JP4558382B2 - アフィニティクロマトグラフィ用デバイス及びその製法 - Google Patents
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Description
特に、生物科学分野に於いては、生体試料の混合物の中から分析対象成分を分離するためには、所望物質の性質に対応した夫々の分離技術が必須要件である。
生物科学分野に於いて扱うサンプルは非常に低濃度、然も低溶量であることが多く、微量なサンプルに対して対応可能なツールが少なく、限られている。
その一例として、酵素カラムやアフィニティカラムを用いた多次元LC−MSは利用が挙げられる。具体的には、Journal of Chromatography A,1000(2003)413にあるように、LDH(蛋白質)をオンラインでトリプシンカラムに送り、酵素消化させ、それをC18固相を充填したトラップカラムにてトラップさせ、脱塩濃縮を行い分析カラムを経てMSにて検出する方式が提案されている。(非特許文献1参照)
その反面、ポンプや専用バルブ等の使用により、高コストは避けられない。更に、試料は高圧にて処理されることになり、その影響を免れることは出来ない。又、測定にはシステム全体の検討、最適化が必要であり、長時間を要する。
この方式は、シリカゲル等のビーズ材料を母体に、所望の物質に対応した処理を施した充填剤をカラムに充填し、所望の物質を含有した液体をカラムに通し、ビーズに接触させ、その上に固定化させた捕捉物質に所望の物質を結合させるものである。
この方式は、ビーズをカラムやチップ、固相シリンジ等に充填して所望物質を含有した液体を流すものであり、捕捉用物質が該液体に接触する率が極めて高く効率的な捕捉が行われる利点がある。
又、この方式は、単位時間当たりの流体の流れに対する抵抗が大きい。ビーズ等の固相と流体の接液効率の向上を目指して固相粒子を小さく形成すると抵抗が更に大きくなる。この結果、単位時間当たりの流量が少ないため、流体の拡散時間も遅くなり、分析時間が長くかかることになる。
殊に、リガンドとなるサンプルが希少な場合に、それに対応した少量のアフィニティ充填剤の調整は、即ち、少量の固相に対する修飾状態の調整は極めて困難である。従って、充填剤への所望物質の固定量を特定することは無理であること、このことは極少量の各所望物質に対応するアフィニティ充填剤の作成が至難であることを物語る。
そのため、サンプルをチップの先端に所望量固定することは困難であると云うことである。
これは従来公知のチップの端部に分離物を置くという考え方(特許文献2参照)が、二つのフリット間にカラム材料を置いたチップを提案しているのに対し、サンプル中の所望の成分量が少ない場合、大量のサンプルを通過させ処理に長い時間がかかる上、標的物質を取りこぼす可能性や収量が低くなる可能性がある。又、この問題に対応するため、固相の量を増大させることに対する反応時間が長くなるという欠点を解消しようとしたものである。
この構成は、ピペットチップの前方端部又はそれに隣接して、ピペットチップを横切って膜を設けること、この膜は織物、不織布等のメッシュのように多孔である。又、この膜は、化学的相互作用、疎水性結合、物理的吸着、電荷の相互作用により、流体中に存在している成分と結合したりして、成分を捕捉出来るように構成したり、捕捉用物質を組込んだりして構成する。(特許文献1参照)
しかしながら、充填操作はそれなりのスキルがあり、初心者が気軽にできるような簡便なものではない。又、充填操作は、充填剤が非常に少量の場合、つまり小容量対応のアフィニティーカラムを作ることは難しい。何故なら、固定化したいアフィニティーリガンドが非常に少量しか調整できない場合、充填剤への固定は困難であるためである。
これは、吸着性又は反応性物質として、或はサイズに基いた分離のための充填、非充填構造物を現場で種々の容積のハウジング中に媒質を付加するもので、ポリマー中に実質的な量の媒質の包含を可能にさせたものである。
この具体例として、PVDF溶液等に溶媒を用いて球状シリカを混合させてピペット先端部に充填させる工程等によりピペット先端に多孔質ポリマー支持体内にシリカ粒子等を含有させて所望成分を保持させるものである。
又、多孔質のポリマー支持体に捕捉された粒子を含み、粒子化学の適切な選択により容量1μg未満の試料の素材充填物に対する選択的な結合、溶離クロマトグラフィを含むあらゆる分離、精製操作を実施できるとしているが、所望粒径の選択によってもポリマー支持体の多孔質の孔部詳細を特定的に求めることは困難であり、計算上求められるものではなく、実証的に得ていくしかなく、極めて困難な作業であり、所望物質に対応して夫々定めていく外ない。
更に、図7、図8に示すように、ポリマー支持体の通孔はランダムにしか構成されないため、その通液性は特定されず、通液量は定まらない。
要するにこれらの方式は、試料の微量さに対応する固定量の特定は無理であり、アフィニティ充填剤の特定量の充填操作は無理である。特に、多孔質ポリマーの通孔の特定は出来ない点は重大である。
先ず、生体試料の蛋白質を消化酵素であるトリプシンによる消化によって行うが、その際使用するトリプシンの量は試料中に含まれる蛋白質の約50分の1から100分の1量になるように添加して消化反応を行う。なぜならば、添加するトリプシンの量を増やすと、反応進行速度は増加するが、その後の実験に於いて生体試料以外の蛋白質が多量に含まれることは、望ましいことではないためである。そのため、少量のトリプシンによって消化反応を行うためには、通常24時間など長い時間を要する。
しかしながら、この方法に於いても、ビーズの回収操作には、結合、洗浄、溶出の各ステップに於いて遠心操作が必要である。又、粒子タイプでの回収操作では、液が入ってくる側と、液の抜ける側とは液抵抗における圧力の均一性がなく、細孔内部への液の接触が異なってしまう。そのため、吸着粒子とサンプルとの結合平衡に要する時間も1時間以上要する場合が通常である。
最後に回収した糖化ペプチドからの糖鎖の切出しであるが、この場合もトリプシンを用いた場合と同様に少量の酵素で、長時間かけて反応を行う必要がある。
この様に糖鎖解析に於いては前処理の段階で2〜3日要するのが現状である。
活性基は、モノリス構造体表面の官能基と固定化するリガンドの官能基を結合する物質であり、二価性試薬のことである。又、モノリス構造体に固定化され活性担体と云う。
又、リガンドとは、分析対象物質に親和性を持つ化学物質や蛋白質などである。
然も、膜やポリマーは極めて薄く形成される必要があり、サンプルをチップ先端等に多量に固定することは困難である。又、膜厚を厚く形成すると流通抵抗が上がり、分析時間の延長に繋がってしまう。
前記の構成の場合、結局のところ、透過膜を使用するものであるが、それらの外径寸法、容量等は明らかにされているものの対応所望物質に対応する膜の構成は記載なく、目的物に対応して膜の構成を行うことは殆ど不可能である。
このため、目的物に対応した固相の選択、固相に固定するリガンドの適正量に対応した構成は各種の経験、実験等の成果を待たなければ求められなかったのである。
つまり、ピペットチップ先端にトリプシン等の酵素を高濃度に固定化することにより、サンプルである蛋白質に対する量比を増加させることが可能になるため、消化に要する時間を短縮することが可能になる。又、担体に酵素を固定化することが出来るため、酵素がサンプルに混入することも防止することができる。
又、粒子タイプの吸着剤とは異なり、液の流れるマクロ細孔表面にミクロ細孔があるので、全て単一な入り込みが生じる。そのため、結合平衡化に要する時間も短縮させることが可能である。
以上のことからこれまで2〜3日要していた前処理の時間を数回のピペッテイング、時間にして約1時間足らずで達成することが出来、大幅な前処理時間の短縮が可能になる。
又、モノリスを使用する場合、ミクロ細孔を小さくすることで、表面積を大きくすることが可能になる。然も、拡散性、ピペッティングも低下することはない。そのため、多量のリガンドを固定化することが可能である。
然も、10回程度のピペッティングによりリガンド、活性基等の所望材を固定化することが出来る。
例えば、ミクロ細孔を用いたサイズ排除を行うことが可能になる。生体試料成分の中から薬物代謝物などの低分子を特異的に回収したい場合、試料中に含まれる巨大な蛋白質などのマトリックスはターゲットである低分子の結合を阻害することがよくある。
本発明によれば、これらの巨大蛋白質に阻害されることなく低分子を回収することが可能になる。
実際、ミクロ細孔を小さくしたモノリスよりも、ミクロ細孔を大きくしたモノリスのほうが表面積は小さくなるにもかかわらず(ミクロ細孔が大きいほうが表面積が小さくなるのは、粒子充填剤に於いて粒子が大きいほうが表面積が小さくなることと理由は同じである。)、蛋白質の固定量又は結合量はミクロ細孔が大きいほうが巨大な蛋白質が結合した。
このデバイスたるピペットチップは、材料は特に限定されないが、プラスチック、ガラス、ステンレス等が用いられる。然し、耐熱性、耐薬品性を考慮に入れ選択し、更にPCR等の酵素反応、蛋白質消化反応等を阻害するものであっては好ましくない。プラスチック材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエステル等が使用される。
デバイス1は、筒状に形成され、一端にはピペット10に嵌合する取付口5、他端には開口6を設け、その間に流体の通路や液溜めとなる通液孔2を有するピペットチップ3より構成される。通液孔2の一部には、モノリス構造体4を設置してある。通液孔2の一部とはピヘットチップ3の先端に設けた開口6、即ち通液孔2の先端であるか、通液孔2の内方の一部である。このデバイス1はピペットチップ或は単にチップとも云う。又、ピペットチップのモノリス構造体4に修飾剤を固定したものをチップと云うことも出来る。
モノリス構造体4はガラス、シリカ等の無機質又は無機物に有機物を含有するハイブリット体で、上面から下面まで貫通しているマクロ細孔を有する多孔質体である。又、有機物、例えばメタクリレート化合物や、ジビニルベンゼンなどのビニルポリマーを用いたモノリス構造体などがある。
この多孔質体は1〜100μmのマクロ細孔を有するものが好ましい。更にミクロ細孔0〜400nmを有するのが好ましい。(図5)この両方のマクロ細孔、ミクロ細孔を有する構成としては、一つはマクロ細孔の内壁に狭い細穴を分布して有する構成と、二つはマクロ細孔の孔部にミクロ細孔を平均的に分布して有する構造体を有する構成と考えられる。実施例に使用したのは、後者の構成である。
このモノリス構造体4は修飾すべき活性基やリガンドに応じ、或はサンプルに応じて又はその組合せに対応して選択でき、更にはマクロ、ミクロ細孔もそれらに対応して選択使用出来る。
今回使用したモノリス構造体の場合、ミクロ細孔のサイズが20nmのモノリスを用いた場合は分子量40,000以上の蛋白質の結合が低下する。そのため、分子量40,000以上の蛋白質を固定化する場合は、それ以上の(例えば40nm)ミクロ細孔のサイズを用いたモノスリを用いることが推奨される。
又、ミクロ細孔を開けずにシングルポアモノリスを作成後、ポリアミン(分子量10,000程度)を修飾することによって、ミクロ細孔を作成することなく巨大な蛋白質を多量に固定化することも可能である。
因みに蛋白質の分子量の一例を挙げると次の通りである。
Trypsin 22900
IgG 150000
ProteinA 104000
これらのモノリス構造体の構成の点については、特許文献4、同5、同6、同7に提案されている。
本発明に於いて使用されるモノリス構造体としては、そのいずれでも使用できる。
先ず、約100nm以上の巨大空孔となる溶媒リッチ相を持つゾルをゾルーゲル法によって作製し、そのバルク状ゲルを粉砕せずに様々な組成を持つ水溶液に浸漬することにより、巨大空孔の内壁が最大20nm程度の狭い細穴分布を持った、二重気孔の多孔質体に変化させる。この方法によれば、従来の多孔体に於いて避け得なかった広い細穴系分布ではなく、所望する中心細孔径と狭い分布を持つ細孔構造を再現性よく与える、無機系多孔質体を作ることができる。つまりは、巨大空孔と細穴の2種類のポア、ダブルポア構造が実現する。
固化した試料を更に数時間熟成させ、0.1規定アンモニア水溶液中に、40℃で1日毎に溶液を更新しながら3日間以上浸漬した。このとき、アンモニア水溶液のpH値は約10であった。この処理の後、ゲルを60℃で乾燥し、100℃/hの昇温速度で600℃まで加熱した。これによって、非晶質シリカよりなる多孔質体を得た。
得られた多孔質体中には、中心孔径1.6μm(1600nm)程度の揃った貫通孔が三次元網目状に絡み合った構造で存在していることが電子顕微鏡及び水銀圧入測定によって確かめられた。そして、その貫通孔の内壁に直径10nm程度の細孔が多数存在していることが、窒素吸着測定によって確かめられた。
尚、アンモニア溶液浸漬の温度を25℃或は60℃に変化させた以外は、上記と同一条件で多孔質体を製造したところ、貫通孔の空孔分布は変わらないが、窒素吸着法によって図られる中心細孔系は夫々、約6nm或は13nmに変化した。
アンモニア溶液浸漬の温度が高いほど大きい細孔径が得られることが分かり、温度によるコントロールが可能であることも確認された。
SiO2 59.0、B2O3 25.0、ZrO2 5.0、Al2O3 3.0、CaO 3.0、Na2O 5.0各重量部を溶融し、直径2mmのロッドを540℃にて7時間処理し、次いで750℃にて約32時間処理して分相させた。相分離物を90℃にて1N硫酸(酸(ml)/ガラス(g)の比=170)を用いて2日間酸処理し、その後0.5N−NaOH(酸(ml)/ガラス(g)の比=100)を用いて6時間アルカリ処理した。得られたガラスロッドを熱蒸留水で洗浄し、乾燥後、デシケーター中で保存した。得られたガラスロッドの細孔容積は、0.6ml/gであり、中心細穴直径3ミクロンであった。粒子径分布の測定は、水銀圧入法により測定した。得られた多孔質ガラス材を機械加工により柱状態に成型した。このマクロ多孔質ガラスに、テトラエトキシシランに塩酸を加え調整したゾルを含浸させた後に熟成させることにより、ミクロ細孔の多孔質シリカガラスを形成した。これに、ジメチル−n−オクタデシルクロロシラン(ODS)を用い疎水化処理を行った。
液体クロマトグラフィーに取付けるに適した継ぎ手が両端末に備わっているステンレス鋼製間の1つの末端を、鋼製ナットストッパーで閉じ、この管を窒素パージした後、そのもう一方の末端をシリコンゴム隔壁で閉じた。4.8gのメタアクリル酸グリシジル、3.2gのジメタアクリル酸エチレン、10.8gのシクロヘキサノール、1.2gのドデカノール及び0.08gのアゾビスイソブチロニトリルを混合することによって、重合反応物を調整した。この混合物に窒素を20分間バブリングすることによって、存在している如何なる酸素も除去した。この混合物の0.1mlをその隔壁を通してその管の中に注入した後、熱電体で70℃にしたオイルバスの中で加熱することにより、重合を開始した。7時間後、その管を浴から取り出し、放置して室温にまで冷却した後、その隔壁を取外すことでマクロ細孔ポリマーを得た。
一般的に高圧で使用できない固相抽出に於いては、移動相が流れる空間以外の小さなポアは分離に大きな影響を与えず、移動相空間だけを持つシングルポアの多孔質体で充分な場合がある。特に、微量成分におけるシングルポアの開放構造に於いては、空間の不均一が生じなくなるため、吸着、溶出による分離がスムーズに生じるようになる。高分子の分離に於いては、移動相の流れる空間以外に分子が入り込める大きさの異なるポアがあると、着脱がスムーズに起こり難く都合が悪い場合がある。
そのため、シングルポア構造は、蛋白質をはじめとする高分子の微量固相抽出には有用である場合がある。
これを800〜1100℃にて成型後、未分相珪ガラスを得、熱処理によりSiO2相とB2O3−Na2O−CaO相に分相させ、酸処理によってSiO2骨格を残した多孔質体を製造する。細孔系は、用途によって、熱処理時の条件を変化させることにより、0.1〜10ミクロンの細孔分布の均一なものが用途に応じて製造可能である。
この例は、アミノ基によりDSS、DSTを用いてトリプシン、PNGaseを固定化し、又ConA(glycoprotein)、IgG(Immoaffinity)、ProteinA(IgG)を固定するように使用される。
又、カルボキシル基、水酸基チオール基等も使用される。
シリカへのアミノ基導入と同様、他の修飾基の導入方法は既存の技術と同じである。
固定方法としては、他の実施例と同様に、モノリス上に修飾した修飾基と、リガンドとして用いる任意の塩基配列を持つDNA(RNA)に修飾した官能基(アミノ基やチオール基など)を、二価性試薬を用いて結合することにより、DNA(RNA)固定化チップを作製する。生体試料をこのチップでピペッテイングすることで、固定化したDNA(RNA)配列に特異的に結合することの出来る蛋白質はアフィニティートラップされ、溶出操作により回収される。
例えば、モノリスにポリT(チミン)塩基配列のDNAを固定化し、生体内から抽出したトータルRNAをピペッティングすることにより、適当な温度、塩濃度等の条件下による洗浄、溶出操作を行うことにより、ポリA(アデニン)配列を持つRNAを回収することが出来る。
又、酵素だけではなく、特定の物質、蛋白質に対して、親和性を示す結合蛋白質や低分子リガンド、DNAやRNAの固定化も可能である。例えばそれは、レクチン(コンカナバリンA(ConA)やレンズマメレクチン(LCA)、ソラマメレクチン(VFA)、エンドウマメレクチン、コムギ胚レクチン(WGA)、ヒママメレクチン(RCA−1)、ピーナッツレクチン(PNA)など多数あり列挙できないが、レクチンと云う蛋白質は、ペプチドに結合した糖鎖の構造を認識して結合する蛋白質である。糖鎖の構造は、高マンノース型、混合型、複合型と呼ばれるものと、bisecting N−グリコシド型、シアル酸を持つ複合型、又、アシアロ化複合型、アシアロ化ムチン型など数多くのものがあり、それに対応したレクチンが存在する。)であったり、GFPやGFP結合蛋白質、蛋白質A、蛋白質Gなどの抗体に対する結合蛋白質、抗体(逆に抗体に対する抗原を固定化することも可能)、アビジン、ストレプトアビジン、ヘパリン、GST蛋白質に対して結合する低分子リガンドであるグルタチオン、金属キレートリガンド分子を修飾して金属アフィニティクロマトグラフィとして使用することにより、His−タグ融合蛋白質などを結合させることも可能である。p−aminobenzamidine を固定してセリンプロテアーゼを結合させ、サンプル内から除去するような蛋白除去キットなども作製可能である。他にも、酵素のインヒビター(トリプシンインヒビターや、基質類似物などのプロテアーゼインヒビター)を固定化することにより、特異的な酵素を吊り上げるためのチップを作成することも可能である。
プロテインA(蛋白質A)−IgG、ヘパリン−フィブロネクチン、FGF、HGF、コンカナバリンA−糖蛋白質、膜蛋白質、Procion Red―NADP+依存性酵素、MMPs、TIMPs、Cibacron Blue−0NAD+及びNADP+依存性酵素、インターフェロン、ゼラチン―ゼラナーゼ、フィブロネクチン、リジン―プラスミノーゲン、アルギニン―プロカリクレイン、プロトロンビン、p−aminobenzamidine(ベンザジミン)―セリンプロテアーゼ、金属キレート―ストロムライシン、Hisタグ蛋白質、スプレプトアビジン−ビチオン、ビチオン化蛋白質、グルタチオン―GST(グルタチオンS―トランスフェラーゼ)融合蛋白質、カルモデュリン−ATPase、プロテインキナーゼ、ホスホジエステラーゼ、ポリヌクレオチド―相補的塩基配列を持つポリヌクレオチド、
90℃で乾燥したシリカモノリスを試験管に入れ、10%グリドキシプロピルトリメトキシシランのトルエン溶液を加え、減圧、超音波した。試薬の溶液を除去後、減圧により乾燥させた後、ステンレス反応管に移し、二酸化炭素ガスで置換、200℃で15時間反応させた。モノリスをアセトン中、超音波し乾燥させた。
フェニルボロン酸結合シリカモノリスの調整
上記により得られたエポキシ基結合シリカモノリスを試験管に入れ、10mg/ml 3−アミノフェニルポロン酸/0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)溶液を20ml加えた。減圧、超音波し、一晩放置した。
反応溶液を除去、水で超音波洗浄した後、アセトンに置換し、乾燥した。
モノリス構造体4はマクロ細孔20μm、ミクロ細孔平均15nmのアミノ基修飾したものを用いたデバイスを使用。
0.1mgのオボアルブミンを50mM酢酸アンモニウム溶液1mlに溶解する。その溶液にトリプシンAを1ugを添加し、37℃24時間消化反応を行う。そのサンプルに対して、コンカナバリンAを修飾したアガロースビーズ溶液を200ul加え、4℃で1時間振とうすることにより、糖ペプチドを結合させる。100mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)でビーズを洗浄後、遠心分離によりビーズを回収(2〜3回操作を行う。)、500Mmソルビトール溶液500ulを加え、糖ペプチドをビーズから遊離することにより回収する。そのサンプルに対してN−グリカナーゼを1mUnit加え24時間37℃で酵素消化を行う。このようにして糖鎖解析における前処理を行う。
Unitとは、ある条件で単位時間当たりに生成する生成物の量を示し、例えば1mUは、pH5.0、37℃で1分間に1nmolの卵白アルブミンの糖ペプチド(この糖ペプチドも配列が決まっている。)から糖鎖を遊離する酵素量である。
以上これまでの糖鎖解析を図示化する。
蛋白質群
↓←トリプシン消化(37℃24hr)
ペプチド
↓←レクチンビーズ(4℃1hr)
糖化ペプチド
↓←PNG(37℃24nr)+レクチンビーズ(4℃1hr)+脱塩(透析1hr)
糖鎖
これに対し本発明の方法、デバイスを使用してピペッティングによる糖鎖解析を行った図式。
蛋白質群
↓←トリプシンチップ(所望数ピペッテイング)
ペプチド
↓←レクチンチップ(所望数ピペッテイング)
糖化ペプチド
↓←PNGチップ+レクチンチップorポロン酸チップ+ODSチップ
糖鎖
以上のような結果から大幅な処理時間短縮は明白である。
モノリス構造体4はマクロ細孔20μm、ミクロ細孔平均15nmのアミノ基修飾したものを用いたデバイスを使用。アセトニトリルに溶解した10mg/mlDSS溶液100ulを10回ピペッティングすることにより、アミノ基と反応させ、蛋白質を結合するための活性担体とした。その後、HEPESバッファー(100mM HEPES 20mM CaCl2 pH7.8)に溶解したトリプシン溶液100ulを、10回ピペッティングすることによってトリプシンを固定化した。モノリス上の残った活性基を不活性化するためにTrisバッファー(50mM Tris pH7.5)200ulによって10回ピペッテイングを行った。
作製したトリプシン固定化チップを用いて蛋白質(還元アルキル化後のトランスフェリン又はβカゼイン各0.1mg/ml 100μl)の消化反応を行った。消化反応はサンプル溶液を20回ピペッティングにより行った。得られた消化物をMSによって評価した。図9はMSによって検出されるトータルイオンクロマトグラムを示す。このチャートにより、サンプル内に含まれるサンプルの分子量が検出される。図9はサンプルを何も添加せず、移動相溶液のみを流した場合のクロマトグラムである。図10はサンプルとして移動相溶液をトリプシン固定化チップにより20回ピペッティングした時のクロマトグラムである。若し、トリプシンが固定相から切り離されている場合、トリプシンに由来したペプチドの分子量が検出されるはずだが、そのようなピークは確認されなかった。図11はサンプルとしてβカゼイン(蛋白質0.1mg/ml 100ul)をピペッティングした時のクロマトグラムを示す。この場合βカゼインに由来した分子量のピークを確認することが出来た。これらのことから、トリプシンはピペットチップに安定に固定化出来ていることが示された。又トランスフェリンの分解についてのHPLCによって分析したクロマトグラムを図12に示す。アセトニトリル線勾配は10〜40%を20分にかけて行った。その結果、20回のピペッティングによって95%以上のトランスフェリンの消化を確認した。消化前のピークは5%以下に減少した。図13には分解前のトランスフェリンのクロマトグラムを示す。
モノリス構造体4はマクロ細孔20μm、ミクロ細孔平均35nmのアミノ基修飾したものを用いたデバイスを使用。実施例1に於いて用いた蛋白質溶液をトリプシン溶液の代わりにリン酸ナトリウムバッファー(100mMリン酸ナトリウムpH7.8)に溶解した蛋白質A溶液を用いる以外は全て同じ操作を行った。
作成した蛋白質Aチップを用いてIgGに対する結合能を評価した。0.1mg/mlのIgG及びBSAの試料100ulを、蛋白質A固定化チップを用いて20回ピペッティング後、溶液内に残存する各蛋白質量をHPLCを用いて検討した。チップに対して結合が見られると、夫々の蛋白質に由来したピークの減少が見られるはずである。その結果、蛋白質Aを固定化したチップはBSAに対して結合が見られなかった(図14)が、IGgに対しては明白の結合能を示した。(図15)
モノリス構造体4はマクロ細孔20μm、ミクロ細孔平均35nmのアミノ基修飾したものを用いたデバイスを使用。実施例2に於いて用いた蛋白質溶液の代わりにアセトニトリルに溶解した4アミノフェニルボロン酸溶液(1mg/ml)を用いる以外は全て同様の操作を行った。
糖蛋白質であるトランスフェニリンに対する結合試験を行うために、ボロン酸固定化チップを200ulのアセトニトリルを3回ピペッテイングすることにより、吸入、排出し、50mM NH4HCO3(pH7.8)200ulを1回ピペッティングすることにより、吸入、排出し、サンプル結合前のコンディショニングを行った。
次いで、0.2mg/mlトランスフェリン溶液(50mM NH4HCO3(pH7.8)に溶解)をピペッティング20回行いモノリス構造体に結合させた。
次に、50mM NH4HCO3(pH7.8)200ulによる洗浄を2回行い、その後100mM酢酸100ulをピペッティング10回行うことでトランスフェリンの溶出を行った。
回収率はHPLCにより確認を行った。アセトニトリル線勾配は10〜40%を10分にかけて行った。
その結果を図16に結合反応を行う前のトランスフェリン溶液、図17に結合後のトランスフェリン溶液のクロマトグラムを示す。ピペットチップに固定したモノリスへのトランスフェリンの結合により、溶液内のトランスフェリン濃度が減少することにより、結合後のトランスフェリンのピーク面積は減少した。その後、図18に示すように酢酸溶液で溶出を行うことにより、トランスフェリンの回収を行うことが出来た。結合、洗浄溶出の操作が全てピペッティングによって行うことが可能であることが示された。
ミクロ細孔35nmモノリス(表面積約80m2/g)及び15nmのモノリス(表面積220m2/g)を固定化したピペットチップに実施例1と同様にリン酸ナトリウムバッファー(100mMリン酸ナトリウム、20mM MnCl2,20mM CaCl2、pH7.5)に溶解したコンカナバリンAの固定化を行った。通常、表面積が大きいモノリスに於いて固定化量も増大することが期待される。この実施例の場合、表面積から換算して小さいミクロ細孔を用いた場合のモノリスが、大きいミクロ細孔を用いた場合に比べ、約3倍量の蛋白質を固定化することが可能であるはずが、実際は大きいミクロ細孔(35nm)のモノリスのほうが2倍量のコンカナバリンAをを固定化することが可能であった。
作製したピペットチップによる操作の迅速性を証明するため、実施例2に於いて固定化を行ったトリプシンチップを用いて消化に必要なピペティングの回数を検討した。サンプルにはβカゼイン(0.1mg/ml 100ul 50mM NH4HCO3(pH7.8)に溶解)を用い、ピペッテイングは室温(25℃)で行った。
図19はピペッテイングの回数を5回行った時のトータルイオンクロマトグラムを示す。図20は10回,図21は20回,図22は50回夫々ピペッティングしたときのトータルイオンクロマトグラムの結果を示す。
ピペッテイングの回数が5回の段階では、消化物としてペプチドの分子量の低分子量のペプチドに比べ、高分子量のペプチドが多い。そのため、5回のピペッテイングの回数では充分な消化反応が進行していないと考えられる。一方10回、20回、50回のピペッティングによって得られたペプチドの分子量は、高分子量のペプチドに比べ低分子量のペプチドの量が増えており、消化反応の進行を確認できる。然も低分子量と高分子量のペプチドの量比は10回、20回、50回のピペッティングを比較しても変化が見られなかった。そのため、消化反応に必要なピペッティング回数は、10から20回で充分であることが示された。ピペッティングに要する時間は1分程度であり、迅速なサンプル調整が可能であると考えられる。
2 通液孔
3 ピペットチップ
4 モノリス構造体
5 取付口
6 開口
10 ピペット
Claims (5)
- ピペットチップ等のデバイスの通液孔の一部に多連続孔を持ち、開放構造の一体型構造であって、試料の分子量に対応した細孔径を有するモノリス構造体あるいは、試料に適したコーティング材及び/又は化学修飾材を施して、細孔の表面を修飾・改質したモノリス構造体を固定させ、該モノリス構造体内にリガンドを固定するための試薬を有する反応液により、活性基を修飾させると共に、ピペッティングによりリガンド所望量を固定させて、サンプルの容量或いは濃度に対応して吸着可能としたことを特徴とするアフィニティクロマトグラフィ用デバイスの製法。
- 前記モノリス構造体にリガンドを固定するための試薬を有する反応液により、活性基を修飾させる際に、ピペッティングにより行うことを特徴とする請求項1に記載のアフィニティクロマトグラフィ用デバイスの製法。
- 前記モノリス構造体表面にポリアミンを修飾することにより、高分子蛋白質を固定することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載のアフィニティクロマトグラフィ用デバイスの製法。
- ピペットチップ等のデバイスの通液孔の一部に多連続孔を持ち、開放構造の一体型構造であって、試料の分子量に対応した細孔径を有するモノリス構造体あるいは、試料に適したコーティング材及び/又は化学修飾材を施して、細孔の表面を修飾・改質したモノリス構造体を嵌合固定させると共に、ピペッティングにより前記モノリス構造体にリガンド固定のための試薬により活性基を選択的に修飾させると共に、ピペッティングにより活性担体に選択されるリガンドを固定化したことを特徴とするアフィニティクロマトグラフィ用デバイス。
- 請求項4に記載のアフィニティクロマトグラフ用デバイスを用い、リガンドに結合した目的物質をピペッティングによりトラップあるいは溶出することを特徴とするアフィニティクロマトグラフィ。
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