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JP4485164B2 - 軟磁性材料の製造方法及び製造装置 - Google Patents

軟磁性材料の製造方法及び製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、軟磁性材料の製造に関し、特に、クラスターを堆積させて成る軟磁性材料の製造に関する。
ハードディスクドライブの磁気記録用ヘッド、磁気センサ、トランス等の磁気デバイスに軟磁性材料が使用されている。例えば下記の特許文献1には、α−Fe相中にN、Al、Oが固溶した多結晶の軟磁性薄膜及び該軟磁性薄膜を備えた磁気記録用ヘッドが記載されている。
この種の軟磁性材料(特に膜材)の製造には、原料物質から蒸発させた原子、分子等を基板上に堆積させる薄膜形成法(蒸着法)が利用されている。下記の特許文献2〜9には、種々の態様の蒸着法が記載されている。
国際公開第WO01/039219号パンフレット 特開昭53−110973号公報 特開平7−86035号公報 特開2000−87233号公報 特開2000−96112号公報 特開2000−309866号公報 特開2000−336477号公報 特開2000−345332号公報 特開2001−358030号公報
近年の磁気デバイスの小型化、薄膜化に伴って、磁気デバイスを構成する軟磁性材料のさらなる高性能化が求められている。例えば、高い保磁力を有する磁気ディスクに高密度に情報を記録させるため、強い磁界を発生させ得る磁気記録用ヘッドが求められている。
本発明は、かかる要求に応えるべく開発されたものであり、高い透磁率或いは高い飽和磁束密度を有する磁気デバイスの高性能化に資する軟磁性材料の提供を目的とする。また、他の目的は、そのような磁性特性に優れた軟磁性材料を製造する方法及び装置を提供することである。
本発明は、次の軟磁性材料製造方法を提供する。すなわち、ここで開示される一つの方法は、クラスター生成部とクラスター堆積部とを有する減圧されたケーシング内において軟磁性材料を製造する方法であって、前記クラスター生成部において一種又は二種以上の金属材料から金属蒸気を発生させる工程と、該金属蒸気からクラスターを生成する工程と、前記クラスター堆積部に配置された可動ホルダーに正負いずれかの直流電圧が少なくとも一部に印加された状態の基材を保持しておくとともに、前記クラスター生成部で生成したクラスターを含むキャリアガスをビーム状にして該クラスター堆積部に供給し、該基材上に該クラスターを堆積する工程とを包含する。そして、本製造方法では、前記クラスター生成工程において、少なくとも一部のクラスターをイオン化した状態で存在させる。そして、前記クラスターを堆積する工程は、前記ビーム状にクラスターが供給されてくる方向に対して前記ホルダーに保持された基材の相対位置を異ならせることによって前記基材の少なくとも前記直流電圧が印加された部位を前記ビーム状にクラスターが供給されてくる方向から逸れた位置に配置し、それによって該部位に前記ビーム中に存在するクラスターのうちの前記印加電圧とは逆の電位の正負いずれかに帯電しているイオン化クラスターを優先的又は選択的に堆積させることを含む。
本明細書において「クラスター」とは、複数の原子、イオン等が凝集して成る集合物をいい、個々のクラスターの形状や質量を限定するものではない。例えば、粒径が50nm程度又はそれ以下の金属微粒子はここでいうクラスターに包含される典型例である。
本発明の製造方法では、イオン化すなわち負又は正に荷電したクラスターを生成するとともに所定の電圧が印加された状態の基材(基板等のクラスターを堆積させるベース材をいう。以下同じ。)を使用する。この方法では、基材及びその周辺に存在する電場によって、イオン化クラスターを加速(即ちクラスターの運動エネルギーを増大)させ、基材表面に引き付ける(誘導する)ことができる。このことにより、所定のサイズ・形状のクラスターを当該基材表面に効率よく高密度に堆積することが容易にできる。従って、本発明の製造方法によると、基材上におけるクラスター堆積物の透磁率を向上し得、軟磁性に優れる磁性材料を容易に製造することができる。例えば、好ましい形状の軟磁性材料として、基材上に堆積したクラスターから成る薄膜材料を形成することができる。
好ましくは、プラズマ状態の雰囲気中で前記金属材料から金属蒸気を生じさせ、前記基材へのガス流中で該金属蒸気からクラスターを生成する。
ここで「プラズマ状態の雰囲気」とは、当該雰囲気を構成するガス分子の少なくとも一部が放電等により励起分子、ラジカル、イオン等になった状態であることをいう。
この態様の方法によると、イオン化したクラスターの生成効率が高く、より効率的に基材表面にイオン化クラスターを堆積することができる。
ここで開示される方法には種々の態様が含まれる。例えば、前記基材に前記生成したクラスターをビーム状に供給する。このことによって、所定の基材表面におけるクラスター堆積量或いはクラスター堆積位置(堆積分布)のコントロールが容易となる。
また、前記基材には直流電圧を印加する。このことによって、より高密度に基材表面にクラスターを堆積することができる。また、基材の少なくとも一部において、イオン化したクラスターを非イオン化クラスターよりも高率に堆積させることができる。
特に好ましい方法では、平均粒径(顕微鏡測定に基づく平均粒径をいう。以下同じ。)3nm〜15nmのクラスターを前記基材に供給する。かかる粒径範囲のクラスターは、基材及びその周辺に存在する電場によって加速(運動エネルギーが増加)されて基材表面に衝突した際にも崩壊し難く、その粒形状を保ち得る。このため、かかる粒径範囲のクラスターを使用することによって、内部空間に富み、電気抵抗の比較的高いクラスター堆積物(集合体)を基材上に形成することができる。
また、特に好ましい他の方法では、前記基材上に堆積させるクラスターに対して、該クラスターの電気抵抗を高めるための表面修飾処理を行う。典型的には、該表面修飾処理によって前記クラスターの表面が酸化物又は非磁性体により被覆される処理を行う。かかる処理によって電気抵抗を高めると更に好ましい軟磁性材料を製造し得る。
ここで開示される製造方法において使用する金属材料は、Fe、Co及びNiから成る群から選択される少なくとも二つの金属元素から成る合金クラスターが形成されるように決定することが好ましい。かかる強磁性金属から成る合金クラスターの堆積物は高い電気抵抗を有するため、特に好適な軟磁性材料を製造することができる。
また本発明は、上述した製造方法を好適に実施し得る装置を提供する。例えば、以下の構成のクラスター生成部とクラスター堆積部とを備える軟磁性材料製造装置が提供される。クラスター生成部は、内部が減圧可能なケーシングと、該ケーシング内部にガスを供給するガス供給手段と、該供給されたガスをプラズマ状態にするプラズマ発生手段とを備えている。そして、該ケーシング内部のプラズマ状態となったガス中に配置された一種又は二種以上の金属材料から生じた金属蒸気からクラスターを生成するように構築されている。他方、クラスター堆積部は、基材を保持するホルダーであって該ホルダーに保持された基材に所定の電圧を印加可能なホルダーと、該ホルダーと電気的に接続する電源とを備えている。そして、前記クラスター生成部と連通して該ホルダーに保持されて所定の電圧が印加された状態の基材に前記クラスター生成部で生成したクラスターを供給するように構築されている。
本発明によると、所定の電圧を印加した状態の基材上に、イオン化クラスターを効率よく堆積し、軟磁性に優れる磁性材料を製造することができる。本発明の製造方法によると、高い透磁率或いは高磁束密度を有する電子デバイスを提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している内容以外の技術的事項であって本発明の実施に必要な事項は、従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている技術内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明の製造方法では、使用するクラスターの少なくとも一部をイオン化し、該イオン化クラスターを優先的或いは選択的に所定の電圧が印加された基材に堆積させることによって当該クラスターの堆積物(クラスター集合体)を主体とする軟磁性材料を製造すればよく、種々の材料及び装置をその目的のために使用することができる。
例えば、使用する金属材料は、軟磁性材料を構成するクラスター源として金属蒸気を発生させ得るものであれば特に制限はないが、好ましくは強磁性金属材料である。例えば、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)又はこれらの合金(例えばFeとCo又はFeとNiの合金)から成る金属材料が好ましい。或いは、合金クラスターを生成する場合、2種類以上の金属材料を使用することが好ましい。例えば金属材料として、Feと、Co及び/又はNiとを使用し、Fe蒸気とCo蒸気及び/又はNi蒸気とを発生させ、それら蒸気よりFeとCoの合金クラスター、FeとNiと合金クラスター又はFeとCoとNiの合金クラスターを生成することができる。
使用する材料の形状は特に限定されず、金属蒸気を発生させる態様や使用する装置に応じて適宜異なり得る。例えば、板状や円盤状の金属材料を用いることができる。
使用する金属材料(好ましくは強磁性材料)から金属蒸気を発生させる手段としては、種々のスパッタリング法を適用し得る。例えばレーザースパッタリング法がある。
好ましい金属蒸気発生方法はプラズマを利用する方法である。すなわち、金属材料(ターゲット)の周囲にプラズマ源ガス(例えばAr等の希ガスを含むガス)を供給するとともに減圧条件下(好ましくは1×10−2〜1×10Pa程度)でプラズマ放電(プラズマを生じさせ得る放電、典型的にはグロー放電)を起こす。これにより、金属材料の周囲をプラズマ状態とし、該雰囲気中に含まれる励起分子、ラジカル、イオン等によって金属材料をスパッタリングすることができる。この方法では、プラズマ放電に投入する電力、プラズマ源ガスの種類又は濃度、ガス圧、或いは処理温度を適宜調節することによって、金属蒸気の発生量や発生した金属微粒子の電荷の程度、延いてはクラスターの生成効率及びイオン化効率を容易に制御することができる。
例えば、一対又は二対以上の電極(アノード及びカソード)を備えた反応容器中に減圧条件下でプラズマ源ガスを導入するとともに所定の金属材料(ターゲット)を配置する(典型的にはカソード上又はその近傍に配置する)。そして、当該電極間に電力(例えば直流電圧)を投入(印加)してグロー放電を起こさせる。これにより励起されたガス(例えばイオン化されたAr)で金属材料(ターゲット)をスパッタリングすることによって、荷電した金属蒸気(金属イオン)を発生させることができる。
このようにして発生した金属蒸気(原子)は、典型的にはキャリアガス(例えばArやHe)中で冷却され(即ち運動エネルギーを失い)、凝集して適当なサイズのクラスターを形成する。このとき、電荷を有する金属蒸気即ち金属イオンが凝集体中に取り込まれることにより、イオン化したクラスター(クラスターイオン)が生成される。また、スパッタリング等によって得られた金属蒸気からクラスターを生成する空間において、別途、グロー放電、熱電子放出等を行うことによっても該空間を通るクラスターを高効率に荷電(イオン化)することができる。
生成(粒成長を含む。以下同じ。)されるクラスターのサイズ(即ち金属蒸気の集合化の程度)は、クラスター生成空間のガス圧、金属蒸気の発生量等を制御することによって適宜調整することができる。例えば、クラスターの生成空間のガス圧を0.1〜1000Pa程度(好ましくは1〜100Pa程度、更に好ましくは1〜20Pa程度)とすることによって、粒径1〜50nm程度のクラスター(典型的には単分散系を構成する。)を容易に生成することができる。
また、金属蒸気及び/又は凝集過程にあるクラスターを冷却することによって、クラスターの成長速度、延いては最終的なクラスターのサイズを調整することができる。例えば、金属蒸気及び/又は凝集過程にあるクラスターをキャリアガスによって冷却する(さらに好ましくは、該キャリアガス自体を液体窒素その他の適当な冷却手段によって冷却する。)ことによって、クラスターの成長を制御することができる。
特に限定するものではないが、本発明に係る軟磁性材料を製造するのに使用するクラスターとしては、粒径(典型的には顕微鏡観察に基づく粒径)が1〜50nmであるものが適当であり、2〜30nmのものが好ましく、5〜15nm程度のものが特に好ましい。このような粒径範囲のクラスター(典型的には前記いずれかの粒径範囲内に平均粒径の値が含まれる単分散系クラスター)を使用することにより、クラスターの崩壊を防止するとともに充填率の向上した緻密な軟磁性材料を製造することができる。
次いで、得られたクラスターを、減圧条件下(好ましくは1×10−5〜1×10−3Pa)において、目的とする基材に供給する。典型的には、Ar、He等のキャリアガスと共にクラスター(イオン化したものを含む)を基材表面に供給する。このとき、好ましくは生成したクラスターをビーム状に集めて基材に供給することが上述の理由により好ましい。例えば、1〜50m/s程度の流速(好ましくは5〜20m/s)で、クラスターが分散しているキャリアガスをノズルから基材に向けて噴出させることによって、クラスターをビーム状にして基材に供給することを実現することができる。
本発明の軟磁性材料製造方法では、クラスターを基材に供給する際、当該基材に所定の電圧(電位)を印加しておく。このことにより、イオン化クラスターを優先的或いは選択的に基材表面に高率に堆積させることができる。また、電圧が印加された基材(以下「電圧印加基材」という。)及びその周辺の電場によって、イオン化クラスターを加速(即ち運動エネルギーを増加)し得るため、基材表面に該加速されたイオン化クラスターを緻密に堆積させることができる。
クラスターの性状に応じて適宜異なり得るので特に限定するものではないが、加速されたイオン化クラスターを破壊することなく緻密に堆積させるという観点からはある程度の高い電圧が適当であり、概ね100kV以下の正又は負の電圧(0〜±100kV)が適当である。基材に堆積させるクラスターのサイズを維持するという観点からは0〜±50kVが適当であり、0〜±30kVが好ましい。従って、これら二つの観点から、基材への印加電圧としては正又は負である10〜50kVが好ましく、正又は負である20〜30kVの印加が特に好ましい。
また、直流電圧の印加が好ましい。正又は負の何れかの直流電圧を印加することによって、該印加電圧と相対する負又は正の何れかに荷電したクラスターを優先的又は選択的に基材に堆積させることができる。
なお、基材に所定の電圧を印加する手段は特に限定されない。好ましくは、外部電源と電気的に接続した通電可能なホルダー(保持器)に基材をセットし、該ホルダーを介して外部電源から基材に所定の電圧を印加する。このようなホルダーを採用する場合、可動式ホルダーを用いることがさらに好ましい。このことによって、クラスター生成源(即ちクラスターが供給されてくる方向)に対する基材の相対位置を異ならせることができる。例えば、該ホルダーを移動させることによって、所定のクラスター生成源からビーム状に供給されてくるクラスターの基材上における衝突位置を適宜異ならせることができる。
生成したクラスターを基材表面に堆積させる前に、好ましくは、クラスターの表面修飾処理を行う。かかる処理によってクラスターの電気抵抗を高くすることにより、該クラスターが堆積(集合)して成る高電気抵抗と低保磁力(高透磁率)及び/又は高飽和磁束密度とを兼備する、高周波領域での使用に優れる軟磁性材料を製造することができる。
表面修飾処理は、クラスターの電気抵抗を高め得るものであれば特に制限はないが、クラスターの表面を酸化物或いは非磁性体によって被覆する処理が好ましい。例えば、クラスターの表面を酸化物,窒化物,炭化物等の化合物で被覆することが好適である。特に好ましい表面修飾処理は、クラスターの表面に酸化物から成る膜(酸化被膜)を形成する処理である。酸化被膜が形成されたクラスター(好ましくは単分散系クラスター)をその形状を破壊することなく緻密に堆積(集合)させることによって、酸化被膜が形成されていないクラスターを用いた場合よりも高い電気抵抗値を有するクラスター堆積物(軟磁性材料)を得ることができる。
例えば、生成したクラスターをキャリアガスとともに基材に供給する過程のクラスター流路(雰囲気)に、適当な温度条件下(好ましくは酸化は常温又は高温域、窒化及び炭化は高温域で行う)、当該流路の減圧状態(例えば10−4〜10−1Pa程度)を維持しつつ酸素(O)ガス、アンモニア(NH)ガス、炭化水素(HC)ガス等を導入する。これにより、クラスター表面の金属原子と導入ガス種とが反応し、結果、反応生成物である酸化物,窒化物,炭化物等の化合物でクラスター表面が被覆された状態となる。
また、カーボン、異種金属、半導体等でクラスターの表面を修飾する場合には、クラスター流路に連通する雰囲気中に配置した所定の材料(ターゲット)をスパッタリングし、得られたカーボン、異種金属、半導体等の蒸気とクラスターとを反応させてもよい。このことによって、クラスター表面をカーボン、異種金属、半導体等によって被覆することができる。なお、これら材料をスパッタリングする方法は、従来公知の方法でよい。例えば高周波電源を備えたプラズマ発生装置を使用してスパッタリングを行うことができる。
以下、本発明の好適な一実施形態として、基材表面に薄膜状クラスター堆積物を形成するのに好適な軟磁性材料製造装置(クラスター生成・堆積装置)10を、図面を参照しつつ説明する。なお、図1は本装置10の構成の概略を模式的に示すブロック図である。
本装置10は、内部が減圧可能なケーシング12,42を備えており、大まかにいって、クラスター生成部20と、クラスター堆積部40とから構成されている。さらにクラスター生成部20は、スパッタ室21と成長室30とに区分され得る。
スパッタ室21には、ケーシング12内部にガスを供給するガス供給手段(ここでは外部のガス供給源と接続するガス導入管22)と、該供給されたガスをプラズマ状態にするプラズマ発生手段23と、ケーシング12内部のガスを排出するべく図示しない外部ポンプ(真空ポンプ)に連通する排気管25及びバルブ24が設けられている。本実施形態に係るプラズマ発生手段は、直流電源28に接続されるとともにケーシング12内に配置された複数のカソード27A,27B及びターゲットシールドカバー26A,26Bで構成されている。カソード27A,27Bには、図示されるように、位置変更手段29(モータ、ソレノイド等)が付設されており、該位置変更手段29を作動させることによって、カソード27A,27Bとターゲットシールドカバー26A,26Bとの間の距離(間隙)を適宜調節することができる(図1中の両矢印参照)。これにより、好適なグロー放電を両電極間に形成することができる。
他方、前記スパッタ室21に続く円筒状の成長室30には、成長室30内のガスを排出して該成長室30内をスパッタ室21よりも陰圧にすべく図示しない外部ポンプ(真空ポンプ)に連通する排気管34A,34B及びバルブ35A,35Bが設けられている。また、クラスター堆積部40との境界部分には、クラスター生成部20からクラスター堆積部40へのガス流通を規制するバルブ37が設けられている。また、成長室30内にはクラスターをビーム状に基材に供給するためのアパーチャー(ノズル)31及びスキマー32,33が設けられている。また、冷媒供給管38と連通する冷却管39がアパーチャー31設置部分の周囲に形成されている。この構成の結果、冷媒供給管38から適当な冷媒(液体窒素(LN)等)を冷却管39に導入することによって、冷却管39と成長室30内の熱交換により成長室30を流れるガス及びクラスターの冷却を行うことができる。
次に、本装置10のクラスター堆積部40を説明する。図示されるように、クラスター堆積部40のケーシング42内には、基材を保持するためのホルダー41が配置されている。特に限定されないが、本装置10のホルダー41は板状基材(即ち基板)を保持するように構成されている。ホルダー41は、クラスター供給方向(即ち成長室30から発射されるクラスタービームが設けられている方向)に基板の幅広面が面するように配置されている。これにより、当該基板の幅広面に対し、ビーム状にクラスターを効率よく供給し堆積させることができる。このホルダー41は通電可能な材料から構成されているとともに、外部の直流電源48と電気的に接続されている。これにより、外部電源48よりホルダー41に所定の電圧(ここでは0〜±24V)を印加することができる。換言すれば、該ホルダー41に装着した基板に所定の正又は負の電圧を印加することができる。なお、図示されるように、ホルダー41には位置変更手段49(モータ、ソレノイド等)が付設されており、該位置変更手段49を作動させることによって、ホルダーを動かすことができる。このことによって、クラスター生成源(即ちクラスターが供給されてくる上流方向)に対し、ホルダー41に保持された基材の相対位置を異ならせることができる。例えば、該ホルダー41の配置位置を移動させることによって、クラスター生成部20から成長室30のスキマー32,33を通ってビーム状に供給されてくるクラスターの基材上における衝突位置を適宜異ならせることができる(図1中の両矢印参照)。
この他、本装置10のクラスター堆積部40には、ケーシング42内のガスを排出して該ケーシング42内を成長室30内よりも陰圧とすべく図示しない外部ポンプ(真空ポンプ)に連通する排気管44及びバルブ47が設けられている。また、ケーシング42内には、可動式の水晶振動子膜厚計が配置されている。これにより、基板表面の任意の位置に堆積するクラスターから成る薄膜の膜厚をモニタリングすることができる。また、上述した表面修飾処理に供するガス(例えば酸素ガス又は空気)を導入するためのガス導入管46を、例えば図1に示すような位置に設けてもよい。
かかる構成の本装置10は、典型的には次のようにして使用することができる。すなわち、スパッタ室21のカソード27A,27Bの表面の一部にFe、Co、Ni等の金属材料(ターゲット)2A,2Bを配置する。例えば、カソードの端面27A,27Bに、直径80〜100mm、厚さ5〜10mm程度の円盤形状ターゲット2A,2Bを配置する。複数のカソード27A,27Bの表面に、それぞれ、異なる金属種のターゲットを配置し、スパッタリングすることによって、それら金属種から成る合金クラスターを生成することができる。例えば、一方のカソード27AにFeを配置し、他方のカソード27BにCoを配置する。これにより、Fe蒸気とCo蒸気とを発生させ、これら金属蒸気から成る合金クラスターを得ることができる。
而して、バルブ24を開け、外部の真空ポンプ(メカニカルブースターポンプ等)を作動させて概ね1×10−5Pa程度までケーシング12内を減圧する(予備減圧)。次いで、ガス導入管22からプラズマ源ガス(典型的にはArガス又はHe/Ar混合ガス)をスパッタ室21に導入する。
このとき、前記バルブ24を閉めるとともに、成長室30のバルブ35A,35Bを開け、外部の真空ポンプを作動させる。これにより、ガス導入管22からスパッタ室21に導入されたプラズマ源ガスは電極(ターゲットシールドカバー26A,26B及びカソード27A,27B)の周囲を流れ、そして成長室30へと所定の流速(流量)で流動し得る。好ましくは、スパッタ室21内におけるプラズマ源ガス圧が1×10〜1×10Pa程度になるように真空ポンプの仕事量及び/又はプラズマ源ガス供給量を調整する。
このような条件下、例えば300〜400W程度の電力をプラズマ発生用電極26A,26Bに印加し、生じたグロー放電によってプラズマ源ガス(Ar等)をプラズマ状態とし(典型的にはイオン化)、ターゲット2A,2Bの表面をスパッタリングする。これにより、金属蒸気を発生させることができる。
発生した金属蒸気は、He等のキャリアガス(プラズマ源ガスとして導入されたArガスでも構わない。)と共に成長室30に流動する。金属蒸気(気化原子)は、流動過程においてキャリアガス種(Ar、He等)と衝突し、運動エネルギーを失い(換言すれば冷却され)、相互の衝突を繰り返す結果、クラスターの核生成及び成長が行われる。このとき、冷却管29に液体窒素等の冷媒を導入することによって、冷却管29の外壁に接触するキャリアガス及びクラスター(又は金属蒸気)をより効率よく冷却することができる。このようにして、典型的には単分散性の比較的粒径の小さいナノレベルのクラスター(例えば平均粒径2nm〜20nm、特に好ましくは5nm〜15nm)を効率よく生成することができる。
このようにして得られたクラスター(イオンを含む)は、真空ポンプによる排気によって好ましくは0.1〜20Pa程度に減圧された成長室30内に導入され、アパーチャー31及びスキマー32,33を通過しつつ、クラスター堆積部40に供給される。このとき、バルブ47を開けて真空ポンプによってクラスター堆積部40(ケーシング42)内を成長室30よりも真空度の高い雰囲気(好ましくは1×10−3〜1×10−5Pa)にしておくことによって、クラスターを含むキャリアガスをスキマー33からホルダー41方向にビーム状に噴出させることができる(図2参照)。
同時に、ホルダー41には、外部電源48より直流高電圧(好ましくは20〜30kV、例えば±24kV)を印加する。このとき、ホルダー41には、直流高電圧を印加可能ないずれかの基材50(シリコン基板、金属基板、セラミック基板、ガラス基板等)を用いることができる。例えば、表面がポリイミド膜(カプトン(登録商標)膜等)で被覆されたガラス基板やシリコン基板を利用することができる。
かかる高電圧印加処理を行うことによって、イオン化クラスターを優先的又は選択的に基材表面に堆積させることができる。また、基材に直流高電圧を印加することによって、その印加電圧に応じてイオン化クラスターをほぼ一様に加速(運動エネルギーが増加)させ、基材に衝突・堆積することができる。これにより、基材上に、全体に亘って均質で緻密なクラスター堆積層(典型的には薄膜状にクラスターが堆積して成る軟磁性材料)を形成することができる。
例えば、図2に示すような位置にホルダー41及び基材50を配置するとともに正(プラス)の電圧を印加することによって、負(マイナス)に帯電したクラスター(図中の符号100の矢印参照)を優先的にクラスタービーム進行方向と対面する基材50の表面に堆積させることができる。この場合、イオン化していないニュートラルなクラスターが当該堆積物中に混在し得る。他方、正に帯電したクラスターは、基材50の正電位と反発し、基材50から逸れる割合が多くなる(図中の符号101の矢印参照)。
或いは、図3に示すような位置(即ちクラスタービームの進行方向から逸れた位置)に基材50(クラスター堆積を行う面)を配置して正の電圧を印加する。この態様によると、基材50の少なくとも一部分に、負に帯電したクラスター(図中の符号110の矢印参照)を優先的に堆積させることができる。この場合、イオン化していないニュートラルなクラスターは、クラスタービーム進行方向に沿って進行する割合が高く(図中の符号111の矢印参照)、基材50上に堆積する確率は実質的にゼロであるか著しく小さくなり得る。なお、図2に示した場合と同様、正に帯電したクラスターは、基材50の正電位と反発し、基材50上に堆積する確率は実質的にゼロであり得る(図中の符号112の矢印参照)。
或いはまた、図4に示すように、ホルダー41から基材50の一部がはみ出すようにしてこれらを配置するとともに正の電圧を印加する。このように、基板50の部位毎に印加電圧のレベルを異ならせることによって、基板50上の任意の一部分、即ちホルダー41からの電圧で強く印加された部分に、負に帯電したクラスター(図中の符号121の矢印参照)を、基板50の他部分よりも優先的又は選択的に堆積させることができる。一方、ホルダー41からはみ出した基材50部分(即ちホルダー41からの電圧で強く印加されてはいない部分)を当該進行方向と対向する位置に配置することにより、クラスタービーム進行方向に沿って進行するイオン化していないニュートラルなクラスター(図中の符号122の矢印参照)を当該部分に優先的又は選択的に堆積することができる。この場合も図2及び3に示した場合と同様、正に帯電したクラスターは、基材50の正電位と反発し、基材50上に堆積する確率は実質的にゼロであり得る(図中の符号123の矢印参照)。尚、図2〜図4では、図1に示す装置10のうち上記説明に必要な要部のみを示している。
また、ホルダー41及び基材50に負の電圧を印加した場合には、上述した説明の正と負とを逆にした事象となることは容易に理解され、重複した説明は行わない。
以上のように、本装置10によると、クラスターの進行(供給)方向に対してホルダー41(即ち基材50)を適当な位置に配置するとともに、所定の電圧(好ましくは直流電圧)を印加することによって、基材上の所望する部分にイオン化したクラスターを非イオン化クラスター(ニュートラルクラスター)よりも高率に堆積させることができる。このように、基材の部位に応じて電荷の異なるクラスターを堆積させることによって、部分毎に磁性特性(軟磁性)の異なる電子部品を製造することができる。
なお、図3に示すように、クラスターがビーム状に供給される方向(即ちスキマー33からクラスターがビーム状に噴出される方向)に膜厚計を配置することにより、ニュートラルなクラスターの堆積速度(nm/s)を測定することができる。
また、本装置10を用いて表面修飾処理を行う場合の好適例として、クラスター生成部20又はクラスター堆積部40に酸素ガス若しくは酸化剤として作用し得るガスを導入することが挙げられる。例えば、成長室30の下流側(例えば図1に示す二つのスキマー32,33の間)若しくはクラスター堆積部40に酸化用ガス導入口を設け、所定の流量の酸化用ガスをケーシング12,42内に導入する。これにより、基材50に堆積される前のクラスターの表面に酸化被膜を容易に形成することができる。
以下に説明する実施例によって、本発明を更に詳細に説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<実施例1>
上述した装置10(但し、スパッタ室21の容積1.3×10cm、成長室30の容積3.8×10cm、クラスター堆積部40の容積8.3×10cm、アパーチャー31の放射口31Aの直径:3.5mm、上流側スキマー32の放射口32Aの直径:3.5mm、下流側スキマー33の放射口33Aの直径:4mm)を使用し、室温条件下、種々の条件で基板上にクラスターを堆積した。
先ず、バルブ24,47を開けるとともに真空ポンプ(ターボ分子ポンプ)を作動させて、スパッタ室21及びクラスター堆積部40内を1×10−5Pa以下になるまで排気・減圧した。次いで、予め水冷しておいたFeターゲット(直径:約70mm、厚さ約5mmのFeディスク)を円筒形状のカソード27A,27Bの端面に配置した。次いで、Feディスクの表面の酸化被膜を除去するためプレスパッタリングを行った。すなわち、スパッタ室21内のガス圧が6.6×10−1Pa以下に維持されるようにポンプの排気調整を行いつつ、ガス導入管22に接続したガス供給源よりArガスを流量:約300sccm(ここでsccmは1気圧(1013hPa)0℃における流量cm/minである。以下同じ。)でスパッタ室21内に導入した。この状態で直流電源28から400W程度の電力を投入し、電極26A,26Bに−100〜−300Vの電圧を印加することによってプレスパッタリングを約10分間行った。
プレスパッタリングに引き続いて金属蒸気を発生させるためのスパッタリングを以下のように行った。すなわち、スパッタ室21内及びクラスター堆積部40内の上記減圧状態を維持しつつ、成長室30のバルブ35A,35Bを開け、図示しないポンプ(排気管35Aに接続したメカニカル・ブースター・ポンプ及び排気管35Bに接続した複合分子ポンプ)を作動して成長室30内を1Pa程度にまで減圧した。かかる減圧状態を維持しつつ、ガス導入管22からArガス及びHeガス(即ちプラズマ源としてArを含むガス)をArガス:250〜300sccm、Heガス:0〜550sccmの流量でスパッタ室21に導入した。この状態で直流電源28から400W程度の電力を投入し、電極26A,26Bに−100〜−300Vの直流高電圧を印加した。これにより生じたグロー放電によって電極26A,26B,27A,27B周囲をプラズマ状態とし、ターゲット2A,2Bから金属蒸気を発生させた。金属蒸気はガス流とともに成長室30に搬送され、その過程において金属蒸気原子はAr及びHeと衝突してエネルギーを失い、相互に凝集して単分散系のFeクラスターが生成された。生成したクラスターはキャリアガス(Ar/He混合ガス)とともに約10m/sの流速でビーム状にスキマー33の放出口33Aからクラスター堆積部40に噴出させた。
なお、キャリアガスの流量やガス圧を調整することによって、生成されるクラスターの粒径(平均粒径)を調節することができる。一般に流量やガスが低いと平均粒径のより小さいクラスターを得ることができ、流量やガス圧を高くすると平均粒径のより大きいクラスターを得ることができる。流量、ガス圧は排気量によっても調整できる。或いは、導入するガス中のプラズマ化用ガス種と非プラズマ化用ガス種(キャリアガス種)とのモル比(プラズマ化用ガス種/非プラズマ化用ガス種)、ここではAr/He比(モル比)を調整することによっても、生成されるクラスターの粒径(平均粒径)を調節することができ、Heのモル比が増すほど粒径は小さくなる。例えば、本実施例の系において平均粒径3〜15nm程度のクラスターを生成する場合には、プラズマ化用ガス種/キャリアガス種(Ar/He)のモル比が0.3〜0.8(好ましくは0.4〜0.6)となるように、導入するガス流量を調整するとよい。例えば、Arガスを250sccm、Heガスを550sccmの流量でスパッタ室21に導入することにより、平均粒径9〜13nm程度のクラスターを容易に生成することができる。
本実施例では、金属製ホルダー41に表面がポリイミド膜(カプトン(登録商標)膜)でコートされた各辺30mmの矩形状ガラス基板をセットし、そのポリイミド膜上にクラスターを堆積させた。本実施例では、直流電源48から電力を投入し、ホルダー41に0〜±30kVの範囲のいずれかの直流電圧を印加しつつクラスター堆積処理を実行した。なお、ホルダー41及び基板50の位置は、上述した図2〜図4のいずれかに示す位置としてクラスター堆積処理を実行した。本実施例により得られた種々の結果を以下に記す。
図5は、250sccmのArガス及び550sccmのHeガスをスパッタ室21に導入するとともに、図2に示す位置に配置したホルダー41に−20kVの電圧を印加してクラスター堆積を開始した直後の基板50表面を示す透過電子顕微鏡(TEM)写真である。また、図6は、基板50表面のTEM観察に基づいて求めたクラスター粒径分布である。上記条件の処理によって、平均粒径:約12.7nmのクラスターが生成された。
なお、図示していないが、250sccmのArガス及び550sccmのHeガスをスパッタ室21に導入するとともに、図2に示す位置に配置したホルダー41に電圧を印加せずにクラスター堆積処理を行った場合、平均粒径:約9.1nmのクラスターが生成された。
図7及び図8は、250sccmのArガス及び550sccmのHeガスをスパッタ室21に導入するとともに、図2に示す位置に配置したホルダー41に電圧を印加しないか或いは−14kVの電圧を印加してクラスター堆積処理を2時間行った後の基板50表面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。図7が電圧を印加しないで行った場合の結果を示し、図8が電圧を印加して行った場合の結果を示す。これら顕微鏡写真から、ホルダー41に電圧を印加することによってより緻密にクラスターを堆積し得ることが認められた。
図9〜図12は、250sccmのArガス及び550sccmのHeガスをスパッタ室21に導入するとともに、図4に示す位置に配置したホルダー41に−20kVの電圧を印加してクラスター堆積処理を2時間行った後の基板50の表面及び破断面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。図9及び図10は、それぞれ、ニュートラルなクラスターが優先的に堆積した部分(図4中の符号122の矢印が示す部分)の表面及び破断面を示す写真である。他方、図11及び図12は、それぞれ、イオン化したクラスターが優先的に堆積した部分(図4中の符号121の矢印が示す部分)の表面及び破断面を示す写真である。
これらのSEM写真から明らかなように、基板に直流電圧を印加してイオン化クラスターを優先的(又は選択的)に堆積させることにより、より緻密なクラスター堆積物を得ることができる。
図13は、250sccmのArガス及び550sccmのHeガスをスパッタ室21に導入するとともに、図4に示す位置に配置したホルダー41に0,−14,及び−20kVの何れかの電圧を印加し、生成した平均粒径9.1nmのクラスターを基板50の表面に厚み約200nm堆積させて得た各磁性材料について、温度(T)300Kにおいて計測した磁化曲線を示すグラフである。このグラフから明らかなように、ホルダー41(基板)に直流電圧を印加して得た磁性材料はいずれも飽和磁気特性が良好であった。また、印加した電圧値が高いものほど保磁力(Hc)が低く(印加電圧0kVのときのHc=100.8Oe≒8.0×10A/m、−14kVのときのHc=10.6Oe≒8.4×10A/m、−20kVのときのHc=0.6Oe≒4.8×10A/m)、軟磁性材料として適することが認められた。正又は負の20kV以上の高い電圧を印加した場合、特に好ましい結果が得られた。
<実施例2>
本実施例は、クラスター堆積部40内の減圧状態を実施例1と同様に維持しつつ表面修飾処理としてガス導入管46(図1参照)から流量0.1sccm(RO2=0.1sccm)の酸素ガスを導入してクラスター堆積処理を行った。すなわち、実施例1で使用したのと同じ装置、材料を用い、250sccmのArガス及び550sccmのHeガスをスパッタ室21に導入するとともに、図4に示す位置に配置したホルダー41に−20kVの電圧を印加し、生成した平均粒径9.1nmのクラスターを酸素ガスを導入しながら基板50の表面に厚みが200nm程度になるまで堆積させて磁性材料を得た。
図14は、本実施例で得た磁性材料の温度(K)と電気抵抗値(ρ:μΩcm)の関係を示すグラフである。このグラフから明らかなように、酸素ガスのような金属クラスター表面の酸化可能なガスの導入によって、クラスター表面が金属酸化物(酸化膜)によって被覆された結果、当該酸化被膜クラスターの堆積物(即ち層状クラスター集合体)の電気抵抗値を高めることができる。また、本発明の製造方法では、当該ガス流量の調節によって容易にクラスター堆積物即ち磁性材料の電気抵抗値を制御し得ることが確かめられた。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
軟磁性材料製造装置の構成の一例を模式的に説明するブロック図である。 軟磁性材料製造装置の使用形態の一例を模式的に説明する要部ブロック図である。 軟磁性材料製造装置の使用形態の一例を模式的に説明する要部ブロック図である。 軟磁性材料製造装置の使用形態の一例を模式的に説明する要部ブロック図である。 クラスター堆積処理を開始した直後の基板表面を示す透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。 実施例において得られたクラスターの粒径分布を示すグラフである。横軸はクラスター直径(nm)、縦軸は存在割合(population:%)を表す。 比較例として得られた基板表面のクラスター堆積物(磁性材料)の表面構造を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。 実施例として得られた基板表面のクラスター堆積物(磁性材料)の表面構造を示すSEM写真である。 実施例として得られた基板表面のクラスター堆積物(磁性材料)の表面構造を示すSEM写真である。 実施例として得られた基板表面のクラスター堆積物(磁性材料)の断面構造を示すSEM写真である。 実施例として得られた基板表面のクラスター堆積物(磁性材料)の表面構造を示すSEM写真である。 実施例として得られた基板表面のクラスター堆積物(磁性材料)の断面構造を示すSEM写真である。 基板への印加電圧を異ならせて得られたいくつかの磁性材料について温度:300Kにおいて計測した磁化曲線を示すグラフである。横軸は磁場(Magnetic field)強度(Oe)、縦軸は磁化の程度(M/MH=2kOe)を表す。 クラスター堆積部のケーシング内に酸素ガスを導入して得た磁性材料について温度と電気抵抗との関係を示すグラフである。横軸は温度(Temperature:K)、縦軸は電気抵抗値(ρ:μΩcm)を表す。
符号の説明
2A,2B 金属材料(ターゲット)
10 軟磁性材料製造装置
20 クラスター生成部
21 スパッタ室
22 ガス導入管
23 プラズマ発生手段
26A,26B ターゲットシールドカバー
27A,27B カソード
30 成長室
40 クラスター堆積部
41 ホルダー
46 ガス導入管
50 基材(基板)

Claims (7)

  1. クラスター生成部とクラスター堆積部とを有する減圧されたケーシング内において軟磁性材料を製造する方法であって:
    前記クラスター生成部において一種又は二種以上の金属材料から金属蒸気を発生させる工程;
    該金属蒸気からクラスターを生成する工程、ここで少なくとも一部のクラスターをイオン化した状態で存在させる;
    および
    前記クラスター堆積部に配置された可動ホルダーに正負いずれかの直流電圧が少なくとも一部に印加された状態の基材を保持しておくとともに、前記クラスター生成部で生成したクラスターを含むキャリアガスをビーム状にして該クラスター堆積部に供給し、該基材上に該クラスターを堆積する工程、ここで該工程は、前記ビーム状にクラスターが供給されてくる方向に対して該ホルダーに保持された基材の相対位置を異ならせることによって前記基材の少なくとも前記直流電圧が印加された部位を前記ビーム状にクラスターが供給されてくる方向から逸れた位置に配置し、それによって該部位に前記ビーム中に存在するクラスターのうちの前記印加電圧とは逆の電位の正負いずれかに帯電しているイオン化クラスターを優先的又は選択的に堆積させることを含む
    を包含する方法。
  2. 前記クラスター堆積工程において、前記ホルダーから基材の一部がはみ出すようにして該基材を配置することによって該基材の部位毎に前記印加電圧のレベルを異ならせるとともに、該基材の該ホルダーに保持された部分を前記ビームの進行方向から逸れた位置に配置する、請求項1に記載の方法。
  3. プラズマ状態の雰囲気中で前記金属材料から金属蒸気を生じさせ、前記基材へのガス流中で該金属蒸気からクラスターを生成する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 平均粒径3nm〜15nmのクラスターを前記基材に供給する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記基材上に堆積させるクラスターに対して、該クラスターの電気抵抗を高めるための表面修飾処理を行う、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記表面修飾処理によって、前記クラスターの表面が酸化物又は非磁性体により被覆される、請求項5に記載の方法。
  7. Fe、Co及びNiから成る群から選択される少なくとも二つの金属元素から成る合金クラスターが形成されるように、使用する前記金属材料を決定する、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
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