この発明は、複数の駆動力源が、差動可能な遊星歯車機構の回転要素に連結されているハイブリッド駆動装置に関するものである。
従来、複数の駆動力源として内燃機関およびモータ・ジェネレータを搭載したハイブリッド車が知られており、このようなハイブリッド車においては、エンジンおよびモータ・ジェネレータの持つ特性を生かしつつ、燃費を向上し、かつ、排気ガスの低減を図ることが可能である。このように、複数の駆動力源として内燃機関およびモータ・ジェネレータを有するハイブリッド車の一例が、特許文献1に記載されている。
この特許文献1に記載されているハイブリッド車は、2つの遊星歯車列を有している。この第一の遊星歯車列は第一太陽歯車および第一リングギヤおよび第一遊星歯車を有しており、第一遊星歯車が第一遊星枠により支持されている。前記第一太陽歯車は熱機関に連結され、前記第一リングギヤには第一電気機械が連結されている。一方、第二の遊星歯車列は、第二太陽歯車および第二リングギヤおよび第二遊星歯車を有しており、その第二リングギヤが、前記第一太陽歯車に連結されている。また、第二遊星歯車を支持する第二遊星枠が前記第一遊星枠に連結されている。さらに、第二遊星枠には出力シャフトを介して車輪が連結され、この車輪には、歯車を介して第二電気機械が連結されている。
さらに、この第二電気機械を前記第二太陽歯車に選択的に連結させ、もしくは前記第二電気機械と前記第二太陽歯車との間における動力伝達経路を遮断する機械的切換装置が設けられている。特許文献1に記載されているトランスミッション装置では、第一の動作モードおよび第二の動作モードを選択可能である。第一の動作モードでは、比較的低い伝達比に用いられる。より具体的には車両の始動の際に用いられる。第一のモードが選択された場合は、機械的切換装置が切り離されて、前記第二電気機械のトルクが歯車を経由して前記車輪に伝達される。これに対して第二モードは比較的長い範囲の伝達比に用いられるものであり、車両が前進しているときに用いられる。この第二のモードでは、機械的切換装置により、前記第二電気機械が第二太陽歯車に連結される。
しかしながら、上記の特許文献1に記載されているハイブリッド車においては、より広範囲な走行領域(変速比の制御範囲)にて動力伝達効率を向上させる必要があった。
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、入力要素と出力要素との間における変速比の広範囲に亘り、動力伝達効率を向上させることの可能なハイブリッド駆動装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、差動回転可能に連結された複数の回転要素を有する遊星歯車機構が複数設けられており、この複数の遊星歯車機構の回転要素同士が動力伝達可能に連結されているとともに、前記複数の遊星歯車機構の回転要素には入力要素および出力要素および反力要素が含まれており、前記入力要素に原動機が連結され、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータがその他の回転要素に連結されるとともに、共線図上における前記原動機と前記第1のモータ・ジェネレータと前記第2のモータ・ジェネレータと前記出力要素と前記反力要素との位置関係を変更するモード切換機構が設けられているハイブリッド駆動装置において、前記モード切換機構は、共線図上で、前記原動機と前記反力要素との間に前記出力要素が配置され、かつ、前記第1のモータ・ジェネレータが前記反力要素に連結される第1モードと、前記共線図上で、前記原動機と前記第2のモータ・ジェネレータとの間に前記出力要素が配置され、この出力要素と前記第2のモータ・ジェネレータとの間に前記第1のモータ・ジェネレータが配置されるとともに、共線図上で、前記出力要素と、この出力要素から最も離れた位置のモータ・ジェネレータとの間の距離が、前記第1モードよりも長く設定される第2モードと、前記共線図上で、前記原動機と一方のモータ・ジェネレータとの間に前記出力要素が配置されるとともに、前記共線図上で、いずれかのモータ・ジェネレータが前記第2モードの場合と同じ位置に配置され、かつ、他のモータ・ジェネレータが第2モードとは異なる位置に配置される第3モードとを選択的に切り換える機構を含むことを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記モード切換機構は、前記第3モードを選択した場合に、前記第1のモータ・ジェネレータが前記反力要素に連結され、かつ、前記反力要素と前記出力要素との間に配置された回転要素に、前記第2のモータ・ジェネレータを連結する機構を含むことを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1または2の構成に加えて、前記遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構を有しており、この第1遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1サンギヤおよび第1リングギヤと、この第1サンギヤおよび第1リングギヤに噛合されたロングピニオンギヤとを備えており、前記第2遊星歯車機構は、同軸上に配置された第2サンギヤおよび第2リングギヤと、この第2サンギヤに噛合されたショートピニオンギヤとを備えており、前記ロングピニオンギヤが、前記ショートピニオンギヤおよび前記第2リングギヤに噛合されており、このロングピニオンギヤとショートピニオンギヤとを自転かつ公転可能に保持するキャリヤが設けられており、前記第1遊星歯車機構および前記第2遊星歯車機構により、ラビニョ型の遊星歯車機構が構成されていることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項3の構成に加えて、前記原動機が前記第1サンギヤに連結され、前記モード切換機構は、第1クラッチ機構および第2クラッチ機構を有しており、前記第1クラッチ機構が、前記第1のモータ・ジェネレータを、前記第1リングギヤまたは前記第2サンギヤに対して選択的に連結する機構を有し、前記第2クラッチ機構が、前記第2のモータ・ジェネレータを、前記第2リングギヤまたは前記キャリヤに対して選択的に連結する機構を有していることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの構成に加えて、前記モード切換機構の制御により選択されるモードには、車両を後退させる向きの駆動力を発生させる第1後退モードが含まれており、この第1後退モードが選択された場合は、前記共線図上で、前記原動機が連結された入力要素と、前記出力要素を逆回転させる向きのトルクを発生する第2のモータ・ジェネレータとの間に、前記反力要素に連結された第1のモータ・ジェネレータが配置されることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、前記原動機が逆回転することを防止する逆回転防止機構が設けられており、前記モード切り換え機構は、前記第1のモータ・ジェネレータおよび前記第2のモータ・ジェネレータを電動機として駆動させ、かつ、その反力を逆回転が防止された前記原動機で受け持たせて出力要素にトルクを伝達する場合に、前記第3モードを選択する機構を含むことを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項5の構成に加えて、前記モード切換機構は、前記第1後退モードが選択されて、前記共線図上で、前記原動機が連結された入力要素と、前記出力要素を逆回転させる向きのトルクを発生する第2のモータ・ジェネレータとの間に、前記反力要素に連結された第1のモータ・ジェネレータが配置されている場合に、前記第1のモータ・ジェネレータが逆回転し、かつ、力行制御する条件が成立した場合は、前記原動機と前記第1のモータ・ジェネレータとの間に前記出力要素を配置し、かつ、前記原動機と前記出力要素との間に前記第2のモータ・ジェネレータを配置するとともに、前記第2のモータ・ジェネレータを正回転で回生制御してエンジントルクの反力を受け持ち、かつ、前記第2のモータ・ジェネレータを逆回転で力行制御することにより、前記アクチュエータ出力要素を逆回転させる第2後退モードを選択する機構を、更に有していることを特徴とするものである。
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの構成に加えて、前記モード切換機構は、車両が惰力走行し、かつ、その車両の運動エネルギを前記第1のモータ・ジェネレータおよび前記第2のモータ・ジェネレータに伝達して回生制御を実行する場合は、前記第1モードを選択する機構を、更に有していることを特徴とするものである。
請求項9の発明は、請求項1の構成に加えて、前記モード切換機構は、前記第3モードが選択された場合に、前記共線図上で、前記第1のモータ・ジェネレータと前記第2のモータ・ジェネレータとの間に前記原動機を配置し、かつ、その原動機と前記第2のモータ・ジェネレータとの間に、前記出力要素を配置する機構を、更に含むことを特徴とするものである。
請求項10の発明は、請求項9の構成に加えて、前記遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構を有しており、この第1遊星歯車機構は、同軸上に配置された第1サンギヤおよび第1リングギヤと、この第1サンギヤおよび第1リングギヤに噛合されたロングピニオンギヤとを備えており、前記第2遊星歯車機構は、同軸上に配置された第2サンギヤおよび第2リングギヤと、この第2サンギヤに噛合されたショートピニオンギヤとを備えており、前記ロングピニオンギヤが、前記ショートピニオンギヤおよび前記第2リングギヤに噛合されており、このロングピニオンギヤとショートピニオンギヤとを自転かつ公転可能に保持するキャリヤが設けられており、前記第1遊星歯車機構および前記第2遊星歯車機構により、ラビニョ型の遊星歯車機構が構成されていることを特徴とするものである。
請求項11の発明は、請求項10の構成に加えて、前記原動機が前記キャリヤに連結され、前記モード切換機構は、第1クラッチ機構および第2クラッチ機構を有しており、前記第1クラッチ機構が、前記第1のモータ・ジェネレータを、前記第1サンギヤまたは前記第2リングギヤに対して選択的に連結する機構を有し、前記第2クラッチ機構が、前記第2のモータ・ジェネレータを、前記第1リングギヤまたは前記第2サンギヤに対して選択的に連結する機構を有していることを特徴とするものである。
請求項12の発明は、請求項9ないし11のいずれかの構成に加えて、前記モード切換機構は、前記車両を後退させる向きの駆動力を発生させる第3後退モードを選択可能に構成されており、この第3後退モードが選択された場合は、前記共線図上で、前記原動機が連結された入力要素と、前記出力要素を逆回転させる向きのトルクを発生する第2のモータ・ジェネレータとの間に、前記反力要素に連結された第1のモータ・ジェネレータが配置されることを特徴とするものである。
請求項13の発明は、請求項12の構成に加えて、前記第1のモータ・ジェネレータおよび前記第2のモータ・ジェネレータに接続された蓄電装置が設けられており、前記モード切換機構は、前記車両を後退させる向きの駆動力を発生させる第4後退モードを選択可能に構成されており、この第4モードが選択された場合は、前記共線図上で、前記原動機が連結された入力要素と前記出力要素との間に前記第1のモータ・ジェネレータが配置され、かつ、この第1のモータ・ジェネレータと前記出力要素との間に前記第2のモータ・ジェネレータが配置されるとともに、前記第1のモータ・ジェネレータおよび前記第2のモータ・ジェネレータで共に回生制御を実行して反力トルクを受け持つ構成を有しており、前記蓄電装置の充電量が、電力をモータ・ジェネレータに供給して車両を後退させるために必要な値未満である場合は、前記第3後退モードから前記第4後退モードに変更する構成を、前記モード切換機構が更に有していることを特徴とするものである。
請求項14の発明は、請求項9ないし13のいずれかの構成に加えて、前記原動機が逆回転することを防止する逆回転防止機構が設けられており、前記モード切り換え機構は、前記第1のモータ・ジェネレータおよび前記第2のモータ・ジェネレータを電動機として駆動させ、かつ、その反力を逆回転が防止された前記原動機で受け持たせて出力要素にトルクを伝達する場合に、前記第2モードを選択する機構を含むことを特徴とするものである。
請求項15の発明は、請求項9ないし13のいずれかの構成に加えて、前記モード切り換え機構は、前記第2のモータ・ジェネレータを電動機として駆動させ、かつ、その反力を前記第1のモータ・ジェネレータを回生制御して受け持たせて出力要素にトルクを伝達する場合に、前記第3モードを選択する機構を含むことを特徴とするものである。
請求項16の発明は、請求項9ないし15のいずれかの構成に加えて、前記モード切換機構は、車両が惰力走行し、かつ、その車両の運動エネルギを前記第1のモータ・ジェネレータおよび前記第2のモータ・ジェネレータに伝達して回生制御を実行する場合は、前記第1モードを選択する機構を、更に有していることを特徴とするものである。
請求項17の発明は、差動回転可能に連結された複数の回転要素を有する遊星歯車機構が複数設けられており、この複数の遊星歯車機構の回転要素同士が動力伝達可能に連結されているとともに、前記複数の遊星歯車機構の回転要素には入力要素および出力要素および反力要素が含まれており、前記入力要素に原動機が連結され、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータがその他の回転要素に連結されるとともに、共線図上における前記原動機と前記第1のモータ・ジェネレータと前記第2のモータ・ジェネレータと前記出力要素と前記反力要素との位置関係を変更するモード切換機構が設けられているハイブリッド駆動装置において、前記モード切換機構は、前記出力要素を正回転させる場合に選択され、かつ、共線図上で、前記原動機と前記反力要素との間に前記出力要素が配置され、かつ、前記第1のモータ・ジェネレータが前記反力要素に連結される第1モードと、前記出力要素を正回転させる場合に選択され、前記共線図上で、前記原動機と前記第2のモータ・ジェネレータとの間に前記出力要素が配置され、この出力要素と前記第2のモータ・ジェネレータとの間に前記第1のモータ・ジェネレータが配置される第2モードと、前記出力要素を逆回転させる場合に選択され、かつ、前記共線図上で、前記原動機と前記出力要素との間に、前記第1のモータ・ジェネレータが配置される後退モードとを選択的に切り換える機構を含むことを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、原動機のトルクが入力要素に伝達され、前記原動機の反力トルクが反力要素で受け持たれ、出力要素からトルクが出力される。そして、第1モードが選択された場合は、第1モータ・ジェネレータを前記反力要素に連結し、第2モータ・ジェネレータを出力要素に連結することが可能である。また、第2のモードが選択された場合は、前記第2のモータ・ジェネレータを前記反力要素に連結することが可能である。さらに、第3のモードが選択された場合は、前記原動機からトルクを出力し、前記第2のモータ・ジェネレータにより反力を受けることが可能である。そして、前記共線図上で、何れかのモータ・ジェネレータが第2モードの場合と同じ位置に配置され、他のモータ・ジェネレータが第2モードとは異なる位置に配置される。したがって、車両の走行領域の広範囲に亘り、具体的には、入力要素と出力要素との間における変速比の広範囲に亘り、動力伝達効率を向上させることができる。
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、第3モードを選択した場合に、前記第1のモータ・ジェネレータが前記反力要素に連結され、かつ、前記反力要素と前記出力要素との間に配置された回転要素に、前記第2のモータ・ジェネレータが連結される。
請求項3の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、遊星歯車機構が2組であり、かつ、ロングピニオンギヤが2組の遊星歯車機構で共用化され、かつ、キャリヤが共用化されるため、遊星歯車機構全体の構成を小型化できる。
請求項4の発明によれば、請求項1または2の発明と同様の効果を得られる他に、ロングピニオンギヤおよびキャリヤが、第1遊星歯車機構および第2遊星歯車機構で共用化されているため、駆動装置を小型化できる。請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様の効果を得られる。
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、後退モードが選択された場合は、前記共線図上で、前記原動機が連結された入力要素と、前記出力要素を逆回転させる向きのトルクを発生する第2のモータ・ジェネレータとの間に、前記反力要素に連結された第1のモータ・ジェネレータが配置される。したがって、エンジントルクにより反力要素に伝達される向きのトルクより、第2のモータ・ジェネレータのトルクが打ち消されることが無く、動力伝達効率が一層向上する。
請求項6の発明によれば、請求項1、3、4のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、第3モードを選択して、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータを電動機として駆動させ、かつ、その反力を原動機で受け持たせて出力要素にトルクを伝達することが可能である。したがって、共線図上で、入力要素に連結されるモータ・ジェネレータと、反力を受ける前記原動機との距離が長くなり、駆動力を確保できる。
請求項7の発明によれば、請求項5の発明と同様の効果を得られる他に、第1後退モードが選択されて、共線図上で、原動機が連結された入力要素と、出力要素を逆回転させる向きのトルクを発生する第2のモータ・ジェネレータとの間に、反力要素に連結された第1のモータ・ジェネレータが配置されている場合に、第1のモータ・ジェネレータが逆回転し、かつ、力行制御する条件が成立した場合は、前記原動機と前記第1のモータ・ジェネレータとの間に前記出力要素を配置し、かつ、前記原動機と前記出力要素との間に前記第2のモータ・ジェネレータを配置するとともに、前記第2のモータ・ジェネレータを正回転で回生制御してエンジントルクの反力を受け持ち、かつ、前記第2のモータ・ジェネレータを逆回転で力行制御することにより、前記アクチュエータ出力要素を逆回転させる第2後退モードを選択することが可能である。したがって、「前記第2のモータ・ジェネレータで回生制御し、発生した電力を第1のモータ・ジェネレータに供給して逆回転し、かつ力行制御する動力循環」が生じることを回避できる。
請求項8の発明によれば、車両惰力走行し、かつ、車両の運動エネルギを第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータに伝達して回生制御を実行する場合は、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータを、共線図上で出力要素に近づけることができる。したがって、回生制動時に原動機で受け持つ反力トルクの上昇を抑制でき、原動機回転数が上昇することを抑制できる。
請求項9の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、前記第3モードが選択されると、前記共線図上で、前記第1のモータ・ジェネレータと前記第2のモータ・ジェネレータとの間に前記原動機が配置され、かつ、その原動機と前記第2のモータ・ジェネレータとの間に、前記出力要素が配置される。したがって、より広い運転領域で動力伝達効率が向上する。
請求項10の発明によれば、請求項9の発明と同様の効果を得られる他に、遊星歯車機構が2組であり、かつ、ロングピニオンギヤが2組の遊星歯車機構で共用化され、かつ、キャリヤが共用化されるため、遊星歯車機構全体の構成を小型化できる。また、請求項11の発明においても、請求項10と同様の効果を得られる。
請求項12の発明によれば、請求項9ないし11のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、第3後退モードが選択された場合は、前記共線図上で、前記原動機が連結された入力要素と、前記出力要素を逆回転させる向きのトルクを発生する第2のモータ・ジェネレータとの間に、前記反力要素に連結された第1のモータ・ジェネレータが配置される。したがって、エンジントルクにより反力要素に伝達される向きのトルクより、第2のモータ・ジェネレータのトルクが打ち消されることが無く、動力伝達効率が一層向上する。
請求項13の発明によれば、蓄電装置の充電量が、電力をモータ・ジェネレータに供給して車両を後退させるために必要な値未満である場合は、第3後退モードから第4後退モードに変更して、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータにより発電し、その電力を蓄電装置に充電できる。したがって、モータ・ジェネレータを力行制御して車両が後退する場合の電力を、予め確保できる。
請求項14の発明によれば、請求項9ないし13のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、第2モードを選択して、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータを電動機として駆動させ、かつ、その反力を原動機で受け持たせて出力要素にトルクを伝達することが可能である。したがって、共線図上で、入力要素に連結されるモータ・ジェネレータと、反力を受ける前記原動機との距離が長くなり、駆動力を確保できる。
請求項15の発明によれば、請求項9ないし13のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、第2のモータ・ジェネレータを電動機として駆動させ、かつ、その反力を第1のモータ・ジェネレータを回生制御して受け持たせて出力要素にトルクを伝達する場合に、第3モードを選択することができる。したがって、逆回転防止機構を設けずに済む。
請求項16の発明によれば、車両惰力走行し、かつ、その車両の運動エネルギを第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータに伝達して回生制御を実行する場合は、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータを、共線図上で出力要素に近づけることができる。したがって、回生制動時に原動機で受け持つ反力トルクの上昇を抑制でき、原動機回転数が上昇することを抑制できる。
請求項17の発明によれば、原動機のトルクが入力要素に伝達され、前記原動機の反力トルクが反力要素で受け持たれ、出力要素からトルクが出力される。そして、出力要素を正回転させる場合に、第1モードが選択された場合は、第1モータ・ジェネレータを前記反力要素に連結し、第2モータ・ジェネレータを出力要素に連結することが可能である。また、出力要素を正回転させる場合に、第2のモードが選択された場合は、前記第2のモータ・ジェネレータを前記反力要素に連結することが可能である。さらに、出力要素を逆回転させる場合に、後退モードが選択された場合は、前記原動機から出力要素に伝達されるトルクの向きと、前記第2のモータ・ジェネレータから前記出力要素に伝達されるトルクの向きとが同じになるため、より広い運転領域で動力伝達効率が向上する。
この発明において原動機としては内燃機関、具体的にはエンジンを用いることができる。このエンジンは、燃料を燃焼させて熱エネルギを発生させ、その熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置であり、エンジンとしては、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることができる。また、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータは、原動機とは動力の発生原理が異なり、電気エネルギを運動エネルギに変換する動力装置であり、運動エネルギを電気エネルギに変換する機能をも有する。
この発明において、遊星歯車機構としては、シングルピニオン式の遊星歯車機構またはダブルピニオン式の遊星歯車機構のいずれを用いてもよい。この遊星歯車機構を構成する回転要素は、前記原動機のトルクが入力される入力要素、前記原動機のトルクの反力を受ける反力要素、トルクが出力される出力要素として機能する。また、遊星歯車機構を構成する回転要素には、サンギヤおよびリングギヤおよびピニオンギヤ、このピニオンギヤを保持するキャリヤなどが含まれる。さらには、これらのギヤに連結されたコネクティングドラム、軸などの要素も前記回転要素に含まれる。
この発明において「モード」とは、選択されたシフトポジションにおいて、ハイブリッド駆動装置を制御する場合に用いられ、かつ実行される制御の内容が異なる方式(制御パターン)である。具体的には、共線図上における回転要素同士の位置関係、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータの機能、入力要素と出力要素との間における変速比の制御範囲などの条件を決定した方式(パターン)もしくは種類を意味する。ここで、第1のモータ・ジェネレータおよび第2のモータ・ジェネレータの機能とは、力行または回生の制御、連結される回転要素の変更制御などを意味する。そして、何れのモードが選択された場合でも、共線図上における入力要素および出力要素の位置は変更されない、つまり、固定されているとともに、反力要素の位置が変更される。
また、何れのモードにおいても、共線図上において、入力要素と反力要素との間に出力要素が配置される。そして、モードを切り換えると、共線図上における反力要素の位置、共線図上におけるモータ・ジェネレータの少なくとも一方の位置が切り換わる。さらに、モードを切り換えると、共線図上における出力要素と反力要素との距離が変更される。第2モードが選択された場合は、第1モードよりも、共線図上における出力要素と反力要素との距離が長くなる。また、第3モードが選択された場合は、第2モードよりも、共線図上における出力要素と反力要素との距離が長くなる。そして、共線図上における出力要素と反力要素との距離が長くなるほど、前記入力要素と前記出力要素との間の変速比の制御範囲を広く設定することが可能である。
さらに、この発明を車両に用いた場合、出力要素が「正回転」する向きのルクが発生すると、そのトルクが車輪に伝達されて、車両を前進させる向きの駆動力が発生する。これとは逆に、出力要素が「逆回転」する向きのルクが発生すると、そのトルクが車輪に伝達されて、車両を後退させる向きの駆動力が発生する。また、前記モード切換機構は、回転要素同士を動力伝達可能に連結し、かつ、回転要素同士の間における動力伝達を遮断してモードを切り換える機構である。このモード切換機構としては、例えば、クラッチを用いることが可能である。このクラッチをアクチュエータにより分類すると、電磁制御式クラッチ、油圧制御式クラッチなどを用いることが可能である。また、クラッチを伝達トルクの発生原理で分類すると、摩擦クラッチ、噛み合いクラッチなどが挙げられる。
つぎに、この発明を図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、車両1のパワートレーンの構成例を示す。図1に示された車両1は、F・F(フロントエンジン・フロントドライブ;エンジン前置き前輪駆動)形式のハイブリッド車である。図1に示された車両1では、内燃機関の一種であるエンジン2および第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が、駆動力源として搭載されている。前記エンジン2は、燃料を燃焼させてその熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置である。このエンジン2は、吸排気装置、燃料噴射装置などを有する公知のものであり、例えば、電子スロットルバルブの開度、燃料噴射量、燃料噴射時期などを制御することによりエンジン出力、すなわち、エンジン回転数およびエンジントルクを制御することが可能である。また、モータ・ジェネレータMG1,MG2は、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを兼備した回転装置である。
これらの、エンジン2およびモータ・ジェネレータMG1,MG2が動力伝達可能に連結された動力分配装置3が設けられている。この動力分配装置3は、複数組の遊星歯車機構により構成されている。この実施例では、動力分配装置3が、3組のプラネタリギヤ、具体的には、フロントプラネタリギヤ4(以下、遊星歯車機構4と記す)およびミドルプラネタリギヤ5(以下、遊星歯車機構5と記す)およびリアプラネタリギヤ6(以下、遊星歯車機構6と記す)を有しており、3組の遊星歯車機構4,5,6はエンジン2のクランクシャフト7と同軸上に配置されている。また、前記2のエンジンクランクシャフト7の軸線方向において、前記遊星歯車機構4,5,6のうち、前記遊星歯車機構4が最もエンジン2に近い位置に配置されており、前記遊星歯車機構5は、前記遊星歯車機構4よりもエンジン2から離れた位置に配置されており、前記遊星歯車機構6は、前記遊星歯車機構5よりもエンジン2から離れた位置に配置されている。
まず、遊星歯車機構4は、シングルピニオン式の遊星歯車機構であり、サンギヤ8と、このサンギヤ8と同軸上に配置されたリングギヤ9と、前記サンギヤ8および前記リングギヤ9に噛合されたピニオンギヤ10と、このピニオンギヤ10を自転可能、かつ、公転可能に支持するキャリヤ11とを有している。このようにして、前記サンギヤ8および前記リングギヤ9および前記キャリヤ11が、相互に差動回転可能に接続されている。また、前記リングギヤ9は環状部材12の内周に形成された内歯であり、この環状部材12の外周には外歯であるギヤ13が形成されている。そして、前記サンギヤ8が前記クランクシャフト7に動力伝達可能に連結されている。
前記遊星歯車機構5は、シングルピニオン式の遊星歯車機構であり、サンギヤ14と、このサンギヤ14と同軸上に配置されたリングギヤ15と、前記サンギヤ14および前記リングギヤ15に噛合されたピニオンギヤ16と、このピニオンギヤ16を自転可能、かつ、公転可能に支持するキャリヤ17とを有している。このようにして、前記サンギヤ14および前記リングギヤ15および前記キャリヤ17が、相互に差動回転可能に接続されている。また、前記リングギヤ15と前記サンギヤ8とが一体回転するように連結され、前記キャリヤ11,17が共通のコネクティングドラム18と一体回転するように連結されている。このコネクティングドラム18は環状に構成されており、そのコネクティングドラム18の内部に遊星歯車機構5が配置されている。また、このコネクティングドラム18にはギヤ19が形成されている。
前記遊星歯車機構6は前記コネクティングドラム18の内部に配置されており、この遊星歯車機構6はシングルピニオン式の遊星歯車機構である。この遊星歯車機構6は、サンギヤ20と、このサンギヤ20と同軸上に配置されたリングギヤ21と、前記サンギヤ20および前記リングギヤ21に噛合されたピニオンギヤ22と、このピニオンギヤ22を自転可能、かつ、公転可能に支持するキャリヤ23とを有している。また、前記リングギヤ21は前記コネクティングドラム18と一体回転するように構成されている。このようにして、前記サンギヤ20および前記リングギヤ21および前記キャリヤ23が、相互に差動回転可能に接続されている。また、前記キャリヤ23と前記サンギヤ14とが一体回転するように連結されている。さらに、前記キャリヤ23と共に一体回転可能な中空軸24が設けられており、この中空軸24は前記コネクティングドラム18の内部から外部に亘って設けられている。
そして、中空軸24であって、前記コネクティングドラム18の外部に相当する箇所にはギヤ25が設けられている。さらにまた、前記サンギヤ20に連結された軸26が設けられており、この軸26は前記中空軸24内に配置されている。この軸26と前記中空軸24とは同軸上に配置されており、かつ相対回転が可能である。さらにこの軸26にはギヤ27が形成されている。上記のように構成された前記動力分配装置3は、前記サンギヤ8が入力要素であり、前記ギヤ19が出力要素である。また、前記リングギヤ9、または前記サンギヤ14および前記キャリヤ23、または前記サンギヤ20のいずれかが、選択的に反力要素として切り換え可能であり、この動力分配装置3は、これらの各回転要素同士の差動作用により、入力要素の回転数と出力要素の回転数との比を、無段階(連続的)に変更可能な無段変速機である。
一方、前記第1のモータ・ジェネレータMG1は、ステータ28およびロータ29を有しており、このロータ29には出力軸30が連結されている。この出力軸30は前記軸26と平行に配置されている。また、出力軸30の外周には、この出力軸30と相対回転可能なギヤ31,32が取り付けられており、このギヤ30が前記ギヤ13に噛合され、前記ギヤ32が前記ギヤ27に噛合されている。さらに、前記第2のモータ・ジェネレータMG2は、ステータ33およびロータ34を有しており、このロータ34には出力軸35が連結されている。この出力軸35は、前記軸26および前記出力軸30と平行に配置されている。また、出力軸35の外周には、この出力軸35と相対回転可能なギヤ36,37が取り付けられており、このギヤ36が前記ギヤ19に噛合され、前記ギヤ37が前記ギヤ25に噛合されている。さらに、ギヤ36は終減速機38のリングギヤ39に噛合されており、この終減速機38にはドライブシャフト40を介在させて車輪41が連結されている。
さらに、前記出力軸30に対して、前記ギヤ31,32を選択的に動力伝達可能に連結し、かつ、前記ギヤ31,32と前記出力軸30との間の動力伝達を遮断する切換機構SW1が設けられている。さらに、前記出力軸35に対して、前記ギヤ36,37を選択的に動力伝達可能に連結し、かつ、前記ギヤ36,37と前記出力軸35との間の動力伝達を遮断する切換機構SW2が設けられている。前記切換機構SW1,SW2として、この実施例ではシンクロナイザ機構(同期機構)を有する噛み合いクラッチなどを用いている場合について説明する。シンクロナイザ機構は、回転要素同士の回転数を一致させてから回転要素同士を連結する機構である。さらに切換機構SW1,SW2の動作を制御するアクチュエータ42が設けられている。このアクチュエータ42は、油圧制御式アクチュエータまたは電磁制御式アクチュエータのいずれでもよい。
さらに、前記モータ・ジェネレータMG1,MG2との間で電力の授受をおこなう電力供給装置43が設けられている。この電力供給装置43は、二次電池などの蓄電装置43Aを有しており、蓄電装置43Aとしてはバッテリまたはキャパシタを用いることができる。この蓄電装置43Aと前記モータ・ジェネレータMG1,MG2とがインバータ(図示せず)を介して接続されている。また、電力供給装置43は、蓄電装置43Aの他に、燃料電池システム(図示せず)を備えていてもよい。この燃料電池システムは、水素と酸素を反応させて起電力を得るシステムであり、発生した電力をモータ・ジェネレータMG1,MG2に供給するか、または蓄電装置43Aに充電することができる。さらに、前記電力供給装置43は、第1のモータ・ジェネレータMG1と第2のモータ・ジェネレータMG2とを接続する電気回路を有しており、前記蓄電装置43Aを経由することなく、前記第1のモータ・ジェネレータMG1と第2のモータ・ジェネレータMG2との間で直接電力の授受をおこなうことが可能である。
つぎに車両1の制御系統について説明すると、コントローラとしての電子制御装置44が設けられており、この電子制御装置44には、各種のセンサやスイッチなどの検知信号、例えば、加速要求、制動要求、エンジン回転数、モータ・ジェネレータMG1,MG2の回転数、前記ギヤ19,25,27の回転数、電力供給装置43における充電量、車速、シフトポジションなどを示す信号が入力される。このシフトポジションは、シフトポジション選択装置を車両の乗員が操作して選択される。このシフトポジション選択装置には、レバー、スイッチ、タップパネル、ボタンなどがある。また、選択されるシフトポジションとしては、前進ポジション、後退ポジション、パーキングポジション、ニュートラルポジションなどがある。一方、この電子制御装置44からは、エンジン2を制御する信号、モータ・ジェネレータMG1,MG2を制御する信号、アクチュエータ42を制御する信号などが出力される。
上記のように構成された車両1においては、車両1を前進させる向きの駆動力を発生させる前進ポジションが選択されている場合に、3種類のモードを切り換え可能であり、かつ、何れのモードが選択された場合においても、前記動力分配装置3の変速比を無段階に制御可能である。このモードの切り換え制御および前記動力分配装置3の変速比の制御は、前記電子制御装置44に入力される信号、およびその電子制御装置44に記憶されているデータに基づいて判断され、かつ実行される。例えば、車速および加速要求に基づいて要求駆動力が求められ、この要求駆動力、前記電子制御装置44に記憶されている最適燃費曲線のデータなどに基づいて、前記モードの切り換え制御および前記動力分配装置3の変速比の制御が実行される。この実施例では、前進ポジションが選択されている場合は、低速モードおよび中速モードおよび高速モードの3種類を選択的に切り換え可能である。概略的なモードの選択例を説明すると、低速モードが選択される車速は、中速モードが選択される車速よりも低速であり、中速モードが選択される車速は、高速モードが選択される車速よりも低速である。また、低速モードが選択される場合の要求駆動力は、中速モードが選択される要求駆動力よりも大きく、中速モードが選択される要求駆動力は、高速モードが選択される要求駆動力よりも大きい。
以下、モードおよびモードの切換制御について説明する。まず「モード」とは、共線図上における回転要素同士の位置関係、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の機能、前記動力分配装置3の入力要素であるサンギヤ8と、出力要素であるギヤ19との間における変速比の制御範囲などの条件を決定した方式(パターン)もしくは種類を意味している。図2は、各モードにおける回転要素同士の連結関係を示す図表であり、図3は、各回転要素の状態を示す共線図である。この図2に示された各モードは、いずれも前進ポジションで選択されるモードである。この図3の共線図において、横軸には回転要素同士の位置関係が示されており、縦軸には回転要素の回転方向および回転数が示されている。この図3を含む共線図において、「正」はエンジン2の回転方向と同じ方向である正回転を意味し、「逆」はエンジン2の回転方向とは逆の逆回転を意味する。また、エンジン2の回転方向とは、燃料の燃焼によって生じる回転方向である。図3の共線図では、エンジン(ENG)2と前記サンギヤ20との間に、前記リングギヤ9が配置されている。また、前記サンギヤ20と前記リングギヤ9との間に、前記サンギヤ14および前記キャリヤ23が位置している。さらに、前記エンジン2と前記リングギヤ9との間に、前記キャリヤ11,17および前記リングギヤ21および前記ギヤ19が位置している。
そして、図2に示す低速モード(Low)が選択された場合は、切換機構SW1の制御により、前記出力軸30と前記ギヤ31とが連結され、前記出力軸30と前記ギヤ32との動力伝達が遮断される。すなわち、第1のモータ・ジェネレータMG1と前記リングギヤ9とが、動力伝達可能に連結される。また、切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35が前記ギヤ36に連結され、前記出力軸35と前記ギヤ37との動力伝達が遮断される。この低速モードが選択された場合は、図3の共線図で最上段に示すように、エンジン2が正回転するとともに、そのエンジントルクが前記サンギヤ8に伝達される。また、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転で回生制御され、エンジントルクの反力を受け持つ。このように、前記サンギヤ8に入力されたエンジントルクが前記ギヤ19に伝達され、そのギヤ19から出力されたトルクが、前記ギヤ36および前記終減速機38を経由して前記車輪41に伝達されて、駆動力が発生する。さらに、この低速モードでは、前記第1のモータ・ジェネレータMG1で発生した電力を前記第2のモータ・ジェネレータMG2に供給し、その第2のモータ・ジェネレータMG2を正回転で力行制御し、そのトルクを前記ギヤ19に伝達することも可能である。
つぎに、図2に示す低速モードから中速モード(Mid)に変更する制御を説明する。この場合は、図3の最上段の状態から、車速の上昇により第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が低下して、図3の上から2段目に示すように、第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が零となる。この時、前記切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35と前記ギヤ36との動力伝達が遮断されるとともに、この第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が、前記サンギヤ14および前記キャリヤ23の回転数に対応する回転数に同期され、かつ、第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35が前記ギヤ37に連結される。そして、図3の上から3段目に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2が逆回転し、かつ、回生制御されて、エンジントルクの反力を受け持つとともに、前記ギヤ19の回転数がさらに上昇する。また、前記第1のモータ・ジェネレータMG1に電力を供給して正回転で力行制御し、そのトルクを前記ギヤ19に伝達することも可能である。この図3の上から3段目に示す共線図が、中速モードに相当する。なお、この中速モードにおける前記切換機構SW1の制御は、前記低速モードの場合と同じである。
さらに、図3に示す中速モードから高速モード(High)に変更する制御を説明する。この場合は、図3の上から3段目の状態から、さらに車速が上昇して、逆回転している第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が低下し、図3の上から4段目に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が零となる。この時、前記切換機構SW1の制御により、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30と前記ギヤ31との動力伝達が遮断されるとともに、この第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が、前記サンギヤ20の回転数に対応する回転数に同期され、かつ、第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30が前記ギヤ32に連結される。ついで、図3の最下段に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2が逆回転から正回転に変更され、かつ、力行制御されて、エンジントルクの反力を受け持つとともに、前記ギヤ19の回転数がさらに上昇する。なお、この高速モードにおける前記切換機構SW2の制御は、前記中速モードの場合と同じである。なお、何れのモードが選択された場合においても、選択されたモードにおいて反力要素に連結されるモータ・ジェネレータの出力を制御することにより、前記動力分配装置の変速比を無段階に制御することが可能である。さらに、高速モードから中速モードへの切り替え、または中速モードから低速モードへの切り換え時にも、いずれか一方のモータ・ジェネレータを停止させる制御を実行可能である。
以上のように、モード同士の切り換え時には、切り換え前のモードで反力を受け持っているモータ・ジェネレータが停止される。したがって、モードの切り換え後に反力を受けもつモータ・ジェネレータの反力受け持ち時点における回転数をなるべく低回転数にすることができ、そのモータ・ジェネレータの回生による発生電力の流通量が低下する。したがって、エンジン回転数とギヤ19の回転数との間の変速比の広範囲に亘り、機械的な動力伝達量を増加させ、電力の流通量を低減させることができ、駆動装置全体における動力伝達効率が向上する。したがって、モータ・ジェネレータMG1,MG2の必要トルクを低下させ、かつ、体格を小型化できる。
つぎに、各モードの特性の一例を、図4に基づいて説明する。図4においては、前記動力分配装置3の変速比が横軸に示され、理論伝達効率が縦軸に示されている。また、前述した低速モードおよび中速モードおよび高速モードに相当する特性が実線で示されている。図4に示すように、各モードにおける変速比の制御範囲が異なる。具体的には、低速モードが選択される範囲は、中速モードが選択される範囲よりも変速比が大きい。また、中速モードが選択される範囲は、高速モードが選択される範囲よりも変速比が大きい。ここで、理論伝達効率とは、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2の動力が機械的に前記ギヤ19に伝達される割合である。この理論伝達効率は、前記蓄電装置43Aとモータ・ジェネレータMG1,MG2との間では、電力の授受がおこなわれないことを前提としている。前記モータ・ジェネレータMG1,MG2のいずれか一方が停止された場合を、理論伝達効率が1.0として表している。
理論伝達効率が1.0未満になるということは、モータ・ジェネレータの動力が電気エネルギに変換されたり、電気エネルギがモータ・ジェネレータの動力に変換されたりして、電力供給装置43における電気流通量が増加すること、つまり、車両1における全体としての電気依存度が大きく(高く)なることを意味する。そして、実施例の特性が実線で示されており、低速モードと中速モードとの切り換え時点では、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が停止されるため、理論伝達効率が1.0となっている。また、中速モードと高速モードとの切り換え時点では、前記第2のモータ・ジェネレータMG2が停止されるため、理論伝達効率が1.0となっている。これに対して、図4に破線で示す比較例について説明する。この比較例は、特表2005−509554号公報に記載されている技術において、動作モードの切換に伴う理論伝達効率を示すものであり、切り換え前のモードで反力要素となる回転要素が回転中に、モードの切り換えをおこなうものである。殆どの変速比の領域で、実施例の方が比較例よりも理論伝達効率が高くなっている。
つぎに、図1に示すハイブリッド駆動装置において、前進ポジションが選択されている場合に、EV走行モードを選択する場合について説明する。EV走行モードとは、前記エンジン2を停止させ、かつ、モータ・ジェネレータを電動機として駆動させ、そのトルクを車輪41に伝達して駆動力を発生させる制御モードである。例えば、前述した低速モードを選択し、かつ、エンジン2が停止している場合に前記第2のモータ・ジェネレータMG2のトルクを前記ギヤ36に伝達することが可能である。これを図5の共線図により説明すると、前記第2のモータ・ジェネレータMG2を正回転で力行制御し、かつ、前記エンジン2により反力を受け持つ制御を実行する。この場合、エンジン2は停止している。しかしながら、前記低速モードでは、前記第2のモータ・ジェネレータMG2が、図5の共線図上では出力要素であるギヤ19と同じ位置に配置されている。このため、駆動力不足となる可能性がある。
そこで、この実施例1においては、図2に示すEV走行モードを選択可能である。このEV走行モードを実行するためには、図1に示すように、前記エンジン2の逆回転を防止する一方向クラッチOWCが、前記クランクシャフト7に取り付けられていることが前提となる。例えば、一方向クラッチOWCの内輪をクランクシャフト7の外周に取り付け、一方向クラッチOWCの外輪を、前記エンジン2のシリンダブロックに取り付けることにより、エンジン2の正回転を許容し、逆回転を防止することが可能である。また、一方向クラッチOWCの内輪をクランクシャフト7の外周に取り付け、一方向クラッチOWCの外輪を、車体に固定したブラケットなど(図示せず)に取り付けることにより、エンジン2の正回転を許容し、逆回転を防止することも可能である。
このEV走行モードが選択された場合、前記切換機構SW1,SW2は高速モードの場合と同様に制御される。すなわち、図6の共線図に示すように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が前記サンギヤ20に連結され、前記第2のモータ・ジェネレータMG2が前記サンギヤ14およびキャリヤ23に連結される。なお、図6の共線図上における各回転要素同士の位置関係は、図3で説明した高速モードの場合と同じである。そして、前記電力供給装置43から前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2に電力を供給して、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2を共に電動機として駆動させ、その反力トルクを前記エンジン2で受け持つ。
このように、2基のモータ・ジェネレータMG1,MG2が共に電動機として駆動され、車輪41で発生する駆動力を高めることができる。また、出力要素であるギヤ19から、第1のモータ・ジェネレータMG1または第2のモータ・ジェネレータMG2までの距離が長くなるため、駆動力が一層高まる。したがって、EV走行モードを選択可能な車速の領域を拡大することができる。2基のモータ・ジェネレータMG1,MG2が共に電動機として駆動されると、前記エンジン2で受け持つ反力が大きくなるが、一方向クラッチOWCが設けられているため、前記エンジン2が逆回転することなく、確実に反力を受け持つことができる。このように、EV走行をおこなった場合におけるギヤ19の出力トルクToは次式で求めることが可能である。
To=(1+1/ρ2)Tm+(1+1/ρ2+1/ρ2ρ3)Tg
上記式において、ρ1は、前記遊星歯車機構4のサンギヤ8の歯数を、遊星歯車機構4のリングギヤ15の歯数で除した値であり、ρ2は、前記遊星歯車機構5のサンギヤ14の歯数を、遊星歯車機構5のリングギヤ15の歯数で除した値であり、ρ3は、前記遊星歯車機構6のサンギヤ20の歯数を、遊星歯車機構6のリングギヤ21の歯数で除した値である。
ここで、図1および図2および図3および図6に基づいて説明した実施例の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、前記エンジン2が、この発明の原動機に相当し、前記3組の遊星歯車機構4,5,6が、この発明の複数の遊星歯車機構に相当し、サンギヤ8,14,20およびリングギヤ9,15,21およびキャリヤ11,17,23およびコネクティングドラム18およびギヤ19が、この発明の回転要素に相当し、前記切換機構SW1,SW2および前記アクチュエータ42および前記電子制御装置44が、この発明のモード切換機構に相当し、一方向クラッチOWCが、この発明の逆回転防止機構に相当する。また、低速モードが、この発明の第1モードに相当し、中速モードが、この発明の第2モードに相当し、高速モードが、この発明の第3モードに相当する。さらに、全てのモードにおいて、サンギヤ8がこの発明の入力要素に相当し、キャリヤ11,17,23およびギヤ19およびコネクティングドラム18が、この発明の出力要素に相当する。また、低速モードでは、リングギヤ9がこの発明の反力要素に相当する。また、中速モードでは、サンギヤ14およびキャリヤ23が、この発明の反力要素に相当する。さらに高速モードでは、サンギヤ20が、この発明の反力要素に相当する。
つぎに、ハイブリッド駆動装置の実施例2を、図7に基づいて説明する。この実施例2は、請求項3、4、17に対応するものである。図7に示された構成において、図1の構成と同じ構成については、図1と同じ符号を付してある。図7にされた動力分配装置3は複数の遊星歯車機構が、いわゆるラビニョ型の遊星歯車機構により構成されている。具体的には、動力分配装置3は、2組のプラネタリギヤ、具体的には、フロントプラネタリギヤ45(以下、遊星歯車機構45と記す)およびリアプラネタリギヤ46(以下、遊星歯車機構46と記す)を有している。また、前記エンジン2のクランクシャフト7の回転軸線方向で、前記遊星歯車機構45は前記遊星歯車機構46よりも前記エンジン2に近い位置に配置されている。一方の遊星歯車機構45は、同軸上に配置されたサンギヤ8およびリングギヤ9を有しており、そのサンギヤ8およびリングギヤ9に噛合するロングピニオンギヤ47が設けられている。
一方、前記遊星歯車機構46は、同軸上に配置されたサンギヤ48およびリングギヤ49と、前記サンギヤ48に噛合されたショートピニオンギヤ50とを有しており、前記ロングピニオンギヤ47が、前記リングギヤ49およびショートピニオンギヤ50に噛合されている。そして、ショートピニオンギヤ50およびロングピニオンギヤ47を自転、かつ、公転可能に支持するキャリヤ51が設けられており、このキャリヤ51が中空軸24に連結されている。さらに、前記リングギヤ49はコネクティングドラム52の内周に形成されており、このコネクティングドラム52にはギヤ19が形成されている。このように、ロングピニオンギヤ47は、遊星歯車機構45の回転要素と、遊星歯車機構46の回転要素とを兼ねている。そして、遊星歯車機構45がシングルピニオン式の遊星歯車機構を構成しており、遊星歯車機構46がダブルピニオン式の遊星歯車機構を構成している。さらに、遊星歯車機構45,46が、クランクシャフト7と同軸上に配置されている。さらにまた、実施例2では、ギヤ37と終減速機38のリングギヤ39とが係合されており、ギヤ36にはリングギヤ39は噛合されていない。
つぎに、この実施例2における各回転要素同士の連結関係を、図8の共線図に基づいて説明する。前記サンギヤ8と前記サンギヤ48との間に前記リングギヤ9が配置されている。また、前記サンギヤ8と前記リングギヤ9との間に、前記キャリヤ51が配置されている。さらに、前記リングギヤ9と前記サンギヤ48との間に、前記ギヤ19および前記リングギヤ49が配置されている。そして、この実施例2においても、前述と同様に低速モードと中速モードと高速モードとを選択的に変更可能である。また、各モードが選択された場合における切換機構SW1,SW2の制御を図9に示す。ここで、各モードが選択された場合に、切換機構SW1の制御は、実施例1の場合と同じである。これに対して、低速モードが選択された場合、切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35とギヤ37とが動力伝達可能に連結され、かつ、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35とギヤ36との動力伝達が遮断される。また、中速モードまたは高速モードが選択された場合は、切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35とギヤ36とが動力伝達可能に連結され、かつ、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35とギヤ37との動力伝達が遮断される。
まず、図9に示す低速モード(Low)が選択された場合は、切換機構SW1の制御により、前記第1のモータ・ジェネレータMG1と前記リングギヤ9とが、動力伝達可能に連結される。また、切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2と前記キャリヤ51とが動力伝達可能に連結される。この低速モードが選択された場合は、図8の共線図で最上段に示すように、エンジン2が正回転するとともに、そのエンジントルクが前記サンギヤ8に伝達される。また、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転で回生制御され、エンジントルクの反力を受け持つ。このように、前記サンギヤ8に入力されたエンジントルクが前記キャリヤ51に伝達され、そのキャリヤ51から出力されたトルクが、前記ギヤ25,37および前記終減速機38を経由して前記車輪41に伝達されて、駆動力が発生する。さらに、この低速モードでは、前記第1のモータ・ジェネレータMG1で発電された電力が前記第2のモータ・ジェネレータMG2に供給されて、第2のモータ・ジェネレータMG2が正回転で力行制御され、そのトルクを前記ギヤ37に伝達する。
つぎに、図9に示す低速モードから中速モード(Mid)に変更する制御を説明する。この場合は、図8の最上段の状態から、車速の上昇によって前記第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が低下して、図8の上から2段目に示すように、第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が零となる。この時、前記切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35と前記ギヤ37との動力伝達が遮断されるとともに、この第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が、前記リングギヤ49の回転数に対応する回転数に同期され、かつ、第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35が前記ギヤ36に連結される。そして、図8の上から3段目に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2が逆回転し、かつ、回生制御されて、エンジントルクの反力を受け持つとともに、前記ギヤ19の回転数がさらに上昇する。また、前記第1のモータ・ジェネレータMG1に電力を供給して正回転で力行制御し、そのトルクを前記ギヤ19に伝達することも可能である。この図8の上から3段目に示す共線図が、中速モードに相当する。なお、この中速モードにおける前記切換機構SW1の制御は、前記低速モードの場合と同じである。
さらに、図9に示す中速モードから高速モード(High)に変更する制御を説明する。この場合は、図8の上から3段目の状態からさらに車速が上昇して、逆回転している第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が低下し、図8の上から4段目に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が零になる。この時、前記切換機構SW1の制御により、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30と前記ギヤ31との動力伝達が遮断されるとともに、この第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が、前記サンギヤ20の回転数に対応する回転数に同期され、かつ、第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30が前記ギヤ32に連結される。つまり、第1のモータ・ジェネレータMG1と、サンギヤ48とが動力伝達可能に連結される。ついで、図8の最下段に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2が逆回転から正回転に切り換わり、かつ、力行制御されて、エンジントルクの反力を受け持つとともに、前記ギヤ19の回転数がさらに上昇する。なお、この高速モードにおける前記切換機構SW2の制御は、前記中速モードの場合と同じである。
なお、何れのモードが選択された場合においても、選択されたモードにおいて反力要素に連結されるモータ・ジェネレータの出力を制御することにより、前記動力分配装置の変速比を無段階に制御することが可能である。さらに、高速モードから中速モードへの切り替え、または中速モードから低速モードへの切り換え時にも、いずれか一方のモータ・ジェネレータを停止させる制御を実行可能である。この実施例2においても、モード同士の切り換えが、切り換え前に選択されていたモードで反力を受けていたモータ・ジェネレータが停止している状態でおこなわれる。したがって、実施例2においても実施例1と同様の効果を得られる。また、実施例2における理論伝達効率の特性は、図4に示すとおりとなる。さらに、実施例2においては、前記動力分配装置3を2組の遊星歯車機構45,46により構成している。さらに、ロングピニオンギヤ47が2組の遊星歯車機構45,46で共用化され、かつ、キャリヤ51が2組の遊星歯車機構45,46で共用化されている。このため、遊星歯車機構を3組用いることなく動力分配装置3を構成することができ、軸方向における部品の配置スペースを狭めることができる。また、クランクシャフト7の軸線方向における駆動装置の全長を短縮することができ、かつ、重量を低減することができる。さらには、駆動装置の製造コストを低減し、かつ、車載性を向上することができる。
この実施例2の構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、遊星歯車機構45が、この発明の第1遊星歯車機構に相当し、遊星歯車機構46が、この発明の第2遊星歯車機構に相当し、サンギヤ8が、この発明の第1サンギヤに相当し、リングギヤ9が、この発明の第1リングギヤに相当し、サンギヤ48が、この発明の第2サンギヤに相当し、リングギヤ51が、この発明の第2リングギヤに相当し、切換機構SW1が、この発明の第1クラッチ機構に相当し、切換機構SW2が、この発明の第2クラッチ機構に相当する。この実施例2のその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
つぎに、ハイブリッド駆動装置の実施例3を図10に基づいて説明する。この実施例3は、請求項5、請求項17に対応するものである。この図10において、図1の構成と同じ構成については、図1と同じ符号を付してある。この実施例3では、ギヤ36,37に対する終減速機38の接続構造が、実施例1とは異なる。この実施例3においては、前記出力軸35と平行に回転軸53が設けられており、この回転軸53にはギヤ54が形成されている。このギヤ54が前記リングギヤ39に噛合されている。また、回転軸53には、この回転軸53と相対回転可能なギヤ55,56が取り付けられている。このギヤ55が前記ギヤ36に噛合され、ギヤ56が前記ギヤ37に噛合されている。さらに、前記回転軸53を前記ギヤ55またはギヤ56に対して選択的に動力伝達可能に連結・遮断する切換機構SW3が設けられている。この切換機構SW3としては、前述したSW1,SW2と同様の機構を用いることができる。この切換機構SW3は、前記アクチュエータ42により制御される。
この実施例3において、前記動力分配装置3を含む共線図上の回転要素同士の位置関係および連結関係は、図3に基づいて説明した実施例1と同じである。つぎに、各モードについて図11の図表に基づいて説明すると、前進ポジションが選択された場合は、実施例1と同様に低速モードまたは中速モードまたは高速モードを選択的に変更可能である。この3種類の何れのモードが選択された場合も、前記切換機構SW1,SW2の制御は、実施例1と同じである。また、この3種類の何れのモードが選択された場合も、前記切換機構SW3の制御により、前記回転軸53と前記ギヤ55とが連結され、前記回転軸53と前記ギヤ56との間における動力伝達が遮断される。すなわち、前記回転軸53と前記ギヤ19とが動力伝達可能に連結される。したがって、実施例3においては、低速モードまたは中速モードまたは高速モードのいずれが選択された場合も、エンジントルクが前述のようにして前記ギヤ19に伝達されると、そのトルクが前記ギヤ36,55を経由して前記回転軸53に伝達され、その回転軸53のトルクが前記終減速機38を経由して車輪41に伝達される。また、この実施例3において、各モード同士の切り換えをおこなう場合、実施例1と同様に、切り換え前に選択されているモードで反力要素となっている回転要素およびモータ・ジェネレータの回転数を零とする制御、および切り換え後のモードで反力を受けるモータ・ジェネレータの回転数を、切り換え後のモードに応じた回転数に同期させる制御を実行可能である。したがって、この実施例3においても前記実施例1と同様の効果を得られる。
一方、この実施例3において後退ポジションが選択された場合は、第1後退モード(Rev1(Low))または第2後退モード(Rev2(High))が用いられる。この第1後退モードと第2後退モードとの相違については後述することとして、ここでは、第1後退モードが選択された場合について説明する。第1後退モードが選択された場合、切換機構SW1,SW2,SW3が、図11に示すように制御される。すなわち、前記切換機構SW1は低速モードと同様に制御され、前記切換機構SW2は中速モードと同様に制御される。また、前記切換機構SW3の制御により、前記ギヤ56と前記回転軸53とが動力伝達可能に連結され、前記ギヤ55と前記回転軸53との動力伝達が遮断される。この第1後退モードが選択された場合における回転要素の状態を、図12の共線図に基づいて説明する。前記エンジントルクが前記サンギヤ8に入力されて、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が正回転され、かつ、回生制御されてエンジントルクの反力を受け持ち、前記サンギヤおよび前記キャリヤ23が逆回転する。また、この第1後退モードが選択された場合は、前記第1のモータ・ジェネレータMG1で発電された電力を、前記第2のモータ・ジェネレータMG2に供給して、その第2のモータ・ジェネレータMG2を力行制御し、その出力トルクが前記ギヤ37に伝達される。
そして、この実施例3では、図12に示す共線図上で、前記エンジン2および入力要素と、前記第2のモータ・ジェネレータMG2および出力要素との間に、エンジントルクの反力を受け持つ前記第1のモータ・ジェネレータMG1が配置される。このため、図12の共線図上で、エンジントルクに基づいて出力要素に伝達されるトルクの向きと、第2のモータ・ジェネレータMG2から出力要素に伝達されるトルクの向きとが同じになり、出力要素を逆回転させようとするトルクの低下を抑制できる。したがって、前記第1のモータ・ジェネレータMG1で発生した電力で第2のモータ・ジェネレータMG2を力行制御して、そのトルクを前記車輪41に伝達する場合に、動力伝達効率の低下を抑制できる。言い換えれば、ポジティブリサーキュレーションを、この実施例3では回避できる。
つぎに、前述した第1後退モードと第2後退モードとの使い分けを説明する。具体的には、エンジントルクの反力を受け持つモータ・ジェネレータが逆回転し、かつ、力行制御となるか否かにより、この第1後退モードまたは第2後退モードを選択的に切り換える。図12の共線図に示すように、第1後退モードが選択され、かつ、低車速で車両1が後退している場合は、エンジントルクを受け持つ第1のモータ・ジェネレータMG1が正回転で回生制御される。その後、第1後退モードが選択されたまま車速が上昇すると、図13の共線図に示すように、エンジントルクの反力を受け持つ第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転し、かつ、力行制御になるとともに、第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制御をおこない、発生した電力を第1のモータ・ジェネレータMG1に供給する制御を実行することとなり、いわゆる動力循環が生じて動力伝達効率が低下する。ここでは、電力供給装置43から第1のモータ・ジェネレータMG1への電力供給はないものとする。
そこで、動力循環を回避するために、第1後退モードから第2後退モードに変更される。この第2後退モードにおいては、図11に示すように、前記切換機構SW1の制御により、前記出力軸30と前記ギヤ32とが連結される。また、前記切換機構SW2の制御により、前記出力軸35と前記ギヤ36とが連結される。さらに、前記切換機構SW3の制御により、前記回転軸53と前記ギヤ56とが連結される。このように、第2後退モードが選択された場合は、図14の共線図の共線図上で、入力要素であるサンギヤ8と、第1のモータ・ジェネレータMG1との間に、出力要素であるキャリヤ23が配置される。また、前記サンギヤ8と前記キャリヤ23との間に、前記第2のモータ・ジェネレータMG2が配置される。このように、いわゆる4要素状態となる。そして、第2のモータ・ジェネレータMG2が正回転し、かつ、回生制御されてエンジントルクの反力を受け持ち、その第2のモータ・ジェネレータMG2で発生した電力が、第1のモータ・ジェネレータMG1に供給されて、その第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転で力行制御される。したがって、後進ポジションが選択され、かつ車速が上昇した場合でも、動力循環を回避できる。
上記の第1後退モードと第2後退モードとの切り換えを判断する制御例を図15のフローチャートにより説明する。まず、後退ポジションが選択されているか否かが判断され(ステップS1)、このステップS1で肯定的に判断された場合は、第1後退モードが選択されている状況において、エンジントルクの反力を受ける第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転し、かつ、力行制御される状況にあるか否かが判断される(ステップS2)。このステップS2で肯定的に判断された場合は第1後退モードから第2後退モードに切り換えられ(ステップS3)、この制御ルーチンを終了する。これに対して、ステップS2で否定的に判断された場合は、そのまま第1後退モードを維持してこの制御ルーチンを終了する。なお、ステップS1で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。
この実施例3で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、前記サンギヤ8が、請求項5における入力要素に相当し、前記ギヤ9が、請求項5における反力要素に相当し、前記サンギヤ14および前記キャリヤ23が、請求項5における出力要素に相当する。また、実施例3では、切換機構SW1,SW2,SW3が、この発明のモード切換機構に相当する。また、図15のフローチャートのステップS2で肯定的に判断された場合が、請求項7に記載された「第1後退モードが選択され、第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転し、かつ、力行制御する条件が成立した場合」に相当する。なお、この実施例3におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
つぎに、ハイブリッド駆動装置の実施例4を図16に基づいて説明する。この実施例4は請求項5、請求項17に対応するものである。図16において、図1の構成および図7の構成および図10の構成と同じ構成については、図1および図7および図10と同じ符号を付してある。この図16においては、基本的な構成が図7と同様に構成されており、この図16では、前述した回転軸53およびギヤ55,56および切換機構SW3が設けられている。そして、図16では、前記ギヤ55がギヤ36に噛合され、前記ギヤ56がギヤ37に噛合されている。また、実施例4において、前記動力分配装置3における回転要素同士の共線図上における位置関係は、図8に示すとおりとなる。そして実施例4においても、前進ポジションでは、前述した低速モードまたは中速モードまたは高速モードを選択的に切り換え可能である。
この実施例4における切換機構SW1,SW2,SW3の制御を図17に基づいて説明する。まず、低速モードが選択された場合は、切換機構SW1の制御により、前記出力軸30と前記ギヤ31とが連結される。また、低速モードが選択された場合は、切換機構SW2の制御により、前記出力軸35と前記ギヤ37とが連結される。さらに、低速モードが選択された場合は、切換機構SW3の制御により、前記出力軸53と前記ギヤ56とが連結される。そして、第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転で回生制御されて、エンジントルクの反力が受け持たれ、第1のモータ・ジェネレータMG1で発電された電力が、第2のモータ・ジェネレータMG2に供給されて、第2のモータ・ジェネレータMG2が力行制御される。
この実施例4において、中速モードが選択された場合は、切換機構SW1の制御は低速モードと同じである。また、中速モードが選択された場合は、切換機構SW2の制御により、前記出力軸35と前記ギヤ36とが連結される。また、中速モードが選択された場合は、切換機構SW3の制御は低速モードと同じである。そして、第2のモータ・ジェネレータMG2が逆回転で回生制御されて、エンジントルクの反力が受け持たれ、第2のモータ・ジェネレータMG2で発電された電力が、第1のモータ・ジェネレータMG1に供給されて、第1のモータ・ジェネレータMG1が力行制御される。
さらに、高速モードが選択された場合は、切換機構SW1の制御により、前記出力軸30と前記ギヤ32とが連結される。また、高速モードが選択された場合は、切換機構SW2の制御は中速モードと同じである。さらに、高速モードが選択された場合には、切換機構SW3の制御は中速モードと同じである。そして、第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転で回生制御されて、エンジントルクの反力が受け持たれ、第1のモータ・ジェネレータMG1で発電された電力が、第2のモータ・ジェネレータMG2に供給されて、第2のモータ・ジェネレータMG2が力行制御される。そして、低速モードまたは中速モードまたは高速モードの何れが選択された場合においても、エンジントルクが前記サンギヤ8に入力され、かつ、前記キャリヤ51から出力されたトルクが、前記ギヤ25および前記ギヤ37および前記ギヤ56を経由して前記回転軸53に伝達され、その回転軸53のトルクが前記終減速機38に伝達される。
このように、実施例4において、低速モードまたは中速モードまたは高速モードの何れが選択された場合も、各回転要素の回転状態、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の出力および回転方向は、図8の場合と同じである。また、各モード同士を切り換える場合の制御も、図8の場合と同じであり、同様の効果を得られる。すなわち、実施例4において、実施例1および実施例2と同じ構成および同じ制御については、同様の効果を得られる。
さらに、この実施例4において後退ポジションが選択された場合は、第1後退モードまたは第2後退モードを選択的に切り換え可能である。ここで、第1後退モードおよび第2後退モードの技術的意味は、実施例3の場合と同じである。まず、第1後退モードが選択された場合は、図17に示すように、前記切換機構SW1の制御により前記出力軸30と前記ギヤ31とが連結され、前記切換機構SW2の制御により前記出力軸35と前記ギヤ36とが連結され、前記切換機構SW3の制御により前記出力軸53と前記ギヤ55とが連結される。そして、図18の共線図に示すように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が正回転、かつ、回生制御されてエンジントルクの反力を受け持ち、第1のモータ・ジェネレータMG1で発生した電力が、第2のモータ・ジェネレータMG2に供給され、その第2のモータ・ジェネレータMG2が逆回転で力行制御される。そして、この実施例4では、図18に示す共線図上で、前記エンジン2および入力要素と、前記第2のモータ・ジェネレータMG2および出力要素との間に、エンジントルクの反力を受け持つ前記第1のモータ・ジェネレータMG1が配置される。このため、図18の共線図上で、エンジントルクに基づいて出力要素に伝達されるトルクの向きと、第2のモータ・ジェネレータMG2から出力要素に伝達されるトルクの向きとが同じになり、出力要素を逆回転させようとするトルクの低下を抑制できる。したがって、実施例3と同様の効果を得られる。
この実施例4においても、実施例3と同じ理由により、前記第1後退モードと第2後退モードとの使い分けが可能である。前記第1後退モードが選択された後、車速が上昇して、図19の共線図に示すように、エンジントルクの反力を受け持つ第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転し、かつ、力行制御になるとともに、第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制御をおこない、発生した電力を第1のモータ・ジェネレータMG1に供給すると、いわゆる動力循環が生じて動力伝達効率が低下する。ここでは、電力供給装置43から第1のモータ・ジェネレータMG1への電力供給はないものとする。
そこで、この実施例4においても、実施例3と同様に図15のフローチャートに基づいて、第1後退モードと第2後退モードとを切り換え可能である。この第2後退モードが選択された場合は、図17に示すように、前記切換機構SW1の制御により、前記出力軸30と前記ギヤ32とが連結される。また、前記切換機構SW2の制御により、前記出力軸35と前記ギヤ37とが連結される。さらに、前記切換機構SW3の制御により、前記回転軸53と前記ギヤ55とが連結される。このように、第2後退モードが選択された場合は、図20の共線図上で、入力要素であるサンギヤ8と、第1のモータ・ジェネレータMG1との間に、出力要素であるリングギヤ49およびギヤ19が配置される。また、前記サンギヤ8と前記リングギヤ49との間に、反力要素となるキャリヤ51および前記第2のモータ・ジェネレータMG2が配置される。このように、いわゆる4要素状態となる。そして、第2のモータ・ジェネレータMG2が正回転し、かつ、回生制御されてエンジントルクの反力を受け持ち、その第2のモータ・ジェネレータMG2で発生した電力が、第1のモータ・ジェネレータMG1に供給されて、その第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転で力行制御される。したがって、後進ポジションが選択され、かつ車速が上昇した場合でも、動力循環を回避できる。
この実施例4で説明した構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、前記サンギヤ8が、請求項5における入力要素に相当し、前記ギヤ9が、請求項5における反力要素に相当し、前記ギヤ19および前記リングギヤ49が、請求項5における出力要素に相当する。また、実施例3では、切換機構SW1,SW2,SW3が、この発明のモード切換機構に相当する。なお、この実施例4におけるその他の構成と、この発明の構成との対応関係は、実施例1の構成と、この発明の構成との対応関係と同じである。
つぎに、実施例1で実行可能な他の制御例を説明する。図2および図3に基づいて説明した高速モードまたは中速モードが選択され、かつ車両1が惰力走行している場合に、車両1の運動エネルギを前記第1のモータ・ジェネレータMG1または第2のモータ・ジェネレータMG2のうち、少なくとも一方に伝達して、回生制御をおこなうことが可能である。ここで、高速モードまたは中速モードでは、共線図上で、前記エンジン2と、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の間に、出力要素であるギヤ19が配置されている。このため、共線図上で、出力要素と、出力要素から最も離れた位置にあるモータ・ジェネレータとの距離が比較的長くなり、モータ・ジェネレータの回生制動力により出力要素の回転数を低下させる場合に、反力要素となる前記エンジン2で受け持つトルクが高くなる。その結果、エンジン回転数が上昇(吹き上がり)して運転者が違和感を持つ可能性がある。また、高車速で車両1が走行している場合は、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が共に許容回転数を越える可能性がある。図21は、高速モードが選択され、かつ、車両1の惰力走行中に、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制動をおこなう場合を例示している。
上記のような不具合を回避するために、車両1の惰力走行中に、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制動をおこなう場合は、図2に示す回生モードを選択する。この回生モードが選択された場合、前記切換機構SW1,SW2の制御は、前記低速モードが選択された場合の制御と同じである。また、回生モードが選択された場合は、図22の共線図に示すように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が共に正回転し、かつ、一方のモータ・ジェネレータが回生制動をおこなう点が、低速モードが選択された場合とは異なる。この図22の共線図では、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が共に回生制動をおこなっている。
このように、回生モードが選択されると、図22の共線図上で第1のモータ・ジェネレータMG1が前記ギヤ21と同じ位置に配置され、かつ、第2のモータ・ジェネレータMG2が、共線図上でギヤ21の隣の回転要素に連結される。したがって、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制動をおこなった場合、前記エンジン2で受け持つ反力トルクは、低速モードが選択された場合よりも低くなる。したがって、エンジン回転数が上昇することを抑制でき、運転者の違和感を回避できるとともに、ドライバビリティが向上する。また、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が低くなり、許容回転数を越えることを回避できる。
このように、車両1が惰力走行する場合に実行可能な制御例を、図23のフローチャートに基づいて説明する。この図23のフローチャートは、請求項8に対応する制御の流れである。まず、前記車両1が惰力走行し、かつ、前記第1のモータ・ジェネレータMG1または第2のモータ・ジェネレータMG2の何れか一方で回生制動が実行されているか否かが判断される(ステップS11)。このステップS11で肯定的に判断された場合は、中速モードまたは高速モードが選択されているか否かが判断される(ステップS12)。このステップS12で肯定的に判断された場合は、中速モードまたは高速モードから、前記回生モードに切り換え(ステップS13)、この制御ルーチンを終了する。これに対して、前記ステップS12またはステップS11で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。なお、ステップS13では、低速モードを選択しても、前述と同様の効果を得られる。これは、低速モードが選択された場合、切換機構SW1,SW2の制御は、回生モードの場合と同じだからである。
図23で説明した制御は、前述の実施例2、つまり、図7のパワートレーンにおいても実行可能である。まず、図8および図9に基づいて説明した高速モードまたは中速モードが選択され、かつ車両1が惰力走行している場合に、車両1の運動エネルギを前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2に伝達して、回生制御をおこなうことが可能である。ここで、高速モードまたは中速モードでは、共線図上で、前記エンジン2と、第の1モータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の間に、出力要素であるキャリヤ51が配置されている。このため、共線図上で、出力要素と、出力要素から最も離れた位置にあるモータ・ジェネレータとの距離が比較的長くなり、モータ・ジェネレータの回生制動力により出力要素の回転数を低下させる場合に、反力要素となる前記エンジン2で受け持つトルクが高くなる。その結果、エンジン回転数が上昇(吹き上がり)して運転者が違和感を持つ可能性がある。また、高車速で車両1が走行している場合は、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が共に許容回転数を越える可能性がある。図24は、高速モードが選択され、かつ、車両1の惰力走行中に、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制動をおこなう場合を例示している。
上記のような不具合を回避するために、車両1の惰力走行中に、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制動をおこなう場合は、図9に示す回生モードを選択する。この回生モードが選択された場合、前記切換機構SW1,SW2の制御は、前記低速モードが選択された場合の制御と同じであり、図25の共線図に示すように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が共に正回転し、かつ、一方のモータ・ジェネレータが回生制動をおこなう点が、低速モードの場合とは異なる。この図22の共線図では、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が共に回生制動をおこなう場合が示されている。このように、回生モードが選択されると、図25の共線図上で第1のモータ・ジェネレータMG1が前記キャリヤ51と同じ位置に配置され、かつ、第2のモータ・ジェネレータMG2が、共線図上でキャリヤ51の隣の回転要素に連結される。したがって、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制動をおこなった場合、前記エンジン2で受け持つ反力トルクは、低速モードが選択された場合よりも低くなる。したがって、エンジン回転数が上昇することを抑制でき、運転者の違和感を回避できるとともに、ドライバビリティが向上する。また、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が低くなり、許容回転数を越えることを回避できる。
上記の実施例1ないし実施例4においては、どの制御モードが選択された場合でも、共線図上における回転要素の配置位置として、前記エンジン2が常に端部に位置する特徴を有している。また、実施例1ないし実施例4では、高速モードが選択された場合、前記共線図上で、前記エンジン2と前記第1のモータ・ジェネレータMG1との間に出力要素が配置され、この出力要素と前記第1のモータ・ジェネレータMG1との間に前記第2のモータ・ジェネレータMG2が配置されるとともに、前記共線図上で、前記出力要素と、この出力要素から最も離れた位置のモータ・ジェネレータとの間の距離が、前記第2モードよりも長く設定される構成となる点が共通している。
つぎに、この発明のハイブリッド駆動装置の実施例5を、図26に基づいて説明する。この実施例5において、実施例1と同じ構成については実施例1と同じ符号を付して、その説明を省略する。この実施例5は、請求項9に対応するものである。まず、実施例5の構成と実施例1との相違点を説明する。この実施例5では、前記エンジン2のクランクシャフト7と前記キャリヤ11とが一体回転するように連結されている。また、前記軸26がサンギヤ8と一体回転するように構成されている。さらに、サンギヤ20と一体回転するギヤ57が設けられており、このギヤ57が前記軸26の外周に取り付けられている。このギヤ57と前記軸26とは相対回転可能であり、このギヤ57がギヤ37に噛合されている。また、前記ギヤ31が前記ギヤ25に噛合され、前記ギヤ32が前記ギヤ27に噛合されている。さらに、前記ギヤ36が前記ギヤ13に噛合されている。
つぎに、実施例5におけるモードの切換制御について説明する。図27は、各モードにおける回転要素同士の連結関係を示す図表であり、図28は、各回転要素の状態を示す共線図である。この図27に示された各モードは、いずれも前進ポジションで選択されるモードである。この図28の共線図において、横軸には回転要素同士の位置関係が示されており、縦軸には回転要素の回転方向および回転数が示されている。図28の共線図では、エンジン(ENG)2と前記サンギヤ20との間に、出力要素であるリングギヤ9が配置されている。また、前記サンギヤ20と前記リングギヤ9との間に、前記サンギヤ14および前記キャリヤ23およびギヤ25が位置している。さらに、サンギヤ8およびリングギヤ15およびギヤ27が共線図上で同じ位置に配置され、前記リングギヤ9とサンギヤ8との間に前記エンジン2が配置されている。
そして、図27に示す低速モード(Low)が選択された場合は、切換機構SW1の制御により、前記出力軸30と前記ギヤ31とが連結され、前記出力軸30と前記ギヤ32との動力伝達が遮断される。すなわち、第1のモータ・ジェネレータMG1と、前記サンギヤ14およびキャリヤ23が動力伝達可能に連結される。また、切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35が前記ギヤ36に連結され、前記出力軸35と前記ギヤ37との動力伝達が遮断される。この低速モードが選択された場合は、図28の共線図で最上段に示すように、エンジン2が正回転するとともに、そのエンジントルクが前記キャリヤ11に伝達される。また、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転で回生制御され、エンジントルクの反力を受け持つ。このように、前記キャリヤ11に入力されたエンジントルクが前記リングギヤ9に伝達され、前記ギヤ13から出力されたトルクが、前記ギヤ36および前記終減速機38を経由して前記車輪41に伝達されて、駆動力が発生する。さらに、この低速モードでは、前記第1のモータ・ジェネレータMG1で発生した電力を前記第2のモータ・ジェネレータMG2に供給し、その第2のモータ・ジェネレータMG2を正回転で力行制御し、そのトルクを前記リングギヤ9に伝達することも可能である。
つぎに、図27に示す低速モードから中速モード(Mid)に変更する制御を説明する。この場合は、図28の最上段の状態から、車速の上昇により第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が低下して、図28の上から2段目に示すように、第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が零となる。この時、前記切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35と前記ギヤ36との動力伝達が遮断されるとともに、この第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が、前記サンギヤ20の回転数に対応する回転数に同期され、かつ、第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35が前記ギヤ37に連結される。そして、図28の上から3段目に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2が逆回転し、かつ、回生制御されて、エンジントルクの反力を受け持つ。また、前記第2のモータ・ジェネレータMG2から第1のモータ・ジェネレータMG1に電力を供給して正回転で力行制御することも可能である。この図28の上から3段目に示す共線図が、中速モードに相当する。なお、この中速モードにおける前記切換機構SW1の制御は、前記低速モードの場合と同じである。
さらに、図28に示す中速モードから高速モード(High)に変更する制御を説明する。この場合は、図28の上から3段目の状態から、さらに車速が上昇して、逆回転している第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が低下し、図28の上から4段目に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が零となる。この時、前記切換機構SW1の制御により、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30と前記ギヤ31との動力伝達が遮断されるとともに、この第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が、前記サンギヤ8の回転数に対応する回転数に同期され、かつ、第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30が前記ギヤ32に連結される。
ついで、図28の最下段に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2が正回転し、かつ、力行制御されて、エンジントルクの反力を受け持つ。なお、この高速モードにおける前記切換機構SW2の制御は、前記中速モードの場合と同じである。なお、何れのモードが選択された場合においても、選択されたモードにおいて反力要素に連結されるモータ・ジェネレータの出力を制御することにより、前記動力分配装置3の変速比を無段階に制御することが可能である。さらに、高速モードから中速モードへの切り替え、または中速モードから低速モードへの切り換え時にも、いずれか一方のモータ・ジェネレータを停止させる制御を実行可能である。なお、高速モードが選択された場合は、図28の共線図において、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が端部に位置している。
以上のように、実施例5においても、モード同士の切り換え時には、切り換え前のモードで反力を受け持っているモータ・ジェネレータが停止される。したがって、モードの切り換え後に反力を受け持つモータ・ジェネレータの反力受け持ち時点における回転数をなるべく低回転数にすることができ、そのモータ・ジェネレータの回生による発生電力の流通量が低下する。したがって、エンジン回転数とギヤ19の回転数との間の変速比の広範囲に亘り、機械的な動力伝達量を増加させ、電力の流通量を低減させることができ、駆動装置全体における動力伝達効率が向上する。したがって、モータ・ジェネレータMG1,MG2の必要トルクを低下させ、かつ、体格を小型化できる。
つぎに、各モードの特性の一例を、図29に基づいて説明する。図29においては、前記動力分配装置3の変速比が横軸に示され、理論伝達効率が縦軸に示されている。また、前述した低速モードおよび中速モードおよび高速モードに相当する特性が実線で示されている。図29に示すように、各モードにおける変速比の制御範囲が異なる。具体的には、低速モードが選択される範囲は、中速モードが選択される範囲よりも変速比が大きい。また、中速モードが選択される範囲は、高速モードが選択される範囲よりも変速比が大きい。そして、実施例5の特性が実線で示されており、低速モードと中速モードとの切り換え時点では、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が停止されるため、理論伝達効率が1.0となっている。また、中速モードと高速モードとの切り換え時点では、前記第2のモータ・ジェネレータMG2が停止されるため、理論伝達効率が1.0となっている。これに対して、図29に破線で示す比較例について説明する。この比較例は、特表2005−509554号公報に記載されている技術において、動作モードの切換に伴う理論伝達効率を示すものであり、切り換え前のモードで反力要素となる回転要素が回転中に、モードの切り換えをおこなうものである。中速モードおよび高速モードでは、実施例5の方が比較例よりも理論伝達効率が高くなっている。
以上のように、実施例5においても、モード同士の切り換え時には、切り換え前のモードで反力を受け持っているモータ・ジェネレータが停止される。したがって、モードの切り換え後に反力を受けもつモータ・ジェネレータの反力受け持ち時点における回転数をなるべく低回転数にすることができ、そのモータ・ジェネレータの回生による発生電力の流通量が低下する。したがって、エンジン回転数とリングギヤ9の回転数との間の変速比の広範囲に亘り、機械的な動力伝達量を増加させ、電力の流通量を低減させることができ、駆動装置全体における動力伝達効率が向上する。したがって、モータ・ジェネレータMG1,MG2の必要トルクを低下させ、かつ、体格を小型化できる。
つぎに、ハイブリッド駆動装置の実施例6を図30に基づいて説明する。この実施例6は、請求項9および請求項12に対応している。この図30において、図26および図10と同じ構成部分については、図26および図10と同じ符号を付してある。すなわち、図30においては、前述と同様に回転軸53が設けられており、この回転軸53にギヤ55,56が取り付けられている。このギヤ55が前記ギヤ36に噛合され、ギヤ56が前記ギヤ37に噛合されている。
この実施例6において、前記動力分配装置3を含む共線図上の回転要素同士の位置関係および連結関係は、図28に基づいて説明した実施例5と同じである。つぎに、各モードについて図31の図表に基づいて説明すると、前進ポジションが選択された場合は、実施例5と同様に低速モードまたは中速モードまたは高速モードを選択的に変更可能である。この3種類の何れのモードが選択された場合も、前記切換機構SW1,SW2の制御は、実施例5と同じである。また、この3種類の何れのモードが選択された場合も、前記切換機構SW3の制御により、前記回転軸53と前記ギヤ55とが連結され、前記回転軸53と前記ギヤ56との間における動力伝達が遮断される。すなわち、前記回転軸53と前記リングギヤ9とが動力伝達可能に連結される。
したがって、実施例6においては、低速モードまたは中速モードまたは高速モードのいずれが選択された場合も、エンジントルクがキャリヤ11を経由して前記リングギヤ9に伝達されると、そのトルクが前記ギヤ36,55を経由して前記回転軸53に伝達され、その回転軸53のトルクが前記終減速機38を経由して車輪41に伝達される。また、この実施例6において、各モード同士の切り換えをおこなう場合、実施例5と同様に、切り換え前に選択されているモードで反力要素となっている回転要素およびモータ・ジェネレータの回転数を零とする制御、および切り換え後のモードで反力を受けるモータ・ジェネレータの回転数を、切り換え後のモードに応じた回転数に同期させる制御を実行可能である。つまり、この実施例6においても前記実施例5と同様の効果を得られる。
一方、この実施例6において後退ポジションが選択された場合は、図31の上から3段目に示された後退モード(Rev)が用いられる。後退モードが選択された場合、切換機構SW1,SW2,SW3が、図31に示すように制御される。すなわち、前記切換機構SW1は低速モードと同様に制御され、前記切換機構SW2は中速モードと同様に制御される。また、前記切換機構SW3の制御により、前記ギヤ56と前記回転軸53とが動力伝達可能に連結され、前記ギヤ55と前記回転軸53との動力伝達が遮断される。この第3後退モードが選択された場合における回転要素の状態を、図32の共線図に基づいて説明する。前記エンジントルクが前記キャリヤ11に入力されて、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が正回転され、かつ、回生制御されてエンジントルクの反力を受け持ち、前記サンギヤ20が逆回転する。また、この後退モードが選択された場合は、前記第1のモータ・ジェネレータMG1で発電された電力を、前記第2のモータ・ジェネレータMG2に供給して、その第2のモータ・ジェネレータMG2を力行制御し、その出力トルクが前記ギヤ37に伝達される。
そして、この実施例6では、後退モードが選択された場合、図32に示す共線図上で、前記第2のモータ・ジェネレータMG2および出力要素であるサンギヤ20が同じ位置に配置される。また、前記エンジン2と前記サンギヤ20との間に、エンジントルクの反力を受け持つ前記第1のモータ・ジェネレータMG1が配置される。このため、図32の共線図上で、エンジントルクに基づいてサンギヤ20に伝達されるトルクの向きと、第2のモータ・ジェネレータMG2からサンギヤ20に伝達されるトルクの向きとが同じになり、このサンギヤ20を回転させようとするトルクの低下を抑制できる。したがって、前記第1のモータ・ジェネレータMG1で発生した電力で第2のモータ・ジェネレータMG2を力行制御して、そのトルクを前記車輪41に伝達する場合に、動力伝達効率の低下を抑制できる。言い換えれば、ポジティブリサーキュレーションを、この実施例6では回避できる。
つぎに、ハイブリッド駆動装置の実施例7を図33に基づいて説明する。この実施例7は、請求項10および請求項11に対応するものである。この図33において、図1および図7と同じ構成部分については、図1および図7と同じ符号を付してある。まず、図33の構成と図7の構成との相違点を説明すると、図33においては、エンジン2のクランクシャフト7にキャリヤ51が連結され、サンギヤ8と一体回転する軸58が設けられている。この軸58にはギヤ59が形成されている。また、この軸58の外周には、軸58と相対回転可能な中空軸60が取り付けられている。この中空軸60にはギヤ61が形成されている。
また、軸58および中空軸60はクランクシャフト7と同軸上に配置されている。そして、この中空軸60に前記サンギヤ48が形成され、前記ギヤ59と前記ギヤ32とが噛合され、前記ギヤ19と前記ギヤ31とが噛合されている。また、前記ギヤ13には前記ギヤ36が噛合され、前記ギヤ61にはギヤ37が噛合されている。この実施例7における回転要素の位置関係を、図34に示す共線図に基づいて説明する。この図34において、前記サンギヤ8と前記サンギヤ48との間に、出力要素となる前記リングギヤ9が配置されている。このリングギヤ9と前記サンギヤ8との間に、前記エンジン2および前記キャリヤ51が配置されている。さらに、前記リングギヤ9と前記サンギヤ48との間に、前記リングギヤ49が配置されている。
この実施例7においても、前進ポジションでは、低速モードと中速モードと高速モードとを選択的に切り換え可能であり、各モードにおける切換機構SW1,SW2の制御は実施例5の場合と同じである。すなわち、図27に示すように、低速モードが選択された場合は、切換機構SW1の制御により、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30とギヤ31とが動力伝達可能に連結され、かつ、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30とギヤ32との動力伝達が遮断される。また、低速モードが選択された場合は、切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35とギヤ36とが動力伝達可能に連結され、かつ、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35とギヤ37との動力伝達が遮断される。
これに対して、中速モードが選択された場合は、切換機構SW1の制御は低速モードと同じであり、切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35とギヤ37とが動力伝達可能に連結され、かつ、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35とギヤ36との動力伝達が遮断される。さらに、高速モードが選択された場合は、切換機構SW2の制御は中速モードと同じであり、切換機構SW1の制御により、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30とギヤ32とが動力伝達可能に連結され、かつ、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30とギヤ31との動力伝達が遮断される。
つぎに各モードの切り換え制御を、図34の共線図に基づいて説明する。まず、低速モードが選択された場合は、エンジン2が正回転するとともに、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が逆回転で回生制御され、エンジントルクの反力を受け持つ。このようにして、エンジントルクが前記リングギヤ9に伝達され、そのリングギヤ9から出力されたトルクが、前記ギヤ36および前記終減速機38を経由して前記車輪41に伝達されて、駆動力が発生する。さらに、この低速モードでは、前記第1のモータ・ジェネレータMG1で発電された電力が前記第2のモータ・ジェネレータMG2に供給されて、第2のモータ・ジェネレータMG2が正回転で力行制御され、そのトルクを前記ギヤ36に伝達する。
前記低速モードから中速モードに変更する制御を説明する。この場合は、図34の最上段の状態から、車速の上昇によって前記第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が低下して、図34の上から2段目に示すように、第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が零となる。この時、前記切換機構SW2の制御により、前記第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35と前記ギヤ36との動力伝達が遮断されるとともに、この第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が、前記サンギヤ48の回転数に対応する回転数に同期され、かつ、第2のモータ・ジェネレータMG2の出力軸35が前記ギヤ37に連結される。そして、図34の上から3段目に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2が逆回転し、かつ、回生制御されて、エンジントルクの反力を受け持つ。また、前記第2のモータ・ジェネレータMG2で発生した電力を、前記第1のモータ・ジェネレータMG1に電力を供給して正回転で力行制御し、そのトルクを前記ギヤ19に伝達することも可能である。この図34の上から3段目に示す共線図が、中速モードに相当する。
さらに、中速モードから高速モードに変更する制御を説明する。この場合は、図34の上から3段目の状態からさらに車速が上昇して、逆回転している第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が低下し、図34の上から4段目に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が零になる。この時点で、前記切換機構SW1の制御により、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30と前記ギヤ31との動力伝達が遮断されるとともに、この第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数が、前記サンギヤ8の回転数に対応する回転数に同期され、かつ、第1のモータ・ジェネレータMG1の出力軸30が前記ギヤ32に連結される。ついで、図34の最下段に示すように、第2のモータ・ジェネレータMG2が正回転し、かつ、力行制御されて、エンジントルクの反力を受け持つ。
なお、実施例7において、何れのモードが選択された場合においても、選択されたモードにおいて反力要素に連結されるモータ・ジェネレータの出力を制御することにより、前記動力分配装置3の変速比を無段階に制御することが可能である。さらに、高速モードから中速モードへの切り替え、または中速モードから低速モードへの切り換え時にも、いずれか一方のモータ・ジェネレータを停止させる制御を実行可能である。この実施例7においても、モード同士の切り換えが、切り換え前に選択されていたモードで反力を受けていたモータ・ジェネレータが停止している状態でおこなわれる。したがって、実施例7においても実施例1と同様の効果を得られる。また、実施例7において実施例2と同じ構成部分については、実施例2と同じ作用効果を得られる。さらに、実施例7においても、高速モードが選択された場合は、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が共線図上で端部に位置する。
つぎに、実施例8の構成を図35に基づいて説明する。この実施例8は請求項1、2、3、4、17に対応している。この実施例8は、基本的には実施例7と同様に構成されており、前記ギヤ36,37から前記終減速機38に至る経路に、図16と同様に前記回転軸53およびギヤ55,56が設けられており、さらに、前記回転軸53を前記ギヤ55,56に対して選択的に連結する切換機構SW3が設けられている。この実施例8においても、前進ポジションが選択された場合は、前述と同様に低速モードおよび中速モードおよび高速モードを選択的に切り換え可能である。また、実施例8において、低速モードおよび中速モードおよび高速モードが選択的に切り換えられた場合、切換機構SW1,SW2の制御は、図31の図表と同じである。さらに、実施例8において、低速モードまたは中速モードまたは高速モードの何れが選択された場合でも、前記切換機構SW3の制御により、前記回転軸53と前記ギヤ55とが連結され、前記回転軸53と前記ギヤ56との動力伝達が遮断される。このため、前記エンジン2から前記ギヤ36に伝達されたトルクが、前記ギヤ55を経由して前記終減速機38に伝達される。そして、実施例8では、低速モードまたは中速モードまたは高速モードの何れにおいても、図34の共線図があてはまる。また、各モード同士の変更途中の制御も、実施例7と同じである。
この実施例8では、後退モード(Rev)を選択可能である。この後退モードが選択された場合、前記切換機構SW1の制御により、前記出力軸30と前記ギヤ31とが連結され、前記切換機構SW2の制御により、前記出力軸35と前記ギヤ37とが連結される。また、前記回転軸53と前記ギヤ56とが連結され、前記回転軸53と前記ギヤ55との動力伝達が遮断される。この制御も図31の図表と同じである。このため、後退モードが選択された場合は、前記エンジン2から前記サンギヤ48に伝達されたトルクが、前記ギヤ37,56を経由して前記終減速機38に伝達される。この後退モードが選択された場合の共線図を図36に示す。すなわち、図36の共線図上では、前記エンジン2と第2のモータ・ジェネレータMG2との間に前記第1のモータ・ジェネレータMG1が配置されており、前記エンジン2が正回転し、かつ、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が正回転で回生制御されて、エンジントルクの反力が受け持たれる。また、前記第1のモータ・ジェネレータMG1で発生した電力が第2のモータ・ジェネレータMG2に供給されて、その第2のモータ・ジェネレータMG2が逆回転で力行制御される。この実施例8においても、後退モードが選択された場合、図36の共線図上で、エンジントルクに基づいてギヤ37に伝達されるトルクの向きと、前記第2のモータ・ジェネレータMG2からギヤ37に伝達されるトルクの向きとが同じになるため、ポジティブリサーキュレーションを防止できる。なお、図31に示された後退モードが、この発明における第3の後退モードに相当する。
この実施例9は、上記実施例6および実施例8のハイブリッド駆動装置で実行可能な制御例である。この実施例9は請求項13に対応するものであり、後退モードの他の制御例である。前記実施例6および実施例8の何れにおいても、後退モードが選択された場合は、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が反力要素となり、第2のモータ・ジェネレータMG2を逆回転で力行制御する構成となっている。具体的には、前記電力供給装置43の蓄電装置43Aの充電量に基づいて、共線図上における回転要素同士の位置関係を変更し、かつ、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の制御を変更するものである。まず、図37のフローチャートにおいて、図31の上から3段目の後退モードが選択されたか否かが判断され(ステップS21)、このステップS21で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。
これに対して、ステップS21で肯定的に判断された場合は、蓄電装置43Aの充電量SOCが所定値未満であるか否かが判断される(ステップS22)。このステップS22で用いられる所定値は、モータ・ジェネレータを力行制御させて車両を後退させることの可能な充電量である。このステップS22で否定的に判断された場合は、実行中の後退モードを継続し、この制御ルーチンを終了する。一方、前記ステップS22で肯定的に判断された場合は、実行中の後退モードから、急速充電用の後退モードに切り替え(ステップS23)、この制御ルーチンを終了する。この急速充電用の後退モード(図31の最下段)が選択された場合は、実施例6または実施例8のいずれにおいても、図31に示すように、切換機構SW1,SW2が低速モードの場合と同じに制御され、切換機構SW3は、前述した後退モードと同じに制御される。
また実施例6において、切換機構SW1,SW2,SW3が、このように制御された場合は、図38に示すように、前記エンジン2と出力要素であるサンギヤ20との間に、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が配置される。一方実施例8において、切換機構SW1,SW2,SW3が、このように制御された場合は、図39に示すように、前記エンジン2と出力要素であるサンギヤ48との間に、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が配置される。
そして、何れの実施例においても、前記エンジン2および前記サンギヤ20および前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2という4つの回転要素が、共線図上でそれぞれ異なる位置に配置される。さらに、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が共に正回転し、かつ、共に回生制御されて、エンジントルクの反力を受け持つ制御が実行される。さらに、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で発生した電力が、蓄電装置43Aに充電される。したがって、実施例6または実施例8の何れにおいても急速充電用の後退モードが選択された場合は、通常用の後退モードが選択された場合に備えて、蓄電装置43Aの充電量を確保することができる。なお、図37のステップS23で選択される後退モード、つまり、図31の最下段に示された急速充電用の後退モードが、この発明の第4後退モードに相当する。
つぎに、図26および図33のハイブリッド駆動装置で実行可能な制御例を説明する。この制御例は、請求項14の発明に対応する。この実施例10は、モータ・ジェネレータを電動機として駆動させ、かつ、エンジン2を停止させて走行する(EV走行)制御に関する。まず、図26のハイブリッド駆動装置に関して説明すると、例えば、前述した低速モードを選択し、かつ、エンジン2が停止している場合に前記第2のモータ・ジェネレータMG2のトルクを前記ギヤ36に伝達することが可能である。これを図40の共線図により説明すると、前記第2のモータ・ジェネレータMG2を正回転で力行制御し、かつ、前記エンジン2により反力を受け持つ制御を実行する。この場合、エンジン2は停止している。しかしながら、前記低速モードでは、前記第2のモータ・ジェネレータMG2が、図40の共線図上では出力要素であるギヤ9と同じ位置に配置されている。このため、駆動力不足となる可能性がある。
そこで、図26のハイブリッド駆動装置でEV走行する実施例10では、図27に示すEVモードを選択することができる。実施例10においては、図27に示すEV走行モードを選択可能である。このEV走行モードを実行するためには、図26に示すように、前記エンジン2の逆回転を防止する一方向クラッチOWCが、前記クランクシャフト7に取り付けられていることが前提となる。一方向クラッチOWCの具体的な構成は前述と同じである。このEV走行モードが選択された場合、前記切換機構SW1,SW2は中速モードの場合と同様に制御される。すなわち、図41の共線図に示すように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が前記サンギヤ14および前記キャリヤ23に連結され、前記第2のモータ・ジェネレータMG2が前記サンギヤ20に連結される。そして、前記電力供給装置43から前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2に電力を供給して、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2を共に電動機として駆動させ、かつ正回転させるとともに、その反力トルクを、一方向クラッチOWCの係合により停止する前記エンジン2で受け持つ。
このように、2基のモータ・ジェネレータMG1,MG2が共に電動機として駆動され、車輪41で発生する駆動力を高めることができる。また、図41の共線図上で、出力要素であるリングギヤ9から、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2までの距離が長くなるため、一層駆動力が高まる。したがって、EV走行モードを選択可能な車速の領域を拡大することができる。2基のモータ・ジェネレータMG1,MG2が共に電動機として駆動されると、前記エンジン2で受け持つ反力が大きくなるが、一方向クラッチOWCが設けられているため、前記エンジン2が逆回転することなく、確実に反力を受け持つことができる。このように、EV走行をおこなった場合において、図26の構成では前記ギヤ9の出力トルクToを次式で求めることが可能である。
To=(1+1/ρ1ρ2)Tg+(1+ρ3)/(ρ1ρ2ρ3)Tm
上記式において、ρ1は、前記遊星歯車機構4のサンギヤ8の歯数を、遊星歯車機構4のリングギヤ15の歯数で除した値であり、ρ2は、前記遊星歯車機構5のサンギヤ14の歯数を、遊星歯車機構5のリングギヤ15の歯数で除した値であり、ρ3は、前記遊星歯車機構6のサンギヤ20の歯数を、遊星歯車機構6のリングギヤ21の歯数で除した値である。
つぎに、図33のハイブリッド駆動装置に関して説明すると、例えば、前述した低速モードを選択し、かつ、エンジン2が停止している場合に前記第2のモータ・ジェネレータMG2のトルクを前記サンギヤ48に伝達することが可能である。これを図42の共線図により説明すると、前記第2のモータ・ジェネレータMG2を正回転で力行制御し、かつ、前記エンジン2により反力を受け持つ制御を実行する。この場合、エンジン2は停止している。しかしながら、前記低速モードでは、前記第2のモータ・ジェネレータMG2が、図42の共線図上で出力要素であるギヤ9と同じ位置に配置されている。このため、駆動力不足となる可能性がある。
そこで、図33のハイブリッド駆動装置でEV走行する実施例10では、図27に示すEVモードを選択することができる。この実施例10においても、図27に示すEV走行モードを選択可能である。このEV走行モードが選択された場合、前記切換機構SW1,SW2は中速モードの場合と同様に制御される。すなわち、図43の共線図に示すように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1が前記リングギヤ49に連結され、前記第2のモータ・ジェネレータMG2が前記サンギヤ48に連結される。そして、前記電力供給装置43から前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2に電力を供給して、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2を共に電動機として駆動させ、かつ正回転させるとともに、その反力トルクを、一方向クラッチOWCの係合により停止する前記エンジン2で受け持つ。
このように、2基のモータ・ジェネレータMG1,MG2が共に電動機として駆動され、車輪41で発生する駆動力を高めることができる。また、図43の共線図上で、出力要素であるリングギヤ9から、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2までの距離が長くなるため、一層駆動力が高まる。したがって、EV走行モードを選択可能な車速の領域を拡大することができる。2基のモータ・ジェネレータMG1,MG2が共に電動機として駆動されると、前記エンジン2で受け持つ反力が大きくなるが、一方向クラッチOWCが設けられているため、前記エンジン2が逆回転することなく、確実に反力を受け持つことができる。
つぎに、図26および図33に示すハイブリッド駆動装置で実行可能なEV走行制御の他の例である。まず、図26のハイブリッド駆動装置では、図2に示すEV走行モードを選択可能である。すなわち、前記切換機構SW1の制御により、前記出力軸30と前記ギヤ32とが連結される。また、前記切換機構SW2の制御により、前記出力軸35と前記ギヤ37とが連結される。なお、切換機構SW1,SW2の制御は、高速モードの場合と同じである。このような切換機構SW1,SW2の制御により、各回転要素同士の位置関係が、図44の共線図に示すとおりとなる。すなわち、前記第1のモータ・ジェネレータMG1と前記第2のモータ・ジェネレータMG2との間に、出力要素であるリングギヤ9が配置され、前記第1のモータ・ジェネレータMG1と前記リングギヤ9との間に、前記エンジン2が配置される。このように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2およびリングギヤ9および前記エンジン2が、共線図上で全て異なる位置に配置された、いわゆる4要素状態となる。
そして、EV走行モードが選択された場合は、前記第2のモータ・ジェネレータMG2を正回転で力行制御するとともに、前記第1のモータ・ジェネレータMG1を逆回転で回生制御して反力を受け止める。この場合、前記エンジン2の回転数が零に維持されるように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数を制御する。このようにして、前記第2のモータ・ジェネレータMG2のトルクを前記リングギヤ9に伝達し、そのリングギヤ9を正回転させる。また、図26に示す構成において、前記リングギヤ9の出力トルクToは、例えば次式により求められる。
To=Tg+Tm
Tg=(ρ3(1−ρ1ρ2)+1)/(ρ2ρ3+ρ1ρ2ρ3)Tm
ここで、ρ1は、前記遊星歯車機構4のサンギヤ8の歯数を、遊星歯車機構4のリングギヤ15の歯数で除した値であり、ρ2は、前記遊星歯車機構5のサンギヤ14の歯数を、遊星歯車機構5のリングギヤ15の歯数で除した値であり、ρ3は、前記遊星歯車機構6のサンギヤ20の歯数を、遊星歯車機構6のリングギヤ21の歯数で除した値である。
つぎに、図33に示すハイブリッド駆動装置で、図2に示すEV走行モードが選択された場合、切換機構SW1,SW2の制御により、各回転要素同士の位置関係が、図45の共線図に示すとおりとなる。すなわち、前記第1のモータ・ジェネレータMG1と前記第2のモータ・ジェネレータMG2との間に、出力要素であるリングギヤ9が配置され、前記第1のモータ・ジェネレータMG1と前記リングギヤ9との間に、前記エンジン2が配置される。このように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2およびリングギヤ9および前記エンジン2が、共線図上で全て異なる位置に配置された、いわゆる4要素状態となる。
そして、EV走行モードが選択された場合は、前記第2のモータ・ジェネレータMG2を正回転で力行制御するとともに、前記第1のモータ・ジェネレータMG1を逆回転で回生制御して反力を受け止める。この場合、前記エンジン2の回転数が零に維持されるように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1の回転数を制御する。このようにして、前記第2のモータ・ジェネレータMG2のトルクを前記リングギヤ9に伝達し、そのリングギヤ9を正回転させる。このように、図26または図33のハイブリッド駆動装置で、図2に示すEV走行モードを選択して、第1のモータ・ジェネレータMG1により反力を受ける構成にすると、前記エンジン2が逆回転することを防止するために、新たに逆回転防止機構を設けずに済む。したがって、ハイブリッド駆動装置の製造コストの低減、重量増加の抑制、省スペース化を図ることができる。
つぎに、前述した図26または図33におけるハイブリッド駆動装置において、車両1が惰力走行してモータ・ジェネレータで回生制御を実行する場合について説明する。この実施例12は、請求項16に対応するものである。まず、図26のハイブリッド駆動装置で高速モードまたは中速モードが選択され、かつ車両1が惰力走行している場合に、車両1の運動エネルギを前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2に伝達して、回生制御をおこなう場合について説明する。図26のハイブリッド駆動装置において高速モードが選択されると、図46に示す共線図に示すように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1と、第2のモータ・ジェネレータMG2との間に、出力要素であるリングギヤ9が配置される。そして、第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制御が実行され、かつ、第1のモータ・ジェネレータMG1を逆転力行して、その反力トルクが受け持たれる。このため、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2および動力伝達経路で動力循環が発生して、エネルギの回収効率が低下する。
そこで、図26のハイブリッド駆動装置で車両1が惰力走行し、回生制御を実行する場合に図23に示す制御を実行することにより、上記不都合を回避できる。具体的には、図23のステップS13に進むと、図27に示す回生モードを選択する。この回生モードは、前記切換機構SW1,SW2の制御は低速モードの場合と同じであり、図47に示す共線図上における各回転要素の位置関係は、図27に示す低速モードの場合と同じである。そして、回生モードでは前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が、共に正回転し、かつ、回生制御されて、その回生制動力により前記リングギヤ9の回転数が低下させられる。また、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で発生した電力は、前記蓄電装置43Aに充電される。
このように、回生モードが選択されると、図47の共線図上で第1のモータ・ジェネレータMG1が前記サンギヤ14と同じ位置に配置され、かつ、第2のモータ・ジェネレータMG2が、共線図上で前記リングギヤ9と同じ位置に配置される。つまり、共線図上で、回生制御するモータ・ジェネレータから出力要素までの距離が、高速モードまたは中速モードの場合よりも短くなる。したがって、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制動をおこなう場合、前記エンジン2で受け持つ反力トルクは、中速モードまたは高速モードが選択された場合よりも低くなる。したがって、エンジン回転数が上昇することを抑制でき、運転者の違和感を回避できるとともに、ドライバビリティが向上する。また、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数が低くなり、許容回転数を越えることを回避できる。さらに、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が共に回生制御されるため、動力循環を回避できるとともに、エネルギの回収効率が向上する。
つぎに、図33のハイブリッド駆動装置で高速モードまたは中速モードが選択され、かつ車両1が惰力走行している場合に、車両1の運動エネルギを前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2に伝達して、回生制御をおこなう場合について説明する。図33のハイブリッド駆動装置において、高速モードまたは中速モードが選択されると、図48に示す共線図に示すように、前記第1のモータ・ジェネレータMG1と、第2のモータ・ジェネレータMG2との間に、出力要素であるリングギヤ9が配置される。そして、第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制御が実行され、かつ、第1のモータ・ジェネレータMG1を逆転力行して、その反力トルクが受け持たれる。このため、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2および動力伝達経路で動力循環が発生して、エネルギの回収効率が低下する。
そこで、図33のハイブリッド駆動装置で車両1が惰力走行し、回生制御を実行する場合に図23に示す制御を実行することにより、上記不都合を回避できる。具体的には、図23のステップS13に進むと、図27に示す回生モードを選択する。この回生モードは、前記切換機構SW1,SW2の制御は低速モードの場合と同じであり、図49に示す共線図上における各回転要素の位置関係は、図34に示す低速モードの場合と同じである。そして、回生モードでは前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が、共に正回転し、かつ、回生制御されて、その回生制動力により前記リングギヤ9の回転数が低下させられる。また、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で発生した電力は、前記蓄電装置43Aに充電される。
このように、回生モードが選択されると、図49の共線図上で第1のモータ・ジェネレータMG1が前記リングギヤ49と同じ位置に配置され、かつ、第2のモータ・ジェネレータMG2が、共線図上で前記リングギヤ9と同じ位置に配置される。つまり、共線図上で、回生制御するモータ・ジェネレータから出力要素までの距離が、高速モードまたは中速モードの場合よりも短くなる。したがって、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2で回生制動をおこなう場合、前記エンジン2で受け持つ反力トルクは、中速モードまたは高速モードが選択された場合よりも低くなる。したがって、エンジン回転数が上昇することを抑制でき、運転者の違和感を回避できるとともに、ドライバビリティが向上する。また、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2の回転数も低くなり、許容回転数を越えることを回避できる。さらに、第1のモータ・ジェネレータMG1および第2のモータ・ジェネレータMG2が共に回生制御されるため、動力循環を回避できるとともに、エネルギの回収効率が向上する。なお、この実施例には、前記原動機が逆回転することを防止する逆回転防止機構が設けられており、前記モード切り換え機構は、前記第1のモータ・ジェネレータMG1および前記第2のモータ・ジェネレータMG2を電動機として駆動させ、かつ、その反力を逆回転が防止された前記原動機で受け持たせて出力要素にトルクを伝達する第4モードを選択する機構が記載されている。
この発明の実施例1に相当するハイブリッド駆動装置および制御系統の一例を示す概念図である。
図1に示された切換機構の動作と、各モードとの関係を示す図表である。
図1に示されたハイブリッド駆動装置に含まれる回転要素の状態を示す共線図である。
図1に示されたハイブリッド駆動装置で選択可能なモードにおいて、変速比と理論伝達効率との関係の一例を示す特性線図である。
実施例1において、低速モードでEV走行することを想定した場合の共線図である。
実施例1において、EV走行モードでEV走行する場合の共線図である。
この発明の実施例2に相当するハイブリッド駆動装置および制御系統の一例を示す概念図である。
図7に示されたハイブリッド駆動装置に含まれる回転要素の状態を示す共線図である。
図7に示された切換機構の動作と、各モードとの関係を示す図表である。
この発明の実施例3に相当するハイブリッド駆動装置および制御系統の一例を示す概念図である。
図10に示された切換機構の動作と、各モードとの関係を示す図表である。
図10に示されたハイブリッド駆動装置で第1後退モードが選択された場合における回転要素の状態を示す共線図である。
図10に示されたハイブリッド駆動装置において、エンジントルクの反力を受け持つモータ・ジェネレータが逆回転で力行制御される場合を想定した共線図である。
図10に示されたハイブリッド駆動装置で第2後退モードが選択された場合における回転要素の状態を示す共線図である。
図10に示されたハイブリッド駆動装置で、第1後退モードと第2後退モードとを変更するための制御例を示すフローチャートである。
この発明の実施例4に相当するハイブリッド駆動装置および制御系統の一例を示す概念図である。
図16に示された切換機構の動作と、各モードとの関係を示す図表である。
図16に示されたハイブリッド駆動装置で第1後退モードが選択された場合における回転要素の状態を示す共線図である。
図16に示されたハイブリッド駆動装置において、エンジントルクの反力を受け持つモータ・ジェネレータが逆回転で力行制御される場合を想定した共線図である。
図16に示されたハイブリッド駆動装置で第2後退モードが選択された場合における回転要素の状態を示す共線図である。
実施例1において、車両の惰力走行中に、高速モードが選択され、かつ、第1モータ・ジェネレータおよび第2モータ・ジェネレータにより回生制動をおこなうことを想定した場合の共線図である。
実施例1において、車両の惰力走行中に、回生モードが選択され、かつ、第1モータ・ジェネレータおよび第2モータ・ジェネレータにより回生制動をおこなう場合の共線図である。
実施例1において、車両の惰力走行中に、モードを回生モードに切り換える制御を含むフローチャートである。
実施例2において、車両の惰力走行中に、高速モードが選択され、かつ、第1モータ・ジェネレータおよび第2モータ・ジェネレータにより回生制動をおこなうことを想定した場合の共線図である。
実施例2において、車両の惰力走行中に、回生モードが選択され、かつ、第1モータ・ジェネレータおよび第2モータ・ジェネレータにより回生制動をおこなう場合の共線図である。
この発明の実施例5に相当するハイブリッド駆動装置および制御系統の一例を示す概念図である。
図26に示された切換機構の動作と、各モードとの関係を示す図表である。
図26に示されたハイブリッド駆動装置に含まれる回転要素の状態を示す共線図である。
図26に示されたハイブリッド駆動装置で選択可能なモードにおいて、変速比と理論伝達効率との関係の一例を示す特性線図である。
この発明の実施例6に相当するハイブリッド駆動装置および制御系統の一例を示す概念図である。
図30に示された切換機構の動作と、各モードとの関係を示す図表である。
図30に示されたハイブリッド駆動装置で第3後退モードが選択された場合を示す共線図である。
この発明の実施例7に相当するハイブリッド駆動装置および制御系統の一例を示す概念図である。
図33に示されたハイブリッド駆動装置の回転要素と、各モードとの関係を示す共線図である。
この発明の実施例8に相当するおよび制御系統の一例を示す概念図である。
図35に示されたハイブリッド駆動装置の回転要素と、各モードとの関係を示す共線図である。
この発明の実施例9で実行される制御例を示すフローチャートである。
図37の制御に対応する共線図である。
図37の制御に対応する共線図である。
図26のハイブリッド駆動装置でEV走行をおこなう場合の仮りの共線図である。
図26のハイブリッド駆動装置でEV走行をおこなう場合の実施例10の共線図である。
図33のハイブリッド駆動装置でEV走行をおこなう場合の仮りの共線図例である。
図33のハイブリッド駆動装置でEV走行をおこなう場合の実施例10の共線図である。
図26のハイブリッド駆動装置でEV走行をおこなう場合の実施例11の共線図である。
図33のハイブリッド駆動装置でEV走行をおこなう場合の実施例11の共線図である。
図26のハイブリッド駆動装置で高速モードを選択し、かつ、回生制御をおこなう場合を想定した共線図である。
図26のハイブリッド駆動装置で回生モードを選択し、かつ、回生制御をおこなう場合の共線図である。
図33のハイブリッド駆動装置で高速モードを選択し、かつ、回生制御をおこなう場合を想定した共線図である。
図33のハイブリッド駆動装置で回生モードを選択し、かつ、回生制御をおこなう場合の共線図である。
符号の説明
1…車両、 2…エンジン、 4,5,6,45,46…遊星歯車機構、 8,14,20,48…サンギヤ、 9,15,21,51…リングギヤ、 11,17,23…キャリヤ、 18…コネクティングドラム、 19…ギヤ、 42…アクチュエータ、 44…電子制御装置、 43A…蓄電装置、 SW1,SW2,SW3…切換機構、 MG1…第1のモータ・ジェネレータ、 MG2…第2のモータ・ジェネレータ、 OWC…一方向クラッチ。