数ω0の成分の位相遅れθ17[ω0]との関係をθ17[ω0]=θ16[ω0]+Δθ17[ω0]とし、かつ虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(514)にωp=ω0+Δω、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ωpの成分EX1pcと、式(516)にωp=ω0+Δω、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ωpの成分EX2pcとの和をEXsp0とすれば、起電力和EXsp0は次式で表される。
EXsp0=rk・exp(j・θ00))
・[(ω0+Δω)・exp(j・π/2)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
−b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
+b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])}]
・・・(518)
また、式(515)にωm=ω0−Δω、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ωmの成分EX1mcと、式(517)にωm=ω0−Δω、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ωmの成分EX2mcとの和をEXsm0とすれば、起電力和EXsm0は次式で表される。
EXsm0=rk・exp(j・θ00)
・[(ω0−Δω)・exp(j・π/2)
・{b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
−b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
+b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}]
・・・(519)
また、式(514)にωp=ω0+Δω、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ωpの成分EX1pcと、式(516)にωp=ω0+Δω、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ωpの成分EX2pcとの差をEXdp0とすれば、起電力差EXdp0は次式で表される。
EXdp0=rk・exp(j・θ00))
・[(ω0+Δω)・exp(j・π/2)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
+b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
−b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])}]
・・・(520)
また、式(515)にωm=ω0−Δω、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力の角周波数ωmの成分EX1mcと、式(517)にωm=ω0−Δω、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力の角周波数ωmの成分EX2mcとの差をEXdm0とすれば、起電力差EXdm0は次式で表される。但し、式(518)〜式(521)ではθ17[ω0]=θ16[ω0]+Δθ17[ω0]は適用せず、後の式で適用する。
EXdm0=rk・exp(j・θ00)
・[(ω0−Δω)・exp(j・π/2)
・{b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
+b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
−b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}]
・・・(521)
起電力和EXsp0とEXsm0との和をEXss0とすれば、起電力和の和EXss0は次式で表される。
EXss0=EXsp0+EXsm0
=rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
−b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])
+b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
−b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}
+Δω・exp(j・π/2)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
−b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])
−b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
+b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
+b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])
+b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
+b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}]
・・・(522)
また、起電力差EXdp0とEXdm0との和をEXds0とすれば、起電力差の和EXds0は次式で表される。
EXds0=EXdp0+EXdm0
=rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
+b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])
+b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
+b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}
+Δω・exp(j・π/2)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
+b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])
−b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
−b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
−b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])
+b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])
−b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}]
・・・(523)
ここで、通常ω0>Δωが成り立つことから、式(524)〜式(527)の条件式が成り立つ。
2・b16[ω0]・exp(j・θ16[ω0])
≒b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
+b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω]) ・・・(524)
2・b17[ω0]・exp(j・θ17[ω0])
≒b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])
+b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω]) ・・・(525)
|ω0・exp(j・π/2)
・{2・b16[ω0]・exp(j・θ16[ω0])}|
≫|±Δω・exp(j・π/2)
・{b16[ω0+Δω]・exp(j・θ16[ω0+Δω])
−b16[ω0−Δω]・exp(j・θ16[ω0−Δω])}|
・・・(526)
|ω0・exp(j・π/2)
・{2・b17[ω0]・exp(j・θ17[ω0])}|
≫|±Δω・exp(j・π/2)
・{b17[ω0+Δω]・exp(j・θ17[ω0+Δω])
−b17[ω0−Δω]・exp(j・θ17[ω0−Δω])}|
・・・(527)
式(524)〜式(527)の条件を式(522)に適用して和EXss0を近似したものをEXss0aとおくと、起電力和の和EXss0aは次式で表される。
EXss0a≒EXss0 ・・・(528)
EXss0a=rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{2・b16[ω0]・exp(j・θ16[ω0])
−2・b17[ω0]・exp(j・θ17[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{2・b16[ω0]・exp(j・θ16[ω0])
+2・b17[ω0]・exp(j・θ17[ω0])}
・・・(529)
また、式(524)〜式(527)の条件を式(523)に適用して和EXds0を近似したものをEXds0aとおくと、起電力差の和EXds0aは次式で表される。
EXds0a≒EXds0 ・・・(530)
EXds0a=rk・exp(j・θ00)
・[ω0・exp(j・π/2)
・{2・b16[ω0]・exp(j・θ16[ω0])
+2・b17[ω0]・exp(j・θ17[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{2・b16[ω0]・exp(j・θ16[ω0])
−2・b17[ω0]・exp(j・θ17[ω0])}]
・・・(531)
θ17[ω0]=θ16[ω0]+Δθ17[ω0]を起電力和の和EXss0aに代入したものをEXss0bとすれば、起電力和の和EXss0bは次式で表される。
EXss0b=2・rk・exp{j・(θ16[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b16[ω0]−b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b16[ω0]+b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}]
・・・(532)
また、θ17[ω0]=θ16[ω0]+Δθ17[ω0]を起電力差の和EXds0aに代入したものをEXds0bとすれば、起電力差の和EXds0bは次式で表される。
EXds0b=2・rk・exp{j・(θ16[ω0]+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b16[ω0]+b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b16[ω0]−b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}]
・・・(533)
ここで、初期状態(校正時の状態)において、励磁コイル3から発生する磁場B16とB17とを等しく設定しておくと、その後の磁場B16とB17の初期状態からの差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b16[ω0]+b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])|
≫|b16[ω0] −b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])|
・・・(534)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(534)の条件を考慮すると、式(533)において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)
・{b16[ω0]+b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)・b16[ω0]
−b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])| ・・・(535)
式(535)の条件を用いて、式(533)の起電力差の和EXds0bを近似したものをEdAX1とすれば、起電力差の和EdAX1は次式で表される。この起電力差の和EdAX1は基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdAX1≒EXds0b≒EXds0 ・・・(536)
EdAX1=2・rk・exp{j・(θ16[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b16[ω0]+b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}
・・・(537)
起電力差の和EdAX1は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この和EdAX1を用いて起電力和の和EXss0b(合成ベクトルVas0+Vbs0)中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。起電力和の和EXss0bを起電力差の和EdAX1で正規化し、ω0倍した結果をEnX0とすれば、正規化起電力和EnX0は次式で表される。
EnX0=(EXss0b/EdAX1)・ω0
=2・rk・exp{j・(θ16[ω0]+θ00)}
・[ ω0・exp(j・π/2)
・{b16[ω0]−b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b16[ω0]+b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}]
/[2・rk・exp{j・(θ16[ω0]+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b16[ω0]+b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}]・ω0
=ω0・{b16[ω0]−b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}
/{b16[ω0]+b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(538)
式(52)を用いると、式(538)の右辺第1項の角周波数ω0にかかる係数{b16[ω0]−b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}/{b16[ω0]+b17[ω0]・exp(j・Δθ17[ω0])}を、角周波数ω0に関係しない値{b16−b17・exp(j・Δθ17)}/{b16+b17・exp(j・Δθ17)}で表すことができる。したがって、式(538)を次式のように置き換えることができる。
EnX0=ω0・{b16−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b16+b17・exp(j・Δθ17)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(539)
式(539)の右辺第2項が、v×Bにより発生する成分を正規化した項となる。なお、起電力和の和EXss0bを起電力差の和EdAX1で正規化した結果をω0倍した理由は、流速の大きさVに係る右辺第2項から励磁角周波数ω0を消去するためである。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、式(539)の右辺第2項は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
次に、0点の変動要因である、式(539)の右辺第1項を除去する方法について説明する。式(506)、式(507)において励磁角周波数ωp,ωmの代わりに、ωc,ωdをとると磁場B16、B17は次式で表される。
B16=b16[ωc]・cos(θ16[ωc])・cos(ωc・t)
+b16[ωc]・sin(θ16[ωc])・sin(ωc・t)
+b16[ωd]・cos(θ16[ωd])・cos(ωd・t)
+b16[ωd]・sin(θ16[ωd])・sin(ωd・t)
・・・(540)
B17=b17[ωc]・cos(θ17[ωc])・cos(ωc・t)
+b17[ωc]・sin(θ17[ωc])・sin(ωc・t)
+b17[ωd]・cos(θ17[ωd])・cos(ωd・t)
+b17[ωd]・sin(θ17[ωd])・sin(ωd・t)
・・・(541)
ここで、角周波数ωc、ωdは、ωc=ω2+Δω、ωd=ω2−Δωの関係になるように設定しておく。角周波数ω0での正規化と同様に角周波数ω2において正規化を行う。角周波数ω2においてスパン補正の対象となる起電力和の和EXss2は、式(518)において角周波数ω0をω2で置き換えた起電力和EXsp2と式(519)において角周波数ω0をω2で置き換えた起電力和EXsm2との和EXsp2+EXsm2で表される。第2の∂A/∂t成分の基となる起電力差の和EXds2は、式(520)において角周波数ω0をω2で置き換えた起電力差EXdp2と式(521)において角周波数ω0をω2で置き換えた起電力差EXdm2との和EXdp2+EXdm2で表される。第2の∂A/∂t成分となる起電力差の和EdAX2は、式(537)において角周波数ω0をω2で置き換えたものとなる。
起電力和の和EXss2を起電力差の和EdAX2で正規化し、ω2倍した結果をEnX2とすれば、正規化起電力和EnX2は式(539)より次式で表される。
EnX2=ω2・{b16−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b16+b17・exp(j・Δθ17)}
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(542)
正規化起電力和EnX0とEnX2との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdAX3とすれば、差分EdAX3は次式で表される。この差分EdAX3は基本原理における第3の∂A/∂t成分に相当する。
EdAX3=(EnX0−EnX2)・ω0/(ω0−ω2)
=[{b16−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b16+b17・exp(j・Δθ17)}
・ω0+γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V
−{b16−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b16+b17・exp(j・Δθ17)}
・ω2−γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}・V]
・ω0/(ω0−ω2)
={b16−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b16+b17・exp(j・Δθ17)}・ω0 ・・(543)
差分EdAX3は正規化された∂A/∂t成分を表し、式(539)の右辺第1項と等しくなるので、この差分EdAX3を使用すれば、正規化されたv×B成分を正規化起電力和EnX0から取り出すことができる。式(539)の正規化起電力和EnX0から式(543)の差分EdAX3を引いたときに得られるv×B成分をEvBnXとすると、v×B成分EvBnXは次式で表される。
EvBnX=EnX0−EdAX3
={b16−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b16+b17・exp(j・Δθ17)}・ω0
+[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V
−{b16−b17・exp(j・Δθ17)}
/{b16+b17・exp(j・Δθ17)}・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(544)
v×B成分EvBnXは角周波数ωに関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvBnXも0となることから分かるように、v×B成分EvBnXより、スパンが補正され、かつ0点が補正された出力を得ることができる。式(544)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBnX/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBnX|/γ ・・・(545)
なお、基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表10のとおりである。本実施の形態は、表10から明らかなように、前述の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004550523
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第8の実施の形態と同様であるので、図23の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bと、第2の電極2c,2dと、励磁コイル3と、電源部4aと、信号変換部5aと、流量出力部6aとを有する。
信号変換部5aは、第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において第1の電極2a,2bで検出される第1の合成起電力と第2の電極2c,2dで検出される第2の合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和および同一周波数成分の起電力差を、第1の励磁状態の角周波数ω0±Δωと第2の励磁状態の角周波数ω2±Δωの各々について求め、第1の励磁状態の角周波数ω0+Δωの起電力差と角周波数ω0−Δωの起電力差との和を第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、第2の励磁状態の角周波数ω2+Δωの起電力差と角周波数ω2−Δωの起電力差との和を第2の∂A/∂t成分として抽出し、第1の励磁状態の角周波数ω0+Δωの起電力和と角周波数ω0−Δωの起電力和との和を第1の補正対象起電力として、第1の∂A/∂t成分に基づいて第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、第2の励磁状態の角周波数ω2+Δωの起電力和と角周波数ω2−Δωの起電力和との和を第2の補正対象起電力として、第2の∂A/∂t成分に基づいて第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正部51aと、スパン補正された第1の補正対象起電力とスパン補正された第2の補正対象起電力との差を第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部52aとから構成される。
本実施の形態の電源部4aは、角周波数(ω0+Δω)の正弦波成分と角周波数(ω0−Δω)の正弦波成分とを含む励磁電流を励磁コイル3に供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、続いて角周波数(ω2+Δω)の正弦波成分と角周波数(ω2−Δω)の正弦波成分とを含む励磁電流を励磁コイル3に供給する第2の励磁状態をT2秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2である。
図26は本実施の形態の信号変換部5aと流量出力部6aの動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5aのスパン補正部51aは、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の第1の電極間起電力の角周波数(ω0+Δω)の成分と電極2c,2d間の第2の電極間起電力の角周波数(ω0+Δω)の成分との和EXsp0、および第1の電極間起電力の角周波数(ω0−Δω)の成分と第2の電極間起電力の角周波数(ω0−Δω)の成分との和EXsm0を求め、起電力和EXsp0とEXsm0との和EXss0の振幅rXss0を求めると共に、実軸と起電力和の和EXss0との位相差φXss0を図示しない位相検波器により求める(図26ステップ801)。
また、スパン補正部51aは、第1の励磁状態において、第1の電極間起電力の角周波数(ω0+Δω)の成分と第2の電極間起電力の角周波数(ω0+Δω)の成分との差EXdp0、および第1の電極間起電力の角周波数(ω0−Δω)の成分と第2の電極間起電力の角周波数(ω0−Δω)の成分との差EXdm0を求め、起電力差EXdp0とEXdm0との和EXds0の振幅rXds0を求めると共に、実軸と起電力差の和EXds0との位相差φXds0を位相検波器により求める(ステップ802)。
続いて、スパン補正部51aは、第2の励磁状態において、第1の電極間起電力の角周波数(ω2+Δω)の成分と第2の電極間起電力の角周波数(ω2+Δω)の成分との和EXsp2、および第1の電極間起電力の角周波数(ω2−Δω)の成分と第2の電極間起電力の角周波数(ω2−Δω)の成分との和EXsm2を求め、起電力和EXsp2とEXsm2との和EXss2の振幅rXss2を求めると共に、実軸と起電力和の和EXss2との位相差φXss2を位相検波器により求める(ステップ803)。
また、スパン補正部51aは、第2の励磁状態において、第1の電極間起電力の角周波数(ω2+Δω)の成分と第2の電極間起電力の角周波数(ω2+Δω)の成分との差EXdp2、および第1の電極間起電力の角周波数(ω2−Δω)の成分と第2の電極間起電力の角周波数(ω2−Δω)の成分との差EXdm2を求め、起電力差EXdp2とEXdm2との和EXds2の振幅rXds2を求めると共に、実軸と起電力差の和EXds2との位相差φXds2を位相検波器により求める(ステップ804)。
次に、スパン補正部51aは、起電力差の和EXds0を近似した起電力差の和EdAX1の大きさと角度を求める(ステップ805)。このステップ805の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(537)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、起電力差の和EdAX1の大きさ|EdAX1|を次式のように算出する。
|EdAX1|=rXds0 ・・・(546)
そして、スパン補正部51aは、起電力差の和EdAX1の角度∠EdAX1を次式のように算出する。
∠EdAX1=φXds0 ・・・(547)
これで、ステップ805の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51aは、起電力和の和EXss0を起電力差の和EdAX1で正規化した正規化起電力和EnX0の大きさと角度を求める(ステップ806)。このステップ806の処理は、式(539)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、正規化起電力和EnX0の大きさ|EnX0|を次式のように算出する。
|EnX0|=(rXss0/|EdAX1|)・ω0 ・・・(548)
そして、スパン補正部51aは、正規化起電力和EnX0の角度∠EnX0を次式のように算出する。
∠EnX0=φXss0−∠EdAX1 ・・・(549)
さらに、スパン補正部51aは、正規化起電力和EnX0の実軸成分EnX0xと虚軸成分EnX0yを次式のように算出する。
EnX0x=|EnX0|・cos(∠EnX0) ・・・(550)
EnX0y=|EnX0|・sin(∠EnX0) ・・・(551)
これで、ステップ806の処理が終了する。
次に、スパン補正部51aは、起電力差の和EXds2を近似した起電力差の和EdAX2の大きさと角度を求める(ステップ807)。このステップ807の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理である。スパン補正部51aは、起電力差の和EdAX2の大きさ|EdAX2|を次式のように算出する。
|EdAX2|=rXds2 ・・・(552)
そして、スパン補正部51aは、起電力差の和EdAX2の角度∠EdAX2を次式のように算出する。
∠EdAX2=φXds2 ・・・(553)
これで、ステップ807の処理が終了する。
続いて、スパン補正部51aは、起電力和の和EXss2を起電力差の和EdAX2で正規化した正規化起電力和EnX2の大きさと角度を求める(ステップ808)。このステップ808の処理は、式(542)の算出に相当する処理である。スパン補正部51aは、正規化起電力和EnX2の大きさ|EnX2|を次式のように算出する。
|EnX2|=(rXss2/|EdAX2|)・ω2 ・・・(554)
そして、スパン補正部51aは、正規化起電力和EnX2の角度∠EnX2を次式のように算出する。
∠EnX2=φXss2−∠EdAX2 ・・・(555)
さらに、スパン補正部51aは、正規化起電力和EnX2の実軸成分EnX2xと虚軸成分EnX2yを次式のように算出する。
EnX2x=|EnX2|・cos(∠EnX2) ・・・(556)
EnX2y=|EnX2|・sin(∠EnX2) ・・・(557)
これで、ステップ808の処理が終了する。
次に、信号変換部5aの0点補正部52aは、正規化起電力和EnX0とEnX2との差分EdAX3の大きさを求める(ステップ809)。このステップ809の処理は、第3の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(543)の算出に相当する処理である。0点補正部52aは、差分EdAX3の実軸成分EdAX3xと虚軸成分EdAX3yを次式のように算出する。
EdAX3x=(EnX0x−EnX2x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(558)
EdAX3y=(EnX0y−EnX2y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(559)
そして、0点補正部52aは、正規化起電力和EnX0から差分EdAX3を取り除き、v×B成分EvBnXの大きさを求める(ステップ810)。このステップ810の処理は、式(544)の算出に相当する処理である。0点補正部52aは、v×B成分EvBnXの大きさ|EvBnX|を次式のように算出する。
|EvBnX|={(EnX0x−EdAX3x)2
+(EnX0y−EdAX3y)21/2 ・・・(560)
流量出力部6aは、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ811)。このステップ811の処理は、式(545)の算出に相当する処理である。
V=|EvBnX|/γ ・・・(561)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5aと流量出力部6aとは、以上のようなステップ801〜811の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ812においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ803〜811の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第1の励磁状態において起電力和の和EXss0と起電力差の和EXds0を求め、第2の励磁状態において起電力和の和EXss2と起電力差の和EXds2を求める。そして、本実施の形態では、励磁コイル3から発生する磁場B16とB17とが等しくなるように設定しておくと、起電力差の和EXds0が近似的に第1の∂A/∂t成分として抽出でき、また起電力差の和EXds2が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第1の∂A/∂t成分を用いて起電力和の和EXss0中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すると共に、第2の∂A/∂t成分を用いて起電力和の和EXss2中のv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化し、正規化起電力和EnX0とEnX2とから差分EdAX3(第3の∂A/∂t成分)を抽出して、正規化起電力和EnX0から第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、このv×B成分から被測定流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、周波数による磁場の損失の違いを考慮して、起電力和の和EXss0のv×B成分を起電力差の和EXds0から抽出した同じ角周波数の第1の∂A/∂t成分を用いて正規化すると共に、起電力和の和EXss2のv×B成分を起電力差の和EXds2から抽出した同じ角周波数の第2の∂A/∂t成分を用いて正規化し、それぞれ正規化した起電力和EnX0とEnX2との差を基に0補正を行うようにしたので、磁場の損失による影響がある場合でも、正確なスパン補正と0補正を行うことができる。また、本実施の形態では、周波数を分散させて励磁するので、周波数帯の効率的な使用が可能になる。
なお、本実施の形態の別の例として、変調が使用できる。角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波で励磁すれば、振幅変調の場合は角周波数ω0,ω0±ω1の成分の起電力を得ることができ、位相変調又は周波数変調の場合は角周波数ω0,ω0±ζ・ω1(ζは正の整数)の成分の起電力を得ることができる。この変調を使用する例は、基本原理の最後で述べたように、図1の電磁流量計の構成から図13の電磁流量計の構成への変換を行えば、第4の実施の形態〜第7の実施の形態で示したものと同等なので、詳細な説明は省略する。
また、本実施の形態では、起電力和の和EXss0を0補正およびスパン補正の対象としたが、起電力和の和EXss2を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように正規化起電力和EnX2とEnX0とから差分EdAX3(第3の∂A/∂t成分)を求める。
EdAX3=(EnX2−EnX0)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(562)
そして、次式のように正規化起電力和EnX2から差分EdAX3を引くことによりv×B成分EvBnXを求めるようにすればよい。その他の処理は起電力和の和EXss0を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBnX|=|EnX2−EdAX3| ・・・(563)
なお、第1の実施の形態〜第10の実施の形態では、励磁電流に正弦波を用いる正弦波励磁方式を採用しているが、矩形波の場合正弦波の組み合わせと考えることができるので、励磁電流に矩形波を用いる矩形波励磁方式を採用してもよい。また、第1の実施の形態〜第10の実施の形態で使用する電極2a,2b,2c,2dとしては、図27に示すように、測定管1の内壁から露出して被測定流体に接触する形式の電極でもよいし、図28に示すように、被測定流体と接触しない容量結合式の電極でもよい。容量結合式の場合、電極2a,2b,2c,2dは、測定管1の内壁に形成されるセラミックやテフロン(登録商標)等からなるライニング10によって被覆される。
また、第1の実施の形態〜第10の実施の形態では、第1の電極として1対の電極2a,2bを使用し、第2の電極として1対の電極2c,2dを使用しているが、これに限るものではなく、第1の電極と第2の電極をそれぞれ1個ずつにしてもよい。電極が1個だけの場合には、被測定流体の電位を接地電位にするための接地リングや接地電極が測定管1に設けられており、1個の電極に生じた起電力(接地電位との電位差)を信号変換部5,5a,5bで検出すればよい。電極軸は、1対の電極を使用する場合はこの1対の電極間を結ぶ直線である。一方、電極が1個だけの場合、この1個の実電極を含む平面PLN上において、測定管軸PAXを挟んで実電極と対向する位置に仮想の電極を配置したと仮定したとき、実電極と仮想の電極とを結ぶ直線が電極軸となる。
また、第6の実施の形態および第7の実施の形態では、第1次ベッセル関数の展開においてn=0,1の場合のみを適用し、電極間起電力の角周波数ω0±ω1,ω2±ω1の成分を用いたが、これに限るものではなく、ω0+ζ1・ω1(ζ1は正の整数),ω2+ζ2・ω1(ζ2は正の整数)の成分を用いてもよい。ζ1,ζ2が2以上の整数の場合には、第1次ベッセル関数の展開においてn=2以降を適用すれば、流速の大きさVの算出が可能である。
本発明は、測定管内を流れる被測定流体の流量計測に適用することができる。
本発明の基本原理に基づく電磁流量計のうち2個の励磁コイルと1対の電極とを有する電磁流量計の原理を説明するためのブロック図である。 図1の電磁流量計において被測定流体の流量が0の場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 図1の電磁流量計において被測定流体の流量が0でない場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 図1の電磁流量計において第1の励磁コイルのみで励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図1の電磁流量計において第2の励磁コイルのみで励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図1の電磁流量計において2つの励磁コイルで励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図1の電磁流量計において第2の励磁状態で第2の励磁コイルのみで励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図1の電磁流量計において第2の励磁状態で2つの励磁コイルを励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図1の電磁流量計における第1の∂A/∂t成分のベクトルと正規化の対象となる合成ベクトルとを示す図である。 図1の電磁流量計において電極で検出される合成ベクトルを第1の∂A/∂t成分により正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。 図1の電磁流量計において正規化した合成ベクトルから第3の∂A/∂t成分を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。 図1の電磁流量計において正規化した合成ベクトルからv×B成分を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。 本発明の基本原理に基づく電磁流量計のうち1個の励磁コイルと2対の電極とを有する電磁流量計の原理を説明するためのブロック図である。 図13の電磁流量計において被測定流体の流量が0の場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 図13の電磁流量計において被測定流体の流量が0でない場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 本発明の第1の実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態において第1の∂A/∂t成分のベクトルを抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。 本発明の第3の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第4の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第5の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第8の実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図である。 本発明の第8の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第9の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第10の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の電磁流量計で用いる電極の1例を示す断面図である。 本発明の電磁流量計で用いる電極の他の例を示す断面図である。 従来の電磁流量計の原理を説明するためのブロック図である。 従来の電磁流量計において被測定流体の流量が0の場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 従来の電磁流量計において被測定流体の流量が0でない場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 電磁流量計におけるスパンのシフトを説明するための図である。 電磁流量計における0点のシフトを説明するための図である。 従来の電磁流量計の問題点を説明するための図である。
符号の説明
1…測定管、2a、2b、2c、2d…電極、3、3a、3b…励磁コイル、4、4a…電源部、5、5a…信号変換部、6、6a…流量出力部、51、51a…スパン補正部、52、52a…0点補正部。

Claims (21)

  1. 被測定流体が流れる測定管と、
    この測定管に配設され、前記流体に印加される磁場と前記流体の流れとによって生じた起電力を検出する電極と、
    この電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面に対して非対称かつ時間変化する磁場を前記流体に印加する励磁部と、
    前記電極で検出される、前記流体の流速とは無関係な∂A/∂t成分の起電力と前記流体の流速に起因するv×B成分の起電力との合成起電力から、第1の周波数における第1の∂A/∂t成分と第1の補正対象起電力とを抽出すると共に、第2の周波数における第2の∂A/∂t成分と第2の補正対象起電力とを抽出し、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去すると共に、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行うスパン補正部と、
    前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力に基づいて、前記流体の流速とは無関係であり、前記磁場の時間変化に起因する第3の∂A/∂t成分を抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部と、
    前記抽出されたv×B成分から前記流体の流量を算出する流量出力部とを備えることを特徴とする電磁流量計。
  2. 請求項1記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差および励磁角周波数を切り替えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給する電源部とからなることを特徴とする電磁流量計。
  3. 請求項2記載の電磁流量計において、
    前記スパン補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差がΔθ3で、励磁角周波数がω0の第1の励磁状態と、この第1の励磁状態に対して前記第1の磁場と第2の磁場との位相差をΔθ3+πに変更した第2の励磁状態と、前記第1の励磁状態に対して励磁角周波数をω2に変更した第3の励磁状態と、前記第2の励磁状態に対して励磁角周波数をω2に変更した第4の励磁状態の4つの励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第2の励磁状態の合成起電力を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第4の励磁状態の合成起電力を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第3の励磁状態の合成起電力を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  4. 請求項1記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差を切り替えながら、複数の励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する電源部とからなることを特徴とする電磁流量計。
  5. 請求項4記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、角周波数ω0とω2の異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給し、
    前記スパン補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差がΔθ7で、励磁角周波数がω0,ω2の第1の励磁状態と、この第1の励磁状態に対して前記第1の磁場と第2の磁場との位相差をΔθ7+πに変更した第2の励磁状態の2つの励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  6. 請求項1記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差および励磁角周波数を切り替えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに複数の励磁角周波数を同時に与える励磁電流を供給する電源部とからなることを特徴とする電磁流量計。
  7. 請求項6記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、角周波数ω0±Δωの異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する励磁状態と、角周波数ω2±Δωの異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する励磁状態とを切り換えながら前記励磁コイルに励磁電流を供給し、
    前記スパン補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差がΔθ9で、励磁角周波数がω0±Δωの第1の励磁状態と、この第1の励磁状態に対して前記第1の磁場と第2の磁場との位相差をΔθ9+πに変更した第2の励磁状態と、前記第1の励磁状態に対して励磁角周波数をω2±Δωに変更した第3の励磁状態と、この第3の励磁状態に対して前記第1の磁場と第2の磁場との位相差をΔθ9+πに変更した第4の励磁状態の4つの励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+Δωの成分と角周波数ω0−Δωの成分との起電力和を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第4の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+Δωの成分と角周波数ω2−Δωの成分との起電力和を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+Δωの成分と角周波数ω0−Δωの成分との起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第3の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+Δωの成分と角周波数ω2−Δωの成分との起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  8. 請求項1記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに複数の励磁角周波数を同時又は交互に与える励磁電流を供給する電源部とからなることを特徴とする電磁流量計。
  9. 請求項8記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、複数の周波数の搬送波をこの搬送波と異なる周波数の変調波によって変調した複数の成分を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給することを特徴とする電磁流量計。
  10. 請求項9記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波によって振幅変調した第1の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω0の搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第2の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の搬送波を角周波数ω1の変調波によって振幅変調した第3の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω2の搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第4の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給し、
    前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ω1の成分と角周波数ω0−ω1の成分との起電力和を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ω1の成分と角周波数ω2−ω1の成分との起電力和を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  11. 請求項9記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波によって振幅変調した第1の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω0の搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第2の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の搬送波を角周波数ω1の変調波によって振幅変調した第3の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω2の搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって振幅変調した第4の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給し、
    前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ω1の成分と角周波数ω0−ω1の成分との起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ω1の成分と角周波数ω2−ω1の成分との起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  12. 請求項9記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波によって位相変調又は周波数変調した第1の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω0の搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調又は周波数変調した第2の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の搬送波を角周波数ω1の変調波によって位相変調又は周波数変調した第3の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω2の搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調又は周波数変調した第4の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給し、
    前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ζ1・ω1(ζ1は正の整数)の成分と角周波数ω0−ζ1・ω1の成分との起電力和を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ζ2・ω1(ζ2は正の整数)の成分と角周波数ω2−ζ2・ω1の成分との起電力和を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  13. 請求項9記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、角周波数ω0の搬送波を角周波数ω1の変調波によって位相変調又は周波数変調した第1の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω0の搬送波を前記第1の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調又は周波数変調した第2の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の搬送波を角周波数ω1の変調波によって位相変調又は周波数変調した第3の励磁電流を前記第1の励磁コイルに供給すると同時に、前記角周波数ω2の搬送波を前記第3の励磁電流の変調波に対して同一角周波数で逆位相の変調波によって位相変調又は周波数変調した第4の励磁電流を前記第2の励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら、前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに励磁電流を供給し、
    前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記電極で検出される合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0の成分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2の成分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の合成起電力の角周波数ω0+ζ1・ω1(ζ1は正の整数)の成分と角周波数ω0−ζ1・ω1の成分との起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の合成起電力の角周波数ω2+ζ2・ω1(ζ2は正の整数)の成分と角周波数ω2−ζ2・ω1の成分との起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  14. 請求項1記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、この励磁コイルに励磁角周波数を切り替えながら励磁電流を供給する電源部とからなり、
    前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなることを特徴とする電磁流量計。
  15. 請求項14記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、角周波数ω0の励磁電流を前記励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2の励磁電流を前記励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら前記励磁コイルに励磁電流を供給し、
    前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と前記第2の合成起電力の同一励磁状態の起電力和および同一励磁状態の起電力差を前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々について求め、前記第1の励磁状態の起電力差を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の起電力差を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  16. 請求項1記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、
    前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなることを特徴とする電磁流量計。
  17. 請求項16記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、角周波数ω0とω2の異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給し、
    前記スパン補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和および同一周波数成分の起電力差を角周波数ω0とω2の各々について求め、前記角周波数ω0の起電力差を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記角周波数ω2の起電力差を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記角周波数ω0の起電力和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記角周波数ω2の起電力和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  18. 請求項14記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給することを特徴とする電磁流量計。
  19. 請求項18記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、角周波数ω0±Δωの異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する第1の励磁状態と、角周波数ω2±Δωの異なる2つの励磁角周波数を同時に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する第2の励磁状態とを切り換えながら前記励磁コイルに励磁電流を供給し、
    前記スパン補正部は、前記第1の励磁状態と第2の励磁状態の各々において前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和および同一周波数成分の起電力差を、前記第1の励磁状態の角周波数ω0±Δωと前記第2の励磁状態の角周波数ω2±Δωの各々について求め、前記第1の励磁状態の角周波数ω0+Δωの起電力差と角周波数ω0−Δωの起電力差との和を前記第1の∂A/∂t成分として抽出すると共に、前記第2の励磁状態の角周波数ω2+Δωの起電力差と角周波数ω2−Δωの起電力差との和を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の励磁状態の角周波数ω0+Δωの起電力和と角周波数ω0−Δωの起電力和との和を第1の補正対象起電力として、前記抽出した第1の∂A/∂t成分に基づいて前記第1の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去すると共に、前記第2の励磁状態の角周波数ω2+Δωの起電力和と角周波数ω2−Δωの起電力和との和を第2の補正対象起電力として、前記抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて前記第2の補正対象起電力の中のv×B成分に含まれるスパンの変動要因を除去するスパン補正を行い、
    前記0点補正部は、前記スパン補正された第1の補正対象起電力と前記スパン補正された第2の補正対象起電力との差を前記第3の∂A/∂t成分として抽出し、このスパン補正された2つの補正対象起電力のうちいずれか1つの中から、前記抽出した第3の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  20. 請求項1記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁角周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、
    前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなることを特徴とする電磁流量計。
  21. 請求項20記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、複数の周波数の搬送波をこの搬送波と異なる周波数の変調波によって変調した複数の成分を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給することを特徴とする電磁流量計。
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