JP4493889B2 - 冷暖房システム - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒートポンプサイクルの冷媒を熱交換器を介して水熱媒に熱交換させ、冷・温水を生成して搬送する熱源機によって供給される水熱媒によって冷暖房を行う冷暖房システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ヒートポンプサイクルにより採熱した熱で冷暖房に使う水熱媒を生成し、室内放熱器に送水して冷暖房を行うヒートポンプチラー冷暖房システムとも称される冷暖房システムにおいては、ヒートポンプサイクルで採熱できる熱量が外気温度に左右されることから、外気温度が低いときには暖房能力が低下し、必要とする暖房雰囲気が得がたくなる。こうした問題を、例えば特開昭55―20315号公報に示されているヒートポンプ式の空調技術では、室内熱交換器に正特性サーミスタ加熱器を配置して、水熱媒温度低下時の暖房能力低下を正特性サーミスタ加熱器で補うことで解決している。この技術では、室内熱交換器の水熱媒温度をモニターしていて、水熱媒温度が設定温度以下になったときには補助熱源として正特性サーミスタ加熱器を動作させ、暖房能力の不足を補っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来のヒートポンプ式の空調技術においては、暖房運転の場合で室内暖房負荷が小さい場合でも、除霜運転時などでは水熱媒温度が低下するため正特性サーミスタ加熱器による不必要な熱補給が行われることになり、非経済的であるといった問題点がある。また、室内熱交換器の水熱媒温度により正特性サーミスタ加熱器の運転の可否を決定しているため、例えば暖房起動時、冷たい室内を急速に暖房したいような場合でも補助的にしか正特性サーミスタ加熱器が働かず暖房の立上がりが悪いといった問題点もある。
【0004】
本発明は、係る従来の問題点を解決するためになされたものであって、その課題とするところは、省エネルギー性を備え快適な暖房を実現できるヒートポンプ式の冷暖房システムを開発することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を達成するために請求項1の発明は、ヒートポンプサイクルの冷媒を熱交換器を介して水熱媒と熱交換させ、水熱媒を加熱する補助熱源用加熱手段と送水手段を備えた熱源機と、熱源機に接続され熱源機から搬送されてくる水熱媒により冷暖房を行う室内放熱器とから構成される冷暖房システムについて、暖房時においてその室内放熱器で設定される設定温度と室内放熱器で検知される室内温度との温度差に応じて算出された目標送水温度と、検知された外気温度に応じて算出された目標送水温度下限値および目標送水温度上限値と、のいずれかを採用し、採用された目標送水温度と現在の送水温度との差に応じて、補助熱源用加熱手段の運転の可否を判定する手段を採用する。
【0006】
前記課題を達成するために請求項2の発明は、ヒートポンプサイクルの冷媒を熱交換器を介して水熱媒に熱交換させ、水熱媒を加熱する補助熱源用加熱手段と送水手段を備えた熱源機と、熱源機に接続され熱源機から搬送されてくる水熱媒により冷暖房を行う室内放熱器とから構成される冷暖房システムについて、検知された外気温度が所定の設定値以下の場合には圧縮機を停止し、補助熱源用加熱手段を運転する手段を採用する。
【0008】
前記課題を達成するために請求項3の発明は、請求項1または請求項2に係る前記手段における室内放熱器に、急速暖房設定手段を設け、この急速暖房設定手段により急速暖房の設定がなされた場合、補助熱源用加熱手段を連続運転させ、通常の温度より高い温度の水熱媒を生成するようにする手段を採用する。
【0009】
前記課題を達成するために請求項4の発明は、請求項1〜請求項3までのいずれかに係る前記手段における熱交換器の下流側に、補助熱源用加熱手段を設ける手段を採用する。
【0010】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1〜図5によって示す本実施の形態は、不凍液等による水熱媒を生成して搬送する熱源機で構成される熱源側熱媒サイクルと、これによって供給される水熱媒によって冷暖房を行う室内放熱器で構成される利用側サイクルとにより構成される冷暖房システムに関するものである。熱源機は、図1に示すように水熱媒を貯留するバッファタンク1と、バッファタンク1の水熱媒を循環させる送水手段としての循環ポンプ2と、水熱媒を熱交換器3を介して加熱又は冷却するヒートポンプ方式の冷凍サイクルとによって構成されている。
【0011】
バッファタンク1には往き側接続口と、戻り側接続口がそれぞれ設けられていて、往き側接続口は、循環ポンプ2の吸込側に配管接続され、戻り側接続口は、採熱用の熱交換器3の二次流路に直列に接続された補助熱源用加熱手段4の出口側が配管接続されている。循環ポンプ2の吐出側には利用側サイクルの往き側配管が接続され、熱交換器3の二次流路の入口側には利用側サイクルの戻り側配管が接続されている。ヒートポンプによる冷凍サイクルは、室外熱交換器5と四方切換弁6と圧縮機7及び流量調節弁8並びに熱交換器3の一次流路で構成された熱媒循環閉路であり、冷凍サイクルの冷媒と水熱媒とは相互に独立し、混じり合うことはないが熱交換器3により熱的には接続している。上記構成の熱源機は、熱交換ユニット9として単一のケーシングに収められ、室外に設置される。
【0012】
利用側サイクルは、往き側配管と戻り側配管とに接続された室内放熱器10により水熱媒の循環系として構成されている。室内放熱器10としては、室内空気を循環させながら冷却或いは加熱することで冷暖房機能を果す一機又は複数機のファンコイルユニットや、輻射による冷暖房機能を果す床暖房パネル等による一組又は複数組の輻射パネルが接続される。
【0013】
熱交換ユニット9には、図2に示すように循環ポンプ2や圧縮機7及び補助熱源用加熱手段4等を制御するマイコンを含む制御手段11が搭載されており、この制御手段11に冷房モードや暖房モードの設定を行う設定スイッチや、LEDや液晶等により運転状態等を表示する表示手段を備えたコントローラが信号線又は赤外線信号により信号のやりとりを可能に接続されている。制御手段11にはバッファタンク1の出口の水熱媒温度を検知する熱媒温度検知手段12の出力、及び室外の温度を検知する外気温度検知手段13の出力がそれぞれ制御情報として取込まれる。
【0014】
また、室内放熱器10にはコントローラ14及び室温を検知する室温検知手段15が備えられ、コントローラ14の操作によって水熱媒の流量をそれ自体に設けられた流量調節弁を動かして、室温が設定温度になるようにフィードバック制御を行うとともに、熱交換ユニット9の制御手段11に運転情報や設定温度及び室内温度を制御情報として送信する。
【0015】
熱交換ユニット9のコントローラにより、暖房モードが設定されると、制御手段11はヒートポンプの冷凍サイクルを暖房のサイクルに切換え、室内放熱器10のコントローラ14からの運転情報の取込みを行う。室内放熱器10のいずれかから運転要求の信号が入ると、利用側サイクルに送る水熱媒の温度を暖房できる温度になるように、熱交換ユニット9を制御する。室内放熱器10側からの運転要求の信号が一つもない場合には、循環ポンプ2は停止状態におかれる。
【0016】
一方、熱交換ユニット9のコントローラにより、冷房モードが設定されると、制御手段11はヒートポンプの冷凍サイクルを冷房のサイクルに切換え、室内放熱器10のコントローラ14からの運転情報の取込みを行う。室内放熱器10のいずれかから運転要求の信号が入ると、室内放熱器10に送る水熱媒の温度を冷房できる、例えば7℃になるように、熱交換ユニット9を制御する。室内放熱器10側からの運転要求の信号が一つもない場合には、循環ポンプ2は停止状態におかれる。
【0017】
本実施の形態の冷暖房システムは、暖房運転における省エネルギー性と快適性の実現をテーマとしており、制御手段11は暖房モードでは図3のフローチャートによって示すような制御動作を行う。即ち、図3におけるステップ♯1で暖房運転が開始されると、ステップ♯2において室内放熱器10のコントローラ14から設定温度T1を読込み、ステップ♯3に進む。ステップ♯3では外気温度検知手段13の出力から外気温度T0を検知してステップ♯4で外気温度T0が所定の温度、例えば−15℃以上かどうかの判定を行い、−15℃以上であればステップ♯8の処理に進み、そうでなければステップ♯5の処理に進む。
【0018】
ステップ♯5では、外気温度が低温で圧縮機7を保護する必要があり、ヒートポンプサイクルでの採熱を断念して圧縮機7を停止し、補助熱源用加熱手段4を動作させる処理をして、ステップ♯6において目標の熱媒温度を、例えば50℃に固定する処理を行い、ステップ♯7へ進む。ステップ♯7では、外気温度T0の検知から所定時間(例えば5分)経過したかどうかの判定を行い、経過していればステップ♯2の処理に戻り、経過していなければステップ♯7の処理を繰り返す。
【0019】
ステップ♯4で、外気温度T0≧−15℃であれば、圧縮機7の運転が可能であるとしてステップ♯8〜ステップ♯15の一連の処理により、外気温度T0、設定温度T1、室内温度Tsの関係から、室内暖房負荷に応じた最適ないくつかの目標送水温度Tm、β、αが算出される。これらの送水温度算出のためにまず、ステップ♯8において外気温度検知手段13の出力による外気温度T0により、送水温度下限値αと、送水温度上限値βを算出する。送水温度下限値αと送水温度上限値βでは、対象となる暖房空間の断熱性能の幅を考慮した値であり、ある外気温度T0について設定温度T1を達成するために最低限必要な水熱媒温度と、設定温度T1を達成するために必要な最大限の水熱媒温度であり、例えば、図4に示すように予め割付けした外気温度T0の条件によって算出される。
【0020】
ステップ♯9では、バッファタンク1の下流に設けられた熱媒温度検知手段12による出力から現在の送水温度Twを読取り、ステップ♯10で室温検知手段15の出力から現在の室内温度Tsを読取り、ステップ♯11へ進む。ステップ♯11では設定温度T1と現在の室内温度Tsとの比較を行い、設定温度T1と現在の室内温度Tsの温度差ΔT1を算出し、ステップ♯12へ進み、算出した温度差ΔT1により送水温度の変化率ΔGを算出し、ステップ♯13へ進む。温度差ΔT1と送水温度の変化率ΔGとは例えば、図5に示すような関係にある。
【0021】
ステップ♯13では、前回の目標送水温度Tm0、現在の送水温度Tw、送水温度の変化率ΔGから、算出式Tm=Tm0+Tw×ΔGを使って目標送水温度Tmを算出し、ステップ♯14へ進む。ステップ♯14とステップ♯15において、前の処理で算出した目標送水温度Tmと、外気温度T0により算出した送水温度下限値αと送水温度上限値βとの比較を行う。そして、送水温度下限値α<目標送水温度Tm<送水温度上限値βであれば、目標送水温度Tmをステップ♯16で採用する処理をし、目標送水温度Tm≦送水温度下限値αであれば目標送水温度αをステップ♯18で採用する処理を行い、目標送水温度Tm≧送水温度上限値βであれば目標送水温度βをステップ♯17で採用する処理を行ってそれぞれステップ♯19へ進む。
【0022】
ステップ♯19では、採用した目標送水温度Tm或いはβ又はαと現在の送水温度Twとの温度差ΔT2を算出し、ステップ♯20〜ステップ♯22において、補助熱源用加熱手段4の運転の可否を判定する。即ち、ステップ♯20では、温度差ΔT2が所定の値(例えば8℃)より大きいかどうかを判定し、大きければ補助熱源が必要であるとして補助熱源用加熱手段4を運転させる処理をステップ♯23で行う。ステップ♯21では、温度差ΔT2が例えば3℃より小さいかどうかの判定を行い、温度差ΔT2が3℃以上であればステップ♯22へ進み、前の時刻に補助熱源用加熱手段4が運転していたかどうかを判定し、温度差ΔT2が3℃未満であればステップ♯24へ進み、補助熱源の必要はないとして補助熱源用加熱手段4を運転しない処理を行う。ステップ♯22で前の時刻に補助熱源用加熱手段4が運転していた場合には、ステップ♯23の処理に進み補助熱源用加熱手段4を運転させる処理を行う。この処理は、補助熱源用加熱手段4をチャタリングさせないためのものである。
【0023】
ステップ♯23で補助熱源用加熱手段4を運転させる処理をした場合には、ステップ♯25で所定時間(例えば5分)が経過したかどうかの判定を行い、経過していればステップ♯2の処理に戻り、経過していなければステップ♯25の処理を繰り返す。また、ステップ♯24で補助熱源用加熱手段4を運転させない処理をした場合も、ステップ♯26で所定時間(例えば5分)が経過したかどうかの判定を行い、経過していればステップ♯2の処理に戻り、経過していなければステップ♯26の処理を繰り返す。
【0024】
このような運転動作により、ヒートポンプサイクルの除霜運転時でも利用側サイクルに流れる水熱媒温度は低下せず、快適な暖房雰囲気を形成することができ、室内暖房負荷が小さい場合の除霜運転時などに不必要な補助熱源の運転が回避されるので省エネルギー性も備わる。また、外気温度が極めて低く、ヒートポンプによる採熱が有効でないばかりでなく、運転により圧縮機7が破損するような状況では、補助熱源用加熱手段4を有効に使って圧縮機7の破損を回避したうえで、補助熱源による快適な暖房を行うことができる。補助熱源用加熱手段4を熱交換器3の二次流路の後流側に設ける構成を採ることにより、ヒートポンプの効率の悪化を招くことなく暖房能力を向上させることができる。なお、補助熱源用加熱手段4については電気によるものの方が制御が容易であるが、ガスや灯油を燃焼させる方式のものでも構わない。
【0025】
実施の形態2.
図6と図7に示す本実施の形態は、実施の形態1で示した冷暖房システムに急速暖房機能を付加したもので、この機能に係る構成以外は実施の形態1のものと同じである。従って、実施の形態1のものと同じ部分については実施の形態1のものと同じ符号を用い、それらについての説明は省略する。
【0026】
本実施の形態の冷暖房システムの室内放熱器10には図6に示すようにコントローラ14及び室温を検知する室温検知手段15が備えられ、コントローラ14には急速暖房設定手段16が設けられている。この急速暖房設定手段16の設定は、熱交換ユニット9の制御手段11に制御情報として送信される。暖房モードで急速暖房設定手段16により急速暖房が設定されると、熱交換ユニット9の制御手段11は、設定温度T1と室内温度Tsの関係がT1=Ts+γとなるまで補助熱源用加熱手段4を運転させ急速暖房運転を行う。そして、T1=Ts+γとなった時点で急速暖房運転を終了し、実施の形態1の図3によって示した制御動作に移行する。これによって、起動時に急速暖房の設定を行うことにより速やかな暖房が可能になる。これ以外の機能は実施の形態1のものと同じである。
【0027】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、省エネルギー性を備え快適な暖房を実現できるヒートポンプ式の暖房システムが得られる。
【0028】
請求項2の発明によれば、省エネルギー性を備えるとともに、外気温度が低くても圧縮機の保護を図りながら快適な暖房ができるようになる。
【0030】
請求項3の発明によれば、請求項1または請求項2に係る前記効果とともに立上がりの速い急速暖房運転が可能になる。
【0031】
請求項4の発明によれば、請求項1〜請求項3までのいずれかに係る前記効果とともにヒートポンプの効率を落すことなく暖房能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1の冷暖房システムを示すシステム構成図である。
【図2】 実施の形態1の冷暖房システムにおける制御系のブロック構成図である。
【図3】 実施の形態1の冷暖房システムにおける制御手段の制御動作を示すフローチャートである。
【図4】 実施の形態1の冷暖房システムの制御手段における制御動作に関する外気温度と送水温度の上限・下限の関係を示す説明図である。
【図5】 実施の形態1の冷暖房システムの制御手段における制御動作に関する設定温度と室内温度の温度差と、送水温度の変化率の関係を示す説明図である。
【図6】 実施の形態2の冷暖房システムにおける制御手段の制御動作を示すフローチャートである。
【図7】 実施の形態2の冷暖房システムを示すシステム構成図である。
【符号の説明】
3 熱交換器、 4 補助熱源用加熱手段、 7 圧縮機、 9 熱交換ユニット、 10 室内放熱器、 11 制御手段、 12 熱媒温度検知手段、 13 外気温度検知手段、 15 室温検知手段、 16 急速暖房設定手段。
Claims (4)
- ヒートポンプサイクルの冷媒を熱交換器を介して水熱媒と熱交換させ、この水熱媒を加熱する補助熱源用加熱手段と送水手段を備えた熱源機と、この熱源機に接続され同熱源機から搬送されてくる水熱媒により冷暖房を行う室内放熱器とから構成される冷暖房システムであって、暖房時において前記室内放熱器で設定される設定温度と同室内放熱器で検知される室内温度との温度差に応じて算出された目標送水温度と、検知された外気温度に応じて算出された目標送水温度下限値および目標送水温度上限値と、のいずれかを採用し、採用された目標送水温度と現在の送水温度との差に応じて、補助熱源用加熱手段の運転の可否を判定することを特徴とする冷暖房システム。
- ヒートポンプサイクルの冷媒を熱交換器を介して水熱媒と熱交換させ、この水熱媒を加熱する補助熱源用加熱手段と送水手段を備えた熱源機と、この熱源機に接続され同熱源機から搬送されてくる水熱媒により冷暖房を行う室内放熱器とから構成される冷暖房システムであって、検知された外気温度が所定の設定値以下の場合には圧縮機を停止し、補助熱源用加熱手段を運転することを特徴とする冷暖房システム。
- 請求項1または請求項2に記載の冷暖房システムであって、室内放熱器に急速暖房設定手段を設け、この急速暖房設定手段により急速暖房の設定がなされた場合、補助熱源用加熱手段を連続運転させ、通常の温度より高い温度の水熱媒を生成するようにした冷暖房システム。
- 請求項1〜請求項3までのいずれかに記載の冷暖房システムであって、熱交換器の下流側に補助熱源用加熱手段を設けた冷暖房システム。
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