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JP2002265637A - セルロースエステルフイルム - Google Patents

セルロースエステルフイルム

Info

Publication number
JP2002265637A
JP2002265637A JP2001071494A JP2001071494A JP2002265637A JP 2002265637 A JP2002265637 A JP 2002265637A JP 2001071494 A JP2001071494 A JP 2001071494A JP 2001071494 A JP2001071494 A JP 2001071494A JP 2002265637 A JP2002265637 A JP 2002265637A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cellulose ester
mass
acid
cellulose
film
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2001071494A
Other languages
English (en)
Inventor
Yasuo Kuraki
康雄 椋木
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fujifilm Holdings Corp
Original Assignee
Fuji Photo Film Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Photo Film Co Ltd filed Critical Fuji Photo Film Co Ltd
Priority to JP2001071494A priority Critical patent/JP2002265637A/ja
Publication of JP2002265637A publication Critical patent/JP2002265637A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

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  • Moulding By Coating Moulds (AREA)
  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 セルロースエステルを塩素系有機溶媒以外の
有機溶剤に溶解した溶液から面状に優れたセルロースエ
ステルフイルムを得る。 【解決手段】 マンノース/キシロースのモル比が0.
35〜3.0で置換度が下記(I)〜(III)を満足する
セルロースエステル、pKa4以下の酸を有する離型
剤、酢酸メチル、炭素数3〜6のケトン、および炭素数
1〜4のアルコールからなる混合液からセルロースエス
テルフイルムを作製する。 (I) 2.6≦A+B≦3.0 (II) 2.0≦A≦3.0 (III) 0≦B≦0.8 Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3〜22
のアシル基の置換度である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はハロゲン化銀写真感
光材料または液晶画像表示装置に有用なセルロースエス
テルフイルム溶液及びそれから形成されるセルロースエ
ステルフイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ハロゲン化銀写真感光材料や液晶
画像表示装置に使用されるセルロースアセテートを製造
する際に使用されるセルロースエステル溶液の有機溶媒
は、メチレンクロライドのような塩素系有機溶媒が使用
されている。メチレンクロライド(沸点40℃)は、従
来からセルロースエステルの良溶媒として用いられ、製
造工程の製膜及び乾燥工程において沸点が低いことから
乾燥させ易いという利点により好ましく使用されてい
る。逆にメチレンクロライドは沸点が低く揮発し易いた
め、密閉設備でも取り扱い工程で若干漏れ易く回収にも
限界があり、完全に大気中への散逸を防ぎきれないとい
う問題があり、その環境安全性の点で改善が望まれてい
る。そこで、メチレンクロライド以外のセルロースエス
テルの溶媒の探索がなされて来た。セルロースエステル
特にセルローストリエステルに対する溶解性を示す有機
溶媒として知られているものにはアセトン(沸点56
℃)、酢酸メチル(沸点56℃)、テトラヒドロフラン
(沸点65℃)、1,3−ジオキソラン(沸点75
℃)、1,4−ジオキサン(沸点101℃)がある。し
かしながら、これらの有機溶媒は従来の溶解方法では実
際に実用できるに十分な溶解性は得られていない。
【0003】この解決として、J.M.G.CowIe
等はMakromol.chem.143巻、105頁
(1971)においてセルローストリアセテート(酢化
度60.1%から61.3%)をアセトン中で−80℃
から−70℃に冷却した後、加温することによって0.
5から5質量%の希薄溶液が得られることを報告してい
る。このような低温でセルロースエステルを溶解する方
法を冷却溶解法という。また、上出健二等は繊維機械学
会誌、34巻、57−61頁(1981)の「三酢酸セ
ルロースのアセトン溶液からの乾式紡糸」の中で冷却溶
解法を用いての紡糸技術について述べている。
【0004】また、特開平9−95538号公報、特開
平9−95544号及び同9−95557号の各公報で
は、上記技術を背景に、非ハロゲン溶剤を用いて冷却溶
解法によってセルロースエステルを溶解することが開示
されている。特開平11−60752号公報ではフルオ
ロアルコールをセルロースエステル溶液に添加して改良
することが提案されているが、強撥油撥水性のためにセ
ルロースエステルの面状が悪いという欠陥を有すること
が新たな問題として発生することが挙げられる。
【0005】一方、特開平10―130301号公報に
は、中性構成糖成分中のマンノース/キシロース=0.
35〜3.0(モル比)でα−セルロース含有量90〜
97質量%、かつマンノースおよびキシロースの総含有
量2〜6モル%の低純度のパルプをアセチル化し、平均
酢化度58〜62.5%のセルロースエステルを製造す
ることで、流延法における支持体からのフイルムの剥離
性を向上できることが提案されている。この方法による
と従来の溶媒であるメチレンクロライドに対しては有効
であることが認められたが、非塩素系有機溶媒を持ちい
た場合は、剥離性が不充分であり面状の悪化を伴いその
改良がさらに望まれていた。
【0006】また、一般にセルロースエステルは水を含
有しており2.5〜5質量%が知られている。従来のメ
チレンクロライド溶媒ではセルロースエステルは、含水
したまま溶液化されることが多々あり、その場合でも感
材用としては特に問題はなかった。しかし、環境に優し
い非ハロゲン系溶媒を用いる場合は、セルロースエステ
ルに水が含まれていると、面状が悪化するという故障が
発生した。特にセルロースエステルフイルムを電子材料
用保護膜として用いる場合は、その面状の点でさらに改
良が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
のセルロースエステルを非塩素系有機溶媒で溶液を作製
する場合、優れた溶解性を付与し流延したあと短時間で
の剥離でも剥ぎ取り性がよく、得られたフイルムの面状
が優れたセルロースセルロースフイルムを提供すること
にある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、中性構
成糖成分中に含まれるマンノース/キシロースのモル比
が0.35〜3.0でそのセルロースの水酸基への置換
度が下記(I)〜(III)を有するセルロースエステル、
pKa4以下の酸を有する離型剤、酢酸メチル、炭素原
子数3〜6のケトンおよび炭素原子数1〜4のアルコー
ルからなる混合液を、−100〜−10℃に冷却又は/
及び70〜200℃、0.3〜30MPaの高温高圧で
加熱して得られるセルロースエステル溶液から流延、乾
燥して作製されることを特徴とするセルロースエステル
フイルムにより達成された。 (I) 2.6≦A+B≦3.0 (II) 2.0≦A≦3.0 (III) 0≦B≦0.8 [式中、A及びBは、セルロースの水酸基に置換されて
いるアシル基の置換基を表し、Aはアセチル基の置換
度、Bは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度であ
る]
【0009】
【発明の実施の形態】本発明のセルロースエステルは、
セルロースの水酸基への置換度が下記式(I)〜(III)
の全てを満足する。 (I) 2.6≦A+B≦3.0 (II) 2.0≦A≦3.0 (III) 0≦B≦0.8 式中、A及びBはセルロースの水酸基に置換されている
アシル基の置換基を表し、Aはアセチル基の置換度、ま
たBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
セルロースには1グルコース単位に3個の水酸基があ
り、上記の数字はその水酸基3.0に対する置換度を表
すもので、最大の置換度が3.0である。セルロースト
リアセテートは一般にAの置換度が2.6〜3.0であ
り(この場合、置換されなかった水酸基が最大0.4で
ある)、B=0の場合がセルローストリアセテートであ
る。セルロースエステルは、アシル基が全部アセチル基
のセルローストリアセテート、及びアセチル基が2.0
以上で、炭素原子数が3〜22のアシル基が0.8以
下、置換されなかった水酸基が0.4以下のものが好ま
しい。炭素原子数3〜22のアシル基の場合、0.3以
下が物性の点から特に好ましい。なお、置換度は、セル
ロースの水酸基に置換する酢酸または及び炭素原子数3
〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって得られ
る。測定方法としては、ASTMのD−817−91に
準じて実施することができる。
【0010】なお、アシル基がすべてアセチル基の場合
は、その水酸基の置換度を酢化度であらわすことが通常
おこなわれている。すなわち、セルロースアセテートに
おいて平均酢化度は、用途や特性に応じて58%〜6
2.5%(アセチル基の平均置換度2.64〜3.0)
程度の範囲が好ましい。より好ましくは59〜62%、
さらに好ましくは60〜61%程度である。ここで酢化
度は、結合酢酸量を意味し、セルロース単位質量当たり
の結合酢酸の質量百分率をいい、ASTM:D−817
−91(セルロースアセテートなどの試験方法)のアセ
チル化度の測定法に準じて測定できる。具体的には、乾
燥したセルロースアセテート1.9gを精秤して、アセ
トンとジメチルスルホキシドとの混合溶媒(容量比4:
1)150mlに溶解した後、1N水酸化ナトリウム水
溶液30mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。フ
ェノールフタレインを指示薬として添加し、1N硫酸
(濃度ファクター:F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴
定する。また、上記と同様の方法でブランク試験を行
い、下記式に従って酢化度を算出することで求められ
る。 酢化度(%)=[6.5×(B−A)×F]/W (式中、Aは試料での1N硫酸の滴定量(ml)、Bは
ブランク試験での1N硫酸の滴定量(ml)、Fは1N
硫酸の濃度ファクター、Wは試料の質量を示す)。
【0011】また、セルロースエステルの6位水酸基の
置換度は、2,3位に比べて多いほうが好ましい。一般
には、2,3,6の水酸基は全体の置換度の1/3づつ
に均等に分配されるわけではなく、6位水酸基の置換度
が小さくなる傾向がある。したがって、全体の置換度に
対して6位の水酸基が32%以上アシル基で置換されて
いることが好ましく、更には33%以上が好ましく、特
には34%以上であることが好ましい。各位置の置換度
の測定は、NMRによって求める事ができる。更に6位
水酸基は、アセチル基以外に炭素数3以上のアシル基で
あることが好ましく、プロピオニル基、ブチロイル基、
バレロイル基、ベンゾイル基、アクリロイル基を用いる
ことができる。セルロースエステルのアシル基として
は、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基でもよい。それ
らは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステ
ル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カル
ボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルで
あり、それぞれさらに置換された基を有していてもよ
く、総炭素数が22以下のエステル基が好ましい。これ
らの好ましいセルロースエステルとしては、エステル部
の総炭素数が22以下のアシル基(例、アセチル、プロ
ピオニル、ブチロイル、バレル、ヘプタノイル、オクタ
ノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、
ヘキサデカノイル、オクタデカノイル)、アルケニルカ
ルボニル基(例、アクリロイル、メタクリロイル)、ア
リールカルボニル基(例、ベンゾイル、ナフタロイ
ル)、シンナモイル基を挙げることが出来る。セルロー
スアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、
セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテー
トステアレート、セルロースアセテートベンゾエートが
好ましい。
【0012】セルロースアセテートが好ましい。写真用
グレードのセルロースアセテートが特に好ましく、市販
の写真用グレードのものは粘度平均重合度、置換度等の
品質を満足して入手することができる。写真用グレード
のセルロースアセテートのメーカーとしては、ダイセル
化学工業(株)(例、LT−20,30,40,50,
70,35,55,105)、イーストマンコダック社
(例、CAB−551−0.01、CAB−551−
0.02、CAB−500−5、CAB−381−0.
5、CAB−381−02、CAB−381−20、C
AB−321−0.2、CAP−504−0.2、CA
P−482−20、CA−398−3)、コートルズ
社、ヘキスト社等があり、何れも写真用グレードのセル
ロースアセテートを使用できる。本発明のセルロースエ
ステルにおいては、マンノース/キシロース(モル比)
=0.35/1〜3.0/1である。より好ましくはマ
ンノース/キシロース(モル比)=0.35/1〜2.
5/1、さらに好ましくはマンノース/キシロース(モ
ル比)=0.35/1〜2/1である。特に、マンノー
ス/キシロース(モル比)=0.5/1〜1.5/1、
好ましくは0.7/1〜1.3/1である。マンノース
とキシロースとの割合は、セルロースアセテートの原料
パルプの成分割合に略対応する。
【0013】また本発明のセルロースエステルにおいて
は、マンノースおよびキシロースの総含有量は、1〜5
モル%であり、より好ましくは1.6〜4モル%、さら
に好ましくは2〜3.5モル%、特には2.5〜3.5
モル%である。なお、「マンノース」「キシロース」
は、パルプ中に含まれるヘミセルロース(キシラン,グ
ルコマンナン)の主たる構成糖である。原料パルプおよ
び得られたセルロースエステルの構成糖成分は、特開平
10―130310号公報に詳細に記載があり、その手
法に従って求めることが出来る。
【0014】特定のパルプをアセチル化することにより
セルロースエステルを製造することができる。すなわ
ち、マンノースとキシロースとの割合(モル比)=0.
35/1〜3.0/1[好ましくは0.5/1〜3/
1、さらに好ましくは0.7/1〜2/1]であるパル
プが用いられる。このようなパルプには少なくとも針葉
樹パルプを主成分とするパルプが含まれ、針葉樹パルプ
には、必要により綿花リンターパルプや広葉樹パルプを
混合してもよい。針葉樹パルプに対する他のパルプの割
合は、針葉樹パルプ100質量部に対してリンターパル
プ及び/又は広葉樹パルプ10〜300質量部、より好
ましくは10〜200質量部、さらに好ましくは10〜
100質量部の範囲から選択できる。
【0015】セルロースエステルは、従来の方法、例え
ば、硫酸触媒法、酢酸法、メチレンクロライド法で製造
できる。セルロースエステルは、通常、パルプ(セルロ
ース)を酢酸により活性化処理(活性化工程)した後、
硫酸触媒を用いて無水酢酸によりトリアセテートを調製
し(酢化工程)、ケン化(加水分解)により酢化度を調
整する(ケン化工程)ことにより製造される。活性化工
程は、例えば、酢酸や含水酢酸の噴霧、酢酸や含水酢酸
への浸漬によリ、パルプ(セルロース)を処理すること
により行うことができ、酢酸の使用量は、パルプ(セル
ロース)100質量部に対して10〜100質量部、好
ましくは20〜80質量部、さらに好ましくは30〜6
0質量部程度である。酢化工程における無水酢酸の使用
量は、前記酢化度となる範囲で選択でき、例えば、パル
プ(セルロース)100質量部に対して230〜300
質量部、好ましくは240〜290質量部、さらに好ま
しくは250〜280質量部程度である。酢化工程にお
いては溶媒として酢酸が使用され、その使用量はパルプ
(セルロース)100質量部に対して200〜700質
量部、好ましくは300〜600質量部、さらに好まし
くは350〜500質量部程度である。触媒としての硫
酸の使用量は、セルロース100質量部に対して、1〜
15質量部、好ましくは5〜15質量部、特に好ましく
は5〜10質量部程度である。またケン化は、例えば温
度50〜70℃程度で行うことができる。さらに、セル
ロースエステルの製造工程のうち適当な段階、例えば酢
化やケン化終了後、生成したセルロースアセテートを酸
化剤で処理するのが有用であり、例えば過酸化水素;過
酸(例、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過酸化ラウロイ
ル、過酸化ベンゾイル);過酸化ジアセチルなどの有機
過酸化物である。酸化剤の使用量は、セルロースエステ
ル100質量部に対して、0.01〜5質量部、好まし
くは0.1〜2.5質量部、特に0.1〜1質量部程度
である。酸化剤による処理は、20〜100℃、好まし
くは30〜70℃程度で行うことができる。さらに、セ
ルロースエステルの安定性を向上させるため、生成した
セルロースエステルには、耐熱安定剤、例えば、アルカ
リ金属塩(例、カリウム塩、ナトリウム塩)やアルカリ
土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、スト
ロンチウム塩、バリウム塩)を添加してもよい。
【0016】セルロースエステルには、セルロースエス
テル及び/又はヘミセルロースアセテートに結合したカ
ルボキシル基のうち少なくとも一部が酸型で存在する。
場合によりセルロースアセテート1g中のアルカリ金属
(リチウム、ナトリウム、カリウム)およびアルカリ土
類金属(カルシウム、マグネシウム)の総含有量が、有
効量以上であって5.5×10-6当量(イオン当量換
算)以下であるセルロースアセテートが含まれる。セル
ロースエステルは、セルロースエステル溶液全量に対し
てその濃度が5〜30質量%であり、より好ましくは1
0〜28質量%であり、特に好ましくは15〜25質量
%である。セルロースエステルが水を2質量%以下で含
むことが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であ
り、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロー
スエステルが好ましい。一般に、セルロースエステルは
2.5〜5質量%含水しており、乾燥することが必要で
ありその方法は目的とする含水量になれば特に限定され
ない。例えば、乾燥機中で高温にしたり、高温の風を送
って乾燥したりしてもよく、さらには減圧状態で低温で
の乾燥でもよい。
【0017】好ましい乾燥温度は50〜150℃であ
り、さらには70〜120℃である。減圧状態を実施す
る場合は、1Pa〜0.05MPaであり更には10P
a〜0.02MPaであり、特には50Pa〜0.01
MPaである。また、乾燥剤を用いて乾燥剤に水分を吸
収させることで、セルロースエステルの水分を低下さ
せ、上記の含水率を有するセルロースエステルを得ても
よい。なお、乾燥時間は特に限定されず上記のセルロー
スエステルの含水率となるように実施される。これらの
セルロースエステルの含水量は、一定量のセルロースエ
ステルを採取してカールフィッシャーで測定することで
求めることが出来る。
【0018】セルロースエステルフイルムを形成するに
あたり、セルロースエステル溶液はpkaが4以下であ
る剥離剤の少なくとも一種を溶液の0.005〜2質量
%含有することを特徴とする。剥離剤としては、下記式
(1)又は式(2)で表わされる化合物が好ましい。 (1) (R1−B1−O)n1−P(=O)−(OM
1)n2 (2) R2−B2−X ここで、R1とR2は炭素原子数4〜40の置換または
無置換のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基ある
いはアリール基を表わし、M1はアルカリ金属、アンモ
ニア、低級アルキルアミンである。また、B1、B2は
2価の連結基を表わし、Xはスルフォン酸(又はその
塩)、硫酸エステル(又はその塩)を表わす。n1は1
または2であり、n2は(3−n1)の整数を表わす。
これらの酸基のpKaはすべて2以下である。
【0019】式(1)または(2)において、R1とR
2の例には、炭素原子数4〜40の置換または無置換の
アルキル基(例、ブチル、ヘキシル、オクチル、2−エ
チルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オク
タデシル、エイコサニル、ドコサニル、ミリシル)、炭
素数4〜40の置換または無置換のアルケニル基(例、
2−ヘキセニル、9−デセニル、オレイル)、炭素数4
〜40の置換または無置換のアリール基(例、フェニ
ル、ナフチル、メチルフェニル、ジメチルフェニル、ト
リメチルフェニル、エチルフェニル、プロピルフェニ
ル、ジイソプロピルフェニル、トリイソプロピルフェニ
ル、t−ブチルフェニル、ジ−t−ブチルフェニル、ト
リ−t−ブチルフェニル、イソペンチルフェニル、オク
チルフェニル、イソオクチルフェニル、イソノニルフェ
ニル、ジイソノニルフェニル、ドデシルフェニル、イソ
ペンタデシルフェニル)を表わす。
【0020】好ましいアルキル基は、ヘキシル、オクチ
ル、2−エチルヘキシル、ノニル、ドデシル、ヘキサデ
シル、オクタデシルおよびドコサニルである。好ましい
アルケニル基はオレイルである。好ましいアリール基
は、フェニル、ナフチル、トリメチルフェニル、ジイソ
プロピルフェニル、トリイソプロピルフェニル、ジ−t
−ブチルフェニル、トリ−t−ブチルフェニル、イソオ
クチルフェニル、イソノニルフェニル、ジイソノニルフ
ェニルおよびドデシルフイソペンタデシルフェニルであ
る。次に、B1、B2の2価の連結基について記述す
る。炭素数1〜10のアルキレン、ポリ(重合度1〜5
0)オキシエチレン、ポリ(重合度1〜50)オキシプ
ロピレン、ポリ(重合度1〜50)オキシグリセリン、
でありこれらの混合したものでも良い。これらで好まし
い連結基は、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレ
ン、ポリ(重合度1〜25)オキシエチレン、ポリ(重
合度1〜25)オキシプロピレン、ポリ(重合度1〜1
5)オキシグリセリンである。次にXは、カルボン酸
(又は塩)、スルフォン酸(又は塩)、硫酸エステル
(又は塩)であるが、特に好ましくはスルフォン酸(又
は塩)、硫酸エステル(又は塩)である。塩としては好
ましくはNa、K、アンモニウム、トリメチルアミン及
びトリエタノールアミンである。以下に、剥離剤の具体
例を記載する。
【0021】 RZ−1:C8 17O−P(=O)−(OH)2 RZ−2:C1225O−P(=O)−(OK)2 RZ−3:C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−
(OK)2 RZ−4:C1531(OCH2 CH2 5 O−P(=
O)−(OK)2 RZ−5:{C1225O(CH2 CH2O 5 2 −P
(=O)−OH RZ−6:{C1835(OCH2 CH2 8 O}2 −P
(=O)−ONH4 RZ−7:(t−C4 9 3 −C6 2 −OCH2
2 O−P(=O)−(OK)2 RZ−8:(iso−C9 19−C6 4 −O−(CH
2 CH2 O)5 −P(=O)−(OK)(OH) RZ−9:C1225SO3 Na RZ−10:C1225OSO3 Na RZ−11:C1733COOH RZ−12:C1733COOH・N(CH2 CH2
H)3 RZ−13:iso−C8 17−C6 4 −O−(CH
2 CH2 O)3 −(CH 2 2 SO3 Na RZ−14:(iso−C9 192 −C6 3 −O−
(CH2 CH2 O)3 −(CH2 4 SO3 Na RZ−15:トリイソプロピルナフタレンスルフォン酸
ナトリウム RZ−16:トリ−t−ブチルナフタレンスルフォン酸
ナトリウム RZ−17:C1733CON(CH3 )CH2 CH2
3 Na RZ−18:C1225−C6 4 SO3 ・NH4 式(1)又は(2)の剥離剤の使用量は、溶液の0.0
02〜2質量%であるが、より好ましくは0.005〜
1質量%であり、さらに好ましくは0.01〜0.5質
量%である。その添加方法は、特に限定されないがその
まま液体或いは固体のまま、溶解する前に他の素材と共
に添加され溶液としても良いし、予め作製されたセルロ
ースアシレート溶液に後から添加しても良い。
【0022】次に、pKa4以下の離型剤として有機酸
が挙げられる。酸解離指数pKa1.93〜4.50
(好ましくは2.00以上、より好ましくは2.20以
上、さらに好ましくは2.50以上、最も好ましくは
2.60以上、また、好ましくは4.40以下、さらに
好ましくは2.20〜4.30以下、最も好ましくは
4.00以下)の酸には、無機酸および有機酸が含まれ
る。酸のpKaについては「改訂3版 化学便覧,基礎
編II」((財)日本化学会編,丸善(株)発行)を参照
できる。以下に、酸の具体例とともに、括弧内に酸解離
指数pKaを示す。これらの酸は、特開平10−316
701号公報に詳細が記載されている。すなわち、前記
無機酸としては、例えば、HClO2 (2.31),H
OCN(3.48),モリブデン酸(H2 MoO4
3.62),HNO2(3.15),リン酸(H3 PO
4 ,2.15),トリポリリン酸(H5 3 10,2.
0),バナジン酸(H3 VO4 ,3.78)が例示でき
る。
【0023】有機酸としては、例えば、脂肪族モノカル
ボン酸[ギ酸(3.55)、オキサロ酢酸(2.2
7),シアノ酢酸(2.47),フェニル酢酸(4.1
0),フェノキシ酢酸(2.99),フルオロ酢酸
(2.59),クロロ酢酸(2.68),ブロモ酢酸
(2.72),ヨード酢酸(2.98),メルカプト酢
酸(3.43),ビニル酢酸(4.12)の置換基を有
する酢酸,クロロプロピオン酸(2.71−3.92)
などのハロプロピオン酸,4−アミノ酪酸(4.0
3),アクリル酸(4.26)],脂肪族多価カルボン
酸[マロン酸(2.65),コハク酸(4.00),グ
ルタル酸(4.13),アジピン酸(4.26),ピメ
リン酸(4.31),アゼライン酸(4.39),フマ
ル酸(2.85)],オキシカルボン酸[グリコール酸
(3.63),乳酸(3.66),リンゴ酸(3.2
4),酒石酸(2.82−2.99),クエン酸(2.
87)]、アルデヒド酸又はケトン酸[グリオキシル酸
(3.18),ピルビン酸(2.26),レブリン酸
(4.44)]、芳香族モノカルボン酸[アニリンスル
ホン酸(3.74−3.23),安息香酸(4.2
0),アミノ安息香酸(2.02−3.12),クロロ
安息香酸(2.92−3.99),シアノ安息香酸
(3.60−3.55),ニトロ安息香酸(2.17−
3.45),ヒドロキシ安息香酸(4.08−4.5
8),アニス酸(4.09−4.48),フルオロ安息
香酸(3.27−4.14),クロロ安息香酸,ブロモ
安息香酸(2.85−4.00),ヨード安息香酸
(2.86−4.00)の置換基を有する安息香酸,サ
リチル酸(2.81),ナフトエ酸(3.70−4.1
6),ケイ皮酸(3.88),マンデル酸(3.1
9)]、芳香族多価カルボン酸[フタル酸(2.7
5),イソフタル酸(3.50),テレフタル酸(3.
54)]、複素環式モノカルボン酸[ニコチン酸(2.
05),2−フランカルボン酸(2.97)],複素環
式多価カルボン酸[2,6−ピリジンジカルボン酸
(2.09)]が例示できる。
【0024】有機酸には、アミノ酸類[すなわち、アミ
ノ酸やアミノ酸誘導体(置換基を有するアミノ酸,2〜
5個程度のアミノ酸で構成されたペプチド)]も含まれ
る。アミノ酸類には、例えば、アミノ酸[アスパラギン
(2.14),アスパラギン酸(1.93),アデニン
(4.07),アラニン(2.30),β−アラニン
(3.53),アルギニン(2.05),イソロイシン
(2.32),グリシン(2.36),グルタミン
(2.17),グルタミン酸(2.18),セリン
(2.13),チロシン(2.17),トリプトファン
(2.35),トレオニン(2.21),ノルロイシン
(2.30),バリン(2.26),フェニルアラニン
(2.26),メチオニン(2.15),リシン(2.
04),ロイシン(2.35)],アミノ酸誘導体[ア
デノシン(3.50),アデノシン三リン酸(4.0
6),アデノシンリン酸(3.65−3.80),L−
アラニル−L−アラニン(3.20),L−アラニルグ
リシン(3.10),β−アラニルグリシン(3.1
8),L−アラニルグリシルグリシン(3.24),β
−アラニルグリシルグリシン(3.19),L−アラニ
ルグリシルグリシルグリシン(3.18),グリシル−
L−アラニン(3.07),グリシル−β−アラニン
(3.91),グリシルグリシル−L−アラニン(3.
18),グリシルグリシルグリシン(3.20),グリ
シルグリシルグリシルグリシン(3.18),グリシル
グリシル−L−ヒスチジン(2.72),グリシルグリ
シルグリシル−L−ヒスチジン(2.90),グリシル
−DL−ヒスチジルグリシン(3.26),グリシル−
L−ヒスチジン(2.54),グリシル−L−ロイシン
(3.09),γ−L−グルタミル−L−システイニル
グリシン(2.03),N−メチルグリシン(サルコシ
ン,2.20),N,N−ジメチルグリシン(2.0
8),シトルリン(2.43),3,4−ジヒドロキシ
フェニルアラニン(2.31),L−ヒスチジルグリシ
ン(2.84),L−フェニルアラニルグリシン(3.
02),L−プロリルグリシン(3.07),L−ロイ
シル−L−チロシン(3.15)」が例示できる。
【0025】酸としては、通常、有機酸、例えば、脂肪
族モノカルボン酸[ギ酸,クロロ酢酸のハロ酢酸、ハロ
プロピオン酸,アクリル酸の飽和又は不飽和C1−3モ
ノカルボン酸],脂肪族多価カルボン酸[マロン酸,コ
ハク酸,グルタル酸,フマル酸の飽和又は不飽和C2-4
ジカルボン酸],オキシカルボン酸[グリコール酸,乳
酸,リンゴ酸,酒石酸,クエン酸のC1−6オキシカル
ボン酸]、アミノ酸又はその誘導体を用いる場合が多
い。これらの酸は非水溶性や水溶性のいずれであっても
よい。酸は遊離酸として用いてもよく、アルカリ金属塩
又はアルカリ土類金属塩として用いてもよい。アルカリ
金属としては、リチウム,カリウム,ナトリウムが例示
でき、アルカリ土類金属としては、カルシウム,マグネ
シウム,バリウム,ストロンチウムが例示できる。好ま
しいアルカリ金属には、ナトリウムが含まれ、好ましい
アルカリ土類金属には、カルシウム,マグネシウムが含
まれる。これらのアルカリ金属,アルカリ土類金属はそ
れぞれ単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、アル
カリ金属とアルカリ土類金属とを併用してもよい。前記
酸およびその金属塩の総含有量は、溶液の0.002〜
2質量%であり、より好ましくは0.005〜1質量%
であり、さらに好ましくは0.01〜0.5質量%であ
る。
【0026】なお、酸解離指数pKa4.5以下のの酸
又はその金属塩とを有するセルロースエステル溶液は、
最終的にその流延前のセルロースエステル溶液中に前記
酸又はその金属塩が存在すればよく、その添加位置はど
の段階でもよく特に限定されない。それらは、任意の工
程例えばセルロースエステルの製造工程(例えば、加水
分解・熟成工程終了後の耐熱安定剤の添加工程)やセル
ロースエステルの製造後に行うことができる。また、酸
又はその金属塩による処理は、粉粒状、フレーク状セル
ロースアセテートの洗浄や浸漬処理,含浸処理により行
ってもよい。さらに前記混合や処理は、セルロースエス
テルを含むドープに酸又はその金属塩を添加することに
より行ってもよい。ここで、前記酸解離指数pKaの酸
又はその金属塩の混合や処理は、作業性を損なわない適
当な温度、例えば、−10〜50℃(好ましくは0〜5
0℃)の温度で行うことができ、混合又は処理時間は、
適当な範囲例えば1分〜12時間程度の範囲から選択で
きる。このような特定pKaの酸又はその金属塩を用い
ると、セルロースアセテート及び/又はヘミセルロース
アセテートに結合するカルボキシル基のうち少なくとも
一部を酸型のカルボキシル基として存在させることがで
き、これが流延やフイルム面状に優れる要因となる。
【0027】非塩素系有機溶媒は、酢酸メチル、炭素原
子数3〜6のケトンおよび炭素原子数1〜4のアルコー
ルからなる。炭素数3〜6のケトンとしてはアセトン、
メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケ
トン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびジア
セトンアルコール、アセト酢酸メチルが挙げられる。ア
セトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソ
ブチルケトン、シクロペンタノンが好ましく、アセト
ン、メチルエチルケトン、シクロペンタノンが特に好ま
しい。また炭素原子数1〜4のアルコールとしては、メ
タノール、エタノール、プロパノール、ブタノールが好
ましく、特に好ましくはメタノール、エタノール、ブタ
ノールである。なおアルコールとしては、フッ素系アル
コールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノー
ル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,
3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールも挙げられ
る。これらのケトン溶媒やアルコールは単独でもよいし
2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。
【0028】以上の混合溶媒は、酢酸メチルが20〜9
0質量%、ケトン溶媒が5〜60質量%さらにアルコー
ルが5〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、
さらに酢酸メチルが30〜86質量%、ケトン溶媒が7
〜50質量%、アルコールが7〜25質量%含まれるこ
とが好ましく、特に酢酸メチルが30〜80質量%、ケ
トン溶媒が10〜50質量%、アルコールが10〜20
質量%含まれることが好ましい。好ましいこれらの溶媒
の組み合わせの具体例は、以下のものを挙げることがで
きる。セルロースエステル/酢酸メチル/メチルエチル
ケトン/アセトン/メタノール/エタノール (X/
(50−X)/20/20/5/5、質量部)、セルロ
ースエステル/酢酸メチル/アセトン/アセト酢酸メチ
ル/エタノール (X/(75−X)/20/10/
5、質量部)、セルロースエステル/酢酸メチル/シク
ロペンタノン/メタノール/エタノール(X/(80−
X)/10/5/5、質量部)、セルロースエステル/
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール(X/
(80−X)/20/5/5、質量部)、セルロースエ
ステル/酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/
メタノール/エタノール/ブタノール(X/(80−
X)/10/5/5/5/5、質量部)好ましい組み合
わせである。ここでXはセルロースエステルの質量部を
表わし、好ましくは5〜25であり特には10〜25で
ある。
【0029】さらに具体的な溶媒の好ましい比率を以下
に記載する。好ましいこれらの溶媒の組み合わせについ
ての具体例は、以下のものを挙げることができる。酢酸
メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノー
ル(75/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/
アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(7
5/10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/アセト
ン/メタノール/エタノール/シクロヘキサン(75/
10/5/5/5、質量部)、酢酸メチル/メチルエチ
ルケトン/メタノール/エタノール(80/10/5/
5、質量部)、酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケ
トン/エタノール(75/10/10/5、質量部)、
酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/エタノー
ル(80/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/シク
ロペンタノン/メタノール/エタノール(80/10/
5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロペンタノン/ア
セトン/メタノール/エタノール(60/15/15/
5/5、質量部)、酢酸メチル/シクロヘキサノン/メ
タノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノー
ル/エタノール(50/20/20/5/5、質量
部)、酢酸メチル/1、3ジオキソラン/メタノール/
エタノール(70/20/5/5、質量部)、酢酸メチ
ル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール
(60/20/10/5/5、質量部)、酢酸メチル/
アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール
/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質
量部)、ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/
メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、
質量部)、ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノ
ール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/
5/5、質量部)、アセトン/アセト酢酸メチル/メタ
ノール/エタノール(65/20/10/5、質量
部)、アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタ
ノール(65/20/10/5、質量部)、アセトン/
1,3ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/
20/10/5、質量部)、1、3ジオキソラン/シク
ロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタ
ノール(55/20/10/5/5/5、質量部)、ア
セトン/塩化メチレン/メタノール(85/5/5、質
量部)、酢酸メチル/塩化メチレン/メタノール/エタ
ノール(70/10/15/5、質量部)、1、3−ジ
オキソラン/塩化メチレン/メタノール/ブタノール
(70/15/10/5、質量部)、1、4−ジオキサ
ン/塩化メチレン/アセトン/メタノール/ブタノール
(70/5/15/5/5、質量部)、シクロヘキサノ
ン/塩化メチレン/アセトン/メタノール/エタノール
/プロパノール(60/10/15/5/5/5、質量
部)をあげることができ、好ましい組み合わせである。
ドープには、上記の有機溶媒以外に、メチレンクロライ
ドを全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
【0030】なお、セルロースエステルの溶解に当たっ
ては、予め室温でセルロースエステルを溶媒に膨潤させ
ることが好ましい。すなわち、溶媒にセルロースエステ
ル粉末を良く攪拌しつつ添加するか、あるいはその逆と
してセルロースエステルに該溶媒を添加することで、セ
ルロースエステルの膨潤液を作製することができる。な
お、溶媒はすべて混合した溶媒でもよく、いずれか一種
の溶媒を別々に添加してもよく特に限定されない。アル
コールを先に添加することでセルロースエステルを凝集
させることなく溶解しやすい場合があり好ましく用いら
れる。膨潤に好ましい時間は0.1〜24時間が好まし
く、より好ましくは0.2〜6時間であり、更には0.
5〜3時間である。セルロースエステルと溶媒の混合は
粘度が著しくアップするため、強力な攪拌装置が好まし
く場合によりニーダーを用いたり、スクリュー押出し機
を通過させたりすることが好ましい。たとえば攪拌の場
合は、その攪拌翼の周速が0.01〜2m/秒が好まし
く、更には0.05〜1.5m/秒であり、特には0.
05〜1m/秒である。また、攪拌時のセルロースエス
テルのせん断力は1〜10万kgf/sec2 が好まし
く、更には10〜1万kgf/sec2 が好ましい。
【0031】冷却溶解法では、膨潤されたセルロースエ
ステル溶液が、−100〜−10℃、好ましくは−80
〜−10℃、さらに好ましくは−80〜−30℃、最も
好ましくは−80〜−50℃に冷却される。冷却は、例
えば、機械的冷凍機(−100℃)、ドライアイス・メ
タノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコー
ル溶液(−30〜−20℃)で実施できる。このように
冷却すると、セルロースエステルと有機溶媒の混合物は
固化する。冷却速度は、特に限定されないがバッチ式で
の冷却の場合は、冷却に伴いセルロースエステル溶液の
粘度が上がり、冷却効率が劣るために所定の冷却温度に
達するために効率よい溶解タンクとすることが必要であ
る。また、セルロースエステル溶液は膨潤させたあと、
所定の冷却温度にした冷却装置を短時間移送することで
達成できる。冷却時間についても特に限定されないが、
短いほど生産性上で好ましく、その時間は0.5〜18
0分が好ましく、より好ましくは0.5〜30分であ
り、特に好ましくは0.5〜10分である。冷却して得
られたセルロースエステル溶液は、次に0〜50℃に加
温することが好ましく、これにより有機溶媒中にセルロ
ースエステルが流動する溶液となる。
【0032】さらにセルロースエステルの有機溶媒混合
液は、0.3Mp〜30Mpaの加圧下で70〜200
℃に加熱して溶解する方法でも調製できる。この場合、
その加熱温度は好ましくは70〜180℃、更に好まし
く70〜160℃である。加熱時間は特に限定されない
が短いほど好ましく、0.5〜60分が好ましく、より
好ましくは0.5〜30分であり、特に好ましくは1〜
10分である。加熱の方法は特に限定されず、例えば高
圧蒸気でもよく電気熱源でもよい。さらに炭酸ガスを溶
媒に共存させ、所謂超臨界状態での溶解方法をとっても
よく、二酸化炭素が溶液中の5〜30質量%であること
が好ましい。この場合は、より低い温度の高圧下で溶解
を達成できる。高圧のためには耐圧容器あるいは耐圧ラ
インを必要とするが、鉄やステンレス製あるいは他の金
属耐圧容器やラインのいずれでもよく、特に限定されな
い。
【0033】次にこの加熱溶液はそのままでは取り扱い
ができないため、使用された溶媒の最も低い沸点以下に
冷却する必要がある。その場合、−10〜50℃に冷却
して常圧に戻すことが一般的である。冷却はセルロース
エステル溶液が内蔵されている高圧高温容器やライン
を、室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却
水の冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。なお、溶解
を早めるために加熱と冷却の操作を繰り返してもよい。
溶解が十分であるかどうかは、目視により溶液の概観を
観察するだけで判断することができる。高圧高温溶解方
法においては、溶媒の蒸発を避けるために密閉容器を用
いる。また、膨潤工程おいて、加圧や減圧にしたりする
ことで更に溶解時間を短縮することが出来る。加圧及び
減圧を実施するためには、耐圧性容器あるいはラインが
必須である。以上の冷却と高温高圧によりセルロースエ
ステル溶液は作製できるが、その順序はどちらでもよく
特に限定されない。しかし、作製したセルロースエステ
ル溶液をろ過および流延するためには、常温で実施する
ことが好ましく、したがって冷却した後の高温高圧にし
て溶解することがより好ましい。前述の冷却溶解方法と
高温高圧溶解方法を単独で実施してもよいし、両方を実
施してもよい。
【0034】上記で得られた溶液は高濃度が特徴であ
り、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性
の優れたセルロースエステル溶液が得られる。しかし場
合により、更に溶解し易くするために低い濃度で溶解し
てから、しかる後に濃縮手段を用いて濃縮してもよい。
濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例え
ば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回
転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との
間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を
得る方法(特開平4−259511号公報記載)、加熱
した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液を
ノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシ
ュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、
高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(米国特許254
1012号、同2858229号、同4414341
号、同4504355号の各明細書に記載)で実施でき
る。
【0035】セルロースエステル溶液には、各調製工程
において用途に応じた種々の添加剤を加えることができ
る。またその添加する時期はドープ作製工程において何
れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製
工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよ
い。それらの添加剤は、可塑剤、紫外線防止剤や劣化防
止剤(例、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル禁止
剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン)である。好ま
しく添加される可塑剤としては、リン酸エステルまたは
カルボン酸エステルが用いられる。リン酸エステルの例
には、トリフェニルフォスフェート(TPP)およびト
リクレジルホスフェート(TCP)、が含まれる。カル
ボン酸エステルとしては、フタル酸エステルおよびクエ
ン酸エステルであり、ジブチルフタレート(DBP)、
ジオクチルフタレート(DOP)およびジエチルヘキシ
ルフタレート(DEHP)が含まれる。クエン酸エステ
ルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル(OAC
TE)およびO−アセチルクエン酸トリブチル(OAC
TB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチ
ルトリブチル、が含まれる。これらの可塑剤は1種でも
よいし2種以上併用してもよい。可塑剤の添加量はセル
ロースエステルに対して5〜30質量%以下、特に8〜
16質量%以下が好ましい。これらの化合物は、セルロ
ースエステル溶液の調製の際に、セルロースエステルや
溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添
加してもよい。その他、光学的異方性を小さくする可塑
剤として、特開平11−124445号公報に記載の
(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−
246704号公報に記載のグリセロールエステル類、
特開2000−63560号公報に記載のジグリセロー
ルエステル類、特開平11−92574号公報に記載の
クエン酸エステル類、特開平11−90946号公報に
記載の置換フェニルリン酸エステル類が好ましく用いら
れる。
【0036】劣化防止剤や紫外線防止剤については、特
開昭60−235852号、特開平3−199201
号、同5−1907073号、同5−194789号、
同5−271471号、同6−107854号、同6−
118233号、同6−148430号、同7−110
56号、同7−11055号、同7−11056号、同
8−29619号、同8−239509号、特開200
0−204173号の各公報に記載がある。劣化防止剤
の添加量は、調製するセルロースエステル溶液(ドー
プ)の0.01〜1質量%であることが好ましく、0.
01〜0.2質量%であることがさらに好ましい。特に
好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシ
トルエン(BHT)を挙げることができる。更に好まし
くは一種または二種以上の紫外線吸収剤をセルロースエ
ステル溶液は含有する。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の
劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸
収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400
nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。例え
ば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾー
ル系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェ
ノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル
錯塩系化合物が挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤
は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化
合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、
セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことか
ら、好ましい。
【0037】これらの化合物の添加量は、セルロースエ
ステルに対して質量割合で0.001〜5.0質量%が
好ましく、0.002〜3質量%が更に好ましい。セル
ロースエステル溶液中に光学異方性をコントロールする
ためのレターデーション上昇剤が、場合により添加され
る。これらは、セルロースエステルフイルムのレターデ
ーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を
有する芳香族化合物をレターデーション上昇剤として使
用することが好ましい。光学特性について記す。フイル
ムの面内のレターデーション(Re)は0〜300nm
の範囲で用途に応じて用いられる。又、フイルムの厚さ
方向のレターデーション(Rth)も重要であり、セルロ
ースエステルフイルムのRthは100μm当たり、0n
m〜600nmであり、さらには0nm〜400nmで
用いられる。
【0038】また、感材用支持体としては、ライトパイ
ピング防止用の着色剤化合物を添加してもよい。セルロ
ースエステルフイルムの易滑性(軋みを防止する)や高
湿度下での耐接着性の改良のために微粒子(マット剤)
を使用することが好ましい。セルロースエステルフイル
ムは、その表面の突起物の平均高さが0.005〜10
μmであり、好ましくは0.01〜5μmであり、球
形、不定形マット剤で突起物を形成する場合はその含有
量が0.5〜600mg/m2 であり、より好ましいの
は1〜400mg/m2 である。この時、使用されるマ
ット剤としてはその組成において特に限定されず、無機
物でも有機物でもよく2種類以上の混合物でもよい。マ
ット剤はたとえばシリカ、カオリン、タルク、ケイソウ
土、石英、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタ
ン、アルミナ、マンガンコロイド、二酸化チタン、硫酸
ストロンチウムバリウム、二酸化ケイ素、の無機物の微
粉末が好ましい。アルカリ土類金属(例、カルシウム、
マグネシウム)の塩などの熱安定剤も好ましい。
【0039】溶液は流延に先だって金網、紙やネルなど
の適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの
異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースエス
テル溶液の濾過には絶対濾過精度が0.05〜100μ
mのフィルタを用いられ、さらには絶対濾過精度が0.
5〜10μmであるフィルタを用いることが好ましい。
その場合、16kg/cm2 以下(好ましくは12kg
/cm2 以下、更に好ましくは10kg/cm2 以下、
特に好ましくは2kg/cm2 以下の濾過圧力で濾過す
ることが好ましい。
【0040】セルロースエステル溶液を用いたフイルム
の製造方法について述べる。セルロースエステルフイル
ムを製造する方法及び設備は、従来セルロースエステル
フイルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製
膜装置が用いられる。溶解タンク(釜)から調製された
ドープ(セルロースエステル溶液)をストックタンクで
一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡したり最終
調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数
によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプ
を通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金
(スリット)からエンドレスに走行している流延部の支
持体の上に均一に流延され、支持体がほぼ一周した剥離
点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を支持体か
ら剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、
幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥
装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所
定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置と
の組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写
真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる
溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他
に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層
等の支持体への表面加工のために、塗布装置が付加され
ることが多い。
【0041】得られたセルロースエステル溶液を、支持
体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液とし
て流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースエス
テル液を流延する、所謂共流延してもよい。複数のセル
ロースエステル溶液を流延する場合、支持体の進行方向
に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースエス
テルを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフ
イルムを作製してもよく、例えば特開昭61−1584
14号、特開平1−122419号および特開平11−
198285号の各公報などに記載の方法が適応でき
る。また、2つの流延口からセルロースエステル溶液を
流延することによってもフイルム化することでもよく、
例えば特公昭60−27562号、特開昭61−947
24号、特開昭61−947245号、特開昭61−1
04813号、特開昭61−158413号および特開
平6−134933号の各公報に記載の方法で実施でき
る。また、特開昭56−162617号公報に記載の高
粘度セルロースエステル溶液の流れを低粘度のセルロー
スエステル溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロー
スエステル溶液を同時に押出すセルロースエステルフイ
ルム流延方法でもよい。
【0042】或いはまた2個の流延口を用いて、第一の
流延口により支持体に成型したフイルムを剥ぎ取り、支
持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでよ
り、フイルムを作製することでもよく、例えば特公昭4
4−20235号公報に記載されている方法である。共
流延の場合の膜厚は、各層の厚さは特に限定されない
が、好ましくは外部層が内部層より薄いことが好ましく
用いられる。その際の外部層の膜厚は、1〜50μmが
好ましく、特に好ましくは1〜30μmである。また、
最外層に機能性材料を添加することが好ましく、例えば
離型剤やマット剤などを添加することが好ましく、これ
によりフイルム膜の特性を変えることなく、所望のフイ
ルムを作製することができる。さらにセルロースエステ
ル溶液は、他の機能層(例、接着層、染料層、帯電防止
層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層)を同
時に流延することも実施しうる。
【0043】セルロースエステルフイルムの製造に係わ
る支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には支持体
(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり支持体上にあ
るウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベ
ルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールし
た液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側の裏面
から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱
し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがある
が、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の支持
体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下
であれば何度でもよい。セルロースエステルフイルムの
乾燥工程における乾燥温度は30〜250℃、特に40
〜180℃が好ましく、特公平5−17844号公報に
記載がある。
【0044】更には、積極的に幅方向に延伸する方法も
あり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4
−152125号、同4−284211号、同4−29
8310号および同11−48271号の各公報などに
記載されている。これは、セルロースエステルフイルム
の面内レターデーション値を高い値とするためには、製
造したフイルムを延伸される。フイルムの延伸は、常温
または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フイルムの
ガラス転移温度以下であることが好ましい。フイルムの
延伸は、一軸延伸でもよく2軸延伸でもよい。フイルム
の延伸倍率(元の長さに対する延伸による増加分の比
率)は、10〜30%であることが好ましい。
【0045】出来上がり(乾燥後)のセルロースエステ
ルフイルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常
5〜500μmの範囲であり、更に20〜250μmの
範囲が好ましく、特に30〜180μmの範囲が最も好
ましい。なお、光学用途としては30〜110μmの範
囲が特に好ましい。フイルム厚さの調製は、所望の厚さ
になるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの
口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、支持体
速度等を調節すればよい。
【0046】セルロースエステルフイルムの表面処理を
行うことによって、セルロースエステルフイルムと各機
能層(例、下塗層、バック層)との接着の向上を達成す
ることができる。グロー放電処理、紫外線照射処理、コ
ロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いるこ
とができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3
20Torrの低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマ
のことである。また、セルロースエステルフイルムの表
面処理として好ましく用いられるアルカリ鹸化処理を具
体的に説明する。セルロースエステルフイルム表面をア
ルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して
乾燥するサイクルで行われることが好ましい。アルカリ
溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム
溶液が挙げられ、水酸化イオンの規定濃度は0.1N〜
3.0Nであることが好ましく、0.5N〜2.0Nで
あることがさらに好ましい。アルカリ溶液温度は、室温
乃至90℃の範囲が好ましく、40℃乃至70℃がさら
に好ましい。次に一般には水洗され、しかる後に酸性水
溶液を通過させた後に、水洗して表面処理したセルロー
スエステルフイルムを得る。この時、酸としては塩酸、
硝酸、硫酸、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、シュウ酸などで
あり、その濃度は0.01N〜3.0Nであることが好
ましく、0.05N〜2.0Nであることがさらに好ま
しい。セルロースエステルフイルムが偏光板の透明保護
膜として使用する場合、偏光膜との接着性の観点から、
酸処理またはアルカリ処理、すなわちセルロースアセテ
ートに対するケン化処理を実施することが特に好まし
い。
【0047】セルロースエステルフイルム支持体と機能
層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたの
ち、直接セルロースエステルフイルム上に機能層を塗布
して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をし
た後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設
けこの上に機能層を塗布することも好ましい。
【0048】偏光板用保護膜の構成においては、セルロ
ースエステルフイルムの少なくとも一層に帯電防止層を
設けたり、偏光子と接着するための親水性バインダー層
が設けられることが好ましい。導電性素材としては、導
電性金属酸化物や導電性ポリマーが好ましい。なお、蒸
着やスパッタリングによる透明導電性膜でもよい。導電
性層は、最外層でもよいし、内部層でも問題はない。導
電層の送電性は、抵抗が10E0〜10E12Ωである
ことが好ましく、特には10E0〜10E10Ωである
ことが好ましい。金属酸化物が好ましく、例としてはZ
nO、TiO2、SnO2 、Al2 3 、In2 3
SiO2 、MgO、BaO、MoO2 、V2 5 等、或
いはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、Sn
2 あるいはV2 5 が好ましい。これらの導電性金属
化合物は、結晶性でもよく非晶質でもよく、形態は球状
でも針状でも鱗片状でもゾル状でもよく特に限定されな
い。1次粒子径が100Å以上0.2μm以下で、これ
らの凝集体の高次構造の長径が300Å以上6μm以下
である特定の構造を有する粉体を導電層に体積分率で
0.01%以上20%以下含んでいることが好ましい。
これらの導電性を有する金属化合物の体積抵抗率は10
E−6Ω・cm〜10E5Ω・cmであって、特に好ま
しくい体積抵抗率は10E−6Ω・cm〜10E2Ω・
cmである。
【0049】導電性イオン性高分子化合物としては、特
公昭49−23828号、同49−23827号および
同47−28937号の各公報にみられるようなアニオ
ン性高分子化合物;特公昭55−734号、特開昭50
−54672号、特公昭59−14735号、同57−
18175号、同57−18176号および同57−5
6059号の各公報などにみられるような、主鎖中に解
離基をもつアイオネン型ポリマー;特公昭53−132
23号、同57−15376号、特公昭53−4523
1号、同55−145783号、同55−65950
号、同55−67746号、同57−11342号、同
57−19735号、特公昭58−56858号、特開
昭61−27853および特開昭62−9346の各公
報にみられるような、側鎖中にカチオン性解離基をもつ
カチオン性ペンダント型ポリマー;等を挙げることがで
きる。さらに導電性材料として、有機電子伝導性材料も
このましく、例えばポリアニリン誘導体、ポリチオフェ
ン誘導体、ポリピロール誘導体、ポリアセチレン誘導体
などを挙げることができる。
【0050】いずれかの機能性層に界面活性剤が好まし
く用いられ、ノニオン性、カチオン性、ベタイン性のい
ずれも使用できる。さらにそれらのフッ素系界面活性剤
も有機溶媒中での塗布剤としたり、帯電防止剤として好
ましく用いられる。また、セルロースエステルフイルム
の上のいずれかの層に滑り剤を含有させることが好まし
いが、例えば、特公昭53−292号公報に開示されて
いるようなポリオルガノシロキサン、米国特許第4、2
75、146号明細書に開示されているような高級脂肪
酸アミド、特公昭58−33541号および英国特許第
927、446号の各明細書、或いは特開昭55−12
6238号及び同58−90633号の各公報に開示さ
れているような高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24
の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールのエステル)
等が知られている。
【0051】セルロースエステル溶液からなるセルロー
スエステルフイルムは、様々な用途で用いることができ
る。セルロースエステルフイルムは、液晶表示装置の光
学補償シートとして用いると特に効果がある。セルロー
スエステルフイルムには、フイルムそのものを光学補償
シートとして用いることができる。なお、フイルムその
ものを光学補償シートとして用いる場合は、偏光素子
(後述)の透過軸と、セルロースエステルフイルムから
なる光学補償シートの遅相軸とを実質的に平行または垂
直になるように配置することが好ましい。このような偏
光素子と光学補償シートとの配置については、特開平1
0−48420号公報に記載がある。液晶表示装置は、
二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、そ
の両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セル
と該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シート
を配置した構成を有している。液晶セルの液晶層は、通
常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成し
た空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電
性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セ
ルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるい
は(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層を設
けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられ
る。液晶セルの基板は、一般に80〜500μmの厚さ
を有する。
【0052】光学補償シートは、液晶画面の着色を取り
除くための複屈折率フイルムである。セルロースエステ
ルフイルムは、光学補償シートとして用いることができ
る。さらに反射防止層、防眩性層、λ/4層や2軸延伸
セルロースエステルフイルムとして機能を付与してもよ
い。また、液晶表示装置の視野角を改良するため、セル
ロースエステルフイルムと、それとは(正/負の関係
が)逆の複屈折を示すフイルムを重ねて光学補償シート
として用いてもよい。光学補償シートの厚さの範囲は、
前述したフイルムの好ましい厚さと同じである。偏光素
子の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる
染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。いずれの偏光
膜も、一般にポリビニルアルコール系フイルムを用いて
製造する。偏光板の保護膜は、25〜350μmの厚さ
を有することが好ましく、30〜200μmの厚さを有
することがさらに好ましい。液晶表示装置には、表面処
理膜を設けてもよい。表面処理膜の機能には、ハードコ
ート、防曇処理、防眩処理および反射防止処理が含まれ
る。前述したように、支持体の上に液晶(特にディスコ
ティック液晶性分子)を含む光学的異方性層を設けた光
学補償シートも提案されている(特開平3−9325
号、同6−148429号、同8−50206号および
同9−26572号の各公報記載)。セルロースエステ
ルフイルムは、そのような光学補償シートの支持体とし
ても用いることができる。セルロースエステルフイルム
は、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置
の光学補償シートの支持体、OCBモードの液晶セルを
有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液
晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シート
の支持体、ASM(Axially Symmetric Aligned Microc
ell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置
の光学補償シートの支持体として好ましく用いられる。
【0053】
【実施例】各実施例において、特性は以下のように評価
した。 (1)フイルムの縦筋状ムラ(スジムラと略称) 得られたフイルムを目視で観察し、その縦筋状ムラの欠
陥を以下の如く評価した。 A:フイルムに縦筋状ムラは認められない。 B:フイルムに縦筋状ムラがわずかに認められた。 C:フイルムに縦筋状ムラがかなり認められた。 D:フイルムに縦筋状ムラが多量認められた。
【0054】(2)フイルムのブツ(ブツと略称) 得られたフイルムを目視で観察し、その表面上のブツを
以下の如く評価した。 A:フイルム表面にブツは認められなかった。 B:フイルム表面にブツがわずかに認められた。 C:フイルム表面にかなりのブツが認められた。 D:フイルム表面に凹凸が見られ、ブツが多数認められ
た。
【0055】(3)フイルムの耐折試験 120mmに切りだした試料をISO8776/2−1
988の規格に従い、折り曲げよって切断するまでの往
復回数を求めた。
【0056】(4)フイルムの光学的欠陥(白抜けブツ
と略称) クロスニコル(直交)して置かれた2枚の偏光子の間に
得られたセルロースエステルフイルムを挟み、一方から
光を照射して他方から観察する。この時観察される3m
m2当たりの5μm以上の白抜けブツを下記のように評
価した(透過顕微鏡100倍)。 A:白抜けブツが20個以下であった。 B:白抜けブツが20〜50個認められた。 C:白抜けブツが50〜100個認められた。 D:白抜けブツが100個以上認められた。 (5)フイルムのヘイズ ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)製)を
用いて測定した。
【0057】[実施例1] (1−1)セルローストリアセテート溶液の作製 下記の処方にてセルローストリアセテート溶液を作製し
た。攪拌羽根を有する20Lのステンレス性溶解タンク
(予めメチレンクロライドで十分洗浄した)に、下記の
溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセテ
ート粉体(平均サイズ 2mm)を徐々に添加し、全体
が10kgになるように仕込んだ。添加後、室温(25
℃)にて3時間、25℃にて放置しセルローストリアセ
テートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとシ
クロペンタノン、アセトン、メタノール及びエタノール
は、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用
した。
【0058】 ──────────────────────────────────── セルロースアセテート溶液組成 ──────────────────────────────────── セルローストリアセテートA 20質量部 酢酸メチル 40質量部 酢酸エチル 3質量部 シクロペンタノン 3質量部 アセトン 12質量部 メタノール 5質量部 エタノール 5質量部 C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−(OK)2 (剥離剤) 0.05質量部 ジペンタエリスリトールヘキサアセテート(可塑剤A) 6質量部 トリフェニルフォスフェート(可塑剤B) 6質量部 粒径20nmのシリカ微粒子 0.3質量部 2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ− tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(UV剤a)0.2質量部 2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロ ルベンゾトリアゾール(UV剤b) 0.2質量部 2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロ ルベンゾトリアゾール(UV剤c) 0.2質量部 ────────────────────────────────────
【0059】ここでセルローストリアセテートAは、特
開平10−130301号公報に準じて作製した。α−
セルロースの含有量は94%で、中性構成糖分中に含ま
れるマンノース含有量が1.4モル%、キシロース含有
量が1.52モル%でありそのマンノース/キシロース
モル比は0.92であり、総含有量は3モル%であった
(セルローストリアセテートAとする)。なお、セルロ
ーストリアセテートAは酢化度59.7%、粘度平均重
合度320、含水率0.6質量%、メチレンクロライド
溶液中6質量%の粘度は320mPa・sであった。
【0060】(1−2)セルローストリアセテートフイ
ルム溶液の作製(冷却溶解) (1−1)のセルローストリアセテート溶液をスクリュ
ーポンプで送液して、−70℃で3分間となるように冷
却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃
の冷媒を用いて実施した。そして、冷却により得られた
溶液はステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪
拌した。そして、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東
洋濾紙(株)製、#63)で濾過した。
【0061】(1−3)セルローストリアセテートフイ
ルム溶液の作製(高温高圧溶解) (1−1)で得られたセルローストリアセテート溶液を
スクリューポンプで送液して、180℃、1Mpaに加
温加圧した加熱部分を3分間通過させた後50℃に冷却
し、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)
製、#63)で濾過した。
【0062】(1−4)セルローストリアセテートフイ
ルム溶液の作製(冷却溶解/高温高圧溶解) (1−1)で得られたセルローストリアセテート溶液を
(1−2)に準じて冷却溶解し、ろ過することなく続い
て(1−3)の高温高圧溶解した。50℃に冷却した後
絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、
#63)で濾過した。
【0063】(1−5)セルローストリアセテートフイ
ルムの作製 (1−2)、(1−3)又は(1−4)の溶解法を用い
て(1−1)のセルローストリアセテート混合溶液から
得られたセルローストリアセテート溶液を50℃にし、
流延ギーサーを通して鏡面ステンレス支持体上に流延し
た。支持体温度は10℃であり、流延スピードは30m
/分でその塗布幅は100cmとした。乾燥は55℃の
乾燥風を送風した。10分後に鏡面ステンレス支持体か
ら剥ぎ取り、しかる後に110℃、10分、更に150
℃で30分乾燥して、セルローストリアセテートフイル
ム(膜厚80μm)の試料11、12、13を得た。
【0064】(1−6)結果 表1に記載のように、規定範囲内の含水率を有するセル
ローストリアセテートを用いて作製されたフイルムは、
スジムラ,ブツ及びヘイズのすべてを満足するものであ
った。これに対し規定範囲を超える比較用セルロースト
リアセテートを用いて作製された比較試料14〜17は
スジムラ、ブツの悪化が見られまたヘイズも高めのもの
であった。以上から、セルローストリアセテートのマン
ノースとキシロースのモル比を有するセルローストリア
セテートが、スジムラ、ブツ及びヘイズの点で優れるこ
とが明白である。
【0065】
【表1】
【0066】ここで比較例で用いたセルローストリアセ
テートaはセルロース含有量98%、中性構造糖分中に
含まれるマンノース含有量0.28モル%、キシロース
含有量1.05モル%の比較用セルローストリアセテー
トを用いた以外は、試料11と全く同様にして比較フイ
ルム14〜16を作製し評価した。また、比較例で用い
たセルローストリアセテートbはセルロース含有量92
%、中性構造糖分中に含まれるマンノース含有量3.2
モル%、キシロース含有量2.5モル%の比較用セルロ
ーストリアセテートを用いた以外は、試料11と全く同
様にしてフイルム試料17を作製し評価した。なお、セ
ルローストリアセテートaは酢化度59.7%、粘度平
均重合度310、含水率0.5質量%、メチレンクロラ
イド溶液中6質量%の粘度 310mPa・sであっ
た。また、セルローストリアセテートbは酢化度59.
7%、粘度平均重合度305、含水率0.6質量%、メ
チレンクロライド溶液中6質量%の粘度 320mPa
・sであった。
【0067】[実施例2]試料11において、実施例1
の(1−1)セルローストリアセテート溶液の酢酸メチ
ル43質量部を酢酸メチル38部、アセトン10部に変
更する以外は実施例1と全く同様にして試料2−2を得
た。得られた試料2−2は、スジムラ,ブツ共にAであ
り白抜けもAで優れたものであった。
【0068】[実施例3]試料1−2について、実施例
1の(1−1)セルローストリアセテート溶液の酢酸メ
チル43質量部を酢酸メチル30部、ジオキソラン13
部に変更する以外は実施例1と全く同様にして試料3−
2を得た。得られた試料3−2は、スジムラ,ブツ共に
Aであり白抜けもAで優れたものであった。
【0069】[実施例4]試料1−1について、実施例
1の(1−1)セルローストリアセテート溶液のメタノ
ール5質量部をブタノール5質量部に変更する以外は実
施例1と全く同様にして試料4−1を得た。得られた試
料4−1は、スジムラ,ブツ共にAであり白抜けもAで
優れたものであった。
【0070】[実施例5]試料1−3について、実施例
1の(1−1)セルローストリアセテート溶液の作製
(高温高圧溶解)において、下記に変更する以外は実施
例1と全く同様にして試料5−3を得た。得られた試料
5−3は、スジムラ,ブツ共にAであり白抜けもAで優
れたものであった。すなわち、(1−2)で得られた冷
却溶解したセルローストリアセテートフイルムゲル状溶
液を−75℃に保ち、この中に粉砕したドライアイスを
溶液の20質量%加えよく混合させた。得られた二酸化
炭素入りのセルローストリアセテート溶液をスクリュー
ポンプで送液して、100℃、3Mpaに加温加圧した
加熱部分を3分間通過させた後50℃に冷却し、絶対濾
過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、#6
3)で濾過した。
【0071】[実施例6]実施例1の試料1−3におい
て、可塑剤A及びBを共に0質量部として除去する以外
は実施例.1と全く同様にして、試料6−3を作製し
た。得られた試料6−3はスジムラはBで若干悪化した
が実用上問題なく、ブツがAであり白抜けはAで問題な
かった。一方、その耐切試験を実施したところ試料1−
3は105回であるのに対し、規定範囲ではあるが可塑
剤がない試料6−3は、耐切試験は84回と実用状問題
ないが若干劣るものであった。従って、セルローストリ
アセテートフイルムが可塑剤を含有することが、より好
ましい態様であることが明らかである。
【0072】[実施例7]実施例1の試料1−2におい
てUV剤a、b、cを共に0質量部として除去する以外
は実施例1と全く同様にして試料7−2を作製した。得
られた試料7−2は、スジムラ、ブツ及び白抜け共に評
価Aであり優れたものであった。一方、その光褪色試験
をキセノンランプ3万ルクス、1ヶ月実施したところ、
試料1−2はヘイズ(日本電色工業(株)製、1001
DP型)が0.6%であるのに対し、規定範囲であるが
試料7−2はそのヘイズが0.9と若干アップした(こ
の時光褪色試験前の試料のヘイズは試料1−2は0.2
%であり、試料7−2は0.2%であった)。従って、
セルローストリアセテートフイルムがUV剤を含有する
ことが、より好ましい態様であることが明らかである。
【0073】[実施例8]実施例1の試料1−2におい
て微粒子のシリカを0質量部として除去する以外は実施
例1と全く同様にして試料8−2を作製した。得られた
試料8−2はスジムラ,ブツ及び白抜けは評価Aであ
り、ヘイズも0.1で優れたものであった。一方、その
フイルムを2枚重ねて滑りやすさを調べたところ、試料
1−2はスムーズに2枚を動かすことが出来るのに対
し、規定範囲であるが試料8−2はフイルム同士の動き
が若干悪かった。従って、セルローストリアセテートフ
イルムが微粒子を含有することが、より好ましい態様で
あることが明らかである。
【0074】[実施例9]試料1−2について、実施例
1の(1−1)セルローストリアセテート溶液にさらに
RZ−3(C1225OCH2 CH2 O−P(=O)−
(OK)2 )を0質量部添加する以外は実施例1と全く
同様にして試料9−2を得た。得られた試料9−2は、
スジムラ,ブツ及びしろ抜け共にAでありヘイズも0.
2で優れたものであった。なお、試料9−2は剥ぎ取り
時の荷重が試料1−2に比べて若干高く(約1.2倍の
荷重)アップ)劣るものであったが実用上問題ないもの
であった。以上から、剥離剤を添加することにより流延
したセルローストリアセテートフイルムを、支持体から
剥離させるのに優れたものであることが明らかである。
【0075】[実施例10]試料1−3について、実施
例1の(1−1)セルローストリアセテート溶液にさら
にWA−4(C8 17CH2 CH2 O(CH2 CH
2 O)16H)を0.05質量部添加する以外は実施例1
と全く同様にして試料10−3を得た。得られた試料1
0−3は、スジムラ,ブツ及びしろ抜けも共にAであり
ヘイズも0.2で優れたものであった。なお、試料10
−3はタバコの灰の付着がほとんどなかった。これに対
して、試料1−3はタバコの灰が付着するものであっ
た。以上からフッ素系界面活性剤を添加することにより
流延したセルローストリアセテートフイルムが、ゴミ付
きの点で優れたものであることが明らかである。
【0076】[実施例11]実施例1の試料1−2にお
いて、実施例1の(1−2)セルローストリアセテート
フイルムの作製を以下に変更する以外は、実施例1と全
く同様にして試料11−2のセルローストリアセテート
フイルムを作製した。すなわち、(1−1)で得られた
セルローストリアセテート溶液の一部を採液し、酢酸メ
チルを全体の10質量%添加して希釈したセルロースト
リアセテート溶液(溶液A)を作製した。得られた溶液
は、特開平06−134993号公報に記載の共流延法
に従って試料1−2のセルローストリアセテート溶液を
内部に、そしてその両側にセルローストリアセテート溶
液(溶液A)を積層共流延し、共流延セルローストリア
セテートフイルムを得た。なおその膜厚は、両側を3μ
mとし内部を34μmとして総厚が40μmとなるよう
にした。得られた試料11−2の面状は、試料1−2よ
りも表面が滑らかで凹凸がなく、スジムラ,ブツ及び白
抜けはAであり優れたものであった。従って、共流延す
ることが更に優れた態様であることが明らかである。
【0077】[実施例12]試料1−2について、実施
例1の(1−1)セルローストリアセテート溶液の酢酸
メチル48質量部をメチレンクロライド48質量部に、
またシクロペンタノンをメチレンクロライド10質量部
に変更する以外は実施例1と全く同様にして比較試料1
2−2を得た。得られた比較試料12−2は、スジムラ
はBであったが,ブツがCで劣るものであり、白抜けも
D更にヘイズも0.7と悪かった。したがって非ハロゲ
ン系有機溶媒が優れたものであることが明らかである。
【0078】[実施例13]特開平11−316378
号公報に記載の[実施例1]において、その第1透明支持
体を実施例1の試料1−2で得られるセルローストリア
セテートフイルム(第2フイルム)の厚さを100μm
としたものに変更する以外は、全く同様にして特開平1
1−316378号公報に記載の[実施例1]を実施し
た。得られた楕円偏光板は、優れた光学特性は優れたも
のであった。従って、製造工程において特定の洗浄溶液
を用いることで、その後に作製されるセルローストリア
セテートフイルムが光学偏光板に適応されても問題のな
い好ましい態様であることが明らかである。
【0079】[実施例14]実施例1の試料1−2のセ
ルローストリエステルフイルムに、特開平7−3334
33号公報に記載の実施例1の富士写真フイルム(株)
製セルローストリアセテートを、試料1−2のセルロー
ストリアセテートフイルムに変更する以外は、特開平7
−333433号公報に記載の実施例1と全く同様にし
た光学補償フィルターフイルム試料を作製した。得られ
たフィルターフイルムは左右上下に優れた視野角を有す
るものであった。したがって、セルローストリアセテー
トフイルムが、光学的用途として優れたものであること
が判る。
【0080】[実施例15]多種の光学用途の代表とし
て、試料1−2を特開平10−48420号公報の実施
例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公
報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む
光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向
膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記
載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261
号公報に記載の図10〜15に記載のOCB型液晶表示
装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0081】[実施例16]実施例1の試料1−2にお
いて、そのフイルム厚さを120μmとする以外は、実
施例1と全く同様にしてそのフイルムである試料16−
2を作製した。得られたフイルムの一方に、特開平4−
73736号公報に記載の実施例1の(バック層組成)
第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電
性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック
層を付与したフイルムベースの反対の面に、特開平11
−38568号公報に記載の実施例1の試料105を塗
布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得
られたカラーフイルムは優れた映像が得られかつその取
り扱い性においても問題のないものであった。
【0082】
【発明の効果】本発明に従うと、セルロースエステルが
ハロゲン系有機溶媒以外の有機溶剤に安定な状態で溶解
している溶液を得ることができる。さらに、それによっ
て面状の優れたセルローストリアセテートフイルムを得
ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 1/10 C08L 1/10 G02B 5/30 G02B 5/30 G03C 1/795 G03C 1/795 // B29K 1:00 B29K 1:00 B29L 7:00 B29L 7:00 9:00 9:00 Fターム(参考) 2H023 FA01 FA13 2H049 BA02 BA06 BB49 BC22 4F071 AA09 AH16 BA02 BB02 BC01 4F205 AA01 AB07 AB11 AB14 AG01 AG03 GA07 GB02 GB26 GC02 GC07 GE22 GE24 4J002 AB021 DE137 DE147 DE237 DG047 DJ007 DJ017 DJ037 DJ047 EE038 EH146 EJ068 EU178 FD017 FD026 FD058

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中性構成糖成分中に含まれるマンノース
    /キシロースのモル比が0.35〜3.0でそのセルロ
    ースの水酸基への置換度が下記(I)〜(III)を有する
    セルロースエステル、pKa4以下の酸を有する離型
    剤、酢酸メチル、炭素原子数3〜6のケトンおよび炭素
    原子数1〜4のアルコールからなる混合液を、−100
    〜−10℃に冷却又は/及び70〜200℃、0.3〜
    30MPaの高温高圧で加熱して得られるセルロースエ
    ステル溶液から流延、乾燥して作製されることを特徴と
    するセルロースエステルフイルム: (I) 2.6≦A+B≦3.0 (II) 2.0≦A≦3.0 (III) 0≦B≦0.8 [式中、A及びBは、セルロースの水酸基に置換されて
    いるアシル基の置換基を表し、Aはアセチル基の置換
    度、Bは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度であ
    る]。
  2. 【請求項2】 中性構成糖成分中に含まれるマンノース
    およびキシロースの総含有量が1〜5モル%であり、セ
    ルロースエステルが水を0.01〜2質量%含有する請
    求項1に記載のセルロースエステルフイルム。
  3. 【請求項3】 ケトンが、アセトン、メチルエチルケト
    ン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロ
    ペンタノンまたはシクロヘキサノンであリ、アルコール
    が、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタ
    ノールである請求項1に記載のセルロースエステルフイ
    ルム。
  4. 【請求項4】 酢酸メチル、ケトンおよびアルコールの
    比率が、酢酸メチル20〜90質量%、ケトン5〜50
    質量%、そしてアルコール5〜20質量%である請求項
    1に記載のセルロースエステルフイルム。
  5. 【請求項5】 セルロースエステル溶液が、可塑剤をセ
    ルロースエステルに対して0.1〜20質量%、紫外線
    吸収剤をセルロースエステルに対して0.001〜5質
    量%、微粒子粉体をセルロースエステルに対して0.0
    01〜5質量%、あるいは、剥離剤をセルロースエステ
    ルに対して0.001〜2質量%含有している請求項1
    に記載のセルロースエステルフイルム。
  6. 【請求項6】 流延工程で2種類以上のセルロースエス
    テル溶液を共流延する製造工程である請求項1に記載の
    セルロースエステルフイルム。
  7. 【請求項7】 一軸以上に延伸されている請求項1に記
    載のセルロースエステルフイルム。
  8. 【請求項8】 光学保護層用であり、その膜厚が10〜
    200μmである請求項1に記載のセルロースエステル
    フイルム。
  9. 【請求項9】 ハロゲン化銀写真感光材料の支持体用で
    あり、その膜厚が30〜250μmである請求項1に記
    載のセルロースエステルフイルム。
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