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JP4419829B2 - 成形体の製造方法および成形体 - Google Patents

成形体の製造方法および成形体 Download PDF

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JP4419829B2 JP2004370230A JP2004370230A JP4419829B2 JP 4419829 B2 JP4419829 B2 JP 4419829B2 JP 2004370230 A JP2004370230 A JP 2004370230A JP 2004370230 A JP2004370230 A JP 2004370230A JP 4419829 B2 JP4419829 B2 JP 4419829B2
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Description

本発明は、成形体の製造方法および成形体に関するものである。
非晶質軟磁性合金は、一般に、結晶材料に比べて、耐食性、耐摩耗性、強度等の点で優れるとともに、電気抵抗率が高く、高周波透磁率やコアロス等に優れた特性を示すことが知られている。このため、非晶質軟磁性合金は、電気、電子機器における各種デバイスの磁性材料(例えば、磁心材料)として使用されている。非晶質軟磁性合金は、非結晶状態を確保する急冷プロセスの関係上、その形状は、一般に薄帯状、細線状または粉末状である。したがって、所定形状の部材を得るには、薄帯状、細線状のものについても、一旦粉砕して粉末にしてから、所定温度に加熱した状態で加圧して成形する必要がある。
ところで、非晶質軟磁性合金粉末の成形工程は、合金の非晶質状態を維持するために、合金の結晶化開始温度よりも低い温度で行わなければならない。しかしながら、この温度では合金粉末をバルク化させることはできない。このため、非晶質軟磁性合金粉末に軟化点の低いガラス粉末を混合した原料粉末(混合粉末)を、熱間成形用金型に充填して、ガラスの軟化点よりも高く非晶質軟磁性合金の結晶化開始温度よりも低い温度で熱間成形し、軟化したガラスをバインダーとして非晶質軟磁性合金粒子どうしを接合することにより非晶質軟磁性合金粉末成形体を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、このような方法においては、原料粉末(混合粉末)を熱間成形用金型に充填し、所定の成形温度まで加熱する際に、粉末の状態では、粒子間に空隙が多く存在する。このため、全体的な熱伝導率は小さく、金型の壁面側と中心側とでは温度差が大きくなり易い。その原料粉末を均一に加熱し成形を行うには、比較的長い加熱時間(例えば、約20〜40分程度)が必要となり、生産性が低下する。また、肉厚の異なる成形体を製造するとき、肉厚の差によって、粉末に温度ムラを生じ、均一な特性をもつ成形体が得るのが困難である。一方、生産性の向上を図るため、金型をより高温に熱して入熱量を大きくし、加熱時間を短縮しようとすると、壁面側と中心側の温度差はさらに大きくなってしまい、中心側が成形温度に達したときには、壁面側の粉末の温度が非晶質軟磁性合金の結晶化開始温度を超えて、非晶質性が損なわれてしまう等の問題が発生し易くなる。また、非晶質軟磁性合金粒子は、高硬度であり、圧縮等による変形量が小さいため、上記のような方法では、非晶質状態を保持した軟磁性合金で構成された成形体を、高密度なものとして得るのが困難であり、例えば、成形体として磁心(高周波磁心)を得る場合、十分な磁気特性が得られない。
特開平9−235660号公報
本発明の目的は、主として軟磁性を保持した状態の非晶質合金で構成され、かつ、高密度な成形体を得ること、また、主として軟磁性を保持した状態の非晶質合金で構成され、かつ、高密度な成形体を優れた成形性(成形のし易さ)で得ることができる成形体の製造方法を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の成形体の製造方法は、多数個の非晶質軟磁性合金を用いて成形体を製造する方法であって、
非晶質軟磁性合金で構成された第1の粉末と、磁性材料で構成された第2の粉末と、前記第1の粉末を構成する非晶質軟磁性合金の結晶化温度よりも低い軟化点を有するガラスと、結着性樹脂とを含む組成物を用いて、所定の形状に成形された仮成形体を得る工程と、
前記仮成形体を、前記ガラスの軟化点よりも高く、かつ、前記第1の粉末を構成する非晶質軟磁性合金の結晶化温度よりも低い温度で焼成する工程とを有し、
前記第2の粉末は、前記第1の粉末より脆性が高く、前記仮成形体を得る工程において粉砕されるものであり、
前記第2の粉末は、前記第1の粉末と同一の組成を有する粉末に対して、水素雰囲気下における300〜400℃の熱処理を施すことにより調製されたものであり、
前記組成物中における前記第1の粉末の含有率をX[wt%]、前記第2の粉末の含有率をY[wt%]としたとき、0.05≦Y/(X+Y)≦0.50の関係を満足することを特徴とする。
これにより、主として軟磁性を保持した状態の非晶質合金で構成され、かつ、高密度な成形体を優れた成形性(成形のし易さ)で得ることができる成形体の製造方法を提供することができる。
本発明の成形体の製造方法では、前記組成物中に含まれる前記第1の粉末の表面には、ガラスで構成された被膜が設けられており、
前記組成物中に含まれる前記第2の粉末の表面には、ガラスで構成された被膜が設けられていないことが好ましい。
これにより、最終的に得られる成形体において、磁性粉末の直接的な接触をより確実に防止することができ(より確実に、各磁性粉末間にガラスを配することができ)、磁性粉末間の絶縁性を十分に保持しつつ、ガラスを介した各粉末の密着性を特に優れたものとすることができ、密度、機械的強度を特に高いものとすることができるとともに、仮成形体製造工程における第2の粉末の粉砕を好適に進行させ、空孔率を非常に低いものとすることができ、高磁気特性の成形体を生産性良く製造することができる。
本発明の成形体の製造方法では、前記第1の粉末の平均粒径は、30〜100μmであることが好ましい。
これにより、優れた成形性(成形のし易さ)で成形体(仮成形体)を製造することができるとともに、成形体の密度をより高いものとすることができ、成形体の磁気特性、強度等を特に優れたものとすることができる。
本発明の成形体の製造方法では、前記第2の粉末の平均粒径は、5〜50μmであることが好ましい。
これにより、成形体(仮成形体)の製造時における優れた成形性(成形のし易さ)を保持しつつ、成形体の密度を特に高いものとすることができ、成形体の磁気特性、強度等を特に優れたものとすることができる。
本発明の成形体は、本発明の方法を用いて製造されたことを特徴とする。
これにより、主として軟磁性を保持した状態の非晶質合金で構成され、かつ、高密度な成形体を得ることができる。
本発明の成形体は、磁心であることが好ましい。
磁心は、磁性材料で構成される成形体の中でも、高い透磁率(高周波透磁率)や、低ヒステリシス損等の優れた磁気特性が強く要求されるものであるが、本発明によればこれらの特性を同時に優れたものとすることができる。すなわち、本発明は、磁心に好適に適用することができる。
以下、本発明の成形体の製造方法および成形体の好適な実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本実施形態で用いる成形体製造用組成物(混合粉末A)を模式的に示す図である。
<成形体製造用組成物>
まず、成形体の製造に用いる組成物(成形体製造用組成物)10について説明する。
成形体製造用の組成物10は、非晶質軟磁性合金で構成された第1の粉末1と、磁性材料で構成された第2の粉末2と、第1の粉末1を構成する非晶質軟磁性合金の結晶化温度よりも低い軟化点を有するガラス3と、結着性樹脂4とを含むものを用いる。
(1)第1の粉末
第1の粉末1を構成する合金は、通常、製造される成形体において、主成分となるものである。
第1の粉末1は、非晶質軟磁性合金で構成されたものであればいかなるものであってもよいが、Fe、Co、Niから選択される少なくとも1種を含み、これらのうち少なくとも1種が主成分である合金(例えば、Fe−Si−B系合金、Co−Fe−Si−B軽合金等)であるのが好ましく、Feを主成分とする鉄基合金であるのが好ましい。これにより、例えば、製造すべき成形体が磁心(特に、高周波磁心)である場合に、特に優れた磁気特性(例えば、低ヒステリシス損、高透磁率等)を有するものとして成形体を得ることができる。
第1の粉末1を構成する非晶質軟磁性合金の結晶化開始温度は、特に限定されないが、通常、500℃前後である。
第1の粉末1の平均粒径は、特に限定されないが、30〜100μmであるのが好ましく、30〜70μmであるのがより好ましく、40〜50μmであるのがさらに好ましい。第1の粉末1の平均粒径が前記範囲内の値であると、優れた成形性(成形のし易さ)で成形体(仮成形体)を製造することができるとともに、成形体の密度をより高いものとすることができ、成形体の磁気特性、強度等を特に優れたものとすることができる。これに対し、第1の粉末1の平均粒径が前記下限値未満であると、成形体(仮成形体)の成形性が低下する。また、第1の粉末1の平均粒径が前記上限値を超えると、第2の粉末2の平均粒径、含有率等によっては、成形体の密度を十分に高めるのが困難となり、例えば、成形体の強度、磁気特性等を十分に高めるのが困難となる。なお、本発明において、「平均粒径」とは、対象となる各粒子についてのナッセンシュタイン径の平均値のことを指す。
第1の粉末1は、微小圧縮試験装置により測定される単一粒子の破壊荷重(100μmの粒子を基準として評価される破壊加重)が、300gf以上であるのが好ましく、400gf以上であるのがより好ましく、500gf以上であるのがさらに好ましい。第1の粉末1の破壊加重が小さ過ぎると、第2の粉末2の破壊作用を減衰させ、更に破壊された粒子の増加により成形体の密度が低下する可能性がある。
また、組成物10中における第1の粉末1の含有率は、特に限定されないが、50〜95wt%であるのが好ましく、70〜90wt%であるのがより好ましく、70〜80wt%であるのがさらに好ましい。第1の粉末1の含有率が前記範囲内の値であると、優れた成形性(成形のし易さ)で成形体(仮成形体)を製造することができるとともに、成形体の磁気特性を十分に優れたものとしつつ、成形体の密度をより高いものとし、成形体の強度等を特に優れたものとすることができる。これに対し、第1の粉末1の含有率が前記下限値未満であると、成形体(仮成形体)の成形性が低下する。また、第1の粉末1の含有率が前記上限値を超えると、第2の粉末2の平均粒径、含有率等によっては、成形体の密度を十分に高いものとするのが困難となり、成形体の強度を十分に高いものとするのが困難となる。また、成形体の密度を十分に高めるのが困難になることにより、成形体の磁気特性を十分に優れたものとするのが困難となる。
上記のような第1の粉末1は、いかなる方法で製造されたものであってもよい。第1の粉末1の製造方法としては、例えば、水アトマイズ法等の液体アトマイズ法(例えば、高速回転水流アトマイズ法、回転液アトマイズ法等)、ガスアトマイズ法等の各種アトマイズ法や、冷却ロール、冷却ディスク等を用いて得られる急冷凝固物を粉砕する方法等が挙げられるが、アトマイズ法が好ましく、液体アトマイズ法がより好ましい。このような方法を用いることにより、非晶質状態を有し、適度な粒径で形状が略球形の粉末を、確実に得ることができる。また、非晶質軟磁性合金は、一般に、靭性が高いため、急冷凝固物を粉砕すること(特に所望の大きさに粉砕すること)が困難であり、粉砕に要するエネルギーは大きなものとなる。これに対し、アトマイズ法(特に、液体アトマイズ法)によれば、粉砕処理を要することなく第1の粉末1を得ることができ、この点からも有利である。
(2)第2の粉末
前述したように、第2の粉末2は、磁性材料で構成されたものであれば、いかなるものであってもよいが、Fe、Co、Niから選択される少なくとも1種を含み、これらのうち少なくとも1種が主成分である合金(例えば、Fe−Si−B系合金、Co−Fe−Si−B軽合金等)で構成されたものであるのが好ましく、Feを主成分とする鉄基合金(特に、非晶質軟磁性合金)で構成されたものであるのがより好ましい。これにより、例えば、製造すべき成形体が磁心(特に、高周波磁心)である場合に、特に優れた磁気特性(例えば、低ヒステリシス損、高透磁率等)を有するものとして成形体を得ることができる。
第2の粉末2は、前述した第1の粉末より脆性の高い(脆い)ものである。このように、第1の粉末1とともに、第1の粉末1よりも脆性の高い第2の粉末2を用いることにより、成形体中において、複数個の第1の粉末1間の空間に、効率良く第2の粉末2を配置させることができ、成形体の密度(磁性材料の密度)を特に高いものとすることができ、結果として、成形体の強度、磁気特性等を特に優れたものとすることができる。より詳しく説明すると、組成物10中に第2の粉末2が含まれると、後述するような仮成形体を製造する工程(仮成形体製造工程)において、第1の粉末よりも脆性の高い(脆い)第2の粉末2を粉砕させ、粉砕された第2の粉末2を、複数個の第1の粉末1間の空間に、効率良く配置させることができる。これにより、最終的に得られる成形体は、磁性粉末(第1の粉末1、第2の粉末2)が高密度に充填されたものとなる。その結果、成形体は、高密度で、強度、磁気特性等に優れたものとなる。
第2の粉末2は、第1の粉末1よりも脆性の高いものであればよいが、例えば、以下のような条件を満足するものであるのが好ましい。
すなわち、第2の粉末2は、微小圧縮試験装置により測定される単一粒子の破壊荷重(100μmの粒子を基準として評価される破壊加重)が、50〜400gfであるのが好ましく、50〜250gfであるのがより好ましく、50〜150gfであるのがさらに好ましい。第2の粉末2の破壊加重が前記下限値未満であると、第2の粉末2が微細に破壊され過ぎて、破砕形状の粒子が増加し、粒子間の絶縁性を低下させてしまう可能性がある。一方、第2の粉末2の破壊荷重が前記上限値を超えると第1の粉末1と第2の粉末2との間での脆性の差を十分に大きくすることが困難となり、上述したような本発明の効果を十分に発揮させるのが困難になる可能性がある。
第2の粉末2の平均粒径は、特に限定されないが、5〜50μmであるのが好ましく、10〜40μmであるのがより好ましく、10〜30μmであるのがさらに好ましい。第2の粉末2の平均粒径が前記範囲内の値であると、成形体(仮成形体)の製造時における優れた成形性(成形のし易さ)を保持しつつ、成形体の密度を特に高いものとすることができ、成形体の磁気特性、強度等を特に優れたものとすることができる。これに対し、第2の粉末2の平均粒径が前記下限値未満であると、成形体(仮成形体)の成形性が低下する。また、第2の粉末2の平均粒径が前記上限値を超えると、成形体の密度を十分に高めるのが困難となり、例えば、成形体の強度、磁気特性等を十分に高めるのが困難となる可能性がある。
また、第1の粉末1の組成物10中における含有率をX[wt%]、第2の粉末2の組成物10中における含有率をY[wt%]としたとき、0.05≦Y/(X+Y)≦0.50の関係を満足する。このような関係を満足することにより、成形体中において、複数個の第1の粉末1間の空間に、効率良く第2の粉末2(粉砕された第2の粉末)を配置させることができ、成形体の密度(磁性材料の密度)を特に高いものとすることができる。その結果、成形体の強度、磁気特性等を特に優れたものとすることができる。
ところで、本発明では、成形体製造用の組成物として、第1の粉末に対して所定の割合で第2の粉末を含むものを用いるとともに、前述したように、第2の粉末として、第1の粉末よりも脆性の高いものを用いる。これにより、これらが相乗的に作用し合い、上述したような優れた効果が十分に発揮される。言い換えると、成形体製造用の組成物として第1の粉末に対して所定の割合で第2の粉末を含むものを用いたとしても、第2の粉末が第1の粉末よりも脆性の高いものでない場合や、成形体製造用の組成物として、第1の粉末と、当該第1の粉末よりも脆性の高い第2の粉末とを含むものを用いたとしても、組成物中における第2の粉末の含有率と第1の粉末の含有率との比率が所定の条件を満足しない場合には、上述したような本発明の効果は得られない。
上述したように、第1の粉末1の組成物10中における含有率をX[wt%]、第2の粉末2の組成物10中における含有率をY[wt%]としたとき、0.05≦Y/(X+Y)≦0.50の関係を満足すればよいが、0.1≦Y/(X+Y)≦0.4の関係を満足するのが好ましく、0.1≦Y/(X+Y)≦0.3の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、前述したような効果は、より顕著なものとして発揮される。
また、組成物10中における第2の粉末2の含有率の具体的な値は、特に限定されないが、5〜50wt%であるのが好ましく、10〜30wt%であるのがより好ましく、15〜30wt%であるのがさらに好ましい。第2の粉末2の含有率が前記範囲内の値であると、優れた成形性(成形のし易さ)で成形体(仮成形体)を製造することができるとともに、成形体の磁気特性を十分に優れたものとしつつ、成形体の密度をより高いものとし、成形体の強度等を特に優れたものとすることができる。これに対し、第2の粉末2の含有率が前記下限値未満であると、成形体の密度を十分に高いものとするのが困難となり、成形体の強度を十分に高いものとするのが困難となる。また、成形体の密度を十分に高めるのが困難になることにより、成形体の磁気特性を十分に優れたものとするのが困難となる。また、第2の粉末2の含有率が前記上限値を超えると、成形体(仮成形体)の成形性が低下する。
上記のような第2の粉末2は、いかなる方法で製造されたものであってもよい。第2の粉末2の製造方法としては、例えば、水アトマイズ法等の液体アトマイズ法(例えば、高速回転水流アトマイズ法、回転液アトマイズ法等)、ガスアトマイズ法等の各種アトマイズ法や、冷却ロール、冷却ディスク等を用いて得られる急冷凝固物を粉砕する方法、鋳造等により得られた凝固物を粉砕する方法等が挙げられる。また、第2の粉末2は、例えば、非晶質軟磁性合金で構成された粉末に対して、脆化処理を施すことによっても得ることができる。これにより、第2の粉末2の脆性を十分に高いものとしつつ、第2の粉末2の磁気特性を特に優れたものとすることができ、結果として、最終的に得られる成形体の磁気特性、強度等を特に優れたものとすることができ、成形体を磁心等により好適に適用することができる。脆化処理の方法は、特に限定されないが、例えば、脆化処理を施すべき粉末(以下、「対象粉末」ともいう)を、水素雰囲気下に放置する方法や、対象粉末に対して熱処理を施す方法等が挙げられるが、水素雰囲気下において、300〜400℃の熱処理を施すのが好ましい。これにより、対象粉末が備えている磁気特性の低下を十分に抑制しつつ、粉末の脆性をより効果的に高めることができる。その結果、最終的に得られる成形体の磁気特性、強度等を特に優れたものとすることができ、成形体を磁心等により好適に適用することができる。
また、上記のような脆化処理を施す場合、対象粉末としては、第1の粉末1と実質的に同一の粉末(同一の組成を有する粉末)を用いるのが好ましい。これにより、例えば、第1の粉末1のガラス3に対する親和性(密着性)と、第2の粉末2のガラス3に対する親和性(密着性)とを、ほぼ等しくすることができる。その結果、ガラス3の構成材料の選択により、得られる成形体の機械的強度を特に優れたものとすることができる。また、対象粉末が第1の粉末と実質的に同一の粉末であると、予め複数種の粉末を用意しておかなくても、1種類の磁性粉末(第1の粉末1)を用意しておけば、必要に応じて所望の成形体を好適に製造することができる。また、対象粉末が第1の粉末と実質的に同一の粉末であると、成形体の製造に際して第1の粉末1に脆化処理を施すことにより、製造すべき成形体の種類等に応じて、脆化処理の条件を調節することもできる。
(3)ガラス
ガラス3は、成形体において、多数個の磁性粉末粒子(第1の粉末1、第2の粉末2)を強固に結合させる機能を有するとともに、磁性粉末粒子同士の直接的な接触を防止する機能を有する。これにより、得られる成形体の強度を特に高いものとすることができる。また、これにより、例えば、成形体を磁心として用いた場合における、渦電流の発生を効果的に防止、抑制することができる。
前述したように、ガラス3は、第1の粉末1を構成する非晶質軟磁性合金の結晶化温度よりも低い軟化点を有するものであれば、いかなるものであってもよいが(ただし、水ガラスを除く)、例えば、酸化鉛含有のホウ酸系ガラス(PbO・B)や、これにZnOやSiOを混入させた三次元ガラス等の低軟化点ガラス等が挙げられる。
ガラス3の軟化点は、第1の粉末1を構成する非晶質軟磁性合金の結晶化開始温度よりも、100〜300℃低いものであるのが好ましく、150〜250℃低いものであるのがより好ましい。これにより、成形体の製造時において、非晶質軟磁性合金(特に、第1の粉末1を構成する非晶質軟磁性合金)の結晶化を確実に防止しつつ、各磁性粉末粒子の結合をより強固なものとして形成することができる。
ガラス3の軟化点の具体的な値は、特に限定されないが、250〜450℃であるのが好ましく、250〜400℃であるのがより好ましく、300〜400℃であるのがさらに好ましい。ガラス3の軟化点が前記範囲内の値であると、成形体の製造時において、非晶質軟磁性合金の結晶化を確実に防止しつつ、各磁性粉末粒子の結合をより強固なものとして形成することができる。また、ガラス3の軟化点が前記範囲内の値であると、得られる成形体の熱的安定性、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。
また、ガラス3の平均粒径は、特に限定されないが、1〜30μmであるのが好ましく、2〜20μmであるのがより好ましく、3〜10μmであるのがさらに好ましい。ガラス3の平均粒径が前記範囲内の値であると、成形体(仮成形体)の成形性を十分に優れたものとしつつ、成形体の密度(磁性材料の密度)を特に高いものとし、成形体の強度を特に優れたものとすることができる。これに対し、ガラス3の平均粒径が前記下限値未満であると、成形体(仮成形体)の成形性が低下する。また、例えば、ガラス3の平均粒径が前記下限値未満であると、例えば、製造すべき成形体が磁心である場合、磁性粉末粒子の直接的な接触を十分に防止することが困難となり、結果として、渦電流の発生を十分に防止、抑制することが困難となる。また、ガラス3の平均粒径が前記上限値を超えると、第2の粉末2の平均粒径、含有率等によっては、成形体の密度を十分に高めるのが困難となり、例えば、成形体の強度、磁気特性等を十分に高めるのが困難となる。また、ガラス3の平均粒径が前記上限値を超えると、例えば、製造すべき成形体が磁心である場合、磁性粉末粒子の直接的な接触を十分に防止することが困難となり、結果として、渦電流の発生を十分に防止、抑制することが困難となる。
また、組成物10中におけるガラス3の含有率は、特に限定されないが、0.1〜20wt%であるのが好ましく、0.2〜10wt%であるのがより好ましく、0.2〜5wt%であるのがさらに好ましい。ガラス3の含有率が前記範囲内の値であると、優れた成形性(成形のし易さ)で成形体(仮成形体)を製造することができるとともに、成形体の密度をより高いものとし、成形体の強度等を特に優れたものとすることができる。これに対し、ガラス3の含有率が前記下限値未満であると、成形体の機械的強度が低下する傾向を示す。また、ガラス3の含有率が前記下限値未満であると、非晶質軟磁性合金粒子間の絶縁性を十分に保持するのが困難となる可能性がある。また、ガラス3の含有率が前記上限値を超えると、成形体中における磁性材料(第1の粉末1、第2の粉末2)の含有率が低下し、成形体の磁気特性を十分に優れたものとするのが困難となる。
(4)結着性樹脂
結着性樹脂4は、後述する仮成形体を得る工程における、組成物10の成形性(成形のし易さ)、仮成形体の形状の安定性に大きく寄与する成分である。組成物10が、このような成分を含むことにより、寸法精度に優れた成形体を容易かつ確実に製造することができる。
結着性樹脂4としては、例えば、メタ(アクリル)系樹脂、ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体等のスチレン系樹脂でスチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニル樹脂、フェニール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族または脂環族炭化水素樹脂、各種ワックス等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも、エポキシ樹脂、PVA、軟質のフェノール樹脂、アクリル樹脂、各種ワックス等が好ましい。
また、結着性樹脂4の平均粒径は、特に限定されないが、1〜30μmであるのが好ましく、5〜20μmであるのがより好ましく、5〜10μmであるのがさらに好ましい。結着性樹脂4の平均粒径が前記範囲内の値であると、仮成形体の成形性を十分に優れたものとしつつ、仮成形体の形状の安定性を特に優れたものとすることができる。また、成形体の密度(磁性材料の密度)を特に高いものとし、成形体の強度を特に優れたものとすることができる。これに対し、結着性樹脂4の平均粒径が前記下限値未満であると、成形体(仮成形体)の成形性が低下するとともに、仮成形体の形状の安定性も低下する。また、結着性樹脂4の平均粒径が前記上限値を超えると、仮成形体の密度を十分に高めるのが困難となり、例えば、成形体の強度、磁気特性等を十分に高めるのが困難となる。
また、組成物10中における結着性樹脂4の含有率は、特に限定されないが、0.5〜10wt%であるのが好ましく、0.5〜5wt%であるのがより好ましく、1〜3wt%であるのがさらに好ましい。結着性樹脂4の含有率が前記範囲内の値であると、優れた成形性(成形のし易さ)で仮成形体を製造することができるとともに、仮成形体の密度をより高いものとし、仮成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。これに対し、結着性樹脂4の含有率が前記下限値未満であると、仮成形体の成形性が低下するとともに、得られる成形体の形状の安定性が低下する傾向を示す。また、結着性樹脂4の含有率が前記上限値を超えると、仮成形体と成形体との大きさの差が大きくなり過ぎ、成形体の寸法精度が低下する傾向を示す。
結着性樹脂4は、例えば、粉末状、液状、ゲル状等、いかなる形態のものであってもよい。
なお、組成物10は、上述した第1の粉末1、第2の粉末2、ガラス3、結着性樹脂4以外の成分を含むものであってもよい。
上記のような各成分を含む組成物10は、例えば、各成分に対応する粉末を混合することにより調製することができる。各成分の混合は、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×10-6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。また、必要に応じて、混合の後に、混練等を行ってもよい。これにより、例えば、組成物10の嵩密度が高くなり、仮成形体、成形体をより高密度のものとして得ることができ、成形体の寸法精度も向上する。このような場合、混練も前記混合と同様に、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×10-6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。
<仮成形体製造工程>
上記のような組成物10を所定の形状に成形して、仮成形体を得る(仮成形体製造工程)。
仮成形体の形成は、例えば、圧縮成形(プレス成形)、押出成形、射出成形、カレンダ成形等の各種成形法により行うことができる。このような各種成形法においては、組成物10に比較的大きな圧力が加わる。これにより、比較的脆性の高い(脆い)第2の粉末2は粉砕され、粉砕された第2の粉末2が、複数個の第1の粉末1間の空間に効率良く配置した仮成形体が得られる。このように、本工程で磁性粉末が高密度に充填された仮成形体を得ることができるため、最終的に得られる成形体も、高密度で、磁気特性、機械的強度等に優れたものとなる。また、上記のように、粉砕された第2の粉末2が複数個の第1の粉末1間の空間に効率良く配置するため、仮成形体の形状の安定性が優れたものとなり、後の焼成工程における不本意な変形等が効果的に防止され、最終的に得られる成形体の寸法精度は特に優れたものとなる。上記のような各種成形法の中でも、組成物10に大きな圧力を加えることができるという点で、圧縮成形(プレス成形)が好ましい。成形時における圧力(成形圧力)は、特に限定されないが、圧縮成形の場合には、500〜3000MPa程度であるのが好ましい。
仮成形体製造工程は、例えば、組成物10や成形に用いる型(例えば、金型)等を加熱しつつ行ってもよい。これにより、得られる仮成形体の密度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。仮成形体製造工程において、上記のような加熱を行う場合、その加熱温度は、非晶質軟磁性合金の結晶化温度よりも低い温度であるのが好ましく、ガラス3の軟化点よりも低い温度であるのがより好ましい。これにより、最終的に得られる成形体の磁気特性を特に優れたものとすることができる。
また、仮成形体製造工程は、室温で(加熱することなく)行ってもよい。これにより、成形体の生産性が向上し、コストパフォーマンスの点でも有利である。
なお、製造される仮成形体の形状寸法は、以後の焼成による仮成形体の収縮分等を見込んで決定される。
<焼成工程>
前記工程で得られた仮成形体を焼成する(焼成工程)。これにより、結着性樹脂が除去されるとともに、ガラス3が軟化し、ガラスを介して複数の磁性粒子(第1の粉末1、第2の粉末2)が接合される。また、この際、結着性樹脂が除去されるに伴って、結着性樹脂が存在していた領域に対応する部位(結着性樹脂が除去されることにより生じた空隙)に、軟化したガラスが侵入する。これにより、ガラスが各磁性粉末を接合するバインダーとして機能する、高密度で高強度な成形体が得られる。また、このようにして得られる成形体においては、各磁性粉末(第1の粉末1、第2の粉末2)がガラスを介して接合しており、磁性粉末同士の直接的な接触が防止されているため、過電流によるパワーロスが少なく、高周波領域での透磁率の低下が小さいといった利点を有している。このため、成形体は、好適に磁心に適用される。
焼成工程における雰囲気は、特に限定されないが、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×10-6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、磁性粉末(第1の粉末1、第2の粉末2)が酸化し易いものであっても、最終的に得られる成形体において、磁性粉末が本来有する、優れた磁気特性を効果的に発揮させることができる。
焼成工程における具体的な加熱温度は、ガラス3の軟化点よりも高く、かつ、第1の粉末1を構成する非晶質軟磁性合金の結晶化温度よりも低い温度で行う。これにより、非晶質軟磁性合金の結晶化による磁気特性の低下等を十分に防止しつつ、得られる成形体の密度、機械的強度を十分に高いものとすることができる。
焼成工程における具体的な処理温度は、結着性樹脂、ガラス、磁性粉末の組成等により異なるが、350〜520℃であるのが好ましく、400〜500℃であるのがより好ましく、450〜500℃であるのがさらに好ましい。焼成工程における処理温度が前記範囲内の値であると、磁性粉末間の絶縁性を十分に保持しつつ、得られる成形体の密度、機械的強度を特に高いものとすることができる。これに対し、焼成工程における処理温度が前記下限値未満であると、得られる接合体の密度、機械的強度を十分に高いものとするのが困難になる可能性がある。また、焼成工程における処理温度が前記上限値を超えると、本工程に中における仮成形体、成形体の形状の安定性が低下し、得られる成形体の寸法精度が低下する傾向を示す。また、焼成工程における処理温度が前記上限値を超えると、成形体中において、磁性粉末間の絶縁性を十分に保持するのが困難となり、成形体の磁気特性が低下する。
上記のようにして得られる成形体は、高密度(低空孔率)で、機械的強度、寸法精度、磁気特性等に優れたものとなる。
また、上記のようにして得られる成形体の成形体の透磁率μ'は、約20〜150であるのが好ましい。これにより、トランスやチョークコイル等として好適に用いることができる。
なお、上記の説明では、焼成により得られた焼成物を、そのまま成形体とするものとして説明したが、焼成後に、研削、研磨、鏡面加工、被膜の形成等の後処理を施してもよい。
また、得られる成形体においては、製造に用いた磁性粉末(特に、第1の粉末)を構成する非晶質軟磁性合金は、その一部が結晶化(例えば、結晶粒径が100nm以下の微結晶化)していてもよい。
また、上記のような焼成工程は、複数の段階に分けて行ってもよい。例えば、焼成工程は、結着性樹脂の除去を目的とする第1の段階と、ガラスによる磁性粉末の接合を目的とする第2の段階とを有するものであってもよい。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、本実施形態について、前述した実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図2は、本実施形態で用いる成形体製造用組成物(混合粉末B)を模式的に示す図である。
図2に示すように、本実施形態では、成形体製造用の組成物(成形体製造用組成物)10’として、第1の粉末1の表面にガラス3で構成された被膜(ガラス被膜)が形成された複合粒子と、第2の粉末2と、粒状のガラス3と、結着性樹脂4とを含むものを用いる。すなわち、組成物中における各成分の形態が異なる以外は、前記実施形態と同様である。このように、磁性粉末(第1の粉末1)の表面に、ガラス3で構成された被膜が設けられることにより、最終的に得られる成形体において、磁性粉末の直接的な接触をより確実に防止することができ(より確実に、各磁性粉末間にガラスを配することができ)、磁性粉末間の絶縁性を十分に保持しつつ、密度、機械的強度を特に高いものとすることができる。また、仮成形体製造工程、焼結工程等における雰囲気の組成等を厳密に管理しなくても、磁性粉末(第1の粉末1)の酸化等を効果的に防止することができ、得られる成形体の磁気特性を特に優れたものとすることができる。
第1の粉末1の表面に設けられるガラス被膜の平均厚さは、0.005〜2μmであるのが好ましく、0.01〜1μmであるのがより好ましく、0.01〜0.1μmであるのがさらに好ましい。ガラス被膜の平均厚さが前記範囲内であると、最終的に得られる成形体中における磁性粉末の密度を十分に高いものとしつつ、磁性粉末間の絶縁性を十分に保持することができ、さらに、成形体の機械的強度等も優れたものとすることができる。
このような組成物10’は、例えば、以下のようにして調製することができる。
まず、第1の粉末1とガラス3とを、ガラス3の軟化点以上の温度で、圧縮摩擦力、剪断力が加わるような混練を行うことにより、第1の粉末1の表面にガラス3製の被膜が設けられた複合粉末を得る。上記のようなガラス被膜の形成は、真空または減圧状態下(例えば1×10-1〜1×10-6Torr)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような、非酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、磁性粉末(第1の粉末1)の磁気特性の低下をより確実に防止することができる。特に、ガラス被膜の形成を真空中で行うことにより、磁性粉末(第1の粉末)−ガラス間に気体が侵入すること防止されるため、磁性粉末に対するガラス被膜の接合の信頼性は特に優れたものとなる。
次に、複合粉末(第1の粉末1とガラス被膜とで構成された複合粉末)を、第2の粉末2、ガラス3および結着性樹脂と混合することにより、上記のような組成物10’が得られる。
なお、上記の説明では、第1の粉末1に対して、ガラス被膜を形成するものとして説明したが、例えば、第2の粉末2の表面にも上記と同様なガラス被膜を形成してもよい。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、本実施形態について、前述した実施形態との違いを中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
図3は、本実施形態で用いる成形体製造用組成物(混合粉末C)を模式的に示す図である。
図3に示すように、本実施形態では、成形体製造用の組成物(成形体製造用組成物)10’’として、第1の粉末1の表面にガラス3で構成された被膜(ガラス被膜)が形成され、さらに、ガラス被膜の表面に結着性樹脂4で構成された被膜(結着性樹脂被膜)が形成された複合粒子と、第2の粉末2と、粒状のガラス3と、結着性樹脂4とを含むものを用いる。組成物中における各成分の形態が異なる以外は、前記実施形態と同様である。このように、本実施形態では、磁性粉末(第1の粉末1)の表面に、ガラス3で構成された被膜(ガラス被膜)が設けられることにより、前記第2実施形態と同様に、最終的に得られる成形体において、磁性粉末の直接的な接触をより確実に防止することができ(より確実に、各磁性粉末間にガラスを配することができ)、磁性粉末間の絶縁性を十分に保持しつつ、密度、機械的強度を特に高いものとすることができるとともに、ガラス被膜の表面に結着性樹脂4で構成された被膜(結着性樹脂被膜)が設けられているため、仮成形体の成形性、密度、形状の安定性を特に優れたものとすることができる。その結果、最終的に得られる成形体における寸法精度、機械的強度等も特に優れたものとすることができる。また、磁性粉末(第1の粉末1)が、ガラス3、結着性樹脂4で被覆されているため、仮成形体製造工程、焼結工程等における雰囲気の組成等を厳密に管理しなくても、磁性粉末の酸化等を効果的に防止することができ、得られる成形体の磁気特性を特に優れたものとすることができる。
第1の粉末1を含む複合粉末(第1の粉末1を核とする複合粉末)が有する結着性樹脂被膜の平均厚さは、0.005〜2μmであるのが好ましく、0.01〜1μmであるのがより好ましい。結着性樹脂被膜の平均厚さが前記範囲内であると、上述したような効果を更に顕著なものとして発揮させることができる。
このような組成物10’’は、例えば、以下のようにして調製することができる。
まず、第1の粉末1とガラス3とを、ガラス3の軟化点以上の温度で、圧縮摩擦力、剪断力が加わるような混練を行うことにより、第1の粉末1の表面にガラス被膜を形成する。その後、ガラス被膜で被覆された第1の粉末1と結着性樹脂4とを、結着性樹脂4の軟化点以上の温度で、かつ、ガラス3の軟化点よりも低い温度で、圧縮摩擦力、剪断力が加わるような混練を行うことにより、第1の粉末1を核とし、ガラス被膜上に結着性樹脂被膜が形成された複合粉末が得られる。
次に、複合粉末(第1の粉末1とガラス被膜と結着性樹脂被膜とで構成された複合粉末)を、第2の粉末2、ガラス3および結着性樹脂と混合することにより、上記のような組成物10’’が得られる。
なお、上記の説明では、第1の粉末1に対して、ガラス被膜、結着性樹脂被膜を形成するものとして説明したが、例えば、第2の粉末2の表面にも上記と同様なガラス被膜、結着性樹脂被膜を形成してもよい。また、例えば、前記第1実施形態で用いた組成物10’を、結着性樹脂4の軟化点以上の温度で、かつ、ガラス3の軟化点よりも低い温度で混練することにより、組成物10’’を調製してもよい。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、成形体製造用組成物中に含まれる磁性粉末が、第1の粉末および第2の粉末であるものとして説明したが、成形体製造用組成物は、これらに加え、例えば、第1の粉末、第2の粉末とは異なる第3の粉末(磁性粉末)を含むものであってもよい。
また、前述した第3実施形態では、混練により、ガラス被膜の表面に結着性樹脂を被覆する(結着性樹脂被膜を形成する)ものとして説明したが、結着性樹脂被膜は、例えば、結着性樹脂を含む溶液を付与することにより形成するものであってもよい。
[1]成形体の製造
(実施例1)
まず、水アトマイズ法により、FebalSi12.512.5の合金組成で表される平均粒径40μmの非晶質軟磁性合金粉末(結晶化温度540℃)を第1の粉末として製造した。第1の粉末についての微小圧縮試験装置により測定される単一粒子の破壊荷重(100μmの粒子を基準として評価される破壊加重)は、500gfであった。
次に、得られた第1の粉末を一部取り出し、水素雰囲気下で、300〜400℃の熱処理(脆化処理)を施し、さらに粉砕処理を施すことにより、平均粒径10μmの第2の粉末を得た。第2の粉末についての微小圧縮試験装置により測定される単一粒子の破壊荷重(100μmの粒子を基準として評価される破壊加重)は、150gfであった。
次に、上記のような第1の粉末、第2の粉末を、平均粒径3μmのガラス(ホウ酸系ガラス、軟化点300℃)、平均粒径10μmの結着性樹脂粉末(エポキシ系樹脂)とともに、アルゴンガス雰囲気下、室温で混合することにより、成形体製造用の組成物(成形体製造用組成物)を得た。各成分の混合は、組成物中に占める第1の粉末の含有率が80wt%、第2の粉末の含有率が16wt%、ガラスの含有率が1wt%、結着性樹脂粉末の含有率が3wt%となるように行った。
次に、上記のような組成物を用いて、プレス成形を行い、製造すべき成形体(磁心)に対応する形状を有する仮成形体を得た。プレス成形温度は室温(20℃)、成形圧力は1500MPaであった。
その後、仮成形体を金型から取り外し、アルゴンガス雰囲気下、460℃×30分間という条件で焼成を行った。その結果、結着性樹脂が除去されるとともに、ガラスが軟化し、ガラスを介して複数の磁性粒子(第1の粉末、第2の粉末)が接合した状態の、成形体としての磁心(高周波磁心)が得られた。得られた成形体は、外径23.6mm、内径13.3mm、高さ8.4mmの略円筒形状をなすものであった。
(実施例2〜4)
第1の粉末の平均粒径、第2の粉末についての微小圧縮試験装置により測定される単一粒子の破壊荷重(100μmの粒子を基準として評価される破壊加重)、ガラスの種類、平均粒径、結着性樹脂の平均粒径、各成分の含有率、成形体の製造条件(焼成条件)等を表1に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして成形体製造用組成物を調製し、仮成形体、成形体を製造した。
(実施例5)
まず、前記実施例1で用いた第1の粉末および第2の粉末を用意した。
次に、第1の粉末をホウ酸系ガラス(軟化点300℃)とともに、アルゴンガス雰囲気下、100℃で混練した。これにより、第1の粉末の表面に、平均厚さ0.1μmのガラス被膜が設けられた複合粒子が得られた。
次に、上記のような複合粒子(第1の粉末を核とする複合粒子)を、第2の粉末、平均粒径3μmのガラス(ホウ酸系ガラス、軟化点300℃)、平均粒径10μmの結着性樹脂粉末(エポキシ系樹脂)とともに、室温で混合することにより、成形体製造用の組成物(成形体製造用組成物)を得た。各成分の混合、混練は、組成物中に占める第1の粉末の含有率が75wt%、第2の粉末の含有率が22wt%、ガラスの含有率が0.5wt%、結着性樹脂粉末の含有率が2.5wt%となるように行った。
その後、前記実施例1と同様の条件で、プレス成形による仮成形体の製造、焼成による成形体(磁心)の製造を行った。
(実施例6〜8)
第1の粉末の平均粒径、第2の粉末についての微小圧縮試験装置により測定される単一粒子の破壊荷重(100μmの粒子を基準として評価される破壊加重)、ガラスの種類、ガラス被膜の平均厚さ、結着性樹脂の平均粒径、各成分の含有率、成形体の製造条件(焼成条件)等を表1に示すようにした以外は、前記実施例5と同様にして成形体製造用組成物を調製し、仮成形体、成形体を製造した。
(実施例9)
まず、前記実施例5と同様にして、第1の粉末を核とする複合粒子と、第2の粉末とを用意した。
次に、第1の粉末を核とする複合粒子を、結着性樹脂(エポキシ系樹脂)とともに、100℃で混練した。これにより、ガラス被膜の表面に、平均厚さ1μmの結着性樹脂被膜が設けられた複合粒子が得られた。
次に、第1の粉末を核とし、その表面にガラス被膜と結着被膜とが積層された複合粒子と、第2の粉末と、平均粒径3μmのガラス(ホウ酸系ガラス、軟化点300℃)と、平均粒径10μmの結着性樹脂粉末(エポキシ系樹脂)とを、室温で混合することにより、成形体製造用の組成物(成形体製造用組成物)を得た。各成分の混合、混練は、組成物中に占める第1の粉末の含有率が75wt%、第2の粉末の含有率が22wt%、ガラスの含有率が0.5wt%、結着性樹脂粉末の含有率が2.5wt%となるように行った。
その後、前記実施例1と同様の条件で、プレス成形による仮成形体の製造、焼成による成形体(磁心)の製造を行った。
(実施例10〜12)
第1の粉末の平均粒径、第2の粉末についての微小圧縮試験装置により測定される単一粒子の破壊荷重(100μmの粒子を基準として評価される破壊加重)、ガラスの種類、ガラス被膜の平均厚さ、結着性樹脂被膜の平均厚さ、各成分の含有率、成形体の製造条件(焼成条件)等を表2に示すようにした以外は、前記実施例9と同様にして成形体製造用組成物を調製し、仮成形体、成形体を製造した。
(比較例1)
第2の粉末を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして成形体製造用組成物を調製し、仮成形体、成形体を製造した。
(比較例2)
第1の粉末を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして成形体製造用組成物を調製し、仮成形体、成形体を製造した。
(比較例3)
第2の粉末を用いなかった以外は、前記実施例5と同様にして成形体製造用組成物を調製し、仮成形体、成形体を製造した。
(比較例4)
第1の粉末を用いなかった以外は、前記実施例5と同様にして成形体製造用組成物を調製し、仮成形体、成形体を製造した。
(比較例5)
第2の粉末を用いなかった以外は、前記実施例9と同様にして成形体製造用組成物を調製し、仮成形体、成形体を製造した。
(比較例6)
第1の粉末を用いなかった以外は、前記実施例9と同様にして成形体製造用組成物を調製し、仮成形体、成形体を製造した。
各実施例および各比較例についての、成形体製造用組成物の構成材料、仮成形体の製造条件、成形体の製造条件(焼成条件)を、仮成形体の成形性の評価とともに表1、表2に示した。
Figure 0004419829
Figure 0004419829
[2]成形体の評価
上記のようにして得られた各実施例および各比較例の成形体について、相対密度、機械的強度、および、透磁率の評価を行った。
[2.1]相対密度
各実施例および各比較例の成形体について、相対密度を測定した。なお、「相対密度」とは、成形体を完全に緻密体と仮定したときの重量に対する実際の重量の比率として求めたものであり、完全緻密体の重量は、非晶質軟磁性合金粉末とガラス粉末の混合比に基づいて計算した値である。
[2.2]機械的強度
各実施例および各比較例の成形体について、機械的強度の指標としての圧環強度の測定を、JIS Z 2507に準じて行い、以下の4段階の基準に従い評価した。
◎:圧環強度が150N以上。
○:圧環強度が100N以上150N未満。
△:圧環強度が50N以上100N未満。
×:圧環強度が50N未満。
[2.3]透磁率
各実施例および各比較例の成形体(磁心)について、100kHzの周波数領域における透磁率μ’の測定を行った。
これらの結果を表3に示す。
Figure 0004419829
表3から明らかなように、各実施例(本発明)の成形体は、いずれも、高密度で、機械的強度、透磁率に優れていた。特に、高周波領域においても、高い透磁率μ’を有しており、優れた高周波特性を備えていた。
これに対し、各比較例の成形体では、満足な結果が得られなかった。
第1実施形態で用いる成形体製造用組成物(混合粉末A)を模式的に示す図である。 第2実施形態で用いる成形体製造用組成物(混合粉末B)を模式的に示す図である。 第3実施形態で用いる成形体製造用組成物(混合粉末C)を模式的に示す図である。
符号の説明
10、10’、10’’…組成物(成形体製造用組成物) 1…第1の粉末 2…第2の粉末 3…ガラス 4…結着性樹脂

Claims (6)

  1. 多数個の非晶質軟磁性合金を用いて成形体を製造する方法であって、
    非晶質軟磁性合金で構成された第1の粉末と、磁性材料で構成された第2の粉末と、前記第1の粉末を構成する非晶質軟磁性合金の結晶化温度よりも低い軟化点を有するガラスと、結着性樹脂とを含む組成物を用いて、所定の形状に成形された仮成形体を得る工程と、
    前記仮成形体を、前記ガラスの軟化点よりも高く、かつ、前記第1の粉末を構成する非晶質軟磁性合金の結晶化温度よりも低い温度で焼成する工程とを有し、
    前記第2の粉末は、前記第1の粉末より脆性が高く、前記仮成形体を得る工程において粉砕されるものであり、
    前記第2の粉末は、前記第1の粉末と同一の組成を有する粉末に対して、水素雰囲気下における300〜400℃の熱処理を施すことにより調製されたものであり、
    前記組成物中における前記第1の粉末の含有率をX[wt%]、前記第2の粉末の含有率をY[wt%]としたとき、0.05≦Y/(X+Y)≦0.50の関係を満足することを特徴とする成形体の製造方法。
  2. 前記組成物中に含まれる前記第1の粉末の表面には、ガラスで構成された被膜が設けられており、
    前記組成物中に含まれる前記第2の粉末の表面には、ガラスで構成された被膜が設けられていない請求項1に記載の成形体の製造方法。
  3. 前記第1の粉末の平均粒径は、30〜100μmである請求項1または2に記載の成形体の製造方法。
  4. 前記第2の粉末の平均粒径は、5〜50μmである請求項1ないしのいずれかに記載の成形体の製造方法。
  5. 請求項1ないしのいずれかに記載の方法を用いて製造されたことを特徴とする成形体。
  6. 成形体は、磁心である請求項に記載の成形体。
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