JPH09286801A - 溶解性の優れたセルロースエステル - Google Patents
溶解性の優れたセルロースエステルInfo
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Abstract
セルロースエステル、特に酢酸セルロースを提供するこ
とを目的とする。 【解決手段】 グルコース残基における全平均置換度が
2.60以上の酢酸セルロースであって、グルコース残基の
2位と3位における合計平均置換度が1.97以下であり、
かつ6位における平均置換度が全平均置換度の31.0%以
下であることを特徴とするセルロースエステル。
Description
維、機能膜等の成型品の材料に有用な、溶解性の優れた
セルロースエステル、特に酢酸セルロースに関する。
換度の高い酢酸セルロース(ここで、平均置換度の高い
酢酸セルロースとは、平均置換度2.60以上の酢酸セルロ
ースを指し、以下、三酢酸セルロースと呼ぶ)は写真感
光材料の支持フィルムや液晶保護フィルム、繊維、機能
膜等の成型品の材料に現在用いられている。三酢酸セル
ロースは融点よりも分解温度の方が低いために、その成
型方法は溶液法による。フィルムの製造は一般には塩化
メチレンと、メタノールなどのアルコール類との混合溶
媒が用いられているが、生産性向上を目的とした、流延
されたフィルムの凝固速度を高める手法として、三酢酸
セルロースに対する貧溶媒(例えばエタノール、n−ブ
タノール、シクロヘキサン等)を多く加えて溶液のゲル
化特性を高める方法が開発されている(米国特許第 260
7704号、同第 2739069号、同第 2739070号)。この際、
貧溶媒を多く用いるほどゲル化特性が高まるが、その一
方で、例えば三酢酸セルロースに対する最も溶解性の良
い塩化メチレン:メタノールの溶媒組成はおよそ9:1
(重量比)といわれており、これ以上の貧溶媒の多用は
三酢酸セルロースの溶解状態の悪化を招く結果、溶液に
未溶解分が多く残り、溶液の濾過の際に濾材の目詰まり
を引き起こすなどの新たな問題を発生させた。
塩化メチレンやクロロホルム等であり、アルコール類な
どの三酢酸セルロースに対する貧溶媒に比べると一般に
高価である上、毒性も強い。このため、作業の安全性を
高め、生産コストを低減させる意味においても貧溶媒の
多用は効果的であるが、上記したように三酢酸セルロー
スの溶解状態の維持とは相反するものである。従って、
これらのことより、貧溶媒を多く含む溶媒に対しても溶
解性の良好な三酢酸セルロースの開発が必要とされてい
た。
型の溶液には、生産効率の点から一般に濃厚溶液が用い
られているが、従来の三酢酸セルロースは濃厚溶液にお
ける粘度が高く、成型の際のハンドリング性に欠けると
いった欠点があった。ここで、濃厚溶液粘度の低減に
は、溶液の低濃度化と三酢酸セルロースの重合度低下が
有効とされるが、溶液の低濃度化に関しては、生産効率
の低下を引き起こす点から、また三酢酸セルロースの重
合度低下に関しては、成型品の物性劣化を引き起こす点
から、それぞれ困難であり、これまで濃厚溶液粘度を低
減させる有効な手段は見出されていなかった。
を解決するために、鋭意検討の結果、2位及び3位の合
計平均置換度が1.97以下であり、なおかつ全平均置換度
における6位の平均置換度の占める比率が31.0%以下で
あるセルロースエステル、特に三酢酸セルロースが従来
の三酢酸セルロースよりも溶解性に優れ、なおかつ濃厚
溶液粘度が低いことを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
全平均置換度が2.60以上の酢酸セルロースであって、グ
ルコース残基の2位と3位における合計平均置換度が1.
97以下であり、かつ6位における平均置換度が全平均置
換度の31.0%以下であることを特徴とするセルロースエ
ステルに関する。
ては、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸
セルロース、ニトロセルロース等が挙げられるが、これ
らの中でも酢酸セルロースが特に好ましい。よって、以
下の説明においては、酢酸セルロースについて行うが、
他のセルロースエステルについても同様である。
法など)は全平均置換度における6位の平均置換度の占
める比率が31.0%よりも高いものである。これに対し
て、本発明の三酢酸セルロースは従来の三酢酸セルロー
スよりも全平均置換度における6位の平均置換度の占め
る比率が低く、31.0%以下であることを特徴とする。
値以下であると、全平均置換度における6位の平均置換
度の占める比率に関係なく溶解性が向上するので、本発
明の酢酸セルロースは全平均置換度が2.60以上の範囲に
限定される。また、溶解性にかかわらず、耐湿寸法安定
性や複屈折等の製品物性を維持するためにも酢酸セルロ
ースの全平均置換度は2.60以上であること、すなわち、
三酢酸セルロースが望ましい。
酢酸セルロースの条件として、2位及び3位の合計平均
置換度は高すぎない方が望ましい。従って、2位及び3
位の望ましい合計平均置換度は1.97以下である。
のずと2位及び3位の合計平均置換度が高くなりすぎる
結果、溶解性の低下を招くので、全平均置換度における
6位の平均置換度の占める比率は、好ましくは31.0%以
下、さらに好ましくは29.0〜31.0%である。
占める比率が通常の三酢酸セルロースよりも低いものを
使用した場合に、溶解性が優れる理由は以下のように推
定することができる。
場合、三酢酸セルロース分子の形成する結晶構造中、本
来6位のアセチル基が位置されるべき場所があく結果、
結晶の欠陥が生成すると考えられる。このうような欠陥
へは溶媒が非常に侵入しやすくなり、その結果、三酢酸
セルロース分子の溶媒和が容易になり、溶解性に優れる
特性を持つと考えられる。また、全体の平均置換度が小
さくなれば、小さいなりの細密充填をとるような結晶構
造を形成すると考えられるので、溶解性に優れるための
6位の最適平均置換度も全体の平均置換度に応じて小さ
くなると考えられる。
度(DP)は、 290以上(例えば、290〜400)、さらに
好ましくは 250〜350(例えば、 300〜350)程度であるの
が好ましい。
えば、先行文献(Brian R. Harkness and Derek G. Gra
y, Macromolecules, 1990, 23, 1452-1457) などによる
と、セルロースをトリチル化すると6位の水酸基に選択
的に導入されるため、トリチル化によりセルロース(も
しくは酢酸セルロース)の6位の水酸基を保護した後
に、アセチル化を行い、その後再び保護基を外す(脱ト
リチル化する)方法が挙げられるが、特に限定されるも
のではなく、その他各種の方法によって製造することも
可能である。また、このようにして得られた三酢酸セル
ロースを加水分解することにより、全平均置換度のより
低い三酢酸セルロースを得てもよい。
優れるため、例えば、セルロースエステルに対する貧溶
媒を多く含んだ多成分溶媒への溶解性が従来のセルロー
スエステルよりも優れる。また、従来のセルロースエス
テルに対して濃厚溶液粘度が低いため、ハンドリング性
に優れる。
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
酸 260重量部及び酢酸400重量部を加え、40℃で40分間
アセチル化を行った。その後、反応物を大過剰の水によ
り沈殿、洗浄し、乾燥を行い、DMSO1500重量部に溶
解させた。これに、ヒドラジン1水和物27重量部とDM
SO 100重量部の混合物を加え、50℃で5時間、部分加
水分解を行った。その後、反応物を大過剰の水により沈
殿、洗浄し、乾燥することにより、反応物(I)を得
た。なお、反応物(I)は酢酸セルロースであり、この
全平均置換度を滴定により求めたところ、 2.0であっ
た。尚、以下に滴定による全平均置換度の測定方法を示
す。
酢酸セルロースを精秤し、アセトンと水の混合溶媒(容
量比9:1)に溶解した後、所定量の1N−水酸化ナト
リウム水溶液を添加し、25℃で2時間ケン化した。フェ
ノールフタレインを指示薬として添加し、1N−硫酸
(濃度ファクター;F)で過剰の水酸化ナトリウムを滴
定した。また、上記と同様の方法により、ブランクテス
トを行った。そして、下記式に従って全平均置換度
(−)を算出した。
量(ml)、Bはブランクテストに要した1N−硫酸量
(ml)、Fは1N−硫酸のファクター、Wは試料重量を
示す。
3000重量部に 100℃で溶解した。これに塩化トリチル
8.5重量部を加え、90℃に調温し、25時間攪拌し、トリ
チル化を行った。その後、さらに4−ジメチルアミノピ
リジン90重量部及び無水酢酸50重量部を加え、60℃で20
時間攪拌し、アセチル化を行った。その後、反応物を大
過剰の水により沈殿後、1000重量部のメタノールによる
洗浄を3回行った。反応物を乾燥した後、クロロホルム
3000重量部に溶解した。これに30重量%臭化水素酸の酢
酸溶液40重量部を加え、25℃で5分間攪拌することによ
り、脱トリチル化を行った。反応物を大過剰の水により
沈殿後、1000重量部のメタノールによる洗浄を3回行
い、乾燥することにより、三酢酸セルロースを得た。
量部を塩化メチレン500重量部に溶解させた。これに96
%酢酸水溶液1000重量部を加え、減圧により塩化メチレ
ンを除去しながら、65℃で45分間、酢酸と水による三酢
酸セルロースの部分加水分解を行った。反応物を大過剰
の水により沈殿、洗浄し、乾燥することにより、実施例
1記載の三酢酸セルロースよりも全平均置換度の低い三
酢酸セルロースを得た。
量部を塩化メチレン500重量部に溶解させた。これに96
%酢酸水溶液1000重量部を加え、減圧により塩化メチレ
ンを除去しながら、65℃で 100分間、酢酸と水による三
酢酸セルロースの部分加水分解を行った。反応物を大過
剰の水により沈殿、洗浄し、乾燥することにより、実施
例1及び2記載の三酢酸セルロースよりも全平均置換度
の低い三酢酸セルロースを得た。
量部を塩化メチレン500重量部に溶解させた。これに96
%酢酸水溶液1000重量部を加え、減圧により塩化メチレ
ンを除去しながら、65℃で 115分間、酢酸と水による三
酢酸セルロースの部分加水分解を行った。反応物を大過
剰の水により沈殿、洗浄し、乾燥することにより、実施
例1〜3のいずれに記載の三酢酸セルロースよりも全平
均置換度の低い三酢酸セルロースを得た。
部、無水酢酸70重量部及び30重量%臭化水素酸の酢酸溶
液50重量部を用いた以外は実施例1記載と同様の方法に
より、三酢酸セルロースを得た。
部、無水酢酸47重量部及び30重量%臭化水素酸の酢酸溶
液50重量部を用いた以外は実施例1記載と同様の方法に
より、三酢酸セルロースを得た。
部、無水酢酸44重量部及び30重量%臭化水素酸の酢酸溶
液60重量部を用いた以外は実施例1記載と同様の方法に
より、三酢酸セルロースを得た。
セルロース 100重量部に対して硫酸 7.8重量部、無水酢
酸 260重量部及び酢酸 400重量部を加え、通常の反応方
法により三酢酸セルロースを製造した。
酸セルロースの部分加水分解を行い、比較例2記載の三
酢酸セルロースよりも全平均置換度の低い三酢酸セルロ
ースを得た。
部及び無水酢酸44重量部を用いた以外は実施例1記載と
同様の方法により三酢酸セルロースを得た。
ルロースについて、13C−NMRにより各位置の置換度
を測定した結果と粘度法による平均重合度の測定結果を
表1に示す。尚、スペクトルの例は実施例1〜3及び比
較例2、3の13C−NMRスペクトルを図1〜5に示
し、各置換位置の置換度の測定方法及び三酢酸セルロー
スの粘度平均重合度の測定方法を以下に示す。
位の置換度(グルコース環の炭素位置については下記の
化学式を参照)はT. Sei, K.Ishitani, R.Suzuki, K.Ik
ematsu, Polym.J.,17,1065-1069(1985) に記載された方
法で、13C−NMRスペクトルの測定結果により決定し
た。スペクトルの例は図2(実施例2)を用いて説明す
る。2位の置換度は、図2中の酢酸セルロースのグルコ
ース環の1位の炭素のシグナル(a+b)のうち2位が
アセチル基で置換されたもののシグナル(b)の面積の
割合から計算した。3位の置換度はグルコース環の4位
の炭素のシグナルのうち3位が未置換のもののシグナル
(c)の面積を2,3,4,5位の4炭素分のシグナル
(c+d+e+f+g+h+i+j)の全面積の4分の
1の値で割って、1からこの値を引いて計算した。6位
の置換度は6位の炭素のシグナル(k+l)のうち、ア
セチル基で置換されているもののシグナル(k)の面積
の割合から計算した。これらの値は、Y.Tezuka, Y.Tsuc
hiya, Carbohydr.Res.,273,83-91(1995)に記載された方
法で、酢酸セルロースの残存OH基をプロピオニル化す
ることによりセルロースアセテートプロピオネートにし
て、アセチル基とプロピオニル基のカルボニル炭素のシ
グナルの面積から計算したアセチル基の置換割合と同じ
値になったため、各置換位置の置換度の精度は高いこと
が明らかになった。
P)の測定〉絶乾した試料の約 0.2gを精秤し、塩化メ
チレン:メタノール=9:1(重量比)の混合溶媒 100
mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落
下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。 ηrel =T/T0 〔η〕=(lnηrel )/C DP=〔η〕/Km (式中、T ;測定試料の落下秒数 T0 ;溶媒単独の落下秒数 C ;濃度(g/リットル) Km;6×10-4 を示す)
は小数点第3位を四捨五入した値であり、全平均置換度
及び2,3位の合計平均置換度は小数点第3位の精度で
それぞれの位置の平均置換度から計算し、小数点第3位
を四捨五入した値である。
合溶媒に対する濾過度評価〉 実施例7〜12及び比較例5〜8 実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた三酢酸セルロ
ースについて、2mmのメッシュを通過し、なおかつ1mm
のメッシュを通過しない粒径の試料を調製して乾燥した
後、試料70gを 500mlの溶解用容器に入れ、メタノール
30g及びエタノール36gを添加し、15分間静置した。そ
の後、塩化メチレンを 264g添加し、2rpm の速度で容
器を回転することにより溶解を開始した。溶解開始6時
間後に、25℃に調温し、3kg/cm2 の圧力下、金巾(s
618)を3枚重ねたろ布(直径15mm、濾過面積1.77cm2)を
用いて溶液を濾過した。この時、濾過開始後20分までの
濾過量をP1(g)、20分より60分までの濾過量をP2(g)と
して測定し、下記式により濾過度Kw (g-1) を計算し
た。結果を表2に示す。尚、併せて粘度平均重合度と濾
過度Kw との関係を図6に示す。
未溶解分の少ない溶液は、濾過抵抗が小さいために濾過
開始後60分までの全濾過量(P1+P2)が大きく、また、
濾布の目詰まりが少ないため、濾過時間20分以降の濾過
速度低下の度合いが小さい、すなわち(P2/P1)が大き
い。(P1+P2)が大きいほど、また、(P2/P1)が大き
いほどKw は小さくなることから、溶解状態が良好であ
る溶液のKw は溶解状態が良好でない溶液よりも小さな
値をとる。
は、塩化メチレンを主体とした混合溶媒が貧溶媒エタノ
ール及びメタノールを多く含んだ場合においても溶解性
に優れるため、比較例の三酢酸セルロースに比べ、濾過
量(P1+P2)が大きく、また、(P2/P1)も大きい結
果、濾過度Kw が小さい。
(η)〉 実施例13〜18及び比較例9〜12 実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた三酢酸セルロ
ースについて、三酢酸セルロースを15重量%となるよう
に、塩化メチレン/メタノール/イソプロパノール=8
0:16:4(重量比)の混合溶媒に溶解し、溶液を内径
2.6cmの粘度管に注入し、25℃に調温後、溶液中に直径
3.15mm、 0.135gを剛球を落下させて、間隔10cmの標線
間を通過する時間(秒)を測定して、濃厚溶液粘度
(η)とした。結果を表3に示す。尚、併せて粘度平均
重合度と濃厚溶液粘度(η)との関係を図6に示す。
貧溶媒メタノール及びイソプロパノールを多く含んだ塩
化メチレン主体の混合溶媒においても溶解性に優れる
上、濃厚溶液粘度ηが低く、成型の際のハンドリング性
に優れる。
す図である。
す図である。
す図である。
す図である。
す図である。
過度Kw との関係を示すグラフである。
厚溶液粘度(η)との関係を示すグラフである。
Claims (3)
- 【請求項1】 グルコース残基における全平均置換度が
2.60以上の酢酸セルロースであって、グルコース残基の
2位と3位における合計平均置換度が1.97以下であり、
かつ6位における平均置換度が全平均置換度の31.0%以
下であることを特徴とするセルロースエステル。 - 【請求項2】 6位における平均置換度が全平均置換度
の29.0〜31.0%であることを特徴とする請求項1記載の
セルロースエステル。 - 【請求項3】 セルロースエステルが酢酸セルロースで
ある請求項1又は2記載のセルロースエステル。
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---|---|---|---|
JP09849796A JP3895801B2 (ja) | 1996-04-19 | 1996-04-19 | 溶解性の優れたセルロースエステル |
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JP09849796A JP3895801B2 (ja) | 1996-04-19 | 1996-04-19 | 溶解性の優れたセルロースエステル |
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Publication Number | Publication Date |
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JPH09286801A true JPH09286801A (ja) | 1997-11-04 |
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JP09849796A Expired - Lifetime JP3895801B2 (ja) | 1996-04-19 | 1996-04-19 | 溶解性の優れたセルロースエステル |
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