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JP4555023B2 - 電磁流量計 - Google Patents

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JP4555023B2 JP2004241476A JP2004241476A JP4555023B2 JP 4555023 B2 JP4555023 B2 JP 4555023B2 JP 2004241476 A JP2004241476 A JP 2004241476A JP 2004241476 A JP2004241476 A JP 2004241476A JP 4555023 B2 JP4555023 B2 JP 4555023B2
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本発明は、電磁流量計に係り、特に電極で検出される電極間起電力のうち被測定流体の流量に起因する成分の流速にかかる係数を自動的に補正するスパン補正と、磁場の変動に起因する0点のずれを自動的に補正する0補正の技術に関するものである。
従来技術と本発明を理解するために必要な両者に共通する理論的前提部分について説明する。まず、一般に知られている数学的基礎知識について説明する。
同一周波数で異なる振幅の余弦波P・cos(ω・t)、正弦波Q・sin(ω・t)は、以下のような余弦波に合成される。P,Qは振幅、ωは角周波数である。
P・cos(ω・t)+Q・sin(ω・t)=(P2+Q21/2 ・cos(ω・t−ε)
ただし、ε=tan-1(Q/P) ・・・(1)
式(1)の合成を分析するには、余弦波P・cos(ω・t)の振幅Pを実軸、正弦波Q・sin(ω・t)の振幅Qを虚軸にとるように複素座標平面に写像すると都合がよい。すなわち、複素座標平面上において、原点からの距離(P2+Q21/2 が合成波の振幅を与え、実軸との角度ε=tan-1(Q/P)が合成波とω・tとの位相差を与えることになる。
また、複素座標平面上においては、以下の関係式が成り立つ。
L・exp(j・ε)=L・cos(ε)+j・L・sin(ε) ・・・(2)
式(2)は複素ベクトルに関する表記であり、jは虚数単位である。Lは複素ベクトルの長さを与え、εは複素ベクトルの方向を与える。したがって、複素座標平面上の幾何学的関係を分析するには、複素ベクトルへの変換を活用すると都合がよい。
以下の説明では、電極間起電力がどのような挙動を示し、従来技術はこの挙動をどのように利用しているかを説明するために、上記のような複素座標平面への写像と、複素ベクトルによる幾何学的分析を採用する。
次に、発明者が提案した電磁流量計(特許文献1参照)におけるコイル1組、電極1対の場合の複素ベクトル配置について説明する。
図30は、特許文献1の電磁流量計の原理を説明するためのブロック図である。この電磁流量計は、被測定流体が流れる測定管1と、被測定流体に印加される磁場および測定管1の軸PAXの双方と直交し、かつ被測定流体と接触するように測定管1に対向配置され、前記磁場と被測定流体の流れとによって生じた起電力を検出する一対の電極2a,2bと、測定管軸PAXの方向と直交する、電極2a,2bを含む平面PLNを測定管1の境としたとき、この平面PLNを境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁コイル3とを有する。
ここで、励磁コイル3から発生する磁場のうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B1は、以下のように与えられるものとする。
B1=b1・cos(ω0・t−θ1) ・・・(3)
式(3)において、b1は振幅、ω0は角周波数、θ1はω0・tとの位相差(位相遅れ)である。以下、磁束密度B1を磁場B1とする。
まず、磁場の変化に起因し、被測定流体の流速とは無関係な電極間起電力について説明する。磁場の変化に起因する起電力は、磁場の時間微分dB/dtによるので、励磁コイル3から発生する磁場B1を次式のように微分する。
dB1/dt=−ω0・b1・sin(ω0・t−θ1) ・・・(4)
被測定流体の流速が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Baの変化による渦電流Iは、図31に示すような向きとなる。したがって、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Baの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力Eは、図31に示すような向きとなる。この向きをマイナス方向とする。
このとき、電極間起電力Eは、次式に示すように向きを考えた磁場の時間微分−dB1/dtに比例係数rkをかけ、位相θ1をθ1+θ00で置き換えたものとなる(rk、θ00は、被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
E=rk・ω0・b1・sin(ω0・t−θ1−θ00) ・・・(5)
そして、式(5)を変形すると次式となる。
E=rk・ω0・b1・{sin(−θ1−θ00)}・cos(ω0・t)
+rk・ω0・b1・{cos(−θ1−θ00)}・sin(ω0・t)
=rk・ω0・b1・{−sin(θ1+θ00)}・cos(ω0・t)
+rk・ω0・b1・{cos(θ1+θ00)}・sin(ω0・t)
・・・(6)
ここで、式(6)をω0・tを基準として複素座標平面に写像すると、実軸成分Ex、虚軸成分Eyは次式となる。
Ex=rk・ω0・b1・{−sin(θ1+θ00)}
=rk・ω0・b1・{cos(π/2+θ1+θ00)} ・・・(7)
Ey=rk・ω0・b1・{cos(θ1+θ00)}
=rk・ω0・b1・{sin(π/2+θ1+θ00)} ・・・(8)
さらに、式(7)、式(8)に示したEx,Eyを次式に示す複素ベクトルEcに変換する。
Ec=Ex+j・Ey
=rk・ω0・b1・{cos(π/2+θ1+θ00)}
+j・rk・ω0・b1・{sin(π/2+θ1+θ00)}
=rk・ω0・b1
・{cos(π/2+θ1+θ00)+j・sin(π/2+θ1+θ00)} =rk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)} ・・・(9)
複素座標に変換された式(9)の電極間起電力Ecは、磁場の時間変化のみに起因し、流速とは無関係な電極間起電力となる。式(9)のrk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}は、長さがrk・ω0・b1、実軸からの角度がπ/2+θ1+θ00の複素ベクトルである。
また、前述の比例係数rk及び角度θ00は、次の複素ベクトルkcで表すことができる。
kc=rk・cos(θ00)+j・rk・sin(θ00)
=rk・exp(j・θ00) ・・・(10)
式(10)において、rkはベクトルkcの大きさ、θ00は実軸に対するベクトルkcの角度である。
次に、被測定流体の流速に起因する電極間起電力について説明する。被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流Iに加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Baが発生するため、流速ベクトルvと磁場Baによる渦電流Ivは、図32に示すような向きとなる。したがって、流速ベクトルvと磁場Baによって発生する電極間起電力Evは時間変化によって発生する電極間起電力Eと逆向きとなり、Evの方向をプラス方向とする。
このとき、流速に起因する電極間起電力Evは、次式に示すように、磁場B1に比例係数rkvをかけ、位相θ1をθ1+θ01で置き換えたものとなる(rkv、θ01は、流速の大きさVと被測定流体の導電率及び誘電率と電極2a,2bの配置を含む測定管1の構造に関係する)。
Ev=rkv・{b1・cos(ω0・t−θ1−θ01)} ・・・(11)
式(11)を変形すると次式となる。
Ev=rkv・b1・cos(ω0・t)・cos(−θ1−θ01)
−rkv・b1・sin(ω0・t)・sin(−θ1−θ01)
=rkv・b1・{cos(θ1+θ01)}・cos(ω0・t)
+rkv・b1・{sin(θ1+θ01)}・sin(ω0・t)
・・・(12)
ここで、式(12)をω0・tを基準として複素座標平面に写像すると、実軸成分Evx、虚軸成分Evyは次式となる。
Evx=rkv・b1・{cos(θ1+θ01)} ・・・(13)
Evy=rkv・b1・{sin(θ1+θ01)} ・・・(14)
さらに、式(13)、式(14)に示したEvx,Evyを次式に示す複素ベクトルEvcに変換する。
Evc=Evx+j・Evy
=rkv・b1・{cos(θ1+θ01)}
+j・rkv・b1・{sin(θ1+θ01)}
=rkv・b1・{cos(θ1+θ01)+j・sin(θ1+θ01)}
=rkv・b1・exp{j・(θ1+θ01)} ・・・(15)
複素座標に変換された式(15)の電極間起電力Evcは、被測定流体の流速に起因する電極間起電力となる。式(15)のrkv・b1・exp{j・(θ1+θ01)}は、長さがrkv・b1、実軸からの角度がθ1+θ01の複素ベクトルである。
また、前述の比例係数rkv及び角度θ01は、次の複素ベクトルkvcで表すことができる。
kvc=rkv・cos(θ01)+j・rkv・sin(θ01)
=rkv・exp(j・θ01) ・・・(16)
式(16)においてrkvはベクトルkvcの大きさ、θ01は実軸に対するベクトルkvcの角度である。ここで、rkvは、前記比例係数rk(式(10)参照)に流速の大きさVと比例係数γをかけたものに相当する。すなわち、次式が成立する。
rkv=γ・rk・V ・・・(17)
磁場の時間変化に起因する電極間起電力Ecと流体の流速に起因する電極間起電力Evcとを合わせた全体の電極間起電力Eacは、式(15)に式(17)を代入した式と、式(9)とを足すことにより、次式で表される。
Eac=rk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}
+γ・rk・V・b1・exp{j・(θ1+θ01)} ・・・(18)
式(18)から分かるように、電極間起電力Eacは、rk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}とγ・rk・V・b1・exp{j・(θ1+θ01)}の2個の複素ベクトルにより記述される。複素ベクトルrk・ω0・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}は後述する∂A/∂t成分であり、複素ベクトルγ・rk・V・b1・exp{j・(θ1+θ01)}は後述するv×B成分である。この2個の複素ベクトルを合成した合成ベクトルの長さが出力(電極間起電力Eac)の振幅を表し、この合成ベクトルの角度φが入力(励磁電流)の位相ω0・tに対する電極間起電力Eacの位相差(位相遅れ)を表す。
なお、流量は流速に測定管の断面積をかけたものとなるため、通常、初期状態での校正において流速と流量は一対一の関係となり、流速を求めることと流量を求めることは同等に扱えるので、以下(流量を求めるために)流速を求める方式として説明を進める。
特許文献1の電磁流量計は、上記のような理論を背景に、スパンのシフトに影響されないパラメータ(非対称励磁パラメータ)を抽出し、これに基づき流量を出力することで、スパンのシフトの問題を解決している。
ここで、図33を用いてスパンのシフトについて説明する。被測定流体の流速が変化していないにもかかわらず、電磁流量計によって計測される流速の大きさVが変化したとすると、この出力変動の要因としてスパンのシフトが考えられる。
例えば、初期状態において被測定流体の流速が0のときに電磁流量計の出力が0(v)となり、流速が1(m/sec)のときに出力が1(v)となるように校正したとする。ここでの電磁流量計の出力は、流速の大きさVを表す電圧である。このような校正により、被測定流体の流速が1(m/sec)であれば、電磁流量計の出力は当然1(v)になるはずである。ところが、ある時間t1が経過したところで、被測定流体の流速が同じく1(m/sec)であるにもかかわらず、電磁流量計の出力が1.2(v)になることがある。この出力変動の要因として考えられるのが、スパンのシフトである。スパンのシフトという現象は、例えば電磁流量計の周囲温度の変化などにより、励磁コイルを流れる励磁電流値が一定値を維持できなくなるなどの原因により発生する。
特許文献1の電磁流量計は、スパンのシフトを補正することにより正確な流量計測を実現するものであるが、流量計測の精度に影響を与える他の要因として、出力の0点のシフトがある。ここで、図34を用いて出力の0点のシフトについて説明しておく。被測定流体の流速が変化していないにもかかわらず、電磁流量計によって計測される流速の大きさVが変化したとすると、この出力変動の要因として0点のシフトが考えられる。
例えば、初期状態において被測定流体の流量が0のときに電磁流量計の出力が0(v)となり、流速が1(m/sec)のときに出力が1(v)となるように校正したとする。ここでの電磁流量計の出力は、流速の大きさVを表す電圧である。このような校正により、被測定流体の流速が1(m/sec)であれば、電磁流量計の出力は当然1(v)になるはずである。ところが、ある時間t1が経過したところで、被測定流体の流速が同じく1(m/sec)であるにもかかわらず、電磁流量計の出力が1.5(v)になり、さらに流速を0に戻しても0.5(v)が出力され、0にならないことがある。この出力変動の要因として考えられるのが、0点のシフトである。0点のシフトという現象は、例えば電磁流量計の周囲温度の変化などにより、磁場の変化によって発生する電圧が変動し、キャンセルできなくなることから生じる。
励磁コイルに供給する励磁電流に正弦波を用いる正弦波励磁方式の電磁流量計には、商用周波数ノイズの影響を受けやすいという欠点があるが、この欠点は励磁電流の周波数を高くした高周波励磁方式によって解決することができる(例えば、非特許文献1参照)。また、高周波励磁方式には、電気化学ノイズやスパイクノイズといった1/fノイズに強いという利点があり、さらに応答性(流量変化に対して流量信号を素早く追従させる特性)を向上させることができるという利点がある。正弦波励磁方式の電磁流量計では、常に磁場が変化しており、この磁場の変化によって発生する電極間起電力の成分の影響をなくすために、電極軸を境とする測定管の前後で磁場が対称に分布するような構造となっている。しかし、実際には電極や取り出し線の位置ずれ、コイルから発生する磁場の対称性のずれなどにより、磁場の時間変化によって発生する成分の影響を受ける。そこで、正弦波励磁方式の電磁流量計では、磁場の時間変化によって発生する成分の影響を校正時にオフセットとして取り除いているが、磁場のシフトや磁場の分布の変化等により影響をうけ、電磁流量計の出力の0点がシフトしてしまうことが避けられない。また、正弦波励磁方式の電磁流量計では、位相検波により磁場の変化による成分をキャンセルするようにしているが、この位相検波が安定しないため、出力の0点の安定性が悪いという欠点があった。
一方、励磁コイルに供給する励磁電流に矩形波を用いる矩形波励磁方式の電磁流量計の場合、磁場の変化がなくなったところで、電極間起電力を検出するという手法をとっているため、出力の0点の安定性が正弦波励磁方式に比べて優れている(例えば、非特許文献1参照)。しかし、矩形波励磁方式の電磁流量計では、励磁電流が高周波になると、励磁コイルのインピーダンスや、励磁電流の応答性、磁場の応答性、励磁コイルのコアや測定管での過電流損失といった影響を無視できなくなり、矩形波励磁を維持すること(すなわち、磁場の変化がないところで電極間起電力を検出すること)が難しくなり、出力の0点の安定性を確保できなくなる。結果として、矩形波励磁方式の電磁流量計の場合、高周波励磁が難しく、流量変化に対する応答性の向上や1/fノイズの除去を実現できないという問題点があった。
また、正弦波励磁方式と矩形波励磁方式のいずれにおいても、被測定流体を流したままでは0点がシフトしたかどうかを確認することができないので、被測定流体を止めて流量を0にした上で、出力の0点がシフトしたかどうかを確認し、設定している0点のオフセットを修正する作業が必要となる。
なお、出願人は、本明細書に記載した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を出願時までに発見するには至らなかった。
WO 03/027614 社団法人日本計量機器工業連合会編,「計装エンジニアのための流量計測 AtoZ」,工業技術社,1995年,p.143−160
まず、電磁流量計のスパン補正の問題を説明するために必要な物理現象について説明しておく。変化する磁場中を物体が移動する場合、電磁誘導によって2種類の電界、(a) 磁場の時間変化によって発生する電界E(i)=∂A/∂t 、(b) 磁場中を物体が動くことにより発生する電界E(v)=v×B が発生する。v×BはvとBの外積を示し、∂A/∂tはAの時間による偏微分を示す。v、B、Aはそれぞれ下記に対応しており、3次元(x、y、z)に方向をもつベクトルである(v:流速、B:磁束密度、A:ベクトルポテンシャル(磁束密度とはB=rotAの関係がある))。ただし、ここでの3次元ベクトルは複素平面上のベクトルとは意味が異なる。この2種類の電界によって、電位分布が流体中に発生し、この電位は電極によって検出することができる。
特許文献1の電磁流量計では、基本的な理論展開においては実軸に対するベクトルkcの角度θ00、実軸に対するベクトルkvcの角度θ01を考慮しているが、スパンのシフトの問題を解決できる電磁流量計の制約条件として、θ00=θ01=0を前提においている。すなわち、上記前提が成立するように電磁流量計の条件を整えることが制約条件になる。なお、θ1は初期位相であり、励磁電流と電極間起電力に共通の位相部分である。ゆえに、従来技術および本発明のように、励磁電流と電極間起電力の位相差のみを考える場合は、理解を容易にするためθ1=0とする。
前記制約条件が流量計測に与える影響について、図35を用いて複素ベクトルの考え方で説明する。図35において、Reは実軸、Imは虚軸である。まず、磁場の時間変化のみに依存し、被測定流体の流速に依存しない電極間起電力Ecを∂A/∂t成分と呼び、この∂A/∂t成分をベクトルVaで表すと共に、被測定流体の流速に依存する電極間起電力Evcをv×B成分と呼び、このv×B成分をベクトルVbで表す。前述のスパンとは、この被測定流体の流速に依存するv×B成分の流速の大きさVにかかる係数である。なお、θ00,θ01の前述の定義を言い換えると、θ00は虚軸に対するベクトルVaの角度、θ01は実軸に対するベクトルVbの角度である。
図30に示した電磁流量計の構成において、θ00=θ01=0ということは、ベクトルVaが虚軸Im上に存在し、ベクトルVbが実軸Re上に存在することを意味する。すなわち、ベクトルVaとVbは直交する位置関係にある。このように、特許文献1の電磁流量計は、∂A/∂t成分のベクトルVaとv×B成分のベクトルVbが直交することを前提としている。
しかしながら、現実の電磁流量計において、上記前提は必ずしも常に成立するとは限らない。その理由は、ミクロ的には∂A/∂t成分のベクトルVaとv×B成分のベクトルVbの直交性は保証されるが、マクロ的に見ると、被測定流体に印加される磁場が理想的な分布になっていないため、電極で検出されるマクロ的な∂A/∂t成分のベクトルVaとv×B成分のベクトルVbが若干のゆがみを含むと考えなければならないからである。したがって、ベクトルVaとVbは直交しないし、θ00≠0、θ01≠0、θ00≠θ01と考えなければならない。
以上の説明から明らかなように、高精度の流量計測を指向する場合には、ベクトルVaとVbの直交性を精密に考慮しなければならないが、特許文献1の電磁流量計では、ベクトルVaとVbの直交性を前提としているので、直交性に誤差が生じる場合には、正確なスパン補正や流量計測ができない可能性があった。
次に、電磁流量計の0補正の問題について説明すると、特許文献1の電磁流量計では、出力の0点のシフトを考慮しておらず、0点の誤差を補正することができないという問題点があった。特許文献1の電磁流量計で0点のシフトによる流量計測誤差が生じることは、式(18)において∂A/∂t成分が変動すると、流速の大きさVが0であっても、電極間起電力Eacが0にならないことから明らかである。
一方、非特許文献1に記載された電磁流量計では、校正時に0点の誤差を補正することができる。しかし、正弦波励磁方式の電磁流量計では、校正した後に0点がシフトしてしまうことがあり、0点の安定性を確保することができないという問題点があった。また、矩形波励磁方式の電磁流量計においても、高周波励磁において0点の安定性を確保することができないという問題点があった。
さらに、特許文献1および非特許文献1に記載されたいずれの電磁流量計においても、被測定流体を流したままの状態では出力の0点の誤差を補正することができないという問題点があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ高周波励磁においても出力の0点の安定性を確保することができ、被測定流体の流量を0にすることなく0点の誤差を補正することができる電磁流量計を提供することを目的とする。
本発明の電磁流量計は、被測定流体が流れる測定管と、この測定管に配設され、前記流体に印加される磁場と前記流体の流れとによって生じた起電力を検出する電極と、この電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面に対して非対称かつ時間変化する磁場を前記流体に印加する励磁部と、前記電極で検出される、前記流体の流速とは無関係な∂A/∂t成分の起電力と前記流体の流速に起因するv×B成分の起電力との合成起電力から、前記∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出する0点補正部と、前記合成起電力から、前記∂A/∂t成分と同一又は異なる∂A/∂t成分を抽出し、この抽出した∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正部と、前記変動要因を除去したv×B成分から前記流体の流量を算出する流量出力部とを備えるものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記0点補正部は、前記電極で検出される合成起電力から前記∂A/∂t成分を抽出して、前記合成起電力の中から、前記抽出した∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記抽出された∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える磁場を前記流体に印加し、前記0点補正部は、前記電極で検出される合成起電力のうち、同時又は交互に得られる複数の周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記∂A/∂t成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第1の実施の形態)において、前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面からオフセットを設けて離れた位置に配設された励磁コイルと、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、前記0点補正部は、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記2つの周波数成分の起電力差を前記∂A/∂t成分として抽出し、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の中から、前記抽出した∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記0点補正部は、前記電極で検出される合成起電力から第1の∂A/∂t成分を抽出して、前記合成起電力の中から、前記抽出した第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記合成起電力から第2の∂A/∂t成分を抽出し、この抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差を切り替えながら、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する電源部とからなり、前記0点補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差が第1の値である第1の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち、同時又は交互に得られる複数の周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第1の磁場と第2の磁場との位相差が前記第1の励磁状態と異なる第2の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち、同時又は交互に得られる複数の周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記第2の∂A/∂t成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第2の実施の形態)において、前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給し、前記0点補正部は、前記第1の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記2つの周波数成分の起電力差を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の中から、前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第2の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち前記2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記2つの周波数成分の起電力差を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差を切り替えながら、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する電源部とからなり、前記0点補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差が第1の値である第1の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち、同時又は交互に得られる複数の周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第1の磁場と第2の磁場との位相差が前記第1の励磁状態と異なる第2の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち1つの周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記第2の∂A/∂t成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第3の実施の形態)において、前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給し、前記0点補正部は、前記第1の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記2つの周波数成分の起電力差を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の中から、前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第2の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の振幅と位相を求め、この振幅と位相に基づいて前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の起電力を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなり、前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力和から前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力差を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力差から前記第2の∂A/∂t成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第4の実施の形態)において、前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給し、前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力和、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力和を求め、これら2つの起電力和の差分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の周波数の起電力和又は前記第2の周波数の起電力和の中から前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力差、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力差を求め、これら2つの起電力差の差分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなり、前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力差を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力差から前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力和から前記第2の∂A/∂t成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第4の実施の形態)において、前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給し、前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力差、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力差を求め、これら2つの起電力差の差分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の周波数の起電力差又は前記第2の周波数の起電力差の中から前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力和、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力和を求め、これら2つの起電力和の差分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例において、前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなり、前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力和から前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の1つの周波数成分の起電力差から前記第2の∂A/∂t成分を抽出するものである。
また、本発明の電磁流量計の1構成例(第5の実施の形態)において、前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給し、前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力和、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力和を求め、これら2つの起電力和の差分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の周波数の起電力和又は前記第2の周波数の起電力和の中から前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力差、又は前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力差を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するものである。
本発明によれば、電極で検出される、流体の流速とは無関係な∂A/∂t成分の起電力と流体の流速に起因するv×B成分の起電力との合成起電力から、∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出し、電極で検出される合成起電力から、前記∂A/∂t成分と同一又は異なる∂A/∂t成分を抽出し、この抽出した∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去し、変動要因を除去したv×B成分から流体の流量を算出するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。その結果、本発明では、高精度の流量計測を行うことができる。
本発明は、電磁流量計の電極で検出される電極間起電力から、∂A/∂t成分のベクトルVaとv×B成分のベクトルVbとの合成ベクトルVa+Vbを求めたとき、ベクトルVaは磁場の時間変化のみに依存し、被測定流体の流速の大きさVに無関係なベクトルであり、ベクトルVbは被測定流体の流速の大きさVに比例して大きさが変化するベクトルであることに着目している。
励磁周波数を0にすれば、合成ベクトルVa+VbからベクトルVbのみが取り出せることになるが、低周波領域での出力に対するノイズの影響が大きく現実的ではない。そこで、本発明では、合成ベクトルVa+Vbの中から0点の変動要因となる第1の∂A/∂t成分を抽出して、この第1の∂A/∂t成分を合成ベクトルVa+Vbから引くことにより、v×B成分のみを抽出するようにしている。v×B成分を0にすることなく(流量を0にすることなく)、また∂A/∂t成分を0にすることなく(励磁周波数を0にすることなく)、v×B成分のみを取り出せることが重要である。
次に、本発明では、抽出したv×B成分に含まれるスパン変動要因を消去することが可能な第2の∂A/∂t成分を抽出して、v×B成分を第2の∂A/∂t成分により正規化してスパン変動要因を除去し、スパン変動要因を除去したv×B成分に基づき、被測定流体の流量を算出するようにしている。第2の∂A/∂t成分を抽出することにより、第2の∂A/∂t成分とv×B成分とが直交するか否かに関係なく、第2の∂A/∂t成分とv×B成分を別々のベクトルとして扱えることが重要である。なお、第2の∂A/∂t成分は、第1の∂A/∂t成分と同じ場合もある。
以上により、本発明では、v×B成分のスパンを補正することができ、0点の変動要因とスパンの変動要因がともに除去された出力を得ることができる。以下、0点とスパンを実際に補正するための本発明の基本原理について説明する。
[第1の基本原理]
本発明の第1の基本原理に基づく電磁流量計は、電極で検出される合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出し、この∂A/∂t成分を合成ベクトルの中から取り除くことによりv×B成分のみを抽出し、抽出した∂A/∂t成分に基づいてv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)の変動要因を除去し、スパン変動要因を除去したv×B成分から流体の流量を算出するものである。この第1の基本原理に基づく電磁流量計の構成は、図30に示した従来の電磁流量計と同様であるので、図30の符号を用いて第1の基本原理を説明する。
図30の電磁流量計で説明した式(18)の右辺第1項は励磁コイル3から発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分、右辺第2項は励磁コイル3から発生する磁場と流速に起因するv×B成分となる。この合成ベクトルにおけるv×B成分の流速Vに係る係数の変動部分と∂A/∂t成分のω0に係る係数の変動部分が等しく、合成ベクトルから取り出した1つの∂A/∂t成分を用いて、0補正とスパン補正を行う方式が使用できる。この場合に適用できる原理を以下説明する。
励磁コイル3に角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVa10とv×B成分のベクトルVb10の合成ベクトルVa10+Vb10に相当する。
Va10=ra・exp(j・θa)・C1・ω0 ・・・(19)
Vb10=rb・exp(j・θb)・C1・V ・・・(20)
図1にベクトルVa10とベクトルVb10と合成ベクトルVa10+Vb10とを示す。
ここで、∂A/∂t成分のベクトルVa10は、磁場の変化により発生する起電力なので、励磁周波数ω0に比例する大きさになる。このベクトルVa10の大きさの既知の比例定数部分をra、ベクトルVa10の既知の方向をθaとすると、C1が磁場のシフトなどの「変化する要素」として与えられる。
また、v×B成分のベクトルVb10は、測定管中の流体の移動により発生する起電力なので、流速の大きさVに比例する大きさになる。このベクトルVb10の大きさの既知の比例定数部分をrb、ベクトルVb10の既知の方向をθbとすると、C1が磁場のシフトなどの「変化する要素」として与えられる。したがって、∂A/∂t成分のベクトルVa10におけるC1とv×B成分のベクトルVb10におけるC1は、同一の要素になる。流速の大きさVが0の時は、ベクトルVa10が変動することにより、合成ベクトルの大きさが変動する(すなわち、0点が変動する)。
図2は、0補正及びスパン補正の対象となる合成ベクトルから∂A/∂t成分のベクトルVa10を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。電極2a,2bで検出される合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法としては、複数の励磁周波数による磁場を被測定流体に印加し、電極間起電力に含まれる複数の周波数成分の出力差を利用して∂A/∂t成分を抽出する方法を用いる。電極間起電力から直接求めることができる複素ベクトルは合成ベクトルVa10+Vb10であり、ベクトルVa10,Vb10が直接的に計測できるわけではない。そこで、∂A/∂t成分の大きさは励磁周波数ωに比例し、v×B成分は励磁周波数ωに依存しないことに着眼する。具体的には、ある角周波数ω0で励磁したときの合成ベクトルと別の角周波数ω2で励磁したときの合成ベクトルとの差を求める。この差は、∂A/∂t成分の大きさの変化分だけを与えるベクトルになるので、この変化分から∂A/∂t成分を抽出することができる。
励磁角周波数をω2としたときのv×B成分のベクトルは式(20)に示したベクトルVb10と同じである。一方、励磁角周波数をω2としたときの∂A/∂t成分のベクトルVa12は、式(19)においてω0をω2で置き換えたものとなり、次式のようになる。
Va12=ra・exp(j・θa)・C1・ω2 ・・・(21)
電極間起電力に含まれる角周波数ω0の成分(合成ベクトルVa10+Vb10)と角周波数ω2の成分(合成ベクトルVa12+Vb10)との差分を求めると、v×B成分がキャンセルされ、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍したものはベクトルVa10と同じになる。よって、合成ベクトルVa10+Vb10中の∂A/∂t成分のベクトルVa10を異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。
図3は、合成ベクトル中のv×B成分のベクトルVb10を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。合成ベクトルVa10+Vb10からベクトルVa10を引くことにより、式(20)に示したv×B成分のベクトルVb10を抽出することができる。式(20)より、v×B成分のベクトルVb10には、角周波数に関連する項(0点変動要因)が含まれていないことが分かる。
抽出したv×B成分のベクトルVb10と∂A/∂t成分のベクトルVa10の変動要因はどちらもC1なので、∂A/∂t成分のベクトルVa10でv×B成分のベクトルVb10を正規化すれば、v×B成分のベクトルVb10のスパン変動要因が消去できる。
図4は、v×B成分のベクトルVb10を∂A/∂t成分のベクトルVa10により正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。抽出した∂A/∂t成分のベクトルVa10により、v×B成分のベクトルVb10を正規化する。正規化したv×B成分をω0倍した正規化v×B成分をVnb10とすると、Vnb10は式(22)で表される。
Vnb10=(Vb10/Va10)・ω0
=(rb/ra)・exp{j・(θb−θa)}・V ・・・(22)
なお、正規化したv×B成分をω0倍する理由は、流速の大きさVにかかる係数(スパン)からω0を取り除くためである。式(22)によれば、正規化ベクトルVnb10のVにかかる係数から変動要因C1が消去され、スパンが補正されていることが分かる。式(22)より、被測定流体の流速の大きさVを以下のように算出することができる。
V=|Vnb10/[(rb/ra)・exp{j・(θb−θa)}]|
=|Vnb10|/(rb/ra) ・・・(23)
[第2の基本原理]
次に、本発明の第2の基本原理について説明する。本発明の第2の基本原理に基づく電磁流量計は、電極で検出される合成ベクトルから第1の∂A/∂t成分を抽出し、この第1の∂A/∂t成分を合成ベクトルの中から取り除くことによりv×B成分のみを抽出し、次に合成ベクトルから第2の∂A/∂t成分を抽出し、抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいてv×B成分の流速の大きさVにかかる係数(スパン)の変動要因を除去し、スパン変動要因を除去したv×B成分から流体の流量を算出するものである。
まず、第2の基本原理に基づく電磁流量計のうち、2個の励磁コイルと1対の電極とを有する電磁流量計の原理を図5を用いて説明する。図5の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、測定管軸PAXの方向と直交する、電極2a,2bを含む平面PLNを測定管1の境としたとき、この平面PLNを境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する第1の励磁コイル3a、第2の励磁コイル3bとを有する。第1の励磁コイル3aは、平面PLNから例えば下流側にオフセット距離d1だけ離れた位置に配設される。第2の励磁コイル3bは、平面PLNから例えば上流側にオフセット距離d2だけ離れた位置に、平面PLNを挟んで第1の励磁コイル3aと対向するように配設される。
第2の励磁コイル3bを平面PLNを挟んで第1の励磁コイル3aと対向するように配設した場合、電極2a,2bで検出される電極間起電力のうち、第1の励磁コイル3aから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分とは同じ方向になる。一方、電極間起電力のうち、第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分とは逆向きになる。そのため、第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と、第1の励磁コイル3aから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分とを合わせた全ての合成ベクトルにおけるv×B成分の変動要因と∂A/∂t成分の変動要因は、等しくならないことを考慮して補正を行う必要がある。
ここで、第1の励磁コイル3aから発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B2と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B3は、以下のように与えられるものとする。
B2=b2・cos(ω0・t−θ2) ・・・(24)
B3=b3・cos(ω0・t−θ3) ・・・(25)
式(24)、式(25)において、b2,b3はそれぞれ磁束密度B2,B3の振幅、ω0は角周波数、θ2は磁束密度B2とω0・tとの位相差(位相遅れ)、θ3は磁束密度B3とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B2を磁場B2とし、磁束密度B3を磁場B3とする。
被測定流体の流速が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Bbの変化による渦電流I1、磁場Bcの変化による渦電流I2は、図6に示すような向きとなる。したがって、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E1と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E2は、図6に示すように互いに逆向きとなる。
被測定流体の流速がV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流I1,I2に加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Bb,v×Bcが発生するため、流速ベクトルvと磁場Bbによる渦電流Iv1、流速ベクトルvと磁場Bcによる渦電流Iv2は、図7に示すような向きとなる。したがって、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する電極間起電力Ev2は、同じ向きとなる。
図6、図7で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力とを合わせた全体の電極間起電力を複素ベクトルであらわした起電力Eac2は、式(10)、式(16)、式(17)を用いれば、式(18)に対応して次式で表される。
Eac2=rk・ω0・b2・exp{j・(π/2+θ2+θ00)}
+γ・rk・V・b2・exp{j・(θ2+θ01)}
+rk・ω0・b3・exp{j・(−π/2+θ3+θ00)}
+γ・rk・V・b3・exp{j・(θ3+θ01)} ・・・(26)
ここで、ω0・tに対する磁場B2の位相遅れθ2とω0・tに対する磁場B3の位相遅れθ3との関係がθ3=θ2+Δθ3で、虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係がθ01=θ00+Δθ01である状態を第1の励磁状態とし、この第1の励磁状態における電極間起電力Eac2をEac20とすると、電極間起電力Eac20は次式のようになる。
Eac20=rk・exp{j・(θ2+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b2−b3・exp(j・Δθ3)}・ω0
+rk・exp{j・(θ2+θ00)}
・γ・exp(j・Δθ01)・{b2+b3・exp(j・Δθ3)} ・V ・・・(27)
また、磁場B2と磁場B3との位相差が第1の励磁状態から一定値πだけ変化し(θ3=π+θ2+Δθ3)、かつθ01=θ00+Δθ01である状態を第2の励磁状態とし、この第2の励磁状態における電極間起電力Eac2をEac2Rとしたときの電極間起電力Eac2Rは式(27)より次式のようになる。
Eac2R=rk・exp{j・(θ2+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b2+b3・exp(j・Δθ3)}・ω0
+rk・exp{j・(θ2+θ00)}
・γ・exp(j・Δθ01)・{b2−b3・exp(j・Δθ3)} ・V ・・・(28)
式(26)の右辺第1項は第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分、右辺第2項は第1の励磁コイル3aから発生する磁場と流体の流速に起因するv×B成分、右辺第3項は第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分、右辺第4項は第2の励磁コイル3bから発生する磁場と流体の流速に起因するv×B成分となる。
また、式(27)の右辺第1項と式(28)の右辺第1項とを合わせたものが、第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分とを合わせた全ての∂A/∂t成分、式(27)の右辺第2項と式(28)の右辺第2項とを合わせたものが、第1の励磁コイル3aから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分と第2の励磁コイル3bから発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分とを合わせた全てのv×B成分となる。
式(27)において、全てのv×B成分の流速の大きさVに係る係数の変動要因と、全ての∂A/∂t成分の角周波数ω0に係る係数の変動要因とが一致しないことから分かるように、図5の電磁流量計の構成では、合成ベクトルから取り出した1つの∂A/∂t成分を用いて0補正とスパン補正とを行う前述の第1の基本原理が使用できない。そこで、コイル間の位相差を第1の励磁状態での位相差プラスπとすると、式(27)における全てのv×B成分の流速Vに係る係数の変動要因と式(28)における全ての∂A/∂t成分のω0に係る係数の変動要因とが等しくなり、この第2の励磁状態の∂A/∂t成分を取り出せば、補正が可能になる。この場合に適用できる原理を以下説明する。
第1の励磁コイル3aのみに角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される電極間起電力は、第1の基本原理で既述したように、式(19)に示す∂A/∂t成分のベクトルVa10と式(20)に示すv×B成分のベクトルVb10の合成ベクトルVa10+Vb10に相当する。図8に、ベクトルVa10とベクトルVb10と合成ベクトルVa10+Vb10とを示す。
一方、第2の励磁コイル3bのみに角周波数ω0の励磁電流を供給した場合に電極2a,2bで検出される電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVa20とv×B成分のベクトルVb20の合成ベクトルVa20+Vb20に相当する。
Va20=−ra・exp(j・θa)・C2・ω0 ・・・(29)
Vb20= rb・exp(j・θb)・C2・V ・・・(30)
図9に、ベクトルVa20とベクトルVb20と合成ベクトルVa20+Vb20とを示す。
ここで、∂A/∂t成分のベクトルVa20の大きさの比例定数部分をra、ベクトルVa20の既知の方向をθaとすると、C2が磁場のシフトなどの「変化する要素」として与えられる。また、v×B成分のベクトルVb20の大きさの既知の比例定数部分をrb、ベクトルVb20の既知の方向をθbとすると、C2が磁場のシフトなどの「変化する要素」として与えられる。したがって、∂A/∂t成分のベクトルVa20におけるC2とv×B成分のベクトルVb20におけるC2は、同一の要素になる。
第1の励磁コイル3aから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分(図8)と第2の励磁コイル3bから発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分(図9)とが逆方向を向いていることに注意すれば、励磁コイル3aと3bの両方に角周波数ω0の励磁電流を供給した場合の電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVas0とv×B成分のベクトルVbs0の合成ベクトルVas0+Vbs0に相当することが分かる。
Vas0=Va10+Va20
=ra・exp(j・θa)・(C1−C2)・ω0 ・・・(31)
Vbs0=Vb10+Vb20
=rb・exp(j・θb)・(C1+C2)・V ・・・(32)
図10に、ベクトルVas0とベクトルVbs0と合成ベクトルVas0+Vbs0とを示す。式(32)に示すベクトルVbs0の流速の大きさVにかかる係数の中で(C1+C2)が、スパン変動要因として与えられる。また、流速の大きさVが0の時は、ベクトルVas0が変動することにより、合成ベクトルの大きさが変動する(すなわち、0点が変動する)。
図11は、0補正及びスパン補正の対象となる合成ベクトルから第1の∂A/∂t成分を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する方法としては、複数の励磁周波数による磁場を被測定流体に印加し、電極間起電力に含まれる複数の周波数成分の出力差を利用して∂A/∂t成分を抽出する方法を用いる。第1の基本原理と同様に、電極間起電力から直接求めることができる複素ベクトルは合成ベクトルVas0+Vbs0であり、ベクトルVas0,Vbs0が直接的に計測できるわけではない。そこで、∂A/∂t成分の大きさは励磁周波数ωに比例し、v×B成分は励磁周波数ωに依存しないことに着眼する。具体的には、ある角周波数ω0で励磁したときの合成ベクトルと別の角周波数ω2で励磁したときの合成ベクトルとの差を求める。この差は、∂A/∂t成分の大きさの変化分だけを与えるベクトルになるので、この変化分から∂A/∂t成分を抽出することができる。
励磁角周波数をω2としたときのv×B成分のベクトルは式(32)に示したベクトルVbs0と同じである。一方、励磁角周波数をω2としたときの∂A/∂t成分のベクトルVas2は、式(31)においてω0をω2で置き換えたものとなり、次式のようになる。
Vas2=ra・exp(j・θa)・(C1−C2)・ω2 ・・・(33)
電極間起電力に含まれる角周波数ω0の成分(合成ベクトルVas0+Vbs0)と角周波数ω2の成分(合成ベクトルVas2+Vbs0)との差分を求めると、v×B成分がキャンセルされ、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍したものはベクトルVas0と同じになる。よって、合成ベクトルVas0+Vbs0中の∂A/∂t成分のベクトルVas0を異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。ここで、抽出した∂A/∂t成分を第1の∂A/∂t成分とする。
図12は、合成ベクトルVas0+Vbs0からv×B成分のベクトルVbs0を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。合成ベクトルVas0+Vbs0から第1の∂A/∂t成分のベクトルVas0を引くことにより、式(32)に示したv×B成分のベクトルVbs0を抽出することができる。式(32)より、v×B成分のベクトルVbs0には、角周波数ω0,ω2に関連する項(0点変動要因)が含まれていないことが分かる。
合成ベクトルVas0+Vbs0中の∂A/∂t成分のベクトルVas0におけるスパン変動要因(C1−C2)とv×B成分のベクトルVbs0におけるスパン変動要因(C1+C2)とは異なる値となる。したがって、第1の∂A/∂t成分によりv×B成分の正規化を行っても次式の通り、スパン変動要因(C1−C2)/(C1+C2)が残り、スパン変動要因を除去することはできない。
Vbs0/Vas0=(rb/ra)・exp{j・(θb−θa)}
・{(C1−C2)/(C1+C2)}・(V/ω)
・・・(34)
そのため、v×B成分の変動要因と同じスパン変動要因(C1+C2)を含む第2の∂A/∂t成分を抽出する必要がある。このような第2の∂A/∂t成分を抽出するために、第1の励磁コイル3aから発生する磁場と第2の励磁コイル3bから発生する磁場との位相差がΔθ3である第1の励磁状態から位相差がΔθ3+πである第2の励磁状態に変化させると、スパン変動要因C2が反転することを利用する。つまり、第1の励磁状態に対して位相差を+π変化させた第2の励磁状態の位相条件で第2の励磁コイル3bのみを角周波数ω0で励磁した場合に電極2a,2bで検出される合成ベクトルは、第1の励磁状態で検出した合成ベクトル(図9)に対して反転し、以下の∂A/∂t成分のベクトルVa20Rとv×B成分のベクトルVb20Rの合成ベクトルVa20R+Vb20Rに相当する。
Va20R=ra・exp(j・θa)・C2・ω0 ・・・(35)
Vb20R=−rb・exp(j・θb)・C2・V ・・・(36)
図13に、ベクトルVa20RとベクトルVb20Rと合成ベクトルVa20R+Vb20Rとを示す。
角周波数ω0の第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給し、第1の励磁電流との位相差がΔθ3+πで角周波数がω0の第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給した場合の電極間起電力は、以下の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rとv×B成分のベクトルVbs0Rの合成ベクトルVas0R+Vbs0Rに相当する。
Vas0R=Va10+Va20R
=ra・exp(j・θa)・(C1+C2)・ω0 ・・・(37)
Vbs0R=Vb10+Vb20R
=rb・exp(j・θb)・(C1−C2)・V ・・・(38)
図14に、ベクトルVas0RとベクトルVbs0Rと合成ベクトルVas0R+Vbs0Rとを示す。
∂A/∂t成分のベクトルVas0Rにおけるスパン変動要因は、前述のv×B成分のベクトルVbs0のスパン変動要因(C1+C2)と等しい。したがって、第2の∂A/∂t成分としてVas0Rを抽出すれば、ベクトルVbs0の正規化が可能になる。第2の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを抽出する方法としては、以下の2つの方法がある。第1の抽出方法は、第1の∂A/∂t成分を抽出する際にも使用した方法、すなわち複数の励磁周波数による磁場を被測定流体に印加し、電極間起電力に含まれる複数の周波数成分の出力差を利用して∂A/∂t成分を抽出する方法である。第2の抽出方法は、Vas0R≫Vbs0Rと近似できる場合に、Vbs0R≒0として、近似的に第2の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを抽出する方法である。
図15は、第1の抽出方法により合成ベクトルVas0R+Vbs0Rから第2の∂A/∂t成分を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。励磁角周波数をω2としたときのv×B成分のベクトルは式(38)に示したベクトルVbs0Rと同じである。一方、励磁角周波数をω2としたときの∂A/∂t成分のベクトルVas2Rは、式(37)においてω0をω2で置き換えたものとなり、次式のようになる。
Vas2R=ra・exp(j・θa)・(C1+C2)・ω2 ・・・(39)
第2の励磁状態で検出した電極間起電力に含まれる角周波数ω0の成分(合成ベクトルVas0R+Vbs0R)と角周波数ω2の成分(合成ベクトルVas2R+Vbs0R)との差分を求めると、v×B成分がキャンセルされ、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍したものはベクトルVas0Rと同じになる。よって、合成ベクトルVas0R+Vbs0Rから第2の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rを異なる周波数成分の出力差を利用することにより抽出することができる。
図16は、v×B成分のベクトルVbs0を第2の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rにより正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。抽出した第2の∂A/∂t成分のベクトルVas0Rにより、v×B成分のベクトルVbs0を正規化する。正規化したv×B成分をω0倍した正規化v×B成分をVnbs0とすると、Vnbs0は次式で表される。
Vnbs0={Vbs0/Vas0R}・ω0
=(rb/ra)・exp{j・(θb−θa)}・V ・・・(40)
なお、正規化したv×B成分をω0倍する理由は、流速の大きさVにかかる係数(スパン)からω0を取り除くためである。式(40)によれば、正規化v×B成分Vnbs0のVにかかる係数から変動要因(C1+C2)が消去され、スパンが補正されていることが分かる。式(40)より、被測定流体の流速の大きさVを以下のように算出することができる。
V=|Vnbs0/[(rb/ra)・exp{j・(θb−θa)}]|
=|Vnbs0|/(rb/ra) ・・・(41)
次に、第2の基本原理に基づく電磁流量計のうち、1個の励磁コイルと2対の電極とを有する電磁流量計の原理を図17を用いて説明する。図17の電磁流量計は、測定管1と、被測定流体に印加される磁場および測定管軸PAXの双方と直交し、かつ被測定流体と接触するように測定管1に対向配置され、前記磁場と被測定流体の流れとによって生じた起電力を検出する第1の電極2a,2bおよび第2の電極2c,2dと、測定管軸PAXと直交する、第1の電極2a,2bを含む平面をPLN1、測定管軸PAXと直交する、第2の電極2c,2dを含む平面をPLN2としたとき、平面PLN1を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加すると同時に、平面PLN2を境とする測定管1の前後で非対称な、時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁コイル3とを有する。
第1の電極2a,2bは、励磁コイル3の軸を含む、測定管軸PAXの方向と垂直な平面PLN3から例えば上流側にオフセット距離d3だけ離れた位置に配設される。第2の電極2c,2dは、平面PLN3から例えば下流側にオフセット距離d4だけ離れた位置に配設され、平面PLN3を挟んで第1の電極2a,2bと対向するように配設される。
第2の電極2c,2dを平面PLN3を挟んで第1の電極2a,2bと対向するように配設した場合、第1の電極2a,2bで検出される電極間起電力のうち、励磁コイル3から発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分と、第2の電極2c,2dで検出される電極間起電力のうち、励磁コイル3から発生する磁場および流体の流速に起因するv×B成分とは、同じ方向になる。一方、第1の電極2a,2bで検出される電極間起電力のうち、励磁コイル3から発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分と、第2の電極2c,2dで検出される電極間起電力のうち、励磁コイル3から発生する磁場の変化に起因する∂A/∂t成分とは逆向きになる。そのため、第1の電極2a,2bで検出される∂A/∂t成分およびv×B成分と、第2の電極2c,2dで検出される∂A/∂t成分およびv×B成分とを合わせた全ての合成ベクトルにおけるv×B成分の変動要因と∂A/∂t成分の変動要因は、等しくならないことを考慮して補正を行う必要がある。
ここで、励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B4と、励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B5は、以下のように与えられるものとする。
B4=b4・cos(ω0・t−θ4) ・・・(42)
B5=b5・cos(ω0・t−θ5) ・・・(43)
但し、B4、B5は1つの励磁コイル3から発生しているので、b4とb5、θ4とθ5は互いに関係があり、独立変数ではない。式(42)、式(43)において、b4,b5はそれぞれ磁束密度B4,B5の振幅、ω0は角周波数、θ4は磁束密度B4とω0・tとの位相差(位相遅れ)、θ5は磁束密度B5とω0・tとの位相差である。以下、磁束密度B4を磁場B4とし、磁束密度B5を磁場B5とする。
被測定流体の流速が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Bdの変化による渦電流Iは、図18に示すような向きとなる。したがって、電極軸EAX1と測定管軸PAXとを含む平面内において磁場Bdの変化によって発生する電極2a,2b間の、流速と無関係な起電力E1と、電極軸EAX2と測定管軸PAXとを含む平面内において磁場Bdの変化によって発生する電極2c,2d間の、流速と無関係な起電力E2とは、図18に示すように互いに逆向きとなる。
被測定流体の流速がV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流Iに加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Bdが発生するため、流速ベクトルvと磁場Bdによる渦電流Ivは、図19に示すような向きとなる。したがって、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する電極2a,2bの起電力Ev1と、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する電極2c,2d間の起電力Ev2とは、同じ向きとなる。
図18、図19で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2a,2b間の第1の電極間起電力Eac31は、式(10)、式(16)、式(17)を用いれば、式(18)に対応して次式で表される。
Eac31=rk・ω0・b4・exp{j・(π/2+θ4+θ00)}
+γ・rk・V・b4・exp{j・(θ4+θ01)} ・・・(44)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2c,2d間の第2の電極間起電力Eac32は、式(10)、式(16)、式(17)を用いれば、式(18)に対応して次式で表される。
Eac32=rk・ω0・b5・exp{j・(−π/2+θ5+θ00)}
+γ・rk・V・b5・exp{j・(θ5+θ01)} ・・・(45)
ここで、ω0・tに対する磁場B4の位相遅れθ4とω0・tに対する磁場B5の位相遅れθ5との関係をθ5=θ4+Δθ5とし、虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(44)にθ5=θ4+Δθ5、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力Eac31と式(45)にθ5=θ4+Δθ5、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力Eac32との和をEac3sとすれば、起電力和Eac3sは次式で表される。
Eac3s=rk・exp{j・(θ4+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b4−b5・exp(j・Δθ5)}・ω0
+rk・exp{j・(θ4+θ00)}
・γ・exp(j・Δθ01)・{b4+b5・exp(j・Δθ5)} ・V ・・・(46)
また、式(44)にθ5=θ4+Δθ5、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力Eac31と式(45)にθ5=θ4+Δθ5、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力Eac32との差をEac3dとすれば、起電力差Eac3dは次式で表される。
Eac3d=rk・exp{j・(θ4+θ00)}
・exp(j・π/2)・{b4+b5・exp(j・Δθ5)}・ω0
+rk・exp{j・(θ4+θ00)}
・γ・exp(j・Δθ01)・{b4−b5・exp(j・Δθ5)} ・V ・・・(47)
式(44)の右辺第1項は第1の電極2a,2bで検出される∂A/∂t成分、式(44)の右辺第2項は第1の電極2a,2bで検出されるv×B成分となる。式(45)の右辺第1項は第2の電極2c,2dで検出される∂A/∂t成分、式(45)の右辺第2項は第2の電極2c,2dで検出されるv×B成分となる。
式(46)の右辺第1項は起電力和Eac3sの中の∂A/∂t成分、式(46)の右辺第2項は起電力和Eac3sの中のv×B成分となる。式(47)の右辺第1項は起電力差Eac3dの中の∂A/∂t成分、式(47)の右辺第2項は起電力差Eac3dの中のv×B成分となる。
式(46)において、起電力和Eac3sの中のv×B成分の流速の大きさVに係る係数の変動要因と、起電力和Eac3sの中の∂A/∂t成分の角周波数ω0に係る係数の変動要因とが一致しないことから分かるように、図17の電磁流量計の構成では、合成ベクトルから取り出した1つの∂A/∂t成分を用いて0補正とスパン補正とを行う前述の第1の基本原理が使用できない。
そこで、式(46)に示した起電力和Eac3sの中のv×B成分の流速の大きさVに係る係数の変動要因と、式(47)に示した起電力差Eac3dの中の∂A/∂t成分の角周波数ω0に係る係数の変動要因とが等しくなることを利用して、起電力差Eac3dの中の∂A/∂t成分を取り出せば、0補正とスパン補正が可能になり、図5の電磁流量計と同じ原理を補正に適用できる。
図5の電磁流量計の場合で説明した原理の内容を図17の電磁流量計に対応させるには、第1の励磁コイル3aから発生する磁場の影響に起因する起電力を第1の電極2a,2bで検出される起電力Eac31に置き換え、第2の励磁コイル3bから発生する磁場の影響に起因する起電力を第2の電極2c,2dで検出される起電力Eac32に置き換え、第1の励磁状態で検出される起電力を起電力和Eac3sに置き換え、第2の励磁状態で検出される起電力を起電力差Eac3dに置き換えればよい。
[第1の実施の形態]
次に、本発明の第1の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第1の基本原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図30に示した従来の電磁流量計と同様であるので、図30の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。
図30において、励磁コイル3から発生する磁場のうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B6は、以下のように与えられるものとする。
B6=b6・cos(ω0・t−θ6)+b6・cos(ω2・t−θ6)
・・・(48)
式(48)において、ω0,ω2は異なる角周波数、b6は磁束密度B6の角周波数ω0の成分の振幅および角周波数ω2の成分の振幅、θ6は角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差(位相遅れ)および角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差である。以下、磁束密度B6を磁場B6とする。
このとき、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分の起電力をE10cとすると、電極間起電力E10cは式(18)と同様の次式で表される。
E10c=rk・ω0・b6・exp{j・(π/2+θ6+θ00)}
+γ・rk・b6・exp{j・(θ6+θ01)} ・・・(49)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω2の成分の起電力をE12cとすると、電極間起電力E12cは式(18)と同様の次式で表される。
E12c=rk・ω2・b6・exp{j・(π/2+θ6+θ00)}
+γ・rk・b6・exp{j・(θ6+θ01)} ・・・(50)
ここで、虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とし、式(49)にθ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E10cをE10とすると、E10は次式で表される。
E10=rk・ω0・b6・exp{j・(π/2+θ6+θ00)}
+γ・rk・V・b6・exp{j・(θ6+θ00+Δθ01)}
=rk・b6・exp{j・(θ6+θ00)}
・{ω0・exp(j・π/2)+γ・V・exp(j・Δθ01)}
・・・(51)
同様に、式(50)にθ01=θ00+Δθ01を代入したときの電極間起電力E12cをE12とすると、E12は次式で表される。
E12=rk・ω2・b6・exp{j・(π/2+θ6+θ00)}
+γ・rk・V・b6・exp{j・(θ6+θ00+Δθ01)}
=rk・b6・exp{j・(θ6+θ00)}
・{ω2・exp(j・π/2)+γ・V・exp(j・Δθ01)}
・・・(52)
電極間起電力E10とE12との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA11とすれば、次式が成立する。この起電力差EdA11は、第1の基本原理の∂A/∂t成分に相当する。
EdA11=(E10−E12)・ω0/(ω0−ω2)
=rk・b6・exp{j・(θ6+θ00)}
・{ω0・exp(j・π/2)+γ・V・exp(j・Δθ01)
−ω2・exp(j・π/2)−γ・V・exp(j・Δθ01)}
・ω0/(ω0−ω2)
=[rk・b6・exp{j・(π/2+θ6+θ00)}]・ω0
・・・(53)
式(53)に示す起電力差EdA11は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この起電力差起電力差EdA11を用いて電極間起電力E10(合成ベクトルVa10+Vb10)からv×B成分を取り出す。なお、起電力差EdA11は、正確には電極間起電力E10とE12との起電力差をω0/(ω0−ω2)倍したものであるが、ω0/(ω0−ω2)倍した理由は、式の展開を容易にするためである。
式(51)に示す電極間起電力E10から式(53)に示す起電力差EdA11を引いたときに得られるv×B成分をEvB10とすると、v×B成分EvB10は次式で表される。
EvB10=E10−EdA11
=rk・b6・exp{j・(θ6+θ00)}
・{ω0・exp(j・π/2)+γ・V・exp(j・Δθ01)}
−[rk・b6・exp{j・(π/2+θ6+θ00)}]・ω0
=[γ・rk・b6・exp{j・(θ6+θ00+Δθ01)}]・V
・・・(54)
v×B成分EvB10は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvB10も0となることから分かるように、v×B成分EvB10より、0点が補正された出力を得ることができる。式(54)によれば、流速の大きさVにかかる係数の大きさと方向は、複素ベクトル[γ・rk・b6・exp{j・(θ6+θ00+Δθ01)}]で表される。
次に、v×B成分EvB10の流速の大きさVにかかる係数(スパン)の変動要因を除去するために、∂A/∂t成分を用いてv×B成分を正規化する。式(54)のv×B成分EvB10を式(53)の起電力差EdA11で正規化し、ω0倍した結果をEvBn1とすれば、正規化起電力EvBn1は次式で表される。
EvBn1=EvB10/EdA11・ω0
=[γ・rk・b1・exp{j・(θ1+θ00+Δθ01)}・V]
/[rk・b1・exp{j・(π/2+θ1+θ00)}・ω0]
・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(55)
式(55)ではv×Bにより発生する成分が正規化されスパンの変動要因が除去されている。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、正規化起電力EvBn1は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、0補正の過程において抽出した∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、0点の補正に加えて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
式(55)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|(EvBn1)/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|(EvBn1)|/γ ・・・(56)
なお、第1の基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表1のとおりである。本実施の形態は、表1から明らかなように、前述の第1の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004555023
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。図20は本実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図であり、図30と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、電極2a,2bを含む、測定管軸PAXの方向と垂直な平面PLNから軸方向にオフセット距離dだけ離れた位置に配設された励磁コイル3と、励磁コイル3に励磁電流を供給する電源部4と、信号変換部5と、信号変換部5によってスパンの変動要因が除去されたv×B成分から被測定流体の流量を算出する流量出力部6とを有する。
励磁コイル3と電源部4とは、平面PLNに対して非対称、かつ時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁部となる。
信号変換部5は、電極2a,2bで検出される合成起電力のうち第1の角周波数ω0と第2の角周波数ω2の2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて2つの周波数成分の起電力差を∂A/∂t成分として抽出し、合成起電力のうち第1の角周波数ω0の成分又は第2の角周波数ω2の成分の中から、抽出した∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部51と、抽出された∂A/∂t成分に基づいて、v×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正部52とから構成される。
電源部4は、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む励磁電流を励磁コイル3に供給する。このとき、励磁電流における角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分の振幅は同一である。
図21は信号変換部5と流量出力部6の動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5の0点補正部51は、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E10の振幅r10を求めると共に、実軸と電極間起電力E10との位相差φ10を図示しない位相検波器により求める。また、0点補正部51は、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E12の振幅r12を求めると共に、実軸と電極間起電力E12との位相差φ12を位相検波器により求める(図21ステップ101)。電極間起電力E10,E12は、バンドパスフィルタによっても周波数分離することができるが、実際にはコムフィルタとよばれる櫛形のデジタルフィルタを使用すれば、2つの角周波数ω0,ω2の成分に簡単に分離することができる。
続いて、0点補正部51は、電極間起電力E10の実軸成分E10xと虚軸成分E10y、および電極間起電力E12の実軸成分E12xと虚軸成分E12yを次式のように算出する(ステップ102)。
E10x=r10・cos(φ10) ・・・(57)
E10y=r10・sin(φ10) ・・・(58)
E12x=r12・cos(φ12) ・・・(59)
E12y=r12・sin(φ12) ・・・(60)
式(57)〜式(60)の算出後、0点補正部51は、電極間起電力E10とE12との起電力差EdA11の大きさを求める(ステップ103)。このステップ103の処理は、∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(53)の算出に相当する処理である。信号変換部5は、起電力差EdA11の実軸成分EdA11xと虚軸成分EdA11yを次式のように算出する。
EdA11x=(E10x−E12x)・ω0/(ω0−ω2) ・・・(61)
EdA11y=(E10y−E12y)・ω0/(ω0−ω2) ・・・(62)
0点補正部51は、電極間起電力E10から起電力差EdA11を取り除き、v×B成分EvB10の大きさを求める(ステップ104)。このステップ104の処理は、式(54)の算出に相当する処理である。0点補正部51は、v×B成分EvB10の大きさ|EvB10|を次式のように算出する。
|EvB10|={(E10x−EdA11x)2
+(E10y−EdA11y)21/2 ・・・(63)
次に、信号変換部5のスパン補正部52は、v×B成分EvB10を起電力差EdA11で正規化した正規化起電力EvBn1の大きさを求める(ステップ105)。このステップ105の処理は、式(55)の算出に相当する処理である。スパン補正部52は、正規化起電力EvBn1の大きさ|EvBn1|を次式のように算出する。
|EvBn1|=(|EvB10|/|EdA11|)・ω0 ・・・(64)
流量出力部6は、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ106)。このステップ106の処理は、式(56)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn1|/γ ・・・(65)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5と流量出力部6とは、以上のようなステップ101〜106の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ107においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、励磁コイル3から大きさが等しくかつ周波数が異なる2つの成分を含む磁場を被測定流体に印加し、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E10と角周波数ω2の成分の起電力E12とから起電力差EdA11(∂A/∂t成分)を抽出し、この∂A/∂t成分を電極間起電力E10(合成ベクトルVa10+Vb10)の中から取り除くことによりv×B成分を抽出し、∂A/∂t成分を用いてv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化して、スパン変動要素を消去するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力E10を0補正およびスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力E12を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように電極間起電力E12からE10を引いて起電力差EdA11(∂A/∂t成分)を求める。
EdA11=(E12−E10)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(66)
そして、電極間起電力E12から起電力差EdA11を引くことによりv×B成分EvB12を抽出し、次式のように起電力差EdA11を用いてv×B成分EvB12の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すればよい。その他の処理は電極間起電力E10を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn1|=|(EvB12/EdA11)・ω2| ・・・(67)
また、本実施の形態では、複数の励磁周波数ω0,ω2で同時に励磁する例を示したが、単一の励磁周波数ω0又はω2で励磁を行い、励磁周波数をω0とω2で交互に切り替えながら励磁をした場合でも同じ効果を得ることができる。
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態の電磁流量計に対して励磁コイルを1個追加したものであり、前述の第2の基本原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図5に示した電磁流量計と同様であるので、図5の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。新たに追加する第2の励磁コイルを既存の第1の励磁コイルと同じ側に追加した場合には、第1の実施の形態の冗長な構成となる。したがって、第2の励磁コイルは、電極を含む平面を挟んで第1の励磁コイルと異なる側に配設する必要がある。
第1の励磁コイル3aから発生する磁場Bbのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B7と、第2の励磁コイル3bから発生する磁場Bcのうち、電極軸EAX上において電極軸EAXおよび測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B8は、以下のように与えられるものとする。
B7=b7・cos(ω0・t−θ7)+b7・cos(ω2・t−θ7)
・・・(68)
B8=b8・cos(ω0・t−θ8)+b8・cos(ω2・t−θ8)
・・・(69)
式(68)、式(69)において、ω0,ω2は異なる角周波数、b7は磁束密度B7の角周波数ω0の成分の振幅および角周波数ω2の成分の振幅、b8は磁束密度B8の角周波数ω0の成分の振幅および角周波数ω2の成分の振幅、θ7は磁束密度B7の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差(位相遅れ)および角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差、θ8は磁束密度B8の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差および角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差である。以下、磁束密度B7を磁場B7とし、磁束密度B8を磁場B8とする。
被測定流体の流速が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Bbの変化による渦電流I1、磁場Bcの変化による渦電流I2は、図6に示すような向きとなる。したがって、電極軸EAXと測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bbの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E1と、磁場Bcの変化によって発生する、流速と無関係な電極間起電力E2は、図6に示すように互いに逆向きとなる。
被測定流体の流速がV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流I1,I2に加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Bb,v×Bcが発生するため、流速ベクトルvと磁場Bbによる渦電流Iv1、流速ベクトルvと磁場Bcによる渦電流Iv2は、図7に示すような向きとなる。したがって、流速ベクトルvと磁場Bbによって発生する電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bcによって発生する電極間起電力Ev2は、同じ向きとなる。
図6、図7で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分の起電力をE20cとすると、電極間起電力E20cは式(26)と同様の次式で表される。
E20c=rk・ω0・b7・exp{j・(π/2+θ7+θ00)}
+rk・ω0・b8・exp{j・(−π/2+θ8+θ00)}
+γ・rk・V・b7・exp{j・(θ7+θ01)}
+γ・rk・V・b8・exp{j・(θ8+θ01)} ・・・(70)
また、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた全体の電極間起電力のうち、角周波数ω2の成分の起電力をE22cとすると、電極間起電力E22cは式(26)と同様の次式で表される。
E22c=rk・ω2・b7・exp{j・(π/2+θ7+θ00)}
+rk・ω2・b8・exp{j・(−π/2+θ8+θ00)}
+γ・rk・V・b7・exp{j・(θ7+θ01)}
+γ・rk・V・b8・exp{j・(θ8+θ01)} ・・・(71)
ここで、ω0・t,ω2・tに対する磁場B7の位相遅れθ7とω0・t,ω2・tに対する磁場B8の位相遅れθ8との関係がθ8=θ7+Δθ8で、虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係がθ01=θ00+Δθ01である状態を第1の励磁状態とし、この第1の励磁状態における電極間起電力E20cをE20とすると、電極間起電力E20は次式のようになる。
E20=rk・ω0・b7・exp{j・(π/2+θ7+θ00)}
+rk・ω0・b8・exp{j・(−π/2+θ7+Δθ8+θ00)}
+γ・rk・V・b7・exp{j・(θ7+θ00+Δθ01)}
+γ・rk・V・b8・exp{j・(θ7+Δθ8+θ00+Δθ01)}
=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]
・・・(72)
また、θ8=θ7+Δθ8、θ01=θ00+Δθ01である第1の励磁状態における電極間起電力E22cをE22とすると、電極間起電力E22は次式のようになる。
E22=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]
・・・(73)
また、磁場B7と磁場B8との位相差が第1の励磁状態から一定値πだけ変化し(θ8=π+θ7+Δθ8)、かつθ01=θ00+Δθ01である状態を第2の励磁状態とし、この第2の励磁状態における電極間起電力E20cをE2π0とすると、電極間起電力E2π0は式(72)より次式のようになる。
E2π0=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}] ・・・(74)
また、θ8=π+θ7+Δθ8、θ01=θ00+Δθ01である第2の励磁状態における電極間起電力E22cをE2π2とすると、電極間起電力E2π2は式(73)より次式のようになる。
E2π2=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}] ・・・(75)
ここで、測定管軸PAXと直交する、電極2a,2bを含む平面PLNから第1の励磁コイル3aまでの距離d1と平面PLNから第2の励磁コイル3bまでの距離d2とが略等しいとすると(d1≒d2)、b7≒b8、Δθ8≒0になる。この場合、式(72)、式(73)、式(74)、式(75)は以下のようになる。
E20≒rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・{2・b7・γ・V・exp(j・Δθ01)} ・・・(76)
E22≒rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・{2・b7・γ・V・exp(j・Δθ01)} ・・・(77)
E2π0≒rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・{2・b7・ω0・exp(j・π/2)} ・・・(78)
E2π2≒rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・{2・b7・ω2・exp(j・π/2)} ・・・(79)
すなわち、電極間起電力E20,E22はほぼv×B成分の起電力のみとなり、電極間起電力E2π0,E2π2はほぼ∂A/∂t成分の起電力のみとなるので、∂A/∂t成分の抽出やv×B成分の抽出、および正規化や0補正演算の際の演算誤差を小さくすることができる。この点が、本実施の形態と第1の実施の形態の技術的な意義における相違点である。ただし、以後の理論展開もb7≠b8、Δθ8≠0として進める。
電極間起電力E20とE22との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果を起電力差EdA21とすれば、次式が成立する。ここで、起電力差EdA21は第2の基本原理の第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA21=(E20−E22)・ω0/(ω0−ω2)
=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}
−ω2・exp(j・π/2)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}
−γ・V・exp(j・Δθ01)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]
・ω0/(ω0−ω2)
=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}
・・・(80)
式(80)に示す起電力差EdA21は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この起電力差EdA21を用いて電極間起電力E20(合成ベクトルVas0+Vbs0)からv×B成分を取り出す。なお、起電力差EdA21は、正確には電極間起電力E20とE22との起電力差をω0/(ω0−ω2)倍したものであるが、ω0/(ω0−ω2)倍した理由は、式の展開を容易にするためである。
式(72)に示す電極間起電力E20から式(80)に示す起電力差EdA21を引いたときに得られるv×B成分をEvB20とすると、v×B成分EvB20は次式で表される。
EvB20=E20−EdA21
=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]
−rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}
=[γ・rk・exp{j・(θ7+θ00+Δθ01)}
・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]・V ・・・(81)
v×B成分EvB20は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvB20も0となることから分かるように、v×B成分EvB20より、0点が補正された出力を得ることができる。式(81)によれば、流速の大きさVにかかる係数の大きさと方向は、複素ベクトル[γ・rk・exp{j・(θ7+θ00+Δθ01)}・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]で表される。
次に、v×B成分EvB20の流速の大きさVにかかる係数(スパン)の変動要因を除去するために、このスパンの変動要因と同じ変動要因を持つ第2の∂A/∂t成分を抽出する。このときの抽出方法としては第2の基本原理で説明した第1の抽出方法を用いる。電極間起電力E2π0とE2π2との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果を起電力差EdA22とすれば、次式が成立する。ここで、起電力差EdA22は第2の基本原理の第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA22=(E2π0−E2π2)・ω0/(ω0−ω2)
=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}
−ω2・exp(j・π/2)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}
−γ・V・exp(j・Δθ01)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}]
・ω0/(ω0−ω2)
=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}
・・・(82)
起電力差EdA22は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この起電力差EdA22を用いてv×B成分EvB20の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。なお、起電力差EdA22は、正確には電極間起電力E2π0とE2π2との起電力差をω0/(ω0−ω2)倍したものであるが、ω0/(ω0−ω2)倍した理由は、式の展開を容易にするためである。
式(81)のv×B成分EvB20を式(82)の起電力差EdA22で正規化し、ω0倍した結果をEvBn2とすれば、正規化起電力EvBn2は次式で表される。
EvBn2=(EvB20/EdA22)・ω0
=[γ・rk・exp{j・(θ7+θ00+Δθ01)}
・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]・V
/[rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(83)
式(83)ではv×Bにより発生する成分が正規化されスパンの変動要因が除去されている。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、正規化起電力EvBn2は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した第2の∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、0点の補正に加えて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
式(83)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn2/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn2|/γ ・・・(84)
なお、第2の基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表2のとおりである。本実施の形態は、表2から明らかなように、前述の第2の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004555023
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。図22は本実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図であり、図5と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bに励磁電流を供給する電源部4aと、信号変換部5aと、信号変換部5aによってスパンの変動要因が除去されたv×B成分から被測定流体の流量を算出する流量出力部6aとを有する。
第1、第2の励磁コイル3a,3bと電源部4aとは、平面PLNに対して非対称、かつ時間変化する磁場を被測定流体に印加する励磁部となる。
信号変換部5aは、第1の励磁状態において、電極2a,2bで検出される合成起電力のうち第1の角周波数ω0と第2の角周波数ω2の2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて2つの周波数成分の起電力差を第1の∂A/∂t成分として抽出し、合成起電力のうち第1の角周波数ω0の成分又は第2の角周波数ω2の成分の中から、第1の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部51aと、第2の励磁状態において、電極2a,2bで検出される合成起電力のうち2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて2つの周波数成分の起電力差を第2の∂A/∂t成分として抽出し、この抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて、v×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正部52aとから構成される。
本実施の形態では、前述のとおり、平面PLNから第1の励磁コイル3aまでの距離d1と平面PLNから第2の励磁コイル3bまでの距離d2とが略等しいとする。
電源部4aは、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む第1の励磁電流を第1の励磁コイル3aに供給すると同時に、第1の励磁電流との位相差がΔθ8で、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む第2の励磁電流を第2の励磁コイル3bに供給する第1の励磁状態をT1秒継続し、この第1の励磁状態に対して第1の励磁電流と第2の励磁電流との位相差をΔθ8+πに変更した第2の励磁状態をT2秒継続することをT秒周期で繰り返す。すなわち、T=T1+T2である。
図23は信号変換部5aと流量出力部6aの動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5aの0点補正部51aは、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E20の振幅r20を求めると共に、実軸と電極間起電力E20との位相差φ20を図示しない位相検波器により求める。また、0点補正部51aは、第1の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E22の振幅r22を求めると共に、実軸と電極間起電力E22との位相差φ22を位相検波器により求める(図23ステップ201)。
続いて、0点補正部51aは、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E2π0の振幅r2π0を求めると共に、実軸と電極間起電力E2π0との位相差φ2π0を位相検波器により求める。また、0点補正部51aは、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω2の成分の起電力E2π2の振幅r2π2を求めると共に、実軸と電極間起電力E2π2との位相差φ2π2を図示しない位相検波器により求める(ステップ202)。
次に、0点補正部51aは、電極間起電力E20の実軸成分E20xと虚軸成分E20y、および電極間起電力E22の実軸成分E22xと虚軸成分E22yを次式のように算出する(ステップ203)。
E20x=r20・cos(φ20) ・・・(85)
E20y=r20・sin(φ20) ・・・(86)
E22x=r22・cos(φ22) ・・・(87)
E22y=r22・sin(φ22) ・・・(88)
式(85)〜式(88)の算出後、0点補正部51aは、電極間起電力E20とE22との起電力差EdA21の大きさを求める(ステップ204)。このステップ204の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(80)の算出に相当する処理である。0点補正部51aは、起電力差EdA21の実軸成分EdA21xと虚軸成分EdA21yを次式のように算出する。
EdA21x=(E20x−E22x)・ω0/(ω0−ω2) ・・・(89)
EdA21y=(E20y−E22y)・ω0/(ω0−ω2) ・・・(90)
0点補正部51aは、電極間起電力E20から起電力差EdA21を取り除き、v×B成分EvB20の大きさを求める(ステップ205)。このステップ205の処理は、式(81)の算出に相当する処理である。0点補正部51aは、v×B成分EvB20の大きさ|EvB20|を次式のように算出する。
|EvB20|={(E20x−EdA21x)2
+(E20y−EdA21y)21/2 ・・・(91)
次に、信号変換部5aのスパン補正部52aは、電極間起電力E2π0の実軸成分E2π0xと虚軸成分E2π0y、および電極間起電力E2π2の実軸成分E2π2xと虚軸成分E2π2yを次式のように算出する(ステップ206)。
E2π0x=r2π0・cos(φ2π0) ・・・(92)
E2π0y=r2π0・sin(φ2π0) ・・・(93)
E2π2x=r2π2・cos(φ2π2) ・・・(94)
E2π2y=r2π2・sin(φ2π2) ・・・(95)
式(92)〜式(95)の算出後、スパン補正部52aは、電極間起電力E2π0とE2π2との起電力差EdA22の大きさを求める(ステップ207)。このステップ207の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(82)の算出に相当する処理である。スパン補正部52aは、起電力差EdA22の大きさ|EdA22|を次式のように算出する。
|EdA22|={(E2π0x−E2π2x)2
+(E2π0y−E2π2y)21/2・ω0/(ω0−ω2)
・・・(96)
続いて、スパン補正部52aは、v×B成分EvB20を起電力差EdA22で正規化した正規化起電力EvBn2の大きさを求める(ステップ208)。このステップ208の処理は、式(83)の算出に相当する処理である。スパン補正部52aは、正規化起電力EvBn2の大きさ|EvBn2|を次式のように算出する。
|EvBn2|=(|EvB20|/|EdA22|)・ω0 ・・・(97)
流量出力部6aは、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ209)。このステップ209の処理は、式(84)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn2|/γ ・・・(98)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5aと流量出力部6aとは、以上のようなステップ201〜209の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ210においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ202〜209の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、周波数が異なる2つの成分を含む磁場B7を第1の励磁コイル3aから被測定流体に印加すると同時に、磁場B7との位相差がΔθ8(第1の値)で、周波数が異なる2つの成分を含む磁場B8を第2の励磁コイル3bから被測定流体に印加する第1の励磁状態において、角周波数ω0の成分の起電力E20と角周波数ω2の成分の起電力E22とを求め、電極間起電力E20とE22とから起電力差EdA21(第1の∂A/∂t成分)を抽出し、この第1の∂A/∂t成分を電極間起電力E20(合成ベクトルVas0+Vbs0)の中から取り除くことによりv×B成分を抽出し、磁場B7と磁場B8との位相差を第1の励磁状態から一定値πだけ変化させた第2の励磁状態において、角周波数ω0の成分の起電力E2π0と角周波数ω2の成分の起電力E2π2とを求め、電極間起電力E2π0とE2π2とから起電力差EdA22(第2の∂A/∂t成分)を抽出し、この第2の∂A/∂t成分を用いてv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化して、スパン変動要素を消去するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、電極2a,2bを含む平面PLNから第1の励磁コイル3aまでの距離d1と平面PLNから第2の励磁コイル3bまでの距離d2とを調整することにより、電極間起電力E20,E22がほぼv×B成分の起電力のみとなり、電極間起電力E2π0,E2π2がほぼ∂A/∂t成分の起電力のみとなるようにすることができる。これにより、本実施の形態では、v×B成分および∂A/∂t成分をより効果的に抽出することが可能であり、第1の実施の形態に比べて演算誤差を小さくすることが可能である。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力E20を0補正およびスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力E22を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように電極間起電力E22からE20を引いて起電力差EdA21(第1の∂A/∂t成分)を求める。
EdA21=(E22−E20)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(99)
そして、電極間起電力E22から起電力差EdA21を引くことによりv×B成分EvB22を抽出する。
さらに、次式のように電極間起電力E2π2からE2π0を引いて起電力差EdA22(第2の∂A/∂t成分)を求める。
EdA22=(E2π2−E2π0)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(100)
そして、次式のように起電力差EdA22を用いてv×B成分EvB22の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すればよい。その他の処理は電極間起電力E20を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn2|=|(EvB22/EdA22)・ω2| ・・・(101)
また、本実施の形態では、複数の励磁周波数ω0,ω2で同時に励磁する例を示したが、単一の励磁周波数ω0又はω2で励磁を行い、励磁周波数をω0とω2で交互に切り替えながら励磁をした場合でも同じ効果を得ることができる。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第2の基本原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は2個の励磁コイルと1対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図5に示した電磁流量計と同様であるので、図5の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。
式(81)で示したv×B成分EvB20の流速の大きさVにかかる係数(スパン)の変動要因を除去するために、このスパンの変動要因と同じ変動要因を持つ第2の∂A/∂t成分を抽出する。このときの抽出方法としては第2の基本原理で説明した第2の抽出方法を用いる。
初期状態(校正時の状態)において、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B7と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B8を等しく設定しておくと、その後の磁場B7とB8との差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b7+b8・exp(j・Δθ8)|≫|b7−b8・exp(j・Δθ8)|
・・・(102)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(102)の条件を考慮すると、式(74)において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)・{b7−b8・exp(j・Δθ8)}|
・・・(103)
式(103)の条件を用いて、電極間起電力E2π0を近似した電極間起電力EdA32は次式のように表される。ここで、起電力EdA32は第2の基本原理の第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA32≒E2π0 ・・・(104)
EdA32=rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}
・・・(105)
電極間起電力EdA32は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この電極間起電力EdA32を用いて、v×B成分EvB20の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。式(81)のv×B成分EvB20を式(105)の電極間起電力EdA32で正規化し、ω0倍したものをEvBn3とすれば、正規化起電力EvBn3は次式で表される。
EvBn3=(EvB20/EdA32)・ω0
=[γ・rk・exp{j・(θ7+θ00+Δθ01)}
・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]・V
/[rk・exp{j・(θ7+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b7+b8・exp(j・Δθ8)}]・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(106)
式(106)ではv×Bにより発生する成分が正規化されスパンの変動要因が除去されている。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、正規化起電力EvBn3は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した第2の∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、0点の補正に加えて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
式(106)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn3/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn3|/γ ・・・(107)
なお、第2の基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表3のとおりである。本実施の形態は、表3から明らかなように、前述の第2の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004555023
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第2の実施の形態と同様であるので、図22の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、電極2a,2bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bと、第1、第2の励磁コイル3a,3bに励磁電流を供給する電源部4aと、信号変換部5aと、流量出力部6aとを有する。
信号変換部5aは、第1の励磁状態において、電極2a,2bで検出される合成起電力のうち第1の角周波数ω0と第2の角周波数ω2の2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて2つの周波数成分の起電力差を第1の∂A/∂t成分として抽出し、合成起電力のうち第1の角周波数ω0の成分又は第2の角周波数ω2の成分の中から、第1の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部51aと、第2の励磁状態において、電極2a,2bで検出される合成起電力のうち第1の角周波数ω0の成分又は第2の角周波数ω2の成分の振幅と位相を求め、この振幅と位相に基づいて第1の角周波数ω0の成分又は第2の角周波数ω2の成分の起電力を第2の∂A/∂t成分として抽出し、この抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて、v×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正部52aとから構成される。
電源部4aの動作は第2の実施の形態と同じである。図24は本実施の形態の信号変換部5aと流量出力部6aの動作を示すフローチャートである。まず、図24のステップ301の処理は図23のステップ201と同じである。続いて、信号変換部5aの0点補正部51aは、第2の励磁状態において、電極2aと2b間の起電力のうち角周波数ω0の成分の起電力E2π0の振幅r2π0を求めると共に、実軸と電極間起電力E2π0との位相差φ2π0を位相検波器により求める(ステップ302)。図24のステップ303〜305の処理は、それぞれステップ203〜205と同じである。
次に、信号変換部5aのスパン補正部52aは、電極間起電力E2π0を近似した起電力EdA32の大きさを求める(ステップ306)。このステップ306の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(105)の算出に相当する処理である。スパン補正部52aは、電極間起電力E2π0を近似した起電力EdA32の大きさ|EdA32|を次式のように算出する。
|EdA32|=r2π0 ・・・(108)
続いて、スパン補正部52aは、v×B成分EvB20を電極間起電力EdA32で正規化した正規化起電力EvBn3の大きさを求める(ステップ307)。このステップ307の処理は、式(106)の算出に相当する処理である。スパン補正部52aは、正規化起電力EvBn3の大きさ|EvBn3|を次式のように算出する。
|EvBn3|=(|EvB20|/|EdA32|)・ω0 ・・・(109)
流量出力部6aは、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ308)。このステップ308の処理は、式(107)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn3|/γ ・・・(110)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5aと流量出力部6aとは、以上のようなステップ301〜308の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ309においてYES)、一定周期毎に行う。なお、ステップ302〜308の処理は第2の励磁状態において行われる。
以上のように、本実施の形態では、第1の励磁コイル3aから発生する磁場B7と第2の励磁コイル3bから発生する磁場B8とが等しくなるように設定しておくと、電極間起電力E2π0が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第2の実施の形態と同様にv×B成分を抽出した後、近似的に抽出した第2の∂A/∂t成分を用いてv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化して、スパン変動要素を消去するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。また、本実施の形態では、角周波数ω0の起電力E20から抽出したv×B成分を同じ角周波数ω0の起電力E2π0から抽出した第2の∂A/∂t成分を用いて正規化するので、第2の実施の形態に比べて周波数による誤差の影響を少なくすることができる。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力E20を0補正およびスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力E22を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、第2の励磁状態において電極間起電力E2π0を求める代わりに、E2π2を求める。そして、次式のように電極間起電力E22からE20を引いて起電力差EdA21(第1の∂A/∂t成分)を求める。
EdA21=(E22−E20)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(111)
そして、電極間起電力E22から起電力差EdA21を引くことによりv×B成分EvB22を抽出する。
さらに、次式のように電極間起電力E2π2を近似した起電力EdA32(第2の∂A/∂t成分)を求める。
EdA32≒E2π2 ・・・(112)
そして、次式のように電極間起電力EdA32を用いてv×B成分EvB22の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すればよい。その他の処理は電極間起電力E20を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn3|=|(EvB22/EdA32)・ω2| ・・・(113)
また、本実施の形態では、複数の励磁周波数ω0,ω2で同時に励磁する例を示したが、単一の励磁周波数ω0又はω2で励磁を行い、励磁周波数をω0とω2で交互に切り替えながら励磁をした場合でも同じ効果を得ることができる。
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態は、第1の実施の形態の電磁流量計に対して電極を1個追加したものであり、前述の第2の基本原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図17に示した電磁流量計と同様であるので、図17の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。新たに追加する第2の電極を既存の第1の電極と同じ側に追加した場合には、第1の実施の形態の冗長な構成となる。したがって、第2の電極は、励磁コイルを挟んで第1の電極と異なる側に配設する必要がある。
励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1上において電極軸EAX1および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B9と、励磁コイル3から発生する磁場Bdのうち、電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2上において電極軸EAX2および測定管軸PAXの双方と直交する磁場成分(磁束密度)B10は、以下のように与えられるものとする。
B9=b9・cos(ω0・t−θ9)+b9・cos(ω2・t−θ9)
・・・(114)
B10=b10・cos(ω0・t−θ10)+b10・cos(ω2・t−θ10)
・・・(115)
但し、B9、B10は1つの励磁コイル3から発生しているので、b9とb10、θ9とθ10は互いに関係があり、独立変数ではない。式(114)、式(115)において、ω0,ω2は異なる角周波数、b9は磁束密度B9の角周波数ω0の成分の振幅および角周波数ω2の成分の振幅、b10は磁束密度B10の角周波数ω0の成分の振幅および角周波数ω2の成分の振幅、θ9は磁束密度B9の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差(位相遅れ)および角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差、θ10は磁束密度B10の角周波数ω0の成分とω0・tとの位相差および角周波数ω2の成分とω2・tとの位相差である。以下、磁束密度B9を磁場B9とし、磁束密度B10を磁場B10とする。
被測定流体の流量が0の場合、発生する渦電流は、磁場の変化に起因する成分のみとなり、磁場Bdの変化による渦電流Iは、図18に示すような向きとなる。したがって、電極軸EAX1と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bdの変化によって発生する、流速と無関係な第1の電極間起電力E1と、電極軸EAX2と測定管軸PAXとを含む平面内において、磁場Bdの変化によって発生する、流速と無関係な第2の電極間起電力E2は、図18に示すように互いに逆向きとなる
被測定流体の流速の大きさがV(V≠0)の場合、発生する渦電流には、流速0のときの渦電流Iに加えて、被測定流体の流速ベクトルvに起因する成分v×Bdが発生するため、流速ベクトルvと磁場Bdによる渦電流Ivは、図19に示すような向きとなる。したがって、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する第1の電極間起電力Ev1、流速ベクトルvと磁場Bdによって発生する第2の電極間起電力Ev2は、同じ向きとなる。
図18、図19で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分の起電力E410cは式(44)と同様の次式で表される。
E410c=rk・ω0・b9・exp{j・(π/2+θ9+θ00)}
+γ・rk・V・b9・exp{j・(θ9+θ01)} ・・(116)
また、電極2a,2b間の第1の電極間起電力のうち、角周波数ω2の成分の起電力E412cは式(44)と同様の次式で表される。
E412c=rk・ω2・b9・exp{j・(π/2+θ9+θ00)}
+γ・rk・V・b9・exp{j・(θ9+θ01)} ・・(117)
同様に、図18、図19で説明した電極間起電力の向きを考慮すると、磁場の時間変化に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力と被測定流体の流速に起因する電極間起電力を複素ベクトルに変換した起電力とを合わせた、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち、角周波数ω0の成分の起電力E420cは式(45)と同様の次式で表される。
E420c=rk・ω0・b10・exp{j・(−π/2+θ10+θ00)}
+γ・rk・V・b10・exp{j・(θ10+θ01)}
・・・(118)
また、電極2c,2d間の第2の電極間起電力のうち、角周波数ω2の成分の起電力E422cは式(45)と同様の次式で表される。
E422c=rk・ω2・b10・exp{j・(−π/2+θ10+θ00)}
+γ・rk・V・b10・exp{j・(θ10+θ01)}
・・・(119)
ここで、ω0・t,ω2・tに対する磁場B9の位相遅れθ9とω0・t,ω2・tに対する磁場B10の位相遅れθ10との関係をθ10=θ9+Δθ10とし、虚軸に対する∂A/∂t成分の角度θ00と実軸に対するv×B成分の角度θ01との関係をθ01=θ00+Δθ01とする。式(116)にθ10=θ9+Δθ10、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力E410cと式(118)にθ10=θ9+Δθ10、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力E420cとの和をE4s0とすれば、起電力和E4s0は次式で表される。
E4s0=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}] ・・・(120)
また、式(117)にθ10=θ9+Δθ10、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力E412cと式(119)にθ10=θ9+Δθ10、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力E422cとの和をE4s2とすれば、起電力和E4s2は次式で表される。
E4s2=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)
・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}] ・・・(121)
また、式(116)にθ10=θ9+Δθ10、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力E410cと式(118)にθ10=θ9+Δθ10、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力E420cとの差をE4d0とすれば、起電力差E4d0は次式で表される。
E4d0=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)
・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}] ・・・(122)
また、式(117)にθ10=θ9+Δθ10、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第1の電極間起電力E412cと式(119)にθ10=θ9+Δθ10、θ01=θ00+Δθ01を代入したときの第2の電極間起電力E422cとの差をE4d2とすれば、起電力差E4d2は次式で表される。
E4d2=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・[ω2・exp(j・π/2)
・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}] ・・・(123)
ここで、励磁コイル3の軸を含む平面PLN3から電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1までの距離d3と平面PLN3から電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2までの距離d4とが略等しいとすると(d3≒d4)、b9≒b10、Δθ10≒0になる。この場合、式(120)、式(121)、式(122)、式(123)は以下のようになる。
E4s0≒rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・{2・b9・γ・V・exp(j・Δθ01)} ・・・(124)
E4s2≒rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・{2・b9・γ・V・exp(j・Δθ01)} ・・・(125)
E4d0≒rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・{2・b9・ω0・exp(j・π/2)} ・・・(126)
E4d2≒rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・{2・b9・ω2・exp(j・π/2)} ・・・(127)
すなわち、起電力和E4s0,E4s2はほぼv×B成分の起電力のみとなり、起電力差E4d0,E4d2はほぼ∂A/∂t成分の起電力のみとなるので、∂A/∂t成分の抽出やv×B成分の抽出、および正規化や0補正演算の際の演算誤差を小さくすることができる。この点が、本実施の形態と第1の実施の形態の技術的な意義における相違点である。ただし、以後の理論展開もb9≠b10、Δθ10≠0として進める。
起電力和E4s0とE4s2との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA41とすれば、次式が成立する。ここで、差分EdA41は第2の基本原理における第1の∂A/∂t成分に相当する。
EdA41=(E4s0−E4s2)・ω0/(ω0−ω2)
=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}
−ω2・exp(j・π/2)・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}
−γ・V・exp(j・Δθ01)・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}]
・ω0/(ω0−ω2)
=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}
・・・(128)
式(128)に示す差分EdA41は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tによって発生する成分のみとなる。この差分EdA41を用いて起電力和E4s0(合成ベクトルVas0+Vbs0)からv×B成分を取り出す。なお、差分EdA41は、正確には起電力和E4s0とE4s2との差分をω0/(ω0−ω2)倍したものであるが、ω0/(ω0−ω2)倍した理由は、式の展開を容易にするためである。
式(120)に示す起電力和E4s0から式(128)に示す差分EdA41を引いたときに得られるv×B成分をEvB40とすると、v×B成分EvB40は次式で表される。
EvB40=E4s0−EdA41
=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}]
−rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}
=[γ・rk・exp{j・(θ9+θ00+Δθ01)}
・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}]・V ・・・(129)
v×B成分EvB40は角周波数ω0,ω2に関係しない。流速の大きさVが0のときv×B成分EvB40も0となることから分かるように、v×B成分EvB40より、0点が補正された出力を得ることができる。式(129)によれば、流速の大きさVにかかる係数の大きさと方向は、複素ベクトル[γ・rk・exp{j・(θ9+θ00+Δθ01)}・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}]で表される。
次に、v×B成分EvB40の流速の大きさVにかかる係数(スパン)の変動要因を除去するために、このスパンの変動要因と同じ変動要因を持つ第2の∂A/∂t成分を抽出する。このときの抽出方法としては第2の基本原理で説明した第1の抽出方法を用いる。起電力差E4d0と起電力差E4d2との差をとり、求めた差分をω0/(ω0−ω2)倍した結果をEdA42とすれば、次式が成立する。ここで、差分EdA42は第2の基本原理における第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA42=(E4d0−E4d2)・ω0/(ω0−ω2)
=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・[ω0・exp(j・π/2)・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}
+γ・V・exp(j・Δθ01)・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}
−ω2・exp(j・π/2)・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}
−γ・V・exp(j・Δθ01)・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}]
・ω0/(ω0−ω2)
=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}
・・・(130)
差分EdA42は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この差分EdA42を用いてv×B成分EvB40の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。なお、差分EdA42は、正確には起電力差E4d0とE4d2との差分をω0/(ω0−ω2)倍したものであるが、ω0/(ω0−ω2)倍した理由は、式の展開を容易にするためである。
式(129)のv×B成分EvB40を式(130)の差分EdA42で正規化し、ω0倍した結果をEvBn4とすれば、正規化起電力EvBn4は次式で表される。
EvBn4=(EvB40/EdA42)・ω0
=[γ・rk・exp{j・(θ9+θ00+Δθ01)}
・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}]・V
/[rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}]
・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(131)
式(131)ではv×Bにより発生する成分が正規化されスパンの変動要因が除去されている。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、正規化起電力EvBn4は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した第2の∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、0点の補正に加えて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
式(131)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn4/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn4|/γ ・・・(132)
なお、第2の基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表4のとおりである。本実施の形態は、表4から明らかなように、前述の第2の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004555023
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。図25は本実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図であり、図17と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bと、第2の電極2c,2dと、励磁コイル3と、電源部4bと、信号変換部5bと、信号変換部5bによってスパンの変動要因が除去されたv×B成分から被測定流体の流量を算出する流量出力部6bとを有している。
信号変換部5bは、電極2a,2bで検出される第1の合成起電力と電極2c,2dで検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の合成起電力の第1の角周波数ω0の成分と第2の合成起電力の第1の角周波数ω0の成分との起電力和、および第1の合成起電力の第2の角周波数ω2の成分と第2の合成起電力の第2の角周波数ω2の成分との起電力和を求め、これら2つの起電力和の差分を第1の∂A/∂t成分として抽出し、第1の角周波数ω0の起電力和又は第2の角周波数ω2の起電力和の中から第1の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部51bと、第1の合成起電力の第1の角周波数ω0の成分と第2の合成起電力の第1の角周波数ω0の成分との起電力差、および第1の合成起電力の第2の角周波数ω2の成分と第2の合成起電力の第2の角周波数ω2の成分との起電力差を求め、これら2つの起電力差の差分を第2の∂A/∂t成分として抽出し、この第2の∂A/∂t成分に基づいて、v×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正部52bとから構成される。
本実施の形態では、前述のとおり、励磁コイル3の軸を含む平面PLN3から電極2a,2b間を結ぶ電極軸EAX1までの距離d3と平面PLN3から電極2c,2d間を結ぶ電極軸EAX2までの距離d4とが略等しいとする。
電源部4bは、第1の角周波数ω0の正弦波成分と第2の角周波数ω2の正弦波成分とを含む励磁電流を励磁コイル3に供給する。このとき、励磁電流における角周波数ω0の成分と角周波数ω2の成分の振幅は同一である。
図26は信号変換部5bと流量出力部6bの動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5bの0点補正部51bは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分E410cと第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分E420cとの和E4s0の振幅r4s0を求めると共に、実軸と起電力和E4s0との位相差φ4s0を図示しない位相検波器により求める。また、0点補正部51bは、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分E412cと第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分E422cとの和E4s2の振幅r4s2を求めると共に、実軸と起電力和E4s2との位相差φ4s2を位相検波器により求める。また、0点補正部51bは、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分E410cと第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分E420cとの差E4d0の振幅r4d0を求めると共に、実軸と起電力差E4d0との位相差φ4d0を位相検波器により求める。さらに、0点補正部51bは、第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分E412cと第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分E422cとの差E4d2の振幅r4d2を求めると共に、実軸と起電力差E4d2との位相差φ4d2を位相検波器により求める(図26ステップ401)。電極間起電力E410c,E420,E412c,E422cは、バンドパスフィルタやコムフィルタによって周波数分離することができる。
続いて、0点補正部51bは、起電力和E4s0の実軸成分E4s0xと虚軸成分E4s0y、および起電力和E4s2の実軸成分E4s2xと虚軸成分E4s2yを次式のように算出する(ステップ402)。
E4s0x=r4s0・cos(φ4s0) ・・・(133)
E4s0y=r4s0・sin(φ4s0) ・・・(134)
E4s2x=r4s2・cos(φ4s2) ・・・(135)
E4s2y=r4s2・sin(φ4s2) ・・・(136)
式(133)〜式(136)の算出後、0点補正部51bは、起電力和E4s0とE4s2との差分EdA41の大きさを求める(ステップ403)。このステップ403の処理は、第1の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(128)の算出に相当する処理である。0点補正部51bは、差分EdA41の実軸成分EdA41xと虚軸成分EdA41yを次式のように算出する。
EdA41x=(E4s0x−E4s2x)・ω0/(ω0−ω2) ・・(137)
EdA41y=(E4s0y−E4s2y)・ω0/(ω0−ω2) ・・(138)
0点補正部51bは、起電力和E4s0から差分EdA41を取り除き、v×B成分EvB40の大きさを求める(ステップ404)。このステップ404の処理は、式(129)の算出に相当する処理である。0点補正部51bは、v×B成分EvB40の大きさ|EvB40|を次式のように算出する。
|EvB40|={(E4s0x−EdA41x)2
+(E4s0y−EdA41y)21/2 ・・・(139)
次に、信号変換部5bのスパン補正部52bは、起電力差E4d0の実軸成分E4d0xと虚軸成分E4d0y、および起電力差E4d2の実軸成分E4d2xと虚軸成分E4d2yを次式のように算出する(ステップ405)。
E4d0x=r4d0・cos(φ4d0) ・・・(140)
E4d0y=r4d0・sin(φ4d0) ・・・(141)
E4d2x=r4d2・cos(φ4d2) ・・・(142)
E4d2y=r4d2・sin(φ4d2) ・・・(143)
式(140)〜式(143)の算出後、スパン補正部52bは、起電力差E4d0とE4d2との差分EdA42の大きさを求める(ステップ406)。このステップ406の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(130)の算出に相当する処理である。スパン補正部52bは、差分EdA42の大きさ|EdA42|を次式のように算出する。
|EdA42|={(E4d0x−E4d2x)2
+(E4d0y−E4d2y)21/2・ω0/(ω0−ω2)
・・・(144)
続いて、スパン補正部52bは、v×B成分EvB40を差分EdA42で正規化した正規化起電力EvBn4の大きさを求める(ステップ407)。このステップ407の処理は、式(131)の算出に相当する処理である。スパン補正部52bは、正規化起電力EvBn4の大きさ|EvBn4|を次式のように算出する。
|EvBn4|=(|EvB40|/|EdA42|)・ω0 ・・・(145)
流量出力部6bは、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ408)。このステップ408の処理は、式(132)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn4|/γ ・・・(146)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5bと流量出力部6bとは、以上のようなステップ401〜408の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ409においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、励磁コイル3から大きさが等しくかつ周波数が異なる2つの成分を含む磁場を被測定流体に印加し、第1の電極間起電力の角周波数ω0の成分E410cと第2の電極間起電力の角周波数ω0の成分E420cとの和E4s0、および第1の電極間起電力の角周波数ω2の成分E412cと第2の電極間起電力の角周波数ω2の成分E422cとの和E4s2を求め、起電力和E4s0とE4s2とから差分EdA41(第1の∂A/∂t成分)を抽出し、この第1の∂A/∂t成分を起電力和E4s0(合成ベクトルVas0+Vbs0)の中から取り除くことによりv×B成分を抽出し、また起電力E410cとE420cとの差E4d0、および起電力E412cとE422cとの差E4d2を求め、起電力差E4d0とE4d2とから差分EdA42(第2の∂A/∂t成分)を抽出し、この第2の∂A/∂t成分を用いてv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化して、スパン変動要素を消去するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。
また、本実施の形態では、励磁コイル3の軸を含む平面PLN3から第1の電極2a,2bまでの距離d3と平面PLN3から第2の電極2c,2dまでの距離d4とを調整することにより、起電力和E4s0,E4s2がほぼv×B成分の起電力のみとなり、起電力差E4d0,E4d2がほぼ∂A/∂t成分の起電力のみとなるようにすることができる。これにより、本実施の形態では、v×B成分および∂A/∂t成分をより効果的に抽出することが可能であり、第1の実施の形態に比べて演算誤差を小さくすることが可能である。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力和E4s0を0補正およびスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力和E4s2を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、次式のように起電力和E4s2からE4s0を引いて差分EdA41(第1の∂A/∂t成分)を求める。
EdA41=(E4s2−E4s0)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(147)
そして、起電力和E4s2から差分EdA41を引くことによりv×B成分EvB42を抽出する。
さらに、次式のように起電力差E4d2からE4d0を引いて差分EdA42(第2の∂A/∂t成分)を求める。
EdA42=(E4d2−E4d0)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(148)
そして、次式のように差分EdA42を用いてv×B成分EvB42の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すればよい。その他の処理は起電力和E4s0を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn4|=|(EvB42/EdA42)・ω2| ・・・(149)
また、本実施の形態では、起電力和E4s0又はE4s2を0補正およびスパン補正の対象としたが、起電力差E4d0を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、起電力差E4d0からE4d2を引いて第1の∂A/∂t成分を抽出し、起電力差E4d0から第1の∂A/∂t成分を引くことによりv×B成分を抽出し、起電力和E4s0からE4s2を引いて第2の∂A/∂t成分を抽出し、この第2の∂A/∂t成分を用いてv×B成分を正規化すればよい。
同様に、起電力差E4d2を0補正およびスパン補正の対象とする場合には、起電力差E4d2からE4d0を引いて第1の∂A/∂t成分を抽出し、起電力差E4d2から第1の∂A/∂t成分を引くことによりv×B成分を抽出し、起電力和E4s2からE4s0を引いて第2の∂A/∂t成分を抽出し、この第2の∂A/∂t成分を用いてv×B成分を正規化すればよい。
また、本実施の形態では、複数の励磁周波数ω0,ω2で同時に励磁する例を示したが、単一の励磁周波数ω0又はω2で励磁を行い、励磁周波数をω0とω2で交互に切り替えながら励磁をした場合でも同じ効果を得ることができる。
[第5の実施の形態]
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態は、前述の第2の基本原理を用いるものである。本実施の形態の電磁流量計は1個の励磁コイルと2対の電極とを有するものであり、信号処理系を除く構成は図17に示した電磁流量計と同様であるので、図17の符号を用いて本実施の形態の原理を説明する。
式(129)で示したv×B成分EvB40の流速の大きさVにかかる係数(スパン)の変動要因を除去するために、このスパンの変動要因と同じ変動要因を持つ第2の∂A/∂t成分を抽出する。このときの抽出方法としては第2の基本原理で説明した第2の抽出方法を用いる。
初期状態(校正時の状態)において、励磁コイル3から発生する磁場B9、磁場B10を等しく調整しておくと、その後の磁場B9とB10との差は小さくなり、次式の条件が成り立つ。
|b9+b10・exp(j・Δθ10)|
≫|b9−b10・exp(j・Δθ10)| ・・・(150)
また、通常ω0>γ・Vが成り立つことから、式(150)の条件を考慮すると、式(122)において次式の条件が成り立つ。
|ω0・exp(j・π/2)・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}|
≫|γ・V・exp(j・Δθ01)
・{b9−b10・exp(j・Δθ10)}| ・・・(151)
式(151)の条件を用いて、起電力差E4d0を近似した起電力差EdA52は次式のように表される。ここで、起電力差EdA52は第2の基本原理における第2の∂A/∂t成分に相当する。
EdA52≒E2d0 ・・・(152)
EdA52=rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)
・{b9+b10・exp(j・Δθ10)} ・・・(153)
起電力差EdA52は、流速の大きさVに関係しないので、∂A/∂tにより発生する成分のみとなる。この起電力差EdA52を用いて、v×B成分EvB40の流速の大きさVにかかる係数(スパン)を正規化する。式(129)のv×B成分EvB40を式(153)の起電力差EdA52で正規化し、ω0倍したものをEvBn5とすれば、正規化起電力EvBn5は次式で表される。
EvBn5=(EvB40/EdA52)・ω0
=[γ・rk・exp{j・(θ9+θ00+Δθ01)}
・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}]・V
/[rk・exp{j・(θ9+θ00)}
・ω0・exp(j・π/2)・{b9+b10・exp(j・Δθ10)}]
・ω0
=[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]・V ・・・(154)
式(154)ではv×Bにより発生する成分が正規化されスパンの変動要因が除去されている。流速の大きさVにかかる複素係数は、γの大きさ、−π/2+Δθ01の実軸からの角度をもつ。係数γおよび角度Δθ01は校正等により予め求めることができる定数であり、正規化起電力EvBn5は被測定流体の流速が変化しないかぎり一定となる。したがって、抽出した第2の∂A/∂tの成分をもちいてv×B成分の正規化を行うことにより、0点の補正に加えて、磁場のシフトや位相変化による誤差を自動的に補正するスパン補正を実現することができる。
式(154)より、流速の大きさVは次式のように表される。
V=|EvBn5/[γ・exp{j・(−π/2+Δθ01)}]|
=|EvBn5|/γ ・・・(155)
なお、第2の基本原理で用いた定数および変数と、本実施の形態の定数および変数との対応関係は以下の表5のとおりである。本実施の形態は、表5から明らかなように、前述の第2の基本原理を具体的に実現する1つの例である。
Figure 0004555023
次に、本実施の形態の電磁流量計の具体的な構成とその動作について説明する。本実施の形態の電磁流量計の構成は第4の実施の形態と同様であるので、図25の符号を用いて説明する。本実施の形態の電磁流量計は、測定管1と、第1の電極2a,2bと、第2の電極2c,2dと、励磁コイル3と、電源部4bと、信号変換部5bと、流量出力部6bとを有している。
信号変換部5bは、電極2a,2bで検出される第1の合成起電力と電極2c,2dで検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて第1の合成起電力の第1の角周波数ω0の成分と第2の合成起電力の第1の角周波数ω0の成分との起電力和、および第1の合成起電力の第2の角周波数ω2の成分と第2の合成起電力の第2の角周波数ω2の成分との起電力和を求め、これら2つの起電力和の差分を第1の∂A/∂t成分として抽出し、第1の角周波数ω0の起電力和又は第2の角周波数ω2の起電力和の中から第1の∂A/∂t成分を取り除くことによりv×B成分を抽出する0点補正部51bと、第1の合成起電力の第1の角周波数ω0の成分と第2の合成起電力の第1の角周波数ω0の成分との起電力差、又は第1の合成起電力の第2の角周波数ω2の成分と第2の合成起電力の第2の角周波数ω2の成分との起電力差を第2の∂A/∂t成分として抽出し、この第2の∂A/∂t成分に基づいて、v×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正部52bとから構成される。
電源部4bの動作は第4の実施の形態と同じである。図27は本実施の形態の信号変換部5bと流量出力部6bの動作を示すフローチャートである。まず、信号変換部5bの0点補正部51bは、起電力和E4s0の振幅r4s0を求めると共に、実軸と起電力和E4s0との位相差φ4s0を図示しない位相検波器により求める。また、0点補正部51bは、起電力和E4s2の振幅r4s2を求めると共に、実軸と起電力和E4s2との位相差φ4s2を位相検波器により求める。さらに、0点補正部51bは、起電力差E4d0の振幅r4d0を求めると共に、実軸と起電力差E4d0との位相差φ4d0を位相検波器により求める(図27ステップ501)。図27のステップ502〜504の処理は、図26のステップ402〜404と同じである。
次に、信号変換部5bのスパン補正部52bは、起電力差E4d0を近似した起電力差EdA52の大きさを求める(ステップ505)。このステップ505の処理は、第2の∂A/∂t成分を求めることに対応する処理であり、式(153)の算出に相当する処理である。スパン補正部52bは、起電力差EdA52の大きさ|EdA52|を次式のように算出する。
|EdA52|=r2d0 ・・・(156)
続いて、スパン補正部52bは、v×B成分EvB40を起電力差EdA52で正規化した正規化起電力EvBn5の大きさを求める(ステップ506)。このステップ506の処理は、式(154)の算出に相当する処理である。スパン補正部52bは、正規化起電力EvBn5の大きさ|EvBn5|を次式のように算出する。
|EvBn5|=(|EvB40|/|EdA52|)・ω0 ・・・(157)
流量出力部6bは、被測定流体の流速の大きさVを次式のように算出する(ステップ507)。このステップ507の処理は、式(155)の算出に相当する処理である。
V=|EvBn5|/γ ・・・(158)
なお、比例係数γは、校正等により予め求めることができる定数である。信号変換部5bと流量出力部6bとは、以上のようなステップ501〜507の処理を例えばオペレータによって計測終了が指示されるまで(ステップ508においてYES)、一定周期毎に行う。
以上のように、本実施の形態では、励磁コイル3から発生する磁場B9とB10とが等しくなるように調整しておくと、起電力差E4d0が近似的に第2の∂A/∂t成分として抽出できることに着眼し、第4の実施の形態と同様にv×B成分を抽出した後、近似的に抽出した第2の∂A/∂t成分を用いてv×B成分の流速の大きさVにかかるスパンを正規化して、スパン変動要素を消去するようにしたので、正確なスパン補正を自動的に行うことができ、かつ被測定流体の流量を0にすることなく電磁流量計の出力の0点を補正することができ、高周波励磁においても0点の安定性を確保することができる。また、本実施の形態では、角周波数ω0の起電力和E4s0から抽出したv×B成分を同じ角周波数ω0の起電力差E4d0から抽出した第2の∂A/∂t成分を用いて正規化するので、第4の実施の形態に比べて周波数による誤差の影響が少なくなる。
なお、本実施の形態では、角周波数ω0の成分の起電力和E4s0を0補正およびスパン補正の対象としたが、角周波数ω2の成分の起電力和E4s2を0補正およびスパン補正の対象としてもよい。この場合は、起電力差E4d0を求める代わりに、E4d2を求める。そして、次式のように起電力和E4s2からE4s0を引いて差分EdA41(第1の∂A/∂t成分)を求める。
EdA41=(E4s2−E4s0)・ω2/(ω2−ω0) ・・・(159)
そして、起電力和E4s2から差分EdA41を引くことによりv×B成分EvB42を抽出する。
さらに、次式のように起電力差E4d2を近似した起電力差EdA52(第2の∂A/∂t成分)を求める。
EdA52≒E4d2 ・・・(160)
そして、次式のように起電力差EdA52を用いてv×B成分EvB42の流速の大きさVにかかるスパンを正規化すればよい。その他の処理は起電力和E4s0を0補正およびスパン補正の対象とする場合と同じである。
|EvBn5|=|(EvB42/EdA52)・ω2| ・・・(161)
また、本実施の形態では、複数の励磁周波数ω0,ω2で同時に励磁する例を示したが、単一の励磁周波数ω0又はω2で励磁を行い、励磁周波数をω0とω2で交互に切り替えながら励磁をした場合でも同じ効果を得ることができる。
なお、第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、励磁電流に正弦波を用いる正弦波励磁方式を採用しているが、矩形波の場合正弦波の組み合わせと考えることができるので、励磁電流に矩形波を用いる矩形波励磁方式を採用してもよい。
また、第1の実施の形態〜第5の実施の形態で使用する電極2a,2b,2c,2dとしては、図28に示すように、測定管1の内壁から露出して被測定流体に接触する形式の電極でもよいし、図29に示すように、被測定流体と接触しない容量結合式の電極でもよい。容量結合式の場合、電極2a,2b,2c,2dは、測定管1の内壁に形成されるセラミックやテフロン(登録商標)等からなるライニング10によって被覆される。
また、第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、第1の電極として1対の電極2a,2bを使用し、第2の電極として1対の電極2c,2dを使用しているが、これに限るものではなく、第1の電極と第2の電極をそれぞれ1個ずつにしてもよい。電極が1個だけの場合には、被測定流体の電位を接地電位にするための接地リングや接地電極が測定管1に設けられており、1個の電極に生じた起電力(接地電位との電位差)を信号変換部5,5a,5bで検出すればよい。電極軸は、1対の電極を使用する場合はこの1対の電極間を結ぶ直線である。一方、電極が1個だけの場合、この1個の実電極を含む平面PLN上において、測定管軸PAXを挟んで実電極と対向する位置に仮想の電極を配置したと仮定したとき、実電極と仮想の電極とを結ぶ直線が電極軸となる。
本発明は、測定管内を流れる被測定流体の流量計測に適用することができる。
本発明の第1の基本原理に基づく電磁流量計における∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 本発明の第1の基本原理に基づく電磁流量計において電極で検出される合成ベクトルから∂A/∂t成分を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。 本発明の第1の基本原理に基づく電磁流量計において電極で検出される合成ベクトルからv×B成分を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。 本発明の第1の基本原理に基づく電磁流量計においてv×B成分を∂A/∂t成分により正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。 本発明の第2の基本原理に基づく電磁流量計のうち2個の励磁コイルと1対の電極とを有する電磁流量計の原理を説明するためのブロック図である。 図5の電磁流量計において被測定流体の流量が0の場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 図5の電磁流量計において被測定流体の流量が0でない場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 図5の電磁流量計において第1の励磁コイルのみで励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図5の電磁流量計において第2の励磁コイルのみで励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図5の電磁流量計において2つの励磁コイルで励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図5の電磁流量計において電極で検出される合成ベクトルから第1の∂A/∂t成分を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。 図5の電磁流量計において電極で検出される合成ベクトルからv×B成分を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。 図5の電磁流量計において第2の励磁状態で第2の励磁コイルのみで励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図5の電磁流量計において第2の励磁状態で2つの励磁コイルを励磁した場合の∂A/∂t成分のベクトルとv×B成分のベクトルと合成ベクトルとを示す図である。 図5の電磁流量計において電極で検出される合成ベクトルから第2の∂A/∂t成分を抽出する処理を複素ベクトル表現した図である。 図5の電磁流量計においてv×B成分を第2の∂A/∂t成分により正規化する処理を複素ベクトル表現した図である。 本発明の第2の基本原理に基づく電磁流量計のうち1個の励磁コイルと2対の電極とを有する電磁流量計の原理を説明するためのブロック図である。 図17の電磁流量計において被測定流体の流量が0の場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 図17の電磁流量計において被測定流体の流量が0でない場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 本発明の第1の実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図である。 本発明の第1の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図である。 本発明の第2の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第3の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第4の実施の形態の電磁流量計の構成を示すブロック図である。 本発明の第4の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の第5の実施の形態における信号変換部と流量出力部の動作を示すフローチャートである。 本発明の電磁流量計で用いる電極の1例を示す断面図である。 本発明の電磁流量計で用いる電極の他の例を示す断面図である。 従来の電磁流量計の原理を説明するためのブロック図である。 従来の電磁流量計において被測定流体の流量が0の場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 従来の電磁流量計において被測定流体の流量が0でない場合の渦電流及び電極間起電力を示す図である。 電磁流量計におけるスパンのシフトを説明するための図である。 電磁流量計における0点のシフトを説明するための図である。 従来の電磁流量計の問題点を説明するための図である。
符号の説明
1…測定管、2a、2b、2c、2d…電極、3、3a、3b…励磁コイル、4、4a、4b…電源部、5、5a、5b…信号変換部、6、6a、6b…流量出力部、51、51a、51b…0点補正部、52、52a、52b…スパン補正部。

Claims (15)

  1. 被測定流体が流れる測定管と、
    この測定管に配設され、前記流体に印加される磁場と前記流体の流れとによって生じた起電力を検出する電極と、
    この電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面に対して非対称かつ時間変化する磁場を前記流体に印加する励磁部と、
    前記電極で検出される、前記流体の流速とは無関係な∂A/∂t成分の起電力と前記流体の流速に起因するv×B成分の起電力との合成起電力から、前記∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出する0点補正部と、
    前記合成起電力から、前記∂A/∂t成分と同一又は異なる∂A/∂t成分を抽出し、この抽出した∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去するスパン補正部と、
    前記変動要因を除去したv×B成分から前記流体の流量を算出する流量出力部とを備えることを特徴とする電磁流量計。
  2. 請求項1記載の電磁流量計において、
    前記0点補正部は、前記電極で検出される合成起電力から前記∂A/∂t成分を抽出して、前記合成起電力の中から、前記抽出した∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記抽出された∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去することを特徴とする電磁流量計。
  3. 請求項2記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える磁場を前記流体に印加し、
    前記0点補正部は、前記電極で検出される合成起電力のうち、同時又は交互に得られる複数の周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記∂A/∂t成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  4. 請求項3記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面からオフセットを設けて離れた位置に配設された励磁コイルと、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、
    前記0点補正部は、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記2つの周波数成分の起電力差を前記∂A/∂t成分として抽出し、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の中から、前記抽出した∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  5. 請求項1記載の電磁流量計において、
    前記0点補正部は、前記電極で検出される合成起電力から第1の∂A/∂t成分を抽出して、前記合成起電力の中から、前記抽出した第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記合成起電力から第2の∂A/∂t成分を抽出し、この抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去することを特徴とする電磁流量計。
  6. 請求項5記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差を切り替えながら、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する電源部とからなり、
    前記0点補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差が第1の値である第1の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち、同時又は交互に得られる複数の周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第1の磁場と第2の磁場との位相差が前記第1の励磁状態と異なる第2の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち、同時又は交互に得られる複数の周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記第2の∂A/∂t成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  7. 請求項6記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給し、
    前記0点補正部は、前記第1の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記2つの周波数成分の起電力差を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の中から、前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第2の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち前記2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記2つの周波数成分の起電力差を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去することを特徴とする電磁流量計。
  8. 請求項5記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記電極を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第1の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の励磁コイルと、前記第1の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第1の平面を挟んで前記第1の励磁コイルと対向するように配設された第2の励磁コイルと、前記第1の励磁コイルに供給する励磁電流と第2の励磁コイルに供給する励磁電流の位相差を切り替えながら、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給する電源部とからなり、
    前記0点補正部は、前記第1の励磁コイルにより発生する第1の磁場と前記第2の励磁コイルにより発生する第2の磁場との位相差が第1の値である第1の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち、同時又は交互に得られる複数の周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第1の磁場と第2の磁場との位相差が前記第1の励磁状態と異なる第2の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち1つの周波数成分の振幅と位相を求めることにより前記第2の∂A/∂t成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  9. 請求項8記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記第1の励磁コイルと第2の励磁コイルに供給し、
    前記0点補正部は、前記第1の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数と第2の周波数の2つの周波数成分の振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記2つの周波数成分の起電力差を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の中から、前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第2の励磁状態において、前記電極で検出される合成起電力のうち前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の振幅と位相を求め、この振幅と位相に基づいて前記第1の周波数の成分又は前記第2の周波数の成分の起電力を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この抽出した第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去することを特徴とする電磁流量計。
  10. 請求項5記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、
    前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなり、
    前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力和から前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力差を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力差から前記第2の∂A/∂t成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  11. 請求項10記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給し、
    前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力和、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力和を求め、これら2つの起電力和の差分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の周波数の起電力和又は前記第2の周波数の起電力和の中から前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力差、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力差を求め、これら2つの起電力差の差分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去することを特徴とする電磁流量計。
  12. 請求項5記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、
    前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなり、
    前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力差を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力差から前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力和から前記第2の∂A/∂t成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  13. 請求項12記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給し、
    前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力差、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力差を求め、これら2つの起電力差の差分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の周波数の起電力差又は前記第2の周波数の起電力差の中から前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力和、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力和を求め、これら2つの起電力和の差分を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去することを特徴とする電磁流量計。
  14. 請求項5記載の電磁流量計において、
    前記励磁部は、前記流体に磁場を印加する励磁コイルと、複数の励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給する電源部とからなり、
    前記電極は、前記励磁コイルの軸を含む、前記測定管の軸方向と垂直な第2の平面から第1のオフセットを設けて離れた位置に配設された第1の電極と、前記第2の平面から第2のオフセットを設けて離れた位置に、前記第2の平面を挟んで前記第1の電極と対向するように配設された第2の電極とからなり、
    前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の同一周波数成分の起電力和を複数の周波数成分について同時又は交互に求め、複数の起電力和から前記第1の∂A/∂t成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力と第2の合成起電力の1つの周波数成分の起電力差から前記第2の∂A/∂t成分を抽出することを特徴とする電磁流量計。
  15. 請求項14記載の電磁流量計において、
    前記電源部は、第1の周波数と第2の周波数の異なる2つの励磁周波数を同時又は交互に与える励磁電流を前記励磁コイルに供給し、
    前記0点補正部は、前記第1の電極で検出される第1の合成起電力と前記第2の電極で検出される第2の合成起電力の各々について振幅と位相を求め、これらの振幅と位相に基づいて前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力和、および前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力和を求め、これら2つの起電力和の差分を前記第1の∂A/∂t成分として抽出し、前記第1の周波数の起電力和又は前記第2の周波数の起電力和の中から前記第1の∂A/∂t成分を取り除くことにより前記v×B成分を抽出し、
    前記スパン補正部は、前記第1の合成起電力の第1の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第1の周波数の成分との起電力差、又は前記第1の合成起電力の第2の周波数の成分と前記第2の合成起電力の第2の周波数の成分との起電力差を前記第2の∂A/∂t成分として抽出し、この第2の∂A/∂t成分に基づいて、前記抽出されたv×B成分の流速の大きさVにかかる係数であるスパンの変動要因を除去することを特徴とする電磁流量計。
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