JP4464013B2 - 車両用エンジンの吸気取入装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として、自動二輪車などに搭載される車両用エンジンの吸気取入装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の自動二輪車においては、車体前部に装着されるカウリングの前面に、エンジンへの吸入空気を取り入れる空気取入口を形成する空気取入ダクトが、カウリングと一体に形成され、この空気取入ダクトに、ゴムシールを介して吸気ダクトが接続されていた(特許掲載公報第2704369号)。この構成では、カウリングと一体に空気取入ダクトが形成される構造のため、空気取入口の開口面積や形状がカウリングの形状や寸法によって制限され、設計やデザイン上の自由度が少なくなるばかりか、エンジン出力向上などのために空気取入口の開口面積や形状を変更する必要が生じた場合に、カウリングの全体を変更しなければならない。
【0003】
そこで、近年では、カウリングとは別体に設けた空気取入ダクトをカウリングに着脱自在に取り付けることが提案されている(特願平11−266745号)。前記空気取入ダクトは、図7に示すように、左右に長い偏平な空気取入通路1を有するとともに、空気取入通路1が左右方向中央部の分岐壁2で左右に二分されている。この空気取入ダクトは、前部上面に形成された左右一対のボス3,3を介してカウリングの中央下面部に取り付けられるとともに、後端部の左右に形成された1対のソケット部4,4および取付孔7を介して吸気ダクトが後端部に連結される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図7に矢印で示すように、前記空気取入ダクトでは、高速走行に伴い空気取入通路1内の側部に向かって流入する空気A2が、その周囲のカウリングの外周面に沿って側方へ流れる周辺空気A1に引っ張られて、流動方向を外側向きに変えながら空気取入通路1内に流入する。そのため、空気取入通路1内での空気のラム圧は、左右方向中央部において、空気A2が車体の進行方向とほぼ逆方向に直進して流入することから、比較的高いが、左右両側部において、空気A3が外側方に向く速度成分を持つ分だけ低くなり、空気取入通路1全体のラム圧が低下する。その結果、前記空気取入ダクトは、空気の圧縮特性を利用して圧力を高めた吸入空気をエンジンに送給するという本来の機能が低下する。したがって、エンジンに所要量の吸入空気を送給するためには、空気取入ダクトの空気取入通路1の開口面積を比較的大きく設定する必要が生じ、これが車体の走行抵抗を増大させる。
【0005】
本発明は、前記従来の課題に鑑みてなされたもので、空気取入通路の開口面積を大きくすることなく、通路内部の全体のラム圧を高くすることができる空気取入ダクトを備えた車両用エンジンの吸気取入装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の一構成に係る車両用エンジンの吸気取入装置は、エンジンへの吸入空気を取り入れる吸気ダクトと、前記吸気ダクトの上流端に接続される空気取入通路を形成する空気取入ダクトとを備え、前記空気取入ダクトは、車体の前部に装着されるカウリングの左右方向中央部に配置されており、前記空気取入通路に、この通路を中央通路部と左右1対の側方通路部とに区画する区画部材が設けられ、前記区画部材は、前記空気取入通路の下端部から通路高さの1/3〜2/3まで延びている。
【0007】
この構成によれば、高速走行時に空気取入通路における中央通路部に流入する空気は、特に中央通路部内における側部寄りの部分に流入する空気が前記区画部材により規制されて、カウリングの外周面に沿って車体の外側方へ流れる空気の影響を受けることなく、中央通路部内に向かって車体の進行方向と逆方向に直進して流入する。また、空気取入通路内における左右の側方通路部は中央通路部側に区画部材が存在するから、空気取入通路の左右両側の側方通路部に流入する空気は、カウリングの外周面に沿って外側方に流れる空気に引っ張られるのが抑制され、外側方向きの速度成分が小さくなる。したがって、空気取入通路内では側方通路部のラム圧の低下が抑えられるので、空気取入通路の内部全体のラム圧を高く保つことができ、空気取入ダクトの開口面積を大きくすることなく所要の流入空気量を得ることができる。
【0008】
さらに、前記区画部材が、前記空気取入通路の下端部から通路高さの1/3〜2/3まで延びているので、空気取入通路の左右1対の側方通路部のラム圧を可及的に高く保つことができる。すなわち、区画部材を通路高さの1/3以下に設定した場合には、区画部材の効果が小さくなり、カウリングの外周面に沿って流れる空気の影響を受けて空気取入通路の側方通路部に流入する空気のラム圧が十分上昇しなくなり、2/3以上に設定した場合には、空気取入通路の中央通路部から側方通路部へ漏れる空気量が少なくなり、流入空気が中央通路部に集中し過ぎて、左右両側方通路部への流入空気量が若干減少するので、やはりラム圧を低下させる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る車両用エンジンの吸気取入装置を搭載した自動二輪車を示す側面図である。自動二輪車は、車体フレーム8の前端のヘッドパイプ9に軸支されたフロントフォーク10に前車輪11を取り付け、車体フレーム8の中央下部に揺動自在に軸支されたスイングアーム12に後車輪13を取り付け、車体フレーム8の中央下部に取り付けたエンジン14で後車輪13を駆動するとともに、フロントフォーク10の上端部に固定したハンドル17で操向するように構成されている。
【0010】
車体フレーム8の前半部は、前端がヘッドパイプ9に接続されたモノコック構造の単一のメインメレーム18とされ、メインフレーム18内にはエンジン14への空気を清浄化するエアークリーナ部19が設けられており、その前部に形成された左右1対の入口20に、エンジン14への吸入空気を取り入れる樹脂製の吸気ダクト21がそれぞれ接続されている。両吸気ダクト21の上流端は、空気取入通路22を形成する空気取入ダクト23に接続されている。吸気ダクト21は両方の入口20につながる1本のみが設けられる場合もある。前記空気取入ダクト23は、その先端部が、車体の前部に装着されるカウリング24の先端部にほぼ合致した位置で、カウリング24に取り付けられている。吸気ダクト21、空気取入ダクト23およびカウリング24はそれぞれ、樹脂製の型成形品である。前記エアークリーナ部19の内部にはクリーナーエレメント27が設けられている。
【0011】
車体フレーム8の後半部は、前記メインフレーム18の後部から後方に延びる左右2本のシートレール28と補強メンバー29とからなり、シートレール28の上部に、燃料タンク(図示せず)および操縦者のシート30が装着されている。前記メインフレーム18の後部下面には、エアークリーナ部19とエンジン14の燃料供給装置(この例では気化器)31とを接続するダクト32が接続されている。
【0012】
前記カウリング24は、図2に示すように、その下部が前車輪11と緩衝しないように二股状とされており、中間部にはカウリング24に支持されたランプユニット33を前面に臨ませる左右1対の開口34,34が形成されている。前記空気取入ダクト23は、カウリング24の左右方向中央部の下方に配置されており、正面視で左右に長い偏平な形状になっている。
【0013】
図3は、前記吸気ダクト21の上流端に接続される空気取入ダクト23を、前記カウリング24の下部に締結した状態を示す一部破断した側面図である。図4は、その空気取入ダクト23と吸気ダクト21との接続状態を示す平面図である。図5はその空気取入ダクト23を装着した状態のカウリング24の斜視図である。図5に示すように、空気取入ダクト23の内部の空気取入通路22は、先端部よりも下流側に設けた分岐壁40で左右に2分割され、さらに、その2分割された分岐壁40の両側空間が、左右1対の区画部材41,41によって、左右方向中央の中央通路部22aとその左右の側方通路部22bとに区画されている。
【0014】
前記区画部材41は、図3に示すように、前端縁41aが上方に向かって後方に傾斜しているとともに、空気取入通路22の下端部からの通路高さHに対し、1/2Hの高さhに設定されている。この区画部材41の高さhは、1/3〜2/3Hに設定するのが好ましく、最も好ましくは、この実施形態のように1/2Hに設定することである。これにより、空気取入通路22の左右1対の側方通路部22b,22bのラム圧を可及的に高く保つことができる。すなわち、区画部材41を通路高さHの1/3以下に設定した場合にはカウリング24の外周面に沿って流れる空気の影響を受けて湾曲し、2/3以上に設定した場合には、通気取入通路22への流入空気が左右の中央通路部22a,22aに集中し過ぎて、左右の両側方通路部22b,22bへの流入空気量が僅かであるが減少するからである。また、区画部材41,41は、図2に示すように、中央の分岐壁40の中心部(車体中心)と空気取入通路22の側端部との距離Dの中間位置D/2に設定して、各中央通路部22aと側方通路部22bとの左右方向の幅を同一に設定するのが好ましい。
【0015】
前記空気取入ダクト23は、図3に示すように、分岐壁40の上端部をカウリング24の中央下面部24aに当接させて、ボルト42を前記中央下面部の取付孔を挿通して分岐壁40のねじ孔40aに螺合することにより、カウリング24の中央下面部24aに取り付けられている。また、吸気ダクト21の前端部は、カウリング24の中央下面部24aの後端部と空気取入ダクト23の後端部との間に嵌入して取り付けられている。すなわち、吸気ダクト21の前端上部とカウリング24の中央下面部24aとの重合部分は、吸気ダクト21に固定されたナット42に、ボルト42を中央下面部24aの取付孔を挿通して螺合することにより、連結されている。吸気ダクト21の前端下部と空気取入ダクト23の後端部とは、これらの間にカウリングロア44を挟み込んだ状態で、ゴムナット47にボルト48を空気取入ダクト23の下方から螺合することにより、連結されている。
【0016】
この実施形態では、空気取入通路22を、左右1対の区画部材41,41によって中央通路部22aと側方通路部22bとに区画したので、高速走行時に空気取入通路22における中央通路部22aに流入する空気は、カウリング24の外周面に沿って流れる空気の影響をさほど受けることなく、走行方向と逆方向に直進して流入する。また、空気取入通路22における左右両側の側方通路部22bはその中央通路部側に区画部材41が存在するから、側方通路部22bに向かって流入する空気は、カウリング24の外周面に沿って左右に流れる空気に引っ張られるのが抑制され、外側方向きの速度成分が小さくなる。
【0017】
したがって、空気取入通路22内では左右の側方通路部22bのラム圧の低下が抑えられるので、空気取入通路22の内部全体のラム圧を高く保つことができる。そのため、この実施形態では、空気取入ダクト23の開口面積を大きくすることなく所要の流入空気量を得ることができ、車体の走行抵抗の低減を図ることができる。換言すれば、従来の同一の開口面積を有する空気取入ダクト23を設けた場合には、エンジン14の吸気効率を向上させることができる。
【0018】
つぎに、上述の効果を確認するための実験を行ったので、その結果について説明する。図6(a)は前記実施形態で設けた空気取入ダクト23である。同図(b)は本発明に含まれる変形例の空気取入ダクト23Aであり、左右1対の区画部材52が空気取入通路22の通路高さと同一の高さに設定されている。同図(c)は図7に示した従来の空気取入ダクト53であり、左右方向の中央部に分岐壁2を有しているだけである。
【0019】
前記の3種類の空気取入ダクト23,23A,53をそれぞれカウリング24に取り付けて、これに風速220km/hの空気を真正面から吹き付けながら、各空気取入ダクト23,23A,53の図6に斜線で示したA〜C部におけるラム圧の測定を行った。その結果、空気取入通路22の中央であるA部のラム圧は、各空気取入ダクト23,23A,53共に同一の222mmAqであり、中央通路部22a内の側部から側方通路部22bの中央通路部寄りの部分にかけての領域であるB部のラム圧は、本発明の実施形態に用いた空気取入ダクト23,23Aが214mmAqであったのに対し、従来の空気取入ダクト53は210mmAqと低かった。さらに、側方通路部22bの中心部分であるC部のラム圧は、前記実施形態の空気取入ダクト23が178mmAqで、変形例の空気取入ダクト23Aが170mmAqと低くなり、従来の空気取入ダクト53が158mmAqと低くなった。
【0020】
上記実験結果から明らかなように、前記実施形態の空気取入ダクト23を用いた場合には、空気取入通路22の左右の側方通路部において比較的高いラム圧を維持することができる。また、変形例の空気取入ダクト23Aを用いた場合には、前記実施形態と比較して空気取入通路22の左右の側方通路部におけるラム圧が若干低下するが、従来の空気取入通路22を用いた場合と比較して格段に高いラム圧を保持することができる。
【0021】
なお、空気取入通路22の中央の分岐壁40は、吸気ダクト21が二股状であるのに応じて、空気取入通路22を2分割するために設けられたものであり、吸気ダクト21が1本である場合は割愛される。
【0022】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る車両用エンジンの吸気取入装置によれば、空気取入通路における左右の側方通路部のラム圧の低下が抑えられるので、空気取入通路の内部全体のラム圧を高く保つことができ、空気取入ダクトの開口面積を大きくすることなく所要の流入空気量を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用エンジンの吸気取入装置を搭載した自動二輪車を示す側面図である。
【図2】同上の自動二輪車に装着されたカウリングの正面図である。
【図3】同上のカウリングへの空気取入ダクトの取付構造を一部破断して示す側面図である。
【図4】同上の空気取入ダクトと吸気ダクトとの接続状態を示す平面図である。
【図5】同上の空気取入ダクトを装着した状態のカウリングの斜視図である。
【図6】(a),(b)は本発明の一実施形態および変形例を示す空気取入ダクトの正面図、(c)は比較のために示した従来の空気取入ダクトの正面図である。
【図7】従来の車両用エンジンの吸気取入装置に用いられる空気取入ダクトを示す斜視図である。
【符号の説明】
8…車体フレーム(車体)、14…エンジン、21…吸気ダクト、22…空気取入通路、22a…中央通路部、22b…側方通路部、23,23A…空気取入ダクト、24…カウリング、41,52…区画部材。
Claims (1)
- エンジンへの吸入空気を取り入れる吸気ダクトと、
前記吸気ダクトの上流端に接続される空気取入通路を形成する空気取入ダクトとを備え、
前記空気取入ダクトは、車体の前部に装着されるカウリングの左右方向中央部に配置されており、前記空気取入通路に、この通路を中央通路部と左右1対の側方通路部とに区画する区画部材が設けられ、
前記区画部材は、前記空気取入通路の下端部から通路高さの1/3〜2/3まで延びている車両用エンジンの吸気取入装置。
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