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JP4547104B2 - セルロースアシレートフイルムおよびその製造方法 - Google Patents

セルロースアシレートフイルムおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアシレートフイルムおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフイルムは、その強靭性と難燃性から各種の写真材料や光学材料に用いられている。セルロースアシレートフイルムは、代表的な写真感光材料の支持体である。また、セルロースアシレートフイルムは、その光学的等方性から、近年市場の拡大している液晶表示装置にも用いられている。液晶表示装置における具体的な用途としては、偏光板の保護フイルムおよびカラーフィルターが代表的である。
【0003】
セルロースアシレートフイルムは、一般にソルベントキャスト法またはメルトキャスト法により製造する。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートを溶媒中に溶解した溶液(ドープ)を金属支持体上に流延し、溶媒を蒸発させてフイルムを形成する。メルトキャスト法では、セルロースアシレートを加熱により溶融したものを金属支持体上に流延し、冷却してフイルムを形成する。ソルベントキャスト法の方が、メルトキャスト法よりも平面性の高い良好なフイルムを製造することができる。このため、実用的には、ソルベントキャスト法の方が普通に採用されている。ソルベントキャスト法については、多くの文献に記載がある。最近のソルベントキャスト法では、ドープを金属支持体上へ流延してから、金属支持体上の成形フイルムを剥離するまでに要する時間を短縮して、製膜工程の生産性を向上させることが課題になっている。例えば、特公平5−17844号公報には、高濃度ドープを冷却ドラム上に流延することにより、流延後、剥ぎ取りまでの時間を短縮することが提案されている。
【0004】
ソルベントキャスト法に用いる溶媒は、単にセルロースアシレートを溶解することだけでなく、様々な条件が要求される。平面性に優れ、厚みの均一なフイルムを、経済的に効率よく製造するためには、適度な粘度とポリマー濃度を有する保存安定性に優れた溶液(ドープ)を調製する必要がある。ドープについては、ゲル化が容易であることや金属支持体からの剥離が容易であることも要求される。そのようなドープを調製するためは、溶媒の種類の選択が極めて重要である。
溶媒については、蒸発が容易で、フイルム中の残留量が少ないことも要求される。セルロースアシレートの溶媒として、様々な有機溶媒が提案されているが、実用化されている有機溶媒は、実質的にはメチレンクロリドに限られていた。
【0005】
しかしながら、メチレンクロリドのような塩素系溶剤は、近年、地球環境保護の観点から、その使用は著しく規制される方向にある。また、メチレンクロリドは、低沸点(41℃)であるため、製造工程において揮散しやすい。このため、作業環境においても問題である。これらの問題を防止するため、製造工程のクローズド化が行なわれているが、密閉するにしても技術的な限界がある。従って、メチレンクロリドの代替となるような、セルロースアシレートの溶媒を捜し求めることが急務となっている。
【0006】
ところで、汎用の有機溶剤であるアセトン(沸点:56℃)は、比較的低い沸点を有し、乾燥負荷がそれほど大きくない。また、人体や地球環境に対しても、塩素系有機溶剤に比べて問題が少ない。しかし、アセトンは、セルロースアシレートに対する溶解性が低い。置換度2.70(酢化度58.8%)以下のセルロースアセテートに対しては、アセトンは若干の溶解性を示す。セルロースアシレートの置換度が2.70を越えると、アセトンの溶解性がさらに低下する。置換度2.80(酢化度60.1%)以上のセルロースアシレートとなると、アセトンは膨潤作用を示すのみで溶解性を示さない。
【0007】
J.M.G.Cowie他の論文(Makromol,chem.,143巻、105頁(1971年))において、置換度2.80から置換度2.90のセルロースアシレートを、アセトン中で−80℃から−70℃に冷却した後、加温することにより、アセトン中にセルロースアシレートが0.5乃至5質量%に溶解している希薄溶液が得られたことを報告している(ただし、ここでのアシル基はアセチル基に限定されている)。以下、このように、セルロースアシレートと有機溶媒との混合物を冷却して、溶液を得る方法を「冷却溶解法」と称する。また、セルロースアシレートのアセトン中への溶解については、上出健二他の論文「三酢酸セルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」、繊維機械学会誌、34巻、57頁(1981年)にも記載がある。この論文は、その標題のように、冷却溶解法を紡糸方法の技術分野に適用したものである。論文では、得られる繊維の力学的性質、染色性や繊維の断面形状に留意しながら、冷却溶解法を検討している。この論文では、繊維の紡糸のために10乃至25質量%の濃度を有するセルロースアセテートの溶液を用いている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
セルロースアシレートフイルムは、前記のセルロースアシレート溶液(ドープ)を金属支持体上に流延し、金属支持体からフイルムを剥離する流延法により製造されている。しかしながらこのように非塩素系溶剤によってセルロースアシレートフイルムを作製する場合、製造面で不利であることが明らかとなった。すなわち、現在使われている塩素系溶剤のメチレンクロリドとは異なり、セルロースアシレートの溶解が可能な非塩素系溶剤では、ドープが構造粘性を示すことが明らかとなった。ドープが構造粘性をとると乾燥時に表面の平滑化が起こりにくくなり、その面状が悪化する。したがって、良好な面状を得るための方策が必要であった。
本発明者の検討の結果、良好な面状を得るための方策としてセルロースアシレートの6位酢化度を特異的に高めてセルロースアシレート溶液の粘度を低下させることが有効であることがわかった。但し、6位酢化度を高めたセルロースアシレートのフイルムは疎水性が高いために、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性の層との密着に劣り、その対策が必要であった。
【0009】
本発明の目的は、メチレンクロリドのような塩素系有機溶剤を使用せずに、面状の優れたセルロースアシレートフイルムを得ることである。
本発明の目的は、メチレンクロリドのような塩素系有機溶剤を使用せずに、親水性層との密着に優れたセルロースアシレートフイルムを得ることでもある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記(1)〜(7)のセルロースアシレートフイルムおよび下記(8)〜(16)のセルロースアシレートフイルムの製造方法を提供する。
(1)共流延により二以上の層を有するセルロースアシレートフイルムであって、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートから一つの層が形成され、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートから他の一つの層が形成されているセルロースアシレートフイルム。
【0011】
(2)共流延により三以上の層を有し、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートから内部層が形成され、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートから外部層が形成されている(1)に記載のセルロースアシレートフイルム。
(3)2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートから形成される層が、1乃至50μmの範囲に厚さを有する(1)に記載のセルロースアシレートフイルム。
【0012】
(4)2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートから形成される層が、1乃至20μmの範囲に厚さを有する(3)に記載のセルロースアシレートフイルム。
(5)少なくとも一方の外部層が、1乃至50μmの範囲に厚さを有する(2)に記載のセルロースアシレートフイルム。
(6)シリカ粒子、可塑剤または紫外線吸収剤を含む(1)に記戟のセルロースアシレートフイルム。
(7)偏光板保護膜用である(1)に記載のセルロースアシレートフイルム。
【0013】
(8)2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートの溶液と、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートの溶液とを共流延することを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法。
(9)2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートの溶液が内部に、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートの溶液が外部となるように共流延する(8)に記載の製造方法。
【0014】
(10)同時に共流延する(8)に記載の製造方法。
(11)セルロースアシレート溶液が、溶媒として実質的に非塩素系の溶剤からなる(8)に記載の製造方法。
(12)実質的に非塩素系の溶剤が、溶解度パラメータが19乃至21のケトンと溶解度パラメータが19乃至21のエステルとを含む(11)に記載の製造方法。
【0015】
(13)実質的に非塩素系の溶剤が、2乃至30質量%のアルコールを含み、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートの溶液に含まれるアルコール含有率の方が、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートの溶液のアルコール含有率よりも多い(11)に記載の製造方法。
(14)実質的に非塩素系の溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンからなる群より選ばれるケトン、酢酸メチルおよび炭素原子数が6以下のアルコールを含む(11)に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
【0016】
(15)2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートの溶液のセルロースアシレート濃度の方が、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートの溶液のセルロースアシレート濃度よりも低い(8)に記載の製造方法。
(16)実質的に非塩素系の溶剤とセルロースアシレートとの混合物を、−80乃至−10℃の低温または80乃至220℃の高温で処理して、セルロースアシレートを溶解する温度に曝して、セルロースアシレートの溶液を調製する(11)に記載の製造方法。
【0017】
【発明の実施の形態】
セルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンターや木材パルプがある。原料セルロースを混合して使用してもよい。セルロースアシレートは、アセチル基または炭素原子数が3乃至22のアシル基を有するセルロースアシレートであることが好ましい。炭素原子数3乃至22のアシル基の例には、プロピオニル(C2 5 CO−)、n−ブチリル(C3 7 CO−)、イソブチリル、バレリル(C4 9 CO−)、イソバレリル、sec−バレリル、tert−バレリル、オクタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイルおよびオレオロイルが含まれる。プロピオニルおよびブチリルが好ましい。
セルロースアシレートとしては、セルロースアセテートが好ましく、セルローストリアセテートが特に好ましい。
アシル基のアシル化剤が酸無水物や酸クロライドである場合、反応溶媒としての有機溶媒は、有機酸(例、酢酸)やメチレンクロライドが使用される。セルロースアシレートは、セルロースの水酸基の置換度が2.6〜3.0であることが好ましい。セルロースアシレートの重合度(粘度平均)は、200〜700であることが好ましく、250〜550であることが特に好ましい。これらのセルロースアシレートは、ダイセル化学工業(株)、コートルズ社、ヘキスト社、イーストマンコダック社により市販されてりう。写真用グレードのセルロースアシレートが好ましい。セルロースアシレートの含水率は、2質量%以下であることが好ましい。
【0018】
ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフイルムを製造することが好ましい。ソルベントキャスト法では、セルロースアシレートドープを用いてフイルムを製造する。用いられる有機溶媒は、ケトンとエステルとを混合した混合溶媒が好ましい。ケトンとエステルとの溶解度パラメータは、19乃至21であることが好ましい。エステルおよびケトンは、環状構造を有していてもよい。エステルはエステル結合以外の、ケトンはカルボニル基以外の官能基を有していてもよい。
【0019】
エステルの例には、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチルが挙げられる。酢酸メチルが特に好ましい。
ケトンの例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが挙げられる。アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンが特に好ましい。
【0020】
上記の溶解度パラメータは、液体のモル蒸発熱をΔH、モル体積をVとするとき(ΔH/V)1/2 で定義される量である。溶解度は両者の溶解度パラメータの差が小さいほど大きくなる。
溶解度パラメータについては、例えば、J.Brandrup,E.HらのPolymer Handbook(fourth edition), VII/671〜 VII/714に詳細に記載されている。
ケトンの溶解度パラメータをかっこ内に示すと、アセトン(20.3)、メチルエチルケトン(19.0)、ジエチルケトン(18.2)、ジイソブチルケトン(18.0)、シクロペンタノン(20.9)、シクロヘキサノン(20.3)、メチルシクロヘキサノン(20.1)である。
エステルの溶解度パラメータを示すと、蟻酸エチル(19.2)、蟻酸プロピル(18.4)、蟻酸n−ペンチル(18.1)、酢酸メチル(19.6)、酢酸エチル(18.2)、酢酸n−ペンチル(17.6)である。
【0021】
地球環境や作業環境の観点では、有機溶媒は塩素系溶剤を実質的に含まないことが望ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶媒中の塩素系溶剤の割合が10質量%未満であり、好ましくは5質量%未満、より好ましくは3質量%未満であることを意味する。また、製造したセルロースアシレートフイルムから、メチレンクロリドのような塩素系溶剤が全く検出されないことが好ましい。
【0022】
また、アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、シクロヘキサノール、2−フルオロエタノール、および2,2,2−トリフルオロエタノールなどが挙げられる。このうち特に好ましいのはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、および1−ブタノールである。
【0023】
エステルは、全溶剤の40〜95質量%であることが好ましく、50〜80質量%であることがさらに好ましい。ケトンは、全溶剤の5〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%の範囲であることがさらに好ましい。ケトンおよびエステルの合計は、全溶媒の70質量%以上であることが好ましい。アルコールは全溶剤の2〜30質量%含まれることが好ましい。
【0024】
好ましい溶媒の組み合わせは、酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/エタノール(60/15/15/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール(75/15/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/1−ブタノール(70/20/5/5、質量部)、ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)である。特に酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール(75/15/5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/エタノール(80/10/5/5、質量部)が好ましい。
【0025】
セルロースアシレート溶液を作製するには、室温下でタンク中の溶剤を撹拌しながら上記セルロースアシレートを添加することでまず溶剤への膨潤を行う。膨潤時間は最低10分以上が必要であり、10分以下では不溶解物が残存する。また、セルロースアシレートを十分膨潤させるためには溶剤の温度は0から40℃が好ましい。0℃以下では膨潤速度が低下し不溶解物が残存する傾向にある、40℃以上では膨潤が急激に起こるために中心部分が十分膨潤しない。
膨潤工程の後にセルロースアシレートを溶解するには、冷却溶解法、高温溶解法のいずれか、あるいは両方を用いることが好ましい。
【0026】
冷却溶解法は、まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で有機溶剤中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。複数の溶剤を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、溶剤中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶剤(例えばアルコールなどのゲル化溶剤など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶剤を予めセルロースアシレートに湿らせた後の溶剤を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアシレートの量は、この混合物中に10〜40質量%含まれるように調整することが好ましい。セルロースアシレートの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
次に、混合物は−100〜−10℃、より好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃に冷却される。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。冷却速度は、速いほど好ましく、100℃/秒以上が好ましい。また冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが望ましい。
冷却後0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶剤中にセルロースアシレートが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよいし、温浴中で加温してもよい。
また、耐圧性容器を用い冷却時に加圧し、加温時に減圧すると溶解時間を短縮することができる。
これらの冷却、加温の操作が1回でも良く、2回以上くりかえしても良い。
【0027】
高温溶解法は、室温近辺の温度(−10〜40℃)で有機溶剤中にセルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加する。複数の溶剤を用いる場合は、その添加順は特に限定されない。例えば、溶剤中にセルロースアシレートを添加した後に、他の溶剤(例えばアルコールなどのゲル化溶剤など)を添加してもよいし、逆にゲル化溶剤で予めセルロースアシレートに湿らせた後の溶剤を加えてもよく、不均一溶解の防止に有効である。セルロースアシレート溶液は、各種溶剤を含有する混合有機溶剤中にセルロースアシレートを添加し予め膨潤させることが好ましい。その場合、−10〜40℃でいずれかの溶剤中に、セルロースアシレートを撹拌しながら徐々に添加してもよいし、場合により特定の溶剤で予め膨潤させその後に他の併用溶剤を加えて混合し均一の膨潤液としてもよく、更には2種以上の溶剤で膨潤させしかる後に残りの溶剤をを加えても良い。
セルロースアシレートの溶解濃度は、5質量%〜30質量%であることが好ましく、15質量%〜30質量%であることがより好ましく、17質量%〜25質量%であることがさらに好ましい。
次にセルロースアシレートと溶剤の混合液は、耐圧容器内で0.2MPa〜30MPaの加圧下で70〜240℃、より好ましくは80〜220℃、更に好ましくは100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃に加熱される。
この後、使用した溶剤の最も低い沸点以下に冷却する。その場合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却は室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いてもよい。
これらの加熱、冷却の操作は1回でも良く、2回以上繰り返しても良い。
【0028】
ドープのセルロースアシレートは場合により、更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、しかる後に濃縮手段を用いて濃縮してもよい。セルロースアシレート溶液を調製する際に、容器内に窒素ガスなどの不活性ガスを充満させ、防爆対応することが好ましい。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製することが好ましく、30Pa・s〜400Pa・sに調製することが特に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜55℃である。セルロースアシレートの溶液中の濃度は5〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
セルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤を加えることができる。添加剤の例としては、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)が挙げられる。セルロースアシレート溶液には、可塑剤を添加することが好ましい。可塑剤の例としては、トリフェニルフォスフェート(TPP)、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート(TCP)、ジオクチルフタレート(DOP)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、光学的異方性を小さくする可塑剤として、特開平11−124445号公報に記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号公報に記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号公報に記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号公報に記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号公報に記載の置換フェニルリン酸エステル類などが挙げられる。これらの可塑剤のうちの一種類を用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。可塑剤の添加量はセルロースアシレートに対して5〜30質量%であることが好ましく、8〜16質量%であることが特に好ましい。
【0030】
劣化防止剤や紫外線防止剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、および特開2000−204173号の各公報に記載がある。劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく、具体例としては、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられ、中でもベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物を用いることが特に好ましい。これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して質量割合で1ppm〜1万ppmであることが好ましく、10〜1000ppmであることが更に好ましい。フイルムの面内のレターデーション(Re)は、0〜300nmの範囲にあることが好ましく、用途に応じて調整される。又、フイルムの厚さ方向のレターデーション(Rth)も重要であり、セルロースアシレートフイルムのRthは、100μm当たり、0nm〜600nmの範囲にあることが好ましく、0nm〜400nmの範囲にあることがより好ましく、0nm〜250nmの範囲にあることが特に好ましい。
【0031】
セルロースアシレートフイルムを形成するにあたり、セルロースアシレート溶液を流延する前に剥離剤を添加することができる。剥離剤としては、水溶液中での酸解離指数pKaが1.93〜4.50である少なくとも一種の酸、この酸のアルカリ金属塩および前記酸のアルカリ土類金属塩から選択されたものが好ましく用いられる。
【0032】
以下に、用いられる剥離剤の種類をそのpKaとともに示すが、使用可能な剥離剤はこれに限定されない。無機酸としては、例えば、HClO2 (2.31)、HOCN(3.48)、モリブデン酸(H2 MoO4 、3.62)、HNO2 (3.15)、リン酸(H3 PO4 、2.15)、トリポリリン酸(H5 3 10、2.0)、バナジン酸(H3 VO4 、3.78)などが例示できる。
【0033】
有機酸としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸[ギ酸(3.55)、オキサロ酢酸(2.27)、シアノ酢酸(2.47)、フェニル酢酸(4.10)、フェノキシ酢酸(2.99)、フルオロ酢酸(2.59)、クロロ酢酸(2.68)、ブロモ酢酸(2.72)、ヨード酢酸(2.98)、メルカプト酢酸(3.43)、ビニル酢酸(4.12)などの置換基を有する酢酸、クロロプロピオン酸(2.71−3.92)などのハロプロピオン酸、4−アミノ酪酸(4.03)、アクリル酸(4.26)など]、脂肪族多価カルボン酸[マロン酸(2.65)、コハク酸(4.00)、グルタル酸(4.13)、アジピン酸(4.26)、ピメリン酸(4.31)、アゼライン酸(4.39)、フマル酸(2.85)など]、オキシカルボン酸[グリコール酸(3.63)、乳酸(3.66)、リンゴ酸(3.24)、酒石酸(2.82−2.99)、クエン酸(2.87)など]、アルデヒド酸又はケトン酸[グリオキシル酸(3.18)、ピルビン酸(2.26)、レブリン酸(4.44)など]、芳香族モノカルボン酸[アニリンスルホン酸(3.74−3.23)、安息香酸(4.20)、アミノ安息香酸(2.02−3.12)、クロロ安息香酸(2.92−3.99)、シアノ安息香酸(3.60−3.55)、ニトロ安息香酸(2.17−3.45)、ヒドロキシ安息香酸(4.08−4.58)、アニス酸(4.09−4.48)、フルオロ安息香酸(3.27−4.14)、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸(2.85−4.00)、ヨード安息香酸(2.86−4.00)などの置換基を有する安息香酸、サリチル酸(2.81)、ナフトエ酸(3.70−4.16)、ケイ皮酸(3.88)、マンデル酸(3.19)など]、芳香族多価カルボン酸[フタル酸(2.75)、イソフタル酸(3.50)、テレフタル酸(3.54)など]、複素環式モノカルボン酸[ニコチン酸(2.05)、2−フランカルボン酸(2.97)など]、複素環式多価カルボン酸[2,6−ピリジンジカルボン酸(2.09)など]などが例示できる。
【0034】
有機酸には、アミノ酸類[すなわち、アミノ酸やアミノ酸誘導体(置換基を有するアミノ酸、2〜5個程度のアミノ酸で構成されたペプチドなど)]も含まれる。アミノ酸類には、例えば、アミノ酸[アスパラギン(2.14)、アスパラギン酸(1.93)、アデニン(4.07)、アラニン(2.30)、β−アラニン(3.53)、アルギニン(2.05)、イソロイシン(2.32)、グリシン(2.36)、グルタミン(2.17)、グルタミン酸(2.18)、セリン(2.13)、チロシン(2.17)、トリプトファン(2.35)、トレオニン(2.21)、ノルロイシン(2.30)、バリン(2.26)、フェニルアラニン(2.26)、メチオニン(2.15)、リシン(2.04)、ロイシン(2.35)など]、アミノ酸誘導体[アデノシン(3.50)、アデノシン三リン酸(4.06)、アデノシンリン酸(3.65−3.80)、L−アラニル−L−アラニン(3.20)、L−アラニルグリシン(3.10)、β−アラニルグリシン(3.18)、L−アラニルグリシルグリシン(3.24)、β−アラニルグリシルグリシン(3.19)、L−アラニルグリシルグリシルグリシン(3.18)、グリシル−L−アラニン(3.07)、グリシル−β−アラニン(3.91)、グリシルグリシル−L−アラニン(3.18)、グリシルグリシルグリシン(3.20)、グリシルグリシルグリシルグリシン(3.18)、グリシルグリシル−L−ヒスチジン(2.72)、グリシルグリシルグリシル−L−ヒスチジン(2.90)、グリシル−DL−ヒスチジルグリシン(3.26)、グリシル−L−ヒスチジン(2.54)、グリシル−L−ロイシン(3.09)、γ−L−グルタミル−L−システイニルグリシン(2.03)、N−メチルグリシン(サルコシン、2.20)、N,N−ジメチルグリシン(2.08)、シトルリン(2.43)、3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン(2.31)、L−ヒスチジルグリシン(2.84)、L−フェニルアラニルグリシン(3.02)、L−プロリルグリシン(3.07)、L−ロイシル−L−チロシン(3.15)など」などが例示できる。
【0035】
また、酸としてはカルボン酸以外にスルホン酸、リン酸系素材を用いることにより剥離性の改良が期待できる。これらはその溶解性の観点から界面活性剤の形であることが好ましい。具体的には特開昭61−243837号公報に記載された素材を好適に用いることができる。具体例としては、C1225O−P(=O)−(OK)2 、C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 、(iso−C9 192 −C6 3 −O−(CH2 CH2 O)3 −(CH2 4 SO3 Naが挙げられる。
【0036】
剥離剤として好ましい酸を以下に示す。有機酸として、例えば、脂肪族モノカルボン酸[ギ酸、クロロ酢酸などのハロ酢酸、ハロプロピオン酸、アクリル酸などの飽和又は不飽和C1−3モノカルボン酸など]、脂肪族多価カルボン酸[マロン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸などの飽和又は不飽和C2−4ジカルボン酸など]、オキシカルボン酸[グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などのC1−6オキシカルボン酸]、アミノ酸又はその誘導体を挙げることができる。また、スルホン酸およびリン酸系界面活性剤として特開昭61−243837号公報に記載された素材が好ましい。
【0037】
酸は遊離酸として用いてもよく、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として用いてもよい。アルカリ金属としては、リチウム、カリウム、ナトリウムなどが例示でき、アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウムなどが例示できる。好ましいアルカリ金属には、ナトリウムが含まれ、好ましいアルカリ土類金属には、カルシウム、マグネシウムが含まれる。但し、アルカリ金属の方が、アルカリ度類金属よりもより好ましい。これらのアルカリ金属、アルカリ土類金属はそれぞれ単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、アルカリ金属とアルカリ土類金属とを併用してもよい。
【0038】
前記酸およびその金属塩の総含有量は、剥離性、透明性などを損なわない範囲、例えば、セルロースアシレート1g当たり、1×10-9〜3×10-5モル、好ましくは1×10-8〜2×10-5モル(例えば、5×10-7〜1.5×10-5モル)、さらに好ましくは1×10-7〜1×10-5モル(例えば、5×10-6〜8×10-6モル)程度の範囲から選択でき、通常、5×10-7〜5×10-6モル(例えば、6×10-7〜3×10-6モル)程度である。
【0039】
また、微粒子を添加してフイルムの軋みを防止する目的で、シリカ、カオリン、タルク、ケイソウ土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナ、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素などの無機微粒子、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の塩なども添加される。その場合表面の突起物の平均高さが0.005〜10μmであり、好ましくは0.01〜5μmであり、球形、不定形マット剤で突起物を形成する場合はその含有量が0.5〜600mg/m2 であり、より好ましいのは1〜400mg/m2 である。
【0040】
溶液は流延に先だって金網、紙やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には絶対濾過精度が0.05〜100μmであるフィルタを用いることが好ましく、絶対濾過精度が0.5〜10μmであるフィルタを用いることがより好ましい。その場合、16kg/cm2 以下(好ましくは12kg/cm2 以下、更に好ましくは10kg/cm2 以下、特に好ましくは2kg/cm2 以下の濾過圧力で濾過することが好ましい。
【0041】
セルロースアシレート溶液を用いたフイルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフイルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフイルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が利用できる。溶解タンク(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)をストックタンクで一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡したり最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅を保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了し、巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフイルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。
【0042】
得られたセルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に2層以上の複数のセルロースアシレート液を共流延する。例えば、複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフイルムを作製してもよく、例えば特開平11−198285号公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフイルム化する方法が挙げられ、特開平6−134933号公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフイルム流延方法でもよい。このような共流延を行なうことにより、前述の様に表面の乾燥における平滑化が進行するため面状の大幅な改良が期待できる。共流延の場合の膜厚は、各層の厚さは特に限定されないが、好ましくは外部層が内部層より薄いことが好ましい。その際の外部層の膜厚は、1〜50μmであることが好ましく、1〜30μmであることが特に好ましい。ここで、外部層とは、2層の場合はバンド面(ドラム面)ではない面、3層以上の場合は完成したフイルムの両表面側の層を示す。内部層とは、2層の場合はバンド面(ドラム面)。3層以上の場合は外部層より内側に有る層を示す。
さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)と同時に流延することも実施しうる。
【0043】
本発明における、外部層、内部層を構成する溶液について説明する。前記のとおり、流延によって得られた未乾のフイルムは金属支持体から剥離した後に乾燥することにより得られる。流延時のドープ温度は約50℃であり、その時の粘度を低下させることにより乾燥時に表面のレベリングが起こりやすくなり面状が良化する。本発明者らの鋭意検討の結果、6位酢化度を特異的に高めたセルロースアシレートを用いることでその粘度低下を達成でき面状を良化させることができるようになった。
【0044】
しかしながら、6位酢化度を特異的に高めたセルロースアシレートは疎水性が強く、親水的な層を上層に設けるための支持体とするには適切でないことがわかった。本発明は液全体の粘度は6位酢化度を特異的に高めたセルロースアシレートを用いて低下させつつ、表層には通常のセルロースアシレートを用いることにより密着性を改良したフイルムであるといえる。
【0045】
本発明のセルロースアシレートフイルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、乾燥工程における乾燥温度は30〜250℃、特に40〜180℃であることが好ましく、詳しくは特公平5−17844号公報に記載がある。更には、セルロースアシレートフイルムを積極的に幅方向に延伸することもできる。このような延伸については、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、同4−284211号、同4−298310号、および同11−48271号の各公報などに記載されている。フイルムの延伸は、一軸延伸でもよく二軸延伸でもよい。フイルムの延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比率)は、10〜30%であることが好ましい。
【0046】
乾燥後の本発明のセルロースアシレートフイルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常5〜500μmの範囲にあり、20〜250μmの範囲にあることがより好ましく、30〜180μmの範囲にあることが最も好ましい。なお、セルロースアシレートフイルムを光学用途に用いる場合、フイルムの厚さは30〜110μmの範囲にあることが特に好ましい。フイルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
【0047】
セルロースアシレートフイルムに表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフイルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着性を向上させることができる。表面処理の例としては、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理が挙げられる。また、表面処理として好ましいアルカリ処理(鹸化処理)は、フイルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ溶液の例としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1N〜3.0Nであることが好ましく、0.5N〜2.0Nであることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温〜90℃であることが好ましく、30℃〜70℃であることがさらに好ましい。次に一般には水洗され、しかる後に酸性水溶液を通過させた後に水洗して表面処理したセルロースアシレートフイルムを得る。酸性水溶液に用いる酸の例としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、シュウ酸などが挙げられる。酸性水溶液の濃度は、0.01N〜3.0Nであることが好ましく、0.05N〜2.0Nであることがさらに好ましい。そして、セルロースアシレートフイルムと機能層との接着を達成するために、フイルムの表面に下塗層(接着層)を設け、この上に機能層を塗布することも好ましい。
【0048】
偏光板用保護膜の構成においては、セルロースアシレートフイルムの少なくとも一層に帯電防止層を設けたり、偏光子と接着するための親水性バインダー層が設けられることが好ましい。導電性素材としては、導電性金属酸化物や導電性ポリマーが好ましい。なお、蒸着やスパッタリングによる透明導電性膜でもよい。
導電性層は、最外層でもよいし、内部層でも問題はない。導電層の送電性は、抵抗が10E0〜10E12Ωであることが好ましく、特には10E0〜10E10Ωであることが好ましい。金属酸化物が好ましく、例としてはZnO、TiO2 、SnO2 、Al2 3 、In2 3 、SiO2 、MgO、BaO、MoO2 、V2 5 等、或いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、SnO2 あるいはV2 5 が好ましい。導電性イオン性高分子化合物の例としては、主鎖中に解離基をもつアイオネン型ポリマー、側鎖中にカチオン性解離基をもつカチオン性ペンダント型ポリマー等を挙げることができる。さらに導電性材料として、有機電子伝導性材料を用いることも好ましく、具体的には、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアセチレン誘導体などを例示することができる。
【0049】
また、セルロースアシレートフイルムのいずれかの機能性層に界面活性剤が好ましく用いられ、ノニオン性、カチオン性、ベタイン性のいずれも使用できる。
さらにそれらのフッ素系界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤としたり、帯電防止剤として好ましく用いられる。また、本発明に於いては、セルロースアシレートフイルムの上のいずれかの層に滑り剤を含有させることが好ましいが、例えば、特公昭53−292号公報に記載のポリオルガノシロキサン、米国特許第4、275、146号明細書に記載の高級脂肪酸アミド、特公昭58−33541号、英国特許第927、446号、特開昭55−126238号及び同58−90633号の各公報に記載の高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールのエステル)等が知られている。
【0050】
セルロースアシレート溶液から製造されるセルロースアシレートフイルムは、様々な用途に用いることができる。本発明のセルロースアシレートフイルムは、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明のセルロースアシレートフイルムには、フイルムそのものを光学補償シートとして用いることができる。なお、フイルムそのものを光学補償シートとして用いる場合は、偏光素子(後述)の透過軸と、セルロースアシレートフイルムからなる光学補償シートの遅相軸とを実質的に平行または垂直になるように配置することが好ましい。このような偏光素子と光学補償シートとの配置については、特開平10−48420号公報に記載がある。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成を有している。液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に80〜500μmの厚さを有する。
【0051】
光学補償シートは、液晶画面の着色を取り除くための複屈折率フイルムである。本発明のセルロースアシレートフイルムは、光学補償シートとして用いることができる。さらに反射防止層、防眩性層、λ/4層や2軸延伸セルロースアシレートフイルムとして機能を付与してもよい。また、液晶表示装置の視野角を改良するため、本発明のセルロースアシレートフイルムと、それとは(正/負の関係が)逆の複屈折を示すフイルムを重ねて光学補償シートとして用いてもよい。光学補償シートの厚さの範囲は、前述した本発明のフイルムの好ましい厚さと同じである。偏光素子の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。いずれの偏光膜も、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて製造する。偏光板の保護膜は、25〜350μmの厚さを有することが好ましく、30〜200μmの厚さを有することがさらに好ましい。液晶表示装置には、表面処理膜を設けてもよい。表面処理膜の機能には、ハードコート、防曇処理、防眩処理および反射防止処理が含まれる。前述したように、セルロースアシレートフイルムの上に液晶(特にディスコティック液晶性分子)を含む光学的異方性層を設けた光学補償シートも提案されている(特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報記載)。本発明のセルロースアシレートフイルムは、そのような光学補償シートの支持体としても用いることができる。本発明のセルロースアシレートフイルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として好ましく用いられる。
【0052】
【実施例】
実施例において、セルロースアシレート、セルロースアシレート溶液、およびセルロースアシレートフイルムの化学的性質および物理的性質は、以下のように測定および算出した。
【0053】
(0)セルロースアシレートの置換度(%)
酢化度は、ケン化法により測定した。乾燥したセルロースアシレートを精秤し、アセトンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:1)に溶解した後、所定量の1N−水酸化ナトリウム水溶液を添加し、25℃で2時間ケン化した。フェノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴定した。また、上記と同様の方法により、ブランクテストを行った。そして、下記式に従って酢化度(%)を算出した。
酢化度(%)=(6.005×(B−A)×F)/W
式中、Aは試料の滴定に要した1N−硫酸量(ml)、Bはブランクテストに要した1N−硫酸量(ml)、Fは1N−硫酸のファクター、Wは試料質量を示す。
尚、複数のアシル基を含有する系では、そのpKaの差を使って、各アシル基の量を求めた。また、公知文献(T.Sei,K.Ishitani,R.Suzuki,K.Ikematsu Polymer Journal 17 1065(1985))に記載の方法によっても同様に求め、その値が正しいことを別途確認した。さらに、これらにより求められた酢化度、その他のアシル基の量からモル分子量を考慮して置換度に換算した。
【0054】
(1)セルロースアシレートの粘度平均重合度(DP)
絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
Figure 0004547104
【0055】
(3)溶液の粘度
作製したセルロースアシレート溶液の50℃における見掛け粘度は、Cone-plate型のセンサを用い、Rheometer(TA Instruments社)にて測定した。
【0056】
(4)フイルム面状
フイルムを目視で観察し、その面状を以下の如く評価した。
A:フイルム表面は平滑であり、きわめて面状が良好である。
B:フイルム表面は平滑であるが、まれに凹凸が認められる。
C:フイルム表面は平滑であるが、弱い凹凸が比較的多数見られる。
D:フイルム全面に弱い凹凸が認められる。
E:フイルムに強い凹凸が見られ、異物が見られる。
【0057】
(5)フイルムのヘイズ
ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を用いて測定した。
【0058】
(6)機能性層の付与、密着性評価
得られたフイルムにポリビニルアルコールの5%水溶液を、膜厚が5μmになるようにバーコーターで塗布し、100℃で10分乾燥した。得られたフイルムを、温度25℃、湿度10%の雰囲気下で1日放置し、ポリビニルアルコール層の剥がれを調べた。ポリビニルアルコールの剥がれは、以下のように評価した。
A:剥がれなし
B:端面がわずかに剥がれている
C:明らかな剥がれがあり
【0059】
(1−1)セルロースアシレート溶液の作製
下記の2種の溶解方法にてセルロースアシレート溶液を作製した。各本発明および比較例の詳細な溶剤組成については第1表に記載した。なお、シリカ粒子(粒径20nm)、トリフェニルフォスフェート/ビフェニルジフェニルフォスフェート(1/2)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジンをそれぞれセルロースアシレートの0.5質量%、10質量%、1.0質量%添加した。また、剥離剤としてクエン酸をセルロースアシレートに対して200ppm添加した。尚、本発明における共流延の内部層、外部層を形成する液としては上記セルロースアシレート溶液を濃度を変えて用いた。詳細は第1表に併せて記載した。
【0060】
(1−1a)冷却溶解(第1表に「冷却」と記載)
溶剤中に、よく攪拌しつつ第1表記載のセルロースアシレートを徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置し膨潤させた。得られた膨潤混合物をゆっくり撹拌しながら、−8℃/分で−30℃まで冷却、その後第1表に記載の温度まで冷却し6時間経過した後、+8℃/分で昇温し内容物のゾル化がある程度進んだ段階で、内容物の撹拌を開始した。50℃まで加温してドープを得た。
【0061】
(1−1b)高圧高温溶解(第1表に「高温」と記載)
溶剤中に、よく攪拌しつつ第1表記載のセルロースアシレートを徐々に添加し、室温(25℃)にて3時間放置し膨潤させた。得られた膨潤混合物を、二重構造のステンレス製密閉容器に入れた。容器の外側のジャケットに高圧水蒸気を通すことで+8℃/分で加温し、1Mpa下、第1表に記載の温度で5分間保持した。この後外側のジャケットに50℃の水を通し−8℃/分で50℃まで冷却し、ドープを得た。
【0062】
(1−2)セルロースアシレート溶液の濾過
次に得られたドープを50℃にて、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#63)で濾過し、さらに絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、FH025)にて濾過した。
【0063】
(1−3)(1−2)で得られた溶液を、特開昭56−162617号公報に記載の流延機を用いて流延し、120℃の環境下で30分乾燥して溶剤を蒸発させてセルロースアシレートフイルムを得た。層構成は本発明においては二層または三層であり、二層ではバンド面から内部層/外部層の構成、三層では外部層/内部層/外部層のサンドイッチ型構成である。詳細は第1表に示した。
【0064】
【表1】
Figure 0004547104
【0065】
【表2】
Figure 0004547104
【0066】
(1−3)結果
得られたセルロースアシレート溶液およびフイルムを上述の項目に従って評価した。結果を第2表に示す。
本発明において用いたセルロースアシレート溶液およびフイルムは、その溶液安定性、フイルムの機械物性、光学物性において特に問題は認められなかった。
一方、比較例では得られたフイルムの面状には問題が認められた。
【0067】
【表3】
Figure 0004547104
【0068】
また、これらのフイルムを、製膜工程中の乾燥工程中にオンラインで、あるいはその後オフラインで130℃にて10%〜30%MD、TD延伸した。延伸倍率に比例して、40nm〜160nmにレターデーションを増加させることができた。
このようにして得たセルロースアシレートフイルムを、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。さらに、特開昭54−016575号公報に記載の偏光板として用いたところ、良好な性能が得られた。
【0069】
【発明の効果】
共流延法により二層以上の層を流延製膜することを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法であって、内部層を形成するセルロースアシレートは2位、3位のアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートであり、外部層を形成するセルロースアシレートは6位のアシル置換度が0.88未満であることを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法により、フイルムの面状を改良すると共に親水性層の密着性に優れたセルロースアシレートフイルムの製造方法を達成した。

Claims (16)

  1. 共流延により二以上の層を有するセルロースアシレートフイルムであって、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートから一つの層が形成され、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートから他の一つの層が形成されているセルロースアシレートフイルム。
  2. 共流延により三以上の層を有し、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートから内部層が形成され、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートから外部層が形成されている請求項1に記載のセルロースアシレートフイルム。
  3. 2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートから形成される層が、1乃至50μmの範囲に厚さを有する請求項1に記載のセルロースアシレートフイルム。
  4. 2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートから形成される層が、1乃至20μmの範囲に厚さを有する請求項3に記載のセルロースアシレートフイルム。
  5. 少なくとも一方の外部層が、1乃至50μmの範囲に厚さを有する請求項2に記載のセルロースアシレートフイルム。
  6. シリカ粒子、可塑剤または紫外線吸収剤を含む請求項1に記戟のセルロースアシレートフイルム。
  7. 偏光板保護膜用である請求項1に記載のセルロースアシレートフイルム。
  8. 2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートの溶液と、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートの溶液とを共流延することを特徴とするセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  9. 2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートの溶液が内部に、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートの溶液が外部となるように共流延する請求項8に記載の製造方法。
  10. 同時に共流延する請求項8に記載の製造方法。
  11. セルロースアシレート溶液が、溶媒として実質的に非塩素系の溶剤からなる請求項8に記載の製造方法。
  12. 実質的に非塩素系の溶剤が、溶解度パラメータが19乃至21のケトンと溶解度パラメータが19乃至21のエステルとを含む請求項11に記載の製造方法。
  13. 実質的に非塩素系の溶剤が、2乃至30質量%のアルコールを含み、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートの溶液に含まれるアルコール含有率の方が、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートの溶液のアルコール含有率よりも多い請求項11に記載の製造方法。
  14. 実質的に非塩素系の溶剤が、アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンからなる群より選ばれるケトン、酢酸メチルおよび炭素原子数が6以下のアルコールを含む請求項11に記載のセルロースアシレートフイルムの製造方法。
  15. 2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88未満であるセルロースアシレートの溶液のセルロースアシレート濃度の方が、2位と3位とのアシル置換度の合計が1.70以上1.95以下であり、かつ6位のアシル置換度が0.88以上であるセルロースアシレートの溶液のセルロースアシレート濃度よりも低い請求項8に記載の製造方法。
  16. 実質的に非塩素系の溶剤とセルロースアシレートとの混合物を、−80乃至−10℃の低温または80乃至220℃の高温で処理して、セルロースアシレートを溶解する温度に曝して、セルロースアシレートの溶液を調製する請求項11に記載の製造方法。
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