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JP4547292B2 - 光ピックアップおよび光情報処理装置 - Google Patents

光ピックアップおよび光情報処理装置 Download PDF

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JP4547292B2 JP2005107568A JP2005107568A JP4547292B2 JP 4547292 B2 JP4547292 B2 JP 4547292B2 JP 2005107568 A JP2005107568 A JP 2005107568A JP 2005107568 A JP2005107568 A JP 2005107568A JP 4547292 B2 JP4547292 B2 JP 4547292B2
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Description

本発明は、複数種類または多層の光記録媒体に対して、情報の記録、再生または消去の少なくともいずれか1以上を行う光ピックアップおよび光情報処理装置に関するものである。
映像情報、音声情報、またはコンピュータ上のデータを保存する手段として、記録容量0.65GBのCD、記録容量4.7GBのDVDなどの光記録媒体が普及しつつある。そして、近年、さらなる記録密度の向上および大容量化の要求が強くなっている。
このような光記録媒体の記録密度を上げる手段としては、光記録媒体に情報の書き込みまたは読み出しを行う光ピックアップにおいて、対物レンズの開口数(以下、NAという)を大きくすること、あるいは、光源の波長を短くすることにより、この対物レンズによって集光され、光記録媒体上に形成されるビームスポットを小径化することが有効である。
そこで、例えば「CD系光記録媒体」では、対物レンズのNAが0.50、光源の波長が780nmとされているのに対して、「CD系光記録媒体」よりも高記録密度化がなされた「DVD系光記録媒体」では、対物レンズのNAが0.65、光源の波長が660nmとされている。そして、光記録媒体は、前述したように、さらなる記録密度の向上および大容量化が望まれており、そのためには、対物レンズのNAを0.65よりもさらに大きく、あるいは、光源の波長を660nmよりもさらに短くすることが望まれている。
このような大容量の光記録媒体および光情報処理装置として、2つの規格が提案されている。1つは、非特許文献1に記載されているような、青色の波長領域の光源とNA0.85の対物レンズを用いて、22GB相当の容量確保を満足する「Blu-ray Disc」の規格(以下、BDという)である。もう1つは、非特許文献2に記載されているような、青色波長は同じであるが、NA0.65の対物レンズを用いて、20GB相当の容量確保を満足する「HD−DVD」の規格(以下、HDという)である。
前者はDVD系に比べ短波長化、高NA化の変更により大容量化を行い、後者は高NA化を行わない代わりに信号処理の工夫により線記録密度の向上を可能とし、ランド・グルーブ記録の採用によりトラックピッチを狭くすることで大容量化を行っている。
特開2001−312831号公報 特開2001−357550号公報 奥万寿男、外8名,「Blu-ray Discが目指すもの」,日経エレクトロニクス,2003.03.31号,p.135-150 山田尚志、外4名,「DVDから生まれた次世代仕様「HD DVD」,日経エレクトロニクス,2003.10.13号,p.125-134
このように青色波長帯域の光源を用いた前記2規格が提案されている。しかしながら、利用者としてはこれら2規格の光記録媒体を区別なく同一の光情報処理装置で取り扱えることが望ましい。
最も簡単な方法としては、複数の光ピックアップを搭載する方法がある。しかし、この方法では、小型化,低コスト化を達成することは難しい。そこで、基板厚、NAが異なる2つの青色規格に対して、共通の光源、かつ共通の対物レンズで記録あるいは再生を行うことができる光ピックアップであることが望まれる。
また、光情報処理システムのトラックエラー(以下、TEという)信号の検出方法は種々あるが、代表的なものとして、DPP(差動プッシュプル)法が知られている。DPP法とは、図24に示すように、3つのビームのスポットを光記録媒体の記録面にトラック前後方向の位置でトラック左右方向に1/2トラックピッチずらして直線的かつ等間隔に配置し、トラック(グルーブ)上に位置するメインスポットm1の反射光を4分割受光素子で検出し、メインスポットm1が位置するトラックに隣接する内周側のランド上に位置するサブスポットs1、およびメインスポットm1が位置するトラックに隣接する外周側のランド上に位置するサブスポットs2の反射光をそれぞれ2分割受光素子で検出し、この4分割受光素子および2分割受光素子毎にそれぞれ検出信号の加減算を行って3つのプッシュプル信号を得て、これらのオフセットを打ち消すように所定の演算式でTE信号を算出するようにしたものである。
前記の3つのスポットは、光源から射出された1本の光束を、回折格子により0次回折光と±1次回折光の少なくとも3本の光束に分割して光記録媒体上に照射することによって得られる。なお、回折格子をその格子方向をディスク径方向に対して所定の角度傾けて光ピックアップ内に配設することにより、光ピックアップが射出する光束が光記録媒体上に形成する3つのスポットは、トラックの接線方向に対して所定角だけ傾いて直線的に配置され、結果、トラック前後方向の位置でトラック左右方向に1/2トラックピッチずつずれた配置に3つのスポットを得ることができる。
さて、前記青色系記録媒体の2規格についてもDPP法が用いられているが、両媒体において、そのトラックピッチは異なるものである。例えば、Blu-ray Discの規格(BD)のトラックピッチの0.3μmに対して、HD−DVDの規格(HD)のトラックピッチは0.45μmである。そして各々に対応した回折格子を2枚挿入した場合、使用しない側の回折光がフレア光となってしまう。そこで、1枚の回折格子を光軸中心に回動させる方法が考えられる(特許文献1,2参照)。
光ピックアップの外の課題として、光記録媒体のチルト(傾き)、あるいは透明基板厚の厚み誤差に伴う収差の発生が知られている。これは光源の短波長化、対物レンズの開口数(NA)をより大きくした場合、すなわち光記録媒体上に集光するスポットを小径化により高密度化を図るほど、マージンが低下する。
また、光記録媒体の透明基板の厚み誤差によっては球面収差が発生する。この球面収差が発生すると、光記録媒体の情報記録面上に形成されるスポットが劣化するため、正常な記録再生動作を行うことができなくなる。光記録媒体の透明基板の厚み誤差によって発生する球面収差は、一般的に以下の(数1)で
Figure 0004547292
与えられる。ここで、λは使用波長、NAは対物レンズの開口数、nは光記録媒体の等価屈折率、Δtは球面収差が最小となるスポット位置からの光軸方向へのずれを表す。
図25(a)はNA0.85、基板厚0.1mm、使用波長405nmの光記録媒体(BD)における光記録媒体の基板厚誤差に伴う各収差量を示したものである。図25(a)中SAは球面収差、COMAはコマ収差、ASは非点収差、TOTALはこれらの3次収差の総合値、STREHLはスポットのピーク強度を表す。図25(b)はNA0.65、基板厚0.6mm、使用波長405nmの光記録媒体(HD)における光記録媒体の基板厚誤差に伴う各収差量を示したものである。
通常、光記録媒体からの信号の読み出しにおいて、波面収差値はマレシャルクライテリオン(0.07λrms)より小さくする必要があることが経験上知られており、波面収差には対物レンズの収差や光記録媒体の傾きによる収差も含めて考える必要があるので、W40rmsの許容量は約0.07λrmsの1/2以下にすることが必要とされている。また光記録媒体の基板厚誤差はその成形公差を±10μm程度見込む必要があり、光記録媒体(BD)については補正が必要である。
また、光記録媒体のチルト(傾き)によってはコマ収差が発生する。このコマ収差が発生すると、光記録媒体の情報記録面上に形成されるスポットが劣化するため、正常な記録再生動作を行うことができなくなる。光記録媒体のチルトによって発生するコマ収差は、一般的に以下の(数2)
Figure 0004547292
で与えられる。ここで、nは光記録媒体の透明基板の屈折率、dは透明基板の厚み、NAは対物レンズの開口数、λは光源の波長、θは光記録媒体のチルト量を意味する。
図26(a)はNA0.85、基板厚0.1mm、使用波長405nmの光記録媒体(BD)において、光記録媒体のチルトに伴う各収差量を示したものである。同様に、図26(b)はNA0.65、基板厚0.6mm、使用波長405nmの光記録媒体(HD)において、光記録媒体のチルトに伴う各収差量を示したものである。
前述したように、光記録媒体からの信号の読み出しにおいて、波面収差値はマレシャルクライテリオン(0.07λrms)より小さくする必要があることが経験上知られており、波面収差には対物レンズの収差や光記録媒体厚み誤差による収差も含めて考える必要があるので、W31rmsの許容量は約0.07λrmsの1/2以下にすることが必要とされている。また光記録媒体の製造公差、光記録媒体の取付け精度から±0.3deg程度のチルトが生じることを見込む必要があり、光記録媒体(HD)については補正が必要である。
以上のように光記録媒体(BD)と光記録媒体(HD)を共に記録および/または再生する光ピックアップにおいては、各媒体のトラックピッチの違いに伴い発生する3ビームのサブスポット位置の修正を行う必要がある。また、光記録媒体(BD)の基板厚誤差に伴い発生する球面収差と、光記録媒体(HD)のチルトによって発生するコマ収差を共に補正する必要がある。いずれも動的な可動機構が必要となるものであり、各々に対して可動機構を設けることは、部品点数を増加させ、光ピックアップの大型化を招いてしまうという問題があった。
本発明は、前記従来技術の問題を解決することに指向するものであり、光学部品の集約と可動部位の特定化を図り、小型化した光ピックアップおよび光情報処理装置を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載した光ピックアップは、波長λ1,基板厚t1,使用開口数NA1の第1の光記録媒体と、波長λ1、基板厚t2(>t1)、使用開口数NA2(<NA1)の第2の光記録媒体に対して情報の記録を行う光ピックアップ、再生を行う光ピックアップ、記録および再生を行う光ピックアップのいずれか1つの光ピックアップにおいて、光源と、光源からの光束を光記録媒体に集光するための対物レンズと、屈折力が正負異なる2枚のレンズから構成され、レンズのいずれか1面に光束を3ビームに分割する回折格子が形成されたエキスパンダ光学系と、第1,第2の光記録媒体いずれかを判別した判別信号に基づいて、エキスパンダ光学系の各レンズを駆動する駆動手段とを備え、エキスパンダ光学系の駆動手段は、光束を3ビームに分割する回折格子を形成したレンズを光軸中心に回動させる第1の駆動手段と、エキスパンダ光学系の少なくとも一方のレンズを光軸方向に移動させる第2の駆動手段と、エキスパンダ光学系の少なくとも一方のレンズを光軸直交面内の光記録媒体半径方向に可動させる第3の駆動手段とからなり、第1の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、光記録媒体に3ビームがオントラックとなる状態の第1中立点を記憶し、第2の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、収差最良または情報信号最良となる状態の第2中立点を記憶し、第3の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、収差最良または情報信号最良となる状態の第3中立点を記憶し、第1,第2の光記録媒体のいずれかのセット時に前記第1〜第3中立点にレンズを初期移動し、エキスパンダ光学系は、第2の光記録媒体を認識した場合は、第1の光記録媒体と比べて収斂光によるオーバーの球面収差を発生させ、また、第1,第2の光記録媒体のいずれかを判別した判別信号に基づいて第1の光記録媒体を認識した場合に、第1の光記録媒体における球面収差劣化相当量を検知し、第2の駆動手段を用いて球面収差補正を行い、第1,第2の光記録媒体のいずれかを判別した判別信号に基づいて第2の光記録媒体を認識した場合に、3ビームが第2の光記録媒体に対してオントラックとなるように第1の駆動手段を用いてレンズを回転させ、第2の光記録媒体におけるコマ収差劣化相当量を検知し、第3の駆動手段を用いてコマ収差補正を行うことを特徴とする。
さらに、請求項2に記載した光ピックアップは、厚み方向に情報記録面がp層(p≧2)形成され、対物レンズに近い手前側の(pq)層はトラックピッチの狭い情報記録層、対物レンズより遠い奥側のq層はトラックピッチの広い情報記録層からなる光記録媒体に対して情報の記録を行う光ピックアップ、再生を行う光ピックアップ、記録および再生を行う光ピックアップのいずれか1つの光ピックアップにおいて、光源と、光源からの光束を光記録媒体に集光するための対物レンズと、屈折力が正負異なる2枚のレンズから構成され、レンズのいずれか1面に光束を3ビームに分割する回折格子が形成されたエキスパンダ光学系と、(pq)層〜q層のいずれか1層を選択する選択信号に基づいて、エキスパンダ光学系の各レンズを駆動する駆動手段とを備え、エキスパンダ光学系の駆動手段は、光束を3ビームに分割する回折格子を形成したレンズを光軸中心に回動させる第1の駆動手段と、エキスパンダ光学系の少なくとも一方のレンズを光軸方向に移動させる第2の駆動手段と、エキスパンダ光学系の少なくとも一方のレンズを光軸直交面内の光記録媒体半径方向に可動させる第3の駆動手段とからなり、第1の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、光記録媒体に3ビームがオントラックとなる状態の第1中立点を記憶し、第2の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、収差最良または情報信号最良となる状態の第2中立点を記憶し、第3の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、収差最良または情報信号最良となる状態の第3中立点を記憶し、光記録媒体のセット時に第1〜第3中立点にレンズを初期移動し、エキスパンダ光学系は、光記録媒体の対物レンズに近い手前側の(pq)層の選択時には収斂光によるアンダーの球面収差を発生させ、対物レンズより遠い奥側のq層の選択時には(pq)層に比べて収斂光によるオーバーの球面収差を発生させ、また、(p−q)層〜q層のいずれか1層を選択する選択信号に基づいて光記録媒体の対物レンズに近い手前側の(p−q)層を選択した場合に球面収差劣化相当量を検知し、第2の駆動手段を用いて球面収差補正を行い、情報記録層のトラックピッチの広狭に応じて、3ビームが光記録媒体に対してオントラックとなるように第1の駆動手段を用いてレンズを回転させ、対物レンズより遠い奥側のq層を選択した場合にコマ収差劣化相当量を検知し、第3の駆動手段を用いてコマ収差補正を行うことを特徴とする。
また、請求項3,4に記載した光ピックアップは、請求項1または2の光ピックアップであって、エキスパンダ光学系の光束を3ビームに分割する回折格子を形成するレンズ面が、エキスパンダ光学系の4つのレンズ面のうち、曲率半径が最も大きいレンズ面であること、または前記レンズ面が、平面であることを特徴とする。
また、請求項に記載した光ピックアップは、請求項1または2の光ピックアップであって、対物レンズが、第1の光記録媒体に対して収差最良となるレンズであって、対物レンズとエキスパンダ光学系の間に、回折素子または位相シフタ素子を備えたこと、さらに、回折素子または位相シフタ素子が、光記録媒体に応じて、異なる回折次数の光束を選択的に用いること、回折素子または位相シフタ素子を、対物レンズと一体成形し、かつ素子面を対物レンズの光源側表面に形成したことを特徴とする。
また、請求項に記載した光情報処理装置は、光記録媒体に情報の記録を行う光情報処理装置、再生を行う光情報処理装置、記録および再生を行う光情報処理装置のいずれか1つの光情報処理装置において、請求項1〜のいずれか1項に記載の光ピックアップを備えたことを特徴とする。
前記構成によれば、屈折力が正負異なる2枚のレンズから構成され、いずれかの1面に3ビーム分割する回折格子が形成されたエキスパンダ光学系によって、第1の光記録媒体(BD),第2の光記録媒体(HD),多層記録媒体に対して、トラックエラー検出用のサブスポット位置の最適化、光記録媒体(BD)の基板厚誤差に伴い発生する球面収差、光記録媒体(HD)のチルトによって発生するコマ収差を補正でき、情報記録層の異なる光記録媒体を1つの光ピックアップにより記録および/または再生することができる。
本発明によれば、光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)や多層記録媒体のトラックピッチの違いに伴うDPP法によるトラックエラー検出用のサブスポット位置の最適化と、光記録媒体(BD)の基板厚誤差に伴い発生する球面収差と、光記録媒体(HD)のチルトによって発生するコマ収差のそれぞれを、1つのエキスパンダ光学系により補正することができるという効果を奏する。
以下、図面を参照して本発明における実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の実施の形態1における光ピックアップの概略構成を示す図である。本実施の形態1は、第1の光記録媒体である「使用波長405nm、NA0.85、光照射側基板厚0.1mmの青色系光記録媒体」の光記録媒体(BD)と第2の光記録媒体である「使用波長405nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体」の光記録媒体(HD)を共に、記録および/または再生できる光ピックアップを例として説明する。
図1に示す光ピックアップの要部は、波長405nmの半導体レーザ101、コリメートレンズ102、偏光ビームスプリッタ103、エキスパンダ光学系104、偏向プリズム105、液晶開口制限素子106、収差補正回折光学素子107、1/4波長板108、対物レンズ109、検出レンズ111、受光素子112より構成されている。ここで、対物レンズ109は、「使用波長405nm、NA0.85、光照射側基板厚0.1mmの青色系光記録媒体」の光記録媒体(BD)に対し、無限系で波面収差が最小になるように設計されている。一般に対物レンズは高NAになるほど公差が厳しくなるので、NA0.85と0.65で比べると、NA0.85で望ましい特性を出す方が難しくなるので、特に、NA0.85で収差が補正された非球面レンズを使う。
また、光記録媒体はそれぞれ基板厚さが異なる光記録媒体で、光記録媒体(BD)110aは基板厚さが0.1mmの青色系光記録媒体で、光記録媒体(HD)110bは基板厚さが0.6mmの青色系光記録媒体である。記録または再生時にはいずれかの光記録媒体のみが図示しない回転機構にセットされて高速回転される。
まず、「使用波長405nm、NA0.85、光照射側基板厚0.1mmの青色系光記録媒体」の光記録媒体(BD)を記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103、エキスパンダ光学系104を透過し、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、液晶開口制限素子106、収差補正回折光学素子107を不感帯透過し、1/4波長板108を通過し円偏光とされ、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(BD)110a上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の記録、再生あるいは消去が行われる。光記録媒体(BD)110aから反射した光束は、往路とは反対回りの円偏光となり、再び略平行光とされ、1/4波長板108を通過して往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
次に、「使用波長405nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体」の光記録媒体(HD)を記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103、エキスパンダ光学系104を透過し、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、液晶開口制限素子106でNA0.65に制限され、収差補正回折光学素子107において所定の球面収差が付加され、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(HD)110b上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の記録、再生あるいは消去が行われる。光記録媒体(HD)110bから反射した光束は、往路とは反対回りの円偏光となり、再び略平行光とされ、1/4波長板108を通過して往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
前述したエキスパンダ光学系104の構成について説明する。エキスパンダ光学系104は、レンズ2枚の2群構成であり、光源の半導体レーザ101側をレンズ104a、光記録媒体110側をレンズ104bとすると、レンズ104aは正の屈折力のレンズ、レンズ104bは負の屈折力のレンズであり、共に単レンズである。そして、両レンズは半導体レーザ101から光記録媒体110に向かって出射される出射光の光軸上に配されている。
なお、エキスパンダ光学系104のレンズ104bの光記録媒体110側面には回折格子が形成されており、光源からの光束がこの回折格子に入射して0次回折光および±1次回折光の少なくとも3本の光束に分割される。回折格子により分割された光束は、そのうち0次回折光が情報の記録,再生用のメインビームとして、±1次回折光がトラッキング制御用のサブスポットとして利用されるものである。対物レンズ109を経て光記録媒体110の記録面上に収束し、0次回折光および±1次回折光により直線的かつ等間隔に並んだ3つのスポットが記録面上に形成される。
そして、エキスパンダ光学系104は、図2に示すようにアクチュエータ等の駆動手段上に搭載され、光記録媒体(BD)110aの場合は、その基板厚誤差によって生じる球面収差劣化相当量を検知し、エキスパンダ光学系104のレンズを動的に制御し最適な特性を得ることが可能である。また、光記録媒体(HD)110bの場合は、そのチルトによって生じるコマ収差劣化相当量を検知し、エキスパンダ光学系104のレンズを動的に制御し最適な特性を得ることが可能である。
ここで、エキスパンダ光学系104を動的に制御する方法、すなわち球面収差およびコマ収差を補正する方法について、図2を参照しながら以下に説明する。なお、図2において光学部品は図1と同じである。エキスパンダ光学系104を構成するレンズ104aとレンズ104bは、その駆動手段であるアクチュエータ114a,114b,114上に保持されている。アクチュエータ114aは、レンズ104aを光軸方向に1軸駆動するように構成されている。これにより、レンズ104aとレンズ104bの間隔を可変にすることができる。また、アクチュエータ114bは、レンズ104bを光軸直交方向の1軸、具体的には光記録媒体半径方向に可動するように構成されている。そしてアクチュエータ114は、レンズ104bを光軸中心に回動させるように構成されている。
なお、アクチュエータの具体的手段としては、一般に知られているボイスコイル型アクチュエータや、ピエゾアクチュエータなどを用いればよい。
図3はエキスパンダ光学系の調整処理を示すフローチャートである。光情報処理装置の電源投入後,エキスパンダ光学系のレンズ状態が予めメモリされた所定位置に移動される(ステップS1)。所定位置とは、組付工程において最適値としてメモリされたものであり,例えば光記録媒体(BD)に対して3ビームがオントラック,収差最良の状態となる位置である。
媒体がセットされると(ステップS2)、光記録媒体(BD)、光記録媒体(HD)いずれかを検出する(ステップS3)。媒体の判別方法としては、
1.光記録媒体をセットする段階に、LED(発光ダイオード)と受光素子からなる厚み検出用光学系を設けておき、その出力に基づき判別する。
2.フォーカスエラー信号を検出し、その合焦付近でTE(トラックエラー)信号が検出されるかで判別する。
3.光記録媒体のカートリッジ形状を異なるものとしておき、その差に基づいて判別する。
4.光記録媒体のラベル上に記載されたバーコードで媒体種類を印刷しておき、その情報をバーコードリーダにて読み取ることにより判別する。
5.合焦位置までの対物レンズアクチュエータの可動量に基づいて判別する。
などの方法が挙げられる。
そして、光記録媒体(BD)の場合は(ステップS3のYes)、図2に示すSA補正ドライバ31は制御信号に従い、後述する収差補正動作を行いながら、記録や再生の処理が行われる(ステップS4)。
光記録媒体(BD)でない場合は(ステップS3のNo)、3ビーム補正ドライバ33に制御信号が送られ、3ビームが光記録媒体(HD)に対してオントラックとなるように回動される(ステップS5)。その後、チルト補正ドライバ32は制御信号に従い、後述する収差補正動作を行いながら、記録や再生の処理が行われる(ステップS6)。
また、図2に示すエキスパンダ光学系104のレンズ104bは対物レンズ109の光軸を中心として回動可能であり、アクチュエータ114によって光記録媒体(BD)110a、光記録媒体(HD)110bで回動角を切り替えることができる。この回動角は、図示しない内部メモリなどに記憶されており、媒体セット前に予め光記録媒体(BD)110aに最適な中立点(基準位置)に移動させておき、光記録媒体(HD)110bが挿入されたことを認識した場合、中立点からメモリに記憶されている所定の回動角をCPU34が取得し、図4(a),(b)に示すが如く、その角度に応じて3ビーム補正ドライバ33を調整してレンズ104bを回転させる。
なお、図4(a),(b)に示すように,本実施の形態1においては光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)においてNAの切り替えが行われるため、3ビームのスポットサイズも変わる。さらに、光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)においてNAが切り替わることにより、サブスポットs1,s2とメインスポットm1のスポット間隔がわずかに変わるため、この変化分も考慮してオントラックとなるような回動処理が行われる。
また、レンズ104bを回動する回動部構成としては、図5に示すように,レンズ104bが固定されている玉枠26を固定枠25で保持した構成となっており、固定枠25上にはピエゾ素子21aとロッド22a、およびピエゾ素子21bとロッド22bの組合せが配置されており、その配置は光軸中心に対称となっている。このことにより、ピエゾ素子21a,21bが等価な伸縮動作により玉枠26が回動する。さらに玉枠26にはLED24が配置され、このLED24と対向位置に固定枠25上のPSD(半導体光入射位置検出素子)23が配置され、回転角を検出できるようになっている。
さらに、図2に示すエキスパンダ光学系104のアクチュエータ114a,114bは、それぞれSA補正ドライバ31、チルト補正ドライバ32を介してCPU34に接続されている。CPU34は、ピークホールド回路37を介してTE信号生成部36からの信号が入力されるとともに、RF信号生成部35からの信号が入力される。さらに、CPU34内には、補正プロファイルメモリ(図示せず)が設けられている。
また、図2に示す受光素子112は8分割されており、各検出面A〜Hからの検出信号Sa〜ShをTE信号生成部36およびRF信号生成部35へ供給する。TE信号生成部36は、検出信号Sa〜Shを使用して(数3)
Figure 0004547292
に従ってTE信号を生成してピークホールド回路37へ供給する。ピークホールド回路37は、TE信号のピークレベルをホールドし、CPU34に供給する。また、RF信号生成部35は、検出信号Sa〜Sdを使用して(数4)
Figure 0004547292
に従ってRF信号を生成し、これをCPU34へ供給する。
CPU34は、ピークホールド回路37から受け取ったTE信号とRF信号生成部35から受け取ったRF信号とを利用し、後述するTE信号の振幅最大となるレンズ位置とRF信号の振幅最大となるレンズ位置の差を測定するオフセット測定処理を行う。このオフセット測定処理により得られたオフセット量を使用して、例えば媒体毎の球面収差補正もしくは球面収差補正を指示する補正プロファイルを作成する補正プロファイル作成処理、および補正プロファイルに従って基板厚補正もしくは球面収差補正を行う補正処理を実行する。すなわち光記録媒体の種類に応じてレンズ104a,104bを可動させる。
また、前述の補正プロファイルは、光記録媒体の半径方向における位置、例えば内周領域、中周領域、外周領域の3つの領域に分割し、各領域における最適収差補正量を規定したものとすることができる。
なお、光記録媒体が未記録媒体の場合は、媒体上の各位置においてRF信号が得られないので、RF信号振幅が最大となる収差補正量を得ることができない。そこで、TE信号振幅が最大となる収差補正量を代替値として用いる。しかしながら、RF信号振幅が最大となる収差補正量と、TE信号振幅が最大となる収差補正量とは、必ずしも一致せず、オフセット量を有する。すなわち、未記録媒体では、TE信号振幅が最大となる収差補正量を取得し、それとオフセット量とによりRF信号振幅が最大となる収差量を算出して最適収差量に設定する。こうすることにより、既記録媒体でも未記録媒体でも、最適収差量を決定して補正プロファイルを作成することが可能となる。
次に、光記録媒体(BD)の基板厚誤差に伴い発生する球面収差を補正する処理を、図6のフローチャートを用いて説明する。球面収差補正は、基本的に図2に示すCPU34が、RF信号振幅が最大となる球面収差補正量を決定し、その量に基づいてSA補正ドライバ31を制御してレンズ104aを可動させる。
いま、媒体がセットされると、CPU34は、オフセット量ΔSAの測定処理を実行する(ステップS10〜S17)。
具体的には、媒体上のRF信号が得られる既記録領域とRF信号が得られない未記録領域との境界位置において、RF信号振幅が最大となる球面収差量とTE信号振幅が最大となる球面収差量とを取得し、その差としてオフセット量ΔSAを算出する。また、未記録媒体の場合はリードインエリア内に予め記録が行われているプリライト部の境界部で検出すればよい。
さらに、オフセット量測定処理について詳細に説明する。まず、CPU34は、セットされた媒体が未記録媒体であるか否かを判定する(ステップS10)。既記録媒体の場合、プリライト部の直前に管理情報などが既に記録されていることから、反対に未記録の場合は記録されていないことを利用すればよい。
ステップS10の処理において、未記録媒体であると判定された場合(ステップS10のYes)、CPU34は、プリライト部において球面収差補正量を変化させてRF信号振幅が最大となる収差補正量SA(α)を検出する(ステップS11)。
プリライト部近傍の未記録部において球面収差補正量を変化させてTE信号振幅が最大となる収差補正量SA(β)を検出する(ステップS12)。
そして、CPU34は、収差補正量SA(α)とSA(β)からオフセット量ΔSAを算出し、内部メモリなどに記憶する(ステップS13)。
一方、ステップS10の処理で媒体が未記録媒体ではないと判定された場合(ステップS10のNo)、CPU34は、媒体内周から外周へRF信号の境界有無を探索する(ステップS14)。この探索は、トラッキングサーボをオープンとした状態で媒体内周から外周に向かって光ピックアップを可動させ、その過程で得られるRF信号の振幅の変化を監視することにより実行される。RF信号の境界有無では、それまで得られていたRF信号振幅が無くなるので、その位置をRF信号の境界有無に設定すればよい。
そして、RF信号の境界有無を確認して(ステップS15)、境界有無が見つかった場合(ステップS15のYes)、その近傍の既記録部において球面収差補正量を変化させてRF信号振幅が最大となる収差補正量SA(α)を検出する(ステップS16)。
また、近傍の未記録部において収差補正量SA(β)を変化させてTE信号振幅が最大となる収差補正量SA(β)を検出する(ステップS17)。
そして、CPU34は、収差補正量SA(α)と収差補正量SA(β)からオフセット量ΔSAを算出し、内部メモリなどに記憶する(ステップS13)。
以上のように、オフセット量測定処理により、記録済み媒体であっても、未記録媒体であっても、オフセット量ΔSAを得ることができる。
引き続き、CPU34は補正プロファイルの作成を行う(ステップS18〜S22)。まず、CPU34は、媒体上の予め決められた補正基準位置へ光ピックアップを移動する(ステップS18)。補正基準位置とは、球面収差補正を行う位置であり、例えば内周、中周、外周の3つの領域とすることができる。よって、最初は、補正基準位置は内周領域に設定される。
CPU34はその補正基準位置を読み取り、RF信号が得られるか否かを判定する(ステップS19)。このステップS19の処理にて、RF信号が得られない場合(ステップS19のNo)、その補正基準位置は未記録領域であることがわかる。よって、CPU34はTE信号振幅を利用して最適SA補正量を決定する。すなわち、その補正基準位置で球面収差量を変化させつつTE信号振幅を検出し、TE信号振幅が最大となる球面収差補正量を決定する(ステップS20)。
次に、CPU34は、先のオフセット量測定処理により得たオフセット量ΔSAを、ステップS20の処理で得られた球面収差量に加算する。加算により得られた球面収差量は、RF信号振幅が最大となる球面収差量に相当し、これを最適SA補正量とする(ステップS21)。
一方、ステップS19の処理において、RF信号が得られた場合(ステップS19のYes)、その補正基準位置で球面収差補正量を変化させてRF信号振幅が最大となる球面収差補正量を決定し、それを最適SA補正量とする(ステップS23)。
そして、CPU34は、ステップS31またはステップS23の処理で得られた最適SA補正量を補正プロファイルメモリに記憶する(ステップS22)。
以上の処理によって、補正プロファイルが作成されると、CPU34は球面収差補正を行いつつ記録または再生の動作を行う。
次に、記録または再生に伴って行われる球面収差補正処理(ステップS24〜28)について説明する。
まず、CPU34は、ユーザにより媒体への情報の記録または媒体からの情報の再生指示がなされたか否かを判定する(ステップS24)。そして、記録または再生の指示がなされた場合(ステップS24のYes)、CPU34はTE信号などを利用して記録または再生の対象となるアドレスを取得し(ステップS25)、そのアドレスに対応する最適SA補正量をCPU34内の補正プロファイルメモリ(図示せず)から取得する(ステップS26)。
そして、CPU34は、SA補正ドライバ31を制御して、得られた最適SA補正量に従って球面収差補正を行う(ステップS27)。
さらに、CPU34はユーザにより記録または再生の終了指示が入力されたか否かを判定し(ステップS28)、終了指示が入力されるまでの間はステップS25〜S27の処理を繰り返す(ステップS28のNo)。そして、終了指示が入力されると処理を終了する(ステップS28のYes)。
以上説明したように、本実施の形態1では、まず、記録または再生の対象となる媒体上の既記録部と未記録部の境界からRF信号振幅が最大となる球面収差補正量とTE信号振幅が最大となる球面収差補正量を求め、それらからオフセット量ΔSAを算出する。次に、当該媒体上の基準補正位置について、既記録であればRF信号に基づいて、未記録であればTE信号とオフセット量ΔSAに基づいて、最適SA補正量を決定し、補正プロファイルとして記憶する。そして、当該媒体の記録または再生時には、補正プロファイルを参照して球面収差補正を行う。
なお、媒体毎に作成された補正プロファイルを使用して球面収差補正を行うので、媒体の種類などを問わず、球面収差補正を正確に実行することができる。
また、記録または再生を実行する光情報処理装置自体が最適SA量を決定して補正プロファイルを作成するので、光情報処理装置の光ピックアップや光学系などの特性にばらつきがあっても、その特性を前提とした最適SA量を得ることができる。
さらに、実際の記録や再生に先立って補正プロファイルを作成するので、装置の光学系の経年変化による特性の変動や、記録または再生中の温度変化による特性変動による影響が少ない。
同様に、本実施の形態1においては、エキスパンダ光学系104のレンズ104bを光軸直交方向に移動させることにより、光記録媒体のチルトにより発生するコマ収差についても補正可能である。まず、記録または再生の対象となる媒体上の既記録部と未記録部の境界からRF信号振幅が最大となるコマ収差補正量とTE信号振幅が最大となるコマ収差補正量を求め、それらからオフセット量ΔTiltを算出する。次に、当該媒体上の基準補正位置について、既記録であればRF信号に基づいて、未記録であればTE信号とオフセット量ΔTiltに基づいて、最適コマ収差補正量を決定し、補正プロファイルとして記憶する。そして、当該媒体の記録または再生時には、補正プロファイルを参照してチルト補正を行う。
なお、チルトの方向としては、回転方向と半径方向の2方向に分けられるが、主に問題となるのは半径方向であり、補正方向としては半径方向のみでよい。これは光記録媒体が平面に作製されず、ある程度の反りを持ち、半径方向に御椀のような反りを有するためである。
ここで、具体的な光記録媒体の基板厚に対する球面収差の補正について説明する。まず、光記録媒体(BD)の厚み誤差から発生する球面収差については、エキスパンダ光学系104のレンズ104a,レンズ104bのレンズ間隔を変化させることで補正可能である。つまり、エキスパンダ光学系104のいずれかのレンズを光軸方向に移動させることにより光記録媒体(BD)の厚み誤差により生じる球面収差を補正する。
光記録媒体の厚み誤差が、設計値に対して0μm〜20μmとなったときに、エキスパンダ光学系104がない場合の収差値と、レンズ104aとレンズ104bを光軸中心に間隔を変化させて補正したときの収差値を図7(a),(b)に示す。
図7(a)に示すグラフから、エキスパンダ光学系104がない場合、収差の規定値である0.035λrmsとなるのは、基板厚誤差が約4μmのときである。しかしながら、光記録媒体の厚み誤差は、媒体作製時の射出成形精度によるものであり、一般的に±10μm程度の厚み誤差が発生してしまうことが知られており、エキスパンダ光学系104なしでは許容できないことがわかる。
一方、図7(b)に示すように、レンズ104aとレンズ104bを光軸中心に間隔を変化させて補正した場合、基板厚誤差は±20μm以上許容でき、前記製造公差±10μmと比較すると製造可能なものになっていることがわかる。
次に、光記録媒体(HD)のチルトから発生するコマ収差については、エキスパンダ光学系104のレンズ104bを、光記録媒体の半径方向にシフトさせることで補正可能である。
ここで、光記録媒体のチルトが、0deg〜0.4degとなったときに、エキスパンダ光学系104がない場合の収差値と、レンズ104bのシフト量を変化させて補正したときの収差値を図8(a),(b)に示す。
図8(a)に示すグラフから、エキスパンダ光学系104がない場合、収差の規定値である0.035λrmsとなるのは、光記録媒体のチルト量が0.15degのときである。しかしながら、光記録媒体(HD)のチルト量は光記録媒体自身が保有しているもの、光記録媒体をターンテーブル(図示しない)上にチャッキングする際に生じるものなどを考慮すると、±0.3deg相当発生することが知られており、チルト補正なしではこれを許容できないことがわかる。
一方、図8(b)に示すように、レンズ104bのシフト量を変化させて補正した場合、光記録媒体のチルト量は±0.4degまで許容でき、製造可能なものになっていることがわかる。
また、本実施の形態1の光ピックアップにおいては、図1に示すように光記録媒体(BD)に最適化された対物レンズにより、基板厚の異なる光記録媒体(HD)を互換するために、収差補正回折光学素子107と液晶開口制限素子106を配置してなる。
収差補正回折光学素子107は図9(a)に示すように、光軸を中心に複数本の輪帯からなる。この収差補正回折光学素子107は、図9(b)に示すように、その断面が鋸歯形状、または図9(c)に示すように、階段形状となるように形成される。例えば、鋸歯形状断面の回折光学素子(回折格子)は回折効率が他より高いので有利である。回折光学素子断面形状の作成法として、フォトリソグラフィ技術を応用する方法と、ダイヤモンドバイトなどで精密切削する方法がある。また金型に所望形状の雛形を形成しておき、射出成形またはベースとなる部材に樹脂を塗布し、これを型で押さえて紫外線を照射することにより硬化させるいわゆる2P(photo-polymer)法で透明材料から複数の回折光学素子を複製することもできる。
この収差補正回折光学素子107は、図10(a),(b)に示すように、その0次回折光を、対物レンズ109を介して光記録媒体(BD)110a上に、また1次回折光を対物レンズ109を介して光記録媒体(HD)110b上に集光するように、形成されている。なお、0次回折光、1次回折光は、それぞれ他の基板厚の光記録媒体上に合焦状態にないので、これら回折光は記録または再生にはほとんど影響しない。
なお、回折次数として、0次回折光をNA0.85に選択した理由は、対物レンズ109が、「使用波長405nm、NA0.85、光照射側基板厚0.1mmの青色系光記録媒体」の光記録媒体(BD)に対し、無限系で波面収差が最小になるように設計されているためである。
また、図10(a),(b)では、簡単のため図1で記載されている収差補正回折光学素子107と対物レンズ109の間にある1/4波長板108を省略している。
次に、図11に示す具体的な回折効率計算例として、図9のブレーズ断面形状の回折光学素子について格子溝深さdを0μm〜2μmに変化させ、基材として、例えばHOYA社製のガラスMLaC110(nd=69.4、νd=53.2)を用いて作製した場合の、回折効率の変化を算出したものである。回折光学素子の回折効率ηmは(数5)
Figure 0004547292
で表される。(数5)において、dは格子溝深さ、mは回折次数、nは材料屈折率を示している。
図11は、横軸に回折光学素子の溝深さd、縦軸に回折光学素子の回折効率の変化を算出した結果である。図11中の“B0”,“B1”,“B2”,“B3”はそれぞれ0次回折光、1次回折光、2次回折光、3次回折光の回折効率を示す。
この回折効率の選択としては、図11に示すように、回折効率は回折光学素子の溝深さで調整できるため、光記録媒体(BD)、光記録媒体(HD)の照射パワー特性に応じて溝深さを選択してやればよい。一般に小径スポットほどパワーが集約される。光記録媒体上のビームスポット径は波長λに比例し、NAに反比例して小さくなり、パワーとしてはスポット面積に反比例して大きくなる。すなわちNA0.85とNA0.65を比較した場合、光記録媒体上に集光されるパワーは(0.85/0.65)の比率でNA0.85の方が大きくなる。よって、光記録媒体(BD)と光記録媒体(HD)が同一材料、同一の線速で使用される場合は、各媒体で必要とされる集光パワーは同等であるため、0次回折光と1次回折光の効率比が1:1.7となるようにすればよい。すなわち格子溝深さは0.32μm付近を選択してやればよい。
あるいは、光記録媒体(BD),光記録媒体(HD)のいずれか一方のみは再生専用の光情報処理装置であれば、再生側の効率を小さくすれば、もう一方の光記録媒体に対しては十分なパワーを照射することが可能となり高速化も容易となる。
また、光記録媒体(BD)と光記録媒体(HD)では使用開口数(NA)が各々0.85,0.65と異なる。開口制限素子としては図12(a)に示すような選択的な環状遮光フィルタとして機能する液晶素子を用いればよい。すなわち、環状のパターンを持った液晶シャッタ106aからなり、対物レンズに入射する光束の外周部を透過あるいは遮光するものである。図12(b),(c)に示すように、電圧を印加しないとき、すなわち、液晶オフ状態のときは全面透過し、そして、電圧を印加したとき、すなわち、液晶オン状態のとき部分的に透過する素子を用いればよい。
次に、図13(a),(b)に示す、対物レンズ109および収差補正回折光学素子107、そしてエキスパンダ光学系104の形状に関して、以下に具体的な数値事例を挙げて説明する。
ここで、レンズ面の非球面形状は、光軸方向の座標:X、光軸直交方向の座標:Y、近軸曲率半径:R、円錐定数:K、高次の係数:A,B,C,D,E,F,…を用いて、周知の非球面式を(数6)
Figure 0004547292
で表される。
また、回折光学素子の位相関数φ(r)は、回折次数をm、波長をλ、光軸からの半径をr、係数C1〜C5を用いて、(数7)
Figure 0004547292
で表される。
本実施の形態1における光学系の構成について図13(a),(b)、図14を用いて説明する。ここで、対物レンズ109は、使用波長405nm、NA0.85、f:1.765mm、nd:1.694、νd:53.2であり、図14中の記号は、以下のとおりである。「OBJ」は物点(光源としての半導体レーザ)を意味するが、エキスパンダ光学系104への入射ビームは「無限系」であり、曲率半径:RDYおよび厚さ:THIの「INFINITY (無限大)」は光源が無限遠にあることを意味する。なお、特に断らない限り、長さの次元を持つ量の単位は「mm」である。「S1」〜「S4」はエキスパンダ光学系104の各レンズ面を表し、「S1」はエキスパンダ光学系104のレンズ104aにおける光源側面、「S2」は対物レンズ109側面を意味する。
また、「S1」の厚さ2.00mmがレンズ104aの肉厚を意味する。「S2」の厚さはエキスパンダ光学系104の各レンズ間の距離を表す。球面収差補正時はこの間隔が中立位置から変化させる。「S5」は収差補正回折光学素子107の光源側面、「S6」は光記録媒体側面を意味する。「S7」は光ピックアップ用の対物レンズ109の光源側面、「S8」は光記録媒体側面を意味する。なお、レンズ140bの「S4」はエキスパンダ光学系104の4つのレンズ面のうち、曲率半径が最も大きいレンズ面あるいは平面であり、光束を3ビームに分割する回折格子が形成されている。
この例における対物レンズ109の肉厚は2.38mmであり、「S8」の欄の曲率半径の右側に記載された厚さ0.43mmは「ワーキングディスタンス:WD」を示す。「S9」は光記録媒体110の光照射側基板の光源側面、「S10」は同記録面に合致した面であり、これらの面「S9」,「S10」の間隔、すなわち、基板厚は光記録媒体(BD)110aについては0.1mm、光記録媒体(HD)110bについては0.6mmで、nd:1.516310、νd:64.1である。「WL:波長」は使用波長(405nm)を表す。
得られた対物レンズ109と収差補正回折光学素子107とエキスパンダ光学系104を組合せた光学系の軸上波面収差は、光記録媒体(BD)に記録再生する系(0次回折光)については0.0027λrms、光記録媒体(HD)に記録再生する系(1次回折光)については0.0007λrmsであり、マレシャル限界0.07λrms以下に抑えられている。
なお、収差補正回折光学素子107は、対物レンズ109と一体化してもよい。図15(a),(b)に示すように非球面の対物レンズ109の光源側の入射面上に回折光学素子を形成し、回折光学素子および対物レンズ109の出射面はいずれも非球面形状とした。よって、第1面(S2)および第2面(S3)は一体集光レンズとした回折光学素子面および出射面である。自動設計して製造された各非球面レンズのデータは図16に示すとおりである。
これにより得られた対物レンズと回折光学素子を組合せた系の軸上の波面収差は光記録媒体(BD)について0.0049λrms、光記録媒体(HD)について0.0005λrmsであり、マレシャル限界0.07λrms以下に抑えられている。
3ビームの位置補正を行うためのエキスパンダ光学系104のレンズ104bの回動としては、予めメモリされた値から微調整してもよい。例えば、メモリからの情報に基づいた調整として粗調整を行い、続いてTE信号の振幅が最大、あるいは受光素子112で検出されるサブスポットs1,s2のプッシュプル信号とメインスポットm1のプッシュプル信号の位相が180度ずれた回動角を求めて、その位置に微調整して固定するものであってもよい。
なお、エキスパンダ光学系104の可動方法として、レンズ104aを光軸方向に、レンズ104bを光軸直交面内の光記録媒体半径方向に移動させる場合について説明したが、レンズ104a、レンズ104bの一方のみを可動するようにしてもよい。その場合は、可動するレンズを光軸方向および光軸直交面内の光記録媒体半径方向の2軸に可動するアクチュエータに搭載すればよい。
また、本実施の形態1では、エキスパンダ光学系104は、光源側に正の屈折力のレンズを使用し、光記録媒体側に負の屈折力のレンズを使用することで収差補正を行ったが、光学系の構成によっては、逆でもよい。具体的には光ピックアップ全体として小型化が可能な方を選べばよい。
さらに、エキスパンダ光学系104が、球面収差の補正とコリメートレンズとしての役割とを兼ね備えてもよい。この場合には、部品点数を削減することができ、光ピックアップの製造の手間やコストを削減することができる。
また、本実施の形態1では、対物レンズ109として、単玉レンズを使用しているが、貼り合せレンズなど用いてもよい。あるいは3群以上のレンズから構成されたものを使用してもよい。
そして、本実施の形態1では、光源の波長が405nmの光学系を例示したが、使用波長はこれに限定されるものではなく、その他の波長においてもその効果は変わらない。
なお、実際の光学系では、光記録媒体の基板厚み誤差以外の製造誤差も含まれているのでRF信号の振幅あるいはTE信号などを監視しつつ、最適な条件となるように、収差補正光学系の最適状態を光ピックアップ組付段階に記憶しておいてもよい。
次に、本発明の実施の形態2について説明する。前述した実施の形態1との違いは、エキスパンダ光学系が、2つの記録媒体互換時に発生する球面収差も合わせて補正するように構成したものである。すなわち、図1における収差補正回折光学素子107をなくすことが可能となる。
図17は本発明の実施の形態2における光ピックアップの概略構成を示す図である。図17に示すように、光ピックアップの要部は、波長405nmの半導体レーザ101、コリメートレンズ102、偏光ビームスプリッタ103、エキスパンダ光学系104’、偏向プリズム105、液晶開口制限素子106、1/4波長板108、対物レンズ109、検出レンズ111、受光素子112より構成されている。
まず、図17に示す光ピックアップにおいて、「使用波長405nm、NA0.85、光照射側基板厚0.1mmの青色系光記録媒体」の光記録媒体(BD)を記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103、エキスパンダ光学系104’にて所定の収斂ビームに変換され、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、液晶開口制限素子106を不感帯透過し、1/4波長板108を通過し円偏光とされ、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(BD)110a上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の記録、再生あるいは消去が行われる。光記録媒体(BD)110aから反射した光束は、往路とは反対回りの円偏光となり、再び略平行光とされ、1/4波長板108を通過して往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
次に、「使用波長405nm、NA0.65、光照射側基板厚0.6mmの青色系光記録媒体」の光記録媒体(HD)を記録または再生する場合について説明する。波長405nmの半導体レーザ101から出射した直線偏光の発散光は、コリメートレンズ102で略平行光とされ、偏光ビームスプリッタ103、エキスパンダ光学系104’を無限系透過し、偏向プリズム105で光路を90度偏向され、液晶開口制限素子106でNA0.65に制限され、対物レンズ109に入射し、光記録媒体(HD)110b上に微小スポットとして集光される。このスポットにより、情報の記録、再生あるいは消去が行われる。光記録媒体(HD)110bから反射した光束は、往路とは反対回りの円偏光となり、再び略平行光とされ、1/4波長板108を通過して往路と直交した直線偏光になり、偏光ビームスプリッタ103で反射され、検出レンズ111で収束光とされ、受光素子112に至る。受光素子112からは、情報信号,サーボ信号が検出される。
図18は、一般的な対物レンズの基板厚みと発散度の関係を示したグラフである。横軸は基板厚み、縦軸は対物レンズに入射する光束の発散度の関数で使用状態における対物レンズの倍率である。対物レンズより基板側へ出射する光束は常に収斂光であるので、対物レンズに収斂光が入射するときの符号を「+」,発散光が入射するときの符号は「−」とする。また、この倍率が「0」のときは、対物レンズへは平行光が入射する。図18中の曲線は各基板厚に対し、波面収差を最小とする倍率を結んだものであり、例えば基板厚Xで平行光入射が最良の場合、基板厚が厚くなるほど「−」すなわち発散光、薄くなるほど「+」すなわち収斂光を入射させてやると収差が小さくなるということが一般に知られる。
本実施の形態2においては、図19(a),(b)に示すように光記録媒体(BD)110aおよび光記録媒体(HD)110b共に収斂光入射で収差最良となる対物レンズ109の形状が得られる。光記録媒体(BD)110aの場合は、基板厚が薄くなった分で生じるオーバーの球面収差を、収斂光によるアンダーの収差で打ち消しており、光記録媒体(HD)110bの場合は、光記録媒体(BD)110aに比べて収斂度が小さい倍率を与えている。
また、エキスパンダ光学系104’は、実施の形態1と同様に、3ビームの回転調整と、光記録媒体(BD)110aの基板厚誤差に伴う球面収差、光記録媒体(HD)110bのチルトに伴うコマ収差を補正する手段であり、これらの補正動作は、実施の形態1と同様である。
前述の実施の形態1では光記録媒体(BD)110a,光記録媒体(HD)110bのいずれの場合も中立点においては、エキスパンダ光学系104からの光束は平行光が出射されたが、本実施の形態2ではエキスパンダ光学系104’からの光束は光記録媒体(BD)110a,光記録媒体(HD)110bいずれも収斂系であり、光記録媒体(HD)110bの場合は光記録媒体(BD)110aに比べて収斂度が小さい状態となっている。
すなわち、光記録媒体の判別に応じて、収斂度合いがコントロールされる構成である。光記録媒体(BD)110aと判別された場合は収斂系となるようにレンズ104a’とレンズ104b’が光軸中心に間隔が調整され、その後に基板厚誤差による球面収差補正が開始される。また光記録媒体(HD)110bと判別されれば、光記録媒体(BD)110aよりは小さめの収斂度合いにセットされるようにレンズ104a’とレンズ104b’が光軸中心との間隔を調整され、その後に光記録媒体のチルトによるコマ収差補正が開始される。
また、図19(a),(b)に示す具体的な構成の対物レンズ109およびエキスパンダ光学系104’の数値事例を図20に示す。
図21は本発明の実施の形態3における多層の光記録媒体の例を示す模式図であり、多層光記録媒体110eの情報記録面として、厚み方向に情報記録面がp層(p≧2)形成され、対物レンズに近い手前側の(p−q)層はトラックピッチの狭く記録密度の高い情報記録層11で、対物レンズより遠い奥側のq層はトラックピッチが広く記録密度の低い情報記録層14からなる光記録媒体であってもよい。その場合、光ピックアップとしては、情報記録密度の高い(p−q)層には第1のNAの光束を集光させ、奥側のq層は、第1のNAより小さい開口数の第2のNAの光束を集光させればよい。
前述した実施の形態1と同様に高NAの手前側(p−q)層に対しては球面収差を補正し、低NA、基板厚の大きい奥側のq層ではコマ収差を補正する必要があり、実施の形態1,2で説明した収差補正光学系およびその制御手段を用いて、これを補正することが可能である。
さらに、多層の光記録媒体としては、例えば図22に示すように、実施の形態1の光記録媒体(BD)および光記録媒体(HD)に相当する2つのフォーマットを兼ね備えた多層光記録媒体110fであってもよい。すなわち、図22において、情報記録層11aは「最適NA0.85、光照射側基板厚0.1mm」の層であり、情報記録層14aは「NA0.65、光照射側基板厚0.6mm」の層である。
このような多層光記録媒体110fの場合、情報記録層11a,14aに応じて3ビームを回転調整し、情報記録層11aに対してはコマ収差補正機構を中立点に保持し、球面収差補正機構を最良位置に補正し、情報記録層14aに対しては球面収差補正機構を中立点に保持し、コマ収差補正機構を最良位置に補正するようにすればよい。
図23は本発明の実施の形態4における光情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。前述した各実施の形態における光記録媒体に対して、情報信号の記録および/または再生を行う装置であり、前述した光ピックアップに相当する光ピックアップ51を備えて構成されている。そして光記録媒体110を回転駆動するスピンドルモータ58と、情報信号の記録,再生を行うに当たって使用する光ピックアップ51を光記録媒体110の内外周に移動操作するための送りモータ52と、所定の変調および復調処理を行う変復調回路54と、光ピックアップ51のサーボ制御などを行うサーボ制御回路53と、光情報処理装置の全体の制御を行うシステムコントローラ56とを備えている。
図23に示すスピンドルモータ58は、サーボ制御回路53により駆動制御され、所定の回転数で回転駆動される。すなわち、記録,再生の対象となる光記録媒体110は、スピンドルモータ58の駆動軸上にチャッキングされ、サーボ制御回路53により駆動制御される。このスピンドルモータ58によって、光記録媒体110は所定の回転数で回転駆動される。
光ピックアップ51は、光記録媒体110に対する情報信号の記録および再生を行うとき、前述したように、回転駆動される光記録媒体110に対してレーザ光を照射し、その戻り光束を検出する。この光ピックアップ51は、変復調回路54に接続されている。そして、情報信号の記録を行う際には、外部回路55から入力され変復調回路54によって所定の変調処理が施された信号が光ピックアップ51に供給される。光ピックアップ51は、変復調回路54から供給される信号に基づいて、光記録媒体110に対して、光強度変調が施されたレーザ光を照射する。また、情報信号の再生を行う際には、光ピックアップ51は、回転駆動される光記録媒体110に対して、一定の出力のレーザ光を照射し、その戻り光から再生信号が生成され、この再生信号が変復調回路54に供給される。
また、この光ピックアップ51は、サーボ制御回路53にも接続されている。そして、情報信号の記録,再生時に、回転駆動される光記録媒体110によって反射されて戻ってきた戻り光束から、前述したように、フォーカスサーボ信号およびトラッキングサーボ信号が生成され、それらのサーボ信号がサーボ制御回路53に供給される。
変復調回路54は、システムコントローラ56および外部回路55に接続されている。この変復調回路54は、情報信号を光記録媒体110に記録するときに、システムコントローラ56による制御のもとで、光記録媒体110に記録する信号を外部回路55から受け取り、この信号に対して所定の変調処理を施す。変復調回路54によって変調された信号は、光ピックアップ51に供給される。
また、この変復調回路54は、情報信号を光記録媒体110から再生するときに、システムコントローラ56による制御のもとで、光記録媒体110から再生された再生信号を光ピックアップ51から受け取り、この再生信号に対して所定の復調処理を施す。そして、変復調回路54によって復調された信号は、変復調回路54から外部回路55へ出力される。
送りモータ52は、情報信号の記録および再生を行うとき、光ピックアップ51を光記録媒体110の径方向で所定の位置に移動させるためのものであり、サーボ制御回路53からの制御信号に基づいて駆動される。すなわち、この送りモータ52は、サーボ制御回路53に接続されており、サーボ制御回路53により制御される。
サーボ制御回路53は、システムコントローラ56による制御のもとで、光ピックアップ51が光記録媒体110に対向する所定の位置に移動されるように、送りモータ52を制御する。また、サーボ制御回路53は、スピンドルモータ58にも接続しており、システムコントローラ56による制御のもとで、スピンドルモータ58の動作を制御する。すなわち、サーボ制御回路53は、光記録媒体110に対する情報信号の記録および再生時に、この光記録媒体110が所定の回転数で回転駆動されるように、スピンドルモータ58を制御する。
さらに、サーボ制御回路53は、光ピックアップ51にも接続されており、情報信号の記録および再生時には、光ピックアップ51から再生信号およびサーボ信号を受け取り、このサーボ信号に基づいて、光ピックアップ51に搭載された2軸アクチュエータ(図示せず)によるフォーカスサーボおよびトラッキングサーボの制御を行い、さらに、エキスパンダ光学系の各1軸アクチュエータを制御して、エキスパンダ光学系の各レンズ群の間隔等を調整して収差の補正を行う。
これにより、複数種類や多層の光記録媒体に対して、1つの光ピックアップにより情報の記録、再生あるいは消去できる小型化した光情報処理を得ることができる。
本発明に係る光ピックアップおよび光情報処理装置は、光記録媒体トラックピッチの違いに伴うトラックエラー検出用のサブスポット位置の最適化、光記録媒体の基板厚誤差に伴い発生する球面収差と、チルトによって発生するコマ収差のそれぞれを1つのエキスパンダ光学系により補正でき、複数種類または多層の光記録媒体に対して、情報の記録、再生または消去の少なくともいずれか1以上を行う光ピックアップおよび光情報処理装置に有用である。
本発明の実施の形態1における光ピックアップの概略構成を示す図 本実施の形態1における光ピックアップのエキスパンダ光学系の制御部分を示す図 本実施の形態1におけるエキスパンダ光学系の調整処理を示すフローチャート 本実施の形態1における3ビームの(a)は光記録媒体(BD)、(b)は光記録媒体(HD)のオントラックしたスポット位置を示す図 本実施の形態1におけるエキスパンダ光学系のレンズを回動する回動部を示す斜視図 本実施の形態1における基板厚誤差に伴い発生する球面収差の補正処理を示すフローチャート 本実施の形態1における光記録媒体(BD)の(a)はエキスパンダ光学系あり、(b)はエキスパンダ光学系なしの基板厚誤差特性を示す図 本実施の形態1における光記録媒体(HD)の(a)はエキスパンダ光学系あり、(b)はエキスパンダ光学系なしのチルト特性を示す図 本実施の形態1における(a)は収差補正回折光学素子の正面図、(b)は鋸歯形状の輪帯断面図、(c)は階段形状の輪帯断面図 本実施の形態1における収差補正回折光学素子と対物レンズの(a)は0次回折光、(b)は1次回折光の集光状態を示す図 本実施の形態1における具体的な回折効率計算例を示す図 本実施の形態1における(a)は液晶開口制限素子の正面図、(b)は液晶オフ状態の断面図、(c)は液晶オン状態の断面図 本実施の形態1における対物レンズ、収差補正回折光学素子、エキスパンダ光学系の(a)は光記録媒体(BD)、(b)は光記録媒体(HD)の集光状態を示す図 本実施の形態1における対物レンズ、収差補正回折光学素子、エキスパンダ光学系の具体的な数値事例を示す図 本実施の形態1における対物レンズの光源入射面に回折光学素子を形成した(a)は光記録媒体(BD)、(b)は光記録媒体(HD)の集光状態を示す図 本実施の形態1における対物レンズのレンズデータを示す図 本発明の実施の形態2における光ピックアップの概略構成を示す図 本実施の形態2における対物レンズの基板厚みと発散度の関係を示す図 本実施の形態2における対物レンズ、エキスパンダ光学系の(a)は光記録媒体(BD)、(b)は光記録媒体(HD)の集光状態を示す図 本実施の形態2における対物レンズ、エキスパンダ光学系の具体的な数値事例を示す図 本発明の実施の形態3における多層の光記録媒体の例を示す模式図 本実施の形態3における多層の光記録媒体の別の例を示す模式図 本発明の実施の形態4における光情報処理装置の概略構成を示すブロック図 従来のDPP法を説明する図 従来の(a)は光記録媒体(BD)、(b)は光記録媒体(HD)のエキスパンダ光学系なしの基板厚誤差特性を示す図 従来の(a)は光記録媒体(BD)、(b)は光記録媒体(HD)のエキスパンダ光学系なしのチルト特性を示す図
符号の説明
11,11a,12,13,14,14a 情報記録層
21a,21b ピエゾ素子
22a,22b ロッド
23 PSD
24 LED
25 固定枠
26 玉枠
31 SA補正ドライバ
32 チルト補正ドライバ
33 3ビーム補正ドライバ
34 CPU
35 RF信号生成部
36 TE信号生成部
37 ピークホールド回路
51 光ピックアップ
52 送りモータ
53 サーボ制御回路
54 変復調回路
55 外部回路
56 システムコントローラ
58 スピンドルモータ
101 半導体レーザ
102 コリメートレンズ
103 偏光ビームスプリッタ
104,104’ エキスパンダ光学系
104a,104b,104a’,104b’ レンズ
105 偏向プリズム
106 液晶開口制限素子
106a 液晶シャッタ
107 収差補正回折光学素子
108 1/4波長板
109 対物レンズ
110 光記録媒体
110a 光記録媒体(BD)
110b 光記録媒体(HD)
110e,110f 多層光記録媒体
111 検出レンズ
112 受光素子
114,114a,114b アクチュエータ

Claims (8)

  1. 波長λ1,基板厚t1,使用開口数NA1の第1の光記録媒体と、波長λ1、基板厚t2(>t1)、使用開口数NA2(<NA1)の第2の光記録媒体に対して情報の記録を行う光ピックアップ、再生を行う光ピックアップ、記録および再生を行う光ピックアップのいずれか1つの光ピックアップにおいて、
    光源と、前記光源からの光束を光記録媒体に集光するための対物レンズと、屈折力が正負異なる2枚のレンズから構成され、前記レンズのいずれか1面に前記光束を3ビームに分割する回折格子が形成されたエキスパンダ光学系と、前記第1,第2の光記録媒体いずれかを判別した判別信号に基づいて、前記エキスパンダ光学系の各レンズを駆動する駆動手段とを備え、
    前記エキスパンダ光学系の駆動手段は、光束を3ビームに分割する回折格子を形成したレンズを光軸中心に回動させる第1の駆動手段と、前記エキスパンダ光学系の少なくとも一方のレンズを光軸方向に移動させる第2の駆動手段と、前記エキスパンダ光学系の少なくとも一方のレンズを光軸直交面内の光記録媒体半径方向に可動させる第3の駆動手段とからなり、
    前記第1の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、光記録媒体に3ビームがオントラックとなる状態の第1中立点を記憶し、前記第2の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、収差最良または情報信号最良となる状態の第2中立点を記憶し、前記第3の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、収差最良または情報信号最良となる状態の第3中立点を記憶し、前記第1,第2の光記録媒体のいずれかのセット時に前記第1〜第3中立点にレンズを初期移動し、
    前記エキスパンダ光学系は、前記第2の光記録媒体を認識した場合は、前記第1の光記録媒体と比べて収斂光によるオーバーの球面収差を発生させ、また、前記第1,第2の光記録媒体のいずれかを判別した前記判別信号に基づいて前記第1の光記録媒体を認識した場合に、前記第1の光記録媒体における球面収差劣化相当量を検知し、前記第2の駆動手段を用いて球面収差補正を行い、前記第1,第2の光記録媒体のいずれかを判別した前記判別信号に基づいて前記第2の光記録媒体を認識した場合に、前記3ビームが前記第2の光記録媒体に対してオントラックとなるように前記第1の駆動手段を用いて前記レンズを回転させ、前記第2の光記録媒体におけるコマ収差劣化相当量を検知し、前記第3の駆動手段を用いてコマ収差補正を行うことを特徴とする光ピックアップ。
  2. 厚み方向に情報記録面がp層(p≧2)形成され、対物レンズに近い手前側の(pq)層はトラックピッチの狭い情報記録層、前記対物レンズより遠い奥側のq層はトラックピッチの広い情報記録層からなる光記録媒体に対して情報の記録を行う光ピックアップ、再生を行う光ピックアップ、記録および再生を行う光ピックアップのいずれか1つの光ピックアップにおいて、
    光源と、前記光源からの光束を光記録媒体に集光するための対物レンズと、屈折力が正負異なる2枚のレンズから構成され、前記レンズのいずれか1面に前記光束を3ビームに分割する回折格子が形成されたエキスパンダ光学系と、前記(pq)層〜q層のいずれか1層を選択する選択信号に基づいて、前記エキスパンダ光学系の各レンズを駆動する駆動手段とを備え、
    前記エキスパンダ光学系の駆動手段は、光束を3ビームに分割する回折格子を形成したレンズを光軸中心に回動させる第1の駆動手段と、前記エキスパンダ光学系の少なくとも一方のレンズを光軸方向に移動させる第2の駆動手段と、前記エキスパンダ光学系の少なくとも一方のレンズを光軸直交面内の光記録媒体半径方向に可動させる第3の駆動手段とからなり、
    前記第1の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、光記録媒体に3ビームがオントラックとなる状態の第1中立点を記憶し、前記第2の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、収差最良または情報信号最良となる状態の第2中立点を記憶し、前記第3の駆動手段は、光ピックアップの組付工程において、収差最良または情報信号最良となる状態の第3中立点を記憶し、前記光記録媒体のセット時に前記第1〜第3中立点にレンズを初期移動し、
    前記エキスパンダ光学系は、光記録媒体の前記対物レンズに近い手前側の(pq)層の選択時には収斂光によるアンダーの球面収差を発生させ、前記対物レンズより遠い奥側のq層の選択時には前記(pq)層に比べて収斂光によるオーバーの球面収差を発生させ、また、前記(p−q)層〜q層のいずれか1層を選択する前記選択信号に基づいて前記光記録媒体の対物レンズに近い手前側の(p−q)層を選択した場合に球面収差劣化相当量を検知し、前記第2の駆動手段を用いて球面収差補正を行い、前記情報記録層の前記トラックピッチの広狭に応じて、前記3ビームが前記光記録媒体に対してオントラックとなるように前記第1の駆動手段を用いてレンズを回転させ、対物レンズより遠い奥側のq層を選択した場合にコマ収差劣化相当量を検知し、前記第3の駆動手段を用いてコマ収差補正を行うことを特徴とする光ピックアップ。
  3. 前記エキスパンダ光学系の光束を3ビームに分割する回折格子を形成するレンズ面が、前記エキスパンダ光学系の4つのレンズ面のうち、曲率半径が最も大きいレンズ面であることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ。
  4. 前記エキスパンダ光学系の光束を3ビームに分割する回折格子を形成するレンズ面が、平面であることを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ。
  5. 前記対物レンズが、第1の光記録媒体に対して収差最良となるレンズであって、前記対物レンズとエキスパンダ光学系の間に、回折素子または位相シフタ素子を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の光ピックアップ。
  6. 前記回折素子または位相シフタ素子が、光記録媒体に応じて、異なる回折次数の光束を選択的に用いることを特徴とする請求項記載の光ピックアップ。
  7. 前記回折素子または位相シフタ素子を、対物レンズと一体成形し、かつ素子面を前記対物レンズの光源側表面に形成したことを特徴とする請求項記載の光ピックアップ。
  8. 光記録媒体に情報の記録を行う光情報処理装置、再生を行う光情報処理装置、記録および再生を行う光情報処理装置のいずれか1つの光情報処理装置において、請求項1〜7のいずれか1項に記載の光ピックアップを備えたことを特徴とする光情報処理装置
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