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JP4439610B2 - 高分子ゲル電解質及びそれを用いたリチウム二次電池 - Google Patents

高分子ゲル電解質及びそれを用いたリチウム二次電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子ゲル電解質及びそれを用いたリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、リチウム電池の電解質として、非水系の電解液が使用されてきた。しかしながら液漏れを起こす可能性があり安全上問題が残っていた。そこで近年、非流動性電解質を用いることで原理上完全に液漏れを抑制した電池の検討が広く行われている。特に非流動性電解質の中でも高分子固体電解質を用いた電池が高負荷放電に耐えうるという点で注目されている。高分子固体電解質はリチウム塩等の支持電解質を非水系溶媒に溶解した電解液をポリマーによって保持させてゲルとすることによって得ることができる(以下このような高分子固体電解質を「高分子ゲル電解質」と称することがある)。このような高分子ゲル電解質に使用されるポリマーとしてはポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)等が代表的であるが、ポリアクリロニトリル(PAN)のようにシアノ基を含むポリマーも有用であることが知られている。しかしながらPANをゲル電解質として用いる場合、以下の問題点があった。
(1)イオン伝導度はPEO等に比較して高いものの、不十分である
(2)保液性が悪いために特に減圧条件下では非水系溶媒が浸みだしてくる
(3)アクリロニトリルの重合速度が比較的遅いために、生産性が低い
(4)PANは発ガン性の疑いが高いことが知られており、その使用に当たっては細心の注意が必要とされる
なかでもイオン伝導度及び保液性が不十分であることは、PANをマトリックスとしたゲル電解質電池の性能低下につながるので、大きな問題であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高いイオン導電性と保液性を有する高分子ゲル電解質を得ることにある。また、本発明の他の目的は、高容量で安全であるばかりではなく、レート特性、特に高負荷充放電特性やサイクル特性に優れたリチウム二次電池を得ることにある。また、本発明の他の目的は、高い生産性を有するゲル電解質やそれを用いたリチウム二次電池の製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、高分子ゲル電解質のポリマーマトリックス成分として、シアノアルキル基またはシアノアリール基を有するポリマーのようにポリマー鎖に対して連結基を介してシアノ基を有するポリマーを用いることによって上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の要旨は、ポリマー鎖に対して連結基を介してシアノ基を有するポリマー、リチウム塩及び溶媒を含有する高分子ゲル電解質に存する。また、本発明の他の要旨は、シアノアルキル基及び/又はシアノアリール基を有するポリマー、リチウム塩及び溶媒を含有する高分子ゲル電解質に存する。また、本発明のさらに他の要旨は、重合性不飽和結合を有し、且つ該重合性不飽和結合に関与する炭素原子に対して連結基を介して結合するシアノ基を有するモノマーを含有するモノマー成分を重合することによって得られるポリマー、リチウム塩及び溶媒を含有する高分子ゲル電解質に存する。さらにまた本発明の他の要旨は、上記のゲル電解質を用いたリチウム二次電池に存する。
【0005】
【作用】
PANのようなシアノ基がポリマー鎖に直接結合しているポリマーの場合、比較的リジッドなポリマー鎖中の炭素とシアノ基の炭素との結合間における回転寄与分しかないためにシアノ基の自由度が低くなっている。一方シアノアルキル基またはシアノアリール基を有するようなポリマーでは、シアノ基が連結基を介してポリマー鎖と結合している。そのためにシアノ基の自由度が高まり、Liイオンを効果的に輸送することが可能となるとともに、より多くの溶媒を抱えることができるために保液性が高まる結果、イオン伝導度が高くしかも保存安定性に優れた高分子ゲル電解質を与えたものと考えられる。そして、その結果として、レート特性やサイクル特性に優れたリチウム二次電池となると推定される。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳述する。
本発明においては、高分子ゲル電解質のポリマーとして、ポリマー鎖に対して連結基を介してシアノ基を有するポリマーを使用する。ここで、連結基としてはポリマー鎖とシアノ基を結合する任意の2価の基であってよい。ポリマー鎖に結合する、シアノ基を有する官能基としては例えば、以下のような基を挙げることができる。
【0007】
【化1】
Figure 0004439610
【0008】
(ただし、Aは二価の炭化水素基を表し、各式における複数のAは同一でも異なっていてもよい。nは自然数を表す。)
上記式(1)〜(9)において、2価の炭化水素基Aとしては、アルキレン基、アリーレン基が好ましい。なお、この場合、炭化水素基とは水素原子の一部又は全部がフッ素等のハロゲン原子に置換しているものも含むものとする。また、nとしては通常1〜10程度である。上記式の中では、ゲルの形成速度の観点から、(5)、(6)及び(7)で表される基が好ましい。本発明においては、上記式(1)〜(9)の記載からも明らかなように、シアノアルキル基及び/又はシアノアリール基を有するポリマーを使用するのが好ましい。シアノアルキル基としては、シアノメチル基、シアノエチル基、シアノプロピル基、シアノブチル基などのシアノ基置換鎖状アルキル基、シアノシクロプロピル基、シアノシクロペンチル基、シアノシクロヘキシル基、シアノシクロヘプチル基などのシアノ基置換環状アルキル基が挙げられ、シアノアリール基としては、シアノフェニル基、シアノベンジル基、シアノナフチル基などが挙げられる。なお、ここで、シアノアルキル基及びシアノアリール基とは、水素原子の一部又は全部がフッ素原子等のハロゲン原子に置換されているものも含むものとする。
【0009】
本発明で使用するポリマーは、通常、重合性不飽和結合を有し、且つ該重合性不飽和結合に関与する炭素原子に対して連結基を介して結合するシアノ基を有するモノマーを含有するモノマー成分を重合することによって得られる。このようなモノマーとしては、例えば、不飽和結合と前記式(1)〜(9)のような基とを有するモノマーを挙げることができる。すなわち、不飽和官能基とシアノアルキル基及び/又はシアノアリール基を有するモノマーを挙げることができる。重合性の不飽和官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等を挙げることができるが、ゲルを形成する速度が大きいので、好ましくはアクリロイル基又はメタクリロイル基である。即ち、好ましいモノマーとして、シアノアルキル基及び/又はシアノアリール基を有するアクリレート又はメタクリレートを挙げることができる。この場合のシアノアルキル基やシアノアリール基の例は前記同様のものを挙げることができる。上記不飽和官能基を1分子中に2つ以上存在させた多官能モノマーは、形成されるゲルの機械的強度に優れ、且つ反応性が高くゲルの形成速度が速いので好ましいが、工業的入手の観点から、シアノ基を有するモノマーとしては、不飽和官能基を1分子中に1つ存在させた単官能モノマーを使用するのが現実的である。
【0010】
具体的なモノマーとしては、例えば、シアノメチルアクリレート、2―シアノエチルアクリレート、シアノプロピルアクリレート、1―シアノメチルエチルアクリレート、2―シアノプロピルアクリレート、1―シアノシクロプロピルアクリレート、1―シアノシクロヘプチルアクリレート、1、1―ジシアノエチルアクリレート、2―シアノフェニルアクリレート、3―シアノフェニルアクリレート、4―シアノフェニルアクリレート、3―シアノベンジルアクリレート、4―シアノベンジルアクリレートなどのアクリル酸エステル類;シアノメチルメタクリレート、2―シアノエチルメタクリレート、シアノプロピルメタクリレート、1―シアノメチルエチルメタクリレート、2―シアノプロピルメタクリレート、1―シアノシクロプロピルメタクリレート、1―シアノシクロヘプチルメタクリレート、1、1―ジシアノエチルメタクリレート、2―シアノフェニルメタクリレート、3―シアノフェニルメタクリレート、4―シアノフェニルメタクリレート、3―シアノベンジルメタクリレート、4―シアノベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸エステル類;シアノ酢酸ビニル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸ビニルなどのビニルエステル類;シアノ酢酸アリル、1―シアノ−1―シクロプロパンカルボン酸アリルなどのアリルエステル類;N,N―ジシアノメチルアクリルアミド、N−シアノフェニルアクリルアミドなどのアクリルアミド類;N,N―ジシアノメチルメタクリルアミド、N−シアノフェニルメタクリルアミドなどのメタクリルアミド類;シアノメチルビニルエーテル、2―シアノエチルビニルエーテル、3―シアノベンジルビニルエーテル、4―シアノベンジルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルシアノメチルエーテル、アリル−2―シアノエチルエーテル、アリル−3―シアノベンジルエーテル、アリル−4―シアノベンジルエーテルなどのアリルエーテル類;などが挙げられる。また上記モノマーの水素の一部をヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲンなどで置換した構造を持つモノマーも使用可能である。これらの中でも硬化速度が早く、ゲル電解質の生産性を高めることができる点で、アクリル酸エステル類及びメタクリル酸エステル類が好ましい。
【0011】
本発明におけるポリマーは、通常上記のモノマーを重合させて得られるが、モノマー成分として上記のモノマーの他に別の構造を有するモノマーを共存させて重合させてもよい。例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の不飽和二重結合を有する基を有するモノマーを共存させると強度及び保液性向上する場合がある。このようなモノマーとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリルアミド、メタクリル酸メチル、メタクリルアミド、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、2−エトキシエチルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールアルキルエーテルアクリレート、ポリプロピレングリコールアルキルエーテルアクリレートなどの化合物を例示することができる。
【0012】
特に、シアノ基を有するモノマーとして単官能モノマーを使用した場合、形成されるゲルの機械的強度を向上させ、且つゲルの形成速度を速くするため、別のモノマーとして、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の重合性不飽和基を複数個有する多官能モノマーを使用するのが好ましい。このような多官能モノマーとしては1,2―ブタンジオールジアクリレート、1,3―ブタンジオールジアクリレート、1,4―ブタンジオールジアクリレート、ネオペンタンジオールジアクリレート、1,6―ヘキサンジオールジアクリレートなどのアルカンジオールジアクリレート類;1,2―ブタンジオールジメタクリレート、1,3―ブタンジオールジメタクリレート、1,4―ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンタンジオールジメタクリレート、1,6―ヘキサンジオールジメタリレートなどのアルカンジオールジメタクリレート類;エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレートなどのポリエチレングリコールジアクリレート類、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレートなどのポリプロピレングリコールジアクリレート類;エチレングリコールジメタアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、トリエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジメタアクリレートなどのポリエチレングリコールジメタアクリレート類;プロピレングリコールジメタアクリレート、ジプロピレングリコールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジメタアクリレート、テトラプロピレングリコールジメタアクリレートなどのポリプロピレングリコールジアクリレート類;エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテルなどのポリエチレングリコールジビニルエーテル類;エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、トリエチレングリコールジアリルエーテル、テトラエチレングリコールジアリルエーテルなどのポリエチレングリコールジアリルエーテル類;ビスフェノールFエトキシレートジアクリレート;ビスフェノールFエトキシレートジメタアクリレート;ビスフェノールAエトキシレートジアクリレート;ビスフェノールAエトキシレートジメタアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート;トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート;トリメチロールプロパンエトキシレートトリメタクリレート;トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート;トリメチロールプロパンプロポキシレートトリメタクリレート;イソシアヌル酸エトキシレートトリアクリレート;グリセロールエトキシレートトリアクリレート;グリセロールプロポキシレートトリアクリレート;ペンタエリスリトールエトキシレートテトラアクリレート;ジトリメチロールプロパンエトキリレートテトラアクリレート;ジペンタエリスリトールエトキシレートヘキサアクリレートなどが挙げられる。
【0013】
本発明で使用される前記シアノ基を有するモノマーの全モノマーに対する割合は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%である。また、他のモノマーとして多官能モノマーを使用した場合は、多官能モノマーの全モノマーに割合は、通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、また通常は50重量%以下、好ましくは30重量%以下である。
上記ポリマーの高分子ゲル電解質に対する含有量は、通常80重量%以下、好ましくは50%以下、さらに好ましくは20%以下である。ポリマー含量が多すぎると電解液の濃度低下によりイオン伝導度が低下してレート特性などの電池特性が低下する傾向にある。またポリマーの割合が少な過ぎる場合は、ゲルの形成が困難となり電解液の保持性が低下して流動及び液漏れの問題が生じる傾向があるので、好ましくは2重量%以上のポリマーが必要である。
【0014】
本発明で用いるリチウム塩としては、特に制限はないが、LiPF6 、LiAsF6 、LiBF4 、LiSbF6 、LiAlCl4 、LiClO4 、CF3 SO3 Li、C4 9 SO3 Li、CF3 COOLi、(CF3 CO)2 NLi、(CF3 SO2 2 NLi、(C2 5 SO2 )NLiなどのリチウム塩が挙げられる。特に溶媒に溶けやすく高い解離度を示すLiPF6 、LiClO4 、LiBF4 、CF3 SO3 Li、及び((CF3 SO2 2 NLiからなる群から選ばれる少なくとも一種は好適に用いられる。
リチウム塩の量は、高分子ゲル電解質の全量に対して通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上である。また、通常は30重量%以下、好ましくは20重量%以下である。リチウム塩の量が少なすぎても多すぎてもイオン導電度は低下する傾向にある。また、リチウム塩の液成分に対する濃度は通常0.5〜2.5mol/L程度である。
【0015】
本発明で用いる溶媒としては、リチウム塩を溶解させるものであれば特に限定されないが、高いイオン導電性を得るために通常ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)などのアルキルカーボネート類、γ−ブチロラクトン、ギ酸メチルなどのエステル類、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類、が好ましく用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。またこれらの溶媒に予め所定量のリチウム塩を溶解させたものが市販されており、これらを用いてもよい。好ましい溶媒は、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメトキシエタンからなる群から選ばれた少なくとも一種であり、特に好ましくはエチレンカーボネート及び/又はプロピレンカーボネートである。
【0016】
溶媒の量は、高分子ゲル電解質全量に対して通常30重量%以上、好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上である。一方、通常は99重量%以下、好ましくは95重量%以下、さらに好ましくは90重量%以下である。溶媒が少なすぎるとイオン導電度が低下し、多すぎると電解質の強度が弱くなる傾向にある。
【0017】
本発明の高分子ゲル電解質には、その他必要に応じて他の成分を含有させることができる。例えば、電池としての安定性や性能、寿命を高めるために、トリフルオロプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネート、スピロジラクトン、12−クラウン−4−エーテル等の添加剤を使用できる。
高分子ゲル電解質の各原料は、予め脱水しておくのが好ましい。水分量は50ppm以下好ましくは30ppm以下がよい。水が多量に存在すると、水の電気分解及びリチウム金属との反応、リチウム塩の加水分解などが起こる可能性があり電池用の電解質として不適当な場合がある。脱水の手段としては特に制限はないが、モノマー、溶媒などの液体の場合はモレキュラーシーブ4A等を用いればよい。またリチウム塩などの固体の場合は分解が起きる温度以下で乾燥すればよい。
【0018】
本発明における高分子ゲル電解質は、前記のポリマー、リチウム塩、溶媒及び必要に応じてその他の成分を含有する。組成物中の溶媒は、ポリマーのネットワーク中に保持されて、全体として流動性が著しく低下している。このような高分子ゲル電解質は、イオン伝導性などの特性は通常の電解液に近い特性を示すが、流動性や揮発性などは著しく抑制されて安全性が高められている。
高分子ゲル電解質を製造するには、リチウム塩の存在下にモノマーを重合させてポリマーを形成させてゲルとする方法と、リチウム塩の非存在下でモノマーを重合させてポリマーを形成ししかる後にリチウム塩を含有せしめる方法がある。リチウム塩の存在下で重合させる方法においては、リチウム塩及び溶媒を含有する組成物(以下単に「電解液」と呼ぶ場合がある)にモノマーを含有させ、これを重合させることによって高分子ゲル電解質を得ることができる。一方リチウム塩の非存在下で重合させる方法では、ポリマーにリチウム塩及び溶媒を加えて加熱溶解させた後、冷却して硬化させることによって高分子ゲル電解質を得ることができる。
【0019】
いずれの方法においてもモノマーを重合させる際には、開始剤を加えることなく直接電子線やγ線などの放射線を照射する方法、光増感剤等の紫外線重合開始剤を添加して紫外線を照射する方法や有機過酸化物などの熱重合開始剤を添加して加熱する方法、酸化還元系の開始剤を用いたレドックス系常温硬化法などが適用できる。特に紫外線照射法は低温重合が可能で硬化に要する時間が短い点で、また熱硬化法は特別な装置を必要とせず簡便である点で、好ましく用いられる。紫外線開始剤としては、ベンゾイル、ベンジル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ビアセチル、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。熱重合開始剤としては、1,1−ジ(ターシャルブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス−[4,4−ジ(ターシャルブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン]、1,1−ジ(ターシャルブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、ターシャリブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、ターシャリブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、ベンゾイルパーオキサイド、2、2―アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0020】
なお、上記高分子ゲル電解質の製造は、水分、酸素、二酸化炭素を極力排除した雰囲気で行うのが望ましい。特に水分については前述のように注意が必要である。また酸素及び二酸化炭素が組成物中に多量存在すると重合する際に、これらの分子がポリマー鎖中に取り込まれ電気化学的に不安定なマトリックスが形成される可能性がある。
本発明における高分子ゲル電解質はリチウム二次電池に使用されるのが好ましい。具体的には、電池の電解質層の構成材料として有用である。また、活物質と共に、電極の構成成分として使用することも有効である。好ましくは、本発明の高分子ゲル電解質が電解質層にも使用され、且つ正極及び/又は負極にも使用される。本発明の高分子ゲル電解質を使用することによって、サイクル特性にもレート特性にも優れたリチウム二次電池を得ることができる。
以下、本発明のリチウム二次電池について説明する。
【0021】
本発明の高分子ゲル電解質を適用できるリチウム二次電池の基本的構成は、従来公知の電池と同様であり、通常正極と負極とが電解質層を介して積層されてなる単セルをケースに収納してなる。もちろん単セルをさらに積層してケースに入れることも可能である。
先ず、正極及び負極について説明する。正極及び/又は負極は、通常集電体とその上に形成された活物質と電解液とを含有する活物質含有層とを有する。
集電体としては、通常、アルミ箔や銅箔などの金属箔が使用され、その厚さは適宜選択されるが、通常1〜50μm好ましくは1〜30μmである。集電体の厚さが薄過ぎる場合は、機械的強度が弱くなり、生産上問題になり、厚過ぎる場合は、電池全体としての容量が低下する。集電体は、活物質含有層の接着強度を高めるため、予め粗面化処理して使用するのが好ましい。粗面化方法としては、機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法などが挙げられる。機械的研磨法においては、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線などを備えたワイヤーブラシ等が使用される。また、活物質含有層との接着強度や導電性を高めるために、集電体表面に中間層を形成してもよい。
【0022】
リチウムイオンの吸蔵放出可能な正極活物質は、無機化合物と有機化合物とに大別される。無機化合物から成る正極活物質としては、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などが挙げられる。上記の遷移金属としては、Fe、Co、Ni、Mn等が使用される。正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、MnO、V2 5 、V6 13、TiO2 等の遷移金属酸化物、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウムと遷移金属との複合酸化物、TiS2 、FeS、MoS2 等の遷移金属硫化物が挙げられる。これらの化合物は、その特性を向上させるため、部分的に元素置換したものであってもよい。
【0023】
有機化合物から成る正極活物質としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウム塩などが挙げられる。
正極活物質は、上記の無機化合物と有機化合物の混合物であってもよい。正極活物質の粒径は、電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、レート特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常1〜30μm、好ましくは1〜10μmとされる。
リチウムイオンの吸蔵放出可能な負極活物質としては、グラファイトやコークス等の炭素系活物質が挙げられる。斯かる炭素系活物質は、金属、金属塩、酸化物などとの混合体や被覆体の形態で利用することも出来る。また、負極活物質としては、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、ニッケル等の酸化物や硫酸塩、金属リチウム、Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、シリコン等を使用できる。負極活物質の粒径は、電池の他の構成要件との兼ね合いで適宜選択されるが、初期効率、レート特性、サイクル特性などの電池特性の向上の観点から、通常1μm以上、好ましくは15μm以上であり、また通常50μm以下、好ましくは30μm以下とされる。
活物質含有層に含有される電解液は、前記高分子ゲル電解質で使用した電解液と同様のものを使用することができる。
【0024】
活物質含有層中には、必要に応じ、導電材料、補強材などの各種の機能を発現する添加剤を含有させることが出来る。導電材料としては、活物質に適量混合して導電性を付与できるものであれば特に制限されないが、通常、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末、各種金属のファイバーや箔などが挙げられる。また、電池の安定性や寿命を高めるため、トリフルオロプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、カテコールカーボネート、スピロジラクトン、12−クラウン−4−エーテル等が使用できる。更に、補強材として、各種の無機および有機の球状、板状、棒状または繊維状のフィラーが使用できる。
【0025】
活物質含有層は、活物質を固定するため及び電解液を保持するために1種以上のバインダーを含有するのが好ましい。この場合、バインダーとして、本発明の高分子ゲル電解質で使用するポリマーを使用すれば、本発明の高分子ゲル電解質を使用した電極となる。また、2種類のバインダーを使用して、活物質を固定するための機能と電解液を保持するための機能とを分けることもでき、好ましい。この場合、電解液を保持するためのポリマーとして本発明の高分子ゲル電解質に使用するポリマーを使用するのが好ましい。
【0026】
本発明の高分子ゲル電解質に使用するポリマーと共に活物質含有層に使用できる他のバインダーとしては、シリケートやガラスの様な無機化合物や各種の樹脂が挙げられる。バインダー用樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1,1−ジメチルエチレン等のアルカン系ポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の不飽和系ポリマー、ポリスチレン、ポリメチルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニルピロリドン等の環を有するポリマー、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド等のアクリル系ポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニリデンシアニド等のCN基含有ポリマー、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン含有ポリマー、ポリアニリン等の導電性ポリマー等が挙げられる。また、上記のポリマーの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体などであっても使用できる。これらの樹脂の分子量は、通常10000〜3000000、好ましくは100000〜1000000とされる。分子量が低過ぎる場合は活物質含有層の強度が低下する傾向にあり、高過ぎる場合は、粘度が高くなり形成が困難になることがある。
【0027】
上記2種類のバインダーを使用する場合、活物質及び上記他のバインダーを含有する電極用塗料を集電体上に塗布して乾燥することにより空隙を有する層を形成し、当該層にモノマーを含有する電解液を塗布して空隙中に含浸させた後にモノマーを重合させて本発明の高分子ゲル電解質を形成させて活物質含有層とするることができる。この場合、電解液の粘度が低いため、活物質層の空隙中に電解液を含浸させるのが容易である。また、高分子ゲル電解質を単独で作成した後、これを加熱して粘度を下げた状態で前記空隙を有する層に含浸させて後冷却して再びゲルとする方法も採用できる。さらに、活物質、上記他のバインダー、電解液及びモノマーの混合物を集電体上に塗布した後に重合してモノマーを重合する方法も採用することができる。さらにまた、2種類のバインダーと活物質とを含有する電極用塗料を集電体上に塗布して乾燥することにより空隙を有する層を形成し、当該層に電解液を塗布して空隙中に含浸させる方法によって得ることも可能である。なお、前記空隙を有する層は、活物質をバインダーとの混合物を加熱により軟化させた状態で集電体上に圧着または吹き付ける方法によっても形成することができる。
【0028】
何れの方法による場合もいずれかの製造段階においてカレンダー処理を加えることにより、圧密して活物質の充填量を高めることができる。
また、活物質100重量部に対する前記他のバインダーの配合量は、通常0.1〜30重量部、好ましくは1〜15重量部とされる。バインダーの配合量が少な過ぎる場合は電極の強度が低下し、多過ぎる場合は電解液を含浸させることが困難となる傾向にある。
活物質含有層の厚さは、通常1μm以上、好ましくは20μmであり、また通常1000μm以下、好ましくは200μm以下である。厚すぎるとレート特性が悪化する傾向にあり、薄すぎると電池全体としての容量が低下する傾向にある。
次に、電解質層について説明する。電解質層は、本発明の高分子ゲル電解質で構成することができる。この際、電解質は、その強度を高め、短絡を防止するために空隙を有するスペーサに含浸、保持されることが好ましい。
【0029】
上記のスペーサは、電解質層の保液性を一層高めるため圧縮に対する初期弾性率が1×105 (N/m2 )以上であることが好ましい。斯かる初期弾性率は、応力−歪み曲線における、応力0近傍の線形応答領域の直線の傾きから求められる。そして、初期弾性率の値が高いことは、荷重が小さい段階からスペーサの変形が少ないことを意味する。従って、初期弾性率の値が高い構造体の使用により、高分子ゲル電解質に加わる圧力を効果的に支えることが可能となる。
【0030】
また、上記のスペーサの空隙は、イオン移動度を高めるため、大部分が垂直方向(電極方向)に通じた構造になっていることが好ましい。スペーサの空隙率は、通常10体積%以上、好ましくは30体積%以上、さらに好ましくは40体積%以上であり、また、通常95体積%以下、好ましくは90体積%、さらに好ましくは80体積%以下である。空隙率が小さすぎる場合は、イオンが拡散しにくくなるために伝導度が低下する傾向にある。また空隙率が大きすぎる場合は、スペーサとしての機能を発揮しにくくなる。上記の空隙率は、体積と重さから見掛け比重を算出し、構造体の材質の真比重との比較から算出することが出来る。
上記スペーサの材質としては、例えば、洋紙、和紙などの紙類、各種の天然、合成繊維から作られる布類、分離精製などに使用される市販のフィルター類、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。スペーサは電解液との親和性を制御するために表面処理されていても良い。
【0031】
スペーサに電解質を含有させる方法は、正極および負極における電解質の形成方法と同様の方法を採用することが出来る。
電解質層の電解質は、その全てがスペーサの内部に取り込まれていなくてもよい。スペーサと高分子ゲル電解質とからなる電解質層の表面に、ある程度の厚みの高分子ゲル電解質単独層が存在することは、電解質層と電極との積層界面の抵抗の低減にも寄与し得る。従って、電解質層全体としての液保持性に支障が生じない限り、電解質の全てがスペーサの内部に取り込まれていなくてもよい。
電解質層の厚みは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上であり、また通常200μm以下、好ましくは100μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。厚みが小さすぎる場合は、強度が低下し安全上問題になり、しかも、製造時の位置決め等が困難になる傾向にある。また、厚みが大きすぎると、電解質層部分の抵抗が高くなると共に電池全体としての容量が低下する傾向にある。
【0032】
単セルは、通常正極と負極とが電解質層を介して積層されてなるが、この際、高分子ゲル電解質の形成方法として、モノマーを含有する電解液を使用して該モノマーを重合させる方法を採用し、且つ正極と負極との積層後に前記重合を行えば、電極及び電解質層中の高分子ゲル電解質が界面のない状態で連続して存在することとなるので、レート特性やサイクル特性に優れ好ましい。
次に、電池を収納するケースについて説明する。リチウム二次電池においては、通常前記の様に構成された正極と負極とが電解質層を介してケースに収納される。多くの場合は高容量を達成するために単セルを積層してケースに入れる。ケースとしては、柔軟性、屈曲性、可撓性などを有する形状可変性のケースが好適に使用される。その材質としては、プラスチック、高分子フィルム、金属フィルム、ゴム、薄い金属板などが挙げられる。ケースの具体例としては、ビニール袋の様な高分子フィルムから成る袋、高分子フィルムから成る真空包装用袋もしくは真空パック、金属箔と高分子フィルムのラミネート素材から成る真空包装用袋もしくは真空パック、プラスチックで形成された缶、または、プラスチック板で挟んで周囲を溶着、接着、はめ込み等で固定したケース等が挙げられる。
【0033】
上記の中では、気密性および形状可変性の点で高分子フィルムから成る真空包装用袋もしくは真空パック、または、金属箔と高分子フィルムのラミネート素材から成る真空包装用袋もしくは真空パックが好ましい。これらのケースは、金属缶の様な重量や剛性がなく、柔軟性、屈曲性、可撓性であるため、電池の収納後に曲げたり出来る形状自由性があると共に軽量化が図れるという利点を有する。本発明のリチウム二次電池は、円筒型、箱形、ペーパー型、カード型など種々の形状を軽量で実現できる。勿論、電池の機器への装着などの利便を図るため、形状可変性のケースに電池を封入して好ましい形状に変形した後、剛性の外装ケースに収納することも可能である。
好ましい一態様としては、正極と電解質層と負極が平板的に積層され且つ形状可変性のケースに真空シールされて収納されているリチウム二次電池が挙げられる。
【0034】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下に示す実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において「部」とあるのは「重量部」を表す。
実施例1(高分子ゲル電解質)
2―シアノエチルアクリレート(アルドリッチ社製)5部、1,3―ブタンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製)2部、ソルライト(三菱化学社製、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの等重量混合液にLiClO4 を1mol/Lの濃度となるように溶解させたもの)93部、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(化薬アクゾ社製:トリゴノックス23−C70)0.2部を3角フラスコに秤取し不活性な雰囲気下で混合した。調液直後に気泡が発生したので、15分間室温で放置し熟成させ発泡を抑制させた後に、上記混合液を直径12mm、厚さ1.5mmの型枠に流し込み、90℃で5分加熱することにより薄膜状の高分子ゲル電解質を得た。この高分子ゲル電解質の保液性を調べるために、真空パックし室温14日間放置し加速試験を行ったところ、ゲル状成分の重量は真空パック前の88.0%であり、12.0%に相当する溶媒がゲルから抜け出ていた。またこの高分子ゲル電解質の伝導度を交流インピーダンス法により測定したところ、3.9mS/cmであった。
【0035】
比較例1
ポリアクリロニトリル(ポリサイエンス社製)7部、ソルライト93部を3角フラスコに秤取し不活性な雰囲気下120℃で加熱混合したものを直径12mm、厚さ1.5mmの型枠に流し込み、5℃で24時間冷却することにより薄膜状の高分子ゲル電解質を得た。この高分子ゲル電解質を真空パックし室温14日間放置した後のゲル状成分の重量変化を測定したところ、真空パック前の83.4%であった。またこの高分子ゲル電解質の伝導度を交流インピーダンス法により測定したところ、3.0mS/cmであった。
【0036】
実施例2(高分子ゲル電解質を用いたリチウム二次電池)
[正極の作製]
正極活物質であるLiCoO2 (本荘化学社製)90部、導電材であるアセチレンブラック(電気化学工業製)5部、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(呉羽化学製)5部、さらに溶剤としてのN−メチルピロリドン80部を混合し、サンドミルで0.5時間混練・分散処理を行った。この混合物を厚さ20μmのアルミ箔上にドクターブレードを用いて塗布し、120℃で乾燥して溶剤を除去した後にカレンダー工程を加えて厚さ約80μmとして、空隙を有する層を得た。
【0037】
[ 負極の作製]
負極活物質であるグラファイト(大阪ガス社製)を95部、結着剤であるポリフッ化ビニリデン(呉羽化学製)を5部、溶剤としてのN−メチルピロリドン80部を混合し、サンドミルで0.5時間混練・分散処理を行った。この混合物を厚さ20μmの銅箔上にドクターブレードを用いて塗布し、120℃で乾燥して溶剤を除去した後にカレンダー工程を加えて厚さ約100μmとして、空隙を有する層を得た。
【0038】
[ モノマー含有電解液の作製]
2―シアノエチルアクリレート(アルドリッチ社製)5部、1,3―ブタンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製)2部、ソルライト(三菱化学社製、プロピレンカーボネートとエチレンカーボネートの等重量混合液にLiClO4 を1mol/Lの濃度となるように溶解させたもの)88.35部、スピロジラクトン(アルドリッチ社製)4.65部、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(化薬アクゾ社製:トリゴノックス23−C70)0.2部を3角フラスコに秤取し不活性な雰囲気下で混合した。調液直後に気泡が発生したので、15分間室温で放置し熟成させ発泡を抑制させた。
【0039】
[ 電池の作製及び充放電試験]
正極の空隙を有する層、ポリエチレン製多孔膜、負極の空隙を含有する層にそれぞれ前記の電解液を塗布し空隙内に含浸させた後に、それらを多孔膜を中心に積層し、ついで90℃で5分加熱して硬化させることにより平板状の単セルを作製した。ついで、これをラミネートフィルムからなるケース中に真空下で封入してリチウム二次電池を作製した。
【0040】
得られた平板状の電池を用いて25℃で充放電試験を行った。すなわち、充電電流密度0.08mA/cm2 で4.1Vまで定電流充電した後、4.1Vにて0.008mA/cm2 のレートまで定電圧充電した電池について、4.1V―2.7V間で0.08mA/cm2 のレートで取り出せる容量を、集電体を除いた正極の重量当たりで求めたところ、125.7mAh/gであった。また1Cでのレート特性を調べるために、充電電流密度0.48mA/cm2 で4.1Vまで定電流充電した後、4.1Vにて0.008mA/cm2 のレートまで定電圧充電した電池について、4.1V―2.7V間で1.92mA/cm2 のレートで取り出した容量を求めたところ、123.6mAh/gであり、同一条件でC/24のレートで取り出せる容量に対して98.3%の容量を維持していた。
【0041】
実施例3
支持電解質をLiClO4 からLiPF6 に変えたこと以外は実施例2と同様にして電池を作製・評価した。0.08mA/cm2 のレートで取り出せる容量は122.7mA/gであり、1Cでのレート特性については容量維持率98.2%であった。
【0042】
実施例4
2―シアノエチルアクリレートの使用量を7部、ソルライトの使用量を86.45部、スピロジラクトンの使用量を4.55部としたこと以外実施例2と同様にして電池を製造・評価した。0.08mA/cm2 のレートで取り出せる容量は120.3mA/gであり、1Cでのレート特性については容量維持率96.9%であった。
【0043】
実施例5
1,3―ブタンジオールジアクリレートの代わりに、ネオペンタンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製)を使用したこと以外実施例4と同様にして電池を製造・評価した。0.08mA/cm2 のレートで取り出せる容量は124.6mA/gであり、1Cでのレート特性については容量維持率95.0%であった。
【0044】
比較例2
2―シアノエチルアクリレート及び1,3―ブタンジオールジアクリレートの代わりに、テトラエチレングリコールジアクリレート(アルドリッチ社製)7部を使用したこと以外、実施例2と同様にして電池を製造・評価した。0.08mA/cm2 のレートで取り出せる容量は122.1mA/gであり、1Cでのレート特性については容量維持率91.1%であった。
【0045】
比較例3
モノマー含有電解液として、1,3―ブタンジオールジアクリレート(アルドリッチ社製)5部、ソルライト90.25部、スピロジラクトン4.75部、t−ブチルパーオキシネオデカノエート0.2部を3角フラスコに秤取し不活性な雰囲気下で混合したものを使用した以外は実施例2と同様にして、電池を製造・評価した。0.08mA/cm2 のレートで取り出せる容量は121.7mA/gであり、1Cでのレート特性については容量維持率92.9%であった。
【0046】
比較例4
ポリアクリロニトリル(ポリサイエンス社製)7部、ソルライト88.35部、スピロジラクトン4.55部を3角フラスコに秤取し不活性な雰囲気下120℃で加熱混合した塗料を正極、ポリエチレン製多孔膜、負極にそれぞれ塗布し活物質層内に含浸させた後に、正極と負極で多孔膜を挟んだ後、5℃で24時間冷却して前記塗料をゲル化した。上記以外は実施例2と同様にして電池を製造・評価した。0.08mA/cm2 のレートで取り出せる容量は107.8mA/gであり、1Cでのレート特性については容量維持率90.2%であった。
以上の結果を表−1及び表―2にまとめた。
【0047】
【表1】
Figure 0004439610
【0048】
【表2】
Figure 0004439610
【0049】
なお、上記表において、CEA、BGDA、NPDA、及びTEGDAは以下の化合物である。
【0050】
【化2】
Figure 0004439610
【0051】
実施例6
実施例2で得られたのを同様の電池の25℃での充放電サイクル試験を行った。充電電流密度0.96mA/cm2 で4.1Vまで充電した後、放電電流密度1.92mA/cm2 で2.7Vまで放電させる充放電を20回繰り返した。20回サイクル後の放電容量低下率(初回サイクル時の放電容量と比較)を求めたところ、97.0%であった。
【0052】
実施例7
実施例4で得られたのを同様の電池を、実施例6と同様にして25℃での充放電サイクル試験を行った。20回サイクル後の放電容量低下率(初回サイクル時の放電容量と比較)を求めたところ、96.0%であった。
比較例5
比較例4で得られたのを同様の電池を、実施例6と同様にして25℃での充放電サイクル試験を行った。20回サイクル後の放電容量低下率(初回サイクル時の放電容量と比較)を求めたところ、93.6%であった。
以上の結果を表−3にまとめた。
【0053】
【表3】
Figure 0004439610
【0054】
ここで、CEA 及びBGDAは前記同様である。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の高分子ゲル電解質は、高いイオン導電性と保液性を有する。
また、本発明のリチウム二次電池は、高容量で安全であるばかりではなく、レート特性、特に高負荷充放電特性やサイクル特性に優れる。また、ゲルの形成が容易なので生産性も高い。

Claims (5)

  1. 重合性不飽和結合を有し、且つ該重合性不飽和結合に関与する炭素原子に対して連結基を介して結合するシアノ基を有するモノマー、及びアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基及びアリル基からなる群から選ばれる官能基を2つ以上有する多官能モノマーを含有するモノマー成分を重合することによって得られるポリマー、リチウム塩及び溶媒を含有する高分子ゲル電解質。
  2. 重合性不飽和結合を有し、且つ該重合性不飽和結合に関与する炭素原子に対して連結基を介して結合するシアノ基を有するモノマーが、シアノアルキル基を有する(メタ)アクリレート及び/又はシアノアリール基を有する(メタ)アクリレートである請求項に記載の高分子ゲル電解質。
  3. 請求項1または2に記載の高分子ゲル電解質を用いたリチウム二次電池。
  4. 高分子ゲル電解質が電解質層に使用される請求項に記載のリチウム二次電池。
  5. 高分子ゲル電解質が正極及び/又は負極に使用される請求項に記載のリチウム二次電池。
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