JP4551627B2 - 口腔内崩壊錠剤の製造方法 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、水の服用なしで口腔内で速やかに崩壊する口腔内崩壊錠剤に関する。
【0002】
経口投与のための固形製剤の剤形としては錠剤やカプセル剤が一般的である。
これらは投与後そのままの形で食道を通って消化管に達し、消化管内で崩壊して薬物を放出するように設計されている。しかしながら老齢者や小児にとってはその嚥下が困難な場合があり、そのような患者に適した剤形として口腔内崩壊錠剤がある。この剤形は水を同時に飲用しなくても口腔内で嚥液により速やかに崩壊し、老齢者や小児でも容易に嚥下し得るようになっている。しかしながら口腔内崩壊錠剤といえども包装工程を含む生産過程、出荷およびその後の医療現場での取扱い過程において外力によってたやすく崩壊することがないように十分な破壊強度(錠剤の硬度)を持つことが必要である。しかしながら口腔内崩壊速度と錠剤強度とは一般に両立しないから、両者を程よくバランスさせなければならない。
【0003】
これまで提案された数多くの口腔内崩壊錠剤の中で、WO95/20380は乳糖、マンニトール、ブドウ糖、白糖及びキシリットからなる群から選択された成形性の低い糖類を、マルトース、マルチトール、ソルビトール及びオリゴ糖からなる群から選択された成形性の高い糖類で造粒し、得られた造粒物を圧縮成形してなる口腔内崩壊錠剤を開示する。これらの造粒に用いられる成形性の高い糖類はいずれも水溶性であり、その水溶液を低成形性の糖類の粒子に噴霧して造粒物がつくられる。そのため成形性の高い糖類は乾燥後造粒物内に無定形もしくは非晶質の形で存在し、成形性の低い糖類の粒子を強固に結合もしくは少なくとも一部を固溶していると考えられるから、口腔内崩壊速度と錠剤硬度の適度のバランスを得るためにはその低成形性糖類に対する相対的割合、液量、噴霧条件等の造粒条件について厳密なコントロールを必要とする。さらにこの方法は賦形成分が高成形性糖類の場合には適用できない。従って成形性に関係なく錠剤の賦形成分一般に広く適用でき、かつ簡単に口腔内崩壊速度と硬度を最適にバランスさせることができる口腔内崩壊錠剤の開発が望まれる。
【0004】
【本発明の開示】
本発明は、成形性すなわち単独で実用上満足な硬度を持つ錠剤に圧縮成形できる否かを問わず、広く錠剤の賦形成分に使用される糖または糖アルコールを用いる。先行技術とは対照的に、本発明では水溶性の造粒成分を使用せず、親水性であるがしかし水に溶けない造粒成分を主たる賦形成分の造粒のために用いる。このため造粒成分は乾燥後の造粒物において賦形成分と独立して存在し、親水性のため口腔内の唾液が錠剤の内部まで速やかに浸透し、錠剤の速やかな崩壊を助ける。この水不溶性親水性造粒成分の使用は、圧縮成形した錠剤の口腔内崩壊速度と錠剤硬度の間の適度なバランスを達成するために複雑な条件設定を必要としない。
【0005】
このため本発明は、錠剤の賦形成分として用いられる糖または糖アルコールを賦形成分とし、水不溶性であるが親水性の造粒成分を用いて造粒した造粒物の圧縮成形物よりなる口腔崩壊錠剤を提供する。
【0006】
【好ましい実施態様】
本発明において造粒成分に用いることができる好ましい糖の例は、乳糖、トレハロースなどであり、糖アルコールはマンニトールである。先に引用したWO95/20380によれば、乳糖およびマンニトールは低成形性の糖類に分類される。トレハロースについては記載はないが、単独で実用上十分な硬度を有する錠剤に打錠することができるので、高成形性糖類に分類すべきである。しかしこれらの糖または糖アルコールを水または水溶性高分子結合剤の水溶液を用いて造粒し、造粒物を圧縮成形して錠剤としても、硬度が実用に耐えない程低いか、又は口腔内崩壊に不適となる程高いかのどちらかである。しかしながらこれらの糖または糖アルコールを水不溶性の親水性造粒成分を用いて造粒し、造粒物を圧縮成形することにより、口腔内崩壊速度と硬度が適度にバランスした錠剤を得ることができる。本発明において使用する造粒成分は親水性であるがしかし水には不溶である。一般に打錠用の造粒物には水溶性の高分子物質の水溶液が結合液として使用されるが、水不溶性物質の水分散液が使用されることはない。しかしこれらの水分散液を使用して造粒する時は、乾燥後賦形成分と分離した状態で造粒物中に分布し、もし存在しなければ高過ぎる硬度の錠剤を口腔内崩壊性とし、反対に低過ぎる硬度の錠剤を実用上満足な硬度を持つように働く。
【0007】
使用し得る水不溶性の親水性造粒成分としては、デンプン、小麦粉のようなデンプンを含む穀粉、微粒子無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドンおよびそれらの混合物がある。デンプンはトウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンが好ましい。微粒子無水ケイ酸としては、疎水化処理を施されていない軽質無水ケイ酸または粒径0.1ミクロン以下の非晶質シリカ微粒子が用いられる。これら微粒子無水ケイ酸は細孔を有し、大きい比表面積を有するのが特色である。賦形成分に対するこれら造粒成分の比は、重量で0.01〜1.0であることが適切である。任意の造粒方法を採用し得るが、流動層造粒法が好ましい。この場合、糖または糖アルコールの賦形成分の粉末粒子を流動させ、それへ造粒成分の水分散液を噴霧するか、または賦形成分と造粒成分を粉末状態であらかじめ混合し、この混合物へ水を噴霧して造粒することができる。流動層造粒装置内で乾燥した造粒物は、必要により整粒後、ステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤と混和した後、打錠機により錠剤に圧縮成形する。その際造粒に用いる造粒成分の一部を粉状状態で造粒物と混和し、打錠しても良い。
【0008】
このようにして製造された錠剤は、一般に口腔内崩壊時間が10秒以上60秒未満の範囲内にあり、硬度は少なくとも1.5kgであることが好ましい。先に述べたように、一般に口腔内崩壊速度と硬度とは両立し難いので、あまり高い硬度例えば5.0kg以上になると口腔内崩壊速度が許容できないほど延長するであろう。
【0009】
本発明の口腔内崩壊錠剤は勿論薬物を含まなければならない。その添加方法はいくつか考えられ、1錠あたりの薬物の含量および性格などによって適切な方法を選ぶことができる。最も一般的な方法は少なくとも造粒物の一部分へ薬物を添加する方法である。また打錠前に造粒物と混合して打錠することもできる。薬物の種類によっては錠剤は主薬の安定剤や矯味剤(甘味剤)を含むことがある。これらの補助成分についても上に述べた添加方法を適用し得る。
【0010】
【実施例】
以下の実施例は例証目的であって本発明をこれらに実施例に限定することを意図しない。また口腔内崩壊錠剤の製剤学的特性が添加した薬物によって有意に影響されるものではないので、多くの実施例においては薬物の添加なしで実験を行なった。
【0011】
実施例1
トレハロース355gを流動層造粒装置(マルチプレックスMP−01)に投入し、トウモロコシデンプン40gを水500mLに分散した液をスプレーし造粒した。得られた造粒物395gに、トウモロコシデンプン100gを混合し、さらにステアリン酸マグネシウム5gを加え、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧8kNおよび10kNにおいて打錠し、直径9.0mm,重量250mgの錠剤を得た。
【0012】
実施例2
トレハロース355gを流動層造粒装置に投入し、トウモロコシデンプン140gを水500mLに分散した液をスプレーし造粒した。得られた造粒物495gにステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧8kNおよび10kNにおいて打錠し、直径9.0mm、重量250mgの錠剤を得た。
【0013】
実施例3
トレハロース355gとトウモロコシデンプン140gの混合物を流動層造粒装置に投入し、精製水300mLをスプレーして造粒した。得られた造粒物495gにステアリン酸マグネシウム5gを加え、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧8kNおよび10kNにおいて打錠し、直径9.0mm、重量250mgの錠剤を得た。
【0014】
実施例4
乳糖355gを流動層造粒装置に投入し、トウモロコシデンプン140gを水500mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物495gに、軽質水ケイ酸4gと、ステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧8kNおよび10kNにおいて打錠し、直径9.0mm、重量252mgの錠剤を得た。
【0015】
実施例5
D−マンニトール355gを流動層造粒装置に投入し、トウモロコシデンプン140gを水500mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物495gに、軽質無水ケイ酸4gと、ステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧10kNおよび12kNにおいて打錠し、直径9.0mm、重量252mgの錠剤を得た。
【0016】
実施例6
D−マンニトール470gを流動層造粒装置に投入し、軽質無水ケイ酸25gを水500mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物495gにステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧4kNおよび6kNにおいて打錠し、直径9.0mm、重量250mgの錠剤を得た。
【0017】
実施例7
テオフィリン10gとトレハロース345gの混合物を流動層造粒装置に投入し、トウモロコシデンプン140gを水500mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物495gに、アスパルテーム6gと、ステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用いそれぞれ打錠圧8kNおよび10kNにおいて打錠し、直径9.0mm、重量253mgの錠剤を得た。
【0018】
実施例8
プラバスタチンナトリウム50gとトレハロース650gの混合物を流動層造粒装置に投入し、軽質無水ケイ酸100gを水1000mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物をAとする。
【0019】
別にトレハロース500gを流動層造粒装置に投入し、トウモロコシデンプン100gを水1250mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物をBとする。
【0020】
A造粒物800gと、B造粒物1200gと、トウモロコシデンプン50gと、アスパルテーム5gを混合し、さらにステアリン酸マグネシウム25gを加え、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧6kNおよび8kNにおいて打錠し、直径9.0mm、重量253mgの錠剤を得た。
【0021】
実施例9
D−マンニトール235gおよびトレハロース120gを流動層造粒装置に投入し、トウモロコシデンプン140gを水500mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物495gにステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧8kNおよび10kNにおいて打錠し、直径9.0mm,重量250mgの錠剤を得た。
【0022】
実施例10
D−マンニトール267gおよびトレハロース88gを流動層造粒装置に投入し、ヒドロキシプロピルスターチ140gを水500mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物495gにステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧8kNおよび10kNにおいて打錠し、直径9.0mm,重量250mgの錠剤を得た。
【0023】
実施例11
トレハロース355gを流動層造粒装置に投入し、ヒドロキシプロピルスターチ140gを水500mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物495gにステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧8kNおよび10kNにおいて打錠し、直径9.0mm,重量250mgの錠剤を得た。
【0024】
実施例12
D−マンニトール355gを流動層造粒装置に投入し、ヒドロキシプロピルスターチ140gを水500mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物495gにステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧10kNおよび12kNにおいて打錠し、直径9.0mm,重量250mgの錠剤を得た。
【0025】
実施例13
D−マンニトール475gを流動層造粒装置に投入し、クロスポピドン20gを水500mLに分散した液をスプレーして造粒した。得られた造粒物495gにステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧7kNおよび9kNにおいて打錠し、直径9.0mm,重量250mgの錠剤を得た。
【0026】
実施例14
D−マンニトール475gを流動層造粒装置に投入し、小麦粉20gを水500mLに分散した液をスプレーし造粒した。得られた造粒物475gに軽質無水ケイ酸4gを混合し、さらにステアリン酸マグネシウム5gを加え、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧6kN及び8kNにおいて打錠し、直径9.0mm,重量252mgの錠剤を得た。
【0027】
実施例15
D−マンニトール475gを流動層造粒装置に投入し、小麦粉20gを水200mLに分散した液をスプレーし造粒した。得られた造粒物475gに軽質無水ケイ酸4gを混合し、さらにステアリン酸マグネシウム5gを加え、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧6kN及び8kNにおいて打錠し、直径9.0mm,重量252mmの錠剤を得た。
【0028】
実施例16
D−マンニトール475gを流動層造粒装置に投入し、小麦粉20gを水100mLに分散した液をスプレーし造粒した。得られた造粒物475gに軽質無水ケイ酸4gを混合し、さらにステアリン酸マグネシウム5gを加え、ロータリー式打錠機を用い、それぞれ打錠圧8kN及び10kNにおいて打錠し、直径9.0mm,重量252mgの錠剤を得た。
【0029】
比較例1
トレハロース568gを流動層造粒装置に投入し、精製水300mLをスプレーして造粒した。得られた造粒物426gにトウモロコシデンプン168gを混合し、さらにステアリン酸マグネシウム6gを加え、ロータリー式打錠機を用いて直径9.0mm、重量250mgの錠剤に打錠した。打錠圧8kNにおいては脆い錠剤(硬度0.2kg)が得られたが、打錠圧10kNにおいてはキャッピングが著しく、打錠不可能であった。
【0030】
比較例2
比較例1において得た造粒物495gに、ステアリン酸マグネシウム5gを混合し、ロータリー打錠機を用い、それぞれ打錠圧3kNおよび5kNにおいて打錠し、直径9.0mm、重量250mgの錠剤を得た。
【0031】
【硬度および崩壊性試験】
実施例および比較例で得た錠剤について、常法により硬度を測定した。崩壊試験は水を使用して第14改正薬局方記載の方法に従って水中崩壊時間を測定し、口腔内崩壊時間は健康な成人男子の口腔内に試験錠剤を含ませ、噛まない状態で完全に崩壊するまでの時間を測定した。なお比較例1の錠剤については水中および口腔内崩壊時間を測定しなかった。結果を表1から表6に示す。
【0032】
表1
【0033】
表2
【0034】
表3
【0035】
表4
【0036】
表5
【0037】
表6
【0038】
表7
【0039】
【考察】
比較例1および2から理解し得るように、トレハロースを水のみで造粒し、造粒物にデンプンおよび滑沢剤を混合して打錠した場合、許容できる硬度に達しないか又はキャッピングのため打錠できない。トレハロースを水のみで造粒した造粒物へ滑沢剤を加えて打錠すると低い打錠圧で硬い錠剤となり、口腔内崩壊錠剤は得られない。これと対照的に糖又は糖アルコールを水不溶性の親水性造粒成分の水分散液を用いて造粒するか、あるいは両者の混合物を水で造粒した場合は、実施例から理解されるように、口腔内崩壊速度と硬度が適度にバランスした錠剤が得られる。
Claims (3)
- A.(a)糖または糖アルコールから選ばれる賦形成分と薬物との混合物の流動層へ、(b)デンプン、デンプンを含む穀粉、微粒子無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドンおよびそれらの混合物よりなる群から選ばれる水に不溶であるが親水性の崩壊成分の水懸濁液を噴霧し、薬物を含む造粒物Aを得るステップ、
B.(a)糖または糖アルコールから選ばれる賦形成分の流動層へ、(b)デンプン、デンプンを含む穀粉、微粒子無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルスターチ、クロスポビドンおよびそれらの混合物よりなる群から選ばれる水に不溶であるが親水性の崩壊成分の水懸濁液を噴霧し、薬物を含まない造粒物Bを得るステップ、および
C.造粒物Aと造粒物Bを混合し少なくとも滑沢剤を添加して圧縮成形するステップを含むことを特徴とする口腔内崩壊錠剤の製造方法。 - (a)成分はトレハロース、乳糖、マンニトールおよびそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項1の方法。
- 造粒物Aおよび造粒物B中の(a)成分に対する(b)成分の重量比が0.01ないし1.0である請求項1または2の方法。
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